デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第21巻 p.816-830(DK210141k) ページ画像

明治36年3月28日(1903年)

是ヨリ先農商務省、工場法ヲ制定セントシテ当会議所ノ意見ヲ徴ス。栄一調査委員長トナリテ之ガ調査ヲ為シ、是日農商務総務長官安広伴一郎ニ当会議所ノ意見ヲ答申ス。


■資料

渋沢栄一 日記 明治三五年(DK210141k-0001)
第21巻 p.816 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三五年     (渋沢子爵家所蔵)
十一月五日 曇
○上略 十一時過農商務省ニ抵リ、工務局長ニ面会シテ工場法案ニ関スル意見ヲ述ヘ、商業会議所ノ事ヲ談ス ○下略
   ○中略。
十一月七日 晴
○上略 四時有楽会ニ出席ス、井上伯其他会員出席頗ル多シ、先ツ工場法案ニ付テ前会以来ノ手続ニヨリテ協議ヲ為シ、各員其意見ヲ陳述ス、討議ノ末本案ハ委員七名ヲ撰テ之ニ附托スル事トナル ○下略
   ○有楽会ハ井上公爵ガ主宰トナリ、栄一及ビ益田孝ノ尽力ニヨリ明治三十二年ニ設立セラル。本資料第二十三巻所収「有楽会」参照。
十一月八日 曇
○上略 三時半東京商業会議所ニ抵リ、役員会ヲ開ク、大倉・井上・雨宮藤山・朝吹ノ諸氏来会ス ○中略 工場法案ヲ農商務省ヨリ諮問セラレタルニ付、近々総会開設ノ事ヲ打合ハス ○下略
   ○中略。
十一月十七日 晴
○上略 午後四時東京商業会議所ニ抵リ、工場法案ニ関スル臨時会ヲ開ク委員附托ノ事ニ決定スルヲ以テ委員ヲ撰定ス ○下略
   ○中略。
十一月二十八日 曇
○上略 午後三時商業会議所ニ抵リ、工場法ニ関スル委員会ヲ開キ ○下略


東京商業会議所報告 第一〇三号・第四六頁 明治三五年一二月刊(DK210141k-0002)
第21巻 p.816 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇三号・第四六頁 明治三五年一二月刊
○同月同日 ○一一月六日 工場法案ニ関スル件ニ付、農商務総務長官ヨリ諮問書ヲ接受ス(諮問書ノ全文ハ前掲セルヲ以テ ○後掲ノ商発第二〇二号之ヲ略ス)
 - 第21巻 p.817 -ページ画像 


東京商業会議所報告 第一〇三号・第三三頁 明治三五年一二月刊(DK210141k-0003)
第21巻 p.817 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇三号・第三三頁 明治三五年一二月刊
○中略
○第二百五回役員会議 十一月八日開
 出席者
  渋沢栄一君    大倉喜八郎君
  井上角五郎君   雨宮敬次郎君
  藤山雷太君    朝吹英二君
午後三時三十分開議、左ノ事項ヲ決議セリ
 一 農商務総務長官ヨリ諮問ニ係ル工場法案ニ関スル件ハ次回ノ臨時会議ニ提出スル事
午後五時閉会
○中略


東京商業会議所報告 第一〇三号・第二二―二六頁 明治三五年一二月刊(DK210141k-0004)
第21巻 p.817-821 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇三号・第二二―二六頁 明治三五年一二月刊
○第百二十回臨時会議 十一月十七日開
 出席者
  森清右衛門君 ○外十七名氏名略
午後五時三十分開議
会頭渋沢栄一君議長席ニ就キ、先ツ左ノ件々ヲ報告ス
○中略
次ニ議長ハ左ノ件ヲ議事ニ附ス
○第一号
商発第二〇二号
工場法制定ニ関シテハ多年本省ニ於テ調査シ来リ、其間貴会議所ノ意見ヲ徴セラレ候事モ有之候処、爾来尚工場及職工ニ関スル事項調査セシメラレ候続《(マヽ)》キ今回法案起草ノ筈ニ有之、就テハ別紙要領書及御廻附候間、此際更ニ貴会議所ノ御意見御申出相成候様致度、依命此段及通牒候也
  明治三十五年十一月五日
              農商務総務長官 安広伴一郎
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿
   追テ可成速ニ御回答相成度、此段申添候也
(別紙)
    工場法案ノ要領
 第一 法令適用ノ範囲
  (甲)工場法ヲ適用スル工場ハ当時三十人以上ノ職工徒弟ヲ傭使スルモノトス、但官立及公立ノ工場ヲモ包含スル事
  (乙)臨時開設スル工場及平時前項ノ員数未満ノ職工徒弟ヲ傭使スル工場ニ於テ、臨時其以上ノ職工徒弟ヲ傭使スル場合ニ関シテハ、特別ノ規定ヲ設クルコト
  (丙)甲号ニ掲クル以外ノ工場ニモ必要アルトキハ勅令ヲ以テ工場法ノ全部又ハ一部ヲ準用スルコト
 第二 工場ノ取締
 - 第21巻 p.818 -ページ画像 
  (甲)新ニ工場ヲ設置セントスルトキ、及其改築増築等ヲ為サントスルトキハ、行政庁ニ願出テ認可ヲ受ケシメ、且行政庁ノ検査ニ合格シタル後使用セシムルコト
  (乙)工場ニハ危険ヲ予防シ、健康ヲ保全シ、風紀ヲ維持シ、及公益ヲ害セサル為必要ナル方法設備ヲ為スヘキコト
  (丙)寄宿舎其他工場ノ附属建設物及設備ノ取締ニ関スル事項ハ命令ヲ以テ定ムルコト
 第三 汽缶ノ取締
  (甲)工場ニ汽缶ヲ装置セムトスルトキハ、行政庁ニ願出テ認可ヲ受ケシムルコト
  (乙)汽缶ハ行政庁ノ検査ニ合格シ検査証書ヲ得タルモノニ非サレハ使用セシメサルコト
 第四 職工徒弟ノ年齢ノ制限
  十一歳未満ノ者ハ工場ニ於テ傭使セシメサルコト、但勅令ヲ以テ向フ十ケ年間左ノ如キ猶予ヲ与フルコト
  満八歳以上ノ者ハ工場法施行後二ケ年ヲ限リ、満九歳以上ノ者ハ次ノ三ケ年ヲ限リ、満十歳以上ノ者ハ次ノ五ケ年ヲ限リ傭使セラルヽヲ得ルコト、但シ一タヒ傭使セラレ得ル年齢ニ達シタル者ハ爾後本文ニ牴触スルニ至ルモ仍傭使ヲ妨ケサルモノトス
 第五 徹夜業ノ制限
  十六歳未満ノ男女又ハ満十六歳以上ノ女子ハ、午後十時ヨリ午前四時ニ至ル間工場ニ於テ傭使セシメサルコト、但シ左ノ例外ヲ設クルコト
  一、天災事変ニ際シテハ勅令ヲ以テ一時此制限ヲ撤去スルヲ得ルコト
  二、勅令ヲ以テ特種ノ事業及臨時事業ノ繁忙ナル場合ニ関スル除外例ヲ規定スルコト
  三、工場ニ於テ職工徒弟ヲ二組以上ニ分チ交替ニ傭使スル場合ニ関シテハ、勅令ヲ以テ左ノ如キ除外例ヲ規定スルコト
    満十三歳以上十六歳未満ノ男女及満十六歳以上ノ女子ハ、午後十時ヨリ午前四時ニ至ル間ト雖モ工場ニ於テ傭使スルヲ得ルコト、但工場法施行後五箇年間ハ満十一歳以上十三歳未満ノ男女ヲモ傭使スルヲ得ルコト
  四、前二号ノ場合ニ就テハ職工徒弟各組交替ノ時期・就業時間・休憩時間及休日ニ関スル特別ノ規定ニ従フヲ要スルコト
 第六 就業時間ノ制限
  十六歳未満ノ男女又ハ満十六歳以上ノ女子ニハ、勅令ヲ以テ十二時間以上ノ就業時間ヲ制限スルヲ得ルコトヽシ、其勅令ハ向十ケ年ヲ期シ漸次就業時間ヲ短縮スルノ目的ヲ以テ左ノ如ク定ムルコト、但天災事変ノ際、及ヒ臨時事業ノ繁忙ナル場合ニ関シテハ例外ヲ設クルコト
  (甲)十六歳未満ノ男女又ハ満十六歳以上ノ女子ハ、左ニ掲クル就業時間ヲ超エ傭使スルコトヲ得サルコト
      第一種工場 十四時間
 - 第21巻 p.819 -ページ画像 
      第二種工場 十五時間
  (乙)工場法施行ノ日ヨリ五ケ年ノ後ハ第一種工場ノ就業時間ヲ十三時間ニ短縮シ、第二種工場ノ就業時間ヲ十四時間ニ短縮ス、次ノ五ケ年ヲ経タル後ハ第一種工場ノ就業時間ヲ十二時間ニ短縮シ、第二種工場ノ就業時間ヲ十三時間ニ短縮スルコト
  (丙)工場ノ種別ハ別ニ之ヲ定ムルコト
  就業時間ノ制限ニ対スル例外ハ左ノ如シ
  一、臨時事業ノ繁忙ナル場合ニ於テハ一週年間或日数(九十日)ヲ限リ行政庁ニ届出テヽ、制限時間ヲ超ユルコト二時間以内ハ就業時間ヲ延長スルヲ得ルコト
  二、天災ニ際シテハ地方長官ハ農商務大臣ノ指揮ヲ請ヒ、地域及期間ヲ限リテ、就業時間ノ制限ヲ停止スルヲ得ルコト
  三、事変ニ際シ陸海軍省所管ノ工場、又ハ事件ニ関シ必要ナル事業ヲ営ム官私立ノ工場ニ於テ、就業時間ノ制限ニ拠リ難キトキハ、主務大臣ノ指揮ヲ請ヒ制限以上就業時間ヲ延長スルヲ得ルコト
 第七 休憩時間ノコト
  十六歳未満ノ男女又ハ満十六歳以上ノ女子ニ関シテハ、勅令ヲ以テ一日一時三十分間以内ノ食事及ヒ休憩時間ニ関スル規則ヲ定ムルヲ得ルコトヽシ、其勅令ハ左ノ如ク定ムルコト
   工場ニ於テハ一日一時三十分間以上ノ食事及休憩時間ヲ定メ、十六歳未満ノ男女又ハ満十六歳以上ノ女子ニ休憩ヲ為サシムヘキコト、但一日ノ就業時間カ十二時間以内ナル場合ニ於テハ休憩時間ヲ一時間トナシ、一日ノ就業時間カ十時間以内ナル場合ニ於テハ休憩時間ヲ四十五分間ト為スヲ得ルコト
  事業ノ種類ニ依リ休憩時間中機械ノ運転ヲ停止スヘキコト
  但事業ノ種類ハ農商務大臣之ヲ指定スルコト
 第八 休日ノコト
  十六歳未満ノ男女又ハ満十六歳以上ノ女子ニ関シテハ、勅令ヲ以テ一ケ月二日以内ノ休日ニ関スル規則ヲ定ムルヲ得ルコトヽシ、其勅令ニハ就業時間ノ制限ニ対スル例外ニ準シテ、天災事変ノ際及臨時事業ノ繁忙ナル場合ニ関スル例外ヲ設クルコト
 第九 特ニ危険ナルカ又ハ衛生ニ害アル業務ニ関スル制限
  十六歳未満ノ男女又ハ満十六歳以上ノ女子ニハ、勅令ヲ以テ特ニ危険ナルカ又ハ健康ニ害アル業務ヲ禁止制限スルヲ得ルコトヽス
  但其ノ勅令ヲ以テ制限スルモノハ左ノ如シ
  (甲)運転中ノ機械ノ危険ナル部分、原動力機若クハ動力伝導装置ノ掃除・注油・検査若クハ修繕、又ハ運転中ノ調帯・調索ノ取外シ若クハ取付ケニ、十六歳未満ノ男女又ハ満十六歳以上ノ女子ヲ傭使スルヲ得サルコト
  (乙)塵埃・粉末・有害瓦斯ヲ発生スル業務、毒薬・劇薬其他有害料品又ハ爆発性・発火性ノ料品ヲ取扱フ業務、塵埃・粉末・有害瓦斯ヲ発生スル場所ニ於ケル業務ニハ、十六歳未
 - 第21巻 p.820 -ページ画像 
満ノ男女又ハ満十六歳以上ノ女子ノ傭使ヲ禁止シ、又ハ制限スルコト、但業務及職工ノ種類ハ農商務大臣之ヲ指定スルコト
 第十 業務上ノ死傷ノ扶助
  職工徒弟業務上負傷シ又ハ死亡シタル場合ニハ、工業主ハ命令ノ定ムル所ニ依リ扶助ヲ為スヘキコト、但シ扶助ノ程度ハ左ノ如クスルコト
  一、治療看護ノ費用ヲ負担スルコト
  二、療養ノ為メ五日以上ノ休業ヲ要スルトキハ少ナクトモ賃金ノ半額ヲ休業中給与スルコト
  三、負傷ニ因リ終身労働ニ従事スルコト能ハス、又ハ終身労働ノ能力ヲ減スヘキ不具癈疾ト為リタルトキハ、賃金ノ二箇年分以内ヲ給与スルコト、但シ弐百五拾円ヲ以テ最高額トスルコト
  四、負傷ニヨリ死亡シタルトキハ葬式ノ費用ヲ負担スルコト、但弐拾円ヲ以テ最高額トスルコト
  五、死亡者ノ遺族アルトキハ、賃金ノ一箇年半分ヲ給与スルコト但弐百円ヲ以テ最高額トスルコト
 第十一 寄宿舎ニ於ケル死傷者ノ扶助
  工場附属ノ寄宿舎ニ寄宿スル職工徒弟負傷シ又ハ疾病ニ罹リタルトキハ、三箇月ヲ超エサル期間ニ於テ適当ナル引取人アルマテ治療及看護ヲ与フヘキコト、其死亡シテ引取人ナキトキハ葬式ヲ行フヘキコト
 第十二 職工徒弟ノ雇入紹介ノ取締
  右ニ関スル事項ハ命令ヲ以テ定ムルコト
 第十三 工場ノ監督
  工場ノ監督ハ地方長官第一次ノ監督ヲ行ヒ、農商務大臣第二次ノ監督ヲ行フコト、但シ事ノ重大ナルモノハ農商務大臣ノ指揮ヲ請ハシメ、又ハ農商務大臣直接ニ監督処分ヲ行フコト、官立工場ノ監督ニ関シテハ特例ヲ設クルコト
 第十四 法律施行ノ期限
  工場法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ定ムルコト
  工場法施行ノ際現ニ存スル工場、又ハ汽缶ニ関シテハ別ニ認可ノ手続ヲ要セス、法律施行後一箇年内ニ届出ヲ為サシムルコト
     役員会議ノ意見
 前記農商務総務長官ヨリ諮問ニ係ル工場法案ニ関スル件ハ、九名ノ委員ヲ選挙シテ之ニ其調査ヲ附託スル事
本件ニ関シテハ窪田工務課長特ニ臨場シテ会員ノ質問ニ応答スル所アリ、結局役員会議ノ意見ノ如ク委員九名ヲ選挙シテ之ニ其調査ヲ附託シ、且ツ委員ノ内一名ハ会頭之ニ任シ、他ノ八名ハ議長ニ於テ指名スルニ決シタルニ付、議長ハ左ノ諸君ヲ委員ニ指名シタリ
                   渋沢栄一君
                   森清右衛門君
                   栗生武右衛門君
 - 第21巻 p.821 -ページ画像 
                   岡田来吉君
                   岩谷松平君
                   藤山雷太君
                   星野錫君
                   大橋新太郎君
                   田口卯吉君


東京商業会議所報告 第一〇三号・第三七頁 明治三五年一二月刊(DK210141k-0005)
第21巻 p.821 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇三号・第三七頁 明治三五年一二月刊
○第一回工場法案ニ関スル件調査委員会議 十一月二十一日開
 出席者
  渋沢栄一君     森清右衛門君
  栗生武右衛門君   岩谷松平君
  藤山雷太君     星野錫君
  大橋新太郎君    田口卯吉君
午後三時三十分開議、先ツ渋沢栄一君ヲ委員長ニ選挙シ、夫レヨリ工場法要領ノ各項ニ就テ当日臨席ノ窪田工務課長ニ質問ヲ為シ、一々詳細ナル説明ヲ聴取シタリ
午後六時閉会


工場法案調査資料 第三七―四〇頁 明治三六年一月刊(DK210141k-0006)
第21巻 p.821-824 ページ画像

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東京商業会議所報告 第一〇三号・第三七頁 明治三五年一二月刊(DK210141k-0007)
第21巻 p.824 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇三号・第三七頁 明治三五年一二月刊
○第二回工場法案ニ関スル件調査委員会議  十一月二十八日開
 出席者
  渋沢栄一君     森清右衛門君
  栗生武右衛門君   岡田来吉君
  岩谷松平君     藤山雷太君
  星野錫君      大橋新太郎君
午後四時開議、工場法案ノ調査手続ニ関シ種々協議スル所アリ、猶近日中更ニ委員会議ヲ開ク事ニ決シタリ
午後六時閉会


東京商業会議所報告 第一〇四号・第二頁 明治三六年七月刊(DK210141k-0008)
第21巻 p.824 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇四号・第二頁 明治三六年七月刊
○第三回工場法案ニ関スル件調査委員会議
                明治三十五年十二月二十日開
午後五時三十分開議、工場法案要領中ノ命令事項ニ付審議シ、午後八時三十分閉会ス
○第四回工場法案ニ関スル件調査委員会議
                     十二月二十六日開
午後六時開議、工場法案要領ニ付審議ノ末、大体調査ノ方針ヲ議定シ其ノ報告案ハ委員長ニ起草ヲ託スルコトニ決シ、午後九時閉会ス
○第五回工場法案ニ関スル件調査委員会議
                 明治三十六年三月十六日開
午後一時三十分開議、予テ委員長ノ起草セル工場法案ニ関スル調査報告案ニ付審議シ、午後三時閉会ス


渋沢栄一 日記 明治三六年(DK210141k-0009)
第21巻 p.824-825 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三六年     (渋沢子爵家所蔵)
 - 第21巻 p.825 -ページ画像 
三月十六日 晴
○上略 商業会議所ニ抵リ、委員会ヲ開キ工場法ノ事ヲ決議ス ○下略
   ○中略。
三月廿一日 晴
○上略 十時商業会議所ニ於テ会議ヲ開ク ○下略


東京商業会議所報告 第一〇四号・第一頁 明治三六年七月刊(DK210141k-0010)
第21巻 p.825 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇四号・第一頁 明治三六年七月刊
○第百二十二回臨時会議 三月二十一日開
 出席者 十九名
午前十時三十五分開議、渋沢会頭議長席ニ就キ、左ノ件々ヲ議事ニ附ス
○中略
次ニ議長ハ工場法案調査委員ヨリ提出ニ係ル調査報告ヲ議題ニ供シタルニ、審議ノ末多数ヲ以テ原案ヲ可決ス(報告ノ全文ハ参照ノ部第四号ニ掲載ス)
○中略
午前十一時三十分閉会


東京商業会議所報告 第一〇四号・第一五―一八頁 明治三六年七月刊(DK210141k-0011)
第21巻 p.825-828 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇四号・第一五―一八頁 明治三六年七月刊
○参照
○第四号
 明治三十六年三月二十一日、第百二十二回臨時会議ニ於テ可決シタル工場法案ニ関スル件調査委員ノ報告全文ハ左ノ如シ
    調査報告
過般全会ヨリ調査ヲ附託セラレタル農商務省ヨリ諮問ニ係ル工場法案ノ件ハ、其後委員ニ於テ遂審議候処、委員ノ意見ハ本会議所ヨリ之ニ対シ別紙ノ通リ答申候方可然ト議決致候、此段及御報告候也
  明治三十六年三月十六日
            工場法案調査委員長 渋沢栄一
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿
(別紙)
昨年十一月五日附ヲ以テ御諮問有之候工場法案ノ件ハ、其後本会議所ニ於テ遂審議候処、其意見ハ別紙ノ通リ帰着仕候間、此段本会議所ノ決議ニ依リ答申仕候也
  明治三十六年三月二十八日
          東京商業会議所会頭 男爵 渋沢栄一
    農商務総務長官 安広伴一郎殿

    工場法案ニ対スル意見
工場取締ノ為メ工場法ヲ制定スルコトニ関シテハ、本会議所ハ大体ニ於テ其不可ナキヲ認ムト雖モ、之ヲ制定スルニ当リテハ大ニ注意ヲ要スルモノアルヲ信ス、蓋シ我国ノ工業ハ維新後泰西ノ学術知識ヲ応用シテ、近時ニ至リヤヽ進歩シタルモノナキニアラズト雖モ、之ヲ欧米諸国ニ比スレハ猶極メテ幼穉ノ域ニ在リ、又我国ノ職工ニハ特殊ノ状
 - 第21巻 p.826 -ページ画像 
態アリテ、之ヲ欧米諸国ニ比スレハ大ニ其趣ヲ異ニスルモノアリ、加之現時宇内列国ニ於ケル工業上ノ競争ハ益々激甚ヲ加ヘ、我国ノ工業ハ動モスレハ排擠セラレントスルノ事情アリ、此時ニ当リ若シ其工場法ニシテ各工場ノ経済ヲ攪乱シ、製造費用ヲ増加シ、工業ノ発達ヲ阻害スルコトアラハ、是レ却テ外国製品ヲ奨励シ内国物産ヲ圧倒スルモノニアラズヤ、故ニ今新ニ工場法ヲ制定セントスルニ当リテハ最モ此点ニ注意セラレ、其取締事項ノ如キハ敢テ形式上ノ完備ヲ求ムルコトナク、能ク実際ノ事情ヲ斟酌シ、苟モ工業ノ発達ヲ阻害セサルノ程度ヲ以テ之ヲ規定セラレンコトヲ望ム、然リ而シテ今諮問案ノ各要領ニ就キ意見ヲ示セバ左ノ如シ
(一)法令適用ノ範囲
   法令ノ適用ノ範囲ニ関シテハ、諮問案ニ掲クル所ニ就キ別段ノ異議ナシ、蓋シ(乙)号ニ於ケル特別ノ規定、及(丙)号ニ於ケル勅令ヲ定メラルヽニ当リテハ能ク実際ノ情況ヲ詳査セラレ、可成之ヲ適応セシメラレンコトヲ望ム
(二)工場ノ取締 (三)汽缶ノ取締
   工場ニ於テ危険ヲ予防シ、健康ヲ保全スルノ必要ナルハ、今更ニ呶呶ヲ要セサル所ナリ、左レハ工場ヲ建築シ汽缶ヲ装置スル場合ノ如キ、行政庁ニ願出認可ヲ受ケシムル等相当ノ取締ヲ要スルハ亦固ヨリ已ムヲ得サル所ナルヘシト雖モ、我国ノ工業ハ要スルニ未タ幼穉ノ域ヲ脱セスシテ、中ニハ経済上並ニ技術上猶試験中ニ属スルモノ多シ、此際ニ当リ若シ其実況如何ヲ察セスシテ、重ヲ形式ニ置キ徒ニ繁細ノ規定ヲ設ケテ強テ取締ヲ完全ナラシメントスルトキハ、勢製造費用ヲ増加シ、以テ折角発達セントスル工業ヲ中途ニシテ頓挫セシムルノ恐ナシトセス、故ニ其取締事項ハ極メテ単純簡易ニ之ヲ規定シ、特ニ其出願認可及検査ノ手続ノ如キハ勉メテ繁文ヲ避ケ簡便敏活ニ之ヲ処理スルコトニ注意セラレンコトヲ望ム、又既設ノ工場ノ如キ多年現状ニヨリテ経営シ来リタルモノヲシテ一朝俄ニ規定ノ制限ニ依ラシムルモノトスルトキハ、工業ノ秩序ヲ紛乱シ其工場主ノ困難実ニ少シトセス、故ニ既設ノ工場ニハ充分ノ猶予期間ト相当ノ特例トヲ与ヘ、漸ヲ以テ規定ノ制限ニ依ラシムルノ方針ヲ定メラレン事ヲ望ム
(四)職工徒弟ノ年齢ノ制限 (五)徹夜業ノ制限 (六)就業時間ノ制限
   普通工場ニ於テ十一・二歳ノ幼者ヲ使用スルハ経済上不利益ニシテ工場主ノ欲セサル所ナルニ拘ハラス、其偶々コレアルハ要スルニ其家計上ノ必要ニ出ツルモノニシテ寧ロ工場主ノ慈恵ニヨルモノトス又今日我国工場中例ヘハ紡績工場ノ如キ、或ハ生糸工場ノ如キ、時ニ其女工ヲシテヤヽ長時間ノ就業ヲ為サシムルコト往々其例ナキニアラスト雖トモ、是工場主ノ強ユル所ニアラスシテ、寧ロ其女工ノ希望ニ応スルモノナリ、左レハ従来我国工場ニ於テ幼者ヲ使用シ又ハ女工ヲシテ長時間ノ労働ニ服セシムルコトアリト雖トモ、工場主カ適当ノ程度ヲ超ヘテ之ヲ使役シ其健康ヲ害スル如キハ実際ニ於テ未タ其例ヲ見サル所ナリ、何トナレハ斯ノ如キハ勢製産力ヲ減少シ決シテ工場主ノ利益ニアラサルヲ以テナリ、然ルニ今法律ヲ以テ職
 - 第21巻 p.827 -ページ画像 
工徒弟ノ年齢・徹夜業・就業時間等ヲ制限スルトキハ却テ職工及工場主双方ノ困難ヲ来シ、結局工業ノ発達ヲ阻害スルノ恐ナクンハアラサルナリ、故ニ此等ノコトハ法律ヲ以テ制限スルコトナク、全ク職工及工場主任意ノ契約ニ放任セラレンコトヲ望ム
(七)休憩時間ノコト (八)休日ノコト
   休憩時間及休日ノコトハ工業ノ性質、工場ノ慣習、職工就業ノ情況等ニヨリテ各其必要ノ程度ヲ異ニスルモノトス、然ルニ今法律ヲ以テ単ニ就業時間ノ長短、職工ノ年齢如何等ニヨリ各種ノ工業ヲ通シテ休憩時間及休日ヲ画一ニ規定スルカ如キハ、策ノ得タルモノニアラス、殊ニ休憩時間中機械ノ運転ヲ停止セシムルカ如キハ工業経済上至大ノ関係ヲ有スルニ付、事業ノ何種タルヲ問ハス断シテ不可ナリト信ス、之ヲ要スルニ休憩時間休日ノコトノ如キハ各工場ヲシテ実際ノ情況ニ応シテ適宜ニ之ヲ定メシメ、以テ行政庁ノ認可ヲ受ケテ之ヲ実行セシムルヲ以テ足レリトス
(九)特ニ危険ナルカ又ハ衛生ニ害アル業務ニ関スル制限
   特ニ危険ナルカ又ハ衛生ニ害アル業務ニ関シ、相当ノ制限ヲ設クルハ敢テ不可ナキモ、其制限微細ニ渉ルトキハ之カ為メ工業ノ運用ヲ害スルノ恐ナシトセス、故ニ其規定ハ極メテ簡便ニ之ヲ定メ、且ツ其制限スヘキ業務ノ種類ノ如キハ最モ必要ノ区域ニ止マラシメンコトヲ要ス
(十)業務上ノ死傷ノ扶助 (十一)寄宿舎ニ於ケル死傷者ノ扶助
   職工業務上ノ為メニ死傷シタル場合、又ハ寄宿舎ニ於テ死傷シタル場合ニ於ケル扶助法ヲ設クルハ職工ノ保護上必要ナルヲ認ム、蓋シ此等扶助法ハ、工業ノ性質、職工ノ状態ニヨリ各其必要ノ程度ヲ同フセサルモノアリ、且ツ従来規模ノヤヽ大ナル工場ニ在リテハ、実際ノ必要ニ応シ適宜ニ職工ノ扶助共済若クハ貯金等ニ関スル方法ヲ定メテ現ニ之ヲ実施スルモノ少カラス、然ルニ今其工業ノ性質、職工ノ状態千差万別ナルニ拘ハラス、法律ヲ以テ画一ナル規定ヲ設ケ殊ニ業務上ノ死傷ノ場合ニ於ケル扶助ノ程度並ニ其給与金額ノ如キ微細ノ事項ニ至ル迄之ヲ明定スルハ、融通ノ途ヲ欠キ、決シテ策ノ得タルモノニアラス、故ニ此等扶助法ハ各工場ヲシテ実際ノ状況ニ応シテ適宜ニ之ヲ定メシメ、以テ行政庁ノ認可ヲ経テ之ヲ実行セシメンコトヲ望ム
(十二)職工徒弟ノ雇入紹介ノ取締
    職工ノ争奪・誘惑等ノ弊ハ独リ職工ノ困難ヲ来スノミナラス、各工場主相互ノ迷惑ヲ生シ其極工業ノ発達ヲ阻害スルノ恐アレハ、勅令ヲ以テ適当ノ取締法ヲ定ムルコトハ固ヨリ希望スル所ナリ、然リ而シテ其規定ヲ定ムルニ当リテハ、仔細ニ実際ノ状況ヲ察シ、各工場主ヲシテ互ニ相侵スコトナカラシムルト同時ニ、各職工ノ任意ノ行動ヲ拘束セサルコトニ注意セラレンコトヲ望ム
(十三)工場ノ監督
    工場ノ取締ハ従来各地方警察官ノ職権ヲ以テ執行スル所ナルカ、其取締ハ公安維持・危険予防等ニ専ニシテ、工業ノ発達ノ如キハ之ヲ度外視スルカ如キ弊ナキヲ得ス、特ニ現行ノ制度ノ如ク、工場ノ建
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築、汽缶ノ装置等、技術上ニ関スル取締ヲ専門的素養ニ乏シキ普通警察官ノ手ニ委スルトキハ、検査ノ際往々無益ノ手数ヲ要シ、各工場主ノ困難実ニ少カラス、故ニ今後工場ノ取締ハ普通警察官ヲシテ之ヲ監督セシムルコトヲ止メ、全国主要ノ土地ニ工務監督局ヲ置キ可成工務専門ノ技師ヲシテ之ヲ監督セシメラレンコトヲ望ム、又官立工場ノ監督ニ関シテ特例ヲ設クルハ監督ノ統一ヲ欠クノ不便アリ故ニ苟モ工場法ノ適用範囲内ニ属スル工場ハ、官立・私立ノ区別ナク総テ同一ノ程度ヲ以テ之ヲ監督セラレンコトヲ望ム
(十四)法律施行ノ期限
    法律施行ノ期限ニ関シテハ諮問案ニ掲クル所ニ就キ別段ノ異議ナシ


東京商業会議所報告 第一〇四号・第四頁 明治三六年七月刊(DK210141k-0012)
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東京商業会議所報告  第一〇四号・第四頁 明治三六年七月刊
○同月 ○四月二十八日 工場法案ニ関スル諮問ノ件ニ付、農商務総務長官ニ答申書ヲ発送ス
   ○右答申ノ提出日ニツイテハ、臨時会議ノ記事ニ従ツテ姑ク三月二十八日ヲ採ル。



〔参考〕工場法案要領ニ対スル意見書摘要表 明治三七年三月一五日(DK210141k-0013)
第21巻 p.828-829 ページ画像

工場法案要領ニ対スル意見書摘要表  明治三七年三月一五日
                    農商務省商工局
 ○本表ハ明治三十五年十一月四日ヲ以テ公表セル工場法案ノ要領ニ対シ各地商業会議所・府県知事等ヨリノ答申ヲ集メタルモノナリ
    東京商業会議所

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  諮問要項            答申 大体ニ関スル意見      工場取締ノタメ工場法ヲ制定スルコトニ関シテハ大体ニ於テ其不可ナキヲ認ムト雖モ、之ヲ制定スルニ方リ其取締事項ハ能ク実際ノ事情ヲ斟酌シ、苟モ工業ノ発達ヲ阻害セサルノ程度ヲ以テ之ヲ規定セラレンコトヲ望ム 法令適用ノ範囲       (乙)号ニ於ケル特別ノ規定及丙号ニ於ケル勅令ヲ定メラルヽニ当リテハ、能ク実際ノ状況ヲ詳査セラレ、可成之ヲ適応セシメラレンコトヲ望ム 工場及汽缶ノ取締      取締事項ハ極メテ単純簡易ニ之ヲ規定シ、特ニ其出願認可及検査ノ手続ノ如キハ簡便敏活ナランコトヲ望ム               又既設ノ工場ニハ充分ノ猶予期間ト相当ノ特例トヲ与ヘ、漸ヲ以テ規定ノ制限ニ依ラシムルノ方針ヲ定メラレンコトヲ望ム 職工徒弟ノ年齢ノ制限    工場ニ於テ幼者ヲ傭使シ、又ハ女工ヲシテ長時間ノ労働ニ服セシムルコトアルモ、適当ノ程度ヲ超ヘテ之ヲ使役スルカ如キハ未タ其例ヲ見ス、今法律ヲ以テ之ヲ制限スルトキハ結局工業ノ発達ヲ阻害スルノ恐ナクンハアラス、故ニ法律ヲ以テ之ヲ制限スルコトナク全ク職工及工場主、任意ノ契約ニ放任セラレンコトヲ 以下p.829 ページ画像 望ム 徹夜業制限         上欄ト同シク本項モ亦法律ヲ以テ制限スルコトナク、全ク職工及工場主、任意ノ契約ニ放任セラレンコトヲ望ム 就業時間ノ制限及      就業時間ニ就テハ上欄ノ如クナラシメンコトヲ望ム、休憩時間・休日ノ如キハ各工場ヲシテ実際ノ状況ニ応シテ適宜ニ之ヲ定メシメ、以テ行政庁ノ認可ヲ受ケテ之ヲ実行セシムルヲ以テ足レリトス 休憩時間休日ノコト 危険ナルカ又ハ衛生上ニ   本規定ハ極メテ簡便ニ之ヲ定メ、且ツ其制限スヘキ業務ノ種類ノ如キハ最モ必要ノ区域ニ止マラシメンコトヲ要ス 害アル業務ニ関スル制限 業務上ノ死傷ノ扶助     扶助法ハ各工場ヲシテ実際ノ状況ニ応シテ適宜ニ之ヲ定メシメ、以テ行政庁ノ認可ヲ経テ実行セシメンコトヲ望ム 及寄宿舎ニ於ケル 死傷者ノ扶助 其他            職工徒弟ノ雇入紹介ノ取締ニ関スル規定ヲ定ムルニ方リテハ能ク実際ノ状況ヲ察シ、各工場主ヲシテ互ニ相侵スコト勿ラシムルト同時ニ、各職工ノ任意ノ行動ヲ拘束セシメサランコトヲ望ム、工場ノ監督ニ就テハ主要ノ土地ニ工務ノ監督局ヲ置キ、専門技師ヲシテ監督セシメラレンコトヲ望ム               又官立工場ノ監督ニ関シ特例ヲ設クルハ統一ヲ欠クノ不便アルヲ以テ総テ同一ノ程度ヲ以テ監督セラレンコトヲ望ム 






〔参考〕工場法論 岡実著 第三四―三七頁 大正六年第三版刊(DK210141k-0014)
第21巻 p.829-830 ページ画像

工場法論 岡実著  第三四―三七頁 大正六年第三版刊
    工場法制定ノ沿革
○上略
前記ノ如ク農商工高等会議ニ諮問ノ法案 ○工場法案ハ議会ニ提出スルニ至ラス、更ニ工場及職工ニ関スル事実ヲ調査シテ本件ヲ処理スルコトニ決シ、明治三十三年度ヨリ臨時工場調査費約一万円ヲ予算ニ編入シ、其ノ成立スルニ及ンテ同年四月勅令第百四十九号ヲ以テ臨時工場調査職員ヲ設ケ、商工局工務課ニ工場調査掛ヲ置キ、商工局長木内重四郎氏ノ下ニ、内務省参事官兼農商務書記官窪田静太郎氏其ノ主任トナリ法制・経済・建築・衛生・機械・化学等ノ各学科ヲ専攻シタル職員ヲ増加シテ、本件ニ関スル既往ノ事蹟、外国ニ於ケル事実及制度ヲ調査シ、掛員各自専門事項ニ応シテ工場ヲ視察シ、又工業会社員・技師・職工等ト会談シテ精細ノ調査ヲ遂ケテ、工場及職工ノ現状ト其ノ弊害ヲ確カメ、法案ヲ起草シ、三十五年十一月、該法令案ノ要領ヲ関係各省・地方長官及商業会議所ニ廻付シ、其ノ意見ヲ徴シタリ。答申ノ内或ハ同法ノ制定ヲ尚早ナリトスルモノナキニ非ラサリシモ、多数ハ根本的異見ヲ有セサルコトヲ確メタルヲ以テ、諮問案ニ修正ヲ加ヘタル後、法律案トシテ之ヲ議会ニ提出センコトヲ期シタリ。然ルニ日露ノ時局ハ一般経済界ノ緊縮トナリ、越エテ三十七・八年ノ事変アリ、戦後ニ於ケル経済界ノ変動ハ本案提出ノ時機ヲ失ハシメタルヲ以テ、工場調査職員ハ明治三十六年ヲ以テ廃止ニ帰シタルニ拘ハラス、依然調
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査ヲ継続シタリ。此ノ間議会ニ於テハ明治三十三年及明治三十五年ヲ以テ工場法ヲ速カニ制定スヘキ旨ヲ建議シ、踵テ三十六年及四十三年ニ於テ政府ノ工場法ヲ提出セサル理由ヲ質問シタリ。
 明治三十六年七月清浦子爵農商務大臣トナリ、同年九月森田茂吉氏商工局長トナリ、参事官岡実、窪田書記官ニ代リテ工務課長トナリ、本件処理ノ任ニ当レリ。前記ノ如ク臨時工場調査職員ハ同年九月ニ至リ廃止セラレタル結果、従来工場調査費タリシ約一万円ノ経費ハ予算中ヨリ刪除セラレ、之カ為ニ職員ノ減少其ノ他本件ノ進行ニ不便ヲ来シタルモ、通常経費ノ範囲内ニ於テ其ノ事務ヲ継続シ、関係職員ヲシテ工場及職工ノ調査ヲ為サシメ、臨時工場調査職員ノ事蹟ノ一タル工場調査要領ヲ修正シテ其ノ第二版ヲ作リ、又三十五年発表ノ法案要領ニ対スル公私ノ意見ヲ参酌シテ編纂シタル工場法案ニ付反覆審議ヲ竭シテ、日露事変ノ終局後ニ於ケル一般経済界ノ恢復ノ時機ヲ待テリ。其ノ間ニ於テ三十九年松岡康毅氏清浦子爵ノ後ヲ襲ヒ、尋テ四十一年七月大浦子爵代リテ農商務大臣トナリ、四十二年七月商工局ヲ商務及工務ノ二局ニ分チ、鹿子木小五郎氏ヲ工務局長ニ任シテ愈第二十六議会ニ法案ヲ提出スルコトトナレリ。
 猶明治三十五・六年以後ニ於テモ工場及職工ノ状態ハ依然トシテ革マラサルノミナラス、其ノ弊害ノ矯正ヲ要スルモノ益多キヲ加ヘ来タリシヲ以テ、当業者中ニ於テモ心アルモノハ我工業ノ前途ヲ慮リテ私カニ其ノ制定ヲ望ムニ至レリ。