デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2021.9.1

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第21巻 p.639-647(DK210112k) ページ画像

明治34年2月8日(1901年)

是日栄一当会議所会頭トシテ、今回政府ヨリ議会ニ提出セラレタル麦酒税法案ニ就キ、麦酒一石ニ七円ノ重税ヲ課スルハ不当ナルヲ以テ之ヲ三円ニ低減センコトヲ内閣総理大臣侯爵伊藤博文・大蔵
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大臣子爵渡辺国武・農商務大臣林有造ニ建議シ、貴族院議長公爵近衛篤麿・衆議院議長片岡健吉ニ請願ス。


■資料

渋沢栄一書翰 萩原源太郎宛 (明治三四年)二月四日(DK210112k-0001)
第21巻 p.640 ページ画像

渋沢栄一書翰  萩原源太郎宛 (明治三四年)二月四日   (萩原英一氏所蔵)
拝見仕候、馬越恭平より提出相成候麦酒税軽減之建議ニ付臨時会相開候時日ハ役員会を略し来ル六日ニ被成度旨、来示之通ニて差支有之間敷と存候、但役員中ヘハ持廻リニても其旨通知之方可然と存候(極而至急を要する之理由ニて)
当日ハ小生他約有之候ニ付、或ハ大倉君ニ相願可申、併一寸ニても出席致度と相考居申候、御含可被下候
○中略
  二月四日
                      渋沢栄一
    萩原源太郎様


渋沢栄一 日記 明治三四年(DK210112k-0002)
第21巻 p.640 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三四年     (渋沢子爵家所蔵)
二月六日 曇
昨夜ヨリ下痢症ニテ朝来出勤スルヲ得サルニヨリ、午後一時ノ郵船会社重役会及商業会議所臨時会ニハ電話ヲ以テ断リ遣シ、終日在宅治療ニ勉ム


東京商業会議所報告 第一〇〇号・第四―六頁 明治三四年二月刊(DK210112k-0003)
第21巻 p.640-641 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇〇号・第四―六頁 明治三四年二月刊
○第百二回臨時会議 明治三十四年二月六日開
 出席者
  馬越恭平君 ○外二十四名氏名略
午後五時五十分開議
渋沢会頭欠席ノ為メ大倉副会頭議長席ニ就キ、先ツ左ノ件ヲ報告ス
○中略
次ニ議長ハ左ノ件ヲ議事ニ附ス
    麦酒課税ノ件ニ付建議
目下政府ヨリ帝国議会ニ提出相成居候麦酒法案ニシテ両院ヲ通過セラルヽニ於テハ、独リ当業者ノ困難ナルノミナラス、延テ国家経済上ニ影響スル所少シトセス、依テ此際本会議所ヨリ別記ノ趣旨ヲ以テ政府ニ建議シ、且ツ貴衆両院ニ請願致度、此段建議仕候也
  明治三十四年二月二日
                  提出者 馬越恭平
                  賛成者 大倉喜八郎
                  同   伊藤幹一
                  同   栗生武右衛門
    東京商業会議所会頭 男爵 渋沢栄一殿
(別記)
    麦酒課税ノ件ニ付建議(請願)
 我国麦酒業ノ現状ヲ査察スルニ未タ甚タ幼稚ニシテ創始期ニ属スル
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モノトス、而シテ翻テ既往数年ノ経過ヲ回顧スレハ比較的長足ノ進歩ヲ見ル、若シ此趨勢ヲ以テ発達スレハ五・七年ヲ出テスシテ四・五十万石ニ達スルノ算定ヲナスコトヲ得、是実ニ将来好箇ノ税源ナリト信ス、然ルニ政府カ今ヤ僅々十万石内外ノ醸造高ニ直ニ一石七円ノ重税ヲ課セントスルハ大ニ当業ノ発達ヲ阻害シ税源ヲ涸渇セシムルモノニシテ、寔ニ策ノ得タルモノニアラス、若シ政府カ理由トスルカ如ク清酒ノ増税ニ伴ヒ権衡上課税スルノ必要アリトスレハ、清酒ハ「アルコール」含量百分中二十ヲ極度トスルニ対シ、麦酒ハ三・五乃至四ナレハ、麦酒ハ清酒ノ五分ノ一ヲ以テ比較上権衡ヲ得ルモノトス、然ルニ当業ノ幼稚ナル現状ヲ斟酌スレハ一石三円以下タラサルヘカラス、要スルニ麦酒ノ如キ新事業ニ在リテハ政府ハ之カ発達ヲ保護奨励シテ将来ノ税源ヲ涵養シ、以テ百年ノ長計ヲ画スルコト国家経済上必要ノ事ナリト思量ス
 右本会議所ノ決議ニ依リ建議(請願)仕候也
  明治三十四年二月  日
          東京商業会議所会頭 男爵 渋沢栄一
    内閣総理大臣 侯爵 伊藤博文殿
    大蔵大臣   子爵 渡辺国武殿
    農商務大臣     林有造殿  (各通)
    貴族院議長  公爵 近衛篤麿殿
    衆議院議長     片岡健吉殿
本件ニ関シ馬越恭平君ハ之カ提出ノ理由ヲ説明シテ満場ノ賛成ヲ求メタルニ、藤山雷太君・加東徳三君・梅浦精一君・雨宮敬次郎君其他ノ諸君ハ麦酒課税ハ時期尚ホ早シ、今日ニ於テハ全然課税スヘカラストノ説ヲ発シタルモ、採決ノ結果多数ヲ以テ原案ヲ可決シ、尚ホ建議文ノ字句ノ修正ハ之ヲ議長ニ一任スルニ決ス
午後七時十分閉会


東京商業会議所報告 第一〇〇号・第八頁 明治三四年二月刊(DK210112k-0004)
第21巻 p.641 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇〇号・第八頁 明治三四年二月刊
○同月同日 ○二月八日 麦酒課税率低減ノ件ニ付、内閣総理・大蔵・農商務三大臣ニ建議書ヲ進達シ、貴族・衆議両院ヘ請願書ヲ進達ス(建議書及請願書ノ全文ハ参照ノ部第十号ニ掲載ス)


東京商業会議所報告 第一〇〇号・第一六―一七頁 明治三四年二月刊(DK210112k-0005)
第21巻 p.641-642 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇〇号・第一六―一七頁 明治三四年二月刊
 ○参照
○第十号
 明治三十四年二月八日附ヲ以テ麦酒課税率低減ノ件ニ付、内閣総理大蔵・農商務三大臣及貴族・衆議両院ヘ進達セル建議・請願書ノ全文ハ左ノ如シ
    麦酒課税率ノ低減ヲ要スル議ニ付建議(請願)
今回政府ヨリ帝国議会ヘ提出セラレタル麦酒税法案ニ拠レハ、麦酒ノ課税率ハ一石ニ付金七円ト定メアリ、若シ此法案ニシテ不幸原案ノ如ク実施セラルルトキハ、独リ当業者ノ困厄ヲ来タスノミナラス、延テ国家経済上ニ及ホス所ノ影響少ナシトセス、是ヲ以テ本会議所ハ其課
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税率七円トアルヲ参円以下ニ低減スルノ必要ヲ感シ、敢テ其理由ヲ左ニ開陳セント欲ス
我国ノ麦酒業ハ猶ホ幼稚ニシテ、現時其醸造高ノ如キ全国ヲ通シテ僅ニ十万石内外ニ過キス、漸ク萌芽ヲ発シタルノ時期ナリ、然レトモ既往数年ノ実蹟ニ徴スルニ今後之カ奨励ヲ怠ラサルトキハ五・七年ヲ出テスシテ其醸造高四十万石已上ニ達スルコト決シテ難事ニアラスト信ス、是寔ニ将来好個ノ税源タルヘキヲ以テ、今日ニ於テ可成奨励ノ道ヲ講シ、之カ涵養ヲ勉メサルヘカラス、然ルニ今ヤ我国麦酒業ノ漸ク将ニ進歩ノ緒ニ就カントスルノ時ニ際シ、一躍七円ノ重税ヲ課シテ其発達ヲ阻害セントスルハ是決シテ国家ノ長計ニアラサルナリ
蓋シ方今財界多事ノ時ニ際シ政府カ増税ヲ規画セラレタルハ寔ニ已ムヲ得サル所ニシテ、殊ニ其種類ヲ麦酒税ノ如キ消費税ニ採ラレタルハ寧ロ機宜ニ適スルノ挙措タルヲ失ハス、然リト雖トモ之ヲ規画スルニ当リテハ、先ツ其事業発達ノ情況ヲ斟酌シ、審ニ負担者ノ実力如何ヲ考究シテ之カ税率ヲ定メサルヘカラス、今本会議所カ今日我国麦酒業ノ実際ニ就テ査察スル所ニ拠レハ、其課税ヲ負担シ得ル程度ハ一石参円以下ニ在リテ、若シ此程度ヲ超ヘテ課税スルトキハ当業者ハ負担ニ堪ヘスシテ其事業萎靡衰頽シ、遂ニ前途好望ナル税源ヲ涸渇スルノ不幸ナシトセス、是本会議所カ国家経済ノ為メニ深ク憂慮措ク能ハサル所ナリ
或ハ曰ク、麦酒ニ課税スルハ清酒ノ増税ニ伴ヒ権衡ヲ得セシムル為メニ必要ナリト、其言寔ニ可ナリ、然レトモ其税率ヲ七円ト定ムルハ決シテ其当ヲ得タルモノニアラス、夫レ清酒ハ「アルコール」含量百分中二十ヲ極度トスルニ対シ、麦酒ハ三・五乃至四ナレハ、今彼此ヲシテ其権衡ヲ得セシメントスルニハ、麦酒ハ清酒ノ五分ノ一トスルヲ可トス、果シテ然ラハ此点ヨリ観察スルモ其税率ハ参円以下ニ定ムルヲ相当ナリト謂ハサルヘカラス
今本会議所カ麦酒課税率ノ低減ヲ希望スルノ理由実ニ前掲ノ如シ、仰キ願ハクハ閣下(貴院)本建議(請願)ノ趣旨ヲ採納セラレンコトヲ
右本会議所ノ決議ニ依リ建議(請願)仕候也
  明治三十四年二月八日
          東京商業会議所会頭 男爵 渋沢栄一
    内閣総理大臣 侯爵 伊藤博文殿
    大蔵大臣   子爵 渡辺国武殿
    農商務大臣     林有造殿  (各通)
    貴族院議長  公爵 近衛篤麿殿
    衆議院議長     片岡健吉殿


第十一回東京商業会議所事務報告 第六―七頁 明治三五年四月刊(DK210112k-0006)
第21巻 p.642-643 ページ画像

第十一回東京商業会議所事務報告  第六―七頁 明治三五年四月刊
一麦酒課税率ノ低減ヲ要スル義ニ付、内閣総理・大蔵・農商務三大臣ニ建議、貴族・衆議両院ニ請願ノ件
本件ハ会員馬越恭平君ノ提出ニ係リ、其要旨ハ、今回政府ヨリ議会ニ提出セラレタル麦酒税法案ニヨリ麦酒ニ七円ノ重税ヲ課セラルヽニ於テハ、独リ当業者ノ困難ナルノミナラス、国家経済上ニ影響スル所少
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カラサルヲ以テ、之ヲ三円ニ低減セラレタキ旨ヲ政府ニ建議シ、議会ニ請願スヘシト云フニ在リ、仍テ明治三十四年二月六日第百二回ノ臨時会議ニ附シタルニ其可決ヲ得、建議文ノ字句ノ修正ハ会頭ニ一任スルニ決シタルニ付、其後会頭ニ於テ修正ノ上同月八日附ヲ以テ左ノ如ク内閣総理・大蔵・農商務三大臣ニ建議シ、貴族・衆議両院ニ請願シタリ
   ○建議書ハ報告所載ノモノト同一ニツキ略ス。



〔参考〕明治財政史 同史編纂会編 第六巻・第二五一―二六〇頁 明治三七年一一月刊(DK210112k-0007)
第21巻 p.643-647 ページ画像

明治財政史 同史編纂会編  第六巻・第二五一―二六〇頁 明治三七年一一月刊
 ○第六編 第一章 第六節 酒税
    第五款 麦酒税
麦酒ニ対シテ課税スルノ制度ハ明治三十四年法律第十二号麦酒税法ノ制定ニ始マル、明治三十四年度歳計予算編製ニ際シ歳入増加ノ必要上其財源ヲ租税ニ求ムルコトトシ、明治三十四年法律第七号ヲ以テ酒造税法ヲ改正シ其税率ヲ増加シタルヲ以テ、之カ権衡ヲ保ツタメ従来無税ナリシ麦酒ニ対シテ相当ノ課税ヲ為スノ必要アリ、加之本邦ニ於ケル麦酒ノ製造ハ近時長足ノ進歩ヲ為シ其醸造額一箇年凡拾弐万石ノ多キニ及ヘルヲ以テ、之ニ課税シテ以テ財源ニ充ツルニ足ルニ至レルヲ以テ、政府ハ明治三十三年第十五期帝国議会ニ麦酒税法案ヲ提出シ、其協賛ヲ経テ明治三十四年三月法律第十二号ヲ以テ該税法ヲ公布セリ右税法ニ依レハ麦酒一石ニ付七円ノ割合ヲ以テ造石税ヲ課シ、毎月中査定石数ニ依リ課税シ翌月中ニ一時ニ納付セシムルコトヽシ、明治三十四年十月一日ヨリ之ヲ施行セリ、其税法左ノ如シ
  法律第十二号(明治三十四年三月三十日)
   麦酒税法
 第一条 麦酒(ビール)ニハ本法ニヨリ麦酒税ヲ課ス
 第二条 麦酒ヲ製造セムトスル者ハ製造場一箇所毎ニ政府ノ免許ヲ受クヘシ、其製造ヲ廃止セムトスルトキハ免許ノ取消ヲ求ムヘシ
 第三条 麦酒税ハ麦酒一石ニ付金七円ノ割合ヲ以テ其ノ製造石数ニ応シ麦酒ヲ製造スル者ヨリ之ヲ徴収ス
 第四条 麦酒税ハ毎月中ノ査定石数ニ依リ翌月中ニ於テ一時ニ之ヲ納ムヘシ、但シ製造ヲ廃止シタルトキハ即納トス
 第五条 麦酒ヲ製造スル者麦酒税ヲ逋脱シ又ハ逋脱セムトスルノ所為アリト認ムルトキハ、政府ハ直ニ麦酒税ノ全部又ハ一部ヲ徴収ス、此ノ場合ニ於テハ納税ノ担保トシテ麦酒ヲ差押フルコトヲ得
 第六条 麦酒ノ製造石数ハ製成ノ時容器ノ容量ニ依リ之ヲ査定ス
  犯則其ノ他ノ事故ニ依リ前項ニ依リ難キ場合ニ於テハ、現在ノ麦酒又ハ証憑物件ニ就キ其ノ製造石数ヲ査定シ麦酒税ヲ課ス
 第七条 災害ニ罹リ亡失シタル麦酒ニ関シテハ其麦酒税ヲ免除スルコトヲ得、但シ製造場外ニ移出シタルモノハ此限リニ在ラス
 第八条 麦酒ヲ製造スル者ハ製造石数査定所ニ於テ其ノ麦酒ヲ他人ニ譲渡シ、質入シ、消費シ、又ハ製造場外ニ移出スルコトヲ得ス
 第九条 麦酒ヲ製造スル者又ハ販売スル者ハ麦酒ノ製造・出入ニ関シ詳細明瞭ニ其事実ヲ帳簿ニ記載スヘシ
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 第十条 収入官吏ハ命令ノ規定ニ依リ麦酒ヲ製造スル者又ハ之ヲ販売スル者ノ所持ニ係ル麦酒、其ノ製造・出入ニ関スル一切ノ帳簿書類、及麦酒製造又ハ販売上必要ナル建築物・器械・材料其他ノ物件ヲ検査シ又ハ監督上必要ノ処分ヲ為スコトヲ得
 第十一条 免許ヲ受ケスシテ麦酒ヲ製造シタル者ハ其麦酒税五倍ニ相当スル罰金ニ処ス、但シ五十円ヲ下ルコトヲ得ス
 第十二条 麦酒ヲ製造スル者詐偽其ノ他不正ノ所為ヲ以テ其製造石数ノ査定ヲ免レ又ハ免レムトシタルトキハ、其麦酒税五倍ニ相当スル罰金ニ処ス、但シ三十円ヲ下ルコトヲ得ス
 第十三条 麦酒ヲ製造スル者故意ニ事故ヲ作為シ又ハ詐術ヲ構ヘ、麦酒税ノ免除ヲ得又ハ得ムトシタルトキハ、其申請ニ係ル総石数ノ麦酒税五倍ニ相当スル罰金ニ処ス、但シ三十円ヲ下ルコトヲ得ス
 第十四条 麦酒ヲ製造スル者第八条ノ禁令ヲ犯シタルトキハ十円以上百円以下ノ罰金ニ処ス
 第十五条 麦酒ヲ製造スル者又ハ之ヲ販売スル者其ノ原料又ハ帳簿書類ヲ隠蔽シタルトキハ、十円以上三百円以下ノ罰金ニ処ス
 第十六条 麦酒ヲ製造スル者又ハ之ヲ販売スル者、麦酒ノ製造・出入ニ関シ帳簿ノ記載又ハ事実ノ申告ヲ詐リ若ハ怠リタルトキハ、三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス
 第十七条 収税官吏其ノ職務ヲ執行スルニ当リ之ニ対シ其ノ執行ヲ拒ミ、又ハ之ヲ忌避シ、又ハ之ニ支障ヲ加ヘタル者ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス、其刑法ニ正条アル者ハ刑法ニ依ル
 第十八条 本法ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ不論罪及減軽・再犯加重・数罪倶発ノ例ヲ用ヰス、但シ刑法第七十五条第一項ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
 第十九条 麦酒ヲ製造スル者又ハ之ヲ販売スル者ノ代理人・戸主・家族・同居者・一雇人其ノ他ノ従業者ニシテ其業務ニ関シ本法ヲ犯シタルトキハ麦酒製造者又ハ販売者ヲ処罰ス
 第二十条 麦酒製造ヲ廃止シタル者及其ノ相続人ハ麦酒税完納前ニ在リテハ総テ本法ノ規定ニ従フ
   附則
 第廿一条 本法ハ明治三十四年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
 第廿二条 本法施行前ヨリ麦酒ノ製造ヲ為ス者本法施行後十日以内ニ於テ製造一箇所毎ニ政府ニ申告スルトキハ本法施行日ヨリ本法ニ依リ免許ヲ受ケタル者ト看做ス
次テ明治三十四年八月二十三日、勅令第百六十八号ヲ以テ其施行規則ヲ発布セリ、左ノ如シ
   麦酒税法施行規則
 第一条 麦酒ヲ製造セムトスル者ハ製造場ヲ定メ其ノ住所・氏名又ハ名称ヲ記シタル免許申請書ヲ製造場所轄税務署ニ提出スヘシ
  製造場ヲ移転セムトスルトキハ移転先ノ製造場ヲ定メ所轄税務署ニ申告スヘシ
 第二条 麦酒ノ製造場ハ敷地ノ連続スルト否トヲ問ハス総テ一製造
 - 第21巻 p.645 -ページ画像 
場ト認ムヘキモノヲ謂フ
 第三条 麦酒製造ノ免許ヲ受ケタル者ハ其製造場毎ニ地所・建物ノ詳細ナル図面、製造用容器・器具・器械ノ目録及麦酒製造方法書ヲ調製シ、事業著手前所轄税務署ニ提出スヘシ
  前項ノ図面及目録ニ記載シタル事項ハ異動ヲ生シタルトキハ其ノ都度申告スヘシ、製造方法ヲ変更シ又ハ製造者ノ住所・氏名又ハ名称ニ異動ヲ生シタルトキ亦同シ
 第四条 麦酒製造者ヨリ前条第一項ノ目録ヲ提出シ又ハ同第二項ノ申告ヲ為シタルトキハ、所轄税務署ハ其ノ容器・器具・器械ノ検定ヲ為スヘシ、此ノ場合ニ於テ税務署ハ之ニ番号・容量其ノ他ノ必要ナル事項ヲ標記又ハ烙記スルコトヲ得
  前項検定法《(後カ)》ニ非ラサレハ製造者ハ麦酒製造用容器・器具・器械使用ヲ為スコトヲ得ス
 第五条 麦酒製造者ハ製造著手ノ時期ヲ定メ予メ所轄税務署ニ申告スヘシ、製造ヲ休止セムトスルトキ若ハ休止後製造ニ著手セムトスルトキ、又ハ其ノ申告シタル事項ヲ変更スルトキ亦同シ
 第六条 麦酒製造業ヲ相続シタルトキハ相続人ヨリ其ノ旨所轄税務署ニ申告スヘシ
  麦酒製造業ヲ譲渡サムトスルトキハ譲受人ト連署シ所轄税務署ニ申告スヘシ
 第七条 麦酒製造者其ノ製造ヲ廃止セムトスルトキハ免許取消申請書ヲ所轄税務署ニ提出スヘシ
 第八条 製造石数査定ハ濾過シタル時ニ於テス
 第九条 麦酒醸造中醗酵液、廃棄・亡失其ノ他醗酵液ニ異状アリタルトキハ、製造者ハ其ノ旨直ニ所轄税務署ニ申告スヘシ
 第十条 麦酒税法第七条ニ依リ、造石税ノ免除ヲ請ハムトスル者ハ亡失ノ事実アリタルトキ、直ニ其ノ申請書ヲ所轄税務署ニ提出スヘシ
 第十一条 麦酒製造者ハ少クトモ左ノ事項ヲ帳簿ニ記載スヘシ
   一 原料ノ種類・数量、他ヨリ引取リタルモノニ在リテハ引取ノ日及其ノ引取先
   二 使用シタル原料ノ種類・数量及其使用ノ日
   三 製造シタル麦酒ノ数量及其製成ノ日
   四 他ニ引渡シタル麦酒ノ数量・価額、引渡ノ日及引渡先
  小売ノ場合ニ於テハ前項第四条引渡先ノ記載ヲ要セス
 第十二条 麦酒販売者ハ少クトモ左ノ事項ヲ帳簿ニ記載スヘシ
   一 引取リタル麦酒ノ数量・価額、引取ノ日及引取先
   二 販売シタル麦酒ノ数量・価額、販売ノ日及売渡先
  小売ノ場合ニ於テハ前項第二号売渡先ノ記載ヲ要セス
 第十三条 収税官吏ハ随時麦酒製造場又ハ販売場ニ就キ麦酒、其ノ原料品・容器・器具・器械又ハ帳簿書類ヲ検査スヘシ
 第十四条 収税官吏ハ監督上必要ト認ムルトキハ製造用容器・器具器械ニ封印ヲ施スコトヲ得
 第十五条 麦酒製造者ハ左ノ場合ニ於テハ収税官吏ノ承認ヲ受クヘ
 - 第21巻 p.646 -ページ画像 

   一 麦芽汁ヲ醗酵桶ニ入レムトスルトキ
   二 醗酵液ヲ他容器ニ移替ヘムトスルトキ
   三 麦酒ノ濾過ヲ為サムトスルトキ
   四 麦酒ノ残滓等ヲ用ヰ、更ニ麦酒ヲ製造セムトスルトキ
   五 麦酒ノ残滓ヲ製造場外ニ移出シ、又ハ他ノ残滓ト混合セムトスルトキ
   六 自己ノ所有ト否トヲ問ハス製造用容器・器具・器械ヲ製造場外ニ移出セムトスルトキ
   七 製造場外ヨリ製造場内ニ麦酒ヲ移入セムトスルトキ
 第十六条 麦酒製造場所在地ニ現住セサルトキハ、麦酒税ニ関スル事務ヲ処理セシムル為、管理人ヲ定メ所轄税務署ニ申告スヘシ
 第十七条 収税官吏ハ麦酒製造者及販売者ノ営業ニ関シ職務上知得シタル事項ヲ他ニ漏洩スルコトヲ得ス
   附則
 第十八条 本令第四条第二項ハ本令施行ノ際ニ限リ麦酒税法第二十二条ニ依リ麦酒ノ製造ヲ申告シタル者ニ之ヲ適用セス
前掲ノ如ク麦酒税法ヲ発布シタルカ故ニ之カ施行上ニ於テ其取扱心得方ヲ内訓スルノ必要アリシカ故ニ、明治三十四年九月内訓第七四三号ヲ以テ左ノ訓令ヲ発セリ
 麦酒税法施行上取扱方左之通心得ヘシ
 第一条 麦酒製造者ニ於テ製造場ヲ移転セムトシ之レカ申告ヲ為シタルトキハ、移転前ノ製造場所轄税務署ハ之ヲ移転先ノ製造場所轄税務署ニ通報スルコトヲ要ス
 第二条 麦酒税法施行規則第三条ニ依リ製造者ヨリ提出スル目録ニ記載スヘキ器具・器械ハ製造上主要ノモノニ限ルモノニシテ、製造方ニ関係ヲ有セサルカ如キモノハ之ヲ記載スルニ及ハス
 第三条 製造者ヨリ容器・器具・器械ノ目録ヲ提出シ、又ハ目録ニ記載シタル事項ニ異動ヲ生シタル旨ノ申告アリタルトキハ、成ルヘク速カニ検定ヲ為シ、製造上ニ支障ヲ与ヘサルコトニ注意スヘシ
 第四条 醗酵桶ノ容量又ハ醗酵桶中ニ在ル醗酵液ノ石数ヲ測算スルハ、其ノ形体ニ応シ適実ノ方法ヲ以テ之ヲ為スモノトス
 第五条 壜詰又ハ樽詰麦酒ノ製造石数ヲ査定スルトキハ、便宜同一形体ノ壜又ハ樽一個ニ付其ノ容量ヲ測リ、之ヲ総数ニ乗シテ麦酒ノ製造石数ト為スヘキモノトス
 第六条 製造石数ノ査定ハ濾過シタル時ニ於テスヘキモノナリト雖濾過ノ後殺菌ノ為メ火入スルモノニ在テハ火入後ニ於テ査定ヲ為スモ妨ナシ
 第七条 製造石数ノ査定ニ付テハ適当ナル時機ヲ考察シテ収税官吏ヲ派遣シ、其ノ機ヲ誤ラサルコトニ注意スヘシ
 第八条 製造場・容器・器具・器械ノ異動ニ付テハ製造者之ヲ申告スヘキモノナルモ、尚実際ニ於テ其ノ申告ナキモノナキヤ否ニ注意シ、収税官吏ヲシテ定時又ハ随時ニ之レカ調査ヲ為サシムルコ
 - 第21巻 p.647 -ページ画像 
トヲ要ス
 第九条 製造場内ニ現在スル麦酒及其ノ原料品ハ常ニ帳簿ノ現在高ト符合セサルコトナキヤ否ニ注意シ、収税官吏ヲシテ定時又ハ随時ニ帳簿ト現在品トノ照合ヲ為サシムルコトヲ要ス
 第十条 製造用容器・器具・器械ニ封印ヲ施シ、若ハ製造者ヲシテ或ル行為ニ付収税官吏ノ承認ヲ受ケシムルハ全ク製造上ノ監督ヲ完クスルノ旨趣ニ出テタルモノナルヲ以テ、成ルヘク製造者ノ業務ヲ妨ケサル範囲ニ於テ適宜ノ処分ヲ為スコトニ注意スヘシ
 第十一条 麦酒税法施行規則第十五条第三号ニ依リ麦酒ノ濾過ヲ為サムトスルトキ承認ヲ受ケシムルハ、収税官吏ヲシテ濾過前ニ於ケル麦酒ノ数量ヲ知リ、之ニ依テ査定ニ際シ其ノ石数ノ当否ヲ判断スル資料ト為サシメムトスルノ旨趣ニ出テタルモノナルヲ以テ承認ヲ与フルニ先ツテ収税官吏ヲシテ其ノ麦酒ノ数量ヲ算定セシムルコトヲ要ス
 第十二条 大製造場ニシテ多量ノ麦酒ヲ製造スルモノニ在テハ常ニ一人以上ノ収税官吏ヲ製造場内ニ駐在セシメテ、査定・検定又ハ承認等ノ事ニ当ラシメ、製造者ニ不便ヲ与ヘサルコトヲ期スルヲ要ス
 第十三条 麦酒ヲ販売スル者ニ対シ検査ヲ為スハ法令上差支ナシト雖、元来直接製造ニ関係ナキ販売者ニ対シ検査ヲ為スコトヲ許シタルハ、全ク製造者ニ対スル監督ヲ完クスルノ旨趣ニ出テタルモノナルヲ以テ、販売者ニ対シ検査ヲ為スハ、之ヲ為スニアラサレハ製造者ノ監督ヲ完クスルコト能ハサルカ如キ必要アル場合ニ限ルコトニ注意スルコトヲ要ス
 第十四条 検査ヲ執行シ又ハ監督上ノ処分ヲ為シタルトキハ其ノ調書ヲ提出セシムルコトヲ要ス
 右内訓ス
而シテ麦酒税ニ関シテハ爾後変更ヲ見ス
    麦酒税収入額
   年度             金額
                      円
  明治三十四年度       九四、〇四〇・三一〇
  同三十五年度       六三七、一二二・四六三