デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第21巻 p.811-816(DK210140k) ページ画像

明治36年3月21日(1903年)

是ヨリ先当会議所、旅順口若クハ青坭窪ニ領事館又ハ貿易事務館ヲ設置スルノ件並ニ清国専管居留地経営ニ関スル件ニ就キ調査中ナリシガ、是日ノ会議ニ於テ両件共暫ク建議ヲ見合ハスニ決ス。栄
 - 第21巻 p.812 -ページ画像 
一会頭トシテ之ニ与ル。


■資料

東京商業会議所報告 第一〇三号・第五―七頁 明治三五年一二月刊(DK210140k-0001)
第21巻 p.812-814 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇三号・第五―七頁 明治三五年一二月刊
○第百十二回臨時会議 三月二十八日開
 (出席者ハ第十二回定期会議ト同一 ○森清右衛門外十九名ニ付略ス)
午後五時二十五分開議
会頭渋沢栄一君議長席ニ就キ、先ツ左ノ件ヲ報告ス
○中略
次ニ議長ハ左ノ件々ヲ議事ニ附ス
○中略
○第三号
拝啓、旅順口若クハ青坭窪ニ領事館若クハ貿易事務館設置ノ件ニ関シ今般当会議所ニ於テ別紙ノ通リ其筋ニ意見開申仕候間、貴会議所ニ於テモ趣旨御同感ニ候ハヽ、御賛成ノ上相当ノ手続御執行相成候様相願度、此段御照会申上候也
  明治三十五年三月一日
            長崎商業会議所会頭 岩田清秋
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿
(別紙)
    旅順口若クハ青坭窪ニ帝国領事館若クハ貿易事務館設置ノ件ニ付、意見開申
遼東半島及満州一帯ノ地ハ本邦製産品ノ一大市場トシテ、又我経済的勢力ノ好扶植地トシテ将来最モ有望且重要ノ地域タリ、而シテ旅順口及青坭窪ノ二海港ハ露国ノ熱心ナル修築経営ト東清鉄道ノ完成開通トニ依リ、遼東並ニ満州ノ関門鎖鑰タルノ形勝ヲ占メ、交通上・貿易上極メテ緊要ノ地点トナレリ、我邦人又此ニ見ルアリ、近年此等二港ニ向テ渡航通商スルモノ頓ニ其数ヲ加ヘ、輸出貿易品ノ価格ニ於テ、在留人民ノ員数ニ於テ、優ニ他ノ清国要港ト匹敵スルノ盛況ヲ示スニ至レリ、是レヲ統計ニ徴スルニ我長崎ノ一港ヨリ旅順ニ向テ航行セル昨三十四年中ノ汽船ノ数ハ九十二艘ニシテ、之レニ積載セル輸出貨物ノ価格ハ六拾九万四千九百六拾壱円弐拾壱銭ニ達シ、其中重立ツ品目ヲ示セハ


 品種         価額       品種        価額
             円                  円
 米     一二、一三七・五〇〇   飲料諸品  二一、二八〇・三五〇
 麦酒    四一、四三六・〇〇〇   蔬菜     四、四七二・九〇〇
 清酒     二、〇二〇・七〇〇   食物諸品   八、二四七・七九〇
 醤油     二、四七八・四二〇   紙類     七、八七九・六二〇
 絹類    一三、五六二・五四〇   綿糸     六、六二二・七七〇
 石炭   三一五、三四八・五〇〇   衣服    二四、五二〇・二〇〇
 木炭     八、八二九・五〇〇   薬品     四、八八八・三〇〇
 漆器    一七、八〇〇・六〇〇   木材及板   四、八〇六・五五〇
 セメント  二〇、二九四・六五〇   其他百余種


又此等二港ニ在住セル本邦人ノ数及営業ヲ閲スルニ
 旅順口ノ分
 - 第21巻 p.813 -ページ画像 

             人口                    人口
  営業種目                 営業種目
        男   女      計         男    女       計
 貿易商    二一  三     二四  ホテル営業   六   四      一〇
 雑貨店    一五  六     二一  飲食店    一二   四      一六
 時計店     九  二《(一)》 一〇  貸席業    四二 一五三     一九五
 金銀細工店   九  四     一三  理髪業    一二   三      一五
 写真業     七  ―      七  洗濯業    二〇   八      二八
 医業      四  二      六  大工職     四   二       六
 ラムネ製造業 一〇  二     一二  外国人雇   一〇   九      一九
 菓子製造業   二  三      五  職業未定    九   三      一二
 仕立業     二  ―      二  総計    二一三 二〇九     四二二
 靴製造業   一九  二     二一

青坭窪ノ分

             人口                    人口
  営業種目                 営業種目
        男   女      計         男    女       計
 商業      六  四     一〇  料理業     一   一       二
 ラムネ製造業  二  ―      二  貸席業     七  三五《(二五)》 三二
 写真業     四  ―      四  大工職     六   三       九
 ペンキ業    五  二      七  鍛冶職     四   四       八
 理髪業     三  ―      三  土木業     三   二       五
 鉄道工夫    一  ―      一  外国人雇    六  一三      一九
 洗濯業     三  二      五  総計     五二  五六     一〇八
 植木業     一  ―      一

居留人ノ増加セル、輸出品ノ多額ナル、夫レ実ニ如斯、而カモ此増加ト多額トハ僅ニ既往両三年間ニ於ケル成蹟タルニ過キス、若シ此等二港カ将来ニ於ケル貿易交通上ノ最要地タルヲ察シ、露人ノ施設経営ノ益々壮大ナルニ鑑ミル時ハ、数年ヲ出テスシテ猶一層ノ進歩発達ヲ致サンコト智者ヲ俟テ後チ知ルヘキニアラス、況ンヤ過般露国政府カ黒竜江方面ニ於ケル輸出貿易品ニ対シ重税ヲ賦課シタルノ結果、対露貿易ノ又此ノ方面ヨリシテ更ニ発達セントスルノ傾向ヲ現ハシ来レルニ於テオヤ、果シテ然リトセハ、此ノ枢要ナル地点ヲトシテ我帝国領事館ヲ設置シ、一ニハ商業貿易ノ奨励調査ニ努メ、一ニハ在留邦人ノ保護監督ヲ行ハシムルハ、対満貿易ノ伸暢ヲ助成スルノ一手段トシテ極メテ適切ノ事業ナリト認メスンハアラス、然ルニ今日ニ至リ我政府這般ノ施設ヲ行ハサルハ貿易政策上甚タ遺憾ノ至リタルノミナラス、是レヲ彼ノ韓国ニ於テハ馬山・鎮南浦ノ如キ、清国ニ於テハ蘇州・杭州福州・漢口・沙市・重慶等ノ如キ、貿易額ノ遥カニ少クシテ在留ノ人数僅ニ二・三百乃至五・六十ニ過キサルノ地ニ孰レモ領事館ノ設置アルニ対照スレハ、彼我大ニ権衡ヲ失スルモノト謂ハサルヲ得ス、現ニ此種ノ官府ナキカ為メ在留商業者ノ不便殊ニ甚シク、戻税・旅券其他各種ノ証書ニ関スル証明事項ニ於テ、死亡・出生・婚姻・遺産其他ノ登録事項ニ於テ、総ヘテ遠隔ナル牛荘領事館ノ所弁ヲ仰カサルヲ得サルカ故ニ、其不利不便言辞ニ尽シ難ク、之レカ為メ商業交通ノ進歩発達ヲ阻遏スルコト洵ニ多大ナルヲ見ル、殊ニ将来尤モ有望ノ貿易品タル麦酒・清酒・醤油ノ如キ、輸入証明ノ手続不便ナルノ結果トシテ、輸出者ニ於テ殆ント造石税下戻ノ特典ニ浴スルコト能ハサルハ、輸出貿易奨励ノ本旨ニ反スルモノナリ、然ルカ故ニ我貿易ノ拡張ト経済的
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勢力ノ扶植ヲ計図スルノ点ヨリスルモ、又在留邦人ノ多数ニシテ相互間ニ於ケル商事・人事ノ頗ル複雑ナル点ヨリスルモ、此等二港ノ一ヲ選ミテ領事館ヲ設置スルノ急要ナルハ瞭乎トシテ疑フヘカラス、若シ夫レ此等二港ノ地タル未タ公然ノ開港場ニアラサルカ故ニ領事館ヲ設置センコト不合理ナリトセハ、差シ当リ貿易事務官若クハ領事ノ職務ヲ行フヘキモノヲ置キテ、其実蹟ヲ収ムルノ手段ニ出ツルモ亦敢テ不可ナカルヘシ、庶幾クハ我政府宜シク対手タル当該政府ト商議妥協ヲ遂ケ以テ時急ニ応スルノ施設アランコトヲ
右本会議所ノ決議ニ依リ謹テ意見開申候也
  明治三十五年二月二十日
                長崎商業会議所
                   会頭 岩田清秋
    外務大臣  小村寿太郎殿
    農商務大臣 平田東助殿

    役員会議ノ意見
 前記長崎商業会議所ヨリ照会ニ係ル旅順口若クハ青坭窪ニ領事館若クハ貿易事務館設置ノ件ハ、委員五名ヲ選挙シテ之ニ其調査ヲ附託スル事
本件ハ全会一致ヲ以テ、役員会議ノ意見ノ如ク委員五名ヲ選挙シテ之ニ其調査ヲ附託スルニ決シ、尚ホ委員ハ議長ノ指名ニ一任スルニ決シタルニ付、議長ハ左ノ諸員ヲ委員ニ指名シタリ
                   森清右衛門君
                   小松正一君
                   朝吹英二君
                   加藤正義君
                   木村粂市君
午後四時三十分閉会


東京商業会議所報告 第一〇三号・第三四―三五頁 明治三五年一二月刊(DK210140k-0002)
第21巻 p.814 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇三号・第三四―三五頁 明治三五年一二月刊
○第一回旅順口若ハ青坭窪ニ領事館新設ノ件外一件調査委員会議
                        四月九日開
 出席者
  朝吹英二君   小松正一君
  木村粂市君
午前十時四十分開議、左ノ事項ヲ決議セリ
 一 加藤正義君ヲ委員長ニ選挙スル事
午前十時五十分閉会


東京商業会議所報告 第一〇三号・第七―八頁 明治三五年一二月刊(DK210140k-0003)
第21巻 p.814-815 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇三号・第七―八頁 明治三五年一二月刊
○第百十三回臨時会議 四月九日開
 出席者
  馬越恭平君 ○外二十七名氏名略
午前十時十五分開議
 - 第21巻 p.815 -ページ画像 
会頭渋沢栄一君議長席ニ就キ ○中略 左ノ如ク決議セリ
○中略
 一 在清国帝国専管居留地経営施設ニ関スル件
本件ハ兼テ設置シアル、旅順口若クハ青坭窪ニ領事館若ハ貿易事務館設置ニ関スル件調査委員ニ併セテ其調査ヲ附託スルニ決ス
○中略
午前十時三十分閉会


渋沢栄一 日記 明治三六年(DK210140k-0004)
第21巻 p.815 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三六年     (渋沢子爵家所蔵)
三月廿一日 晴
○上略 十時商業会議所ニ於テ会議ヲ開ク ○下略


東京商業会議所報告 第一〇四号・第一頁 明治三六年七月刊(DK210140k-0005)
第21巻 p.815 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇四号・第一頁 明治三六年七月刊
○第百二十二回臨時会議 三月二十一日開
   出席者 十九名
午前十時三十五分開議、渋沢会頭議長席ニ就キ、左ノ件々ヲ議事ニ附ス
○中略
○第二号
 一 旅順口若クハ青坭窪ニ領事館若クハ貿易事務館設置ノ件外一件調査委員ヨリ報告ノ件
本件ハ全会一致ヲ以テ之ヲ承認スルニ決ス(報告ノ全文ハ参照ノ部第三号ニ掲載ス)
○中略
午前十一時三十分閉会


東京商業会議所報告 第一〇四号・第一五頁 明治三六年七月刊(DK210140k-0006)
第21巻 p.815-816 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇四号・第一五頁 明治三六年七月刊
 ○参照
○第三号
明治三十六年三月二十一日、第百二十二回臨時会議ニ於テ承認ヲ得タル旅順口若クハ青坭窪ニ領事館若クハ貿易事務館設置ノ件外一件調査委員ノ報告全文ハ左ノ如シ
    調査報告
嘗テ全会ノ決議ニ依テ調査ヲ附託セラレタル旅順口若クハ青坭窪ニ領事館若クハ貿易事務館設置ノ件外一件遂審議候処、委員ノ意見ハ左記ノ如ク決定致候
 一 旅順口若クハ青坭窪ニ領事館若クハ貿易事務館設置ノ件
                   (長崎商業会議所意見)
   本件ノ趣旨ハ委員ニ於テモ同意スル所ナリ、蓋シ本件ハ政府ニ於テモ既ニ其必要ヲ認メラルヽ趣ナレハ、適当ノ時機ニ際シテハ必ス之ヲ実施セラルベシ、要スルニ今日ノ場合ハ未タ其時機ニアラス、故ニ本件ハ暫ク建議ヲ見合ハス事
 一 清国専管居留地経営ニ関スル件  (神戸商業会議所意見)
   本件ハ大体ノ趣旨ニ於テハ固ヨリ不可ナシ、政府ニ於テモ既ニ
 - 第21巻 p.816 -ページ画像 
熟知セラルヽ所ナリ、且我商工業者ニシテ実際之ヲ利用シ得ヘキヤ否ヤ仍ホ一疑問ニ属スル今日、商業会議所カ特ニ経営ヲ必要トシテ建議スルハ却テ穏当ヲ欠クノ嫌アルヲ免レス、故ニ今暫ク右等時機ノ熟スルマテ建議ヲ見合ハス事
右及報告候也
  明治三十六年三月十三日
          旅順口若クハ青坭窪ニ領事館若クハ貿易事務館設置ノ件及清国専管居留地経営ニ関スル件
                調査委員長 加藤正義
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿