デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治25年5月5日（1892年）

是日栄一、当会議所会頭トシテ農商務省商工局長斎藤修一郎ヨリ照会サレタル、イタリア国ミリアニ製紙ノ本邦ニ於ケル販売ノ有無如何ニ関シ見込ナキ旨ヲ回答ス。

第二回東京商業会議所事務報告　　第三〇―三一頁　明治二六年四月刊
一伊国製紙ノ儀ニ付農商務省商工局長ヨリ照会ノ件
　本件ハ明治二十五年一月廿九日斎藤商工局長ヨリ照会ニ係リ、其要旨ハ伊国ミリアニ製紙ノ本邦ニ於ケル販売ノ有無等ニ付キ当業者ノ見込ヲ承知シタシト云フニ在リ、依テ其後当業者ニ就キ種々調査ヲ遂ケ同年五月五日左ノ如ク同局長ヘ回報シタリ
　　先般伊国ミリアニ製紙ノ景況等ニ付我当業者ノ意見ヲ御承知相成度旨該製紙ノ見本及価格表ヲ添ヘ御依頼有之候ニ付、其後之ヲ東京洋紙商組合ニ開示シ其販売ノ景況等問合置候処今般別紙記載ノ趣意ヲ以テ意見書差出候間委細ノ義ハ右ヲ以テ御了承相成度候、此段別紙相添御回答申上候也
　　明治二十五年五月五日
　　　　　　　　　　　　東京商業会議所会頭　渋沢栄一
　　　　農商務省商工局長　斎藤修一郎殿
（別紙）
　　　　東京洋紙商組合意見書ノ要旨
伊国ミリアニ製紙ノ見本ヲ撿スルニ其品質何レモ優等ニシテ殊ニ贅沢紙（書翰用紙及手漉紙）ノ如キハ其製造頗ル巧緻ヲ極メ、我製紙業者ノ宜シク参考スベキ好材料ナリ、然レトモ元来此種ノ製紙ハ我国人ニ不向ノ品ナルニ付之ヲ要スルニ其品質ノ優劣代価ノ高低如何ニ拘ハラス充分販売ノ見込ナシ
従来我国ニ於テ需用スル外国製印刷紙及図引用紙（重ニ英国製及独国製）ハ其高頗ル多シト雖、我商人ハ産地ヨリ直接ニ輸入セスシテ横浜其他ノ在留外国商ヨリ買入ルヽヲ例トス、然ルニ此ミリアニ製印刷紙
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及図引用紙ノ横浜着直段ハ之ヲ調査シ難キニ付随テ其販売ノ景況如何ニ就テハ充分見込ヲ立ツルヲ得ズ、然レトモ今暫ク印刷紙ニ就テ之ヲ評センニ我国ニ於テハ最モ光沢アル純白色印刷紙ヲ好愛スルガ故ニ此ミリアニ製印刷紙ノ如キ純白色ニアラサルモノハ到底我国ニ於テ充分販売ノ見込ナシ