デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2021.9.1

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第21巻 p.497-509(DK210086k) ページ画像

明治32年12月12日(1899年)

是ヨリ先一月二十四日、栄一当会議所会頭トシテ選挙法改正案ニ就キ建議ヲナセシガ、是日再ビ衆議院議員選挙法改正ニ際シ、市ヲ独立ノ選挙区ト為シ、郡市人口ノ割合ニ差等ヲ設ケンコト外二項ヲ、内閣総理大臣侯爵山県有朋・内務大臣侯爵西郷従道・農商務大臣曾禰荒助ニ建議シ、貴族院議長公爵近衛篤麿・衆議院議長片岡健吉ニ請願ス。


■資料

東京商業会議所月報 第八九号・第三頁 明治三三年一月 【○明治三十二年十二月…】(DK210086k-0001)
第21巻 p.497 ページ画像

東京商業会議所月報  第八九号・第三頁 明治三三年一月
○明治三十二年十二月八日、本会議所ニ於テ第八十八回臨時会議ヲ開ク、当日ノ出席者左ノ如シ
 星野錫君 ○外十九名氏名略
午後五時四十分開議、渋沢会頭意見アリテ議席ニ着キ、副会頭大倉喜八郎君議長トナリ、左ノ件々ヲ議事ニ附シ、午後六時閉会ス
○中略
 一第八回商業会議所聯合会決議事項処分ノ件 (役員会議提出)
本件ハ全会一致ヲ以テ原案ノ如ク可決シ、尚処分事項中、衆議院議員選挙法改正ニ関スル件ノ委員五名 ○中略 ハ議長ニ指名ヲ依託スルニ決シ、議長ハ左ノ如ク指名セリ(決議事項ノ全文ハ参照ノ部第二号ニ掲載ス)
       衆議院議員選挙法改正ニ関スル件委員
                    井上角五郎君
                    中野武営君
                    横山孫一郎君
                    大倉喜八郎君
                    田口卯吉君
○下略


東京商業会議所月報 第八九号・第一〇頁 明治三三年一月 【○参照 ○第二号 明治三十二年十…】(DK210086k-0002)
第21巻 p.497-498 ページ画像

東京商業会議所月報  第八九号・第一〇頁 明治三三年一月
 ○参照
○第二号
 - 第21巻 p.498 -ページ画像 
 明治三十二年十二月八日、第八十八回臨時会議ノ可決ヲ経タル第八回商業会議所聯合会決議事項処分ノ件全文ハ左ノ如シ
第八回商業会議所聯合会決議事項中、第三号外十四件ハ左ノ如ク取扱フモノトシ、其他ノ数件ハ委員ノ報告ヲ受クルニ止ムル事
○中略
第九乃至第十三
一衆議院議員選挙法改正ニ関スル件 (高岡外四会議所提出)
 本件ハ本年 ○明治三二年一月二十三日附《(四)》ヲ以テ政府ニ建議シ、議会ニ請願シタル趣旨ニ基キ、更ニ建議・請願スルコトトシ、委員五名ヲ選挙シ、之ニ其起草並提出方及ヒ趣旨ノ貫徹ヲ謀ル為メニ必要トスル一切ノ運動方ヲ委託スル事


東京商業会議所月報 第八九号・第四頁 明治三三年一月 【○同月 ○明治三二年…】(DK210086k-0003)
第21巻 p.498 ページ画像

東京商業会議所月報  第八九号・第四頁 明治三三年一月
○同月 ○明治三二年一二月十一日正午、本会議所ニ於テ衆議院議員選挙法改正ニ関スル件委員会議ヲ開キ、委員長ヲ選挙セシニ其結果左ノ如クニテ午後一時閉会ス
               委員長 大倉喜八郎君


東京商業会議所月報 第八九号・第四頁 明治三三年一月 【同月同日 ○明治三二年…】(DK210086k-0004)
第21巻 p.498 ページ画像

東京商業会議所月報  第八九号・第四頁 明治三三年一月
○同月同日 ○明治三二年一二月一二日 衆議院議員選挙法改正ノ議ニ付、内閣総理大臣並ニ内務・農商務両大臣ヘ建議書、貴族・衆議両院ヘ請願書ヲ進達ス(建議書・請願書ノ全文ハ参照ノ部第五号ニ掲載ス)


東京商業会議所月報 第八九号・第一一―一二頁 明治三三年一月 【○参照 第五号 明治三十二年十…】(DK210086k-0005)
第21巻 p.498-499 ページ画像

東京商業会議所月報  第八九号・第一一―一二頁 明治三三年一月
 ○参照
第五号
 明治三十二年十二月十二日、衆議院議員選挙法改正ノ義ニ付内閣総理大臣・内務大臣・農商務大臣・貴衆両院議長ヘ提出セシ建議書及請願書ノ全文ハ左ノ如シ
    衆議院議員選挙法改正ノ義ニ付建議(請願)
現行衆議院議員選挙法ハ市部代議権其平衡《(郡カ)》ヲ得ス、選挙ノ区域投票ノ方法等亦宜シキヲ得サルモノアリ、故ニ本会議所ハ本年一月別紙ノ如ク閣下(貴院)ニ建議(請願)セリト雖トモ、不幸ニシテ遂ニ同法ノ改正ヲ見ルニ至ラスシテ止ミシハ本会議所ノ大ニ遺憾トスル所ナリ、今ヤ政府ハ同法改正案ヲ今期議会ニ提出セラルヘシト聞ク、願クハ閣下(貴院)本会議所ノ建議(請願)ヲ採納セラレ、別紙ノ趣旨ニ依リ改正ヲ施サレン事ヲ
右本会議所ノ決議ニ依リ別紙相添此段建議(請願)仕候也
  明治三十二年十二月十二日
            東京商業会議所会頭 渋沢栄一
    内閣総理大臣 侯爵 山県有朋殿
    内務大臣   侯爵 西郷従道殿
    農商務大臣     曾禰荒助殿 (各通)
    貴族院議長  公爵 近衛篤麿殿
 - 第21巻 p.499 -ページ画像 
    衆議院議長     片岡健吉殿
(別紙)
    衆議院議員選挙法改正ノ義ニ付建議(請願) ○前掲(第四一二頁)ニツキ略ス


第九回東京商業会議所事務報告 第九―一〇頁 明治三三年四月刊(DK210086k-0006)
第21巻 p.499 ページ画像

第九回東京商業会議所事務報告  第九―一〇頁 明治三三年四月刊
一衆議院議員選挙法改正ノ義ニ付再応内閣総理大臣・農商務大臣・内務大臣ニ建議、及貴族・衆議両院ニ請願ノ件
 本件ハ東京・大阪・京都・高岡・博多五会議所ヨリ第八回商業会議所聯合会ヘ提出シ其可決ヲ得タルモノニ係リ、其要旨ハ第十四議会ニ於テ衆議院議員選挙法ヲ改正シ、市ヲ独立ノ選挙区ト為シ、郡市人口ノ割合ニ差等ヲ設ケラレンコトヲ、各会議所ヨリ建議・請願スヘシト云フニ在リ、仍テ之ヲ明治三十二年十二月八日第八十八回ノ臨時会議ニ附シタルニ、同年一月二十三日附《(四)》ヲ以テ政府ニ建議シ議会ニ請願シタル趣旨ニ基キ、更ニ建議・請願スルコトヽシ、議長指名ノ委員五名ヲ選挙シ之ニ其起草並提出方及ヒ趣旨ノ貫徹ヲ謀ル為メニ必要トスル一切ノ運動方ヲ委託スルニ決シ、議長ハ左ノ諸君ヲ委員ニ指名セリ
               委員長 大倉喜八郎君
                   中野武営君
                   井上角五郎君
                   横山孫一郎君
                   田口卯吉君
 其後委員ニ於テ建議・請願書ヲ起草ノ上、同年十二月十二日附ヲ以テ左ノ如ク内閣総理大臣・農商務大臣・内務大臣ニ建議、貴族・衆議両院ニ請願セリ、尚運動ノ結果ハ追テ委員ヨリ会議ニ報告アル筈ナリ
   ○建議文・請願文ハ月報所載ノモノト同一ニツキ略ス。
   ○明治三十二年一月九日衆議院議員選挙法改正期成同盟会組織セラレ、栄一ハソノ会長タリ。第二編第二部第六章政治・自治行政中所収「衆議院議員選挙法改正期成同盟会」明治三十二年一月九日ノ条参照。同年一月二十四日、栄一ハ当会議所ヲ代表シテ同件ニツキ建議・請願シタリ。同日ノ条参照。
   ○明治三十二年十月十一日ヨリ東京ニ於テ開カレタル第八回商業会議所聯合会ニハ、東京・大阪・京都・博多・高岡ノ各商業会議所ヨリ同一趣旨ノ選挙法改正案提出セラレ可決セラレタリ。同年十二月十二日各地商業会議所委員等東京商業会議所ニ集合シ、衆議院議員選挙法全国商業会議所聯合委員会ヲ組織ス。大倉喜八郎委員長タリ。本資料第二十二巻所収「商業会議所聯合会」明治三十二年十月十一日ノ条参照。
   ○政府提出ノ衆議院議員選挙法案ハ第十四議会ニ於テ修正可決セラレ、明治三十三年三月ヲ以テ公布セラレタリ。



〔参考〕東京経済雑誌 第四一巻第一〇一五号・第一七〇―一七四頁 明治三三年二月三日 衆議院議員選挙法改正に関して貴衆両院議員諸君に告く(衆議院議員田口卯吉)(DK210086k-0007)
第21巻 p.499-504 ページ画像

東京経済雑誌  第四一巻第一〇一五号・第一七〇―一七四頁 明治三三年二月三日
    ○衆議院議員選挙法改正に関して貴衆両院議員諸君に告く(衆議院議員田口卯吉)
謹て白す、衆議院議員選挙法改正の案既に再び帝国議会の議に付せら
 - 第21巻 p.500 -ページ画像 
れて而して通過せず、今回衆議院を通過したるもの亦未だ完全と云ふべからず、恐くは貴族院を通過する能はざらん歟、本員私に之を惜む故に玆に卑見を開陳して敢て諸君の垂覧を請はざるべからず
蓋し「徴税ある必ず代議の制なかるべからず、代議の制なくして而して租税を徴するは是れ専制なり」とは立憲政治の根本主義なり、昔者英国国君の尚ほ領内の貢租に因りて国費を弁ずるや、未だ嘗て国会を召集せしことあらざる也、戦乱相続き国費増加し、貢租の以て之を弁ずる能はざるに及びて、内には物産税《エキサイス》を興して均く之を王領及諸侯の民に課し、外には噸税及磅税を海関に置きて以て海外貿易を撿束するに及びて、勢ひ諸侯と人民の代表者とを召集して其承諾を得ざるを得ず、是れ英国々会の起源なり、其衆議院議員を選挙するや全国各市・各町・各郡を以て一選挙区となし、各二名の代議士を選挙したり、其の人口の多少を問はざりしなり、当時全国に郡三十七、市町百六十六ありしと云へり、以て市町の代議士の多数なりしを知るべし、抑も何を以て多く市町の代表者を選出したる乎、是れ其新に課する所の物産税海関税の如きは専ら市町の負担に属するものなればなり、爾来市・町・郡の興廃一ならず、加ふるに蘇・愛二国の英国に合するあり、選挙区大に増加せり、然れども市・町・郡を一選挙区となし各二名の代議士を選出するの原則は改正せられしことなし、一八三二年に至り人口二千人以下の町の選挙区を没し、人口四千人以下の町には一人の代議士を選出せしむることとし、新に他の町を加へて選挙区となせり、故に現今大英王国に於ては
 郡の代議士           三七七人
 市町同             二八四八
 大学同               九人
  総計             六七〇人
市町の議員の数二百八十四人に及へり、商工の権伸ふるある知るべきなり、本員は我邦の選挙法亦漸く英国に則らんことに希望せざるを得ず、蓋し我現行の選挙法たる、其選挙区は日爾曼に則りて而して選挙資格を普通選挙とせずして専ら地主に選挙権を与へたるものなり、故に国会開設の初め代議士の政費を節減するや、専ら地租軽減の目的に出でたり、日清戦争の後、其の租税を増徴するや専ら之を消費税に帰せり、其議論豈に偏する所なきを得んや、夫れ衆議院に於て営業税・酒造税・醤油税・印紙税・海関税等の増徴の可決するも、衆議院議員の選挙者中直接に此増徴に因りて損失するもの実に僅々に過ぎず、故に商工者に於ては殆んど代議の制なくして而して徴税せらるゝに均しきなり、其制何ぞ英国が専ら市町の代議士を召集して而して物産税・海関税を増徴したると相反するの甚しきや
政府玆に見るあり、衆議院議員選挙法を改正し、凡ての市を独立区とし、其代議士選出の割合を多くして、以て商工の代表者を増加せんとせり、本員実に其主意を賛成するものなり、然れども其方法たる、大選挙区・単記・無記名の制を採るが為めに、従来連記・記名の争端を発せり、其両院を通過せざる所以のもの専ら之に因るなり、本員素と大選挙を是とせざるものなり、故に第十三議会に於て之を修正せんと
 - 第21巻 p.501 -ページ画像 
欲す、其調査の未了なるを以て之を果さゞりき、何を以て大選挙区を是とせざる乎、請ふ其理由を述べん
 第一 世界の立憲国に於て此の制を行ふものなきを以てなり、或は丁抺上院に此制ありと云ふと雖も、丁抺にも此制なきなり
 第二 此制の利益は選挙の競争と投票の無効とを減じ、名望者をして当選せしむるを得るにありと云ふと雖も、今や各郡・各区皆公民団体ありて、地方的の利益を計るが為めに、此制の下に於ては、各郡・各区凡て候補者を出し、其投票非常に分裂すべきこと灼然たるを以てなり、無効投票の多き知るべきなり
故に本員は原案の主旨に同意を表するものなりと雖も、其大選挙区制を採るに反対するものなり、而して小選挙区制を以て、市を独立区とし、市は人口八万を以て、郡は十万を以て、一人の代議士を選出するときは
 郡の代議士           三〇三人
 市   同            八三人
 島   同             五人
 北海道 同             三人
  総計             三九四人
にして、将来国運の進歩と共に全国に市区増加し、北海道・台湾の諸郡亦代議を出すに至らば、其制甚だ英国の現制に似て而して政治上の整備亦英国の如くならんことを企図したり、日吉倶楽部の諸員之に同意し之を議場に提出したり
       *  *  *  *
此時に当り進歩党は小選挙区制を唱へ、帝国党は中選挙区制を唱へ、自由党は大選挙区制を唱へたりしが、自由・進歩の両党は終に市を独立区とし、郡市共に十万人に付一人の代議士を出すの割合を以て小選挙区を採るに決したり、帝国党は本員等と同意見となりしと雖も、素より小数なるを以て両党に当る能はざるなり、故に衆議院の委員会は終に左の如く決したり
 郡の代議士           三八七人
 市   同            七七人
 島   同             六人
 沖縄  同             二人
  総計             四七八人
故に其結果衆議院議員の数非常に増加し、現今の衆議院の家屋は之を容るゝ能はざるのみならず、他日市区増加し、北海道・台湾等も亦人口に応じ代議士を出すに至らば其数非常の多数とならん、政府及び貴族院議員諸氏素より之に同意せさるべし、故に之を否決し、両院協議会に於て各々其意見を固守して譲らざれば、衆議院議員選挙法の行はれざること本期も亦前期の如くならんのみ
       *  *  *  *
玆に於て選挙法改正に反対するもの俄に増加せり、是れ小選挙区を以て人口を配当するときは、郡市の差著明となりしを以てなり、其言に
 - 第21巻 p.502 -ページ画像 
曰く、市に於ては人口二万五千人にして一人の代議士を選出し、郡に於て十四万人にして一人の代議士を選出するは、是れ郡部住民の人権を無視するものなり」と、是れ平等を重んじ公平を貴ぶの精神に出づるものなりと雖も、実は各国選挙法の事例に通ざるに職由するものなり、本員は此議論は他日諸政党をして市の独立をも否決せしめ永遠に選挙法改正を中止するの源因たらんことを恐る、故に玆に十分に其誤謬を示摘せざるを得ざるなり
蓋し人口を以て代議士選出の標準とすることは普通選挙の場合に於て論ずべきの議論なり、制限選挙の場合に於ては、実は選挙人の数を標準として、選挙区を区画するを至当とす、何となれば制限選挙に於ては凡ての人口を認めたるものにあらざればなり、而して普通選挙の国に於ても、決して精密に人口を標準として選挙区を作るものあらざるなり
独逸帝国は普通の選挙を行ふの国なり、其の選挙区の人口を調査するに左の如し
 一選挙区にして人口六万人以下          四区
 同        六万乃至八万        二七区
 同        八万乃至十万        七二区
 同        十万乃至十二万      一一六区
 同        十二万乃至十四万      九一区
 同        十四万乃至十六万      四一区
 同        十六万以上         四六区
  総計                   三九七区
此選挙区を以て各一人の代議士を選挙し合計三百九十七人の代議士を選出することとなり、或は六万以下あり、或は十六万以上あり、其差亦大ならずや
仏国も亦普通選挙を行ふの国也、此国に於ては三百六十二区のアロンヂツシマンあり、一アロンヂツシマンの人口非常に不平等にして各一人の代議士を選出し、其人口十万人以上に上るものは之を二区若くは其以上の選挙区に分割して、各区に一人を選出するの制を採れり、故に各区の人口亦平等なるを得ざるなり
唯々最も平等に人口を標準とせるが如きは合衆国なり、此国に於ては毎十年に国勢調査を行ひ、其人口の多少に因りて各州選出の代議士の数を定め、各州は其州の法律を以て此代議士を選出するものなり、現今の制は人口十七万三千九百人に付一人の代議士を出すことなり、然れども各州選挙法を異にし其区画一ならず、故に一選挙区の人口に対すれば決して平等なることを得ざるなり
抑も普通選挙を行ふの国と雖も、一選挙区の人口の不平等なること大約以上の如し、況んや制限選挙を行ふの国に於てをや、英国に於ては人口二千人以上四千人以下の町に於ても亦一人の代議士を選出するの制なること既に説けるが如し、而して澳国の制は左の如し
 土地所有者選出代議士             八五人
 都市選出代議士               一一八人
 商業会議所選出代議士             二一人
 - 第21巻 p.503 -ページ画像 
 村落選出代議士               一二九人
  合計                   三五三人
其選挙区を四種とす、第一、村落地方、是れ五百人に一人の選挙人を選挙し、此選挙人相寄りて代議士を選挙するものなり、第二、都市、第三、都市の商業会議所、第四、大土地所有者、其所有地の地方に従ひ五十フロリン乃至二百五十フロリンの納税の差あり、尚ほ我邦多額納税者の制の如し、其後一八八二年及一八九六年の改正に因り、現今代議士の総数四百二十五人なりとす
伊太利の制亦制限選挙なり、其代議士の数五百八人にして之を五百八区より選出す、蓋し人口五万七千人に付一人を出すの法なり、然れども一選挙区の人口同一ならず、如何ぞ平等と云ふを得んや
故に制限選挙の国は勿論普通選挙を行ふ国と雖も人口を以て唯一の標準となすものあらざるなり、若し夫れ行政区域を無視し、町村を割き一家族をも分つことを厭はざれば、公平に人口に準して選挙区を区画するを得べし、然れども天下未だ行政区画を無視して選挙区を立つるの国あらざる也、制限選挙を行ふの国に於て宜く標準と為すべきは人口にあらずして選挙人の数なり、然れども制限選挙を行ふの国と雖も未だ選挙人の数に応して選挙区を確定するものあらざるなり、何となれば之より貴きものあればなり、何ぞや徴税せらるゝものゝ代表者をして其税を払ふことを承諾せしむること立憲政治の根本主義なればなり、我邦将来地租の増減復た議すべきなし、而して大に増減すべきもの実に関税・物産税等に存ず、然らば則ち商工者の代表者を増加し、之をして審議せしむること条理の至当なるものならずや、本員敢て之を増すこと英国若くは澳国の如くせんと希望するにあらず、其総数僅に八十六人に過ぎざりしなり
       *  *  *  *
然れども今や各々其信ずる所を固守するの時にあらず、成るべく相譲りて以て其目的の大なるものを達すべきなり、本員の見る所を以てするに上下互に相譲るべきもの左の如し
 一 政府及貴族院は宜く小選挙区制を採ることに於て譲るべし
 一 衆議院郡部議員は宜く人口十万を譲りて十二万人に付一人を出すことゝなすべし
 一 衆議院市部議員は宜く其八万を譲りて十二万人に付一人を出すことゝなすべし
 一 政府及び両院は宜く単記・連記、記名・無記名等の点に於て深く相争はざるべし
本員素と単記無記名論を主持するものなり、然れども既に小選挙区とならば、単記連記復た争ふべき程の要なし、無記名は本員の宿論なり然れども今や府県会議員選挙の弊を受けて輿論大に之に反対せり、此時に当り之を争ひて大目的を達することを遅延すべきにあらず、故に本員亦た大に譲るものなり
本員の衆議院議員選挙法改正に於て希望する所は単に市の独立に止まるにあらず、実は選挙資格を平等にせんと欲するにあるなり、今や選挙権は地主に於ては殆んど普通選挙に近きまでの下等に及べり、而し
 - 第21巻 p.504 -ページ画像 
て他の財産家に於ては中等以上にあらざれば之を有すことなし、是れ畢竟直接国税を以て標準となすの誤謬に出づるものなり、本員之を平等にせんことを希望す、而して未だ之を発議するの機会に接せざるを惜むなり、然れども徒に歳月を消して政治改善の目的を達するの速かならざるは遺憾の至なり、故に本期に於て全国各市の独立丈けを通過するを希望するものなり、是れ敢て卑見を開陳して尊厳を冒す所以なり 頓首再拝



〔参考〕東京経済雑誌 第四一巻第一〇一九号・第三七四―三七七頁 明治三三年三月三日 ○選挙法の改正成れり(DK210086k-0008)
第21巻 p.504-508 ページ画像

東京経済雑誌  第四一巻第一〇一九号・第三七四―三七七頁 明治三三年三月三日
    ○選挙法の改正成れり
衆議院議員選挙法の改正に対する貴衆両院の意見は、殆ど氷炭相容れさるまでに反対の結果を呈せしが、憲政党其の他の政府党の大譲歩に依りて、両院協議会に於て成案成立し、而して両院は之を承認し、玆に選挙法の改正は全く成れり
去月十九日衆議院が選挙法改正案に対する貴族院の修正に同意せさることに決し、両院協議会の開会を請求し、其の委員を十名と決するや近衛貴族院議長は、侯爵黒田長成・子爵堀田正養・松岡康毅・松平正直・男爵小沢武雄・男爵船越衛・男爵南岩倉具威・三崎亀之助・田中源太郎・早川周造の十氏を委員に指名し、而して黒田侯は委員長に、堀田子は副委員長に互選せられたり、又片岡衆議院議長は、高梨哲四郎・星亨・加藤政之助・西原清東・利光鶴松・内藤正義・竜野周一郎工藤行幹・江藤新作・東良三郎の十氏を委員に指名し、而して星氏は委員長に、工藤氏は副委員長に互選せられたり
斯くて両院の委員は別々に委員会を開きて協議に関する内相談を遂げ而して後ち全委員協議室に会したるに、二十名の委員にて討論するに於ては容易に結了せさるべしとて、先つ特別委員を選定して協議を遂けしむることに決し、双方より各三名宛を出し、之に委員長二名を加へ、都合八名の特別委員相会して、左の如き成案を起草せり
 第八条 貴族院議決案の通、即ち左の如し
  第八条 左の要件を具備する者は選挙権を有す
   一 帝国臣民たる男子にして年齢満二十五年以上の者
   二 選挙人名簿調製の期日前満一年以上其の選挙区内に住所を有し仍引続き有する者
   三 選挙人名簿調製の期日前満一年以上地租十円以上、又は満二年以上地租以外の直接国税十円以上、若は地租と其の他の直接国税とを通じて十円以上納め仍引続き納むる者
   家督相続に依り財産を収得したる者は其の財産に付被相続人の為したる納税を以て其の者の納税したる者と看做す
 第百六条 削除
 第百十四条 削除
 一左の諸条は貴族院議決案(政府案の通)
  第五条・第六条・第十四条・第十六条・第十八条・第二十条乃至第二十二条・第二十四条乃至第二十七条・第三十二条・第三十六条・第卅八条・第三十九条・第四十二条乃至第四十六条・第六章及
 - 第21巻 p.505 -ページ画像 
第七章全部・第七十条乃至第七十二条・第七十八条・第八十二条第八十六条・第八十七条・第八十九条乃至第九十二条・第九十四条・第九十六条・第百条・第百七条・第百八条・第百十三条
 一別表は別紙の通改む、但し北海道・沖縄県は政府案通
             (北海道庁及沖縄県は両院協議会の議題とならざるを以て本表中之を省く)

      東京市      十一人
 東京府
      郡部(伊豆七島とも)五人
      京都市       三人
 京都府
      郡部        五人
      大阪市       六人
 大阪府  堺市        一人
      郡部        六人
      横浜市       一人
 神奈川県
      郡部        六人
      神戸市       二人
 兵庫県  姫路市       一人
      郡部       十一人
      長崎市       一人
 長崎県  郡部        六人
      対島        一人
      新潟市       一人
 新潟県
      郡部       十三人
 埼玉県            九人
      前橋市       一人
 群馬県
      郡部        六人
 千葉県            十人
      水戸市       一人
 茨城県
      郡部        九人
      宇都宮市      一人
 栃木県
      郡部        六人
      奈良市       一人
 奈良県
      郡部        四人
      津市        一人
 三重県  四日市市
                七人
      郡部
      名古屋市      二人
 愛知県
      郡部       十一人
      静岡市       一人
 静岡県
      郡部        九人
      甲府市       一人
 山梨県
      郡部        四人
      大津市       一人
 滋賀県
      郡部        五人
 岐阜県  岐阜市       一人
 - 第21巻 p.506 -ページ画像 
      郡部        七人
      長野市       一人
 長野県
      郡部        九人
      仙台市       一人
 宮城県
      郡部        六人
 福島県            八人
      盛岡市       一人
 岩手県
      郡部        五人
      弘前市       一人
 青森県  青森市
                四人
      郡部
      山形市       一人
 山形県  米沢市       一人
      郡部        六人
 秋田県            六人
      福井市       一人
 福井県
      郡部        四人
      金沢市       一人
 石川県
      郡部        五人
      富山市       一人
 富山県  高岡市       一人
      郡部        五人
 鳥取県            三人
      松江市       一人
 島根県  郡部        五人
      隠岐        一人
      岡山市       一人
 岡山県
      郡部        八人
      広島市       一人
 広島県  尾道市
                十人
      郡部
      赤間関市      一人
 山口県
      郡部        七人
      和歌山市      一人
 和歌山県
      郡部        五人
      徳島市       一人
 徳島県
      郡部        五人
      高松市       一人
 香川県  丸亀市
                五人
      郡部
      松山市       一人
 愛媛県
      郡部        七人
      高知市       一人
 高知県
      郡部        五人
 - 第21巻 p.507 -ページ画像 
      福岡市       一人
      久留米市
 福岡県
      門司市       十人
      郡部
 大分県            六人
      佐賀市       一人
 佐賀県
      郡部        五人
      熊本市       一人
 熊本県
      郡部        八人
 宮崎県            四人
      鹿児島市      一人
 鹿児島県 郡部        七人
      大島        一人
 総計         三百六十九人
      市       六十一人
      郡     二百九十七人
    内 島嶼        三人
      北海道       六人
      沖縄        二人

更に右成案の要旨を摘記すれば左の如し
 一市は人口三万以上を独立選挙区とす
 一市郡通じて人口十三万人に付議員一人を選出す、以下四捨五入とす
 一大選挙区にして単記無記名とす
 一選挙立会人は選挙会長の指名とす
 一選挙人は年齢二十五歳以上、納税十円以上
 一被選挙人は年齢三十歳以上、納税制限なし
此の成案を原案として協議会を開きたるに、出席委員は議長星氏を除き十九名にして、内十九名《(四)》は成案に賛成し、五名は反対せり、即ち九名の多数にて成案は協議会を通過せり、而して反対者は重もに進歩党にして、該党を代表して協議会に出席せし工藤氏は、衆議院決議の条項は一も譲るべからずと主張し、若し之を譲らざるが為に改正案の不成立を見るに至るも敢て辞する所にあらずと痛論せしかば、政府党は協議会成案の議院を通過すると否とを以て党の死活問題と為し、即ち党議として之に賛成することに決し、星氏は我が党代議士にして党議に反せん乎、吾党は此の際唯涙を揮ひて其の政友と交を絶つの一断あるのみと恐迫し、而して議場に於ける歩調を一にする為め、特に各部に一名宛の臨時委員を置き、院内総理・院内幹事と相呼応して成案の通過を謀ることに決し、会議の当日(二月廿三日)は衆議院予算委員室に於て臨時総会を開き、指名点呼を以て勢揃を為し議場に出席し、帝国党の代議士も協議会の成案を通過せしむる為に尽力し、政府は伊藤侯までを招き来りて運動せり
斯くて衆議院に於ては星氏協議会の結果を報告し、江藤新作・島田三郎の二氏反対演説を為し、佐々友房氏簡単に賛成演説を為し、而して
 - 第21巻 p.508 -ページ画像 
記名投票を以て採決したるに、百二十六に対する百五十一の多数を以て、成案を承認することに決したり、貴族院に於ては黒田侯協議会の結果を報告し、谷子反対演説を為し、末松男賛成演説を為し、而して採決したるに多数にて成案を承認することに決し、玆に選挙法改正案は成立し、御裁可を奏請することとはなり、抑々選挙法改正の目的は議院改革に至り、今回の改正案は果して議院改革の目的を達すべきや否や、請ふ更に題を改めて観察する所あらん



〔参考〕東京経済雑誌 第四一巻第一〇一九号・第三七七―三七八頁 明治三三年三月三日 ○選挙法改正の結果如何(DK210086k-0009)
第21巻 p.508-509 ページ画像

東京経済雑誌  第四一巻第一〇一九号・第三七七―三七八頁 明治三三年三月三日
    ○選挙法改正の結果如何
衆議院議員選挙法改正の目的は種々ありと雖も、其最大要点は現行法の大欠点たる地主代表者の過多を矯正する為に、商工業者の代表者を増加し、以て徴税せらるゝものゝ代表者をして其の租税を支払ふことを承諾せしむると云へる立憲政治の根本主義を貫徹するに在り、先つ此の点に関して帝国議会を通過せし改正案は、如何なる結果を呈すべきやを見るに、市の議員は合計六十一人にして、現今に比し四十三人を増加し、郡の議員は合計二百九十七人にして、現今に比し十五人を増加すべし、而して此の外に北海道・沖縄県及び諸島の議員合計十一人あり、其の内北海道の区の議員は、市の議員に準すべきものにして其の他の議員は郡の議員に準すべきものたるを以て、之を加ふる時は市の議員は六十四名となりて四十六名を増加し、郡の議員は三百五人となりて二十三人を増加すべし、即ち市の議員の増加の割合は、郡の議員の増加の割合より強きを以て、多少此の目的を達するを得べしと雖、市の議員は郡の議員に圧せらるべきこと依然たるべし、唯々市の議員にして勉めて政党に加入することを避け、中立を守りて決票を有し、以て政党の暴横を制すべきのみ、而して市の独立選挙区を人口三万人以上に制限したるが為め、郡に合せらるべき市は全国五十一市中左の十一市なりとす
 若松・青森・秋田・四日市・尾道・久留米・丸亀・門司
余輩は衆議院議員の増加を希望するものなり、然れども衆議院修正案の如く四百七十八人と為すに於ては、其の過多なることを非難せざるべからず、而して貴族院は之を削減して三百三十七人と為したりしが貴衆両院を通過せし改正案に拠れば三百六十九人となれり、蓋し適当の増加と謂ふべきなり、然れども三万以下の市をして独立の選挙区と為し、更に議員十一人を増加せんことを希望せざるべからざるなり
改正案に於て政府の原案を復活し、大撰挙区単記無記名の制を執りたるは、要するに現行府県制の選挙法を拡張せるものにして、其の弊害の測るべからざるものあることは、昨秋に於ける府県会議員の総選挙に徴するも疑ふべからず、余輩は大選挙区に於ては其の投票法は聯記よりは単記を主張すべしと雖も、大選挙区其のものに反対せざるべからず、田口代議士嘗て大選挙区の制に反対して曰く
 第一、世界の各立憲国に於て此の制を行ふものなきを以てなり、或は丁抺国の上院に此の制ありと云ふと雖、同国にも之なきなり
 第二、此の制の利益は選挙の競争と、投票の無効とを減じ名望家を
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して当選せしむるを得るに在りと云ふと雖も、今や各郡各区公民団体ありて、地方的の利益を図るが為に、此の制の下に於ては、各郡各区凡て候補者を出し、其の投票非常に分裂すべきは灼然たるを以てなり、無効投票の多き知るべきなり
政府及び貴族院が斯る新制を試みんとするは深く怪むに足らずと雖も直接に選挙の利害を感すべき憲政党が之に賛成したるは軽挙なり、無暴なりと謂はざるべからず、其の後悔すべき日あるや知るべきのみ