デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第21巻 p.664-673(DK210116k) ページ画像

明治34年4月24日(1901年)

是ヨリ先、横浜共同電灯株式会社ト高田商会トノ間ニ米国ハイネ水管汽缶売買ニ関シテ紛議アリ、三月七日ニ至リ当会議所仲裁ヲ依頼セラル。栄一、根津嘉一郎等ト共ニ仲裁委員トナリテ審議ヲ遂ゲ是日双方ニ仲裁宣告書ヲ交付ス。


■資料

東京商業会議所報告 第一〇一号・第一〇頁 明治三四年四月刊(DK210116k-0001)
第21巻 p.664-665 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇一号・第一〇頁 明治三四年四月刊
○第百七十九回役員会議 三月十一日開
 出席者
  渋沢栄一君    大倉喜八郎君
  井上角五郎君   雨宮敬次郎君
午前十時開議、特別会員高木豊三君参席ノ上、左ノ事項ヲ協議セリ
 一 横浜共同電灯株式会社及高田商会ヨリ依頼ニ係ル仲裁ノ件ハ之ヲ受理シ、定款第五十九条ノ規定ニ依リ仲裁委員ヲ左ノ如ク選定スル事
         根津嘉一郎君   渋沢栄一君
         梅浦精一君    大橋新太郎君
 - 第21巻 p.665 -ページ画像 
         大倉喜八郎君   井上角五郎君
         加藤正義君    阿部泰蔵君
         高木豊三君
 一 来十三日午後五時仲裁委員会ヲ開キ、委員長ヲ選挙シ、且ツ仲裁ノ手続ヲ議スル事
午後十一時二十分閉会


渋沢栄一 日記 明治三四年(DK210116k-0002)
第21巻 p.665 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三四年     (渋沢子爵家所蔵)
三月十一日 曇
午前九時商業会議所役員会ニ出席シ、仲裁判断ノ事ヲ談ス ○下略
   ○中略。
三月十三日 晴
○上略 商業会議所ニ抵リ仲裁判断ノ事其他ノ事ヲ協議ス ○下略


東京商業会議所報告 第一〇一号・第一一頁 明治三四年四月刊(DK210116k-0003)
第21巻 p.665 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇一号・第一一頁 明治三四年四月刊
○第百八十一回役員会議 三月十六日開
 出席者
  大倉喜八郎君   長尾三十郎君
  雨宮敬次郎君   加藤正義君
  中村清蔵君
午後四時二十分開議、左ノ事項ヲ協議セリ
 一 阿部泰蔵君ヨリ仲裁委員就任ヲ辞セラレタルニ付、其補欠トシテ益田克徳君ヲ同委員ニ選定スル事
午後四時四十分閉会


東京商業会議所報告 第一〇一号・第六―七頁 明治三四年四月刊(DK210116k-0004)
第21巻 p.665-666 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇一号・第六―七頁 明治三四年四月刊
○第十一回定期会議 三月十六日開
 出席者
  森清右衛門君 ○外二十三名氏名略
午後四時五十分開議
渋沢会頭欠席ノ為メ、大倉副会頭議長席ニ就キ、先ツ左ノ件々ヲ報告ス
○中略
 一 横浜共同電灯株式会社及高田商会ヨリノ依頼ニ係ル仲裁ノ件ハ定款第五十九条ニ依リ役員会議ニ於テ左ノ諸君ヲ委員ニ選定セリ
                   渋沢栄一君
                   根津嘉一郎君
                   大倉喜八郎君
                   大橋新太郎君
                   井上角五郎君
                   益田克徳君
                   加藤正義君
                   高木豊三君
 - 第21巻 p.666 -ページ画像 
                   梅浦精一君
○中略
午後五時十分閉会


渋沢栄一 日記 明治三四年(DK210116k-0005)
第21巻 p.666 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三四年     (渋沢子爵家所蔵)
三月十六日 雨
此日ハ歯痛甚キヲ以テ ○中略 夕五時商業会議所定期会ヲ開キシモ出席ヲ断リ遣ス
三月十七日 晴
午前九時商業会議所仲裁判断委員会ニ出席ス、加藤正義・大倉喜八郎高木豊三・梅浦・大橋・根津ノ諸氏来会ス、委頼者両方ヨリ代理人出席アリテ、先ツ一応ノ審問ヲ為シ、畢テ更ニ委員会ヲ開キ、主査ヲ高木・加藤・梅浦ノ三氏ニ托シ、来ル廿日ニ会合ノ事ヲ約ス ○下略
   ○中略。
三月二十日 晴
○上略 午後 ○中略 東京商業会議所ニ抵リ仲裁委員会ヲ開ク、大倉・高木・加藤正義・梅浦精一諸氏来会ス、畢テ夜十時深川宅ニ帰宿ス
   ○中略。
三月廿八日 晴
○上略 十時東京商業会議所ニ抵リ、仲裁委員会ヲ開ク、当事者双方ノ代人ヲ招喚シテ、委員会合ノ上審問ヲ為ス、畢テ委員会ヲ開キテ討議ニ時ヲ移スト云トモ決議スルヲ得ス、終ニ商習慣ヲ調査スヘキ事トナリテ、四月ノ初ヲ以テ第三回委員会ヲ開クヘキ事ヲ約シテ散会ス ○下略
   ○中略。
四月六日 曇
午後一時日本郵船会社ニ抵リ、加藤正義氏ト共ニ商業会議所仲裁委員会ノ事ヲ談ス、萩原源太郎氏来会ス ○下略


東京商業会議所報告 第一〇二号・第一〇頁 明治三四年一二月刊(DK210116k-0006)
第21巻 p.666 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇二号・第一〇頁 明治三四年一二月刊
○第百八十二回役員会議 明治三十四年四月十五日開
 出席者
  渋沢栄一君   大倉喜八郎君
  雨宮敬次郎君  加藤正義君
  藤山雷太君
午前九時三十分開議、左ノ事項ヲ協議セリ
○中略
 一 高田商会及横浜共同電灯株式会社ヨリ依頼ニ係ル紛議仲裁ノ件ハ、仲裁委員ノ請求ニ依リ本日ヨリ向フ二週間延期スル事
午前十一時閉会


渋沢栄一 日記 明治三四年(DK210116k-0007)
第21巻 p.666-667 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三四年     (渋沢子爵家所蔵)
四月十五日 曇
午前十時商業会議所ニ抵リ、仲裁委員会ニ列ス、大倉・高木・加藤諸氏来会ス ○下略
 - 第21巻 p.667 -ページ画像 
   ○中略。
四月十七日 晴
○上略 十一時商業会議所ニ抵リ、仲裁委員会ヲ開ク、仲裁宣告ノ趣旨ニ付種々ノ討論アリシモ、今日ヲ以テ総テ決定スルヲ得タリ ○下略
   ○中略。
四月二十四日 曇
○上略 十時商業会議所ニ抵リ、仲裁委員会ヲ開ク、且当事者双方ヘ宣告書ヲ交付ス ○下略


東京商業会議所報告 第一〇二号・第一四頁 明治三四年一二月刊(DK210116k-0008)
第21巻 p.667 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇二号・第一四頁 明治三四年一二月刊
○同月 ○四月二十四日、予テ横浜共同電灯株式会社及高田商会ヨリ依頼ニ係ル紛議仲裁ノ義ニ付宣告ノ手続ヲ執行シタリ(仲裁宣告書ノ全文ハ参照ノ部第五号ニ掲載ス)


東京商業会議所報告 第一〇二号・第三一―三七頁 明治三四年一二月刊(DK210116k-0009)
第21巻 p.667-673 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇二号・第三一―三七頁 明治三四年一二月刊
 ○参照
○第五号
 明治三十四年四月二十四日、横浜共同電灯株式会社及高田商会ヨリ依頼ニ係ル紛議仲裁ノ義ニ付、当事者ヘ交付セシ仲裁宣告書全文ハ左ノ如シ
    仲裁宣告書
横浜市常盤町一丁目九番地横浜共同電灯株式会社々長木村利右衛門及東京市麹町区有楽町一丁目一番地高田商会主高田慎蔵ノ両氏ヨリ、両氏間ニ生シタル紛議ニ関シ、本会議所ニ仲裁ノ判断ヲ請求アリタルニ付、本会議所仲裁委員ハ定款ノ規定ニ依リテ審理ヲ遂ケ、仲裁ノ判断ヲ為スコト左ノ如シ
     事実関係
明治三十三年四月二日附契約書ヲ以テ横浜共同電灯株式会社ト高田商会トノ間ニ於テ米国「ハイネ」水管汽缶二個ノ売買契約ヲ締結シ、高田商会ハ該汽缶ノ供給ヲ為シタルモ、約定ノ到着期日ヲ遅延シ、且ツ約定ノ輸送方法ヲ執ラサリシ為メニ、双方間ニ紛議ヲ生シ、左ノ事項ニ付キ仲裁判断ヲ請求セラレタリ
一、延滞償金ハ契約書第五条ニ拠リ高田商会ヨリ支払フヘキモノナルヤ、或ハ契約書第一条ニ拠リ免除スヘキモノナルヤ
二、契約書第五条ニ拠リ高田商会ヨリ延滞償金ヲ支払フヘキ場合ニハ何日分ヲ以テ至当トスルヤ
三、総代価二百分ノ一ノ違約証書面金額ニ拠リテ算出スヘキモノナルヤ、将タ其減価額ニ拠リテ算出スヘキモノナルヤ
四、契約書第一条ニ拠リ延滞償金ヲ免除スヘキ場合ニ於テハ、高田商会ハ左記ノ利息ヲ要求セントシ、横浜共同電灯株式会社ハ之ニ応スヘキ理由ナシト認ム、果シテ何レヲ以テ至当ナリトスルヤ
 (一) 汽缶ノ授受ヲ完了シタル日ヨリ十二月二十七日迄年八歩ノ利息
 (二) 延滞償金ノ引当トシテ高田商会ヨリ横浜共同電灯株式会社ヘ
 - 第21巻 p.668 -ページ画像 
預ケタル金額ニ対シ、十二月二十八日ヨリ年一割二歩ノ利息
五、艀船ノ碇泊料ハ双方ノ内何レノ負担ニ属スヘキモノナルヤ
     判断理由
 第一項 高田商会ハ契約書第五条ノ違約金ヲ支払フヘキモノナルヤ、又ハ横浜共同電灯株式会社ニ於テ契約書第一条但書ノ約旨ニ拠リテ其全部又ハ一部ヲ免除スヘキモノナルヤ
本項ニ関スル横浜共同電灯株式会社主張ノ要領ハ契約書第一条ニ「乙(高田商会ヲ指ス)ハ本契約物品ヲ明治三十三年八月三十一日迄ニ横浜ヘ到着セシムヘシ、但天災其他避クヘカラサル事変アリタル時ハ甲(横浜共同電灯株式会社)ノ見込ヲ以テ相当ノ猶予ヲ与フルコトアルヘシ」トアリテ、天災其他不可抗力ノ場合ニ於テモ尚且其猶予ヲ与フルト否トハ一ニ甲ノ見込ヲ以テ定ムル趣意ナリ、故ニ高田商会カ明治三十三年九月六日附書状ヲ以テ積込予定ノ汽船ニ損所ヲ生シ航海ヲ中止シタルカ為メ、着荷遅延ノ猶予ヲ乞ヒ、且違約金ノ免除ヲ懇請シタルニ対シ、横浜共同電灯株式会社ハ九月十二日附書状ヲ以テ(一)五月下旬紐育出帆ノ「バーニシヤ」号出帆ノ中止トナリシハ汽缶積込ノ前ナリシャ、将タ積込ノ後ナリシヤ(二)五月下旬ヨリ「ヒルグレン」号ニ積込ミタル日迄東洋ニ向ツテ紐育ヲ出帆セシ汽船ノ有無等ヲ問合セ、若シ事実出帆ノ汽船ナクシテ且汽缶ヲ「バーニシヤ」号ニ積込ノ後ニ出帆中止トナリシ場合ニ於テハ違約金ヲ免除スヘキ意思ナリシナリ、然ルニ其後東洋ニ向ツテ出帆セシ汽船アリ、又「バーニシヤ」号ノ出帆中止ハ汽缶積込ノ前ナリシトノ確答ヲ得タルヲ以テ、毫モ違約金ヲ免除スヘキ理由ナシ、乃チ約定通リノ違約金額ヲ請求スト云フニ在リ、又高田商会主張ノ要領ハ、汽缶積込ノ予定船「バーニシヤ」号ニ積込ムコト能ハサリシ事由ハ、紐育領事官ノ証明書ノ如ク、又其次回便船「ロークビー」号ニ積込マサリシハ、紐育支店ノ電報並ニ三井物産合名会社ノ書翰ニ云ヘルカ如ク、該船ハ「カーネギー」製鋼会社ノ雇船ニ係リ、普通ノ貨物ヲ積込ムコト能ハサリシカ為メニシテ、何レモ不可抗力ノ事由ニ原因スルモノナルカ故ニ、違約金ノ責任ハ全然免除セラルヘキモノナリト云フニ在リ
依テ案スルニ、契約書第一条但書ノ趣旨ニ基キ違約金ノ全部若クハ一部ヲ免除スルノ至当ナルヤ否ヤハ、汽缶積込予定船「バーニシヤ」号ノ発航故障ノ事情、及ヒ故障発生以後ニ於テ約定期限前又ハ積込汽船「ヒルグレン」号ノ横浜着港以前ニ同港ニ到着スヘキ予定ノ適当ナル船舶ニシテ且高田商会ノ依頼シ得ヘカリシモノアリシヤ否ヤニ依テ決スヘキモノトス、而シテ「バーニシヤ」号ニ高田商会カ予知シ得サル故障ヲ生シタル為メ之ニ積込ミ能ハサリシ事実ハ、信憑スヘキ領事官ノ証明其他ノ証拠アルヲ以テ之ヲ認ムルコトヲ得ヘシ「バーニシヤ」号故障発生以後「ヒルグレン」号出帆以前ニ於テ紐育解纜ノ船舶アリタルハ事実ナリト雖モ、或ハ「バーニシヤ」号故障発生ノ時ト他船ノ発航期日トノ間僅ニ数日ナリシニヨリ「ロークビー」号ノ出帆前ニ於テハ適当ナル便船ナカリシモノト推定スルヲ得ヘク、随テ高田商会カ此間汽缶ノ積込ヲ為サヽリシハ其過失ニ因ルモノニアラスト認ム、然
 - 第21巻 p.669 -ページ画像 
リ而シテ高田商会カ「ロークビー」号ニ汽缶ヲ積込マサリシハ果シテ其怠慢ニ帰スヘキヤ否ヤヲ審案スルニ、此「ロークビー」号ハ高田商会カ兼テ輸送ヲ委託シタル「バーバー」会社ノ取扱ニ係ル次回汽船ニシテ該汽缶搭載ニ適シタル船舶ナルカ如ク、且ツ六月中旬ニ紐育ヲ出帆シタルモノナルヲ以テ、若シ高田商会カ同号ニ積込ヲ託シ得ヘクシテ之ヲ託セサリシナラハ之ヲ同商会ノ怠慢ト云ハサルヘカラス、此点ニ関シ同商会ノ提出セル支店ノ電報ヲ見ルニ「ロークビー」号ハ「カーネギー」製鋼会社カ「バーバー」会社ヲ経テ雇船ト為シタルモノニシテ、同製鋼会社ノ荷物ノミヲ搭載シタリトアリ、又同商会ノ提出セル三井物産合名会社ノ書翰ニ依レハ、同合名会社ノ注文ニ係ル軌条及ヒ附属品並ニ橋桁材料ノミヲ搭載シタルモノヽ如シ、而シテ尚ホ委員ノ別ニ探知スル所ニ依レハ「ロークビー」号カ雇船ナリシハ三井物産合名会社ニ存スル証書ニ拠リテ明瞭ナルモ、同号積載ノ貨物中「カーネギー」製鋼会社以外ノ製鋼会社ヨリ同会社ヘ送付セル貨物ヲモ含ミタルヲ観レハ、該雇船契約ハ一部雇船契約ナリシ事跡ナキニ非ス、蓋シ此「ロークビー」号ハ少クモ其一部雇船契約ノ目的タリシヲ以テ、同船ニ積込マサリシハ其事情稍々酌量スヘキモノアリト雖モ、高田商会ハ同号ニ積込ヲ依頼スルニ充分ナル注意及尽力ヲ為シタルモノト認ムル能ハサルヲ以テ、同商会ハ「ロークビー」号ニ汽缶ヲ積込マサリシコトニ就キ其責任ノ全免ヲ主張スルコトヲ得ス、以上陳述スルカ如キ理由ナルニヨリ「ロークビー」号出帆前ニ汽缶ノ積込ヲ為サヽリシコトニ対シテハ高田商会ハ契約上違約金ノ全額ヲ免除セラルヽヲ至当トシ、又「ロークビー」号ニ之ヲ積込マサリシコトニ対シテハ、契約上違約金ノ半額ヲ負担スルヲ至当ナリトス
 第二項 契約書第五条ニ拠リ高田商会ニ於テ違約金ヲ支払フヘキ場合ニ於テハ、其幾日分ヲ支払フヲ以テ相当トスヘキヤ、詳言スレハ着港迄ノ遅延日数ハ勿論、横浜着港後据付完了マテノ遅延日数ニ対シテモ、違約金額ト同一ノ損害賠償ヲ支払フヘキモノナルヤ
本項ニ関スル横浜共同電灯株式会社主張ノ要領ハ、契約書第一条ノ約定ニ基キ、明治三十三年九月一日ヨリ同年十月二十五日ニ至ル五十五日間ニ対スル違約金ハ勿論、着港後十月三十日ヨリ十一月五日ニ至ル七日間ハ高田商会ニ於テ汽缶ヲ一旦税関ニ陸揚シタルカ為メニ生シタル遅延ナリ、又十一月六日ヨリ同月十三日ニ至ル八日間ハ高田商会ニ於テ分解輸送ノ約定ニ拘ラス不注意ニモ組立輸送ヲ為シタル結果ニ因リテ生シタル遅延ナリ、又十一月十四日ヨリ十二月十八日ニ至ル三十五日間ハ汽缶ニ破損ヲ生シタルカ為メ之カ修繕ニ要シタル時日、及ヒ不完全ナル履行ヲ承諾セシメントシテ談判交渉ノ為メニ生シタル遅延ナリ、是皆高田商会ノ不注意ニ原因スルモノニシテ、為メニ横浜共同電灯株式会社ニ於テハ多大ノ損害ヲ被リタルモ、違約金ト同額ノ賠償金ヲ得ルヲ以テ満足シ、前掲日数ニ対シ一日ニ付代価二百分ノ一ノ金額ヲ請求スト云フニ在リ、又高田商会主張ノ要領ハ、契約書第一条ノ違約金ハ全然免除セラルヘキハ勿論、着港後汽缶ヲ税関ニ陸揚シタルハ同商会ノ怠慢ニアラス、同商会ハ直チニ之ヲ裏高島町河岸ヘ輸送ス
 - 第21巻 p.670 -ページ画像 
ル為メ艀船其他充分ノ準備ヲ為シ置キタルモ、汽船代理店ノ不注意ニテ之ヲ税関ニ陸揚シタルモノナリ、又十一月六日ヨリ同月十三日ニ至ル八日間ハ組立輸送ノ為メニ遅延シタルモノニアラス、仮令分解輸送ヲ為シタルトスルモ、元来此汽缶ハ其構造上細小部分ニ分解スルヲ得サルモノナレハ、之ヲ陸揚スルニハ相当ノ日子ヲ要スルハ当然ナリ、又汽缶破損ノ修繕ト云ヒ、将タ談判ノ交渉ト云ヒ、共ニ買主承諾ノ結果ニ外ナラサルカ故ニ、此等ノ日数ニ対シテハ違約金ヲ払フヘキモノニアラスト云フニ在リ
依テ按スルニ、契約書第五条違約金ノ契約ハ同第一条ニ明記セル如ク横浜着港マテノ遅延ニ対スル約定ニシテ、第一項判断ノ結果トシテ、此場合ニ於ケル遅延日数ハ「ロークビー」号カ横浜ニ着港シタル翌日ヨリ起算シ、即チ明治三十三年九月八日ヨリ十月二十五日ニ至ル四十八日間ト定ムルヲ相当ナリトス、又高田商会ハ汽缶ヲ直接裏高島町河岸ニ廻送スルノ準備ヲ為シタリト云フト雖トモ、汽船代理店カ過失ニヨリテ之ヲ税関ニ陸揚シタルハ等シク同商会ノ不注意ニ原因セルモノト認メサルヘカラス、故ニ之カ為メニ生シタル七日間遅延ノ責任ハ高田商会ニ於テ之ヲ負フヘキモノトス、而シテ此損害ノ額ニ付テハ別ニ約定ナシト雖トモ、既ニ損害ノ予定額ニ付約定アル以上ハ、着港ノ前後ニ依テ遅延ノ責任ニ軽重アルノ理ナキヲ以テ、高田商会ハ此七日間ニ対シテモ同シク代価二百分一ヲ支払フヲ以テ相当ナリトス、又十一月六日ヨリ同月十三日ニ至ル八日間ノ遅延ニ付テモ、横浜共同電灯株式会社ハ組立輸送ヲ為シタル結果ナリト云フト雖トモ、此汽缶ハ高田商会ノ弁スルカ如ク其構造上細小部分ニマテ分解スヘキモノニアラサルカ故ニ、仮令約定ノ如ク分解輸送ヲ為シタリトスルモ僅ニ一日ヲ以テ陸揚ヲ終了スルカ如キハ事実為シ能ハサル所ニシテ、之ヲ要スルニ此八日間ノ遅延ヲ以テ全ク組立輸送ノ結果ニ帰スルハ其当ヲ得タルノ主張ニアラス、然リト雖トモ高田商会ハ組立輸送ヲ為シタルニ就キ全部ノ責任ヲ辞スヘカラサルカ故ニ、同商会ハ此八日ノ遅延ニ対スル違約金ノ半額ヲ負担スルヲ至当ナリトス、又横浜共同電灯株式会社ハ高田商会カ不完全ナル履行ノ承諾ヲ求メタルカ為メニ其談判交渉ニ数多ノ時日ヲ要シタリト云フト雖トモ、汽缶ノ破損腐蝕ニ付テハ之カ修繕ヲ命シ、其費用ハ高田商会ヲシテ之ヲ負担セシメタルノミナラス、尚ホ其全額ニ対スル三割即チ金五千四百六拾六円五拾参銭ヲ減価セシメ而シテ之ヲ承諾シタルモノナレハ、此談判交渉ノ為メニ要シタル遅延ハ高田商会ノ責ニ帰スヘキニアラス、若シ果シテ事実ノ損害アリタリトセハ、之ヲ承諾スルトキニ於テ賠償ノ額ヲ協定スヘキ筈ナリ、之ヲ要スルニ、横浜共同電灯株式会社カ談判交渉ニ要シタル時日ニ対シ遅延ノ違約金ヲ要償スルハ正当ノ理由ナキモノト認ムルヲ以テ、高田商会ニ於テ之ヲ支払フノ義務ナキモノトス
 第三項 一日ニ付総代価二百分ノ一ノ違約金ハ契約証書面ノ金額ニ拠リテ算出スヘキモノナルヤ、将タ其減価額ニ拠リテ算出スヘキモノナルヤ
本項ニ関スル高田商会主張ノ要領ハ、違約金ノ割合ハ契約面総金額、即チ米金八千九百九拾七弗ノ換算金壱万八千弐百弐拾壱円七拾五銭ノ
 - 第21巻 p.671 -ページ画像 
内ヨリ破損腐蝕ノ為メ全価額ノ三割即チ五千四百六拾六円五拾参銭ヲ控除シタル残額、金壱万弐千七百五拾五円弐拾弐銭ノ二百分ノ一タルヘシト云フニ在リ、又横浜共同電灯株式会社主張ノ要領ハ、契約書第五条ニ所謂総代価トハ米金八千九百九十七弗ヲ指スモノナルカ故ニ、違約金ノ割合ハ此換算金壱万八千弐百弐拾壱円七拾五銭ノ二百分一タルヘシト云フニ在リ
依テ按スルニ、契約ニ定ムル違約金ナルモノハ特別ノ意思表示ナキトキハ之ヲ損害ノ予定額ト推定スヘキモノニシテ、債務ノ不履行ニ因テ生スヘキ損害ヲ見積リ一定ノ金額ヲ指定シタルモノナリ、然ルニ本件契約ニ於テハ単ニ売買代価ヲ以テ損害算定ノ標準ト為シ、而シテ違約金ノ割合ヲ其二百分一ト定メタレトモ、是畢竟代価二百分ノ一ニ相当スル金額ヲ以テ損害ノ額ヲ予定シタルモノト見ルヘク、随テ其標準タル代価トハ契約当時ノ価額即チ証書面ノ価額ヲ指スモノト解釈スルヲ以テ相当トス、故ニ高田商会ノ減価額ニ拠ルヘシトノ主張ハ其当ヲ得サルモノトス
 第四項 契約書第一条ニ拠リ違約金ヲ免除スヘキ場合ニ於テハ高田商会ハ左記ノ利息ヲ要求セントシ、横浜共同電灯株式会社ハ之ニ応スヘキ理由ナシト認ム、果シテ何レヲ以テ至当トスルヤ
  (一) 汽缶ノ授受ヲ完了シタル日ヨリ十二月二十七日マテ年八歩ノ利息
  (二) 延滞償金ノ引当トシテ高田商会ヨリ横浜共同電灯株式会社ヘ預ケタル金額ニ対シ十二月二十八日ヨリ年一割二歩ノ利息
本項(一)ニ関スル高田商会主張ノ要領ハ、本件契約物品ハ十二月十九日ニ引渡ヲ完了シタルニ、横浜共同電灯株式会社ハ十二月二十八日迄其代金ノ支払ヲ為サヽリシニ因リ、同二十日ヨリ二十七日ニ至ル八日間年八歩ノ割合ヲ以テ支払代金ニ対スル利息ヲ請求スト云フニアリ、又横浜共同電灯株式会社主張ノ要領ハ、目的物ノ主タル部分ハ十二月十九日ニ之ヲ受領シタルモ、附属ノ器具ハ不足ノモノアリ、高田商会ハ十二月二十八日ニ至リ右不足ノ器具ニ付テハ其代価ヲ弁償スヘキヲ以テ他ヨリ購入セラレタシトノ申込ヲ為シ、同会社ハ之ヲ承諾シテ玆ニ全部ノ履行ヲ終リタルヲ以テ、即日代金ノ支払ヲ為シタルモノナレハ其支払ヲ遅延シタルコトナシト云フニ在リ
依テ按スルニ、横浜共同電灯株式会社主張ノ事実ハ高田商会カ十二月二十八日附ヲ以テ発シタル附属器具ニ関スル契約書ニ依リテ正当ト認ムヘキヲ以テ、高田商会請求ノ理由ハ其当ヲ得タルモノニアラス
又(二)ニ関シテ高田商会ハ延滞償金ノ引当トシテ横浜共同電灯株式会社ヘ預ケ置キタル金額ニ対シ年一割二歩ノ利息ヲ請求シ、横浜共同電灯株式会社ハ此引当ハ契約書第五条但書ニ拠リ買主ニ与ヘラレタル権利ニ基クモノナレハ之ヲ支弁スルノ義務ナシ、仮ニ之ヲ支弁スヘキモノトスルモ一割二歩ノ利率ハ合意セサルモノニ付之ヲ支払フノ義務ナシ殊ニ仲裁判断ヲ求ムルノ合意ヲ為シテヨリ売主ノ都合ヲ以テ手続ヲ遅延シタル期間ノ利息ハ、全ク之ヲ支弁スヘキモノニアラスト主張セリ
 - 第21巻 p.672 -ページ画像 
依テ按スルニ、此金額ハ横浜共同電灯株式会社ニ於テ担保金トシテ特別ノ保管ヲ為サヽル限リハ之ヲ取引銀行ニ預ケ入レタルモノト推定スルヲ得ヘシ、果シテ然ラハ依リテ生スル利息ノ内引当金総額中ヨリ横浜共同電灯株式会社カ受取ルヘキ違約金ヲ控除シタル残額、即チ高田商会ニ返還スヘキ金額ニ対スル利息ハ仮令高田商会カ仲裁請求ノ手続ヲ遅延シタリトスルモ猶同商会ノ所得ニ帰スヘキモノトス、故ニ横浜共同電灯株式会社ハ此金額ニ対シ現今普通銀行一般ノ預金利子ト認ムヘキ年七歩ノ利息ヲ高田商会ニ支払フヲ相当トス
 第五項 艀船ノ碇泊料ハ双方ノ内何レノ負担ニ属スヘキモノナルヤ
本項ニ関シ高田商会ハ、契約書第三条但書ノ約定ニ拠リ税関ヨリ裏高島町河岸マテノ艀船費用及其船積保険料ハ甲ノ負担スヘキモノナルカ故ニ横浜共同電灯株式会社ノ負担スヘキモノナリト云ヒ、横浜共同電灯株式会社ハ、高田商会ニ於テ約定ノ如ク分解輸送ヲ為シタランニハ即日陸揚ヲ完了スヘク、随テ艀船ノ碇泊料ヲ要スルコトナカルヘキカ故ニ、同会社ニ於テハ契約ノ当時碇泊料ヲ負担スルノ意思ナカリシナリ、要スルニ碇泊料ハ全ク高田商会カ契約ニ違背シテ組立輸送ヲ為シタル結果ナルカ故ニ、同商会ニ於テ之ヲ負担スヘキモノナリト主張セリ
依テ按スルニ、組立輸送ノ違約ナルコトハ高田商会ニ於テモ自ラ認ムル所ニシテ、其碇泊料ヲ要シタル原因ハ組立輸送ニ在リト云フ横浜共同電灯株式会社ノ主張モ亦一理ナキニアラス、然ラハ当事者ノ契約当時ノ意思ニ拠レハ所謂艀船費用中ニハ碇泊料ノコトヲ包含セサルモノト解釈スルヲ相当トス、而シテ横浜共同電灯株式会社ハ特ニ明約ナキ場合ニ於ケル艀船ノ碇泊料ハ売主ニ於テ負担スルヲ以テ習慣ナリトシ殊ニ本件ト同一ノ当事者間ニ於ケル前例ヲ挙ケテ之ヲ証明セルヲ以テ本項碇泊料ハ高田商会ニ於テ負担スヘキモノトス
以上説明スル所ノ理由ニ因リ仲裁判断ノ結果ヲ示スコト左ノ如シ
     判断結果
横浜共同電灯株式会社ハ高田商会ヨリ違約金ノ担保トシテ預リタル金五千拾円九拾九銭ノ内ヨリ、総代価金壱万八千弐百弐拾壱円七拾五銭ノ二百分一、即チ金九拾壱円拾壱銭ニ四十八日ヲ乗シタル合計額金四千参百七拾参円弐拾八銭ノ半額金弐千百八拾六円六拾四銭ト、金九拾壱円拾壱銭ニ十一日ヲ乗シタル合計額金壱千弐円弐拾壱銭トヲ加算シタル金額ヲ、同株式会社ノ受取ルヘキ違約金トシテ控除シ、残額金壱千八百弐拾弐円拾四銭ニ明治三十三年十二月二十八日ヨリ返還前日マテ年七歩ノ利息ヲ附シ之ヲ高田商会ニ返還スヘク、猶艀船ノ碇泊料ハ高田商会ニ於テ負担スヘキモノトス
仲裁ノ手数料ハ各半額ヲ負担スヘキモノトス
  明治三十四年四月二十四日
            東京商業会議所
              仲裁委員長 男爵 渋沢栄一
              仲裁委員     大倉喜八郎
              仲裁委員     益田克徳
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              仲裁委員     高木豊三
              仲裁委員     梅浦精一
              仲裁委員     加藤正義
              仲裁委員     井上角五郎
              仲裁委員     根津嘉一郎
              仲裁委員     大橋新太郎


東京商業会議所報告 第一〇二号・第二頁 明治三四年一二月刊(DK210116k-0010)
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東京商業会議所報告  第一〇二号・第二頁 明治三四年一二月刊
○第百七回臨時会議 八月二十日開
 出席者
  森清右衛門君 ○外二十名氏名略
午前九時五分開議
会頭渋沢栄一君議長席ニ就キ、先ツ左ノ件々ヲ報告ス
 一 横浜共同電灯株式会社及高田商会ノ依頼ニ係ル紛議仲裁ノ件
    本件ハ明治三十四年三月七日附ヲ以テ横浜共同電灯株式会社及高田商会ヨリノ依頼ニ係リ、予テ仲裁委員ニ於テ審理中ノ処、四月二十四日ヲ以テ之カ結了ヲ告ケタルニ付、同日当事者ヲ召喚シテ仲裁宣告書ヲ交附シタリ
○中略
午前十時十分閉会


渋沢栄一 日記 明治三四年(DK210116k-0011)
第21巻 p.673 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三四年     (渋沢子爵家所蔵)
八月廿日 晴
午前八時東京商業会議所臨時会ヲ開ク ○下略