デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治27年12月20日（1894年）

是ヨリ先当会議所、商法第六章中株金払込ニ関スル規定修正ニ付調査中ナリシガ、是日委員ノ調査案ヲ可決ス。栄一会頭トシテ之ニ与ル。

第四回東京商業会議所事務報告　　第四二―四三頁　明治二八年四月刊
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一商法第六章中修正ノ件調査ノ件
　本件ハ京都商業会議所ヨリ第三回商業会議所聯合会ヘ提案シ同会ノ決議ヲ経タルモノニ係リ、其要旨ハ商法第六章株金払込ノ期節並ニ株金第一回払込等ニ関スル規定ハ修正ヲ要スルニ付、各商業会議所ヨリ農商務・司法両大臣ヘ建議シ、且ツ貴族・衆議両院ヘ請願スベシト云フニ在リ、依テ之ヲ明治二十七年九月十八日第三十八回ノ臨時会議ニ附シタルニ、民法及ヒ商法取調委員ニ其調査ヲ附託スベシト決シ、其後委員ハ調査ノ上報告シタルニ付、同年十二月二十日第四十回ノ臨時会議ニ於テ之ヲ議シタルニ即チ委員ノ意見通リ決定シタリ、右委員ノ報告書ハ左ノ如シ
　　　　商法第六章中修正ノ件調査報告
　兼テ全会ヨリ附託セラレタル第三回商業会議所聯合会ノ議決ニ係ル商法第六章中修正ノ件ハ、其後篤ト審議ヲ遂ケ候処、右ニ対スル本委員ノ意見ハ別紙ノ通リ議決致候間、此段及御報告候也
　　明治二十七年十月二十七日
　　　　　　　　　　　民法及商法取調委員長　阿部泰蔵
　　　　東京商業会議所会頭　渋沢栄一殿
　（別紙）
　　　　商法第二百十二条修正案第一項
　株金払込ノ期節・場合及ヒ方法ハ定款ニ於テ之ヲ定ム
　　商法第二百十二条中ニアル期節ノ文字ニ就キ疑義アルコトハ本委員カ兼テ全会ニ報告シタルカ如クニシテ、本条ヲ修正シ其疑義ヲ判明ナラシムルノ精神ニ至リテハ固ヨリ本委員ノ同意ヲ表スル所ナリ、然レトモ右修正案ノ如ク本条中単ニ場合ノ二字ヲ加フルノミニテハ未タ以テ充分其疑義ヲ判明ナラシムルニ足ラス、故ニ本委員ノ意見ニ拠レハ、本条ハ寧ロ曩ニ本会議所ヨリ商業会議所聯合会ヘ提出シタル修正案ノ如ク「株金ノ払込ハ定款ノ定ムル所ニ従フ」ト修正スルノ簡ニシテ尽クセルニ若カスト信ス
　　　　同修正案第二項
　株金第一回ノ払込ハ各株式ニ付、少クトモ四分ノ一ノ金額ヲ払込マシムヘシ、但事業ノ着手上四分ノ一ノ金額ヲ要セサル者ハ主務省ノ認可ヲ経テ特ニ第一回ノ払込額ヲ定ムルコトヲ得
　　各株式会社中其営業ノ種類ニ依リテハ設立ノ際必スシモ株金四分ノ一ノ払込ヲ要セサルモノアリ、故ニ此等ノ会社ヲシテ此制限外ニ立ツコトヲ得セシムルハ本委員ノ兼テヨリ同感ヲ抱ク所ナリ、然リト雖トモ右修正案ノ如ク除外例ヲ設ケ第一回株金払込ノ割合ヲ行政官ノ脳髄ニヨリテ決定スルノ道ヲ開クトキハ、曩ニ本会議所ガ商業会議所聯合会ヘ提出シタル修正案ノ主旨、即チ会社発起ノ認可及ヒ設立ノ免許ヲ廃スルノ主義ト全然相反スルノ嫌アルノミナラス、実際ニ於テモ各会社ハ此除外例ヲ奇貨トシテ其営業ノ何タルヲ問ハス、事業着手上株金四分ノ一ノ払込ヲ要セサルヲ名トシテ、競フテ制限外ニ立タン事ヲ勉メ、其極或ハ此制限ヲシテ全ク徒法ニ帰セシムルノ弊害ナシトセス、是レ会社ノ安固ヲ保全スル所以ニアラザルナリ、蓋シ現今各会社中此制限ノ為メ大ニ不
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利ヲ感スルハ独リ鉄道事業ノミニシテ、其他ノ事業ニ至テハ必スシモ此制限ニ服従シ難キニ非ス、故ニ本委員ノ意見ニ拠レハ先ツ商法ノ規定ハ原文ノ儘ニ之ヲ存シ置キ、夫ノ鉄道会社ノ如キハ別ニ私設鉄道条令ニ改正ヲ加ヘテ此制限外ニ立ツノ余地ヲ得セシムルヲ可トス
　商法第二百十二条第三項ノ修正案ハ全ク字句ノ修正ニ止マリ、又第百六十七条ノ修正案ハ第二百十二条第二項ノ修正ヨリ生スル必然ノ結果タルニ過キサルニ付、此分ニ対シテハ別ニ意見ヲ附セス

東京商業会議所月報　　第二九号・第一頁　明治二八年一月
○十二月　○明治二七年二十日午後五時四十分、本会議所事務所ニ於テ臨時会議ヲ開ク、当日出席者ハ二十七人ニシテ、左ノ件々ヲ審議シ、午後七時四十五分閉会ス
○中略
　一、商法第六章中修正ノ件ニ付、調査報告ノ件（委員提出）
本件ハ全会一致ヲ以テ其報告ヲ承認ス（報告書ノ全文ハ参照ノ部第一号ニ掲載ス）
　　　○報告書ハ事務報告所載ノモノト同一ニツキ略ス。
　　　○本資料第十九巻所収「東京商工会」明治二十三年五月二十四日、同二十三年八月十二日、同二十三年八月二十七日、同二十三年九月四日、同二十三年十二月十三日、同二十四年九月二十一日ノ各条、並ニ本巻所収「東京商業会議所」明治二十五年六月六日、同二十六年九月二十二日、同二十六年十二月二十五日、同二十七年六月二十七日、同二十八年一月十二日、同二十八年三月二十九日、並ニ第二十一巻所収「東京商業会議所」明治二十九年九月十四日、同三十年六月二十八日、同三十年十二月二十七日、同三十一年十二月二十四日、同三十二年二月十日ノ各条参照。