デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第20巻 p.135-153(DK200013k) ページ画像

明治25年9月30日(1892年)

是日栄一、当会議所会頭トシテ北村英一郎・益田克徳等四名ノ提案セル鉱業条例ニ修正ヲ要スル儀ニ就キ、農商務大臣伯爵後藤象二郎ニ建議ス。


■資料

第二回東京商業会議所事務報告 第二〇頁 明治二六年四月刊(DK200013k-0001)
第20巻 p.135-136 ページ画像

第二回東京商業会議所事務報告  第二〇頁 明治二六年四月刊
一鉱業条例修正ノ儀ニ付農商務大臣ヘ建議ノ件
 本件ハ明治二十五年五月二十七日会員北村英一郎・益田克徳・大江卓・梅浦精一諸君ノ提案ニ係リ、其要旨ハ明治二十三年九月法律第八十七号鉱業条例中ニハ我国鉱業ノ現況ニ適応セザル条項少ナカラザルニ付、委員ヲ選挙シ修正意見ヲ定メ其筋ヘ建議スベシト云フニ在リ、依テ同年六月三日第十三回ノ臨時会議ニ付シタルニ委員五名ヲ選ヒ調査ヲ附托スル事ニ決シ、即チ会頭ノ指名ヲ以テ左ノ諸君ヲ選挙シタリ
                   北村英一郎君
                   橋本辰三郎君
                   益田克徳君
 - 第20巻 p.136 -ページ画像 
                   伊井吉之助君
                   梅浦精一君


東京商業会議所月報 第一号・第一―六頁 明治二五年九月 【○同月 ○八月四日午後五時、本…】(DK200013k-0002)
第20巻 p.136 ページ画像

東京商業会議所月報  第一号・第一―六頁 明治二五年九月
○同月 ○八月四日午後五時、本会議所仮事務所ニ於テ委員会議ヲ開キ鉱業条例修正ノ件ヲ審議シ、同十時散会ス
○中略
○同月同日 ○八月二四日午前十一時四十分、同所ニ於テ委員会議ヲ開キ鉱業条例修正ノ件ヲ審議シ、午後三時三十分散会ス
○同月二十六日午前十一時、東京銀行集会所ニ於テ委員会議ヲ開キ鉱業条例修正ノ件ヲ審議シ、午後五時三十分散会ス
○中略
○同月 ○八月二十九日午後五時、本会議所仮事務所ニ於テ委員会議ヲ開キ鉱業条例修正ノ件ヲ審議シ、同九時散会ス


東京商業会議所月報 第二号・第三―六頁 明治二五年一〇月 【○同月 ○九月十日午前十時、本…】(DK200013k-0003)
第20巻 p.136 ページ画像

東京商業会議所月報  第二号・第三―六頁 明治二五年一〇月
○同月 ○九月十日午前十時、本会議所仮事務所ニ於テ委員会議ヲ開キ鉱業条例修正ノ件ヲ審議シ、午後三時散会ス
○中略
○同月 ○九月二十九日午後五時四十分、東京銀行集会所ニ於テ臨時会議ヲ開ク、当日出席会員ハ二十六名ニシテ左ノ議案ヲ審議シ、午後零時散会ス、其議決ノ要領ハ左ノ如シ
  ○第一号議案
 去六月三日臨時会議ニ於テ本会議所ヨリ鉱業条例修正ノ意見ヲ其筋ヘ建議ス可シト議決シタル末、其調査ヲ委員ニ托セラレタルニ付爾来篤ト審議ヲ遂ケ別冊ノ如ク其修正案ヲ調成仕候、依テ別冊修正案及別紙建議文案相添此段及御報告候也
                    委員
                      北村英一郎
                      橋本辰三郎
  明治廿五年九月廿四日          益田克徳
                      伊井吉之助
                      梅浦精一
  東京商業会議所会頭
    渋沢栄一殿
  (鉱業条例ノ修正ヲ要スル義ニ付建議文案ハ全ク原案ニ可決シ条例修正案ハ其第七十三条第一項中「石炭硫黄」ヲ石炭石油及硫黄ト修正シタルノミニテ他ハ全ク原案ニ可決シタルニ付、九月卅日之ヲ農商務大臣ヘ建議シ其全文ハ共ニ本欄参照ノ部ヘ連掲スルヲ以テ重複ヲ厭ヒ玆ニ之ヲ略ス)
本案ハ条例修正案第七十三条第一項中「石炭」ノ次ヘ石油及ノ三字ヲ加ヘ、其他ハ総テ原案ノ通リ確定ス


東京商業会議所月報 第二号・第八―一四頁 明治二五年一〇月 【○九月三十日農商務大臣ヘ呈シタ…】(DK200013k-0004)
第20巻 p.136-142 ページ画像

東京商業会議所月報  第二号・第八―一四頁 明治二五年一〇月
 - 第20巻 p.137 -ページ画像 
○九月三十日農商務大臣ヘ呈シタル鉱業条例ニ修正ヲ要スル義ニ付建議書ノ全文ハ左ノ如シ
    鉱業条例ノ修正ヲ要スル義ニ付建議
明治廿三年九月法律第八十七号ヲ以テ発布セラレタル鉱業条例ハ其第九十二条ニ依リ本年六月一日ヨリ施行セラレタリ、蓋シ我国ノ鉱業ハ明治初年以来長足ノ進歩ヲ為シ今ヤ将ニ我国家ノ一大富源タラントス此時ニ当リ更ニ新法ヲ制定シテ以テ旧法ノ不完全ヲ補足シ益々其発達ヲ企図セラルヽハ固ヨリ至当ノ挙措ナルベシト雖モ、今本会議所ノ審案スル所ニ依レハ該条例中ニハ往々我鉱業ノ現況ニ適応セザル条項少ナカラザルヲ信ズ、蓋シ我国鉱業ノ如キハ未ダ幼稚ノ域ヲ脱セズ、然ルニ今俄ニ欧米先進諸国ニ行ハルヽ法規ヲ採テ直チニ之ヲ我国ニ適用セントスレバ徒ニ我鉱業上ニ急劇ノ変動ヲ生ズルニ過ギズシテ却テ其目的ニ適ハザル結果ヲ呈スルナキヲ保ス可カラズ、之ヲ要スルニ現行鉱業条例ハ法令上ノ完全ヲ求メテ却テ実際ノ不便ヲ来シ結局我鉱業ノ発達ヲ阻害スルノ虞ナキヲ得ズ、是ヲ以テ本会議所ハ其修正ヲ切望シ別冊修正案ヲ調成シテ敢テ之ヲ閣下ニ呈ス、閣下本会議所ノ意見ヲ採納シ之ヲ修正セラレン事希望ノ至ニ堪ヘズ、此段本会議所ノ決議ニ依リ謹テ建議仕候也
                東京商業会議所会頭
  明治廿五年九月三十日          渋沢栄一
    農商務大臣 伯爵 後藤象二郎殿
(別冊)
      鉱業条例修正案
第六条及第七条 削除
 理由 二人以上共同シテ鉱業ヲナス場合ハ会社ヲ組成スル場合ト認ムルヲ当然ナリト信ズ、特ニ第七条ノ規定ノ如キハ共同鉱業人ノ過半数サヘ同意セバ其他ノ者ニ於テ異議アルモ採掘権ノ売買・譲与等ヲ決行シ得ベキガ如ク解釈セラルヽコトナシトセズ、是豈至当ノ規定ナランヤ、故ニ此二条ハ之ヲ削除シ二人以上共同シテ鉱業ヲ為ス場合ハ総テ商事会社ノ規定ニ準拠セシムルコトヽセリ
第八条中 「所轄鉱山監督署長」ノ下ヘヲ経由シテ農商務大臣ノ十字ヲ加ヘ又第二項トシテ左ノ一項ヲ加フ
試掘地ノ境界ハ第四十一条ニ依ルコトヲ要ス
 理由 試掘ノ認可権ヲ鉱山監督署長ニ有セシムルハ便ナルベシト雖モ其権力過大ニ失スルガ如ク他日或ハ弊害ヲ生スルコトナキヲ保シ難シ、故ニ試掘モ採掘ト同ジク農商務大臣ニ於テ認可スルコトトナセリ、又第二項ヲ加ヘタルハ試掘地ノ境界ハ鉱業条例施行細則第三条ニ規定シアリト雖トモ、本条例中ニ全ク其規定ナキニ付法条ノ不備ヲ補ハン為メナリ
第九条中 「所轄鉱山監督署長」ヲ総テ農商務大臣ト改ム
 理由 同上
第十一条 削除
 理由 本条ヲ削除シタルハ鉱業税ヲ廃シタルニ付之ト権衡ヲ得セシメンガ為メナリ、或ハ曰ク、採掘ノ場合ニハ鉱区税ヲ課スレドモ試
 - 第20巻 p.138 -ページ画像 
掘ノ場合ニハ無税ナルガ故ニ鉱業税ヲ廃スルニ拘ラズ本条ノ規定ヲ存スルヲ妥当ナリト、然レトモ試掘中ニ採掘シ得タル鉱物ヲ販売スルハ其鉱山ニ見込ナクシテ試掘ヲ廃シタル場合多キガ故ニ之ニ課税スルガ如キハ甚ダ苛酷ニ失スルモノト信スルナリ
第十四条第二項中 「十四日」ヲ三十日ト改ム
 理由 原文ノ儘ニテハ其期限稍々短キニ過グルガ為メナリ
第十八条中 「試掘ニ就テハ所轄鉱山監督署長採掘ニ就テハ」ノ二十字ヲ削ル
 理由 第八条ヲ修正シタル当然ノ結果ナリ
第十九条第一項中 「試掘ニ就テハ所轄鉱山監督署長採掘ニ就テハ」ノ二十字ト第二項中「其ノ達ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ」ノ十七字トヲ削ル
 理由 第一項ノ修正ハ第八条ヲ修正シタル当然ノ結果ニシテ又第二項中三十日ノ出訴期限ハ稍々短キニ過グルノ感アルヲ以テ「其ノ達ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ」ノ文字ヲ削リ単ニ行政裁判所ヘ出訴スルヲ得ルコトヽシ、即チ其出訴期限ハ普通行政裁判法ニ則ルコトニ改メタリ
第二十一条ヲ左ノ如ク修正ス
他人ノ試掘地若クハ鉱区内ニ就テハ試掘若クハ採掘ノ出願ヲ為スコトヲ得ズ
 理由 原案ノ規定ニ依レバ同一ノ鉱物ニアラザル以上ハ他人試掘ノ年限中ト雖トモ其試掘地内ニ於テ採掘ヲ許セリ、然レトモ元来或人ノ認可ヲ得タル試掘地内若クハ特許ヲ得タル鉱区内ヘ更ニ他人ノ立入リテ試掘若クハ採掘ヲナスコトヲ許ストキハ、奸黠ノ徒往々之ニ資リテ鉱業人ヲ苦シムルノ弊ヲ生スルコトナシトセズ、故ニ一旦或人ノ試掘地若クハ鉱区ト定マリタル以上ハ右地区内ニ於テハ他人ノ試掘ヲ許サヾルノミナラズ、猶仮令異種ノ鉱物ト雖トモ他人ノ採掘ヲ許サヾルコトヽ改メタリ
第二十二条 削除
 理由 第二十一条ヲ修正シタル理由ニ同ジ
第二十三条 削除
 理由 第二十一条ヲ修正シタル理由ニ同ジ
第二十六条 削除
 理由 鉱物ハ国ノ所有ニ属スルモノナルガ故ニ之ヲ採掘スル上ニ於テ相当ノ取締法ヲ規定スルハ固ヨリ必要ナルベシト雖トモ、我邦ノ如キ鉱業猶幼穉ナル国柄ニ於テ若シ強テ本条ノ規定ヲ実行スルトキハ各鉱業人ハ其手数ト費用トニ堪ヘズシテ一二屈指ノ鉱山ヲ除クノ外ハ悉ク廃坑ノ不幸ニ陥リ、其極却テ我邦鉱業ノ発達ヲ障害スルコトナキヲ恐ルヽナリ、是本条削除ノ已ムヲ得ザル所以ナリ
第二十七条及第二十八条 削除
 理由第二十六条ヲ削除シタル当然ノ結果ナリ
第二十九条中 「一ケ年」ヲ総テ二ケ年ト改ム
 理由 鉱業人ガ鉱物ヲ採掘スルニ当リ之ヲシテ謂レナク其事業ヲ放棄セシメザル為メ相当ノ制限ヲ設クルハ固ヨリ不可ナシト雖トモ、
 - 第20巻 p.139 -ページ画像 
今熟々実際ノ景況ヲ案スルニ鉱業人ガ一旦特許ヲ得タル後、機械装置等ノ為メ大ニ準備ヲ要スル場合アリ、又市場ノ景況ニ依リ市価ノ回復ヲ待ツ為メ故ラニ其供給ヲ節制スルノ場合ナキニアラズ、之ガ為メ鉱業人ハ已ムヲ得ズ一年若クハ其以上鉱業ニ着手セズ、或ハ一時之ヲ中止スルコト往々其例アリ、故ニ本条中ノ「一ケ年」ヲ共ニ二ケ年ト修正シ以テ鉱業人ニ幾分ノ余裕ヲ与フルコトヽセリ
第三十条中 「前二条」ヲ前条「十四日」ヲ三十日ト改メ「其ノ達ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ」ノ十七字ヲ削ル
 理由 「前二条」ヲ前条ト改メタルハ第二十八条ヲ削除シタル当然ノ結果ニシテ、「十四日」ヲ三十日ト改メタルハ第十四条修正ノ理由ト同シ、又「其ノ達ヲ受ケタル云々」ノ文字ヲ削リタルハ第十九条第二項修正ノ理由ト同ジ
第三十一条第二項中 「六ケ月」ヲ一ケ年ト改ム
 理由 坑内実測図ヲ六ケ月毎ニ必ズ追補スルハ別段其必要アルヲ認メザルニ付、前陳ノ如ク修正ヲ加ヘ一ケ年間ハ追補ノ手数ヲナスニ及ハザルコトヽセリ
第三十三条 削除
 理由 試掘ノ認可及採掘ノ特許ハ共ニ農商務大臣ニ於テ許否スルコトヽナセシタメ、本条ト第三十四条トヲ各別ニ規定スルノ必要ナキニ付、則チ本条ノ規定ハ第三十四条中ニ包合スルモノトシ、本条ハ之ヲ削除シタリ
第三十四条ヲ左ノ如ク修正ス
詐偽又ハ錯誤ニ由リ試掘ノ認可又ハ採掘ノ特許ヲ得タルコトヲ発見シタルトキハ農商務大臣ハ其認可又ハ特許ヲ取消スベシ、若シ其詐偽又ハ錯誤ニ由リ自己ノ利益ヲ妨害セラレタル者ニ於テ之ヲ発見シタルトキハ其取消ヲ農商務大臣ニ訴願スルコトヲ得
前項農商務大臣ノ裁定ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
 理由 第一項ヲ修正シタルハ第三十三条ヲ削除シ、其規定ヲ本条ニ包合シタルト、原文「特許ニ付利害ノ関係ヲ有スル者」ハ意味甚タ広漠ニシテ、或ハ近隣ノ地主等ガ単ニ自己ノ農業ノ妨害ト為ルヲ厭ヒ其取消ヲ請求スルコトヲ得ルカト疑ハシムルト、原文「三十日以内」ノ期限ハ短キニ失スルノ虞アルヲ以テ単ニ訴願法ニ依リ普通期限六十日以内ニ訴願セシメント欲スルトニ由ル、又第二項中期限ニ関スル文字ヲ削リタルハ第十九条第二項ヲ修正シタル理由ニ同シ
第三十五条ヲ左ノ如ク修正ス
第二十五条但書ノ場合ニ於テ危険ノ虞ナクシテ承諾ヲ拒ミタルトキハ鉱業人ハ農商務大臣ノ裁定ヲ請求スルコトヲ得
 理由 第二十二条及第二十三条ヲ削除シタルト、第八条ヲ修正シタルトノ当然ノ結果ナリ
第三十六条ヲ左ノ如ク修正ス
前条ノ裁定ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
 理由 「判定」ヲ裁定ト改メタルハ第三十五条ヲ修正シタルニ由リ又「其ノ判定ヲ受ケタル云々」ノ文字ヲ削リタルハ第十九条第二項ヲ修正シタル理由ニ同シ、又末文ヲ修正シテ行政裁判所ヘ出訴スル
 - 第20巻 p.140 -ページ画像 
コトヲ得セシメタルハ既ニ第三十五条修正ノ結果トシテ斯ク規定スルヲ適当ト信ズルニ由ル
第三十八条中 「第二十八条」ノ五字ヲ削除ス
 理由 第二十八条ヲ削除シタルニ由ル
第三十九条ヲ左ノ如ク修正ス
鉱業人ハ毎年一月前年ニ採取シタル鉱物及製産物ノ量数・行業日数及工数ヲ所轄鉱山監督署ニ届出ツヘシ
 理由 本条中「其ノ販売高・販売代価」ノ九字ヲ削リタルハ後ノ第七十三条ニ於テ鉱業税ヲ廃シタル為メ之ヲ届出デシムルノ必要アラザルノミナラズ、之ヲ届出デシムルハ啻ニ鉱業者ノ煩累ヲ来スノミニシテ且ツ其商略上不便ナル事情少カラザルヲ以テナリ、其他ハ序ニ字句ヲ修正シタルニ過ギズ
第四十条 削除
 理由 後ノ第七十三条ニ於テ鉱業税ヲ廃シタル為メ本条規定ノ必要ナラザルニ由ル
第四十二条第二項中 「三十日」ヲ六十日ト改ム
 理由 第十四条第二項ノ日数ヲ修正シタル理由ニ同シ
第四十三条第一項中 「六十日以内」ヲ六十日以上ト改メ第二項中「其ノ達ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ」ノ十七字ヲ削ル
 理由 本条第一項ノ規定ニ依レハ六十日ヲ最長期限トナスヲ以テ或ハ其期限ヲ三十日若クハ二十日ト定メラルヽ場合ナキニアラズシテ第四十二条第二項ノ修正ト権衡ヲ得ザルガ如シ、是「六十日以内」ヲ六十日以上ト改メ六十日ヲ以テ最短期限トナセル所以ナリ、又第二項中「其達ヲ受ケタル日ヨリ云々」ノ文字ヲ削リタルハ第十九条第二項ヲ修正シタル理由ニ同シ
第四十五条中 「十四日以内」ヲ三十日以内ト改ム
 理由 第十四条ノ日数ヲ修正シタル理由ニ同ジ
第四十八条中 「貸渡」ノ下ヘ又ハ売渡ノ四字ヲ加フ
 理由 夫レ鉱業ハ一時ノ事業ニアラス、故ニ鉱業人カ他人ノ土地ヲ使用スルニ当リ之ヲ己レノ所有ニ帰セサルニ於テハ鉱業上極メテ不便ナル場合ナシトセス、蓋シ第五十一条ニ拠レハ土地ノ形質ヲ変シタルトキハ之ヲ原形ニ復シテ返還セサルヘカラス、然ルニ之レヲ原形ニ復スルハ頗ル費用ヲ要シ、却テ初ヨリ之レヲ買取ル方双方ノ為メニ便利ナルコトアルヘシ、是本条ヲ修正シテ必要ノ場合ニ於テ鉱業人ハ他人ノ土地ヲ買取リ得ルコトトナセシ所以ナリ(第五十一条修正ノ理由ヲ参照スヘシ)
第五十一条中ヘ第二項トシテ左ノ一項ヲ追加ス
鉱業人カ第四十八条ニ依リテ買取リタル土地ノ使用ヲ終リタルトキ又之ヲ其目的ニ使用セサルトキハ原所有者ハ元価ヲ以テ之ヲ買戻スコトヲ得
 理由 第四十八条ノ修正ヲ以テ鉱業上必要ノ場合ニ於テ鉱業人ヲシテ其望ニ依リ土地所有者ヨリ之ヲ買取ルコトヲ得セシメタルモノハ畢竟鉱業ノ保護上実ニ已ムヲ得サルニ出ツルモノナリ、故ニ鉱業人カ其使用ヲ終リタルトキ又ハ之ヲ其目的ニ使用セサルカ如キ場合ニ
 - 第20巻 p.141 -ページ画像 
ハ原所有者ヲシテ其望ニ依リ元価ヲ以テ鉱業人ヨリ之ヲ買戻スヲ得セシムルハ当然ナリト信ス、是本条第二項ヲ追加シタル所以ナリ
第五十五条第二項中 「三十日」ヲ六十日ト改ム
 理由 第十四条第二項ノ日数ヲ修正シタル理由ニ同ジ
第五章 (自第五十八条至第六十三条)削除
 理由 鉱業警察ノ事務ヲ普通警察ノ事務ト分離シ鉱山行政官ヲシテ之ヲ行ハシムルハ監督上或ハ便利ナキニアラスシテ頗ル完備ノ制度ナルカ如シ、然レトモ今熟々我国鉱業ノ現状ヲ案スルニ斯ノ如キ制度ハ実際ニ其必要ヲ見サルノミナラス或ハ之カ為メ其取締厳密ニ失シ却テ鉱業ノ発達ヲ障害スルノ恐アリ、夫レ我国ノ鉱業ハ近来ヤヽ進歩シタリト雖トモ猶幼穉ノ域ヲ脱セスシテ随テ其規模狭小秩序不整ノ者比々皆然リ、然ルニ例ヘバ本章第六十三条ニ拠テ定メラレタル警察規則第一条乃至第十五条ノ如キ煩苛ノ規定ヲ厳行スルトキハ各鉱業人ハ其力能ク之ニ堪ユルコトヲ得スシテ遂ニ不得已其事業ヲ荒廃スルニ至ルヘシ、是豈鉱業ヲ保護スル所以ナランヤ、故ニ鉱業警察ノ事務ハ特別ニ之ヲ規定セスシテ寧ロ旧日本抗法ノ時ノ如ク普通警察官ニ一任スルニ若カス、是本章全部ヲ削除シタル所以ナリ
第六章 (自第六十四条至第七十二条)削除
 理由 本条例中鉱夫ノ章ヲ設ケタルハ畢竟鉱業人ノ虐待ヲ防止シ以テ鉱夫ノ生命及衛生ヲ保護スルノ精神ニ出ツルカ如シ、然ルニ元来我国傭主被傭者間ニハ徳義ノ存在スルアリ、随テ鉱業人カ鉱夫ヲ使役スルニハ専ラ親切ヲ旨トシ特ニ各鉱山ニハ既ニ鉱夫救恤規則ノ設アリテ鉱夫ガ職業上負傷若クハ死亡スルトキハ鉱業人ハ厚ク之ヲ扶助スルノ慣習アリ、之ヲ要スルニ鉱業人カ鉱夫ヲ虐待スルガ如キコトハ殆ト其実例ナシ、故ニ今本条例中特ニ鉱夫ノ章ヲ設ケ鉱夫ノ権利ヲ規定シ其労働時間ヲ制限スルガ如キハ、実際其必要アラサルノミナラズ或ハ却テ従来各鉱山ニ成立セル美風良習ヲ打破スルノ恐アリ、是本章全部ヲ削除シタル所以ナリ
第七十三条ヲ左ノ如ク修正ス
鉱業人ハ鉱区税トシテ一ケ年鉱区一千坪毎ニ石炭・石油及硫黄ハ金壱円其他ノ鉱物ハ金弐円ヲ納ムベシ、但一千坪未満ノ端数ニ対スル鉱区税ハ之ヲ免除ス
二種以上ノ鉱物ヲ含蓄スル鉱区ニ於テハ其鉱物中前項税率ノ最モ重キ鉱区税ヲ納ムベシ
 鉄鉱ヲ採掘スル者ニハ鉱区税ヲ課セズ
 理由 鉱業人ニ課スルノ税ヲ鉱区税ト鉱業税トノ二様ニ分チテ徴収スルハ従前ノ課税法ニ比シテ幾分ノ公平ヲ得ベシト雖モ、原文鉱業税ノ法タル製産物ノ価格ニ準拠スルモノニシテ鉱業人ノ純益ニ準拠セザルモノナルガ故ニ、此点ヨリ云ヘバ未ダ全ク公平ヲ得ザルノミナラズ徴税者モ納税者モ共ニ煩累多クシテ国家経済上決シテ得策ナラズト信ズ、是本条第一項ヲ修正シ鉱業税ヲ廃除シタル所以ナリ、又第二項ヲ追加シタルハ石炭・石油及硫黄ト其他ノ鉱物トノ税額ヲ異ニシタルヲ以テ重税ノ鉱物ト軽税ノ鉱物トヲ混同シタル鉱山アル場合ノ課税法ヲ明カニ規定センガ為メナリ、又鉄鉱ヲ無税トシタル
 - 第20巻 p.142 -ページ画像 
ハ鉄鉱ヲ採掘スルハ其利益少キノミナラズ我邦ニ於テハ鉄ノ供給過少ニシテ其欠乏ヲ感スルガ故ニ、之ヲ保護シテ其産出高ヲ増殖セント欲スルノ精神ナリ
第七十四条 削除
 理由 第七十三条ヲ修正シタル当然ノ結果ナリ
第七十五条第一項 削除
 理由 第七十三条ヲ修正シタル当然ノ結果ナリ
第七十六条中 「鉱業税及」ノ四字ト「其ノ達ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ」ノ十七字トヲ削ル
 理由 「鉱業税及」ノ四字ヲ削リタルハ第七十三条ヲ修正シタル当然ノ結果ニシテ又「其ノ達ヲ受ケタル日ヨリ云々」ノ文字ヲ削リタルハ第十九条第二項ヲ修正シタル理由ニ同シ
第八十条第一項 削除
 理由 第二十七条及第五十九条ヲ削除シタル当然ノ結果ナリ
第八十二条 削除
 理由 第十一条ヲ削除シタル当然ノ結果ナリ
第八十三条ヲ左ノ如ク修正ス
第三十九条ニ依リ届出ツベキ事項ヲ詐リタルモノハ弐円以上弐拾円以下ノ罰金ニ処ス
 理由 第七十三条ヲ修正シタル当然ノ結果ナリ
第八十四条 削除
 理由 第四十条ヲ削除シタル当然ノ結果ナリ
第八十五条 削除
 理由 第六十四条・第六十九条及第七十二条等ヲ削除シタル当然ノ結果ナリ
第八十六条中 「第六条」ノ三字及ヒ「第六十八条及第七十条」ノ十字ヲ削除ス
 理由 第六条・第六十八条・第七十条ヲ削除シタル当然ノ結果ナリ
第八十七条中 「第八十二条」ノ五字及ヒ「其ノ納付スヘキ金額ヲ追徴シ」ノ十三字ヲ削除ス
 理由 本条中「第八十二条ノ五字ヲ削リタルハ該条ヲ削除シタル当然ノ結果ニシテ「其ノ納付スヘキ金額ヲ追徴シ」ノ十三字ヲ削リタルハ第十一条ノ削除及第七十三条ノ修正ニ依リ納付スヘキ金額ナキニ至リシヲ以テナリ
第九十一条ノ次ヘ左ノ一条ヲ追加ス
第十二条第二項・第十六条第二項・第三十条・第三十八条・第四十二条第二項・第四十三条第一項・第四十五条・第五十二条第二項・第五十五条第二項及七十五条第二項ノ期限ハ積雪地方・沖縄県其他島嶼ニ限リ農商務大臣特ニ省令ヲ以テ之ヲ定ム
 理由 本文ニ掲載セル諸条ノ場合ニ於テハ積雪地方・沖縄県其他島嶼ノ如キ運輸極メテ不便ナル土地ニ在テハ内地ト同一ノ期限ニ依リ難キノ事情アリ、是特ニ本条ヲ追加シタル所以ナリ



〔参考〕法令全書 明治二三年下巻 内閣官報局編 刊 【朕鉱業条例ヲ裁可シ…】(DK200013k-0005)
第20巻 p.142-151 ページ画像

法令全書 明治二三年下巻  内閣官報局編 刊
 - 第20巻 p.143 -ページ画像 
朕鉱業条例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
 御名 御璽
  明治二十三年九月二十五日
             内閣総理大臣 伯爵 山県有朋
             農商務大臣     陸奥宗光
法律第八十七号(官報九月二十六日)
鉱業条例
    第一章 総則
第一条 鉱業トハ鉱物ノ試掘・採掘及之ニ附属スル事業ヲ謂フ
第二条 鉱物ノ未タ採掘セサルモノハ国ノ所有トス
 此ノ条例ニ於テ鉱物トハ金鉱(砂金ヲ除ク)銀鉱・銅鉱・鉛鉱・錫鉱(砂錫ヲ除ク)・安質母尼鉱・水銀鉱・亜鉛鉱・鉄鉱(砂鉄ヲ除ク)硫化鉄鉱・満奄鉱・砒鉱・黒鉛・石炭・石油及硫黄ヲ謂フ
第三条 帝国臣民ニ非サレハ鉱業人トナリ又ハ鉱業ニ関スル組合員又ハ会社ノ株主トナルコトヲ得ス
 鉱業人、未成年・瘋癲・白痴又ハ瘖瘂ナルトキハ後見人ヲ立ツヘシ
第四条 農商務省鉱山局及鉱山監督署ノ官吏ハ在職中鉱業人トナリ、又ハ鉱業ニ関スル組合員又ハ会社ノ株主若ハ役員トナルコトヲ得ス
第五条 此ノ条例ニ依リ鉱業特許取消ノ処分ヲ受ケタル鉱業人ハ同鉱区ニ付一箇年間採掘ノ出願ヲ為スコトヲ得ス
第六条 二人以上共同シテ鉱業ヲ為ストキハ総代一名ヲ選定シ予メ所轄鉱山監督署ニ届出ツヘシ
 総代ハ鉱業上ニ関シ政府ニ対シテ共同鉱業人ヲ代表スルモノトス
第七条 共同鉱業人ノ変更、採掘権ノ売買・譲与・書入及廃業届等ニハ総代ノ外少クモ共同鉱業人過半数ノ連署ヲ要ス
    第二章 試掘及採掘
第八条 試掘ヲ為サント欲スル者ハ其ノ願書ニ試掘地ノ図面ヲ添ヘ所轄鉱山監督署長ニ差出シ其ノ認可ヲ受クヘシ
第九条 試掘ハ認可ノ日ヨリ一箇年ヲ限トス
 試掘人前項ノ期限内ニ於テ其ノ事業ヲ竣ヘ難キ事実アルトキハ所轄鉱山監督署長ニ延期ヲ出願スルコトヲ得
 所轄鉱山監督署長ハ其ノ事実ヲ調査シ已ムヲ得サルモノト認ムルトキハ一箇年以内ノ延期ヲ認可スルコトヲ得
第十条 試掘ニ依リ採取シタル鉱物ハ所轄鉱山監督署長ノ認可ヲ得テ之ヲ販売スルコトヲ得
第十一条 前条ニ依リ鉱物ヲ販売シタルトキハ三十日以内ニ其ノ販売代価百分ノ一ヲ所轄鉱山監督署ニ納ムヘシ
 前項ノ金額ヲ其ノ期限内ニ納メサル者ハ国税滞納処分法ニ依リ処分ス
第十二条 採掘ノ特許ヲ得ント欲スル者ハ採掘願書ニ鉱区図ヲ添ヘ農商務大臣宛ニテ所轄鉱山監督署ニ差出スヘシ
 採掘願書及鉱区図ヲ同時ニ差出シ難キトキハ願書ノミヲ差出シ置キ鉱区図ハ願書ノ日附ヨリ五十日以内ニ之ヲ差出スコトヲ得、此期限内ニ差出サヽルトキハ其ノ出願ヲ無効トス
 - 第20巻 p.144 -ページ画像 
第十三条 採掘ヲ出願スル者ハ出願地ニ其ノ採掘セントスル鉱物ノ存在スルコトヲ証明スヘシ
第十四条 鉱山監督署長ハ鉱物ノ存在ヲ認定スル為ニ吏員ノ実地臨検ヲ必要ト認ムルトキハ、採掘出願人ヲシテ出張吏員ノ為メニ制規ノ旅費日当ヲ前納セシムヘシ
 採掘出願人前項旅費日当納付ノ通知ヲ受ケ通知書到達ノ日ヨリ十四日以内ニ之ヲ納メサルトキハ其ノ出願ヲ無効トス
第十五条 鉱山監督署ニ於テハ試掘及採掘出願登録簿ヲ備ヘ置キ出願日時ノ先後ニ依リ之ヲ登録ス
第十六条 試掘又ハ採掘ノ出願同一ノ地ニ付、二人以上アルトキハ出願日時ノ先後ニ依リ其ノ許否ヲ定ム
 出願ノ日時同一ナルトキハ鉱山監督署長ハ其ノ旨ヲ各出願人ニ通知スヘシ、各出願人ハ通知書ノ日附ヨリ六十日以内ニ協議ヲ遂ケ出願人ヲ定ムヘシ、若シ協議調ハサルトキハ其ノ出願ヲ無効トス
 出願ノ日時同一ニシテ試掘ト採掘トニ係ルトキハ先ツ採掘ノ出願ニ付其許否ヲ定ム
第十七条 農商務大臣採掘ノ特許ヲ与フヘキモノト認メタルトキハ鉱業特許証ヲ下付スヘシ
第十八条 試掘若ハ採掘ノ事業公益ヲ害スト認ムルトキハ試掘ニ就テハ所轄鉱山監督署長、採掘ニ就テハ農商務大臣其ノ出願ヲ許可セス
第十九条 試掘若ハ採掘ノ事業公益ニ害アルトキハ試掘ニ就テハ所轄鉱山監督署長、採掘ニ就テハ農商務大臣既ニ与ヘタル認可若ハ特許ヲ取消スコトヲ得
 鉱業人前項取消ノ処分ニ不服アルトキハ其ノ達ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得、但損害ノ賠償ヲ要求スルコトヲ得ス
第二十条 特許ヲ得タル鉱物ノ採掘権ハ売買・譲与又ハ書入ヲ為スコトヲ得
 採掘権ヲ売買・譲与スルトキハ双方連署シ所轄鉱山監督署ヲ経、農商務大臣ニ出願シ鉱業特許権ノ書換ヲ受クヘシ、此ノ手続ニ依ラサル売買・譲与ハ法律上其ノ効ナキモノトス
 採掘権ノ書入ハ双方連署シ所轄鉱山監督署ノ登録ヲ受クヘシ、其ノ登録ヲ受ケサルモノハ法律上其ノ効ナキモノトス
第二十一条 他人試掘ノ年限中ハ其ノ試掘地内ニ於テ同一ノ鉱物ニ付採掘ノ出願ヲ為スコトヲ得ス
第二十二条 他人ノ認可ヲ得タル試掘地内ニ於テ其ノ試掘人ノ未タ認可ヲ得サル鉱物ノ試掘又ハ採掘ヲ出願セント欲スル者ハ試掘人ノ承諾ヲ経ヘシ
 試掘人自ラ試掘又ハ採掘ヲ出願セント欲スルカ、若ハ其ノ認可ヲ得タル鉱物ノ試掘ニ妨害アルトキノ外ハ試掘人ハ前項ノ承諾ヲ拒ムコトヲ得ス
第二十三条 他人所属ノ鉱区内ニ於テ其ノ鉱業人ノ未タ試掘ノ認可又ハ採掘ノ特許ヲ得サル鉱物ニ付、試掘若ハ採掘ヲ出願セント欲スル者ハ鉱業人ノ承諾ヲ経ヘシ
 - 第20巻 p.145 -ページ画像 
 鉱業人自ラ試掘又ハ採掘ヲ出願セント欲スルカ、若ハ其ノ試掘又ハ採掘ノ為ニ鉱業ニ妨害アルトキノ外ハ、鉱業人ハ前項ノ承諾ヲ拒ムコトヲ得ス
第二十四条 宮城・離宮・神宮・皇陵・陸海軍所轄城堡・軍港・要港火薬製造所・火薬庫及弾薬庫ノ周囲三百間以内ノ場所ハ試掘又ハ採掘若ハ鉱業上使用スルコトヲ得ス、但軍港・要港ハ其ノ鎮守府司令長官ノ許可ヲ得タル場合ニ於テハ此ノ限ニアラス
第二十五条 鉄道・馬車鉄道・公道・河湖・堤防・沼池・社寺・墓地公園地及建物ヨリ地表地下トモ其周囲三十間以内ノ場所ニ於テハ、所轄官庁若ハ所有者ノ承諾ヲ経ルニアラサレハ試掘又ハ採掘ヲ為スコトヲ得ス、但危険ノ虞ナキモノハ其ノ承諾ヲ拒ムコトヲ得ス
第二十六条 鉱業人ハ毎年ノ鉱業施業案ヲ調製シ、其ノ前年十月三十日限、其ノ初年ニ係ルモノハ採掘特許ノ日ヨリ三箇月以内ニ、所轄鉱山監督署長ニ差出シ認可ヲ受クヘシ
 前項ノ施業案ニシテ坑内ノ保安ニ害アリ又ハ其ノ鉱区ニ相当スル鉱業ヲ為サヽルモノト認メタルトキハ、所轄鉱山監督署長ハ其ノ理由ヲ鉱業人ニ示シ、期限ヲ定メ之ヲ改正セシムヘシ
第二十七条 鉱業人ハ所轄鉱山監督署長ノ認可ヲ受ケタル鉱業施業案ニ依ルニアラサレハ採掘ヲ為スコトヲ得ス
第二十八条 鉱業人鉱業施業案又ハ其ノ改正案ヲ期限内ニ差出サヽルトキハ、農商務大臣ハ其ノ採掘ノ特許ヲ取消スコトヲ得
第二十九条 鉱業人一箇年以上休業シ、又ハ採掘ノ特許ヲ得タル日ヨリ一箇年以内ニ鉱業ニ著手セサルトキハ、農商務大臣ハ其ノ特許ヲ取消スコトヲ得
第三十条 前二条ノ場合ニシテ其ノ自己ノ過失ニ由ラサルモノハ特許取消ノ達ヲ受ケタル日ヨリ十四日以内ニ其ノ理由ヲ農商務大臣ニ申立テ再願ヲ為スコトヲ得、若シ農商務大臣ニ於テ之ヲ拒ムトキハ其ノ達ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第三十一条 鉱業人ハ坑内実測図二葉ヲ調製シ、一葉ハ所轄鉱山監督署ニ差出シ、一葉ハ鉱業事務所ニ備ヘ置クヘシ
 前項坑内実測図ハ事業ノ進歩ニ従ヒ六箇月毎ニ追補スヘシ
 鉱業人若シ他人ノ所属ニ係ル隣接鉱区ノ坑内実測図ニ付証明ヲ必要ト認ムルトキハ、之ヲ所轄鉱山監督署長ニ請求スルコトヲ得
 所轄鉱山監督署長ニ於テ右証明ノ為ニ吏員ノ実地臨検ヲ必要ト認ムルトキハ、鉱業人ヲシテ出張吏員ノ為ニ制規ノ旅費日当ヲ前納セシムヘシ
第三十二条 鉱業人鉱業特許証ヲ毀損若ハ亡失シタルトキハ、事由ヲ具シ、所轄鉱山監督署ヲ経、其ノ再下付ヲ農商務大臣ニ出願スヘシ
第三十三条 詐偽又ハ錯誤ニ由リ試掘ノ認可ヲ得タルコトヲ発見シタルトキハ、所轄鉱山監督署長ハ其ノ認可ヲ取消スヘシ、若シ其ノ認可ニ付利害ノ関係ヲ有スル者ニ於テ之ヲ発見シタルトキハ、其ノ関係ヲ有スル者ハ認可ノ日ヨリ三箇月以内ニ試掘認可ノ取消ヲ所轄鉱山監督署長ニ訴願スルコトヲ得
 前項所轄鉱山監督署長ノ判定ニ不服アル者ハ其ノ判定ノ日ヨリ三十
 - 第20巻 p.146 -ページ画像 
日以内ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第三十四条 詐偽又ハ錯誤ニ由リ採掘ノ特許ヲ得タルコトヲ発見シタルトキハ、農商務大臣ハ其ノ特許ヲ取消スヘシ、若シ其ノ特許ニ付利害ノ関係ヲ有スル者ニ於テ之ヲ発見シタルトキハ、其ノ関係ヲ有スルモノハ特許ノ日ヨリ三十日以内ニ採掘特許ノ取消ヲ農商務大臣ニ訴願スルコトヲ得
 前項農商務大臣ノ裁定ニ不服アル者ハ其ノ裁定ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第三十五条 第二十二条第二項及第二十三条第二項ノ場合ニ於テ、理由ナクシテ承諾ヲ拒ミタルトキハ関係人、又第二十五条但書ノ場合ニ於テ危険ノ虞ナクシテ承諾ヲ拒ミタルトキハ、鉱業人ハ所轄鉱山監督署長ノ判定ヲ請求スルコトヲ得
第三十六条 前条ノ判定ニ不服アル者ハ其ノ判定ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ農商務大臣ノ裁定ヲ請求スルコトヲ得
第三十七条 鉱業人廃業シタルトキハ、其ノ旨ヲ所轄鉱山監督署ニ届出テ、鉱業特許証ヲ返納スヘシ
第三十八条 第十九条・第二十八条・第二十九条・第三十四条・第四十三条及第七十六条ニ依リ農商務大臣ニ於テ採掘ノ特許ヲ取消シ、又ハ第三十七条ニ依リ廃業ノ届出ヲ為シタル場合ニ於テハ、其ノ特許ヲ得タル鉱物ノ採掘権ニ対シ抵当権ヲ有スル債主ハ其ノ抵当権ヲ失フモノトス、但第十九条及第三十四条ノ場合ヲ除クノ外、債主ニ於テ六十日以内ニ其ノ鉱区ノ採掘ヲ願出ルトキハ、出願ノ先後ニ拘ハラス特許ヲ与フヘシ
第三十九条 鉱業人ハ毎年一月、前年ニ採取シタル鉱物ノ量数・製産物・其ノ販売高・販売代価・行業日数及工数ヲ所轄鉱山監督署ニ届出ツヘシ
第四十条 鉱業人ハ農商務大臣定ムル所ノ書式ニ依リ帳簿ヲ調製シ、製産物ノ量数及販売代価等ヲ記載スヘシ
    第三章 鉱区
第四十一条 鉱区トハ鉱物ノ採掘ヲ為ス土地ノ区域ヲ謂フ
 鉱区ノ境界ハ直線ヲ以テ之ヲ定メ地表境界線ノ直下ヲ限トス、其ノ一鉱区ノ面積ハ、石炭ハ一万坪以上、其ノ他ノ鉱物ハ三千坪以上トシ、共ニ六十万坪ヲ超ユルコトヲ得ス
第四十二条 出願ニ係ル鉱区ノ位置形状、鉱床ノ位置形状ト相違シ鉱利ヲ損スヘキモノト認メタルトキハ、所轄鉱山監督署長ハ之ヲ出願人ニ通知シ訂正セシムヘシ
 出願人前項ノ通知ヲ受ケ其ノ通知書到達ノ日ヨリ三十日以内ニ訂正シテ差出サヽルトキハ其ノ出願ヲ無効トス
第四十三条 特許ヲ得タル鉱区ノ位置形状、鉱床ノ位置形状ト相違シ鉱利ヲ損スヘキモノト認メタルトキハ、所轄鉱山監督署長ハ農商務大臣ノ認可ヲ経、六十日以内ノ期限ヲ定メ訂正セシムヘシ、若シ訂正セサルトキハ農商務大臣ハ既ニ与ヘタル特許ヲ取消スコトヲ得
 鉱業人ハ前項特許取消ノ処分ニ不服アルトキハ其ノ達ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
 - 第20巻 p.147 -ページ画像 
第四十四条 鉱業人鉱床ノ形状ニ由リ鉱区ノ境界若ハ位置ノ訂正ヲ要スルトキハ、其ノ願書ニ理由書・訂正鉱区図及鉱業特許証ヲ添ヘ、農商務大臣宛ニテ所轄鉱山監督署ニ差出スヘシ
 農商務大臣ニ於テ訂正ヲ必要ト認メタルトキハ、更ニ鉱業特許証ヲ下付スヘシ
第四十五条 鉱業人鉱区ノ訂正ヲ出願シタル場合ニ於テ、所轄鉱山監督署長吏員ノ実地臨検ヲ必要ト認ムルトキハ、鉱業人ヲシテ出張吏員ノ為ニ制規ノ旅費日当ヲ前納セシムヘシ
 鉱業人前項旅費日当納付ノ通知ヲ受ケ其ノ通知書到達ノ日ヨリ十四日以内ニ之ヲ納メサルトキハ其ノ出願ヲ無効トス
第四十六条 鉱区ヲ合併シ又ハ分割セント欲スル者ハ、合併又ハ分割鉱区図及鉱業特許証ヲ添ヘ、所轄鉱山監督署ヲ経テ農商務大臣ニ出願スヘシ、其ノ採掘権ヲ抵当ニ取リタル債主アルトキハ、其ノ承諾書ヲ添フヘシ
 鉱区ノ分割ハ第四十一条ノ制限ヲ超ユルコトヲ得ス
    第四章 土地使用
第四十七条 試掘又ハ採掘ヲ出願スル為他人ノ土地ヲ測量スルコトヲ必要トスルトキハ、所轄鉱山監督署ノ認可ヲ受クヘシ、此ノ場合ニ於テハ其ノ土地ノ所有者又ハ関係人ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス、若シ測量ノ為ニ損害ヲ生シタルトキハ其ノ測量ヲ請求シタル者ニ於テ之ヲ賠償スヘシ
 測量請求者他人ノ所有地ニ入ルトキハ、予メ其ノ土地所有者ニ通知シ且測量認可証ヲ携帯スヘシ
第四十八条 左ノ場合ニ於テ鉱業上他人ノ土地ヲ使用スルコトヲ必要トシ、鉱業人其ノ貸渡ヲ請求シタルトキハ、其ノ土地ノ所有者又ハ関係人ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
 一 坑口ヲ開穿スル為
 一 鉱物及土石ノ堆積場ヲ設置スル為
 一 坑道・道路・鉄道・馬車鉄道・運河・溝渠及溜池ヲ開設スル為
 一 鉱業上必要ノ製錬場及建物ヲ建設スル為
第四十九条 左ノ場合ニ於テハ土地所有者又ハ関係人ハ土地貸渡ノ請求ヲ拒ムコトヲ得
 一 貸渡請求ノ土地第二十五条ニ記載シタル場所ニ係ルトキ
 一 土地借受人ニ於テ第五十条ノ保証金ヲ差出サヽルトキ
第五十条 土地借受人ハ貸渡ヲ受ケタル土地ニ対シ其ノ土地貸渡人ニ相当ノ借地料ヲ仕払フヘシ
 土地貸渡人ハ借地料ノ保証金トシテ土地借受人ニ予メ土地台帳ニ記載シタル地価以内ノ金額ヲ差出サシムルコトヲ得
 其ノ質入トナリタル土地ニ対スル借地料及保証金ハ質取主ニ於テ之ヲ受領スルモノトス
 土地使用ニ依リ所有者又ハ関係人ニ損害ヲ与フルトキハ、鉱業人ハ之ニ対シ相当ノ賠償ヲ為スヘシ
 土地借受人土地ノ使用ヲ終リ其ノ使用中ノ借地料ヲ完納シタルトキハ、土地貸渡人又ハ質取主ハ土地ト引換ニ保証金ヲ返還スヘシ
 - 第20巻 p.148 -ページ画像 
第五十一条 土地借受人貸渡ヲ受ケタル土地ノ使用ヲ終リタルトキハ土地貸渡人ノ要求ニ応シ其ノ土地ヲ原形ニ復シ返還スヘシ、若シ原形ニ復シ難キトキハ土地借受人ニ於テ其ノ損害ヲ賠償スヘシ
第五十二条 土地借受人借地料ノ仕払ヲ延滞シタルトキハ、土地貸渡人ハ其ノ延滞借地料ニ相当スル金額ヲ保証金中ヨリ差引キ、土地ヲ取戻スコトヲ得
 前項土地ヲ取戻スニ当リ地上ニ建物等アルトキハ六十日以上ノ期限ヲ定メテ土地借受人ニ其ノ取除ヲ請求スヘシ、若シ土地借受人ノ所在不分明ナルトキハ其ノ地方ノ新聞紙ヲ以テ其ノ旨ヲ公告スヘシ
 土地借受人右期限内ニ取除ヲナサヽルトキハ其ノ建物等ハ土地貸渡人ノ所有ニ帰スヘシ
第五十三条 鉱業人ノ請求ニ依リ土地ヲ分割シテ売渡シ又ハ貸渡シタルカ為残地ノ利用ヲ害スルトキハ、鉱業人ニ対シ其ノ土地全部ノ買取若ハ借受ヲ請求スルコトヲ得、此ノ場合ニ於テ鉱業人ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第五十四条 鉱業人ニ於テ貸渡ヲ受ケタル土地ヲ三箇年以上使用スル目的アルカ、又ハ三箇年以上之ヲ使用スルトキハ、土地貸渡人ハ鉱業人ニ其ノ土地ノ買取ヲ請求スルコトヲ得、此ノ場合ニ於テ鉱業人ハ其ノ買取ヲ拒ムコトヲ得ス
第五十五条 土地ノ所有者及関係人ト測量請求人又ハ鉱業人トノ間ニ於テ土地貸渡・借地料・保証金・損害賠償金又ハ土地売買代価ニ付協議調ハサルトキハ、所轄鉱山監督署長ニ其ノ判定ヲ請求スルコトヲ得
 所轄鉱山監督署長ノ判定ニ不服アルトキハ其ノ判定ノ達ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ、土地貸渡ニ就テハ農商務大臣ニ其ノ裁定ヲ請求シ、借地料・保証金・損害賠償金若ハ土地売買代金ニ就テハ裁判所ニ出訴スルコトヲ得
 前項農商務大臣ノ裁定ニ対シテハ他ニ出訴スルコトヲ得ス
第五十六条 所轄鉱山監督署長ノ判定又ハ農商務大臣ノ裁定請求ノ為ニ要スル費用ハ民事訴訟入費ノ例ニ依リ負担スヘキモノトス
第五十七条 鉱業人ハ、土地所有者又ハ関係人ニ於テ所轄鉱山監督署長ノ判定シタル借地料・保証金・損害賠償金又ハ売買代金ニ不服アルモ、其ノ金額ヲ土地所有者又ハ関係人ニ渡シ、若シ之ヲ受ケサルトキハ其ノ金額ヲ供託所ニ預ケ置キ土地ヲ使用スルコトヲ得
    第五章 鉱業警察
第五十八条 鉱業ニ関スル警察事務ニシテ左ニ掲クルモノハ農商務大臣之ヲ監督シ、鉱山監督署長之ヲ行フ
 一 坑内及鉱業ニ関スル建築物ノ保安
 一 鉱夫ノ生命及衛生上ノ保護
 一 地表ノ安全及公益ノ保護
第五十九条 鉱業上ニ危険ノ虞アリ、又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ所轄鉱山監督署長ハ鉱業人ニ其ノ予防ヲ命シ、又ハ鉱業ヲ停止スヘシ
 所轄鉱山監督署長ニ於テ鉱業ヲ停止セントスルトキハ、其ノ猶予シ
 - 第20巻 p.149 -ページ画像 
難キ場合ヲ除クノ外ハ、農商務大臣ノ認可ヲ経ヘシ
第六十条 前条第一項ノ場合ニ於テ鉱業人直ニ其ノ予防ニ著手セサルトキハ、所轄鉱山監督署長ハ鉱業人ノ使用スル役員及鉱夫ヲ指揮シ其ノ予防ヲ執行スヘシ
 此ノ場合ニ於テ鉱業人ハ其ノ使用スル役員及鉱夫ヲ予防ノ用ニ供シ且一切ノ費用ヲ負担スルノ義務アルモノトス
第六十一条 第五十九条ニ依リ鉱業ヲ停止シタル後其ノ事故止ミタルトキハ、所轄鉱山監督署長ハ直ニ鉱業ノ停止ヲ解キ、其ノ旨ヲ農商務大臣ニ具申スヘシ
第六十二条 農商務大臣ニ於テ此ノ条例ニ依リ採掘ノ特許ヲ取消シタルトキ、又ハ鉱業人廃業シタルトキハ、所轄鉱山監督署長ハ六十日以上ノ期限ヲ定メ、鉱業ノ為建設シタル家屋及其ノ他ノ建物等ヲ除去セシムヘシ、若シ右期限内ニ除去セサルトキハ其ノ建物等ハ土地所有者ノ所有ニ帰ス、但所轄鉱山監督署長ニ於テ坑内保安ノ為ニ必要ト認ムル坑内及坑口ノ構造物ハ之ヲ除去スルコトヲ得ス
 前項ノ場合ニ於テ鉱業人ノ所在不分明ナルトキハ第五十二条第二項ノ手続ニ依ルヘシ
第六十三条 農商務大臣ハ此ノ条例ノ範囲内ニ於テ省令ヲ以テ鉱業警察規則ヲ定ムルコトヲ得
    第六章 鉱夫
第六十四条 鉱夫トハ鉱物ノ採掘及之ニ附属スル業務ニ従事スル男女ノ職工ヲ謂フ
 鉱業人ハ其ノ使役スル鉱夫ノ使役規則ヲ定メ、所轄鉱山監督署ノ認可ヲ受クヘシ
第六十五条 鉱業人ト鉱夫トノ間ニ特別ノ約定ナキ場合ニ於テ双方トモ十四日以前ニ通知スルトキハ、雇役ノ解約ヲナスコトヲ得
第六十六条 左ノ場合ニ於テハ鉱業人ハ何時タリトモ鉱夫ヲ解雇スルコトヲ得
 一 軽罪以上ノ刑ニ処セラレタルカ、又ハ不行状ノ所為アルカ、若ハ命令ヲ遵守セサルトキ
 一 鉱業人又ハ其ノ使用スル役員ニ対シ粗暴ノ所為アリタルトキ
 一 身体虚弱ニシテ業務ニ堪ヘサルトキ
 一 鉱業ヲ禁止セラレ又ハ廃業シタルトキ
第六十七条 左ノ場合ニ於テハ鉱夫ハ何時タリトモ其ノ雇役ヲ罷ムルコトヲ得
 一 身体虚弱ニシテ業務ニ堪ヘサルトキ
 一 鉱業人又ハ其ノ使用スル役員ニ於テ虐待シタルトキ
 一 約定ノ賃銭又ハ報酬ヲ給与セサルトキ
第六十八条 鉱業人又ハ其ノ代理人ハ解雇スル鉱夫ノ請求ニ依リ、従来ノ業務年限、本人ノ技能・賃銭及解雇ノ事由ヲ記載シタル証明書ヲ与フヘシ
 鉱業人証明書ヲ与フルコトヲ拒ムカ、又ハ鉱夫ニ於テ証明書中不当ト認ムル事項アルトキハ、所轄鉱山監督署員若ハ警察官ニ申告スルコトヲ得
 - 第20巻 p.150 -ページ画像 
第六十九条 鉱業人ハ鉱夫ノ賃銭ヲ通貨ニテ仕払フヘシ、鉱夫ノ請求アルニアラサレハ物品ヲ以テ仕払ヲ為スコトヲ得ス
第七十条 鉱業人ハ鉱夫名簿ヲ備ヘ置キ、氏名・年齢・本籍・職業・雇入及解雇ノ年月日ヲ記入スヘシ
第七十一条 農商務大臣ハ左ニ記載スル制限内ニ於テ省令ヲ以テ鉱夫工役規則ヲ定ムルコトヲ得
 一 一日十二時間以上ノ就業時間ヲ制限スルコト
 一 女工ノ工役ノ種類ヲ制限スルコト
 一 十四年以下ノ男女職工ノ就業時間及工役ノ種類ヲ制限スルコト
第七十二条 鉱業人ハ左ノ場合ニ於テ其ノ雇入鉱夫ヲ救恤スヘシ、其ノ救恤規則ハ所轄鉱山監督署ノ認可ヲ受クヘシ
 一 鉱夫自己ノ過失ニ非スシテ就業中負傷シタル場合ニ於テ診察費及療養費ヲ補給スルコト
 一 前項ノ場合ニ於テ鉱夫ニ療養休業中相当ノ日当ヲ支給スルコト
 一 前項ノ負傷ニ由リ鉱夫ノ死亡シタルトキ埋葬料ヲ補給シ及遺族ニ手当ヲ支給スルコト
 一 前項ノ負傷ニ由リ癈疾トナリタル鉱夫ニ期限ヲ定メ補助金ヲ支給スルコト
    第七章 鉱業税及鉱区税
第七十三条 鉱業人ハ鉱業税トシテ鉱業製産物ノ価格百分ノ一、鉱区税トシテ鉱区一千坪毎ニ一箇年金三十銭ヲ納ムヘシ、但一千坪未満ノ端数ニ対スル鉱区税ハ之ヲ免除ス
 鉄鉱ヲ採掘スル者ニハ鉱業税ヲ課セス
第七十四条 前条鉱業製産物ノ価格ハ主要ナル市場ノ平均相場ヲ標準トシ、農商務大臣ノ告示スル所ニ依ル、但市場ノ相場ナキモノハ其ノ販売代価ニ依ル
第七十五条 鉱業税ハ前年分ヲ毎年三月三十一日限ニ、又廃業ノ年ニ係ルモノハ廃業ノ日ヨリ六十日以内ニ之ヲ納ムヘシ
 鉱区税ハ一箇年分ヲ其ノ前年十二月十五日限ニ、又初年ニ係ルモノハ月割ヲ以テ採掘出願特許ノ日ヨリ六十日以内ニ之ヲ納ムヘシ、其ノ廃業ノ年ニ係ルモノハ之ヲ返付セス
第七十六条 鉱業人納税期限内ニ鉱業税及鉱区税ヲ納メサルトキハ農商務大臣ハ採掘ノ特許ヲ取消スコトヲ得、其ノ取消ニ不服アルトキハ其ノ達ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
    第八章 罰則
第七十七条 第二十四条・第二十五条ヲ犯シタル者ハ二十円以上二百円以下ノ罰金ニ処ス
第七十八条 特許ヲ得スシテ採掘ヲ為シタル者、又ハ詐偽ニ由リテ特許ヲ得タル者ハ、十五円以上百五十円以下ノ罰金ニ処ス
第七十九条 認可ヲ得スシテ試掘ヲ為シタル者、又ハ詐偽ニ由リテ認可ヲ得タル者、又ハ認可ノ期限ヲ過キ尚ホ試掘ヲ為シタル者ハ、十円以上百円以下ノ罰金ニ処ス
第八十条 第二十七条ヲ犯シタル者、及第五十九条ノ予防ニ著手セサ
 - 第20巻 p.151 -ページ画像 
ル者、又ハ第六十二条但書ノ規定ヲ犯シタル者ハ、十五円以上百五十円以下ノ罰金ニ処ス
 第三十一条第一項及第二項ヲ犯シタル者ハ五円以上五十円以下ノ罰金ニ処ス
第八十一条 第十条ヲ犯シタル者ハ其ノ売得金ノ半額ニ相当スル罰金ニ処ス
第八十二条 第十一条ノ販売代価ヲ隠匿シタル者ハ其ノ隠匿シタル金額ノ半額ニ相当スル罰金ニ処ス
第八十三条 第三十九条ニ依リ届出ツヘキ事項ヲ詐テ逋税シタル者ハ其ノ逋税金額ノ三倍ニ相当スル罰金ニ処シ、其ノ逋税ニ関セサル事項ニ係ルモノハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス
第八十四条 第四十条ノ帳簿ヲ調製セス、若ハ記載ヲ怠リ、若ハ詐テ記載シタル者ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス
第八十五条 第六十四条第二項・第六十九条及第七十二条ヲ犯シタル者ハ十円以上百円以下ノ罰金ニ処ス
第八十六条 第六条・第三十七条・第六十八条及第七十条ニ違背シタル者ハ一円以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処ス
第八十七条 第八十一条・第八十二条及第八十三条ノ場合ニ於テ自首シタル者ハ、其ノ納付スヘキ金額ヲ追徴シ其ノ罪ヲ問ハス
第八十八条 此ノ条例ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ減軽・再犯加重及数罪倶発ノ例ヲ用ヒス
 鉱業人未成年・瘋癲・白痴又ハ瘖唖ニシテ此ノ罰則ヲ犯シタルトキハ其ノ後見人ヲ処罰ス
    第九章 附則
第八十九条 此ノ条例実施以前ニ許可ヲ得タル試掘人又ハ借区人ハ其ノ許可ヲ得タル年限中試掘又ハ鉱業ヲ為スコトヲ得
第九十条 此ノ条例実施以前ニ借区人ノ許可ヲ得、借区年限満期後尚ホ引続キ鉱業ヲ為サントスル者ハ借区満期以前ニ此ノ条例ニ依リ出願スヘシ
第九十一条 此ノ条例ノ施行ニ関スル細則ハ農商務大臣之ヲ定ム
第九十二条 此ノ条例ハ明治二十五年六月一日ヨリ施行ス、明治六年太政官第二百五十九号布告日本坑法ハ同日限之ヲ廃止ス



〔参考〕東京経済雑誌 第二五巻第六二四号・第七一九―七二〇頁 明治二五年五月二一日 ○帝国議会 衆議院の部(DK200013k-0006)
第20巻 p.151-152 ページ画像

東京経済雑誌  第二五巻第六二四号・第七一九―七二〇頁 明治二五年五月二一日
 ○帝国議会 衆議院の部
    ○鉱業条例施行期限延期法案の可決(同 ○五月十四日)
本案は来る六月一日より施行せらるへき鉱業条例の施行期限を、一ケ年間延さんとするものなり、中村弥六氏提出の理由を演説せり、曰く
 元来鉱業条例に就ては第二議会に際し修正案を提出せしか、不幸にも解散に逢ひ議了の運ひに至らさりし故に当議会に於ても亦修正案を提出するの考なりしが、同条例は六月一日より実施せらるゝことなれば、此目前に差迫りたるものに向て修正を加ふる事とせは、或は再ひ議決の運ひに至らさるやも知るへからさるを以て一ケ年施行を延期し其中十分の修正を加へんと欲す、是れ本案提出の要旨なり
 - 第20巻 p.152 -ページ画像 
抑も我国に於て鉱業取締法を設けたるは実に明治六年にあり、鉱山事業は比年盛大を極め、明治六年に制定したる日本鉱法《(坑)》は今日鉱業の発達を保護するに足らす、政府も爰に見る処あり、明治廿三年勅令第八拾七号を以て鉱業条例を発布せられたりと雖も、是亦現時の状況に適せさるものと云はさるへからす、先つ大躰に就て言へば鉱山監督署の設置の如き、徒らに多数の官吏と多額の費用とを要し、而して一方に於ては鉱業より租税を徴集すとせば、何を以て鉱業の発達拡張を促すべけんや、況んや該制度の如きは独逸の法文を翻訳したるものなりとの事なれば、直ちに之れを我国に実行せんとするも到底良好なる結果を見ること能はず、寧ろ従来の如く県庁にて取扱ひ、経験学術共に備はれる吏員を使用するこそ得策なりと信ず、又監督署の費用たる今日の処にては十二万円余なりと雖とも、我国官衙の仕組は年々澎張するか故に、今後四五年を経過せば少なくとも廿万円以上を要するに至らん、又此条例たる試堀税を徴収するの規定たるを以て、非常に其発育を害するのみならす、監督署は何時たりとも臨撿するを得るの規定ありて、而して其旅費日当等鉱山主の負担となることなれば、又大に弊害ありと云はさる可らす、又其徴税法たる売払高に依るとの事なれは、頗る不公平の結果を生する事なしとせす
斯くて第三読会を省き、二読会於て可決確定せり



〔参考〕東京経済雑誌 第二五巻第六二五号・第七五四頁 明治二五年五月二八日 ○帝国議会 貴族院の部(DK200013k-0007)
第20巻 p.152 ページ画像

東京経済雑誌  第二五巻第六二五号・第七五四頁 明治二五年五月二八日
 ○帝国議会 貴族院の部
    ○鉱業条例施行期限延期法案の第一読会(同上 ○五月二四日)
本案も亦た衆議院の議決を経たるものなり、農商務大臣河野氏反対の演説を為して曰く
 本案は初め起草するに当り実業家の意見も聴き且つ従来の経験する所に基き制定したるものにして、其実施は来る六月一日の予定にて之れが為めには夫々準備を為し、全国八ケ所に百廿名の人を出して今や其実施を待つものなり、今若し此施行を延期するときは為めに種々の面倒を生するの恐あり、鉱業の事たる頗る複雑のものなれば此条例が若し万一にも鉱業の発達を妨ぐることあらば条例を改良するに於て吝ならざるべし、然れとも若し鉱業条例の実施を延期するときは、日本坑法を以て鉱業を支配するの外なかるべしと雖とも、該坑法は已に我鉱業を支配するに足らざるものなれば、本官は鉱業条例の実施を望まさるを得ず、若し該条例中に不完備なる所あれば諸君と御相談して改正するに躊躇せざるべし、鉱業の詳細は本官も未だ詳かならざる所あれば主任者をして第二読会の際に其実状を陳述せしむる所あらん、各員其の意を諒せられよ
異議なく特別委員の審査に附せり



〔参考〕東京経済雑誌 第二五巻第六二六号・第七九〇頁 明治二五年六月四日 ○帝国議会 貴族院の部(DK200013k-0008)
第20巻 p.152-153 ページ画像

東京経済雑誌  第二五巻第六二六号・第七九〇頁 明治二五年六月四日
 ○帝国議会 貴族院の部
    ○鉱業条例施行期限法律案の否決(同上 ○五月三〇日)
 - 第20巻 p.153 -ページ画像 
特別委員長山口尚芳氏本案審査の結果を報告して曰く
 委員会に於ては不幸にも衆議院と反対の意見を有す、其詳細なることを報知するに於ては数時間を要するに非されは尽きさるを以て、只た主要なる点に就てのみ報告せん、衆議院が本案を決定したる第一の理由に曰く、鉱山監督署を置くに就ては莫大の費用を要すと、成程費用も要し役人も余計入るに相違なし、然れとも本邦の鉱業は明治初年より漸次に発達し、現に今は三千有余ケ所の借区あり、之れに試掘中のもの及ひ爾後開掘すへき見込あるものを合せは、凡そ一万五千の鉱山ありと云ふ、斯る夥多の鉱山を支配するには現行法の能くする所に非されは是非共鉱業条例を施行せさるを得す、夫か為に多少費用を増加するは止を得さることと云ふへし、又此条例を施行せは官吏か事業に干渉するの弊あり、鉱業税を重課せらるゝと云ふが如き延期の理由とするに足らすとて、一二ケ条に付き現行法と比較して延期の不可なるを述へ、要するに鉱業の発達を計り鉱業の保護を為すが為には鉱業条例を施行せさるへからすと委員会は審査せり
農商務大臣河野氏本案に反対して曰く
 本官は委員長の報告に満足を表す、元来鉱業は明治六年以来日本鉱法の支配を受けたり、然ども日進の勢を以て鉱業は発達せり、故に又た之れに応ずるに完全なる法令を以てするは当然の事にして、鉱業条例の発布ありし所以なり、而て其条例は実に本年の六月一日より執行す、今ま此の条例を把て日本鉱法に比較するに其両者の優劣は判然たり、今ま之を二年間延期すれば実業者は其準備画餅となり当局者の諸般の準備は立ろに廃せんとす、且つ発布以来未た曾て此の条例に対して故障ありしを聞かす、今に執行の眉間に迫れる法律は決して延期すべからず、諸君之を諒察せよ
 (小畑美稲氏)余は委員の一人にして非論者なり、今ま其意見を述べん、発議者は曰く(一)監督署を置くは莫大の経費を要すと、然れども今ま之を府県に委托して技師役人を要するとすれば其経費や監督署を置くより莫大なりと、主務官は言ふ、(二)工業の発達を害すと、然ども之れ施行後に修正し能ふものなり、(三)過度の干渉をなして工業者に非常の煩累を与ふ第十四条の如きは是なりと、是れ誤解なり、(四)課税法は極めて不公平なりと、然れども鉱業税は産額より課出す、又た明後日より半額を減ずと、是れ公平ならずや、(五)此法は独逸法の翻訳なりと、然れども之れ民法及ひ商法の如き者と異り、好法なれば採らざる可らず
谷干城氏本案維持の演説ありて採決したるに、少数にて二読会を開かさるに決し、折角衆議院の議決を経たる本案は廃棄せられたり