デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第21巻 p.676-680(DK210118k) ページ画像

明治34年9月9日(1901年)

是日栄一当会議所会頭トシテ、外国人ニ土地所有権及ビ鉱業権ヲ許与シ以テ外資輸入ノ途ヲ開カンコトヲ内閣総理大臣子爵桂太郎・逓信大臣子爵芳川顕正・外務大臣男爵曾禰荒助・農商務大臣平田東助ニ建議ス。次イデ十七日渋沢喜作・朝吹英二ト共ニ右四大臣ト会見シ、同件並ニ財政整理ノ件ニ就キ陳情ス。


■資料

渋沢栄一 日記 明治三四年(DK210118k-0001)
第21巻 p.676 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三四年     (渋沢子爵家所蔵)
九月三日 雨又晴
○上略 桂総理ヲ訪ヘ、鉄道抵当ニ関スル件及外国人ニ土地所有ヲ許可スル事ヲ談話ス ○下略
   ○中略。
九月九日 晴
午前九時東京商業会議所ニ抵リ、臨時会議ヲ開キ、議長席ニ在テ議事ヲ整理ス ○下略


東京商業会議所報告 第一〇二号・第五―七頁 明治三四年一二月刊(DK210118k-0002)
第21巻 p.676-677 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇二号・第五―七頁 明治三四年一二月刊
○第百八回臨時会議 九月九日開
 出席者
  井上角五郎君 ○外二十名氏名略
午前九時五十分開議
会頭渋沢栄一君議長席ニ着キ ○中略
次ニ議長ハ左ノ件ヲ議事ニ附ス
○第一号
    建議
 外人ニ土地所有権及鉱業権ヲ附与スルノ義ニ付、本会議所ノ決議ヲ以テ別紙ノ如ク政府ニ建議アランコトヲ望ム
  明治三十四年九月四日       提出者
                      渋沢栄一
                      井上角五郎
                      根津嘉一郎
                      堀江恒三郎
                      大橋新太郎
                      朝吹英二
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿
 - 第21巻 p.677 -ページ画像 
(別紙)
    外人ニ土地所有権及鉱業権ヲ許与スルノ義ニ付建議
 我国現時ノ状態ニ於テハ衷業ノ新設拡張ヲ要スヘキモノ頗ル多ク、随テ資本ヲ充実ニシテ之ニ供給スルノ策ヲ講スルハ最モ急務トスル所ナリ、而シテ其之ヲ充実ニスルニハ内外資本ヲ共通シテ自然ニ外資ノ流入ヲ求ムルモ亦其良策タルヲ信スルナリ、是ニ於テカ昨年五月並ニ本年一月ノ商業会議所聯合会ニ於テハ、外人ニ土地所有権及鉱業権ヲ許与シ因リテ以テ自然的外資輸入ノ途ヲ開クヘシトノ決議ヲ為シ、次テ本会議所ハ国家経済ノ方針ニ関シテ之ヲ当路ニ建議スル所アリシカ、不幸ニシテ未タ採納ノ栄ヲ荷フニ至ラサルハ深ク遺憾トスル所ナリ、爾来我経済界ノ実況ニ徴スルニ、外人ニシテ邦人ト共同ノ事業ヲ企劃シ又ハ邦人ノ事業ニ放資セント試ムルモノ之ナキニアラスト雖トモ、土地所有権及鉱業権ニ対スル法律上ノ障壁アルカ為メ往々其実行ヲ躊躇スルノ状アリテ、内外資本ノ共通ハ容易ニ望ミ得ヘカラサルモノヽ如シ、是レ本会議所カ速ニ此障壁ヲ撤去シテ資本共通ノ途ヲ開クヲ以テ目下ノ最急務ト認メ、玆ニ前説ヲ敷衍シテ再ヒ閣下ニ進言スルノ止ムヲ得サル所以ナリ、希クハ之ヲ採納セラレンコトヲ
 右本会議所ノ決議ニ依リ建議仕候也
本件ハ全会一致ヲ以テ之ヲ可決ス
猶本件ニ関シ、会員雨宮敬次郎君ハ之ヲ其筋ヘ陳情スル為メ議長指名ヲ以テ委員三名ヲ挙ケ、内一名ハ会頭之ニ任スヘシトノ動議ヲ発シタルニ、全会一致ヲ以テ之ヲ可決シタルニ付、議長ハ左ノ如ク委員ヲ指名シタリ
                   渋沢栄一君
                   渋沢喜作君
                   朝吹英二君
○中略
午前十時五十五分閉会


東京商業会議所報告 第一〇二号・第一六頁 明治三四年一二月刊(DK210118k-0003)
第21巻 p.677 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇二号・第一六頁 明治三四年一二月刊
○中略
○同月 ○九月九日、外人ニ土地所有権及鉱業権ヲ許与スルノ義ニ付、内閣総理・外務・逓信・農商務四大臣ヘ建議書ヲ進達ス


第十一回東京商業会議所事務報告 第七―八頁 明治三五年四月刊(DK210118k-0004)
第21巻 p.677-678 ページ画像

第十一回東京商業会議所事務報告  第七―八頁 明治三五年四月刊
一外人ニ土地所有権及鉱業権ヲ許与スルノ義ニ付、内閣総理・逓信・農商務・外務四大臣ニ建議ノ件
 本件ハ会員渋沢栄一君外五君ノ提出ニ係リ、其要旨ハ、外人ニ土地所有権及鉱業権ヲ許与スルハ内外資本共通ノ途ヲ開クニ於テ最モ急務トスル所ナルヲ以テ、速ニ之ヲ実行セラレンコトヲ政府ニ建議スヘシト云フニ在リ、仍テ明治三十四年九月九日第百八回ノ臨時会議ニ附シ其可決ヲ得タルニ付同月同日附ヲ以テ左ノ如ク内閣総理・外務・逓信・農商務四大臣ニ建議シタリ、尚ホ本件ニ関シテハ同上ノ
 - 第21巻 p.678 -ページ画像 
臨時会議ニ於テ陳情委員三名ヲ選挙シ、同月十七日ヲ以テ桂総理・芳川逓信・平田農商務・曾禰大蔵兼外務四大臣ニ陳情セシメタリ
    外人ニ土地所有権及鉱業権ヲ許与スルノ義ニ付建議
   ○前掲(第六七七頁)ノモノト同一ニツキ略ス。
  明治三十四年九月九日
          東京商業会議所会頭 男爵 渋沢栄一
    内閣総理大臣 子爵 桂太郎殿
    逓信大臣   子爵 芳川顕正殿
                    (各通)
    農商務大臣     平田東助殿
    外務大臣      曾禰荒助殿


東京商業会議所報告 第一〇二号・第一六頁 明治三四年一二月刊(DK210118k-0005)
第21巻 p.678 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇二号・第一六頁 明治三四年一二月刊
○同月 ○九月十七日、渋沢栄一・渋沢喜作・朝吹英二ノ三氏ハ午前十時桂総理大臣ヲ官邸ニ訪問シ、外人ニ土地所有権及鉱業権ヲ許与スルノ件並ニ一般財政経済ノ現状ニ関スル件ニ付陳情ス


渋沢栄一 日記 明治三四年(DK210118k-0006)
第21巻 p.678 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三四年     (渋沢子爵家所蔵)
九月十七日 晴
午前十時桂総理大臣ヲ官舎ニ訪問ス、東京商業会議所委員タルノ故ヲ以テナリ、渋沢喜作・朝吹英二同伴ス、曾禰・芳川・平田ノ三大臣列席ス、外国人ニ土地所有権付与ノ件及財政整理ノ件ヲ縷々陳情ス、桂総理ハ充分会議所ノ意見ヲ採納スヘキ旨ヲ答ヘラル ○下略


東京商業会議所報告 第一〇二号・第七―八頁 明治三四年一二月刊(DK210118k-0007)
第21巻 p.678-680 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇二号・第七―八頁 明治三四年一二月刊
○第百九回臨時会議 十一月六日開
 出席者
  大木口哲君 ○外二十二名氏名略
午後五時開議
会頭渋沢栄一君議長席ニ就キ、先ツ左ノ件々ヲ報告ス
○中略
 一 外人ニ土地所有権及鉱業権ヲ許与スルノ義ニ付建議ノ件
   前回臨時会議ノ決議ニ基キ、明治三十四年九月九日附ヲ以テ外人ニ土地所有権及鉱業権ヲ許与スル義ニ付、内閣総理・外務・農商務・逓信四大臣ヘ建議書ヲ進達シタリ
 一 外人ニ土地所有権及鉱業権ヲ許与スルノ件並ニ一般財政経済ノ現状ニ関スル件陳情委員ノ大臣訪問ノ件
   前回臨時会議ノ決議ニ基キ委員渋沢栄一・渋沢喜作・朝吹英二ノ三氏、明治三十四年九月十七日午前十時桂総理大臣ヲ官邸ニ訪問シ、曾禰大蔵兼外務・芳川逓信・平田農商務四大臣列席ノ所ニテ、外人ニ土地所有権及鉱業権ヲ許与スルノ件並ニ一般財政経済ノ現状ニ関スル件ニ付陳情シタリ、其会見ノ顛末ハ大要左ノ如シ
    桂総理大臣会見ノ顛末
 明治三十四年九月十七日、東京商業会議所委員ナル渋沢栄一・渋沢
 - 第21巻 p.679 -ページ画像 
喜作・朝吹英二ノ三氏ハ午前十時桂総理大臣ヲ永田町ノ官邸ニ訪問ス、桂総理ハ前日渋沢栄一ヨリノ請求ヲ容レ、特ニ曾禰大蔵兼外務大臣・芳川逓信大臣・平田農商務大臣ヲモ招集セラレ、四大臣列席ニテ委員ニ接見ス
  渋沢会頭ハ先ツ口ヲ開テ、我国今日経済界ノ現状ハ為スヘキノ事多クシテ之ニ応スルノ資乏シキニヨリ、勉テ外資ノ流入ニ注意シ苟クモ之レカ障碍タルモノハ先ツ之ヲ排除セラレタキモノナルニ彼ノ土地所有権ヲ外国人ニ附与セサルノ法令ノ如キハ最以テ之カ妨害タルヘキモノナルニ付、本会議所ニ於テハ一昨年来其法令廃止ノコトヲ建議シ、全国商業会議所聯合会ニテモ再度マテ之ヲ議決陳上セシモ、未タ其実施ヲ見ル能ハサルハ実ニ遺憾トスル所ナリ、依テ今回モ亦此問題ヲ建議シ、併テ玆ニ委員ヲ派シテ親シク陳情スル所以ナリ
  世上或ハ土地ヲ外国人ニ所有セシムルトキハ無限ノ資力ニヨリテ終ニ兼併ノ弊ヲ生スヘシト杞憂スル者アリ、又此土地所有権ヲ以テ他ノ交換的材料ニ供セントスルノ論アレトモ、共ニ理由ナキ愚説タルノミ、現ニ米国ノ先例ニ徴シテ兼併ノ弊ナキハ明瞭ナリ、又他ノ交換的材料ト云フハ彼ヨリ之ヲ企望スルノ場合ヲ意味スヘキモ、此問題ハ寧ロ我ヨリ之ヲ開キテ外資ノ移入ヲ謀ルニ在リ、故ニ他日ヲ待ツヘキモノニアラサルナリ、然リ而シテ此土地所有権ヲ附与セサルニ於テ外人ノ観想如何ヲ実験セシ例証ハ、曩ニ渋沢栄一カ某鉄道会社ト横浜ナル某商会トノ間ニ社債募集ノコトヲ協議セシ際、他ノ百事ハ都テ協定セシモ、外国人ニハ土地所有権ナク且ツ鉄道抵当享有ノ権ナキニヨリ外人ハ安心シテ社債ニ応シ難シト云フヲ以テ終ニ協議ニ至ラサリシコトヲ陳述シテ、切ニ該法令ノ廃止ヲ請求ス
  桂総理ハ答テ曰ク、前段陳述ノコトハ拙者モ個人トシテハ素ヨリ同案ナリ、然リト雖トモ土地ヲ外国人ニ所有セシムルト云フコトハ従来歴史上随分ノ難問題ニシテ、或ル種類ノ人々ニハ容易ニ同情ヲ表セサル向モアラント思惟ス、故ニ軽卒ニ其挙行ヲ約束スル能ハスト雖トモ、勉テ其時機ヲ観察シ、果シテ実行シ得ルノ機会アラハ速ニ之カ実施ヲ務ムヘシ
  渋沢会頭ハ更ニ他ノ問題ヲ提出シテ曰ク、財政整理ノコトハ前内閣ヨリ継続セシ必要ナル政務ニシテ、現内閣ニ於テモ之カ整理ニ勉焉セラルヽハ疑ナキコトナレトモ、爾来民間ノ経済ハ春来生糸ノ売行好都合ナリシト、本年ノ米穀豊作ナルヘキ景況ニ付、聊小康ヲ得タルモ、未タ以テ回復ノ時運ニ向ハス、故ニ今日ノ計ハ飽迄財政ヲ節約シテ民間経済ニ余裕ヲ生スルコトニ注意セサルヘカラス、今ヤ明年度ノ予算編成ノ時ニ当リテ本会議所ハ切ニ此点ニ憂慮スルヲ以テ、本委員等ヲシテ忌憚ナク之ヲ閣下ニ陳上セシムル所以ナリ、冀クハ諒納セラレヨ
  桂総理ハ答テ曰ク、東京商業会議所ノ熱望ハ余等其真意ヲ領承セリ、現今実ニ予算編成ノ時機ニ際ス、各省勉テ其省略ヲ謀リ拮据経営聊モ怠ル所ナシ、而シテ各大臣共ニ一致協同財政ノ整理ヲ是
 - 第21巻 p.680 -ページ画像 
レ期ス、蓋シ会議所ノ予望ニ背ク所ナカラント思惟ス、但シ其予算ノ数字ノ如キハ玆ニ明言スルヲ得ス
  是ニ於テ要談全ク畢リ、各相共ニ他ノ雑話ヲ為シテ十二時退散ス
○中略
午時七後三十分閉会
   ○外国人ニ土地所有権ノ許可セラルタルハ大正十四年ニシテ(法令全書大正一四年)鉱山採掘権ハ現在モ尚許可サレズ。(鉱業法第五条)
   ○本巻明治三十三年三月七日、同年六月五日ノ両条、並ニ本資料第二十二巻所収「商業会議所聯合会」明治三十二年十月十六日、同三十三年五月十七日、同三十四年一月二十三日ノ各条参照。



〔参考〕渋沢栄一書翰 穂積陳重宛 (明治三七年)九月二四日(DK210118k-0008)
第21巻 p.680 ページ画像

渋沢栄一書翰  穂積陳重宛 (明治三七年)九月二四日   (穂積男爵家所蔵)
八月廿九日発桑港より之貴翰本月十九日接手、爾来御健全太平洋之航海も至極平穏ニて船中無聊を御感被成候由、又ホノルヽ港御着之際ニハ米国人之倶楽部より歓迎会相催し、布哇知事も臨席せられ候趣、右知事談話中我邦之外交と戦略とハ種々賞讃せられしも、財政経済之点ニ於てハ懸念之廉々有之候由ニて、資本共通之方法及土地所有権許可之事共縷述有之候云々表示一々拝承致し候、右ハ老生数年来切ニ企望いたし、当局之閣員又ハ元老之人々へも幾回となく切論せしも、今以貫徹致兼候次第ニて、歎息罷在候義ニ御坐候、既ニ一昨年欧米漫遊ニ付而も二・三之閣員ハ前陳之趣旨大概同意之由ニ付、老生も英・米両国ニて其筋之人々と会談之際廟議とまてハ明言せさるも、我邦之国情ハ殆ント中外資本之共通を企図し、着々之に対する施設ニ尽力致居候とまて相伝候得共、帰国後之形勢ハ少々退却之姿ニて、今日ニ荏苒罷在候事ニ御坐候、乍去過日も函根入浴之時井上伯ニ面会し、談此事ニ及候処同伯ニハ全く老生も同案ニて現ニ色々と調査中之由被申聞、聊安心致候事ニ候、殊ニ戦争終局し、平和克復之後ニ於る我邦之財政経済ハ別而前陳之実行如何ニよりて隆替可致と存候ニ付、幸ニ宿痾本復少々にても事務ニ就候場合ニハ今一段努力之覚悟ニ御坐候
○中略
  九月廿四日
                      渋沢栄一
    穂積陳重様
○下略