デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治26年4月1日（1893年）

是ヨリ先農商務省商工局長若宮正音ヨリ当会議所ニ対シ、コロンブス世界博覧会附属万国会議ヘ本邦労働者ニ関スル報告提出者ヲ選定アリタキ旨依頼アリシガ、是日栄一当会議所会頭トシテ報告提出者ハ当会議所最モ適任ナル旨ヲ回答ス。

第三回東京商業会議所事務報告　　第三一―三二頁　明治二七年四月刊
一閣竜世界博覧会附属万国会議ヘ本邦労働ニ関スル報告提出ノ儀ニ付農商務省商工局長ヨリ照会ノ件
　本件ハ明治廿六年三月十七日附ヲ以テ若宮商工局長ヨリノ照会ニ係リ、其要旨ハ閣竜世界博覧会附属万国会議ニ於テ本邦労働者ノ状態ニ関スル報告提出者ノ選定ヲ希望スル旨ヲ以テ、在米帝国公使館ヨリ外務省ヘ照会アリタルニ付、本会議所ニ於テ右報告提出者ニ適当ナル人物ヲ指名アリタシト云フニ在リ、依テ役員会議ニ於テハ右報告提出者ニハ本会議所自ラ被指名者ト為リ報告ヲ提出ス可シト決シタルニ付其趣意ヲ以テ回答書案ヲ草シ、之ヲ同年三月二十八日第二十二回ノ臨時会議ニ附シタルニ其可決ヲ得、同年四月一日附ヲ以テ左ノ如ク同局長ヘ回報シタリ
　　去十七日付ヲ以テ今般在米帝国公使館ヨリ外務省ヲ経テ閣竜世界博覧会附属万国会議通信委員ニ於テ本邦労働者ノ状態ニ関スル報告提出者ノ選定ヲ希望スル旨ヲ御省ヘ照会有之候趣ヲ以テ、本会議所ニ於テ右報告提出ニ適当ナル人物ヲ指名候様御照会ノ件ハ、去二十八日ノ臨時会議ニ付シ審議候処、労働者ノ種類ニ仍リ其状態ヲ熟知シ相応ノ学識経験ヲ有スル者ハ朝野其人ニ乏シカラサルヘク候得共、要スルニ右等ノ事項ハ一個人ニ於テ各種類ヲ相纏メ充分ノ調査ヲ期シ難ク奉存候ニ付、寧ロ本会議所ニ於テ自ラ被指名者ト相成候方可然ト相決シ候、就テハ追テ先方ヨリ本会議所ヘ依頼相成候ハヽ本会議所ニ於テハ事情ノ許ス限リ可及的調査ヲ遂ケ報告可致見込ニ付、此義御差含ノ上其筋ヘ可然御回報相成候様仕度、此段御回答申上候也
　　　明治二十六年四月一日
　　　　　　　　　　　　東京商業会議所会頭　渋沢栄一
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　　　　農商務省商工局長　若宮正音殿

第二回東京商業会議所事務報告　　第三一―三五頁　明治二六年四月刊
一閣竜世界博覧会附属万国会議ノ儀ニ付、臨時博覧会事務局ヨリ照会ノ件
　明治二十五年六月十一日附ヲ以テ臨時博覧会事務局ヨリ明治二十六年米国シカゴ府ニ開ク閣竜世界大博覧会附属万国会議ノ趣旨書及其商業・理財及労働各部ノ題案ヲ回附アリタルニ付、翻訳ノ上左ノ如ク之ヲ各会員ヘ配付シ、以テ其参考ニ供シタリ
　　今般臨時博覧会事務局ヨリ閣竜世界博覧会附属万国会議ノ趣意書等ヲ添ヒ、別紙ノ通リ照会有之候処、右ハ何レモ緊要ノ材料ニシテ当業者ノ頗ル注意ヲ要スヘキモノト存候ニ付、為御参考其写シ供覧候、此段及御照会候也
　　　明治二十五年八月四日
　　　　　　　　　　　　東京商業会議所会頭　渋沢栄一
　　　　（会員宛）
　明年米国「シカゴ」府ニ開設スヘキ閣竜世界博覧会ヲ機会トシ其附属トシテ万国会議ノ催シ可有之筈ニ候処、該会議全般ノ趣旨書並ニ貴所ニ関係アル部類ノ趣旨書概要別紙訳文及原文写ノ通ニ有之候間三部御参考ノ為メ御廻送致候也
　　明治廿五年六月十一日　　　　　臨時博覧会　事務官
　　　　東京商業会議所　御中
　　追テ貴所員中新学説・洋字論文等本文学会ヘ送付相成度向モ有之候ハヽ、本局ニ於テ廻送方取計ヒ可申候条為念申添候也
（別紙）
閣竜世界博覧会附属万国会議
　　　　本会組織ノ目的
世人ノ熟知スル如ク基督弗爾閣竜亜米利加発見ノ四百年祭ハ合衆国政府ノ裁可ヲ経テ将ニ千八百九十三年「シカゴ」府ニ於テ壮麗厳粛ノ式ヲ以テ祝セラレントス、然リ而シテ宇内物躰的ノ進歩ヲ表スル此博覧会タルヤ世人ノ賛成ニ負カザルモノタランコトハ既ニ執行セル措置ニ依テ之ヲ徴スルニ足ルベシ
然リト雖モ、博覧会ヲシテ完全ナラシメ祝典ヲシテ之ニ伴ハシメントセバ、須ラク近世ノ学芸・教育・政法・道徳・宗教等ヨリ人生各般ノ驚クベキ事業ヲ顕示シ、以テ人類ノ親睦・進歩・繁栄及ヒ安寧ヲ増進スルノ好手段トナサヾルベカラズ、是ニ於テカ千八百九十三年ノ閣竜世界博覧会ニ附帯シ万国会議ヲ起サントスルノ議アリ、而シテ正当ノ認可ヲ得テ既ニ之ヲ組織シ以テ其確立並ニ成功ヲ計ラントス
該会開設ノ旨趣一ニシテ足ラスト雖モ、今其主眼トスル処ノ要目ヲ挙クレバ左ノ如シ
　第一　各国民ノ言語・文学・家政・宗教・学術・技芸及ヒ人文組織ヲ統一スルノ基礎
　第二　当代ニ於ケル経済・工業及ヒ財政上ノ諸問題
　第三　教育制度、其進歩及ビ欠点並ニ智識全般ノ近世ノ非常ナル進
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歩ニ適合スベキ最良手段
　第四　文明国間商業上ニ用ユベキ普通言語ヲ定ムル事
　第五　万国版権・知識上及ビ商業上ノ諸法律
　第六　移住並ニ帰化法及ビ同盟国政府及ビ其臣民ノ適当ナル特権
　第七　貧困・瘋癲及ビ罪科ヲ妨遏減却シ、万国ノ生産力隆盛及ビ徳義ヲ増進スルニ有効ナルベキ手段
　第八　万国公法ヲ以テ一致ノ証明トシ及ビ人類相互保護ノ一手段トナス事、並ニ全世界ヲ通シテ一層其発達効力ヲ増進スル方法
　第九　交際列国間ヲ最高法トシテ裁判ノ主義確定及ビ列国間争論ヲ決スルニ方リ戦争ニ代ユルニ仲裁法ヲ以テスル事
今ヤ知識道徳界ニ於テ有力ノ士ハ多クハ只々其著書或ハ信書ノ交換ニヨリ互ニ相知リ又ハ友誼ヲ保ツニ過ギズ、是ヲ以テ直ニ其得ル所ノ利益ヲ測ルハ難シ、而シテ本会ヲ開設スルニ於テハ万国々民ノ真個ノ親密ヲ来シ全世界開明ノ人民ヲシテ協同聯合セシメ、遂ニ人類社会組織ノ大目的ヲ達スルニ莫大ノ実効アルベキハ敢テ疑ヲ容レザル所ナリ
此会組織ノ目的ハ固ヨリ文化・学術・技芸ノ物躰的生産物博覧会ノ成功ヲ賛助スルニ在リト雖モ、唯其区域ヲ人類進歩ノ主義ニ限ラントスルノミ
　　千八百九十年十月三十日　　　北米イリノイ州シカゴ府
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　博覧会事務局
　　　　　　　　　　　　会長　　チヤーレス、シー、ボンネー
　　　　　　　　　　　　副会長　トーマス、ビー、ブライアン
　　　　　　　　　　　　会計係　ライマン、ジエー、ゲージ
　　　　　　　　　　　　書記　　ベンジヤミン、バツターウオルス
　　　　（訳文）
　会長　　チヤーレス、シー、ボンネー
　副会長　トーマス、ビー、ブライアン
　会計方　ライマン、ジエー、ゲージ
　書記　　ベンジヤミン、バツターウオルス
　千八百九十三年ニ於ケル閣竜世界博覧会附属万国会議
　　　　商業及理財部
　運搬・交易・分配並ニ銀行・株式取引所・商業議会・海運業・鉄道業及保険ノ諸課ハ共ニ本部ニ属ス
　　　　本部ノ目的
本部ノ委員ハ附属万国会議創設ノ本旨ニ従ヒ殊ニ左ノ事項ヲ調査スル事ヲ托サレタリ
　「当代ノ経済上・工業上及理材上ノ諸問題」
　　本項ノ調査ハ労働部ニモ托サレタリ
　「万国共同金銀両本位制ノ問題」
　　本項ハ白耳義博士エミール、ド、ヲヴエリエ氏ノ発案ニシテ本部ノ委員ニ其調査ヲ托サレシモノナリ
以下掲記スル処ノ諸問題ハ会長ガ本部ヲ組織スルニ際シ其目的ヲ指示シ、且ツ本部委員ハ勿論評議委員及一般ノ名誉通信委員ノ意見ヲモ徴スル為メニ提起シタルモノトス
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　　第一　銀行及理財ニ関スル件
　A貨幣ノ歴史・性質及特質
　B貨幣制度ノ要素―天賦ノ真価・法律上ノ通貨・契約上ノ利息
　C貨幣ノ代表物―政府紙幣・銀行紙幣・預金証書・小切手及其他ノ商業手形
　D有価物ノ代表物―船荷証書・小荷物受取証書・倉荷証書及仕払ノ時日及場所ニ於ケル市価ニ依リ特定ノ有価物ヲ以テ仕払ハル可キ流通証券
　E利息―割引及為換打歩
　F数量ノ問題―世界諸大国ニ於ケル貨幣、政府及銀行紙幣ノ現在分頭額ハ如何
　G商業ノ範囲―運搬里程ノ遠近ト産物交換ニ要スル時間ノ長短トガ貨幣及紙幣ノ分量ニ及ボスベキ影響
　H産物交換ノ事務ト取引結算ノ事務トヲ分離シ、前者ニハ手形類ヲ用ヒ、後者ニハ貨幣又ハ紙幣ヲ用ユル事ハ其実行如何
　I金銀両本位制ノ問題ヲ其総テノ関係ヨリ考究スル事、而シテ殊ニ万国共同金銀両本位制ニ付考究スル事
　J貨幣・紙幣及商業手形ノ様式ヲ万国同一ニナス事、如何ナル度迄之ヲ望ム可キヤ、又果シテ実行シ得ベキヤ、且ツ現時此目的ヲ達スル為メニ如何ナル手段ヲ取ル可キヤ
　K銀行ハ有価物ノ交換ニ対シテ手段ヲ供シ、且ツ生産者・製造者・商人及其他ノ為メニ臨時ノ需用ヲ充タス協力者タル事
　L農家ノ貯蔵作物ニ於ケル信用貸ニ対スル都会ノ大銀行ノ関係
　M金融上ノ恐惶―其原因及之ヲ防止シ、又ハ之ヲ緩和スル方法
　N組合銀行―其危険・困難・安全・利益
　　第二　一般ノ商業・貿易及為換ニ関スル事
　A商業ハ文明ノ開路者タル事
　B一般ノ国法ヲ以テ商業ヲ規制スル事
　C万国条約ヲ以テ商業ヲ規制スル事
　D国憲ヲ以テ合衆国各州間ノ商業ヲ規制スル事
　E商業上ノ各種証券類即チ船荷証書・倉荷証書・為換手形・貨幣ニ対スル約束手形、特定ノ有価物ニ対スル約束手形等
　F商業上手形類ニ関スル法律ノ衝突シ其手形類ノ様式一定セザルヨリ起ル所ノ弊害及損失
　G以上ノ如キ弊害及損失ノ救済法即チ契約・法律又ハ条約ヲ以テスル改良法等
　H商業議会―其歴史・実利・市価ニ及ボス影響、生産者及消費者ニ対スル効果等
　I株式及公債取引所―其歴史及効果
　J公開市場ノ報告―其歴史及実利
　K政府ハ国民ノ利害ヲ感スル諸貨物ノ需要・供給ノ報告ヲ時々集聚シ、且ツ之ヲ公刊スベキ義務アリヤ
　L商業上ノ犯罪及之ヲ防止シ且ツ罰スル方法、但シ逃匿シタル罪人ヲ交付スル事モ此中ニ包含スル事
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　M有害ノ専売及之ニ対シ国民ヲ保護スルノ最良手段
　N商事契約ノ強制執行―差押権、法律上ノ救正及仲裁等
　O各領事館及公使館ニ於テ其本国ノ事情及産物ヲ書籍・地図・海図新聞紙等ト共ニ常ニ公示シ置クノ利益
　　第三　海運業ニ関スル件
　A探険及発見上ニ及ボス海運業ノ効力
　B古代ノ大海路及其ノ国運進歩上ニ及ボス効力
　C鉄道運搬ノ起リタル際ニ於ケル近代ノ水路
　D海運ト鉄道運搬トカ特ニ安全・速度・経済及便利等ノ諸点ニ関シ相互ニ及ボス処ノ効力
　E生産者及消費者ノ利益ニ対スル今日ノ水路ノ関係
　F国防ニ対スル今日ノ水路ノ関係
　G近代文明ノ為メニ要サレタル新水路
　H海運業ヲ支配スル自然法
　I海運業ヲ支配スル国法
　J海運業ニ関スル市府ノ制規
　K港湾及港口
　　第四　鉄道業ニ関スル件
　A世界各地ニ於ケル鉄道業ノ起原・発達及現状
　B新開国ノ殖民及発達上ニ及ボス鉄道業ノ効力
　C生産者・運搬者及消費者ニ及ボス鉄道業ノ実際ノ効果
　D安全ニシテ実効アル運搬ノ費用ヲ組成ス可キ適当ナル元素
　E鉄道線路ノ構造及運転上ニ及ボス自由競争ノ実際ノ効果
　F鉄道業ニ属スル公権及公益ノ適当ナル保護法
　G鉄道業ニ属スル私権及私益ノ適当ナル保護法
　H鉄道工夫ノ同盟罷工―之ヲ防止シ之ヲ支配スル為メニ如何ナル手段ヲ取ル可キヤ
　I鉄道工夫―其保護及改良ノ為メニ如何ナル手段ヲ取ル可キヤ
　J鉄道ノ事変―其原因及之ニ対シ実行シ得ベキ防衛法
　K鉄道貨物取扱掛ノ事務―其練習
　L運搬ニ関スル政府ノ制規及其実際ノ効果
　M運搬取引―特別ノ契約、普通法ノ制限・責務等
　N荷物―記号ヲ付スル方法及引渡方、損害ノ要求・責務ノ限界・容積ノ制限等
　O乗客切符―現行制度ノ欠点、特別ノ契約及条件・時間ノ制限・通シ切符、常用切符等
　P鉄道事務員ノ警察権及運送人ノ蒙ムルベキ詐偽ヲ防ギ、且ツ変災若クハ過失ヨリ乗客ノ受クベキ危害ヲ防グノ最良手段
　Q各州間及万国間ノ鉄道聯合組織其実行手段、其進歩ノ最良手段及世界ノ商業、平和及繁栄上ニ及ボス其効力
　　第五　保険ニ関スル件
　A保険業ノ起原―其歴史上ノ発達及保険契約ノ性質
　B海上危険ノ要素―保険契約ニ於ケル各人ノ関係及海上保険業上ニ行フ可キ改良法アラバ其件々
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　C火災危険ノ要素―保険契約ニ於ケル各人ノ関係及火災保険業上ニ行フ可キ改良法アラバ其件々
　D生命保険ノ要素―保険契約ニ於ケル各人ノ関係及生命保険業上ニ行フ可キ改良法アラバ其件々
　E変災危険ノ要素―保険契約ニ於ケル各人ノ関係及変災保険業上ニ行フ可キ改良法アラバ其件々
　F年金保険―信用保険其他特種保険ノ要素及公益並ニ私益ノ為メニ此等保険業ヲ拡張スルノ必要
　G徳義上ノ危険、保険人ノ引受ケタル危険ト被保険人一身上ノ性質トノ関係、実際ノ防衛及必要ナル改良法
　H危険ノ種類ヲ分ツニ必要ナル主義及或ル格別ナル危険ニ対シ依リテ以テ其保険料ノ額ヲ最モ相当ニ決定スヘキ規則
　I統計ノ価値及不充分ナル材料ヨリ生スル誤謬ノ決定ヲ防グノ方法
　J政府ノ法制及監督ノ効果及若シ之ニ関シテ行フヘキ改良法アラハ其件々
　K除外ノ危険―種々ノ危険ヲ除外ニ置ク所以ノ主義及法律ヲ以テ如何ナル程度迄特別ノ危険ヲ除外トスベキヤ
　L保険業ノ徳義及之ニ関シ行フベキ改良法アラバ其件々
　M保険ノ組織―結社・権利・特権・義務及責任
　N保険会社ガ其営業上受クル所ノ主モナル犯罪ニ関スル刊法学説及ヒ之ニ関シ行フ可キ改良アラバ其件々
　O保険ノ組合―其得失利害及其実益ヲ増進スベキ方法
　P動産ニ対スル海上若クハ火災保険証書ヲ所謂商業証券ト為シ、其譲与ニ依リテ財産ノ所有権ヲ移転シ得ルモノトセバ之ガ為メ如何ナル利益ヲ生ズベキヤ

千八百九十三年ニ於ケル閣竜世界博覧会附属万国会議
　　　　労働部
　総テ日耳曼国ノ工業及経済上ノ諸問題及労働者団体、相互共益協会協力制度・利益共分方案・土木組合・家計経済等ヲ包含ス
　　　　本部ノ目的
本部ノ委員ハ附属万国会議ノ趣旨ニ従ヒ、殊ニ左ノ事項ヲ調査スル事ヲ托サレタリ
　「当代ノ経済上・工業上及理財上ノ諸問題
　　本項ハ商業及理財部ニモ托サレタリ
以下掲記スル所ノ諸問題ハ会長ガ本部ヲ組織スルニ際シ其目的ヲ指示シ、且ツ本部委員ハ勿論評議委員及一般ノ名誉通信委員ノ意見ヲモ徴スル為メニ提起シタルモノトス
　A憲法上職業ノ自由―労働及其結果ヲ享受ス可キ権利
　B労力及其結果ヲ享受スル事ニ付キテノ保護ニ対スル労働者ノ権利
　C雇主ガ出来得ベキ丈最モ廉価ニシテ労働者ト雇傭契約ヲ取結ビ、且ツ此契約ヲ強行スル権利アリトノ要求
　D公益ノ為メ法律ヲ以テ雇主及被雇者ガ労働及賃金ヲ契約スルノ権利ヲ如何ナル限度迄規制ス可キヤ
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　E圧制又ハ詐偽ノ場合ニ於テハ其関係人ヲシテ普通法ノ規定ニ帰従セシムル為メ如何ナル限度迄此等ノ契約ヲ無効トシ得ルヤ、但シ普通法ニ於テハ契約ヲ以テ報酬ノ割合ヲ定メザルトキハ各般ノ事情ヲ参酌シ以テ其労働ノ価値ヲ相当ニ定ムルモノトス
　F雇者及被雇者ノ間ニ起レル争論ハ其何タルヲ問ハス裁判所ノ判定ニ委スベキヤ
　G労働ノ産物ニ対シ消費者ノ支払フ最後ノ価値中ニハ如何ナル原素ヲ包含スルヤ、且ツ生産者ガ領収スル最初ノ価格ト消費者ガ支払フ結局ノ価格トノ差額ハ如何ナル方法ニヨリ二者ノ中間ニ立ツ所ノ者ニ分配サルベキヤ
　H自己ヲ支持スルノ資力ナキ者ノ利益及権利ヲ保護進捗スルコトハ如何ナル限度迄社会ノ利益及義務ト看做スヲ得ベキヤ
　I雇主間及被雇者間ノ同盟団結ハ如何ナル限度迄之ヲ許ス可キヤ、又如何ナル限度迄法律ヲ以テ之ヲ禁ズ可キヤ
　J如何ナル専売ヲ以テ人民ニ有害苛悪ナルモノトスルヤ、モシ有害ナリトセバ法律ヲ以テ之ヲ禁ス可キヤ否ヤ
　K公ノ収入トシテ実際労働者ノ所得及雇主ノ利益中ヨリ何程ヲ取立テ得ベキヤ
　L労働時間ト雇者・被雇者及人民ニ対スル幸福トノ関係
　M雇者・被雇者及人民ニ対スル日曜日ノ労働ノ効果
　N小児ノ労働ヲ禁制スル事、並ニ婦人及少年ノ労役ニ関スル適当ノ制規
　O変災ノ場合ニ際シ雇者ガ被雇者ニ負フベキ適当ナル法律上ノ責任
　P被雇者ノ疾病及死亡ノ為メ保険資金ノ積立ヲ強制ス可キヤ否ヤ
　Q政府ハ労働及賃金ニ関シ如何ナル統計ヲ集ム可キモノナルヤ
　R如何ナル利益分配方案ヲ以テ雇者及被雇者ニ勧ム可キ価値アルモノトスルヤ
　S被雇者ノ為メニ如何ナル特別ノ教育ヲ与フ可キヤ
　T資本及労働ノ関係中ニ現存スル弊害ヲ矯済スルガ為メ如何ナル限度迄輿論ノ勢力ヲ利用シ得ベキヤ