デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第20巻 p.117-121(DK200010k) ページ画像

明治25年8月31日(1892年)

是日栄一、当会議所会頭トシテ、現行五十銭銀貨通用ノ必要ナキ旨大蔵省主計局長松尾臣善ニ答申、併セテ其他ノ補助貨ノ存廃ニツキ意見ヲ上申ス。


■資料

第二回東京商業会議所事務報告 第二八―二九頁 明治二六年四月刊(DK200010k-0001)
第20巻 p.117-118 ページ画像

第二回東京商業会議所事務報告  第二八―二九頁 明治二六年四月刊
一五十銭銀貨通用ノ儀ニ付大蔵省主計局長ヨリ照会ノ件
 本件ハ明治二十五年五月三十日付ヲ以テ松尾主計局長ヨリノ照会ニ係リ、其要旨ハ五十銭銀貨ハ通用上必要ナリヤ否ヤト云フニ在リ、依テ其後理財部ニ調査ヲ附托シタルニ、同部ニ於テ審議ノ末、五十銭銀貨ハ通用上不便ナリト決シ、其答申案ヲ草シ報告シタルニ付、同年八月二十六日第十四回ノ臨時会議ニ附シ其可決ヲ経、同月三十一日左ノ如ク同局長ヘ答申シタリ
 去五月三十日附ヲ以テ現行五十銭銀貨通用上ノ要否其他ノ問目ニ就キ卑見答申候様御照会ノ件ハ其後篤ト遂審議候処、右五拾銭銀貨ノ義ハ其形体過大ニ其量目過重ニシテ携帯授受ノ間大ニ不便有之、随テ従来取引上ニ於テハ一般ニ嫌忌セラルヽノ貨幣ナルニ付、本会議所ニ於テハ通用上全ク必要ナシト議決仕候、尤第一ノ問目ニシテ斯ノ如ク決スル上ハ他ノ問目ニ対シテハ敢テ答申ノ必要無之ト存候得共、本会議所ハ補助貨幣ノ流通ニ関シ少シク卑見有之候ニ付、為御参考左ニ其次第ヲ記述シテ併セテ供貴覧候、先ハ此段答申仕候也
  明治二十五年八月三十一日
            東京商業会議所会頭 渋沢栄一
    大蔵省主計局長 松尾臣善殿
    補助貨幣流通ニ関スル意見
 現行五拾銭銀貨ノ取引上不便ニシテ流通上必要ナラサルコトハ本文
 - 第20巻 p.118 -ページ画像 
中ニ記スル如シ、而シテ今若シ其品位ヲ九百位トシテ新形五十銭銀貨ニ改鋳スルトセバ実価ヲ変スルコトナクシテ幾分カ其形体ヲ小ニシ其量目ヲ減シ得ヘシト雖トモ、既ニ現行ノ五十銭銀貨ハ携帯授受不便アリテ取引上一般ニ嫌忌セラルヽ以上ハ、仮令之ヲ改鋳シテ幾分カ其形量ニ改良ヲ加フルトスルモ要スルニ五十歩百歩ノ差違ニ過キス、之ヲシテ取引上便利ノ通貨タラシムルハ到底望ミ難シトス、是実ニ本会議所ガ五十銭銀貨ハ流通上必要ニアラズシテ其改鋳モ亦要用ナラズト信スル所以ナリ、況ヤ現行五十銭銀貨ノ流通高ハ無慮二百五十万円ノ上ニ出ツルト云ヘバ尽ク之ヲ改鋳スルノ費用亦頗ル多額ヲ要スルニ於テオヤ、又況ンヤ補助貨幣ノ如キ常ニ其授受ノ頻繁ナルモノヽ品位ヲ高ムルハ却テ磨損ノ期ヲ早クスルノ不利アルニ於テオヤ、故ニ本会議所ハ将来補助貨幣ハ二十銭及十銭ノ二種ト定メ、現行ノ五十銭銀貨ハ他日漸ヲ以テ之ヲ二十銭及十銭ノ銀貨ニ改鋳スルモノトシ、現行ノ五銭銀貨ノ如キハ其形体過小ニシテ取引上不便アルニ付全ク之ヲ廃止セラレン事ヲ希望ス
 現行ノ補助銀貨ハ五十銭・二十銭・十銭及五銭ノ四種類ニシテ、其中五十銭銀貨及五銭銀貨ノ流通上共ニ必要ナラザルコトハ前述ノ如シ、然ルニ今熟々民間取引ノ実際ヲ案スルニ、新ニ二十五銭銀貨ヲ鋳造シテ市場ニ流通セシムル時ハ、往年幕府ノ治下ニ在リテ一分銀ノ能ク行ハレタルガ如キ取引上頗ル便利アルベシト信ズ、故ニ今若シ現行五十銭銀貨ノ改鋳ヲ必要ナリトセバ、之ヲ新形九百位ノ五十銭銀貨ヨリハ寧ロ八百位二十五銭銀貨ニ改鋳シ、現行ノ二十銭銀貨ハ他日漸ヲ以テ之ヲ廃止スルニ如カズ、是蓋シ亦一案ナリト信ズ
 又現行ノ補助銅貨ハ二銭・一銭・五厘及一厘ノ四種ナレトモ、其中二銭銅貨ハ其形体過大ニシテ取引上甚タ不便アリ、又一厘銅貨ハ其形体過小ニシテ同シク不便アリ、此二種ハ既ニ一方ニ於テハ五銭白銅貨及一銭銅貨ノ流通アリ、一方ニ於テハ二厘以下旧銅貨ノ流通アル今日ニ於テハ共ニ無用ノ貨幣ナルニ付、向後共ニ其鋳造ヲ廃止シ漸ク之ヲ引上ケラレン事ヲ望ム、而シテ他日旧銅貨ノ流通ヲ全ク廃停セラルヽノ日ニハ、之ニ代フルニ更ニ現行ノ一厘銅貨ヨリモ品位粗ニシテ形体ノ大ナル一厘新銅貨ヲ発行セラレンコトヲ希望ス
 以上記述スル所ハ本会議所ガ補助貨幣ノ流通ニ関シテ抱負スルノ意見ナリ、今ヤ五十銭銀貨流通上ノ要否ニ就キ本文ノ答案ヲ具スルニ当リ、聊カ御参考ノ為メ玆ニ一言ヲ附スルコト爾カリ


東京商業会議所月報 第一号・第四―五頁 明治二五年九月 ○第五号議案(DK200010k-0002)
第20巻 p.118-119 ページ画像

東京商業会議所月報  第一号・第四―五頁 明治二五年九月
    ○第五号議案
過日本部ヘ調査ヲ托セラレタル大蔵省主計局ノ照会ニ係ル現行五拾銭銀貨通用上ノ要否等ノ件ハ其後本部ニ於テ遂調査候処、右五拾銭銀貨ノ義ハ其形躰過大ニ量目過重ニシテ取引上大ニ不便アルニ付通用上全ク必要ナシト相決候、依テ別紙答申案ヲ起草シ此段及御報告候也
                    理財部長
  明治二十五年七月二十八日
                      渋沢栄一
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿
 - 第20巻 p.119 -ページ画像 
   ○別紙ハ略ス。



〔参考〕東京経済雑誌 第二六巻第六三三号・第一一一―一一三頁 明治二五年七月二三日 ○寧ろ少数紙幣を発行すべし(DK200010k-0003)
第20巻 p.119-121 ページ画像

東京経済雑誌  第二六巻第六三三号・第一一一―一一三頁 明治二五年七月二三日
    ○寧ろ少数紙幣を発行すべし
大蔵省にては五十銭銀貨に関し、東京銀行集会所・大坂同盟銀行及び各地商業会議所等に諮問して曰く、現今通用の五十銭銀貨は形状大に失し、量目重きに過くることなき乎、若し形状大に失し、量目重きに過ぐとせば、其の八百位を九百位と為し、以て形状を縮小し量目を軽減せは如何、而して其の形状は如何なるものを以て便利と為すや、若し形状を縮小し量目を軽減するを以て必要とせば、現今流通の五十銭銀貨は一時に改鋳するを要するや、又は漸次に改鋳するを以て便利となすやと、是に於て東京銀行集会所にては再三同盟銀行の会議を開きて審議を尽し、更に当市の両替商多数の意見を聴きて左の決議を為し其の筋へ答申せり
 現今通用の五十銭銀貨は、其の形状量目共に重大にして、携帯上不便少なかざるより《(ら脱)》、取引上一般之を嫌忌するを以て、縦令今改鋳して聊か其形を小ならしむるも、将来便利の流通を得る能はざる者と思惟す、且夫れ改鋳の新形は現に流通する所の一銭銅貨と殆んど其径寸を同くするを以て、他日却て奸商の弊竇を開くの恐れなしとせず、故に当集会所は此改鋳の一案に付ては全く之を廃停せられんこと希望の至りに堪えず
然り而して東京銀行集会所にては更に一歩を進め、我か邦将来の補助貨幣は現在の十銭・二十銭の二種に定め、五十銭銀貨は今日之を改鋳せさるのみならず、他日漸を以て十銭及び二十銭銀貨に改鋳せんことを希望せり、又た大坂両替商及私立銀行の意見は左の如し
      両替商の意見
 一五十銭銀貨は通用上必要と認む
  (理由)五十銭銀貨は携帯に不便なるのみならず、取引上五十銭紙幣及二十銭已下の銀貨あるを以て必要なる貨幣に非らず、寧ろ通貨中嫌忌さるゝものゝ一に居れり、然るに尚爰に通用上必要なりと云ふ所以は、現行五十銭紙幣は漸次消却さるべきを以て将来自然に之れが必要を感ずべければなり
 右の如く五十銭銀貨は通用上必要なるものとし、第一項より第五項に至る各項に就ての意見は左の如し
  第一 五十銭銀貨は今日に於て欠乏を感ぜず
   前陳の如く今日に於ては尚五十銭紙幣の流通あればなり
  第二 此項に対しては答案区々なるを以て多数のものより漸次左に掲ぐ
   甲 現今流通せる五十銭紙幣の流通額を以て適度とす
   乙 現今の流通高を以て適度とす
   丙 五十銭銀貨紙幣現今流通合額已内を以て足れり
   丁 四百万円内外を以て適度とす
  第三 現行五十銭銀貨は授受上不便なりと雖ども、又之を改鋳する必要もなし
 - 第20巻 p.120 -ページ画像 
  第四 新に形小而実価を変ぜさるものを採用発行するは不可なりとなさゞるも而かも亦殊更に之れが鋳造を為すの必要を感ぜず
  第五 前項述ぶる如く新形銀貨発行の必要を感せざるも、既に現行五十銭銀貨中に二種ありて混同流通の不便を感し居れり、故に現行中旧五十銭銀貨即ち径大の分を径小(近年発行の分)に改鋳を希望す
      私立銀行同盟全躰の意見
 一五十銭銀貨は通用上必要と認む
  一五十銭銀貨は今日に於て流通上欠乏を感せず
  一五十銭銀貨は今日の流通高を以て適度と認む
  一現行五十銭銀貨の品位は従前の儘にて現行中の旧形を改鋳し、新形而已の流通とせば別に不便を感せず
   但流通上授受の法則を二十五円己下と定められたし
  鋳損・磨損等の貨幣交換方手数を要するは流通上の不便少なからず宜敷簡便の方法に改められたし
故に大坂の両換商及び私立銀行者は、五十銭銀貨の通用を以て必要と認むるものなりと雖も、其の之を必要なりとする所以は、無きより有るに若かずと云ふにあらされば、則ち五十銭紙幣の漸次消却せらるゝか為め、将来五十銭銀貨の必要を感するに至るべしと云ふものなり、左れば若し五十銭銀貨と五十銭紙幣とは何れか最も通用上必要なりやと問はゝ、五十銭紙幣最も必要なりと答ふるや知るへきなり、京浜同盟銀行者も亦た然り、彼等は五十銭銀貨の改鋳を非とし、将来漸を以て現在の五十銭銀貨を、十銭及び二十銭銀貨に改鋳せんことを希望せりと雖も、是れ畢竟我か政府に於て少数紙幣は漸次補助銀貨に交換して消却するの政略を執れるか為めのみ、若し夫れ此の政略を措いて、銀貨と紙幣とは何れか最も便利なるやと問はゝ、紙幣最も便利なりと答ふへきや疑ふへからさるなり、然らは則ち諸氏は何を以て此の際少数紙幣の発行を主張せざるや
勿論補助貨幣を廃して代ふるに少数紙幣を以てすることに関しては学士の非難少なからず、曰く、少数紙幣は其の額面価格に対して製造の費用大数紙幣よりも多し、曰く、少数紙幣は損傷の患多くして引換の費用多し、而して汚損敗裂の紙幣世に行はるゝの弊あり、曰く、日常の小取引に於ては正貨は計算に便なりと雖も、紙幣は計算に不便なり曰く、少数通貨までも悉く紙幣を以て之に充つるとせは一旦戦争等のことありて正貨を要するに方り究せさるへからず、曰く、少数紙幣は細民間の流通に入るを以て、一朝恐慌の起るや細民は騒然として其の兌換を請求すへきを以て、恐慌をして益々甚しからしむへしと、諸説紛々たりと雖とも、余輩を以て之を見れは、此等の説未た以て少数紙幣の非を証するに足らざるなり、請ふ余輩をして試みに補助貨幣を廃して、之に代ふるに少数紙幣を以てするときは、幾何の利益を生ずべきやを計算せしめよ
蓋し明治三年十一月造幣局創業より、同廿三年三月に至る迄に於て鋳造せし、我邦補助銀貨の枚数発行高、並に明治廿四年四月一日現在少数紙幣の枚数流通高は左の如し
 - 第20巻 p.121 -ページ画像 

                        銀貨発行高
            枚数
                        紙幣流通高
                  枚            円
 五十銭銀貨    八、五九三、四四六    四、二九六、七二三
 二十銭銀貨   四〇、九九六、三六〇    八、一九九、二七二
 十銭銀貨    九一、〇六二、七九〇    九、一〇六、二七九
  小計    一四〇、六五二、五九六   二一、六〇二、二七四
 半円紙幣     三、三五〇、五〇四    一、六七五、二五二
 五十銭紙幣    三、五九四、四九六    一、七九七、二四八
 二十銭紙幣   一六、五六三、四三〇    三、三一二、六八六
  小計     二三、五〇八、四三〇    六、七八五、一八六
 通計     一六四、一六一、〇二六   二八、三八七、四六〇

 (備考)五銭銀貨ありと雖も、白銅五銭貨に改鋳することとなれるを以て省けり
補助銀貨の発行高は、直ちに認めて其の流通高と為すを得ざるの事情ありと雖も、未た流通高の統計なきを以て、姑く発行高を以て流通高なりと認むるときは、方今我が邦小数通貨は総計二千八百三十八万七千四百六十円なり、今ま若し此等の小数通貨を悉く銀貨と為すときは我か政府は更に六百七十八万五千百八十六円の補助貨幣を鋳造せさるへからず、而して此れ等の補助貨幣は鋳造費を要するは勿論、巨額の銀塊を購入せさるへからさるを以て、其の利子のみにても毎年数万円の多きに達すべし、是れ豈に不経済の甚しきものならずや
然かるに之れに反して前記の少数通貨を悉く紙幣と為すときは、我か政府は僅々二百八十一万三千五十一円九十二銭(小数紙幣一枚の鋳造を二銭と概算す)を費すのみにして、二千百六十万二千二百七十四円の補助銀貨を鎔解して、他の必要なる費途に供するを得べし、是れ豈に非常の利益ならずや、唯だ紙幣の損傷は速かにして平均四ケ年なるを以て、一億六千四百十六万千二十六枚の四分の一即ち四千百四万二百五十六枚を毎年改造せさるへからず、而して其の費用は実に八十二万八百五円十二銭なりと雖も、小数通貨を悉く銀貨と為すに比すれは尚ほ非常に利益なるべし、何となれば小数通貨を悉く銀貨と為すに於ては、毎年大約百四十一万余円の利子(年五分と見て)を損失せざるべからざればなり、況んや銀貨の磨滅を受くるは紙幣の損傷を受くるか如く速かならずと雖も、亦た到底磨滅を免かるへからさるに於てをや、今ま銀貨の磨滅年限を二十五年と仮定すれば、一億六千四百十六万一千二十六枚の二十五分の一即ち六百五十六万六千四百四十一枚宛毎年改鋳せさるへからず、而して其費用は実に十三万一千三百二十八円八十二銭なり、但し一枚に付き二銭と概算せり、嗚呼紙幣と正貨とは其の便否同日の論にあらさるに、更に経済上損得の著明なること斯の如し、何そ区々の理由に依りて此の便利と利益とを収得せずして可ならんや、余輩は少数紙幣の発行を希望すること切なり