デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第20巻 p.153-159(DK200014k) ページ画像

明治25年10月1日(1892年)

是日栄一、当会議所会頭トシテ明治二十五年八月一日公布警察令第十七号及第十八号、劇毒薬取締ニ関スル法令ハ実際上不適当ナルニヨリ取消ヲ請フ旨ヲ内務大臣伯爵井上馨・農商務大臣伯爵後藤
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象二郎ニ建議ス。右建議ハ許可セラレ、翌二十六年四月三十日栄一、東京絵具染料商組合及同商問屋組合ヨリ礼状ヲ受ク。


■資料

東京商業会議所月報 第二号・第四―五頁 明治二五年一〇月 【○同月同日 ○九月一九日午後五…】(DK200014k-0001)
第20巻 p.154-156 ページ画像

東京商業会議所月報  第二号・第四―五頁 明治二五年一〇月
○同月同日 ○九月一九日午後五時三十分、東京銀行集会所ニ於テ臨時会議ヲ開ク、当日出席会員二十八名ニシテ左ノ議案ヲ審議シ、午後七時散会ス
○中略
右終ルノ後、会員佐久間貞一君及ヒ半田善八君ハ緊急問題トシテ成規ノ賛成ヲ得、左ノ建議ヲ提出ス
 本年八月一日第十七号警察令ノ義ハ商工業ノ発達ヲ妨ケ結局公益ヲ害スルモノト信スルニ付、本会議所ヨリ別紙之通リ農商務大臣ニ建議相成度、此段成案ヲ具シ建議候也
  明治廿五年九月十九日          佐久間貞一
                      半田善八
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿
(別紙)
    明治廿五年八月一日第十七号警察令ノ取消ヲ請フノ建議
 本年八月一日警視総監ハ警察令第十七号ヲ以テ左之通リ命令セラレタリ
  絵具染料商ニシテ左ニ記載スル毒薬劇薬ハ封緘シタル容器ヲ開テ零売スルコトヲ得ス
   塩酸加里(コロール酸カリウム) 重コローム酸カリウム 鶏冠石 雄黄 雌黄 石黄 金硫黄 ピクリン酸及其塩類 硝酸粗製硝酸 硫酸 粗製硫酸 硝酸銀
  此警察令ニ違背スル者ハ刑法第四百廿七条第八項ニ依リ一日以上三日以下ノ拘留又ハ弐拾銭以上壱円弐拾五銭以下ノ科料ニ処ス
 抑此警察令ハ要スルニ商工業ノ発達ヲ妨ケ結局公益ヲ害スルモノト信スルニ付、左ニ其理由ヲ開陳スベシ
 従来薬種商カ薬用ノ為メニ毒薬劇薬ヲ販売スルニ当リテハ明治廿二年三月十五日法律第十号薬品営業並薬品取扱規則第二十二条ヲ以テ衛生試験所又ハ薬剤師製薬者ニ於テ封緘シタル容器ヲ開キテ零売スルコトヲ禁セラレシト雖トモ、絵具染料商ガ職業用ノタメ此等ノ薬品ヲ販売スルニ当リテハ全ク之ヲ禁セラレザリキ、蓋シ薬用ニ供スル毒薬劇薬ナルモノハ其性質純良ナラザルベカラズシテ、若シ之ガ用量ヲ誤ルトキハ衛生上危険多カルベシト雖トモ、職業用ニ供スルモノハ素ヨリ服用スベキモノニ非ルヲ以テ其性質ノ精粗ヲ問ハス衛生上ニ危険ナキコトハ明ナルベシ、是レ其取扱方ニ於テ二者ノ間寛厳ノ別ヲ存セラレタルモノニシテ誠ニ其当ヲ得タルモノト謂フベシ而テ此警察令ニ掲グル毒薬劇薬ノ中ニハ職業用ノタメニ極メテ要用ナルモノアリ、例ヘバ重クローム酸カリウムノ黒色及ヒ紺色ノ染料ニ最モ必用ニシテ、且ツアリザリン染料ノ媒染剤ニ適当ナルガ如キ雄黄ノ絵画ノ彩色料ニ用ヰ又烟火術ノ材料ニ供スルガ如キ、石黄ノ
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漆・油・膠等ノ粘液ニ混和シテ蒔絵ノ彩色料若クハ絵画又ハ染料ニ用ユルガ如キ、ピクリン酸ノ黄色ヲ旨トスル種々ノ染料ニ用ヰ又ハ止色ノ料ト為スガ如キ、硝酸ノ黒色染料ニ使用スル夥多ニシテ、又アリザリン媒染剤及金銀ヲ容解セシムル等其他工業用ニ必要ナルガ如キ、硫酸ノ諸金属ノ錆ヲ洗滌シアニリン染料ノ直接媒染青藍ノ媒染等ニ使用スルガ如キ、硝酸銀ノ鍍銀術若クハ写真術ニ必要ニシテ又牛角馬爪等ニ斑紋ヲ画クニ用ユルガ如キ即チ其類ナリ、而シテ従来絵具染料商ガ職業用ノタメニ此等ノ薬品ヲ販売スルニ当リテハ前段述ブル如ク全ク法律上ノ制限ナクシテ、唯取扱上ハ法律第十号第四章薬品取扱第廿九条・第三十条・第三十一条・第三十二条等ニヨリテ小量ヲ零売供給シ、其容器ノ如キモ需用者ノ持参スルモノヲ用ヰ、随テ便利上更ニ之ガ封緘ヲ要セザリシナリ、然ルニ一朝此警察令ヲ実施セラレテヨリ絵具染料商ガ職業用ノタメ此等ノ薬品ヲ販売スル場合ニ於テモ、薬種商ガ医薬用ノタメ之ヲ販売スル場合ト等シク、予テ薬剤師製薬者等ニ於テ封緘ヲ為シタル容器ハ其儘之ヲ売却セザルベカラス、又之ヲ開キテ零売セントスルトキハ更ニ薬剤師製薬者ヲシテ之ヲ封緘セシメザルベカラザルニ至レリ、之カ為メ絵具染料商ハ薬剤師ノ手ヲ仮リテ封緘ヲ為スカ如キ非常ノ煩累ヲ要シ、又需要者ニ於テモ緊急ノ用途ヲ杜絶セラルヽノミナラス、自己ノ容器ヲ用ユルヲ得ザル等無益ノ費用(例ヘバ正味金三銭五厘ノ硫酸ニ金四銭ノ瓶ヲ用ユル類)ヲ要シ、従テ価格ヲ意外ニ騰貴セシメサルベカラザルニ至リ、結局売買者双方ニ於テ甚シキ困難ヲ感シ、剰ヘ職業者ノ冗費ヲ増シ斯業ノ発達ヲ妨害スル事鮮カラザルナリ、或ハ曰ク、此等薬品ハ共ニ爆発物ヲ製造スルノ材料ナルヲ以テ斯ル取締法ヲ設クルハ保安上必要ナリト、若シ果シテ然リトセン乎、之ガ為メ多少売買ヲ拘束セラルヽモ固ヨリ止ムヲ得サルベシト雖トモ、今熟々本会議所ノ審案スル処ニ拠レバ全ク其必要ナキヲ知ルナリ、何トナレバ此等薬品ノ売買ヲ全然禁止セザル限リハ之ヲ利用スルト害用スルトハ唯需用者其人ノ択ブ処ニ在リテ、決シテ之ヲ封緘スルト否トニ関セザレバナリ、故ニ若シ需用者ヲシテ私カニ之ヲ害用スルノ意念アラシメンカ、仮令如何程之ヲ厳罰スルモ実際ニ於テ毫モ其効ヲ奏スルコト能ハザルベキナリ
 以上ノ理由ナルヲ以テ、此警察令ハ保安上全ク其必要ナクシテ却テ商工業ノ発達ヲ妨ケ結局公益ヲ害スルモノト認ムルニ付、仰キ願クハ閣下実際ノ事情ヲ明察セラレ、此警察令ハ明治廿四年四月一日勅令第三十四号警視庁官制第十二条ニ拠リ速ニ取消サレン事ヲ、此段本会議所ノ決議ニ依リ建議仕候也
                東京商業会議所会頭
  明治廿五年九月 日           渋沢栄一
    農商務大臣 伯爵 後藤象二郎殿
本案ハ之ヲ可決シ、猶其建議案ハ会頭ノ指名ヲ以テ委員五名ヲ指名シ之ニ調査ヲ附托シ、其報告ヲ得テ更ニ議決スベシト決シ、乃チ会頭ハ左ノ五名ヲ指名ス
       太田実君        松本伊兵衛君
 - 第20巻 p.156 -ページ画像 
       高木与兵衛君      半田善八君
       佐久間貞一君


東京商業会議所月報 第二号・第五頁 明治二五年一〇月 【○同月 ○九月二十四…】(DK200014k-0002)
第20巻 p.156 ページ画像

東京商業会議所月報  第二号・第五頁 明治二五年一〇月
○同月 ○九月二十四日午前九時、本会議所仮事務所ニ於テ委員会議ヲ開キ本年八月一日発布警察令ノ取消ニ関スル建議ノ件ヲ審議シ、正午十二時散会ス


東京商業会議所月報 第三号・第一頁 明治二五年一一月 【○明治二十五年十月一…】(DK200014k-0003)
第20巻 p.156 ページ画像

東京商業会議所月報  第三号・第一頁 明治二五年一一月
○明治二十五年十月一日、去月廿九日臨時会議ノ決議ニ依リ警察令第十七号及十八号ノ取消ヲ要スル義ニ付、内務・農商務両大臣ヘ建議書ヲ呈ス(建議書ノ全文ハ参照ノ部第一号ニ掲載ス)


東京商業会議所月報 第三号・第二―四頁 明治二五年一一月 【○十月一日内務・農商…】(DK200014k-0004)
第20巻 p.156-158 ページ画像

東京商業会議所月報  第三号・第二―四頁 明治二五年一一月
○十月一日内務・農商務両大臣ヘ呈シタル警察令取消ノ義ニ付建議書ノ全文ハ左ノ如シ
(参照第一号)
    明治廿五年八月一日公布警察令第十七号及第十八号ノ取消ヲ請フノ建議
 本年八月一日警視総監ハ警察令第十七号及第十八号ヲ以テ左ノ通リ命令セラレタリ
 (第十七号)
  絵具染料商ニシテ左ニ記載スル毒薬劇薬ハ封緘シタル容器ヲ開テ零売スルコトヲ得ス
   塩酸加里(コロール酸カリウム)・重クローム酸カリウム・鶏冠石・雄黄・雌黄・石黄・金硫黄・ピクリン酸及其塩類・硝酸粗製硝酸・硫酸・粗製硫酸・硝酸銀
  此警察令ニ違背スル者ハ刑法第四百二十七条第八項ニ依リ一日以上三日以下ノ拘留又ハ弐拾銭以上壱円弐拾五銭以下ノ科料ニ処ス
 (第十八号)
  絵具染料商・烟火製造人・寸燐製造人・絵画印刷人ハ毒薬劇薬ノ収支ニ関スル帳簿ヲ設ケ、収支ノ都度之レニ記入スヘシ、警察官吏ハ其帳簿及薬品ニ就キ臨時撿査スルコトアルヘシ
  前項収支ノ記入ヲ為サス又ハ撿査ヲ拒ム者ハ刑法第四百二十七条第八項ニ依リ一日以上三日以下ノ拘留又ハ弐拾銭以上壱円廿五銭以下ノ科料ニ処ス
 然ルニ本会議所ノ見ル所ヲ以テスレハ、右警察令ハ商工業ノ発達ヲ妨ケ寧ロ公益ヲ害スルモノト信ス、依テ左ニ其取消ヲ請フノ理由ヲ開陳シ、謹テ閣下ニ建議スル所アラントス
 従来薬種商カ医薬用ノ為メニ毒薬劇薬ヲ販売スルニ当リテハ明治廿二年三月十五日法律第十号薬品営業並薬品取扱規則第廿二条ヲ以テ衛生試験所又ハ薬剤師製薬者ニ於テ封緘シタル容器ヲ開キテ零売スルコトヲ禁セラレタリト雖モ、絵具染料商ガ職工用ノ為メ此等ノ薬品ヲ販売スルニ付キテハ全ク之ヲ禁セラレザリキ、蓋シ薬用ニ供スル毒薬劇薬ナルモノハ其化製精純ニシテ若シ之ガ用量ヲ誤ルトハキ
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衛生上危険多カルベシト雖モ、職工用ニ供スルモノニ至リテハ素ヨリ服用スヘキモノニアラザルヲ以テ、其取扱方ニ於テ二者ノ間寛厳ノ別ヲ存セラレタル所以ニシテ誠ニ然ルヘキ事タルヲ信ス、而シテ今回公布ノ警察令ニ掲クル毒薬劇薬ノ中ニハ職工用ノ為メニ極メテ必要ナルモノアリ、例セハ「重コローム酸カリウム」ノ黒色及紺色ノ染料ニ最モ要用ニシテ且「アリザリン」染料ノ媒染剤ニ適当ナルカ如キ、雄黄ノ絵画ノ彩色料ニ用ヰ又煙火ノ材料ニ供スルカ如キ、石黄ノ漆・油・膠等ノ粘液ニ混和シテ蒔絵ノ彩色料若クハ絵画又ハ染料ニ用ユルカ如キ、「ピクリン酸」ノ黄色ヲ旨トスル種々ノ染料ニ用ヰ又止色ノ料ト為スカ如キ、硝酸ノ黒色染料ニ使用スルコト夥多ニシテ又「アリザリン媒染剤」及金銀ヲ溶解セシムル等其他工業用ニ必要ナルガ如キ、硫酸ノ諸金属ノ錆ヲ洗滌シ「アニリン」染料ノ直接媒染青藍ノ媒染等ニ使用スルカ如キ、硝酸銀ノ鍍銀術若クハ写真術ニ必要ニシテ又半角馬爪等ニ斑紋ヲ画クニ用ユルカ如キ、何レモ工業用ノ為メニ欠ク可カラサルモノナリトス、而シテ従来絵具染料商ガ職工用ノ為メニ此等ノ薬品ヲ販売スルニ付キテハ前段述ブルガ如ク全ク法律上ノ禁制ナク、唯取扱上法律第十号第四章(薬品取扱)第廿九条・第三十条・第三十一条・第三十二条ニ従フヲ要シタルノミニシテ、小量ヲ零売供給シ其容器ノ如キモ需用者ノ持参スルモノヲ用ヰ、随テ便利上更ニ其封緘ヲ要セサリシナリ、然ルニ一朝前記第十七号ノ警察令ヲ実施セラレタルヨリ絵具染料商カ職工用ノ為メ此等ノ薬品ヲ販売スル場合ニ於テモ、薬種商ガ医薬用ノ為メ之ヲ販売スル場合ト等シク、予テ薬剤師製薬者等ニ於テ封緘ヲ為シタル容器ハ其儘之ヲ売却セサル可カラサル事トナレリ、之レカ為メ需用者ハ実際要スルダケノ分量ヲ買フノ自由ヲ失シ、殊ニ小工業者即チ其日稼ギノ輩ニ至リテハ幾ンド其使用ノ途ヲ絶タルヽニ等シク数千ノ職工ヲシテ手ヲ拱シテ糊口ヲ失フノ困難ニ陥ラシム、又一方ニ於テハ従前ノ如ク自己ノ容器ヲ用ヰルヲ得ザルガ為メニ無益ノ費用(例セハ正味金三銭五厘ノ硫酸ニ金四銭ノ瓶ヲ用ユルノ類)ヲ要シ其結果ハ大ニ其価格ヲ騰貴シタルニ等シキモノアラントス、工業欠上クベカラザル此等薬品ヲシテ斯クノ如キノ拘束ヲ受ケシメバ工業者ノ困難ヲ感ジ販売者ノ損失ヲ受クルハ勿論、之ガ為メ工業ノ発達ヲ妨害スル事果シテ如何ゾヤ、是今回公布ノ警察令ガ商工業ノ発達ヲ害スルモノアリト云フ所以ナリ、而シテ此警察令ハ此等ノ事情ヲモ顧ミズシテ之ヲ実施スルノ必要アリヤ、或ハ曰フ、右薬品ハ何レモ爆発物ヲ製造スルノ資料ナルヲ以テ保安上斯ル取締法ヲ設クルノ必要アリト、若シ果シテ然ランニハ、之ガ為メ多少売買ヲ拘束セラルヽモ或ハ已ムヲ得ザルベシト雖モ、今本会議所ノ審案スル所ニ拠レハ、其売買ヲ全然禁止セザル限リハ之ヲ利用スルト害用スルトハ唯需用者其人ノ択ブ所ニ在リテ、決シテ之ヲ封緘スルト否トニ関セザルベシ、且ツ塩酸加里及「重クローム酸カリウム」ノ売買ヲ拘束スルモ之ガ代用物ハ尚少ナカラザルガ故ニ、此拘束ハ実際上無功ニ帰センノミ、故ニ此警察令ヲ以テ保安上ノ必要アリト云フハ、此拘束事実ニ於テ防衛ノ功ナキヲ知ラサル皮相ノ見解タルニ過ギズ、
 - 第20巻 p.158 -ページ画像 
之ヲ要スルニ此警察令ハ一方ニ於テ実際之ヲ利用スルモノニ非常ノ不便ヲ与ヘナガラ、一方ニ於テ之ヲ害用スルモノヲ防グノ効果ナキ徒法ナリト云フモ蓋シ過言ニアラザルベシ
 警察令第十七号ノ取消ヲ要スル理由ハ略前陳ノ如シ、而シテ同令第十八号モ亦之ガ取消ヲ望マザルヲ得ズ、思フニ後者モ保安上ノ取締ノ為メニ前者ト附帯シテ之ヲ行フニ至リシモノナル可シト雖モ之カ為メニ商工業者ノ不便ヲ感スル事誠ニ甚ダシキモノアリ、同令ニ拠レバ絵具染料商・煙火製造人・寸燐製造人・絵画印刷人ハ毒薬劇薬ノ収支ニ関スル帳簿ヲ設ケ収支ノ都度之ヲ記入スルヲ要スト雖モ、此等ノ商工業者ヲシテ其営業上此等薬品ノ収支ヲナス毎ニ法令ニ依テ一々之ヲ帳簿ニ記入シ、且臨時警察官吏ノ撿査ヲ受ケシムルカ如キハ実ニ其煩ニ堪ユヘカラザルナリ、然リト雖モ若シ此警察令ヲシテ保安上取締ノ実功アラシメバ為メニ商工業者ヲシテ多少ノ不便ヲ感セシムルモ或ハ忍ブベシト雖モ、本会議所ノ見ル所ヲ以テスレバ前記四種ノ営業者ヲシテ毒薬劇薬ノ収支ヲ明ニセシムルトモ、之ヲ使用スルモノハ其他ニ尚ホ数十種ノ多キアルヲ以テ、実際ニ於テ其取締ノ功ヲ見ル事能ハザルヘシ、然ラバ之ヲ毒薬劇薬ヲ使用スル各業全躰ニ及ボストセン歟、是亦保安上ノ取締ニ於テ其功ヲ全フスルノ手段タル事ヲ見ス、何トナレバ帳簿上ニ於テ如何ニ其収支ヲ明瞭ナラシムルトモ、之ヲ以テ其害用ヲ防グノ功アルベキ道理ナケレバナリ
 前記ノ警察令ニシテ果シテ保安上取締ノ為メニ公布セラレタルモノナリトセバ其目的ヲ達セザルノミナラス、却テ幾多ノ商工業者ニ無用ノ煩累ヲ与フルニ過ギサルナリ、故ニ若シ保安上之ヲ必要トセバ他ニ毒薬劇薬ヲ使用スル者ヲ充分取締ルコトヲ得ベキ方案ヲ取ルニ如カザルベシ、之ヲ要スルニ前記ノ警察令ハ、保安上全ク其効果ナクシテ却ツテ商工業ノ発達ヲ妨害シ、結局公益ヲ害スルモノト確信ス、仰キ願クハ閣下実際ノ事情ヲ明察セラレ、明治廿四年四月一日勅令第三十四号警視庁官制第十二条ニ拠前記警察令第十七号及第十八号共速ニ之ヲ取消サレンコトヲ、此段本会議所ノ決議ニ依リ建議仕候也
  明治二十五年十月一日
            東京商業会議所会頭 渋沢栄一
    内務大臣 伯爵 井上馨殿
    農商務大臣 伯爵 後藤象二郎殿


第二回東京商業会議所事務報告 第二二―二四頁 明治二六年四月刊(DK200014k-0005)
第20巻 p.158-159 ページ画像

第二回東京商業会議所事務報告  第二二―二四頁 明治二六年四月刊
一警察令取消ノ儀ニ付内務・農商務両大臣ヘ建議ノ件
 本件ハ明治二十五年九月十九日会員佐久間貞一・半田善八両君ノ提案ニ係リ、其要旨ハ同年八月一日発布ノ毒薬劇薬取締ニ関スル警察令第十七号ハ当業者ノ不便トスル所ニ付該令ノ取消ヲ其筋ヘ建議ス可シト云フニ在リ、依テ同日第十五回ノ臨時会議ニ附シタルニ、委員五名ヲ選ヒ其調査ヲ附托スルコトニ決シ、即チ会頭ノ指名ヲ以テ左ノ諸君ヲ選挙シタリ
 - 第20巻 p.159 -ページ画像 
                    佐久間貞一君
                    半田善八君
                    高木与兵衛君
                    松本伊兵衛君
                    太田実君
 其後委員ハ審議ノ末右提案ノ趣意ヲ可認シ其建議書案ヲ草シ報告シタルニ付、同年九月二十九日第十六回ノ臨時会議ニ附シ其可決ヲ経同年十月一日左ノ如ク井上内務大臣及後藤農商務大臣ヘ建議シタリ
   ○建議文ハ月報所載ノモノト同一ニツキ略ス。


東京商業会議所月報 第六号・第一頁 明治二六年二月 【○明治二十六年一月七…】(DK200014k-0006)
第20巻 p.159 ページ画像

東京商業会議所月報  第六号・第一頁 明治二六年二月
○明治二十六年一月七日、斎藤商工局長ヨリ予テ本会議所ヨリ内務・農商務両大臣ヘ建議シタル明治二十五年八月一日公布警察令第十七号及十八号取消ノ件ニ付キテハ農商務大臣ノ照会ニ依リ、内務大臣ヨリ警視庁ヘ該令修正方内訓セラレタル旨内示セラル


東京商業会議所月報 第九号・第五頁 明治二六年五月 【○同月 ○四月三十日…】(DK200014k-0007)
第20巻 p.159 ページ画像

東京商業会議所月報  第九号・第五頁 明治二六年五月
○同月 ○四月三十日、東京絵具染料問屋組合頭取半田治兵衛及東京絵具染料商組合頭取南川福蔵ノ両氏ヨリ劇毒薬取締ニ関スル件警察令取消ノ義ニ付謝状ヲ送付セラル(謝状ノ全文ハ参照ノ部第九号ニ掲載ス)


東京商業会議所月報 第九号・第一〇頁 明治二六年五月 【○参照第九号 四月三十日、劇毒薬…】(DK200014k-0008)
第20巻 p.159 ページ画像

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