デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第21巻 p.522-526(DK210090k) ページ画像

明治33年3月7日(1900年)

是ヨリ先当会議所、京都商業会議所ヨリノ照会ニ係ル生糸輸入税免除ノ儀ニ就キ調査中ナリシガ、是日ノ会議ニ於テ、免除ノ必要ナキ旨ヲ議決ス。栄一会頭トシテ之ニ与ル。


■資料

東京商業会議所月報 第七九号・第九頁 明治三二年三月 【○同月 ○二月十八日…】(DK210090k-0001)
第21巻 p.522 ページ画像

東京商業会議所月報  第七九号・第九頁 明治三二年三月
○同月 ○二月十八日、生糸輸入税免除ノ件ニ付、京都商業会議所ヨリ照会書ヲ接受ス(照会書ノ全文ハ参照ノ部第八号ニ掲載ス)


東京商業会議所月報 第七九号・第一五―一六頁 明治三二年三月 【参照第八号 明治三十二年二月十…】(DK210090k-0002)
第21巻 p.522-523 ページ画像

東京商業会議所月報  第七九号・第一五―一六頁 明治三二年三月
参照第八号
 明治三十二年二月十八日、生糸輸入税全廃ノ義ニ付、京都商業会議所ヨリ接受セシ照会書ノ全文ハ左ノ如シ
拝啓陳者今回輸入生糸関税ノ全廃ニ関スル建議・請願致候ニ付、何卒御賛同相成度、此段得貴意候也
                    京都商業会議所
    東京商業会議所 御中
 - 第21巻 p.523 -ページ画像 
    輸入生糸関税ノ全廃ニ関スル建議(請願)
国産ヲ増殖シテ輸出ヲ盛ニシ、以テ輸入ヲ防カン事ヲ期スルハ各国カ貿易上均シク採ル所ノ政策ナリトス、然レトモ往時ニ於ケル重金主義ノ誤謬ニ陥ル事ナクシテ、能ク其国ノ位置・地形及開明ノ程度ニ鑑ミ啻ニ国産ヲ輸出スルニ止マラス、他国ヨリ原料ヲ輸入シ更ニ之ニ加工シテ輸出シ、以テ貿易ヲ隆盛ナラシムルノ道ヲ講セサルヘカラス
生糸ハ本邦固有ノ生産品ニシテ外国輸出品中ノ首位ヲ占メ、国家経済ヲ利スル事他品ノ及ハサル所ナリ、故ニ孳々斯業ノ発達ヲ期スルト共ニ其低廉ナル原料ヲ支那若クハ朝鮮ニ採リ、之ヲ工芸品トシテ輸出シ又ハ内国ノ需用品トスルハ今日ノ急務ナリトス、翻テ清国ノ状態ヲ見レハ、文風未タ競ハス依然タル古代ノ民ニシテ、工芸尚ホ固陋ノ域ヲ脱セス、紡織ノ業又多クハ粗野ナリ、就中清国手引糸ノ如キモ旧慣ヲ改メス、其製法不等ニシテ品位一定セス、其価モ亦従テ廉ナリ、百斤概ネ三百五十両即チ我五百円余ナリト雖トモ、我邦ハ其製品漸ク一定シテ輸出ニ適スルヲ以テ、其価ノ如キモ百斤ニ付キ平均八百円以上ナリ、是ヲ以テ百斤ニ付キ彼是約三百円ノ大差アリトス、蓋シ欧米人ハ多ク絹布ヲ以テ装飾品トナスカ故ニ、羽二重ノ如キ繊維細ク且ツ軽キモノヲ嗜好シ、器械製ノ細糸ヲ仰カサル可カラスト雖トモ、本邦ハ古来蚕糸国ニシテ絹布ヲ実用品トナスノ習慣ニシテ、主トシテ長ク保存ニ耐ユルモノヲ愛スルカ故ニ、必シモ精細ナル生糸ヲ用ユルノ用ナキナリ、是故ニ支那ノ手引糸ヲ以テ之ニ充テ本邦ノ生糸ハ力メテ之ヲ外国ニ輸出スルノ方法ヲ取ラサルヘカラス、詳言スレハ邦人ノ需用ハ支那糸ヲ以テ之ニ充テ、本邦ノ生糸ハ之ヲ外国ニ輸出スルトキハ、其交換ヨリ生スルノ差益ハ実ニ尠少ニアラサルナリ、宛モ外国米ヲ入レテ日本米ヲ出スト同様ノ利得アルヘシ、夫ノ関税改正ノ結果輸入ノ支那繭ヲ無税トナシ、生糸ノ原料ヲシテ容易ニ彼レニ取ル事ヲ得セシメタルハ頗ル其当ヲ得タルノ挙ナリト雖トモ、尚ホ一歩ヲ進メ輸入生糸ヲ無税タラシメサリシハ酷タ遺憾トスル所ナリ
抑モ国家カ未タ農業時代ヲ去ラサル以前ハ原料品若クハ未成品ニ課税スルハ已ムヲ得サルヘシト雖トモ、商工ヲ国是トナス今日ニ在テハ、工芸品以外ニ課税スヘキ者ニアラス、現ニ仏国ノ如キハ本邦ノ羽二重ヲ以テ尚ホ且ツ未製品視シ輸入税ヲ課セサルニアラスヤ、況ンヤ生糸ノ如キ原料品ニ課税スルハ本邦ノ国是ニ背戻スルノミナラス、貿易上ノ一大不利ナリ、須ラク之ヲ無税トシテ彼国無限ノ原料ヲ我国ニ招キテ之ヲ利用シ、以テ我国ノ工業ヲ奨励シ貿易ヲ拡張センコトヲ希望シテ已マサルナリ
右本会議所ノ決議ニ依リ謹テ建議(請願)仕候也
  明治三十二年二月十四日
            京都商業会議所会頭 浜岡光哲
    内閣総理大臣
    農商務大臣
    大蔵大臣   (各通)
    貴族院議長
    衆議院議長
 - 第21巻 p.524 -ページ画像 


渋沢栄一 日記 明治三二年(DK210090k-0003)
第21巻 p.524 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三二年     (渋沢子爵家所蔵)
七月二十二日 雨
○上略 四時商業会議所臨時会議ヲ開ク、畢テ九時兜町ニ帰宿ス


東京商業会議所月報 第八四号・第一〇―一一頁 明治三二年八月 【○明治三十二年七月二…】(DK210090k-0004)
第21巻 p.524 ページ画像

東京商業会議所月報  第八四号・第一〇―一一頁 明治三二年八月
○明治三十二年七月二十二日、本会議所ニ於テ第八十四回臨時会議ヲ開ク、当日ノ出席者ハ左ノ如シ
 星野錫君 ○外二十七名氏名略
午後六時開議、渋沢会頭議長席ニ着キ、左ノ件々ヲ議事ニ附シ、午後七時十分閉会ス
○中略
 一輸入生糸関税ノ全廃ニ関スル件 (同上 ○役員会議提出)
本件ハ役員会議ノ提出ニ係リ、其要旨ハ、京都商業会議所ヨリ輸入生糸関税ノ全廃ヲ希望スル件ニ付同意ヲ求メ来リタルニ依リ、委員七名ヲ置キ之ヲ調査セシムヘシト云フニ在リ、仍テ之ヲ会議ニ附シタルニ原按ノ如ク可決シ、且ツ委員ハ議長ノ指名ニ任カスコトヽナリ、議長ハ左ノ諸君ヲ委員ニ指名セリ
                   渋沢喜作君
                   尾崎三良君
                   原亮一郎君
                   長尾三十郎君
                   町田徳之助君
                   北村英一郎君
                   上田安三郎君


東京商業会議所月報 第八四号・第一一頁 明治三二年八月 【○同月同日 ○七月二…】(DK210090k-0005)
第21巻 p.524 ページ画像

東京商業会議所月報  第八四号・第一一頁 明治三二年八月
○同月同日 ○七月二二日午後七時三十分、本会議所ニ於テ生糸輸入税廃止ニ関スル調査委員会議ヲ開キ、委員長ヲ選挙セシニ、其結果左ノ如クニテ、午後八時閉会ス
               委員長 渋沢喜作君


東京商業会議所月報 第八五号・第一頁 明治三二年九月 【○同月 ○八月七日、…】(DK210090k-0006)
第21巻 p.524 ページ画像

東京商業会議所月報  第八五号・第一頁 明治三二年九月
○同月 ○八月七日、本会議所ニ於テ委員会議ヲ開キ、生糸輸入税全廃ノ件ヲ審議シ、午後五時三十分閉会ス


東京商業会議所月報 第八八号・第一頁 明治三二年一二月 【○同月 ○一一月四日…】(DK210090k-0007)
第21巻 p.524 ページ画像

東京商業会議所月報  第八八号・第一頁 明治三二年一二月
○同月 ○一一月四日午後四時、本会議所ニ於テ委員会議ヲ開キ、生糸輸入税全廃ニ関スル件ヲ審議シ、午後七時閉会ス


渋沢栄一 日記 明治三三年(DK210090k-0008)
第21巻 p.524 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三三年     (渋沢子爵家所蔵)
三月七日 晴
此日ハ商業会議所臨時会当日ナルモ風邪ノ為出席ヲ謝絶ス

 - 第21巻 p.525 -ページ画像 

東京商業会議所月報 第九二号・第六〇―六一頁 明治三三年四月 【明治三十三年三月七日…】(DK210090k-0009)
第21巻 p.525 ページ画像

東京商業会議所月報  第九二号・第六〇―六一頁 明治三三年四月
明治三十三年三月七日、本会議所ニ於テ第八十九回臨時会議ヲ開ク、当日ノ出席者左ノ如シ
 末延道成君 ○外二十四名氏名略
午後五時四十五分開議、渋沢会頭事故アリ欠席ニ付、副会頭大倉喜八郎君議長席ニ着キ、左記ノ件々ヲ議事ニ附シ午後七時二十五分閉会ス
 一生糸輸入税廃止ノ件調査報告 (委員提出)
本件ハ生糸輸入税廃止ノ件調査委員長ノ報告ニ係リ、其要旨ハ、今日生糸輸入税ヲ廃止スルニ於テハ我国家経済上ニ非常ノ不利ヲ来スヘキニ依リ、同税廃止ノ説ニハ賛同スル能ハスト云フニ在リ、審議ノ末全会一致ヲ以テ委員報告ノ如ク可決ス(報告書ノ全文ハ参照ノ部第一号ニ掲載ス)


東京商業会議所月報 第九二号・第六四―六五頁 明治三三年四月 【○参照 第一号 明治三十三年三…】(DK210090k-0010)
第21巻 p.525-526 ページ画像

東京商業会議所月報  第九二号・第六四―六五頁 明治三三年四月
 ○参照
第一号
 明治三十三年三月七日、第八十九回臨時会議ノ可決ヲ経タル生糸輸入税廃止ノ件調査報告ノ全文ハ左ノ如シ
    生糸輸入税廃止ノ件調査報告
全会ノ決議ニ依リ其調査ヲ附託セラレタルニ生糸輸入税廃止ノ件篤ト審議ヲ遂ケ候処、委員会ノ意見ハ別紙ノ如ク相決シ候間、此段及御報告候也
  明治三十二年十二月二十七日
            生糸輸入税廃止ノ件調査委員長
                      渋沢喜作
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿
(別紙)
生糸ハ本邦ノ特産物ニシテ輸出貿易品ノ高位ヲ占メ、我国家経済ヲ利スルコト極メテ大ナリ、故ニ之ヲ保護奨励シテ益々将来ノ発達ヲ期スルハ実ニ目下ノ急務トスル所ナリ、然ルニ今若シ生糸輸入税ヲ廃止セン乎、低廉ナル支那手引糸ハ続々国内ニ入来リ、其結果大ニ我蚕糸業ノ発達ヲ阻害スルニ至ルヘキヲ以テ、今日ニ於テ之ヲ廃止スルハ決シテ適当ノ挙措ト謂フヘカラス
若シ輸入支那生糸ニシテ輸出向絹織物ノ原料タルニ適スルモノトセハ其輸入ヲ奨励シテ之ニ加工シ外国ニ輸出スルニ於テハ、之ヨリ得ル所ノ利益必スヤ少カラサルヘキヲ以テ、現時ノ輸入繭ニ於ケルカ如ク之ヲ無税ニスルコト或ハ一策ナルヘシト雖モ、支那手引糸ハ本来ノ品質必スシモ劣等ナラサルニ拘ラス、其製法甚タ粗雑ニシテ、到底我輸出向絹織物ノ原料タルニ適セサルヲ奈何セン、又縦令支那生糸ハ我輸出向絹織物ノ原料タルニ適セストスルモ、本邦産ノ生糸ヲシテ総テ外国輸出向ニ適スル事ヲ得セシメン乎、恰モ南京米ヲ輸入シテ内国米ヲ輸出スルト同様ノ利益アルヘキヲ以テ、支那生糸ノ輸入ヲ奨励スルコト亦或ハ一策ナルヘシト雖、今熟々我カ製糸業ノ実況ヲ見ルニ、近時其製法漸ク改良ノ運ニ向ヒタルモ、其蚕繭全部ヲ挙ケテ輸出向生糸ノミ
 - 第21巻 p.526 -ページ画像 
ヲ製出スルコトハ、本来ノ性質上到底為シ能ハサル所ナリ、況ンヤ輓近新ニ起リタル製産地ノ如キハ養蚕・製糸ノ業共ニ幼稚ニシテ、其製出スル生糸ハ概ネ粗雑品タルヲ免レサルニ於テヲヤ、然リ而シテ此等ノ粗雑品ハ現ニ我カ生糸全額中ノ幾割ヲ占メ挙ケテ内地ノ需用ニ供スルモノナルカ、若シ偶々養蚕業違作ヲ告ケ、蚕繭ノ成績不良ナル年ニ際シテ、其割合更ニ益々多キヲ加フルコト既往ノ経験ニ徴シテ明白ナリ、故ニ若シ生糸輸入税ヲ廃止シテ、低廉ナル支那生糸ノ輸入ヲ奨励スル時ハ、内地ノ需用者ハ或ハ因リテ以テ多少ノ便利ヲ得ルコトナキニアラサルモ、之カ為メニ国家ノ経済上尠少ナラサル損害ヲ蒙ラサルヲ得ス
顧フニ、内地需用向ト輸出向トハ本来自ラ其用途ヲ異ニスルヲ以テ、其価格互ニ相関聯セサルノミナラス、市場ノ景況ニヨリテハ甚シク其平準ヲ失スルコトアリ、若シ二者ノ中孰レカ一方不景気ニ陥リ随テ其価格下落スル時ハ、他ノ一方ノ価格ヲ高メテ其損失ヲ償補スルコト本邦蚕糸業者ノ現状ナリ、故ニ輸入税廃止ノ結果内地需用向生糸ノ価格ニ下落ヲ来タスカ如キアラハ、蚕糸業者ハ勢ヒ其損失ヲ輸出向生糸ニ転嫁シテ之ヲ高価ニ売却セサルヲ得サルヲ以テ、本年ノ如ク海外市場ノ景気極メテ好況ナル時ニ於テモ、尚ホ且其売行ニ少カラサル不便ヲ感スルニ至ルヘシ、況ンヤ本年ニ於ケルカ如キ好景気ハ決シテ永続ヲ期スヘカラサルニ於テヲヤ、若シ一朝海外市場ノ景気不況ニシテ、生糸ノ在荷開港場ニ堆積スルカ如キ時期ニ際スル時ハ、其困難実ニ測ルヘカラサルモノアラン、豈ニ寒心セサルヘケンヤ
之ヲ要スルニ、支那手引糸ハ其製法粗雑ニシテ到底我輸出向絹織物ノ原料タルニ適セサルヲ以テ、其輸入ヲ奨励スルノ必要ナキノミナラス今若シ生糸輸入税ヲ廃止スルニ於テハ、勢ヒ我内地需用向生糸ノ価格ヲ下落セシメ、延テ以テ輸出向生糸ノ売行ヲ梗塞シ、我国蚕糸業ノ発達ヲ阻害スルコト尠少ナラスシテ、結局我国家経済上ニ非常ノ不利ヲ来タスヘキヲ信スルナリ、是レ今日ニ於テ生糸輸入税ノ廃止ニ賛同スルコト能ハサル所以ナリ
   ○当会議所ノ主張ノ如ク生糸輸入税ハ免除セラレザリキ。(明治財政史第七巻第三八五頁以下)
   ○商業会議所聯合会ハ第八回定期会ニ於テ京都商業会議所ヨリノ提案ヲ可決セリ。本資料第二十二巻所収「商業会議所聯合会」明治三十二年十月十一日ノ条参照。