デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2021.9.1

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第21巻 p.709-712(DK210125k) ページ画像

明治34年11月8日(1901年)

是日栄一当会議所会頭トシテ、清国事変ノ落着ト共ニ清国河湖航運業ヲ拡張シ、日清銀行ヲ設立シ且ツ清国内地ノ事情ヲ調査スルガ如キハ対清経済策トシテ必要ナルヲ以テ、之ガ遂行ニ勉メンコトヲ内閣総理大臣子爵桂太郎・逓信大臣子爵芳川顕正・農商務大臣平田東助・大蔵大臣曾禰荒助・外務大臣小村寿太郎ニ建議ス。


■資料

第十一回東京商業会議所事務報告 第一一―一三頁 明治三五年四月刊(DK210125k-0001)
第21巻 p.709-710 ページ画像

第十一回東京商業会議所事務報告  第一一―一三頁 明治三五年四月刊
一対清経済策ノ義ニ付、内閣総理・逓信・農商務・大蔵・外務五大臣ニ建議ノ件
 本件ハ本会議所及大阪商業会議所ヨリ第十回商業会議所聯合会ニ提出シテ其可決ヲ得タルモノニ係リ、其趣旨ハ、清国事変ノ落着ト共ニ清国河湖航運業ヲ拡張シ、日清銀行ヲ設立シ、並ニ清国内地ノ事情ヲ調査スルカ如キハ、対清経済策トシテ急施ヲ要スルモノナルヲ以テ、之カ遂行ニ勉メラレタキ旨ヲ政府ニ建議スヘシト云フニ在リ仍テ明治三十四年十一月六日第百九回ノ臨時会議ニ附シタルニ、其可決ヲ得タルニ付、同月八日附ヲ以テ、左ノ如ク内閣総理・逓信・農商務・大蔵・外務五大臣ニ建議シタリ
    対清経済策ノ義ニ付建議
今ヤ清国事変玆ニ一段落ヲ告ケ、平和ノ克復漸ク将ニ其緒ニ就カントスルニ方リ、対清経済策トシテ施設経営スヘキ問題一ニシテ足ラスト雖トモ、今差向其急施ヲ要スルモノヲ挙クレハ左ノ如シ
 一清国河湖航運業拡張ノ件
  清国江河ノ沿岸、湖沼ノ周辺ハ、概シテ人口繁ク物産豊カナルノ地区タリ、然ルニ現在此等地区ニ於ケル旅客ノ往来・貨物ノ運搬ハ依然旧慣ヲ改メス、専ラ彼ノ脆弱小形ノ所謂「ジヤンク」ニ依ルモノニシテ、天与ノ良航路モ為ニ充分其用ヲ致ス能ハス、其ノ僅ニ汽船ノ航通アルハ長江下流ノ一小区域ニ過キサルナリ、清国内地ニ於テ人智ノ啓ケ進マサル、物産ノ競ヒ出テサル、真ニ以アリト謂フヘシ、此際我国人ニシテ清国内地ノ河湖ニ就キ適当ナル航路ヲ撰ンテ汽船航運ノ業ニ従事スルトキハ、依リテ以テ彼我経済上ノ利源ヲ開発シ、彼ノ地ニ於テ我カ勢力ノ根抵ヲ堅実ナラシムルヲ得ヘキナリ
 一日清銀行設立ノ件
  日清貿易ハ近時著明ノ発達ヲ為シタルニ拘ハラス、未タ其通商上特設有力ナル銀行機関ノ設立ヲ欠クハ、我商工業者ノ大ニ遺憾ヲ感スル所ナリ、若シ此際幸ニ此種ノ銀行ニシテ設立セラルヽニ至ラハ、其効用単ニ我商工業者ヲシテ通商上一層ノ便利ヲ得セシム
 - 第21巻 p.710 -ページ画像 
ルノミナラス、又能ク清国ニ於ケル金融ヲ円滑ニシテ、其富源ノ開発ニ資スルヲ得ヘク、随テ経済上彼我ノ連結ヲ鞏クシ、以テ国際的親交ヲ厚クスルノ便利少カラサルヲ信スルナリ
 一清国内地ノ事情調査ノ件
  従来清国ハ我国ト邦域近接シ、殊ニ国際上ノ関係極メテ密接ナルニ拘ラス、其内地ノ事情未タ充分我国人ニ知悉セラレサルハ甚タ遺憾トスル所ナリ、故ニ此際特ニ適任ノ人材ヲ選ンテ彼地ニ派遣シ、今後一層精細ニ其経済事情等ヲ調査報告セシメ、以テ我国商工業者ノ参考ニ資スルノ道ヲ講スルハ、極メテ必要ナル施設ナリト信ス
蓋シ清国河湖航運業拡張ノ件ノ如キ、将タ日清銀行設立ノ件ノ如キ、我商工業者自ラ進ンテ之ヲ経営スヘキ事勿論ナルヘシト雖モ、到底一人一個ノ私力ヲ以テ能ク其目的ヲ達シ得ヘキモノニアラス、故ニ政府ハ之カ奨励ノ方針ヲ定メラレ、苟モ我商工業者間ニ此等ノ企図アルニ当リテハ充分之ヲ援助セラレ、猶機ニ臨ミテハ之ヲ誘掖指導シテ其目的ノ遂行ニ資セラレンコトヲ切望ス、又清国内地ノ事情調査ノ件ノ如キ、従来政府カ清国ヘ吏員ヲ派遣シ、若ハ其奨励ヲ以テ商工業者ヲ派遣シテ彼地ノ実況ヲ視察セシメラレタルノ例一再ニ止ラスト雖トモ、其調査ハ多クハ一時ノ概観的ニ属シ、且ツ其区域ノ如キモ一小部分ニ限ルカ故ニ、未タ実際ニ於テ充分ノ効果ヲ奏スルコトヲ得サルハ、本会議所ノ常ニ遺憾トスル所ナリ、故ニ今後政府ハ特ニ適任ノ人材数名ヲ撰抜シテ清国各要地ニ派遣シ、此等ノ者ヲシテ鉄道・航海・銀行・鉱山其他商工農ノ諸業ハ勿論、人情・習俗・嗜好ニ至ル迄専門的ニ調査報告ヲ為サシメ、以テ我国商工業者ノ参考ニ資セラレンコトヲ切望ス、蓋シ此事タル固ヨリ一朝ニシテ其成功ヲ期スヘキニアラス、故ニ先ツ調査期間ヲ少クモ三・四年トシ、其区域ノ如キハ土地ノ情況ニヨリ数部ニ分チ、各部ニ一人若クハ数人ヲ滞留セシメ、之ヲシテ此期間中其担当区域内ニ属スル事業ニ就キ常時ニ詳密ノ調査報告ヲ為サシメ猶必要ノ場合ニ於テハ臨時ニ調査報告ヲ徴シテ、特ニ之ヲ公示セラレンコトヲ望ム
右本会議所ノ決議ニ依リ建議仕候也
  明治三十四年十一月八日
          東京商業会議所会頭 男爵 渋沢栄一
    内閣総理大臣 子爵 桂太郎殿
    逓信大臣   子爵 芳川顕正殿
    農商務大臣     平田東助殿  (各通)
    大蔵大臣      曾禰荒助殿
    外務大臣      小村寿太郎殿
   ○日清銀行設立問題ニ就イテハ本巻明治二十九年三月十二日、同年四月二十五日、同三十二年一月十九日、同三十四年九月十五日ノ各条、本資料第二十二巻所収「商業会議所聯合会」明治三十五年十二月九日、並ニ第二十三巻所収「農商工高等会議」明治二十九年十月二十一日ノ条参照。



〔参考〕長江航運と流域の富源 西川喜一著 第七六―七九頁 大正一四年一一月刊(DK210125k-0002)
第21巻 p.710-712 ページ画像

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