デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第20巻 p.611-615(DK200077k) ページ画像

明治28年10月14日(1895年)

是ヨリ先当会議所、栄一外会員十数名ノ建案セル商事会社ノ重役タル会員ノ資格ニ関スル疑義ニ就キ調査中ナリシガ、明治二十八年三月二十七日法律第二十三号ヲ以テ商業会議所条例改正セラレ、疑義明瞭トナリシヲ以テ、是日ノ会議ニ於テ審議ノ必要ナキ旨ヲ議決ス。


■資料

第三回東京商業会議所事務報告 第四〇頁 明治二七年四月刊(DK200077k-0001)
第20巻 p.611 ページ画像

第三回東京商業会議所事務報告  第四〇頁 明治二七年四月刊
一商事会社ノ重役タル会員ノ資格ニ関スル疑義調査ノ件
 本件ハ明治二十六年十二月二十五日附ヲ以テ会員梅浦精一・吉田幸作・佐久間貞一・大倉喜八郎・益田克徳・雨宮敬次郎・渋沢栄一・今村清之助・太田実・中野武営・山中隣之助・中島行孝諸君ノ提案ニ係リ、其要旨ハ、曩ニ明治生命保険会社外三会社ノ取締役タル荘田平五郎氏ヨリ本市小石川区長ニ係リ提起シタル不当商業税徴収処分取消ノ行政訴訟判決ノ結果トシテ、商事会社ノ重役タル会員ノ資格上ニ疑義ヲ生ジタルニ付、本会議所ニ於テ相当ノ手続ニ依リ審査ヲ遂ゲ、此等部類ノ人ニシテ果シテ其資格ニ欠クル所アリトセバ速ニ選挙人・被選挙人名簿中ヨリ除名スベシト云フニ在リ、依テ之ヲ同日第三十一回ノ臨時会議ニ附シタルニ、委員五名ヲ選挙シ其調査ヲ附託スルコトニ決シ、乃チ議長ノ指名ヲ以テ左ノ諸君ヲ委員ニ選挙シタリ
                   大江卓君
             (委員長) 梅謙次郎君
                   小林義則君
                   中沢彦吉君
                   藤田藤一郎
本件ハ其後委員ニ於テ調査中ナルニ付、追テ其報告ヲ得タル上更ニ会議ニ附スル見込ナリ


第五回東京商業会議所事務報告 第六一頁 明治二九年四月刊(DK200077k-0002)
第20巻 p.611-612 ページ画像

第五回東京商業会議所事務報告  第六一頁 明治二九年四月刊
一商事会社ノ重役タル会員ノ資格ニ関スル疑義調査ノ件
 本件ハ前回ニ報告シタル如ク明治二十六年十二月中会員梅浦精一君外十一名ノ提案ニ係リ、委員ニ於テ調査中ノ処、其後委員ニ於テ調
 - 第20巻 p.612 -ページ画像 
査ノ末左ノ如ク報告書ヲ提出シタルニ付、之ヲ明治二十八年十月十四日第四十八回ノ臨時会議ニ附シ其承認ヲ得タリ
  嘗テ会議ノ決議ヲ以テ附託セラレタル会員資格審査ノ件ハ其後調査中ノ処、本委員ニ於テハ、明治二十八年三月二十七日法律第二十三号ヲ以テ商業会議所条例ニ改正ヲ加ヘラレ、会員資格ニ関スル疑義既ニ明瞭トナリタルノ今日ニ於テハ、別ニ之ヲ審議スルノ必要ナシト議決致候、此段及御報告候也
   明治二十八年七月二十五日
            会員資格審査委員長 梅謙次郎
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿



〔参考〕東京商業会議所月報 第一八号・第二―四頁 明治二七年二月 【○参照第三号 一月二十五日、商事…】(DK200077k-0003)
第20巻 p.612-614 ページ画像

東京商業会議所月報  第一八号・第二―四頁 明治二七年二月
○参照第三号
 一月二十五日、商事会社重役タル会員ノ資格ニ関スル儀ニ付、農商務省商工局長ヨリ接受シタル通牒書ハ左ノ如シ
商業会議所条例中商業者ノ解釈ニ関スル本局ノ意見別紙ノ通リニ候条為御参考玆ニ及御回附候也
  明治二十七年一月廿四日
             農商務省商工局長 若宮正音
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿
(別紙)
    商業会議所条例ノ商業者ニ関スル疑義ニ就テ
明治廿六年十二月七日行政裁判所ニ於テ荘田平五郎対小石川区長不当商業税徴収処分取消ノ訴訟判決アリテ、原告銀行及会社ノ取締役タル荘田平五郎ノ勝訴トナリシヨリ、此判決ハ商業会議所条例ニ所謂商業者ノ見解ヲ変更スルコトナキヤ否ヤニ就テ世間往々疑ヲ起スモノナキヲ保セス、仍テ玆ニ其解釈ヲ定ムル左ノ如シ
此ノ裁判タル、被告区長ハ明治十三年太政官第十六号布告地方税規則第一条及同第十七号布告営業税・雑種税規則第一条ニ基キ株式会社ノ取締役タル原告ニ対シ商業税ヲ賦課スルヲ得ルモノナルヤ否ヤニ付判決シタルモノニシテ、其理由ハ営業税・雑種税規則第一条ニ所謂商業トハ自己ノ利益ノ為メ其業ヲ営ムモノニシテ他人ノ為メ労役ニ服シ其ノ業務ニ管預スルモノヲモ包含スルノ意ニアラス、故ニ会社タル法人ノ為メ単ニ労役ニ服シ其業務ニ管預スル取締役ニ対シテ区長カ商業税ヲ賦課シタルハ違法ノ処分ナリト云フニアリ、而シテ此判決ガ商業会議所条例ニ所謂商業者ナル文字ノ解釈ニ対シテ如何ナル関係ヲ有スルヤト云フニ、毫モ相関スルモノニ非ラスト断言スルニ憚ラズ
夫レ商業者・商人等ノ文字ハ其意義不定ニシテ或ハ広ク営利ノ事業ニ従事スルモノヲ称シテ商人トイフ事アリ、或ハ物品ノ交換売買ニ従事スルモノヲ指シテ商人トナス事アリ、其使用ノ場合ニ依リ範囲ノ広狭固ヨリ一ナラス、故ニ法令規則ノ条項ニ於テ是等ノ文字ヲ使用スルトキハ別ニ精確ノ定義ヲ加ヘ以テ施行上ノ紛争ヲ防クヲ常トス、即チ商法第九条ニ「商人トハ総テ商業ヲ営ムモノヲ謂ヒ、商業ヲ営ムトハ常業トシテ商取引ヲ為ス事ヲイフ」トアルハ其一ナリ、而シテ各種法令
 - 第20巻 p.613 -ページ画像 
中特ニ是ノ如キ定義ヲ掲ケサルトキハ已ヲ得ス其普通ノ意義ト該法令ノ趣旨トヲ参酌シ、以テ其範囲ヲ推定スルノ外ナシ、若シ然ラスシテ漫ニ他ノ法令又ハ其定義ニ依準シ、或ハ専ラ普通ノ意義ニノミ準拠スルトキハ、拘束スヘキ者ヲ拘束セス、又ハ拘束スヘカラサル者ヲ拘束スルカ如キ結果ヲ来サスンハアラス、是ノ如キハ法令ノ解釈ヲ誤リ、以テ其運用ヲ妨ケ、以テ其目的ヲ達スル事能ハサルニ至ラシムルモノニシテ、法令解釈上大ニ注意スヘキ所ナリ、営業税・雑種税規則ヲ按スルニ其第一条ニ曰ク
 営業税ヲ課スヘキ種類左ノ如シ、但シ国税アルモノハ課税ノ限ニアラス
  商業
  工業
トノミアリテ其所謂商業ノ定義ヲ下サヽルノミナラス、其商業ニ対シテ如何ノ関係ヲ有シ如何ノ地位ニ在ル人ニ課税スヘキヤヲ明示セス、故ニ之ヲ解釈スルニ方テハ必ス先ツ其所謂商業ノ意義ヲ決定シ、而シテ後更ニ其商業ナルモノニ対シテ如何ナル関係ヲ有シ如何ナル地位ヲ占ムル者ヲ以テ其租税ノ負担者トナスヘキヤヲ論定セサルヘカラス
因テ此商業ノ意義ヲ考フルニ、営業税・雑種税規則第一条ニ於テ商業ト工業トヲ並記シアルヲ以テ之ヲ観ルモ、其商業ナル文字ハ農工業ト区別対称シタルモノニシテ、普通経済上ニ所謂商業ナルモノヲ指スコト更ニ疑ヲ容レサルナリ、而シテ其商業税ヲ負担スヘキ人ヲ繹ヌルニ営業税・雑種税規則ハ素ト租税ノ賦課ニ関スル規程ナルニ因リ、之ヲ解釈スルニ当リ主トシテ財政学上ノ原則ニ拠ラサルヘカラス、財政学上商業税ノ賦課ハ直接ニ商業ニ因テ生スル収入ヲ以テ其目的トスルコト明カナリ、商業ニ因テ生スル収入アル者ニシテ始メテ商業税ノ賦課アルヘシ、故ニ仮令平生前記ノ商業即チ本規則ニ所謂商業ニ従事スル者ト雖、之ニ由テ生スル利益ヲ自己ニ収メサルトキハ商業税ヲ賦課スヘキノ限ニ非サルヲ知ルヘシ、行政裁決所《(判カ)》ノ判決ニ「自己ノ利益ノ為メニスル」ノ事実ヲ以テ商業税賦課ノ要件トナシ、会社及ヒ銀行ノ取締役タル原告ニ対シテ商業税ヲ賦課スベカラザルモノト断定シタルハ誠ニ解釈ノ当ヲ得タルモノト云フベキナリ、何トナレバ彼ノ如キハ身自ラ商業ニ従事シ商界ノ要路ニ居ルモノナリト雖、其従事スル商業ニ因テ生スル利得ハ専ラ会社又ハ銀行ノ手ニ帰シ、自己ハ只其労役ニ対スル報酬ヲ得ルニ止リ、素ヨリ商業税賦課ノ目的物ヲ有セサレバナリ翻テ商業会議所条例第一条ヲ見ルニ
 此条例ニ商業者ト称スルハ商法第四条ニ掲ケタル商取引ノ各部類ニ属スル商人及作業人ヲ謂フ
トアリテ、其所謂商人及作業人ナルモノハ如何ナル業務ニ服シ、且之ニ対シ如何ナル関係及地位ヲ占有スルノ人ヲ指スヤニ就テハ条例中明カニ其定義ヲ掲ケサル事亦営業税・雑種税規則ニ同シ、而シテ本条中「商法第四条ニ掲ケタル商取引ノ各部類云々」トアルヲ以テ、或ハ其商人及作業人ナル文字モ亦商法ニ依テ解釈セザルベカラサルヤノ疑ヲ懐クモノアリ、是レ皮相ノ見ノミ、何トナレバ商法ト商業会議所条例トハ全ク其目的及性質ヲ異ニスル別種ノ法令ニシテ、商法ノ支配ヲ受
 - 第20巻 p.614 -ページ画像 
クベキ者ト商業会議所条例ノ支配スベキ者トハ素ヨリ同一ナラサルベキ事論弁ヲ要セサレバナリ、今若シ商業会議所条例ノ所謂商人及作業人トアル商人ナル文字ヲ以テ、直チニ商法ニ所謂商人ナル者ヲ指スノ意ナリトセバ、必ズヤ之レヲ明示セサルベカラズ、然ルニ商業会議所条例第一条ハ単ニ其商取引ノ部類ノミニ付テ商法第四条ヲ仮用シ、其商人及作業人ニ就テハ其意義ヲ限定セス、苟モ之ヲ限定セサル以上ハ当ニ同条例ノ趣旨ト普通ノ意義トヲ参酌シ以テ其範囲ヲ推定セサルヘカラス、何トナレバ商法ニ於ケル商人ナル語ハ全ク特別ノ必要ニ因リ特別ニ限定セラレタルモノニシテ、漫ニ他ニ転用スヘキモノニ非レハナリ、商法草案ノ原文ニ於テ特ニ普通ノ用語ナル「カウフマン」(独語)ノ文字ヲ避ケ、「ハンデルスマン」(独語)ノ文字ヲ用ヰタルハ、実ニ其特異ノ者タル事ヲ表スルモノナリ、而シテ商業会議所条例ハ会議所ヲシテ其地区内ノ商工業者ヲ代表シテ条例第四条規定ノ事務ヲ執行セシムルヲ以テ其趣旨トス、此趣旨ヨリ云フトキハ株式会社ノ取締役ノ如キハ商業会議所条例ノ所謂商業者タルヘキ事固ヨリ争フヘカラス、何トナレハ彼等ハ資産アリ智識アリ身自ラ商業ノ実務ヲ執リ商界ノ枢路ニ当リ最モ其実状ニ通スルモノナレバナリ、而シテ其従事スル商業ニ由テ自己ニ利益ヲ収ムルト、或ハ他人ノ為メニ之ヲ営ムトハ固ヨリ問フヘキ所ニ非ス、又普通ノ意義ニ依テ之ヲ論スレハ、其広義ノ解釈ニ於テ一般商人ト称スルモノヽ範囲内ニ在ルヤ疑ハス、即チ之ヲ以テ商業会議所条例ノ商業者ト認メ同条例第五条・第六条ノ範囲内ニ於テ之ニ会員ノ選・被選権ヲ与フルハ当然ナリト断定セサルベカラス、右ノ論定ニ依リ尚合名会社並ニ合資会社ノ社員等ニ就テ其商業会議所条例ノ商業者タルヘキヤ否ヤヲ研究スルニ、業務担当ノ任ニアルモノハ其関係固ヨリ株式会社ノ取締役ニ異ナラサルヲ以テ、商業会議所条例ノ所謂商業者タルヘキ事論ヲ俟タス、故ニ合名会社ノ社員ハ会社契約ニ於テ特ニ業務担当社員ヲ定メタル場合ヲ除クノ外、都テ商業会議所条例ノ商業者タルモノニシテ、其業務担当社員ヲ定メタル場合及合資会社ニアリテハ業務担当社員ノミ之ニ当ルモノトス、此点ニ於テ一ノ注意スヘキ事ハ旧商法ト改正商法トノ間ニ稍差異ヲ存スル事是レナリ、即チ旧商法ニ於テハ合資会社ニ於テモ亦特ニ業務担当者ヲ定メスシテ、各社員同等ニ其業務ニ与カル事ヲ得シヲ以テ、会社契約ニ特別ノ定メナキ以上ハ各社員都テ商業会議所条例ノ商業者タリシカ、新商法ニ依レハ合資会社ハ常ニ業務担当社員ヲ定ムヘキモノナルニ因リ、都テノ場合ニ於テ其業務担当社員ノミヲ以テ商業者トナスヘキ事トナレリ



〔参考〕法令全書 明治二八年 内閣官報局編 刊 法律第二十三号(官報三月三十日)(DK200077k-0004)
第20巻 p.614-615 ページ画像

法令全書 明治二八年  内閣官報局編 刊
法律第二十三号(官報三月三十日)
明治二十三年法律第八十一号商業会議所条例中左ノ通改正ス
第一条 此条例ニ商業者ト称スルハ左ニ掲グル者ヲ謂フ
 一 商法第四条ノ商取引及同第五条第一号・第三号・第四号・第六号ニ掲ケタル取引ヲ営業トスル者
 二 第一項ニ掲ケタル取引ヲ営業トスル合資会社・株式会社及取引所
 - 第20巻 p.615 -ページ画像 
 三 第一項ニ掲ケタル取引ヲ営業トスル合名会社ノ社員、合資会社ノ業務担当社員、無限責任社員、株式会社ノ取締役及取引所ノ理事長・理事
○下略
   ○明治二十三年法律第八十一号商業会議所条例第一条ニハ「此条例ニ商業者ト称スルハ商法第四条ニ掲ケタル商取引ノ各部類ニ属スル商人及作業人ヲ謂フ」トアリ。