デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第20巻 p.513-528(DK200054k) ページ画像

明治27年9月29日(1894年)

是日当会議所、農商務省農務局ノ依頼ニヨリ糖業ニ関スル調査ヲ同局ニ提出ス。栄一会頭トシテ之ニ与ル。


■資料

東京商業会議所月報 第二二号・第二頁 明治二七年六月 【同月 ○五月七日糖業調…】(DK200054k-0001)
第20巻 p.513 ページ画像

東京商業会議所月報  第二二号・第二頁 明治二七年六月。
○同月 ○五月七日糖業調査ノ儀ニ付、農商務省農務局ヨリ照会書ヲ接受ス(照会書ノ全文ハ参照ノ部第一号ニ掲載ス)


東京商業会議所月報 第二二号・第三頁 明治二七年六月 【○参照第一号 五月七日、糖業調査…】(DK200054k-0002)
第20巻 p.513-514 ページ画像

東京商業会議所月報  第二二号・第三頁 明治二七年六月
○参照第一号
 五月七日、糖業調査ノ儀ニ付、農商務省農務局ヨリ接受シタル照会書ハ左ノ如シ
今般糖業ニ関シ調査ヲ要スヘキ廉有之候ニ付、別紙事項及諮問候条何分ノ御答申有之度、此段及御照会候也
  明治二十七年五月五日          農商務省農務局
    東京商業会議所 御中
      諮問事項
一 白糖・赤糖・白下糖・黒糖ノ最近十ケ年間ノ毎年平均及最高・最低相場並ニ著ルク騰貴若クハ下落セルトキノ説明(各糖トモ各種類別ヲ要ス)
二 価格・品質其他実用上ニ就キ内国産白糖及赤糖ト外国産同品トノ得失
三 内国産白糖及赤糖ト外国産同品トハ地方ニヨリ需用ノ多少ナキヤ若シ之アラハ其概要
四 内糖ト外糖及黒糖ト白・赤糖トハ取扱問屋ヲ異ニスルヤ、若シ然リトセハ其沿革及理由
五 近来黒糖ハ従前ニ比シ販路ノ渋滞若クハ変転ナキヤ、若シ之アラハ其概要
六 東京ヨリ黒糖ノ仕向先及各仕向先ヘノ輸出高概数
七 黒糖ノ重要消費地方ニ向ケ白糖及赤糖ノ輸出高概数並ニ白・赤・黒ノ三糖ニ対スル従来需用ノ変遷及将来ノ見込
八 最近五ケ年間「東京及横浜」ニ於テ輸入赤糖ヲ焼直シテ製造セル黒糖ノ概数及毎年増減ノ理由
九 焼直シ黒糖ノ原料ハ如何ナル種類ノ砂糖ヲ用フルヤ、其焼直シ方法ハ如何、又之ヲ行フハ内国人、外国人孰レカ主ナルヤ
十 普通黒糖ト焼直シ黒糖ト品質ノ優劣及価格ノ比較、並ニ両者ニ対スル嗜好ノ差違如何
十一 白下糖ノ其地ニ於ケル各用ノ消費高概数、若シ他地方ニ転輸セハ其仕向先及概数
 - 第20巻 p.514 -ページ画像 
十二 白下糖ハ暑気・梅雨等ノ時節ニ於テ減量・変質等ノ損失アリト云フ、詳細ノ事実如何
十三 黒糖ニ関スル将来ノ見込及之レカ改良ノ要点(他ノ種類ニ改良スルヲ必要トセハ、如何ナル種類ニ改良スヘキヤ又他ノ種類ニ改良スルヲ要セストセハ、黒糖トシテ施スヘキ改良ノ要点ヲ記スヘシ)
十四 右ノ外本邦糖業ノ発達ヲ図ルノ方法ニ関スル意見


東京商業会議所月報 第二二号・第二頁 明治二七年六月 【○五月十五日午前十時…】(DK200054k-0003)
第20巻 p.514 ページ画像

東京商業会議所月報  第二二号・第二頁 明治二七年六月
○五月十五日午前十時、本会議所仮事務所ニ於テ役員会議ヲ開キ ○中略 農商務省農務局ノ照会ニ係ル糖業調査ノ件其他数件ヲ審議シ、午後零時三十分閉会ス


東京商業会議所月報 第二三号・第六頁 明治二七年七月 【○六月五日午後六時、本会議所事…】(DK200054k-0004)
第20巻 p.514 ページ画像

東京商業会議所月報  第二三号・第六頁 明治二七年七月
○六月五日午後六時、本会議所事務所ニ於テ臨時会議ヲ開ク、当日出席会員三十三人ニシテ、左ノ件々ヲ審議シ、午後十時四十分閉会ス
○中略
 (第二)
  糖業調査ノ儀ニ付農商務省農務局ヨリ照会ノ件(役員会議提出)
本件ハ満場一致ヲ以テ議長 ○渋沢栄一ノ指名ニヨリ委員七名ヲ選挙シ其調査ヲ附託スルコトニ決シ、乃チ議長ハ左ノ諸君ヲ指名ス
                   藤田武次郎君
                   大住喜右衛門君
                   方波見平兵衛君
                   鳥海清左衛門君
                   加東徳三君


東京商業会議所月報 第二三号・第七―八頁 明治二七年七月 【○同月 ○六月五日午…】(DK200054k-0005)
第20巻 p.514 ページ画像

東京商業会議所月報  第二三号・第七―八頁 明治二七年七月
○同月 ○六月五日午後十時四十二分、本会議所事務所ニ於テ委員会議ヲ開キ、糖業調査委員長ノ選挙ヲ施行シ、午後十時五十分閉会ス、其選挙ノ結果左ノ如シ
                 委員長 鳥海清左衛門君
○中略
○同月 ○六月二十二日午後六時三十分、本会議所事務所ニ於テ委員会議ヲ開キ、糖業調査ノ件ヲ審議シ、午後八時閉会ス


東京商業会議所月報 第二六号・第一―二頁 明治二七年一〇月 【○九月十八日午後六時三十分、本…】(DK200054k-0006)
第20巻 p.514 ページ画像

東京商業会議所月報  第二六号・第一―二頁 明治二七年一〇月
○九月十八日午後六時三十分、本会議所事務所ニ於テ、臨時会議ヲ開ク、当日出席会員ハ三十人ニシテ、左ノ件々ヲ審議シ、午後八時十分閉会ス
○中略
 一、糖業ノ儀ニ付調査報告ノ件(委員提出)
本件ハ多数ヲ以テ原案ニ可決ス


東京商業会議所月報 第二六号・第三頁 明治二七年一〇月 【○同月 ○九月二十九日、糖業調…】(DK200054k-0007)
第20巻 p.514-515 ページ画像

東京商業会議所月報  第二六号・第三頁 明治二七年一〇月
 - 第20巻 p.515 -ページ画像 
○同月 ○九月二十九日、糖業調査ノ儀ニ付、農商務省農務局ヘ答申書ヲ差出ス(答申書ノ全文ハ参照ノ部第三号ニ掲載ス)


東京商業会議所月報 第二六号・第二八―四一頁 明治二七年一〇月 【○参照第三号 九月二十九日糖業調…】(DK200054k-0008)
第20巻 p.515-527 ページ画像

東京商業会議所月報  第二六号・第二八―四一頁 明治二七年一〇月
○参照第三号
 九月二十九日糖業調査ノ儀ニ付、農商務省農務局ヘ差出シタル答申書ハ左ノ如シ
先般御問合有之候糖業ニ関スル件ハ、其後篤ト遂調査候処、別紙ノ通リニ付此段答申仕候也
  明治二十七年九月二十九日
                      東京商業会議所
    農商務省農務局 御中
(別紙)
    糖業ニ関スル調査
 第一項 白糖・赤糖・白下糖・黒糖ノ最近十ケ年間ノ毎年平均及最高・最低相場、並ニ著シク騰貴若クハ下落セルトキノ説明
今本項問題ヲ調査スルニ方リ、内外糖ノ種別及盛衰ノ概況ヲ記シテ以下説明ノ基礎トナサントス
(イ)内国白糖 内国白糖トハ即チ三盆白ノ謂ニシテ、上・中・下ノ数等アリ、明治十年ノ頃迄ハ阿波・讃岐ノ地方ヨリ盛ニ産出シ、従テ其販路モ亦尠カラサリシカ、近事外国糖ノ頻々輸入スルニ至リ、為メニ大ニ圧倒セラレ、讃岐地方ノ如キハ其産出殆ト絶無ニシテ、唯僅カニ阿波産出ヲ以テ関西地方ノ需要ニ応スルノミ、現ニ我東京ノ如キハ纔ニ暑寒ノ進物用ニ供スルニ過キス、此ノ如クナルヲ以テ本品ノ産出・需用共ニ孤城落日ノ衰況ニ在リト云フモ過言ニアラス
(ロ)外国白糖 外国白糖トハ即チ再製車糖ノ謂ニシテ、AB・B・WC五温・四温・三温等ノ如キ数等アリ、本品ハ香港ニ於テ再製シタルモノニテ其販路ハ年ヲ逐フテ開ケ、殊ニ本邦ニ輸入スルモノ実ニ莫大ノ数量ニシテ、尚進ンテ底止スル所ヲ知ラサルカ如シ、以テ内外糖盛衰ノ一斑ヲ窺フニ足ラン
(ハ)内国赤糖 内国赤糖トハ赤黄色ヲ帯フル和白砂糖ノ謂ニシテ、白飛・初雪・天光・上光糖ノ数種アリ、主ニ四国ノ産出ニ係リ往時ハ盛ニ産出シタルモ、外糖ノ需用漸ク旺ナルニ至リ其産出需用共ニ大ニ減縮スルニ至レリ、然レトモ近来日向・小笠原島其他ノ地方ヨリ産出スルモノ多ク、稍之ヲ補フニ至レリ
(ニ)外国赤糖 外国赤糖トハ呂宋玉糖・磨糖・台湾玉糖・貢粉糖・菊花糖・合糖ノ類ヲ指示シタル者ナル可シト雖トモ、其性質内国赤糖ニ比シテ少シク異ナル所アリ、今其稍相類似スル者ヲ摘記スレバH・XP車糖・菊花糖及貢粉糖ニシテ、H・XP車糖ノ如キハ和白砂糖ニ代用シ菊花糖及貢粉糖ノ如キハ和白砂糖ニ配合シテ、其需用亦頻繁ナリ
(ホ)内国黒糖 内国黒糖トハ琉球黒糖・大島黒糖・薩摩黒糖ノ謂ニシテ、本邦糖中其産出最モ多ク従テ其需用モ亦頻繁ナリ
 - 第20巻 p.516 -ページ画像 
(ヘ)外国黒糖 外国黒糖トハ椀糖、檳榔玉糖、青蘭板糖・並板糖・洋糖・塔糖ノ類ニシテ、是亦盛ニ輸入シ来レリ
(ト)白下糖 白下地ハ和白糖・赤糖ノ原料ニシテ、専ラ本邦ニ於テ製産スルモノナリ
    一最近十ケ年間ノ毎年平均相場  (一貫目ニ付)

図表を画像で表示一最近十ケ年間ノ毎年平均相場  (一貫目ニ付)

 産地  種類  品名                 年次                             十七年   十八年   十九年   二十年   二十一年  二十二年  二十三年  二十四年  二十五年  二十六年  十ケ年間平均                              銭厘    銭厘    銭厘    銭厘    銭厘    銭厘    銭厘    銭厘    銭厘    銭厘    銭厘 内国産 白糖  和三盆                 七〇八   七四六   六九三   六三九   五八六   六七一   七三一   五九〇   六七四   七二八   六七六     赤糖  初雪                  四五九   四六四   四二六   四一六   四〇五   四二二   四四九   三八〇   四四三   五〇五   四三七     天光                      四二五   四二六   三九三   三八八   三七五   四一一   四二九   三六〇   四二一   四九二   四一二     黒糖  琉球黒糖                三〇三   二二二   二五六   二七二   二五四   二六四   二六五   二三七   二六五   三三七   二六八     白下糖 白下地                 二七八   二七〇   二七一   二八一   二七三   二七六   二九九   二五〇   二七〇   三四七   二八二 外国産 白糖 [img図]〓車糖       四六〇   四一八   四四三   三七八   四二三   五〇一   四六七   四一三   四四七   五二一   四四七     赤糖  貢粉糖、磨糖、呂宋玉、台湾玉      三九一   四〇六   四一八   三九五   三九五   四三四   四二〇   三七八   三九二   四五二   四〇七         菊花糖、合糖、PX車糖          三〇八   三三四   三三一   三一七   三一七   三六三   三五一   三一五   三四三   三九八   三三五     黒糖  檳榔玉糖、青蘭板糖,並板糖、椀糖、塔糖 二二八   二五六   二七四   二三九   二三九   二六〇   二六五   二五一   二六八   三〇五   二五九         焚黒                  二六三   二七八   二六九   二五二   二四七   二六四   二六六   二四二   二六五   三一二   二六六 備考 本表中各種類ノ平均相場ヲ示スニ方リ、一種類中其細目ニ就テ相場ニ高低ノ差アルモノ尠カラス、今之ヲ概括スルトキハ事実ニ遠サカルノ嫌ヲ免カレス、故ニ其大差アルモノハ孜メテ之ヲ細別シ各別ニ掲記シタリ 



    一最近十ケ年間最高最低相場   (一貫目ニ付)


図表を画像で表示一最近十ケ年間最高最低相場   (一貫目ニ付)

 産地  種類 品名               年次                           高低 十七年   十八年   十九年   二十年   二十一年  二十二年  二十三年  二十四年  二十五年  二十六年  十ケ年間平均                               銭厘    銭厘    銭厘    銭厘    銭厘    銭厘    銭厘    銭厘    銭厘    銭厘    銭厘 内国産 白糖 和三盆                 高 七八一   八二三   八二五   七〇六   六一七   八〇〇   七九二   六二五   七〇〇   七六一   七四三                            低 六七五   六五一   六一九   六三三   五五〇   五四四   六二五   五七〇   六四二   六八三   七三八  以下p.517 ページ画像      赤糖 初雪                  高 四八九   五七五   四五六   四二七   四四三   四九四   四九九   三九九   五〇二   五三〇   五二一                            低 三八六   四〇八   四〇六   三九二   三八〇   三七五   四七四   三八一   三七一   四九三   三七三        天光                  高 四五〇   四八五   四二六   四〇八   四一四   四七九   三九七   三七八   四七六   五〇二   四四一                            低 三八六   三七一   三七七   三七六   三五二   三五四   三四八   三三八   三四八   四八三   三七三     黒糖 琉球黒糖                高 三三九   三三八   二五七   三一三   二八三   二九六   二七四   二六八   三三一   三六五   三〇六                            低 二九〇   二八九   二二六   二三〇   二三四   二三五   二四二   二二一   二二二   三〇六   二五〇     白下糖 白下地                高 三〇三   三一三   二九四   三〇八   二八七   三一三   三三二   二七〇   三二五   三六六   三一一                            低 二五〇   二二八   二四六   二五〇   二五八   二五三   二七五   二三五   二三一   三〇四   二五三 外国産 白糖 [img図]〓車糖      高 五〇八   四六〇   四五五   三九一   四三五   五六五   四九三   四三六   四七一   五五二   四八七                            低 四三八   三八八   三九九   三七二   四〇三   四二四   四一四   三九八   四一四   四七六   四〇三     赤糖 貢粉糖、磨糖、呂宋玉、台湾玉      高 四七五   四四七   四一七   三八八   四一一   四九八   四五八   四一七   四二一   四七五   四四一                            低 四二一   三七四   三九二   三五四   三六三   三八三   三八八   三六三   三二九   四一五   三七八        菊花糖、合糖、PX車糖          高 三八六   四〇一   三六一   三一七   三三〇   四一七   三八九   三二五   三七八   四四五   三七四                            低 三二五   三〇八   三〇九   三〇〇   三〇〇   三一五   三一二   三〇〇   三〇四   三六五   三一四     黒糖 檳榔玉糖、青蘭板糖,並板糖、椀糖、塔糖 高 三一六   三二五   二九五   二六七   二五八   二九九   二八五   二六七   三二二   三二七   二九六                            低 一九九   二二三   二四一   二一二   二二三   二三五   二四二   二三三   二二〇   二七二   二二九        焚黒                  高 三三六   三二八   二六五   二七六   二六〇   三〇二   二八五   二六〇   三一六   三三一   二八六                            低 二二四   二四二   二四六   二一二   二三八   二四四   二四〇   二三六   二三一   二八八   二四〇 



    一相場ノ騰貴又ハ下落セルトキノ説明
各種相場ニ於テ毎年高低ノ変動アリシコトハ前表ニ掲記シタルカ如シ而シテ今各別ニ之カ理由ヲ説明スルハ頗ル困難ナリト雖トモ、之ヲ要スルニ、産地ノ豊凶ト需要ノ多少トニ依リテ香港市場ノ相場ヲ攪乱スルニ基クヤ蓋シ疑ナキナリ、故ニ表中二十四年ノ如キ著シキ下落ヲ現ハシタルモノハ、前年ニ於テ甘蔗ノ豊作ナリシヲ以テ産出額非常ニ多ク、其結果翌年ノ相場ヲ低下セシメタル所以ニ外ナラス、又二十六年ニ於テ著シキ、騰貴ヲ現ハシタルモノハ、前年ニ於テ多数ノ植付ヲナシタルモ、製造上ノ結果甚タ不良ニシテ予算ニ適合セサリシコト其主因トナリ、加フルニ金銀比価ノ変動ニ依リテ之レカ影響ヲ受ケ、終ニ既往十ケ年間未タ曾テ有ラサルノ騰貴ヲ現出セリ、元来砂糖ノ如キハ直接ニ銀貨変動ノ影響ヲ受ケサルカ如シト雖トモ、多クハ布哇及「フヒリツピン」諸島ノ如キ産出地ヨリ輸入スルモノナレハ、間接ニ之カ影響ヲ受クルハ亦疑ナキ事実ナリ、依テ亦試ニ二十七年半季間ノ相場(一貫目ニ付)ヲ掲ケ、聊カ参考ニ資セントス

         品名    一月   二月   三月   四月   五月   六月
               銭厘   銭厘   銭厘   銭厘   銭厘   銭厘
        五温    五八〇  五八〇  五九四  六一五  六一〇  六二五
 車糖   五五〇  五五〇  五七〇  五八九  五八六  六〇二
 - 第20巻 p.518 -ページ画像 
        天光    四六二  四五八  四六九  四八九  四七九  四八六
        白下地   三一五  三二六  三三二  三五七  三四七  三五四
        台湾玉糖  三〇五  三〇〇  三〇四  三一〇  三〇五  三三〇
        呂宋玉糖  三四五  三四〇  三〇三  三五九  三四六  三二九
        琉球黒糖  三一五  三〇八  三一八  三一五  三二一  三一七
        焚黒    三一九  三一三  三一〇  三一五  三一三  三一四

 第二項 価格品質其他実用上ニ就キ、内国産白糖及赤糖ト外国産同品トノ得失
一価格 内国糖ハ外国産ニ比シテ其価格一般ニ不廉ナルヲ以テ、現今需用ハ殆ト外国糖ニ圧倒セラルヽモノヽ如シ、之ヲ要スルニ、内国製産業者ハ昔時外国糖ノ未タ輸入セサル時ニ方リ内国産ノミ独リ需要ニ供セラレタル時代ノ慣習ヲ墨守シ、更ニ改良ヲ加ヘテ外国糖ト競争ヲ試ムルガ如キ製造業者ニ乏シク、概ネ資本ノ欠乏ト共ニ精好ノ器械ヲ有スル者ナク、其労力・賃銀ハ以テ器械力ニ打チ勝ツコト能ハサルカ故ニ、其価格ノ不廉ナルハ勢ノ免カレサル所ナリ、而シテ内国産ノ白糖即チ三盆白ト称スルモノハ、外国糖ノ最高優等品ナル車糖ニ比シテ現今ノ価格一貫目ニ付二十銭内外ノ差違ナルニモ拘ハラス内国製産者ハ之ニ対抗シテ販路ヲ拡張スルノ勇気ナク、其他ノ白糖・赤糖ニ於ケルモ亦タ此ノ如キ状態ナルヲ以テ、其需要益外国糖ニ蚕食セラルヽノ傾アリ
一品質 内国糖ハ外国糖ニ比シテ其品質ノ良好ナル事ハ已ニ世人ノ是認スル所ナレトモ、夫ノ三盆白ノ如キ、元来産地ニ於テ製造者カ自カラ手製スルモノニテ、其製造法ノ粗莾ナルカ為メ良好ノ原料ヲシテ却テ粗悪ナラシメ、且之ニ要スル費用ト労力トハ亦実ニ尠少ナラス、之ニ反シテ外国産車糖ノ如キハ近時ノ発明ニ係ル精好ノ機械ヲ以テ精製シタルモノナレハ費用・労力共ニ減少シ、且汚濁塵芥等ノ含有物ナク清浄純白ナルカ故ニ一般世人ノ嗜好ニ適シ、却テ内国産ニ優ルノ観ヲ呈セリ
一実用 元来砂糖ノ需要者ニ在リテハ専ラ品質ノ良好ナルヲ貴フモノト、品質ノ如何ニ拘ハラス価格ノ低廉ナルヲ要スル者トアリテ、之カ供給ノ道モ亦随テ岐ルヽ所ナリト雖トモ、之ヲ要スルニ価格低廉ニシテ品質良好ナルヲ望ムハ自然ノ勢ナリ、而シテ目下ノ状況ニ依レハ外国糖ハ概シテ価格低廉ニシテ品質優等ナルヲ以テ益内国人ノ嗜好ニ適スルモノヽ如ク、殊ニ車糖ノ如キハ清浄純白ニシテ他ノ含有物ナク、内国糖ニ比シテ遥ニ優等ナルヲ以テ菓子製造其他洋酒・薬品等ノ混合物ニ使用シ、実用上頗ル利益アルヲ以テ、全国到ル処一タヒ外国糖ヲ使用シタルモノハ忽チ内国糖ヲ擯斥スルノ傾向アリ、亦タ以テ実用上ニ於ケル内外糖ノ得失如何ヲ推知スルニ足ランカ
 第三項 内国産白糖及赤糖ト外国産同品トハ地方ニヨリ需用ノ多少ナキヤ、若シ之アラハ其概要
内外糖需用ノ多少ハ地方ニ依リテ著シキ差異アルコトナク、一般ニ外国糖ノ壟断ト云フモ亦不可ナキカ如シ、就中内国白糖(即チ和三盆)ハ殆ト地方ニ其形跡ヲ見サルノミナラズ、関東地方ニ於テハ外国産車糖ヲ以テ和三盆ト誤認スルノ傾アリ、又赤糖(即チ和白)ニ至リテハ、多量ノ糖分(寧ロ蜜分ト云ハンカ)ヲ含有スルヲ以テ今尚地方ニ相当ノ販路アリト雖トモ、
 - 第20巻 p.519 -ページ画像 
之ヲ外国糖ニ比スレハ僅々十分ノ二、三ニ止マリ、年々退歩ノ形勢ヲ呈セリ、之ニ反シテ外国糖ハ日一日其需要ヲ増加シ、殆ト底止スル所ヲ知ラサルカ如シ
 第四項 内糖ト外糖及黒糖ト白赤糖トハ取扱問屋ヲ異ニスルヤ若シ然リトセハ其沿革及理由
取扱問屋ハ内外各種ノ砂糖ニ依リテ異ナルコトナク、従来同一ノ問屋ニ於テ之ヲ取扱ヘリ、東京・横浜皆然リトス
 第五項 近来黒糖ハ従前ニ比シ販路ノ渋滞若クハ変転ナキヤ、若シ之アラハ其概要
黒糖ハ明治二、三年ノ交ニ至ル迄ハ我大島・琉球諸島ノ産出品ヲ以テ内国各地ノ需用ニ応シ来リシカ、京阪間ニ於ケル銀貨紙幣ノ相場著シク変動ヲ生シタル際、其価格非常ニ暴騰ヲ現ハシタリ、此時ニ方テ外国品及台湾玉糖ノ輸入スルヤ忽ニシテ内国黒糖ニ代リテ其販路ヲ奪フニ至リタリ、且近年再製黒糖ノ製産益増加シ、各需用地ニ於テ再製黒糖ヲ以テ内国黒糖ニ代用スルモノ多ク、為ニ台湾玉糖・呂宋玉糖ノ如キ再製糖ノ原料トシテ漸ク其需要ヲ増加シ、内国黒糖ハ延テ其需用ヲ減少スルニ至レリ、今其変転ノ理由ヲ討尋スルニ、外国黒糖ノ輸入シタル当時ニ在リテハ内国糖ノ価格殆ト倍額ナリシヲ以テ、需要者ハ争テ外国糖ヲ使用シタルコト其主ナル原因ニシテ、且外国再製黒糖ハ各品均一ノ物品ヲ製出スルヲ得ルノミナラス、各地方ノ嗜好ニ応シ其着色自由ナルカ故ニ、随テ一般ノ需用ヲ増加スルニ至リタルモノヽ如シ其後内国黒糖ノ価格低下シテ外国糖ト同等若クハ其以下ニ至リタルモ需用者ハ尚内国糖ヲ排斥シ、爾来二十年余間再製黒糖ハ益其販路ヲ壟断スルノ状態ヲ呈スルニ至リタリ
 第六項 東京ヨリ黒糖ノ仕向先、及各仕向先ヘノ輸出高概数
東京ヨリ黒糖ヲ輸出スル地方ハ概ネ武州北部ノ諸郡、上州・野州・信州・磐城・岩城及三陸等ノ各地ナルヲ以テ、其仕向地ハ東京以東ニ在リト云フヘシ、今其仕向地ノ黒糖輸出高概数ヲ挙クレハ左表ノ如シ

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 産地  品名    年次           二十二年     二十三年      二十四年      二十五年      二十六年                個         個         個         個         個 内国産 琉球黒    二、八二七     一、九七六    一四、一〇二    二四、一〇七       五二〇 外国産 玉板類  二一九、一六九   二一九、一六九   二六二、〇四〇   二七四、一八八   二八四、二五二     焚黒   一三一、二七七   一四二、六一一   一四五、八四〇   一五〇、〇二九   一四一、六五四 合計       三五三、二七三   三六三、七五六   四一一、九八二   四四八、三二四   四二六、四二六 



  備考 玆ニ其輸出高ヲ示スニ方リ、之ヲ内外各種ニ区別シテ二者ノ消長ヲ対比スルハ参照上頗ル必要ト信スルヲ以テ、表中之ヲ区別シタリ
 第七項 黒糖ノ重要消費地方ニ向ケ白糖及赤糖ノ輸出高概数、並ニ白・赤・黒ノ三糖ニ対スル従来需用ノ変遷及将来ノ見込
黒糖ノ重要消費地方ニ向ケ白糖及赤糖ノ輸出高ハ左表ノ如シ

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 産地  品名   年次          二十四年      二十五年      二十六年                個        個          個 内国糖 白赤糖  一〇九、一〇二    七四、一四九    六〇、〇二三 外国糖 白赤糖  三〇六、一七三   三五四、四六六   三七八、三五七 合計       四一五、二七五   四二八、六一五   四三八、三八〇 



又三糖ニ対スル従来需用ノ変遷ヲ調査スルニ、従来ハ黒糖ノ需用最モ頻繁ナリシカ、社会ノ状態一変シテ人民生活ノ度漸ク進歩シ衣服・飲
 - 第20巻 p.520 -ページ画像 
食等ヨリ日用器具ニ至ル迄悉ク奢侈ニ趨クト共ニ、黒糖ノ需用ハ減シテ赤糖ノ需用大ニ増加シ、赤糖ノ需用増加スルト同時ニ白糖ノ需用亦漸ク盛ナルノ趨向アリ、故ニ将来三種中ニ於テ最モ需用ヲ増加スヘキハ白糖ニシテ、他ノ二糖ハ比較上漸次之ヲ減少スルニ至ルヤ必セリ
 第八項 最近五ケ年間東京及横浜ニ於テ輸入赤糖ヲ焼直シテ製造セル黒糖ノ概数及毎年増減ノ理由
最近五ケ年間東京及ヒ横浜ニ於テ再製シタル黒糖ノ概数ハ左表ノ如シ

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 製造地 年次     二十二年      二十三年      二十四年      二十五年      二十六年           個         個         個         個         個 東京  一三一、二七七   一四二、六一一   一四五、八四〇   一五〇、〇二九   一四一、六五四 横浜   二六、五八八    二四、七四七    二六、九三一    二四、五二一    四五、八八八 合計  一五七、八六五   一六七、三五八   一七二、七七一   一七四、五五〇   一八七、五四二 



今本表ニ就キテ其増減ヲ比較スルニ、毎年殆ト正比例ノ率ヲ以テ進歩シ年々幾分ノ増加ヲ見ルカ如シ、是内国焚黒糖ノ需用歳ヲ逐テ増加スルノ傾アレハナリ
 第九項 焼直シ黒糖ノ原料ハ如何ナル種類ノ砂糖ヲ用フルヤ、其焼直方法ハ如何、又之ヲ行フハ内国人・外国人孰レカ主ナルヤ
焼直シ黒糖ノ原料ハ主ニ台湾玉糖・呂宋玉糖・椀糖・塔糖・青蘭板糖檳榔玉糖ノ如キ外国糖ヲ使用シ、其再製方法ハ各種原料中塵芥・土砂其他汚物ヲ除去シ、適量ノ水ヲ混和シテ之ヲ煮詰メ、随意ノ着色ヲ施シテ樽詰ト為シタルモノナリ
而シテ東京及ヒ横浜ニ於ケル製造者ハ単ニ内国人ニ限リ、外国人ニシテ此等ノ製造ニ従事スルモノハ曾テ見サル処ナリ
 第十項 普通黒糖ト焼直シ黒糖ト品質ノ優劣及価格ノ比較、並ニ両者ニ対スル嗜好ノ差違如何
普通黒糖ト焼直シ黒糖ト品質上ノ優劣ハ一概ニ品評ヲ下シ難キモノアリ、何トナレハ其品質各不同ニシテ同一種類中更ニ数等ノ差アレハナリ、然レトモ沖縄地方ニ於テ製出シタル黒糖ニ比較スレハ、如何ニ精製シタル焼直シ糖ト雖トモ之ニ及ハサルコト遠シ、又其価格ヲ比較スレハ、焼直シ黒糖ノ最上品ト普通黒糖トハ殆ト同等ニシテ、二者嗜好ノ点ニ至リテハ焼直シ黒糖ハ普通黒糖ニ比シテ一歩ヲ譲ルモノヽ如シ然レトモ焼直シ黒糖ハ価格低廉ニシテ且普通ノ用ニ供セラルヽヲ以テ其需用ハ却テ普通黒糖ヨリ多額ヲ占ム
今玆ニ内外黒糖ノ品質階級ヲ対照スレハ左表ノ如シ

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 等級  内国黒糖ノ品質及銘柄@                    等級   焚黒ノ品質 特等  琉球官糖(二歩・一歩半)                       特等ニ対スル原料ヲ得ル能ハス 一等  東西・琉球(二歩・一歩半)喜界・名瀬・笠利・永良部      一等  台湾玉糖・椀糖ノ上等品ヲ以テ再製ス     輿論・焼内(二歩) 二等  東西・琉球(一歩)喜界・名瀬・笠利・輿論・焼内・       二等  台湾・椀糖並物及塔糖ノ類ヲ以テ再製ス     永良部(一歩半) 三等  東西・琉球(半歩)徳島・古見住用(一歩半)喜界・       三等  塔糖・青蘭玉糖ノ並物ヲ以テ再製ス     名瀬・笠利・輿論・焼内・永良部(一歩) 四等  東西・琉球(計リ)徳島・古見・住用(一歩)新嶋(一歩半)   四等  青蘭糖・檳榔玉糖・板糖類ヲ以テ再製ス     喜界・名瀬・笠利・輿論・焼内・永良部(半歩)  以下p.521 ページ画像  五等  喜界・名瀬・笠利・輿論・焼内永良部(計リ)徳島・古見・    五等  無シ     住用(半歩計リ)新嶋(一歩) 摘要 二十四年  前年ノ産出最モ多額ニシテ市場ニ渋滞ヲ来シ、相場低落焼直シノ価ヨリ一割五至二割ノ安直ヲ現ハス    二十五年  前年ニ続テ相場低落、殊ニ大坂ニ於テ東国ノ嗜好ヲ察シ本邦産ヘ洋糖ヲ加ヘ焼直トシテ続々輸入アリ、且大島琉球ノ商人直輸ノ企アリ、今尚僅ニ輸入ヲ継続セリ    二十六年  二十五年後半期ニ至リ本邦産品払底ヲ来シ、相場非常ニ騰貴シ、一時三銭ヨリ銭五厘タリシ価格モ、漸次五銭五厘ノ高直ヲ見ルニ至リ、本年輸入頓ニ絶無トナレリ 



 第十一項 白下糖ノ其地ニ於ケル各用ノ消費高概数、若シ他地方ニ転輸セルハ其仕向先及概数
白下糖ハ近来需用甚タ減少シ、四国・九州ヨリ当地ニ輸入スルモノハ殆ト絶無ノ姿トナリ、多クハ産出地ニ於テ之ヲ搾取シ再製スル者ノ如シ、独リ小笠原島産出品ハ年ヲ逐テ増加シ、其製造法漸ク進歩シタルノ結果、密分ヲ含ムコト僅少ニシテ再製ニ適スルヲ以テ、市場ノ需用頗ル頻繁トナリ当地ニ輸入スルモノ亦尠カラス、然レトモ目下一ケ年ノ輸入高ハ僅々一万四、五千樽ニ過キスシテ、其需用ハ東京ノ一小部分ニ止マリ其数ヲ挙グルニ足ラス、其余ハ悉ク之ヲ搾取シテ天光・初雪ノ如キ和砂糖ニ再製シ各地方ニ転輸スルコト多々ナリ
 第十二項 白下糖ハ暑気・梅雨等ノ時節ニ於テ減量・変質等ノ損失アリト云フ、詳細ノ事実如何
白下糖ハ暑気又ハ梅雨等ノ期節ニ於テ減量・変質等ノ損失アルヲ免カレス、殊ニ本品ハ他ノ糖類ニ比シテ最モ変質甚シク、暖気ニ従ヒ一樽中二割以上ハ蜜ニ化シ、随テ其減量モ亦著シキモノトス、今一、二ノ例ヲ挙ケテ其減量ノ多寡ヲ比較スレハ左ノ如シ
   一内国赤糖(和白砂糖) 減量 七分乃至一割
   一台湾玉糖       同  同上
   一青蘭・檳榔玉糖類   同  同上
   一並板糖類       同  一割乃至一割五分
 第十三項 黒糖ニ関スル将来ノ見込及ビ之レカ改良ノ要点(他ノ種類ニ改良スルヲ必要トセハ如何ナル種類ニ改良スベキヤ、又他ノ種類ニ改良スルヲ要セストセハ黒糖トシテ施スベキ改良ノ要点ヲ記スベシ)
凡ソ物品ノ需要ハ世運ノ隆替ニ伴フテ変遷スベキモノナレハ、人民生活ノ度異ルニ従ヒ其嗜好モ亦一変スルハ勢ノ已ムヲ得サル処ナリ、故ニ従来砂糖ノ需用中其大部分ヲ占メタル黒糖ノ如キモ今日ニ至リテハ大ニ其需用ヲ逓減シ、之ニ反シテ白糖ノ需用日ニ月ニ増進シテ其輸入額実ニ莫大ナルニ至レリ、是ヲ以テ将来黒糖ノ販路ハ益退縮シ、白糖ノ需用大ニ増加スルニ至ルハ亦疑フ可ラサルナリ、而シテ目下此黒糖ニ向テ競争ノ位地ニ立チ、且既ニ一着ヲ贏スル焼直シ黒糖ノ販路ハ益拡充シツヽアルカ故ニ、内国黒糖ノ価格一層低落シテ同等以下ニ至ルモ到底世人ノ嗜好ニ適シ容易ニ需用ヲ回復スルノ見込アラサルカ如シ是畢竟スルニ従来大島各郡ニ於テ産出シタル黒糖ノ如キ、製造粗莽ナルカ為メニ其品質硬軟精粗区々ニシテ均一ナラス、需用者ヲシテ大ニ厭忌セシメシニ因ラスンハアラス、而シテ近来沖縄地方ニ於テ製造ス
 - 第20巻 p.522 -ページ画像 
ル琉球糖ノ如キハ改良ノ結果稍見ルヘキモノアリ、内国黒糖ノ最優等品トシテ需用モ亦大ニ発暢シタルカ如シト雖トモ、運賃非常ニ高ク我東京地方ノ如キ遠隔ナル地ニ輸送スルトキハ其価格頗ル不廉トナルヲ以テ、到底再製黒糖ヲ圧倒スルノ勢力ナキノミナラス、今日ノ製産高ハ以テ東京地方ノ需用ニ足ラサルヲ如何セン、然レトモ若シ琉球糖ニシテ漸次改良ヲ加ヘ、其価格ヲ低減シ、且原料ノ耕作ヲ奨励シテ多額ノ製産アルニ至ラハ前途大ニ望アルカ如シ、今内国黒糖ニ向テ如何ナル改良ヲ施セハ以テ従来ノ需用ヲ回復シ、外国再製糖ト競争シ得ルヤト云フニ、此問題ハ頗ル至難ニシテ、既ニ世人ノ嗜好再製黒糖ニ傾クノ今日ニ在リテハ非常ノ力ヲ要スルヤ論ナシト雖トモ、兎ニ角内国黒糖ニ向テ充分ノ改良ヲ施スト共ニ、内地ニ於テ再製ヲ為スノ優レルニ若カサルナリ、而シテ徐々ニ内国黒糖ノ改良ヲ図リ併セテ再製糖ノ原料ヲ産出スルノ準備ヲ為スハ、最モ必要ト信スルナリ
 第十四項 右ノ外本邦糖業ノ発達ヲ図ルノ方法ニ関スル意見
本邦糖業ノ現況ハ已ニ叙述シタルカ如ク年々外国糖ノ蚕食ヲ蒙リ、其需用益退縮スルノ傾アリテ前途実ニ憂慮ニ堪ヘサルモノアリ、今比較上其原因ヲ調査スルニ外国糖ハ一般ニ品質良好ニアラサルモ製造其宜キヲ得、価格低廉ニシテ共ニ内国産ニ優ル所アリ、以テ世人ノ嗜好ヲ喚起シタルニ外ナラス、而シテ外糖ノ価格此ノ如ク低廉ナル所以ノモノハ、原料ヲ得ルノ容易ナル事蓋シ其主因ニシテ、殊ニ白糖ノ如キハ此廉価ナル赤糖ヲ原料トナシ、最モ進歩シタル大機械ヲ使用シテ迅速ニ精製シタルモノナレハ、其価格ノ低廉ナル亦故ナキニアラサルナリ、然ルニ本邦ニ於テ従来甘蔗ノ栽培及製造ニ従事セルハ四国・九州地方ニシテ、其気候及地質ノ遠ク彼ニ及ハサルノミナラス、該地方ハ寧ロ甘蔗ニ適セサルカ如シ、況ンヤ土地ノ高価ナルト、労力賃銀ノ不廉ナルト、農家経済ノ許サヽル処アルオヤ、故ニ甘蔗耕作者ハ年々其数ヲ減少シ、阿波・讃岐地方ノ如キ古来有名ナル甘蔗地モ今日水田ニ変シタルモノ往々ニシテ、之レ有リ、亦以テ原料ノ欠乏一般ノ需用ニ応スルニ足ラサルヲ徴スヘキナリ、故ニ今日本邦糖業ノ発達ヲ図ラントスレハ、必ス先ツ原料ノ産出ニ就テ最モ深ク注目留心セサルヘカラサルナリ
製糖ノ原料トシテ必要ナル植物ハ甘蔗及甜菜ニシテ、本邦従来ノ製糖業者ハ主ニ甘蔗ヲ用ヒ、甜菜ヲ原料ニ供スルニ至リタルハ僅ニ近年ノ事ナリトス、而シテ此二植物中何レカ能ク本邦ノ気候風土ニ適当ナルヤ、将タ又将来発達ノ見込アルヤ、請フ左ニ之ヲ分説セン
一、四国・九州ハ如何 此地方ハ古来有名ナル甘蔗地ニシテ、今日ニ至ルモ尚相当ノ産出アリト雖トモ、試ニ甘蔗ヲ採リテ之ヲ外国産ニ比較セハ蔗茎ノ細小ナル、結晶糖分ノ少量ナル一目ニシテ、其利益アル農産物タラサルヲ知ルニ足ラン、是レ畢竟地味温度ノ未タ甘蔗ニ適セサル所以ニシテ、殆ト肥料ヲ要セス耕耘ヲ須ヒスシ棒大《(テ脱)》ノ蔗茎ヲ収穫シ得ベキ外国産ト競争シ能ハサルヤ明ナリ、況ンヤ土地ノ最モ高価ナル、労力賃銀ノ非常ニ不廉ナル、農家経済ノ許サヽルモノアルニ於テオヤ、今同地方ニ於テ調査シタル壱反歩ノ収支計算ヲ見ルニ、蔗苗代価弐円九拾九銭、鰊〆粕三十貫目代金六円九拾銭、耕作人夫四十一人
 - 第20巻 p.523 -ページ画像 
分賃金四円拾銭、収穫人夫七人分賃金七拾銭、合計金拾四円六拾九銭ニシテ、蔗茎八百貫目ノ収穫アリトシテ其代価拾八円四拾銭トスレハ差引金三円七拾壱銭ノ純益アルカ如シト雖トモ、此内一反歩ニ付米一石四斗ノ小作料ヲ納メサルヲ得サルカ故ニ、耕作及収穫ニ要スル人夫賃ハ渾テ一家内ノ労力トシ、之ヲ小作人ノ収入ニ帰スルトスルモ纔ニ八円五拾一銭ノ収益ニ過キスシテ小作料ヲ償フニ足ラス、内地ニ於ケル農家ノ経済ハ已ニ此ノ如クナルヲ以テ、甘蔗耕作者ノ年々減少スルニ至ルハ勢ノ免カレサル処ナリ、是既往幾年間政府ニ於テ奨励保護ヲ加ヘタルモ終ニ其好結果ヲ見ルニ至ラサリシ所以ナリ
一、大島・琉球地方ハ如何 此地方ハ四国・九州ニ比較スレハ風土気候ニ於テ大ニ勝ル所アリ、農業上著シキ改良ヲ加フレハ其発達利益ヲ見ルヤ疑ナシ、請フ少シク二島ノ概況ヲ述ヘン
大島ニ於テ年々産出スル所ノ黒糖ノ高実ニ十五、六万樽ニ達セリ、然レトモ維新以降種々沿革ヲ経、頗ル糖業ノ衰頽ヲ来セリ、是レ古来同一轍ノ方法ヲ墨守シ進守的ノ改良ヲ企図セサリシニ起因シタルモノナルベシト雖トモ、近来外糖ノ輸入盛ナルニ及ヒ漸ク世人ノ本島ニ注目スルニ至リ、其改良ノ一日モ忽ニス可カラサルヲ知悉シ、官民共ニ留意スルノ気運ニ向ヒ、或ハ技師ヲ派遣シ専ラ赤糖変製ノ試験ヲ行ヒ、或ハ島民ニ向テ甘蔗耕作製造方法ノ改良ヲ講シ、或ハ銀行支店ヲ設置シ金融ノ円滑ヲ図ル等、一トシテ勉メサルハナシ、是ヲ以テ近々一、二年間改良ノ端著ヲ開キ、本年ノ如キ其製産高前年ニ比シ二、三割ノ増加ヲ見タリト聞ク、殊ニ本島産出品ハ其品質モ極メテ良好ニシテ優等品ノ多キ事ハ既ニ本業ニ従事スル者ノ熟知スル所ニシテ、赤糖及白糖ヲ産出スルニ至レリ、是即チ一意専心旧慣ヲ革メ製造ノ改良ニ着手シタル結果ニ因ラスンハアラス、更ニ進ンテ本島到ル所ニ甘蔗ヲ栽培シテ、耕作及ヒ製法ノ改良其宜ヲ得ハ、数年ヲ出テスシテ数万樽ノ増加ヲ見ルノミナラス、将来十分ノ望アル産糖地タルヤ疑ナシ、尚本島ニ於テ黒糖ヲ赤糖ニ変製シ、旧来ノ樽ヲ改メ「アンペラ」或ハ同島ニ発生スル草ヲ以テ類似ノ俵ヲ造リ、以テ運搬ノ便ヲ図リ運賃ノ低減ヲ計画シテ、各地ノ需用ニ応シ益々販路ヲ拡張シ、将来再製糖場ノ起ル時期ニ際シ之カ原料タラシメ、琉球諸島及八重山島ノ如キト共ニ改良ノ功績ヲ顕ハサハ、数年ナラスシテ外国糖ヲ防遏スル何ノ難キコトアラン
又琉球ハ古来ヨリ黒糖産出ヲ以テ全国ニ冠タリ、然レトモ世人ハ以テ琉球全島悉ク甘蔗ヲ以テ一島ヲ組成スト誤認スル者ナカル可シ、今ヤ概括シテ之ヲ云ヘハ、本島ニ於テ糖業ノ最モ盛ナルハ島尻ニシテ、中頭之ニ亜キ、国頭亦之ニ次ク、而シテ琉球内地ニ於テモ尚ホ糖種耕作ニ適スルノ地尠カラス、彼ノ八重山群島ニ於ケルモ亦然リ、現今沖縄県下ニ於ケル作付ノ反別及産額等ハ之ヲ詳ニセスト雖トモ、明治二十四年ノ調査ニ拠レバ、甘蔗作付ハ二千七百三十三町八畝二歩ニシテ、之ニ対スル砂糖ノ産額ハ二千百五万九千八百七十七斤ニ達シ、明治二十二年ニハ現在製糖所ノ数六百九十九ケ所ナリシモ、明治二十四年ニ至リテハ大小合セテ一千二百廿六ケ所ニ増加シ、其産額モ明治十六年ノ調査ニ比スルニ八百五十八万斤ノ増加ヲ見ルニ至レリ、之ヲ以テ本
 - 第20巻 p.524 -ページ画像 
島ニ於ケル糖業発達ノ徴アルヲ知ルニ足ル可シ
而シテ沖縄本島ハ其産額二千三十四万千二百七十五斤ニシテ、本島ノ耕作法ヲ大島ニ比スルニ大ニ見ルヘキモノアリ、就中其製造方法ニ於テハ顕著ナル功績ノ迹アルヲ見ル、是レ蓋シ琉球ハ官ノ力ニ依リ明治十九年以来屡々品評会ヲ開キ、又製糖試験所ヲ設ケテ孜々改良ヲ奨励シタルノ結果ナルヘシ、故ニ琉球産糖ノ面目ヲ一新シ爾来市場ニ其声価ヲ博スルニ至レリ、然レトモ外糖ニ拮抗シテ未タ市場ニ競争スルノ数量ニ乏シキヲ如何セン、聞ク処ニ依レハ本島ハ機械家屋ヲ構造シ総テ洋式ニ依テ製造シ、又ハ製糖練習所ヲ建設シ蒸機械ヲ以テ甘蔗ヲ搾取スルノ製造所ヲ設ケタリト雖トモ、其栽培法ニ至リテハ少シク改良ヲ施セシノミ、尚進ンテ之ヲシテ完全ナラシムルニハ幾段ノ階級アルニ依リ、漸ヲ以テ之カ進歩ヲ図ルヨリハ他ニ策ナカルヘシ
又沖縄群島中、久米島及宮古島ハ沖縄本島ヨリ移住ヲ為サシメ、土地ヲ開墾シテ以テ甘蔗ヲ栽培シ、良好ナル製糖ヲ産出セシメハ大ニ望ヲ属スルノ地トナラン、只惜ムラクハ全島水ニ乏シク、未タ充分ノ発達ヲ見ス、一反歩ノ収穫ヲ本島ニ比スルニ非常ノ逕庭アルカ如シ、若シ夫レ十分ニ意ヲ注テ耕作製造ヲ勉ムルニ至ラハ将来大ニ見ル可キモノアランカ
以上琉球・大島諸島ノ形勢ヲ概述スル此ノ如シ、要スルニ沖縄ノ糖業ニ於ケル便利ノ点少ナカラス、第一気候温暖ニシテ時々降雨アリ、内地ノ耕作ニ比シテ収穫極メテ多ク、糖分ニ富ミ汚物少ク品質良好ナリ然リト雖トモ沖縄ニ於テハ未タ赤糖及白糖ニ変製スル事ヲ勉メス偏ニ黒糖ヲ精撰スルノミ、今ヤ黒糖ノ需用漸ク減シ到ル所白糖ノ販路増加スルノ傾向アリテ白糖ノ需用実ニ莫大ナルノ時期ニ際シ、一大改良ヲ施サス黒糖ヲ以テ沖縄ノ特産ナリト誇称シ単ニ黒糖ノ改良ノミニ心酔セハ、何レノ時カ輸入ヲ減殺シ我糖業ノ発達ヲ期スルヲ得ヘケンヤ
一、八重山地方ハ如何 此地方ハ稍熱帯ニ近邇スルヲ以テ炎熱ノ度甚強ク風度気候ノ甘蔗ニ適スルハ固ヨリ論ヲ俟タス、土地ノ低価ナルト労力賃銀ノ廉ナルトハ、之ヲ外国産地ニ比スルモ敢テ一歩ヲ譲ラス、将来甘蔗糖ノ産地トシテハ本邦中恐ラクハ其右ニ出ツルモノナカラン今同地方ニ向ツテ設計シタル製糖ノ調書ヲ見ルニ、比較上ノ結果実ニ左表ノ如クニシテ、啻ニ内地ノ産出ニ優ルノミナラス、台湾・呂宋地方ニ比シテ大ニ凌駕スルヲ知ルヘシ、然レトモ該地方ハ土地ノ開墾未タ普ネカラス、居民ノ数甚僅少ナルヲ以テ、該地方ニ向テ糖業ヲ営マントスレハ必ス先ツ移住ヲ奨励セサルヘカラス、而シテ移住民ハ之ヲ何レノ地ヨリ募集スヘキヤ、移住民ハ果シテ其風土ニ堪フルヤ否ヤ、移住民ト土人トノ折合ハ如何等ハ第一ニ研究スヘキ問題ニシテ、次ニ先島即チ八重山ヲ開拓セントスルニハ航海ノ便如何、目下ノ如ク一ケ月僅ニ一回位ノ往復ニテハ到底起業上ニ利益ヲ与フルコト能ハサルヘシ、故ニ該地方ニ向テ糖業ノ発達ヲ図ラントスレハ是等ノ問題ニ就テ充分ノ用意ナカルヘカラス、然レトモ是等ノ問題ハ元来人為ニ属スルヲ以テ、当局者ニ於テ少ク注意ヲ加フレハ之ニ処スル亦難キニアラサルヘシ、今試ニ八重山地方ト内地其他閩広・呂宋・台湾ノ各地ニ於ケル上等圃地甘蔗栽培製糖ノ利便ヲ比較スルトキハ左表ノ如シ
 - 第20巻 p.525 -ページ画像 

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      産地      八重山              内 地           閩広・呂宋・台湾            摘 要事項 小作地料         二円               讃岐八円 平均六円     壱円ヨリ弐円マデ平均壱円五拾銭   八重山ニテハ洋式機械馬耕ナルヲ以テ、其便実ニ他ノ土地ト同日ノ論ニ非ス                               阿波四円                            内地ハ霜害ノ為メ毎年十一月種苗ヲ土中ニ囲ヒ、翌年四月ニ掘出シ使用ス、故ニ腐敗損傷経費多シ、熱帯地方ニテハ収穫甘蔗ノ残端ヲ種苗トス 農法           大農法              小農法           小農法               内地ハ毎年植付ナレトモ、熱帯地方ニ在リテハ四ケ年ニ一度ナリ 種苗代          要ナシ              四円            要ナシ               内地ハ暑気短キ故ニ刺激的ノ肥料夥多ヲ要ス 植付費          三拾銭              壱円            三拾銭               内地ハ小農組織ト肥料ノ使用多キカ故ニ手間賃多シ、八重山ハ大農洋式組織ナリ 肥料           豆粕凡ソ三百斤代六円       鯟粕凡ソ拾円        豆粕凡ソ六円            熱帯地ノ蔗量多キハ生育十二ケ月以上天候ニ適スルカ為ナリ、内地ハ七ケ月間ノ生ニ越ユルヲ許サス随テ蔗量少シ 培養手入         三円               四円            三円                八重山ハ蔗量多シト雖トモ、薪料安価ニ付弐割ヲ減ス 成熟甘蔗量目       千八百貫目            千五百貫目         千八百貫目             検糖器ハ同等ナリ、但シ蔗量ノ多少ニヨリ此差アリ 製糖費          拾円               拾円            九円                八重山ハ遠隔ナル為メ内地ニ比シ数倍ノ賃金ヲ要ス、台湾等ハ八重山ニ比シ尚ホ遠ナルモ貨物多キ為メ廉ナリ 砂糖歩留リ        千百二十五斤           九百三十七斤五分      千百二十五斤            内地ハ霜害ノ為メ短日月ニ収穫製糖セサレハ腐敗並ニ欠損ヲ生ス、八重山ハ冬寒ナ故収穫製造自在ナリ、是糖業者ニ於テ最大ノ便タリ  但シ白下地マデ 運賃           三円三拾七銭五厘         九拾三銭七厘        弐円八拾壱銭弐厘          開港場ニ於テアンペラ荷造ニ改造ス 製糖季節         十二月ヨリ翌年五月迄百八十日間  十一月ヨリ十二月迄六十日間 百八十日間             市価(百斤弐円五拾銭トシ)百分ノ五ノ半、則チ千五百二十五斤ニ二分五厘掛ケ 開港場荷造改易      ナシ               ナシ            壱円拾弐銭五厘 厘金税          ナシ               ナシ            七拾銭三厘 支那出港関税       ナシ               ナシ            弐円弐拾五銭            毎担 金弐拾銭 日本入港関税       ナシ               ナシ            壱円四拾七銭弐厘          毎担 金拾参銭 耕作製造費並ニ運賃総計  廿四円六拾七銭五厘        四拾円九拾参銭七厘     弐拾八円拾六銭三厘 市場参着壱斤原価     弐銭弐厘強            四銭三厘強         弐銭五厘強 市場売捌壱斤ノ価     五銭               五銭            四銭五厘              市価ノ等差アルハ需用者ノ習慣ト製糖法ノ巧拙ヨリ生ス原質甘蔗ニ於テ大差ナシ 産糖売上金        五拾六円弐拾五銭         四拾六円八拾七銭五厘    五拾円六拾弐銭五厘         市価ノ最高ヲ七銭トシ最低ヲ三銭トス、十ケ年間ノ平均見積リ 支出差引売上利益     三拾壱円五拾七銭五厘       拾円九拾三銭八厘      弐拾八円八銭八厘          八重山ノ斯ク利益多キハ天賦特有ノ天候地方ヲ応用スルノ結果ナリ  備考  以下p.526 ページ画像   一本表ハ農場製糖場等百事整頓ニ於ケル計算ナリ  一本表ハ一段歩ノ圃地ヲ基礎トシテ計算セルモノナリ  一本表ハ明治二十六年ノ砂糖相場ニヨリ計算セルモノナリ、但シ本表ハ単ニ彼我製糖上天賦ノ便否ヲ対照比較スルヲ主トシ、本業ノ固定資本タル農舎、牛馬、農具並ニ製糖諸機械費及ヒ市場ニ於ケル問屋口銭、倉敷、倉出入、艀、車力、目欠、保険等ノ諸費目ノ如キハ暫ク彼我同等ト看做シテ之ヲ省略シタルモノナレバ一段歩ニ対スル所得割合ニ多キヲ見テ疑フヘカラス  一一農夫馬一頭ヲ以テ二町歩ヲ耕作シ、製糖百斤入二百俵以上ノ収穫ヲ得ルモノトシ、一斤ノ市価ヲ五銭トスルトキハ金一千円ノ収入トナルベシ、而シテ此内製造費ヲ二百円、農夫ノ給料ヲ百円、運賃、口銭、目欠、諸機械損料、其他諸雑費ヲ二百円トシ、之ヲ引去ルトキハ差引五百円ノ利潤アリ、若シ市価非常ニ低落シテ一斤三銭トナルモ猶百二十円ノ純益アリト 



本邦ニ於ケル甘蔗ノ産地ハ以上既ニ述フルカ如ク、四国・九州地方ハ如何ニ之ヲ奨励スルモ到底前途ニ望ミナキカ如ク、琉球・大島地方ノ如キハ現ニ多額ノ産出アルノミナラス、尚将来望ヲ属ス可キノ地ト云フ可シ、殊ニ八重山地方、即石垣・入表外数島ノ如キハ現ニ多額ノ産出ナシト雖モ、将来最モ有望ノ地ナルヲ以テ琉球・大島ト共ニ之ヲ奨励保護スルハ糖業ノ発達ヲ図ルニ最モ必要ト信スルナリ、然レトモ惜哉八重山ハ面積甚タ広カラス、仮令全島ヲ挙ケテ甘蔗地ト為スモ其収穫ノミヲ以テ今日ノ需用ヲ充タスニ足ラザルヲ如何セン
今海外各国ニ於ケル砂糖ノ需用ヲ調査スルニ米国ノ消費高ハ平均壱人ニ付三十六斤ニシテ、欧洲ハ十八斤ナリ、日本ニ於テハ仮ニ之ヲ十斤ト定ムルモ四千万ノ人口ハ四億万斤、即チ六千四百万貫目ヲ消費スルノ割合ニシテ、今日市場ノ集散ヲ見ルニ輸入糖ト内国産トヲ合セ四千五百万貫目ニ過キサレハ其需用ハ尚日ヲ逐フテ増進スヘク、且其消費高ハ人口ノ増加ト生活ノ進度トニヨリテ愈増加スヘキモノナレハ、将来需用ノ高ハ実ニ非常ノ数ニ上ルモノアラン
而シテ内地ノ甘蔗糖ハ既ニ述ヘタル如ク僅ニ琉球・大島及八重山地方ノ産出ヲ以テ需用ノ一部ヲ供給スルニ止マルトスレハ、其他ハ渾テ之ヲ輸入ニ仰カサル可カラスシテ国家ノ不経済亦甚シト謂フヘシ、此不経済ハ果シテ之ヲ救済スルノ道ナキヤ、曰ク、否本邦製糖ノ原料ハ啻ニ甘蔗ニ止マラスシテ更ニ之ヨリ有用ニシテ適当ナルモノアリ、即チ北海道ニ於ケル甜菜是ナリ
甜菜ハ新作物ノ一ニシテ、之ヲ以テ製糖ノ原料トナスニ至リタルハ纔ニ西暦千七、八百年ノ交ニシテ、那翁ノ力ニヨリテ発達シタルモノヽ如シ、爾来各国ニ於テモ漸次此新材料ニ依リテ糖業ノ発達ヲ来シ其効果実ニ著シキモノアリ、現ニ米国ノ如キモ古来其南部地方ニ於テ甘蔗ヲ裁培スルコト恰モ我国ノ西南地方ニ於ケルカ如キ状態ナリシカ、欧洲甜菜糖ノ輸入其勢力ヲ逞フスルニ至ルヤ、政府ハ百方力ヲ用ヒテ之ヲ奨励保護シ、終ニ今日ノ如キ甜菜糖業ノ発達ヲ見ルニ至レリ、其他
 - 第20巻 p.527 -ページ画像 
各国ニ於ケル糖業発達ノ順序ヲ見ルニ皆然ラサルハナシ、故ニ本邦糖業ノ前途ハ亦此甜菜ニ大ニ望ヲ属セサルヘカラス
甜菜ハ欧洲ニ於テハ北緯四十七度乃至五十四度ノ間ニ於テ栽培シ、之ヲ以テ適当ナル気候トナセリ、我北海道本島ハ北緯四十一度半乃至四十五度半ニ位シ緯度ニ於テハ小差アリト雖トモ、栽培ニ要スル総温度ハ恰モ適当ニシテ本邦中唯一ノ甜菜地ト云フヘシ、今昨二十六年ノ調査ニ係ル札幌製糖会社ノ菜根糖分ヲ見ルニ百貫目ニ付一三、四一〇ニシテ、世界中甜菜糖業ノ最モ発達シタル独逸国ニ於ケルモ其成績ハ平均一二、一三三ニ過キス、而シテ甜菜糖業ハ菜根百分中八以上ノ糖分アレハ、之ヲ製造シテ大ニ利益アルモノナレハ我国ニ於ケル甜菜ハ実ニ非常ノ好結果ナリト云フヘシ
甜菜糖ノ原料既ニ此ノ如キ好成績アルニモ拘ハラス、従来紋鼈及札幌ノ如キ既設ノ製糖会社カ何故ニ屡々失敗ヲ醸シ不振ノ域ニ陥リタルヤ頗ル怪訝ニ堪ヘサルモノアリ、是固ヨリ種々原因アリテ然ルト雖トモ畢竟スルニ本邦甜菜糖業ハ其当時尚幼稚ニシテ、確実ノ予算ナク熟練ナル技師ニ乏シク、且農民耕作ノ方法不完全ニシテ、常ニ収支相償ハサルカ如キ欠点アリシニ因ラスンハアラス、爾来着々改良ヲ加ヘ今日大ニ整理ノ緒ニ就キタリト云ヘハ前途応ニ多望ナルヘシ、況ンヤ本道ハ其面積広袤四国・九州ノ上ニ出テヽ沃饒ノ原野茫漠トシテ其間ニ横ハリ、耕作地トシテ適当ナル土地多キニ於テオヤ、故ニ札幌及紋鼈ノ如キ現今ノ甜菜耕地ヲ以テ起点トナシ漸次之ヲ全道ニ及ホスニ至ラハ製糖ノ原料蓋シ不足ヲ訴フル事ナキニ至ラン、然レトモ目下ノ状況ニ依レハ土地ノ開墾未タ普カラス、耕作地ノ不足ナルヲ以テ農民ハ年々同一ノ作物ヲ植付ケ大ニ地質ヲ損傷スルノ傾ナキ能ハス、故ニ益進ンテ未墾ノ土地ヲ開拓スルニ至レハ之ニ雑フルニ雑穀ヲ以テシ、二年若クハ三年毎ニ其作物ヲ交換シ土地ノ転換其宜キヲ得ハ菜根ノ生育随テ著シク、原料ノ産出ニ於テ一層ノ好結果ヲ見ルニ至ラン、原料ノ供給既ニ充分ナルニ至ラハ糖業ノ発達ハ期シテ竢ツヘキナリ、故ニ今日糖業ノ発達ヲ図ランニハ琉球・大島及八重山地方ノ如キ適当ナル土地ヲ択ヒテ甘蔗糖ノ産出ニ奨励保護ヲ加ヘ、以テ赤糖・黒糖ノ価格ヲ低廉ナラシムルト同時ニ、各地ニ於テ再製糖場ヲ設ケ専ラ之カ製造ヲ盛ンナラシメ、又一方ニ在リテハ北海道ニ於ケル甜菜糖業ヲシテ益改良進歩ヲ見ルニ至ラシムレハ、相互相竢テ多額ノ産出ヲナシ、亦以テ外国糖ノ輸入ヲ防遏スルニ足ランカ


第四回東京商業会議所事務報告 第二二―二三頁 明治二八年四月刊(DK200054k-0009)
第20巻 p.527-528 ページ画像

第四回東京商業会議所事務報告  第二二―二三頁 明治二八年四月刊
一糖業調査ノ儀ニ付、農商務省農務局ヨリ照会ノ件
 本件ハ明治二十七年五月五日附ヲ以テ農商務省農務局ヨリノ照会ニ係リ、其要旨ハ白糖・赤糖・白下糖・黒糖ノ最近十ケ年間ノ毎年平均及最高・最低相場並ニ著シク騰貴若クハ下落セルトキノ説明其外十三項ニ付本会議所ノ答申ヲ得タシト云フニ在リ、依テ之ヲ同年六月五日第三十四回ノ臨時会議ニ附シタルニ委員五名ヲ設ケテ其調査ヲ附託ス可シト決シ、乃チ議長ノ指名ヲ以テ左ノ諸君ヲ委員ニ選挙シタリ
 - 第20巻 p.528 -ページ画像 
                    藤田武次郎君
                    大住喜右衛門君
                    方波見平兵衛君
              (委員長) 鳥海清左衛門君
                    加東徳三君
其後委員ハ調査ノ末、其答申書案ヲ草シ報告シタルニ付、之ヲ同年九月十八日第三十八回ノ臨時会議ニ附シ其可決ヲ経、同月二十九日附ヲ以テ左ノ如ク農務局ヘ答申シタリ
   ○答申文ハ月報所載ノモノト同一ニツキ略ス。