デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
2款 東京商工会
■綱文

第19巻 p.203-211(DK190033k) ページ画像

明治23年1月20日(1890年)

是ヨリ先、濠洲アデレード・ゴリン商会ノ照会ニ基キ農商務省商務局長斎藤修一郎、日濠間通商拡張ニ関スル意見ヲ当会ニ諮問ス。是日栄一、当会会頭トシテ其意見ヲ復申ス。


■資料

東京商工会議事要件録 第四二号・第三―八頁 (明治二三年三月)刊(DK190033k-0001)
第19巻 p.203-204 ページ画像

東京商工会議事要件録  第四二号・第三―八頁 (明治二三年三月)刊
  第二十三定式会  (明治二十三年二月廿六日開)
    会員出席スル者 ○四十七名
会頭渋沢栄一ハ事故アリテ出席遅延シタルニ付副会頭益田孝議長席ニ着ク
会長(益田孝)ハ先ヅ開会ノ趣旨ヲ告ゲ、本議ニ先チテ左ノ件々ヲ報告ス
○中略
一日濠間貿易拡張ノ件ニ関シ商務局長ヨリ問合ノ件
  昨年八月十日附ヲ以テ斎藤商務局長ヨリ日濠間貿易拡張ノ件ニ関シ本会ノ意見ヲ問合セアリタルニ付、其後各当業者ニ就キ調査ヲ遂ゲ本年一月二十日附ヲ以テ回報シタリ(往復ノ書面ハ参考部第五号及第六号ニ掲グ)
○中略
次ニ会長(益田孝)ハ是ヨリ本議ヲ開クベキ旨ヲ告ゲ先ヅ規程第五章
 - 第19巻 p.204 -ページ画像 
第二十二条ニヨリ明治二十二年下半季定式事務ノ成跡ヲ報告ス
  自明治二十二年七月至同年十二月 半季間東京商工会事務報告
○中略
    其筋ヨリ諮問   四件
○中略
○日濠間貿易拡張ノ件ニ関シ商務局長ヨリ問合ノ件
  本件ハ明治二十二年八月十日附ヲ以テ斎藤商務局長ヨリ問合ニ係リ其要旨ハ今般濠洲アデレート・ゴリン商会ヨリ日濠間通商貿易拡張ノ件ニ関シ書面ヲ差出シタルニ付、右書中所載ノ各項ニ就キ本会ノ意見ヲ承知シタシト云フニ在リ、依テ其後各当業者ニ就キ調査ヲ遂ゲタル上回報書ヲ作リ、明治二十三年一月二十日附ヲ以テ之ヲ同局長ヘ進達シタリ
○下略


東京商工会議事要件録 第四二号・第五五―七二頁 (明治二三年三月)刊(DK190033k-0002)
第19巻 p.204-211 ページ画像

東京商工会議事要件録  第四二号・第五五―七二頁 (明治二三年三月)刊
 ○参考部 ○日濠間貿易拡張ノ件ニ関シ商務局長ヨリ問合書 ○同回答書
(第五号)
濠州アデレード・ゴリン商会ヨリ日濠間通商貿易拡張ノ件ニ関シ同州メルボルン府在留我名誉領事ヲ経テ別紙写ノ通リ書面差出候ニ付、即チ及御交附候間右書中ノ条項ニ就キ貴会ノ御意見及当業者応募ノ有無共可成速ニ御申出相成候様致度此段申進候也
  明治廿二年八月十日   農商務省商務局長 斎藤修一郎
  東京商工会々頭
    渋沢栄一殿
拝啓別紙「ゴリン」商会ヨリノ書翰及御送附候条御落手相成度候、同商会ハ「アデレード」及ヒ「メルボルン」ノ商賈ニテ兼テ日濠間ノ通商ヲ開キ度、且ツ日本ノ商賈ニシテ相当ノ地位ヲ有スルモノト直接ノ交通ヲ開クノ志望有之、別紙貴大臣ヘ差出呉候様申出候、該書翰ハ随分有益ノモノニシテ殊ニ貴大臣ハ日本ノ外国貿易拡張ニハ御熱心ノ事ニ候得者同社ノ望ニ任セ右書面及御送附候、同社ハ信用アル新商会ニテ富有ノ老舗ヨリハ敢為ノ気象ニ富居候事ト存候 敬具
         濠州「メルボルン」府日本領事館
            日本天皇陛下ノ領事
 千八百八十九年五月四日          エー、マークス
  日本東京
    農商務大臣 伯爵 井上馨殿
  (別紙)
拝啓陳ハ近頃「メルボルン」府ニ出張ノ日本特派委員ニ関スル報告拝誦、扨夫レニ付当殖民地トノ通商ハ従来益隆昌ニ可相成事ト確信致候ニ付、南濠貿易ニ関スル事項左ニ略述貴覧ニ供候、本社ハ日本ト当地ノ通商拡張致度所存ニ候間項目ヲ分チ左ニ開陳致候、之ニ対スル答書ヲ辱セハ幸甚ニ御坐候
先ツ第一ニ当地輸出品中重要ノモノニ就キ左ニ陳述致候
    南濠ヨリ輸出ノ物品
 - 第19巻 p.205 -ページ画像 
小麦
 小麦ハ当地輸出品中重要ノモノニ御座候、現今当殖民地ニテ耕作致候土地殆ント弐百五拾万「エーカー」ニ上リ品質ハ精良ニシテ常ニ声価宜敷候、本年当地農業地ハ凡テ膏雨ニ湿候得者秋獲ハ頗ル見込有之候、価格ハ勿論変動ヲ免レザルモノニ候得共今日積出ノ相場ハ「アデレード」港ニ於テ五志壱片ニ候、此品日本ニ向ケ積出ノ可否ハ承知不致候、此儀ニ付何ナリトモ御報道被下候ハヾ難有仕合ニ存候
羊毛
 羊毛モ亦当地輸出品中最モ主要ナルモノヽ一ニシテ当地産ノ品ハ世界ノ市場ニ於テ緊要ノ地位ヲ占居候、当地ノ羊毛ハ大半倫敦市場ニ輸送シ同地ニ於テ競売ニ附シ候得共、近来当所ニテ売却スル高漸次増加、十月ヨリ二月ニ至ル時季ノ如キハ購買者各国ヨリ来集致候、当市場ノ販売高其他詳細ノ事項御所望ニ候ハヾ御報道可申上候
銅 モ亦重要輸出品ノ一ニ候、当国ノ重立チタル鉱山即チ「ムンタ」「ワラロー」ノ二者ハ大抵印度並ニ倫敦ヘ輸送ノ結約致居候、近来価格大下落ノ為メ市場モ亦大ニ之レカ影響ヲ蒙候得共右二鉱去ル数年間不絶相当ノ利益配当致居候、市場ノ不定ハ仏人買占一件ノ落着迄ハ到底免レサル事ト存候、万一貴下ニ於テ市場価格定期報告御望ニ候ハヾ弊社ハ喜ンデ貴命ニ可応候、併シ目下市場不定ノ処ニテハ其価格四十磅乃至五十磅ニ御座候
葡萄酒 勿論御承知ノ通リ当地ヨリ数種ノ葡萄酒盛ニ輸出至居候《(致)》、当地葡萄酒製造業ハ近頃非常ノ進歩ヲナシ今日ニ至テハ最良ノ品製造罷在候、日本ヘ葡萄酒ヲ輸出スルハ如何可有之哉、御見込御報知ニ預リ候ハヾ幸ニ候
菓物並ニ「ジヤム」
 此二者就中「ジヤム」多量ニ輸出致候、当地産ノ「ジヤム」(砂糖水ト与ニ菓子ヲ煮タルモノ)ハ濠洲中ニテハ最良ノモノト存居候、南濠菓物モ亦声価高ク直航線開通相成候ハヽ菓物ノ輸出ハ余程増加可致事ト愚考仕候
オリーブ油 此品ノ輸出モ亦追日増加致居候
「ウヲツトル」樹皮 南濠ノ産出高頗ル夥多ニシテ柔皮《ナメシ》ノ用ニ供スル為メ取引多ク御坐候、目今ノ価十二磅乃至十三磅ニ候、御入用ニ候ハハ見本ニ説明書ヲ添ヘ御送附可申上候
袋獣ノ皮革 コレモ亦当殖民地ヨリ輸出スルモノ夥多ニ候、日本ト此品ノ交易ヲ開始スルハ弊社ノ希望ニ堪ヘサル処ニ御坐候
鉛 此品日本ニハ需用多カルヘシト致愚考候、当国有名ノ鉛礦ハ「ブロークン、ヒル」銀山ニ候、該会社ノ理事中ニハ弊社ト親密ノ関係アル者有之候得者貴国ノ為メ同社之鉛買入ノ事ニ関シ弊社ヨリ申遣候件々ハ何事ニテモ十分注意可致事ト存候、銀モ右同様ニ候、尤銀鉛トモ夥シク倫敦ヘ輸送致居候共、尚其得意ヲ増加スルハ同社ノ希望ニ堪ヘサル所ト確信仕候、此品輸出ノ得失ニ付御忠告ヲ辱セハ幸不過之候
日本ヨリノ輸出品
 日本ヨリ折々米ノ輸入有之、弊社ハ何時モ相当ノ価格ヲ以テ容易ニ
 - 第19巻 p.206 -ページ画像 
販売致居候、然ル処近頃売物過多ニシテ取引自ラ不振ヲ免レズ候、尚此品ニ付テハ次節ニ御報道可仕候、扨去ル数日間形入「シレシアス」並ニ「サチネツト」ノ販売依托相成候ニ付相当ノ利益ヲ以テ売却致度ト希望罷在候、弊社ハ日本ノ依托販売奨励ノ為メ可及丈尽力ノ積ニ候得者貴下ニ於テモ領事ノ資格ヲ以テ何品ヲ問ハス依托販売ノ増加可致様御尽力相成候ハ大慶ニ存候、又右之儀ニ付何ナリトモ御報道ニ預リ度候

 日本米ニ付テハ時々当地ニ於テ多夥ノ取引有之候得共目下貨物多キニ過キ価格十三磅迄ニ下落致候、弊社ニ於テハコハ全ク輸入ノ過剰ト米俵ノ大サニ付注意ノ足ラザルトニ起因スル事ト存候、但弊社ニハ自己ノ取引有之折々相当ノ代価ヲ以テ十噸乃至二十噸許販売致候近頃迄ハ市価一噸ニ付十五乃至十六磅之処前述ノ通十三磅ニ下落仕候、尚詳細ノ儀ハ別紙擬販売計算表ニ就テ御承知可被下候、該表ハ毎噸十三磅ノ割合ヲ以テ五十噸売却之計算ニ候
安全マツチ
 此品日本国ニテ製造致居候事ト存候、此迄数度少々ツヽ当市場ヘ相現候事有之候、抑小形安全マツチハ通常十二個ヲ一包ト致候得共、日本ノ分ハ十箱ノ様存候、扨此品ハ夏向ニ候得者目今冬季ニ向フ当地ニハ需用不多目下ノ相場ハ一志三片ニ有之候、弊社ノ口銭等御報申度別紙二十五函ノ擬計算書御送附申上候、弊社ノ見ル所ニテハ日本ニシテ運賃ノ点ニ於テ瑞典国ト競争スル事ヲ得レハ当殖民地ニ用フル一切ノ安全マツチハ之ヲ日本ニ仰クニ至ル事決シテ難カラサル事ト存候
砂糖
 砂糖モ亦重要貿易品ノ一ニシテ当国ニ於テ年々消費スル高一万四千噸ニ御坐候、此品ニ付テハ弊社特別ニ注意致居現ニ南濠市場ニ於テ「クインスランド」産砂糖ノ全権ヲ占ムルモノハ弊社ニシテ客年中弊社カ「クインスランド」ヨリ受ケタル総額三十噸ニ上リ候、扨日本ノ砂糖ハ輸出スルニ足ル程ノ産額有之哉否ハ弊社承知不仕候、願クハ此点ニ付御報道ヲ煩度又日本ニハ輸入砂糖ノ需用有之候哉是亦相伺度候、右ハ滊船直航線相開ケ候ハヽ弊社ニ於テ「クインスランド」産砂糖販売ノ依托ヲ受クル事ニ可相成ト存候故ニ相伺候儀ニ候
骨董品並ニ美術
 此種ノ貨物時々輸入有之、日本青銅造リノ品ハ当地ニ於テ非常ニ賞玩致、上流ノ家屋ニ之ヲ備フルモノ随分有之候、乍併此種ノ品ハ急速ニ販売スルニ不都合ナルモノニ候得者輸出ニ付テハ余程注意可有之儀ト存候、勿論当地ニハ需用有之候得共、一応弊社ヘ御相談之上ナラデハ積出不可然ト存候、弊社ハ御相談相成候ハヽ十分詳細ニ可申上候、当地ニ於テモ青銅品鑑定家ノ設置ニ係ル二三ノ展覧会様ノモノ有之、或社会ノ人々ハ頻ニ日本骨董品ヲ賞美致居候、此類ノ品ニ関シ詳細ノ儀御入用ニ候ハヽ早速可申上候也
依托販売ニ付テハ弊社格別ニ尽力致従来依托者ニハ何レモ満足ヲ与ヘ居候、コハ全ク弊社ニ於テハ我市場ニ適シ依托者ニ有利ノ見込アル
 - 第19巻 p.207 -ページ画像 
モノニアラサレハ積出ヲ勧メサルニ由ルモノニ候、併シ輸入者ニ向テ一応注意致置度事ハ当地人口ハ僅ニ三十二万内外ニテ「ウイクトリア」及「ニユー、サウス、ウエールス」ニ比スレハ販路自ラ狭隘ナル一事ニ御座候、然ル処当地ハ有名ナル「ブロークンヒル」銀山ノ地方トハ取引盛ニ有之候得者之レカ為メ当地物産ノ消費モ自ラ多ヲ加ヘ大ニ当地ノ利益ト相成居候
 扨弊社ハ日本人依托販売ノ増加ヲ希望致候得共、人気ニ適スル物品ニアラサレバ依托ヲ受クル事ヲ欲セス候ニ付、第一ニ日本商人カ当地ニ輸入セントスル品物ノ種類承知致度候、且ツ冀クハ此書翰貴国商務大臣ヘ御差出被下度候、左候テ重立チタル日本商賈ト直接ニ通信ヲナシ、其従事セント欲スル業務ニ関シ詳細ノ事情ヲ其人々エ報道致度候
前貸
 依托物品適当ノ品ニテ速ニ相当ノ価格ヲ以テ販売スルノ見込アルモノナラハ、十分貸付可致事宜ニヨリ披封信約状(Letter of Credit)ヲ差出ス事モ可有之候、乍去妄リニ為替振出ヲナスコトハ勿論謝絶致候、尤モ弊社ヨリ勧メタル貨物ニ付テハ其送状面金額ノ五割六割(物品ニシテ重要ノモノナレハ其以上)位ナラハ依托者ノ手形ニ対シ払出可致候
滊船航海ノ事
 日本特派委員ノ勧告ニヨリ或人ノ主張スル滊船直航ノ企図ニ付弊社ハ可及文尽力致度、且ツ弊社ハ代理人ノ任ヲ尽スニ恰当ト存候ニ付喜ンデ之ニ当リ度候、弊社ハ巨額ノ運賃ヲ左右スルノ力アリト存居候、兎ニ角殖民地間ノ商業ニ関シテハ「クインスランド」ト「アデレード」ノ間ニ於テ砂糖ノ一品ノミニテモ好時季ニ際シテハ少クトモ二千噸乃至三千噸ヲ滊船ニテ運漕スル事ヲ得ル儀ニ候、願クハ右直接航線ニハ政府ヨリ補助ヲナサルヽヤ否ヤ、及何レノ線路ニ定期航海ヲ開カルヽカニ付御報知被下度候、若シ当港ノ摸様ニ関シ御取調ノ廉有之候ハヽ詳細調査ノ上御報道可申上候
当地ノ前途
 当殖民地ノ前途ハ真ニ望多キ事ニ候、付テハ南濠ノ事情ニ関シ貴国政府ノ注意ヲ促サンカ為メ玆ニ四月廿五日発行ノ南濠統計表一冊御送附申上候、同書中ニ有之候商法会議所ノ年報御一覧相成候ハヽ当地将来非常ノ望アル事判然可致候
メルボルン
 弊社ハ貴府ニ於ケル弊社々長「ヂヨルヂ、ゴリン」氏ニ貴館訪問可致様申遣置候、且ツ弊社ノ意見ハ十分同氏ヘ通知致置候間玆ニ記載セサル事項ニシテ御承知相成度事ハ同氏ヨリ十分可申上ト存候
 弊社ノ地位信用ハ「オーストレリア」銀行又ハ南濠ノ重立チタル商賈(何人ヲ問ハス)ニ御問合可被下候
以上重要ノ項目ニ付簡短ニ陳述致候得共、貴国商人ノ輸出セントスル貨物ニ関シ何等御質問ノ廉ハ何時ニテモ御返答可仕候、就テハ此書状貴邦商務大臣ヘ御差出被下、且ツ貴下ノ御尽力相成事業ヲ成功セシムル為ニハ弊社ハ毫モ労ヲ辞セサル旨趣ヲ貴国当局官庁ヘ御通知被下度
 - 第19巻 p.208 -ページ画像 
右及御依頼候也 敬具
               アデレード、グレンフエルト街
  千八百八十九年五月一日
                      ゴリン商会
  メルボルン府リッツルゴリンス街四百二十七番
    日本領事ヱー、マルクス殿
    擬計算表
 横浜ヨリ滊船某号ヲ以テ回漕ノ米五拾噸「アレキサンドル、コルクス」氏ノ依嘱ニヨリ、同氏ノ責任ヲ以テ「グレンフエルト」街「ゴリン」商会之ヲ売却シタリト仮定シ其計算表ヲ製ス、即チ左ノ如シ
一金六百五拾磅   日本米五拾噸代価 但一噸ニ付金拾三磅
   内
  金百磅      運賃 但一噸ニ付四十志
  金百五拾磅    関税 但一「ハンドレットウエート」ニ付三志ノ割合ニテ千「ハンドレットウエート」ノ税金
  金七磅拾三志   入津料三志波止場費及上陸費七磅拾志
  金弐磅拾志    港費カンカン料等
  金拾弐磅拾志   港ヨリ鉄路賃並車費
  金拾六磅五志   六百五十磅ノ手形割引 但年七分五厘ノ割
  金三拾弐磅拾志  口銭 但六百五十磅ニ対スル五分
  金拾六磅五志   保証 但六百五十磅ニ対スル二分五厘
〆金三百三拾七磅拾三志
  差引残
    金三百拾弐磅七志            純収入
右之通ニ候也
                      南濠洲
  千八百八十九年五月一日                アデレード
 証書料・家賃並保険料ヲ課スルハ代価ノ騰貴ヲ待ンカ為メ貨物ヲ貯蔵スルトキニ限ル
    擬計算書
 横浜ヨリ滊船某号ヲ以テ「マツチ」二十五函回漕ニ付「アレキサンドル、マークス」氏ノ依嘱ニヨリ、同氏ノ責任ヲ以テ「グレンフエル」街「ゴリン」商会之ヲ売却スト仮定シ此計算表ヲ製ス
一金七拾八磅弐志六片 安全「マツチ」弐拾五函一函ニ付小箱五拾即合計千弐百五十小箱ノ代価但一小箱ニ付壱志三片
   内
  金拾九磅     運賃 但四十志替
  金七磅拾六志三片 関税 但七拾八磅弐志六片ノ一割
  金壱磅拾壱志六片 入津料三志波止場費上陸費二十八志六片
  金拾志      港費カンカン料等
  金弐磅七志六片  港ヨリ鉄路賃並車賃
  金壱磅拾九志壱片 七拾八磅二志六片手形割引 但七分五厘ノ割
  金三磅拾八志壱片 口銭代金之五分
  金壱磅拾九志壱片 保証料代金之二分五厘
〆金三拾九磅壱志六片
 差引残テ
  金三拾九磅壱志             純収入
 - 第19巻 p.209 -ページ画像 
                      南濠洲
  千八百八十九年五月一日                アデレード
 価格ノ騰貴ヲ待タン為メ貨物ヲ貯蔵スル場合ニハ保証料・家賃・火災保険料ヲ要ス、但其時々最低率ニ依ル
    擬計算書
 横浜ヨリ滊船某号ヲ以テ回漕ノ砂糖五拾噸「アレキサンドル、マークス」氏ノ依嘱ニヨリ、同氏ノ責任ヲ以テ「グレンフエル」街「ゴリン」商会之ヲ売却シタリト仮定シ此計算表ヲ製ス
一金千四百磅  白砂糖五拾噸代価 但二十八磅替
   内
  金百磅      運賃 但一噸ニ付四十志
  金百五拾磅    関税 一「ハンドレットウエート」ニ付三志ノ割ヲ以テ千「ハンドレットウエート」ノ税金
  金七磅拾三志   入津料三志波止場費上陸費七磅拾志
  金弐磅拾志    港費カンカン料等
  金拾弐磅拾志   港ヨリ鉄路運賃並車賃
  金三拾五磅    千四百磅手形割引 但手形七分五厘ノ割
  金七拾磅     口銭並保証料 但千四百磅ノ五分
〆金三百七拾七磅拾三志
 差引残テ
  金壱千弐拾弐磅七志        純収入
右之通候也
                 南濠洲
  千八百八十九年五月一日         アデレード
代価ノ騰貴ヲ待ツカ為メ貨物ヲ貯蔵スル場合ニハ証書料・家賃並保険料ヲ要ス、但其時々最低ノ率ニ依ル
(第六号)
先般濠洲アデレード・ゴリン商会ヨリ日濠通商貿易拡張ノ件ニ関シ書面ヲ以テ申立候事項ニ就キ本会ノ意見御諮問相成候ニ付其後篤ト審案仕候処、右日濠間貿易ノ儀ハ何分未ダ幼稚ニシテ彼我ノ情況モ明晰ナラザル所有之候ニ付、右書面ニ記載スル所ヲ以テ直ニ之ニ相応シ候者ハ無カルベシト存候、尤モ強テ相索メ候ヘバ右等ノ貿易ニ相応ジ候者大坂ニハ多小有之可申哉ト存候得共、東京ニテハ先ヅ三井物産会社及大倉組ノ外ニハ有之間敷ト存候、併シ右両会社トテモ単ニ領事ノ添書ノミヲ以テ直ニゴリン商会ヲ信ジ候訳ニモ相成申間敷、数度直接ニ往復ヲ重ネ候上ナラデハ通商相開キ候事モ如何ト被存候、但シ大倉組ノ方ハ過般濠洲ノ実況視察ノ為メ社員一名ヲ派遣為致候趣ニ付、彼地ニ於テ領事館ヘ罷出候節或ハ引合談合モ可致歟トモ存候得共、是亦大倉組ノ意見ニ依リ他ニ取引先相定メ候哉モ難測兎ニ角只一通ノ書面ニ記載スル所ヲ見実況相悉シ候ハ頗ル難事ニ付直ニ取引相開キ候事ニモ立到リ申間敷ト存候、併シ前陳申立ノ件ハ折角ノ希望ナレバ書面所載ノ貨物ニ就キ一々本会ノ見込ヲ附シ左ニ陳述仕候
一小麦
 本品ハ日本農産物ノ一ニシテ通常内地ノ需用ニハ充分相応ジ尚ホ多少清国南部ヘ向ケ輸出モ致候位ニ有之候ヘバ到底輸入ノ見込無之候
 - 第19巻 p.210 -ページ画像 
尤モ食麺麭製造ニハ外邦産ノ方風味宜敷趣ヲ以テ多少ノ輸入有之候得共、右等ハ通常一般ニ需用スル所ニアラズシテ只一局部ノ需用ニ過キズ、随テ其高ノ如キモ甚ダ少ク現ニ去ル二十一年中ノ輸入高ハ百〇七万四千四百九十五斤ニシテ此代金壱万六千百三拾四円余ニ過ギザル儀ニ付、要スルニ本品ハ将来ノ望無之モノト存候
一羊毛
 本品ハ千住製絨所ノ建設アリテ以来漸次需用ノ途モ相開ケ、昨年ノ如キハ八拾六万六千三百五十六斤ノ輸入有之、此代金弐拾四万五千三百〇八円余ニ相達シ候、右ハ近来清国北部ヨリモ少シク輸入有之候得共、多クハ先ヅ濠洲産ヲ相待チテ需用ニ充テ候儀ニ付、我国ニ於テ将来漸々需用ノ途開クルニ於テハ追々望可有之ト存候、然レトモ目今ノ処ハ単ニ千住製絨所ノ需用ニ止リ候事故何分確タル一商売トハ目シ難ク、今後尚ホ製帽事業若クハ毛糸事業ノ進ムニ従ヒ漸次相応ノ商売ト相成可申候ニ付、右ハ代価積書ニ添ユルニ見本ノ送付ヲ以テセバ将来ノ見込ハ可有之ト存候
一銅
 本品ハ我国鉱産物ノ一ニシテ現ニ外国ヘ輸出モ相応ニ有之候程ニ付到底輸入ノ望ハ無之候
一葡萄酒
 本品ハ濠洲産如何ニ善良ナル哉詳知不致候得共、目今ノ処ハ兎ニ角仏国製ニアラザレバ我ガ国ノ嗜好ニ適セザルノ景況ニ付是亦輸入ノ望ハ無之候
一菓物並ニ「ジヤム」
 本品ハ我国一般ノ日常需用品ニ無之、殊ニ大概ノ菓物ハ已ニ我国ニ産シ候間、到底面白キ結果ハ有之間敷ト存候、尤モ右ハ先ヅ見本トシテ一二年間多少ヲ送リ越シ其売行ノ実況ヲ見ザレバ、何共確定難致候
一オリーブ油
 本品ハ目下ノ処我国ノ需用ハ甚ダ多カラス現ニ去ル二十一年中ノ輸入代価ハ一万二千百円ニ過ギズ、然レトモ若シ我国ニ於テ今後追々サーデンノ製造相開ケ候ニ於テハ追々需用モ相増可申ト存候間、代価積書並ニ見本ヲ送附アリテハ如何ト存候
一ウヲツトル樹皮並ニ袋獣ノ皮革
 此品々ハ我国ニ於テハ目下到底望無之候
一鉛
 本品モ我ガ鉱産物ノ一ニシテ多少ノ輸入ハ有之候得共、本邦産ヲ以テ先ヅ需用ニ応ジ候次第ニ付輸入ノ望無之候
一米
 日本米ハ既ニ濠洲トノ商売開ケ居リ現ニ千二百四十万英斤位ハ横浜神戸ニ於ケル外商ノ手ニテ年々輸出致居候得共、濠洲ニ於テハ精米会所僅ニ二三ケ所ニ止マリ候ヲ以テ玄米ヲ輸出スル時ハ彼ノ精米会所ハ容易ニ聯合シテ之ヲ廉買セントスルノ恐アリ、故ニ濠洲ヘノ輸出ハ是非共白米ヲ要シ申候、尤漸次此商業ハ増進致スベシト存候、現今本邦東京ニ於ケル白米ノ相場ハ英百斤ニ付凡弐円五拾銭(袋入
 - 第19巻 p.211 -ページ画像 
ニシテ船乗直段)位ニ有之候
一安全マツチ
 本品ハ近年本邦ニ於テ続々之ガ製造ヲ為スヲ以テ濠洲ニ於テ販途ヲ拡ムルヲ得バ頗ル好望アルベシト存候、目下当地ノ原価ハ六百打入壱箱(但壱箱ハ十二個入)金拾壱円五拾銭ニ有之、之ヲ輸出スルニハ外ニ税金五分此金五拾七銭五厘・荷造費金三円・積込入費金五拾銭ノ費用相掛リ可申候間、壱箱拾五円五拾七銭五厘ヲ以テ横浜船乗直段ト相成リ壱打入壱箱ハ弐銭六厘ニ相当致候間、本品ニシテ販途ヲ開クヲ得バ後来大ニ望ヲ属スベキモノニ有之候
一砂糖
 本品ハ我国ノ需要モ広ク販途広大ニ有之、本邦ノ産出有之候ニ拘ラズ年々外国産ノ輸入アリ、現ニ去ル二十一年中ノ如キモ赤糖七千二百拾五万七千三百五拾九斤、此代金弐百四拾弐万八千六百〇八円余白糖七千弐百弐拾六万八千弐百二十一斤、此代金四百四拾弐万弐千九百三拾円余ノ輸入有之候得共、是ハ悉皆比立賓群島並台湾産ノ占ムル所ト相成リ居候得バ、濠洲産ニシテ其売価非常ニ低廉ナルニアラザレバ到底輸入ハ見込無之候
一骨董品並ニ美術品
 此品々ハ土地風俗ノ情況ヲ詳カニセザレバ見解相付不申候
一依托販売
 前諸物品ニ付一々陳述致候通リノ次第ニ付、先方ニ於テ仮令如何程依托販売ヲ親切ニ引受呉レ候トモ今日彼我商人相往来シテ情況ヲ詳カニセザレバ到底依托スベキ訳ニモ至ル間敷、可相成ハ先ヅ商人ノ往来ヲシテ益々頻繁ナラシムルノ手段ヲ施シ度ト存候
一滊船航海ノ事
 滊船直航ノ事ニ就テハ本会ニ於テハ未ダ聞込候事無之通商ノ実況今日ノ如ク寥々タル有様ナル以上ハ別段滊船ノ直航ヲ開キ候事ニハ到ラザルベシト存候間此事ハ恐ラクハ其実施ヲ望ミ難カルベシト存候
右御諮問ニ拠リ逐条本会ノ意見ヲ付シ答申仕候也
  明治二十三年一月二十日    東京商工会々頭
                      渋沢栄一
  農商務省商務局長
    斎藤修一郎殿