デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第20巻 p.619-624(DK200080k) ページ画像

明治28年10月29日(1895年)

当会議所、明治二十七年九月十八日ノ会議ニ於テ第三回商業会議所聯合会ノ決議ニ係ル棉花輸入税廃止ノ儀ヲ可決セシガ、暫ク其進達ヲ見合ハスコトヽシタリ。然ルニ翌二十八年九月十二日、大日本綿糸紡績同業聯合会及ビ倉敷紡績株式会社外九社連署シテ当会議所ニ棉花輸入税ノ廃止ニ一層尽力センコトヲ求メ、更ニ同月二十九日第四回商業会議所聯合会ニ於テ再ビ棉花輸入税廃止ノ儀上程サレ、各会議所ニ於テ目的達成ノ為メ一層ノ尽力ヲナス旨可決セラル。是ニ於テ当会議所、是日棉花輸入税ノ速カナル廃止ヲ大蔵大臣子爵渡辺国武農商務大臣子爵榎本武揚ニ建議シ、次イデ十二月二十六日貴族院議長侯爵蜂須賀茂韶・衆議院議長楠本正隆ニ請願ス。栄一会頭トシテ之ニ与ル。


■資料

東京商業会議所月報 第二六号・第一―二頁 明治二七年一〇月 【○九月十八日午後六時三十分本会…】(DK200080k-0001)
第20巻 p.619 ページ画像

東京商業会議所月報  第二六号・第一―二頁 明治二七年一〇月
○九月十八日午後六時三十分本会議所事務所ニ於テ臨時会議ヲ開ク、当日出席会員ハ三十人ニシテ左ノ件々ヲ審議シ、午後八時十分閉会ス
○中略
 一、第三回商業会議所聯合会決議事項中第一号以下数件処分ノ件
○中略
  一(臨第一号)棉花輸入税廃止ノ件
   本件ハ役員会議ニ託シテ文案ヲ草シ、直チニ農商務・大蔵両大臣ニ建議シ、且ツ貴族・衆議両院ニ請願スル事


東京商業会議所月報 第二九号・第一―二頁 明治二八年一月 【○十二月二十日 ○明…】(DK200080k-0002)
第20巻 p.619-620 ページ画像

東京商業会議所月報  第二九号・第一―二頁 明治二八年一月
○十二月二十日 ○明治二七年午後五時四十分、本会議所事務所ニ於テ臨時会議ヲ開ク、当日出席者ハ二十七人ニシテ、左ノ件々ヲ審議シ、午後七時四十五分閉会ス
 - 第20巻 p.620 -ページ画像 
○中略
 一、棉花輸入税免除ノ建議及ヒ請願ヲ延期スルノ件(役員会議提出)
本件ハ全会一致ヲ以テ原案ニ可決ス


第四回東京商業会議所事務報告 第八頁 明治二八年四月刊(DK200080k-0003)
第20巻 p.620 ページ画像

第四回東京商業会議所事務報告  第八頁 明治二八年四月刊
一棉花輸入税廃止ノ儀ニ付大蔵・農商務両大臣ヘ再建議及ヒ貴族・衆議両院ヘ再請願ノ件
 本件ハ堺商業会議所ヨリ第三回商業会議所聯合会ヘ提案シ、同会ノ決議ヲ経タルモノニ係リ、其要旨ハ棉花輸入税ノ廃止ハ全国商業者ノ輿論ナルニ付、此際各商業会議所ヨリ再応大蔵・農商務両大臣ヘ建議シ且ツ貴族・衆議両院ヘ請願スベシト云フニ在リ、依テ之ヲ明治二十七年九月十八日第三十八回ノ臨時会議ニ附シタルニ、其趣意ヲ可認シ即チ其文案ノ起草ヲ役員会議ニ全任ス可シト決シタルガ、其後役員会議ニ於テハ審議ノ末、目下軍国多事ノ際、本件ヲ其筋ヘ開申スルハ時機ヲ得タルモノニアラスト決シタルニ付、更ニ同年十二月二十日第四十回ノ臨時会議ノ決議ヲ経テ、暫ク其進達ヲ見合ハセタリ
   ○本巻明治二十七年六月二十七日ノ条参照。


東京商業会議所月報 第三八号・第九―一〇頁 明治二八年一〇月 【○同月 ○九月十四日…】(DK200080k-0004)
第20巻 p.620 ページ画像

東京商業会議所月報  第三八号・第九―一〇頁 明治二八年一〇月
○同月 ○九月十四日、棉花輸入税免除ノ儀ニ付、大日本綿糸紡績同業聯合会・倉敷紡績株式会社外九個ノ紡績会社ヨリ照会書ヲ接受ス(照会書ノ全文ハ参照ノ部第四号ニ掲載ス)


東京商業会議所月報 第三八号・第一二―一三頁 明治二八年一〇月 【○参照第四号 九月十四日、棉花輸…】(DK200080k-0005)
第20巻 p.620-622 ページ画像

東京商業会議所月報  第三八号・第一二―一三頁 明治二八年一〇月
○参照第四号
 九月十四日、棉花輸入税免除ノ儀ニ付、大日本綿糸紡績同業聯合会外十箇ノ紡績会社ヨリ接受シタル照会書ハ左ノ如シ
拝啓秋冷相襲候処御起居御清栄珍重奉賀候、陳ハ棉花輸入関税免除ノ儀ニ付テハ、一昨年兵庫ニ於テ御開キニ相成候全国商業会議所聯合会ニ於テ、国家経済上緊要ノ問題トシテ全会一致ヲ以テ之ヲ政府ヘ建議スルノ御決議ニ相成、猶又昨年金沢市ニ於ケル同聯合会ニ於テモ亦タ同様ノ御決議ニ相成候儀ハ全ク国家経済上ノ得策ヨリ御考究相成候儀ト存候得共、我当業者等ニ於テハ満足感謝ニ不堪儀ニ御座候
抑モ当工業ノ発達ハ近年大ニ著シク、内ハ外国製糸ノ輸入ヲ防止シ外ハ支那ニ輸出シテ販路ヲ拡張スルニ汲々トシ、日夜外国綿糸ト競争ヲ免レス候ニ付、我同業者ハ先年来製造原料ヲ低廉ニ得ルコトヲ望ミ輸入棉花関税免除ヲ政府及ヒ議会ニ請願致シ候次第ニ有之、然ルニ未タ其素望ヲ達セサルニ忽然馬関条約ノ結果ハ工業ノ状況ニ一大変動ヲ与フル事ト相成、今日迄数千里外ノ工場ニ於テ製シタル綿糸ト競争シタルモ、将来ハ我販路ニ当リ設立スル所ノ工場ノ製糸ト競争セサルヲ得サルノ次第ニ相成、寔ニ容易ナラサルノ変動ニ遭遇シタルモノニ有之候、聞ク所ニ拠レハ営利ニ機敏ナル欧米人等ハ目下既ニ上海ニ於テ紡績工場ヲ設立スル事ニ着手シ、其計画ニ係ル紡錘ハ三十万以上ニ達セ
 - 第20巻 p.621 -ページ画像 
リト、彼ノ資本ニ豊富ナル欧米人ニシテ一旦其利ヲ見ルトキハ倍蓰シテ進ミ、本邦紡績業ヲ凌駕スルニ至ルヤモ計ラレスト深ク戒心罷在候次第ニ御座候
然リト雖、我同業者等ハ馬関条約ノ結果ニ就キ呶々スルモノニ無之、此条約ノ与フル所ノ権利ヲ伸張活用シテ倍々業務ヲ盛大ニセント決心スルモノニ有之候、故ニ一方ハ調査委員ヲ支那ニ派遣シ彼地ニ工場ヲ設立スルノ得失等ヲ審査セシメ、一方ニ於テ製造費ヲ軽減スル事ヲ謀リ、主トシテ輸入棉花関税免除ヲ希望シ、其他業務ノ改良等ニハ孜々苦心罷在候
右ニ略陳スル如キ次第ナレハ此際原料棉花ヲ低廉ニ得ル事ハ猶更緊要ノ事ニ相成候、進ンテ彼レヲ制センカ坐シテ彼レニ制セラレンカ其間髪ヲ容レサル場合ト存候、固ヨリ経済ノ理ニ明達ナル諸君ニ対シ今更喋々スルヲ須ヒス候得共、本邦此業ノ盛衰ハ国家経済ノ消長ニ関スル大ナリ、刻下ノ事情敢テ黙止難ク一書ヲ裁シ愚衷ヲ陳述致候、何分宜敷御賢考一入御賛助相煩度願上候、匆々十分ヲ尽ス能ハス御推知被成下度候 頓首
  明治二十八年九月十二日
                大日本綿糸紡績同業聯合会
                理事    菅沼政経
                倉敷紡績株式会社取締役
                      小松原慶太郎
                金巾製織株式会社専務取締役
                      田村正寛
                日本棉花株式会社取締役
                      佐野常樹
                三池紡績株式会社取締役
                      野田卯太郎
                東京紡績株式会社社長
                      田村利七
                三井物産合名会社
                      端善次郎
                浪華紡績株式会社社長
                      俣野景孝
                尼崎紡績株式会社取締役
                      亀岡徳太郎
                鐘淵紡績株式会社取締役
                      朝吹英二
                大坂紡績株式会社専務取締役
                      佐伯勢一郎
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿
 上海ニ於ケル工費及ヒ職工ノ堪能其度合等目下調査中ナレハ、其調査結了ノ上ナラテハ正確ノ計算ヲ与ヘ難シト雖モ、仮リニ本邦ニ於テノ工費ヲ上海ト同一ノ者ト見做ストキハ、支那棉ヲ輸入シテ之レヲ製糸トナシ支那市場ニ上スノ間ニ左記計算ノ如キ費用ヲ生ス、此
 - 第20巻 p.622 -ページ画像 
費用ハ全ク本邦製造者ノ余計ニ負担スルモノナレハ、之レカ軽減ヲ計ラサレハ到底上海工場ト競争スルヲ得ス

図表を画像で表示--

 綿糸壱梱(三百斤入)ヲ製スル原料トシテ支那棉ヲ輸入スル費用   綿糸壱梱(三百斤入)支那ヘ輸出スル費用 一金壱円弐拾四銭   支那綿三百五十五斤ニ付支那海関輸出税   一金弐円八拾弐銭九厘  支那海関輸入税 一金壱円四拾銭九厘  本邦海関輸入税              一金五拾銭       神戸ヨリ上海迄運賃 一金壱円弐拾四銭   運送費                  一金弐拾銭       海上保険料 一金拾五銭      船積及陸揚費               一金拾三銭       陸揚及船積費 一金拾六銭七厘    海上保険料                一金四銭五厘      埠頭税                                 一金拾弐銭六厘     倉庫料(但一ケ月ノ見積)                                 一金六銭八厘      火災保険料(凡一ケ月ノ見積)  計金四円弐拾銭六厘也                      計金三円八拾九銭八厘也                   合計金八円拾銭四厘也 



  ○本巻明治二十六年九月二十二日ノ条参照。


東京商業会議所月報 第三九号・第四―五頁 明治二八年一一月 【○参照第二号 十月十四日臨時会議…】(DK200080k-0006)
第20巻 p.622 ページ画像

東京商業会議所月報  第三九号・第四―五頁 明治二八年一一月
○参照第二号
 十月十四日臨時会議ニ提出シタル第四回商業会議所聯合会委員ノ報告書ハ左ノ如シ
過般本員等両人全会ノ附託ニ依リ名古屋ニ於テ開設セル第四回商業会議所聯合会ヘ参会候処、其議事ノ結果ハ概略別紙ノ通リニ有之候、尤該聯合会議事ノ筆記ハ目下名古屋商業会議所ニ於テ調製中ニテ、不日印刷ノ上廻附ノ筈ニ付、委細ノ儀ハ右到達ノ上ニテ御了知相成度、此段及御報告候也
  明治二十八年十月八日
                  委員
                     今村清之助
                     渋沢栄一
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿
(別紙)
    本会決議
○中略
(第五号)
一棉花輸入税廃止ノ件(附録第六号参照)
 本件ハ大阪商業会議所ノ提出ニ係リ、其要旨ハ、棉花輸入税ノ廃止ハ我生産ヲ発達スル為メ極メテ必要ニ付、之ヲ大蔵・農商務両大臣ニ建議シ、且貴族・衆議両院ヘ請願スヘシト云フニ在リ、即チ之ヲ会議ニ附シタルニ、衆議ノ上之ヲ可決ス
 本件ニ就テハ堺商業会議所ヨリ第十号ヲ以テ、岡山商業会議所ヨリ第十五号ヲ以テ、各議案ノ提出アリシカ、右ハ要スルニ第五号ト同一ノ趣旨ナルニ付、即チ此二案ハ第五号ト附帯シテ之ヲ審議スルコトヽセリ(附録第十一号及第十六号参照)
○下略
   ○第四回商業会議所聯合会ニ就イテハ本資料第二十二巻所収「商業会議所聯合会」明治二十八年九月二十五日ヨリ同年同月二十九日ニ至ル各条参照。
 - 第20巻 p.623 -ページ画像 


東京商業会議所月報 第三九号・第四頁 明治二八年一一月 【○同月 ○十月二十九…】(DK200080k-0007)
第20巻 p.623 ページ画像

東京商業会議所月報  第三九号・第四頁 明治二八年一一月
○同月 ○十月二十九日、棉花輸入税免除ノ儀ニ付大蔵・農商務両大臣ヘ建議書ヲ進達ス(建議書ノ全文ハ参照ノ部第七号ニ掲載ス)


東京商業会議所月報 第三九号・第二五―二六頁 明治二八年一一月 【○参照第七号 十月二十九日、棉花…】(DK200080k-0008)
第20巻 p.623 ページ画像

東京商業会議所月報  第三九号・第二五―二六頁 明治二八年一一月
○参照第七号
 十月二十九日、棉花輸入税免除ノ儀ニ付大蔵・農商務両大臣ヘ進達シタル建議書ハ左ノ如シ
    棉花輸入税ノ免除ヲ要スル儀ニ付三タヒ建議
謹ンテ惟ルニ、本邦ヨリ輸出スル綿糸及外国ヨリ輸入スル棉花ニ関税ヲ課スルノ制ハ国家経済上極メテ不得策ニシテ、其免除ノ緊要ナルハ輿論ノ夙ニ認ムル所ナリ、是ヲ以テ曩キニ本会議所ハ明治二十五年七月一日及同二十六年十一月廿八日ノ両回ヲ以テ右関税免除ノ儀ヲ閣下ニ建議スル所アリシガ、其後綿糸輸出税免除ノ儀ハ幸ニ採択ヲ得、明治二十七年五月二十五日ヲ以テ之ヲ公布セラレタリト雖トモ、独リ棉花輸入税免除ノ儀ニシテ未タ実行ノ期ニ接セザルハ本会議所カ国家ノ為メニ深ク遺憾トスル所ナリ、蓋シ本邦ノ紡績業ハ近時漸ク進歩シ、今後其奨励ヲ怠ラサルニ於テハ、遂ニ清国ヲシテ我カ綿糸ノ一大需用地タラシムルコト決シテ望ナキニアラス、然ルニ曩ニ清国ハ馬関条約ニヨリテ沙市外三地ノ市港ヲ開クニ至リタレハ、外国ノ商人ハ此機ニ乗シ清国ノ要地ヲ択ンテ紡績業ヲ創起シ以テ其市利ヲ壟断セントスルノ計画アリ、是本邦ノ紡績業ニ取リテ新ニ勁敵ヲ加ヘタルモノト謂ハザルベカラズ、由是観之、今日棉花ノ輸入税ヲ廃シテ以テ我カ紡績業者ヲシテ充分彼ト対抗スルノ地歩ヲ得セシムルハ目下ノ急務タリト謂フベシ、本会議所ハ更ニ其素望ヲ具シテ以テ之ヲ閣下ニ開陳ス、其詳細ノ理由ニ至リテハ既ニ前回ノ建議之ヲ縷述シタルヲ以テ今復タ玆ニ呶々スルヲ須ヒス、仰キ願ハクハ閣下本建議ノ要旨ヲ採納セラレ、速ニ之ガ実行ノ手続ヲ尽サレンコトヲ切望ノ至ニ堪ヘズ、此段本会議所ノ決議ニヨリ更ニ建議仕候也
  明治二十八年十月二十九日
           東京商業会議所副会頭 奥三郎兵衛
    大蔵大臣  子爵 渡辺国武殿
                  (各通)
    農商務大臣 子爵 榎本武揚殿
   ○当時栄一ハ、京・大阪方面ニ旅行中ナリ(竜門雑誌第九〇号・明治二八年一一月)シヲ以テ副会頭奥三郎兵衛ノ名ヲ以テ建議セシモノナラン。


東京商業会議所月報 第四一号・第三頁 明治二九年一月 【○同月 ○明治二八年…】(DK200080k-0009)
第20巻 p.623 ページ画像

東京商業会議所月報  第四一号・第三頁 明治二九年一月
○同月 ○明治二八年一二月二十六日、棉花輸入税ノ免除ヲ要スル儀ニ付貴族衆議両院ヘ再請願書ヲ進達ス(再請願書ノ全文ハ参照ノ部第三号ニ掲載ス)


東京商業会議所月報 第四一号・第六頁 明治二九年一月 【○参照第三号 十二月二十六日、棉…】(DK200080k-0010)
第20巻 p.623-624 ページ画像

東京商業会議所月報  第四一号・第六頁 明治二九年一月
○参照第三号
 十二月二十六日、棉花輸入税ノ免除ヲ要スル儀ニ付貴族・衆議両院
 - 第20巻 p.624 -ページ画像 
ヘ進達シタル請願書ハ左ノ如シ
    棉花輸入税ノ免除ヲ要スル儀ニ付再請願
謹テ惟ルニ、本邦ヨリ輸出スル綿糸及ヒ外国ヨリ輸入スル棉花ニ関税ヲ課スルノ制ハ国家経済上極メテ不得策ニシテ、其免除ノ緊要ナルハ輿論ノ夙ニ認ムル所ナリ、是ヲ以テ曩ニ本会議所ハ明治二十六年十二月中右関税免除ノ儀ニ付貴院ニ請願スル所アリシカ、其後綿糸輸出税免除ノ儀ハ幸ニ貴院ノ協賛ヲ得、明治二十七年五月二十五日ヲ以テ之ヲ公布セラレタリト雖モ、独リ棉花輸入税免除ノ儀ニシテ未タ実行ノ期ニ接セサルハ本会議所カ国家ノ為メニ深ク遺憾トスル所ナリ、蓋シ本邦ノ紡績業ハ近時漸ク進歩シ今後其奨励ヲ怠ラサルニ於テハ遂ニ清国ヲシテ我カ綿糸ノ一大需用地タラシムルコト亦決シテ望ナキニアラス、然ルニ曩ニ清国ハ馬関条約ニヨリテ沙市外三地ノ市港ヲ開クニ至リタレハ、外国ノ商人ハ此機ニ乗シ清国ノ要地ヲ択ンテ紡績業ヲ創起シ以テ其市利ヲ壟断セントスルノ計画アリ、是本邦ノ紡績業ニ取リテ新ニ勁敵ヲ加ヘタルモノト謂ハサルヘカラス、由是観之、今日棉花ノ輸入税ヲ廃シテ以テ我カ紡績業者ヲシテ充分彼ト対抗スルノ地歩ヲ得セシムルハ目下ノ急務タリト謂フヘシ、本会議所ハ更ニ其素望ヲ具シテ以テ之ヲ貴院ニ請願ス、其詳細ノ理由ニ至リテハ世間既ニ定論ノアルアリ今復タ玆ニ呶々スルヲ須ヒス、仰キ願ハクハ貴院ニ於テ其願旨ヲ採納セラレ、速ニ之カ実行ノ手続ヲ尽サレンコト切望ノ至ニ堪ヘス此段本会議所ノ決議ニ依リ重テ請願仕候也
  明治二十八年十二月二十六日
            東京商業会議所会頭 渋沢栄一
    貴族院議長 侯爵 蜂須賀茂韶殿
                  (各通)
    衆議院議長    楠本正隆殿


第五回東京商業会議所事務報告 第一〇―一一頁 明治二九年四月刊(DK200080k-0011)
第20巻 p.624 ページ画像

第五回東京商業会議所事務報告  第一〇―一一頁 明治二九年四月刊
一棉花輸入税免除ノ儀ニ付大蔵・農商務両大臣ヘ建議及ヒ貴族・衆議院ヘ請願ノ件
 本件ハ大坂商業会議所ヨリ第四回商業会議所聯合会ニ提案シ、同会ノ決議ヲ経タルモノニ係リ、其要旨ハ棉花輸入税ノ廃止ハ我生産ヲ発達スル為メ極メテ必要ニ付、之ヲ大蔵・農商務両大臣ニ建議シ且ツ貴族・衆議両院ニ請願スベシト云フニ在リ、依テ之ヲ明治廿八年十月十四日第四十八回ノ臨時会議ニ附シタルニ、役員会議ニ託シテ文案ヲ草シ、直チニ大蔵・農商務両大臣ニ建議シ、且ツ貴族・衆議両院ヘ請願スルコトニ決シ、其後役員会議ニ於テ文案ヲ草シ、同年十月廿九日附ヲ以テ左ノ如ク渡辺大蔵大臣及榎本農商務大臣ニ建議シ、十二月廿六日附ヲ以テ蜂須賀貴族院議長及楠本衆議院議長ヘ請願シタリ

   ○建議並ニ請願文ハ月報所載ノモノト同一ニツキ略ス。
   ○本巻明治二十五年七月一日、同二十六年十一月二十八日ノ各条参照。
   ○棉花輸入税免除法案ハ明治二十九年第九回帝国議会ニ於テ貴衆両院ヲ通過シ、同年三月二十九日法律第五十七号ヲ以テ公布セラレタリ。本資料第十巻所収「大日本紡績聯合会」明治二十九年六月二十五日ノ条参照。