デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第21巻 p.514-522(DK210089k) ページ画像

明治33年3月7日(1900年)

是ヨリ先当会議所、第八回商業会議所聯合会ノ議決ニ係ル、外国人ヲシテ土地所有権及ビ鉱山開掘権ヲ享有セシムルノ儀ニ就キ、委員会ヲ設ケテ調査中ナリシガ、是日ノ会議ニ於テ委員会報告通リ意見書ヲ可決シ、貴衆両院議員並ニ各地商業会議所等ニ配布ス。栄一調査委員長タリ。


■資料

渋沢栄一 日記 明治三二年(DK210089k-0001)
第21巻 p.514 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三二年     (渋沢子爵家所蔵)
十二月八日 曇
○上略 午後四時商業会議所臨時会開ク、午後八時散会 ○下略


東京商業会議所月報 第八九号・第三頁 明治三三年一月 【○明治三十二年十二月…】(DK210089k-0002)
第21巻 p.514-515 ページ画像

東京商業会議所月報  第八九号・第三頁 明治三三年一月
○明治三十二年十二月八日、本会議所ニ於テ第八十八回臨時会議ヲ開ク、当日ノ出席者左ノ如シ
 星野錫君 ○外十九名氏名略
午後五時四十分開議、渋沢会頭意見アリテ議席ニ着キ、副会頭大倉喜八郎君議長トナリ、左ノ件々ヲ議事ニ付シ、午後六時閉会ス
○中略
 一第八回商業会議所聯合会決議事項処分ノ件 (役員会議提出)
本件ハ全会一致ヲ以テ原案ノ如ク可決シ、尚処分事項中 ○中略 外人ニ鉱山開掘・土地所有ノ権ヲ許スノ件ノ委員九名ハ議長ニ指名ヲ依託スルニ決シ、議長ハ左ノ如ク指名セリ(決議事項ノ全文ハ参照ノ部第二号ニ掲載ス)
○中略
   外人ニ土地所有・鉱山開掘ヲ許スノ件調査委員
                   末延道成君
                   井上角五郎君
                   吉田幸作君
                   田中平八君
                   朝吹英二君
 - 第21巻 p.515 -ページ画像 
                   渋沢栄一君
                   梅浦精一君
                   若宮正音君
                   尾崎三良君


東京商業会議所月報 第八九号・第一〇―一一頁 明治三三年一月 【○参照 ○第二号 明治三十二年十…】(DK210089k-0003)
第21巻 p.515 ページ画像

東京商業会議所月報  第八九号・第一〇―一一頁 明治三三年一月
 ○参照
○第二号
 明治三十二年十二月八日、第八十八回臨時会議ノ可決ヲ経タル第八回商業会議所聯合会決議事項処分ノ件、全文ハ左ノ如シ
○中略
一外人ニ鉱山ヲ開掘シ得ルノ権及ヒ土地ヲ所有シ得ルノ権ヲ許ス件
                        (東京提出)
 本件ハ九名ノ委員ヲ選挙シ之ニ其調査ヲ附託スル事


東京商業会議所月報 第八九号・第四頁 明治三三年一月 【○同月 ○明治三二年…】(DK210089k-0004)
第21巻 p.515 ページ画像

東京商業会議所月報  第八九号・第四頁 明治三三年一月
○同月 ○明治三二年一二月十二日午後四時、本会議所ニ於テ外人ニ土地所有・鉱山開掘ヲ許ス件調査委員会議ヲ開キ、委員長ヲ選挙セシニ、其結果左ノ如クニテ、午後五時十分閉会ス
               委員長 渋沢栄一君


渋沢栄一 日記 明治三三年(DK210089k-0005)
第21巻 p.515 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三三年     (渋沢子爵家所蔵)
二月四日 曇
此日ハ休日ナルヲ以テ、終日家ニ在テ病ヲ静養ス、蓋シ昨日来風邪気ナルニヨレルナリ
二月五日 曇
此日モ風邪愈ヘサルヲ以テ、医師ヲ招キ診察セシメ、服薬シテ治療ヲ勉ム ○下略
二月六日 晴
病未タ愈ヘサルヲ以テ、平臥療用ス、諸方ヨリノ来状モ回答ヲ発スル能ハス、終日褥中ニ在テ薬餌ニ勉ム


東京商業会議所月報 第九一号・第一頁 明治三三年三月 【○同月 ○二月六日午…】(DK210089k-0006)
第21巻 p.515 ページ画像

東京商業会議所月報  第九一号・第一頁 明治三三年三月
○同月 ○二月六日午後四時三十分、本会議所ニ於テ委員会議ヲ開キ、外人ニ土地所有・鉱山開掘ヲ許スノ件ヲ審議シ、午後六時閉会ス


東京商業会議所月報 第九二号・第六三頁 明治三三年四月 【○同月 ○三月二日午…】(DK210089k-0007)
第21巻 p.515 ページ画像

東京商業会議所月報  第九二号・第六三頁 明治三三年四月
○同月 ○三月二日午後五時三十分、本会議所ニ於テ委員会議ヲ開キ、外人ニ土地所有・鉱山開掘ヲ許ス件ヲ審議シ、午後六時二十分閉会ス


渋沢栄一 日記 明治三三年(DK210089k-0008)
第21巻 p.515-516 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三三年     (渋沢子爵家所蔵)
三月二日 曇
○上略 四時商業会議所役員会ヲ開ク ○下略
  ○中略。
 - 第21巻 p.516 -ページ画像 
三月七日 晴
此日ハ商業会議所臨時会当日ナルモ、風邪ノ為出席ヲ謝絶ス


東京商業会議所月報 第九二号・第六〇―六一頁 明治三三年四月 【明治三十三年三月七日…】(DK210089k-0009)
第21巻 p.516 ページ画像

東京商業会議所月報  第九二号・第六〇―六一頁 明治三三年四月
明治三十三年三月七日、本会議所ニ於テ第八十九回臨時会議ヲ開ク、当日ノ出席者左ノ如シ
 末延道成君 ○外二十四名氏名略
午後五時四十五分開議、渋沢会頭事故アリ欠席ニ付、副会頭大倉喜八郎君議長席ニ着キ、左記ノ件々ヲ議事ニ附シ午後七時二十五分閉会ス
○中略
 一外国人ニ土地所有並ニ鉱山開掘ヲ許スノ件調査報告
                        (委員提出)
本件ハ外国人ニ土地所有並ニ鉱山開掘ヲ許スノ件調査委員長ノ報告ニ係リ、其要旨ハ、外国人ニ土地所有・鉱山開掘ノ権利ヲ享有セシムルハ国交際ノ通義ニシテ且ツ経済上最モ必要ト信スルニ依リ、此際本会議所ノ意見ヲ定メテ発表シ大ニ輿論ヲ喚起スヘシト云フニ在リ、審議ノ末之ヲ可決ス(報告書ノ全文ハ参照ノ部第二号ニ掲載ス)


東京商業会議所月報 第九二号・第六五―六九頁 明治三三年四月 【○参照 ○第二号 明治三十三年三…】(DK210089k-0010)
第21巻 p.516-520 ページ画像

東京商業会議所月報  第九二号・第六五―六九頁 明治三三年四月
 ○参照
○第二号
 明治三十三年三月七日、第八十九回臨時会議ノ可決ヲ経タル外国人ニ土地所有並鉱山開掘ヲ許スノ件調査報告ノ全文ハ左ノ如シ
    外国人ニ土地所有並ニ鉱山開掘ヲ許スノ件調査報告
兼テ全会ヨリ附託セラレタル外国人ニ土地所有並ニ鉱山開掘ヲ許スノ件遂審議候処、本委員ハ外国人ヲシテ此種ノ権利ヲ享有セシムルハ国交際ノ通義ニシテ且ツ経済上最モ必要ト信スルニ付、本会議所ニ於テハ別紙ノ通リ意見ヲ定メ、此際先ツ之ヲ世間ニ発表シ輿論ヲ喚起候方可然ト議決致候、此段及御報告候也
  明治三十三年三月二日
       外国人ニ土地所有並ニ鉱山開掘ヲ許スノ件
                調査委員長 渋沢栄一
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿
(別紙)
    外国人ヲシテ土地所有権及鉱業権ヲ享有セシムルヲ可トスル義ニ付東京商業会議所ノ意見
我国今ヤ開国進取ノ国是ニ基キ、対等ノ条約ヲ締結シテ内地ヲ開放シタル以上ハ、私権ノ上ニ内外ノ区別ヲ設クルコトナク、苟モ国権ノ運用ニ妨ナキ限リハ、邦人ト同様ノ私権ヲ外人ニ与フルヲ以テ至当トス然ルニ我現行法ニ於テ土地私有権及鉱業権ヲ外人ニ享有セシムルヲ許サヽルハ果シテ如何ナル理由ニ基クヤ、蓋シ此種ノ権利ヲ内国人同様外国人ニモ許与スルハ今日世界国交際ノ通義ニシテ、今試ニ欧洲文明国ノ実例ヲ見ルニ概ネ之ヲ外国人ニ許与セサルハナシ、何ソ独リ我国ニ於テノミ之ヲ否認スルノ要アランヤ、況ンヤ彼ニ之ヲ許与スルモ我
 - 第21巻 p.517 -ページ画像 
ニ於テ些ノ損害ヲ蒙ルナク、却テ其便益ヲ受クルコト尠少ナラサルニ於テオヤ
顧フニ我国ノ産業ハ近年長足ノ進歩ヲ為セリト雖モ、今後尚ホ起スヘキノ事業頗ル多シ、然ルニ生産ノ最大要素タル資本ノ欠乏ニ苦ムハ我国現時ノ状態ニシテ、近来外資輸入ノ必要益々急ヲ告クルニ至レルハ世人ノ普ク認ムル所ノ事実ナリ、然レトモ一方ニ障壁ヲ設ケテ徒ニ外資ノ輸入ヲ期スルモ到底能クシ得ヘキニアラス、苟モ之ヲ招致セント欲セハ宜シク先ツ其障壁ヲ撤去シ、内外資本共通ノ途ヲ開クコト肝要ナリ、而シテ土地私有権及鉱業権ヲ許スハ此障壁ヲ撤去シ、外国人ヲシテ安ンシテ営業ニ従事セシメ、其資本ヲ我内地ノ諸業ニ放下セシムル所以ノ捷径ナリトス
但外国人ニ土地私有権及ヒ鉱業権ヲ享有セシムルニ当リ、施政ノ便否ニ鑑ミ緩急宜シキヲ制シテ取捨撰択スル所アルカ如キハ固ヨリ当局者ノ任ニ在ルヘシト雖モ、要スルニ本会議所ハ其実行ノ一日モ速ナランコトヲ切望スルモノナリ
  明治三十三年三月二日

(参考書)
    外国人土地所有権及鉱業権ニ関スル欧洲諸国ノ規定
 仏蘭西
 (一) 今日仏国ニ於テハ外国人ト雖モ全ク仏国人ト同様不動産ヲ所有スルコトヲ得、民法第三条ハ之ヲ明言セスト雖モ明カニ此原則ヲ認メ、今日ニ於テ何人ト雖モ之ヲ疑フ者ナシ
     然レトモ外国人カ仏国ニ於テ所有スル不動産ハ常ニ仏国法ニ於テ支配セラルヽモノトス(民法第三条)故ニ外国人ハ其不動産ノ上ニ仏国法ノ認メサル物権及封建的権利ノ如キモノヲ設定スルコトヲ得ス、若シ外国人ニシテ仏国ニ於テ所有スル不動産上ノ権利ヲ移転セント欲スルトキハ実質上ノ条件ニ関シテハ仏国法ニ適合スル行為ニ依リテ之ヲ為サヽルヘカラス(一千八百八十二年十二月廿四日法律)
     其他外国国家ニ関シテハ疑問ヲ留保セサルヘカラス、即チ外国君主或ハ外国国家カ仏国ニ於テ不動産ノ所有者タルコトヲ得ルヤ否ヤノ問題ハ議論アル所ナリ(一般ニ積極説ヲ認メリ、一千八百九十三年国際私法雑誌第二百八十九頁「レネー」所説、一千八百九十四年国際私法雑誌第八百四十三頁「カツチル」大審院報告ヲ参照スヘシ)
 (二) 現ニ効力ヲ有スル一千八百十年四月廿一日公布ノ法律第十三条ニ依レハ「外国人ハ仏国ニ帰化セサル者ト雖トモ鉱業ノ特許ヲ受クルコトヲ得」ト規定セリ、而シテ此規定ハ仏国内ニ住所ヲ有セサル外国人ニモ之ヲ適用スルコトヲ得ヘシ、如何トナレハ、法律ハ特ニ是等ノ外国人ヲ除外スルコトナケレハナリ
     要スルニ鉱山ノ所有権ニ関シテハ外国人ハ内国人ト同一ニ取扱ハルヽモノトス
 英吉利
 (一) 聯合王国内ニ於テハ不動産ノ所有ニ関シ内国人ト外国人トノ
 - 第21巻 p.518 -ページ画像 
間ニ何等ノ差別ヲモ設クルコトナシ(一千八百七十年帰化条例第二節)
 (二) 外国人ハ聯合王国内ニ於テ鉱山及鉱区ヲ所有スルコトヲ得
 独逸
 (一) 独逸国ニ於テハ外国人ノ不動産所有ニ関スル一般ノ規定ナシ普国ニ於テハ往時外国人ノ土地所有権ニ関スル所得能力ヲ制限シタル此規定ハ現今既ニ廃止ニ帰シ、目下尚ホ有効ナルハ単ニ一千八百四十六年三月四日公布ノ法律ノミ、此法律ニ依レハ外国会社及其他ノ外国法人ハ国王ノ認許ヲ受ケタルトキニ限リ普国内ノ土地ヲ所有スルコトヲ得ルモ、其認許ヲ得サル以上ハ土地ノ取得ニ関スル行為ハ総テ無効トス、此法律ノ規定ヲ除クノ外現今普国内ノ土地所有権ノ取得ニ関シテハ外国人ハ内国人ト同一ノ権利ヲ有ス
     内国ノ土地ヲ所有スル外国人ハ土地所有ニ係ル義務ヲ負フヘキコト素ヨリ論ヲ俟タス、最モ地区長ノ職務《クーツフオールステーヘル》(普国郡制ニ依リ町村区画ニ属セサル独立ノ地区ノ所有者ニ附与シタル公ノ権利義務)ノ如キ内国人ニ限リ履行スルコトヲ得ヘキ義務ノ履行ニ関シテハ、外国人タル土地所有者ハ其職務ヲ行フニ適当ナル代理人ヲ置クコトヲ要ス、若シ之ヲ置カサルトキハ所有者ノ費用ヲ以テ官庁ヨリ代理人ヲ任命スルモノトス、又土地所有権ニ聯結セル選挙権ハ仮令代理人ヲ以テスルモ外国人タル者ハ之ヲ行使スルコトヲ得ス
 (二) 鉱業ヲ営ム土地及鉱物ノ存在スル土地ノ取得ニ付テハ外国人ニ対シ一般ノ土地取得ニ関スルモノヽ外何等ノ制限ヲモ設クルコトナシ、鉱業権ニ関シテハ一千八百六十五年六月二十四日公布ノ普国鉱業法ヲ以テ内外国人ノ権利ヲ同等トストノ主義ヲ全然実行シタリ、此法律ハ明カニ発見者ニ特権アリトスル鉱業自由ノ原則ニ依ルモノニシテ何人ト雖モ(故ニ外国人モ亦)法律ノ規定ニ従ヒ公ノ道路・場所・鉄道及墓地ヲ除クノ外如何ナル土地ニ在リテモ(他人ノ所有ニ在リテモ家屋敷地及其接近地ヲ除クノ外其所有者ニ損害ヲ賠償スルトキハ)鉱物ヲ捜索シ(試掘)及其発見ヲ為シタル土地ニ於テ所謂鉱業所有権ノ附与ヲ請求スル権利(採掘)ヲ有スルモノトス、而シテ其請求アリタルトキハ鉱山局ハ外国人ニ対シテモ内国人ト同様ノ条件ヲ以テ之ヲ許可セサルヘカラス、玆ニ所謂鉱業所有権ハ土地所有権ト混同スヘカラス、即チ鉱業所有トハ其許可状ニ記載シアル鉱物ヲ一定ノ場所ニ於テ搬出取得シ、且ツ之ニ必要ナル営造物ヲ建設シ、及必要ノ場合ニハ土地ノ所有者ニ対シテ法律ニ規定シタル賠償ヲ払ヒ其土地ノ譲渡ヲ要求スル等ノ権利ヲ云フモノトス、此等各種ノ点ニ付法律ハ内外国人間ニ何等ノ区別ヲ設サルノミナラス、実際上ニ於テモ亦普国鉱山局ハ前述ノ意義ニ於ケル鉱業所有権ヲ取得スルニハ、外国人ノ会社ト雖トモ別ニ国王ノ許可ヲ要セサルモノト認メ、唯タ会社カ土地其物ヲ取得セント欲スル(但シ土地其物ヲ取得スハ通常鉱業上自然ノ結果タリト雖トモ)場合ノミニ限リ右ノ許可ヲ受クルヲ要スルコトヽナシ居ルナリ
     又鉱山営業就中鉱山局又ハ工夫トノ関係ニ付テモ普国法律ハ
 - 第21巻 p.519 -ページ画像 
内外国人ノ間ニ何等ノ区別ヲ設ケス、只玆ニ注意スヘキコトハ外国人タル工夫鉱業上ノ災害ニ遭遇シテ死亡シタルトキハ其遺族ハ保険金ノ交附ヲ受クヘシト雖トモ、災害ノ当時内国ニ住居セサル遺族ハ一千八百八十四年七月六日公布ノ災害保険法第六条第三項ニ従ヒ、其交付ヲ請求スルノ権利ヲ有セサルコト是ナリ
 伊太利
 (一) 伊国ニ於テハ不動産ノ所有ニ付内外国人間何等ノ区別アルコトナシ、外国人モ全ク伊国人同様伊国法律ニ従ヒ不動産ヲ取得・買売・譲与・相続スルヲ得ヘシ、此事ニ関シテハ別ニ積極的ノ明文ナシト雖トモ、民法第三条ニ於テ外国人ハ内国人同様凡テノ私権ヲ享有スト規定シアリテ、之ニ反対ノ法文ナキヲ以テ之ヲ観レハ、外国人ハ内国人同様不動産所有権ヲ有ストノ結論ヲ生スヘキモノニシテ、是レ民法編纂関係書類ニ依ルモ明ナル所、且学説・判決例共ニ此点ニ就テ一致セリ
 (二) 鉱山又ハ鉱区ノ所有権ニ関シテモ亦外国人ハ内国人ト全ク同等ノ権利ヲ有シ、之ニ関シテハ一千八百五十九年十一月二日発布ノ鉱業法第三十八条ニ於テ、内外人ヲ論セス法定ノ条件ヲ充スニ於テハ鉱業免許ヲ受クルヲ得ヘキ旨ヲ明定セリ、最モ該法律ハ伊国一統前ニ制定セラレタルモノニシテ伊国全体ニ於テ効力ヲ有スルモノニ非サレトモ、其効力ヲ有セサル地方ニ於テモ、外国人ハ民法第三条ノ効果ニ依リ内国人同様鉱山鉱区所有権ヲ有スルコト学説判決例共ニ一致セリ
 丁抹
 (一) 不動産ノ所有ニ就テハ内外国人ノ間ニ何等ノ差別ナシ
 (二) 外国人モ鉱山又ハ鉱区ヲ所有スルコトヲ得
 澳地利
     澳国ニ於テハ外国人ハ一般ニ内国人ト同様ノ民法上ノ権利ヲ享有スルヲ以テ原則トス、然レトモ原則ハ其外国人ノ本国ニ於テ澳国ノ臣民ニ内国人同様ノ権利ヲ与フル場合ニ於テノミ適用セラル(民法第三十三条)若シ外国人ノ本国ニ於テ澳国ノ臣民ニ自国人同様ノ民法上ノ権利ヲ与ヘ居ルヤ否ヤニ付疑アルトキ即チ其国ノ法律・勅令若クハ条約等ニ依リ明示ナキ場合ニハ外国人ハ之ヲ証明スヘキモノトス
 (一) 前顕原則ノ示ス所ニ依レハ、澳国臣民ニ不動産ノ所有ヲ禁シ居ラサル国ノ臣民ハ澳国ニ於テ不動産ヲ所有スルコトヲ得ルヤ明ラカナリ
     「モンテネグロ」国臣民ハ澳国ニ於テ不動産ヲ所有スルコトヲ得ス、何トナレハ「モンテネグロ」国ニ於テハ澳国臣民ノ不動産ヲ所有スルコトヲ許サヽレハナリ(一千八百二十五年六月二十三日ノ勅令及一千八百四十六年一月十四日ノ勅令第九百二十二号「マンツ」第二巻第百五十八枚目)北米聯邦「テキサス」国ノ住民(一千八百九十一年八月二十九日ノ司法省令「イエツテル」ヲ見ヨ)及非基徳教羅馬国臣民モ亦前顕ノ理由ニ依リ澳国内ニ於テ不動産ヲ所有スルコトヲ得ス(一千八百六十五年六月二十八日ニ勅令第四十六号「マンツ」第二巻第百五十八枚目)
 - 第21巻 p.520 -ページ画像 
     外国人ニ不動産ノ所有ヲ許可スルヤ否ヤハ亦通常条約ニ依リ詳細規定セラル、例ヘハ塞爾比亜国トノ条約中ニハ営業ヲ目的トスル法人ハ締盟国各一方ノ領地内ニ於テ不動産ヲ所有スルコトヲ得サル旨明記アリ(一千八百八十一年五月六日ノ条約、一千八百八十二年官報第八十二号第二条第三項、「マンツ」第二巻第百五十八枚目)
 (二) 澳国ノ法律ニ依レハ外国人カ鉱山若クハ鉱区ヲ所有スルコトニ関シ何等ノ制限ナシ、是ヲ以テ何人タリトモ法律上不動産ヲ獲得シ之ヲ所有シ得ル者ハ鉱業ヲ営ムノ権利ヲ有シ、鉱山ヲ得、且ツ之ヲ所有スルコトヲ得(一千八百五十四年五月二十二日ノ鉱業条例第七条「マンツ」第七巻)外国ノ会社ニシテ其所在地ノ法律ニ依リ合法ナリト認メラレタルモノハ澳国ニ在ル其所有鉱山ノ営業ヲ為スニ付別ニ許可ヲ出願スルニ及ハス(官報第百二十七号、一千八百六十五年十一月二十九日ノ勅令、前顕同条例第九枚目)但シ其他ノ外国ノ会社カ澳国内ニ於テ営業ヲ為サントスルニ際シテハ之ヲ為サヽルヘカラス(一千八百八十一年一月五日ノ行政裁判所判決第二千四百六十一号及第二千四百六十二号、「マンツ」第七巻第九枚目)


第十回東京商業会議所事務報告 第五頁 明治三四年四月刊(DK210089k-0011)
第21巻 p.520 ページ画像

第十回東京商業会議所事務報告  第五頁 明治三四年四月刊
一外国人ニ土地所有及鉱山採掘ヲ許ス義ニ付本会議所ノ意見発表ノ件
 本件ハ前回ニ報告シタル如ク委員ニ於テ調査中ナリシ処、其後委員ハ意見ヲ報告シタルニ依リ、之ヲ明治三十三年三月七日第八十九回ノ臨時会議ニ附シタルニ其可決ヲ得タルニ付、左ノ意見書ヲ貴族・衆議両院議員其他各地商業会議所等ヘ配布シタリ
   ○意見書ハ月報所載ノモノト同一ニツキ略ス。
   ○明治四十三年法律第五十一号ヲ以テ、一定ノ制限ノ下ニ外国人ニ土地所有権ノ享有能力ヲ附与セントスルノ制、制定セラレシガ、施行ヲ見ルニ至ラズ。後大正十四年ニ至リ、従来ノ禁止的又ハ制限的法ヲ撤廃シ、土地ニ関スル権利ノ享有ニ関シ、内外人間ニ差等ヲ設ケザルヲ原則トセル法律制定セラレタリ。即チ大正十四年法律第四十三号外国人土地法ハ之ニシテ同法ハ其附属法令ト共ニ大正十五年十一月十日ヨリ施行セラレタリ。(法令全書明治四三年・大正一四年、法律学辞典(岩波版)外国人土地法ノ項)
   ○鉱山採掘権ニ就イテハ外国人ハ現在尚其権利ヲ享有スルコトヲ得ズ。(鉱業法第五条)
   ○本巻明治三十三年六月五日、同三十四年九月九日ノ両条、並ニ本資料第二十二巻所収「商業会議所聯合会」明治三十二年十月十六日、同三十三年五月十七日、同三十四年一月二十三日ノ各条参照。



〔参考〕東京経済雑誌 第四一巻第一〇二一号・第四九五―四九七頁 明治三三年三月一七日 ○外人の土地所有及び鉱山開掘問題(DK210089k-0012)
第21巻 p.520-521 ページ画像

東京経済雑誌  第四一巻第一〇二一号・第四九五―四九七頁 明治三三年三月一七日
    ○外人の土地所有及び鉱山開掘問題
外人に土地所有権を許可するにあらざれは、外人は安んじて資本を我が内地に放下するを得ずとは、神戸に在留せる外商等の首として唱道せし所にして、株屋連は之に和すると同時に、外人に鉱山開掘権を許可するの一事を追加し、経済研究会を中心として頗る熱心に運動する所ありしが、終に東京商業会議所は左の如き意見を発表するに至れり
○中略
余輩は土地所有権も鉱山開掘権も、共に之を外国人に許与せんことを
 - 第21巻 p.521 -ページ画像 
希望するものなり、而して之を外国人に許与するも、外国人は決して世人の想像せるが如く土地を購求し、若くは鉱山を開掘せざるべしと信ずるものなり、然れども若し外国人にして続々我か邦の土地を購入し、各地到る所に外国人の土地所有者を見るに至れば、これが為に政治上の問題を誘起することなしとは謂ふべからず、夫れ土地を所有すれば直接国税及び直接府県税・市町村税を負担せざるべからず、而して直接税を負担する時は、衆議院議員・府県会議員等の選挙権を獲得するは我が邦の制度なれば、外国人にして各地方到る所に土地を所有し、直接税を負担するに至れば、勢ひ政権を要求するに至るべきなり余輩は決して此等の事を懸念して外人の土地所有に反対せんとするものにあらずと雖も、若し続々外国人が我が邦の土地を購求すとせば、早晩斯る現象を発すべきは世人に記臆を請はざるべからざる所なり
土地所有権及び鉱山開掘権を外人に与へざるは、果して外資輸入に向ひて障壁を設くるものなるや否や、余輩は其の理由を発見するに苦まざるべからず、夫れ外債を募集するに方り、土地を抵当に供するもの果してある乎、好し之ありとするも決して多くはあらざるべし、商事会社若くは一私人が外資を借入するに方り、果して土地を以て担保に供するものある乎、好し之ありとするも決して多くはあらざるべし、更に我が内地に於る資金の運転を見るも、各銀行は成るべく土地・家屋の抵当を避けて公債・株券の抵当を望むにあらずや、而して我が日本貧なりと雖も其の財たるものは独り土地のみにあらざるなり、鉱山開掘権も亦然り、是れ固より外人が資金を我が邦に放下すべき一途たるには相異なしと雖も、之を許可せざれば外資を輸入すること能はずとは見るべからず、然らば則ち此の二権を与へざるも、何ぞ外資輸入に向ひて障壁を築きたりと謂ふを得んや



〔参考〕東京経済雑誌 第四一巻第一〇三一号・第一〇四九―一〇五〇頁 明治三三年五月二六日 ○土地所有権を外人に許すの議(DK210089k-0013)
第21巻 p.521-522 ページ画像

東京経済雑誌  第四一巻第一〇三一号・第一〇四九―一〇五〇頁 明治三三年五月二六日
    ○土地所有権を外人に許すの議
土地所有権を外人に許すの議は兼てより世間の一問題と為り、甲論乙駁未だ決定する所なかりしが、財政経済に関する調査委員会は、資本の充実を期する一方法として、土地所有権を外人に許すの議を主張せり、即ち左の如し
 土地所有権・鉱山採掘権を外人に許可し(中略)以て自然外資輸入の途を開くこと
此の事の世に知らるゝや、日本工業協会に於ては、直ちに協議会を開き、其の決議を以て条件付にて土地所有権を外人に許すの意見を商業会議所聯合委員会に提出せしめたり、曰く
 条件付土地所有権を外人に許与するを以て、詳言すれば事業を経営すること、及び着手の年限を約して、各場合に土地所有権を外人に許与するを以て、本邦現時に適応なる方策なりと確信するものなり
余輩は土地所有権を外人に許すも益ありて害なきことを信するものなり、故に土地所有権を外人に許すべしと主張するものなりと雖も、彼外人等の往々唱道せるが如く、土地所有権を許すにあらざれば、資金を輸入するを得ずとの説、及び本邦一種の論者が主張せるが如く外資
 - 第21巻 p.522 -ページ画像 
を輸入せしむる為に土地所有権を外人に許すべしとの論をは認めざるべし、何となれば外人にして其の資金を我が邦へ輸入せんと欲せば、土地所有権を許可せられざるも、充分に輸入することを得べく、又本邦人にして外資を輸入せんと欲せば、土地所有権を外人に許さゞるも輸入すべき方法許多あるべければなり、然れども土地所有権の許可は外資輸入に必要なりと仮定せば、工業協会の条件は果して満足を与ふべきや否や、外人等が資金を輸入して我が内地に工業を起さんとするに於ては、斯る条件を付するの必要もあるべしと雖も、土地を抵当として資金を貸付せんとする場合に於ては、忽ち差支へざるべからざるが如し、故に外人に土地所有権を許すべからずとせは則ち已む、苟も許すべしとせば無条件にて許可するに若かざるべきなり
聯合会に於て本件に反対したるは、名古屋の奥田氏、横浜の大谷氏等にして、其の論旨は土地所有権を与へなば果して見込通りの外資輸入せらるべきや、縦令輸入せらるゝとするも、所有権は外資を輸入して一時の救済策に充つべき性質のものなりや、此の権一度与へなば復た取るべからず、考ふべきは此点に存す、且我には将来に協定税率を破りて税権を恢復するの大任あり、此時に当り外人は決して無条件にて税権恢復の相談に応ぜざるべし、即ち土地所有権を与ふる代りに税権を恢復せしめよと談判するは此際ならん、旁々所有権問題は審重に調査すべきものにして、軽々に議決すべきものにあらずと云ふに在り、土地所有権を与ふるも外資は輸入せられざるべく、且本件の如きは応急の方策にはあらずとも雖、之を許すも将た禁ずるも共に我が法律を以てするものたるを以て、法理上に於ては一たび与ふれば復た取るべからずと謂ふこと能はざるべきなり