デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.2.19

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
2款 東京商工会
■綱文

第19巻 p.466-505(DK190061k) ページ画像

明治24年9月21日(1891年)

是日栄一、当会残務整理委員総代トシテ商法修正意見書ヲ司法大臣子爵田中不二麻呂・農商務大臣陸奥宗光ニ上呈シ、十月二日貴衆両院ニ提出ス。


■資料

東京商工会々外諸向往復文書 第四号(DK190061k-0001)
第19巻 p.466-491 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 第四号
                   (東京商工会議所所蔵)
(案)              栄一    《(萩原)》
元東京商工会ニ於テ昨年以来委員ヲ設ケ商法修正ノ意見書調査中ノ処
 - 第19巻 p.467 -ページ画像 
今般右委員ヨリ其調査ノ結果ヲ別冊ノ通リ報告致候ニ付、其謄本一部上呈仕候、御参考ノ一助トモ相成候ハヽ光栄ニ存候、此段別冊相添上陳仕候也
  明治二十四年九月二十一日 東京商工会残務整理委員総代
                      渋沢栄一
    司法大臣 子爵 田中不二麻呂殿
                     (各通)
    農商務大臣   陸奥宗光殿
                栄一
昨年十二月本員等ハ特ニ商法修正意見書ノ調査ヲ委托セラレタルニ付爾来逐条ニ就キ研究ヲ遂グル事殆ド九ケ月余、此間或ハ学理ニ鑑ミ或ハ実際ニ徴シ其修正ヲ要スベキ条項ヲ別冊ノ通リ調成シタルニ付、玆ニ之ヲ貴下ニ呈シ候、蓋シ新定商法中ニハ我慣習ニ支吾スルノ用語頗ル多ク、随テ其文義硬渋ニシテ了解ニ苦シムノ条項一ニシテ足ラズ、今若シ其修正ヲ要スベキ廉々ヲ尽ク細示スル時ハ甚ダ煩苛ニ失スルノ憾アリ、是ヲ以テ別冊ニ掲グル所ハヤヽ其重要ナルモノニ止メ苟モ実地ニ甚シキ害ナシト認ムルモノハ勉メテ之ヲ省略致候、又毎条ニ附記スル説明書ノ如キハ研究ノ際ニ当リ備考ノ為メ修正ノ要旨ヲ略叙シタルモノニシテ、其行文ニ至リテモ未ダ尽サヾルノ憾有之候得共、参考上多少ノ便利可有之存候ニ付、暫ク原稿ノ儘之ヲ附記致候、先ハ此段別冊相添及御報告候也
  明治二十四年九月十六日       委員
                     奥三郎兵衛
                     渡部温
                     吉川泰二郎
                     山中隣之助
                     大倉喜八郎
                     益田克徳
                     林賢徳
                     梅浦精一
                     阿部泰蔵
  東京商工会残務整理委員総代
     渋沢栄一殿
(別冊)
    原文
第一条 商事ニ於テ本法ニ規定ナキモノニ付テハ商慣習及ヒ民法ノ成規ヲ適用ス
    修正文
第一条 商事ニ於テ本法ニ規定ナキモノニ付テハ商慣習ヲ適用シ、若シ商慣習ナキ時ハ民法ノ成規ヲ適用ス
  本条中商慣習及民法ノ成規ヲ適用ストアリテ其適用ノ順序ヲ規定セサルカ故ニ若シ商慣習ト民法ノ成規ト並ヒ存スル時ハ何レヲ適用スヘキカ明了ナラス、蓋シ法律ニ反スルノ慣習ハ法律之ヲ以テ慣習ト認メサルカ故ニ之ヲ適用スヘカラサルハ勿論ナルヘシ、然リト雖トモ商慣習ト民法ノ成規ト並ヒ存シテ然モ其成規ハ右商慣
 - 第19巻 p.468 -ページ画像 
習ヲ禁セサル場合尠ナカラス、如斯場合ニ於テハ主トシテ商慣習ヲ適用セサルヘカラス、想フニ立法者ノ精神モ亦此ノ如クナルヘシト雖トモ行文上ヨリ見ルトキハ商慣習存スル時ト雖トモ又常ニ民法ヲ適用スルカ如クニ思ハル、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第十四条 夫婦ノ一方カ商ヲ為シ、夫婦間ニ財産共通ヲ為サヽルトキ又ハ之ヲ解キタルトキハ商業登記簿ニ登記ヲ受クル為メ其事実ヲ管轄裁判所ニ届出ツルコトヲ要ス
 夫婦ハ共ニ同一商事会社ノ無限責任社員タルコトヲ得ス
    修正文
第十四条 夫婦ノ一方カ商ヲ為シ、夫婦間ニ財産共通ヲ為サヽルトキ又ハ之ヲ解キタルトキハ商業登記簿ニ登記ヲ受クル為メ其事実ヲ管轄裁判所ニ届出ツルコトヲ要ス
 夫婦ハ財産共通ヲ為ス時ハ共ニ同一商事会社ノ無限責任社員タルコトヲ得ス
  夫婦カ財産共通ヲ為サヽルトキハ共ニ同一商事会社ノ無限責任社員タラシムルモ夫婦各々特別ノ財産ヲ有スルヲ以テ一個ノ財団ヲ以テ二個ノ権利ヲ有スルカ如キ不都合ナシ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
第一編第三章(自第二十三条至第三十条)商号
第三章即チ第二十三条ヨリ第三十条ニ至ル商号ニ関スル規定ハ全ク之ヲ削除スルヲ要ス
  第一 本章ノ規定ハ実施スルノ必要ナシ
  現今各商人ノ使用スル商号ハ何屋何堂若クハ何軒ト云フカ如ク其種類一ニシテ足ラスト雖トモ、要スルニ同種ノ商業ヲ営ム者ニシテ同一ノ商号ヲ使用スルノ例甚タ多ク、現ニ彼ノ呉服商ノ越後屋太物商ノ近江屋、質商ノ尾張屋・佐野屋ノ類ニ至リテハ同業者各個ヲ区別スル為メノ特称タルヨリハ、寧ロ其商業ノ種類ヲ区別スル為メ殆ト同業者ニ通用スルノ総称タルカ如キ景況アリ、是蓋シ従来大賈巨商ニハ暖簾ヲ与フルト称シ雇人ガ多年誠実ニ勤続スルニ当リ主人ヨリ之ニ資本ヲ分与シ、己ト同一ナル商号ヲ称セシムルノ慣例アリテ自ラ此現況ヲ馴致シタルモノナルヘシ、而シテ此等商号ノ中ニハ各商人カ頼リテ以テ其営業上ノ信用ヲ維持スル為メニ必要ナルモノモ亦固ヨリ少ナカラサルヘシト雖トモ、若シ偶偶其商号ノ同一ナル為メ同業者互ニ不便ヲ感スル事アレハ之ニ其住地・名字若クハ附号ヲ加ヘテ適宜ニ之ヲ区別スルノ便法アレハ今日同業者中同一ノ商号ヲ使用スル者多キモ実際商売上ニ於テ甚シキ差閊ヲ生スル事ナシ、蓋シ時トシテ故意ニ他人ノ商号ヲ濫用シテ自己ノ利益ヲ図ラントスル者全ク無キニアラスト雖トモ斯ノ如キ実例ハ稀ニ見ル所ニシテ未タ以テ一般ニ此規定ヲ実施スルノ必要ヲ促カスニ足ラズ、況ンヤ此等特別ノ場合ニ於テハ此規定ニヨラサルモ他ニ之ヲ救護スルノ道ナキニアラサルニ於テオヤ、是本章ノ規定ヲ以テ実施スルノ必要ナシト信スル所以ナリ
   第二 本章ノ規定ヲ実施スル時ハ商人ノ徳義心ヲ破壊シ却テ目
 - 第19巻 p.469 -ページ画像 
的外ノ結果ヲ生スルノ懸念アリ
  案スルニ本章規定ノ目的トスル所ハ他人ノ商号ヲ濫用スルノ弊ヲ防キ以テ使用本主ノ利益ヲ保護スルニ在ルヘシ、然リト雖トモ今若シ此規定ヲ実施スル時ハ果シテ其目的ヲ達シ得ヘキヤ否ヤ、単ニ其目的ヲ達シ難キノミナラス或ハ却テ反対ノ結果ヲ生スル事ナキヤヲ懸念スルナリ、蓋シ今日同種ノ商業ヲ営ム者ニシテ同一ノ商号ヲ使用スル者甚タ多キニモ拘ラス実際ニ於テ故意ニ他人ノ商号ヲ濫用シテ其利益ヲ害セン事ヲ図ル者極メテ少ナキ者ハ、畢竟スルニ各商人ニ徳義心アリテ自ラ此等ノ所為ヲ制止スルカ為メナルヘシ、然ルニ今此規定ヲ実施シテ本章第二十六条ニアルカ如ク「商号ハ登記ニ因リ同一営業ニ就キ一地域内ニ於テ其専有ノ権利ヲ取得シ他人之ヲ用ユル事ヲ得ス」ト定ムルトキハ是恰モ同一ノ商業ヲ営ム者ニ向ヒ同地域内ニ在ラザル時ハ、何人ノ使用スル商号ト雖トモ随意ニ之ヲ使用スル事ヲ得ル旨ヲ公許スルト同一ナルニ付、之ガ為メ従来各商人中ニ成立セル徳義心ヲ破壊シ之ヲシテ法律ノ許ス範囲内ニ於テ他人ノ商号ヲ濫用シ以テ其利益ヲ害セントスルノ情念ヲ発生セシメ、結局却テ其使用本主ノ危険ヲ増スノ恐ナキカ、例ヘハ甲ガ芝ノ高輪(地域内)ニテ万青ト称シ料理業ヲ営ムニ当リ、乙カ僅ニ数丁ヲ隔ツル品川(地域外)ニテ同一ノ商号ヲ称シ甲ト同種ノ商業ヲ営ム事アリトセンニ、此等ノ場合ニ於テ甲ナル使用本主ハ乙ナル同業者ノ為メ実地ノ損害ヲ受クル事アリトスルモ如何セン、此所為タル恰モ法律面ニ於テ公許スル所ナルヲ以テ甲ナル被害者ハ乙ナル加害者ニ向テ損害ノ賠償ヲ要求スル事ヲ得サルヘシ、果シテ然ルトキハ甲ノ地位ニ立ツ者ハ仮令表面ニ於テハ其商号ノ専用ヲ保護セラルヽトスルモ、実際ニ於テハ之カ為メ却テ奸商ニ向テ適々己レニ加害スルノ釁隙ヲ与フルモノト謂ハサルヘカラス、是本章ノ規定ヲ実施スルトキハ商人ノ徳義心ヲ破壊シ却テ目的外ノ結果ヲ生スルノ懸念アリト信スル所以ナリ
    原文
第三十二条 各商人ハ開業ノ時及ヒ爾後毎年初ノ三ケ月内ニ又合資会社及ヒ株式会社ハ開業ノ時及ヒ毎事業年度ノ終ニ於テ動産・不動産ノ総目録及ヒ貸方借方ノ対照表ヲ作リ、特ニ設ケタル帳簿ニ記入シテ署名スル責アリ
 財産目録及ヒ貸借対照表ヲ作ルニハ総テノ商品・債権及ヒ其他総テノ財産ニ当時ノ相場又ハ市場価直ヲ附ス、弁償ヲ得ルコトノ確ナラサル債権ニ付テハ其推知シ得ヘキ損失額ヲ控除シテ之ヲ記載シ、又到底損失ニ帰スヘキ債権ハ全ク之ヲ記載セス
    修正文
第三十二条 各商人ハ開業ノ時及ヒ爾後毎年一度一定ノ月ニ又合資会社及株式会社ハ開業ノ時及ヒ毎事業年度ノ終ニ於テ動産・不動産ノ総目録及ヒ貸方借方ノ対照表ヲ作リ、特ニ設ケタル帳簿ニ記入シテ署名スル責アリ
 財産目録及ヒ貸借対照表ヲ作ルニハ総テノ商品・債権及ヒ其他総テ
 - 第19巻 p.470 -ページ画像 
ノ財産ニ当時ノ相場又ハ市場価直ヲ附ス、到底損失ニ帰ス可キ債権ハ全ク之ヲ記載セス
  本条ニ拠レハ各商人ハ開業ノ時及毎年一月ヨリ三月迄ニ財産目録ヲ作ラサルヲ得ス、然ルニ商売ノ種類ニヨリテハ斯ノ如ク其時限ヲ定メラルヽヲ不便トスル者アリ、故ニ其時限ハ本条ノ如ク一月ヨリ三月迄ト云フカ如ク之ヲ定メスシテ単ニ毎年一度トシ各商人ヲシテ一年ノ中何月ニ於テモ毎年一定ノ月ニ於テ自由ニ之ヲ作ル事ヲ得セシメタシ、又本条ニ拠レハ財産目録及貸借対照表ニ掲クヘキ債権ニシテ弁償ノ確ナラサルモノハ其推知シ得ヘキ損失額ヲ控除シテ之ヲ記載セサルヲ得ザル訳ナリ、蓋シ到底損失ニ帰スベキ債権ハ全ク之ヲ記載セサルモ固ヨリ妨ケナシト雖トモ、弁償ノ確ナラサルモノヽ損失額ヲ推知シ之ヲ控除シテ目録及表ニ掲クル時ハ之ニ応シテ帳簿ヲモ引直サヽルヲ得ス、而シテ若シ之ヲ引直サヽル時ハ目録及表ト帳簿ト符合セスシテ大ナル不都合ヲ生スヘシ、又従来ノ慣習ニ拠レハ総テ債権ハ之ヲ帳簿ニ記載シ置キ愈々其損失ニ帰スヘキヲ待テ始メテ之ヲ控除スル訳ニテ本条ノ如ク予メ帳簿ヨリ控除スルハ甚タ不都合ナリ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第四十九条(第二項) 相手方ニ於テ代務委任ノ欠欠ヲ知テ為シタル取引ハ双方ニ在テ無効タリ
    修正文
第四十九条(第二項) 相手方ニ於テ代務委任ノ欠欠ヲ知テ為シタル取引ハ商業主人ニ対シテ無効タリ
  相手方ニ於テ代務委任ノ欠欠ヲ知テ為シタル取引ト雖トモ当事者間ニ在テハ双方之ヲ知了シテ結ヒタルモノニシテ、相手方ハ代務者其人ヲ目的トシテ取引シタル者ナレハ商業主人ニ対シテハ無効ナルモ当事者間双方ニ於テハ有効ナル事無論ナリ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第五十二条 商業使用人カ商業主人ノ為メニ店舗・倉庫及ヒ其他ノ営業場ニ於テ或ル業務ヲ弁スルトキ又ハ他所ニ送遣セラルヽトキ、又ハ帳場ニ於テ第三者ト取引ヲ為スニ際シ主人ヨリ制止セラレス若クハ第三者ノ問ヲ受ケテ己レ之ヲ為ス権アリト答ヘタルトキハ殊ニ其職分ノ範囲ニ付キ置カレタルモノト看做サル
    修正文
第五十二条 商業使用人ガ商業主人ノ為メニ店舗・倉庫及ヒ其他ノ営業場ニ於テ或ル業務ヲ弁スルトキ又ハ他所ニ送遣セラルヽトキ、又ハ帳場ニ於テ第三者ト取引ヲ為スニ際シ主人ヨリ制止セラレサル時ハ殊ニ其職分ノ範囲ニ付キ置カレタルモノト看做サル
  商業使用人カ第三者ト取引ヲ為スニ際シ主人ヨリ制止セラレサル時ノ如キ殊ニ其職分ノ範囲内ニ付置カレタルモノト看做サルヽ事ハ当然ナルヘシト雖トモ、第三者ノ問ヲ受ケテ己レ之ヲ為ス権アリト答ヘタル時モ前同様ニ看做サルヽトスルトキハ或ハ其答ヘタ
 - 第19巻 p.471 -ページ画像 
ル後ハ主人ハ制止スル事能ハストノ解釈ヲ生スルノ憂ナシトセス若シ又此ノ如キ意ニアラストセハ「第三者ノ問ヲ受ケテ己レ之ヲ為ス権アリト答ヘタル時」ノ事ハ寧ロ「主人ヨリ制止セラレサル時」ノ中ニ自然包含セラルヘキモノニシテ、要スルニ此等ノ文字ハ不用ナリト云ハサルヲ得ス、是前陳ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第六十三条(第二号) 自己ノ計算又ハ第三者ノ計算ニテ取引ヲ為シタルトキ但些少ノ取引ハ此限ニ在ラス
    修正文
第六十三条(第二号) 自己ノ計算又ハ第三者ノ計算ニテ取引ヲ為シタルトキ
  本条第二号中「但些少ノ取引ハ此限ニアラス」トアレトモ些少ノ分量ヲ見分クルハ甚タ困難ナルノミナラス些少ノ取引ト雖トモ法文ヲ以テ之ヲ明許スルハ至当ノ事ト云フヘカラズ、是前陳ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第六十五条 雇傭契約ハ商業主人ノ死亡ニ因リテ終ラス、然レトモ商業使用人ノ雇入レラレタル其営業ノ廃止ニ因リテ終ル、但其営業ヲ他人ニ移サントスルトキハ第五十九条ニ従ヒ双方予告ノ推利ヲ有ス
    修正文
第六十五条 雇傭契約ハ商業使用人ノ雇入レラレタル其営業ノ廃止ニ因リテ終ル、但其営業ヲ他人ニ移サントスルトキハ第五十九条ニ従ヒ双方予告ノ権利ヲ有ス
  我国従来ノ慣習ニ依レハ商業主人死亡シタル場合ニ於テモ番頭小僧ハ引続キ新主人ニ仕フヲ常トスルト雖トモ、是前主人ト商業使用人間ノ雇傭契約カ主人ノ死亡ニ依テ終ラサルカ故ニハアラス、全ク其死亡ト共ニ終リタルニハ相違ナキモ使用人カ新主人ニ引続キ雇傭セラルハ則チ暗然《(黙)》ノ中ニ新主人ト雇傭ノ契約ヲ結ヒタル者ナレハ、今本条ニ対シ前陳ノ修正ヲ加フルモ決シテ我国在来ノ慣習ヲ破ルノ結果ヲ生セサルノミナラス、若シ斯ク修正ヲ加ヘサル時ハ単ニ前主人ヲ信シ之ニ使用セラレタル使用人ヲ強テ新主人ニ仕ヘシムルノ不都合ヲ生ズベク、之ト等シク新主人ニ於テモ前主人ノ使用人ヲ己レノ意ニ反シテ使用セサルベカラザルノ不都合ヲ生スヘシ、是前陳ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第七十四条 二人以上七人以下共通ノ計算ヲ以テ商業ヲ営ム為メ金銭又ハ有価物又ハ労力ヲ出資ト為シテ共有資本ヲ組成シ、責任其出資ニ止マラサルモノヲ合名会社ト為ス
    修正文
第七十四条 二人以上七人以下共通ノ計算ヲ以テ商業ヲ営ム為メ金銭又ハ有価物又ハ労力ヲ出資ト為シテ共有資本ヲ組成シ、責任無限ナルモノヲ合名会社ト為ス
  本条中責任其出資ニ止マラサルトキハ所謂無限責任ヲ指スモノナルカ、又ハ責任其出資ニ止マラズシテ各社員カ所有スル財産ノ幾
 - 第19巻 p.472 -ページ画像 
分ニ及フモノヲ指スモノナルカ、蓋シ法文ノ精神ニ拠レハ必スヤ所謂無限責任ヲ指スモノナルヘシト雖トモ、文面上ヨリ見ル時ハ其意義不分明ニシテ惑ヲ生シ易シ、是前陳ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第七十五条 商号ニハ総社員又ハ其一人若クハ数人ノ氏ヲ用ヰ之ニ会社ナル文字ヲ附ス可シ
    修正文
第七十五条 商号ニハ総社員又ハ其一人若クハ数人ノ氏ヲ用ヰ之ニ合名会社ナル文字ヲ附ス可シ
  商法施行条例第八条第二項ニ既設会社ノ商号ニハ其会社ノ種類ニ従ヒ合名会社・合資会社又ハ株式会社ノ文字ヲ附スヘシトアリ、左レハ本条合名会社ノ商号ニハ合名会社ナル文字ヲ附スルヲ適当ナリトス、是前陳ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第八十一条 会社ハ登記前ニ開業スルコトヲ得ス、之ニ違フトキハ裁判所ノ命令ヲ以テ其営業ヲ差止ム、但其命令ニ対シテ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第八十二条 会社其登記ノ日ヨリ六ケ月内ニ開業セザルトキハ其登記及公告ハ無効タリ
    修正文
第八十一条 会社ハ登記前ニ事業ニ着手スルコトヲ得ス、之ニ違フトキハ裁判所ノ命令ヲ以テ其営業ヲ差止ム、但其命令ニ対シテ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第八十二条 会社其登記ノ日ヨリ六ケ月内ニ事業ニ着手セサルトキハ其登記及ヒ公告ハ無効タリ
  第八十一条及第八十二条中ニ各々「開業」ノ文字アリ、抑モ此開業トハ是迄慣用セラルヽカ如ク営業開始ノ意カ、或ハ事業着手ノ意カ、若シ前解ノ如クナランカ第八十二条ノ場合ノ如キ大ニ実際ニ不都合アリ、蓋シ普通ノ工業特ニ鉄道事業ヲ経営スル会社ノ如キハ其機械ヲ外国ニ注文シテ之ヲ接手スル迄少クモ六ケ月若クハ其以上ヲ要スルニ付、登記後六ケ月内ニ営業ヲ開始スルハ実地為シ得サル所ナリ、想フニ前記両条中ニアル開業ノ文字ハ総テ工事ノ着手ヲ意味スルモノナルヘシト雖トモ、字面ヨリ見ル時ハ営業開始ヲ意味スルカ如ク思ハレ甚タ不都合ナリ、是前陳ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第九十五条 社員其負担シタル出資ヲ差入レサルトキハ会社ハ之ヲ除名スルト年百分ノ七ノ利息ヲ払ハシムルトヲ択ミ、尚ホ其孰レノ場合ニ於テモ損害賠償ヲ求ムルコトヲ得
    修正文
第九十五条 社員其負担シタル出資ヲ差入レサルトキハ会社ハ之ヲ除名スルト年百分ノ十若クハ契約上ノ利息ヲ払ハシムルトヲ択ミ、尚ホ其孰レノ場合ニ於テモ損害賠償ヲ求ムルコトヲ得
 - 第19巻 p.473 -ページ画像 
  本法中第九十五条・第百一条・第百三条・第二百十三条・第三百三十四条等ニ於テ年百分ノ七ノ利息ナル文字アリ、蓋シ此等ノ利息ハ多クハ違約ヲ防クノ場合ニ用ユルモノニ付、普通利息ノ割合ヨリ高カラサル時ハ以テ其効ヲ致スヲ得ス、現今普通ノ利息ハ多クハ百分ノ十ヨリ下ル事稀ニシテ是従来各会社カ株金払込延滞ニ課スル利息ヲ日歩三銭(年百分ノ一〇・八)乃至五銭(百分ノ一八)位ニ定ムルヲ例トスル所以ナリ、由是観之前記各条中百分ノ七ノ利息ハ普通ノ利息ト権衡ヲ得サルニ付、総テ之ヲ百分ノ十ト改メン事ヲ望ム、蓋シ第三百三十四条ヲ案スルニ本法百分ノ七ノ利息ハ別段契約ナキ時ニ限ルカ如シト雖トモ、本条ノ文面上ヨリ見ルトキハ別段契約アル時ト雖トモ、百分ノ七以上ノ利息ヲ課スル事ヲ得サルモノヽ如シ、是実業者ノ最モ困難トスル所ナルニ付、本条ニ前記ノ修正ヲ加ヘ契約ヲ以テ別段ニ利息ノ割合ヲ定ムル時ハ随意ノ利息ヲ課スル事ヲ得ルノ意ヲ明ニシタシ、或ハ利息ハ仮令百分ノ七トスルモ損害賠償ヲ求ムル事ヲ得ルノ明文アルニ付原文ノマヽニテモ差閊ナシト論スル者モアルヘシト雖トモ、損害ヲ賠償スルニハ面倒ナル手数アリテ機敏ヲ尚フ商人ハ已ムヲ得ザルニアラサレハ可成之ヲ避クルノ情アリ、故ニ此損害賠償ノ方法タル実際ニ於テハ之ニ依リテ充分其利益ヲ保護スルヲ得ス、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第九十八条(第二項) 社員ノ相続人又ハ承継人ハ契約ニ於テ反対ノ明示セサルトキハ其社員ノ地位ニ代ハルコトヲ得、但総社員ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ業務ヲ担当スル権利ナシ
    修正文
第九十八条(第二項) 相続人ハ社員タル能ハス、但総社員ノ承諾ヲ得レハ可ナリ
  相続人ト雖トモ他人ナレハ総社員ノ承諾ナクシテ入社スルヲ得ス是合名会社ハ財産上ヨリハ寧ロ信用上ノ関係ヲ有スルカ為メナリ又本条ニハ相続人ハ入社スルヲ得レトモ総社員ノ承諾ナケレハ事務ヲ担当スルヲ得ストアリ、夫レ業務担当ノ権利ナキ者ニシテ社員タルヲ得ルト云フハ豈甚タ不都合ナルニアラスヤ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第百十二条 会社ノ義務ニ付テハ先ツ会社財産之ヲ負担シ、次ニ各社員其全財産ヲ以テ不分ニテ之ヲ負担ス
    修正文
第百十二条 会社ノ義務ニ付テハ先ツ会社財産之ヲ負担シ、次ニ各社員其全財産ヲ以テ不分ニテ之ヲ負担ス、然レトモ社員ノ債権者ハ社員ノ財産ニ付テハ優先権ヲ有ス
  合名会社ハ無限責任ナルヲ以テ会社ノ財産其負債ヲ弁償スルニ足ラサル時ハ社員ハ各自ノ財産ヲ以テ之カ弁償ノ用ニ充テサルヘカラス、今玆ニ一ノ合名会社破産シタリトセンニ本条ノ規定ニ因リテ先ツ会社ノ財産ヲ以テ負債ノ償却ヲナシ、其足ラサル所ノモノ
 - 第19巻 p.474 -ページ画像 
有ル時ハ社員自己ノ財産ヲ以テ其負債ヲ負担セサル可カラサルヤ明瞭ニシテ疑ヲ容レスト雖トモ、若シ会社ノ破産ト同時ニ社員破産シ、其自己ノ負債ヲ弁償スルニ足ラサルカ或ハ自己ノ負債ノミナラス会社ノ負債ヲモ弁償スルニ足ラサル時ハ、其社員自己ノ財産ハ如何ニ処分シテ可ナルカ其間疑点ナキニ非ス、而シテ本法中之ヲ規定セル条文ナキカ如シ、或ハ本条ヨリ推論シテ一己ノ財産ハ一己ノ負債ヲ弁償スル前ニ先ツ会社ノ負債ヲ弁償スヘキモノナリト論スル者アラン、然レトモ熟ラ条文ヲ玩味セハ決シテ此ノ如キ推論ヲ許スヘキモノニ非スシテ、唯本条ハ合名会社ハ無限責任ナルカ故ニ社員モ亦会社ノ負債ヲ弁償スルノ責アリト規定スルニ過キス、且ツ論者ノ言ニ従ヘバ社員一己ノ債権者ノ蒙ムル損害ハ実ニ鮮少ナラスト謂フヘシ、而シテ合名会社ハ無限責任ナルヲ以テ其債権者ハ会社ノ財産ノミナラス、社員一己ノ財産ヲモ併セテ弁償セシムルカ抵償セシムルカノ権ヲ有スルハ勿論ナリト雖トモ又一方ヨリ之ヲ見ル時ハ社員一己ノ債権者ハ社員一己ノ財産ノミナラス其社員カ会社ニ対スル権利及ヒ財産ヲモ併セテ弁償又ハ抵償セシムル事ヲ得ヘキヤ明カナリ、故ニ会社ノ財産ハ(此場合ニ於テ)先ツ会社負債ノ弁償ニ充テ余アレハ社員一己ノ負債ヲ償却スヘク、社員ノ財産モ之ト同シク社員一己ノ負債ヲ償却シテ余アレハ会社負債ノ弁償ニ充ツベキモノタルヤ理ノ当ニ然ルヘキ所ナルベシ、是前陳ノ修正ヲ要スル所以ナリ
第一編第六章第二部(合資会社)
本節(合資会社)中相当ナル場所ニ合資会社ノ業務担当人ハ必ズ無限責任ナル事ヲ要スル旨ヲ以テ一ケ条ヲ追加シ、本節各条ノ規定ヲ之ニ応ジテ修正シタシ
  本節ヲ案スルニ合資会社ノ社員ノ数ニハ別段制限ナク其責任ハ有限ニテモ差支ナキカ故ニ将来此種ノ会社続々起ルヘキハ必然ナリ然ルニ業務担当ノ任アル社員ノ責任ヲ有限トスル事ヲ許ス時ハ奸猾ノ徒之ヲ利用シテ良民ヲ苦シムルノ弊害ヲ生スル事ナシトセス或ハ合資会社ノ登記ニハ各社員ノ出資額ヲ掲ケサルヲ得サルガ故ニ以テ充分此弊害ヲ防キ得ヘシト論スル者アレトモ、是只理論上ニ止マリ実際ニ於テハ各商人カ互ニ取引スルニ当リ一々其登記簿ヲ点検スルカ如キ手数ハ可成之ヲ避クルノ事情アレハ、或者ノ論スル所ハ未タ充分安心スルニ足ラサルナリ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第百六十四条(第二項) 前項ノ議定ハ少ナクトモ総申込人ノ半数ニシテ総株金ノ半額以上ニ当ル申込人出席シ、其議決権ノ過半数ニ依リテ之ヲ為ス
    修正文
第百六十四条(第二項) 前項ノ議定ハ少ナクトモ総株金ノ半額以上ニ当ル申込人出席シ、其議決権ノ過半数ニ依リテ之ヲ為ス
  本条第二項ニ拠レハ創業総会ニ於ケル議定ハ少ナクトモ総申込人ノ半数ニシテ、総株金ノ半額以上ニ当ル申込人出席シ其議決権ノ
 - 第19巻 p.475 -ページ画像 
過半数ニ依ルニアラサレハ之ヲ為スヲ得ス、蓋シ巨額ノ資本ヲ以テ成立スル会社ノ如キ其申込人員千人若クハ其以上ニ達スル事往往之アリ、此等ノ会社カ創業総会ヲ開クニ当リ必スシモ其申込人ノ半数ヲ出席セシムルハ実際ニ於テ望ミ得ヘカラサル所ナリ、況ンヤ東京市内ニ成立スル大会社ノ如キ其申込人広ク各地方ニ散在シテ容易ニ一所ニ集合シ難キノ事情アルニ於テオヤ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第百七十六条 株式ハ一株毎ニ株券一通ヲ作リ、之ニ其金額・発行ノ年月日・番号・商号・社印・取締役ノ氏名・印及ヒ株主ノ氏名ヲ載ス
    修正文
第百七十六条 株式ハ一株毎ニ株券一通ヲ作ルヲ通例トシ、之ニ其金額・発行ノ年月日・番号・社名・社印・取締役ノ氏名・印及ヒ株主ノ氏名ヲ載ス、但シ株主ノ望ニ依リ数株ヲ合シテ一通ノ株券ト為ス事ヲ得
  本条ノ如ク株券ハ一株毎ニ必ス一通ヲ作ルモノトスルトキハ大会社ニテ拾万乃至弐拾万個ノ株式ヲ発行スルモノニ在リテハ非常ノ不便ヲ感スルナリ、蓋シ其枚数夥多ナルトキハ(第一)株券ノ調製ニ多クノ費用ヲ要シ(第二)譲渡ノ際裏書記載ノ手数繁雑ヲ加ヒ(第三)株主之ヲ保存スルニ便ナラス(第四)紛失毀損ノ憂従テ多キ等ノ類是レナリ、故ニ本条ヲ修正シ株主ノ望ミニヨリテハ数株ヲ合シテ一通ノ株券ト為ス事ヲ得セシムルヲ可トス、是現ニ日本鉄道会社・日本郵船会社及ヒ第十五国立銀行等ノ如キ大会社ノ実行スル処ニシテ毫モ弊害ヲ生スル事ナク、而カモ其便益大ナルハ之ニ関係スル者ノ洽ク知ル処ナリ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第百八十七条 取締役ニ選マルヽ為メ株主ノ所有ス可キ株数ハ会社定款ニ於テ之ヲ定ム、取締役ノ在任中ハ其株券ニ融通ヲ禁スル印ヲ捺シ之ヲ会社ニ預リ置ク可シ
    修正文
第百八十七条 取締役ニ選マルヽ為メ株主ノ所有ス可キ株数ハ会社定款ニ於テ之ヲ定ム、取締役ノ在任中ハ其株券ヲ会社ニ預リ置ク可シ
  取締役ノ在任中其所有株券ノ融通ヲ禁シ之ヲ会社ニ預ケ置カシムル事ハ甚タ相当ナリト雖トモ、今日普通ノ慣例ヲ案スルニ商事会社取締役ノ任期ハ多クハ一年ニシテ其都度交代スルヲ例トスルカ故ニ本条ニアルカ如ク、其株券ニ融通ヲ禁スル印ヲ捺スモノトスル時ハ更代ノ際一々其株券ヲ新調セサルヘカラスシテ、之カ為メ其所有者ヲシテ無益ノ費用ト手数トヲ蒙ラシムルノ不都合アリ、或ハ斯ノ如キ規定ヲ設ケサル時ハ取締役カ私ニ之ヲ融通スルノ弊ヲ生スヘシト云フ者アリ、然リト雖トモ此等ノ事ハ畢竟徳義ノ制裁ニ由ルヘキモノニシテ若シ其取締役ニシテ悪心アリトセンカ仮令其株券ニ融通ヲ禁スル印ヲ捺シテ之ヲ会社ニ預カリ置クトスル
 - 第19巻 p.476 -ページ画像 
モ到底其実効ヲ奏スルヲ得サルヘシ、何トナレハ取締役ハ自ラ其会社ノ公印ヲ監守シ且ツ営業ノ全権ヲ有スル者ニシテ不正ノ株券ヲ発行スル事ノ如キ亦容易ナレハナリ、之ヲ要スルニ取締役カ在任中其株券ヲ会社ニ預カリ置ク事ハ、寧ロ形式上ノ検式《(束)》ニ属スルヲ以テ其株券ニ捺印スルハ敢テ必要ニアラサルヘシト信ス、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第百九十一条 総会ハ株主中ニ於テ三人ヨリ少ナカラサル監査役ヲ二ケ年内ノ時期ヲ以テ撰定ス、但其時期満了ノ後再選スルハ妨ケナシ
第百九十二条 監査役ノ職分ハ左ノ如シ
 第一 取締役ノ業務施行カ法律・命令・定款及ヒ総会ノ決議ニ適合スルヤ否ヤヲ監視シ、且総テ其業務施行上ノ過愆及ヒ不整ヲ検出スルコト
 第二 計算書・財産目録・貸借対照表・事業報告書・利息又ハ配当金ノ分配案ヲ検査シ此事ニ関シ株主総会ニ報告ヲ為スコト
 第三 会社ノ為メニ必要又ハ有益ト認ムルトキハ総会ヲ招集スルコト
    修正文
第百九十一条 総会ハ株主中ニ於テ一人若クハ数人ノ監査役ヲ二ケ年内ノ時期ヲ以テ撰定ス、但其時期満了ノ後再撰スルハ妨ナシ
第百九十二条 監査役ノ職分ハ左ノ如シ
 第一 計算書・財産目録・貸借対照表・事業報告書・利息又ハ配当金分配案ヲ検査シ此事ニ関シ株主総会ニ報告ヲ為スコト
 第二 会社ノ為メ必要又ハ有益ト認ムルトキハ総会ヲ招集スルコト第百九十一条ノ規定ニ拠レハ凡株式会社ハ其規模ノ大小如何ンヲ問ハス必ス株主中ヨリ三名以上ノ監査役ヲ撰定シテ取締役ノ業務ヲ監督セシメサルヘカラズ、然ルニ極メテ小額ノ資本ヲ以テ成立スル所ノ会社ノ如キ三名ノ取締役ノ外更ニ三名以上ノ監査役ヲ置ク事ハ実際必要ナラスト信ス、況ンヤ監査役ノ責務ハ頗ル重大ニシテ随テ多額ノ給料若クハ報酬ヲ要スルノ事情アルカ故ニ多数ノ監査役ヲ置ク事ハ其会社ノ経済上甚タ不利ナルニ於テオヤ、故ニ小額ノ資本ヲ以テ成立スル会社ノ如キハ一名ノ監査役ヲ置ク事ヲ得セシメタシ、又第百九十二条第一号ニ拠レハ監査役ハ常ニ其職分トシテ取締役ノ業務ヲ監督セサルヘカラスシテ、若シ其責務ヲ欠クカ為メニ損害ヲ生スル時ハ第百九十五条ニ示スカ如ク責任ヲ負ハサルヲ得サルカ如《(故カ)》ニ、監督ノ際不知不識適当ノ畛界ヲ超逸シテ業務ニ関渉シ遂ニ商業ノ円滑ヲ害スルノ弊ヲ生スル事ナシトセス、故ニ第百九十二条中第一号ヲ除却シ以テ監査役ノ職分ヲシテ現今各会社ノ所謂会計検査委員ノ如ク会計収支ノ正否ヲ監督スルニ止マラシメン事ヲ望ム、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第二百二十二条 会社ハ其本店及ヒ各支店ニ株主名簿・目論見書・定款・設立免許書・総会ノ決議書・毎事業年度ノ計算書・財産目録・貸借対照表・事業報告書・利息又ハ配当金ノ分配案及ヒ抵当若クハ
 - 第19巻 p.477 -ページ画像 
不動産質ノ債権者ノ名簿ヲ備置キ、通常ノ取引時間中何人ニモ其求ニ応シ展閲ヲ許ス義務アリ
    修正文
第二百二十二条 会社ハ其本店及ヒ各支店ニ株主名簿・目論見書・定款・設立免許書・総会ノ決議書・毎事業年度ノ計算書・財産目録・貸借対照表・事業報告書・利息又ハ配当金ノ分配案及ヒ抵当若クハ不動産質ノ債権者ノ名簿ヲ備置キ、通常ノ取引時間中債権者ノ求メニ応シ展閲ヲ許ス義務アリ
  本条ニ拠レハ会社ハ常ニ其本店及各支店ニ株主名簿其他ノ書類ヲ備ヘ置キ、何人ノ求メニ応シテモ之ニ展閲ヲ許サヽルヘカラサス蓋《(衍)》シ此等ノ書類ハ株主又ハ債権者ハ勿論新ニ之ト取引セントスル者カ実際ノ必要ヨリ其閲覧ヲ求ムルカ如キ場合ニ於テ之ニ応諾スルハ固ヨリ妨ナシト雖トモ、何人ニモ其望ニ応シテ開示セサルヲ得サルモノトスルハ豈其当ヲ得タルモノト云フヘケンヤ、況ンヤ如此規定アル時ハ徒ラニ会社ヲ煩ハシ之ヲ妨害セントスルノ徒ナキヲ保セサルニ於テオヤ、之ヲ要スルニ此「何人」ノ文字ヲ「債権者」ト改メ其他ノ人ニ至リテハ苟モ実際ノ必要アリテ閲覧ヲ求ムル場合ノ外之ニ応セサルモ可ナル事トシタシ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第三百三十一条 損害賠償ヲ査定スルニハ偶然・推測若クハ将来ノ利益若クハ損失又ハ他ノ情況ノ加ハルニ因リテ生スルコト有ル可キ利益若クハ損失ハ之ヲ問フコトヲ得ス
    修正文
第三百三十一条 損害賠償ヲ査定スルニハ推測若クハ将来ノ利益若クハ損失又ハ他ノ情況ノ加ハルニ因リテ生スルコト有ル可キ利益若クハ損失ハ之ヲ問フコトヲ得ス
  本条中偶然ノ文字ハ如何ナル意味ヲ有スルヤ、熟ラ其字義ノ上ヨリ察スルニ蓋シ予メ期スルヲ得サル事ヲ意味スルニ似タリ、然ルニ第三百三十条ニ「利益トハ云々ノ取得ヲ謂フ此取得ハ予見シ得ヘカリシモノト否トヲ問フ事ナシ」トアルヲ見レハ偶然ノ文字ハ予メ期スルヲ得サルノ意味トモ解スヘカラサルカ如シ、之ヲ要スルニ此偶然ノ文字ハ其意義甚ダ曖昧ニシテ之ヲ了解シ難キヲ以テ此文字ハ寧ロ之ヲ除却スヘシ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第三百七十七条 買主ニシテ其買入レタル物ニ付第三者ニ質権ノ存スルコトヲ知ル者ハ質債務ノ全額ニ満ツルマテ其代価ヲ直接ニ質債権者ニ支払フ可シ、之ニ違フトキハ亦前条ノ刑ニ処ス
    修正文
第三百七十七条 買主ニシテ其買入レタル物ニ付キ第三者ニ質権ヲ生スルコトヲ知ル者ハ質債務ノ全額ニ満ツルマテ其代価ヲ直接ニ質債権者ニ支払フヘシ、之ニ違フトキハ質債務者ニ対シ支払ヲ為スモ其効ナシ
  本条ノ場合ニ於テ買主カ其質債務者ニ支払ヲ為ストモ其効ナシト
 - 第19巻 p.478 -ページ画像 
スレハ質債権者ノ請求ニ応シテ再ヒ之ヲ支払ハシムルハ可ナリ、何ソ刑ヲ加フルヲ要センヤ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第三百七十九条 二人以上ノ質債権者中一人ハ現物ヲ占有シ、他ノ者ハ其物ニ付テノ処分証券ヲ有スルトキハ孰レニテモ其占有ヲ先キニ得タル者売却ノ優先権ヲ有ス
本条ハ之ヲ削除シタシ
  本条ノ処分証券トハ第三百六十九条ニ規定セラレタル船荷証書・倉荷証書其他裏書ヲ以テ所載商品ノ処分権ヲ移転スル事ヲ得ル証券ノ意ナラン、然レトモ是等ノ証券ヲ質入スル場合ハ倉荷証書ニ多ク船荷証書ニハ稀ニシテ其倉荷証書モ二通以上ヲ発行シタル時ニ非サレハ本条ノ如キ場合ヲ生セサルヘシ、且倉荷証書ハ為替手形又ハ船荷証書ノ如ク地ヲ隔テヽ所載ノ物品ヲ受取ルモノニ非サレハ二通以上ノ証券ヲ発行スルノ必要ナク、殊ニ寄托ノ条ニ於テモ倉荷証書ハ数通ノ証券ヲ発行スルノ規定ナシ、然ルニ本条ニ此規定ヲ設クルニ於テハ倉荷証書モ亦二通以上ヲ発行シ得ルヤノ疑ヲ生スルノ恐アリ、是本条ノ削除ヲ要スル所以ナリ
    原文
第三百九十八条 指図証券ノ裏書譲渡ハ白地ニテモ之ヲ為スコトヲ得
    修正文
第三百九十八条 指図証券ノ裏書譲渡ハ裏書譲渡人ノ署名捺印ノミニテモ之ヲ為スコトヲ得
  本条中白地ノ文字ハ蓋シ英語ノ「ブランク」ト同一義ニシテ証券ヲ流通スルニ当リ譲渡人ノ署名捺印ノミヲ記シタル所謂略式ノ裏書ヲ指称スルモノナラン、然レトモ今熟々其字義ノ上ヨリ察スルニ或ハ文字ヲ記載スルコトナク全ク空白ナルモノヲ意味スルヤノ疑アリ、故ニ寧ロ此文字ヲ「裏書譲渡人ノ署名捺印ノミ」ト改メ其意義ヲ明瞭ニスヘシ、是レ前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ、又本法第七百二十三条・第七百二十五条・第八百十八条等ニモ同シク白地ノ文字アリ、此等ハ総テ本条ニ準シテ之ヲ修正セン事ヲ望ム
    原文
第四百十六条 常嘱ノ代弁人其行為ニ付キ第三者ノ問ニ対シテ己レニ其権アリト明言シタルトキ又ハ其行為カ慣習上委任ノ範囲内ニ在ルトキハ、委任者ハ善意ナル第三者ニ対シテ責任ヲ負フ
    修正文
第四百十六条 常嘱ノ代弁人ノ行為カ慣習上委任ノ範囲内ニ在ルトキハ委任者ハ善意ナル第三者ニ対シテ責任ヲ負フ
  如何ニ常嘱ノ代弁人ナリトモ相当ノ権限ナキニ第三者ニ対シテ之アリト明言シタルガ為メ委任者ヲシテ其責任ヲ負ハシムルハ理ニ於テ許スヘカラサルノミナラス委任者ノ迷惑少シトセス、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第四百二十七条(第三項) 定款ハ法律・命令・商慣習及ヒ其地ノ取引所定款ニ背戻スルコトヲ得ス
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    修正文
第四百二十七条(第三項) 定款ハ法律・命令及ヒ其地ノ取引所定款ニ背戻スルコトヲ得ズ
  慣習ハ反対ノ法律又ハ特約ナキ場合ニ始メテ適用スヘキモノナルカ故ニ、特ニ契約ヲ為ス場合ニハ敢テ慣習ノ如何ヲ問フヲ要セサルヘシ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第四百二十八条(第一項) 仲立人カ其職分範囲内ニ属スル取引ニ於テ法律・命令及ヒ仲立人組合定款ヲ遵守スルヤ否ヤヲ監視スルコト
    修正文
第四百二十八条(第一号) 仲立人カ其職務範囲内ニ属スル取引ニ於テ法律・命令・仲立人組合定款及商慣習ヲ遵守スルヤ否ヤヲ監視スルコト
  仲立人カ特約ヲ為サスシテ商慣習ニ反スルノ取引ヲ為スヤ否ヤヲ監視スル事モ亦法律・命令等ニ反スルノ取引ヲナス場合ト同シク必要ナラン、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
第一編第八章第五節(自第四百五十六条至第四百八十条)仲買人
本節中「仲買人」ヲ「問屋」ト改ムルヲ要ス
  本節中ノ仲買人トハ英語ノ「コンミツシヨンマルチヤント」ト同一義ニシテ我国ノ所謂仲買人トハ大ニ其性質ヲ異ニシ寧ロ問屋ニ相当スルモノヽ如シ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第四百四十九条 或ル商品ヲ小売ノ外ハ取引所ニ非サレハ商フヲ得サルコトヲ官ヨリ規定スルコトヲ得
 此規定ニ違フ者ハ二円以上二百円以下ノ過料ニ処ス
 前項ノ過料ニ付テハ第二百六十一条第一項ノ規定ヲ適用ス
本条ハ之ヲ倒除スルヲ要ス
  本条ニ規定スル処ハ要スルニ取引所ニ専売権ヲ与フルモノニシテ商売ノ自由ヲ覊束スルコト蓋シ焉ヨリ大ナルハナシ、是本条ノ削除ヲ要スル所以ナリ
    原文
第四百八十四条(第一項第三号) 運送品ノ種類及ヒ重量
第四百八十四条(同第四号) 行李アルトキハ其箇数・性質及ヒ記号
    修正文
第四百八十四条(第一項第三号) 運送品ノ種類及ヒ重量又ハ容量
第四百八十四条(同第四号) 行李アルトキハ其箇数及ヒ記号
  本条ヲ案スルニ其ノ第一項第三号ニ重量ノ文字アリテ凡ソ運送品ハ其種類ノ何タルヲ問ハス必ス其重量ヲ検シテ之ヲ運送状ニ掲ケサルヘカラス、然ルニ従来我国運送営業者ニ於テ運賃取立ノ節ニ係ル一般ノ慣習ハ個数取(酒樽密柑箱《(蜜)》ノ類)元価取(株券其他高価品ノ類)ノ外才員及ヒ秤量ノ二種ヲ以テ其標準トナセリ、然ルニ今本条ニ於テ運送貨物ハ総テ其重量ノ記載ヲ要ストセハ灯心・棉花・諸証券類其他運送上少シモ重量ニ関セサルモノニ至ルマテ悉ク其重量ヲ検シテ記載セサルヘカラス、毎日数千万個ノ荷物ヲ
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取扱フヘキ当業者ニ取リテハ繁雑モ亦甚シト云フヘシ、故ニ重量ヲ以テスル物ハ重量ニ依リ、容積ヲ以テスル物ハ容積ニ依ルヲ得セシメタシ、又本条第一項第四号ニ性質ノ文字アレトモ従来我国一般ノ慣習ニテ運送状ヲ発スル場合ニハ荷主ノ申込者ニ依リ荷印品名・個数ヲ記載セリト雖トモ、営業者ニ於テハ品名ノ真偽尚ホ且ツ保スル能ハス、況ンヤ其荷物中品ノ性質ニ至リテハ固ヨリ能ク知リ得ヘキ処ニアラズ、故ニ其記載ハ実際ニ於テ到底為シ得ベキ事ニアラサルナリ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第四百九十七条 運送品ノ各部又ハ各箇ノ喪失若クハ毀損ノ場合ニ於テ毀損セサル各部又ハ各箇ヲ其儘使用シ若クハ売却シ得ヘカラサルトキハ其喪失若クハ毀損ニ因リテ運送品全部ニ付減シタル価額ヲ賠償ス可シ、然レトモ其毀損セサル各部又ハ各箇ノ価額カ運送品全部ノ価額ノ四分ノ一ニ超エサルトキハ前条ノ規定ヲ適用ス
    修正文
第四百九十七条 運送品ノ各部又ハ各箇ノ喪失若クハ毀損ニヨリテ毀損セサル各部又ハ各箇ノ価値カ減スル時ハ運送品全部ニ付減シタル価額ヲ賠償ス可シ、然レトモ其毀損セサル各部又ハ各箇ノ価額カ運送品全部ノ価額ノ四分ノ一ニ超エサルトキハ前条ノ規定ヲ適用ス
  本条中「其儘使用シ若クハ売却シ得ヘカラサル時ハ云々」ノ文字ハ其意義了解シ難クシテ之ニ惑ヲ生スルノ恐アリ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第五百三十条 初ヨリ履行ノ意思ナクシテ取結ヒ又ハ取得若クハ譲渡ヲ禁セラレタル物ニ付取結ヒタル売買契約ハ無効トス
    修正文
第五百三十条 取得若クハ譲渡ヲ禁セラレタル物ニ付取結ヒタル売買契約ハ無効トス
  双方ニ初ヨリ履行ノ意思ナケレハ其契約ノ無効ナル事ハ商事契約ノ通則ニ照シテ明カナレハ別ニ玆ニ規定ノ労ヲ採ルニ及ハス、若シ単ニ一方ニ履行ノ意思ナキ時ニ於テモ其契約無効ナリトスレハ大ニ実際上不都合ヲ生スヘシ、何トナレハ実地ニ於テ一方ニ於テ履行ノ意思ナキ事ヲ証明スル事ハ殆ント出来ヘカラサル事ナレハナリ、若シ又万一如此意思ヲ証明シ得ルトスルモ之カ為メ其売買ヲ無効トセラルヽ対手ノ迷惑果シテ如何ソヤ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第五百九十条 元債ノ償還ハ若シ債務者カ契約上負担シタル利息ノ支払ヲ二期以上遅延シ、又ハ支払停止ト為リ又ハ資産上切迫ナル情況ニ至リタルトキハ反対ノ契約アルニ拘ハラス約定期間ノ満了前ニ之ヲ求ムルコトヲ得
    修正文
第五百九十条 元債償還ハ若シ償務者カ契約上負担シタル利息ノ支払ヲ二期以上遅延シ、又ハ支払停止ト為リタルトキハ反対ノ契約アル
 - 第19巻 p.481 -ページ画像 
ニ拘ハラス約定期間ノ満了前ニ之ヲ求ムルコトヲ得
  本条中資産ノ切迫ナル情況ニ至リタルトキハ期限ノ満了前ニ元債ノ償還ヲ求ムルヲ得ト規定スレトモ、其状況ハ総テ事実ノ問題ニシテ且ツ実際ニ於テ切迫ナル状況ト認ムヘキヤ否ヤヲ区別スルハ困難ナルヲ以テ、寧ロ支払停止ヲ以テ請求権ヲ生スルモノト為スノ明瞭ナルニ若カザルナリ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第六百六十条(第三項) 所有者又ハ其他ノ者ノ損害賠償ノ要求ヲ充テンカ為メ保険ニ付シタル場合ニ於テハ、第六百三十九条ニ依リ自己ノ保険者ト看做ス可キトキト雖トモ其被保険額ヲ限リトシテ保険者独リ全部ノ損害ヲ負担ス
    修正文
第六百六十条(第三項) 所有者又ハ其他ノ者ノ損害賠償ノ要求ニ充テンカ為メ其旨ヲ明示シテ保険ニ付シタル場合ニ於テハ第六百三十九条ニ依リ自己ノ保険者ト看做ス可キトキト雖トモ、其被保険額ヲ限リトシテ保険者独リ全部ノ損害ヲ負担ス
  第六百三十九条ニ拠レハ例ヘハ四千円ノ価額ヲ有スル物ニ二千円ノ保険ヲ附シタルカ如キ場合ニ於テハ其残余額二千円ノ価額ハ被保険者カ自ラ之ヲ保険シタルモノト看做シ、保険者被保険者ヲシテ共ニ其損失ヲ分担セシムルノ規定ナルガ故ニ若シ偶々其物ガ火災ニ罹ルニ当リテハ保険者ハ其損失ノ半額ヲ負担スル訳ニシテ、即四千円ノ損失ニ対シテハ二千円ヲ弁償シ、二千円ノ損失ニ対シテハ一千円ヲ弁償スル割合ナリ、然ルニ本条第三項ニ拠レハ例ヘハ被保険者ガ或ル物ヲ所有者又ハ其他ノ者ノ損害賠償ノ要求ニ充テンカ為メニ保険ニ附シタル時ニハ保険者ハ前記第六百三十九条ノ場合ト雖トモ猶其損失ノ全部ヲ負担セザルベカラス、蓋シ被保険者ガ所有者又ハ其他ノ者ノ損害賠償ノ要求ニ充テンガ為メニ保険ニ附シタルト否トハ被保険者及第三者間ノ関係ニ止マリ、本来保険者ノ与カルベキ所ニアラス、然ルニ本条第三項ノ場合ニ於テ保険者ヲシテ前記第六百三十九条ノ場合ト同額ノ保険料ヲ収受シテ二倍ノ危険ヲ負担セシムルハ保険者ノ大ニ困難ヲ感スル所ナリ故ニ本条第三項ノ制裁ハ被保険者ガ其旨ヲ明示シテ保険ニ附シタル場合ニ限ル事トシタシ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第六百八十三条 総テ保険無効ノ場合ニ於テハ保険契約ヲ以テ此場合ノ為メニ約定シタル額若シ約定ナキトキハ少クトモ被保険者ノ為メニ既ニ積立タル貯金ノ半額ヲ被保険者ニ償還スルコトヲ要ス、但シ被保険者カ詐欺若クハ悪意ニ因リテ自ラ無効ニ至ラシメタルトキハ此限ニアラス
    修正文
第六百八十三条 総テ保険無効ノ場合ニ於テハ保険契約ヲ以テ此場合ノ為メニ約定シタル額若シ約定ナキトキハ少ナクトモ払込金ノ三分ノ一ヲ被保険者ニ償還スルコトヲ要ス、但被保険者カ詐欺若クハ悪意ニ因リテ自ラ無効ニ至ラシメタルトキハ此限ニ在ラス
 - 第19巻 p.482 -ページ画像 
  本条ノ修正ヲ望ムニハ先ヅ貯金ノ二字ヲ解釈セザルベカラズ、或ル人ノ説ニ貯金トハ払込ミタル保険料ノ元利合計ナリトスレドモ是蓋シ大ナル誤ナリ、元来生命保険ハ貯蓄ノ性質ヲ帯ブレトモ通常ノ貯蓄ト全ク同視スルヲ得ズ、通常ノ貯蓄ニ在テハ貯金銀行ヘ預入タル元金ト元金ヨリ生シタル利子ノ合計ハ預ケ人ノ貯金ニシテ貯金銀行ハ預ケ人ノ外ニハ此元利金ヲ支払フノ責任ナシト雖トモ、保険料ハ単ニ被保険者各自ノ為メニ貯蓄スベキモノニ非ズ、其一分ハ年々死亡スル他ノ被保険者ノ保険金トシテ支払ヒ(此分ハ火災若クハ海上保険ノ保険料ノ如ク償還ヲ受クベカラザルモノナリ)其一分ハ各被保険者ノ為メニ積立テ(此分ノミ貯金ト謂フヲ得ヘシ)其一分ハ会社営業ノ費用ニ充テ且ツ死亡ノ臆算ニ超過シタルトキノ予備トス、生命保険者ノ計算ハ甚タ複雑ニシテ了解シ易カラサルニ因リ可成簡要ノ点ノミヲ挙示セン為メ、姑ク会社営業費等ヲ除キ所謂純保険料(英語ネツト、プレミユム)ヲ分析スレハ左ノ如シ
  金拾三円四拾七銭
   右ハ英国同盟保険会社ノ死亡表ニ依リ年齢二十歳ニシテ金千円ノ尋常終身生命保険ヲ契約セル被保険者ヨリ払込ム一年分ノ純保険料ナリ
  此内
   金七円弐拾五銭 一年間ニ同年齢ノ死亡者ヘ支払フ保険金
   金六円弐拾弐銭 一年ノ末ニ生存者ノ積立金即チ貯金
  合金拾参円四拾七銭
  右ノ如ク純保険料ノ一半ハ短命ノ不幸者ニ支払フ保険金ヲ補充シ他ノ一半ノミ生存者ノ為メニ積立テタル貯金トナル、海上及ヒ火災ノ保険ニ在テハ年々支払フヘキ保険金ヲ臆算シ年々ノ保険料ヲ以テ其年ノ保険金ヲ支払ヘトモ、生命保険ニ在テハ一年ノ支出ヲ計テ保険料ヲ定ムルトキハ被保険者ノ老フルニ随テ年々保険料ヲ増スノ不便ヲ生スルヲ以テ保険契約ノ時ヨリ老後ニ至ルマテ一定ノ保険料ヲ払込マシム、即チ少壮ノ時ニ於テ其年ノ死者ニ支払フベキ保険金ノ外ニ老後払込ムベキ保険料ノ幾分ヲ前払セシムルノ理ナリ、故ニ年齢二十歳ノ時結約セル者ハ其年ノ末ニ前記ノ金六円弐拾弐銭ヲ余シ会社ニ於テハ其人ノ為メニ之レヲ積立置クヲ以テ、翌年ヨリ生存中払込ベキ保険料ハ二十一歳ノ時新タニ結約セル者ノ終身支払フヘキ保険料ノ全額ヨリ金六円弐拾弐銭ヲ減スルノ割合ニ当リ決シテ毫厘ノ差異アル事ナシ、此年末ノ積金ヲ英語ニテハ「レゼルヴ」(貯存金)又ハ「ネツトヴアリユー、オフ、ポリシー」(保険証書ノ純価値)ト称シ、如何ナル場合ヲ論ゼス此純価値ノ外ニハ保険会社ヨリ被保険者ヘ還付スベキモノ無キ計算ナリ
  右述ブル処ニ依リ本条貯金ノ二字ハ通常ノ貯蓄ト同様ニ払込金ノ元利合計ト解釈スルノ誤リナルヲ知ルニ足ルベシ、貯金トハ純保険料ノ内不幸ノ死者ニ支払ヒタル残額即チ生存ノ被保険者各自ノ為メニ積立テタル保険証書ノ現価値ナリトスレバ僅カニ其半額ヲ被保険者ニ償還シ、他ノ半額ハ保険会社ノ所得トスルハ被保険者
 - 第19巻 p.483 -ページ画像 
ニ不利ナル事甚タシ、故ニ償還金額ヲ払込金ノ少クトモ三分一ト改正スベシ、元来生命保険ハ被保険者相互ニ短命ノ不幸者ヲ済助スルノ主旨ニシテ恰モ同舟済水ノ観アリ、故ニ中途ニシテ保険契約ヲ解除スル者ハ自己ノ便宜ヲ以テ同舟者ヲ捨テヽ顧ミザルト一様ナレバ保険契約無効ノ場合ニ於テ其払込金ノ一部ヲモ取戻スヲ得ズトノ説ニ依リ、数十年以前マテハ保険無効トナレハ被保険者ニハ壱銭ヲモ還付セサルヲ欧米生命保険会社ノ例トセシガ、近年保険会社競争ノ結果トシテ此苛酷ノ説ヲ排シ勉メテ被保険者ノ便益ヲ計リ保険解約ノ時ニハ保険証書ノ純価値ヲ計算シ殆ト其全部ヲ還付スルニ至リタレトモ、其額ハ払込金ノ三分一ヨリ少カラスト契約スルヲ以テ通例トス、生命保険ノ種類ニ依リ或ハ払込金ノ三分二若クハ五分四ヲ還付セルモノアレトモ、尋常終身保険ノ如キニ在テハ三分一以上ヲ還付スルハ過当ニシテ、解約者ノ為メニ会社ニ損失ヲ蒙ラシメ、随テ契約保険ノ被保険者ニ損失ヲ及ボス事アリ、故ニ本条ニ於テハ償還金額ヲ払込金ノ少クトモ三分一トシ、其余ハ法文ニ明記セザルモ商業上ノ競争ニ一任シテ可ナリ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第六百八十八条(第一項) 総テ生命保険・病傷保険及ヒ年金保険ノ場合ニ於テハ被保険者若クハ其権利承継人ハ正当時期ニ予告ヲ為シタル後、保険契約ニ従ヒ若クハ第六百八十三条ニ従ヒ、自己ニ属スル償還金ヲ受ケテ契約ヲ解除スル権利ヲ有シ、又ハ予告ヲ以テ償還ヲ求ムル事ヲ得ベキ利息附ノ預ケ金ニ其契約ヲ変更スル権利ヲ有ス
本条第一項中年金保険ノ事ハ別ニ之ヲ規定スルヲ要ス
  本条ニ於テハ被保険者ニ予告ヲ為シテ契約ヲ解除スル権利ヲ与ヘ明示ノ契約アレバ其契約ニ従テ償還金ヲ受ケ、契約ナキトキハ第六百八十三条ニ従ヒ償還金ヲ受クベキ旨ヲ規定スレトモ、第六百八十三条ハ生命保険ノ償還金ヲ規定シタルモノニシテ、年金保険ニハ如何ニ之ヲ適用スベキヤ了解シ難シ、抑モ年金保険ハ被保険者ヨリ一時ニ巨額ノ金員ヲ払込ミ、一定ノ年限間若クハ終身間毎年若干ノ金ヲ受取ルモノニシテ、短命者ハ千円ヲ出シテ僅カニ五百円ヲ受取リ長生者ハ千円ヲ出シテ千五百円ヲ受取ルガ如キコトアリ、生命保険ノ短命者ニ得アリテ長生者ニ損アルト全ク相反シ又生命保険ニ在テハ年数ヲ経ルニ随テ償還金次第ニ増加シ、年金保険ニ在テハ次第ニ減少ス等総テ其赴ヲ異ニス、故ニ年金保険解約ノ場合ハ別ニ之ヲ規定セザルベカラズ、但年金保険ノ契約ヲ結ヒタル後、被保険者ノ身体多病不健康トナリ長生ノ望ミナキヲ以テ数月前ニ予告ヲ為シ、容易ニ解約シテ自己ニ損スル所ナキトキハ、年金払戻ノ契約ヲ結ビタル会社ハ長生ノ被保険者ニ対シテ払戻ノ責任ヲ尽ス事能ハザルニ至ルベシ、是頗ル注意ヲ要スベキ所ナリ
    原文
第六百九十条 保険会社ハ保険料其他ノ収入金ノ中ヲ以テ年々積立ヲ為シ何時ニテモ年々支払フ可キ被保険額ノ少ナクトモ平均二倍ニ満
 - 第19巻 p.484 -ページ画像 
ツル準備金ヲ設クル義務アリ、此準備金ハ十分安全ニ利用シ其証券ヲ裁判所ニ寄托スルコトヲ要ス、但之ヨリ生スル収入ハ会社ニ帰ス
    修正文
第六百九十条 保険会社ハ其業務ヲ始ムル以前ニ証券ヲ以テ五万円ノ金額ヲ裁判所ニ寄託スルヲ要ス、但シ之ヨリ生スル収入ハ会社ニ帰ス
 会社ノ準備積立金弐拾万円ニ満ツレバ裁判所ハ寄託ノ金額ヲ会社ニ返附ス
  本条ハ被保険者ヲ保護スル旨趣ヨリ出デタルコト明白ナレドモ却テ反対ノ結果ヲ見ルノ恐アリ、海上保険・火災保険ノ如キハ単ニ損失弁償ノ主義ニ基クモノナレバ毎年ノ収入保険料ヲ以テ其年ノ損失ヲ弁償スレバ会社ニハ其他ニ責任ナキヲ以テ、仮令非常ノ損失アルモ別ニ年々支払フベキ被保険額ノ平均二倍以上ノ準備金ヲ設クレバ足レリトスルモ、独リ生命保険ニ在リテハ第六百八十三条ニ於テ述ベタル如ク、其保険料ノ一分ハ他ノ保険ト同様ニ其年ノ死亡者ニ保険金トシテ支払ヘドモ、一分ハ各被保険者ノ為メニ積立テザルベカラズ、故ニ他ノ保険ニ在リテハ相当ナル準備金モ生命保険ニ在リテハ過少ノ準備金ナリトス、然ラバ生命保険ノ準備金ハ幾何ニシテ可ナリヤト問ハヾ標準トスベキ死亡表ト利息ノ割合トヲ一定スレバ生命保険ノ準備金ハ自ラ一定スルモノナリト答フルヲ得ベシ、故ニ官府ニ於テハ生命保険会社ノ準拠スベキ死亡表ト利息ノ割合ヲ定メ、第六百九十二条ノ鑑定人ニ命ジテ会社ノ計算ヲ点検セシメバ始メテ相当ノ準備金ヲ得ベシ、徒ラニ画一ノ法ヲ設ケテ性質相同ジカラサル諸種ノ保険ニ適用セント欲スレバ準備金過少ナレトモ官府ニ於テ之ヲ如何トモスル事能ハズ、後来永続ノ望ナキ会社モ法律ノ仮面ヲ被ムリ不当ノ信用ヲ得テ結局害ヲ被保険者ニ及ボスベシ、然レドモ保険ノ如キ広ク社会ノ休戚ニ関係スル事業ハ法律ヲ以テ相当ノ制裁ヲ加フルハ敢テ無用ノ干渉ト謂フベカラズ、故ニ本条ハ前記ノ如ク修正シテ無資無産ノ徒ガ所謂泡沫会社ヲ起シテ毒ヲ世間ニ流スヲ防グ事ヲ目的トシ、準備金額ノ如キハ別ニ適切ノ標準ヲ定ムルヲ可トス、是前記修正ヲ要スル所以ナリ
  蓋シ前記修正文ハ一千八百七十年制定ノ英国生命保険法第三節ニ傚ヒタルモノナリ、今之ヲ左ニ記シテ参考ニ供ス
   第三節 此法律制定以後統一王国内《ユーナイデツトキングトム》ニ設立スル各会社及ヒ統一王国外ニ設立シタル若クハ設立スベキ各会社ニシテ此法律制定以後統一王国内ニ於テ生命保険ノ業ヲ始ムルモノハ衡平裁判所ノ会計官ニ弐万磅ノ金額ヲ寄託シ、会計官ハ該裁判所ノ管理ニ帰スル資本放下ノ為メニ採定シタル証券ノ中会社ノ撰ム処ノ証券ニ放銀シ、之ヨリ生ズル収入ハ会社ニ属ス、此金額ヲ寄託シタル後ニ非ザレバ登記官ハ登記証書ヲ発スベカラズ、而シテ保険料ノ中ヨリ積立テタル生命保険資金四万磅ニ達シタルトキハ会計官ハ直ニ寄託金ヲ会社ニ返付スベシ
  論者或ハ曰ク、本条処定ノ準備金ハ生命保険ノ準備金トシテハ不
 - 第19巻 p.485 -ページ画像 
十分ナリトスルモ之ヲ裁判所ニ寄託シ置ケバ全ク寄託金無キニ勝レリト、此論亦一理無キニ非ズ、然レトモ論者ノ説ニ従ヒ寄託金ヲ有用ナリトスレバ、本条中準備金額ヲ定ムルノ旨趣ヲ改メ単ニ裁判所ニ寄託スル金額ヲ規定スルヲ宜シトス、試ミニ其修正案ヲ示セバ左ノ如シ
   第六百九十条 保険会社ハ保険料其他ノ収入金ノ中ヲ以テ積立ヲ為シ年々支払フ可キ被保険額ノ少ナクトモ平均二倍ニ満ツル金額ヲ証券ヲ以テ裁判所ニ寄託スルコトヲ要ス、但之ヨリ生ズル収入ハ会社ニ帰ス
    原文
第六百九十一条 保険会社ハ少ナクトモ毎年一回其年ノ収支一覧表及貸借対照表ヲ作リテ之ヲ公告シ、且各社員及各被保険者ニ送達スル義務アリ
    修正文
第六百九十一条 保険会社ハ少ナクトモ毎年一回其年ノ収支一覧表及貸借対照表ヲ作リテ之ヲ公告スベシ
  保険ノ事業ハ広ク公衆ノ利害ニ関スルヲ以テ其計算ヲ秘密ニスヘカラス、勉メテ公衆ヲシテ会社ノ実況ヲ知ラシムルハ一般公衆ノ為メノミナラズ確実ノ会社ニ在テハ可成其実地ヲ世上ニ知ラルヽヲ利益トス、故ニ毎年取支一覧表・貸借対照表ヲ新聞紙ニテ公告スルハ必要至当ノ事ナレドモ此手続ノ外猶各社員及各被保険者ニ之ヲ送達スルノ義務アリトスルニ至リテハ徒ラニ非常ノ手数ト費用トヲ要スルノミナラズ実際ニ於テハ殆ド為シ能ハザル事ニシテ且被保険者ノ為メニモ大ナル利益ナシ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
  海上保険ノ如キハ保険ノ期間甚タ短クシテ僅ニ某地ヨリ某地ニ達スル一航海ニ過ギザルモノ甚タ多シ、是等短期ノ保険ハ多クハ各地ノ代弁店ニ於テ契約ヲ締ヒ契約期間ノ終リタル後ニ非ザレバ本店ニ於テ之ヲ知ラザル者アリ、一々現在ノ各被保険者ヲ調査シテ之ニ貸借表等ヲ送付スルハ殆ド為シ能ハザル事ナリ
  又生命保険会社ニ在テハ被保険者ノ人員甚タ多ク加之其被保険者ハ土着ノ農家ニハ少クシテ官吏・銀行及会社ノ雇人・海員・商人工業者等ノ如キ才能技芸ニ依リ衣食スル者其大半ヲ占メ、其居処ノ変転極メテ多ク独リ国内ニ於テ居ヲ転スルノミナラズ外国ニ旅行シテ其所在ヲ知ルベカラザル者アリ、尤モ保険契約ニハ住居ヲ転スレハ一々会社ニ通知スベキ旨ヲ明示スレトモ実際ハ之ヲ怠ル者多キヲ免レズ、我国ニ於テハ生命保険ノ創始以来未ダ十年ニ満タザレトモ一会社ノ被保険者既ニ一万余人ニ過グルモノアリ、今ヨリ数十年ヲ経過セバ其人員ノ大ニ増加スルコト明ナリ、斯ク居処ヲ変転スル多数ノ被保険者ニ一々貸借表ヲ送付スルハ極メテ難事ナレドモ、本条ニ依テ之ヲ送付セザレバ第六百九十四条ニ厳重ノ罰アリ、仮令会社ハ之ヲ送付スルモ万一被保険者第六百九十四条ヲ利用セン為メ到達セザルヲ口実トシテ会社其義務ヲ欠キタリト主張セバ何ヲ以テ之ニ抗弁スルヲ得ンヤ、是等ノ紛議ヲ予防ス
 - 第19巻 p.486 -ページ画像 
ルニハ手数ト費用トヲ顧ミス書留郵便ヲ用フルモ猶数万ノ被保険者ニ一々遺漏ナカラシムルハ難事ナリ、況ヤ収支一覧表・貸借対照表ヲ被保険者ニ送付スルモ生命保険ノ計算ハ複雑ナルヲ以テ被保険者ハ之ニ依テ将来会社ノ計算ニ不足ヲ生ゼザルヤ否ヤヲ知ルニ足ラザルオヤ、要スルニ公衆ノ為メニ生命保険会社ノ確実ヲ保セント欲スルニハ第六百九十二条ニアル検査ノ方法ヲ厳ニシ生命保険ノ組織ニ明ナル人ヲシテ監督セシムルノ外ニ手段ナキナリ
    原文
第六百九十四条 保険会社ガ第六百九十条乃至第六百九十三条ノ規定ニ背クトキ又ハ被保険者総員ノ承諾ヲ得スシテ同業若グハ他業ノ会社ト合併スルトキ、又ハ被保険者ニ告知シタル保険業ノ原則ヲ変更シ若クハ事実上之ヲ犯ストキハ、各被保険者ハ予告ヲ為スコト無クシテ何時ニテモ保険ヲ解止シ、其払込ミタル現支払期間ノ保険料総額ノ償還及ヒ払込ミタル日ヨリノ法律上ノ利息ヲ求ムル権利アリ
    修正文
第六百九十四条 保険会社カ第六百九十条乃至第六百九十三条ノ規定ニ背クトキ又ハ被保険者総員ノ承諾ヲ得スシテ同業若クハ他業ノ会社ト合併スルトキ、又ハ被保険者ニ告知シタル保険業ノ原則ヲ変更シ若クハ事実上之ヲ犯ストキハ、各被保険者ハ予告ヲ為スコト無クシテ何時ニテモ保険ヲ解止シ、其払込ミタル現支払期間ノ保険料総額ノ償還及ヒ払込ミタル日ヨリノ法律上ノ利息ヲ求ムル権利アリ、但生命保険ニ在テハ最後ニ払込ミタル保険料ノ総額及之ヲ払込ミタル日ヨリノ法律上ノ利息ト、其以前ニ払込ミタル保険料ノ少クモ三分一若クハ第六百八十三条ニ依リ保険無効ノ場合ノ為メニ約定シタル額ノ償還ヲ求ムル権アルモノトス
  本条中現支払期間ノ保険料トハ其意義甚タ曖昧ナリ、或人ノ解釈ニ従ヘハ火災保険ノ如キ通例一年ヲ以テ保険期限トシタルモノ十年来継続シテ毎年保険料ヲ払込ミ、第十年度ニ至リ保険ヲ解止スレハ既ニ経過シタル九年間ノ保険料ハ償還ヲ求ムルヲ得ス、未タ全ク経過セサル第十年度ノ保険料ノミ償還ヲ求ムルヲ得、然レトモ終身ノ生命保険ヲ契約シ十年来保険料ヲ払込ミタルトキハ十年分ノ保険料全額ト法律上ノ利息トノ償還ヲ求ムルヲ得ヘキモノトセリ、火災保険ノ如キハ或人ノ解釈ニ依リ第十年度ノ保険料ノミヲ償還スルハ蓋シ相当ノ事ナルベシト雖トモ生命保険ニ至リテハ最初結約ノ時ヨリ払込ミタル保険料ノ全額ヲ償還スベキモノト解釈スルハ不当ナリト謂ハザルヲ得ズ、第六百八十三条ニ於テ論シタル如ク生命保険料ノ一分ハ火災其他ノ保険料ト同様ニ年々支出シテ残ル所ナク、其一分ノミ被保険者ノ為メニ会社ニ於テ積立ツルモノナルヲ以テ如何ナル場合ニ於テモ積立金ノ外ニ償還スベキモノナシ、然ルニ生命保険料ヲ通常ノ貯金ト同視シ元利合計ヲ償還スベシトスレバ生命保険会社ハ無料ニテ危険ヲ負担シタルノ道理ナリ、若シ本条ハ保険会社ノ違法ヲ罰スルノ旨趣ナルニ因リ生命保険会社ハ既ニ死者ノ保険金トシテ仕払ヒタル金員アルニ拘ラス解約者ヘハ其払込金ノ全額ヲ償還スベキモノトスレバ、火災保
 - 第19巻 p.487 -ページ画像 
険ノ如キモ十年来契約ヲ継続シタル者ヘハ十年分ノ保険料全額ヲ償還セシメサレハ其権衡ヲ得ス、然レトモ各種ノ保険会社ヲシテ無料ニテ危険ヲ負担セシメンカ計算上為シ得ベカラス、又生命保険モ他ノ保険ノ如ク既往ノ保険料ハ償還スルヲ要セズトセンカ其積立金ニ属スル部分ハ会社ノ所得ト為スベキ理ナシ、要スルニ生命保険料ハ他ノ保険料ト一分ハ其性質ヲ同フスルモ一分ハ之ヲ異ニスルヲ以テ、本条ニ於ケル償還金モ別ニ之ヲ規定センコトヲ望ム、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
第七百十六条(第五号) 為替手形ト引換ニテ支払ヲ為ス可キ旨
本条第五号ハ之ヲ削除スルヲ要ス
  本条ニ列挙セル第一号ヨリ第六号迄ハ即チ手形ノ要件ナルカ故ニ其中一件ニテモ之ヲ手形ニ掲ケサル時ハ第七百〇六条ニ拠リテ其手形ハ無効ニ帰スベシ、然リト雖トモ本条ノ第五号ノ要件ノ如キハ実ニ之ヲ手形ニ掲グルノ必要ナキモノナリ、何トナレハ支払人或ハ引受人カ手形ヲ受取ラズシテ支払ヲ為スガ如キハ実際決シテ有リ得ベキ事ニアラサレバナリ、加之此第五号ノ要件ヲ掲ケザルガ為メニ手形ヲ無効ニ帰スルハ大ニ従来ノ慣習ニ反スルノミナラス亦大ニ商業ノ便利ヲ妨グルモノト謂ハサルヘカラス、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第八百二十条(第二項) 振出人ハ争アル場合ニ在テハ其小切手帳ヲ裁判所ニ差出ス義務アリ
    修正文
第八百二十条(第二項) 振出人ハ争アル場合ニ在テハ其通帳及小切手帳ヲ裁判所ニ差出ス義務アリ
  本条第二項ニ「振出人ハ争アル場合ニ在テハ其小切手帳ヲ裁判所ニ差出ス義務アリ」トアリ、然ルニ小切手帳ノミニテハ差引ノ計算分明ナラスシテ随テ其争ヲ裁決スルニ不便ナルベシ、故ニ斯ノ如キ場合ニ於テハ振出人ヲシテ通帳ヲモ差出スノ義務ヲ負ハシメタシ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第八百二十四条 日本人民ノ所有ニ専属シ、又ハ日本ニ主タル営業所ヲ有シ、且日本ノ裁判権ニ服従スル会社其他ノ法人ニシテ合名会社ニ在テハ総社員、合資会社ニ在テハ少ナクトモ社員ノ半数、株式会社ニ在テハ取締役ノ総員、其他ノ法人ニ在テハ代表者ノ総員カ日本人民ナルモノヽ所有ニ専属スル商船其他ノ海船ハ日本ノ船舶ニシテ日本ノ国旗ヲ掲クル権利ヲ有ス
    修正文
第八百二十四条 日本人民ノ所有ニ専属シ、又ハ日本ニ主タル営業所ヲ有シ、且日本ノ裁判権ニ服従スル会祉其他ノ法人ニシテ合名会社ニ在テハ総社員、合資会社ニ在テハ少ナクトモ社員ノ過半数、株式会社ニ在テハ取締役ノ総員及議決権ノ過半数ヲ有スル株主、其他ノ法人ニ在テハ代表者ノ総員及社員ノ過半数カ日本人民ナルモノヽ所有ニ専属スル商船其他ノ海船ハ日本ノ船舶ニシテ日本ノ国旗ヲ掲ク
 - 第19巻 p.488 -ページ画像 
ル権利ヲ有ス
  本条ニ拠レハ合資会社々員ノ半数、株式会社取締役ノ総員、其他法人代表者ノ総員ガ日本人ナルニ於テハ其所有ニ専属スル商船等ハ日本ノ国旗ヲ掲クル権利ヲ有スル事トナルナリ、然ルニ其制限ヲ斯ノ如クニ止ムル時ハ猶外国人ヲシテ我海上ノ利益ヲ壟断セシムルノ恐ナシトセス、何トナレハ本条ノ規定ニ従フ時ハ合資会社社員ノ半数、株式会社ノ過半数ノ議決権ヲ有スル株主、其他法人ノ過半数ノ社員ガ外国人ナル場合ニ於テモ猶其所有ニ専属スル商船等ヲシテ日本ノ国旗ヲ掲クルノ権利ヲ有セシムルノ結果ヲ生スレハナリ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第八百二十六条 船舶登記簿ニハ左ノ諸件ヲ登記シ且年月日ヲ記ス可シ
 第一 船名及ヒ船籍港
 第二 船舶構造ノ時及ヒ地ノ知レタルトキハ其時及ヒ地又船舶カ日本ノ船籍ニ帰シタルトキハ其時及ヒ事情
 第三 官ノ測度証書ニ基キタル船舶ノ種類・大小・積量及ヒ詳細ナル記載
 第四 船長ノ氏名及ヒ国籍
 第五 一人又ハ数人ノ所有者ノ氏名・住所及ヒ詳細ナル記載又船舶ノ所有権ニ付所有者ノ股分ノ割合及ヒ所有取得《(権脱)》ノ合法ノ原因
    修正文
第八百二十六条 船舶登記簿ニハ左ノ諸件ヲ登記シ、且年月日ヲ記ス可シ、但第四項船長ノ氏名及国籍ハ沿岸航海ノ時ニ限リ登記簿ニ記載セサルモ妨ナシ
 第一 船名及ヒ船籍港
 第二 船舶構造ノ時及ヒ地ノ知レタルトキハ其時及ヒ地又船舶カ日本ノ船籍ニ帰シタルトキハ其時及ヒ事情
 第三 官ノ測度証書ニ基キタル船舶ノ種類・大小・積量及ヒ詳細ナル記載
 第四 船長ノ氏名及ヒ国籍
 第五 一人又ハ数人ノ所有者ノ氏名・住所及ヒ詳細ナル記載又船舶ノ所有権ニ付キ所有者ノ股分ノ割合及ヒ所有権取得ノ合法ノ原因欧米各国ニ於テモ概ネ本条第四号ト同様ノ規定アリト雖トモ、我国ニ於テハ平時船長ノ交代甚タ多キヲ以テ其都度登記簿面ヲ改正セサルヘカラスト為ス時ハ実際不容易差支ヲ生ス可シ、従来ノ経験ニ拠ルニ定期出帆ノ時限ニ迫リ疾病其他止ムヲ得サル事情ニ依リ俄カニ船長ノ交代ヲ要スル事少カラス、本法実施ノ上ハ斯ヽル場合ニ於テハ必ス其出帆時限ヲ延期セサルヘカラス、殊ニ午後四時(横浜港ニ於テハ午後四時ヲ以テ出帆時限ト為スモノ殊ニ多シ)出帆ノ約束ヲ為シタル船舶ニ於テ不意ノ交代アルトキハ直チニ改正登簿ノ出願ヲ為サントスルモ既ニ執務時間ニ後レ止ムヲ得ス其翌日ノ開局ヲ待チ相当ノ手続ヲ経由シ始メテ出帆シ得ヘシ、寸刻ヲ争フヘキ船舶ノ出入ニシテ斯ヽル場合ニ遭遇セハ船舶発着ノ定
 - 第19巻 p.489 -ページ画像 
期ヲ紊リ船主直接ノ損害ハ勿論船客荷主ノ迷惑一方ナラサルノミナラス、郵便物ノ延着及外国船接続ニ関係シ公益ヲ害スル事容易ナラサルナリ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第八百九十九条(第二項) 船荷証書ハ求ニ応シ幾通ニテモ之ヲ交付ス可シ、其中ノ一通ニハ船長ノ手許ニ備置ク為メ賃借人署名・捺印シ、他ノ各通ニハ船長署名・捺印スルコトヲ要ス
    修正文
第八百九十九条(第二項) 船荷証書ハ求ニ応シ幾通ニテモ之ヲ交付ス可シ、其中ノ一通ニハ船長ノ手許ニ備置ク為メ賃借人署名・捺印シ、他ノ各通ニハ船長若クハ其代理人署名・捺印スルコトヲ要ス
  船荷証書ハ総テ船長ノ名義ヲ以テ受授スヘキハ至当ノ順序ニシテ欧米各国ノ例規亦斯ノ如クナリト雖トモ、我国従来ノ慣習ニテハ陸上ニ於テ先ツ之ヲ製シ船長ノ名代トシテ他ノ関係人之ニ署名・捺印シテ発行スルヲ以テ、荷積ヲ終ルト同時ニ直様出帆スルヲ得ヘシ、然ルニ今実際本船ニ於テ数千万個ニ対スル船荷証書ヲ製シテ一々船長ニ署名・捺印セシムルハ実際容易ニ為シ得ヘキ事ニアラス、故ニ斯ノ手続ヲ為スカ為メ第九百条ニ二十四時間ノ猶予ヲ与フル事ニ為シアレトモ専ラ之カ為メニ空シク碇舶スルハ第一本船ノ損失莫大ノミナラス、荷物運送ノ遅滞ヲ来シ遂ニ双方ノ荷主ヲシテ商機ヲ失ヒ容易ナラサル損害ヲ蒙ラシムルニ至ルヘシ、畢竟斯ヽル事業ノ手続ハ既ニ数十年ノ経験ニ依リ能ク其便否ヲ研究シ竟ニ最モ至便ナル今日ノ慣習ヲナシタルモノナルニ、今ヤ一朝ニシテ之ヲ打破スルハ豈甚タ遺憾ナルニアラスヤ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
第三編第六章(自第九百三十条至第九百四十五条) 海損
同  第八章(自第九百五十三条至第九百七十五条) 保険
海損及海上保険ニ関スル个条ハ可成英国ノ慣習ヲ参酌シテ修正スルヲ要ス
  現今我国ノ開港場ニ於テ海上保険ノ営業店ヲ公開スル者其数少ナカラス、而シテ其中英国ノ組織ニ係ルモノ其大半ヲ占ムルカ故ニ他国人ノ組織ニ係ルモノト雖トモ概ネ皆英国法律ヲ採用セサルハナシ、是レ単ニ我国ノミナラス支那・印度其他東洋一般ノ現況ニシテ、彼ノ英国ロヰド社ノ慣習タル殆ト東洋一般ノ商慣習ヲ組成スルモノヽ如クニシテ、現ニ海上損失ノ決算人ト云ヒ将タ船体ノ検査人ト云ヒ苟モロヰドノ名ヲ冒スニアラサレハ広ク其信用ヲ博スル事能ハサルノ景況アリ、蓋シ我国ニ於テ海上保険ノ業ヲ営ム者ハ東京海上保険会社ノ一社ニ過キス、然リ而シテ該会社ハ創業以来今日ニ至ル迄十年余其間専ラ英国ノ慣習ニ則トリ其事業ヲ経営シ来リタリト云フ、是畢竟英国ノ慣習ニ由ラサレハ東洋全般ノ慣習ニ背戻シ保険者・被保険者共ニ実際ノ不便ヲ感スルニ因ルナランカ
  英国海上保険ノ慣習ノ東洋沿岸ニ通シテ勢力ヲ有スル事前陳ノ如シ、然リ而シテ今熟々本法ヲ案スルニ其大躰ハ仏独両国ノ商法ニ
 - 第19巻 p.490 -ページ画像 
則トリタルモノニシテ英国ノ法律ニ抵触スル条項少ナシトセズ、然ルニ多年英国ノ慣習ニ依リテ取引シ来リタル保険者・被保険者ヲシテ俄ニ此商法ニ服従セシメントスルハ其困難知ルベキナリ、今其困難ノ一例ヲ挙ケンニ船舶ノ所有者カ其船舶ノ保険ヲ東京海上保険会社ニ申込マンニ、該会社ニハ保険額ニ制限アリテ一艘ニ付幾万円ノ外ハ保険セサルノ定メナレバ所有者ハ不得止其一部分ヲ他ノ会社即チ外国人ノ組織ニ係ル会社ニ申込マザルヲ得ス、此場合ニ於テ一部ハ我国ノ法律ニ従ヒ、一部ハ外国ノ法律ニ従ハサルヲ得サルカ故ニ共担分損(本法中ノ所謂共同海損)ノ決算ヲ為スニ当リテハ彼此ノ取扱相衝突シテ実ニ処理シ能ハサルノ紛難ヲ来スベク、又再保険ニ附スル場合ニ於テモ其困難亦同一ナラン、之ヲ要スルニ我国ノ如キ海上保険事業ノ猶幼稚ナル邦土ニ於テ商法ヲ制定スルニハ、可成其慣習ヲ採用シテ出来得ベキ限リハ当業者ノ便利ヲ計ラサルベカラサルナリ
    原文
第九百三十条(第三号) 沈没又ハ掠奪ヲ避ケンカ為メニスル任意ノ坐礁・膠沙
本条第三号ハ之ヲ削除スルヲ要ス
  本条第三号ニ拠レハ任意ノ坐礁・膠沙ハ共同海損ニ属スト規定セラル、然ルニ英国ノ法律ニテハ任意ノ坐礁・膠沙ハ仮令一層ノ危険ヲ避クル為メト雖モ共担分損(共同海損)トナスヲ得サラシム是任意ノ乗揚ゲヲ容易ニ行ハシメサルノ精神ニシテ海員ハ専ラ自己ノ性命ヲ全フスルニ急ナルガ為メ、或ハ自己ノ不正ナル所業ヲ湮滅センガ為メ故ラニ乗揚ケヲナスノ実例甚タ尠ナカラサルヲ以テナリ、是独リ英国法律ニ定ムル所ナルノミナラス「ヨーク、アントウアルプ、ルール」ノ規定スル所亦之ト同一ナリ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第九百三十二条 船舶及ヒ積荷ノ全部又ハ一分ヲ救助スルコトヲ得タルトキハ積荷ト船舶及ヒ運送賃ノ半分トガ到達港其他航海ノ終極地ニ於ケル其価額ノ平等ナル割合ヲ以テ共同海損ヲ共担ス
    修正文
第九百三十二条 船舶及ヒ積荷ノ全部又ハ一分ヲ救助スルコトヲ得タルトキハ積荷及船舶ト運送賃ノ半額トカ到達港其他航海ノ終極地ニ於ケル其価額ノ平等ナル割合ヲ以テ共同海損ヲ共担ス
  蓋シ英国ノ法律ニテハ船舶ノ価額ハ共担分損(共同海損)ヲ決算スル時ノ価値船賃ノ価額ハ仕向ケ港ニ到達シ貨物引渡シノ上送状ニ従ヒ領収スベキ船賃ヨリ航海中ノ乗組船員ノ給料・港費・仕向港ニ於テ貨物引渡ノ費用ヲ引去リタル残額ヲ以テ算定スルノ制規ナリ、蓋シ運送賃ハ航海中乗組船員ノ給料・港費・貨物引渡費等ヲ差引クベキモノナレハ半分トセラレタルハ或ハ相当ナランカ、然レトモ船舶ノ価額ヲ半分トセラレタルハ其理由孰レニアルカ知ル事能ハザルナリ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
 - 第19巻 p.491 -ページ画像 
第千十二条(第二項) 管財人ハ其執務ノ為メ破産者ノ補助ヲ求ムルコトヲ得、破産主任官ハ此カ為メ破産者ニ報酬ヲ与フル事ヲ得
    修正文
第千十二条(第二項) 管財人ハ其執務ノ為メ破産者ノ補助ヲ求ムルコトヲ得
  自己ノ破産シタルガ為メ其破産手続ニ執務シタリトテ報酬ヲ与フルハ豈甚タ不都合ナルニアラスヤ、是レ前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ
    原文
第千二十三条(第四項) 所在ノ知レタル債権者ハ右ノ外特ニ裁判所ヨリ書面ヲ以テ其債権届出ノ催告ヲ受ク、然レトモ其書面カ債権者ニ達セサルモ此カ為メ損害賠償ノ請求ヲ為スコトヲ得ス
    修正文
第千二十三条(第四項) 所在ノ知レタル債権者ハ右ノ外特ニ裁判所ヨリ書面ヲ以テ其債権届出ノ催告ヲ受ク
  本条第四項中損害賠償トアルハ何人ニ対シテ請求スベキモノナルヤ、法律上之カ請求ニ応スベキ者ナシ、是前記ノ修正ヲ要スル所以ナリ


東京商工会々外諸向往復文書 第四号(DK190061k-0002)
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東京商工会々外諸向往復文書 第四号
                  (東京商工会議所所蔵)
(案)
元東京商工会ニ於テ昨年以来委員ヲ設ケ商法修正ノ意見書調査中ノ処今般右委員ヨリ其調査ノ結果ヲ報告致候ニ付貴院議員諸君ノ御参考ニ供シ度、依テ其謄本貴三百衆三百二十部差出候間何卒乍御手数御序ノ節各位ヘ御配附方宜シク御取計被下度、此段御依頼申上候也
  明治二十四年十月二日
              東京商工会残務整理委員総代
                      渋沢栄一
    貴族院書記官長 金子堅太郎殿
                   (各通)
    衆議院書記官長 曾禰荒助殿


法治協会雑誌号外 東京商工会商法修正説ニ対スル駁論 法治協会編 第一―九八頁 明治二五年刊(DK190061k-0003)
第19巻 p.491-505 ページ画像

法治協会雑誌号外 東京商工会商法修正説ニ対スル駁論
                 法治協会編  第一―九八頁 明治二五年刊
    東京商工会ノ商法修正説ニ対スル駁論
法典実施延期ノ論頃者一部人士ノ間ニ行ハレ鼓揚煽起其声漸ク高キカ如シ、法典果シテ延期ス可キ歟、吾人モ亦国民ノ義務トシテ全力ヲ玆ニ濺カントス、然レトモ吾人ハ未タ其延期ス可キ所以ノ理由ヲ発見セス、否ナ却テ延期論ノ理由ノ甚タ迷謬固陋ナルヲ感スルナリ
法典実施ノ必要ナルヤ今更喋々ノ弁ヲ費スヲ要セス、而シテ彼ノ延期論ハ抑々幾許ノ価値アルヤ、人或ハ延期論ノ起因ニ付テ信ス可カラサルノ説ヲ伝フ、曰ク「民商二法典ノ実施ヲ延期セントスルハ一ニ商事会社法ノ実施ヲ忌ムニ基ツクモノナリ、近時比歳会社ノ続起スルヤ弊事百端言フ可カラサルモノアリ、這種ノモノ若シ周密厳正ナル会社法
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ノ実施ニ遭ハヽ破綻続出、社運困頓又救ヒ難キニ至ラン、然レトモ若シ独リ会社法ニ付テノミ延期ヲ唱ヘン歟自家ノ胸臆ノ暴露スルヲ奈何セン、於是乎商法全部ヲ挙ケテ延期シ、延テ民法ヲモ延期ス可シト唱ヘ以テ真情ノ表白ヲ避ケントス、恰モ好シ一派ノ学者アリ、心、非法典ノ主義ヲ抱キ陽ニ延期ノ論ヲ為シ延期又延期遂ニ法典ヲシテ実施ノ期ナカラシメントス、此二種ノ徒其心情各々異ナルモ其目的相同シ、乃チ相抱合シテ一団ト為ル、故ニ表面ニ於テハ学者・実際家共ニ其見ヲ同フスルノ美観ヲ呈シ、而シテ其内情ノ異ナル此ノ如キモノアリ」ト、此説固ヨリ小人ヲ以テ君子ヲ測ルノ言、吾人之ヲ信セサラント欲ス、其レ然リ其内情ノ如何ハ此問題ノ為メニ之ヲ問フノ要ナシ、吾人ハ唯タ率直ニ表面ヨリ其論旨ノ如何ヲ攻究スレハ則チ可ナルノミ
従来商法ヲ攻撃シ延期ヲ唱フル者ノ言ニ曰ク、準備ノ時間短迫ニ失ス曰ク用字渋晦文章聱牙殆ト欧文直訳ノ如シ、曰ク我邦古来ノ商慣習ニ適セス、曰ク前述ノ如キ欠点多シ、延期以テ修正ヲ施ス可シト、論旨略々此ノ如キニ止マル、然レモ既ニ《(ト脱)》一回ノ延期ヲ与フ、準備ノ言復タ口ニ藉ク可カラス、法律ノ文章ノ一般人民ニ解シ難キハ到底理ノ免レサル所ナルハ世人漸ク之ヲ暁得セリ、而シテ商法ノ規定ニ付テ如何ニ我邦古来ノ商慣習ヲ尊重シ調査シ斟酌セル歟ハ一部ノ裒然タル商事慣例類輯ノ大著之ヲ証明シテ余アリ、於是乎猶ホ存スルハ修正ノ一問題ノミ、然ルニ人心ノ同シカラサルハ猶ホ其面ノ如シ、甲者ノ編纂ハ乙者ノ意ニ満タス乙者ノ修正ハ丙者ノ意ニ満タサル事アラン、丙者・丁者・戊者・己者何人カ之ヲ担当スルモ天下億兆ノ民ヲシテ一人モ其不備不完ヲ唱フル者ナカラシムルカ如キハ人類ノ遂ニ能クスル所ニ非スシテ修正修正再三再四徒ラニ百年河清ヲ待ツノ愚ニ陥ランノミ、近ク之ヲ独逸帝国ノ民法ニ徴セヨ、該国屈指ノ大学者・実際家相協同シテ之ヲ編纂シタルモノニシテ而シテ之ニ対スル非難ハ猶ホ其声ヲ絶タサルニ非スヤ、之ヲ好個ノ殷鑑トス、若シ我邦ヲシテ専制政治武断政略ノ古ニ在ラシメハ則チ可ナリ、然レトモ法治国ノ主義ハ維新以降一定不動ノ国是ト為リ憲法以下ノ公法既ニ実施ノ慶ニ逢ヒ国民ノ公権既ニ保固ノ恩ニ浴セルニ、独リ私権ノミ法官各個ノ脳漿ニ支配セラレ一是一非長ク一定ノ保固ヲ得ス、口ヲ修正ニ籍キ名ヲ延期ニ寓セ遂ニ之ヲ遷延糢稜ノ裏ニ葬リ去ルカ如キ事アラハ国民ノ不幸果シテ幾許ソ、而シテ国家ノ方針維新以降ノ国是何ノ時ヲ俟テ遂行ヲ得ンヤ、是レ吾人ノ痛歎シテ措カサル所ナリ
然リト雖トモ若シ完備良好ノ案ヲ得テ今日ノ法典ヲ修正シ之ヲシテ一大改良ヲ得セシメハ啻ニ吾人ノ喜ノミナラス実ニ国民ノ慶福ナリ、故ニ吾人ハ延期論ノ不利ヲ説クト同時ニ中心窃ニ良修正案ノ出ツルアラン事ヲ万一ニ冀望シ企足之ヲ待ツヤ久シ、然ルニ今ニ至リテ遂ニ之ニ逢着セス、否ナ其良案ニ逢着セサルノミナラス良否ハ暫ク措キ現ニ其案ヲ立テシモノハ唯タ旧東京商工会ノ一アルノミニシテ、其他商業会議所ノ如キハ比来修正ニ従事シツヽアルモ其案未タ成ラサルヲ以テ今日ニ於テハ吾人唯タ商工会ノ修正案ニ就テ可否ノ攻究ヲ投シ得ルノミ然リ而シテ商工会ノ施セシ修正ハ凡ソ五十余条ニシテ、吾人逐条之ヲ攻究スルニ其採ルニ足ルモノハ僅々二三条ノミ、而シテ此数条モ尚ホ
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其修正ヲ欠ク可カラスト云フニ非ス、即チ比較的ニ現法典ニ優ルト云フニ止マルノミ、他ハ則チ或ハ臆断ニ出テ或ハ誤解ニ基ツク修正ニシテ採ラント欲スルモ亦能ハス、且ツ玆ニ毎条之ヲ論シ以テ吾人ノ言ノ決シテ妄ナラサル事ヲ示サン
第一条 ○原文・修正文及ビ説明書前掲(第四六七―四九一頁)ニツキ略ス以下同断
右修正ハ誤解ニ出ツ、蓋シ原文「及」ノ字アルニ因リ常ニ商慣習ト民法トヲ併用ス可シト命スルニ非ス、又商慣習ヲ先ニ記シ民法ヲ後ニシタルニ因リ其適用ノ順序ヲ定メタルニ非ス、元来此句ハ立法者ノ頗ル措辞ニ困ミシモノニシテ、其意タルヤ商慣習ノ慣例アリテ民法ノ規定ナキ場合ハ固ヨリ商慣習ニ依ル可ク、之ニ反対ノ場合ハ固ヨリ民法ニ依ル可ク、又二者相矛眉スル場合ハ彼ノ特別法ハ一般ノ法律ニ先ツノ通則ニ依リテ固ヨリ商慣習ニ依ルヲ通例トスト雖トモ、商慣習ヲ措テ民法ノ規定ヲ先キニ適用ス可キ場合決シテ少シトセス、而シテ民法ニ其綱領ノ規定アリ、商慣習ニ節目ノ慣例アリテ二者両立スルノミナラス必ス併セテ之ヲ適用ス可キ場合モ亦僅少ナラス、然ルニ若シ修正案ニ従ヘハ民法・商慣習共ニ適用ス可キ場合及ヒ商慣習ヲ措テ民法ヲ適用ス可キ場合ニ独リ商慣習ノミニ非サレハ適用シ得サルカ如キ弊ヲ生セン、故ニ原文ヲ妥当ノ文ニ非ストスルモ決シテ修正案ノ採用スル能ハサル事ヲ知ル可シ
第十四条 ○略ス
右修正ハ本条立法ノ旨趣ヲ解セス、唯タ其一ヲ知テ未タ其二ヲ知ラサルニ出ツ、抑々本条立法ノ理由ニ二個アリ、曰ク夫婦ハ財産ヲ共通スル車多シ、然ルトキハ二人ノ社員ニシテ一個ノ財団アルニ過キサルノ不都合アリ、故ニ此禁ナカル可カラス、曰ク夫ハ婦ヲ保護スルノ義務アリテ婦ハ夫ニ従順スルノ義務アリ、然ルニ共ニ同等ノ権利ヲ有ス可キ同一社員タルニ於テハ婦ハ其社員タル権利ニ依テ社務ニ付キ夫ト抗争スル事アリ、所謂従順ノ義務ハ之カ為メニ傷フニ至ラン、否サレハ夫ハ婦ヲ圧抑シ婦ハ之ニ従順スルヨリ一人ノ社員(夫)カ二個ノ権利(夫婦)ヲ有スルト同一ノ結果ヲ生スルニ至ラン、故ニ此禁ナカル可カラスト、是レ本条アル所以ナリ、然ルニ修正案ハ財産共通ヲ為ス時ニ非サレハ同一社員タルモ可ナリト為セリ、是レ其見ノ第二ノ理由ニ及ハサリシ過ニシテ、若シ此案ノ如クセハ遂ニ婦ハ夫ニ従順スルノ旧慣ヲ破ルニ至リ、若クハ会社ニ於テ一社員カ二個ノ権利ヲ有スルト同一ノ不都合ヲ生スルニ至ラン、元来仏法ニ於テハ夫婦間ニハ会社ハ成立セストアリ、本法ハ其旨趣ヲ推拡セシモノニシテ縦令他ニ数多ノ社員アルモ前述ノ不都合アルハ同一ナルヲ以テ必スヤ此ノ如キ禁令ヲ設ケサル可カラス、而シテ其財産ヲ共通スルト否トノ如キハ此理由ノ為メニ問フヲ要セサル所タリ、修正論者ニシテ若シ之ヲ会得セハ彼等亦自カラ此修正ヲ撤去センノミ
第一編第三章(自第二十三条至第三十条)商号
第三章 ○略ス
此第三章即チ商号ノ規定ニ付テハ編纂ノ当時大ニ反対説ヲ主張スル者アリキ、是レ草按ニハ各商人カ商号ヲ登記セサレハ之ヲ罰スル事ト為シアリシカ為メナリ、然レトモ爾後之ヲ改正シテ現今ノ如ク商号ノ登
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記ハ商人ノ随意ニ一任シ、之ヲ登記セサルモ其罰ナク、而シテ登記スレハ其保護ヲ受クル事ト為シアルニ於テハ此規定ハ利アルモ害ナキモノニシテ、修正案カ全ク之ヲ削去セントスルハ誤見ノ甚タシキモノナリ、蓋シ削去論ノ理由ニ二個アリ、其一ハ我邦ニハ此ノ如キ規定ノ必要ナシ、古来其制度ナクシテ弊害ノ生セシヲ聞カサルハ其証左ナリト云フニ在リ、然レトモ今古其情ヲ異ニシ古昔ニ其必要ナキヲ以テ今日モ亦然リト謂フ可カラス、現ニ今日ハ商標条例・意匠条例ヲモ已ニ必要トスルノ世ニ非スヤ、如何ソ商号保護ノ必要ナカラン、彼ノ守田宝丹ノ事ノ如キ最近ノ実例ニシテ薬品ノ如キハ商標ノ以テ自カラ保護スルアリト雖トモ、守田治兵衛テフ同一ノ商号ヲ以テ宝丹テフ同一ノ薬品ヲ売ルアラハ縦令商標ニ多少ノ異同アルモ其損害ヲ免ルヽ能ハサルハ言ヲ俟タサルナリ、況ヤ割烹店ノ如キ各種娯游場ノ如キ商標ヲ用ユ可カラサル商業ニ於テヲヤ、誰カ商号保護ノ必要ナシト謂ハン、又削去論第二ノ理由ハ此規定ハ却テ商人ノ徳義心ヲ破壊シ目的外ノ結果ヲ生スルノ懸念アリト云フニ在リテ、此規定ハ恰モ同一ノ商業ヲ営ム者ニ向ヒ同地域内ニ在ラサルトキハ何人ノ使用スル商号ニテモ随意ニ之ヲ使用スル事ヲ得ル旨ヲ公許スルト同一ナルニ付キ、例ヘハ甲カ芝ノ高輪(地域内)ニテ万青ト称シ料理業ヲ営ムニ当リ、乙カ僅々数丁ヲ隔ツル品川(地域外)ニテ同一ノ商号ヲ称シ甲ト同種ノ業ヲ営ムモ甲ハ之ヲ如何トモスル能ハサルノ弊ヲ生セン、故ニ此規定ハ却テ奸商ニ加害ノ釁隙ヲ与フルモノナリト説ケリ、蓋シ此ノ如キハ甚タ稀有ノ事例ニシテ高輪ト品川トノ如キ市区略々連続シテ而シテ法律上其地域ヲ異ニスルカ如キハ僅々千百ノ十一タルニ止マリ、苟モ地域ヲ異ニスルヤ実際其地ノ遠ク相距ツルヲ常トシ、前例ノ如キハ容易ニ存在シ得ヘキ事実ニ非ス、而シテ之ヲ憂フルハ是レ猶ホ噎ニ懲リテ食ヲ廃スルノ愚ノミ、固ヨリ論スルニ足ラス、況ヤ奸人ノ奸、至ラサル所ナシ、如何ナル厳密ノ法律ヲ以テスルモ万々乗ス可キ釁障ナカラシメントスルハ到底人智ノ能クスル所ニ非サルニ於テヲヤ
第三十二条 ○略ス
右第一項ノ修正案ハ「毎年初ノ三ケ月内」トアルヲ不便トシ単ニ「毎年一渡一定ノ月」ト為サントセリ、是レ孰レニ従フモ不可ナシト雖トモ原案ノ如クスルモ亦何ノ不便カ之アラン、凡ソ何種ノ商人ニテモ毎年大除日ニ総勘定ヲ為サヽル者ナク、随テ翌年一月ヨリ三月迄ノ間ニ目録及ヒ表ヲ造ルハ寧ロ便宜ノ季節ト云ハサルヲ得ス、縦令商人ノ陰暦ニ従フ者アルモ陽暦ノ三月ハ陰暦ノ二月ニ当ル、此場合ニ於テモ尚ホ目録及ヒ表ヲ造ルニ十分ノ時間アリ、修正ノ必要果シテ何レニ存スルヤ
同第二項「弁償ヲ得ル事ノ確ナラサル債権ニ付テ其推知シ得ヘキ損失額ヲ扣除シテ之ヲ記載」セシムルニ於テハ目録及ヒ表ト帳簿トノ符合ヲ失ヒ大ナル不都合ヲ生ス可シトシテ、此一段ヲ削ル事ニ修正セントス、是レ頗ル不当ノ修正ナリ、良シ帳簿上ニ於テ少シク不便利アリトスルモ此修正ノ如キハ決シテ採用スルヲ得サルモノトス、其理由如何ト云フニ此弁償ヲ得ル事ノ不確ナルニモ拘ハラス猶ホ其全額ヲ記載スルニ於テハ殆ト世人ヲ欺クノ実ヲ生ス可シ、実ニ従来会社ノ諸弊事中
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此一事ノ如キ其弊ノ最モ大ナリシモノトス、何トナレハ目録及ヒ表ノ記載ハ甚タ立派ナルモ、其実此債権モ弁償ヲ得ス彼債権モ弁償ヲ得スト云フニ至テハ他日至大ノ不都合ヲ生スル事ヲ免ル可カラサレハナリ而シテ其目録及ヒ表カ帳簿ト符合セスト云フト雖トモ此ノ如キハ修正案カ猶ホ原案ノ儘ニ採用セル最後ノ一段即チ到底損失ニ帰ス可キ債権ハ全ク之ヲ記載セサル場合ニ於テモ亦然ル所ニシテ、彼此決シテ相択ム所ナキナリ
第四十九条 ○略ス
本条ノ取引ノ商業主人ニ対シテハ無効ナルモ代務人ト相手方トノ間ニ在テハ有効ナルヤ固ヨリ修正案ノ謂フ所ノ如ク毫モ疑ヲ容レサル所ナリ、而シテ法文ノ所謂「双方」トハ商業主人ト相手方トヲ指称セシモノニシテ、其代務人ト相手方トヲ指称セシモノニ非サル事ハ少シク法理ヲ解スル者ノ直チニ首肯ス可キ所トス、何トナレハ代務人ハ主人ノ機械タルモノニシテ法律上之ヲ「双方」ノ語中ニ包含セシム可キモノニ非サレハナリ、然ラハ則チ修正案ハ此法文「双方」ノ一語ヲ誤解セシヨリ此修正ヲ試ミシニ止マリ修正案ノ旨趣ハ毫モ法文ノ旨趣ト異ナル所ナシ、修正論者ニシテ若シ之ヲ知ラハ亦自カラ其修正ヲ中止ス可キノミ
第五十二条 ○略ス
右修正ノ理由タル商業使用人カ第三者ノ問ヲ受ケテ己レ之ヲ為ス権アリト答ヘタルトキハ、殊ニ其職分ノ範囲内ニ付キ置カレタルモノト看做スニ於テハ或ハ其答ヘタル後ハ主人ハ最早制止スル能ハストノ解釈ヲ生スルノ憂ナシトセス、故ニ削ル可シト云フヲ其要点トセリ、然レトモ此ノ如キ誤謬ノ解釈ノ生セン事ヲ憂フルハ真ニ所謂杞憂ノ甚シキモノニシテ、此カ為メニ此必要ナル字句ヲ削ラントスルハ抑々無用ノ業ト謂ハサルヲ得サルナリ
第六十三条 ○略ス
些少ノ分量ヲ見分クルハ固ヨリ困難ナラン、然レトモ此ノ如キハ法律上屡々存スル所ニシテ必竟裁判所ノ認定ニ依ルモノトシテ格別不都合ナル事無カル可シ、而シテ些少ノ取引ト雖トモ法文ヲ以テ之ヲ明許スルハ不当ナリト云フハ亦一理ナキニ非ス、然レトモ若シ之ヲ削ルニ於テハ例ヘハ小僧カ隣店ノ為メ代リテ豆腐ヲ買フ忽チ其任ヲ解ク可シト云フニ至リ過酷モ亦甚タシカラン、故ニ是レ亦寧ロ原案ヲ優レリトス
第六十五条 ○略ス
此修正モ亦至大ノ誤解ニ出ツ、蓋シ雇傭契約ハ人ト人トノ相互ノ信用ニ成ルハ勿論ナルヲ以テ主人ノ死亡スルヤ之ヲ解約スルヲ当然トス可キカ如シト雖トモ、此雇傭タル元来主人カ座右ノ頤使ニ供スルニ非スシテ専ラ其商業ノ為メニスルモノナレハ、主人ハ死亡スルモ其商業ニシテ継続スルニ於テハ猶ホ其雇傭ヲ継続スルヲ可トス、而シテ若シ新主人之ヲ嫌厭シ又ハ代務人若クハ使用人カ新主人ヲ嫌厭スル場合ニ於テハ其解任又ハ辞任ハ総テ甚タ容易ニシテ修正論者ノ恐ルヽカ如ク其意ニ反シテ雇傭シ、若クハ雇傭セラルヽノ弊ハ決シテアル事無シ、故ニ此修正モ亦採ルニ足ラサルナリ
第七十四条 ○略ス
責任出資ニ止マラストハ固ヨリ其無限ナルヲ云フ、故ニ修正論者カ之
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ヲ直接ニ無限責任ト記セントスルハ其妨ケナキヤ言ヲ俟タスト雖トモ然レトモ法典ノ文モ亦体裁ヲ欠ク可カラス、乃チ本法カ株式会社ノ定義ニ付テ「責任出資ニ止ル」ト記セシヨリ、本条モ亦之ニ応シテ「責任出資ニ止マラス」ト記セサルヲ得ス、是レ此原文アル所以ニシテ而シテ修正案カ強ヒテ修正ヲ施サントスルハ甚タ謂レナキノ業ト云フ可キナリ
第七十五条 ○略ス
合資会社・株式会社ハ各々合資若クハ株式ノ字ヲ社名ニ加フルヲ要スルニ独リ合名会社ノミ会社ナル二字ヲ以テ足レリトシ合名ノ字ヲ加ヘシメサルハ権衡ヲ得サルノ観ナシトセス、然レトモ合資・株式二会社ハ或ハ業名或ハ地名或ハ典故等ニ依リ其社名ヲ設クルモノナルヲ以テ合資若クハ株式ノ字ヲ加ヘ以テ其会社ノ性質ヲ明カニスルノ必要アリト雖トモ、合名会社ハ否ラスシテ必ス社員ノ氏名ヲ以テ社名ト為スニ依リ合名ノ二字ナキモ其合名会社タルヤ固ヨリ明瞭ナリ、原文ノ規定タル此カ為メタルニ施行条例カ之ニ反シテ合名会社モ亦他ノ会社ノ如ク合名ノ字ヲ加ヘシムルハ是レ特ニ既設会社ニ命スルモノナリ、既設会社ハ其性質合名会社ナルモ其社名必スシモ社員ノ氏名ヲ以テセサルモノ多キニ依リ斯クハ之ヲ命セシニ過キサルナリ、将来ノ会社ノ為メニスル本条ノ規定ニ此事ナキハ固ヨリ当然ノ事タリ、修正文又誤レリ
第八十一条 ○略ス
第八十二条 ○略ス
右修正案ハ此二条ニ於ケル開業ノ語ヲ解シテ事業着手ノ意ト為シ、乃チ該四字ニ改メントス、其理由ハ若シ之ヲ営業開始ノ意トセハ鉄道会社ノ如キ大工業ヲ経営スル会社ニ於テハ登記ノ日ヨリ僅々六ケ月ニシテ営業ヲ開始スルハ到底行ハル可カラサルノ事タリ、故ニ事業着手ト明記スヘシト云フニ在リ、善ヒ哉言ヤ、之ヲ営業開始ノ意トセハ其鉄道会社等ニ適用シ難キ事争フ可カラスト雖トモ然レトモ本法ノ意ハ依然営業開始ノ意ヲ以テセルモノナリ、元来此規定タル徒ラニ会社ノ名ヲ設ケ之ヲ登記シテ実際ニ其営業ヲ開始スル事ナク唯タ其名ニ依リ不法ノ利得ヲ其間ニ営マントスル者ヲ防止スルニ在リ、故ニ其営業開始ヲ速ナラシムルモノニシテ六ケ月ノ期間ハ鉄道等ノ大事業ニハ過短ナルモ普通ノ営業ニハ凡ソ十分ノ時間ナリトセサル可カラス、而シテ法律ハ多数ノ場合ヲ目的トシテ規定セサルヲ得サルモノナレハ此ノ如ク六ケ月内ニ其営業ヲ開始ス可シト命シタルナリ、若シ夫レ之ニ反シテ之ヲ事業着手ト改メンカ鉄道会社ノ如キ六ケ月内ニ唯タ一条ノ鉄軌ヲ買入レシ場合モ尚ホ事業ニ着手セシモノト為リ、本条カ期間ヲ設ケ弊害ヲ防カントスル規定ハ容易ニ免脱シ得セシムルニ至ラン、況ヤ普通多数ノ速成的営業ノ場合ニ於テヲヤ、故ニ本条ハ依然原文ノ如クニ存置スルヲ要シ、而シテ鉄道等ノ事業ノ為メニハ特ニ鉄道条例等ノ特別法ニ於テ本条ノ例外ヲ規定シ以テ各々其情況ニ適セシムルヲ便トス、於是乎此修正モ亦従フ事ヲ得サルナリ
第九十五条 ○略ス
右修正案ハ年百分ノ七ノ利息ヲ低額トシテ之ヲ百分ノ十ト改メ、更ニ若《(「脱)》クハ契約上ノ利息」ノ九字ヲ加ヘントス、是レ固ヨリ可ナリ、然レト
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モ百分ノ七トハ所謂法律上ノ利息ニシテ之ニ従フト否トハ当事者ノ随意ニ在リ、当事者之ヲ以テ低額ニ失スルモノトセハ契約上ノ利息トシテ之ヲ百分ノ十トスルモ可ナリ、百分ノ二十若クニ三十《(ハ)》トスルモ亦可ナリ、此等ノ事タル原法文ノ下ニ於テ尚ホ随意ニ之ヲ為シ得ヘシ、故ニ百分ノ十ト改ムルモ可ナリ、改メサルモ亦不可ナシ、而シテ該九字ヲ挿入スルハ実ニ蛇足ニ属スルモノトス、何トナレハ該九字ナシト雖トモ本法ハ私法ノ一ナレハ、何レノ場合ニ於テモ禁止的命令的ノ条文ニ非サル限リハ、吾人ノ私約ヲ以テ随意ニ之ニ反スル事ヲ得ヘケレハナリ
第九十八条(第二項) ○略ス
右修正案ハ合名会社ハ財産上ヨリモ寧ロ信用上ノ関係ヲ有ストシ、原法文ノ相続人カ当然社員タル事ヲ得ルノ原則ヲ転倒シテ当然社員タラサルヲ原則トシ、且社員ニシテ業務担当ノ権利ナキヲ不都合トシ以テ末段ノ規定ヲ削去セリ、是レ此会社法ノ主義ヲ知ラサルモノニシテ根柢ヨリ本法ヲ誤解セルモノナリ、元来旧主義ノ会社法ニ於テハ合名会社ハ専ラ人ノ信用ヲ基本トシ従ヒテ社員ノ一人死亡スレハ直チニ其会社ヲ解散スル事トマテ為セシモ此ノ如キハ経済上ノ不利甚タ大ナルヲ以テ輓近進歩セル法理ハ此主義ヲ棄テ信用上ノ関係ヲ重ンスルト同時ニ財産上ノ関係モ亦之ヲ軽視セス、随ヒテ社員死亡スルモ解散ト為ササルノミナラス其相続人又ハ承継人カ当然其後ヲ継ク事ヲ原則ト為シタリ、是レ仏法ト其主義ヲ異ニスル所ニシテ我合名会社ノ規定ニ社員ノ入社ニ関スル規定及ヒ社員退社ノ一款(本節第五款)ヲ特ニ設ケタル所以ナリトス、然ルヲ独リ此条ニ於テノミ相続人ハ社員タル能ハサルヲ原則トスルカ如キ規定ヲ為サハ、全ク前後矛盾所謂木ニ接スルニ竹ヲ以テスルノ嗤ヲ免レサルナリ、修正案ノ無学一ニ此ニ至ル歟、且夫レ業務担当ノ権利ナキ者ニシテ社員タルハ不都合ナリト云フ、是レ亦大ナル誤ナリ、抑々相続人ニ社員タル地位ヲ続カシムルハ財産上ノ関係ノ為メタリ、而シテ業務ヲ担当セシムルハ一ニ其人ノ徳義ト伎倆上ノ信用トニ依ルモノナルニ、半途ヨリ父ニ代レル相続人カ果シテ此信用アルヲ保シ得ヘケンヤ、故ニ此事ハ総社員ノ承諾ニ任スル事トスルハ固ヨリ当然ノ事タリ、社員ニシテ業務ヲ担当セサル事ハ独リ此場合ノミナラス数人ノ社員中之ヲ一人若クハ二三人ニ専任スルカ如キハ往々存在ス可キ事実ニシテ毫モ不都合ノ点アルヲ見ス、然ラハ則チ相続人ニ社員ノ地位ヲ相続セシメ之ニ業務担当ノ権ヲ与ヘサルモ亦何ノ不可ナル事カ之アランヤ
第百十二条 ○略ス
右修正モ亦法理ヲ誤ルモノナリ、蓋シ会社ノ財産ハ縦令社員ノ出資ヨリ成リシニモセヨ会社ナル一法人ニ専属スル一個ノ財団ナルヲ以テ之ニ付テハ会社ノ債権者カ優占権ヲ以テ社員ノ債権者ヲ排除シ独リ自カラ弁償ヲ得ヘキヤ当然ノ事ニシテ、此例ヲ社員一己ノ負債ノ場合ニ推及スルハ抑々非ナリ、社員一己ノ財産ニ付テ会社ノ債権者ト社員一己ノ債権者トハ全ク同等ノ地位ニ在ルモノナレハ二者共ニ優先権ヲ有スルノ理ナシ、之ヲ譬フレハ会社ト社員トハ恰モ債務者ト保証人トノ如シ、玆ニ甲・乙・丙・丁ノ四人アリ、甲ハ乙ノ債権者ニシテ丁ハ丙ノ
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債務者タリ、而シテ丙ハ甲ノ為メニ乙ノ保証人ト為リタリトセヨ、此場合ニ丁ハ乙ノ財産ニ対シテ何等ノ権利ナキニ甲ハ丙ニ対シテ請求権アリ、丁ハ甲ニ対シテ優先権アラス、即チ甲・丁相並ンデ平等ノ分派ヲ受クルニ過キス、会社ト社員トハ其関係乙ト丙トノ関係ト異ナリ、従ヒテ社員ノ債権者カ会社財産ニ対スル関係ハ丁・乙間ノ関係ト異ナルモ会社ノ債権者ト社員ノ債権者トノ二人カ社員ノ財産ニ於ケル関係ハ猶ホ甲・丁二人カ丙ニ対スル如シ、此理ヲ熟玩セハ修正案ノ法理ニ戻ル所以モ亦自ラ明瞭ナラン
第一編第六章第二節(合資会社)
○略ス
合資会社ハ有限責任ヲ以テ原則トスルモノナレハ業務担当社員ノ責任ヲ無限ノモノトスルノ理ナク、且他ニ十分取締ノ方法存スルヲ以テ有限責任タラシムルモ此カ為メニ弊害ヲ生シ得ヘキノ余地ナシ、而シテ若シ猶ホ無限責任トスルヲ以テ安全トセハ第百四十六条ノ規定アリ、会社ハ随意ニ之ヲ約定シ若クハ議決スル事ヲ得ヘシ、法律上ヨリ強テ之ヲ命令スルノ必要アラサルナリ
第百六十四条(第二項) ○略ス
修正案ハ総申込人ノ半数ヲ出席セシムルヲ以テ実際望ミ得ヘカラサル事ト為スモ、此会議タル必スシモ申込人自身ノ出席ヲ要スルニ非ス、代理人ヲ出席セシムルモ亦可ナルモノナレハ其事ノ決シテ至難ナラサルノミナラス、第二百三条ニ依リ第百五十二条ヲ適用シ得ルノ便方アルヲ以テ実際上毫モ差支アル事無シ、然ルニ若シ修正案ニ従ハンカ、極メテ重要ナル議事ヲ僅々三数人ノ議定ニ一任スルニ至リ、其弊害ノ甚タ恐ル可キモノアラン、何トナレハ総株金ノ半額以上ニ当ル申込人ハ僅ニ三数人タル事稀有ノ事例ニ非サレハナリ、此修正モ亦採ル可カラス
第百七十六条 ○略ス
此修正タル大ニ株券調製ノ手数ト費用トヲ省クノ便アリ、未タ俄ニ排斥ス可カラス、然リト雖トモ若シ他日之ヲ分割シテ数通ノ株券ト為ス事ヲ求ムル者アルニ於テハ、会社ハ之ニ応セサルヲ得スシテ到底費用ト手数トヲ省クヲ得サルノミナラス寧ロ最初ニ尽ク一株一通ト為シ置クノ利ナルニ如カサルニ至ラン、況ヤ一株ト数株トノ株券アリテ予メ一定セサルトキハ屡々株券変造ノ弊ヲ招キ易キニ於テヲヤ、此ノ如ク利害ヲ計較シ来ルトキハ却テ原案ノ優レルヲ見ルナリ
第百八十七条 ○略ス
修正案ノ主要ナル理由ハ取締役ハ一年毎ニ更代スルヲ例トスルヲ以テ其度毎ニ其株券ヲ新調セサル可カラスシテ無益ノ費用ト手数トヲ要スト云フニ在リ、然レトモ此費用ト手数トハ甚タ些少ニシテ言フニ足ラサルノミナラス若シ猶ホ之ヲ厭ハヽ其融通ヲ禁スルノ印影ニ対シ更ニ消印ヲ押捺スル事トセハ此手数ト費用トモ亦之ヲ省キ得ヘシ、而シテ修正案ハ取締役ハ容易ニ不正ノ株券ヲ発行シ得ルヲ以テ融通ヲ禁スルノ印ヲ押捺スルモ其実効ナシト云フト雖トモ、若シ此ノ如ク極論セハ寧ロ初メヨリ何等ノ規定ヲモ為サス之ヲ会社ニ預カリ置ク事ヲモ廃シ全ク取締役ノ徳義ニ一任セサルヲ得サル可シ、然レトモ既ニ法律ニ於
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テ為シ得ヘキノ予防ヲ為スニ於テハ啻ニ之ヲ預カリ置クノミヲ以テ足レリトセス、此禁融通ノ捺印ヲ為ス事ヲモ要ス、若シ夫レ此捺印ナカランカ取締役カ陰ニ之ヲ引出シ不正ニ之ヲ融通セントスルモ甚タ容易ノ業ニシテ、之ヲ不正ノ株券ノ発行ニ比スレハ事実上ノ難易及ヒ法律上ノ制裁ノ軽重アル事、実ニ同日ノ論ニ非サルナリ、故ニ此修正モ亦採用スル事ヲ得ス
第百九十一条 ○略ス
第百九十二条 ○略ス
会社ノ資本既ニ小額ナレハ其業務モ亦寡少ナル可ク従テ其給料モ亦小額ニシテ足ル可シ、果シテ然ラハ小会社ニ三名ノ監査役ヲ置クモ其経済ノ之ヲ許サヽルカ如キ事無カル可シ、殊ニ株式会社ハ通例相応ニ多額ノ資本ヲ有スルヲ常トスレハ此憂ハ殆ト杞憂ニ属セン、然レトモ若シ実際三名以上ノ監査役ヲ要スル事無シトセハ固ヨリ修正案ニ従フテ可ナリ、独リ奈何セン監査役ハ取締役ノ不正奸私ヲ監査スルモノニシテ、此ノ如キ職務ハ一人孤立シテ之ニ当リ得ルモノニ非ス、可成多数相倚ルヲ以テ利トスル事ヲ原案ノ規定蓋シ甚タ必要タルナリ
又修正案ハ第百九十二条第一号ノ職分ヲ以テ監査役ノ責務ヲ非常ニ重大ニスルモノト誤信シ、随テ此カ為メニ監査役カ取締役ヲ監督シ、其業務ニ干渉シテ遂ニ商業ノ円滑ヲ害スルニ至ラン事ヲ恐ル、蓋シ監査役ノ責務ハ固ヨリ重大ナルニ相違ナシト雖トモ、然レトモ其職分タル監査ニシテ監督ニ非ス、即チ単ニ之ヲ傍観シテ其過愆若クハ不整ヲ監視シ検出スルニ止マルモノナレハ修正論者ノ云フカ如キ弊害ヲ生スルノ恐アル事無シ、啻ニ然ラス、第一号ノ職分ハ監査役ノ監査役タル主眼ニシテ若シ之ヲ削去セハ監査役ヲシテ霊ナキノ仏タラシムルモノナリ、是レ豈可ナランヤ
第二百二十二条 ○略ス
会社ノ書類ハ其債権者ノミナラス新ニ会社ト取引ヲ為サントスル者ニモ亦展閲ヲ得セシメサル可カラス、而シテ修正論者モ亦之ヲ認メサルニ非ス、即チ其理由書ニ曰ク
 之ヲ要スルニ此「何人」ノ文字ヲ「債権者」ト改メ、其他ノ人ニ至リテハ苟モ実際ノ必要アリテ閲覧ヲ求ムル場合ノ外之ニ応セサルモ可ナル事トシタシ
若シ果シテ此ノ如ク「債権者」ト記セハ其所謂「実際ノ必要アリテ閲覧ヲ求ムル者」ニ対シテ会社カ之ニ応セサルモ亦如何トモシ難キニ至ラン、是レ即チ自家撞着ノ論ニシテ此等ノ者ノ求ニ応セシメンニハ尚ホ「何人」ノ語ヲ存置セサル可カラサルニ非スヤ、若シ夫レ理由書ニ所謂「徒ラニ会社ヲ煩ハシ之ヲ妨害セントスルノ徒ナキヲ保セサル」事ノ如キハ或ハ其恐ナシトセサルモ、施行条例ニ於テ既ニ閲覧ノ為メ五十銭以下ノ手数料ヲ徴スル事ヲ許セシニ因リ、之ヲ以テ此等ノ徒ヲ防止ス可キヤ亦疑ヲ容レサルナリ
第三百三十一条 ○略ス
本条「偶然」ノ語タル意義明瞭毫モ曖昧ノ点ナク又前条ト抵触スル事無シ、蓋シ前条ノ規定ハ加害ノ当時ニ関シ而シテ本条ノ規定ハ其将来ニ係ルモノトス、即チ加害当時ニ在リテ得ヘカリシ利益ハ契約ノ当時
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予見シ得ヘカリシモノト否トヲ問フ事無キモ其将来ノ利益ニ至リテハ偶然ノモノハ之レカ賠償ヲ求ムルヲ得スト規定シタルニ過キス、然リ而シテ偶然ノ利益トハ予見シ得ヘカラサリシ利益ノ意義ニ非ス、予見シ得ヘカラサリシ利益ノ中ニハ偶然ノモノト然ラサルモノトアリ、前条ハ正面ヨリ之ヲ規定シ本条ハ裏面ヨリ之ヲ規定シタルモノニシテ毫モ意義ノ曖昧ナル点アルヲ見ス、要スルニ修正案ハ法文ノ誤解ニ基因スルヲ以テ固ヨリ採用スルニ足ラサルナリ
第三百七十七条 ○略ス
右修正ハ法理上及ヒ実際上共ニ採用ス可カラサルモノトス、元来質債務者カ其債務ヲ弁償セスシテ質入シタル物ヲ他ニ売却スルハ前条ニ規定セル如ク一個ノ犯罪ナルハ疑ヲ容レサル所ナルヲ以テ、買主カ其情ヲ知テ之ヲ買取リタルモ亦一個ノ犯罪ト謂ハサルヲ得ス、即チ刑事上ノ制裁ヲ与フルハ法理ノ宜シク然ルヘキ所トス、況ヤ修正案ノ如ク刑ヲ料セスシテ単ニ質債権者ノ請求ニ応シ、再ヒ其代価ヲ支払ハシムル事トスルモ其資力上実際之ヲ支払フ能ハサル場合モ尠カラサル可キヲ以テ、此民事的制裁ハ其実効甚タ乏シク十分ナル信用保持ノ方法ト謂フ可カラサルニ於テヲヤ、原案断シテ改ム可カラサルナリ
第三百七十九条 ○略ス
修正論者ハ二通以上ノ証券ヲ発行シタルトキニ非サレハ本条ノ如キ場合ヲ生セスト云フト雖トモ、是レ甚タ謂ハレナキノ説ニシテ一通ヲ発行シタルトキト雖トモ亦本条ヲ適用スル場合アリ、啻ニ然ルノミナラス二通以上ノ発行ハ本法第四百八十六条ノ既ニ許可セシ所ニシテ之ヲ禁スレハ商業ノ機敏円活ヲ妨クルノ恐レアリ、而シテ倉荷証書ノ一通ニ限ル事ハ何人ト雖トモ少シク事理ヲ弁スル者ノ毫モ疑ハサル所ナレハ此修正モ亦採ルニ足ラサルモノトス
第三百九十八条 ○略ス
是レ亦一ノ杞憂ニシテ白地トハ一ノ法律語ナレハ自カラ特別ノ意義アリ、之ヲ解シテ全ク空白ナルモノト為ス者ナカル可シ、而シテ其意義タル固ヨリ修正案ト同一ナレハ之ニ従フモ妨ナク唯タ強ヒテ修正スルノ必要ナキノミ
第四百十六条 ○略ス
委任者ヲシテ其責任ヲ負ハシムルモ委任者ハ更ニ代弁人ニ対シテ其賠償ヲ求メ得ルヤ勿論ナルヲ以テ其迷惑少カラスト云フヲ得ス、要スルニ第五十二条ト同シク修正案ハ採ル可カラサルモノナリ
第四百二十七条(第三項) ○略ス
普通ノ契約ハ以テ商慣習ニ反対スル事ヲ得ヘシ、然レトモ仲立人組合ノ定款ハ之ヲ普通ノ契約ト同視スル事ヲ得ス、何トナレハ仲立人ハ公然ノ信用ヲ以テ他人ノ間ニ立チ商業取引ヲ媒介スルモノニシテ公益ニ関スル機関ナレハナリ、商慣習ノ一語於是乎削ル可カラス
第四百二十八条(第一号) ○略ス
前条既ニ商慣習ノ語ヲ存セハ仲立人組合ノ定款ハ決シテ商慣習ニ背戻セサルモノタリ、然レトモ定款ノ規定タル必竟取締法ニ過キサレハ仲立人ハ委任者ノ委任ニ従ヒ取引ヲ為スニ際シ定款ヲ遵守スルモ尚ホ其取引ノ商慣習ニ背戻スル事無シトセサル可シ、而シテ此取引タル前条
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ニ説キシ所ノ普通ノ契約ナレハ之ヲ以テ商慣習ニ背戻スルモ固ヨリ其当事者ノ随意ニシテ、強ヒテ之ヲ遵守スルノ要ナシ、即チ仲立人ハ其定款ニ背戻セサル限リハ専ラ委任者ノ欲スル所ニ従フ可キモノナレハ本条ニ於テ特ニ商慣習ヲ遵守スルヤ否ヤヲ監視セシムルノ理アラス、更ニ之ヲ換言スレハ各個ノ取引ニ於テハ商慣習ニ反対スルモ随意ナルモノナレハ仲立人モ亦之ニ反対スル事ヲ得ヘシ、而シテ其商慣習ノ取締法ニ属シ背戻ス可カラサルモノニ至リテハ定款既ニ之ヲ遵守セシヲ以テ、仲立人ハ定款ヲ遵守スレハ則チ其商慣習ヲ遵守スル事ト為ル、故ニ前条ニ商慣習ノ一語ヲ削ル可カラサルト同時ニ本条ニ此一語ヲ挿入スルノ必要ナキモノトス
第一編第八章第五節(自第四百五十六条至第四百八十条)仲買人
○略ス
本法ニ所謂仲買人ハ我邦従来ノ所謂仲買人ニ非サルナリ、然レトモ本邦従来ノ所謂問屋ノ語モ亦本法ノ所謂仲買人ト其意義ヲ一ニセス、蓋シ従来ノ所謂問屋ノ語ニハ数義アリ、本法ノ所謂仲買人ヲモ指称シ、又酒問屋ノ如キハ酒類卸売人ヲ指シ、廻漕問屋ノ如キハ運送物取扱人ヲ称シ意義一定ナラス、此ノ如キ語ハ法律上之ヲ使用スルヲ得サルナリ、寧ロ別種ノ新語ヲ択ムニ如カス、而シテ仲買人ノ語ハ能ク其事実ニ適スルヲ以テ吾人ハ修正ヲ加フル事ヲ否トセサルヲ得ス
第四百四十九条 ○略ス
取引所ノ必要ナル所以ハ之ヲシテ空相場又ハ不当ノ騰貴等ヲ防遏シ、又商品ノ品位ヲ保持セシムルノ目的ニ外ナラサル可シ、果シテ然ラハ取引所ニ於テノミ大取引ヲ為サシムルハ此目的ヲ達センカ為メ欠ク可カラサルノ手段タル場合少カラサル可シ、而シテ修正論者ノ憂フル専売権ヨリ生スル弊害ノ如キハ取引所条例ヲ以テ之ヲ防止スル事決シテ難カラス、是レ本条ノ削ル可カラサル所以ナリ
第四百八十四条(第一項第三号) ○略ス
第四百八十四条(同第四号) ○略ス
右第一項第三号ノ修正ハ最モ事情ニ適セリ、採用セサル可カラス
第四号ノ性質トハ物品ノ性質ニ非スシテ行李ノ性質ヲ云フヤ法文上自カラ明カナリ、故ニ或ハ紙包或ハ筵包又ハ柳行李ト記スルノ類ニシテ固ヨリ易事ニ属セリ、修正案ハ誤解ニ出テシニ過キサルナリ
第四百九十七条 ○略ス
「其儘使用シ若クハ売却シ得ヘカラサルトキ」トハ代価ノ点ニ於テモ元価ノ儘ヲ意味スルモノニシテ毫モ了解ニ困シムノ理ナシ、然ルニ若シ此一句ヲ削レハ語リテ詳カナラサルノ弊アリ、殊ニ量定物ノ場合ヲ欠クニ至ラン、故ニ此修正モ亦タ採用スル事ヲ得ス
第五百三十条 ○略ス
本条ノ規定ハ差額取引ノ如ク初ヨリ履行ノ意思ナキ契約ヲ防止センカ為メニ設ケタルモノニシテ、決シテ冗文ニ非サルナリ
第五百九十条 ○略ス
資産上切迫ナル情況ニ至リタルト否トヲ認別スルハ必スシモ至難ノ業ニ非ス、且此事ハ必竟裁判所ノ認定ヲ待ツモノナレハ債権者ハ之ヲ請求スレハ可ナリ、而シテ既ニ此情況アリトセハ期間ノ満了如何ニ論ナ
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ク償還ヲ求メ得ヘキヤ当然ニシテ、必スシモ支払停止ノ時ヲ待ツ可キノ理アル事無シ、故ニ之ヲ削ルハ寧ロ害アルモ其要ナキナリ
第六百六十条(第三項) ○略ス
修正案カ「其旨ヲ明示シテ」ノ一語ヲ加エントスルハ全ク蛇足ニ過キサルナリ、蓋シ此一語ナシト雖トモ本項ハ必ス其明示アリシ場合ニ適用スルモノニシテ、縦令所有者又ハ其他ノ者ノ損害賠償ノ要求ニ充テンカ為メ保嶮《(険)》ニ付シタル場合ト雖トモ其明示ナキトキハ第一項ノ規定ニ因リ当然自己ノ保険ト看做ス可キモノナレハナリ
第六百八十三条 ○略ス
修正案ノ原案ト異ナル所ハ要スルニ被保険者ニ償還ス可キ割合ノ如何ニ在リトス、然レトモ此割合タルヤ約定ナキ場合ノ為メニ規定シタルニ止マリ、当事者ハ随意ニ其割合ヲ約定シ得ヘキモノナレハ強テ此規定ヲ修正スルノ要ナシ、況ヤ修正案ノ割合ト雖トモ諸国普通ノ定例ト云フニ非ス、又他ニ此ノ如クセサル可カラサル理由ナキニ於テヲヤ
第六百八十八条(第一項) ○略ス
年金保険ハ生命保険ト均シク共ニ貯金ノ性質ヲ帯フルモノナレハ、縦令其方法ノ全ク相反スルニモセヨ同一ノ規定ヲ為シテ不可ナル無シ、修正論者ノ憂フル所ハ第六百八十三条ノ年金保険ニ適用シ難シト云フニ在レトモ、其適用ノ方法タル被保険者ヨリ一時ニ払入レタル金額ヨリ年々支払ヒタル金額ヲ差引キ其残金ノ半額ヲ償還スルニ在リテ毫モ適用シ難キモノ無シヲ何ソ別個ノ規定ヲ要センヤ
第六百九十条 ○略ス
年々支払フ可キ被保険額ハ保険ノ性質ニ依リ又ハ保険者ニ依リ各々自カラ相異ナル可キモノニシテ、本条ノ規定ノ如ク年々支払フ被保険額少クトモ平均二倍以上ノ準備金ヲ設ケシムル事トスルモ其準備金額ハ各々自カラ相異ナリテ修正論者ノ憂フルカ如ク火災保険ニ十分ニシテ生命保険ニ不十分ナル等ノ理アル事無シ、修正案ハ保険及ヒ保険者ノ種類ニ因リ異同アル能ハス、凡テ画一ノ法ニ依ラシムルモノナレハ却テ不便ヲ生スルニ至ラン、此修正モ亦採ル可カラサルナリ
第六百九十一条 ○略ス
此原文ハ実際上甚タ不便ナルノミナラス修正論者ノ論スルカ如ク殆ト行ハレ難キ場合ナキニ非サル可シ、故ニ本条ハ寧ロ修正案ニ従フヲ可トス
第六百九十四条 ○略ス
本条ノ修正案モ亦其理アリ、故ニ本条ハ強ヒテ修正ス可キノ必要ナシト雖トモ修正ノ序次ニ於テハ寧ロ此修正案ニ従フヲ可トス
第七百十六条(第五号) ○略ス
本号ヲ以テ手形ノ要伴《(件)》ト為セシハ手形ノ安全ヲ謀ルカ為メニ甚タ必要ナリトス、是レ予メ之ヲ手形ニ記入シ置キ以テ取引者ノ注意ヲ提醒スルニ非サレハ取引者ハ必スシモ手形ト引換ニテ支払ヲ為ス事ヲ求メス或ハ一時ノ反証等ヲ受取リテ支払ヲ為ス者ナシトセス、為メニ支払済ノ手形カ世上ニ流通スルノ危険ヲ生スルニ至ル可ケレハナリ、而シテ修正論者ハ之ヲ手形ノ要件ト為シ之ヲ欠ケハ其手形ヲ無効ニスルヲ以テ商業ノ便利ヲ妨クルモノト為セトモ、吾人ハ其何カ故ニ商業ノ便利
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ヲ妨クルカヲ発見セス、蓋シ此要件ノ如キハ予メ印刷シテ手形ノ用紙ニ記入シ置クモノナレハ此カ為メニ調製上ノ手数ヲ増スカ如キ事無ケレハナリ
第八百二十条(第二項) ○略ス
銀行ノ通帳ハ共通証書ナルモノナレハ民事訴訟法第三百三十六条ニ依リ裁判所ニ差出ス可キモノタルノミナラス元来一ノ商業帳簿ナルヲ以テ本法ニ依ルモ争アル場合ハ亦之ヲ裁判所ニ差出サヽルヲ得ス、修正案カ特ニ之ヲ本条ニ記入セントスルハ実ニ無用ノ業ニ属スルモノナリ
第八百二十四条 ○略ス
日本船舶タルノ特権ハ単ニ日本ノ国旗ヲ掲ケ日本法律ノ保護ヲ受クルニ止マレハ其制限ノ如何ニ依リテ実利上ニ大ナル関係ヲ生スル事無シ即チ修正論者ノ云ヘルカ如ク外人ヲシテ我海上ノ利益ヲ壠断セシムルカ如キ恐アル事無シ、況ヤ原文ノ制限タル欧米諸国ニ比シテ業ニ既ニ厳密ナルモノニシテ若シ更ニ之ヨリ一層ノ厳密ヲ加フルトキハ却テ外資輸入ノ道ヲ妨クルノ恐アルニ於テヲヤ、此修正案モ亦決シテ採ル可カラサルナリ
第八百二十六条 ○略ス
船長ノ氏名及ヒ国籍ノ登記ニシテ必要ナラスンハ則チ止ム、然レトモ苟モ船長ハ船舶ノ権利上ニ関係ヲ有スル事ノ至大ナルヲ認メハ其登記ノ必要ナル事モ亦之ヲ認メサル可カラス、而シテ既ニ之ヲ必要トセハ船長ノ変更アル毎ニ之ヲ登記スルハ亦欠ク可カラサル事ナリ、然ルニ沿岸航海ノ場合ノミ独リ之ヲ登記セスシテ可ナルノ理由アランヤ、況ヤ船長ハ重職ニシテ実際上屡々変更スルモノニ非サレハ修正論者ノ言ヘルカ如キ不都合ヲ感スル事甚タ少カラサルヲ得ス、是レ修正案ノ採ル可カラサル所以ナリ
第八百九十九条(第二項) ○略ス
此修正モ亦蛇足ニ過キサルナリ、此ノ如ク修正セサルモ事実ハ全ク此ト同一ノ結果ニ出ツ可シ、何トナレハ船長ノ署名・捺印ハ必スシモ船長自身ニ之ヲ為サヽルヲ得サルニ非ス、他人ヲシテ之ヲ為サシムルモ亦可ナルノミナラス船長カ代理人ヲ任シ船荷証書ヲ作ラシムルモ亦固ヨリ随意ニシテ、此修正ナキモ普通ノ法理上船長ハ当然其権利アルヤ勿論ナレハナリ
第三編第六章(自第九百三十条至第九百四十五条)海損
同  第八章(自第九百五十三条至第九百七十五条)保険
○略ス
本法ハ元来其全体ニ於テ日本ノ慣習ハ勿論、英国ノ法律慣習モ採用ス可キハ既ニ採用シタルノミナラス海商法ニ付テハ特ニ英国ノ法律慣習ヲ参酌シタルモノ多シ、然ルニ修正論者ハ尚ホ海損並ニ保険ニ付テ英国ノ慣習ヲ参酌シテ修正セント云フ、如何ナル規定カ果シテ其慣習ニ反スルヤ、之ヲ摘挙明示スルニ非サレハ誰カ其是非ヲ判定シ得ヘケン蓋シ論者ハ其一例ヲ掲ケタルモ是レ唯タ会社ノ定款ヨリ生スル結果ニシテ商法ノ規定ニ関スルモノニ非ス、加之仮ニ英法ニ倣フテ制定スルモ仏・独会社ト契約シタルトキハ均シク同一ノ結果ヲ生セン、而シテ海損計算ノ方法ノ如キ之ヲ異ニスルモ亦至大ノ困難ナルニ非ス、豈妄
 - 第19巻 p.504 -ページ画像 
リニ英法ニ倣フ事ヲ要センヤ
第九百三十条(第三号) ○略ス
共同冒険物ヲ共同危嶮ヨリ救助スル為メニ故ラニ生シタル損害費用之ヲ共同海損ト云フ、而シテ本号ノ場合ハ恰モ此定義ニ合ス、如何ソ之ヲ共同海損ノ外ニ置クヲ得ンヤ、修正論者ハ海員等カ自己ノ不正ナル所業ヲ湮滅センカ為メニ、故ラニ坐礁・膠沙ヲ為ス者ナキニ非サルヲ恐ルト雖トモ其正非ハ一ニ裁判所ノ判定ニ任ス可キモノニシテ、不正ノ場合カ共同海損ニ属セシム可カラサルカ為メニ正当ノ場合モ亦共同海損ニ属セシメスト云フハ論理ヲ為サヽルノ論タリ、所謂懲羮吹韲ノ愚ヲ免レス
第九百三十二条 ○略ス
船舶ニ付テハ其半額トシ積荷ト其分担ヲ異ニシタルハ理論上正確ノ理由アルニ非スト雖トモ、実際ニ就テ之ヲ見レハ船舶ノ価額ハ至大ニシテ積荷ノ価額トハ霄壌ノ差アルヲ以テ、若シ単ニ其価額ニ応シテ分担スル事トセハ船舶ハ殆ト海損ノ大部分ヲ負担シ、積荷ハ負担ノ名アルモ殆ト其実ナキカ如キニ至ラン、是レ特ニ船舶ノ半額ト定メタル所以ニシテ仏法ノ如キモ亦此制ヲ採レリ、而シテ我邦ニ於テハ更ニ此ノ如クス可キノ一理由アリ、他ナシ我邦ノ如キ幼稚新進ノ国ニ在リテハ巨額ノ資本ヲ投シテ危嶮ノ最大ナル此航海事業ヲ企図スルハ極メテ容易ナラサルヲ以テ勉メテ之ヲ保護奨励スルノ方法ヲ取ル事ヲ要シ、而シテ共同海損ニ付キ船舶ノ分担ヲ軽クシ半額ト為スハ亦其方法ノ一タルモノナレハナリ、修正案即チ採ル可カラス
第千十二条(第二項) ○略ス
破産者ノ財団ハ破産財団トシテ一団ヲ為シ破産者トハ別個ニ特立セルモノニシテ、其財団ニ付テノ執務ハ管財人之ニ当リ破産者ハ管与ノ責ナキモノナレハ今マ破産者カ管財人ニ補助スルハ決シテ自己ノ事務ヲ執ルニ非ス、寧ロ債権者ノ為メニスルモノナルヲ以テ之ニ報酬ヲ与フルモ亦非理トセス、況ヤ法文「与フル事ヲ得」ト記シ必ス与フ可シト云フニ非サルヲヤ、本条モ亦原文ノ如クニシテ可ナリ
第千二十三条(第四項) ○略ス
本条ノ書面ヲ与ヘシムルハ全ク好意的旨趣ニ出ツル特別ノ手続ニシテ仮令其書面カ債権者ニ達セサルモ裁判所ノ過失トセス、随テ損害賠償ノ責任アル事無シ、是レ此但書アル所以ニシテ若シ之ヲ削去セハ他日其責任有無ノ紛争ヲ招クニ至ラン、修正案又非ナリ
  五月十三日
                      井上正一
                      磯部四郎
                      宮城浩蔵
                      熊野敏三
                      本野一郎
                      城数馬
                      岸本辰雄
   ○本巻明治二十三年五月二十四日(第二八二頁)、同二十三年八月十二日(第三九四頁)、同二十三年八月二十七日(第四〇二頁)、同二十三年九月四日(第
 - 第19巻 p.505 -ページ画像 
四二九頁)、同二十三年十二月十三日(第四三四頁)、並ニ第二十巻所収「東京商業会議所」明治二十五年六月六日、同二十六年九月二十二日、同二十六年十二月二十五日、同二十七年六月二十七日、同二十七年十二月二十日、同二十八年一月十二日、第二十一巻所収「東京商業会議所」同二十九年九月十四日、同三十年六月二十八日、同三十年十二月二十七日、同三十一年十二月二十四日、同三十二年二月十日ノ各条参照。