デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治29年11月19日（1896年）

是日ヨリ二十五日迄、営業税法審議ノ為メ臨時会東京商業会議所ニ於テ開催サレ、栄一会長トシテ議事ヲ司宰ス。次イデ二十六日、栄一、京都商業会議所代表中野忠八等ト共ニ農商務省ニ出頭、農商務大臣子爵榎本武揚ニ面会ノ上、聯合会決議ノ結果ヲ具状シテ、営業税法改正ニ関スル希望ヲ開陳ス。又三十日、栄一、大阪商業会議所代表土居通夫等ト共ニ大蔵省ニ出頭、大蔵大臣伯爵松方正義・大蔵次官男爵田尻稲次郎ニ面会シ同様ノ希望ヲ具陳ス。

東京商業会議所月報　　第五二号・第一八頁　明治二九年一二月
○十一月六日、本会議所ニ於テ第五十六回臨時会議ヲ開ク、当日ノ出席者左ノ如シ
　益田克徳君　○外二十三名氏名略
午後五時四十分開議、左ノ件々ヲ決議シ同八時閉会ス
○中略
一臨時商業会議所聯合会開設ノ件並ニ同会ヘ参会スヘキ委員撰挙ノ件
右ハ全会一致ヲ以テ原案ノ如ク十一月中ヲ期シ臨時商業会議所聯合会ヲ東京ニ開クニ決シ、参会委員トシテ渋沢栄一・中野武営ノ両君ヲ推選ス

明治二十九年十一月開設
臨時商業会議所聯合会報告　　第一―一四七頁　刊
　　　　○聯合会開設地ニ於ケル準備
本会ハ明治二十九年四月博多ニ開キタル第五回商業会議所聯合会ノ協議ニ基キ、営業税法審議ノ為メ東京ニ開設スルコトニ決シ、東京商業会議所ハ幹事ノ任ニ当レリ、幹事ハ明治二十九年十一月六日附ヲ以テ従来聯合会ヘ加盟ノ会議所即チ京都外三十四ケ所ノ会議所ヘ左ノ通知書ヲ発シタリ
　拝啓陳ハ本年四月博多ニ於テ開設シタル第五回商業会議所聯合会ノ協議ニ基キ、営業税法審議ノ為メ東京ニ於テ臨時商業会議所聯合会ヲ開設可致ニ付、其開会期日其他左記ノ通リ決定致候
　一臨時聯合会ハ十一月十九日ヨリ東京市京橋区木挽町十丁目十一番地東京商業会議所ニ於テ開設スル事
　一十一月十八日午後五時東京市芝区芝公園紅葉館ニ於テ来会員ノ懇親会ヲ開ク事、但会費ハ一人ニ付金弐円ノ事
　一来会員ノ氏名ハ可成速ニ東京商業会議所ヘ通知セラレ度事
　一来会員到着ノ上ハ直チニ其宿所及氏名ヲ東京商業会議所ヘ報知セラレ度事
　一会員及事務員中ニテ別ニ説明員ヲ定メ出席セシムルハ規則第十四
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条ニ拠リ固ヨリ差支ナキモ、尚他ノ会員ニシテ意見アルトキハ有志会員トシテ出席シ、其ノ意見ヲ述フルヲ得ル事
　一臨時聯合会ノ議案ハ各商業会議所ノ提出セル営業税法ニ関スル意見書中ヨリ撰択スルモノトシ、開会ノ上協議決定スル事
　右及御通知候也
　　明治二十九年十一月六日　　　　　東京商業会議所会頭
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　各商業会議所　（各通）
此通知書ニ対シ大津・熊本・松江ノ三会議所ハ差支アリテ参会シ難キ旨ノ回答アリ、其他ノ三十二会議所ハ何レモ賛同ヲ表シ、委員ヲ派出セラレタリ
右ノ外従来未賛同ニ係ル函館・高岡・小樽・横浜・青森・高崎・上田ノ七会議所並ニ新設ニ係ル水戸・新潟・太田・佐賀ノ四会議所ヘモ左ノ照会書ヲ発シ、且ツ開会ノ手続ヲ通知シテ賛同ヲ求メタリ
　拝啓陳ハ別紙ヲ以テ御通知申上候通リ、本年四月博多ニ於テ開設シタル第五回商業会議所聯合会ノ協議ニ基キ本月十九日ヨリ当市ニ於テ営業税法審議ノ為メ臨時商業会議所聯合会ヲ開設可致ニ付、貴会議所ニ於テモ御加盟ノ上委員御派出相成候様致度此段及御照会候也
　　明治二十九年十一月六日　　　　　東京商業会議所会頭
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　未賛同若クハ新設　各商業会議所　（各通）
此照会書ニ対シ高岡・青森・高崎・上田・小樽ノ五会議所ハ何レモ賛同ヲ表シテ委員ヲ派出セラレ（但シ小樽商業会議所ヨリハ都合ニ依リ書記長ノミ参会セラレタリ）函館・水戸・新潟・太田・佐賀・横浜ノ六会議所ハ差支アル旨ヲ以テ賛同セラレサリシ
十一月十九日幹事ハ臨時商業会議所聯合会開設ニ付、農商務大臣・次官及ヒ商工局長ノ臨場ノ義ヲ申請セリ
営業税法改正ニ関スル意見書ヲ本会ニ提出セラレシ商業会議所ハ左ノ十六ケ所ナリ
　広島　長崎　赤間関　知多　大坂　堺　金沢　神戸　尾ノ道　松江　鹿児島　仙台　富山　高崎　博多　東京
右ノ外十一月十二日附ヲ以テ広島商業会議所ヨリ信用組合ニ関スル調査報告ノ件ヲ本会ヘ提出アリシモ後ニ至リ撤回セラレタリ

　　　　○参会員氏名
各商業会議所ヨリ参会セラレタル委員ノ氏名ハ左ノ如シ（氏名ハ通知順）
　静岡　　（会頭）　　北村五郎兵衛君（会員）　尾崎伊兵衛君
　伏見　　（常議員）　築山三郎兵衛君
　長崎　　（会頭）　　松田源五郎君
　赤間関　（会員）　　瓜生寅君
　福井　　（常議員）　上田清十郎君　（常議員）杉山喜兵衛君
　金沢　　（同）　　　山田清三君
　岡山　　（副会頭）　高田音次郎君
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　鹿児島　（会頭）　　宮里正静君
　浜松　　（副会頭）　中村忠七君
　豊橋　　（常議員）　及部豊吉君　　（常議員）白井直次君
　大垣　　（副会頭）　田中清兵衛君
　桑名　　（同）　　　平野美純君
　栃木　　（会頭）　　石塚新吾君　　（副会頭）桜井源四郎君
　高崎　　（同）　　　中島伊平君　　（常議員）反町慎哉君
　富山　　（会頭）　　関野善次郎君　（副会頭）牧野平五郎君
　高知　　（同）　　　松村俊男君
　広島　　（同）　　　桐原恒三郎君
　神戸　　（同）　　　山本亀太郎君　（副会頭）岡田元太郎君
　尾ノ道　（副会頭）　石井聿三君
　堺　　　（常議員）　上林総三郎君　（常議員）錦池千鶴之助君
　仙台　　（会員）　　木村一是君
　宇都宮　（常議員）　須永信夫君　　（常議員）　市田孝七君
　高岡　　（同）　　　鳥山敬二郎君
　青森　　（会員）　　伊東善五郎君　（会員）　　樋口喜輔君
　上田　　（会頭）　　黒沢鷹次郎君
　名古屋　（同）　　　奥田正香君
　博多　　（常議員）　是松右三郎君
　津　　　（会頭）　　佐伯惟毅君
　大坂　　（同）　　　土居通夫君　　（副会頭）　亀岡徳太郎君
　四日市　（同）　　　井島茂作君
　八王子　（同）　　　吉田忠右衛門君（常議員）　平林定兵衛君
　知多　　（同）　　　天野伊左衛門君（常議員）　小栗政治郎君
　京都　　（常議委員）中野忠八君　　（常議委員）鈴鹿弁三郎君
　岐阜　　（常議員）　永井靖九郎君
　岡崎　　（会頭）　　小野権右衛門君
　東京　　（同）　　　渋沢栄一君　　（常議委員）中野武営君
各商業会議所ヨリ有志会員トシテ参会セラレタルハ左ノ諸君ナリ
　知多　　（常議員）　天木嘉祐君
　東京　　（副会頭）　奥三郎兵衛君　（副会頭）　大江卓君
　東京　　（常議委員）佐久間貞一君
各商業会議所ヨリ参会セラレタル書記長・書記ノ氏名ハ左ノ如シ
　小樽　　（書記長）　谷井恭吉君　　京都　（書記長）新井旭君
　大坂　　（書記長）　浜田健次郎君　堺　　（書記長）小谷力造君
　神戸　　（書記長）　桂兼太郎君　　長崎　（書記）　一野喜三郎君
　四日市　（書記）　　小寺豊次郎君　名古屋（書記長）上遠野富之助君
　知多　　（書記長）　鬼頭孫三郎君　富山　（書記長）北村竹四郎君
　岡山　　（書記長）　山羽協一君　　広島　（書記長）鹿野悠君
　尾ノ道　（書記長）　宇都宮胖蔵君

　　　　○懇親会
予定ノ如ク十一月十八日午後三時ヨリ芝区芝公園内紅葉館ニ於テ参会
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員一同ノ懇親会ヲ開ケリ、席定マルヤ東京委員渋沢栄一君開会ノ挨拶アリ、大坂委員土居通夫君之ニ答ヘ、夫ヨリ杯酒献酬ノ間歓ヲ尽クシテ午後九時散会セリ、当日出席ノ諸君ハ左ノ如シ　○氏名略
　　　　○聯合会参会員席次　○略ス
　　　　○正副会長ノ選挙
本会ノ正副会長ハ別ニ投票ヲ用ヒス、先例ニ依リ全会ノ請求ヲ以テ東京商業会議所委員渋沢栄一君ヲ会長ニ、同中野武営君ヲ副会長ニ推選シタリ
　　　　○会議ノ開閉
臨時商業会議所聯合会ハ明治二十九年十一月十九日ヲ以テ開会シ、同二十五日ヲ以テ閉会セリ
　　　　○農商務次官ノ臨場
榎本農商務大臣ハ公務多忙ノ故ヲ以テ臨場セラレス、金子同次官ハ大臣ニ代リ安藤商工局長及属僚ヲ随ヘ十一月二十日臨場シ、一場ノ演説アリタリ
　　　　○営業税法ニ対スル各商業会議所ノ意見書
　　　○広島・四日市・長崎・赤間関・知多・大阪・堺・金沢・神戸・尾ノ道・松江・鹿児島・富山・博多・仙台・高崎ノ十六商業会議所ノ意見書略ス。
○東京商業会議所
　別記ノ趣意ヲ以テ大蔵大臣ヘ建議シ、且帝国議会ヘ請願スル事
　（別記）営業税法改正意見
　　　　第一　営業税法ノ欠点
凡ソ税法ヲ制定スルニ方リテ注意スヘキ第一要義ハ徴税方法ノ簡明ニシテ而カモ公平ヲ失ハサルニアリ、苟クモ徴税方法ニシテ煩瑣複雑ニ失スルアラン乎、独リ多額ノ徴税費ヲ要スルノミナラス、納税者ハ為メニ非常ノ苦痛ヲ感シ、其結果竟ニ負担ノ公平ヲ欠クニ至ルハ免ルヘカラサルノ理数ナリ、謹テ明治二十九年法律第三十三号営業税法ヲ按スルニ、課税標準甚タ複雑ニ、徴税方法頗ル煩瑣ニシテ、加フルニ税額ノ負担亦公平ヲ得サルモノアリ、請フ嘗ミニ其然ル所以ヲ開陳セン
　其一　営業税法ハ物品販売業ノ課税標準ヲ、売上金額・建物賃貸価格・従業者ノ三種トシ、尚売上金額ヲ卸売・小売ノ二ニ分チテ、其税率ヲ卸売ハ万分ノ五、小売ハ万分ノ十五ト定メラレタリ、卸売ハ小売ニ比スレハ概シテ薄利ナルヲ常トスルカ故ニ、之ヲ区分シテ税率ニ等差ヲ設ケシハ一見公平ヲ得タルカ如シト雖トモ、是只法文上ニ於テ公平ノ迹ヲ示スニ過キス、其実際ニ至テハ二者ノ区分甚タ曖昧ニシテ之ヲ識別スルニ由ナキモノナリ、蓋シ単純ニ考フレハ営業者ニ対シ販売スルモノヲ卸売ト云ヒ、消費者ニ販売スルモノヲ小売ト云フカ如クナルモ、営業者ニ販売スルモノ其量必スシモ多キニアラス、消費者ニ販売スルモノ其量必スシモ少キニ限ラス、而シテ店頭日々ノ顧客ニ就キ、其果シテ営業者ナルヤ将タ消費者ナルヤヲ吟味スルカ如キハ到底為シ能ハサル事タリ、然ラハ何ニ縁テ容易ニ卸売ト小売トヲ区分シ得ンヤ、要スルニ卸売ト小売トハ対手ノ営業者ナルト消費者ナルトノ区分ヲ識別スルニ由ナク、又其商高ノ多寡ノミヲ以テ区別シ得ヘキニ非サレハ、之ヲ法文ニ規定シ得ヘキ程ノ明
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確ナル限界ヲ睹出ス能ハサルモノナリ、夫レ二者ノ区分是ノ如ク曖昧ナルニ拘ラス、其税率ニ於テ一ト三トノ大差アリトセハ、実施ノ日ニ至テ幾多ノ紛擾ヲ醸サヽラントスルモ豈得ヘケンヤ、其法文上ニ於テ公平ノ迹ヲ示シタルモノ適マ以テ不公平ヲ生スルノ因タラスンハアラサルナリ
　其二　営業税法ハ建物賃貸価格ヲ以テ課税標準ノ一ニ定メラレタリ各種営業中旅人宿業・料理店業等ニ至テハ建物ヲ課税標準中ニ算スルモ甚タシキ不公平ノ結果ヲ生セサルヘシト雖トモ、自余ノ営業ニ至テハ建物ノ大小及其賃貸価格ノ多寡ハ必スシモ収利ノ大小多寡ト比例セス、之ヲ例セハ銀行業・保険業等ハ矮小ノ家屋ニ於テ其業ヲ営ムモ莫大ノ利益ヲ収メ得ヘク、之ニ反シ製造業・販売業等ハ建物ノ手広ナルニ似ス収ムル所ノ利益僅少ナルモノアリ、何トナレハ其扱フ貨物ノ異ナル所アレハナリ、然ルニ等シク課税標準トシテ之ニ課スルニ千分ノ四十ノ税率ヲ以テセントス、安ンソ其結果ノ公平ナルヲ得ンヤ、殊ニ倉庫業ノ建物ニ至テハ営業資本ノ大部分ヲ占ムルコト猶汽船会社ノ船舶、鉄道会社ノ車輛ニ於ケルカ如シ、然ルニ其賃貸価格ニ向テ課税セントス、仮令税率ニ於テ多少斟酌ヲ加ヘタリトスルモ決シテ公平ヲ得タリト謂フヘカラサルナリ、況ンヤ建物賃貸価格其物ニ至テモ公平ニ之ヲ定ムルハ到底望ムヘカラサル事ナルニ於テオヤ、営業税法第十八条及第二十八条ハ其算定ノ手続若クハ其評価ノ手続ニ関シ細ニ規定セラルヽ所アリト雖トモ、是ノ如キハ徒ラニ収税官ト営業者トニ非常ノ煩労ト苦痛トヲ与ヘ、為メニ幾多ノ紛擾ト幾多ノ徴税費トヲ増加スルニ過キサルヘキナリ
　其三　営業税法ハ又従業者ヲ課税標準トシ、其員数ハ前年ニ於ケル最多数ノトキニ依ルヘキコトヽ規定セラレタレトモ、営業ノ種類ニ依リテハ従業者ノ員数一定セスシテ随時増減スルモノ少カラス、然ルヲ前年中最多数ノトキニ依ルヘキモノト定メラレタルハ決シテ至当ノ課税法ト謂フヲ得ス、殊ニ本法ニ於テ名義ノ何タルヲ問ハス商業ニ従事スルモノハ総テ従業者ト定メ、商家ノ丁稚、製造家ノ徒弟ノ如キニ至ルマテ悉ク従業者トシテ計算スヘキモノトセシ如キハ酷ノ甚タシキモノト謂ハサルヘカラス、何トナレハ商家ノ丁稚、製造家ノ徒弟ノ如キ、多クハ将来其業ニ当ランコトヲ欲シテ本業ヲ見習ハンカ為メ寄食スルモノナレハ、仮令其名ハ被傭者ナルモ其実ハ決シテ普通ノ被傭者ト同一視スヘキモノニアラサレハナリ、固ヨリ従業者ハ課税ノ標準タルニ止リ直接其頭上ニ負担ヲ受クルニ非スト雖トモ、已ニ課税ノ標準ト為ス以上ハ傭主ハ勉メテ其員数ヲ減セントスルハ免ルヘカラサル情勢ニシテ、其余響ノ及フ所啻ニ旧来ノ慣習ヲ破リ貧家ノ子弟ヲシテ発達ノ途ヲ失ハシムルノミナラス、延テ商工業ノ振興ヲ妨クル媒介タルカ如キコトナキヲ必セサルナリ
以上ハ則チ営業税法中最モ著シキ欠点ナリト信ス、不幸現法ノ如クニシテ実施セラルヽアラハ、収税官ハ徴税方法ノ煩瑣ナルニ堪ヘス、営業者ハ課税標準ノ複雑ナルニ堪ヘサルヘシ、是本税法ノ改正ヲ必要トスル所以ナリ
　　　　第二　営業税法改正ノ要領
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営業税法ノ改正セサルヘカラサル所以ハ以上開陳スル所ノ如シ、然ラハ如何ニ之ヲ改正スヘキ乎、要スルニ徴税方法ノ簡明ニシテ而カモ公平ヲ失ハサルヲ以テ帰旨ト為スノ外ナシ
　其一　営業税法以外別ニ会社税法ヲ創定シ、会社組織ヲ以テスル営業ハ総テ同法ニ属セシメ、会社収入ノ利益ヲ標準トシテ相当ノ課税ヲ為ス事
本来営業税ヲ公平ニ賦課セント欲セハ、課税ノ標準ヲ営業所得即チ利益ニ求ムルヨリ善キハナシ、只営業利益ナルモノハ容易ニ之ヲ知ルニ由ナク、強テ之ヲ知ラント欲スレハ幾多煩雑ナル手数ヲ要スヘキニ依リ、已ムヲ得ス他ニ課税標準ヲ求ムルニ外ナラス、然ルニ会社組織ノ営業ニ在テハ、株式会社ハ勿論、他ノ合資・合名会社ト雖トモ、一個人ニ比スレハ其所得ヲ知ルコト頗ル容易ナルモノアリ、何ソ故ラニ課税標準ヲ資本金額・建物賃貸価格・従業者等ニ求メ、幾多煩雑ナル手数ヲナシテ、結局不公平ノ課税ヲ為スニ畢ルノ要アランヤ、人或ハ所得ヲ以テ課税標準ト為スハ所得税ノ本色ナリト説クモノアリト雖トモ営業税ハ元ト営業ニ対シテ課税スルモノナリ、乃チ其営業所得ヲ標準トシテ之ニ賦課スルニ於テ何ノ不可カ之アランヤ、況ンヤ現時本邦ニ於テ会社ハ全然所得税法ノ範囲外ニ立テルオヤ、是新ニ会社税法ヲ制定セラレンコトヲ希望スル所以ナリ
　其二　一個人ノ営業ニ対シテハ左ノ方法ニ依リ相当ノ課税ヲ為ス事
　（一）　物品販売業
　　右ハ売上金額（卸売ト小売トヲ問ハス）ヲ課税標準ト為ス事
　（二）　銀行業　保険業　金銭貸付業　物品貸付業　製造業　印刷業　写真業　倉庫業　運送業　運河業　桟橋業　船渠業　船舶碇繋業　貨物陸揚場業
　　右ハ資本金額ヲ課税標準ト為ス事
　（三）　土木請負業　労力請負業
　　右ハ請負金額ヲ課税標準ト為ス事
　（四）　席貸業　料理店業　旅人宿業
　　右ハ建物賃貸価格及従業者ヲ課税標準ト為ス事
　（五）　公ナル周旋業　代弁業　仲立業　仲買業
　　右ハ報償金額ヲ課税標準ト為ス事
　以上各業ハ営業ノ状態ニ応シ毎営業ヲ若干ノ等級ニ分チ、毎等級相当ノ税率ヲ定ム、但等級ハ課税標準（物品販売業ノ売上金額、銀行業等ノ資本金額ノ類）ニ依リテ分ツ事
　又毎営業ノ等級ヲ定ムルニ当リテハ、各地適宜ノ区域内ニ営業税調査委員若干名ヲ置キ之ヲ調査セシムル事、但営業組合アルモノハ其組合ニ調査ヲ附託スルモ妨ケナシ
前記ノ如ク営業税法ヲ改定スルニ於テハ、啻ニ徴税上煩雑ノ手数ト無益ノ経費トヲ省キ得ヘキノミナラス、課税標準複雑ナラサルカ故ニ、其税率ノ苛重ナラサル限リハ、営業者ヲシテ非常ノ苦痛ト煩労トヲ感セシムルカ如キ患ヒナキヲ得ヘシ、顧フニ、毎業ニ等級ヲ定ムルハ多少煩雑ニ渉ルノ観アリト雖トモ、是只法ヲ立ツルノ上ニ於テ慎重ノ商量ヲ要スルニ止リ、之ヲ実施スルニハ極メテ簡易ナリ、現法ノ其法文
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簡易ナルカ如クニシテ而カモ之ヲ実施スルニハ甚タ煩雑ナルニ比スレハ、固ヨリ同日ニシテ語ルヘキニ非サルナリ、且夫レ等級ニ依テ課税スルニ於テハ、其級別ノ公平ヲ失ハサル限リハ営業者ハ自家ノ面目上好ンテ下級ノ納税者タルヲ甘ンスルカ如キコトナク、徴税ノ成績従テ良好ナルヲ得ヘシ、而シテ其等級ノ当否ハ調査委員若クハ営業組合ヲシテ之ヲ調査セシムルコトヽセハ、比較的ニ較ヤ公平ニ近キ結果ヲ収メ得ヘキヲ信スルナリ、但其等級ニ至テハ営業ノ種類ニ依リ或ハ数等ニ分ツヲ相当トスルモアルヘク、或ハ十数等ニ分ツヲ相当トスルモアルヘキヲ以テ、此等ハ固ヨリ実際ノ情況ニ照シテ細ニ斟酌スル所ナカルヘカラス
　其三　税率ハ現法ニ比シ徴税費ノ減スル分量ニ応シテ之ヲ軽減スル事
会社税法及ヒ改定営業税法ニ規定セラルヘキ税率ニ就テハ、細目ニ渉リテ按ヲ具セスト雖トモ、其程度ハ全体ニ於テ現法ニ比シ之ヲ軽減スルノ至当ナルヲ信スルモノナリ、聞クカ如クンハ現法ハ一年七百五十余万円ヲ徴収シ得ヘキ目的ヲ以テ其税率ヲ定メラレタリト、府県従来ノ地方税中ヨリ国庫ニ移ルヘキ営業税ハ概算二百九万円ナリト云フニ一躍之ヲ増シテ七百五十余万円ト為サントス、其増加ノ急激ニシテ負担ノ過重ナルヤ知ルヘキナリ、抑モ現法ハ幾多ノ課税標準ヲ設ケ営業者ノ申告ヲ俟テ之ニ課税セントスルモノナリ、是ノ如キ手続ノ下ニ彼ノ如キ過重ノ負担ヲ為サシム、其能ク予定ノ税額ヲ徴収シ得ヘキヤ否ヤハ何人モ疑ヒナキ能ハサル所ナルヘシ、現法ハ営業者ノ申告ヲシテ不正ナカラシメンカ為メ其取締ニ関シテ細密峻厳ノ規定ヲ設ケラレタレハ、之ヲ厲行スルニ於テハ仮ニ予定ノ税額ヲ徴収シ得ヘシトスルモ為メニ要スル徴税費ニ至テハ其多額ナルコト恐ラク意料ノ外ニ出ルモノアルヘシ、独リ多額ノ徴税費ヲ要スヘキノミナラス、其手続ノ煩瑣ナル為メ納税者各自カ費ス所ノ費用ニ至テハ挙テ数フヘカラサル者アラン、夫レ徴税ノ為メニ消費スル所ハ国庫ノ収入上寸益ナクシテ徒ニ納税者ヲ窘ルニ過キス、之ヲ一方ニ徴シテ之ヲ一方ニ失フ、寧ロ始メヨリ徴収セサルノ勝レルニ若カサルナリ、然ルニ今若シ会社税法ヲ創定シ営業税法ヲ改定スルコト前述ノ如クナラン乎、課税標準簡明ニシテ徴税方法複雑ナラサルカ故ニ徴税ノ為メニ要スル費用ハ非常ニ之ヲ減スルコトヲ得ヘク、之ヲ現法ニ比スレハ其差少ナクトモ三ト一トヲ下ラサルヘシ、然ラハ則チ其徴税費ノ減スル分量ニ応シ税率ニ於テ之ヲ軽減スルモ毫モ国庫ニ損スル所ナキノ理ナラスヤ、而シテ之ニ由テ一面無益ノ手数ト費用トヲ省キ、一面営業者ニ幾分休養ノ余地ヲ与ヘ得ヘシトセハ、実ニ策ノ一挙両得ナルモノト謂ハサルヘカラス、是全体ニ於テ現法ニ比シ其税率ヲ軽減セラレンコトヲ希望スル所以ナリ
以上ハ即チ営業税法改正ヲ希望スルニ就テノ大体ノ意見ナリ、大綱已ニ挙カレハ細目従テ張ルヲ常トス、故ニ税法ニ規定セラルヘキ条項等ニ至テハ敢テ玆ニ絮述セス

　　　　○議案
十一月十九日ノ会議ニ於テ、先ツ本会ノ原按ヲ調製スル為メ委員ヲ選
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挙スヘシト決シ、乃チ会長ハ左ノ十三君ヲ委員ニ指名セリ
　静岡　　北村五郎兵衛君　長崎　　松田源五郎君
　岡山　　高田音次郎君　　鹿児島　宮里正静君
　富山　　関野善次郎君　　広島　　桐原恒三郎君
　神戸　　岡田元太郎君　　仙台　　木村一是君
　名古屋　奥田正香君　　　大坂　　亀岡徳太郎君
　四日市　井島茂作君　　　京都　　中野忠八君
　東京　　中野武営君
右委員諸君ハ審議ノ末、前記各意見書中東京商業会議所ノ意見書ヲ以テ直チニ本会ノ原按ニ充ツヘシト決議シ、即日左ノ報告ヲ為シタリ
　　　　　報告
　本日臨時商業会議所聯合会議ノ決議ニ依リ附託セラレタル件遂審議候処、本委員ニ於テハ東京商業会議所提出ノ意見書ヲ本会議ノ原按ニ充ツヘシト決議致候間、此段及御報告候也
　　明治二十九年十一月十九日　　　　委員長　中野武営
　　　　臨時商業会議所聯合会会長　渋沢栄一殿
　　　　○調査報告
本会ハ前記委員ノ報告ヲ是認シ、東京商業会議所提出ノ意見書ヲ原按トシテ審議シタルカ、第二読会ニ至リ諸種ノ議論アリシヲ以テ、其終リニ於テ整理委員ヲ置クニ決シ、会長ハ左ノ七君ヲ委員ニ指名セリ
　長崎　　松田源五郎君　　神戸　岡田元太郎君
　名古屋　奥田正香君　　　大坂　亀岡徳太郎君
　知多　　天野伊左衛門君　京都　中野忠八君
　東京　　中野武営君
右委員ニ於テ審議ノ末、委員長中野武営君ヨリ報道アリシ調査報告ハ左ノ如シ
　別記ノ趣意ヲ以テ大蔵大臣ヘ建議シ、且帝国議会ヘ請願スル事
　（別記）　営業税法改正意見
　　　　第一　営業税法ノ欠点　　　　　　　
　凡ソ税法ヲ制定スルニ方リテ注意スヘキ第一要義ハ課税方法ノ簡明ニシテ而カモ公平ヲ失ハサルニアリ、苟クモ課税方法ニシテ煩雑ニ失スルアラン乎、独リ多額ノ徴税費ヲ要スルノミナラス、納税者ハ為メニ非常ノ苦痛ヲ感シ、其結果竟ニ負担ノ公平ヲ欠クニ至ルハ免ルヘカラサルノ理数ナリ、謹テ明治二十九年法律第三十三号営業税法ヲ按スルニ、課税方法甚タ煩雑ニシテ、加フルニ税額ノ負担亦公平ヲ得サルモノアリ、請フ嘗ミニ其然ル所以ヲ開陳セン
　　其一　営業税法ハ建物賃貸価格ヲ以テ課税標準ノ一ニ定メラレタリト雖トモ、建物ノ大小及賃貸価格ノ多寡ハ必スシモ収利ノ大小多寡ト比例セス、之ヲ例セハ銀行業・保険業等ハ矮小ノ家屋ニ於テ其業ヲ営ムモ莫大ノ利益ヲ収メ得ヘク、之ニ反シ製造業・販売業等ハ建物ノ手広ナルニ似ス収ムル所ノ利益僅少ナルモノアリ、何トナレハ其扱フ貨物ノ異ナル所アレハナリ、然ルニ等シク課税標準トシテ之ニ課スルニ千分ノ四十ノ税率ヲ以テセントス、安ンソ其結果ノ公平ナルヲ得ンヤ、殊ニ倉庫業ノ建物ニ至テハ営業資
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本ノ大部分ヲ占ムルコト猶汽船会社ノ船舶、鉄道会社ノ車輛ニ於ケルカ如シ、然ルニ其賃貸価格ニ向テ課税セントス、仮令税率ニ於テ多少斟酌ヲ加ヘタリトスルモ決シテ公平ヲ得タリト謂フヘカラサルナリ、況ンヤ建物賃貸価格其物ニ至テモ公平ニ之ヲ定ムルハ到底望ムヘカラサル事ナルニ於テオヤ、是ノ如キモノヲ以テ課税ノ標準ト為スハ課税上徒ニ煩雑ノ手数ヲ増スニ過キサルナリ
　　其二　営業税法ハ又従業者ヲ以テ課税標準ノ一ニ定メラレタリト雖トモ、営業ノ種類ニ依リテハ従業者ノ員数一定セスシテ随時増減スルモノ少カラス、是ノ如キモノヲ以テ課税ノ標準ト為スハ亦只課税上煩雑ノ手数ヲ増スニ過キス、殊ニ本法ニ於テ名義ノ何タルヲ問ハス商業ニ従事スルモノハ総テ従業者ト定メ、商家ノ丁稚製造家ノ徒弟ノ如キニ至ルマテ悉ク従業者トシテ計算スヘキモノトセシ如キハ酷ノ甚タシキモノト謂ハサルヘカラス、何トナレハ商家ノ丁稚、製造家ノ徒弟ノ如キ、多クハ将来其業ニ当ランコトヲ欲シテ本業ヲ見習ハンカ為メ寄食スルモノナレハ、仮令其名ハ被傭者ナルモ其実ハ決シテ普通ノ被傭者ト同一視スヘキモノニアラサレハナリ、固ヨリ従業者ハ課税ノ標準タルニ止リ直接其頭上ニ負担ヲ受クルニ非スト雖トモ、已ニ課税ノ標準ト為ス以上ハ傭主ハ勉メテ其員数ヲ減セントスルハ免ルヘカラサル情勢ニシテ、其余響ノ及フ所啻ニ旧来ノ慣習ヲ破リ、子弟ヲシテ発達ノ途ヲ失ハシムルノミナラス、延テ商工業ノ振興ヲ妨クル媒介タルカ如キコトナキヲ必セサルナリ
　　其三　営業税法ハ物品販売業ノ売上金額ヲ卸売・小売ノ二ニ分チテ、其税率ヲ卸売ハ万分ノ五、小売ハ万分ノ十五ト定メラレタリ卸売ハ小売ニ比スレハ概シテ薄利ナルヲ常トスルカ故ニ、之ヲ区分シテ税率ニ等差ヲ設ケシハ一見公平ヲ得タルカ如シト雖トモ、是只法文上ニ於テ公平ノ迹ヲ示スニ過キス、其実際ニ至テハ二者ノ区分甚タ曖昧ニシテ之ヲ識別スルニ由ナキモノナリ、蓋シ単純ニ考フレハ営業者ニ対シ販売スルモノヲ卸売ト云ヒ、消費者ニ販売スルモノヲ小売ト云フカ如クナルモ、営業者ニ販売スルモノ其量必スシモ多キニアラス、消費者ニ販売スルモノ其量必スシモ少キニ限ラス、而シテ其店頭日日ノ顧客ニ就キ其果シテ営業者ナルヤ将タ消費者ナルヤヲ吟味スルカ如キハ到底為シ能ハサル事タリ然ラハ何ニ縁テ容易ニ卸売ト小売トヲ区分シ得ンヤ、要スルニ卸売ト小売トハ対手ノ営業者ナルト消費者ナルトノ区分ヲ識別スルニ由ナク、又其商家ノ多寡ノミヲ以テ区別シ得ヘキニ非サレハ、之ヲ法文ニ規定シ得ヘキ程ノ明確ナル限界ヲ睹出ス能ハサルモノナリ、夫レ二者ノ区分是ノ如ク曖昧ナルニ拘ラス其税率ニ於テ一ト三トノ大差アリトセハ、実施ノ日ニ至テ幾多ノ紛擾ヲ醸サヽラントスルモ豈得ヘケンヤ、其法文上ニ於テ公平ノ迹ヲ示シタルモノ適マ以テ不公平ヲ生スルノ因タラスンハアラサルナリ
　以上ハ則チ営業税法中最モ著シキ欠点ナリト信ス、不幸現法ノ如クニシテ実施セラルヽアラハ、収税官ト納税者トヲシテ煩雑ニ堪ヘサラシムルノミナラス、延テ商工業ノ発達ヲ害スルニ至ルヘシ、是本
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税法ノ改正ヲ必要トスル所以ナリ
　　　　第二　営業税法改正ノ要領
　営業税法ノ改正セサルヘカラサル所以ハ以上開陳スル所ノ如シ、然ラハ如何ニ之ヲ改正スヘキ乎、要スルニ課税方法ノ簡明ニシテ而カモ公平ヲ失ハサルヲ以テ帰旨ト為サヽルヘカラス
　　其一　一個人ノ営業ニ対シテハ左ノ方法ニ依リ相当ノ課税ヲ為ス事
　　（一）　物品販売業
　　　右ハ売上金額（卸売ト小売トヲ問ハス）ヲ課税標準ト為ス事
　　（二）　銀行業　保険業　金銭貸付業　物品貸付業　製造業　印刷業　写真業　倉庫業　運送業　運河業　桟橋業　船渠業　船舶碇繋場業　貨物陸揚場業
　　　右ハ資本金額ヲ課税標準ト為ス事
　　（三）　土木請負業　労力請負業
　　　右ハ請負金額ヲ課税標準ト為ス事
　　（四）　席貸業　料理店業　旅人宿業
　　　右ハ収入金額ヲ課税標準ト為ス事
　　（五）　公ナル周旋業　代弁業　仲立業　仲買業
　　　右ハ報償金額ヲ課税標準ト為ス事
　　以上各業ハ営業ノ情態ニ応シ若干ノ等級ニ分チ毎等級相当ノ税額ヲ定ム、但等級ハ課税標準（物品販売業ノ売上金額、銀行業等ノ資本金額ノ類）ニ依リテ分ツ事
　　又毎営業ノ等級ヲ定ムルニ当リテハ各地適宜ノ区域内ニ営業税調査委員若干名ヲ置キ之ヲ調査セシムル事、但営業組合アルモノハ其組合ニ調査ヲ附託スルモ妨ケナシ
　前記ノ如ク営業税法ヲ改正スルニ於テハ、啻ニ課税上煩雑ノ手数ト無益ノ経費トヲ省キ得ヘキノミナラス、課税標準複雑ナラサルカ故ニ、其税ノ苛重ナラサル限リハ、営業者ヲシテ非常ノ苦痛ト煩労トヲ感セシムルカ如キ患ヒナキヲ得ヘシ、各業ニ対スル課税標準ハ建物賃貸価格及ヒ従業者ノ二種ヲ削除セシ外概ネ現法ト同一ナルニ似タルモ、其実ハ現法ニ比シテ著シキ相違アリ、蓋シ物品販売業ノ売上金額ニ於ケル、銀行業等ノ資本金額ニ於ケルカ如キ、其名ハ等シク売上金額、資本金額ナリト雖トモ、現法ハ総テ業体ノ異同ヲ問ハス、又其利益ノ厚薄ヲ問ハス、一律ノ下ニ物品販売業若クハ銀行業等トシテ同一ニ課税セントスルモノナレハ、其間非常ノ不公平ヲ生ス、然ルニ改正意見ノ如クセハ、同シク物品販売業ニ在テモ業体ノ異同、利益ノ厚薄ニ従ヒ各種営業其等級ヲ異ニスルヲ以テ、課税標準ハ同一ナルモ其負担スル税額ハ営業ノ種類ニ応シテ高低ノ別ヲ設クルカ故ニ、其間自カラ公平ヲ得ヘキナリ、顧フニ、毎業ニ等級ヲ定ムルハ多少煩雑ニ渉ルノ観アリト雖トモ、是只法ヲ立ツルノ上ニ於テ慎重ノ商量ヲ要スルニ止リ、之ヲ実施スルニハ極メテ簡易ナリ現法ノ其法文簡易ナルカ如クニシテ而カモ之ヲ実施スルニハ甚タ煩雑ナルニ比スレハ、固ヨリ同日ニシテ語ルヘキニ非サルナリ、而シテ其等級ノ当否ハ調査委員若クハ営業組合ヲシテ之ヲ調査セシムル
 - 第22巻 p.76 -ページ画像 
コトヽセハ、比較的ニ較ヤ公平ニ近キ結果ヲ収メ得ヘキヲ信スルナリ、但其等級ニ至テハ営業ノ種類ニ依リ或ハ数等ニ分ツヲ相当トスルモアルヘク、或ハ十数等ニ分ツヲ相当トスルモアルヘキヲ以テ、此等ハ固ヨリ実際ノ情況ニ照シテ細ニ斟酌スル所ナカルヘカラス
　　其二　会社組織ヲ以テスル営業ハ其利益金ヲ課税標準ト為ス事、但別ニ等級ヲ設ケス
　本来営業税ヲ公平ニ賦課セント欲セハ課税ノ標準ヲ営業所得即チ利益ニ求ムルヨリ善キハナシ、只営業利益ナルモノハ容易ニ之ヲ知ルニ由ナク、強テ之ヲ知ラント欲スレハ幾多煩雑ナル手数ヲ要スヘキニ依リ、已ムヲ得ス他ニ課税標準ヲ求ムルニ外ナラス、然ルニ会社組織ノ営業ニ在テハ、株式会社ハ勿論、他ノ合資・合名会社ト雖トモ一個人ニ比スレハ其所得ヲ知ルコト頗ル容易ナルモノアリ、何ソ故ラニ幾多煩雑ナル手数ヲシテ、結局不公平ノ課税ヲ為スニ畢ルノ要アランヤ、是会社組織ヲ以テスル営業ニ対シテハ課税方法ヲ異ニセントスル所以ナリ
　　其三　税額ハ相当ノ軽減ヲ為ス事
　改正意見ハ、税額ニ就テハ細目ニ渉リテ按ヲ具セスト雖トモ、其程度ハ全体ニ於テ、現法ニ比シ之ヲ軽減スルノ至当ナルヲ信スルモノナリ
　聞クカ如クンハ現法ハ一年七百五拾余万円ヲ徴収シ得ヘキ目的ヲ以テ定メラレタリト、府県従来ノ地方税中ヨリ国庫ニ移ルヘキ営業税ハ概算二百九万円ナリト云フニ、一躍之ヲ増シテ七百五拾余万円ト為サントス、其増加ノ急激ニシテ負担ノ過重ナルヤ知ルヘキナリ、国家前途ノ経営ニ要スル費用ハ国民ノ本分固ヨリ之ヲ負担セサルヘカラスト雖トモ、其負担スル所ハ国民全般ニ通シテ彼此権衡ヲ失フカ如キコトナキヲ要ス、戦後多費ヲ要スルノ故ヲ以テ、特リ商工業者ヲシテ是ノ如キ非常ノ増税ヲ負担セシメントスルカ如キハ、決シテ権衡ヲ得タリト謂フヘカラサルナリ、況ンヤ急激ノ変動ハ経済上最モ忌ムヘキ所ニシテ、税源ヲ涸渇セシメサルハ課税上ノ要義ナルヲヤ、我商工業者ハ徒ニ自己ノ納税額ノ軽減セラレンコトヲ望ムモノニ非サルモ、国民ノ本分トシテ負担スル所ハ著シキ懸隔ナカラシムルコト国家経済ヲ燮理スル所以ノ本道ナリ、故ニ営業税法ヲ前記ノ如ク改正スルニ当リテハ、税額ニ相当ノ軽減ヲ為シ、商工業者ヲシテ負担ヲ感セシムルコトナキヲ希望スルモノナリ
　以上ハ則チ営業税法改正ヲ希望スルニ就テノ大体ノ意見ナリ、大綱已ニ挙カレハ細目従テ張ルヲ常トス、故ニ税法ニ規定セラルヘキ条項等ニ至テハ敢テ玆ニ絮述セス
右ノ報告ハ、委員諸君カ第二読会決議ノ範囲内ニ於テ整理セラレタルモノナルカ、委員諸君ハ此報告ノ儘ニテハ聊カ安ンセサル所アリト為シ、委員ノ資格ヲ離レテ審議ヲ遂ケ、右報告中「第二営業税法改正ノ要領」中「其一」ノ一節ニ就キ別ニ一種ノ修正案ヲ作リ、前記報告ヲ提出シタル後更ニ一個ノ修正動議トシテ提出シタリ、即チ左ノ如シ
　　其一　一個人ノ営業ニ対シテハ左ノ標準ニ依リ相当ノ課税ヲ為ス事
 - 第22巻 p.77 -ページ画像 
　（一）　物品販売業
　　右ハ売上金額（卸売ト小売トヲ問ハス）ヲ課税標準ト為ス事
　（二）　銀行業
　　右ハ総益金（諸経費ヲ控除セサルモノ）ヲ課税標準ト為ス事
　（三）　金銭貸付業
　　右ハ貸付金額ヲ課税標準ト為ス事
　（四）　保険業　物品貸附業　製造業　印刷業　写真業　倉庫業　運送業　運河業　桟橋業　船渠業　船舶碇繋場業　貨物陸揚場業　席貸業　料理店業　旅人宿業
　　右ハ収入金額ヲ課税標準ト為ス事
　（五）　土木請負業　労力請負業
　　右ハ受負金額ヲ課税標準ト為ス事
　（六）　公ナル周旋業　代弁業　仲立業　仲買業
　　右ハ報償金額ヲ課税標準ト為ス事
　前記ノ如ク営業税法ヲ改正スルニ於テハ、啻ニ課税上煩雑ノ手数ト無益ノ経費トヲ省キ得ヘキノミナラス、課税標準複雑ナラサルカ故ニ、其税額ノ苛重ナラサル限リハ、営業者ヲシテ非常ノ苦痛ト煩労トヲ感セシムルカ如キ患ヒナキヲ得ヘシ
　　　　○決議案
前記委員ノ報告ハ修正案ノ如ク可決セラレ、引続キ第三読会ニ於テハ満場一致ヲ以テ可決確定セラレタリ、其決議案ハ左ノ如シ（但シ決議案ハ全会ノ委任ニ依リ前記整理委員ニ於テ字句条項ヲ修補シタルモノニ係ル）
別記ノ趣意ヲ以テ大蔵大臣ヘ建議シ、且帝国議会ヘ請願スル事
　　営業税法改正意見
　　　　第一　営業税法ノ欠点
凡ソ税法ヲ制定スルニ方リテ注意スヘキ第一要義ハ課税方法ノ簡明ニシテ而カモ公平ヲ失ハサルニアリ、苟クモ課税方法ニシテ煩雑ニ失スルアラン乎、独リ多額ノ徴税費ヲ要スルノミナラス、納税者ハ為メニ非常ノ苦痛ヲ感シ、其結果竟ニ負担ノ公平ヲ欠クニ至ルハ免ルヘカラサルノ理数ナリ、謹テ明治二十九年法律第三十三号営業税法ヲ按スルニ、課税方法甚タ煩雑ニシテ、加フルニ税額ノ負担亦公平ヲ得サルモノアリ、請フ嘗ミニ其然ル所以ヲ開陳セン
　其一　営業税法ハ建物賃貸価格ヲ以テ課税標準ノ一ニ定メラレタリト雖モ、建物ノ大小及其賃貸価格ノ多寡ハ甚シク収利ノ大小多寡ニ反シ、之ヲ例セハ銀行業・保険業等ハ矮小ノ家屋ニ於テ其業ヲ営ムモ莫大ノ利益ヲ収メ得ヘク、之ニ反シ製造業・販売業等ハ建物ノ手広ナルニ似ス収ムル所ノ利益僅少ナルモノアリ、何トナレハ其営業ノ状態ニ異ナル所アレハナリ、然ルニ等シク課税標準トシテ之ニ課スルニ千分ノ四十ノ税率ヲ以テセントス、安ンソ其結果ノ公平ナルヲ得ンヤ、況ヤ建物賃貸価格其物ニ至テモ公平ニ之ヲ定ムルハ到底望ムヘカラサル事ナルニ於テオヤ、是ノ如キモノヲ以テ課税ノ標準ト為スハ課税上徒ニ煩雑ノ手数ヲ増スニ過キサルナリ
　其二　営業税法ハ又従業者ヲ以テ課税標準ノ一ニ定メラレタリト雖
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モ、営業ノ種類ニ依リテハ従業者ノ員数一定セスシテ随時増減スルモノ少カラス、是ノ如キモノヲ以テ課税ノ標準ト為スハ亦只課税上煩雑ノ手数ヲ増スニ過キス、殊ニ本法ニ於テ名義ノ何タルヲ問ハス商業ニ従事スルモノハ総テ従業者ト定メ、商家ノ丁稚、製造家ノ徒弟ノ如キニ至ルマテ悉ク従業者トシテ計算スヘキモノトセシ如キハ酷ノ甚シキモノト謂ハサルヘカラス、何トナレハ商家ノ丁稚、製造家ノ徒弟ノ如キ、多クハ将来其業ニ当ランコトヲ欲シテ本業ヲ見習ハンカ為メニ寄食スルモノナレハ、仮令其名ハ被傭者ナルモ其実ハ決シテ普通ノ被傭者ト同一視スヘキモノニアラサレハナリ、固ヨリ従業者ハ課税ノ標準タルニ止リ直接其頭上ニ負担ヲ受クルニ非スト雖モ、已ニ課税ノ標準ト為ス以上ハ傭主ハ勉メテ其員数ヲ減セントスルハ免カルヘカラサル情勢ニシテ、其余響ノ及フ所啻ニ旧来ノ習慣ヲ破リ子弟ヲシテ発達ノ途ヲ失ハシムルノミナラス、延テ商工業ノ振興ヲ妨クル媒介タルカ如キコトナキヲ必セサルナリ
　其三　営業税法ハ又資本金額ヲ以テ課税標準ノ一ニ定メラレタリト雖モ、資本金額ノ多寡ハ必シモ収利ノ多寡ト比例セサルノミナラス一個人カ営業ニ対シテ放下スル運転資本ノ如キハ到底其額ヲ知ルニ由ナキモノナリ、独リ運転資本ノ知リ難キニ止ラス、固定資本ニ変形シタルモノニ至リテモ家屋ノ規摸其揆ヲ一ニセス、器械ノ品種其目ヲ同フセス、一々之ヲ打算シテ以テ資本総額ノ幾許ナルヤヲ知ルコト豈容易ノ業ナリトセンヤ、是ノ如キモノヲ以テ課税ノ標準ト為スハ是亦徒ニ課税上ノ手数ヲ増スニ過キサルナリ
　其四　営業税法ハ物品販売業ノ売上金額ヲ卸売・小売ノ二ニ分チテ其税率ヲ卸売ハ万分ノ五、小売ハ万分ノ十五ト定メラレタリ、卸売ハ小売ニ比スレハ概シテ薄利ナルヲ常トスルカ故ニ、之ヲ区分シテ税率ニ等差ヲ設ケシハ一見公平ヲ得タルカ如シト雖モ、是只法文上ニ於テ公平ノ迹ヲ示スニ過キス、其実際ニ至テハ二者ノ区分甚タ曖昧ニシテ之ヲ識別スルニ由ナキモノナリ、蓋シ単純ニ考フレハ営業者ニ対シ販売スルモノヲ卸売ト云ヒ、消費者ニ販売スルモノヲ小売ト云フカ如クナルモ、営業者ニ販売スル者其量必スシモ多キニ非ス消費者ニ販売スルモノ其量必スシモ少キニ限ラス、而シテ店頭日々ノ顧客ニ就キ其果シテ営業者ナルヤ将タ消費者ナルヤヲ吟味スルカ如キハ到底為シ能ハサル事タリ、然ラハ何ニ縁テ容易ニ卸売ト小売トヲ区分シ得ンヤ、要スルニ卸売ト小売トハ対手ノ営業者ナルト消費者ナルトノ区分ヲ識別スルニ由ナク、又其商高ノ多寡ノミヲ以テ区分シ得ヘキニ非サレハ、之ヲ法文ニ規定シ得ヘキ程ノ明確ナル限界ヲ睹出ス能ハサル者ナリ、夫レ二者ノ区分是ノ如ク曖昧ナルニ拘ラス其税率ニ於テ一ト三トノ大差アリトセハ、実施ノ日ニ至テ幾多ノ紛擾ヲ醸サヽラントスルモ豈得ヘケンヤ、其法文上ニ於テ公平ノ迹ヲ示シタルモノ適マ以テ不公平ヲ生スルノ因タラスンハアラサルナリ
以上ハ則チ営業税法中最モ著シキ欠点ナリト信ス、不幸現法ノ如クニシテ実施セラルヽアラハ、収税官ト納税者トヲシテ煩雑ニ堪ヘサラシムルノミナラス、延テ商工業ノ発達ヲ害スルニ至ルヘシ、是本税法ノ
 - 第22巻 p.79 -ページ画像 
改正ヲ必要トスル所以ナリ
　　　　第二　営業税法改正ノ要領
営業税法ノ改正セサルヘカラサル所以ハ以上開陳スル所ノ如シ、然ラハ如何ニ之ヲ改正スヘキ乎、要スルニ課税方法ノ簡明ニシテ而カモ公平ヲ失ハサルヲ以テ帰旨ト為サヽルヘカラス
　　　　　其一　一個人ノ営業ニ対シテハ左ノ標準ニ依リ相当ノ課税ヲ為ス事
　（一）　物品販売業
　　　　　右ハ売上金額（卸売ト小売トヲ問ハス）ヲ課税標準ト為ス事
　（二）　銀行業
　　　　　右ハ総益金（諸経費ヲ控除セサルモノ）ヲ課税標準ト為ス事
　（三）　金銭貸附業
　　　　　右ハ貸附金額ヲ課税標準ト為ス事
　（四）　保険業　物品貸附業　製造業　印刷業　写真業　倉庫業　運送業　運河業　桟橋業　船渠業　船舶碇繋場業　貨物陸揚場業　席貸業　料理店業　旅人宿業
　　　　右ハ収入金額ヲ課税標準ト為ス事（本号ニ列記スル営業ハ其課税標準同一ナルモ其税率ニ至リテハ彼此適宜ニ差異ヲ附スルヲ要ス、以下各号亦同シ）
　（五）　土木請負業　労力請負業
　　　　　右ハ受負金額ヲ課税標準ト為ス事
　（六）　公ナル周旋業　代弁業　仲立業　仲買業
　　　　　右ハ報償金額ヲ課税標準ト為ス事
前記ノ如ク営業税法ヲ改正スルニ於テハ、啻ニ課税上煩雑ノ手数ト無益ノ経費トヲ省キ得ヘキノミナラス、課税標準複雑ナラサルカ故ニ、其税額ノ苛重ナラサル限リハ、営業者ヲシテ非常ノ苦痛ト煩労トヲ感セシムルカ如キ患ヒナキヲ得ヘシ
　　　　　其二　会社組織ヲ以テスル営業ハ其利益金ヲ課税標準ト為ス事
本来営業税ヲ公平ニ賦課セント欲セハ課税ノ標準ヲ営業所得即チ利益ニ求ムルヨリ善キハナシ、只営業利益ナルモノハ容易ニ之ヲ知ルニ由ナク、強テ之ヲ知ラント欲スレハ幾多煩雑ナル手数ヲ要スヘキニ依リ已ムヲ得ス他ニ課税標準ヲ求ムルニ外ナラス、然ルニ会社組織ノ営業ニ在テハ、株式会社ハ勿論、他ノ合資・合名会社ト雖モ一個人ニ比スレハ其所得ヲ知ルコト頗ル容易ナルモノアリ、何ソ故ラニ幾多煩雑ナル手数ヲナシテ結局不公平ノ課税ヲ為スニ畢ルノ要アランヤ、是会社組織ヲ以テスル営業ニ対シテハ課税方法ヲ異ニセントスル所以ナリ
　　　　　其三　税額ハ相当ノ軽減ヲ為ス事
改正意見ハ税額ニ就テハ細目ニ渉リテ按ヲ具セスト雖モ、其程度ハ全体ニ於テ、現法ニ比シ之ヲ軽減スルヲ至当ナリトス、聞クカ如クンハ現法ハ一年七百五拾余万円ヲ徴収シ得ヘキ目的ヲ以テ定メラレタリト府県従来ノ地方税中ヨリ国庫ニ移ルヘキ営業税ハ概算二百九万円ナリト云フニ、一躍之ヲ増シテ七百五拾余万円ト為サントス、其増加ノ急激ニシテ負担ノ過重ナルヤ知ルヘキナリ、国家前途ノ経営ニ要スル費
 - 第22巻 p.80 -ページ画像 
用ハ国民ノ本分固ヨリ之ヲ負担セサルヘカラスト雖モ、其負担スル所ハ国民全般ニ通シテ彼此権衡ヲ失フカ如キコトナキヲ要ス、戦後多費ヲ要スルノ故ヲ以テ、特リ商工業者ヲシテ是ノ如キ非常ノ増税ヲ負担セシメントスルカ如キハ、決シテ権衡ヲ得タリト謂フヘカラサルナリ況ヤ急激ノ変動ハ経済上最モ忌ムヘキ所ニシテ、税源ヲ涸渇セシメサルハ課税上ノ要義ナルオヤ、我商工業者ハ徒ニ自己ノ納税額ノ軽減セラレンコトヲ望ム者ニ非サルモ、国民ノ本分トシテ負担スル所ハ著シキ懸隔ナカラシムルコト国家経済ヲ燮理スル所以ノ本道ナリト信ス、故ニ営業税法ヲ前記ノ如ク改正スルニ当リテハ、税額ニ相当ノ軽減ヲ為シ、商工業者ヲシテ負担ノ偏重ヲ感セシムルコトナキヲ希望スルモノナリ
以上ハ則チ営業税法改正ヲ希望スルニ就テノ大体ノ意見ナリ、大綱已ニ挙カレハ細目従テ張ルヲ常トス、故ニ税法ニ規定セラルヘキ条項ニ至テハ敢テ玆ニ絮述セス

　　　　○大蔵・農商務両大臣訪問
本会閉会ニ際シテ会員一同ノ申合セシ所ニ従ヒ、十一月二十六日午前中野忠八・亀岡徳太郎・松田源五郎・天野伊左衛門・渋沢栄一・中野武営ノ六君ハ農商務省ニ出頭、榎本大臣ニ面会ノ上、聯合会決議ノ結果ヲ具状シテ営業税法改正ニ関スル希望ヲ開陳シ、同月三十日午後土居通夫・松田源五郎・天野伊左衛門・渋沢栄一・中野武営ノ五君ハ大蔵省ヘ出頭、松方大臣・田尻次官ニ面会シテ同断希望ヲ具陳セリ

明治二十九年十一月開設
臨時商業会議所聯合会議事速記録　　第一―二六〇頁　刊
明治二十九年十一月十九日午前十一時三十分開議
　　出席委員　　　　　四十七名　○氏名略
　　出席有志会員　　　　　四名　○氏名略
　　出席書記長・書記　　十三名　○氏名略
○仮会長（東京、渋沢栄一君）　皆様誠ニ御苦労千万デゴザイマス、東京商業会議所ガ聯合会ノ幹事ニ当ツテ居リマスタメニ、例ニ依リマシテ幹事トシテ是迄ニ至リマシタ順序ヲ一寸御報道ヲ仕リマス
此会ニ就キマシテハ傍聴ノコトハ如何致シテ宜シウゴザイマセウカ、別ニ許シマシテモ差支ナイカト考ヘマスヤウデハゴザイマスガ、一応御相談ヲ仕リマス
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　唯今ノ御照会ハ御考ノ通リ許シマシテモ差支ナカラウカト考ヘマス
○仮会長（東京、渋沢栄一君）　別ニ御異議ガゴザイマセネバ此御協議ハ傍聴ヲ許スベキコトヽ仕リ置キマス
偖当会議所ガ聯合会幹事ノ資格ヲ以チマシテ玆ニ御報道致シマス順序ハ、抑モ本会ノ成立チマス所以ハ本年四月博多ニ於テ開キマシタ第五回ノ聯合会議ノ協議ニ基キマシテ、営業税法ヲ審議スルタメニ玆ニ臨時商業会議所聯合会ヲ開設致シマスコトニ相成リマシタノデゴザイマス、デ本月ノ六日附ヲ以チマシテ従来聯合会ニ御加盟ニナツテ居ル会議所即チ京都外三十四箇所ノ会議所ヘ御通知ヲ仕リマシタ、其中大津
 - 第22巻 p.81 -ページ画像 
ト熊本ト松江ノ三会議所ハ差支ヘアルタメニ此処ニ御参列ハナサリ兼ネルト云フ御通知ガゴザイマシタ、今ノ三箇所ヲ除キマシタ外三十二箇所ハ孰レモ委員ヲ此処ニ御派出ニ相成リマシタノデゴザイマス、右従来聯合会ヘ御加盟ニナツテ居ル会議所ノ外ニ、マタ御賛同ニナラヌ向キ及ビ其後ニ新設致サレタ所ノ十一会議所ヘモソレソレ照会ヲ致シマシテ賛同ヲ求メマシタ、求メマシタニ就イテ十一会議所カラノ御返事ノ模様ハ次ニ申述ベマス通リデゴザイマス、即チ高岡・青森・高崎上田・小樽此五箇所ノ会議所ハ本会ヘ御賛同ノ趣キヲ以テ委員ヲ御派出ニナリマシテゴザイマス、但小樽商業会議所ハ都合ニ依リマシテ書記長ダケヲ参列セラレマシテゴザイマス、又函館・水戸・新潟・太田佐賀ノ五会議所ハ差支ガアツテ参同ヲ致サレマセヌデゴザイマス、横浜ハマダ賛同ノ御返事ヲ得マセヌノデスガ、今日ニモ何等ノ御挨拶ガアルデアラウト思ヒマスノデ、即チ十一箇所、挨拶ノ模様ハ前ニ述ベマシタ通リデゴザイマス、又此処ニ議題ト相成リマスル営業税法ノコトニ就キマシテハ、各会議所カラ今日迄御意見ノ出シテゴザイマス分ガ十四箇所デゴザイマス、ソレハ即チ広島・長崎・赤馬関・知多・大坂・堺・金沢・神戸・尾ノ道・松江・東京・鹿児島・仙台・富山・右ノ中鹿児島ト仙台ト富山トハ此程御遣シニナリマシタ故ニ、今印刷中デゴザイマスカラ、出来上リマスト早々御廻ハシ申シマス、即チ十一箇所分ハ既ニ御手許ヘ差出シテゴザイマス、アト三箇所ハ今印刷ニ掛ツテ居リマス、広島商業会議所カラ本月十二日附ヲ以テ信用組合ニ関スル調査報告ノ件ヲ此聯合会ニ提出致シタイト云フ照会ガゴザイマシタ、是レハ追ツテ聯合会ノ会長ガ定マツタ上ニ此ノコトヲ御引継ギ申シテ宜シカラウト考ヘマス、又本会議所ガ幹事ニ当リ居リマスデ、聯合会規則ノ第八条ニ依リマシテ此会議所ノ事務員ノ小崎懋ト南須原巻五郎トノ両人ヲ事務員ニ申付ケマシタカラ左様御承知ヲ願ヒマス、御報道申上ゲマス件々ハ是レデ相済ミマシテゴザイマスカラ、此上ハ聯合会ノ正副会長ヲ御定メニナツテ此聯合会ハドウ云フ風ニスルカト云フノ議ニ御取掛リヲ願ヒマス、此段ヲ一応申上ゲマス
○五番（長崎、松田源五郎君）　唯今正副会長ノ御選挙ノ場合デゴザイマスガ、御苦労ノ段ハ十分恐入リマスガ、ドウカ渋沢サンニ会長ヲ願ツテ、且ツ中野サンニ副会長ノ任ヲ執ラレンコトヲ希望致シマス
　　　〔「賛成賛成」ノ声起ル〕
○仮会長（東京、渋沢栄一君）　甚ダ不肖デ其任ニ当リマセヌデスガ、今迄ノ慣例モ多クハ其地ノ商業会議所ノ会頭ガ此聯合会ノ会長席ヲ汚スト云フ有様デゴザイマスデ、甚ダ恐レ入リマスガ自分ガ御引受ケ申上ゲマシテ此席ノ会長ヲ勤メマスヤウニ仕リマス、ドウゾ宜シク願ヒマス
○五十二番(東京、中野武営君）　私モ甚ダ不肖デゴザイマスガ副会長ノ御受ヲ致シマス
○二十六番（神戸、岡田元太郎君）　此際一寸皆様ニ御謀リヲ願ヒタイノデゴザイマスガ、ドウカ相成ルベクハ大凡会期ノ御定メヲ願ヒタイト考ヘマス、重大ノ問題デゴザイマスカラ予メ会期ヲ定メテ置ク訳ニハ往クマイト云フ御議論ガアルカノヤウニ考ヘマスガ、乍併実際ノ経
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歴ト云フモ仰山デゴザイマスレド、自分共心得テ居リマス上カラ考ヘマスルト、会期ノ定メテアルト定メテナイトハ余程会ノ捗取ノ趣キヲ異ニスルヤウニ考ヘマス、若シ皆様ノ御同意ヲ得マスルナラバ幾ラカ会期ヲ定メテ置キタイ、果シテ会期ヲ定メルノガ宜シカラウト云フコトニナリマスレバ、二十六番ハ先ヅ今日ト明日ト明後日位デ此問題ハ終ルコトニ致シタイト考ヘマス、併シ後段述ベマシタ日限ノコトハ深ク考ヘテ居リマセヌガ、先ヅ第一ニ会期ヲ定メルト云フコトニ就イテ御相談ヲ致シタイト考ヘマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　一寸二十六番ノ御説モゴザイマスガ、其前ニ御評議ヲ願ヒマセヌケレバナリマセヌコトハ会議ニ係ル議事規則デゴザイマスガ、是レハ如何ナル方法ニ依ツテ定メルカト云フコトヲ定メネバナラヌト思ヒマス、今迄ノ例ハ――今迄行掛ツタ慣例ハ開会地会議所ノ議事規則ニ拠ルト云フコトニ相成ツテ居ルヤウデゴザイマスガ、是レハ如何致シタモノデゴザイマセウカ
○十番（岡山、高田音次郎君）　至極御説ノ通リソレガ宜カラウト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　別ニ異議ガゴザイマセネバ当会議所ノ議事規則ニ依ルト云フコトニ御定メヲ願ヒタイト思ヒマス
○五番（長崎、松田源五郎君）　一寸御尋ネシマスガ、当会議所ノ議事規則ニ此時間ノコトガゴザイマスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　時ハゴザイマセヌ、或ハ午前ノコトモアリ午後ノコトモアル、慣例ハ多ク午後デゴザイマスケレドモ、時ハ規則上確定シテハゴザイマセヌ、今会期論ニ就キマシテ二十六番ノ御説ガゴザイマスガ如何ゴザイマスルカ、此議案ハ既ニ申上ゲテゴザイマス通リ、同ジ案ニ就キマシテ十四箇所カラ御説ガ出テ居リマスガ、皆総テ議スベキ案件デアルノデス、是ハ如何シヤウカト云フコトヲ、例ヘバ委員ヲ立テルト云フコトガ生ジマスト、ソコラヲ定メマスト他ノ事柄ヲ議ソウト云フコトノ御考ヘガゴザイマセナンダナラバ、会期ノ程合モ大抵御考ヘガ立チハシマスマイカノヤウニ思ハレル、又本問題ニ就イテ直ニ決スルト云フ評議ガアリマシタナラバ、果シテ何日ト云フコトノ御議決ガアリマセヌデモ自カラ定マリガ附クダラウト考ヘラレル
○五十二番（東京、中野武営君）　此議案ノコトニ就キマシテ一応東京商業会議所ガ幹事ト致シテ是迄考ヘマシタ所ヲ申述ベヤウト考ヘマスソレハ唯今会長カラ御報告ニナリマシタ通リ、数ヘ立テヽ来マスルト即チ営業税法ニ関スル意見トシテ提出セラレテ居ルノガ十四デゴザイマス、幹事ハ此案件ニ就イテイヅレノ案ヲ採ツテ聯合会ノ議案ト定メルヤ、ソレ等ノコトハ更ニ考ヘヲ定メマセヌデ居リマシタノデゴザイマス、其訳ハ博多聯合会ニ於テ御協議ノ結果各会議所デソレソレ御取調ニナリ御意見ヲ立テラレタコトデゴザイマスカラ、イヅレ聯合会ヲ開カレタ上御協議ノ結果、イヅレヲ以テ原案トシテ議スト云フコトヲ御定メニナルデアラウカラ、予メ幹事ガソレ等ヲ指定致スベキ筋合デナイト考ヘテ定メテゴザイマセヌ、デ本員ガ建議ヲ此処ニ提出ヲ致シマスルノハ、此営業税法ニ就キマシテ各会議所カラ出テ居リマス意見
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ヲ全部委員ニ附託セラレテ、一応委員ニ於テ取調ベ評議ノ末意見ヲ定メマシテ、サウシタ以上此聯合会ノ原案ト立テヽサウシテ本議ニ掛ル手順ヲシマシタナラバ順序ガ立チマスル次第ダラウト考ヘマス、委員ヲ設ケラレテ一応御附託ニ相成ルコトニ相成リタイノデゴザイマス、其委員ハ大分多数ナ原案デゴザイマスルカラ、十三名許リ御選ミニナツタ方ガ宜カラウト考ヘマス、依ツテ此意見ヲ提出致シマス
○九番（金沢、山田清三君）　唯今五十二番ノ説ニ本員ハ賛成スル、委員ヲ設ケラレテ委員ニ調査ヲ託スル方ガ宜カラウト思フ、サウシテ各会議所カラ提出ニナリマシタ意見書ヲバドレヲ以テ之ヲ原案トスルト云フ定メモナイカラ、委員ヲ以テ取調ヲ乞フ方ガ宜シイ、ソレニ就キマシテハ委員ノ数十三名ハ五十二番ニ賛成ヲシマスガ、其委員ハ成ルベク意見書ヲ提出ニナツタ会議所ヲ以テ委員ニ定メラレンコトヲ本員ハ希望シテ居ル、其趣意ハ成ルベク其意見ヲ提出ニナリマシタ所ノ人ハ十分之ヲ述ベタイト云フ考ヘモアルデアラウ、夫レ故サウ云フ条件附ノ委員ヲ設ケラレンコトヲ希望スル、若シ又ソレガ成立チマセヌ場合ハ意見書ヲ提出ニナリマシタ所ノ出席員ハ委員会ニ列席スルコトヲ許サレンコトヲ希望シマス
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　三十一番モ五十二番ノ建議ノ通リ又唯今九番ノ意見書提出ノ所ヲ即チ委員トシマシテ一ノ議案ヲ編製シテソレニ就イテ議スルコトヲ賛成致シマス
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　段々会期ヲ定メヤウト云フ御説ガ出テゴザイマスケレドモ、何分此度ノ如キ錯雑ナ案デゴザイマスシ、先刻ノ御報告ニ依リマスト、未ダ印刷中ノ所モアル位デ意見書ガ完全シテ居ラヌ場合デゴザイマスカラ、是レハ三日間デ議了シ得ベキヤ否ヤト云フコトモ判定ニ苦ム訳デアリマス、ドレヲ先ニシテモドレヲ後ニシテモ此分デハ薩張リ議了ガ附カナイ、ノミナラズ先刻来議案ヲ初メテ得マシテ未ダ了解シ兼ネテ居ルヤウナ次第デゴザイマスカラ、是レハ何番カノ御説ノ如ク委員ヲ選ミマシテ調査ノ上之ヲ議セラルルヤウニシテ、其他ノコトモ委員ニ附託シテ議ス方ガ宜カラウト考ヘマス是レヨリ外ニ仕方ガナイト考ヘマス、ソレデ選定方ハ意見提出者ノミニ依ラズシテ議長ノ御考ヘニ任セタイ、其数ハ十三名ト云フコトガ出マシタ上デハ私ハ議論ハゴザイマセヌ
○十二番（浜松、中村忠七君）　唯今ノ四十一番ノ御説ニ全然賛成致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　会長指名ト云フコトニ御同意デスカ
○十二番（浜松、中村忠七君）　左様デス
○二十八番（堺、上林総三郎君）　二十八番モ四十一番ト同感デゴザイマス
○三十六番（上田、黒沢鷹次郎君）　先刻五十二番ノ述ベマシタ説ニ賛成致シマス、是レハ大同小異五十二番ノ述ベマシタ所モ、九番ノ述ベマシタノモ、四十一番ノ述ベマシタノモ十三名ノ委員デアル、議長ニ指名サセテモ建議者モ這入リマセウカラ差支ナイモノト考ヘマスカラ五十二番ノ説ガ宜カラウカト考ヘマス、必ズ其辺ハ五十二番モ含ンデ居リマセウカラ其説ニ賛成致シマス
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○五十二番（東京、中野武営君）　委員ヲ選定スルニ就イテ条件ヲ附着シタ御議論ガ大分ゴザイマスガ、此条件ヲ申セバ色々ゴザイマスガ、全然会長ニ一任スル方ガ適当カト考ヘマス、成程意見書ノ出テ居リマス会議所モ十四箇所モゴザイマス、併カシ全国ノ商業ノ状態ト申スモノハ全国ニ成ルベク行キ渉ルノガ宜カラウカト云フ考ヲ私共ハ持ツテ居ル、是等ノコトヲ条件ト致シテ申セバ色々アリマスデゴザイマセウカラ、私ハ即チ条件ヲ附ケマセナンダ所以ナノデ、ソレ故ニ私ガ建議ヲ致シマシタ趣意ハ委員ハ十三名トシテ、会長ガ御指名下サイマスコトヽシ、条件ナシト云フコトニ致シタイト考ヘマス
○五番（長崎、松田源五郎君）　五番モ委員選挙ニ至リマシテハ唯今ノ五十二番ノ御説ニ全ク同感デゴザイマス、総テ会長ヨリ御指名ヲ希望致シマス、提出者ハ無論又十分御意見ヲ御述ベニナルコトヲ希望致シマス、就イテ委員ヲ御選定ニナリマスニ当リマシテ、少シ委員ノ権限ト言ヒマスカ如何デゴザイマスカ確カメ置キタイ、此営業税法ノ改正ト云フ上ノミニ就テノ委員トナリマスカ、或ハ又此改正ヲ致シマス上ニ就イテ其筋ニ徹底シマス方法マデヲモ委員ガ講究スルト云フ場合ニ至リマセウカ、既ニ本法ハ来年一月ノ実施ト云フ焦眉ノ急ト云フコトニナツテ居リマス、ソレ故ニ貴衆両院及ビ大蔵大臣ニ建議シテソレデ希望ヲ全フスルコトガ出来マセウカ、ソレ等モ併セテ委員ニ附託スルモノデゴザイマセウカ、ソレハ別段ニ議スルト云フモノデゴザイマセウカ、委員ノ御選定下サルニ就イテハソレ等ハ予メ御極メニナルコトヲ希望致シマス
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　唯今五番ノ此委員権限ノ御話ガゴザイマシタガ、ソレハ先ヅ暫ク措イテ目下ノ委員ダケヲ御選定アラムコトヲ私ハ希望致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　委員説ハ五十二番ノ発議ガ賛成ガ多イヤウデゴザイマスル、而シテ選定ノ仕方ニ就キマシテハ或ハ会長ニ任シテ宜カラウト云フ説ト、若クハ此意見ノアル会議所ノ御方ヲ入レタラ宜カラウト云フ説ト説ガ二ツニナツテ居リマスガ、最早御討議ガ尽キタト思ヒマスカラ、先ツ委員ヲ設クルヤ否ヤニ就イテ決ヲ採リマセヌケレバナラヌカト思ヒマスガ……
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　三十一番ハ五番ニ賛成デゴザイマスガ、意見書提出ノ方ハ会長ノ御見込ニアリマセウカラ矢張リ五十二番ノ発議ヲ賛成致シマス
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　五十二番ニ賛成致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　サウ致シマスルト議案ノ調査ハ委員附託ト云フコトニセヨ、而シテ委員ノ数ハ十三名ニセヨ、十三名ノ委員ノ選定ノ仕方ハ会長ニ任セルト云フノガ今玆ニ出テ居ル問題デゴザイマス、九番ノ説ニハ御賛成ガナクナツタヤウデゴザイマスカラ、此問題ニ就テ決ヲ採ツテ宜シウゴザイマセウカ
　　　〔「異議ナシ、異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ五十二番ノ説ニ就イテ三読会ヲ省イテ決ヲ採リマス、五十二番ノ説ニ御同意ノ御方ハ起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　多数
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○会長（東京、渋沢栄一君）　多数デゴザイマスル
○十二番（浜松、中村忠七君）　少シ時間ノコトニ就イテ御極メヲ願ツテ置キタウゴザイマスガ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　今委員ヲ定メテ一寸申上ゲタ後デ願ヒマス……、十三名ノ委員ヲ玆ニ御指名致シテ申上ゲマス、一番ノ北村五郎兵衛君、五番ノ松田源五郎君、十番ノ高田音次郎君、十一番ノ宮里正静君、二十一番ノ関野善次郎君、二十四番ノ桐原恒三郎君、二十六番ノ岡田元太郎君、三十番ノ木村一是君、三十七番ノ奥田正香君、四十一番ノ亀岡徳太郎君、四十二番ノ井島茂作君、四十七番ノ中野忠八君、五十二番ノ中野武営君、都合十三名ニ相成リマスル、デ此十三名ノ方々ニ御附託シテ御調査ヲ願フト云フコトニ致シタイト云フ諸君ノ御議決ニ依ツテ私ガ選定致シマシタカラ左様御承知ヲ願ヒマス、但シ意見ヲ御提出ニナツタ御方ハ委員会ニ出テ御意見ガ述ベラレマスカラソレハ委員会デ御紹介下サレバ宜カラウト考ヘマス
○二十九番（堺、錦池千鶴之助君）　委員ノ御選ビヲ唯今拝聴致シマシタガ、堺ノ方デモ意見ヲ提出致シテ置キマシタニ落チテ居リマスルヤウデゴザイマスガ、会長ニ御一任ト云フコトニナツト居リマスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　今ノ御説ハ諸県カラ意見カ出テ居リマシテ、各地ヲ約ソ見計ツテ各地ニ行亘ルヤウニ選定致シタノデゴザイマスカラ、堺ノ御意見ニ就イテハ委員会デ御述ベニナルコトガ出来マスカラ、是ハ別ニ委員ト云フテ選定致シマセヌノデゴザイマス
○二十九番（堺、錦池千鶴之助君）　全ク自分ガ聴キ誤ツテ居リマシタ甚ダ軽卒ナコトヲ申上ゲマシタ
○十二番（浜松、中村忠七君）　唯今時間ノコトヲ申上ケテ置キマシタガ是モ矢張リ唯今ノ委員ヘ御取極メ方ヲ御依託ヲ願ヒマス、開会ノ時間ヲ
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソレハ委員ニ御附託ナサルト云フ訳ニハユキマスマイ、時ヲ委員ガ定メルガ如キコトハ会議ヲ長ク続ケマスレバ六カシウゴザイマセウ
○十二番（浜松、中村忠七君）　左様デゴザイマセヌ、毎日開議ノ時ヲ……
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　唯今私モ委員ノ一人ニ御選ビ下サイマシタカラ不肖ナガラ御請ケヲ申シマス、十二番ニ於テ時間ノコトヲ委員ニ極メテ貰ヒタイト云フ御説ガアルヤウデゴザイマスガ、此委員ハ御承知ノ如ク議案ノ調査ヲスル丈ケノ委員デゴザイマスカラ、ソレハ別ニ極メルニ及ブマイト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　委員ノ附託ノコトガ決定致シマシテ、今私ガ御指名ヲ致シテ御名前ヲ申上ゲマシテゴザイマスル、ソレデ何レ此議案ヲ委員ニ附託シマス以上ハ、調査ノ結果ニ依ツテ開会致シマセヌケレバナラヌト考ヘマスガ、委員調査中ハ本会ヲ暫ク開クコトハ出来マセヌガ、開会ノ時間ハドウ致シマスカ、予メ御極メ置キヲ願ヒマス、何時カラ何時マデト云フコトヲ……
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　三十一番ハ此時間等ノコトハ会長ニ任カシテ宜イト思ヒマス、時間ヲ極メテ置イテモ会長ガ屈伸スルコ
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トガ出来マセウカラ、会長ニ一任スルト云フコトニシテ宜カラウト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　開会ノコトハ大抵九時カラデ如何デゴザイマセウカ、サウシテ午后ノ三時位マデヤリ得ラルヽデアラウト思ヒマスガ、地方カラ御出掛ケノ御方ハ成ルタケ御早ク済ムヤウニ御希望ナサルト云フコトハ身ニ引受ケテ御察シ申シマス、九時位ノ開会トシテ午後三時若クハ四時位ノ閉会ト云フコトニ御取極メニナツテハ如何デゴザイマセウカ
　　　〔「異議ナシ、異議ナシ」ノ声起ル〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　左様ゴザイマスレバ委員御附託ト云フコトニ極マリマシタカラ、調査委員会ヲ開クヤウニ願ツテ、本会ハ暫ク休会ヲ致シマス
○五十二番（東京、中野武営君）　先刻ノ御報告ノ中ニゴザイマシタ広島商業会議所カラ信用組合問題ニ就イテ御照会ニナツテ居ル次第デゴザイマスガ、委員会ノ運ビニ依リマシテハ今日出来ルカ否ヤ分リマセヌカラ、ソレマデノ間会議ヲ此儘ニシテ置クノハ如何ト考ヘマスガ、若シ此信用組合ノ件ヲ聯合会ガ採ツテ以テ問題トセラルヽト云フヤウナコトナラバ、又其順序ヲ運ブベキコトモゴザイマセウト考ヘマス、其報告ハ如何ナサルデゴザイマセウカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　如何デゴザイマセウカ、委員ノ御方ガ十三名御退ケニナツテ委員会デ成ルタケ早ク運ンデ戴キマセヌト全体ノ会ガ御迷惑ニナルデアリマセウ、ソレデ此処デ問題ヲ議スルニシテモ十三名ノ御方ガ揃ツテ御退キニナルト会議ノ決ハ少数ニナリハセヌカ故ニ先ヅ委員会ヲ御運ビ願ヒタイト思ヒマスノデ……
○五十二番（東京、中野武営君）　私ノ考ハ是レヨリ直チニ委員会ノ議事ニ御掛リニナルト云フコトニ就テハ議論ハナイノデス、唯広島商業会議所カラ御照会ニナツタコトヲ一ツ此会デ会長カラ先キニ御報道下サレタ方ガ都合ガ宜カラウト思ヒマスカラ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　至極御尤デゴザイマス、一応広島会議所カラ御提出ニナツタ文書ヲ朗読致サセマセウ
　　　〔書記朗読〕
　拝啓、陳ハ今般臨時聯合会ヘ本所提出ノ議題左ノ如ク候間宜敷御取成被下度、此段得貴意候也
　　明治二十九年十一月十二日　　　　　　　　広島商業会議所
　　　　東京商業会議所　御中
　　　一　信用組合ニ関スル調査報告ノ件
○会長（東京、渋沢栄一君）　唯今朗読致シマシタ通リデゴザイマスル
○十四番（豊橋、白井直次郎君）　唯今五十二番ノ御述ベニナツタ如ク信用組合ノ問題ヲ玆デ序デニ議シテ宜カラウト云フ考デゴザイマスガ其準備モゴザイマスカラ、是ハソレ丈ケノコトヲ御運ビヲ願ヒマス
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　唯今ノ御紹介デゴザイマスガ如何ニモ捗取リマシテ此会ノ報告ヲ受ケテカラ議事ヲ開クト云フコトハ至極デゴザイマスガ、併シ臨時聯合会トシテ今度開会セラレマシタコトデゴザイマスレバ――何等ノ案件ノタメニ臨時会ヲ開クノ必要ガアツ
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テ此臨時会ガ開ケタト云フコトニナレバ、他ノ例ニ依リマシテモ其議題外ノコトヲ議スルコトヲ得スト云フノハ相当ノコトデアラウト思ヒマス、唯今ノ如ク信用組合ト云フコトハ第五回聯合会ノ時カラシテ継続シテ居リマスル案件デアルヤウニ思ヒマスル、サウスルト独リ其案ノミナラズ、他ニモ随分牽聯シテ居ル議題ガアラウト思ヒマスカラ――宜イコトナラバデゴザイマスガ、併シ臨時会トシテ此議題外ノコトヲ持込ミマスルト云フコトハ他日ニ例ヲ貽ス訳ニナリマスカラ、私ハ余リ希望致シマセヌ、依ツテ矢張リ今度ノ案ダケニシテ止メタイト云フ考デゴザイマス
○二十六番（神戸、岡田元太郎君）　二十六番ハ肝腎ノ営業税法ニ関シテノコトデサヘ会議進行上ノコトニ就イテ愚見ヲ述ベマシタ程デゴザイマスカラ、無論四十一番同様此事ヲ御取捌キヲ願ヒマス
○二十五番（神戸、山本亀太郎君）　唯今四十一番カラ述ベラレマシタ如クニ此営業税法ヲ議題トシテ御定メニナルコトヲ希望致シマスガ、之ヲ政府又ハ貴衆両院ヘ提出致シマスルニシテモ、全国商業会議所ハ態々此問題ニ就イテ臨時会ヲ開イタト云フコトニナリマスレバ余程重キヲ置カレルデアラウト本員ハ考ヘマス、依ツテ四十一番ヲ賛成致シマス
○二十四番（広島、桐原恒三郎君）　段々諸君カラ御説ガ出マシタガ、一応会長カラ議場ヘ御諮リ下サイマシテ、其上斯クナリマシタ以上ハ別ニ異議ハゴザイマセヌ、又謹ンデ取下ゲマスル
○会長（東京、渋沢栄一君）　サウ致シマスルト此広島商業会議所カラ御提出ニナツタ案ハ此議場ノ意向ガ先ヅ重要ナル本問題ニ止メルト云フコトニナツテテ、序デニ報告シテ議題トシテ上ボセヤウト云フコトハ取下ゲルト云フ御通告ニナリマシタカラ、唯今委員ヲ御定メニナツタ本問題ニ就キマシテ早速委員会ヲ御開キ下サルヤウ希望致シマス、タメニ今日ハ是レデ閉会ヲ仕リマス
　　午後零時二十分散会

明治二十九年十一月二十日午前十時十五分開議
　　出席委員　　　　　四十六名　○氏名略
　　出席有志会員　　　　　三名　○氏名略
　　出席書記長・書記　　十三名　○氏名略
○会長（東京、渋沢栄一君）　開会ニ先ダチマシテ一ツ御報道致スコトガゴザイマス、此聯合会ノ議案ニナツト居リマス営業税法ニ就キマシテ、高崎商業会議所カラ意見書ガ差出シニナリマシテ昨日到着致シマシタ、又博多商業会議所カラモ同様昨日到着致シマシタ、速ニ印刷ニ附シテゴザイマスケレドモ今直グ御手許ヘ達スルト云フ場合ニハ印刷ガ取込ンデ居ツテ参リ兼ネマスカラ、何レ今日ニモ出来マシタナラバ御手許ヘ差上ゲマス
続イテ昨日委員会ガ結了致シマシテ委員長ヨリ報告ガゴザイマシタデ此報告ヲ朗読致シマス
　　　〔書記朗読〕
○五十二番（東京、中野武営君）委員会経過ノ概要ヲ申上ゲマスガ、
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昨日午後ニ於キマシテ委員会ヲ開キマシテゴザイマス、其結果ハ唯今報告書ニ認メ差出シマシタノヲ朗読ニナリマシタガ、偖テ委員会ハ如何ナル審議ヲ致シタカト申シマスレバ、御依託ニナリマシタ要ハ、此十数通アル意見書ノ中本会ハイヅレヲ原案トシテ議スベキヤ、即チ原案トスベキモノヲ選ミマスルニアルノデゴザイマス、ソレ故ニ或ル項ニ就キ審議ヲ致シタナラバ或ハ東京商業会議所ノ意見書ニハ別ナ意見ヲ持テ御出ニナル御方モアルニ相違ナイノデゴザイマスガ、ソレ等ハ即チ本会ニ於テ意見ガアル点ハ議スベキコトデ委員会ニ於テハ只委員会ノ意見ヲ一致シテ原案ヲ定ムルダケデ充分ナリト見テ居ルノデゴザイマス、ソレ故ニ東京商業会議所ノ提出ニ係ル意見書ヲ本会ノ原案トシテ、而シテ其項目ニ就イテ意見ガアルナラバ本会ニ於テ意見ヲ陳述シテ十分ノ余地ガアルコトデアルカラ、之ヲ以テ原案トシテ然ルベキモノデアル、斯ウ云フ趣意ヲ以テ決議ヲ致シマシタノデゴザイマス、此段一応御報告ヲ致シマス
○二十番（高崎、反町慎哉君）　唯今委員会ノ結果ヲ御報道ニナリマシタガ、昨日委員会ニ於キマシテ決定ノ通リ、東京商業会議所ノ改正案ヲ本会ノ議案ト致シマスコトヲ此処ニ望ンデ置キマス
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　唯今御報道ニナリマシタノハ取モ直サズ東京商業会議所ノ原案ニ就イテ議スノデアリマスカラ、此質問ノ答弁ハ矢張五十二番ニ委託シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　愈々此原案ニ就イテ議スルカドウカト云フコトヲ諸君ノ御議決ヲ乞ヒマシテ、ソレガ決定シマシタナラバ御質問ニ掛ルヤウニ願ヒタイ――アナタハ東京商業会議所ノ意見書ニ就イテ議スルコトニ御同意デスカ
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　左様デス、即チ委員会ノ決議通リ東京商業会議所ノ意見書ヲ原案トスルコトヲ可トスル者デゴザイマス
○二番（静岡、尾崎伊兵衛君）　五十二番ノ報道通リデ宜シイ
○会長（東京、渋沢栄一君）　委員会ノ説ニ御賛成ハ見ヘマスガマダ反対ノ御意見ハ出マセヌヤウデスガ、此委員会ノ御報道通リニ決スルヤ否ヤノ採決ヲ致シタウゴザイマス――委員会ノ報告通リ東京商業会議所ノ立案ヲ原案トシテ議スルコトニ御同意ノ方ノ御起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数デゴザイマス――本案ハ長イ文章ニモ相成ツテ居リマスデスガ、矢張リ三読会ニ分ケマシテ、一読会ヲ先ヅ経マシテソレカラ二読会ニ修正、其修正ニナツタ後ニ確定ト云フ順序ニ議シマシタナラバ宜シカラウト考ヘマスガ、其手順ヲ一応議場ニ諮リマスルノデゴザイマス
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　会長ノ御見込通リ
○二十八番（堺、上林総三郎君）　御見込ノ通リ
○会長（東京、渋沢栄一君）　別ニ御異議ガゴザイマセネバ此処ハ一読会ヲ開キマスルデ左様御承知ヲ願ヒマス
○五十二番（東京、中野武営君）　唯今一読会ノ場合デゴザイマスカラ一応此原案ノ要領ヲ申述ベ置キタウゴザイマス、東京商業会議所ニ於キマシテ此意見ヲ定メマシタ次第ハ、当春以来委員ヲ置キマシテ調査
 - 第22巻 p.89 -ページ画像 
ニ従事ヲ致シタ次第デゴザイマス、ソレニ就キマシテハ此東京市下ニゴザイマス種々ナル営業ノ組合或ハ種々ナル種類ノ会社ガゴザイマスカラ、ソレ等ニ対シマシテ此商業界ニ被ムル営業税法ノ箇条ニ就キマシテ何カ意見ガアルナラバ意見ヲ聞キタイト云フコトヲソレソレ条項ヲ示シマシテ是等ニ向フテ諮問ヲ致シマシテゴザイマス、其中回答ヲ得マシタノモゴザイマス、遂ニ回答ヲ得ズ致シテ仕舞ヒマシタノモゴザイマスルガ、是等ノ組合或ハ会社トカ云フモノガ商業会議所ニ向フテ意見ヲ申シタ事柄ニ就イテ段々調査ヲ致シテ見マスル所ガ、多クハ現法ノソレソレ欠点ノアリマスル所ヲ挙ゲテ、何分現法ノ繁雑致シテソレガタメニ納税人ガ甚ダ困難ヲ致ス事情、又税率ニ於キマシテ見テモ甚ダ当ヲ得テ居リマセヌ点、或ハ負担ニ於テモ不公平ガアルト申スヤウナ廉ヲ段々銘々営業ヲシテ居リマス上ノ考案ヨリ致シテ、親切ニ意見ヲ附シテ呉レマシタ次第デゴザイマス、ソレカラ其他ニ各商業会議所ニ於テ御調査ニナリマシタル御意見ヲ追々ニ御送附ニナリマシテゴザイマス、ソレ等ハ印刷ニ附シマシテ取敢ヘズ各商業会議所ノ方ヘ御送附申上ゲ、一ツニハ又委員会ヘ之ヲ附シマシテ東京商業会議所ノ委員会ニ於キマシテ御意見ノアル所ヲ講究ヲ致シマシタノデゴザイマス、ソレ等是等ノ材料ニ依リマシテ段々研究ヲ致シテ見マシタ所ガ何分現法タル営業税法ハ其欠点尠ナカラズ致シテ、而カモ繁雑ノタメニ収税吏ハ甚ダ手数ヲ煩ハシ、従ツテ徴税費ヲ要スルコトモ尠ナカラヌ話デゴザイマス、又一方ノ納税者ニ取テハ甚ダ手数ヲ煩ハシマシテ此商業社会日常忙ハシイモノヘ対シテ其税ヲ取ラレマスルガタメニ、種種ナル手数、種々ナル費用ヲ掛ケネバナラヌト云フ苦ミヲ受ケナケレバナラヌモノデゴザイマス、何分現法ニ従ヒ服サウト云フ考ヘヲ起サントシテモ起スコトガ出来マセヌデゴザイマス、ソレ故ニ色々審議ヲ尽シマシテ此改正意見ヲ定メマシタノデゴザイマス、此改正意見ハ固ヨリ報告文ニ認メテハゴザイマセヌ、即チ意見書トシテ認メテゴザイマスルカラ、文面上御一読下サリマシテモ私ガ一ノ弁明ヲ要シマセズ分リマスコトデゴザイマスガ、要スルニ現法ト大ニ趣キヲ異ニシマスルノハ、即チ会社組織ノ部類ヲ個人部類ト分チマシテ、全ク営業税法ト別ナモノト致シテ法律ヲ設ケラレル方ガ宜シカラウ、其訳ハ近来種種ナル会社ガ沢山ニ出来テ居リマス、又将来益々出来ルノデゴザイマスガ、抑々此営業ト申シマスル上カラ申セバ利益金即チ其会社ガ其商業界ニ得タル所ノ利益ト云フモノヲ以テ標準ト致シテ、ソレヨリ割出シタル税率ヲ以テ徴収ヲ致スノガ税ヲ取リマス上ニ於テハ尤モ適当ナモノデアルダラウト考ヘマス、又納メル方カラ考ヘマシテモソレガ一番納メ易イ訳ノモノト考ヘマス、唯利益ト申スモノヲ尋ネル場合ニ於テ一個人ノ所マデ立入リマスルコトハ甚ダ難イコトデゴザイマス、之ヲ他人ガ見分ケルコトハ六ケ敷モノデゴザイマス、故ニ個人的ニ対シテハ種々ナル手段方法ヲ以ツテ致サナケレバナリマセヌ、ケレドモ此会社ト申シマスモノハ御承知ノ通リ利益ト申シマスルモノヲ見ルコトハ便利ヲ得ル道ガゴザイマスノデゴザイマス、一個人ガ一人ノ考ヘデ左右シ得ラレルモノデハナイノデゴザイマスカラ、此利益ト申スモノヲ標準ト立テヽモ決シテ繁雑ナルコトハゴザイマセヌト信ジテ居リマ
 - 第22巻 p.90 -ページ画像 
ス、然ルヲ之ヲ一個人ノ営業同様ニ見テ種々ナル手段方法ヲ立テルト云フコトハ寧ロ徴税費ノミヲ費スダケデ一向要ノナイコトヽ考ヘマスソレ故ニ会社組織ノ営業ハ全ク別ナモノト致シテ会社税ト云フ名目ノ下ニ之ヲ支配シ、其目的ハ利益ヲ以テ税率ノ標準トナシマスルコトガ宜シカラウト云フ、現法ニ対シテ第一ニ大ナル相違ナイノデゴザイマス、又一個人ニ対シマシテハ即チ営業税法ノ範囲内ニ於テ課税スベキモノデアル、現法ニ依リマスルト種々ナル標準ヲ設ケラレテゴザイマス、蓋シ此法律ノ精神ハ或ル一ノ標準ニ依ツテノミ課税ヲシタナラハ却ツテ実際ヲ得ヌコトガ出来ルシ、事理ニ於テ不公平ヲ生ズルコトガアルダラウ、ソレガ故ニ或ハ資本、或ハ賃貸価格、或ハ従業者、斯ウ云フヤウニ種々ナル標準ヲ立テヽ、此中カラモ這入ツテ往ク、此下カラモ這入ツテ往クトシタナラバ、他ノ一方ニノミニ依ツテスルコトヨリモ幾分カ公平ヲ得ルコトガ出来ルダラウト云フ法ノ精神デアルダラウカト推測ヲ致シテ居ルノデゴザイマスガ、併シ理窟カラ申セバ或ハサウ云フコトモアルカハ存ジマセヌケレドモ、税ヲ取ル上ニ於テ左様ナ種々ナル手段種々ナル標準ヲ用ヰマスルト、却ツテ其標準ノ上ニ公平ヲ得ントシテ却ツテ不公平ノコトヲ生ズルカモ知レナイ――、ノミナラズ公平ナラシメントスル手段ヲセントスルタメニ、種々ナル弊ガ其間ニ起ツテ参ラネバナラヌ、其繁雑ハ独リ徴税ニ当ル所ノ官吏ノミノ繁雑デナクシテ、之ヲ納メマスル人民ガ其繁雑ヲ皆相手ニシナケレバナラヌノデゴザイマス、是レハ甚ダ困難ナコトデゴザイマシテ、必スヤ此現法ノ通リデ以テ実施セラレタ暁ニハ甚ダシキ困難ヲ起スニ相違ナイ、ソレ故ニ成ルベク簡明ニ簡単ナコトデ徴税ヲスルノガ宜シイ此立案ノ主意ハ簡単ニ、繁雑ニナラナイヤウニ、繁雑ヲ避ケルヤウニト云フ趣意ヲ以テ組立テマシタノデゴザイマス、ソレ故ニ簡単ニ繁雑ニナラヌヤウニト云フコトノ弊ハ、或ハ粗漏ト云フコトニ陥リ易イモノデゴザイマス、併シナガラ余リ税ノコトハ細カシク繁雑ニナリマスルトキニハ、其繁雑ニ堪ヘラレヌコトヲ恐レテ怠ツテ、又税吏ノ過酷ナル人ニ遇ヒマシタ時分ニハ其者ハ非常ニ徴税セラレル、又収税吏ノ手心ニ依リ緩ナル場合ニハ誠ニ公平ヲ得ルト云フコトニナル、是ハ余リ法ガ密ナル結果デゴザイマス、ソレ故ニ先ヅ大体寸法ヲ大キク取リマシテ、ソレデ是ハ大抵是レ位ノモノデアルト、当ラヌト雖モ遠カラヌト云フ寸法ヲ立テマスト、納メル方モ安ジテ納メル、取ル方モ余リ繁雑ノコトヲセンデ取ラレル、其方ヲ段々研究シテ見マスルト外ニ法ハナイノデゴザイマス、要スルニ政府ノ斯ク立テヽゴザイマス所ノ標準中ニ於テ其中ノ或ル一ツヲ取リマシテ、サウシテ其他ノモノヲ捨テタ、即チ政府ノ率ノ標準ヲ一ツニスル、其標準ヲ単一ニシタト云フコトガ第一、又第二ニ於テハ現法ハ一厘一銭ト云フ所マデ立入ツテ其年ノ売上高抔ヲ調ヘ出サナケレバナラナイノデゴザイマスガ、サウ云フコトハ繁雑ニ堪ヘラレマセヌカラ、大要ヲ分ツテ其営業ノ各種類ニ就テノ標準ト云フモノヲ附ケテ、例ヘバ何拾万円以上ノ――何営業者ニシテ何拾万円以上売上高ノアルモノヲ以テ一等トシ、何拾万円迄ヲ二等ト申スヤウニ段階ヲ立テヽ、其寸法ニ当テ箝マルモノヲ以テ其等級ニ組込ンデ往ク、斯ウ云フヤウナ極ク大体ノ上ニ就イテ調査ヲ立テヽ
 - 第22巻 p.91 -ページ画像 
往ツタナラバ大体寸法ノ立ツモノデゴザイマス、而シテ営業者ハ同ジク又営業者中ニ於テハ正直ヲ保ツタナラバ、大体寸法ノ立ツモノデゴザイマス、而シテ営業者ハ同ジク又営業者中ニ於テハ正直ヲ保ツコトハ当然ナコトデゴザイマシテ、或ハ其年ニ依ツテハ甲ノ店ハ極ク繁昌ヲ致シテ売上高ガ多カツタ、乙ノ店ハ同ジ営業者デアツテモ不幸ニシテ営業高ガ其年ハ何カノ都合デ尠ナカツタト云フコトガ、其年ニ依ツテハ多少アリマセウ、併シソレハ其時ノ成蹟ニ依ルノデゴザイマスガ大体営業ヲシテ居リマス以上ハ同ジ市内ニ居リマスモノトシタナレバアノ店ト此店ト同等ト見做サレルト云フコトハ営業者ニ於テハ標準ノ附クモノデアル、又営業者ソレ自身モアノ店ト己ノ店トハ同シモノデアルト云フコトハ存ジテ居ルノデアル、ソレ故ニ唯其年ノ売上高ノ相違ハゴサイマセウガ、大体過酷ナ取リ方ヲ致サヌト云フコトニナツテ大抵寸法ガ立ツテ参ルカラ別ニ其家ノ身代ニマデ立入ツテ調ベテ見ルト云フ如キ繁雑ナコトヲシナイデモ、営業者ハ甘ンジテ出シ得ラレルコトダラウト思フ、然ルヲ其手段ヲ執ラズシテ、兎モ角モ其年々ノ売上高カ或ハ報酬高ト云フヤウナモノニ立入ツテ是非之ヲ調ベテ出セ、又家ノ貸賃ト云フモノヲ調ベテ出サナケレバナラヌト云フ如キ、縦令税ハ重カレ軽カレ其自分ノ身代ヲ政府ヘ顕ハシテ、ソレデナケレバ税ガ極マラヌト云フノハ此営業者ニ取テハ甚ダ迷惑ナ話デアルカラ、余リ繁雑ナ所ニマデ立入リマセヌヤウニ致シテ納メルノハ取ル方ニモ宜シ出ス方ニモ宜イノデゴザイマス、現法ハ甚ダ簡単ニ出来テ居ルヤウデハゴザイマスガ、其法ヲ実際ニ行フト云フニハ繁雑デアル、吾々ノ希望ハ立法者ガ法ヲ立ツルニハ事態ヲ研究シテ是レダケノ寸法ニ立テレバ当テ箝メラレルダラウト云フ如キコトニ就イテ、十分ナル参酌ヲ致シテスルコトヲ希望シテ居ル、又一方ニハソレヲ実施スル先キハ成ルベク簡便ニ手軽ニ出来ラレルコトヲ希望スルモノデゴザイマス、即チ現法トハ其趣キヲ異ニシテ居ルノデゴザイマス、ソレ等ノ趣意カラ致シテ此原案ヲ組立テマシタノデゴザイマス、其詳細ノコトニ至リマシテハ色々皆サンノ御意見ノアル所ヲ伺ヒ、又或ハ御質問ガゴザイマシタナラバ其場合ニ御答ヲ申ストシテ、大要東京商業会議所ガ此意見ヲ提出致シマシタ大体ノ目的趣意ト申シマスルモノハ、唯今陳述ヲ致シマシタルヤウナ次第デゴザイマスルカラ、一読会ノ場合ニ一応申シ述ベテ置キマス
○四十一番（大阪、亀岡徳太郎君）　是レハ余程長文デゴザイマスシ、先日来熟読モ致シテ居リマスカラ、朗読ヲ省カレマシテ直チニ開会セラレンコトヲ望ミマス、ソレデ少シ唯今伺ヒタイ所ガアリマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　別ニ御異議ガゴザイマセネバ直グ質問ニ取掛ルヤウニ致シマス
　　　〔「異議ナシ、異議ナシ」ノ声起ル〕
○四十一番（大阪、亀岡徳太郎君）　唯今五十二番カラ詳細御陳弁ニナリマシテ、予メ此案ノ組立テラレマシタル所ノ精神ニ於テハ了解致シマシタ、然ルニ此営業税法ナルモノハ本年三月法律第三十三号トシテ公布セラレマシタコトヲ考ヘマスレバ、最早三十年一月一日ヨリ之ヲ実施セラレルト云フコトハ動カスベカラザルモノデアラウト考ヘマス
 - 第22巻 p.92 -ページ画像 
ノミナラズ、十二月二十二日ヲ以テ帝国議会モ召集セラレルト云フ場合デゴザイマス、此案ノ性質上、唯今拝聴シマスル所ニ依レバ、既ニ営業税法トシテ発布セラレマシタル所ノモノト変ルコトガ甚ダシイト言ハザルヲ得ナイト思ヒマス、ト云フモノハ第一営業税ナルモノヽ以外ニ、会社税ヲ置クト云フコトハ、先刻来御陳弁ニナリマシタ所デ分ツテ居リマス、尚又個人ノ営業上ニ就キマシテモ段々此意見書ヲ拝見シマスルト、営業税法ノ欠点ト云フコトヲバ御述ベニナツテゴザイマスルガ、是ハ如何ニモ我々モ大ニ案ジマスル所モゴザイマスシ、予ネテ幾分ノ調ベモ致シテ居リマスガ、大抵大同小異デ敢テ此点ニ至リマシテハ大ナル相違モゴザイマセヌコトデゴザイマスガ、唯今般改正ヲ希望セラレマスル点ヲ此案ニ依ツテ考ヘマスルト、一個人的課税ト会社ナルモノハ会社税トシテ税ヲ課スル、ソレカラ等級ヲ附スルニ当ツテハ調査委員ヲ置イテ之ガ等級ヲ調ベサセル、ソレカラ税率ハ現法ニ比シテ徴税費ノ分量ニ応ジテ低減スル、予メ斯ウ云フ希望ト思ヒマスルガ、果シテ之ヲ実施セントスルニ当リマシテハ数年ノ後デナケレバ到底是レハ難イモノデアラウト思ヒマスルコトデゴザイマスルガ、併シ東京商業会議所ノ御調ベニナリマシタ即チ原案者ハ之ヲ以テ左程ノ大改正デナイト思ハルヽカ知リマセヌガ、私ハ今日以前ニ発布ニナツテ居リマス案ニ対照シタナラバ大ナル相違ダラウト思フ、スツカリ大体ノ上ニ就イテ、総テ之ヲ一変シテ仕舞ハナケレバナラヌト云フ改正ダラウト思フ、改正ヲ欲スルト云フ上ニ就キマシテハ、例ヘバ十ト云フモノヲ五トシテ至当ト見ルトカ、或ハ七ニスルトカ或ハ幾分ノ減ジヲ付ケヤウト云フノモ改正デゴザイマス、斯ノ如キ大改正ト云フコトニナリマシタナラバ、大変ナ大ナル行違ヒガ出来テ来マセウト思ヒマス、ソレヲ希望スルニ当ツテ既ニ三十年一月ト申シマシテモ僅々一ケ月余ヲ余シマス今日、斯ノ如キ重大ナル改正ヲ希望セントスルニ当リマシテハ如何ナル御見込デゴザイマセウカ、直ニ三十年一月ヨリ実施セラレル税法ニ向ツテ斯ノ如キ改正ヲ希望スルト云フコトガ、不肖ニシテドウシテモ分ラヌ、之ヲ一ノ条件ヲ附ケマシテ此処三年間此ノコトヲ希望スルタメニ今ヨリ之ヲ調ベルコトニシヤウト云フヤウナ事ノ方法デゴザイマシタナラバ、或ハ採ルト採ラヌトハ暫ク措キマシテ随分事ノ調ベモ出来マセウシ、希望致シテモ或ハ成ルカモ知レマセヌガ最早一月余ニ切迫シマシタ今日ニ至ツテ斯ノ如キモノヲバ仮リニ東京商業会議所ガ案ヲ確定シマスルトシマシテ、之ヲ考ヘテ見マシタナラバ之ヲ其筋ニ差出シテドウデゴザイマセウ、是レダケノ調ベヲ一寸出来マセウカ、一月一日ヨリ之ヲ実施シマスルナラバ到底私ハ難イコトデアラウト思フ、今度我々ガ斯ノ如ク集マリマシタル趣意タルヤ今日ノ法ニ幾分ノ修正ヲ求メ幾分ノ改正ヲ希望スルト云フヤウナコトナレバ、或ハ又大体ニ於テハ今日ノ法案ニ従ヒ其一部ノ改正ヲシヤウト云フ位ノコトナレバ如何ト考ヘマスケレドモ、斯ノ如ク大体ノコトヲ立テ変ヘルヤウナコトニナリマスト、今日ノヤウナ切迫シマシタトキニ当ツテ最早帝国議会モ召集ニナツテゴザイマスレバ、政府ハ之ヲ土台トシテ歳入ト云フコトヲ定メラレ最早開会切迫致シテ居リマス今日ニ迚モ私ハ政府ニ於テ見込ノ立タヌコトニナリハシマイカト思フノデゴ
 - 第22巻 p.93 -ページ画像 
ザイマス、ソレ故ニ此案ヲ御立テニナル上ニ就キマシテ大抵大体ノ方法ハ拝聴ヲ致シマシタケレドモ、一月一日実施ノ此法案ニ向ツテ是レ丈ケノ改正ガ出来得ラレルト云フ御見込ヲ以テ御立テナサツタモノデアラウカト想像致シマス、果シテサウスルナラバ斯ウ云フコトガ僅カノ日ノ間ニ出来得ルト云フコトハ難キモノデハアルマイカト考ヘマス此ノコトヲ希望スルト云フコトハ到底木ニ縁ツテ魚ヲ求メルコトニナラウト思ヒマス、ドウゾ此辺ノ所ノ御見込ヲ、此可否ハ暫ク措キマシテ大体ノ方略、是レカラドウ云フコトニシタナラバ是レダケノ改正ガ出来ルヤ否ヤト云フコトガ、御見込モゴザイマスナラバ承リタイト思ヒマス
○五十二番（東京、中野武営君）　唯今ノ御問ヒニ御答ヘ申シマス、本員ノ考ヘデハ少シモ斯様ナ御心配ヲ――今御尋ネノ如キ御心配ハ私ノ胸中ニハ措カヌノデアリマス、全体、国家ニ対スル務メハ即チ税ヲ納メルノモ務メデアルシ、又法ヲ設ケルノモ務メデアリマスガ、併シナガラ法ニ不当ナルコトガアレバ一向忌憚ナク申スノガ当然デアル、ソゴデ今日迄政府ガ法ヲ立テマスル以上ニ於テ最初ヨリ斯ノ如キ法ヲ立テルト云フコトヲ予メ示シタモノデナイ、政府自カラノ考ヘデ拵ヘ直チニ議会ニ附シテ直チニ決行スルモノデアル、ソレデ間ニ合ハヌカラ致方ガナイ、時期ガ切迫シタカラ致方ガナイト云フタメニ遠慮シテ改正ヲナスコトガ出来ナンダナラバ、何事カ出来ルモノハナイ、又縦令営業上ニ掛ルコトデモ、日常ニ係ルコトデモ、十分ニ研究ト云フモノヲ尽サヌケレバ其可否ヲ見ルコトハ出来ナイ、ソレ故ニ政府ニ於テ已ニ法ヲ定メラレテモ、三十年一月一日ヨリ施行スルト云ハレテモ、其施行期限ガ迫ラウガ迫ルマイガソレニハ頓着シナイノデアル、唯要スルニ我々ハ営業トシテ国家ニ対スル所ノ負担ヲセニヤナラヌ、負担ヲセニヤナラヌト覚悟スル以上ハ相当ナル、公平ナル、簡明ナル方法ヲ施カレンコトヲ希望スルノデアル、何時ノ年ニ改メラレルトモ今日我我ガソレヲ言フノデハナイ、又政府ノ方ニ立ツテ申シタナラバ、歳入ハ何百万円ト立テタ之ヲ動カスコトガ出来ヌト申スカ知レナイ、又無理ナ法案ヲ施行シヤウト思ヘバソレモ仕方ガナイノデアル、併シ又事実ニ於テ現法ハ繁雑デアル、徴税費ニ費ス所モ多シ、納メルニモ繁雑デアルト云フコトデアツタナラバ、如何ナル手段ヲシ方法ヲ尽シテモソレヲ改メル道ハ講ゼヌケレバナラヌト思フ、来年一月カラソレヲ施行スルガ不都合ト思ヘバ税法施行ノ延期ヲ法律トシテ出スコトモ差支ナイ、又来年ハ如何ナル方法ヲ以テゞモ他ノ道カラ支出シテ宜イ、唯ダソレガ期限ガ迫ツタカラ致方ガナイカラト云フコトノタメニ我々ガソレニ屈従致シテ、不都合ナル改正ヲ望ムコトハ我々ハ好マナイ、政府ハ此税法ヲ必ズ行フデゴザイマセウガ、一年ヤツテ見タナラバ是レハ分ルダラウト思フ、其暁ニナツテ是レハ不都合デアル又困ツタモノデアルト云フコトニナツタナラバ、其間ニ法律ノ改正ヲスルト云フ時ガ来ルデゴザイマセウ、私ガ此法案ヲドウゾ斯様ニシテ貰ヒタイト云フ趣意ハ現法ヲ改メテ貰ヒタイ、其改メテ貰フ所ハ切迫ヲ致サウガ致スマイガソレハ構ハナイ、我々ハ斯様ナ意見デアルト云フコトヲ政府ニ申ス、而シテソレヲ忖度スルハ政府ニアルソレカラ先キノコトハ研
 - 第22巻 p.94 -ページ画像 
究ヲ要サヌ、若シ又ソレガ期限ガ切迫シテ善イコトデモ採ラヌト云フコトナラバソレハ御勝手次第、ソレ等ノコトニハ頓首ハシナイト云フコトノ考デアリマス
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　段々御答弁ヲ煩ハシテ済ミマセヌガ、決シテ自分ハ政府ガ之ヲ施カレタノデアルカラ何デモ服従スルト云フ趣意デハナイ、ソレハ能ク御承知ヲ願ヒマス、期限ガ切迫シテ居ルカラ如何ナルモノデモソレニ服従スルト云フノデハナイ、今日斯ノ如ク相集ツテ其希望ヲ遂ゲルカ否カハ知リマセヌケレドモ、之ヲ改正セラレタイト云フコトヲ議スルノデアリマスカラ、之ヲ以ツテ知ルベシデ、大体ノ御方策ハ是レハ先刻カラ段々御答弁下サイマシタガ、政府ニ向ツテ云フテ置クコトハ必要ナコトデ、採ルト採ラヌハ向フニアル、決シテ期限ノ切迫ト否トニ拘ラス言フコトハ宜イト云フノハ御同感ノコトデアリマス、サウ致シマスト一月一日ヨリハ法律第三十三号ニ従フト云フノ御趣意ト外思ハレマセヌ、斯ノ如キ重大ナル改正ヲ希望スルコトハ一寸急ナコトデハアルマイト思フ、其方法ダケ承ツタナラバ、其法案ニ向ツテノ可否ハ是レカラ審議モ致シマスシ、二読会ニ至リマシタナラバ修正モ致スカモ知レマセヌガ、唯ダ大体ガ分ラナイ斯ウ云フヤウニ要ヲ挙ゲテ御尋ネスルノデアルカラ其答ヘヲ得タイ、サウスルト当分ノ間ハ此原案者ニ於キマシテハ一月一日ヨリ実施セラレル所ノ案ニ向ツテハ先ヅ之ヲ甘ンジテ受ケテ往クモノト斯ウ心得マシテ宜シウゴザイマセウカ、又ハ一月一日ヨリ此改正ヲ希望スルト云フコトノ御趣意ト心得テ宜シウゴザイマスカ、ソレダケ伺ヒマス
○五十二番（東京、中野武営君）　最初ノ御答ヘデ大抵今ノ御尋ネモ尽キテ居ルト思ヒマスケレドモ、尚ホ簡単ニ申上ゲマス、営業税法ハ本年発布ニナリマシテ、アノ発布ニナツタ即チ法律第三十三号ノ営業税法ハ宜シカラヌカラ改正シテ下サレト斯ウ云フコトニ外ナラヌ、而シテ施行期限ガ三十年一月ニナツテ居リマスガ、ソレハ三十年一月マデニ是レニ直スト云フノハ無理カモ知レマセヌガ、政府ハ是レハ決シテ採ルベカラザルモノデアルト思ヘバ施行シテ往キマスデゴザイマセウヨシンバ之ヲ直スベキ所ハアツテモ、現法ヲ施イテ居リマスルモノデアルカラ明治三十年ダケハアレデドウデモヤラネバナラヌカモ知レヌ而シテ其先キニ改正スル手段ヲ政府ガ執ラザルカ、ソレ等ハ私ニ於テ注文スベキ必要ハナイ、又一月一日ニ施行シマシタナラバソレデ甘ンズルカト云フコトデアリマスガ、決シテ甘ンジナイノデアル、我々ハアノ法律ハ嫌イデアル、三十年一月一日ヨリ施行スルト云ヘバ甘ンジナイケレドモ、我々ハ義務トシテ服従シナケレバナラヌノデアリマス
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　一寸私ハ質問致シマスガ、東京商業会議所ノ御意見デ税率ハ現法ニ比シ徴税費ノ減ズル分量ニ応ジテ低減スルコトヽアリマスガ、此徴税費ヲ幾分減ジテ――徴税費ガ今日此法ヲ施行シタナラバ幾分掛ツテ其幾分ヲ減ジラレルダラウ、斯ウ云フ御算当ハゴザイマスマイデゴザイマセウカ伺ヒマス
○五十二番（東京、中野武営君）　其算当ヲ今明カニ申上ゲルコトハ出来マセヌ又為シ得ラレヌコトヽ思フテ居リマス、唯税法ノ上ニ於テ斯ノ如クシタナラバ簡略ニ出来ルカラ繁雑ナ手数ヲセズニ済ムニ相違ナ
 - 第22巻 p.95 -ページ画像 
イト云フコトハ申シテ憚カラヌ、一事ヲ挙ゲテ申シテ見テモ、現法デハ三点ニ取ツテ一ノ調ベガ済ムト又二ノ調ベヲセニヤアナラヌ、又二ガ済ンデモ残リノ一ノ調ベヲセニヤアナラヌト云フヤウニ、三段ニ調ベヲスルノデ、サウ云フコトガ簡単ニ参レバ其手数ヲスルダケノコトハ相違ナク省ケルノデゴザイマス、ソコデ政府ガ――我々ガ法ヲ立ツル上ニ於テモ、税ガ政府ニ入用デ納税スルノニ左様ニ政府ノ経済マデ考ヘルコトハ出来ナイ、併シ政府ハドレ程ノ必要ヲ見テ居リマスカ、此営業者カラドレ程マデノ税ハ取ラニヤアナラヌト見込ンデ居リマスカ、ソレハ確トシタコトハ分ラヌノデアル、併シナガラ此処ニ意見モ書イテゴザイマス通リ、七百五拾余万円ヲ取ラウト云フ目的ダト云フコトガ世間ニ伝ヘテ居ルノデ、果シテ一年ニ七百五十余万円ト云フモノヲ是非取ラナケレバ国庫ノ経済ガ立タヌト云フ算盤ナラバ、此税ガ果シテ過酷デアルヤ否ヤ一人々々ニ当ツテノコトハ分リマセヌカ知リヤセヌガ、全国ノ必ズ徴税費ト云フモノハ政府ハ調ベナケレバナラヌ是レダケノ税ヲ取ルノニハ是レダケノ徴税費ガ掛ルト云フコトガナケレバナラヌ、ソレハ如何ニ調ベヤウトシテモ其材料ヲ得ルコトハ出来ナンダノデアル、故ニ若シ政府ガ我々等ノ意見ヲ採ツテ是レデ以テ税法ヲ改正スルト云フコトニナツタナラバ、即チ最初今迄予算ヲ立テヽ居ルモノハ是レダケノモノデアルカラ、徴税費ハ減ズベキモノデアルト云フコトガ分ラナケレバナラヌ、サウスレバソレダケノモノヲ無論税率ノ方カラ減ジテ往ツテ相当デアル、国庫ニ損ヲセヌ限リハ人民ヨリ取ラナクトモ宜イコトデアルカラ、ソレニ従ツテ税率ヲ軽クスルノガ当然デアルト斯ウ云フコトヲ申シタノデ、数字ニ書キマシテ現法ノ徴税費ハドレ程掛ル、此改正ノ徴税費ハドレ程掛ルト云フ如キ綿密ナルコトハ御答ヘヲ申スコトガ出来ナイ、併シ道理上カラ斯ウナルベキモノデアルカラ、徴税費ノ減ズベキ丈ハ税率ヲ減ジテモ宜シイト云フ意見ニ外ナラヌノデアリマス、デ従来ノ税法ニ就イテ意見ヲ定メマスル当時ニ当ツテ、大蔵省ノ当局者ニ当商業会議所会頭ヨリモ此税法ニ就イテ、当商業会議所ニ於テモ十分ニ利害ヲ調査スルタメニ委員ヲ置イタコトデアルカラ、政府ガ要シタル所ノ材料等ガアルナラバドウゾ示シテ呉レ、又委員等ガ直接ニ出テ往ツテ御尋ネ申ス時分ニハ十分其答ヲシテ呉レイト云フコトモ主税局長ニ照会ヲ致シマシタ、ドウカシテ材料ヲ得タイト存ジマシタ所ガ断リヲ申サレマシタ、若シ政府ノ此法案ヲ取調ベタル所ノ材料ト云フモノヲ十分我々ニ示シテ呉レマシタナラバ、ソレガタメニ又一層綿密ナルコトノ研究モ為シ得ラレタデゴザイマセウガ、唯今申上ゲマシタ通リ差支ヘルカラ貸スコトハ出来ナイト斯ウ云フ断リヲ受ケマシタノデ、其詳細ヲ知ルコトガ出来マセナンダノデゴザイマスカラ、ドウモ唯ダ推量ヲ申上ゲルト云フコトヨリ外ハ出来マセヌ
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　此等級ヲ附スト云フコトハ、此営業者ニ等級ヲ附シマシテ其等級ニ依ツテスルト云フヤウナ思召デアリマセウカ、其等級ハドレ程ノ思召デアリマセウカ御意見ヲ伺ヒマス、序ニモウ一ツ、此第一項ニアリマス「会社税法ヲ創定シ」云々トアリマス、是レハ全ク営業税法カラ独立サセテ更ニ其一法ヲ作ル、斯ウ云
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フ訳デアリマセウカ、此会社中ニ取引所トカ何トカ云フモノヲ総テ含メタラ宜シカラウト云フ御見込デアリマセウカ、其辺ノ所ヲ伺ヒマス
○五十二番（東京、中野武営君）　等級ノコトデゴザイマスガ、等級ハ各業ノ種類毎ニ立ツル、種類毎ニ既ニ等級ヲ立ツル以上ハ一等ガアレバ二等、二等ガアレバ三等ヲ立テニヤアナラヌ、ソレカラ会社税ノ御尋ネデゴザイマスガ、単独ナ法律ガアツテ、例ヘバ取引所税トカ申スヤウナ別ニ法律ガ出来テ居リマスモノハ会社税ヘ入レルト云フ考ヘハナイ、現在ノ営業税法中ニ包含シテ居リマス会社ト云フモノヲ引退ケルト云フノデアリマス
○十二番（浜松、中村忠七君）　少シ質問致シマスガ、原案者ノ御意向ハ税率ハ如何ニサレル御考ヘデアリマスカ、矢張リ此東京御調査ノ案ノ通リニ別段ニ税ヲ定メマセズニ唯ダ其方針ヲ政府ノ方ヘ向ツテ発表スルト云フノニ止マルノデゴザイマスカ、或ハ各会議所カラ総テ御意見ヲ提出ニナリマシタヤウニ或ルモノニ就イテハ幾許ト云フコトヲ総テ本会デ決議スルト云フ御精神デアリマスカ、其点ニ就イテ伺ヒマス
○五十二番（東京、中野武営君）　税率ノコトハ此意見書中ニドレ程ニ直スコトガ宜シイト云フ意見ハ立テマセナンダ、其所以ハ此等級ト云フモノヲ立テヽ一等ハ何等マデ、二等ハ何等マデト云フ、即チ等級ノ税ニスルノデゴザイマス、ソレ故ニ別段収得高ノ万分ノ一トカ或ハ千分ノ一トカ申スヤウナ税率ヲ今此処ニ等級ト云フモノニ立テヽ往キマスコトハ致シマセナンダ、ソレカラ又大体ノ上カラ申スト斯ウ云フ意見ヲ持ツテ居ル、甲ト乙トノ比較上ニ於テ不公平ナルコトハ、即チ甲ハ乙ヨリ不公平ニ高イトカ云フ以上ハ、此公平ヲ保チマス上ニ考究ヲ要シマスガ、営業者ガ国家ニ対シテハ相当ノ負担ヲ為スト覚悟シテ、繁雑ナ苛酷ナ手数ヲセヌヤウニシテ貰ヒタイ、斯ウ云フ宜シイ方法デ課シテ呉レル方ガ宜シイト云フ、即チ税ヲ課スルノ仕方・方法ト云フモノニ就イテ意見ヲ申セバ宜シイ、何等営業ニハドレ程ノ税ニシテ呉レロ、之ガ高イカラ之ヲ輸ケテ呉レロト云フノハ比較ガ出来テ申スノデアル、今大体ノ要旨ヲ立テマス場合ニハ比較ガ立タナイ、故ニ斯ウ云フ趣意デアノ法ヲ改正スルコトヲシテ呉レロ、サウシタナラバソレニ従ツテ標準ト云フモノガ立ツテ来ルダラウ、大体ノ上デ意見ヲ立テル故ニ其比較ハ此法ヲ極メタ以上自然ニ出テ来ルノデアリマスカラ、細カナコトニ至ツテハ随分諮問スル道ガアル、十分政府ガ容レル気ニナツタナラバ、何処迄モソレ等ノ公平ノ方法ハ互ニ講究スル道ハ是レヨリ開ケテ来ルダラウト私ハ信ジテ居ル、今ソレ等ノ細カシイコトヲ意見書トシテ出ス必要ハナイト斯ウ云フ意見デゴザイマス
○四十三番（八王子、吉田忠右衛門君）　一寸伺ヒマス、唯今ノ御説デ見マスルト、唯ダ課税法案ニ改正ヲ加ヘラレルト云フ御説ノヤウニ考ヘラレル、サウシマスルト課税法案ノ改正ニ依ツテ減税ト云フモノヲセヌヤウニ思ハレル、当業者ニ於テモ大変手数デアルカラ単純ナ方法ニシタラ宜カラウ、併シナガラ税ト云フモノハ七百五十万円ナラバ七百五十万円ダケハドノ法ニ依ツテモ出スノデアルカ、或ハ減税ヲスルノデゴザイマスカ、今ノ御説デゴザイマスルト七百五十万円ハ出スノデアル、斯ウ云フヤウナ御説ノヤウニ考ヘマスガ、一寸伺ヒタウゴザ
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イマス
○五十二番（東京、中野武営君）　是レハ此処ニモ書イテゴザイマス通リ、聞クガ如クンバ現法ノ如クスルト七百五十万円ヲ徴収スル見込デアルガ、果シテ七百五十万円ガ取レルカ誰シモ疑フノデアル、又斯ノ如キ厳酷ナル負担ハ皆恐レテ居ルト云フコトハ申シテゴザイマスガ、是レハ政府ノ内々ノコトデ、人々ノモノヲ集メテ唯ダ積算シタダケノモノダラウト思フ、商業会議所ガ此営業者ニ七百五十万ノ税ヲ掛ケルコトハ出来ヌト云フコトハ言フベキ場合デモナイ、私ガ今申シタノハ七百五十万円政府ガ取ルト云フノデ、ソレニ甘ンズルカト云ヘバ甘ンズルトモ甘ンジナイトモ言ハナイ、ソレ故ニ今七百五十万円ト云フコトニマデ論究シテ往ツテ、是レダケニナサレト云フ必要モ私ハ今日ハナイト思フテ居リマス、今御尋ネデアリマスガ、ソレハ政府ダケノ考ヘデ、我々ハソレダケノモノハ取リ得ラレヌト信ジテ居ル、甘ンジテモ何ニモ居ナイノデアル
○四十二番（四日市、井島茂作君）　昨年建議ヲ致シ、各会議所諸君ノ御同意ヲ求メマシテ、其当時御廻シヲシテ置キマシタ手前共ガ差出シマシタ意見書ノ趣意ガ御採用ニナツテ誠ニ満足致シマス、東京商業会議所ノ第三項ニ置カレマシタ所ノ徴税費ハ低減スル限リ減ズルコトハ誠ニ宜シイコトヽ感ジマス、依ツテ本員ハ御説明ヲ煩シマスコトハ不必要ト思ヒマス、第二読会ヲ開カレンコトヲ希望致シマス
○二十八番（堺、上林総三郎君）　尚ホ一応説明ヲ煩シタイ、此等級云云トゴザイマスガ、各業ノ種類ニ依リマシテ或ハ数等ニ分ツ、数等ニ分チマシタ所デ、甲ノ業ト乙ノ業ト其業種ニ依リマシテ、例ヘバ此処ニ木綿屋ト呉服屋ト斯ウアル場合ニハ、或ハ一方ノ一等ト他ノ何等ト匹敵スルト云フヤウナ税率ヲ御立テニナルト云フ御意見デゴザイマセウカ、又ハ何業ニ拘ラズ一等ハ一等ダケノ標準ヲ立テル御見込デゴザイマセウカ、一応伺ヒマス
○五十二番（東京、中野武営君）　別々ナンデス、呉服屋ノ一等ト云フモノト外ノ営業ノ一等トハ対ナモノデハナイ、ソレソレ其営業ノ状態ニ依ツテ等級ヲ分チ、等級ニ依ツテ税額ヲ極メルノデゴザイマスカラ一等ト云ツタナラバ何業モサウダト云フノデハナイ、総テ営業ノ状態ニ依ツテ等級ヲ立テ、等級ニ従テ其税額ハ皆別々デアル
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　三十一番モ四十二番ニ賛成ヲ致シマス、一読会ニハ異議ハナイノデアリマス
○二十六番（神戸、岡田元太郎君）　自分モ一寸御尋ネ致シマスデゴザイマスガ、此東京ノ御調ベノ上デハ、会社税ト云フモノヲ拵ヘルニ就キマシテ、其会社ハ個人ニ比ベマシテ収得ヲ知ルコトガ易イデアラウ云々ト云フコトガゴザイマスガ、若シ此収得ヲ知ルコトガ易イト云フ筆鋒カラ参リマスレバ、銀行モ此中ニ這入ツテ然ルベキモノト考ヘマス、早ク申シマスレバ会社銀行税ト云フ風ニナレバドウデアラウカト云フコトヲ御尋ネシマスノデゴザイマス
○五十二番（東京、中野武営君）　銀行モ会社モ一様デ、会社税ト申ス以上ハ会社組織ノ銀行ハ皆一括シテ居ル
○二十六番（神戸、岡田元太郎君）　ソレデハモウ一ツ御尋ネスル、一
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個人デ営ミ居ルモノニテモ銀行業ハ余程収得ヲ知ルニ知リ易イ、ソレデ此コトヲ一寸御尋ネシマス
○五十二番（東京、中野武営君）　多少他ノ営業者ヨリハ銀行業ヲシテ居ルモノハ御説ノ如キモノガアルカモ知レマセヌガ、一個人デ営業シテ居ルモノハ即チ営業税法ヘ入レルノデゴザイマス
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　私ハ少シク疑団ガゴザイマスカラソレヲ申上ゲマス、一寸此原案ニ依ツテ見マスト、会社税ハ別ニ設ケルト云フコトハ能ク分リマシタガ、併シ此営業税ノ法律ニ依ツテ私ハ大ニ疑団ヲ懐イテ居ルコトガゴザイマスカラ御質問ヲ申上ゲマス、製造業ト云フノハ一個人ノ製造業ヲ指シタノデゴザイマスカ、或ハ紡績会社トカ燐寸製造会社トカ云フモノハ含蓄シテ居ラヌノデゴザイマスカ私ハ大ニ疑ヲ起シテ居ルノデゴザイマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　第二項ノ二ニアル製造業ヲ指シテ御尋ネデゴザイマスカ
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　左様デス
○五十二番（東京、中野武営君）　今ノ御問ヒハ少シク私ハ聞取リ兼ネマシタガ、此製造業ト云フモノヽ中ニ燐寸製造トカ其他ノ製造ト云フモノガ這入ツテ居ルカト云フノデアリマスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　サウデハナイ、会社ガ這入ツテ居ルカト云フノデス
○五十二番（東京、中野武営君）　ソレハ這入ツテ居ラヌ、是レハ一個人デス
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　段々御質問モゴザイマシテ既ニ賛成ト云フ御声モ承ツタヤウデゴザイマスカラ、最早意見ヲ述ベマシテモ宜シウゴザイマスルカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　宜シイ
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　自分ハ段々此案ニ就キマシテ、案ノ御仕組ノ上ニ就キマシテ承リマシテ、略々此将来ニ向ツテノ御方略ト云フ所ハ、明ラカニハ申サレマセヌケレドモ、稍々説明ニ依ツテ推測ヲ下シ、自分ノ考ヘヲ以テ果シテソレデハ斯ウ云フ御考ヘダラウカ位ノコトハ大体分リマシタ、此問題ニ向ヒマシテ、斯ノ如キ御調ベニ対シマシテハ、原案者ハ能ク御分リニナツテ居ルコトハ固ヨリノコトデゴザイマスガ、此会社法ト云フモノヲ――会社税ト云フモノヲ別ニ置クト云フコトニナリ、サウシテ一個人ノ営業ノ中ニ製造業ト云フモノモアリ、銀行業・保険業・倉庫業・運送業・桟橋業ト云フ者モアル是等モドウシタ所ガ団体ヲ作ツテ今日営業ヲシテ居ルモノヽ中ニ之レガアルダラウ、一個人的デモ此業ハアリモ致シマセウガ、多クハ是等ハ会社ト云ヒマスカ、合資ト云ヒマスカ、合名ト云フカ、株式ト云フカ、各々異ナル所ガアツテ皆団体ヲ作ツテヤツテ居ル、然ラバ是等モ会社ト見做スベキモノガアルト思ヒマス、旁々斯ノ如ク一方ニハ会社税ト云フモノヲ起サレンコトヲ希望シ、サウシテ一方ニハ一個人ノ斯ノ如キモノガアルト云フハ、ドウモ此案ヲ採ツテ賛成スルト云フコトニ誠ニ苦シムノデアリマス、ソレ故ニ此ニ至ツテ委員ヲ選ンデ能ク私ハ調査ヲ託シ、唯ダ斯ノ如キ法案ノ税ニ対シテ斯ウ云フ希望ヲ致スト
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云フコトノ上ニ就イテノ可否、或ハ会社法ト云フモノヲ別ニ置ク、或ハ一個人的ノ税ハ斯ウ云フコトニシヤウトカ云フコトノ上ニ就キマシテ、此案ノ性質ヲ先刻カラ段々伺ツタデハゴザイマスケレドモ、愈々斯ノ如キモノヲ起草スルトシマシタナラバ、既ニ一月一日ヨリ実施セラレル所ノ同法ニ向ツテハ延期ヲ希望スルトカ何トカ致サヌケレバ、唯今ノコトハ何トモ言ハズニ置イテ、斯ノ如キ遠大ノコトハ、極ク宜シイコトデハゴザイマセウケレドモ、斯ノ如キモノガ一寸出来ルモノデハアルマイト思フカラ、調査委員ヲ置イテ調ベル、成程斯ウ云フ法案ヲ布カレルニ当ツテ其筋カラ諮問デモアツテ、其法ヲ布カレル参考ニ供スルトカ云フトキニ、斯ノ如キコトハ如何デゴザイマセウカ知リマセヌガ、業ニ既ニ今日トナツテ来マシタ以上ハ、今日ノ現法ニ対シテ我々ハ過酷ナリ、不当ナリ、不適当ナリト見ル所ヲ以テ修正ヲ希望シヤウトカ、或ハ減税ヲ希望シヤウトカ云フコトノ脳髄ヲ以テ居リマスカラ、本年五月デゴザイマシタカ、第五回聯合会ノ時分ニ取調ベテ其筋ニ向ツテ希望ヲバ請願シ、若クハ此意見ヲ提出シヤウト云フヤウナコトハ誠ニ必要ナコトヽ存ジマシタ訳デ、ドウゾ此事ヲ能ク調ベルタメニ、委員ヲ置イテ十分是レガ調査ヲ託シタイト思フ、其上デ之ヲ決シタイト思ヒマス
○十二番（浜松、中村忠七君）　少シ私ハ惑ヒヲ生ジマシタガ、之ハ後戻リヲ致スヤウデ甚ダ恐縮致シマスガ暫ク御許シヲ願ヒマス、既ニ昨日吾々ハ御協議ニ預リマシテ、特ニ原案ノ撰定委員ヲ設ケマシタ時ニ一己ノ考ヘデ見マスレバ、本日御提出ニナルベキ原案ナルモノハ各会議所カラ多数ノ御意見ガ出テ居リマスカラ、其意見ノ中デ、諸君ハ充分ニ御熟議ニナリマシテ、甲ノ中ノ長ヲ採リ乙ノ中ノ短ヲ捨テ、而シテ折衷ノ完全ナル提出ニナルデアラウト窃カニ喜ンデ居リマシタ、且又委員諸君ハ最モ実業社会ニ有数ナ先輩ノ諸君ガ御当リニナリマシタコトデ、吾々如キ田舎者ノ先導ト御成リ下サイマシテ、吾々ガ十分ニ土産トシテ国ヘ持チ帰ル程ノ原案ガ出来ルデアラウ、其原案ニハ全然同意シテ国ヘ帰ラレルダラウト喜ンデ居リマシタガ、委員間ノ内ニ陸続質問モ出テ来マスシ、又反対モアル、私ハ此東京商業会議所デ御調査下サイマシタ原案ニ絶対的ニハ反対ハ致シマセヌガ、昨日委員会ノ経過ニ就キマシテハ少ク疑ガゴザイマスデ、甚ダ先輩諸君ニ対シテ相済ミマセヌガ、此場合反対ヲ致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　アナタハ委員会ノ説ニ反対ヲスルノカ、又ハ此案ニ就テ反対ヲスルノデスカ
○十二番（浜松、中村忠七君）　已ヲ得ズ原案ニ反対ヲ致シマス
○四十七番（京都、中野忠八君）　一寸四十一番ニ御尋ネヲシタイ、今委員ヲ置イテ調査ニ附スト云フノハ、是等ノ彼是ノ会議所カラ出テゴザイマス意見ヲ纏メテ其レヲ一ツノ議案ニシテ出スト云フヤウナ御考ヘデスカ、尚又今十二番ハ此案ニ反対デアルト云フコトヲ言ハレマシタガ、反対ト云フコトニナルトドウ云フ御考ヘデスカ、結果ガドウナリマスカ、伺ヒマス
○四十一番（大阪、亀岡徳太郎君）　四十一番ガ委員ニ託シテ能ク調査ヲ致シタイト申スノハ、昨日ノ委員ソレハ少シ権限ガ違フダラウト思
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フ、昨日ハ斯ノ如ク数多ノ案ガ出来マシタガ、孰レニ依テ此会ヲ開クモノデアラウカ、即チ案ヲ撰択スル為メノ委員デ、東京会議所ハ各地カラ蒐集シタ所デ御立案ニナツタノデアルカラ之ニ従フ、東京商業会議所ノ案ガ穏当ナリト認メマシテ、昨日ノ委員会デハ之ヲ採テ此案ヲ議サウト云フコトヲ、私共ハ委員トシテ協議ヲ致シマシタ、唯今述ベマス所ノ委員ハ、東京商業会議所ノ此案ニ就テ能ク調査ヲシタイト云フノデアリマス、成程一遍ヤツテ見テサウシテ費用ガ減ジタナラバソレダケ減ジテモ宜シイ、一遍今日ノ有様デヤツテ見タナラバ七百五拾万円取レルカ取レヌカト云フヤウナコトハ、現法ヲ以テ将来ノ等級ノ参考ニシヤウト云フヤウナ御趣旨デゴザイマスシ、又会社税ト云フモノヲ希望スル私ノ考ヘデハ銀行業ダトカ保険業ダトカ云フモノハ皆之ハ会社税ダラウト思フ、会社ノ外ニ保険業ヲ一個人デヤツテ居ル者ガアルカト云フヤウナ事柄ヲ、総テ此案ニ就イテ能ク調査ヲシテ審議ヲ致シタイト思フノデアリマス
○十八番（栃木、桜井源四郎君）　十八番ハ唯今ノ四十一番ノ御説ニ依リマシテ一寸伺ヒマスガ、此東京案ハ各地カラ蒐集シタモノヲ集メテソレデ御拵ヘニナツタモノデアリマスカ、又ハ本年五月以降東京ノ会議所ノ御心配デ成リ立チマシタモノデアリマスカ、一寸伺ヒタイ
○五十二番（東京、中野武営君）　唯今ノ御尋ハ東京商業会議所ハ東京商業会議所ノ意見ナンデ、彼是ヲ集メテ拵ヘタモノデハゴザイマセヌ
○十八番（栃木県、桜井源四郎君）　大ニ了解ヲ致シマシタ、左モアルベキコトデアリマス、唯今四十一番ノ御説デアリマスト大ニ心配ヲ致シマスガ、五十二番ノ御説デ大ニ安心致シマシタ、此昨日御審議ニナリマシタ原案ハ相当ナリト認メテ居リマスカラ、満場諸君モ之ヲ御採用下サレマシテ二読会ヲ開カレンコトヲ望ミマス
○三十七番（名古屋、奥由正香君）　私モ委員ノ一人デ、昨日委員会ヘ列席致シマシタガ、是ハ決シテ勝手ニ定メタモノデモ何デモナイ、畢竟営業税法ノ改正ハ総テ孰レモ希望シテ、各地方カラ夫レ夫レノ御意見ガ出テ居ル、若クハ意見ガ出テ居リマセヌデモ営業税法ノ改正ハセニヤアナラヌト云フコトハ皆意見ヲ持ツテ居リマス、故ニ出席ヲ致シ其大体ヲ区別致シマスニ、十四ケ所カラ意見ガ出テ居リマス、大別シマスレバ大同小異ハアリマスケレドモ、今日現法律トナツテ出テ居リマスル所ノ営業税法ニ対シテ単ニ税率ノ改正ヲ請フカ、又或ハ一方ニ於テハ営業税法ガ宜クナイカラ徴税法始メ標準ヲ変ヘナケレバイケヌト斯ウ云フ二ツニナツテ居ル、昨日ハ孰レニ依テ決シタカ、兎ニ角委員会ノ意見トシテハ五トアルノヲ三トスルトカ、三トアルノヲ二トスルトカ、万分ヲ千分トスルトカ云フコトデナクシテ、一体ノ税法ガ宜クナイカラ之ヲ改正スルガ宜イト云フノガ満場ノ意見デアル、故ニ本会ニ於キマシテ自分ノ如キハ第一読会ニ於テハ最モ之ヲ賛成致シマス而シテ小細目ニ至リマシテハ二読会、三読会ニ於テ夫レ夫レ御説モ出マスシ、修正モ出マセウカラ、全ク税法ノ繁苛ノ税ハ宜クナイカラ徴税費ノ減ズル分量ニ従テ減ゼラレタイ、此税額ノ過重ナ上ニ極ク繁苛ナ税ヲ課セラレタト云フコトハ、大変時間モ費シ営業者ニ取ツテモ迷惑デアルト云フ趣意カラシテ、大体東京商業会議所カラ御提出ニナツ
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タノガ宜イト云フコトニナツタ、唯今四十一番ノ御説モアリマスケレドモ、此際大体ノ決スル以前ニ当テ委員ヲ置ク必要ハナカラウト思ヒマス、此大体ニ於テ之ヲ可決シマシタナラバ、第二読会ヲ開クニ当テ種々ナ御説ガ出テ、到底ドツチトモ修正スルコトガ出来ヌト云フ場合ニ委員ヲ選定スルガ宜イ、諸君ノ御意見モ承ハラズシテ委員ヲ立テマシタ所ガ十分ナコトハ出来ルモノデナイ、意見書ガ出テ居ナイカラシテ別段御意見ガナイト云フ訳デハナイ、自分モ意見書ハ持参シテ居リマセヌ、乍去意見書々々々ト云フテ印刷ニ附シテ悉ク差出シテアルモノヲ調査スルト云フコトハ中々繁雑ナコトデ、大体上ニ就イテ異議ナクバ二読会ナリ、三読会ナリデ意見ヲ述ベルコトガ出来マスカラ、此上ニ委員ヲ選ブト云フコトナラバ、十分討論シタ上デ輿論ノ帰スル所ニ依テ委員ヲ設ケル、此際委員ヲ設ケマシタ所ガ好果ヲ見ナイ、依テ自分ハ此案ニ付テ直チニ可決セラレンコトヲ希望致シマス
○九番（金沢、山田清三君）　本員モ昨日調査委員ヲ設ケラレタト云フモノハ、各会議所カラ出テ居ルモノヲ、十三名ノ委員ガ夫レ夫レ御調査ニナツテ、或ハ捨テ或ハ採リマシテ原案ヲ作ルモノト信ジテ居ツタ然ルニ委員ニ於テハ東京会議所ノ意見書ガ当ヲ得タルモノトシテ東京商業会議所ノ意見書ガ原案トナツタ、シテ見ルト我金沢商業会議所ハ意見ノ異ナル所モアル、併シ今ハ一読会ノコトデゴザイマスカラ、二読会ニ於テ修正ノ意見ヲ提出シタイト思フ、今ヤ御論モ尽キタヤウデアル、デスカラ二読会ヲ開カレンコトヲ希望致シマス
○四十番（大阪、土居通夫君）　昨日委員ヘ御托シ申シマス時分ニハ私共モウ少シ御取調下サルコトヽ実ハ考ヘテ居リマシタ、然ルニ今朝御報告ニ依テ見マスト、東京商業会議所ノ意見書ヲ以テ原案トスルト云フ報告ガゴザイマシテ、其点ニ至リマシテハ満場別ニ御異存モナクシテ、東京商業会議所ノ御意見書ヲ原案ト云フコトニ決シマシタ、然ルニ此事ハ重大ノ事件ニ致シマシテ、之ヲ直グニ第二読会ニ廻スト云フコトハ甚ダ宜クナイカラ、矢張リ委員ヲ御設ケニナリマシテ其上ニ尚ホ調査ヲ託サレンコトヲ希望致シマス
○四十七番（京都、中野忠八君）　四十七番ハ三十一番ト同感デゴザイマス、今委員ノ説ガ出マシタガ、ドウシテモ二読会ノ末ニ至リテ委員ヲ選バネバナリマセヌ場合モアルカト思ヒマス
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　私モ三十一番ニ至極同感デゴザイマスカラ別段詳シイコトハ申シマセヌ
○四十番（大坂、土居通夫君）　是ハ東京商業会議所ノ規則第四条ニ於キマシテ委員ニ託スルモノハ二読会ヲ開ク前ニ託スル、議事ノ順序カラ申シマシテモ二読会前ニ委員ニ託スルガ宜シカラウト思ヒマス
○番外（大坂書記長、浜田健次郎君）　大体ノ御説ニ於キマシテ夫レ夫レ御話モ出テ居リマス、今迄伺ツテ居リマス所ニ依リマスト、昨日来ノ東京案ヲバ原案ニシタト云フコトハ決シテ東京案ガ当ヲ得テ居リ先ヅ大体是レガ宜イカラト云フノデナクシテ、兎ニ角之ヲ原案ニシテサウシテ大ニ意見ヲ闘ハサウト云フノガ昨日委員会ニ於ケル結果デアツタト考ヘマス、又原案トシテ出ス以上ハ玆ニ三ツノ点ヲ考ヘテ見ナケレバナラヌ、東京会議所ノ御意見ト云フノハ極ク大体カラシテ改革シ
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テ仕舞ウ、又外カラ出テ居リマスノハ兎ニ角現行ノ法律ヲ多少修正シヤウト云フノデアル、今日御出席ニナツテ居ル多数ノ御方ハ多少修正ヲシヤウト云フ御考ヘノ御方ガ多イカト思ヒマス、今日ニ於テ此大改革ノ原案ヲ出スガ宜イカト申シマスルニ兎ニ角実業者ガ之ヲ議シマスル以上ハ余リ無責任ナル不親切ナルコトハ致サレマイカト考ヘル、是モ唯一個ノ議論トシテ玆ニ提出致シマスルナラバソレデモ宜イカト思ヒマスルガ、兎ニ角国家ノ経営上今日余リ其希望ノ大ナルコトヲ申出シテ、サウシテ其実績ヲ得ラレナイト云フコトニナリマシテハ、折角忙シイ最中ニ寄リマシタ効用ハナカラウト思フ、根本的ノ改革ヲ主張スルナラバ宜シク徐ロニ之ヲ審議シ、何処マデモ運動スル方ガ宜シカラウト思フ、怱卒ノ際其コトヲ申シマシタ所デ少シモ効用ハナカラウト思フ、サウ云フヤウナコトハ先ヅ止メニシマシテ、将ニ行ハレントシツヽアルモノヽ中デ最モ不便ヲ感ジルモノヲ不取敢改メルガ宜シイ或ハ斯ウ云フ御説ガ出ルカモ知レヌ、既ニ悪イト思ツテ居レバ今カラ改正スルガ宜シイト云フ御考ガアルカモ知レマセヌガ、ソレハ税法実施ト云フモノヲ第一着ニ延期ヲシテ呉レイト云フ御決議ヲナサツテ、サウシテ延期中ニ政府モ共々研究シ、実業家モ人民モ研究シテ、其研究ノ結果ヲ網羅シテ其筋ニ建議スルトシテコソ、初メテ国家ニ対シテ親切、営業者其者ニ対シ親切ナ法案ガ出来ヤウト思フ、唯理窟一遍デ既ニ頭ノ上ニ掛ラントシツヽアルモノヲ、其間ニハ政府モ容レテ呉レルダラウト云フカ知レマセヌケレドモ、三年ノ間或ハ五年ノ間ヲ不便ヲ知リナガラ、其中ノ不公平ヲ発見シナガラ、其法律ニ従フコトノ必要ハナカラウト思フ、ソレガ極ク国家ノ為メニモ親切デアリ、実業家ノ為メニモ親切デアル、我々ハ先ヅ今日デハ根本的ノ改革ハ第二トシテ今日出テ居リマス所ノモノヲ先ヅ改正ヲスル方ガ宜カラウト思フ、又委シク各箇条ニ就イテ見マスルト、東京商業会議所ガ三件御挙ゲニナツテ居リマスガ、之ハ十分御伺ヒヲシナケレバナラヌ、随分不便ニ考ヘマスル所モゴザイマスルガ、ソレハ第二読会ニ申シマス、私ハ一読会ヲ終リマスル前ニ先ヅ根本的ノ改革ハ今日ヤラヌガ宜イ、他日ヤルコトヽシテ研究スルガ宜シイカラ、矢張リ東京ノ原案ノ通リニ大キニ致シマセズシテ、其範囲ヲ狭メテ御ヤリ下サルコトヲ希望致シマス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　決シテ是ハ不親切ナリ無責任ナリト云フコトハナイ、又之ヲ斯ノ如ク改正ヲスルト云フ問題ヲ出スナラバ、先ヅ第一ニ延期ヲ乞フ手続ヲシテ置カニヤアナラヌ、之ヲ斯ノ如ク決シタナラバドウセ根本的ノ改革ヲセニヤアナラヌ、又其結果トシテ利益ヲ受ケルト云フコトガ生ジテ来マスカラ、其延期ヲ請フノヲ建議ヲ持チ出スモ出来ルコトデ、今日此原案トナツテ居ル東京商業会議所カラ出マシタ所ノ原案、即チ今日デハ東京会議所ノ原案デナイ本会ノ原案トシテ出シタモノヲ御議シニナラルヽト云フコトニ一決ニナツテ、既ニ会議ガ開ケテ皆様モ御同感デアル、此事タルヤ決シテ等閑リニスルデモナク、五トアルノヲ三トシ、四トアルノヲ二トシマスヤウニシタ所ガ、大体課税ノ仕方ト云フモノガ不適当ナ仕方デアル、是ハ根本的ニ改正ヲシナケレバナラヌ、此根本的ノ改正ヲ希望スル決議ヲシテモ如何ヤウニモ手段方法ガアル、今日之ヲ等閑リニシテ置キマシ
 - 第22巻 p.103 -ページ画像 
タナラバ時機ヲ失スル、一日モ早ク夫レ丈ケノ手続ヲ履ムコトニ依テ決議ヲシマシタナラバ、行ハレルカ行ハレヌカ知レマセヌガ、先ヅ行ハレル積リデ建議ヲスル、東京商業会議所ノ委員ガ御説明ニナツタ所ヲ見マシテモ、無責任ノ建議ヲシテ置ケバ宜イ、行ヘル行ヘヌト云フコトハ何デモ宜シイト云フコトヂヤアナイ、直ニ行ツテ貰ヒタイ、ドウシテモ今日出来ナイト云フ場合ニナツタナラバ、之ニ付帯シテ修正シマスノハ斯ノ如クシタイ、既ニ実施期限モ近イテ到底人民ノ負担ニ堪ヘラレルモノジヤアナイト云フヨリモ、是ハ余リ六ケ敷、是デハ大体ノ議ニ背イテ居ル背カヌト云フヤウナコトヨリモ、寧ロ実際ニ就テ御協議ヲシタ方ガ宜シイ、既ニ何番カデアリマシタカ、モウチツト親切ナモノガ出来テ居ルデアラウト云フコトデアリマスガ、是ハ随分無理ナ御注文デアラウ、之ヲ悉ク調査シ、又此十四ケ所ノ意見書ノ出テ居ル方々ノ御意嚮ハ能ク分リマスガ其他ノ御意嚮モ分リマセズ、之ヲ網羅シテ御満足ナモノヲ拵ヘルコトハ出来ヌ、兎ニ角是デハ到底錯雑シテ議決スルコトガ出来ナイカラ、大体此議場ノ輿論ノ帰スル所ト云フモノハ何ノ点デアルト云フコトガ極ツタ以上、如何ヤウニモ決議ノ出来ルモノデアル、自分ハ最初申述ベタ如ク、営業税法ガ是デ善イカ悪イカト云ヘバ今日ノ課税法デハ悪イ、又負担額モ到底今日ノ営業税法デ納メテハ負担ニ堪ユベキモノデナイト云フコトハ皆サンノ御説ガアリマスガ、要スルニ戦後経済ノ膨脹ニ就テ現ニ今弐百有余万円ノ税額スラ困ツテ居ルニ、七百有余万円ト云フノハ実ニ激変デ、大体四百有余万円ヲ七百有余万円ニスルト云フノハ宜クナイ、是モ不適法ナ税法デアルト云フコトハ御認メニナツテ居リマセウ、然ル上ニ二読会ヲ御開キニナツテ、皆サンノ御高説ガ出テ、輿論ノ帰スル所ヲ以テ委員ヲ選ブコトガ出来マセウ、詰リ営業税ノ取リ方ガ繁苛ナ税デアル、一躍シテ七百有余万円ニナルノハ過重デアルトノ議ハ同一デアラウト思フ、私共東京商業会議所ノ議案ニ半バ又其他ノ御意見ニモ全然同意ノモアリマスガ、兎ニ角ニ皆サンノ利害ノ係ル所ハ大ナル相違ハナカラウト思ヒマスカラ、願クハ此案ヲ以ツテ大体ヲ決シテ二読会ヲ開カレンコトヲ希望致シマス
○番外（京都書記長、新井旭君）　段々御説ガゴザイマスガ、私ハ東京商業会議所ノ御意見ニ大体賛成致スモノデゴザイマスガ、元来課税標準ト云フモノハ実ニ其多キコト数種ニ分レテ居リマシテ、之ニ由リ一一営業税ヲ徴収スルコトニナツタナラバ随分煩多ナコトデアル、殊ニ利益金トカ報酬金額トカ其他色々ナコトニ就イテ皆取調ベタナラバ、課税標準ト云フモノハ繁雑ニ渉ツテ余程困難デアルニ相違ナイ、即チ五十二番ノ説明ニナツタ通リ之ヲ実行スルニ当ツタナラバ、緻密ニシヤウト思ツテヤツタコトガ却ツテ不公平ヲ来スヤウナコトニナラウト私ハ考ヘルノデゴザイマス、玆ニ根本的改革デアルカラ宜クナイ、余リエライデハナイカト云フ御意見モアルガ、私ハ一向根本的改革トハ認メナイ、何故ナレバ税ヲ減ラシテ貰ウ、予算ヲ減ラシテ貰ウ――或ハ納税者ノ或部分ヲ限ツテ仕舞フト云フヤウナコトハ根本的ノ改革デアルケレドモ、即チ納税者ニ於テハ決シテ変ラナイ、負担ヲ軽減スル意見デナイナラバ根本的改革デナイデアラウ、課税ノ標準ヲ――税率
 - 第22巻 p.104 -ページ画像 
ヲ一ニシテ覩易クスルト云フ改革デアルカラ、サウ云フ心配ニハ及バヌト思ヒマス、之ヲ以テ根本的改革ナドヽ云フノハドウ云フコトカト思ヒマス、現法ハ一月一日カラ実施スルノデアルカラ僅々四十余日ホカ余サナイ、今日ニ於テ政府ハ何ヲ以テヤルカト云フコトガアルカ知レマセヌガ、併シ私ガ聴キマスルト、何モ当業者ハ先キハ未定ジヤカラ心配スルニ及バナイ、ソンナコトヲ考ヘタナラバ改正ノ意見ハ殆ンド出来ナイ、斯ウモシタナラバ当業者ガ痛カラウ、実業者モ困ル、政府モ困ルト云フ考ヲ幾分カ持ツテ居レバ、何ノ改正モ決シテ行ハレルコトハナイ、改正ト云フコトハ必ズ手数ヲ要シ、色々不都合ヲ来スノデアルカラ、既ニ五十二番ノ意見ノ通リ、政府ガ金ガ足ラナケレバ金ヲ寄セル方法モアルカラ、決シテ今日向フヲ心配スルニ及バナイ、唯ダ当業者ノ意見ヲ表白シテ当業者ノ意見ハ斯ノ如クデアルト云フコトヲ政府ニ表白スレバ宜シイト云フ考デゴザイマスカラ、決シテ躊躇スルニ及バナイト思ヒマス、併シナガラ五十二番ニ質問ヲ致シタイ箇条ハ「税率ハ現法ニ比シ徴税費ノ減ズル分量ニ応ジテ之ヲ軽減スル事」トアリマスガ、甚ダ後レ馳セデハアリマスガ之ヲ一寸質問ヲ致シタイ此徴税費ト云フモノハ実際御調ベニナツテ居リマセウカ、何レ沢山ニ掛ルト云フコトハ知ツテ居リマスガ、大抵ノ御見込ガ立タヌト此意見モ出ナイト思ヒマスガ、衆議院開会ノ節或議員ノ質問ニ対シテ政府委員ノ答ヘタ所ハ五拾六万ナンボウト確カニナツテ居ルヤウデアリマスガ、ドウデゴザイマスカ、其辺ノ所ヲ一寸質問致シマス
○五十二番（東京、中野武営君）　先刻ドナタカノ御質問ガアツテ御答ヘヲシテ置キマシタガ、徴税費ノコトハ分リマセヌデゴザマイス、唯道理カラ推シテ往ツテ煩雑ナラバ徴税費モ過分ニ掛ルガ、之ヲ簡明ニスレバ過分ニ掛ラヌデ済ミマスカラ、ソレダケノ分ハ当然税率ニ於テ軽減スルモ政府ニ損ガ往カヌト云フ、唯ダ理由ダケヲ申述ベタノデゴザイマス
○五番（長崎、松田源五郎君）　大体ノコトハ御論旨ハモウ尽キタヤウニ思ヒマスガ、ドウカ御採決ヲ願ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　モウ御論モ尽キタカト認メマスガ、今本議案ニ対シテ一読会ヲ可決シテ第二読会ヲ聞クベク決スルガ宜カラウト云フ説ト、全体ヲ直スタメニ委員ニ附托シタラ宜カラウト云フ四十一番ノ御発議ニ御賛成ガアルヤウデゴザイマス、其他十二番ハ本案ヲ廃棄スルト云フ御説ノヤウデゴザイマスガ、是ニハ御賛成ガゴザイマセヌ、サウスルト四十一番ノ御説ヲ先キニ御起立ニ問ヒマシテ、而シテ原案ニ就イテ第二読会ヲ開クベキヤ否ヤト云フコトヲ採決シテ宜イカト思ヒマスガ……
　　　〔「異議ナシ、異議ナシ」ノ声起ル〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　四十一番ノ御説ハ議案ノ大体ヲ直スタメニ委員ニ附托スルト云フ御説デゴザイマスガ、是レニ御同意ノ御方ノ御起立ヲ請ヒマス
　　起立者　　少数
○会長（東京、渋沢栄一君）　少数――続イテ本案一読会ヲ可決シテ第二読会ヲ開クベシト云フコトニ御同意ノ御方ノ御起立ヲ乞ヒマス
 - 第22巻 p.105 -ページ画像 
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数――即チ第二読会ヲ開クベシト云フコトニ決定致シマシタ、暫時休憩ヲ致シマス
　　午後零時十分休憩
　　午後一時（休憩後）開会
○会長（東京、渋沢栄一君）　是レヨリ開会仕リマス、第二読会ヲ開キマスル、第一営業税ノ欠点ト云フ項目ニ就キマシテ先ヅ冒頭ノ緒言ノ文章ヲ今玆ニ議事ニ附シマス
　　　〔書記朗読〕
○二十四番（広島、桐原恒三郎君）　既ニ二読会ヲ御報道ニナリマシタガ、玆ニ於テコソ此必要ヲ感ジマス、既ニ一読会ニ於キマシテハ総体決議ヲ致シマシタ、即チ総体ニ於キマシテハ此標題ノ営業税改正ト云フコトニ就イテ――語ヲ換ヘテ言ヘバ此営業税法ハ改正スルノ必要アルヤ否ヤト云フコトニ就イテ、改正スルノ必要アリト認メテ一読会ハ通過致シマシタ、此際営業税法ノ欠点ト云フコトニ就イテ字句ノ修正其他ノ更正ヲ要スルガタメ、二十名以下議長ノ指名ヲ以テ委員ヲ選定セラレンコトヲ希望致シマス
○二十一番（富山、関野善次郎君）　固ヨリ是ハ主意ノ更正ハ出来マスガ、二読会ニ於テモ委員ヲ置クト云フコトガアリマシタケレドモ、三十七番ノ如キハ委員ヲ置クニシテモ多数ノ会員ガ意見ヲ吐露シタ上デナケレバ、折角委員ヲ拵ヘテモ其委員ガ議案ヲ取捨更正スル材料ニ甚ダ困ルデアラウ、ソレ故ニ二読会ニ於テモ意見ヲ十分ニ述ベテ、然ル後ニ委員ヲ置イテヤツタ方ガ宜カラウ、ソレハ最モ適当ナコトデアラウト思ヒマス、ソレデ今二読会ニ於テ営業税法ノ欠点ト云フコトヲ御朗読ニナツタケレドモ、其欠点ト云フノハ詰リ御読ミ上ゲニナツタコトデドウ決議スルト云フ必要ハナカラウ、先ヅ此第二ノ営業税法改正ノ要領ト云フコトニ就イテ――会社ハ別ニスルトカ何ントカ云フコトハ是レ亦本案ニ対シテノ必要ノ問題デアルガ故ニ、前ノ欠点ト云フヤウナコトハ御朗読ニナツタキリノモノニシテ、其次ノ営業税法改正ノ要領ト云フコトヲ議シ、其次ニ至ツテ又タ審議討論ヲ尽シテ委員ヲ置クヤウニ致シタイト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　二十一番ノ御説ハ第一ト云フ項目ヲ次ニシテ、ソレカラ逐条ニ議シタガ宜カラウト云フコトデゴザイマスカ、其一・其二・其三ト斯ウ項ガ分レテ居リマスガ……
○二十一番（富山、関野善次郎君）　第二営業税法改正ノ要領ト云フ――営業税以外ニ会社税ト云フモノガゴザイマスガ、是ハ大イニ審議ヲ要スルコトデアラウト思ヒマスカラ……
○二十四番（広島、桐原恒三郎君）　少シ申シヤウガ足リマセヌガ、唯今第一ヲ御朗読ニナリマシタガ、玆デ通ジテ委員ヲ置イテ取調ベマシタ後ニ議シタ方ガ宜カラウト考ヘマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　併シ二十四番ノ意見ハ修正意見デナクシテ、議案ノ大体ニ就テ委員ヲ置クト云フ方デアリマシタ、二読会ハ逐条ニナツテ居リマスカラ、全体ノ委員ヲ立テヤウトスルト少シ二読会ノ逐条会議ニハ困リハ致シマセヌカ
 - 第22巻 p.106 -ページ画像 
○二十四番（広島、桐原恒三郎君）　少シ手順ヲ誤リマシタ
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　一寸伺ヒマスガ、唯今御朗読ニナツタ営業税法ノ欠点ト云フコトニ就テ今ハ議スルノデゴザイマスカ、又各意見ノ――即チ東京商業会議所ノ意見ト云フコトノ第一項ニアル「会社税法ヲ創定シ」ト云テ一項ニ就テ議スルノデアリマスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　今コヽハ逐条ニナツテ居リマスカラ、今申シ上ゲタダケヲ以テ其文字ニ就テノ修正ノ御意見ハナイカ、主意ニ就イテノ反対ノ御意見ハナイカト云フコトニ就イテ議サウト思フノデゴザイマス、併シ第一営業税法ノ欠点ト云フ第一項ダケヲ纏メテ議シテ宜イト云フ諸君ノ御意見ナラバ、第一ダケヲ皆纏メテ一緒ニシテ議シテモ宜カラウト思ヒマス、併シ一緒ニスルト余リ項ガ長ク、成ルタケ修正ノ御意見ガ混雑シテナラヌト思ヒマシタカラ、冒頭ノ緒言ヲ議シ、其次ヲ議シ、又其次ヲ議シ、段々ニ議シテ往カウト私ハ思ツタノデゴザイマス
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　三十一番ハ意見ヲ述ベマス、三十一番ハ大体ハ即チ此文章ニ列記シテアルトコロノ会社税法ヲ特別ニ立テヤウト云フノデアリマス、是ニ就イテ色々ノ御説ガアツテ、根本的大改正ダカラ宜クナイト云フ論ガアリ、此案ニ就イテ委員ヲ挙ゲタガ宜イト云フ説モ出マシタガ、大項目ヲ逐ツテ議シテ、而シテ後ニ、此文章ノコトハ理由書デゴザイマスカラ、是レニ就イテ議シタ方ガ宜カラウト思ヒマスカラ、此説ヲ提出致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　ドウ云フ風ニ議サウト云フ御意見デスカ……
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　即チ各会議所カラ出シタモノガ列記ニナツテ居リマスガ、此東京商業会議所ノ意見ノ項目ダケヲ議サウト云フ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　是レハ唯各会議所ノ意見ヲ東京商業会議所デ調べマシタノガ斯様デアルト云フノデ、今議スベキ問題ニナツテ居ルノハ東京商業会議所ノ意見ト云フモノガ議題ニナツテ居ルノデゴザイマスカラ、此各商業会議所ノ意見要領ト云フモノハ今議ニ附セラレテ居ラヌノデス
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　要領カラ御議シニナツタ方ガ宜カラウト云フノデアリマス、営業税法案ト云フモノニ就イテ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ今玆ニアル第二ノ営業税法改正ノ要領ニ就イテ議シタラ宜カラウト云フ……
○三十一番（字都宮、須永信夫君）　左様デゴザイマス、ソレガ第一番ニ問題ニナツテ居リマス、斯ウ云フ大項目ヲ一ツ議シテ定メテ往ツタラ、今御朗読ニナツタ文章ナドハ自然ニ出テ来マスダラウト思ヒマス斯ウ云フ意見デゴザイマス
○二十一番（富山、関野善次郎君）　三十一番ノ御説ガゴザイマスガ、一向私ハ要領ヲ得ヌノデアリマス、即チ是ハ二読会デアツテ逐条ニ議サヌケレバナラヌト思ヒマスガ、即チ営業税法ノ欠点ト云フコトニ就テハ、此大体ニ於テハ吾々モ此通リ考ヘテ居ルノデゴザイマスカラ、他ニ別ニ之ヲドウ斯ウト云ツテ議スベキコトガアルマイト考ヘマス
 - 第22巻 p.107 -ページ画像 
ソレカラ其次ニ移ルガ順序デアラウト思フノデゴザイマス
○有志会員（東京、佐久間貞一君）　是ハ唯今二十一番ノ関野サンノ御説ノヤウナコトデ、此営業税欠点ト云フダケヲ通ジテ議題ニ御上ボセアルヤウニ致シタイ、否ラザレバ其間ニ若シ色々修正トカ何ンダトカ意見ガ出テ来ルト初メニ及ホシテ来マスカラ、玆デ逐条決議シテ往クコトハ出来マセヌ、ソレデスカラ営業税法ノ欠点ト云フ大項目ヲ先ヅ議題トシテ御議シニナルコトヲ望ミマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　第一、第二ヲ籠メテ議サウト云フノデスカ
○有志会員（東京、佐久間貞一君）　欠点ダケヲ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　第一ノ方ダケヲ議題ニスルガ宜カラウト云フ……
○有志会員（東京、佐久間貞一君）　左様
○二十一番（富山、関野善次郎君）　ソレデ私ノ考ハ是ハ其筋ヘ――或ハ大蔵大臣ヘ出ストカ、帝国議会ヘ出ストカ云フ文章ノ草案デアルト思フト見方ガ違ヒマス、ソレ故ニ是ハ議長ニ任セテモ、是ガサウ云フ主意ノ文章デナイ、此会ニ於テハサウユウ主意ノ文章デナイト云ヘバ詰リ新聞ノ雑報ニ書イタモノト同ジデアル、玆ニ於テハ逐条ダケレドモ議スベキモノハ第二ヲ議スベキモノデアル、是ハ唯文章バカリデ其筋ヘ出ス建議書デナイカラ速ニ何ントカ御扱ヒニナルコトヲ希望致シマス
○十七番（栃木、石塚新吾君）　私ノ考モ矢張リ二十一番ト同ジデゴザイマス、ソレデ矢張リ二十一番ガ申サレマス通リ、第二営業税法改正ノ要領ト云フトコロカラ議スノガ相当デアラウト思ヒマス、第二以下ノ修正ニナルト、詰リ前ノ第一営業税法ノ欠点ト云フ所ニ及ボシテ来ルノデアリマス、ソレ故ニ第一ニ営業税法ノ欠点ト云フ所ヲ議シテモ第二ヲ議シタ結果、第一ガ取消シニナルヤウナコトガナイトモ限ラナイ、故ニ二十一番ヲ賛成致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ兎ニ角一般ノ御意嚮ガ第二ノ方カラ議シタガ宜カラウト云フコトナラバサウ致シマス
○五十二番（東京、中野武営君）　至極唯今ノ御説ガ適当ナコトヽ考ヘマスカラ、先ヅ改正ノ意見ノ方ヲ先ヘ議シマシテ、ソレカラソレガ極マツタ後デ、第一ノ項ヲ議シタ方ガ順序ガ宜カラウト思ヒマス
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　三十一番モ詰リ第二ニアルトコロノ営業税法改正ノ要領ヲ先ヘ議シタ方ガ宜カラウト云フ説ト同一ナンデス
○会長（東京、渋沢栄一君）　二十一番ノ御説ト同ジナンデスカ
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　左様デゴザイマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ第二営業税法改正ノ要領ト云フ項ヲ議題トシテ、第一ノ方ヲ後ニ廻ハスヤウニ致シマス、第二ノ営業税法改正ノ要領ト云フトコロヲ朗読致サセマス
○二十四番（広島、桐原恒三郎君）　朗読ハ御省キニナルコトヲ希望致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　御異議ガゴザイマセヌケレバ朗読ヲ省キ
 - 第22巻 p.108 -ページ画像 
マス
　　　〔「異議ゴザイマセヌ」ト呼フ者アリ〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ第二ノ営業税法改正ノ要領ト云フ項ガ唯今議題ニナツテ居リマス
○九番（金沢、山田清三君）　第二ノ要領ノ所ニ「営業税法以外ニ会社税法ヲ創定シ、会社組織ヲ以テスル営業ハ総テ同法ニ属セシメ、会社収入ノ利益ヲ標準トシテ相当ノ課税ヲナス事」トアルノヲ本員ハ削除致シタイ考デゴザイマス、其理由ハ、独リ此会社組織ヲ以テスル営業ニ限ツテ営業税法案ノ下ニ立タレヌト云フコトハナイヂヤラウト思ヒマス、唯此理由ト云フモノハ会社組織ト云フモノハ取扱上明カデアリマス、故ニ個人的ノモノニ限ツテ此営業税法ノ下ニ立タセ、独リ会社組織ハ別ニ会社法ヲ設ケテヤランナラヌト云フ必要ハナカラウト思ヒマス、依ツテ本員ハ之ヲ削除シテ矢張リ営業税法案ノ下ニ立ツコトヲ希望致シマス
○二十四番（広島、桐原恒三郎君）　唯今営業税法改正ノ要領ト云フ件ニ就テ九番議員カラ其一ヲ削除スルト云フ御説ガ出マシタガ、是ニ就イテハ今本員ガ喋々述ベヌデモ皆知ツテ居ルコトデアリマスガ、是ハ会社ト一個人トハ全ク其性質ヲ異ニスルモノデアリマスカラ、本員ハ此原案ヲ賛成スルノ意見デゴザイマス
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　三十一番モ是ハ営業税法カラ全ク脱シテ特別ノ方法ニ依ラスルガ宜カラウト思ヒマス、斯ノ如キ煩雑ナルモノヲ一見覩易イモノヽ中ヘ入レテ置クノガ宜クナイ、先刻一読会ノトキニ四十一番等カラ、是等ヲ集メテ大改正ヲシタラ大変時日ヲ要シテ、一月一日カラ実施スル第三十三号ノ法律ヲ施行スルニ差支ヘルカラ、余リ大ナル改正ハシナイ方ガ宜カラウト云フ御説モ出マシタガソレハ、政府ガ商業会議所カラ建議シタモノダカラ之ヲ手モナク何ンデモ其通リ実行スルト云フコトデハナイ、一部ノ改正ヲナスモ根本的ノ改正ヲスルモ等シク改正デアツテ、詰リ五十歩百歩デアルカラ、斯ノ如ク煩雑ナルモノヲ一見覩易キモノト混ジテ置クノハ宜シクナイト思ヒマスカラ、断然改正スルト云フ原案ニ賛成ヲ致シマス
○五番（長崎、松田源五郎君）　一寸伺ヒマスガ、此第二項ハ通ジテ会議ニ附セラレタモノト心得マスガ、或ハ其一・其二ト項ヲ分ツテ議ニ附セラレテ居ルノデアリマスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　箇条ガ多ウゴザイマシテ混淆スル恐レガアリマスカラ、其一・其二ト議シタ方ガ宜カラウト云フ……
○五番（長崎、松田源五郎君）　左様願ヒマス……尚ホ五十二番ニ伺ヒマスガ、会社税法ト云フモノハ単独ニ設ケル方ガ宜イト云フ御精神デアルカ、又営業税法中ノ会社ニ附スル税率ヲ別ニ設ケルト云フ御精神デゴザイマスカ
○五十二番（東京、中野武営君）　営業税法以外ニ会社税法ヲ創定セラレタ方ガ相当デアラウト云フ意見デゴザイマス、其訳ハ、税率ヲ極メマシタダケデハ、其調査法ト云フモノガナケレバ、完全シマセヌノデゴザイマス、然ルニ会社ト云フモノハ御承知ノ通リ商法ニ規定セラレテアルモノデゴザイマシテ、総テノコトガ商法ニ依ツテヤラナケレバ
 - 第22巻 p.109 -ページ画像 
ナラヌモノデゴザイマスカラ、税ヲ取立ツル上ニ於テモ、是等ノ所ニ基イテ又別ニ方法ヲ規定セヌケレバナリマセヌ、一個人トハ大ニ成立ヲ異ニシテ居リマスカラ、啻ニ税率ノ一点ヲ変ヘルノミナラズ、税ヲ徴収スル方法モ亦従ツテ変ルベキ性質ノモノデアルカラ、ソレ故ニ全ク単独ナル会社税法ト云フモノヲ創定セラレタ方ガ宜シキヲ得ルモノデアラウト云フ考デゴザイマス
○二十番（高崎、反町慎哉君）　五十二番ト同感デゴザイマス
○二十二番（富山、牧野平五郎君）　五十二番ニ賛成、原案ヲ可ト致シマス
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　本員ハ既ニ我商業会議所ノ議案ヲ提出致シテ置キマシタガ、各種ノ会社ト云フモノハ必ズ是ニ入レタ方ガ宜カラウ、大体此本案ノ主意ヲ考ヘテ見テモ、徴税方法ガ煩雑デアツタリ納税者ガ不便デアルカラ、成ルベク簡便ノ方法ニ致シタイト云フヤウナ主意デアリマスガ、全体此各種ト云フ目ヲ玆ニ入レラレタ以上ハ、此税目ノ中ニ何程デモ税名ヲ置イテ、会社ニ属スルモノ云々ト云フ風ニシタラ却ツテ軽便ニシテ宜シクハナイカト云フ感ヲ持ツテ居リマスカラ、此事ハ一言申シテ置キマス
○二十一番（富山、関野善次郎君）　私ハ此営業税法以外ニ会社税法ヲ制定スルコトヲ否ト致シマス、ソレデ之ヲ別ニシナケレバナラヌト云フ理由ハ、会社ト云フモノハ、ソレソレ計算ノ方法ガチヤント立ツテ居ツテ、一個人ノ計算トハ大ニ趣ヲ異ニシテ居ル、言ハヾ一個人ノスルコトハ信用シ難イコトガ多クテ、会社ノスルコトヽ云フモノハ信用スベキコトバカリデアル、ソレ故ニ若シ曖昧トシタトコロノコトヲサセマイトスルニハ、ドウシテモ一個人ト会社トハ別ニシナケレバナラヌ、税ヲ一ツノ下ニ置クト云フコトハ宜クナイト云フノガ、是レ即チ之ヲ別ニシヤウト云フ主意ニ外ナラナイ、ソレデ等シク営業税デアツテ之ヲ別ニスルナドト云フコトハ宜クナイ、或ハ又決シテ人民ハ嘘ヲ吐クト極ツタモノデナイ、会社ト雖トモ皆正直ナモノデアル、皆鞏固ナモノデアルト云フコトハ云ハレナイ、是ハ斯ウシテ置イテ差支ナイト思フ、ソレカラ税ノ徴収ニ就イテモ先刻カラ段々御説ガ出マシタガ之ヲ別ニシヤウト云フ論者ノ議論ヲ聴クト、会社ハ計算ノ方法ガ確実デアル、サウシテ種々雑多ナ営業ノ課税ノ標準ノ中ヘ会社ガ這入ツテ居ルノハ宜クナイト云フヤウナ甚ダ妙ナ説ガアルガ、私ハ決シテ実際ニ於テ課税ノ標準ト云フモノニ改正ヲ加ヘナクテモ、混雑デアルトハ言ハレナイト思ヒマス、今日日本デ三哩カ五哩ノ鉄道ヲカケルニモ会社ト云ヘバ信用ガアルヤウデアリマスガ、今後ハソンナコトハ出来ナイ、随分立派ナ百哩、二百哩ノ鉄道――某鉄道ト云フヤウナ立派ナ会社ガ出来タ時分ニ、ソンナ三哩ヤ五哩ノ会社ト同一視サレテハ困ルノデ、現今ノ場合ヲ以テ将来ヲ察シテ見レバ、之ヲ別ニスル必要ガナイノミナラズ、改正ヲ其筋ヘ求メルニ斯ウ云フコトヲシテハ、大体ノ目的ヲ達スルニ必ズ障リヲ生ズルデアラウト思ヒマスカラ、之ヲ削除シタイト云フ意見デゴザイマス
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　自分モ稍々二十一番ト同感デゴザイマス、会社ヲ営業税法案以外ニ設ケヤウト云フコトハナカナカ容易
 - 第22巻 p.110 -ページ画像 
ナラヌコトデゴザイマス、殊ニ本員ハ是非別ニ置カナケレバナラヌト云フ必要ハドウモ見ナイ、会社ト云フモノハ総テ利益事業デアル、詰リ云ヘバ矢張リ営業者デアル、倉庫業・銀行業・製造業ナドハ明カニ利益ト云フコトヲ判明スル訳デアリマスカラ、此中デ以テ素志ヲ達スルコトニナレバ、敢テ本法以外ニ殊更ニオツクウナルコトヲ希望シテ出来易イコトモムヅカシクナツテ、詰リ効果ヲ見ナイコトニナリハセヌカ、会社ニ向ツテハ云々ト云フ相当ノ税率ヲ玆ニ設ケタナラバ、敢テ殊更ニ斯ノ如キオツクウナルコトヲ希望スルニハ及バヌト思ヒマス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　此事ニ就テハ自分等ガ意見書ヲ携ヘテ出マシタモノト別ニ異ナル考ハナイ、唯ダ課税法ヲ異ニスル、此議案ハ営業税ヲ等級ニスルナラバ会社ダケハ等級ニシナイデ収益金ヲ課税標準トスルノデアルガ、斯ウ致シマシタナラバ、別ニ営業税法案以外ニ別ニ会社税法ヲ創定スルノ必要ハナカラウト思ヒマス、去リナガラ課税方法ヲ種別スルコトハ必要デアラウト思ヒマス、此営業税法中ニ会社組織ヲ以テスル営業ハ其収益金ヲ標準トシテ課税スル、一個人ノ営業ハ等級ニ応ジテ課税スルト云フコトニシタラ宜カラウト思ヒマス、矢張リ二十一番ノ御説ノ如ク之ヲ削除スルト云フコトニナリマセウガ「別ニ会社税法ヲ創定シ」ト云フコトニナツテハ一番是ニ重キヲ置クヤウニナツテ居リマスカラ、之ヲ取ツテ更ラニ第一ナラ第一ニ此事ヲ当テ箝メルヤウニ致シタイト思ヒマス
○五十二番（東京、中野武営君）　会社税法ヲ特別ニスルト云フコトハ宜シウナイト云フ御説モ段々ゴザイマスカラ一言述ベマスガ、第一ニ四十一番ノ御説デゴザイマスガ、是ハ大体上ヨリ御懸念ニナルヤウナコトヲ承ツテ居リマス、其次第ハ別ニスルト事ガ大層ニナル、ソレ故ニ行ハレベキコトモ面倒ニナルカラ此儘ニシテ置クガオトナシクシテ宜イト云フヤウナ御趣意デアリマス、私ハ甚ダソレヲ了解スルニ苦ム何故別ニスルコトガ出来ヌカ、既ニ此営業税法中ニ於テ其改正ヲ必要トスルナラバ是ハドウシテモ別ニシナケレバナラヌモノト思ヒマス、外ノ一個人ノ中ニ入レラレナイモノデアルカラ、是ダケノモノハ別ニシナケレバナラヌト云フコトハ分リ切ツタコトデアリマス、而シテ此営業税法中ニ一例ヲ置クトシテ見テモ、既ニ会社ノ成立チガ一個人ト違ツテ居ル以上ハ徴収ノ仕方手続モ違フテ来ルニ相違ナイ、其規則中ニ唯会社ハ利益金ヲ標準トスルト書イテハ済マナイ、規則中ニ夫レ夫レノコトヲ規定セニヤナラヌ必要ガ生ズルト――其必要トスベキ規定ヲ玆ニ定メムトスルナラバ、玆ニ拵ヘルモ別ニ拵ヘルモ手数ハ同ジコトデアル、唯ダ混淆シタルモノガ出来ルト特別ニ拵ヘルトノ違ヒデアル、二ツ一緒ニナツタモノガ政府ノ取扱上便利デアルトカ、或ハ此税法中デ改正ヲスルモノハ政府ガ受ケ易イトカ云フコトハドウ云フ訳デアルカ、モウ既ニサウ云フ趣意ノアルコトヲ是認シタナラバ、何ゾ一ツノ法律ト二ツノ法律ト難易軽重ノ別ヲ立テルニハ及ビマセヌ、或ル場合ニ於テハ一ノ法律ノ中デ改正ヲシタラ宜イト云フコトモアリマスガ、併シ改正ヲシナケレバナラヌト云フコトニナレバ変リガナイ、変リガナイノミナラズ、之ヲ編製スル上ニ於テ余程簡便ニ出来、且ツ人民ガ之ヲ遵奉シテ往ク上ニ於テモ区別ガ立ツテ便利ヲ得ル、凡ソ法ト
 - 第22巻 p.111 -ページ画像 
云フモノハ申スマデモナク、所謂人民ガ遵奉シテ往クニ便利ニ簡明ニアルヤウニ立テヽ往クノハ、法ヲ立テル上ニ於テ最モ大事ナコトデアル、之ヲ一個人ト同様ニ看做シテ宜シイト云フ御説デハナイノデアツテ、詰リ一ツノ法律トスルト二ツノ法律トスルノ外ニ何モ議論ハナイノデアリマスカラ、此本案ノ趣意カラ別ニセネバナラヌト云フ必要ヲ認メタ以上ハ、判然ト区劃ヲ付ケテ別ニ一ノ法律ヲ設ケテ貰イタイ、一個人ノ営業ト会社ト混淆サレテハ甚ダ困ルカラ特ニ別ニナサレタイト云フタトコロガ、決シテ差支ノアル筈ハナイノデアリマス、然ルニ何ヲ苦ンデ一ツノ法律ニシタ方ガ宜イト云フコトヲ政府ニモタレ掛ツテヤルノ必要ガアルカ、実業家ガ玆ニ集ツテ議スル以上ハ、権利トシテ良イ所ハ求メ、悪ルイ所ハ改メテ貰フコトガ当然出来ルノデアリマス、ドウシテモ此法律ヲ別ニシテ区別ヲ立テルノハ最モ此法律ノ上ニ必要ナコトヽ思ヒマスカラ、一寸是レダケノコトヲ申述ベテ置キマス
○番外（京都書記長、新井旭君）　一寸五十二番ニ伺ヒマスガ、全国ノ会社総数ハドノ位アリマスカ
○五十二番（東京、中野武営君）　書記カラ朗読ヲシテ貰ヒマセウ
○番外（大阪書記長、浜田健次郎君）　今ノ御朗読ガアリマス前ニ一寸一言述ベテ宜シウゴザイマスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　宜シウゴザイマス
○番外（大阪書記長、浜田健次郎君）　今会社税ノコトニ就テ色々御説ガアリマシタガ、私共ハ矢張リ之ヲ特ニ制定スルノ必要ハナイト思フ勿論会社ナルモノハ此営業経営上多少個人ト違フモノデアリマス、多少違フ事情ハアリマスケレドモ、ソレガタメニ特ニ玆ニ法律ヲ別ニ立テヽ徴税シナケレバナラヌト云フ必時ハ私共認メヌノデアリマス、認メヌノミナラズ、之ヲ別ニシタナラバ、然ラバ税法ガ非常ニ簡便ニナリ遵奉スル者ガ非常ニ便利ヲ受ケルカト云ヘバ、私ハ別ニシタダケノ効果ハ決シテナカラウト思フ、却ツテ営業税法中ヘ会社ニ係ルモノハ是レ是レ、個人ニ係ルモノハ是レ是レ、ト明瞭ニ区別ヲ立テタ方ガ、実際法律ヲ執行スル上ニ於テ便利デアツテ、決シテ妨ケハナイト思フ特ニ是ハ営業税法中カラヒツコ抜イテ別ニ法律ヲ設ケルナドヽ云フ大仕掛ケノ事ヲセヌデモ十分ヤツテ往ケル、唯ダ此営業税法中ニ会社ハ是レ是レ、個人ハ是レ是レ、ト区別ヲ立テヽ置ケバ宜イト云フ考デゴザイマスカラ、此項ハ削除ヲ可ト致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　先刻新井サンカラ御求メニナツタ会社ノ総数ノ調ベヲ今書記ヲシテ朗読致サセマスカラ……
　　　〔書記朗読〕
　　明治二十九年九月現在全国会社総数
　一　銀行（合名・合資・株式会社トモ）
　　　　　　　　　　　　　　　　　一二五五
　一　其他ノ株式会社　　　　　　　一五九三
　一　鉄道会社　　　　　　　　　　　　五四
　　　計　　　　　　　　　　　　　二九〇二
　　外ニ明治二十八年十二月三十一日現在合資・合名会社数左ノ如シ
　　　合資会社　　　　　　　　　　一一三二
 - 第22巻 p.112 -ページ画像 
　　　合名会社　　　　　　　　　　　二五六
○番外（京都書記長、新井旭君）　私ハ之ヲ別ニスルノガ宜イト云フ考ヲ持ツテ居リマス、唯今段々御説ガゴザイマシテ、一個人ダカラ不正ナコトヲスルトハ限ラヌ、会社ダカラ不正ナコトヲセヌト云フノハ可笑イ話デアルト云フ御話モゴザイマシタガ、一体税法ナルモノハ必ズ総テノ人民ニ課税ヲ免カレシメヌト云フコトニ意ヲ用ユルモノデアリマスカラ、ドノ税法デモ人民ニ対シテハ幾分カ悪感情ヲ懐カシメルモノデアリマス、是ハ税法ノ自然デアルカラ仕方ガナイ、反対論者ノ御説ハドウモ根拠ガ立タヌヤウニ思ヒマス、ソレカラ唯今御調ベヲ願ヒマシタ全国ノ会社ノ数ハ約ソ四・五千ト云フコトニナツテ居リマスガ是レダケノ会社ガゴザイマスカラ猶更ノコトデ、今後ノ景況ハドウデアルカト云ヘバ、戦後ノ膨脹ナリ其他総テノ経済上ノ増進ト共ニ会社ハ大ニ増加スルデアラウト考ヘマス、果シテ是ガ段々増加シテ愈々会社数ガ多クナルト云フ時ニ至リマシタナラバ、今ノ改正税法ヲ以テヤツタトキニハ大変ニ困ルコトガ出来ル、即チ会社ト云フモノニ等級ヲ付ケテヤラヌケレバナラヌコトニナレバオカシナコトガ出来ル、先ヅ日本ナドニ於テハ会社ト云フモノガ非常ニ信用ヲ受ケテ居ルノニ、一個人ノ仲間ニ這入ツテ等級ヲ付ケラルヽコトニナレバ、例ヘバ第一銀行ガ何等、第百十五銀行ガ何等トズツト等級ヲ付ケルコトニナレバ大変ニ困ルコトガ玆ニ出来テ来ル、故ニ当業者ハ非常ニ迷惑ヲ感ズルノデアリマス、サウ云フ当業者ニ不快ヲ感ゼシメルコトハ已ムヲ得ザル場合ニハ仕方ガナイガ、他ニ適当ナル途ガアルナラバ適当ナル途ニ依ツテヤルガ宜シイ、之ヲ若シ別ニスルト云フト大変ニ徴税上ニ便利ヲ得ル、株式会社ナリ銀行ナリハ決算報告ト云フモノガアツテ収益ヲチヤント明ラカニ現ハスコトガ出来マスカラ、此収益ニ依ツテ調レバ徴税ノ方法ニ於テモ費用ヲ要サヌコトニナリ、又納税者ニ於テモ面倒ナ手数ヲ要サズシテ宜イ、収益ノ決算ヲシマスカラ、ソレニ課セラルヽコトニナレバ納税者モ便利、徴税者モ便利、且ツ徴税費モ省ケテ大変ニ都合ガ宜シイノデアリマス、ソレカラ収益ニ課スルト云フコトハ租税ノ原則トシテ極メテ公平ナコトデアリマス、ソレデ出来ヌコトハ仕方ガナイガ、会社ノヤウニ収益ガ明カニ分リ、ソレニ課スルコトニナツタナラバ実際上便利ナリ、租税ノ原則ニ照シテモ不都合ハナカラウト思ヒマスカラ、ドウカ別ニ設ケタイト切ニ希望スルモノデアリマス或ハ営業税中ニ分ケテ置クガ宜シイト云フ論モゴザイマスガ、ソレハ今五十二番ノ御説明ノ如ク之ヲ別ニスルト中ニ入レルトハ詰リ同ジコトデ、ソンナコトニハ頓着ナイ話デアリマスカラ、別ニ区劃ヲ明カニシテ万般ニ都合ノ宜シイ方法ニシタラ宜カラウト思ヒマス、依ツテ別ニ設ケルト云フ説ニ賛成ヲ致シマス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　唯今新井サンガ縷々御述ベニナリマシタガ、信用アル会社ニ等級ヲ付スルハ宜クナイ即チ会社ノ如キハ収益ヲ目的トシテ課スルガ宜シイト云フノハ自分等ノ意見ト同ジデアル、唯ダ違フトコロハ、会社税ト云フモノヲ別ニ制定スルト云フノト営業税法中ニ種別ヲシテ是レニ依ラシムルト云フノト、ソコガ違フノデアリマス、即チ此営業税法中ニ種別ヲシテ是レニ依ラシムルト云フ
 - 第22巻 p.113 -ページ画像 
ノト、ソコガ違フノデアリマス、即チ此営業税法中ニ会社ハ斯様斯様ニシテ簡明ナルトコロノ収益ヲ目的トシテ課税ヲスルト云フコトヲ明記シテ置ケバ一向差支ナイ話デアリマスカラ、別ニ会社税ヲ設ケナクテモ此営業税法中ニ種別ヲシテ置イタ方ガ却ツテ手数ガ掛ラヌデ宜イ要スルニハ目的ハ種別サヘ付ケバ宜シイノデアツテ、之ヲ別ニスル別ニセヌト云フコトニ力ヲ入レテ論ズルニハ及バヌ、自分ハ矢張リ会社組織ノモノハ此営業税法中デ種別スルコトニ致シタイト思ヒマスカラ此事ヲ申述べテ置キマス
○十二番（浜松、中村忠七君）　私ハ本案ヲ削除スルト云フ意見デゴサイマス、既ニ先刻来各員カラ種々ノ意見カ出マシタガ、大要今回ノ目的ト云フモノハ吾々営業税法ノ範囲内ニ於テ第一各税賦課ノ不権衡ヲ矯メルト云フノガ眼目デ、此今日ノ場合トシテ既ニ東京案ノ末項ニアル通リ「税率ハ現法ニ比シ徴税費ノ減ズル分量ニ応ジテ之ヲ軽減スルコト」トアツテ之ヲ吾々ハ大体ニ於テ是認シテ居ルノデアリマス、然ルニ唯今特ニ会社税法ナルモノヲ創定スルトカ、乃至営業税法ノ中ニ殊更ニ列記シテ此大体ノ目的ヲ阻害スルト云フコトハ私ハ宜クナイト思フノデアリマス、元来会社ナルモノニハ色々種類ガアルモノデ、少数ノ会社即チ有力ナル会社ノタメニ微細ナルモノヽ困難ト煩雑トヲ打捨テルト云フコトハ吾々商業会議所ノ聯合会トシテ頗ル不親切ナコトデハナイカ、私ハ大体ノコトニハ御同意ヲ表スルモノデハアルガ、今日唯今ノ会議ノ有様トシテハ已ムヲ得ズ此会社税法ヲ挿入スルコトニ反対ヲ致シマス、ソレ故ニ之ヲ削除スルト云フ説ニ賛成ヲ致シマス
　　　此時農商務次官金子堅太郎君ハ安藤商工局長、江口・中林ノ両属官ヲ随ヘテ入場セラル
○会長（東京、渋沢栄一君）　唯今農商務次官金子君ガ御出デニナツテ大臣ニ代ツテ一言御申述べ下サルコトガアルサウデゴザイマス……一寸御待チ下サイ……議事中デゴザイマスケレドモ、次官ガ大層御急ギノヤウデゴザイマスカラ大臣カラ御申聞ケノ主意ヲ拝聴スルコトニ致シマス
　　此時農商務次官金子堅太郎君ハ大臣ニ代リテ演説セラレ〔演説筆記ハ別冊報告書中ニ掲載ス〕
○五十二番（東京、中野武営君）　唯今農商務大臣ノ思召ヲ以テ懇切ナル御伝言ヲ拝聴致シマシタ、此条約改正ノコトニ就イテハ将来吾々ガ研究致サネバナラヌト云フ御諭シハ御尤ノコトヽ考ヘマス、謹ンデ吾吾ハ御諭シノ通リ研究ヲ致シタク考ヘマスガ、ソレニ就キマシテ私ハ尚ホ農商務大臣ニ御注意ヲ願イタイ事ガゴザイマス、又金子次官ハ条約実施準備委員ニ御任命ニナツテ居ラレマスカラ金子次官ニモ御注意ヲ願ツテ置キマスガ、ソレハ此条約改正ノコトニ就イテノミデナイ、総テノコトニ就イテヾアリマス、今日此商業会議所ガ聯合会議ヲ開イテ此急ガシイ中デ暇ヲ潰シテ協議致シテ居ルノハ何ノタメデアルカト云ヘバ、此営業税法ニ就イテ利害ノアル所ヲ研究スルガ為メ玆ニ集ツテ討究ヲシテ居ルノデゴザイマス、政府ハ斯ウ云フ営業税法ノ如キ実業家ニハ大変関係ヲ持ツモノニ対シテ、予メ実業家――商業家ニ諮問シテ下サレタナラバ吾々ハ政府ノ諮問ニ十分応ジラレルノデアリマス
 - 第22巻 p.114 -ページ画像 
国家ガ法律トシテ立テラレル以上ハ斯ウ云フモノハ前以テ少シデモ御諮問ニナツテ研究サセルト云フ途ヲ採テ下スツタナラバ、法律ノ出来マセヌ前ニ十分ニ研究ヲシテ幾分カ政府ノ御参考ニ供シ得ラルヽコトモアルデアリマセウガ、如何セン兎角自分免許ニナサル仕事ガ多イノデス、法律ニナツテ極マリ或ハ勅令ニナツテ極マツテ仕舞ウタ後デアルカラ、是レデハ困ルト云フヤウナコトデ、扨テソレヲ改正センカ、時期ガ切迫シテ困ルト云フヤウナ困難ヲ感ズルコトガ往々アルノデアリマス、現在今度ノ聯合会ニ於テモサウ云フ感ヲ吾々ハ持ツテ居ルノデアリマス、併シ改正セネバナラヌコトハ御改正ヲ願フテ、幸ヒニ御採用ヲ下サル時期モゴザイマセウガ、此条約改正ノコトノ如キ即チ外人ト雑居ノ暁ニハ外人ニ関係シマスルコトハ改正シタクモ改正ノ出来ヌヤウナコトガ、他ニ関係ヲ受ケテ居リマスル故ニ、或ハアリハセヌカト心配致スノデアリマス、ソレ故ニ唯今御諭シノヤウニ実業家ハ三ケ年間ニ研究スルノハ無論ノコトデアリマスガ、政府ニ於テ斯ウ云フコトハ改正セヌケレバナラヌ、或ハ外国ノ事例ガ斯ウナツテ居ルカラ斯ウ改正シナケレバナラヌト云フヤウナ御考ガアルトキニハ、世ノ中ニ発表スル前ニ吾々ニ御諮問下サレテ妨ケノナイ限リハ各地ノ商業会議所ノ意見ヲ御徴シニナツテ、ソレガ端緒ニナツテ心付クコトモアラウト思ヒマスカラ、ドウカサウ願ヒタイノデアリマス、御恥カシイコトデハアリマスケレドモ、実業家ハ日々ノ業務ニ追ハレテ居リマスカラサウ始終外国ノ事例等ヲ調ベテ置クノ、又日々寄ツテ研究スルノト云フヤウナコトハ言フベクシテ行ヒ得ラレヌコトデゴザイマス、ソレ故ニ政府ニ於カレマシテハ専ラサウ云フコトニハ御注意ニナツテ居リマスカラ、吾々ノ気付カヌ、及バヌコトヲ先ニ御承知ニナルニ違ヒナイ、実施シテ得失如何ト云フヤウナコトニ至ツテハ吾々ノ意見ト雖ドモ御参考ニナルカモ知レマセヌ、仰ギ願クハ種々重大ナ事デ御心配ニナツテ居ラルヽコトデゴザイマスカラ、農商務大臣ソレカラ金子次官ニ於カレマシテ将来此雑居準備ノ上ニ於テ斯ウモシタラ宜イト云フコトニナリハセヌカ、政府ハ斯ウ云フ見込デアルガ吾々ノ意見ハドウテアルカト云フヤウナコトヲ、妨ケガナイ限リハ、ドウカ御諮問下サイマスナラバ、所謂御望ミノ通リ官民一致ト云フコトモ、ソレヨリ出来テ来ルカト思ヒマスカラ、成ルベクサウ云フヤウナ方針ヲ御執リ下サルヤウ願ヒタイ、サウ云フコトニナツタナラバ実業家モ喜ンデ研究ヲシ、官民一致ノ実ヲ挙ゲルコトガ出来マセウト思ヒマスカラ、唯今ノ御懇諭ニ泥ミマシテ自分ノ希望ヲ述ベマシタ次第デゴザイマスカラ、宜シク……
○農商務次官（金子堅太郎君）　唯今ノ御演説ニ対シテ一寸一言申述ベテ置キマスガ、無論諸君ノ御意見ヲ伺ハナケレバナラヌコトガ是レカラ続々出テ来マスカラ、ソレ等ノ事ニ就イテハ政府ニ於テ前ニ調ベタモノモアリマスカラ、実業上ニ影響ヲ及ボスコトガ重大ナリト認メル場合ニハ、或ハ特ニ各地ノ商業会議所ニ書面ヲ以テ諮問ヲシテ御意見ヲ伺フコトモアリ、或ハ毎年一度大会ヲ御催シニナルトキニ諮問スルコトモアリ、又ハ諸君ニ於テ御考ノ付カヌコトヲ政府ニ於テ計画センナラヌコトガアツタ場合ニハ無論御通知ヲ致シマス、ドチラカラ先キ
 - 第22巻 p.115 -ページ画像 
ニ言ヒ出シテモ此事ハ国家ノ事業デゴザイマスカラ、政府モ努メテ及ブダケノ御便宜ヲ与ヘルヤウニ致ス考デゴザイマスカラ、左様御承知ヲ願ヒマス、今日ハ已ムヲ得ヌ用事ガゴザイマスカラ是デ御免ヲ蒙リマス
　　此時農商務次官金子堅太郎君退場セラル
○会長（東京、渋沢栄一君）　是ヨリ議事ヲ継続致シマス
○一番（静岡、北村五郎兵衛君）　本案ニ就キマシテハ幾分ノ御反対モアルヤウデゴザイマスガ、私ハ此東京商業会議所ノ案ニ徹頭徹尾同感デゴザイマシテ、其理由ハ既ニ五十二番ガ十分ニ御説明ニナリマシタカラ私ハ別ニ申シマセヌガ、詰リ此会社ナルモノハ、余程一個人ノ性質トハ性質ヲ異ニシテ居ルモノト思ヒマスルシ、又此営業税法ノ改正ト云フ上ニ於テモ之ヲ別ニシテ置ク方ガ最モ宜イト信ジマスカラ、原案ニ同意ヲ表シマス
○二十八番（堺、上林総三郎君）　本員ハ会社税ヲ此営業税法以外ニ置クト云フコトニ不同意デアリマス、其理由ハ先刻来色々御論モ出テ居リマスカラ私ハ贅弁ヲ省キマスガ、要スルニ之ヲ別ニ置イタトコロガ益ガナイト思ヒマスカラ、本員ハ矢張リ之ヲ除クト云フ説ニ賛成ヲ致シマス
○二十二番（富山、牧野平五郎君）　本員モ此会社税法ヲ置クト云フコトニ不同意デアリマス、先刻来段々御論ガゴザイマスガ、詰リ会社モ一個人モ利益金ニ課税スルト云フコトニナレバ別ニ営業税法以外ニ設ケルノ必要ハナイ、矢張リ均一ナル税法ノ下ニ立ツコトガ至当ト思ヒマス、最早論旨モ尽キタラウト考ヘマスカラ速ニ御採決アラムコトヲ希望致シマス
○有志会員（東京、佐久間貞一君）　唯今色々御説ガ出マシタヤウデゴザイマスガ、此会社ヲ特別ニスルト云フコトヲ省イテ矢張リ営業税法中ニ入レルト云フ説ガ大分沢山アルヤウデス、併シ其御説ニ依レバ矢張リ収入利益ヲ標準トスルト云フヤウデアリマスガ、之ヲ特別ニ設ケルト云フコトニ対シテ異議ヲ御唱ヘニナル御方ハ如何ナル御考デゴザイマセウカ、ソレヲ伺ツテ置キタク、私ガ考ヘマスルノニハ、是ハドウシテモ特別デナケレバナラナイト考ヘラレルノデアリマス、元来此法人ト私人ト云フモノハ成立上大ニ異ナルモノデゴザイマシテ、後ニソコニ大ナル影響ヲ生ジテ来ルノデゴザイマスカラ、反対ノ諸君ハドウ云フ御考ヲ持テ居ラレマスカ、ソレヲ一寸……
○四十七番（京都、中野忠八君）　四十七番ハ此東京商業会議所案ニハ賛成ナンデス、大坂ノ諸君ナリ其他ノ諸君ハ此営業税カラシテ特ニ離シテ仕舞ウト云フコトハ目的ヲ達スル上ニ於テ不便デアルト云フ御論ガアルヤウデゴザイマスガ、一向ドウモ解セヌ次第デ改正ヲ希望スル上ニ於テハ一ツノ法律ヲ改正スルニモ二ツノ法律ヲ作ルニモ矢張リ議会ノ協賛ヲ経ナケレバナラヌ、相当ノ手続ガアル訳デゴザイマス、会社ヲ特別ニスルガタメニ此改正ノ目的ヲ達スルコトガ出来ナイト云フ話ハ甚ダ解セヌ次第デアリマス、之ヲ別ケテ置クコトニナレバ最モ判然シテ至極宜シイト云フコトニ就イテハ、五十二番カラ尽サレテ居リマスカラ、本員ハ敢テ喋々致シマセヌ、京都商業会議所ハ東京案ニ賛
 - 第22巻 p.116 -ページ画像 
成ヲ表シテ置キマス
○十八番（栃木、桜井源四郎君）　十八番ハ原案ニ同意デゴザイマス
○二十一番（富山、関野善次郎君）　私モ此削除説ニ同意スルモノデゴザイマスガ、先刻ヨリ段々御説ガ出マシテ、今又佐久間君ヨリ反対ノ者ハ此一項ヲ削ルコトニ就イテ、会社ハ収益金ヲ標準トシテ課税スルト云フコトニハ同意デアルカ不同意デアルカ、果シテ不同意デアルナラバドウ云フ意見デアルカト云フ御質問ガ出マシタガ、私ハ或モノハ資本金ニ就イテ課税ノ目安ヲ取リ、或モノハ収入ニ就テ目安ヲ取ルト云フ考ヲ以テ居ルノデアリマス、之ヲ唯ダ特別ニスルト云フコトニ就イテ反対スルノデ、収入益金云々ト云フコトニ就イテハ反対ヲシナイノデアリマス、矢張リ収入ト云フコトニ改正ヲシタイ考デアリマスカラ、一応述ベテ置キマス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　私ハ先刻佐久間君ノ御質疑ノ点ヲ聴キ洩シマシタガ、ドウ云フ……
○有志会員（東京、佐久間貞一君）　詰リ反対ナサル御方ハ此営業税法以外ニ会社税法ヲ創定スルト云フコトニ就イテ反対ヲナサルノデアリマスガ、ソレハ何ニ依ツテ徴税ヲスルト云フ御見込デアリマスカ、収入利益ヲ標準ニシテ取ル方デアルカ、資本金ヲ標準トシテ取ルノデアルカ、個人ノ営業ト会社組織ノモノトハ性質ガ違フモノデアリマスカラ、ソレヲ一緒ニシテ置クト矛盾スルコトニナル、啻ニ矛盾スルノミナラズ自家ノ営業ハ課税ノ標準ガ別ニナルカラ――自家営業ハ随分資本ノ運転デ資本額ニ増減ガ出来ル、会社営業ハ四分ノ一ナラ四分ノ一ヲイキナリ払ヒ込マナケレバナラヌカラ、其場合ニ於テハ利益ガナクツテモ、ドウシテモ、資本金ヲ標準ニスルト云フコトニナレバ取ラレルヤウニナルノデス、是レハ迚モ当テ箝ラナイ話ダト思ヒマス、サウ云フ時ノ御考ハドウスル御考ヲ持テ此削除説ヲ御出シニナツタノデアリマスカ、資本金ヲ標準トスルノデアリマスカト云フコトヲ……
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　自分ノ考ハ之ヲ削ルト云フ精神ハ即チ会社ハ会社収入ノ利益ニ課スルト云フ意見デアリマス
○九番（金沢、山田清三君）　私モ削除説ヲ提出シテアリマスガ、私ニ於テモ利益ヲ標準トシテ課スルト云フ意見デアリマス、我ガ金沢商業会議所ノ意見ハ其二ニ至ツテ意見ヲ述ベル積リデゴザイマスガ、金額ト云フコトモ収益金ト改メタイ意見デス、ソレハ後ニ至ツテ意見ヲ提出シマス、此場合利益金ニ賦課スルコトニ就テハ反対ハシナイガ、之ヲ削除シテ、別ニ設ケル必要ハナイト思ヒマス
○二十六番（神戸、岡田元太郎君）　ドウカ二十六番ハ御採決ヲ願ヒタイト思ヒマス、色々御説ハ出マスケレドモ御論旨ハ変ハルトコロハナイト思ヒマスカラ、速ニ御採決ヲ願ヒマス
　　　〔「採決、採決」ノ声起ル〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　此第二営業税法改正ノ要領ノ「其一、営業税法以外別ニ会社税法ヲ創定シ、会社組織ヲ以テスル営業ハ総テ同法ニ属セシメ、会社収入ノ利益ヲ標準トシテ相当ノ課税ヲ為ス事」トアルノヲ之ヲ削除シヤウト云フ御意見ノ中ニ、大同小異若クハ大同大異ト云フ御説ガゴザイマスガ、九番・四十一番・三十七番ナドノ御説
 - 第22巻 p.117 -ページ画像 
ハ兎ニ角之ヲ取除ケヤウト云フ御動議デ、是ガ各々御賛成ガアツテ成立ツテ居リマスカラ、ソレニ対シテ採決ヲ致シマス、九番ノ之ヲ取除クト云フ御説ニ御同意ノ御方ノ御起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数ト認メマスル、ソレデハ……
　　　〔「少数、少数」、又「多数、多数」ト呼ブ者アリ、議場騒然〕
○会長（東京、渋沢栄一君）然ラバ已ムヲ得ズ点呼ヲ致シマス賛成ノ御方ノ方カラ……
　　　〔書記氏名ヲ点呼ス〕
　　五番・六番・七番・八番・十番・十一番・十二番・十三番・十四番・二十一番・二十二番・二十四番・二十八番・二十九番・三十番・三十四番・三十五番・三十七番・三十八番・四十一番・四十二番・四十三番・四十五番・四十六番・四十九番
○会長（東京、渋沢栄一君）　サウスルト一名ノ多数――総員五十二名ノ中五十一番ノ私ガ抜ケテ欠席者ガ七名ゴザイマスカラ、詰リ四十四名ノ御着席ノ中二十三名ガ削除説ニ賛成デゴザイマス、サウスルト一名ノ多数テ削除説ニ決シマシテゴザイマス
○二十一番（富山、関野善次郎君）　今日ハ是デ散会ヲ希望致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　如何デゴザイマス、御休ミニナリマスカ
　　　〔「賛成、賛成」ノ声起ル〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ今日ハ是デ散会ヲ致シマス――ソレデ一寸明日ノ御都合ヲ御諮リシマスガ、明日ハ甚ダ相済ミマセヌガ二時カラノ開会ニ願ヒタウゴザイマス、予テ御話申シテ置キマシタ日本銀行縦覧ノコトハ土曜日デアツテモ差支ナイト云フコトデゴザイマシテ、十時頃カラ御出ヲ戴ケバ御目ニ懸ケラレルト云フコトヲ答ヘラレマシテゴザイマスカラ、ソレヲ御覧ニナツテ御昼飯ヲ済サレテ御緩クリ此処ヘ御出デヲ願ヒマス、実ハ一時カラ開会ヲ致シタイノデゴザイマスガ、私ノ身体ニ午後一時ニ余儀ナイ差支ガゴザイマシテ是非出席ヲ致サナケレバナラヌ所ガゴザイマスカラ、一時間ダケノ御猶予ヲ願ツテ二時カラ開会ト云フコトニ願ヒマス、左様御承知ヲ……
　　午後二時五十分散会

明治二十九年十一月二十一日午後三時開議
　　出席委員　　　　　四十二名　○氏名略
○会長（東京、渋沢栄一君）　会議ニ先チマシテ一応御報道ヲ仕リマスコトガゴザイマス、此程御報道致シテ置キマシタ横浜商業会議所ガ御出席ニナルヤ否ヤト云フコトヲ御照会申シテ置キマシタガ、此度ハ何分罷出テ兼ネルト云フコトニ今日御通知ニナリマシタ、尤モ書記長ノ飯田旗郎君ガ傍聴ヲ致シタイト云フテ本会ニ参会デハゴザイマスガ、傍聴ノタメニ出席致サレマシタ、今一ツ申上ゲマスガ、富山商業会議所・高崎商業会議所・博多商業会議所ガ今御論ジニナツテ居ル議案ニ就イテ御意見ガ提出ニナツテ居リマスケレドモ、印刷ガ如何ニモ差支ヘテ居リマシテ、昨日来至急ニ迫リマスガ一夜ニ直グニヤルト云フ訳ニ行カヌサウデス、依テ唯今御手許ヘ呈スル訳ニ往キマセヌ、今校合
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摺リヲシテ翌日デナケレバ出来ヌト云フコトデゴザイマス、併シ今此案ハ議シツヽゴザイマスカラ御意見ガ此議場ニ紹介サレテ居ラヌト云フコトハ不本意デゴザイマスカラ、止ムヲ得マセズ玆ニ要領ヲ摘ンデ三会議所カラノ御意見ヲ朗読致サセマスヤウニ仕リマスデ、御聞取リ下サルコトヲ希望致シマス

○会長（東京、渋沢栄一君）　三会議所カラ提出セラレテ未ダ印刷ニナラヌ御意見ノ要領ハ今朗読致シマシタ通リデゴザイマス、左様御承知ヲ下サイマシ、是レヨリ開会ヲ致シマシテ昨日ノ議案ノ続キ、其二ヲ議事ニ附シマスヤウニ仕リマス
○五番（長崎、松田源五郎君）　少シ本員ノ請求ガゴザイマス、其二ヲ通ジテヤルト云フコトニナリマスト随分御説ガ諸方ニ渉リマシテ錯雑致シマセウト考ヘマスカラ、其中一、二ヲ分ツテ議セラレタ方ガ宜イ
○会長（東京、渋沢栄一君）　別ニ御異議ガゴザイマセネバ五番ノ御請求通リニ致シマセウ
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　唯今会長カラ其二ヲ議スルト云フ御話デゴザイマスガ、昨日此原案ノ会社税法ヲ別ニスルト云フ其事ハ否決ニナリマシテ、サウシテ此会社ト云フモノガドノ項目ニ入ルカドウスルカト云フコトハ未ダ一向皆サンノ御意見ヲ聞カヌヤウデゴザイマスガ、是カラ一ツ御極メ下サツテ、サウシテ其次ニ議事ニ移ツテ致シマセヌケレバ、少シク本員ハ未ダ分ラヌ所ガゴザイマスカラ、一寸一言……
○四十一番（大阪、亀岡徳太郎君）　一個人ノ営業ニ対シテハ左ノ方法ニ依リ相当ノ課税ヲ為ス事、斯ウ云ヒマスル物品販売業、右ハ売上金額（卸売ト小売トヲ問ハス）ヲ課税標準ト為ス事、斯ウゴザイマスルト御趣意ヲ解シマスルニハ売上金額ヲ課税標準トスルト云フノデアリマスカラ、現法ト此処ノ処デハ余リ御趣意ハ異ナツテ居ラヌノデゴザイマスガ、ズツト率ノ改正ヲ希望スルト云フ御趣意ガ相当ト云フ文字ノ中ニアルノダラウト思ヒマスガ、併シ相当ト云フ文字、相当ハ即チ何等デゴザイマスルカ、是デドウ希望スルト云フノカ今度ノ御趣意ダラウト思フ、御差支ガナイノデゴザイマスレバ一ツ御漏シヲ願ヒタイ吾々モ少々此点ニ至ツテハ考ヘヲ付ケテ居リマス、先ヅ原案ノ御趣意ガドウナリマスカ一ツ承リマシテ、而シテ意見ヲ提出シタイ
○五十二番（東京、中野武営君）　此趣意ハ物品販売業ハ夥シイ種類ノアリマスコト故ニ、一々其種類ヲ玆ニ挙ゲマスルコトガ出来得ラレマセヌ、夫故ニ物品販売業トシテアリマス、サウシテ此物品販売業ト云フモノハ何ヲ目安ニ立テルカト云ヘバ売上金額ト云フモノヲ標準目安ト致ス、夫カラ其標準目安ヲ以テ等級ト云フモノヲ玆ニ立ツル、其等級ニ依ツテ一等ハ幾許、二等ハ幾許ト云フ税額ヲ定メル、斯ウ云フ仕組ニシタイト云フ希望ナンデゴザイマス、其一等ト云ヒ二等ト云ヒ三等ト云ヒ十数等ニナルカ、其営業ノ種類ニ依リマシテ色々アラウト思ヒマス、サウシテ一等ト云フモノナラバ何ノ営業モソレガ一等税ヲ納メルカト云ヘバ決シテサウ云フコトニ行カナイ、即チ一例ヲ挙ゲテ申スト呉服営業ト云フモノガ玆ニアルトスレバ呉服営業上ノ一等・二等
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三等、夫レカラ数等ノ等級ヲ設ケマス、其呉服商ノ一等ト云フモノハ何円以上ノ売上高ノアルモノヲ一等トシ、何円以上ノモノヲ二等トスル、斯ウ云フヤウニ段ヲ付ケル、サウシテ此税額ト云フモノヲ定メテ参リマス、斯ウ云フ仕方、ソレ故ニ呉服商ノ一等ト云フモノガドレ程ニナリマスカ、仮リニ例ヘテ申シマスト、五百円ナラ五百円ト云フモノガ一等ノ税デアルトカ、四百五十円ガ二等ノ税デアルト云フヤウニ又其外ノ営業是レ程売上高ガ大キクナイ商売柄ガアリマスレバ、ソレハソレニ依リマシテ一等ノ売上高ト云フ者ハナンボ以上ノ者ヲ一等トスルト云フコトニシテ参リマスト、業体ニ依テ種々其業体ヲ分ツテ参ラヌケレバナラヌ、種々ニ其業体ヲ異ニシテ居ルニ応ジテ等級ヲ別ニ立テマス、其部分々々々ニ依テ売上高ヨリシテ当然生ジマスル処ノモノノ利益トイフ所ノ云フモノハ凡ソ対照シテ見ラレルト、品柄ニ依リ商売柄ニ依リマシテ、売上高ノ声ハ大キクナリマシテモ其利益ヲ得ル割合ニ少クナイ商売柄ガアリマス、之レニ反シテ売上高ノ割合ハ少ウゴザイマシテモ利益ノ多イ業体モゴザイマス、ソレ等ハ其営業柄営業柄ニ応ジテ能ク初メニ調査ヲ致シテ、サウシテ宜キ処ノ等級即チ等級ニ応ズル売上高ノ比例ヲ立テ、サウシテ其比例ヨリ税金ノ割合ヲ定メルヤウニ致シタナラバ余程適当ナモノガ出来ルデアラウ、斯ウ云フ考デゴザイマス、是レ迄世ノ中ニ現ハレテ居ル所ノ営業者ハ夥ウゴザイマスヤウデゴザイマス、即チ収益上抔ニ於キマシテモ取調ハ入用デゴザイマス、又ソレ等ハ即チ従来各地方ノ営業税ト云フモノヲ地方税ニ徴収致シタ所ノ例ガ沢山アル、ソレニ基イテ種類ヲ分ツテ居リマスル訳デゴザイマス、ソレ故ニ斯ノ如キ方法立ニ組立テ行クガ宜イト云フ寸法ヲ極メマシタナラバ、ソレニ応ジテ種類々々ノ区別ハ従ツテ立ツダラウト私ハ信ズル、ソレ故ニ今此際ニ細カクシテ一種類毎ニ等級迄ヲ分別致シテ建議ヲ致ス必要モアリマスマイト存ジマス、先ツ大体斯ウ云フ方法ニスベキモノデアル、斯ウシタナラバ宜キヲ得ルモノデアルト云フ方法ヲ意見トシテ出シマスレバ、其項目ニ至ツタナラバ或程度此法ニシテ行ケルナラ宜シカラウ、政府ガ之ヲ採ル場合ハ之ヲ細別シテ此方法ニ基イテ区別ヲ立テマスルコトハ難キ業デハナイト私ハ思フソレ故ニ政府ニ対シテハ此方立ト云フモノヲ示スニ止メテ置イテ宜カラウト、斯ウ云フ考デ簡単ニ斯様ニ致シタノデアリマス
○四十一番（大阪、亀岡徳太郎君）　詳細承リマシテゴザイマスガ、要スルニ唯今御弁明下サイマシタコトハ詳カニ原案ニアル所ヲ御敷衍ナサツタト云フコトニ止マルデアラウト思フノデゴザイマス、自分ガ考ヘマシタ税率ガ見ヘマセヌガ、ソレハドウナサルカト云フコトデゴザイマス、其方法ニ至ツテハ斯ノ如ク細ヤカニ予メ承知ヲ致シテ居ルノデゴザイマスデ、実ハ此案ノ方ニ依リマスルト大変煩雑極ツタモノダラウト思フ、原案ノ御趣意デゴザイマスト、税ヲ取リ易クシテ徴税費ヲ省イテサウシテ減税ヲ希望シヤウト云フ御趣意ニ対シテ、煩雑ヲ玆ニ掲ゲタモノデアラウ、如何トナレバ唯今御話ニナリマシタ此一等・二等・三等・四等ト云フノハ何等ニ御分チデゴザイマセウカ、東京ノ一等《（脱アルカ）》ガ何等ニ位スルカ、大阪ノ一等ガ名古屋若クハ長崎ヘ持ツテ行ツテ何等ニ位スルカ、各地方デ各等級ヲ付ケル事トナリマスレバ兎モ角
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モ、何処モ同ジヤウニ其土地土地ノ人情ガ異ツテ居リマスカラ私ハ一様ニ行カナカラウト思フ、尤モ費用ヲ負担シマスル地方税ノ如キハ、今日大阪ノ現法ニ依リマスト収入金額ニ依ツテヤツテ居リマス、京都ハドウナツテ居ルカ、東京ハドウナツテ居ルカ、各違ツテ居リマセウ是ハ地方税ノ全国ノ賦課法ニ依テ見マシタナラバ至極明カナ訳デ、之ト一様ノ性質ヲ持ツテ居ルダラウト思フ、之ヲ何処デモ一等ト極メラレテ、東京ノ一等ヲ以テ大坂ニ当テ之ガ適当スルカ、大坂ノ一等ヲ長崎ヘ持ツテ往ツテ之ガ一等ニ適当スルカ、斯ウ云フコトガアラウト思ヒマスカラ、サウ云フ御定見モナクシテ、唯調査委員ニ於テ調ヲサソウト云フコトハ甚ダ私ハ難イコトタラウト思フ、要スルニ私ハ此修正ヲ持チ出シマセウ、物品ノ販売業ニ対シマシテハ卸小売ヲ問ハズシテ――実ハ大坂カラ提出致シマシタ意見書ニモゴザイマス通リ、大坂ハドウ云フ考ヲ持チマシタカト申マスレバ、矢張リ利益金ニ課税ヲ致シタイト云フ説ヲ主張致スモノデゴザイマス、併シ此説ハ利益ト云フニ対シテハ大体ノ帳簿ニ依テ見マシテ、収入即チ売上金此原案ニ依リマシテモ此売上金ト云フコトガ目的ニナツテゴザイマスノデ、之ハ何方ニ設ケマシテモ止ムヲ得ン場合ニナレバ、其税率ノ如何ニアラウト思ヒマスカラ、若シソレヲ要シマセヌト云フ説ガ多数デゴザイマスナラバ、或ハ此議ヲ変ジマスカモ知レマセヌガ、先ヅ大体原案ニ基キマシテ売上金高ト致シマシテ、益金ト云フコトハ第二ニ廻シマシテ、先ヅ此収入金カ売上金額ヲ標準ト致シマシテ、卸小売ヲ問ハズト云フ所ハ唯原案ノ通リデゴザイマスガ、率ニ至リマシテハ万分ノ五ト致シタイソレカラ建物ノ税ト云フコトハズツカリ御免ヲ蒙リタイ精神ヲ持ツテ居ルノデゴザイマス、ソレカラ従業者ト云フ者ニ対シテハ是モ稍随分課税ノ上ニ就キマシテモ煩雑ナ税デゴザイマスカラ、実ハ削除致シタイト云フ精神ハ万々持ツテ居リマスケレドモ、サウ悉ク之ヲ取ルト云フ訳ニモ行クマイト思ヒマシテ従業者一人毎ニ一円、ソレカラ丁稚・小僧・下婢ノヤウナ部分ニ至リマシテハ区別ヲ付ケマシテ減シタイト云フ精神ナンデ、此減ズルト云フ上ニ就キマシテモ此本案ノ上デハ活版業トカ印刷業トカ云フモノハ幾分カ減ジテゴザイマス例ガゴザイマスカラ、先ヅ此処ラ辺ニ拠ルベキモノデゴザイマセウト思ヒマスカラ其点ニ至リマシテハ能ク協議ヲ致シマシテ、大体此丁稚・小僧・下婢ト云フヤウナモノヲ同一ニシナイト云フ精神丈ケヲ一ツ此処デ先ヅ持ツテ議決シタイト云フ考ヘヲ持ツテ居リマス、デ大体此事ハサウ永ラク弁ジマスル必要モゴザイマセズ、皆サンガ大体此事ハ御脳裡ニ御在リナサル趣意デゴザイマスカラ、卸小売ヲ問ハズシテ売上金高万分ノ五、従業者一人毎ニ金一円、丁稚・小僧トカ下婢トカ云ヒマシタ所ガ甚ダ制限ノナイコトニナリマスト是又煩ハシイコトデアラウト思ヒマスカラ、年齢ノ範囲デモ極メテ先ヅ汽車賃ガ十三歳以下ノモノハ半価ダトカ、何歳以下ノモノハ無賃ダトカ云フコトモゴザイマスデ、之ヲ能ク協議ヲ致シマシテ十五歳以下ノモノハ三十銭ニスルトカ、五拾銭ニスルトカ、十五歳ガ行ケナケレバ七歳・八歳デモ宜ウゴザイマセウ此等モ議論ガ分レマスト議事ノ纏メヤウニモ困ラウト思ヒマスカラ、自分ノ考デ卸小売ヲ一ツトシテ仕舞ツテ万分ノ五トシ、建物ニハ税ヲ
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課サナイコトニシテ、従業者ダケハ之ヲ一円トシテ、丁稚・小僧・下婢ニ至ツテハ年齢ニ制限ヲ立ルカ或ハ減税シタイ、斯ウ云フ考ヲ持ツテ居リマスカラ、尚ホ前ニモ述ベマス通リ先日来当会議所ニ廻付シマシタ意見書デハ益金ヲ以テ課税致シマスル所ハ希望スル所デハゴザイマスケレドモ、大体当会議所ノ御調モ売上金高ニナツテ居リマスカラ余リ分レルコトハ好マシクナイノデゴザイマスカラ、右様ニシタイノデゴザイマス
○五番（長崎、松田源五郎君）　私ハ唯今御説ガ出マスニ就テ、先決問題トシテ此原案ノ第四ノ項ニ取ル所ノ賃貸価格ヲ除クデアルカ除カヌデアルカ、従業者ト云フモノハ課スルモノデアルカ課セヌモノデアルカト云フコトヲ先決問題トシテ御採リ下サレンコトヲ望ムノデゴザイマス、サウ致シマセヌト各項ニ皆分ツテ居リマスカラ、果シテ除クト云フコトニナリマスレバ最早賃貸価格ト云フモノハ第四ノ貸席業・料理店業・旅人宿業ニ限ルト云フコトニナツテシマイマスカラ、従業者モ従ツテサウ云フコトニナル、先ヅソレハ先ニ決セラレンコトヲ望ムノデゴザイマス
○九番（金沢、山田清三君）　第一項ノ売上金額ト云フコトヲ収益金額ト修正致シタイ、其理由ハ売上金額ト云フコトニナリマスルト販売業ト云フモノハ幾多ノ種類ノアルモノデ、其種類ニ依ツテハ或ハ利益ノ多イ商業モアルデス、又利益ノ薄イ商業モアル、サウシマシテ売上金額ト云フコトニナリマスト、利益ノ多イ商業ハ大ニ幸福デアルケレドモ、利益ノ薄イ商業ニ至ツテハ誠ニ不幸ヲ来スト云フコトニナツテ、公平ヲ保タヌヤウニナル故ニ、之ヲ収益金ト改メタイ、収益金ト云フコトニナリマスト此収益ト云フコトハ中々調ベモ混雑ヲスル、又正当ナ調モ出来ヌト云フ或論者モアルデゴザイマセウケレドモ、或ハ此当業者ヨリ申告サセルコトニシマスレバ、敢テ売上金ヲ申告サセルノモ収益金ヲ申告セサルノモ不当ハアルマイト考ヘル、ソウシマシテ収益金トナルコトニナレバ、卸売小売ヲ問ハヌデモ宜イ話ニナル故ニ、此処ハ論スル迄モ入ラヌコトデ、本員ノ考ヘデハ収益金ト之ヲ改メタイソレカラ従業者・賃貸価格ト云フコトハ皆廃スルノ意見デス、ソレカラ税率ニ至ツテハ本案ノ通リ矢張リ等級ヲ以テ定メタイト云フ意見デス、等級ヲ以テ定メ、其等級ト云フモノハ何等ニ分ツト云フコトハ立マセヌガ、数十等ニ分ツテモ宜イ、併今五十二番ノ述ベラレル如ク各商業ニ至ツテ等級ヲ定メルト云フ意見デハナイ、金額ヲ以テ定メルト云フ意見デス、収益ヲナンボ得ルモノヲ二等トスト云フ意見デス、サウシマスルト東京ノ呉服商ガ一等デモ田舎ノ呉服商ハ二十等ニナルカ何ダカ分ラヌ、故ニ金額ヲ以テ或ハ壱万円収益ノアルモノヲ一等トスルガ、東京デハ一等ガアツテモ田舎ニ行ツテハ一等ガアルカナイカ分ラヌ、サウ云フヤウニ改メタイ
○二十六番（神戸、岡田元太郎君）　二十六番ハ五番ニ賛成致シマスルモノデゴザイマスガ、議事ノ順序デハドウゴザイマスルカ存ジマセヌケレドモ、ドウ致シマシテモ五番ガ述ベラレタヤウニシテ戴キマス方ガ捗取カ宜カラウト考ヘマス、皆各々取調ベラレタ上ニ於キマシテハ自分ノ考ヘタヨリハモツト他ニ優ツタモノハナイ位ノ考ヘガアツテ、
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容易ニ纏リハ付クマイト思フ、要スル所ハ今五番ノ述べマシタ所ナドハ所謂大キク分チマスレバ是ニ依テモ宜シイト考ヘマスカラ、先ヅ大別シ易イト云フ所ニ依テ御議決ヲ下サルガ議事ノ捗取ガ宜シイ、或ハ一次会トカ二次会トカ云フ議事ノ規則上カラ申セバドウカ知リマセヌケレドモ、ドウカ臨機ノ処分ヲ願上マス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　私ハ遅参ヲ致シマシタガ、唯今迄ノ御説ノ要領ヲ簡単ニ承ルコトガ出来マセウカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　今丁度第二ノ項目ノ其二カラ議サウト云フコトニナリマシテ、或ハ二カラ三、四ト通ジテ議スルカト云フコトニ就イテ、先ヅ一ツ一ツニ議スルガ宜シイ、其二ノ一カラ議サウト斯ウ云フコトニナリマシタ、所ガ今売上高ト云フコトニ就イテ四十一番カラ原案者ノ意見ヲ御尋ネガゴザイマシタ、ソレニ対シテノ説明ガアツタノデゴザイマス、等級税ニスルハ斯ウ斯ウ云フ方法ニシヤウト云フコト、全体ニ対シテ総体課税シヤウト云フ所カラ此等級ガ挙ツテ来タ所デ、其等級ニ相当ナル割付ヲスルコトハ此方法デ出来ヤウト思フカラ、此売上高万分ノ四トカ五トカ云フコトヲ定メヌデモ此ノコトハ出来ヤウト云フ説明ガアツタ、併シナガラ其等級税ハ煩雑デアラウカラ等級税ハ止メテ物品販売ニ対シテハ売上金ヲ標準トシ、率ヲ万分五ト為サントノ御説ガ出マシタ、然ルニ九番ハ等級税ハ宜シイト思フ、五十二番ノ説ガアルケレドモ矢張リ売上金額デ等級ヲ立テルト云フトマギラハシイ恐レガアラウト思フカラ総テ収益金額デスル、斯ウ云フヤウナ御説ガ出タノデアリマス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　左様デゴザイマスカ、其以下ハ拝聴ヲ致シマシタ
○四十三番（八王子、吉田忠右衛門君）　四十三番ハ卸売ト小売トヲ問ハズト云フ東京案デゴザイマスガ、ソレハ等級ヲ御設ケニナリマシタナラバ或ハ一等ガ百万円テアル、二等ガ五拾万円デアルト云フ時分ニハ、一等ノ方ガ幾ラカ税率ヲ安クシテ二等ノ方ハ幾ラカ高クスルト云フ御方針デゴザイマスカ、サウシマスルト権衡ヲ得タモノデアルガ、小売ト卸売トヲ一緒ニスルコトヽスルト、或ハ不公平ニナラウト思フ併シ此地方ニ依ツテ分ケルコトハ到底出来得ベカラザルモノデアル、何処マデモ或ハ百万円ハ一等デアル、五拾万円ハ二等デアル、卅万円ハ三等デアル、其税率モ一等モ十等モ同ジ課税ヲスルト云フコトニナルト権衡ヲ得ルダラウト思マスガ、ソレヲ伺ヒマス、此等級ヲ別ケルコトハ誠ニ結構デゴサイマス、ソレカラ九番デゴザイマスガ、収益ト云フ説デスカ、本年ハ三割モアルケレドモ来年ハ些トモナイト云フコトガ往々出来ルト云フコトデアリマスガ、シテ見ルト少シク公平ヲ失フカモ知レマセヌガ、是ハ売上デ取ラナケレバナラヌ、ソレカラ四十一番デゴザイマシタカ、下婢・飯炊抔ハ納税ノ義務ハナイモノダラウト考ヘル、ソレカラ四十三番ノ考ヘデハ賃貸価格ト云フモノハ悪ウゴザイマス、是ハ全廃ヲ希望シマス、ソレカラ従業者ニ就テ四十三番ノ希望ハ十七歳以上ハ現法ヲ可トスル、十七歳以下ハ之ヲ半額トスル、ソコデ東京案ガ等級ノ区別ガ付イテ段々減税ニナルノデゴザイマスレバ是ハ至極結構ト思ヒマス
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○五十二番（東京、中野武営君）　唯今ノ御質問ニ御答ヘ申ス前ニ、四十一番ノ御説ニテ等級ノ事ニ渉ツタ廉ガゴザイマシタ、又九番ノ御説モ等級ノコトニ就イテ御論ガアツタ、ソレ是ヲ併セテ私ハ申シマシタナラバ四十三番ノ御尋ネニ答ヘルコトモ同様ナコトニ相成ルデアラウト思フ、等級ハ各地方各別ニ立テルコトハ出来マセヌ、国税デゴザイマスカラ、ソレ故ニ売上金額何程以上ヲ一等トシ、何程以上ヲ二等トスト云フガ如ク、等級ハ金高デ目安ヲ付ケル、ソレ故ニ全国一等・二等・三等ト云フモノガ同様ニナル、即チ東京ノ呉服商ニ一等ハアルガ外ノドコソコニハ一番多イノハ三等ニ当ル、斯ウ云フコトニナル、必ズ一県下丈ケニテ一等カラ数等ニ区別シナケレバナラヌト云フコトハナイ、サウ致シマセヌト国税ノ不利ダト考ヘル、又サウ致シマスノガ公平ヲ得ル所以ナノデゴザイマス、サウ致シテ卸売・小売ヲ問ハヌ、今ノ上ノ方カラ下ノ方ヘ往ク程厚クスルカ薄クスルカト云御尋ネデゴザイマスガ、全体此方針ハ前ニモ弁明ヲ致シマシタ通リ種々ナル営業ノ種類毎ニ等級ノ金額ト云フコトヲ拵ヘルノデゴザイマス、是レガ却テ宜キヲ得ルノデゴザイマス、ナゼナラバ何々問屋、何々問屋、営業ノ等級ニ依ツテ其営業者ガ何等ノ営業ニ当ルカ、何等ノ売上金額ニナツテ居ルカト云フノニ対シテ見込ンデ参リマスカラ、其営業中デ納税ノ額ニ依ツテ参リマス故ニ、結局ノ所ハ収益ト云フコトニ適当スルコトニナルノデゴザイマス、外ノ種類ト此種類ヲ混合スルカラ往ケナイ売上高ハ多クテモ利益ノ薄イ営業ガアル、又売上高ハ少ナクテモ利益ノ多イ営業ガアル、ソレヲ対ナコトニスルト往ケマセヌカラ、其営業ニ依ツテ等級ヲ設ケル、四十一番ハソレハ繁雑ダト云フ御論デゴザイマスガ、繁雑デハナイノデゴザイマス、法ヲ立テマスル時分ニサウ云フモノヲ当業者ニ渉ツテ、其営業ト云フモノハ此位ノモノデアル、斯ウ云フ訳ノモノデアルト云フコトヲ見定メマシテソレデ一等カラ何等マデノモノヲ組立テヽ往ク、是ハ法ヲ作ル上ニ於テ随分協議ヲ要シマスケレドモ、其鋳型ト云フモノガ出来タ以上ハ何営業ヲシテ居ルカラ此位ノ売上高デアル、サウスレバ此者ハ何等ニ組込ンデ宜シイト云フコトヲ実施スルノハ頗ル仕易イ、法ヲ立ツルノニハ、宜シク実地ニ当リマスヤウニ組立テヽ致シマスコトハ当然ナ話デゴザイマス、併シ法ヲ組立テルノニドウ云フ営業ノ組立ニナツテ居ルカト云フコトヲ見テモ、実際ト云フモノハ活キテ居ルノデアルカラ、死物デナイカラ、此実際ノモノヲ捕ヘテ掛ラウトシタ所ガ、同ジ営業者デモ人々ノ仕方デ違フ、ソレ故ニ実際徴税ヲシマスルノデ、甚ダ現法ハ繁雑ナト云フ所以デゴザイマス、右様申上ゲマスル如ク法ヲ立テマシタナラバ――法ヲ立ツルニ鄭重ヲ尽シテスルニ於テハ甚ダ簡単ナ手続デ以テ出来マスル、又九番ノ御説ノヤウニ、一列ニシテ仕舞フテ営業税ハ一等カラ何等マデト云フ等級ヲ立テヽ、何ノ営業モ対ナモノニ見做シテ立ツルコトハ矢張リ現法ニ異ナラヌ混雑ガアルデアラウト思フ、同ジ商売デアルカラ比較ト云フモノガ見易イノデアル、三井呉服屋ハドウデアルトカ、白木屋ハ三井ニ対シテドウデアルトカ、同ジ呉服屋ナラバ同ジ営業者ノ中デ分等ヲ立テヽ往クカラ、当ラズト雖モ遠カラズト云フ当箝メガ出来テ往キマスカラシテ、此人ハ何等ニ当ルト云フコトハ甚ダ混
 - 第22巻 p.124 -ページ画像 
雑ヲ来タスコトハナイ、ソレカラ又趣意ニモ書イテゴザイマス通リ、何業ノ一等、何業ノ二等ト斯ウ云フ等級ヲ定メラレタ以上ハ、其営業者ガ銘々他ノ同業者ト比較ヲ考ヘテ見テ、アレガ一等ニナルベキモノナラバ私モ一等ニナルベキデアル、二等ナラバ二等ト銘々暖簾ト云フモノハ名義ヲ惜ミマス、ドノ営業者ノ何等ヤラト云フ区別ガゴザイマセナンダ時分ニハ、ソレ等モ望ミヲ失フテ仕舞フノデゴザイマス、ソレヤコレヤノ工合ヲ以テ納メル人間モ満足シテ、納メル手数モ省ケテ公平ヲ得ルト云フヤウナコトニ組立テヽ参ラヌケレバナラヌト云フ考デ此原案ハ出来タノデゴザイマス、之ヲ申上ゲマシタナラバ四十一番九番及ビ唯今ノ御尋ネニモ当ルダラウト思フ
○四十四番（八王子、平林完兵衛君）　私ハ大体ニ於テ此案ニ賛成シテ居ルモノデゴザイマスガ、ソレデ今一寸五十二番ノ御説明ニ依リマスト云フト、成ル程営業ノ種類ヲ別ケテ等級ヲ附ケナケレバ公平ナモノデナイト云フ御話モゴザイマシタガ、尤モソレガ公平ノヤウニモ思ワレマスケレドモ、去リナガラ地方ニ依リマスルト中々一種バカリノ業ヲ盛ンニヤルト云フヤウナモノデナイコトモ随分アラウト思フ、先ヅ呉服ノ方デハ一等ニ位スルケレドモ自分ノ家デ扱フ所ノ肥料ハ二等デアルト云フヤウナコトデアルト、詰リ繁雑ナコトハ免カレヌ、サウ云フヤウナ場合ニ往キマスト唯ダ金額ノ等級ヲ以テスルト云フ方モ随分至当ナヤウニモ思ハレマス、去リナガラ何方カラ云ツテモ至極公平ト云フモノハ得ラレナイモノデアリマスカラ、先ヅ其中デ成ルベク公平ニ近イヤウナ精神ヲ以テ建議ヲ致シマシタナラバ、其辺ハ又立法者ノ考ヘモゴザイマセウ、各種類ノ営業ヲ百ニモ分ケレバ五十ニモ分ケル十ニモ分ケルコトモ出来マセウガ、其種類ヲ分ケルコトモ立法者ノ精神デ、余リ数ヲ余計ニシテ貰ヒマセヌデシタナラバ立案者ノ考ヘハ至極宜シイト私ハ考ヘル、之ニ依ツテ此立案ニ同意致シマス
○九番（金沢、山田清三君）　唯今議長ハ九番ノ売上金額ト云フコトヲ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　私ガ間違ヒマシタ、アナタハ収益デアリマス
○九番（金沢、山田清三君）　ソレナラバ宜シウゴザイマス、今五十二番ガ述ベマス所ノ各商業ニ至ツテ等級ヲ置ク方ガ便利デアルト云フコトハ、今四十四番ガ御述ニナリマシタヤウニ田舎ニ至ツテハ通ジテ各商業ヲ営ンデ居ル、或ハ小間物商ト呉服商ト兼ネテ居ルモノハ呉服商ハ一等ノ鑑札ヲ受ケ、小間物商ハ二等ノ鑑札ヲ受ケルト云フコトニナラウト思ヒマス、ソレニ対シテ等級ト云フモノヲサウ錯雑ニ扱ヘルモノデハナカラウト思フ、例ヘバ呉服商デアラウガ何商デアラウガ其金額デ納メルコトニスレバ決シテ差支ヘナイ、又各々期スル所ニ至ツテハ或ハ呉服商ハアルケレドモ小間物商ハ一等ハナイ、是ハ収益金ノ少ナイカラデアル故ニモウ一層勉強セニヤアラナヌト云フコトハ、各々期スル所デアラウト思ヒマス、故ニ収益ナンボノモノヲ一等トシ、ナンボノモノハ二等トスルノガ至当デアルダラウト考ヘル
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　一寸唯今五十二番ニ向ツテ御尋ネシタイト云フノハ、略々唯今御陳弁ニナリマシタ等級ヲ立ツルコトハ
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了解致シマシタ、尚ホ税ヲ課スルコトハ各商業ニ向ツテ等級ヲ区別シ或ル商業ハ一等ニ立テ、或ル商業ハ二等ニ立テ、或ル商業ノ一等ニハ何程ノ税ヲ課スルト云フヤウナ風ニ承知シテ宜シウゴザイマスカ
○五十二番（東京、中野武営君）　其通リ
○四十二番（四日市、井島茂作君）　尚ホ一言売上金高ノ標準、其標準ハ即チ営業ハ各商業ニ向ツテモ之ヲ十種ナリ二十種ニ分ツコトガ出来マスカラ、営業ノ種類ヲ区別シマセヌケレバナリマセヌケレドモ、兎ニ角然ル上ニ課税スルノハ宜シイ、又是ニシマスルノハ煩雑ト云フ御説モアリマスケレドモ、法ヲ立ツルモノハ詳細ノ取調ベヲシマシタナラバ課税スルノ場合ニ至ツテハ混雑ハナイ、同ジ造石税デモ酒類ノ如キハ段々分ツテ来マス、同ジ醸造スルモノデモ醤油ヤ何ニカハ一石一円ノ課税ヲスル、同ジ商業デモ醤油ト酒トハドウ云フ区別ガアルカト云ヘハ利益ノ多少ヲ以テ区別ヲスル、性質ニ依ツテ区別ガ定マル、丁度現ニ今日ノ国税ノアル上ニ就キマシテモ国税ハ区別ガアル、又等級ヲ立テタ上ニ一定ノコトヲ立テヽ置キマシタナラバ極ク其コトハ簡単ニ事ガ出来ヤウト思フ、強チ之ヲ収入金ニシマシタ所ガ、収入金ニスレバ不公平ガナイカト申セバ、矢張リ同ジ収入ヲ得ルニモ一万円ノ資本金ヲ持タネバ収入ヲ得ラレヌガ、一千円デ其収入ヲ得ラレルノモアリマスカラ、私ハ、全然自分ノ説ト同意デアリマスカラ之ニ賛成致シマス
○三十二番（宇都宮、市田孝七君）　四十三番及ビ四十四番ノ御説、又五十二番ノ御説ヲ拝聴致シマシタガ、本員ハ此東京案ヲ賛成スルモノデゴザイマス、或ハ収益ト云フ御説ガゴザイマスシ、又大変錯雑スルト云フ御説ガゴザイマスガ、是ハ行掛リ上ドウシテモ斯ウシナケレバナラヌト思ヒマスカラ、尤モ賦課税等ノコトハ立法者ニ於テ能ク扱ツテ呉レルコトダラウト思フ、故ニ本員ハ本案ヲ賛成致シマス
○二十二番（富山、牧野平五郎君）　本員ハ九番ニ賛成ノモノデアリマス、ソレユヘ先刻来色々御説モ拝聴致シマシタガ、詰リ此売上金高ト云フコトニナリマスト、極ク収入ニ依ツテ等級ヲ分ケルトカ云フヤウナコトガ生ジマスケレドモ、之ニ反シテ収入金ト致シマスレハ、彼ノ石油ノ如キモノハ拾万円ノ金高ニ対シテ或ハ壱千円ノ利益ガアルト云フ時分ニハ、金高ガ余□《（計カ）》アリマシテモ利益ノ少ナイモノハ――拾万円ノ金高ガ一等デアツテ、ソレニ就イテ売上金高ガアツテモ収益ノ少ナイモノハ二等トスルト云フ、即チソレニ拠ツタ方ガ便利デアラウト思ヒマスカラ、依ツテ九番ニ賛成致シマス
○十二番（浜松、中村忠七君）　本員ハ徹頭徹尾此本案ニ同意致スモノデゴザイマス、既ニ唯今収益税云々ト云フコトガアリマシテゴザイマスガ、従来営業税法発布以来最モ売上税ニ就イテ非難ノ声ノアリマシタノハ、営業ノ種別ヲ定メテナイト云フコトガ第一ノ非難、何故ニサウ云フ非難ガアルト云ヘバ、呉服商ノ売上金額ト紡績業ノ売上金額トデハ同ジ売上金ニ就イテ収益ニ大ナル相違ガアル、営業税法ノ如キ売上金ニ依ツテ税ヲ課スルコトハ同意ナモノデアル、我々小地方デアリマスガ今日営業者間ニ其争論ガ起ツテ困ツテ居リマス、然ルニ本案ニナリマスレバ、ソレ等ノモノヲ詳細ニ取分ケマシテ、呉服商乃至紡績
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糸商ト云フモノハ自カラ団体ガ出来テ、収益ニ拠ル繁雑ナコトニ致シマセズ、全国中ノ地方税ノ慣例ニ従ヒマシテ此本案ノ通リ売上金額ニ課スルノガ頗ル簡明デアツテ、今日ハ比較上相当ノモノト考ヘマス、ソレ故ニ徹頭徹尾本案ニ同意致シマス
○三十六番（上田、黒沢鷹次郎君）　唯今五番カラ先決問題ガ出テ居リマスガ、第四項ヲ除イテ第五項マデ賃貸価格ヲ除クト云フコトニ賛成ガアリマシタ、本員モ五番ニ賛成デゴザイマス、此先決問題ヲ決議ヲヲ願ヒタイ
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　十一番モ五番ニ賛成
○会長（東京、渋沢栄一君）　五番ノ先決問題ト仰セアルガ本問題ニハ這入ツテハ居リマセヌガ
○五番（長崎、松田源五郎君）　サウジヤゴザイマセヌ、議案ガ除イテゴザイマスカラ此原案ガ採用ニナレバ自分ニ除クト云フコトハ分ツテ居リマスガ………
○会長（東京、渋沢栄一君）　御自分ノ御提出ノ案ヲ混合シテ御弁ジニナルカラサウナリマス、今ノ議題ハ東京案ガ議題ニナツテ居ル、東京案ニナイモノニ先決問題ヲ仰セアルノハ可笑シクハアリマセヌカ
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　私モ東京案ノ原案ニ賛成スルノデゴザイマス、就テハ地方ノコトヲ段々御説ガゴザイマスガ、即チ我鹿児島抔ハ一方ニハ呉服ヲ売リ一方ニハ煙草ヲ売ル、甚ダシキハ砂糖ヲ売ルト云フ万屋ヲシテ居ル、成程斯ウ等級ヲ立テルコトニスレバ混雑ヲスルト云フ御話ガアリマスケレドモ、併シ税法ノ第十二条ニ依ツテ見マスルト金額千円未満ノモノニハ営業税ヲ課セズト云フコトガアリマスカラ、私ハ差支ナイト思フ、即チ原案ニ賛成スル
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　段々五十二番カラ御説ガアリ、御賛成ガアリマスガ、承リマスレバ益々煩雑ナルモノデアラウト私ハ精神ヲ堅ク致シマス、各種類ニ依ツテ等級ヲ定メルト云フコトニナリマスト、東京トカ大坂トカ繁華ナ土地ニハ兼業者ハアリマセヌケレドモ何分日本全国ヲ通ジテ参リマスレバ、僻地ニ参リマスト色々ノ業ヲ営ンデ居ルノガアル、例ヘバ乾物モアレバ干鰯モアルト云フヤウニ種々ナルモノヲ挙ケマスレバ中々煩雑ノモノデアラウト思フ、之ニ依ツテ参ルカラ一向差支ナイト云フ御明言モゴザイマスケレドモ、是ハ中々区別致シマスルノニ随分錯雑極ツタ税法ニナリマセウト存ジマスル、ソレヲ又分ツニ調査委員ヲ置イテ云々ト云フヤウナコトハ益々是ハ難イコトデハアルマイカト実ハ思ヒマスルノデゴザイマス、併シ此ニ至リマシテ追々御賛成ガゴザイマスルコトデゴザイマスルカラ、敢テ之ニ向ツテ申ス要ハゴザイマセヌガ、自分ノ考ヘマスルノハ、紡績糸ト呉服ノ引例モ出テ居リマスガ、誠ニ紡績糸ト云フモノハ利益ニ至ツテハ誠ニ僅少ナモノデアル、其営業々々ニ至ツテ悉クソレガ出来得マスレバソレ程デモゴザイマセヌガ、之ハ至難デアラウト思ヒマスカラ、前ニ述ベマスヤウニ致シマス、又売上金額ト云フコトニ賛成シテ居ル此処ニ至ツテ収益ト云フコトニナリマスト大体趣意ハドウデアルカ、収益ト云フコトヲ十分貫キタイノデゴザイマスガ、ドウモ此案ノ精神ヲ立テヽ参リマスレバ売上金ト云フコトニナツテ居リマス、ソレテ暫
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ク売上金ニ依ツテ意見ヲ述ベテ置キマス訳デ、尚ホ私ノ考ヘテ居リマスコトハ各業ニ向ツテ分ツト云フノハ極ク繁雑ナモノニ渉ラウト云フ大体ノ意見ヲ持ツテ居リマス
○二十九番（堺、錦地千鶴之助君）　二十九番ハ此問題ニ対シマシテハソレコレ御議論モゴザイマスガ、四十一番ニ同感デゴザイマス、其理由ト申シマスノハ、成程各営業毎ニ等級ヲ以テ別ケルト云フコトハ最モ宜シキヤウニ思フ、而シテ其等級ヲ別ケルト云フ理由ハ呉服屋ニ於テ一割デアル、或ハ一方ニ対シテハ五分デアルト云フ比較上カラ往ク定メデアツタト考ヘル、且ツ其辺ノ御弁明ガアツタヤウデゴザイマス尚ホソレデヤリマスニ就イテハ四十一番ニ同感デ、余程繁雑ナモノト考ヘル、仮リニ繁雑デナイト云フコトハ互ニ思想ニアルコトデゴザイマスカラ、或ハ唯今挙ゲマシタ一旦得タル其均一ヲ保ツタ等級ト雖モ今日ノ商業者ハ従来ノ商業者ト大ニ違ツテ来ル訳デゴザイマスカラ、全然利益モ一割アツタモノモ一方ノ業務ノ有様ニ対シマシテハ自然五分ニナルトカ減ズル場合モゴザイマセウ、又是レ迄薄利ヨリ無カツタモノガ都合ニ依ツテハ業務ノ発達ニ就イテ利益ノ増スト云フ場合モゴザイマスカラ、一旦得タル等級ト雖モ必ズ均一ヲ欠クコトガ起ツテ参リマス、尚ホ之ニ就キマシテハ色々思想ノ分レル所デゴザイマスカラ随分議論モソレコレゴザイマセウ、長ク饒舌ツテ居リマシタ所ガ同一ノコトデゴザイマスカラ、其点ニ就キマシテハ矢張リ四十一番ト同感デゴザイマス、尚ホ此従業者ニ対シマシテ一円ト云フコトハ最モ自分ノ同意スル所デ、又丁稚小僧・下婢等ニ対シテハ、四十一番ハ減ジ得ラレルモノデアルト云フ御説モアリマスガ、何程ニ減ズルト云フ御説モナイヤウデアリマス、既ニ自分ノ会議所モ提出致シマシタ通リ十五歳未満ノ者ハ半額、即チ五拾銭ト云フコトデゴザイマス、私ハ四十一番ノ代リニ先ヅ右ノ如ク致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　等級税ニ反対ト云フノデスナ
○二十八番（堺、錦地千鶴之助君）　左様デス、取リモ直サズ四十一番ニ賛成デス
○四十七番（京都、中野忠八君）　四十七番ハ東京案ヲ全然賛成スル、実ハ京都ノ商業会議所ニ於キマシテ各地ノ御意見ヲ東京ノ方カラ御送リ下スツタトキハ色々研究シマシタ上ニ於テ、大坂ノ案即チ収益ニ依ツテ課スルト云フコトニハ会員挙ツテ希望シタ次第デゴザイマス、併シナガラ収益ヲ見ルコトハ出来ヌト云フコトハ先刻来諸君ノ御論ノ中ニ這入ツテ居リマス、丁度目的ヲシテ達セシメルニハ東京案即チ各種ノ業ニ就イテ等級ヲ分ツコトカ、是ガ収益ニ依ツテ取上ル所ノ標準ニ形ハ変ツテアルケレドモ、目的ハ達シラレルモノト存ジマス、ソレデ京都ノ会議所ノ所見ハ全然東京案ニ賛成シマス
○二十六番（神戸、岡田元太郎君）　私ハ先刻五番ニ賛成致シマシテ、ドウカ臨機ノ御処置ヲ願イタイト申上ゲマシタケレドモ、矢張リ決議ノ順序上サウモ参リマセヌ、ソウナリマスト矢張リ自分ノ意見ダケヲ述ベンナラヌヤウニナリマス、色々御説ヲ承リマシタガ、私ノ考ヘデハ物品販売業ニ対シマシテハ売上金額ニ依ツテ課税スルコトハ原案ノ通リ、且ツ従業者ノコトモ云ハズ、又賃貸価格ニ課スルコトモ原案ニ
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ハゴザイマセヌカラ、売上金額ニ課スルト云フコトハ原案ト同ジヤウデゴザイマスケレドモ、各営業ニ依ツテ等級ヲ分ケルト云フコト、二十六番ハ同意仕リ兼ネマス、即チ二十六番ハ五百円ヨリ百万円ニ至ルマデハ万分ノ一ヨリ万分ノ十、即チ売上金額五百円ト云フモノニハ万分ノ十ヲ課スル、ソレカラ段々低減シテ参リマシテ万分ノ一トナル、斯ウ云フ風ニナリマシタナラバ卸売ト小売ノ別ヲ立テマセヌデモ自然ニ公平ヲ得ルダラウト思フ
○四十四番（八王子、平林完兵衛君）　四十四番ハ一寸今一応述ベタイト思フテ居リマスガ、一体此現行ノ法ガ商業者ニ適当シナイ所ガ多クアルト云フ所カラ此聯合会ヲ開クト云フ話カラ参リマスト、先ヅ現行法ノ商人社会ニ取ツテ不便デアルト云フ所ノ欠点ヲ重ニ言フノガ先ヅ後ノ極メヨリカモ却ツテ必要ダラウト思フ、サウ云フ点カラ往キマスルト、是迄ノ欠点ノ多キコトヲ成ルベク私ハ此諸君カラ言ヒタイト云フ考ヘデ、私ハツイ昨日欠席致シマシテゴザイマスガ、此東京案ノ意見書ガ昨日既ニ是迄ハ通過致シテ居ルモノト私ハ考ヘテ居ル、其中ノ商業者ノコトヤ何カニ就イテ必要デナイト云フヤウナ、尤モ従業者ニ税ヲ課シテハ商業ノ発達ヲ妨ケルトカ云フヤウナコトハ先ツ満場一致デ御賛成ヲ得テ是迄参ツタモノト考ヘル、サウ云フ場合カラ又今日ニ至ツテ従業者ハトウデアルトカ斯ウデアルトカ云ヒマスト、先キノ趣意書ノ分モ変ヘテ往カニヤアナラヌ、議事ガ後前キヘ多少戻ルト云フ場合カ出来ヤウカト考ヘマス、推測カラ往キマストサウ云フヤウニ相成ラウト存ジマス、今日ノ場合ハ従業者ト云フコトハ言ハナイ方ガ当然ダト私ハ思ヒマスカラ、念ノタメニ申上ゲマス
○四十三番（八王子、吉田忠右衛門君）　四十四番ハ成程昨日欠席サレマシタノテ、前ノ文案ノコトヲ議了シタト思ワレテ今ノ議論ガ出タ、成程前ガ議了シテ居ツテハ矛盾スルコトニナル、前ニ四十三番ハ従業者云々ト云フコトヲ申シタガ、中々煩雑デ随分調ベ出ス方ハ難儀デアリマスカラ、従業者ノ所ハ取消シテ全然東京案ニ賛成ヲ表シマス
○五十二番（東京、中野武営君）　唯今四十三番カラ、昨日ノコトヲ御承知ナイヤウデ、アノ御論ガ出マシタカラ、会長カラ一ツ御話ヲ願ヒタイ
○会長（東京、渋沢栄一君）　第一ノ営業税法ノ欠点ト云フ項目ハ後ニ廻ハシマシテ、第二カラ議スルコトニナツタノデ、前ノハ議了シテハゴザイマセヌ
○二十八番（堺、上林総三郎君）　本員ハ本案即チ此東京案ニ段々御説明モゴザイマシタデ租税ノ公平ヲ得マスルノハ大ニ宜カラウト思フ、併シナガラ其手数ニ至リマシテハ、此等級ヲ立テマスル手数ニ至ツテハ四十一番ナリ其他ソレソレ御話モゴザイマシタ如ク大変錯雑デアラウ、左リナガラ四十一番ノ御説ニ致シマスト又少シク公平ヲ欠クヤウナ場合モゴザイマセウ、今二十六番ノ説ガ幾分公平ヲ得ル所ガアラウト思フ故ニ、私ハ二十六番ニ賛成ヲ致シマス
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　モウ段々此各員ノ御意見モ大凡ソ定ツタヤウデゴザイマスガ、大抵原案ノ改正ノコトガ多イヤウニ考ヘマスルカラ、モウ決ヲ御採リ下サルコトヲ希望致シマス、唯タ聞イテ見
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マスト一寸聊カノヤウナコトニ聞カレテ居ルコトモ追々ゴザイマスカラ採決ヲ一ツ願ヒマス
○番外（大坂書記長、浜田健次郎君）　モウ大分議事モ進行シテ居リマスカラ長クハ述ベマセヌガ、私ハ矢張リ是ハ等級ヲ付ケナイ方ガ宜イト云フ考ヲ持ツテ居リマス、デソレヲ先ヅ三ツニ分テ言ツタラ宜カラウト考ヘマス、今段々五十二番カラノ弁明ニ依リマスト、等級ヲ付ケルノハ公平ヲ持スル、且ツ納税者ニ対シテ煩雑ヲ避ケルト云フノガ主タル眼目デアル、併シナガラ此事ハ徴税致シマスル立法者ニ取ツテハ非常ナル困難ナルコトデアル、ソレハ或ハソンナ心配ヲスルニ及バヌト云フ反対モゴザイマスカ知レマセヌガ、日本ニ於キマシテハ、此営業ノ種類ト云フモノハ多ウゴザイマスカラ、其各種類ニ就キマシテ等級ヲ分ケル、啻ニ等級ヲ分ケルノミナラズ、其等級ハ各営業者、営業者ノ状況ヲ調査シテソレニ依ツテ一々別ニ此標準ヲ立テルト云フコトデアリマス、デ斯ノ如クスルト云フト、先ツ之ヲ拵ヘルニ非常ナ手数ヲ要スル、其手数ヲ掛ケテ拵ヘタモノヲ遵奉スルノハ煩雑デナイカト云ヘバ決シテ煩雑デナイコトハナイ、ト云フノハ何等何等ト毎年毎年其売上高ノ相違ニ依ツテ等級ガ変ハル、然ラバ最初現法ノ通リニ一般ノ税率ヲ極メテ置イテ、是ニ従ヘバドレダケノ煩雑ノアルカト云ヘバ決シテ煩雑デハナイノデアル、又公平ヲ得ラルヽト仰セラルヽガ、元来等級ト云フ鋳型ヲ拵ヘテ、ソレニ総テノモノヲブチ込ムト云フノハ決シテ公平ヲ得ルモノデハナイ、此ノ鋳型ニ依ツテ税ヲ取立テルト云フ事ハ、税理上・精神上・法理上決シテ公平ヲ得ル手段デハナイノデアル、又是レハドノ位ノ名目ヲ付ケラルヽカ知レマセヌガ、随分錯雑ナモノデアラウト思ヒマス、地方々々ニ依ツテハ随分各種ノ業ヲ兼ネテ居ルモノガゴザイマスカラ、大変ニ錯雑デアラウト思ヒマス、左程骨ヲ折ツテ掛ケタモノガ納税者ニ取ツテ強チ便利デナカラウト考ガヘマス、又公平ヲ得ラレヌダラウト思ヒマス、是ガ第一、第二ハ或ル会員カラ申サレタ如ク時勢ト云フモノハ時々刻々変遷シテ来ルモノデアルカラ、夫レ程骨ヲ折ツテ立法者ニ非常ナ迷惑ヲ掛ケテ出来上ゲラレタ等級ハ二・三年或ハ四・五年経テハ不適当ナルモノニナツテ仕舞フサウスレバ自然不公平ト云フコトハ免レナイ、ドウシテモ世上ノ変遷ニ依ツテ変ラナケレバナラヌモノデアルカラ、決シテ是ハ言フベクシテ行ハレルコトデハナイ、第三ハ一体徴税ノ外国ノ仕方ヲ見レバ、成ルベク斯ノ如ク人為的ニ殊更ニ等級ヲ極メテ取立テルト云フコトハ廃メテ、成ルベク各自ニ申告サセテ、自分ノ売上金ナラ売上金高、若クハ利益金ナラ利益金高ニ依ツテ税ヲ取ルト云フノハ、各国ノ税ノ徴収法ノ今日ノ原則ニナツテ居リマス、デ今、古イ時ニ用ヰタ税法ヲ日本テ採ツテ以テ施行スルト云フコトハ将来大変ニ害ガアラウト思ヒマス是ガ非常ニ便利ナコトデアレバ兎モ角、決シテ便利デナイ、否ナ却ツテ不便利ナモノデアルノデス、ドウモ此殊更ニ段階ヲ付ケルト云フコトハ宜シクナイト思ヒマスカラ、此点ヲ十分御研究下サルコトヲ希望致シマス
○番外（京都書記長、新井旭君）　段々ト御議論ガアツテ少シ機会後レニナリマシタガ、併シ斯ノ如ク論ジ去リ論シ来ツタナラバ、今物品販
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売ノ所デゴザイマシテスラ既ニ半日ヲ潰シテ仕舞ツタト云フ訳デ、此原案ハ項目ガ多イカラ、ソレガタメニ非常ナ時間ヲ費シテ、即チ今日議事ニ御取掛リニナツテ居ルノガ此原案ノ骨子トモ謂フベキコトデ、唯今マデノ御議論ヲ承ツテ大抵ノ御意嚮モ分ツテ来マシタガ、既ニ昨日改正モアリマシテ、此意見ハドウシテモ統一セネバナラヌ、ドウシテモ各会議所カラ御出シニナツタ御意見ガアレバ、ソレヲドコマデモ此処デ議サナケレバナラヌト云フコトニナルト、各自意見ヲ闘ハスヤウニナツテ、区々ニ渉ツテ面倒ニナラウト思ヒマスカラ――、併シ此通リ極ツテ仕舞ヘバ一方ニハ妙ナ感ジガアルカ知レマセヌガ、何ニ致セ時間ガ大変ニ掛ル、又段々大切ナ問題ヲ時間切迫ノタメニ軽々ニ議サナケレバナリマセヌト云フコトニナル、就テハ議事ノ纏マルタメニ第一ト第二、此二ツヲバ委員ヲ設ケラレテソレニ附託サレテ十分ニ研究ニナリ、全体ノ適当ナル議案ヲ作ツテ議題トシテ、ソレヲ以テ原案トシテ議スルコトニナツタナラバ、時間モ大変ニ省ケルシ、意見ノ統一ト云フ点カラ見テモ、区々ノ議論ニ渉ラズ纏リガ付カウト思ヒマスカラ、相成ルベクハ此議ヲ採用セラレテ、一ノ委員ヲ設ケラレテ審査熟《（考脱カ）》ノ上ニ御議シニナツタナラバ至極宜カラウト思ヒマス、明日ハ休日デ委員ノ御方ニハ御苦労デハゴザイマスルガ、多数ノ者ノ代ハリト云フ御意見ヲ以テ十分ニ議シテ下サレタナラバ、議事モ纏ラウト思ヒマスカラ此事ヲ一寸……
○四十五番（知多、天野伊左衛門君）　色々説モゴザイマシテ、既ニ議決前ニ至ツテ委員附託ト云フ御説モ出マシタカ、唯今色々御論ジニナツタ等級云々ノコトハ、委員ヲ設ケルニシテモモウ少シ先キノ方ヘ往ツテカラノコトニシタラ宜カラウト思ヒマス、唯今問題ニナツテ居ル所ハ物品販売業ノ所デゴザイマスカラ、段々一・二・三・四・五ト議シテ、ソレカラ委員附託ト云フコトニシタラ如何デゴザイマセウカ、仮令ヒ玆ニ課税標準ヲ定メタトコロガ、尚ホ此以上全体――各業ニ関係ヲ及ボシマスカラ、其問題々々ニ至ツテ委員ヲ設ケルヤウニシタイト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　大抵御論ガ御尽キニナツタヤウデゴザイマスガ、今ノ其二ノ第一物品販売業ノ所デ、此物品販売業ハ販売価格ヲ標準トスルハ宜シイガ、矢張リ率ヲ定メテ等級税ニセヌガ宜カラウ即チ売上高ナラ率ヲ定メテ等級税ト云フコトヲ廃シタ方ガ宜カラウト云フノガ四十一番ノ御説デゴザイマス、是ニ段々御賛成ガゴザイマスソレカラ今一ツハ、販売業ニ対シテモ売上代デナシニ販売ヨリ生ズル収益ヲ標準トスルガ宜カラウト云フ御説ガ九番ノ御説デ、是ニモ御賛成ガゴザイマスル、ソレカラ販売高ニ制限ヲ置イテ金高ノ増加ニ従ツテ税額ヲ減ズルト云フ方法ニシタラ宜カラウト云フ御説ガ即チ二十六番ノ御動議デゴザイマス、デ丁度此問題ニ就イテ三ツノ修正御意見ガ出テゴザイマス、是ハ一々順ヲ逐フテ決ヲ採ルコトニ致シマス
　　　〔「採決、採決、異議ナシ」ノ声起ル〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ四十一番ノ御動議等級税ヲ廃メタイト云フ、詰リ課税標準ヲ販売金額トシテ其税率ヲ万分ノ五ナラ万分ノ五ト定メルト云フ御説ニ御同意ノ方ハ起立
 - 第22巻 p.131 -ページ画像 
　　起立者　　少数
○会長（東京、渋沢栄一君）　少数――今一ツハ此販売高ニ依ラズニ、収益高ニ依ルト云フ、即チ九番ノ御動議、是ニ御同意ノ御方ハ起立
　　起立者　　少数
○会長（東京、渋沢栄一君）　少数――ソレカラ次ハ販売高ニ制限ヲ置イテ金高ノ増加スルニ従ツテ税額ヲ減スルト云フ方法、即チ二十六番ノ御動議、是ニ御同意ノ御方ハ起立
　　起立者　　少数
○会長（東京、渋沢栄一君）　少数――三ツノ修正御意見ガ、ドウモ成立チマセヌ――ソレカラ五番ノ先決問題ノ御説デゴザイマスガ、是ハ議シテ参リマシタラ先決問題トシナクテモ宜カラウト思ヒマスガ……
○五番（長崎、松田源五郎君）　唯今ナラバ宜シウゴザイマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　宜シウゴザイマスカ、然ラバ唯今原案ニ就イテ決ヲ採リマス、原案ニ御同意ノ方ノ御起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数――ソレデハ第一ダケハ玆ニ議了致シマシテゴザイマス、第二ニ及ビマス
○十二番（浜松、中村忠七君）　第一ニハ等級ヲ附スルト云フコトガ自然含蓄シテ居ルト承知致シテ宜ウゴザイマスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　先ヅ左様デゴザイマス、如何デゴザイマセウカ、委員附託ト云フ説モ出テ居リマシテ、既ニ何番デゴザイマスカ、此以上各項ニ就イテ等級云々ノコトハ其一ト云フ方モ併セテ委員ニ附託セネバナラヌト云フ御説デゴザイマシタガ、サウ云フコトニ運ヒ得ヌナラバソレマデ、運ヒ得ラルヽナラバ御都合ガ宜シイト思ヒマスカラ……然ラバ其二ノ二ニ就イテノ御議決ヲ願ヒタイ、是ハ朗読ヲ致サセマスカ
　　　〔「ソレニハ及ビマセヌ」ト呼ブ者アリ〕
○九番（金沢、山田清三君）　本員ハ相変ラズ此資本金額ヲ収益金ト修正ヲシタイ、到底唯今ノ景況デハ此説ハ行ハレヌト思ヒマスガ、併シナガラ我ガ金沢会議所ノ意見ハ収益金トスルト云フ意見デス、兎モ角其意見ヲ以テ之ヲ修正シタイ、理由ハ前同様デ、或ハ資本金額ガ多クテモ利益ノ少イモノモアリ、資本金額ガ少クテモ利益ノ多イモノモアリマスカラ、ソレヲ同一ニシテ賦課スルノハ当ヲ得ナイト思ヒマスカラ、之ヲ収益金ト改正シタイ意見デアリマス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　私ハ九番ノ収益金ニ課スルト云フコトニ賛成致シマス、此課目ハ種々挙ゲテ居リマスガ、私ハ資本金額ニ依ルト云フコトハ穏カデナイト思ヒマス、自分ハ物品販売業ノ所ニ於テ全然東京商業会議所ノ案ニ賛成シタニモ拘ハラズ、是ニハ反対ヲ致シマス、此方ハ区別ヲ立テヽ往ケバ倉庫業・写真業・運送業・運河業ナドハ総ベテ収入金額ニシタイ、其中此銀行業ノ如キハ収益金トシタイ、此銀行業ノコトハ昨日モ会社ハ別ニスルト云フ説ガ出、遂ニ消滅致シマシタガ、必ズ課税法ハ総テ会社組織ノモノハ別ニ定メマスルコト故ニ、其節ニモ十分述ベマスケレドモ、此銀行業ニ限ツテ個人的ノモノニ至ツテハ収益金トシタイ、保険業ノ如キハ保険料ニ課シタイ
 - 第22巻 p.132 -ページ画像 
金銭貸附業ノ如キハ貸附金額ニ課シタイ、物品販売業ハ収入金額ニ課ス、其他土木請負業ノ如キハ請負金額ニ課スルヤウニ致シタイ、併シサウシタナラバ如何ニモ繁多ト云フ御議論モ出マセウガ、曩キニ物品販売業ニ於テ述ベマシタ如ク、此定ムル時ニコソ数種分ケテ置クト繁多ノヤウニ見ヘマスガ、何カソコニ極ツテ居レハ、ソレニ依ツテ課スルノデアルカラ敢テ差支ナカラウト思ヒマス、此第二ノ資本金額ニ依ルト云フコトニハ自分ハ反対デゴザイマス
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　此事ニ就イテハ少シク原案ト私ハ趣キヲ異ニシテ居リマスカラ、先ヅ是ガ採用ニナルヤ否ヤハ分リマセヌガ、我地方ノ事ヲ諸君ノ御参考マデニ申シテ置キマス、金銭貸附業ノコトデゴザイマスルガ、是ニ就イテハ他県ハドウデゴザイマスカ知レマセヌガ、我ガ県ノ如キハ五百円未満ノ金ヲ貸スト云フモノデモ実際ハ二・三千円ノ運転シテ居ルノガゴザイマス、又此税法ニ依ツテ見マスルト営業場ヲ設ケタモノニ限ツテ此税ヲ賦課スルト云フコトデゴザイマスガ、併シナガラ我ガ県下ノ如キハ一定ノ店舗併セテ営業場ヲ設ケテ居ルト云フモノハ先ヅナイト云ツテモ宜イ有様デゴザイマス、即チ目下流行シテ居ルトコロノモノハ、ザツト申セバ高利ヲ貸シテ、百円ヲ貸スモノナラバ二十円ハ前ニ取ツテ、サウシテ返済期限一ケ月前ニ証文ヲ書キ替ヘサセルト云フヤウナコトガ行ハレテ居ルノデゴザイマス、デサウ云フ種類ノ金銭貸附業ニ対シテハ此法律ハドウスルカト本員ハ解釈ニ苦ンデ居リマスカラ、願クハ此金銭貸附業ニ就イテハ資本金ト云フノヲ貸附金高ト云フコトニシタイ、之ヲ貸附金高ニ制限ヲ付ケテ五百円未満ナラ幾ラ、以上ハ幾ラト云フコトニシタイト云フ考ヲ持ツテ居リマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　アナタノ御説ハ資本金額ニ依ラスニ金銭貸付高ニ依ルト云フ御説デゴザイマスカ
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　左様デゴザイマス
○五番（長崎、松田源五郎君）　本員ハ此原案ニ賛成致シマス、成程色色御説ガ出マスガ、矢張此第一ニゴザイマスル物品販売業ニ等級ヲ付ケルガ如ク、是ニモ営業ノ区別ニ依ツテ等級ヲ付ケルコトガ公平ヲ得ルト思ヒマスカラ、原案ヲ賛成致シマス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　先程希望ヲ述ベテ置キマシタガ、唯今ノ二ト云フ所ハ銀行業カラ貨物陸揚場業迄東京商業会議所ノ原案ガ議題トナツテ居リマスデ、ソレヲ深ク区別スレバ色々ニナリマスガ銀行業ハ――個人的ノ営業ハ別ニスル積リテ既ニ東京案カラハ此会社税ヲ別ニ起スト云フコトハ削除ニナツテ、其際モ陳ベタ通リ銀行業ハ……保険業ハ保険料ヲ以テ課スル、金銭貸附業ハ唯今十一番カラ述ベタ如ク貸付金高ニ依ツテ課スル、物品貸付業・製造業・倉庫業ノ如キハ総テ収入ノ金額ニ依ツテ課スル、斯ウ云フ見込デゴザイマス、詰リ私ノ考ハ総テ二ニ属スルトコロノモノハ資本金ニ依ラヌト云フ考ヘデゴザイマス
○十二番（浜松、中村忠七君）　本員ハ此原案ニ賛成ヲ致スモノデゴザイマス、其理由ハ唯今五番ノ述ベタトコロト同感デゴザイマシテ既ニ第五ノ以下「以上各業ハ云々」「又毎営業云々」ト云フ此二ノモノニ
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至レバ、唯今本案ニ反対ノ御議論ト云フモノモ矢張リ略ボ同様ノ結果ヲ見ルコトニナルデアラウト思ヒマスカラ、是ハ徹頭徹尾原案ニ賛成ヲ致シマス、詰リ五番ト同感デゴザイマス、就キマシテ尚ホ一ツ伺ツテ置キマスガ、其二ノ「一個人ノ営業ニ対シテハ左ノ方法ニ依リ相当ノ課税ヲ為ス事」ト云フ此一個人云々ノ事ト云フモノハ自然消滅ニナツタコトヽ考ヘ置イテ宜シウゴザイマスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　今ノ御尋ネノ此其二ノ二ノ銀行業・保険業等ハ是ハ会社業デハゴザイマセヌ
○十二番（浜松、中村忠七君）　サウスルト是ハ単ニ一個人ダケノ業デゴザイマスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　左様デゴザイマス、其二ノ本文ハ消ヘタ訳デハゴザイマセヌ、矢張リ存シテ居リマス
○十二番（浜松、中村忠七君）　左様デゴザイマスカ
○十六番（桑名、平野美純君）　資本金額ニ依ルト云フコトハ私ナドハドウ考ヘテ見テモ宜シクナイ、即チ三十七番ノ御説ノ如クスレバ、少シ煩雑ニハナラウガ公平ヲ得ヤウト思ヒマスカラ、三十七番ニ賛成致シマス
○四十五番（知多、天野伊左衛門君）　私ハ前説同様三十七番ノ説ヲ賛成致シマス、資本ト云フコトニ就イテハ此取扱ノ上カラ考ヘテ見マスルト、随分是ハ煩雑デアツテ、三十七番ノ御説ノ方ガ煩雑デナイ、又税法ノ上カラ直接資本ヲ標準トシテ税ヲ掛ケルト云フコトハ成ルベク避ケタイト云フ精神デゴザイマスカラ、三十七番ニ賛成致シマス
○十八番（栃木、桜井源四郎君）　十八番ハ五番ニ賛成致シマス、其理由ハ同感者ガ述ベラレマシタカラ敢テ喋々致シマセヌ
○四十六番（知多、小栗政治郎君）　一々ニハ申シマセヌガ全然三十七番ニ賛成致シマス
○番外（名古屋書記長、上遠野富之助君）　此東京案ヲ見マスルト、賃貸価格ノ処ハ課税標準ニナラヌト云フコトヲ御弁明ニナツテ居リマスカラ、此御論法カラ往クト資本金額ト云フコトモ自ラ出テ来ナケレバナラヌト云フコトニナツテ居ル、何故ト云フニ、賃貸価格ト云フモノハ元来此営業ノ収入ノ利益――建物ト云フモノハ営業ノ利益ト伴ハヌモノデアルト言ハレ、ソレカラ価格ヲ積リ出スト云フノハ大変ニ甲乙ガアルト言ハレル、然ラバ資本金額ト云ツテモ営業ノ利益ト伴ハナイモノデアルト云フコトハ自ラ其中ニアル、資本金額ガ多イカラ必ズ利益ガ多イト云フモノデハナイ、即チ資本ノ運用如何ニ依ツテ利益ニ多少ガアルノデアリマス、其資本ノ算定方ト云フモノハ大変ニ混雑ナモノデアリマシテ、既ニ会社ノ方ハ法ヲ別ニ立テヌケレバナラヌト云フ位ノ東京案ノ精神デアツタナラバ、一個人ノ方ハ別シテ斯ウ云フ混雑ナモノニ依ル事ガ出来ナイト云フコトヲバ自然御見出シニナルヤウニ思ハレマスガ、何ダカ一個人ノ方ハ資本金額ニ依ルト云フコトハ少シ撞着シタ議論デハナイカ、私ノ考ヘマスルノニハ、斯ウ云フコトハ第一不公平ヲ来タス基デアツテ、斯様ナコトハ総テ簡明ヲ主トスルト云フ御精神ニ背ク改正トシカ思ハレマセヌカラ、是ハ廃メタ方ガ宜カラウト云フ考ヘデゴザイマス
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○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　此唯今ノ議題ノ所デゴザイマスガ最早既ニ前ノ項ガ即チ物品販売業ニ於キマシテハ等級ヲ分ツト云フコトニ可決シタ以上ハ、他ノ方モ総テ是ニ関聯シタコトデアリマスカラ余リ懸隔ノナイヤウニシテ一様ニシタイト思ヒマス、詰リ此処デ等級ヲ付ケルガ宜シイ悪イト言ツタトコロガ、ドウ云フ付ケ方ニスルカ、ドウ云フ課税ノ方法ニスルカト云フコトモ考ヘテ見ナケレバナラヌ、今一概ニ其是非ヲ云フコトガ出来ナイコトデアリマス、既ニ前ノ項ガ斯ノ如ク決シタ以上ハ、暫ク他ノ決スルコトヽ比較ヲ取ツテ見タイト思ヒマスカラ、此ノ事ニ就イテハ暫ラク原案ヲ賛成致シマス
○十二番（浜松、中村忠七君）　少シ先決問題ノ意見ガゴザイマスガ、此第二ニ就キマシテ「営業税法以外別ニ会社税法ヲ創定シ云々」ノコトガ前々カラ含蓄致シテ居リマスガ、既ニ今日マデ議シ去リ来リマシタ経過カラ考ヘテ見マシテモ、最早殊更ニ会社税法ヲ置キマセヌデモ宜イ、此議案ニ依リマシテ各営業毎ニ等級ヲ立テルト云フコトニナレバ、自然会社ト一個人トノ釣合ガ出来マスカラ、私ハ「其二云々」ト云フ一項ヲ削除スルコトヲ希望致シマス
○三十番（仙台、木村一是君）　十二番ニ賛成致シマス、昨日其一ヲ議スルニ当ツテ「営業税法以外別ニ会社税法ヲ創定シ云々」ノコトガ削除ニナリマシタ以上ハ、自然「其二、一個人ノ営業ニ対シテハ云々」ト云フコトモ、消滅ニ帰シタモノト先程カラ見テ居リマシタ、然ルニ段々諸君ノ御陳弁ヲ伺ヒマスルト云フト、サウデナイ、矢張其二ハ依然活キテ居ルヤウデゴザイマシテ、ドウモ可笑シイト思ヒマスカラ、唯今十二番ノ「其二云々」ト云フ一項ヲ削除スルト云フ御説ニ賛成致シマス
○九番（金沢、山田清三君）　九番モ今ノ十二番ノ御説ト同感デゴザイマシテ、昨日既ニ此「会社税法云々」ノコトガ削除ニナツタ以上ハ、今日此第二項ノ中銀行業ナリ、或ハ保険業ナリ、是ハ必ズ一個人モ会社モ含蓄シテ居ルコトニナルハ自然ノ道理デアラウト思ヒマス、唯本員ガ希望スルノハ之ヲ収益金トシタイ、唯今段々他ノ営業ニ対シテハ収益ヲ以テ課税シ、金銭貸付業ノ如キハ貸付金ヲ以テ課税スルト云フ御説モ出テ、其間ニ色々区別ガアルヤウデゴザイマスガ、成ルベク一様ニシテ収益ヲ目安トスル方ガ宜イト思ヒマスカラ、収益金ヲ以テ課税ノ標準トスルト云フコトニ御賛成アラムコトヲ希望致シマス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　唯今ノ御説ニ対シテ申シマスガ、昨日決議ニナツタ要領ハ、即チ此営業税以外ニ別ニ会社税ヲ設ケルガ宜イカ悪イカト云フ論議デアツテ、結局昨日多数ヲ得テ決シマシタ皆サンノ御意嚮ト云フモノハ、矢張リ会社税ヲ営業税法外ニ置クニ及バヌト極リマシタガ、其標準ノ精神ト云フモノハ、此東京案トハ別ニ違ハヌノデ、全然消滅シテ居ラヌモノト思ヒマス、実ハ其事ニ就イテ本日開会ノ劈頭第一ニ会社ハ云々ト云フ説ヲ提出シヤウト思ヒマシタカ遅参ノタメニ申スコトガ出来マセヌデシタガ、此第三・第四・第五ヲ議シ了ツタ後ニ「但シ会社ハ」ト云フ一項ヲ起ス動議ヲ提出シヤウト思ツテ居ルノデゴザイマス
○五十二番（東京、中野武営君）　三十七番ノ御趣意ハソレニ相違ナイ
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ガ、要スルニ会社組織ノモノハ利益ヲ標準トスルト云フ動議ヲ改メテ御出シニナラヌ以上ハ、此処デハ消滅シテ居ルト思ヒマス、サウ認メテ居リマス、ソレ故ニ十二番或ハ九番等ノ御説ガ出ル所以ナンデス、併シナガラ之ヲ削除ニナツタ以上ト云フテモ、復ビ提出スルコトガ出来ヌト云フコトハナイノデアリマス、而シテ第二ノ所ニ就キマシテ段段御修正説モアルヤウデゴザイマスガ、畢竟スルニ、其利益ナリ或ハ貸付金ナリヲ以テ標準トスルト云フノハ、丁度第一ニアリマスル通リ売上金額ヲ以テ課スルト売上高ガ多イモノデモ利益ノ少イモノガアリ売上高ガ少クテモ利益ノ多イモノガアルカラ、売上高ニ依ルヨリモ利益トシタナラバ大ニ公平ヲ得ルデアラウト云フ御趣意カラ出テ居ルニ相違ナイ、如何ニモ其御説ハ其通リデアリマス、併シナガラ本案ハ其不公平ヲ救フガタメニ等級ト云フモノヲ各種類ニ分ツテ立テルト云フコトニナツテ居ルノデアリマス、第一販売業ニ於テモ売上金額ヲ課税標準トナスコトヽアツテ、万分ノ五ナラ万分ノ五、万分ノ十ナラ万分ノ十ト極メテ、ソレデ縛バルト云ヘバ不公平デアルガ、其中□《（ニカ）》等級ヲ設ケルノデアルカラ差支ナカラウト思ヒマス、ソレカラ第二項モ同様デゴザイマス、資本金ト云フモノヲ標準ニ取ルケレドモ、等級ト云フモノハ営業毎ニ種類ヲ分ツテ立テルノデスカラ、第一トハ権衡ガ対ニナル、上遠野君ガ先刻東京案ニ対シテ色々御責メニナリマシタガ――賃貸価格ガ不公平デアルト云フコトヲ知ツタナラバ何故資本金ノ不公平ナルコトヲ知ラヌ、自家撞着デアルト御責メニナリマシタガ、唯資本金額ト云フ文字ダケヲ以テ責メレバサウデアリマスガ、若シ之ヲ責メルナラバ売上金額ト云フ所ニ於テ責メナケレバナラヌ、売上金額ト云フ所ニ於テハ原案ニアルトコロヲ採ツテ居ル、即チ現法ニアルトコロノ売上金額ト云フコトヲ採ツテ居ル、唯現法ト違フトコロハ杓子定規ニ一本槍ニ取ルト云フトコロガ違フノデアル、此原案ニ於テハ其不公平ヲ匡救シテヤリタイト云フ趣意ナノデ、詰リサウスレバ均一ニナルノデゴザイマス、今御責メニナルノハ資本金額ヲ標準トシテ其税率ヲ万分ノ五ナラ万分ノ五、万分ノ十ナラ万分ノ十ト分ツト云フコトニ就イテ御責メニナツタコトデゴザイマスカラ、此原案ガ等級ヲ立テ、ソレヲ実際ニ行フト云フコトヲ御承知下スツタナラバ、アノ御責メ言葉ハナカラウト思ヒマス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　唯今五十二番カラ成程道理ハ宜イガ、会議ノ上カラ「其二、一個人ノ営業云々」ノ項ハ消滅ニ帰シテ居ルト仰セラレマシタガ、若シ消滅シテ居ルモノナラバ、第一項ノ議決前ニ消滅シテ居ルト云フ御説ガ出ヅベキ筈ノモノデ、即チ第一項ノ此物品販売業ノ所ガ決シマシテ、第二ノ所ニ往ツテ……
○五十二番（東京、中野武営君）　会社税法ヲ別ニスルト云フコトガ消滅シテ居ルト云フ積リデゴザイマス、其二ノ「一個人ノ営業ニ対シテハ云々」ト云フノハ消滅シテ居ラヌト云フノデアリマス、ソレハアナタノ御説ノ通リデゴザイマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　此二ノ項ダケハ如何デゴザイマス、決ヲ採ラウト思ヒマスガ……
　　　〔「採決、採決」ノ声起ル〕
 - 第22巻 p.136 -ページ画像 
○会長（東京、渋沢栄一君）　二ハ資本金額ヲ課税ノ標準ニスルト云フノガ原案デゴザイマス、三十七番ノ御動議ハ銀行業ハ……
○十二番（浜松、中村忠七君）　其二ヲ議スルト云フコトハ賛成者モアリマスルカラ、之ヲ先ニシテ願ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　三十七番ノ御発議カラ先キニ決ヲ採ツタ方ガ宜シカラウト思ヒマスガ……
○十六番（桑名、平野美純君）　既ニ会社税ト云フモノヲ別ニ置クト云フコトヲ否決致シマシテ別段ニ此第二項ノ中ヘ差加ヘルト云フコトニ対シテハ私ハ立案者ニ質問ヲ致シタイト思ヒマス、ソレニ就キマシテハ三十七番ノ御修正説モゴザイマシタガ、何ニシロ是ハ第二・第三・第四・第五ト種々営業ノ種類ガ多ウゴザイマスヤウデスガ、是ハ収益是ハ資本金ニ依ルト云フヤウナコトヲ一々修正スル時分ニハヅツト通ジテヤラナイト、アトヲ議スル時ニ狂ヒヲ生ジハシナイカト考ヘマスカラ、モウ少シ明カニ修正ヲ願ツテ、サウシテ一緒ニ議スコトニ致シタイト思ヒマス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　今順序ニ依ツテ議事ヲ開イテ居ルノデゴザイマスカラ、今此処デ修正ヲ加ヘナクテモ三読会ノ時ニ十分ニ修正ヲスルコトガ出来ルト思ヒマスガ……
○五十二番（東京、中野武営君）　今ノ御説ニ就イテ一言述ベテ置キマスガ、此原案ハ御承知通リ一個人ニ課スルコトヽ会社組織ニ課スルコト別ニ法律ヲ設ケルト云フ意見デゴザイマシタガ、昨日ノ議事デ既ニ会社税ト云フモノヲ別ニ営業税以外ニ必要ガナイト云フ御説ガ出テ多数ヲ占メテ御修正ニナリマシタ、ガ本員等ハ依然前説ヲ持ツテ居リマス、併シ一旦削除ニ決シタモノヲ再ビ提出スルコトハ議事ノ規則トシテ為シ得ラルルコトデゴザイマセヌカラ沈黙ヲ致シテ居リマス、昨日ノ決議ニ依ツテ見レバ、会社組織ノモノハ営業ノ利益ヲ目的トスルト云フコトニナツテ居リマスカラ、サウスレバ此一個人ノ営業ニ対シテハト云フ文字ハ、ソレニ対照ヲシテ参リマスカラ、斯ウシテ置イテモ敢テ差支ナイト云フ考ヲ持ツテ居リマス
○五番（長崎、松田源五郎君）　既ニ此会社ヲ別段ニ設ケルト云フコトガ否決ニナツタ以上ハ、其二ハ一個人ノ営業ニ属スルコトデゴザイマシテ、其二ノ中ニ加フベキモノデナイト思ヒマスカラ、アトニ加ヘルヤウト致シタウゴザイマス
○九番（金沢、山田清三君）　九番ハ収益ト云フコトニ改メタイト云フ修正説ヲ出シテ置キマシタガ賛成ガナイデス、故ニ今三十七番ノ説ハ少シク其中ニ分類ガ分ツテ居ルト雖モ、前ニ述ベタ如ク収益金ヲ目安ニスルト云フコトヽ略ボ似テ居リマスカラ、三十七番ノ説ニ賛成ヲ致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　三十七番ノ説ヲ採決致シマス、三十七番ノ御説ハ「其二」ノ項目ノ「二」ノコトデゴザイマスガ、資本金額ヲ課税ノ標準トスルト云フコトヲ改メテ、各種ニ分ツテ居リマス、銀行業ハ総益金、保険業ハ保険料、金銭貸付業ハ貸付金額、其以下ハ収入金、之ヲ課税ノ標準トスルト云フ御修正説デゴザイマス、此御説ニ御同意ノ方ハ御起立ヲ願ヒマス
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　　起立者　　少数
○会長（東京、渋沢栄一君）　少数デゴザイマス――次ギハ原案ニ就イテ採決ヲ致シマス、此資本金額ヲ課税ノ標準トスルト云フ説ニ御同意ノ御方ハ御起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数デゴザイマス――ソレカラ今十二番カラ第二ノ「其二、一個人ノ営業ニ対シテハ云々」ト云フ項ヲ削除シヤウト云フ御動議ガ出マシテ、是ニ対シテハ五十二番カラ既ニ申述ベラレタヤウデゴザイマスガ、昨日第二ノ其一即チ会社税法ヲ別ニ設ケルヤ否ヤト云フ事ヲ議スル時ニ、会社ニ対スル課税法ハ一個人ト同様ニスルト云フ御精神デ御議決ニナツタトハ思ヒマセヌガ、若シ果シテサウデアツタナラバ、其一ノ代リニ他ノ項ニ於テ此事ヲ列記スルト云フ御動議ヲドナタ様カラカ御提出ニナルデアラウト会長ハ心得テ居リマスカラ、其二ノ「一個人云々」ト云フコトニ対シテ十二番ノ削除説ガ出テ居リマスケレドモ、是ハ別ニ削除説ガ出ナイデモ宜イヤウニ思ツテ居リマスガ、御議決ノ御精神ハ如何デゴザイマセウ、私ノ聞キ違ヒデゴザイマセウカ
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　会長ノ御説ノ如ク、是ハ今此処デ決スルニ及バヌ、後ニ至ツテ会社ハ別ニスルト云フコトモ議決ニナリマスル、全ク個人的ノモノバカリニスルト云フコトニナツタナラバ、是ハ二読会ニ於テ議スルコトハ出来ナイカラ、第一ト云フ所ノ物品販売業ニ於テ議論ハ出来ナカツタノデゴザイマス、然ルニ突然「其二」ノ所ニ於テ逆戻リヲスルト云フコトハドウモ自分ハ可笑シカラウト思ヒマス
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　三十七番ト同感デゴザイマス、昨日ノ決議ノ精神ト云フモノハ即チソレダ、会社組織ノモノニ対シテハ特ニ斯ウ云フ課税法ヲ設ケルト云フコトハ要ラナイト云ツテ否決シテ仕舞ヒマシタガ、此課税法ノ第十二条中ニ是ハドウシテモ挿入セヌケレバナラヌト云フ精神ヲ持ツテ居リマスカラ、一個人ト云フノハ極ク必要デアラウト思ヒマス
○十二番（浜松、中村忠七君）　諸君カラ折角御注意ガアリマシタガ、私ハドウシテモ服スルコトガ出来ナイ、唯今三十七番・四十一番カラ御述ベニナツタコトモアリマスガ、是ハ矢張リ五十二番カラ述ベラレタ如ク、単純ニ其一ト云フモノヲ削除シタノデゴザイマス、唯今三十七番ガ一ヲ議スル際ニ此説ヲ唱ヘズシテ、二ヲ議スル時ニ当ツテ言フノハ間違ヒダト言ハレマスガ、一ヲ削リマス前ニ会長ニ伺ヒマシタトコロガ存シテ居ルト云フ仰セデゴザイマシタカラ、本員ガ玆ニ削除説ヲ提出シタノデゴザイマスガ、既ニ個人ト法人ト区別スル以上ハ殊更ニ玆ニ之ヲ置クニハ及バヌ、蛇足ニナリマスカラ省キタイト思ヒマス第二ノコトニ就イテハ――一個人ト会社ノ区別ノコトニ就イテハモウ五十二番ガ縷々御述ベニナリマシタカラ私ハ敢テ喋々致シマセヌ、甚ダ会長ノ意ニ悖リマシテ不敬ノ至リデゴザイマスガ、矢張リ前説ヲ維持致シマス
　　　〔「採決、採決」ノ声起ル〕
 - 第22巻 p.138 -ページ画像 
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　最早陳述ニ及ビマセヌガ、兎ニ角ソレハ十二番一己ノ御考ヘニ過ギナイ、即チ第一・第二ト経過シタ以上ハ、ソレヲ削ツテナイ以上ハ固ヨリ存シテ居ルンデス
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ十二番ノ「一個人ノ営業ニ対シテハ云々」ト云フ文字ヲ削除スルト云フ御説ガ出テ、是ニ御賛成ガアツテ成立ツテ居リマスカラ採決ヲ致シマス、十二番ノ削除説ニ御同意ノ御方ノ御起立ヲ請ヒマス
　　起立者　　少数
○会長（東京、渋沢栄一君）　少数――モウ余リ時間ガ後レテ参リマスカラ、今日ハ是デ議事ヲ止メル外ゴザイマスマイ、今日ハ是デ議事ハオシマイト致スヤウニ仕リタイト思ヒマスガ、如何デゴザイマス
　　　〔「サウ願ヒマス」又「ヒヤヒヤ」ト呼ブ者アリ〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　就キマシテハ明日ハ日曜、明後日ハ祭日ニ当ツテ居リマスガ、明日ハ先刻申上ゲ置キマシタ通リ当東京会議所会員一同カラ諸君ニ晩餐ヲ差上ゲマス積リニナツテ居リマスカラ、ドウカ議事ヲ御休ミヲ願ヒタウゴザイマス、明後日ハ祭日デゴザイマスカラ休ミニナルコトヽ考ヘテ居リマスガ、是モ御便宜ニ依ツテ如何様ニ致シテモ宜シウゴザイマス
○五番（長崎、松田源五郎君）　明後日ハ祭日デゴザイマスカラ休ンデモ宜イト思ヒマスガ、明日ダケハ半日ヤツテ戴キタイト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　私ハ一向厭ヒマセヌガ、明日御客様ヲスルニ就キ会議所ノ事務員ガ手伝ヒヲ致シマスノデ少シ……
○五十二番（東京、中野武営君）　十二時マデハドウニカ都合ガ付キサウナモノデゴザイマスナ
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ明日ハ九時ニ開会致シマシテ十二時マデニオシマイニ致スコトニ仕リマス、サウシテ明後日ハ御休ミ……今日ハ是デ散会ヲ致シマス
　　午後五時二十分散会

明治二十九年十一月二十二日午前九時四十五分開議
　　出席委員　　　　　四十二名　○氏名略
○会長（東京、渋沢栄一君）　開会ヲ仕リマス、昨日ハ其二ノ一・二ダケガ議シ了ツテ居リマスルデ、今日ハ三カラ御議シアルヤウニ願ヒマス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　固ヨリ此第三・第四・第五ハ別ニシテモ宜シイノデゴザイマス、予ネテ昨日モ此コトニ就イテ、其二、一個人ノ営業ハト云フニ対シテ、畢竟第二ノ中ノ其一トアル営業税法以外ニ会社法ヲ設ケルコトガ、一昨日会議デ削除ニナツテ居リマス、其節モ自分等ノ述ベマシタ説ハ全ク営業税法ヨリ別ニシテ課税スルト云フコトガ不同意ナンデ、会社組織ノモノハ別段ニスルコトハ取リモ直サズ原案ノ趣旨デアリマシタ、而シテ文章ノ大体ノ精神ハ営業税法ヲ別ニ創定スト云フコトガ主眼ニナツテ居リマス故ニ削除シタ、此二ニ於テ其コトガ許サレテ左様決セラルヽモ、亦第五マデヲ御議シニナツテモ構ヒマセヌガ、其要ハ第六ト致シマシテ会社組織ヲ以テスル営
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業ハ純益ヲ以テ課税標準トスル、左リナガラ此議場デ順ヲ追フテ三・四・五ト御議シニナルナラバ其トキニ自分ハ提出スル、敢テ御差図ヲ乞ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　御迷ヒモ生ジマスデ、今三十七番ノ御説ガ諸君ノ御賛成ガアリマスナラバ、一旦箇条ニ第一ヲ削除シマシタカラ、是ニ代ル修正説ガゴザイマスナラバ直チニ今御述ベニナツテモ差支ナカラウト考ヘル
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　議長ノ御指揮通リデ、ドチラデモ宜シウゴザイマスガ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　三十七番ノ御求メハ、第二ノ其一ヲ会社組織ヲ以テスル営業ハ其純益金額ヲ課税標準トスル事ト云フ文章ニシテ、是ニ対シテ理由ノ立方ガ違ヒマスカラ其理由ハ後ニシテ、其項ヲ代リニ置キタイト云フノデスナ
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　左様デス
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　十一番カ初マリカラ三十七番ニ賛成スルノモ、我会議所カラ提出シタノモ、一番初メニ会社ト云フモノヲ置キタイ、会社ト云フハ純益金ニシタイト云フノハ我精神デアツタノデゴザイマスカラ御参考マデニ申上ゲマス、会社税法ヲ別ニ設ケルト云フノヲ否決シタノモ多分諸君モサウ云フ御考デアラウト考ヘル
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　自分共モ其議ヲ出シマシタナラバ必ズ三十七番同様ノ意見ヲ持ツテ居ル、既ニ第一ヲ議シ第二ニ及ビ其一・其二ト云フノヲ議了ヲ致シマシテ、今日ハ第三ニ至ツテ議スト云フ場合ニナツテ居リマスデ、私ハズツト終リマシタ後ニシタイ、此二ニ就イテ書クト云フナラバ唯今此事ニ対シテ議論モ宜シウゴザイマセウガ、遡ツテ書クトカ終リニ書クトカドツチカニ致シテ、会社組織ハドウスルトカ始メノ冒頭ニ書クトスレバ、詰リ三読会ノ場合ニ此処ニ挿入シタイト云フ考ヘヲ持ツテ居リマス故ニ、矢張リ此順序ニ致シマシタ後、三読会ノ時分ニ冒頭ニ置クカ、二次会ノ終リニ此処ニ挿入スルカドチラカニ致シマスコトヲ持出シマス
○四十二番（四日市、井島茂作君）　四十二番モ四十一番ニ同感デゴザイマス
○五十番（岡崎、小野権右衛門君）　一寸聞漏シマシタカラ三十七番ニ御尋ネシタイ、此処ニ及ンデ第一ノ冒頭ニ会社組織ヲ入レタイト、斯ウ云フノデゴザイマスカ――私ハ賛成致シマス、サウ致シマセヌト此三・四・五ト終リマシタ後ニ入レテモ差支ナイガ、既ニ昨日以来先決問題デゴザイマシテ、三ガ四ニナルト云フト議事ノ進行ニ差支ヘルカラト云フコトモアリマスガ、私ハ此処ニ於テ三項ニ挿入シタイ、斯ウ云フ意見デゴザイマス
○六番（赤馬関、瓜生寅君）　私ハ四十一番ヲ賛成スル者デゴザイマス唯今一・二ヲ議シマシタ間ニ於テハ議事ガ錯雑スルデアラウト考ヘル此土木業ニシテモ、今日ノ現況デハ多ク会社組織ニスルモノデアリマス、此各項ハ皆会社組織ニナルモノデアリマスカラ、第五マデヲ議シテ仕舞ツテ致シタイ
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　別ニ先キニト申スノデハゴザイマ
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セヌ、感ジテ生ジマスルノハ、畢竟会社組織ノ営業ハ云々ト云フコトガ曩キニ決シテ居リマシタナラバサウ云フコトハナイ、故ニ昨日自分ハ提出ヲ致サウト思ヒマシタケレドモ、唯税ノコトヲ御述ベニナツテ居ル所デアリマシタカラ差控ヘマシタ故ニ、此コトヲ会長ニ御差図ヲ乞フマデニ述ベマシタノデ、敢テ第一ノ所ニ入レタイト云フノデハナイ、又此会社組織云々ト云フコトニナリマシテ、此理由書ヲ掲ゲテ取リモ直サズ此精神ガ此処ニ存在スレバ宜イ、予テ二読会ヲ開カレテ居リマスカラ、二読会ノ順序ニ依ツテソレマデモ差支ナイト云フコトヲ述ベタ、敢テ自分ノ説ヲ提出シタガタメニ議場ニ種々ノ議論ヲ為シテ之ヲ主張スルコトハナイノデアリマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ会議ニ掛ツテ居リマスカラ、三カラ議スヤウニ致シマセウ、詰リ仕舞ニ於キマシテ「左ノ」ト右ノ各条ト云フ趣意ガ違フダケデ、仕舞マデ往ツテ御定メニナツテモ御論旨ハ同ジコトデ、唯前後ダケノコトデゴザイマスカラ、三カラ議シマシテ御異議ガゴザイマセネバ左様致シマス
　　　〔「異議ナシ」ノ声起ル〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ此三ノ土木受負業、之ヲ御議シヲ願ヒマス
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　一寸昨日ハ已ムヲ得ヌ事故ガアツテ欠席致シマシタカラ、第一・第二ノ要領ヲ一寸伺ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　第一ハ、矢張リ原案通リ売上金額ト云フコトニ決定仕リマシタ、収益ノ方ガ宜カラウ、等級ヲ立ツルコトガ宜シクアルマイト云フ修正ガゴザイマシタガ、是ハ少数デ消滅致シマシタ、第二ハ資本金ヲ収益トスル――収益若クハ収入金トスル、此各商業ニ就イテ区別ヲ立テタ方ガ宜カラウト云フ御説ガアツテ、是ハ大分御賛成モゴザイマシタガ、矢張リ少数デ、原案ノ通リ決議致シテ居リマス
○五十番（岡崎、小野権右衛門君）　唯今三十七番ノ御説モゴザイマシタガ、遂ニ第三ニアリマス土木請負業ヲ議スルコトニ御宣告ニナリマシタガ、私ハ便宜上此処ニ願ヒタイコトガアル、第三・第四・第五ト云フモノハ殆ンド第一・第二ヲ議シタ景況ヲ見マスレバ、大抵第四ノ如キハ土木ノ請負金額ヲ以テ課税標準トスルコトガ相当デアラウト云フコトハ、曩キニ第一・第二ヲ議スル時分ニ大抵意嚮ハ定ツタヤウニ自分ハ存ジマス、ドウゾ是ハ第三・第四・第五ト云フモノハ関聯シテ御議シニナルコトハ出来マスマイカ、私ノ意見ハ三・四・五ト云フモノハ同時ニ御議シニナルヤウニシタイ
○会長（東京、渋沢栄一君）　同時ニスルト云フト又分ケルト云フ御議論ガ出ル、ソレヨリ三ダケヲ済シテ、ズツト往クト直グ済ミマス
○五十番（岡崎、小野権右衛門君）　サウ云フ御意見ナラバ強イテ申スノデハゴザイマセヌガ、合併シテモ一向私ハ差支ヘナイト存ジマス
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　三十一番ハモウ既ニ一・二ト原案通リニ決議ニ相成リマシタ以上ハ、此項ハ至ツテ種類モタントナイカラ矢張原案ガ宜シイ
○二十八番（堺、上林総三郎君）　本員モ原案ニ賛成致シマス
 - 第22巻 p.141 -ページ画像 
○九番（金沢、山田清三君）　九番ハ相替ラズ収益ノ論ヲ持出スヤウデゴザイマスガ、此土木請負業モ此請負金額ト云フモノヲ収益金額ト修正シタイ、ソレハ昨日来ノ景況デアルト到底行ヘヌコトカハ存ジマセヌガ、我会議所ノ意見デゴザイマスルデ、私ハ委員ノ本分トシテ何処迄モ主張シタイ、ソレト云フモノハ、土木請負ナリ此土木請負業ニ於テハ随分請負金額ハ多額ニナツテモ利益ヲ得ルコトハ少ナイモノデゴザイマス、此税タルヤ利益ニ依ツテ生ジテ来ルコトハ明カナコトデス既ニ利益ニ賦課スルト云フコトガ相当デアル、固ヨリ此請負金額ト云フモノデ損ヲ来シ、或ハ利益金ヲ没収サレル場合ニ至ツテモ請負金額ニ対シテ税ヲ課スルコトハ不当デアルト云フ考デ、故ニ是ハ収益金ニ賦課スルコトハ税法ノ上ニ於テ相当デアル、故ニ之ヲ修正致シマス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　自分ハ原案ヲ賛成スル、昨日ハ此第二ノ項ニ於キマシテ全ク東京案即チ原案ハ不当デアル、収入若クハ収益デアルト項ヲ分ツテ修正意見ヲ述ベマシタケレドモ、不幸ニシテ少数デアツタ、初メカラ此土木請負業モ或ハ損ヲスルト云フ御話モゴザイマシタガ、損ヲスルト云フコトハ独リ土木業ニモ限リマセヌ、土木請負業ハ資本ニモ依リマス、是ハ請負金額ニ依ツテスル、土木請負ノ如キハ右ノ如ク収益ノ少ナイモノトシマスレバ即チ課税ノ上ニ於テ自カラ斟酌スルコトモ出来マス、依ツテ此項ニ於キマシテハ全然原案ヲ賛成致シマス
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　四十一番モ此三ニ於キマシテハ原案ヲ賛成シマスル、実ハ意見書ヲ提出シマシタ時分ノ趣意ハ、請負益金ニ課税ト云フノガ希望デゴザイマシタケレドモ、既ニ一・二ガ原案ノ通リニ可決シマシタ以上ハ、今ニ至ツテ益金ニ至スコトハ前後甚ダ不順序ナモノガ出来マス、請負金額ト云フモ独リ率ニアルモノデゴザイマシテ、請負金額ヲ標準ト致シマスト雖ドモ、其率ガ低クゴザイマスレバ、敢テ益金ト云フコトモ異ナルコトカアルマイカト云フ考ヘデゴザイマス、兎ニ角三読会デハドウ云フ意見ヲ提出スルカ知レマセヌガ、二読会ニ於テハ先ヅ原案ヲ賛成致シマス
　　　〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　十一番モ原案ニ賛成
○会長（東京、渋沢栄一君）　唯今収益ト云フ九番ノ御説デゴザイマシタガ、御賛成ガナイヤウデゴザイマスカラ、三ノ項目ハ原案ニ依ツテ採決致シマス、原案ニ同意ノ方ノ御起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数――四ノ項目ニ移リマス、席貸業・料理店業・旅宿業、是ハ建物賃貸価格及従業者ヲ課税標準トスル項デゴザイマス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　此四ノ項目ハ之ヲ修正スル、是ハ総テ各業共ニ矢張リ収入金額ニ課税スル積リナノデ、固ヨリ此賃貸価格ヲ課税標準トスルモ共ニ不適当故、自分ハ単ニ収入ニ課スル考ヘデゴザイマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　収入金額ト云フ修正ヲシヤウト云フ御見デスナ
 - 第22巻 p.142 -ページ画像 
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　サウデス
○二十六番（神戸、岡田元太郎君）　一寸収入金額ト云フコトニ就イテ御尋ネシマスガ、収入金額ト収益ト違フノデスナ、上リ高デスナ
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　サウデス
○二十七番（尾ノ道、石井聿三君）　二十七番ハ三十七番ニ賛成致シマス
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　十一番ハ三十七番ニ賛成デスガ、我ガ会議所モ上リ金高ト云フコトニ考ヘテ居ルカラ、ソコハドチラデモ宜シイ
○十二番（浜松、中村忠七君）　本員ハ此原案ガ最モ宜カラウト思ヒマスル、既ニ是ハ現法ト同様デゴザイマスルガ、強チ現法ノ如何ニ拘ハラズ、最モ原案トシテ唯今審議シテアルガ宜シイ、ソレニ就キマシテ収入金額ト云フ反対ノ御意見ガ出マシタガ、成程収入ニ課シマスルノハ公平ニナルカ知レマセヌガ、席貸業・料理店業抔ト云フモノハ最モ目的トスル営業ガ賃貸価格ヲ課税標準トスベキ性質ヲ持テ居ルカラ、之ニ課税スルノハ相当デアル、中ニハ大ナル家屋ヲ持テ居ル者デモ不繁昌モゴザイマセウシ、又家ハ小サクテモ繁昌スルノモゴザイマセウ併シソレハ其人ノ勤勉ト営業ノ不勉強トニ因ル結果デゴザイマスカラ徹頭徹尾原案ヲ可ト致シマス
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　一寸三十七番ニ御問ヒシマスガ、矢張従業者ハ此儘デゴザイマセウナ
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　従業者ハヤメルノデ、唯右ハ収入金額ヲ課税標準ト為ス事トシテ、従業者及ビ建物賃貸価格ヲ標準トスルノヲ総テヤメマシテ、右ハ収入金額ヲ以テ課税標準トスル、斯ウ云フノデス
○九番（金沢、山田清三君）　九番ハ「及従業者」ノ四字ヲ削除シタイ其所以ハ、此営業税法ニ於テ或ハ賃貸価格、或ハ従業者、一ツノ税ヲ色々ニシテ取ルニハ及フマイト思フ、既ニ一・二・三ニ及ブマデモ従業者ト云フコトハ皆無イデス、此項ニ至ツテ必ズ従業者ト云フモノヲ設ケナケレバナラヌト云フコトハナイト思フ、ソレ故賃貸価格ヲ標準トシテ其一ヲ以テヤル方ガ宜シイト思フデスカラ之ヲ削除シタイ
○二十九番（堺、錦池千鶴之助君）　二十九番モ原案ヲ賛成スルモノデゴザイマス、之ヲ是非原案ニシナケレバナラヌト云フノハ、前ニ遡リマシテ物品販売業ナドハ已ニ売上金額ヲ標準トスルコトニ為テ居ル、今更此項ヲ三十七番ノ如クニシマスレバ大ニ権衡ヲ失スル、其理由ハ先刻十二番ガ述ベラレタル如ク、業務ノ上ニ就テノ関係カラ其処ニ至リマスノデアリマスカラ、無論東京案ガ正当ナモノト考ヘマス
○二十六番(神戸、岡田元太郎君）　唯今二十九番ハ此項ニ対シマシテ物品販売業ト振合ヒガイケナイト云フ御論ガ出マシタノデゴザイマスガ、併シ是等東京案ニ依リマスト、各業ニ依ツテ等級ヲ附スルト云フコトニナリマスカラ、少シモ御心配ハナイト思フ、殊ニ徴税ノ標準トスベキモノハ何ガ宜イカト云ヘバ収益ニ越シタコトハナイ、併シナガラ収益ト云フモノハ取調上ノ都合モアリテ余儀ナク売上トカ収入トカト云フコトニナル、是等ハ収入金トシテ其業体ニ依ツテ分ケルコトニ
 - 第22巻 p.143 -ページ画像 
シマシタナラバ頗ル適当ナ標準ヲ得ラレル、又従業者モアリ、賃貸価格モアルト云フコトニナツテ頗ル煩多ナ税法ニナルカモ知レマセヌガ唯此三業ニ至ツテ収入金額ト云フコトニシマスレバ、即チ賃貸価格トカ従業者トカ云フモノガ是レダケデ取レテ仕舞フ、無論私ハ三十七番ノ説ヲ賛成スル
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　別段陳述シマシタ所カラ又述ベルニモ及ビマセヌガ、如何ニモ第一ノ物品販売業ト釣合ヲ付ケルノハ一向理由ハナイ、第一ハ物品販売業即チ売上金ヲ以テ課税標準トスル、席貸業・料理店業ハ売上トハ云ヘナイ、其釣合ヲ取ルニハ斯ノ如クシナケレバナラヌ、従業者ヲ持出シテスル、従業者ハ同一デスル、矢張リ料理屋ニシテモ旅人宿ニシテモ大変旅客ノ繁昌ノ時ハ従業者ヲ二十人モ三十人モ置ク、又霜枯時ニ至ツテハ少ナクスル、スルト平均スルトカ何トカ云フテ種々煩多ナコトヲセニヤアナラヌ、ソレデアルカラ収入金額ヲ課税標準トスルト云フテ等級ヲ立テレバ宜イ、却ツテ斯ノ如クシテ置イタ方ガ不公平ヲ避ケルト云フノデアリマス
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　此第四デゴザイマスガ、是ハ如何ニモ三十七番ノ説ノヤウニ直シマシタ方ガ前ノ方カラモ釣合ガ宜イ、独リ此処ニ至ツテ斯ウ致シマスノハ甚ダ好マシカラヌ、他ノ業ニ於テ従業者ガアルカト云ヘバ決シテサウデナイ、ノミナラズ此処ニ斯ウ云フコトヲ書クノハ前ノ釣合上カラ考ヘマシテモ三十七番ノ説ガ宜イト思ヒマスカラ、三十七番ノ説ニ賛成致シマス
○四十五番（知多、天野伊左衛門君）　私ハ九番ノ説ニ賛成シマス、原案ノ中ノ従業者ヲ除クト云フ九番ノ説ニ賛成シマス、独リ此項ニ従業者ヲ存スルノハ甚ダ意味ガ分ラヌ、他ノ従業者ヲ廃シテ是ニ従業者ヲ置クト云フノハ、或ハ賤業ナルヲ以テト云フヤウナ意味ヲ以テ置カレタカモ知レマセヌケレドモ、九番ノ説ニ賛成致シマヌ
○十二番（浜松、中村忠七君）　少シ原案ノ同意ニ就イテ申明ヲ致シマスガ、此項ニ就キマシテ従業者ノアルト云フノハ特種ナ訳デアツテ、目立ツト云フ九番ノ御考ガアルヤウデゴザイマスガ、此項ニ限ツテ従業者ノアルノガ最モ其当ヲ得タモノデアル、他ノ物品販売業以下ニ就キマシテハ従業者ヲ置クノハ殆ンド人頭税ニ比シタヤウナモノデ宜シクナイ、ソレ故ニ私ハ反対シテ居リマスガ、貸席業・料理屋業ソレ等ノ従業者ハ半バ酌取女ノヤウナモノ、半バ営業ヲ活動サセルモノデアルカラ、是等ニ向ツテ課税スルノハ他ノ普通ノ営業ト異ナルモノデアリマスカラ相当デアル、又収入金額ト云フコトヲ言ハレマシタガ、収入金額ヲ是等ニ就イテ正当ニ取調ベルノハ尤モ六ケ敷イノデアル、収入金額ノ解釈上余程面倒デアル、一例ヲ挙ゲレバ、旅人宿ノ茶代ノ如キモノダトカ、従業者ガ纏頭ダトカ祝儀ダトカ云フ如キモノヲ取ルノガ相当ト思フテ居ル、故ニ宿泊料ト云モノ丈ケヲ収入ニ致シマシテ、而シテ茶代ノ如キハ収入ノ届出ヲセヌモ止ムヲ得ン、料理店ノ如キニ行キマシタナラバ尚ホ一層甚シキモノデ、到底表面ノ収入金額ト内部ノ収入金額ト何レカ一様ニ行カヌト其判定ガ出来ヌ、然ルニ収入金額ニ課税スルノハ最モ不公平デアルカラ此原案ガ相当ト思ヒマス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　決シテ収入金ガ無イト云フコトハ
 - 第22巻 p.144 -ページ画像 
ナイ、即チ茶代ノ如キハ帳簿ニ付ケネバ仕方ガナイガ、所謂収入ト云フモノハ必ズ知ラレル、ソレヲ帳簿ニ書カナイト云フコトニナレバ、売上金デモ何デモ書カナイコトニナレバソレ迄、実際収入シタモノハ収入ト看做スコトハ当リ前ノ話デゴザイマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　御論旨ハ大体尽キマシタヤウデゴザイマスデ、第四ノ項目ニ就キマシテ、三十七番ノ修正御意見即チ此建物賃貸価格及従業者ト云フ字ヲ削ツテ収入金額ヲ以テ課税標準ト為ス事ト云フコトガ一ツノ修正御動議デゴザイマス、是ハ大分御賛成ガゴザイマス、是カラシテ決ヲ採リマスヤウニ仕リマス、三十七番ノ収入金額ニ修正シヤウト云フ御説ニ御同意ノ御方ノ御起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ第四ノ項ハ三十七番ノ修正説収入金額ヲ以テ課税標準ト為ス事ト云フコトニ決定致シマシタ、サウ致シマスト九番説ハ採決ヲ止メマス、第五ニ移リマス
○四十七番（京都、中野忠八君）　曩ニ御宣告ニナリマシタガ着席ノ数ガ違ツテ居リマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　今申上ゲマシタ多数ハ間違ヒマシタ、一ツ点呼ヲ致シマス
○二十一番（富山、関野善次郎君）　点呼ヲ御用ヒノ場合デナイ、再ビ採決サレタナラバ或ハ九番ノ説ニ賛成カアルカモ知レマセヌカラ、多数デアルト云フコトニ決定シタコトハ御取消シニナツテ、後ノ修正説ニ就テノ採決ニ御取掛リヲ願ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ今ノ多数ハ取消シマス、ソレデハ九番説ニ就キ決ヲ採リマスヤウニ致シマセウ、九番ノ従業者ト云フ文字ヲ削除シヤウト云フコトニ御同意ノ御方ノ御起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　少数
○会長（東京、渋沢栄一君）　是ハ少数デゴザイマス、然ラバモウ一ツ原案ニ就イテ決ヲ採リマセウ、原案ニ御同意ノ御方ノ御起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　少数
○会長（東京、渋沢栄一君）　少数
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　唯今修正ノ動議モ原案モ過半数ヲ得マセヌノデ消滅シマシタ、併シ此席貸業・料理屋業・旅人宿業ニ対シマシテハ是非是ハ必要ナモノダラウト思ヒマスカラ、或ハ之ニ対シテ委員若干名ヲ設ケマシテ相当ノ案ヲ作ラセテ之ヲ議サナケレバナラヌコトダラウト思ヒマス
○四十七番（京都、中野忠八君）　四十一番ニ賛成デゴザイマスガ、第四項・第五項ヲ終リマシタ後ニ委員ヲ置クコトニ願ヒタイ
○会長（東京、渋沢栄一君）　四十一番サン、ソレデモ宜シウゴザイマスカ
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　ドチラデモ宜シウゴザイマスガ、此場合ニ申スコトダラウト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ第五ニ移リマスヤウニ仕リマス、公ナル周旋業・代弁業・仲立業・仲買業、右ハ報酬額ヲ課税標準トス
 - 第22巻 p.145 -ページ画像 
ルト云フ原案デゴザイマス
○二十八番（堺、上林総三郎君）　原案ニ賛成致シマス、是等ノ項ニ就キマシテハ別段異議ハゴザイマセヌ
　　　〔「異議ナシ」ノ声起ル〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　別ニ御異議ガナイヤウデスガ、第五ニ対シテハ採決シテ宜シウゴザイマセウカ――原案ニ賛成ノ御方ノ御起立ヲ願ヒマス
　　満場総起立
○会長（東京、渋沢栄一君）　総起立
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　曩ニ議長ノ御指揮ヲ乞フテ置キマシタガ、此場合ニ於テ即チ自然第一ト云フモノガ消滅シテ居リマスカラ、一トアルノハ其二トナル、其会社組織ヲ以テスル営業ハ其純益金額ヲ以テ課税標準トスルト云フ一項ヲ加ヘタイ、従ツテ此理由ナドハ原案ノヲ幾ラカ書カウト思ヒマシタケレドモ、咄嗟ノ間デ出来マセヌカラ、順序ノ如キハ三読会マデニ充分不都合ナキ文章ニ致シマセウ、先ヅ大体ニ於キマシテサウ云フ考デアリマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　三十七番ハ一番初メニスルノカ、一番仕舞ヒニスルノデスカ
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　前後ニ就イテハ異論ハナイ、併シ自分ノ説トシテハ其一ト云フ所ノ営業税法以外ト云フ場合ニ会社組織ヲ以テスル営業ハ其収入金額ヲ以テ課税標準トシテ宜シイト思ヒマスガ、去リナガラ唯ダ先キニ置クノハ同意ダケレドモ後ニ置クノハ不都合ダト云フ御説ガアリマセウガ、私ハ前後ハ争ヒハシマセヌノデス
○五番（長崎、松田源五郎君）　三十七番ニ一寸御相談ガゴザイマス、三十七番ノ御説ハ本員ハ固ヨリ賛成デハゴザイマスガ、最ウ少シ後ニ御廻シ下サイシマシテハドウデゴザイマス、営業云々ト云フコトヲ仕舞ヒマシテカラ御ヤリ下ダスツタナラバドウデゴザイマス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　場所ハ何処デモ宜シイノデゴザイマス
○五番（長崎、松田源五郎君）　ソレデハ会長ニ請求致シマス、営業云云ト云コトガ済ミマシテカラニ願ヒタイ
○会長（東京、渋沢栄一君）　以上各業ハ営業ノ状態ニ応ジ各営業ヲ若干ノ等級ニ分ツト云フ之ヲ議了シテカラノコトニスルノデスカ
○五番（長崎、松田源五郎君）　サウ願ヒタイ
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ以上各業ハ営業ノ状態ニ応ジ毎営業ヲ若干ノ等級ニ分チ云々、ソレカラ又毎営業ノ等級ヲ定ムルニ当リテハ各地適宜ノ区域内ニ営業税調査委員若干名ヲ置キ之ヲ調査セシムルコト、但シ営業組合アルモノハ其組合ヲ附託スルモ妨ケナシ、此二項ノ文章ニ就イテノ御議決ヲ願ヒマス
○五番（長崎、松田源五郎君）　此二項ハ本員ハ固ヨリ原案ヲ賛成致スノデゴザイマス、此二ツノモノハ即チ一ツハ等級ヲ分ツト云フコトデアル、一ツハ調査委員ヲ置クト云フコトデゴザイマス、等級ヲ分ツト云フコトニ就イテハ昨日カラ段々原案者及各賛成者モ御説ガゴザイマシタカラ敢テ贅言ヲ要シマセヌ、此営業調査委員ヲ置クト云フコトモ
 - 第22巻 p.146 -ページ画像 
之モドウモ止ムヲ得ヌモノデアラウト考ヘルノデゴザイマス、依テ此場合デハ必ズ此調査委員ヲ置カネバ実際取調上ニ困難デアラウト思ヒマスカラ之ヲ賛成スルノデゴザイマス、尚ホ此上ニ帳簿ニ記入ノ一定法ト云フコトヲ矢張リ此営業税法ニ設ケ置カネバ実際取調上ニ於テ如何デアラウカト云フコトヲ甚ダ懸念スルノデゴザイマス、ドウ云フ訳ト云フコトハ敢テ精ク申上ゲマセヌデモ宜敷御承知デゴザイマセウガ現在行ハレテ居リマスル所得税調査委員ト云フモノハドレ丈ケノ調査ガ出来テ居ルカ、ドウ云フ事実ガ挙ツテ居ルカト云フコトニ就イテ実際ヲ承ツテ見マスルニ、甚ダ其調査ノ困難ナル場合ガゴザイマス、ソレ故ニ所得調査ニ於キマシテモ種々ナ材料ヲ求メテ、或ハ株券ノ配当デアルトカ、或ハ公債ノ利子デアルトカ探偵シ得ラレル丈ケハ種々ナ材料ヲ以テ取調ベルト云フコトニ至ツテ居ルノデアル、ソレニシテモ未ダ調査ガ不充分デアル、甚ダ行キ届キ難イト云フコトハ世ニ聞ヘテ居ル、此営業税調査委員ハドレ丈ケノ調査カ出来ルカト言ヘバ、誠ニ困難ナル調査デハナイダラウカト云フコトヲ甚ダ懸念スル、ドウ云フ調査ヲシタナラバ宜シカラウト云ヘバ唯帳簿ノ記入ヲ明ラカニスルヨリ外ハナカラウ、此営業税法ヲ斯ノ如ク置キマスル以上ハ帳簿ノ記入法ヲ一定シナケレバ到底此調査ト云フモノハ出来ナイモノデアラウ、唯営業者ノ届ヲ以テ正シイモノトシテ放任シテ置キマシタナラバ、ソレハ手モ掛リマセヌデゴザイマセウガ、其中ニ種々ノ弊ノアルト云フコトハ申上ル迄モゴザイマセヌ、今日ノ場合デハ帳簿モ正確ニナル法ヲ設ケルヨリ仕方ガナイト考ヘル、依ツテ今ノ場合ノ所ノ最ウ一ツ先キニ斯ウ云フコトヲ加ヘテ置イタラバドウデアラウト考ヘマス「売上金額・請負金額・報償金額等ヲ以テ課税ノ標準トスル営業者ハ其金額ヲ記入スル一定ノ帳簿ヲ備ヘ、税務官又ハ調査委員ノ請求ニ依リ閲覧ニ供スヘキ事」文字ハドウデモ宜シウゴザイマセウガ、斯ノ如キ文字ヲ此中ニ加ヘテ置キマシタナラバ調査上甚ダ便利デハゴザイマスマイカ、他人カラ検査ヲ受ケルコトハ甚ダ好マシカラヌコトハ無論デゴザイマス、併シナガラ一旦此法ノ上カラ見マシタナラバ斯様ニ帳簿ノ一定スルコトヲ設ケテ置キマセンケレバ、唯売上金或ハ収入金額ト云フモノヲ此儘ニ知ルコトハ甚ダ困難デアリマス、他ヨリ推定シテ幾ラカト云フコトヲ見マシタ所ガ、本人ガソレヲ承諾シナイ以上ハ迚モ出来ヌコトデアラウト考ヘル、就イテハ斯ノ如キ文字ヲ加ヘテ置キマシテ兎ニ角帳簿ノ一定ト云フコトハ各業共ニ一定ト云フコトデ、課税標準ニナルベキ金額ヲ記入スルハ一定ノ法ヲ以テスルト云フコトニ致シテ置キタイ、今此文章ノ如キコトハ一寸仮リニ書キ置キマシタカラ議長迄差出シテ置キマス
○二十一番（富山、関野善次郎君）　私ハ昨日欠席シマシタ為メニ等級ト云フコトノ意味ヲドナタカ御尋ネニナツタカ知リマセヌガ、此等級ト云フノハ例ノ所得税ノ三百円所得税ヲ納メルハ何等ノ割合トカ云ヒマスガ、コレハサウ云フヤウナコトデハナクシテ、サウシテ何ンデセウネ、皆銘々カラ売上金高カ収入ノ金額ナリヲ書キ上ゲサセテソレヲ以テ等級ヲ定メル、斯ウ云フ意味ナンデスカ――然ラバ私ハ意見ヲ述ベマス、ソレデ昨日来第一カラ第五マデ段々決議シテ参リマシタガ、
 - 第22巻 p.147 -ページ画像 
ソレガ五ガ終ツテ唯今ノ所ハ等級或ハ営業税調査委員ヲ置クト云フコトガ議事中デアル、私ハ等級ト云フモノヽ如キヲ拵ヘマスルト課税ノ額ガ此標準ニ依ツテ課税ヲ算出スルト例ヘバ十円十銭トナルモノガ出来ル、或ヒハ九円九十銭ト云フ税ヲ納メルモノガ出来ルト想像シマスルト、等級ト云フモノニ当テ篏メテ行クトキニハ十円十銭ト云フモノヲ切リ下ゲテ何等ニシナケレバナラヌ、九円九十銭ヲ進マセテ何等ニシナケレバナラヌト云フノハ誠ニ明瞭ナ話デアル、彼所得税ノ等級ハ三百円以上千円未満ノモノガ何等ノ税率デアル、千円以上壱万円マデハ何等ノ税率ト云フモノデアル故ニ、決シテ九円九十銭ヲ拾円ニスル拾円拾銭ヲ拾円ニ減ズルト云フコトモナイ、実ニ等級ト云フモノハ斯ノ如キ不公平ヲ来ス、尤モ大体税法ガ近来地方府県ニ行ハレテ或ハ其商業地、或ハ東京府下ナラバ何処ハ一等ノ商業地デアル、何処何処ハ二等ノ商業地デアルト、商業ノ土地ニ等級ヲ分ケテヤルト云フガ如キ詰リ売上金高モ一定ノ法デナクシテ土地ニ等級ヲ付シテヤルト云フナラバ、或ハ等級ヲ置クト云フノハ手数ヲ省キ、又正確ナルモノヲ得ラレルカモ知レナイガ、等級ヲ分ケテヤルコトハ到底不公平ヲ招クノミナラズ、売上金額ノ書キ出シヲ取ツテ其税ヲ算出スルコトニナレバ、或ハ等ヲ置クナラバ一等カラ数万等ヲ置クト云フナラバ宜シイ、ソレ故ニ私ハ等級ヲ置クト云フコト及調査委員ヲ置クト云フコトハ甚ダ不公平ヲ招クモノデアルカラ必要ハナイト思フ
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　唯今何番カノ御説デゴザイマシタガ、私ハ原案ヲ賛成スルモノデ、且ツ此今ノ拾円拾銭ヲ繰下ゲ、九円九拾銭ヲ進メテ拾円トスルト云フ御説デゴザイマシタガ、蓋シ原案者ノ御精神ハサウデナイ、等級ヲ定メルニハ売上金高例ヘテ云ヘバ五百円カラ千円マデヲ十等ニスルトカ、千円以上千五百円迄ヲ九等ニスルトカ、其十等ニ当ルモノハ何円、九等ニ当ルモノハ何円、其間ハ調査ハアルケレドモ千円以上千五百円迄ハ二円ナラ二円、三円ナラバ三円サウ私ハ承知シテ居リマスガ果シテサウデアリマスカ、尚ホ一応原案者ニ御尋ネシマス
○五十二番（東京、中野武営君）　昨日モ私ハ口ガ酸イ迄モ申シテ置キマシタノデゴザイマスガ、奥田サンハ昨日御出デハゴザイマセヌカラ私ハ最ウ一応申サナケレバナラヌ、即チ唯今三十七番ノ御尋ネノ通リナンデゴザイマス
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　三十一番ハ原案デ宜シイ、又五番等カラ此処ヘ帳簿云々ト云フコトガゴザイマシタケレドモ、是等ノコトハ即チ手続ノコトデアツテ、大体ニ一向関係ノナイコトデ、此処ヘ書クノ必要ナイモノト信ジマスカラ、サウ云フ帳簿ハ必要ナレバ必要ダケノモノハ備ヘサセテ置クト云フコトハ当然ノコトデアルカラ、五番ノ心配ノヤウナコトハナイ、原案デ宜シイト思ヒマスカラ原案ニ其儘賛成致シマス
○二十九番（堺、錦池千鶴之助君）　二十九番ハ聊カ此場合ニ修正ヲ致シタイト考ヘマス、尤モ此原案ニ対シテ等級ヲ付スルト云フコトハ分ツテ居リマス、是ハ賛成ヲ致シマス、尚又各業者ト云フ方ノ間ヘ文章ノ所ハ然ルベク願イタイノデゴザイマスガ、兎ニ角此本法ニ対スル課
 - 第22巻 p.148 -ページ画像 
税ヲ受クル営業者ニ対シマシテハ府県税又町村費ト云フヤウナモノハ掛ケナイト云フ所ノ文章ヲ一ツ加ヘタイ、其理由ト申スモノハ余ノ儀デモゴザイマセヌガ、是迄地方経済ニナツタモノヲ今般国庫ニ移シマスニ就テハ、三倍以上ノ増額ト云フコトハ諸君モ御承知ノ通リ、且ツ理由書ニモ夫レ夫レアル訳デゴザイマス、何レ是迄ヨリハ増スト云フコトハ分ツタ話、此東京案ノ先キノ其三ノ理由ハ経費ノ減ズルニ従ツテ率ヲ減ズルト云フ明文モゴザイマスデ、夫等ノ如キハ幾ラ減ズルカハ知リマセヌガ兎ニ角此商工業ニ対シテ重税ヲ課スル上ニ、尚ホ町村税迄モ加ヘルコトハ実ニ重キニ失スルヤウナ始末ニナツテ、ソレデハ甚ダ済マナイト斯ウ思ヒマスルニ就イテ、ドウカ其事ハ府県税及町村税、本年ノ法律第二十号酒造税法第三十五条ノ明文ノ如ク町村税ヲ掛ケナイト云フ明文ガアツテ、既ニ例ガアルノデゴザイマスカラ、ドウカ其辺ノ理由アルガ故ニ、取リモ直サズ酒造税法第三十五条ノ如キ意味ニ改正シテ能イノデゴザイマスガ、兎ニ角此間ニ入レ置キタイ積リデゴザイマス、其他ハ別ニ異議ガゴザイマセヌ
○一番（静岡、北村五郎兵衛君）　私ハ原案賛成デゴザイマス、最ウ大体論旨モ尽キタヤウデゴザイマスカラ採決ヲ願ヒマス
○四十五番（知多、天野伊左衛門君）　私ハ此原案ニ反対デゴザイマス昨日来此等級ニ就イテハ色々説明モアリ、又其意見ハ業ニ既ニ其精神ト云フモノハ多数デ以テ議決シ来タノデスケレドモ、等級ト云フコトニ就イテ明文ニ現ハレタハ此項デアル、此反対ノ意味ヲ簡単ニ申述ベ置キマス、凡ソ此各業ニ就イテ等級ヲ分ツト云フコトニナリマスト、其業ト云フモノガ中々種類ガ多イ、是ハ又昨日一昨日来其点ニ就テ御質問モアリ、又御説明モアツタ、私カニ之ヲ退イテ考ヘテ見マスト、其一種類ヲ以テヤツテ居ルト云フノハ都会ノ地ニアリマスケレドモ、田舎ノ地ニ参リマスレバ各業皆兼業ニナツテ居ル、乾物モアレバ魚モアリ、種々ナ業ヲ一人デ営ンデ居ル、サウシテ売上金ト云フモノハ千円以上二千円・三千円ノ売上ヲ為シテ居ル、千円未満ノモノハ之ヲ除クト云フ事ニナルカラ、各業ニ就イテ此等級ヲ分ツモ敢テ不便デナイト云フ意味ノ御説ガ昨日来モ出テ居タケレドモ、田舎ノ二千円・三千円ノ売買ヲスルモノト雖モ、矢張リ種々ナ各業ヲ相合シテ営業ヲナシツヽアル者ノ方ガ多イノデ、ソレデ一寸此法文ノ上ニ就テ……明文ノ上ニ就イテ考ヘテ見マスルト云フト、是等ノ上ノ調査ハ輒ク出来サウニ思ヒマスケレドモ、実際ニ臨ンデ之ヲヤリ掛ケタナラバ余程繁雑ナル手数ヲ要スルコトヽ思フ、デ此各府県ノ上ニ於テ府県税ノ上デ等級ヲ立テ居ル県モアルサウニゴザイマスケレドモ、是亦各業毎ニ就テ等級ヲ立テ居ル方ハ少クテ、殆ンドナイト云フ有様デアツテ、物品販売業ニ就イテノ等級ヲ立テ居ルト云フノ有様ニ現在ナツテ居ル、此会議所デ此コトヲ議決致シマスルト、未ダ各府県デモヤツテ居ラヌ所ノ各業ニ就イテ緻密ノ等級ヲ区々ニ分レテ立テルト云フコトハ、初メテ此商業会議所カラ斯ノ如キ煩雑ナ手数ノコトヲヤツテモ宜イト云フコトヲ発表スルト同ジコトニナル、成ルベク煩雑ノ手数ヲ省キタイト云フノガ此ノ原案ノ趣旨デゴザイマスケレドモ、実際ニ臨ンデハ此原案ノ趣旨ニハ反対スル故ニ、此処ノ所ニ於テハ原案ノ趣意ニ反対スルコト
 - 第22巻 p.149 -ページ画像 
丈ケハ削除ヲスルト云フ意見デゴザイマス
○二十一番（堺、上林総三郎君）　本員ハ二十九番ノ説ニ賛成致シマス二十九番モ漸々述ベラレマシタ如クデゴザイマス、地方ニ依リマシテハ種々ゴザイマセウケレドモ、或ル地方ニ依ツテハ相当ニ課税ヲ受ケテ居ル、且ツ又此重税ヲ凌ギマシテ尚ホ其上ニ地方税ノ幾分ヲ負担シ又町村費ヲ負担セニヤナラヌト云フコトハ随分困難ナル話デゴザイマセウト考ヘマスカラ、故ニ二十九番ノ説ニ賛成ヲ致シテ置キマス
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　二十九番カラ地方税並ニ市町村税ヲ掛ケナイデ呉レロト言ヒ出シテ、賛成ガアツテ是ガ問題ニナツテ居リマスカラ、私ハ攻撃致シマス、抑モ私共ガ元来東京商業会議所ノ原案ニ同意シタト云フモノハ、徴税費ヲ減ジ得ラレルダケ減シテ呉レロト云フコトハ誠ニ適当デアルト信ジタカラ賛成シタノデアル、大体税額ヲ減ジテ呉レロナドト云フコトニハ不同意デアル、営業税ガ幾ラ増シタカラトテ、地方税モ市町村費モ掛ケナイデ呉レロナドヽ云フ事ハ勝手極マル次第デ、衆議院デモ百姓議員ガ寄ツテ地租ヲ軽減シテ呉レロナドヽ云フ事ヲ吾々ガ聴イテ、聴苦シイコトヽ思ツテ居ルノデアリマス、堂々タル実業家ガ寄ツテ賦課率ヲ減ジテ呉レロトカ、二十九番ノ御説ノ如キハ吾々ノ面目ヲ汚スノ嫌ヒガアリマスカラ、斯ウ云フコトハ成立チマセヌヤウ致シタイト思ヒマス
○十二番（浜松、中村忠七君）　本員ハ既ニ昨日物品販売業ノ本案ガ決スルト同時ニ会長ニ一々御尋ネヲシテ置キマシテ、「以上云々」「又云云」ト云フコトハ自然之ヲ議シ去ル間ニ含蓄シテ居ルト述ベマシタラ会長モ御同感デゴザイマシタ、故ニ五マデノ所ヲ議スル間ニ「以上各業云々」ト云フコトガ含蓄シテ居ラネバ吾々ガ賛否ヲ決スルニ誠ニ惑ヒヲ生ズル訳デアリマス、唯今議事ノ進行上是ガ復ビ此処デ議サナケレバナラヌ手続ニナリマシタガ、是ハ既ニ此議案ニ就イテ御賛成ニナツタ諸君ハ御同意ノコトデアラウト思ヒマスカラ、決シテ反対説ノ成立ツコトハ思ヒモ寄ラヌコトデアリマス、併シナガラ四十五番ノ叮寧緻密ナル反対論ガ出マシテ、其説ヲ承レバ成程是ハ御尤ノヤウニ聴ヘル、去リナガラ百般ノ営業ニ就イテ、千・二千ノ等級ヲ付ケルト云フコトハ容易ニ出来ヌコトデゴザイマス、ソレ等ノ事ハ左様ニ緻密ニ致サレマセヌデ、総テノ物品ノ中製造ノ原料デアルトカ乃至酒・醤油ノヤウナモノデアルトカ云フ総テノモノハ自ラ其間ニ細別ガ付ク、八百屋トカ万屋ト云フモノヽ等級ハ付ケラレマスマイガ、ソレハ自然徴税ノ上ニ円満ナ等級ガ付ケラレルヤウニ思ハレマス、四十五番ノ杞憂ノトコロハ全ク必要ガナカラウト思ヒマスカラ、本員ハ飽マデモ本案ヲ維持致シマス
○二十九番（堺、錦池千鶴之助君）　二十九番ガ地方税等ハ課サヌヤウニシテ貰ヒタイト云フ修正案ヲ提出致マシタトコロガ、唯今三十一番ガ簡単デハゴザイマシタケレドモ、淊々ト百姓議員云々ノ例ヲ挙ゲテ御駁シニナリマシタガ、ソレハ独リ此営業税法バカリ御覧ニナツテ居ルカラ、サウ云フ御説ガ出ルノデアラウト思ヒマス、即チ此税法ノ発布ニナツタ元来ト云フモノヲ御考ヘニナツタラドウデアラウ、詰リ日清戦争ノ以後ノ経営上ノタメニ斯ウ云フ税源ガ自ラ起ツテ来タモノデ
 - 第22巻 p.150 -ページ画像 
アラウト考ヘマス、其税源タルヤ悉ク税法其モノガ均一ニヤツテ居ルカト云ヘバ決シテ均一ニヤツテ居ラス、独リ商工業者ニ対シテ重キヲ置イテ居ルノデアリマス、一方ノ反対論カラ言ヒマスレバ、戦後経営上ニ於テハ商工業ハ戦争ニ就イテ直接利益ヲ得テ居ルカラ、ソレハ仕方ガナイト言ハレルカ知レマセヌガ、詰リ戦捷ノ結果ニ依ツテ軍備拡張トカ何トカ云フコトガ大体ニナツテ居ルカラ、ソレラハ国民ガ一般ニ負担シナケレバナラヌガ、併シ或部分ニ於テハ重キヲ置イテ或一方ニ於テハ軽イト云フコトガアルカラ、国民ノ義務トシテ納税ノ負担ハ厭ハヌガ、兎ニ角斯ノ如ク同ジ国民デアツテ商工業者バカリ重キ負担ヲ受ケルト云フコトハ黙ツテ居ル場合デナイト考ヘルノデアリマス、先キニ申ス通リ矢張リ酒造税ノ如キモ特例ヲ置イテアリマスカラ……（「簡単、簡単」ノ声起ル）簡単ト云フコトデゴザイマスカラ此位ニ致シテ置キマス
○九番（金沢、山田清三君）　九番ハ各業ニ依ツテ等級ヲ分ツト云フコトニハ反対デゴザイマス、是ハ営業ニ依ツテ等級ヲ分ツト云フコトハ最モ同意デアリマスガ、各業ニ依ツテ等級ヲ分ツト云フコトニハ反対デアリマス、税法ニ依ツテ等級ヲ分ツト云フコトハ例ヘバ何万円以上ノモノヲ以テ一等トシ、何万円以下ノモノヲ以テ二等トスルト云フコトニ規定ヲシテ置キマシタ以上ハ、其一等ト云フモノニ何程ノ税ヲ賦課スルト云フコトハ、ソレハ税ガ国税デ営業税ヲドレ程取ラネバナラヌト云フコトハ当局者ガナスコトデアリマスカラ、例ヘバ一等税ガ何程ト極ツテモ各業ニ依ツテ等級ヲ分ツト云フコトハ煩雑デアルカラ、例ヘバ何万円ノモノハ何等ト云フガ如ク金額ニ依テ等級ヲ分チタイト思ヒマス、又調査委員ヲ置イテ調査ヲサセルト云フコトニ就イテハ最モ同意デゴザイマス、同意デゴザイマスケレドモ、調査ト云フコトハ各業ノ一等ハ誰デアルト云フコトヲ調査サセルノデナクシテ、調査ト云フノハ某ハドレ程ノ収益ガアルト云フコトヲ調査スルト云フノデアリマス、既ニ売上金ナリ収入金額ト云フコトニ決定シタ以上ハ、売上金額ハ某ハドレ程ノモノデアルカト云フコトヲ調査スルト云フ意味デアルノデゴザイマス
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　自分ハ先日来段々等級ヲ設ケルト云フコトハ極ク煩雑ニシテ容易ノ業デナイト云フ方ノ論者デゴザイマシテ、是ニ就イテ段々御説ガ出テ居リマスガ、成ルベクアー云フコトニ決定シタ以上ハ敢テ玆ニ弁ジマセヌト考ヘテ居リマシタガ、既ニ唯今同説ノ論者ガ現ハレマシタル以上ハ復タ之ヲ賛成セザルヲ得ヌ、先日来自分ノ考ヲ付ケテ居リマシタルコトニ大ニ違ヒマセヌ御説ガ続々出テ居リマスカラ之ヲ賛成致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　モウ大抵御論旨ガ尽キマシタヤウデゴザイマスカラ決ヲ採ラウト思ヒマスガ……
　　　〔「採決、採決」ト呼ブ者アリ〕
○十四番（豊橋、白井直次君）　十四番ハ唯今四十五番ノ御説ガ出マシタガ至極是ハ御尤モナ御説デアラウト思ヒマス、各業ニ依ツテ等級ヲ定メルト云フコトニ就テハ四十五番ノヤウニ原案ヲ廃棄スルトモ、兼業ノ法ハ金高ニ制限ヲ置クト云フコトハ府県税ナドニ往々例ガアリマ
 - 第22巻 p.151 -ページ画像 
スカラ、都合デハ大概一等ニ当ルヤウナモノガ田舎デハ兼業ヲシテ居ルカラ、其兼業ノモノハ五種類兼業スレバ其中デ多ク商ヲスルモノニ対シテ税ヲ納メルト云フコトニ極メルノガ至極宜カラウト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　二十一番ノ等級税法ヲ廃スルト云フ御説ニハ四十五番・四十一番其他ニモ御賛成ガゴザイマシテ其御動議ハ成立ツテ居リマス、又二十九番カラ本税ヲ納ムルモノハ地方税等ハ掛ケヌヤウニシテ貰ヒタイト云フ請求ノ意味ヲ加ヘタイト云フ意見ナンデスガ、二十八番ノ御賛成ガアツテ其御動議モ成立ツテ居リマスル、其他九番ノ御説ハ等級税法ハ宜シイケレドモ各種ニ別ケテハイカヌカラ総テ売上金額ダケニ等級ヲ置クト云フ御修正意見、及ビ其他ニモ御説ガゴザイマスガ是ニハ御賛成ガゴザイマセヌデ消滅致シマシタ、故ニ二ツノ動議ニ就イテ決ヲ採リマス、二十一番ノ御説ハ等級税法ヲ廃スル、従ツテ此調査委員ヲ設ケルノ必要ナシト云フ意味デゴザイマス……此御説ニ対シテ御同意ノ御方ノ御起立ヲ乞ヒマス
　　起立者　　少数
○会長（東京、渋沢栄一君）　少数――二十九番ノ此地方税等ヲ掛ケヌヤウニシテ貰ヒタイト云フ意味デ請願スルト云フ御説、是ニ御同意ノ御方ノ御起立ヲ乞ヒマス
　　起立者　　少数
○会長（東京、渋沢栄一君）　少数――原案ニ対シテ決ヲ採リマス、原案ニ御同意ノ御方ノ御起立ヲ請ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数――此次ノ文章ハ詰リ理由書ニナルノガ幾ラカ前ノ方ガ変ツテ参リマシタカラ修正ガ生ジマセウト思フ
○一番（静岡、北村五郎兵衛君）　一番ハ第四ノ方ガ消滅ニナツタカラ此場合ニ此東京商業会議所ノ議事細則ノ第十三条ニ依ツテ委員ヲ設ケテ委員ニ附託スルコトヲ希望致シマス、其第四モ消滅スルシ前ノ会社税ノコトモ消滅シテ居リマスル、是亦同委員ニ御苦労ヲ願ツテ総テ是迄経過シマシタモノハ其委員ニ御纏メヲ願ツテ、理由等モ大抵ソレニ相当スルモノヲ拵ヘテ貰ヒタイ希望デゴザイマス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　一番ノ第四ノ項ニ就イテ委員ヲ設ケルト云フコトニ就イテハ同感デゴサイマスガ、会社組織ノモノハ云云ト云フコトニ就イテハ別ニ委員ヲ置クノ必要ハナカラウト思ヒマス此事ヲ発議致シマス、此発議ガ少数デ成リ立チマセヌケレバ、第四ト併セテ委員ニ附託セラルヽコトヲ希望致シマス、自分ハ先キニ意見ノアル所ヲ十分ニ述ベマセナンダガ、第一会社組織ヲ以テスル営業ハ其純益ヲ以テ課税ノ標準トスルト云フコトヲ其一ニ加ヘル、是モ曩キニ述ベタ如ク消滅シタモノダカラ逆戻リトスルト云フ嫌ヒガアレバ其二ニシテモ宜イ、併シサウスルト其二トアリマスルノガ其一ト直ラナケレバナラヌ、ソコノ所ハドウデモ宜イノデアリマス
○五十二番（東京、中野武営君）　三十七番ノ御説ガアリマスガ、唯今ノ御提出ニナツタ文章ハ会社組織ヲ以テスル営業者ハ其純益ヲ以テ云云ト仰セアツタガ、ソレハドウ云フ訳デゴザイマスカ
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　純益ト申スノハ総テ会社ノ諸費用
 - 第22巻 p.152 -ページ画像 
ヲ支払ヒ全ク其純益ト云フモノガ考課状ニ現ハレテ来ルカラ、其純益ニ係ルモノニ対シテ課税ヲスル
○五十二番（東京、中野武営君）　単ニ純益トシテハ差支ガアリハセヌカ、色々其支払ノ上ニ於テ却ツテ議論ガ出ル訳デハアリハセヌカト云フ懸念ガアルト思ヒマスガ……
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　純益ト云フ文字ノタメニ御賛成ガ出来ナイト云フコトナレバ収益ト云ツテモ宜イ、或ハ又収入益金トシテモ宜イ、ドチラニシテモ趣意ニ於テハ異リマセヌ
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　三十七番ニ賛成デゴザイマス、別ニ意見ガゴザイマセヌヤウデスカラ、ドウカ早ク御採決ヲ願ヒマス
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　三十七番ニ賛成致シマス、純ノ一字ニ就イテ能ク此処デ注意ヲシテ置カナケレバナラヌト思ヒマスガ、総テノモノヲ引去ツタルモノヲ純益ト見ルト此純益ト云フコトニ就イテハ余程此当局者ニ於テ関係スルコトデアラウト思ヒマス、大体ノ上ニ於テ先日来述ベタ如ク此会社組織ノ営業ニ対シテハ、利益ノ標準トシテ課シタイト云フノデゴザイマスカラ、ソレヲ挿入スル場所ハ一・二・三ノ中相当ノ場所ヘ入レルヤウニ致シタイト思ヒマス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　自分ノ述ベタノハ始メニスル後ニスルト云フ意味デハナイ、要スルニ是ガ成立チサヘスレバ宜イ、文字ノ如キハ純ノ字ヲ是非維持セヌケレバナラヌト云フ訳デハナイ、一個人ト会社組織ノモノト区別サヘ付ケバ宜シウゴザイマスカラ、文字ノ如キハ収入益金トシテモ宜シイノデゴザイマス
○四十二番（四日市、井島茂作君）　三十七番ニ賛成
○会長（東京、渋沢栄一君）　文章ノトコロハ「会社組織ヲ以テスル営業ハ其利益金ヲ課税ノ標準ト為ス事」斯ウ云フテモ宜イト云フ御説デスカ
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　左様デゴザイマス、文字ノトコロハ収入益金トシテモ宜イノデス
○十二番（浜松、中村忠七君）　本員ハ三十七番ニ反対致シマス、其理由ハ前々毎度述ベマシタカラ詳細ノトコロハ省キマスガ、大要只今迄議シタ二項ノ「一個人ノ営業ニ対シテハ資本金額ヲ以テ課税ノ標準トナス」ト云フコトヲ取極メテ仕舞ツテ、更ニ会社ト云フモノニ向ツテハ利益金――純益金ニ掛ケルト云フコトニナルト、或ル場合ニ於テ一個人ノ営業ト会社ノ営業ト甄別スルコトノタメニ頗ル気ノ毒ナモノガ出来ル、会社ニ利益ガアルカ一個人ニ利益ガアルカ其点ニ就イテハ予シメ断言ハ出来マセヌガ、既ニ此会議ニ於テ資本金額ト云フコトニ決シタナラバ、会社モ同様ニ是ニ依テ課セラルヽガ当然デアル、而シテ会社ナルモノハ一昨日モ御報告ニナツタ通リ全国デ四千トカ五千トカアルト云フ事デゴザイマスガ、尚ホ其会社ノ資本金額ヲ合シタナラバ莫大ノモノニ至ルデゴザイマセウ、ドウモ斯ウ云フ場合ニ一個人デアル会社デアルト云フコトニ向ツテ殊更ニ商業会議所ノ聯合会デ甄別ヲ立テ、会社ハ利益ニ依ツテ税ヲ課シ、一個人ニ対シテハ資本金額ニ依テ課税ヲスルト云フノハ頗ル不親切ナ結果デハアルマイカ、果シテサウナツタナラバ、全国商業会議所ノ聯合会ガ一個人ヲ見ルコトヽ会社
 - 第22巻 p.153 -ページ画像 
ヲ見ルコトヽニ厚薄ヲ置イタト云フコトニナツタナラバ、世人ノ批難ハ幾許デアルカ、政府其他貴衆両議員ノ意嚮ハ如何ナル感情ヲ持ツカ人民ハ如何ナル感情ヲ持ツカ、全国商業会議所聯合会デ斯様ナ事ヲ決議スルハ頗ル不穏当デアルト思ヒマスカラ、飽迄反対ヲ致シマス
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　唯今色々御説ガ出マシタガ自分ハ一向差支ヘナイト考ヘテ居リマス、仮シ一個人云々ノコトガ成立チマセヌデモ畢竟一個人ト云フコトガ存シテ居ル以上ハ、ドウシテモ会社組織ノモノニ純益ニ依ラヌニシテモ何トカシナケレバナラヌカラ、自分ハ会社組織云々ト云フコトヲ入レタトコロガ別段不都合ハアルマイト思ヒマス
○十八番（栃木、桜井源四郎君）　本員ハ三十七番ニ賛成デアリマス、今十二番ノ反対論ガ出マシタガ、十八番ノ考デハ、目下ノ有様ヲ見マスルト会社デモナイ一個人デモナイ営業ガアリマス、即チ取引所ノ如キ、銀行ノ如キ、会社ト一個人ト区別シナケレバナラヌ場合ガ多イカラ、ドウカ此際会社ノコトハ一目明瞭ニ一ツ項目ヲ分ケテ置カヌト後日ニ差支ヲ生ズルデアラウト思ヒマス、本員ハ飽迄モ賛成デゴザイマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　三十七番ノ今ノ昨日削除ニナツタ第一ニ代ヘル文章ヲ入レルト云フ御説ニ対シテ段々御賛成ガゴザイマスヤウデス、場所ハ何レデモ宜シイト云フ御説デゴザイマス、デ此理由書ニ就イテドウデ委員ヲ設ケテ調査スルト云フコトニナリマセウカラ、其節ニ更ニ妥当ナル所ヘ挿入スルコトヽシテ、仮リニ第一ノ所ヘ入レルト議決シテ置イテ、三十七番ノ説ノ如ク「会社組織ヲ以テスル営業ニ対シテハ利益金ヲ以テ課税ノ標準トナス事」ト云フ文章ニシテ、其一ニ代ヘルト云フコトニシテ置クト云フ、斯ウ云フ御動議ト見テ宜シウゴザイマスカ
　　　〔「異議ナシ、異議ナシ」ノ声起ル〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ此御動議ニ対シテ決ヲ採リマス
○一番（静岡、北村五郎兵衛君）　委員説ヲ出シタトコロガマダ賛成ガゴザイマセヌカラ、暫ラク三十七番ノ説ニ同意致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　前ニ読ミ上ゲマシタ文章ニ就イテ賛成ノ有無ヲ採リマス、場所ト文字ノコトハ或ハ一個人云々ト云フ項ヘ入レルノガ適当トナルカモ知レマセヌガ、ソレハ委員ノ修正ニ任セル事ニシテ、仮リニ其一ノ中ニ入レルト議決シテ置クト云フ此御説ニ御同意ノ御方ノ御起立ヲ請ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　大多数
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　先刻申上ゲテ置イタ委員説ハ三名若クハ五名、会長ノ指名ヲ以テ選バレンコトヲ希望致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　第四項ノ項目ニ就テ……
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　左様デゴザイマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　如何デゴザイマセウ、第二ノ営業税法改正ノ要領ト云フ所ノ末文ガ自然幾分カ変ツテ往キマスニ従ツテ、或ハ修正ヲ要スルモノガナイトモ言ハレマセヌ、又初メノ方ニモ理由書ニ
 - 第22巻 p.154 -ページ画像 
変ハラナケレバナラヌコトガアリマスカラ、ソレト此前ノ第二ノ四ノ項目ノ委員ト文字ノ修正委員トヲ一緒ニ御作リニナツテハ如何デス
　　　〔「異議ナシ、異議ナシ」ノ声起ル〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ文章ヤ字句ノ所ハ暫ク此儘ニ止メテ置イテ、其三「税率ハ現法ニ比シ徴税費ノ減ズル分量ニ応ジテ之ヲ軽減スル事」此項ヲ今御議シヲ願ヒタイ
○四十七番（京都、中野忠八君）　本員ハ此項ハ不必要ダラウト思ヒマス、敢テ徴税費ノコトニ立入ツテ言フ程ノコトハアルマイト思ヒマス前議会ニ於テ政府委員ガ説明シタ速記録ノ上デ記臆シテ居ル処ニ依レバ、五拾幾万円ノ徴税費ヲ要スルト云フコトデアリマス、此手数ヲ省クタメニ徴税費ノ幾分ヲ減ジタ所ガ格別効能ガナカラウト思ヒマス、依テ此項ハ寧ロ言ハナイ方ガ宜シクハナイカト思ヒマスカラ本員ハ削除説ヲ提出致シマス
○四十五番（知多、天野伊左衛門君）　唯今四十七番ハ此徴税費ノコトハ言ハナイ方ガ却ツテ宜カラウト云フ御話デゴザイマシタガ、併シナガラ是ハ徴税費ト云フコトニ依ツテ文章ガ出来テ居リマスケレドモ、其実税率ヲ軽減スルト云フ意味ヲ有シテ居ルノデアリマス、デ文章ヲ読ンデ見マスルト、営業税ハ地方税ヨリ移ルコトニナツテ、其営業税ハ概算二百九万円ト云フコトデアリマス、然ルニ一躍シテ七百五拾万円ニスルト云フコトハ著シク過重ノ税ヲ徴収スル次第デアリマス、故ニ徴税費ヲ―煩雑ナ税ヲ省イテ本税ヲ軽減スルト云フ意味ニナツテ居ルノデアリマス、故ニ其三ノ「税率ハ現法ニ比シ云々」ト云フノハ徴税費ヲ減スルト云フノヨリモ本税ヲ減ズルト云フノガ重モナル問題デアル、而シテ唯今マデ議シ来ツタル問題ハドウデアルカト云ヘバ、営業税法ノ制定上ニ適当デアルマイト云フ事ヲ以テ種々議論シテ是迄来タンデアリマス、是レカラ先キハ税ノ軽重ヲ論ズル場合ニ往クンデス、此原案ハ矢張リ其意味ニナツテ居リマス、詰ル所ハ全国ノ各商業会議所カラ出テ居ル意見書ヲ考ヘテ見テモ此ノ税法ノ税デ以テ甘ジテ出スト云フコトニハナツテ居ラヌ、何レモ軽減ト云フ意味カラ成立ツテ居ルノデアリマス、既ニ昨日来段々御議論ガ出テ居リマスガ、要スルニ皆其意ニ外ナラヌコトヽ考ヘマス、全体吾々ガ望ンデ居ル精神ト云フモノハ唯今申ス通リニ課税ノ方法ト、ソレカラ此税率ヲシテ幾分カ減ゼシメタイト云フコトヲ望ンデ居ルノデ、即チ此税法ト云フモノハ初メテ我国ニ実施サルヽノテアツテ、其三ト云フ唯今ノ問題ニナツテ居ル所ノ二百九万円ト云フモノヲ一足飛ビニ七百五十万円ニ増税ヲスルト云フコトハ随分過重ノ税デアルカラ、国家ノ上ニ初メテ新法ヲ実施スル場合ニハ成ルベク軽ク徴税ヲシテ良習慣ヲ養ヒタイ、今日ノ地方税ノ有様ハドウデアルカト申シテ見マスルト、此税ヨリモ三分ノ二程モ軽キ税デアリナガラ随分其調ベ方ノ上カラ言ツテ見レバ綿密ニモ行届カズ、又納税者ノ上カラ言ツテ見テモ十分ニ売上代金ニ対シテ一万円売上金ノアル人ガ一万円ニ届ヲ出シテ居ルト云フ有様ニナツテハ居ラヌ、多イモノガ少ク届出ヲナシテ居ルト云フコトハ或地方ニ於テ行ハレテ居ルコトデアリマス、又如何ニ立派ニ届出ヲシテ居ル県ト雖モ、従来ノ習慣トシテ総テ幾分ヅヽ低ク書キ出スト云フ有様ニナツ
 - 第22巻 p.155 -ページ画像 
テ居リマス、然ルニ現税ヨリモ尚ホ三倍スルヤウナ営業税ヲ玆ニ賦課スルト云フ上ニ於テハ、余程宜シキ方法ヲ以テ其良習慣ヲ養フヤウニ致シマセヌケレバ、従ツテ此徴税ノ上ニ大ナル悪習慣ヲ作ルニ至ルノデアリマス、ソレユヘニ願クハ此現法ノ半額マデニシテ止メタイト云フ私ハ精神デゴザイマス、我ガ知多商業会議所ニ於テモ其税ヲ半額ニシタイト云フ意見デゴザイマシテ、其税ハドノ位ニナルカ全国ヲ通ジテ見ルコトガ出来マセヌガ、略ボ是ナラバ半額ニナラウカト云フ意見ヲ以テ此聯合会ニ届ケテゴザイマス……
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　此事ニ就イテハ段々四十五番カラ御述ベニナリマシタガ、略ボ四十五番ト同感デゴザイマス、実ニ四十五番ノ述ベラレタ如ク、二百九万円ト云フモノカラ一躍シテ七百五十万円ノ税ヲ徴収スルコトニナツテ居ルノハ、如何ニモ三倍若クハ四倍ニナツテ居リマスカラ負担ニ堪ヘナイ、実業ノ発達ヲ妨ケルト云フコトハ何レノ会議所デモ御同様ニ感ジテ居ルコトデアラウト思ヒマス、自分ノ如キハ知多商業会議所ノ意見ト同様デアリマス、去リナガラ知多商業会議所ノ希望ノ如ク半額ニ当ルカ四分ニ当ルカ七分ニ当ルカ知レマセヌガ、兎ニ角二百九万円ノ者ガ一躍シテ七百五十万円ニナルト云フノハ誠ニ過重極マル税デアルカラ、相当ニ減ジテ貰ヒタイト云フ自分ハ趣意デアリマス、此文章ハ「徴税費ノ減ズル分量ニ応ジ税率ニ於テ之ヲ軽減スル云々」ノ趣意デ此末文ニアル通リデアリマシテ、大体是ニ同感デアリマスガ、併シ此文章ノ善シ悪シハ分ラヌガ、大体ノ趣意ガ極ツタ以上ハ他ノ文章ト一緒ニ委員ニ附託シテ妥当ノ文章ニ直シテ貰ヒタイト云フ考デゴザイマス
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　四十一番ハ四十五番・三十七番ト稍々同感デゴザイマス、原案ニハ徴税費ノ減ズル分量ニ応ジ税率ニ於テ之ヲ軽減シタイト云フコトニナツテ居リマスガ、ソレハ半額ト云フカ三分ノ一ト云フカ何トカ此処デ此税率ヲ定メテ等級ヲ設ケルナラバ何等ニ分ケテドレ程ノモノヲ課スルト云フ徴税額ヲ此処デ定メナケレバナラヌ場合デアラウト思ヒマス、併シ是迄議シテ参ツタトコロデハ大分原案ノ趣意ト変ツテ来タ所モアリマスカラ、直グニ此処デ税率ヲ定メルコトハ難イコトデアラウト思ヒマス、依ツテ此処デハ唯精神ダケヲ議シテ委員ニ附託シテ他ノ事柄ヲ能ク議シテ往ク方ガ極ク穏当ナコトデアラウト思ヒマス
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　是ニ反対論ハ無論ナイト思ヒマス私ハ原案ヲ賛成致シマス
○二十六番（神戸、岡田元太郎君）　本員ハ精神ハ四十五番ト同ジデ、ドウカ半額位マデ減ジタイト云フ考デゴザイマス、併シ是ハ熟慮審案ヲ要スベキコトデ、匆卒ニ半額ニ定メルト云フコトハドウモイカヌト思ヒマスカラ、ソレ等ノコトヲ酌込ミマシテ三十七番ノ説ニ同意ヲシテ置クガ宜カラウト思ヒマスカラ、三十七番ノ説ニ賛成ヲ致シマス
○十二番（浜松、中村忠七君）　質問致シマスガ、徴税費ト云フモノガ約ソ五拾万円トカ七拾何万円トカ云フコトヲ聞イテ居リマスガ、甚ダ御手数デゴイマスガモウ一応……
○会長（東京、渋沢栄一君）　衆議院ノ委員会ノ速記録ニ五・六拾万円
 - 第22巻 p.156 -ページ画像 
ト云フコトヲ政府委員ガ答弁シタコトガアリマス
○十二番（浜松、中村忠七君）　左様デゴザイマスカ
○二十八番（堺、上林総三郎君）　二十八番ハ四十五番・三十七番ト同感デアリマスガ、去リナガラ四十一番ナリ三十七番ノ説ハアレデ分レテ居ルノデゴザイマセウカ、同ジナンデゴザイマセウカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　私ニモ分リマセヌデス
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　分レテ居ラヌヤウニ考ヘテ居リマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　分レテ居ラヌデアリマスカ……
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　固ヨリ委員デモ設ケテ調査スルコトニナレバ或ハ半額ニスル方ガ宜イカ、ソコノ所ハ今能ク分リマセヌガ、兎ニ角減税ト云フ趣意デ此文章ヲ書イテ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　唯ダ徴税費ト云フ意味デハ……
○三十七番（名古屋、奥田正香君）　徴税費ノコトモ一部分ニシテ減税ト云フコトヲ趣意ニシテ調ベテ見テ、果シテ調ベタ上デ半額説ニ全然賛成スルカ知レマセヌガ、先ヅ減税ト云フ意味デヤリタイ
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　半額ト極メテ委員ニ附託スルコトハ出来マスマイト思ヒマス、先ヅ半額位ノトコロヲ調ベナケレバナラヌト思ヒマスカラ、即チ三十七番ノ説ノ通リ精神丈ケヲ極メテ置イテ……
○四十五番（知多、天野伊左衛門君）　私ガ半額ト云フタノハ調査ノ参考ニ述ベタ丈ケデ約ソ半額ニシタイト云フ精神ヲ述ベタマデヽアリマス、只今委員説ガ出テ居リマスガ、幸ニシテ説ガ成リ立チマシタナラバ、委員ニ此案ヲ附託シテ、サウシテ完全ナルモノニ修正シテ貰ヒタイト云フ意見デス、ドウシテモ委員ニ附託シテ調ベヌト不都合ダロウト思ヒマス
○二十八番（堺、上林総三郎君）　然ラバ大体ノ説ガ極ツタヤウデゴザイマスカラ、本員モ此説ニ賛成致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　唯今其三ノ項ニ就イテ段々御説ガ出マシタガ四十一番・三十七番・四十五番ノ御説ハ詰リ大同小異ノ御説デ、原案ニアル如ク「税率ハ現法ニ比シ徴税費ノ減ズル分量ニ応ジテ之ヲ軽減スル事」ト云フ趣意ニシテ、而シテ其徴税費ノ減ズル分量ニ応ジト云フノモ其一部分ニ置イテ詰リ減税ト云フ趣意ヲ玆ニ言ヒ現ハス文章ニシテ修正ヲ加ヘタイ、サウシテ其分量ハ今玆ニ定メヌデ、或ハ二割位減ジテ宜イカ五割位減ジナケレバナラヌカ、ソレハ調査シタ上デ意見ヲ提出シテ議決シヤウト云フ斯ウ云フ御修正説ガ出マシテ、御賛成ガアツテ御動議ガ成リ立ツテ居リマス、最早是レニ依ツテ採決致シマス
○十八番（栃木、桜井源四郎君）　原案ニ賛成致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ此今ノ四十五番ノ修正御意見ニ就イテ採決ヲ致シマス
　　　〔「異議ナシ、異議ナシ」ノ声起ル〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　四十五番ノ御説ニ従ツテ、減税ノ意味ヲ以テ此文章ニ修正ヲシヤウト云フ御方ノ御起立ヲ請ヒマス
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　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数
○四十七番（京都、中野忠八君）　玆ニ至リマシテ一番ナリ四十一番ナリカラ昨日来御希望ノ委員ヲ議長ノ指名デ五名ナリ七名ナリヲ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　如何デゴザイマセウカ、初メニ戻ツテ第一ノ議事ニ掛ツテハ……
○五十二番（東京、中野武営君）　委員ヲ御置キナサル以上ニハ営業税法ノ欠点ト云フコトナラバ、文章デアリマスカラ十分委員デ調査シ直スベキモノハ直シテ完全ニシテ出ス方ガ宜カラウト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ併セテ総テノ項目ヲ委員ヲ挙ゲテ調査スルト云フ御説、委員ハ何名ニナサルノ御積リデゴザイマスカ
○四十七番（京都、中野忠八君）　七名会長ノ指名ニ願ヒタイ
○会長（東京、渋沢栄一君）　七名ト仰セ有リマスガ、七名デ宜シウゴザイマスカ
　　　〔「異議ナシ、異議ナシ」ノ声起ル〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ此前ノ第一ノ営業税法ノ欠点ト云フ文章ヲ能ク吟味スルコト、及ビ第二ニ於テ理由ノ変ツテ来ル所ヲ吟味スルコト、例ヘバ其一「営業税法以外別ニ会社税法ヲ創定シ云々」ト云フノガ営業税法中会社ヲ区別スルト云フ文案ニ変ハリマシタカラソレニ対スル理由ノ修正、ソレカラ次ニ決議ノ結果消滅ニ帰スベキ姿ニナツタモノガアリマスルニ依ツテ相当ノ立案ヲスルコト、ソレカラ仕舞ニアリマスル理由書「税率ハ現法ニ比シ徴税費ノ減ズル分量ニ応ジテ之ヲ軽減スル事」ト云フ文案ヲ修正スルニ七名ノ委員ヲ選ンデ附託スルト云フ、斯ウ云フ会議ノ傾キニナツテ居リマス、即チ七名ノ委員ハ会長ノ指名ニ依ツテ置クト云フ四十七番ノ御説カラ決ヲ採リマス四十七番ノ御説ニ御同意ノ御方ノ御起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数――唯今七名ノ委員ヲ取定メマシタカラ申上ゲマスル、五番ノ松田源五郎君・二十六番ノ岡田元太郎君・三十七番ノ奥田正香君・四十一番ノ亀岡徳太郎君・四十五番ノ天野伊左衛門君・四十七番ノ中野忠八君・五十二番ノ中野武営君、此七名ノ御方ニ願ヒマス――今日ハ是デ休会ヲ仕リマス
　　正午十二時散会

明治二十九年十一月二十五日午後二時開議
　　出席委員　　　　　四十六名　○氏名略
○会長（東京、渋沢栄一君）一寸妙ナ御相談ガ生ジマシタガ、今農商務大臣カラ秘書官ヲ以テ此会ニ向ツテノ御相談ガゴザイマシタ、ソレハ亜米利加ノサンフランシスコノ貿易家及ビ重モナル製造者ノ特別代理者ト云フ名義デ、該国ノダブリユウ、アル、タウンセンドト云フ人ガ日本ヘ参リマシテ、此人ガ矢張リサンフランシスコノ商人デサンフランシスコニ開ケテ居ル商業会議所ノ会員ノ一人デ、即チ外国貿易ノ方ノ掛長ヲシテ居ルト申スコトデゴザイマス、ソレデ此人ガ日本ヘ来ラレテ居ルガ農商務大臣ニ向ツテノ望ミハ、ドウゾ日本ノ商業者ト成ルタ
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ケ御親シクシタイト云フコトヲ頻リニ申サレ、此度日本全国商業会議所ノ聯合会ノ開ケテ居ルノヲ好機会トシテ、此処ヘ来ツテ一片ノ希望ヲ述ベタイト云フコトヲ彼ガ要求スルサウデゴザイマス、而シテ農商務大臣ノ御考ハ亜米利加ト日本トノ貿易ハ、亜米利加ハ日本ヘバカリ金ヲ払ツテ日本カラハ品物ヲ買ツテ呉レヌト云フヤウナ感情ヲ幾分カ抱イテ居ル嫌ヒモアルカラ、成ルタケ日本ニ於テハサウ云フ考デハナイト云フ意味ヲ以テ、亜米利加人ノ抱イテ居ル感情ヲ融解サセタイト云フ農商務大臣ハ御考ヲ持ツテ居ラルヽカラ、ドウカ成ルベク斯ウ云フ会合ヲ利用シテ亜米利加人ノ希望ヲ聴イテハ呉レマイカト云フ斯ウ云フ御相談デゴザイマスガ、如何デゴザイマセウカ、時ハ……
○五十二番（東京、中野武営君）　議事モ余程後レテ居リマスルシ、時間デモアレバ格別デゴザイマスガ時間モゴザイマセヌカラ、今日ハソレヲ断ツテ議事ニ掛リマスルヤウ致シタウゴザイマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ不得已御断リヲ致シテ、是レカラ議事ニ掛リマスルヤウニ仕リマス
○五十二番（東京、中野武営君）　私ガ委員長トシテ唯今ノ御報告ヲ申上ゲタイノハ、順序ヲ申セバ修正丈ケヲ先ニ朗読ヲ致シテ後ニ其説明ヲ致スベキガ順序デゴザイマスガ、奈何セン此委員会ハ先刻マデ掛リマシタヤウナ工合デ、此修正ノ文案等ヲ活版ニ附スルノ、コンニヤク版ニ附スルノト申ス時間ガゴザイマセヌノデゴザイマス、ソレ故ニ御手許ヘドウモ御配付ヲ致スコトハ出来マセヌデ甚ダ遺憾デゴザイマス唯単ニ修正文ヲ先キニ朗読致シマシタバカリデ、ドコヘドウ往ツテルモノヤラ皆サンガ御聴取ナサルニ就イテ甚ダ御迷惑ナコトデアラウト思ヒマスカラ、先ヅ修正ヲ致シマシタ事柄ヲ先キニ申上ゲテ、ソレカラ修正文ヲ朗読致スコトニスレバ自ラ順序ガ立ツテ御分リ易ウナルコトヽ思ヒマスカラ、先キニ修正致シタ理由ヲ申述ベマス、委員会ハ引続キ合同ヲ致シマシテ段々相談ヲ致シマシテゴザイマス、併シ委員会トシテハ固ヨリ此本会デ二読会ニ於テ議決セラレタトコロノ精神ニ依ツテ、其範囲内ニ於テ文章ノ上、字句ノ上ニ於テ修正ヲスルト云フ権限ノ外ハ持タヌノデゴザイマスカラ、其趣意デ整理ヲ致シタノデゴザイマス、ソレデ其大要ヲ申シマスルト、此原案ノ第一ノ営業税法ノ欠点ト申シマスル箇条ノ中デ「其二」トアルノヲ「其一」トシテ一番ニ致シマシタ、サウシテ其中デ文句ノ修正ヲ致シテゴザイマスルコトハ文章ヲ後デ読ミマシタラ御分リニナリマスガ、兎ニ角「其二」ヲ「其一」ト致シソレカラ「其三」ヲ「其二」ト致シマシタ、ソレカラ「其一」トアルノヲ「其三」ト順序ヲ直シマシテゴザイマス、其理由ハ外デハゴザイマセヌ、原案デハ其一ノ所デ税率ノ事ヲ先ニ論ジテゴザイマス、サウシテ其二・其三ハ標準ト云フモノニ就イテ欠点ヲ論ジテゴザイマスガ、委員会ノ考ハ先ヅ税ニ基クトコロノ標準ト云フモノヲ先ニ論ジ、ソレカラ次ニ税率ノ事ヲ論ズルノガ相当ノ順序デアラウト云フ考ヲ以テ、斯様ニ一・二・三ノ置キ所ヲ変ヘマシタ訳デゴザイマスソレカラ第二営業税法改正ノ要領ト申ス処デハ原案ノ削除ニナツテ居リマスル「其一」ト云フノヲ後ヘ廻シマシテ「一個人ノ営業ニ対シテハ左ノ方法ニ依リ相当ノ課税ヲ為ス事」ト云フ「其二」トゴザイマス
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ルノヲ「其一」トシテ之ヲ一番ニ致シマシタ、ソレカラ「其二」ト云フモノヲ次ニ置キマシテ「会社組織ヲ以テスル営業ハ利益金ヲ課税ノ標準ト為ス事、但シ別ニ等級ヲ設ケズ」ト云フ斯ウ云フモノヲ其二ニ置キマシタ、サウシテ此従前ノ其一ニアル理由書ノ中ヲ色々取捨ヲ致シマシタ、改刪ヲ致シテ其二ノ項目ニ対スル理由書ヲ修正致シマシタソレカラ其三ハ「税額ハ相当ノ軽減ヲ為ス事」ト云フ標題ヲ置キマシテ、サウシテ其理義ニ関シテ文案ヲ新タニ起草致シマシタ、原案ニハ単ニ徴税費ノ件ニ就イテ論ジテアルコトガ重モニナツテ居リマシタケレドモ、今度ノ修正意見ハ過日ノ此会ノ意嚮ト云フモノヲ本ニ致シマシテ、総テ税ヲ賦課スル以上ニハ営業者其モノヽ中ノ権衡ヲ公平ニ保ツト同時ニ此商工業者ノ外ノ全般ノモノヲ通ジテ権衡ヲ保タヌケレバナラヌ、独リ商工業者ノミニ偏重ノ義務ヲ負ハスルモノデナイ、租税ト云フモノハサウ云フ性質ノモノデナイト云フコトヲ眼目トシテ起草ヲ致シマシタ、文章ノ体裁又修正等ヲ致シマシタ箇条ハ唯今私ガ述ベマシタ順序ニ基イテ居ルコトデゴザイマスカラ、ソレニ依テドウゾ御聴取ヲ下サレタナラバ、御聴取ニ順序ガ立ツテ御分リ易カラウト存ジマス、修正文ヲ書記ノ方カラ朗読ヲ願ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　委員会ノ経過ハ唯今委員長カラ御報道ノ通リデゴザイマスルデ、時ガ甚ダ短ウゴザイマスカラ今迄種々ナル御討論モゴザイマシタ趣、昨日モ休日ニ拘ハラズ御取調ベヲナスツテ下サレタイト云フ有様デゴザイマス、其結果今ノ通リノ御取調ガ出来タノデゴザイマスカラ……
○五十二番（東京、中野武営君）　唯今ヨリ此修正文ヲ御朗読下サリマシタナラバ、ソレカラ色々御質疑モ出マセウガ、此議事ニ先タツテ御参考ノタメニ一寸斯ノ如キ単純ナル修正文デ吾々ガ足レリト思フヤ否ヤト云フコトヲ前置キニ申シテ置クノ必要ガアリマスカラ、此際一寸一言致シマスガ、吾々ハ委員会ニ於テ此会議ノ第二読会ノ趣旨ヲ超ヘマセヌヤウニ、権限ヲ外レマセヌヤウニ謹ンデ修正ヲ致シマシタ訳デゴザイマス、而シテ此営業税法ノコトニ就イテハ各地方トモニ甚ダ心配ヲ致シテ居ルコトデアリマシテ、之ヲ修正ヲ致シマスルコトニ就テハ実ニ重大ノコトニシテ、慎重ニ慎重ヲ重ネヌケレバナラヌコトナンデゴザイマス、独リ議場ノ多数ヲ得タカラソレデ宜イト云フ訳ノモノデハゴザイマセヌ、実業家トシテ十分ニ慎重ヲ加ヘテ衆人是ナラバ安心デアルト云フコトヲ突留メテ置カナケレバナラヌト吾々ハ心配シテ委員ノ資格ヲ離レテ委員連中協議ヲ致シマシテ、即チ昨日カラ今朝ヘ掛ケテ委員会トシテノ議事デハナクシテ、有志ノ協議会ト云フ心得デ以テ種々ノ協議ヲ致シマシタノデゴザイマス、其協議ノ結果ハ委員長トシテ御報告申ス程ノコトハゴザイマセヌガ、此委員会ノ当然タル報告ガ済ミマシタナラバ直チニ引続イテ其協議上ノ意見ヲ諸君ニ御訴ヘ申シテ、サウシテ十分ニ諸君ニ御協議ヲ願ヒタイト云フ考デゴザイマス、故ニ本会ト云フモノデナク、協議会ト云フモノヲ以テソレ等ノ事ヲ十分ニ精密ニ、政府ニ対スル事、人民ニ対スル事ヲ商業会議所員ノ資格トシテモソレソレ十分ニ御熟慮ヲ乞ヒタイト云フ考ヲ持ツテ居リマスカラ、只ニ委員会ノ報告ノミヲ以テ吾々ハ満足スルモノデナク、
 - 第22巻 p.160 -ページ画像 
十分ニ諸君ト御協議ヲ尽シタイト云フ考ヲ持ツテ居リマスカラ、左様御承知ヲ下サルヤウニ願ヒマス、予シメ此事ヲ一言シテ置キマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ修正ニ相成リマシタ文案ヲ朗読致サセマスヤウニ仕リマス
　　［書記修正文案ヲ朗読ス（修正文案ノ全文ハ別冊報告書ノ議案ト題スル項中ニ記載アリ、就テ参照アルヲ要ス）］
○五十二番（東京、中野武営君）　委員会ノ報告ハ右申シマシタ通リデゴザイマス、是ヨリ本議ニ掛ラントスル以上ハ之ニ就イテ十分ノ研究討議ヲ要スルノデゴザイマス、併シ会則ニハ自ラ定ムル所ガゴザイマシテ、此本会ハ既ニ二読会ヲ凡ソ決シタ場合デ、即チ条項其他字句ノ整ニ就イテ此委員ヲ設ケタノデゴザイマスカラ、是カラ議サウトスレバ唯今ノ修正文ニ就イテ其修正スル所ガ本来議シテ居ル所ト意義ガ違ヒハセヌカ、決議ノ点ニ矛盾セヌカト云フ此範囲ニ於テ議事ヲ進メマスルヨリ外ニ議事トシテ道カナイト考ヘマス、併シ其道ヲ進ンデ参ルモ亦御多数ノ御意見ニ依ル所ノコトデゴザイマスカラ、幸ニ吾々協議ヲ致シタ所ノ結果ヲ御報告申シテ、夫レ夫レニ御参酌下スツタ以上デ進メラレントスル其決議ノ点ニ就イテ、御意見ノアル所ヲ纏メントシテモ兎ニ角此場合ニ於テ御参考ニモナルコトデゴザイマセウ、其方ガ議事ノ進行ニモ都合ガ宜カラウト考ヘマスカラ、本会ハ是テ暫ク休ムコトニシマシテ、兎ニ角引続イテ協議会ヲ御聞キ下サルコトヲ希望致シマス
○五番（長崎、松田源五郎君）　五番モ委員ノ一人デゴザイマスガ、唯今五十二番カラ請求サレマシタ如ク本会ヲ暫ク中止ノ上デ、協議会ヲ開カレンコトヲ望ミマス
　　　〔「賛成、賛成」ト呼ブ者アリ〕
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　賛成
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　四十一番ニ於キマシテモ五十二番ノ上来述ベマシタ通リ協議会ヲ開カレンコトヲ望ミマス
○三十六番（上田、黒沢鷹次郎君）　賛成
○会長（東京、渋沢栄一君）　別ニ御異議ガナケレバ今ノ報告ニナリマシタ二読会ノ結果ノ修正ハ先ツ暫ク此ニ止メ置キマシテ、是ヨリ協議会ヲ開クコトニ致シマス
　　　〔「異議ナシ、異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　御異議ガナケレバ是ヨリ協議会ヲ開キマス
　　午後三時三十七分協議会ニ移ル

　　　　協議会
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソコデドウカ委員諸君ガ協議ヲナサル時ニ種々御相談ニナツタコトガアリマセウカラ、其御方々ノ御考ヲ此処ニ御話シ下サルコトヲ願ヒマス
○五十二番（東京、中野武営君）　前ニ申上ゲマシタ通リ委員ハ寄リマシテ段々協議ヲ尽シマシテゴザイマス、其協議ヲ尽シマシタ次第ヲ細カニ申セバ更ニ脳ヲ痛メタト申ス外ハナイノデゴザイマス、漸ク種々攻究ノ結果大抵ソレナラバモウ其処ラデ纏メルヨリ外ニ仕方ガアルマ
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イト云フコトニ相成リマシタ、其次第ハ先ヅ第一ニ、此原案ノ区別ヲ立テヽ申スト会社組織ノモノト一個人ト云フモノトノコトヲ現法ハ混合ヲシテ居ルノデアル、著シク分リ易イ道ガアルニ拘ハラズ混合シテ居ルノハ是ハ宜シクナイ、唯原案ハ之ヲ営業税法以外ニ別ニ会社税ヲ設ケテソレニ属セシメルト云フ方法デアツタガ、ソレヲ本会ハ此営業税法中ニ於テ其区別ヲ立ルガ宜イト云フ多数ノ意見、是ガ先ヅ一個人ト会社組織ノモノトヲ別ニセニヤアナラヌト云フ趣意デ、今ノ現在政府ガ発布シテ居ル法律ト吾々ノ意見トハ大ニ異ツテ居ル所ノモノデアル、而シテ会社税法中ニ於テ標準ヲ利益ト云フモノニ取ルト云フコトニ於テハ先ヅ此本会御出席ノ御方ハ大多数ガ御意見ヲ一ニシテ居ルト私ハ信ジテ居リマスノデゴザイマス、第二ノ一個人ニ於テノコトニ就テハ色々御意見ガ各商業会議所カラ沢山出テ居リマスガ、要スルニ先ヅ現法ハ甚ダ煩雑ナルモノデ手数ガ沢山掛ル訳デアル、サウシテ其標準ハ沢山アルニ拘ハラズソレガ為メニ公平ヲ得ラレルカト云ヘバ其煩雑ノ為メニ公平ヲ誤ルノミナラズ、納税者ガ之ニ費ス所ノ浪費モ少ナカラヌ、徴税費モ少ナカラヌノデアルカラモウ少シ簡明ナル方法ニシテ貰ハネバナラヌト云フコトハドナタモ同感デアル、唯簡明ニスルト云フ仕方ニ於テ種々御意見ガ違フノデアル、就テハ之ヲ極ク簡別シテ申シマスト、大抵各会議所ノ御意見ニ依ルト、即チ物品販売業ノ如キモノハ大抵収益――利益ト云フモノヲ本ニ立テヽ標準トスルガ宜イト云フノガ多数ノ諸君ノ御考ノヤウデアリマス、ソレカラ此原案ノ趣意ニ依ツテ見ルト、其利益ヲ第一ニ立テネバナラヌト云フノニ販売業者ニハ売上高ガ少ナクテ利益ノ多イノガアリ、売上高ガ多クテ利益ガ少ナイノガアリ、資本ヲ沢山費シテ利益ノ少ナイノガアル、資本ガ少クテ利益ノ多イノガアル、ソレヲ売上高ニ依リ一率ニ処シテ往クト云フナラバ其不公平ヲ救フ手段方法ガナケレバナラヌノデアル、基クトコロハ其方法ニアルノデゴザイマス、然ルニ等級ノコトハ大抵二読会ニ於テ決議ニナツテ居リマスルコトデゴザイマスルガ、偖テ新規ニ此等級ヲ立テルト云フ上ニ於テ、現在ノ法律ニ対シテ比較的ドウデアルカト云ヘバ、其方法ガ宜シク立テ得ラルヽモノデアラウト云フ考ハアリマスケレドモ、随分手数ガ掛カル煩雑デアルト云フ事柄ガ或ハ起リハセヌカ、簡明ヲ求メルタメニ却ツテ煩雑ヲ来スヤウナコトニナリハセヌカ、併シナガラ今日大望ヲ持ツテ居ルコトデゴザイマスカラ、其細目マデニ立入ツテ級ハ何等ニ分ケテ何程ニスル、何ト何ハ斯ウスルト云フ等級ノコトマデ段々ニ審議シテ往クノハ是ハ審案熟慮スベキコトデアル、即チ原案ニ書イテアル事柄ハ実際法ヲ立テル上ニ就イテ商量シナケレバナラヌコトデアルガ、吾々ハソコマデ立入ツテ十分ニ研究スル丈ケノ余地ガ取レルカ取レヌカ、ソコマデ進ンデ詮議ヲスルト云フコトハ難イコトデアル、此会ハ其余地ヲ持ツテ安ンジテ進ムト云フコトヲ許サヌコトデアル、併シナガラ此会議ニ列ツテ居ル商工業者ガ自分ノ頭ニ掛ツテ来ルコトニ対シテ法立テヲ致シテ往クノニ少シデモ不安心ナコトヲ議シテ置クト、先キニ至ツテ大ニ差支ヲ生ズルト云フ懸念ガアルカラ、果シテ不安心ナコトガアレバ今一ツ進ンデ十分ニ事ヲ研究シ、愈々是デ安心デアルト云フ所マデ研究ヲ積ンデ往カナケレ
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バナラヌ、如何ニモ商業会議所トシテ政府ヘ方策ヲ献ズル上ニ於テ軽卒ト云フコトハ甚ダ慎マナケレバナラヌ、其方法ト云フモノハ余程大事ニ考ヘナケレバナラヌ、然ラバ其方法カ立タヌトスレバドウスルカ唯ダ退イテ、今日ノ現法ガ来年一月ヨリ実施セラルヽノヲ袖手傍観シテ待ツテ居ルカ、自分ノ意見カ極マルマデ、自分ノ考案ガ定マルマデハ一言モ言ハズシテ、此儘退イテ成リ行キヲ能ク視テ、サウシテ其間ニ方法ヲ考ヘルガ宜イカ、是レモ亦諸君ノ御許シニナラヌコトデアルサウ云フ退守主義ヲ執ルト云フコトハ吾々同意スルコトガ出来ナイ、何故ナレバ此現法中ニ於テモ著シク是ハ不当デアル、是ハ不公平デアル、是ハ煩雑デアルト云フ分リ切ツテ居ル点ガアツテ、政府ニ向ヒ社会ニ向ツテ訴ヘテ少シモ恥ツルトコロガナイト云フ箇条カアルニモ拘ハラズ、唯此等級ト云フモノヽ見極メガ安心ト云フ点マデ付カヌカラト云フテ、此一点ヲ以テ総テノ事ヲ抛棄シテ仕舞フテ退イテ守ルト云フヤウナコトハ、甚ダ済マヌコトデアラウト思フ、併シナガラ今申ス如ク等級ト云フモノニ変ヘルニハ斯ノ如キ方法ヲ目的トスルト云フ其方法ヲ研究シテ、十分ノ見込ヲ付ケテ完全ナル方策ヲ政府ニ献ズルト云フ訳ニハイカヌノデアル、ト云ツテ全部抛棄スルト云フノモ遺憾デアル、済マナイコトデアルト云フ考デ、ソコデ段々研究ヲ致シテ、此途ヲ執ルカ彼ノ途ヲ執ルカト種々熟議ヲ尽シタ結果ハドウカト云ヘバ此原案中ノ営業税法ノ欠点ノ事ト云フモノハ文義上ニ於テ多少ノ議論ハアルカ存ジマセヌガ、大抵皆サンモ大同小異ノ御考デアルト信ジテ居リマス、ソレカラ又此改正ノ要領意見、即チ今度修正ヲ致シマシタ第二中ノ「会社組織ヲ以テスル営業ハ其利益金ヲ課税標準ト為ス事」ト云フ点ニ就テハ、是モ大体御同感ノコトデアルダラウト信ジテ居リマス、唯此一個人ニ対スル事柄ニ就イテ第一ニ等級ト云フモノハ今申ス通リ、第二ニ此資本金額其他ノ部分ト云フモノハ幾分カ是デハ、此第二読会デ極マツテ居リマスル通リデハ少々矛盾シテ居ル所ガアルカラ、ソレ等ノトコロヲ先ヅ一通リ直シテ、サウシテ此度ハ税率ト云フモノヨリ即チ標準ト云フモノヲ直シテ、今ノ法案ニ甚ダシイ所ノ欠点ノアル所ヲ修正スルト云フ意見ヲ書イテ出シテハドウカ、他ノ比例ノ権衡上商業者ニ賦課スルトコロノモノハ公平ヲ失シテ居ルカラ、サウ云フコトノナイヤウニシテ欲シイト云フ精神ヲ以テ、一個人ニ対スル営業ノコトヲ修正致シタノデゴザイマスル、詰リ此修正ノ通リ課税ノ標準ヲ単純ニシテ公平ヲ保ツト云フコトヲ一段落ノ意見トシ、ソレヲ施ス上ノ手段方法ハ第二ノ意見トシテ、即チ之ヲ継続問題トシテ十分ナル考案ヲ定メル、今此建議ヲナシテ先キニ等級ヲ立テルガ如キコトガアツタナラバ矛盾スルヨウニミユレトモ、是ハ最初ヨリ等級ヲ定メルニハ標準ハ斯様ナモノニ基イテ、方法トシテ見テモ等級ヲ設ケル上ニ於テ少シモ撞着矛盾スルコトハナカラウト信ジマスル、ソレデ是ハ皆サンニ御相談ヲ試ミルトコロノ要義デゴザイマスガ、偖テ来年一月ヨリ現法ヲ政府ガ施行スルコトニ於テ、果シテ此建議ヲ政府ガ容レルヤ否ヤ分リマセヌガ、是等ノ意見ト云フモノハ今日実業家ノ意見トシテ開陳ヲ致シテ置クノ必要ナ時期デアラウト思フ、何故ナレバ政府ト雖モ、立法者ト雖モ、法ヲ拵ヘテ始メテ世ニ施ス事デゴザイマスカラ
 - 第22巻 p.163 -ページ画像 
其法自身ト雖モ不安心ナ時デアル、之ヲ実施シタ上デナケレバ愈々目的ヲ達シ得ラルヽヤ否ヤハ未定デアル、法自身ト雖モ未ダ経験ナキトコロノ不安心ナモノデアルノデス、是時ニ当ツテ吾々ノ意見ヲ政府ナリ議会ナリニ提供シテ、即チ一ノ材料ヲ参考トシテ出シテ置イタナラバ、他日現法ヲ施行シテ往キツヽ不便不利ヲ発見シタ場合ニハ其法ノ改正ヲ促シ、吾々ノ目的ヲ早ク達シ得ラルヽニ違ヒナイト思フノデアリマス、然ルニ玆ニ一ツ吾々ノ困ル一点ト云フモノハ、先キニ申ス通リ売上金高ト云フ中ニモ利益ニ厚薄ガアルカラ、其厚薄不公平ヲ療治シテヤルト云フ方法ガ十分ニ極ラヌダケガ困ルトコロデアツテ、是サヘ極マレバ天下ニ向ツテ少シモ恥ツル所ナク、完全ナルモノト云ツテモ宜イダラウト思フ、唯此営業ト云フモノニ相当スルノ法立テト云フモノガ欠ケテ居ルノデアルガ、併シ政府ノ案ト雖モサウデアル、少シモ法立テガシテナイカラ是ハ吾々ノ意見ノミヲ非難スベキデナイ、現法ハ直チニ其非難ヲ持ツテ居ルノデアリマス、此点ハ五分々々ノ話デアリマス、而シテ吾々ハ此等級ト云フモノヲ決シテ要ラヌモノジヤト断言スルノデハナイ、他日復タ十分ニ論究ヲ尽シタ結果或ハ一ノ法案トナルカモ知レマセヌ、又是ニ優ツタ法案ガ出ルカモ知レマセヌガ、是等ノコトハ他日講究スベキ継続ノ問題トシテ実地ノ上デ充分ニ研究シテ、他日復タ寄合ヲ催シテ相談シタガ宜カラウ、余リ完全ナモノヲ求メムトシテ却テ一モ取ラズ二モ取ラズ、甚ダ不安心ナモノト思フモノヲ無理ニ時機ノ来ルヲ竢タズシテヤルト云フノハ実業ニ対シテ慎重ヲ欠クコトデアラウト思フノデアリマス、先ヅ協議ノ結果種々ナル意見ヲ闘ハシテ見テ纏マツタノハ唯今申シタヤウナ次第デゴザイマス、是ハ委員長トシテ御報告申ス性質ノモノデハゴザイマセヌガ、唯ダ御参考マデニ是丈ケノ御話ヲ申上ゲタノデゴザイマスカラ、私ノ陳弁シタコトニ就イテハ行届カヌコトモゴザイマセウ、又落チテ居ル事モゴザイマセウガ、是ハ一諸ニ御協議下サレタ御方々ガ足ラザル所ヲ尚ホ御弁明下サレテ、御協議上円滑ニ纏マルコトヲ偏ニ希望致シマス
○五番（長崎、松田源五郎君）　唯今中野サンカラ御話ニナツタ通リデ十分御話ガ尽キテ居リマスカラ、別ニ本員ガ敷衍致スノ必要ハゴザイマセヌガ、要スルニ此委員ガ審査ヲ致シマシタ決議案ハ尚ホ不完全ナ廉ガアリ、未ダ不安心ナ場合ガアル、就テハドウニカ之ヲ救フ道ガナカラウカト云フ所カラ段々相談ヲ致シマシテ、今日ノ場合如何ナル名案ガ出マシテモ直チニ三十年度カラ其改正ガ執行ニナルト云フコトハ到底出来ナイコトデアラウ、其処ヘ不完全・不安心ト思フコトヲ持出スト云フコトハ甚ダ面白クナカラウ、願クバ完全シタモノヽ調査ガ出来テカラ持出スト云フコトニシテハドウデアラウカ、斯ウ云フヤウナ御話ガ本ニナリマシテ、ソレデハ折角寄ツテ話シタノニ唯漫然別レルト云フノハ面白クナイカラ、先ヅ他ノ一部ハ暫ク後ニ廻スコトニシタラ宜カラウト云フヤウナ御相談カラ、唯今中野サンカラ御話ガアリマシタヤウニ、先ヅ此会社ハ別ニシテ賃貸価格ト従業者ニ課スルモノハ廃スルト云フ説デ、何処マデモ是レ丈ハ動カスベカラズ、ドウシテモ是レハ除イテ貰ハネバナラヌ、是レハ改正スルノガ必要デアルト極ツタモノ丈ケヲ取リ、等級ト云フモノハドウモマダ研究ヲ尽シテアルマ
 - 第22巻 p.164 -ページ画像 
イト云フ処カラ、等級ヲ別ツト云フ方法ニ就イテハ宿題トシテ、モウ暫ク延スガ宜カラウト云フコトニナツタノデゴザイマス、其等級ハ不安心ダト云フ事柄モ段々御話ノ中ニアリマシタノデ、等級ヲ別ツト云フコトモ収益金ヲ課税ノ標準トスルコトモ同ジ結果ニナルデアラウ、寧ロ収益ヲ課税ノ標準トスルト云フ方ガ宜シクナカラウカト云フ御話モ段々出マシテ此ニ至ツタノデアリマス、ソレデ実地ノ困難ト云フコトハ同ジ結果デアル、ソレデ寧ロ収益ト云フ方ガ課税ノ標準ニ適当ト思ヘバ収益ニナツタ方ガ宜シイデナイカト云フ論ガアルノデ、何故等級ヲ分ツト云フニ就イテ収益トスルト稍々同一ノ結果ヲ為スト云フコトニ至ルカト云フト、各営業ニ就イテ等級ヲ別ツトキニハ、幾ツニナルカ分リマセヌガ、仮リニ二十トカ三十ノ営業ニ等級ヲ分チ、其中ニ金額ノ等級ヲ分チ、一等ノ営業税中何等ト云フコトニナル、サウスルト先ヅ仮リニ之ヲ二十ノ営業ニ分ツト見、又其二十ノモノニ就イテ一円以上トカ何トカシテ十宛ノモノニ分ツト見ルト二百余ノ種類ニナル悉ク其二百余種ノモノヲ以テ各営業者ニ当テ付ル訳デハゴザイマセヌガ、随分此地方ヲ見マスト兼業者ガ沢山アリマス、サウスルト自カラ各種ニ渉ルコトガ出来ル、ソレハドウシテ等級ヲ当テ箝メルト云フト営業者本人ノ申告ニ依ツテ等級ヲ当テ箝メルカ、其申告ガ正シイモノカ或ハ偽リガアルカト云フコトヲ撰ブニハ、原案ニゴザイマス通リ調査委員ヲ置キ調査委員ガ往ツテ之ヲ当テ箝メルト云フ事柄ノ上ノ手数ト、ソレカラモウ一ツ収益ト云フニ至ツテ収益モ営業者カラ申出タ収益ガ正当カ不正当カト云フコトヲ尚ホ調査委員ガ確メルノト、手数ノ方ハ同ジ方ニナル、其困難ハ同ジデアルカラ等級ヲ分ツト云フコトニ就テモ余程研究ヲセネバ、皆営業者ノ煩雑ト云ヒ困難ト云ヒ頭ニ掛ルコトハ同ジヤウナコトニナラヌカト云フ恐レガアル、夫是此等級ヲ分ツト云フコトニ就テモ甚ダ困難ナ場合ガアル、且収益ト云フ上ニモ余程一個人ニ就イテ収益ヲ調ベルト云フコトハ勿論困難デアル、何レモ困難カラ起ルコトデアルガ、是丈ケハドウシテモ十分ノコトヲ研究スルコトハ今日ノ場合デ出来難イデアリマス、是丈ケハ不完全ト知ツテ持出スト云フコトハ甚ダ不穏当ダカラ、等級ハドウシテモイカナイ、先ヅ暫ク後ニ延サウデナイカト云フ相談ニナツタノデゴザイマス
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　全体益一方ニスルト云フコトハ一個人ニ対シテハ困難ダラウト思フ、又資本トカ売上高トカ云フモノハ傍カラ見テモ大抵営業ノ組合トナレバ誰某ガ幾ラノ金高ヲ販売スルト云フコトハ凡ソ分リマス、収益ニ一歩進ンデ往ツテ見ルト余程難渋ニナル
○九番（金沢、山田清三君）　私共ノ過日来収益ト云フコトデ申上ゲテ居ルノハ、収益ト云フモノハ見難イノデアル、売上金額ハ見易イト云フ御話モアルガ、此案ノ如クニ各種ニ分ツテ等級ヲ作ルト云フコトニナルト、矢張リ売上金ニ対シテ何商売ハドウ云フ利益ガアルト云フコトヲ見ナケレバソレハ分ラヌモノデアル、今売上金額ヲ持出ルトカ或ハ調査スルト云フコトハ易イコトデアルケレドモ、収益ハ見難イト云フコトハナカラウト思フ、売上金額ガ分ラヌコトニナレバ何商売ハ利益ガアルト云フコトヲ調査上此委員ニ依ツテ分ラネバ等級ハ付カナイ
 - 第22巻 p.165 -ページ画像 
故ニ、何商売ハドウ云フ利益ガアルト云フ点ガ分リ、売上金ガ分レバ従ツテ収益ガ分ツテ来ル、ソレデ此私共ノ意見ハ収益ト云フコトニシマシテ、固ヨリ今日軽減スルコトハ十分望ムノデアリマスガ、併シ戦後ノ経済トシテ国民ノ負担ト云フモノハ何程デアルカ、ソレハ国民ノ義務デスカラ仕方ガナイケレドモ、或ハ独リ商工業ノミガ重税ヲ課セラレルコトガアツテハ困ルカラ、農業ナリト通ジテ国民均一ノコトニナレバ宜イト云フノガ主張デ、均一ニナレバ七百五拾万円ノモノガ千万円ニモセヨ、農工商通ジテ均一ニ負担スルナラバソレハ国民ノ義務ダカラソレハ止ムヲ得ヌ話デアル、サウ云フコトニシマスト、此商工業ノコトニ於テ収益ト云フモノヲ調査シテ、サウシテ其収益ト云フモノガ全国ヲ通ジテ例ヘバ千万円アルト、ソコヘ持テ往ツテ営業税ト云フモノハ千万円納メナケレバナラヌト云フ話ニナレバ同一ナコトニナル、壱円ニ対シテ壱円税ヲ納メルト云フヤウナ工合ニナル、其事ハ比例上カラ申スノデ、其収益ト云フモノトサウシテ営業税ノ総額ト云フモノデ割合ヲシテ、壱円ニ対シテ何程ノ税ガ立ツカト割合スルノガ主眼デ、サウシテ往キマスレバ金額デ往キマスカラ至極正当ナモノデアルケレドモ、ソレヲ等級ニテ何十等ナリニ割当テヽ、サウシテ一等ハ何程ノ税額ヲ納ムルモノ、二等ハ何程ヲ納ムルモノトスルト云フ、壱円ニ幾ラト云フモノガ出タ以上ハ強イモノヲ割合ツテ税額七百万円ヲ納メルモノニ当箝メル等級ヲ作リタイ意見、売上金額ト云フモノハ此間中カラ屡々申上ゲタノデ、或ハ利益ヲ得ナイ商売ガアルカラソレヲ同一ニスルト云フコトハイケナイ、又卸売ト小売ト云フモノハ利益ノ点ニ於テ其差ノアルコトハ判然シタモノデ、ソレヲ一緒ニスルト云フコトハ到底イカヌコトデアルト云フ者デゴザイマス、併シ此間中種々御論モアツテ、ソレハ固ヨリ営業ニ依ツテ等級ヲ分ツカラ、利益ノアルモノハアルモノヽヤウニ、利益ノナイモノハナイヤウニ等級ヲ定メルト云フコトデ二読会デ決議ニナツテ居リマスガ、愈々今日税ヲ定メルニ、此商業ハ利益ガアルカラ幾ラ、此商業ハ利益ガナイカラ幾ラト云フコトヲ明記スルコトハ出来ヌ、ソレヲ以テ税ヲ納ムル標準トスルト云フコトハ到底当ラヌコトデアルダラウト思ヒマス、故ニ収入額ガ何程ニシタカラ此税金ハ何程ノ額ト云フ風ニ、ソレヲ以テ割合ツテ一円ニ対シテ――何程ノ収益ニ対シテ何程ノ税ヲ納メネバナラヌト云フノガ正当デアルト云フ考デ、売上金額ト云フコトニシテ往クト云フコトハ到底当ラヌ、又各商業ニ至ツテ等級ヲ分ケテ往クト云フコトハ到底行ヒ難イコトデアルダラウト云フ考デアリマス
○五十二番（東京、中野武営君）　利益金ト云フコトニ就テハ余程攻究ヲシタノデゴザイマスガ、収益金ト云フモノハ――成程利益ヲ標準ニシテ御取リナサレト云フコトヲ云フノハ名ハ正シクゴザイマスケレドモ、根拠ト云フモノハ何レニアルカ分ラナイ、或ハ無責任ト云フ結果ニハ相成リハシマセヌカ、例ヘテ申セバ、資本ハ是程掛ケテ居ル、是程ノ売上高ハアルガ、今年ハ非常ニ損ガイツタト云フト利益ガナクナル、会社ノ如キモノデアレバ同ジ会社デアツテモ其利益ヲ見分ケル人ガ多イ故ニ、他人ヲ欺クニハ先ツ内輪ノ人ヲ欺カナケレバ出来ナイカラ、ソレデ宜イカ知ラヌノガ、一個人ノ懐ニ於テ法律ガ利益ニ依ツテ
 - 第22巻 p.166 -ページ画像 
税ヲ定ムルト云フコトヲ書クノハドウデアラウカ、損得ヲ差引クト利益ハゴザイマセヌ、売上高ハゴザイマシタガ実ハ買出シヨリ余程損ヲシテ売ツタノデゴザイマスト云フ如ク、一例ヲ以テ申シテモサウ云フコトヲ以テ免ルヽコトガ出来ル、今年ハ不景気デアツタカラ利益ガゴザイマセヌト云フト推測スル種ガナクナツテ仕舞ウ、何故カト云フト法ハ利益ト云フモノヲ以テ取ルノデアルカラ、利益ハ損得ヲ差引テ残ツタモノヨリ外ハナイ、ソコデ此商品ハ何程デ買ツテ居ル、ソレヲ以テ是丈ケニ売レバ損ハシテ居ラヌト云ツテモ、否是丈ケノ年月ガ掛レバ少シモ私ノ懐ニハ利益ガゴザイマセヌト云フト推測スル種ガナクナル、固ヨリ道理カラ云フタラ利益ヲ標準ニスルヨリ宜キハナシト云フノハ原案ニ書イテゴザイマス、私モ利益ガ捕マヘラレルモノデアリ安心シテ標準ト為シ得ルモノナラバ固ヨリ蹰躇セヌ、直チニ同意スル、而シテ私ハ外国ノコトハ知リマセヌガ、外国ノコトヲ調ベタ人ニ聞イテ見マシテモ、是程分リ易イ是程道理ノ正シイモノヲ、此営業税ノ如キ一個人ノ働ノモノニ税ヲ課スルニ利益ヲ標準トシテ掛ケルトコロハ外国ニ事例ガナイ、若シ之ガ外国ニハサウシテ居ルガ日本丈ケガ出来ヌト云フナラバ、日本人ガ一種狡猾ナノダト云ツテ之ヲ矯正スルコトガ出来ルカ知ラヌガ、ドウ云フ訳カ何処ノ国モサウ云フヤウナ漠トシタコトハ標準ニ立テラレヌモノト見ヘテ、政治家ナドモサウ見テ居リマス、商業家モサウ見テ居リマス、利益ヲ標準トスルト云フコトヲ一個人ニ当テルコトハドウモ私ハ事例ヲ見出スコトガ出来ヌ、然ルヲ何カ拠リ処ガアルトシテ、活溌ニ唯利益ヲ標準ニ現ハスト云フコトハ実業社会ノ輿論トシテ云フタ時分ニハ、実業界外ノ人間ガ何ト考ヘルカ例ヘバ請負金高ニ依リ売上金高ニ依ツテ、請負金高ハアリマスト云ヘバ、是ヨリシテ是丈ケノ利益ガアルト云フ推測ヲ下シ得ルカラ税ガ取レルト云フガ、若シ其者ガ已ノ申告スルモノヲ差引イテ全ク私ノ利益ニナリマスモノハ何モゴザイマセヌト云フタ時分ニハ、何ヲ以テ法ガ立ツテ推測ヲ下スカ、下ス標準ガナクナルト云フコトヲ恐レル、夫等ヲ研究シテ見マスト、道理上デハ宜シウゴザイマスガ、利益ト云フモノヲ以テ標準ニサセルト云フコトハ議論ノ上カラサウ云フコトヲシテ見テモ、実際人情トシテサウ云フコトニハ防ギガ付カヌト見テ居ル位ナラバ、寧ロ無責任ノ言分トナリハシマセヌカ、夫故ニ先ヅ形ノアルモノヲ捕ヘテ標準ニシテ、ソレカラ法ガ推測ヲ下ストシナケレバナラヌ、然ルニ現法ニ依テ見ルト、利益ノ厚薄アルヲ問ハズ、営業柄ニ就テ様々異ツテ居ルモノヲ捕ヘテ之ニ率ヲ以テ加ヘルト云フコトハ、ドウシテモ実理ニ当ラヌ、道理ノ上カラ不公平デアル、之ヲ救フニドウカ道ガナイカト云フコトヲ研究シテ段々苦ンダ結果、等級デ流通ヲ付ケテ往クヨリ外道ガナイト吾々ハ見タノデアリマス、然ルニ唯今日等級モ附スルコトラ定メズシテ、現法ノ吾々ガ矢張リ不当ナリト見テ居ルモノヲ討論ヲ願ツテ置クノハ何事カト云フ御咎ハ蒙ルニ相違ナイガソレハ先程弁明シタ通リ、是非之ヲ救フ道ヲ安心スルマデ研究シナケレバナラヌ、ソレハ商業会議所ガ此問題ノ研究ヲ引受ケタコトハ以上ノ通リデアル、詰マリ現法ノ直シ得ラレル程度マデ今ノ意見ノ定ツタモノヲ持出ス、其余ノ事ハ第二段ニシテ余地ヲ取ツテ考究スルモノデ
 - 第22巻 p.167 -ページ画像 
アル、ドウモ是ハ一率ノ下ニ税ヲ課スルノハ結構ナ法ト夢ニモ思ハヌソレ故ニ等級ノコトマデ考ヘルナラバ慎重ヲ尽サナケレバナラヌモノダカラ、等級ト云フコトニ至ツテハ一歩進ンダ考ヲ以テ研究シテ見ヤウト云フノデゴザイマス、ソレデ此利益ヲ標準トスルト云フコトニ就イテハ、本会ノ議論バカリデナク、委員ノ協議会ニ於テモ其議論ハ出タノデアリマス、実際此利益ト云フモノハ、世間ニ向ツテ、政府ニ向ツテ、ツカマヘ得ルモノデアルト云フコトヲ云フニ甚ダ蹰躇スルガ、唯今申スヤウニ、形ノ見ヘル利益ガナイト云ヘバ推測スルモノガナクナル、是ハ最モ苦ム所デゴザイマシテ、余儀ナク形ト云フモノヲ標準ニシテ、其救フ方法ハ第二段ニシテ求メヤウト云フ、斯ウ云ウ協議会ノ意見デゴザイマス、分ツテハ居リマセウガ、利益ト云フ点ニ就イテ一寸申上ゲマシタ
○二十一番（富山、関野善次郎君）　ソレデ今委員諸君ガ協議会ヲ御請求ニナツテ別ニ御相談ノ案件ヲ提出セラレテ、唯今御相談中ノコトデゴザイマスガ、至極此別ニ提出セラレタル案ニ対シテハ同情ヲ表スルトコロデゴザイマス、併シナガラ、此会社ト云フモノト一個人ト云フモノト区別シテアリマスガ、サウシマスルト、此会社ハ詰リ収益ヲ以テ課税ノ目安トシテ、一個人ノ営業ハ或ハ売上金、或ハ総益金、或ハ貸付金、或ハ単ニ収入金ト云フコトニナツテ居リマス、ソレデ商売ノ種類ハ――此倉庫業トカ或ハ運送業トカ云フモノハ収入ハ一万円ヲ収入スルケレドモ、五千円若クハ七千円マデハ其費用トシテ支払ヒヲシナケレバナラヌト云フコトニナル、既ニ此料理店ノ如キ、旅人宿ノ如キハ最モ然ルベキ性質ヲ持ツテ居リマス、ソコデ税率ノ方ニ於テ或ハ純益ニ対シテ百分ノ十ト云フカドウ云フカ分ラヌガ、兎ニ角税金ニ於テ違ヒヲ持ツテ来ルコトニナリハセヌカ、去リナガラ会社ト云ツテモ独リ銀行業バカリ会社デナイ、又工業バカリ会社デナイ、物品販売業ニモ会社ガアリマス、既ニ料理屋・宿屋ト云フモノニモ会社ガアリマス、如何ニ此税率ヲ施行シテ純益ニ依ルモノト、ソレカラ収入ニ依ルモノト多少其間ニ区別ヲ立テルニシタトコロガ、詰リ純益ニ依ルト云フ方ガ幾分カ税ガ軽クナツテ、ソレカラ収入金或ハ貸付金ト云フ方デ税ヲ取ルト重クナルト云フ結果ニナルト思ヒマス、一個人ノヤル営業ハ税ヲ高ク出サナケレバナラヌシ、会社組織ヲ以テスル営業ハ税ヲ安ク出スト云フ嫌ヒガアルト思ヒマス、此点ニ就イテハ委員諸君ハドウ云フ御取調ニナツテ居ルカ、ソレヲ御尋ネ申シマス
○五番（長崎、松田源五郎君）　唯今御話ノ税率ノコトハ少シモ意見ヲ申出ヌト云フ考ヲ持ツテ居リマス、ソレハ今御報道ニナリマシタ第二ノ其三ノ場合ニ唯ダ一躍シテ税ヲ多ク取ルト云フコトハイカヌ、減額ト云フコトガ主眼ニナツテ居ルノデアリマス、ソレヲ書入レルコトニナツテ居リマス、今ノ税率ノコトニ就テハ少シモ意見ハ申出ヌ方ガ宜クハナカラウカト云フ、斯ウ云フ考ヲ持ツテ居リマス
○二十一番（富山、関野善次郎君）　税率ノコトハ言ハナクツテモ宜シウゴザイマスガ、政府ガ定メル時ニ権衡ヲ得ヌヤウニ思ヒマスガ……
○五番（長崎、松田源五郎君）　ソレハ利益金或ハ収入金又ハ売上金高ト云フモノニ依テ税率ヲ立テルトスレバ、果シテドチラガ重クナル、
 - 第22巻 p.168 -ページ画像 
ドチラガ軽クナルト云フコトハ各自言フトコロガ異ルデアラウト思ヒマス
○四十番（大坂、土居通夫君）　唯今二十一番ノ御質問ノ如ク、ドウモ別ニ会社税ト云フモノヲ置イテ会社ダケハ税ヲ別ニスルト云フコトハドウシテモ都合ガ悪イヤウニ思ハレマス、只今御問ヒニナツタ通リ一個人ノ営業ト会社トハ税率ガ違フト云フコトハドウシテモ不公平ガ出来テ来ル、併シ会社ハ仕方ガナイト云フ考ナラバ已ムヲ得ヌ訳デアルガ、ドウモ一寸都合ガ悪イヤウニ思ハレマス
○四十五番（知多、天野伊左衛門君）　只今御質問ニナツタ点ニ就イテ色々委員会ニ於テ研究ヲ致シマシタガ、兎ニ角税ヲ賦スル上ニ於テハ其収利ニ基イテ税ヲ賦スルト云フノガ便利デアル、然ルニ個人ノ営業ハ種類ガ違フト云フ只今モ既ニ議論ガアリマシタ通リ、ドウモ収利ヲ求メルニ困難デアル、幸ニ会社デアルト明ラカニ利益ヲ見ルコトガ出来ル、ソレ故ニ見易イモノダケハ成ルベク煩雑ナ手数ヲ省カウトスレバ、無論会社ダケハ別ニ其収利ヲ以テヤルコトニシタラ却テ単純デ宜カラウ、個人ノ営業ニ於テハ最モ見易イトコロノ収入金額若クハ貸付金額ヲ標準トシテ税ノ歩合ヲ定メテ置クト云フヨリ外ニ仕方ガナイ、デ此中ニ会社ヲ個人ト同ジヤウニ加ヘテ居ツテモ余リ差支ヘナイコトデハアルガ、見易イ分チ宜イモノヲ殊更ニ此個人ノ中ニ混ゼテ見難イ標準ヲ以テ税ヲ取ルニハ及バヌ、斯ウ分ツ方ガ煩雑ナ手数ヲ省クト云フ上ニ於テ、政府ニ於テモ営業者ニ於テモ誠ニ簡便デアルカラ、是ダケノ意味ヲ以テ矢張リ会社ト個人トヲ分ケマシタ次第デゴザイマス
○三十八番（博多、是松右三郎君）　先刻カラ会社ト個人トノ区別ノコトニ就イテ色々御論ガゴザイマスガ、能ク考ヘテ見ルト、営業税ト云フノハ損益ニ拘ハラズ必ズ国民ノ義務トシテ営業者ハ負担シナケレバナラヌモノデアルト思ヒマス、ソレデ損シタニ依テ其税ヲ納メナイト云フヤウナコトハ少シ不穏当デナイカト思ヒマス、矢張リ個人モ会社モ同様ニヤラナケレバ不穏当デアルト思ヒマス、一寸御参考マデニ一言シテ置キマス
○三十六番（上田、黒沢鷹次郎君）　只今此収入金額ト純益トニ依テ議論モゴザイマスガ、是ハ他ノ地方ハドウカ存ジマセヌガ、我ガ地方ノ如キハ売上金額ダケハ商家ノモ分リマセウガ、利益ト云フモノニ至ツタナラバ恐ラクハ分リマスマイト思ヒマス、何故ト云フノニ、此先年所得税法ノ発布ニナツタ時分ニ頻ニ所得ヲ出セ出セト勧メタガ、正直ニ所得ヲ調ベテ出シタ人モアルガ、収利ガ案外ニ少イト云フ人ガ多アリマス、同ジ物品販売業ニ至ツテモ同ジ位置ニ居テ、一寸見タ所デハドチラモ利益ガ同ジ事ダラウト思フノニ、案外利益ガ少イト云フ人ガアル、是ハ吾々ガ色々調査ヲスルノニ、出セト云フカラ出シマシタ、昨年ハ案外古イ物ガ残テ居リマシタカラ約ソ見積ツテ出シマシタト云フ者ガアリ、又昨年ハドウモ案外損ヲ致シマシタカラ少ク書イテ出シマシタト云フ者ガアリ、実際ニ就イテ調ベルト云フコトハ到底出来マセヌノデス、田舎ノ商家ヘ往ツテ見ルト、未ダ利益ノ店卸シガ本統ニ出来テ居ラヌノデアリマシテ、一番見易イノガ売上金額デゴザイマス日本ノ帳簿ノ方デ出入帳ナドヽ云フモノハ宜ク出来テ居リマシテ、店
 - 第22巻 p.169 -ページ画像 
卸帳・大福帳ナドヽ云フモノハ区々ニ分テ明瞭ニナツテ居リマセヌカラ、実際ノ収利ハ調ベ悪ウゴザイマスガ、何処デモ売上ゲダケハ分ルコトニナツテ居リマスカラ、最モ御修正ニナツタ収入金額ト云フモノハ適当ダラウト思ヒマスカラ、本員ハ之ヲ賛成致シマス
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　段々先刻カラ委員諸氏ガ述ベラルル通リ、緻密ニ相談ヲスレバスルニ従ツテ益々困難ナルコトガ出来テ来ルカラ、到底局ヲ結ブコトガ出来マイト思ヒマス、去ル十九日ヨリ議事ヲ始メマシテ最早玆ニ於テ確定ヲスルト云フ場合ニ至ツテ委員ト云フ任ヲ受ケテ、今度二読会ニ於テ決議致シマシタモノヲ能ク手ニ取ツテ見マスルト、大変ニ不適当ナモノガアル、或ハ一個人ノ営業トシテ売上金ニ依ルモノガアリ、或ハ資本ニ依ルモノガアルト云フ、斯ウ云フ決議ガ出来テ来ルノデ、如何ニシテ斯様ナモノヲバ三読会ニ於テ修正ガ出来得ラルヽカ、最早二読会ニ希望シタ精神ヲ動カスベカラザルモノト見テ、之ヲ確定スルコトニナルト、斯ノ如ク実業家ノ機関タル商業会議所ニ集ツテ議シマシタトコロガ、順序ノ立ツモノデアルマイト云フ事ニ就テ大変議論ヲシタ末、是ハドウシテモ協議会ニ移シテ協議ヲ開イテ議事細則トカ云フモノニ拘泥ヲセズシテ、十分ニ此実際ニ行ヒ得ベキコトヲ、又実際ニ当ツテ見テ彼是前後ノ照応ト云フモノノ事項ヲ取ツテ見ナケレバナラヌモノデアルト云フトコロカラ、一般委員ノ任ヲ離レテ一個ノ資格トナツテ色々研究ヲシタ結果、斯ノ如キ協議案ト云フモノガ一ツ出来テ来マシタノデゴザイマス、其事ハ段々委員諸氏カラ御述ベニナツタカラ敢テ述ベマス必要ハゴザイマセヌガ只今ノ場合デハ一個人ニハ売上金ヲ標準トシ、会社ニハ利益ヲ標準トスルト云フ事ニ就イテ御論ガ喋々出テ居ルノデゴザイマスガ、実ハ是等ニ至ツテモ余程緻密ニ相談ヲ致シマシタガ、然ラバ是ハ会社モ収入金ト云フ事ニナレバ、個人モ売上金トスレバ、比較上稍々都合ガ宜イヤウデゴザイマスルガ、此会社ナルモノハ一寸一例ヲ挙ゲテ見レバ、紡績会社ノ如キ、保険会社ノ如キ、紡績会社ナドハドウモ迚モ此売上金トカ、収入金トカニ税ヲ課スルト云フコトニナルト大変ナモノデアル、段々此営業ノ種類ニ依テハ――会社ニ於テハ会社ダケノ利益ハ極ク明カナモノデ、考課状モアツテ公ニシテ広告スルト云フヤウナモノデゴザイマスカラ利益ヲ見ルコトガ極ク易イ、ソレノミナラズ二読会ニ於キマシテモ会社ハ利益ニ課シマスルコトニ就キマシテ深ク議論モナカツタコトヽ思ヒマスノデ、先ヅ会社ノ方ノコトハ利益金ヲ以テ課税ノ標準トスルト云フコトニ致スノガ当然ナコトデアラウト云フ考ヲ付ケマシタ、ソレデ最早此場合ニ至リマシテハドウトカ其局ヲ付ケル場合デアラウト思ヒマス、此委員ガ協議会トシテ此ニ御相談ヲ致シマスモノガ、極ク委員ガ感心シタモノデアルカト云フト、否、決シテサウデナイ、止ムヲ得ズ稍々此位ナコトニシテ御相談ヲ纏メルト云フコトハ至極必要デアルカラ、之ヲ以テ協議会ヲ開イタ上デ皆様ガ何カ御名案デモ出マシタナラバ吾々ガソレニ賛成スルカモ知レマセヌ、実ハ斯ノ如キ考カラ審議ノ末、此辺ノ所ヲ以テ先ヅ今般ノ会ヲ終ヘタイト云フ考デ、斯ウ云フモノヲ提出シタノデゴザイマスカラ、ドウカ其思召ヲ以テ御協議ヲ願ヒマス
 - 第22巻 p.170 -ページ画像 
○三十六番（上田、黒沢鷹次郎君）　一個人ノ販売高ト会社ノ利益ト異ツテ居ルト云フ二十一番ノ御話デスガ、ソレハ権衡ガ保テマイト云フ御話デゴザイマスガ、四十番ノ御説ノ通リ若クハ不満足ノモノカ知レナイト御述ベニナリマシタガ、拙者ガ考ヘマシテモ幾分カ其害ガアルカ知レマセヌガ、ソレニ代ルニ名法ト云フモノガナク、斯ウヤレバ公平ダト云フコトハ必ズ出来マセヌ、一個人ノ販売業ニシテモ御前ノガ嘘ノ届ダカラ之ヲ往ツテ調ベルト云フテモ其材料ガナイ、売上帳ナラバ立派ニ調ベガ出来マセウ、此品物ハ売残リデゴザリマスカラ五拾円ノモノカ参拾円シカアリマセヌト云フテモ六拾円ダト云フテモ何分調ベルモノガアリマセヌカラ、先ヅ委員ノ調ベマシタ売上金額ト云フモノハ最モ公平ナリト仮ニ見テ、本案ヲ賛成スル外仕様ガアリマスマイ
○二十一番（富山、関野善次郎君）　今段々三十六番ナドノ御心配モゴザリマスガ、商業ノ重ナルモノハ物品販売ト云フモノガ日本ノ商売人ノ大多数ヲ占メテ居ルモノデアル、ソレダカラ是ハ私ハ収益ヲ以テ取ルト云フコトハ到底容易ニ行レマイト思ヒマスカラ、所謂販売金高、是ハ如何ナル帳簿ノ不整理ナ商人デアツテモ売ツタモノヲ付ケナイト云フコトハナイカラ、是ハ出入帳ヲ作レバ調ベカ出来ルト思フ、ソレカラ又銀行業、是等ハ一個人ニテモ随分社会ニ信用ヲ得テヤツテ往カナケレバナラヌ、会社デアルカラト云フテ大層変ツタヤリ方ヲスベキモノデナイ、金銭ノ貸付業、金高ニ依ツテ貸付ヲスル業、物品ノ売買ヲ本トスルト同一デ、末ニ至ツテ保険業・物品貸付業・製造業、是亦収入金額ヲ調ベルコトハ物品販売業ノ利益ヲ調ベルモノト比較シテ難易何レニアルカト云フト容易ニ調ベカ出来ヌ、販売店ニ対シテ利益ガアルカト云フトナイト云フ、ナイト云フケレドモイヤアルト云フ、其混雑ヨリ貨物ノ数トカ荷物ノ数トカニ依ツテ調ベカ出来ル、又一番困難ナノハ物品ノ売上デ最モ大多数ヲ占メテ居ルモノガ一番六ケ敷、此処ニ出テ居ル吾々会員ハ所謂実業家・商業家ノ代表者デアル、然ルニ実ニ一個人ト云フモノハ嘘ヲ吐クモノデアルト云フコトヲ言ハヌハカリノコトヲ云ハレル、ソレハ嘘ヲ吐クモノガアルカモ知ラヌ、然ルニ嘘ヲ吐クト極メテ仕舞フノハ余リ情ケナイ、是カラ段々文明ニ進ンデ往クノニ、既往ハ嘘ヲ吐イタモノダカラ将来モズツト嘘ヲ吐クダラウト云フコトヲ本会ガ議スルト云フコトハ、一個人ノ代表者トシテ余リ一個人ヲ見下ゲタ話デ、実ニ情ケナイコトデアルト思フ、ソレ故ニ諸君ハドウカ一応御考ニナリタイ、或ハ又製造業ニ就イテ、紡績会社ト云フモノハ今日迄沢山出来テ居リマス、シテ見ルト将来益々紡績会社ガ日本ニ起ルコトガ出来ヌトハ極ラヌ、ソンナ場合ニ会社ハ減税ヲ受ケテ一個人ハ甚ダ迷惑ヲスル、随分一個人デ以テ会社ノ如キ仕事ガ出来ルモノモアルカラ、是ハ失礼ナガラモウ少シ御考下ダスツテ、ドウゾ全体ノコトニ就イテ適当ナコトヲ御考下サツタナラバ、私モ同意ヲ表シマスカラ、会社ト一個人ト云フモノヽ上ニ於テ公平均一ニ行ハレル御考ヲ願ヒタウコサリマス
○五十二番（東京、中野武営君）　一寸関野サンノ御意見ト云フモノハドウ云フ修正ニナルノデスカ
○二十一番（富山、関野善次郎君）　私ノハ会社ト云フモノト一個人ト
 - 第22巻 p.171 -ページ画像 
云フモノトニ税ノ不平均ヲ来ス事ガアルト云フノハ、収益ト云フモノニ見ルノト収入ニ見ルノト、ソレカラ税率ト云フ方ノ上ニ方テ多少斜酌スル所カアルカ知ラナイケレドモ、兎ニ角不平均ヲ来スト云フコトハ物品販売業ノ如キハ会社組織デモ出来ル、其辺ニ就イテ委員ノ修正ハドウ云フ御考カ、答ヘガ要領ヲ得ナイ
○会長（東京、渋沢栄一君）　貴君ノ御考ヲ言フタラ宜シイ、斯ウ云フ風ニシタラ宜イト云フ意味ヲ仰シヤレバ宜イ
○二十一番（富山、関野善次郎君）　ソレデドウ云フ意見カト云フコトニナレバ、之ニ修正ヲシテ宜シケレバ会社ト一個人ト別ニセヌガ宜イ
○会長（東京、渋沢栄一君）　サウスルト貴君ハ標準ヲ別ニスルガ不同意ダカラ一緒ニシタイト云フ、之ガ反対ノ要点デスナ
○二十一番（富山、関野善次郎君）　サウデス
○九番（金沢、山田清三君）　此売上金額ヲ収益金トスルコトニ対シテ調ベ悪イト云フ皆サンノ御説ガアリマスガ、私ニ於テモ中々調ベ悪イコトダラウト思フ、売上金ト云フモノニスルト、卸売・小売ト云フモノニナリマスト余程不公平ヲ来スモノダラウト思フ、或ハ地方ニ於テモ随分此頃ハ機業モ盛ニナツテ往キマスル、或ハ羽二重ノ卸売ヲスルモノハ容易ナラヌ金額ヲ商ヒヲスル、サウシテ利益ト云フモノハ誠ニ些少ナモノデ、又羽二重業ナドハ輸出品デアリマスカラ、即チ此品ヲ奨励シナケレバナラヌ、然ルニ売上金額ト云フモノニナツテ税ヲ課セラルヽコトニナル卸売ト小売トハ其関係ガ同一ニナリマスカラ中々困難ナモノデアルト思ヒマス、売上金ト云フコトニナレバ卸売ト小売トハ別ケナケレバナラヌ、然ルニ卸売・小売ハ唯対手ガ商人テアルカナイカト云フ見分ケガ六ケ敷カラト云フ意見デ一緒ニ見テ居リマスノデスケレドモ、ソレハ田舎ハイザ知ラズ、随分東京・大阪辺リデハ卸・小売ハ随分区別ガ付イテ居ルト思ヒマス、田舎ニ於テモ随分兼業シテ居ル所ガアリマスガ、其中卸売ハ卸売ノ帳簿ヲ備ヘ小売ハ小売ノ帳簿ヲ備ヘテヤルコトガ当然ノコトデアル、故ニ卸売・小売ト云フモノヲ収益トスルコトニ於テハ何ヲドウスルト云フ必要ハアリマセヌガ、其物ヲ区別スルノデナイカラ収益ト云フコトハ到底行ヘヌコトデアルト云フノデスケレドモ、若シ収益ヲ標準トスルト云フ説ガ行レヌ時ニハ卸売・小売ヲ区別シナケレバナラヌ商業者ニ取テハ非常ナ差ガアラウト考ヘル、其辺ハ委員諸君ニ於テハドウ云フ御考デアルノデスカ、卸売・小売ハ今申ス通リデ利益ヲ得ル商売モアル、羽二重業ヲスルモノニ於テ羽二重業ハ斯ウダト去フテ区別ヲシテ、各商業ニ於テ各等級ヲ別ツト云フコトニシマシテモ、卸売ト小売トノ相違ニ依ツテ利益ニ差ガアル、是ハ区別セヌト云フコトハ到底無理デアルカラ、ドウシテモ売上金トナツタ以上ハ之ニ区別ヲ立テナケレバナルマイト考ヘル
○一番（静岡、北村五郎兵衛君）　最早本会ニ移ルコトニドウカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　如何致シマセウ、協議会中デドウモ御相談ガ工合好ク纏ルト云フコトハ甚ダ見難イヤウデゴザリマスガ、協議会トナレバ私ノ意見モ玆ニ申述ルコトガ出来ヤウト思ヒマスガ、今ノ協議会ト云フノハ只今九番ノ仰シヤル卸売・小売ハドウスルカ、之ハ区別スルガ宜シイト云フ修正ハ御尤デゴザリマスケレドモ、大体ヲ云
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フト、此二読会ノ結果修正ヲシタ其修正ノ御報道ハ第一段ニナカツタソレハ等級法ヲ立テルト云フ方法ニシテ、委員ハ夫々ノ議案ヲ整理シテ且字句ヲ御修正ニナツテ提出ニナツタ、素ヨリ其修正中委員諸君ハ更ニ議シテ曰ク、偖テ是デ大体ノ見込ハ立ツヤウナモノダガ、玆ニ一番新規ニ工風シ出シタ等級法ト云フモノガ果シテ差支ナク行ハレルデアラウカ否ヤト云フ懸念ガアル、若シ之ガ果シテ差支ナク行ハレヽバ宜イガ、ドウモ行ハレ得マイト云フ虞レガアルカラ、各地ノ商業会議所ニ於テ聯合会ノ意見ノ如ク夫々斯ル考ヲ提出スルト云フノハ或ハ未ダ審議ノ済マヌ、実際デ行ヒ難イモノダト云フヤウナ万一他日嫌ガアツテハイカヌト云フ御懸念ガ生シタ、其懸念ニ就イテ論ズルト、御懸念ノアル以上ハ斯ウ云フ差支ガ生ゼヌカ、地方ニ対シテハドウ云フヤウニ等級ヲ設ケルカト云フ色々過日来皆様ノ御討論ノアツタコトハ委員諸君中ニ御討議ガ生ジマシテ、其事ハ第二ニ移シテ、暫ク二読会ノ修正ノ意見ニ依ツテ等級ヲ設ケル方法丈ケヲ除クノデ宜クナイカト云フノガ此協議会ニナツタ精神ト見エマス、ソレデ諸君ガ等級税ヲ止メルガイケナイトカ、若クハ等級税ヲ止メルハ宜イケレドモ、宜イトシテ見レバ此際此法案ノ一個人ニ対シテハ左ノ標準ト云フモノハ之ヲ斯ク修正ヲシタイト云フ問題ヲ、モウ少シ近メテ御協議下サレントイケマイト思ヒマス、丸デ話ヲ枝葉ニ渉ラシテ議論ヲスルト到底協議会ハ纏マルマイト思ヒマス、委員諸君ノ御懸念ハ御尤千万デ、半バ請負税ニ近イヤウナ等級税ニナレバ手数ガ減ズルト云フ想像ガ強クナリマス前ニ東京商業会議所ノ委員ガ成立ツタ時分ニ私モ委員会議ニハ屡々出テ、委員中ノ討論モ承知シ、斯ル場合ニハ如何カ、斯ウ云フ差支ガナイカト云フ愚説モ呈シ、委員中ノ意見モ聴イタコトガアリマスガ、成ルベク斯ル方法ハ一ノ請負税ノヤウナ仕組ニシタラ手数ガ減ズルデアラウ、然ラザレバ唯自ラ之ヲ拒ガウト云フ意味ト取ラウト云フ商売ト相戦フト云フ嫌ガアルカラ、甚ダ煩雑ヲ強メルト云フ虞レガアルニ相違ナイ、ドウゾサウ云フコトノナイヤウニ致シタイ、現法ニハ大ナル修正ガアリタイト云フ希望ハ其節委員会議ノ説ニ略ボ賛同シタモノデアツテ、ソコデ等級法ト云フモノガ東京商業会議所ノ会議ニ於テ討論ノ末、先ヅ斯ンナモノデアラウト云フテ可決致セラレタ順序デゴザイマシタ、然ルニ全国ノ商業会議所ノ会員ガ打寄ツテ斯ウスレバ宜イト思フ、斯ウスレバ悪イト思フト討論シテ見ルト、他ニ思案ハナイ、兎ニ角斯ウシテ置イタラ宜カラウト云フ御協議ノ結果――協議会ノ範囲ヲ拡メテシマウト云フト話ガ戻ツテ仕方ガゴザイマセヌカラ、私ハ此御協議会ニ就イテハコヽラノ範囲デ御相談ヲシタラ宜クハナイカト思ヒマスカラ、自分ノ考ダケヲ一寸申述ベテ置キマス
○二十一番（富山、関野善次郎君）　御尤デゴザイマスガ、ドウシテモソコニ及ンデ来ル、唯等級ダケハ廃スノデナクシテ、委員会ヨリモ大体ノ修正ガ出マシテ、資本金額ヲ収入金額ニスルト云フ説モ出マシタカラ、モウ少シドウカ……
○十二番（浜松、中村忠七君）　此協議案ニ就イテ御話ヲ伺ヒマシテゴザイマスルガ、只今関野君ノ御考ノ所ハ私モ大体是迄二読会ノ往キ掛リトシテ、会社ニ厚クツテ一個人ニ薄クハナイカト云フコトヲ最モ深
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ク考ヘテ居リマスガ、既ニ二読会ニアスコマデ運ンデサウシテ会社ノ利益金額ト云フコトニハ反対ヲ致シタ者ガ僅ニ一両名デ、跡ハ大多数デ極マリマシタ、然ルニ只今関野君カラ段々ノ御説ノ出ルノハ……協議会案ハ収入金額ト云フノデアルガ私共可否何レト云フ考ハ付キマセヌガ、成ルベク此協議案ノ精神デヤレト云フナラバ、大体会社ノ営業ハ営業税法ニ対シテ頗ル便利ナコトデアルガ一個人ノ方ハ頗ル不安心ナコトガ出来ル、何故ナレバ会社ノ方ハ利益金ニ賦課スルト云フコトニナツテ其年ノ利益ノ利率ニ就テハ従ツテ軽重ガ出来テ来ル、然ルニ一個人ノ方ハ営業ノ損益如何ニ拘ラズ唯収入金額ニ課税スルコトニナルト、其年ノ営業ノ状況如何ニ依ツテ一個人ナルモノハ非常ニ迷惑ヲ感ズルコトニナル、先ヅ会社営業ハ極ク基礎モ堅ク、且従ツテ総テノ事ガ整理シテ居ルカラシテ、是ニ向ツテ此上ニナイ営業税法ノ安心ヲ求メルト云フコトヲスルニハ、矢張会社ニ重イト云フヤウナ厚クナルト云フヤウナ結果ヲ生ジハシナイカ、若シ強ヒテ希望ヲ述ベマシタナラバ、第四ノ保険業以下ノ一個人ノ営業ニ対シテハ収入金額ヲ以テスルト云フコトニ就イテハ委員諸君ハ如何ナル御考ヲ持ツテ居ラルヽカ若シ御考ガアツタラ其方法ヲ伺ヒタイ、且又全体ヲ通ジテ、一個人ノ物品販売業、一個人ノ保険業以下之ニ対スル権衡ヲ考ヘテ見ルト、此協議案ニ依ツテ見レバドウモ平衡ヲ得テ居ルト云フコトハ考ヘラレマセヌ、ト云フテ第二読会ヲ殆ド経マシタ是迄ノ案ニ就テモ是又矢張一個人ト会社トノ間ニハ少シク甄別ガアル、併ナガラ第二読会ノ方ハ未ダ資本金額ヲ課税ノ標準トシテアツタカラ、保険業ハ会社ノヤウニ一定ノ紀律ノ間ニ営業スルモノトスルト、営業ノ区域ガ少シ窮屈ニナリマスカラシテ一個人ヨリ少ナイ、個人ノ方ハ会社ノヤウナ厳則ノ下ニ立タナイカラ多ク営業ヲスル、其代リ利益ガ薄イ、薄イノハ手数ヲ省クカラ薄イ、サウ云フヤウナコトニナルト勉強シテ高イ、高ガ多クナルト租税高ヲ高クシテ一個人ノ方ガ収入ノ方ヲ以テ課セラレル、会社ノ方ハ安心ヲシテ営業ヲシテ居テ利益ノミヲ以テ課セラレ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　収入ニ課スルト利益ニ課スルト税率ヲ同ジニスルト云フ……
○十二番（浜松、中村忠七君）　決シテサウデハアリマセヌ、ドウモ私ハサウハ思ヒマセヌ
○会長（東京、渋沢栄一君）　私ガ委員会ノコトニ就テ質疑スルト云フノハヲカシイヤウデアリマスガ、此収入金額ト云フノハドウ云フ意味デアリマスカ、売上金高ト云フ意味デゴザイマスカ
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　売上高ト云フ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　売上高ト申シマスルト、保険業ハ保険料……
○五番（長崎、松田源五郎君）　一寸……保険料ハ積立テノ利子……
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソレカラ物品貸付業・製造業トハ性質ガ違ヒマスガ、之ヲ収入ノ金額トスルト大分率ガ違ヒマセヌカ
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　製造シタモノナドハ売却ノ代価……
○会長（東京、渋沢栄一君）　製造代価ト保険料ト同ジコトニシタラ率
 - 第22巻 p.174 -ページ画像 
カ違ヒマセヌカ
○五番（長崎、松田源五郎君）　率ハ各業色々ニアルンデス
○会長（東京、渋沢栄一君）　之ヲ同率ニスルト云フノデハナイノデスカ
○五番（長崎、松田源五郎君）　左様……
○六番（赤間関、瓜生寅君）　モウ大抵論旨モ尽キタラウト思ヒマスカラ本会ニ移ツタラ如何デゴザイマス
　　　〔「賛成々々」ノ声起ル〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　サウシマスルト協議会ノ結果、即チ此委員ガ御提出ニナツタ案ヲ議題トシテ本会ニ移ツタラ宜カラウト云フ御主意デゴザイマスカ
○六番（赤間関、瓜生寅君）　先ヅ是カラ先ニ決ヲ御採リ下サイ
○十二番（浜松、中村忠七君）　サウスルト二読会マデ議シタコトハ廃棄ニナルノデスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　廃棄ニハナリマセヌガ、二読会デ極マツタ此第二ノ項目デスナ――第二ノ営業税法改正ノ要領ト云フ其一ト云フモノノヲ取ツテ「一個人ノ営業ニ対シテハ云々」ト云フ二読会ニ読ンダ文章ニ代ヘルニ之ヲ以テシヤウト云フノデス、詰リ其二ト云フノガ其一トナツテ、其次ガ「以上各業ハ営業ノ状態ニ応シ、毎営業ヲ若干ノ等級ニ分チ云々」ト云フ長イ文章ニ代ヘテ、之ヲ削ツテ仕舞ツテサウシテ是ニ代ヘルニ玆ニ一枚摺ニ出タモノニシヤウト云フノデゴザイマス
○十二番（浜松、中村忠七君）　ソレハ協議会ガ二読会ニナルノデゴザイマスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　此協議会デ二読会ノ修正トシタラ纏マラウト思ヒマスカラ、之ヲ即チ修正案トシテ此処デ御議シニナツタラ宜カラウト考ヘマス
○十二番（浜松、中村忠七君）　少シ疑義ガゴザイマスガ、数日ノ議論ニ渉ツテ諸君ノ御考モ大同小異ノ事ガ沢山ゴザイマシテ、吾々モ之ニ向ツテハ意見ヲ持ツテ居リマスガ、折角協議会マデ開イタノニ本会ニ出シテ終ニ之ヲ極メテシマウト云フノハ頗ル遺憾デゴザイマスカラ、成ルベクナラバ協議会ニ於テ十分ニ御練リ下サレテ、而後本会ニ出シテ御議シ下サレタナラバ、大多数デ議決スルヤウニナツテ此案ノ精神ヲ貫徹セシムルニ頗ル都合ガ宜カラウト思ヒマス、今ハマダ議論ノアル場合デ、俄ニ之ヲ本会ニ移シテ一項毎ニ議論ガ生ジタナラバ整理上イケマイト思ヒマスガ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　御尤ノ御説デゴザイマスカラ御考ガアルナラバ十分ニ……
○十二番（浜松、中村忠七君）　協議会デ大体ノ方針ヲ定メテ、本会ヘ移シテカラ議論ノナイヤウニ……
○五十二番（東京、中野武営君）　私等ガ協議会ヲ求メタト云フ主意ハ会則ヲ厳格ニ解釈スルト、二読会マテニ議決シタモノヲ修正スルト云フコトハ規則ニ抵触ヲスルニ相違ナイ、併ナガラ之ヲ十分ニ審議考究スルト云フノガ眼目デ、唯会則ノ範囲内ニ於テ拘束セラルヽト云フコ
 - 第22巻 p.175 -ページ画像 
トデアツテハ、多数ノ人ノ是認スルモノガ行ハレナイヤウニナツテ甚ダ遺憾デアリマスカラ、極ク儀式立ツタコトナラバ兎モ角モ、此処ハ商工業者ガ寄ツテ研究スル所デアルカラ、人ト約束ヲスルガ如キ事トハ違ツテ、研究ヲスルト云フノガ目的デアル以上ハ、妨ゲノナイ限リ――又協議会デ協議ガ出来ル以上ハ十分諦メヲ付ケルマデ協議会デ十分ニ御協議ヲ下スツテ、其上デ本会デ議スト云フコトニナツタラ御纏メガ早ク就カウト存ジマスカラ、サウ云フ御運ビニナルコトヲ希望致シマス
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　ソレデ只今製造業ナドハ一個人ノ製造業ニ対シテハ収入金ト云フコトデアルガ、他ニ株式ナリ合資・合名ノ会社組織ノモノガアルトスレバ、権衡上大ニ悪イト云フ御説モアルヤウデゴザイマスガ、若シモサウ云フ御考デアルナラバ、是デハイカヌカラドウシヤウト云フ御意見ヲ御提出ニナルコトヲ希望致シマス委員ハ段々修正意見ヲ申述ベタ通リ此上見出シガ付キマセヌ、玆ニ於テ協議会ガ必要デアラウト思ヒマス、又三人ヨリ五人、五人ヨリ十人十人ヨリ十五人ト云フヤウニ、人ガ多クナル程営業税法ノ改正ヲ求メル点ニ於テ利益ガアラウト云フトコロカラ此会ノ起ツタ所以デゴザイマスカラ、若シ各項ニ対シテ御意見ガアルナラバ御腹蔵ナク討論セラレムコトヲ望ミマス
○四十三番（八王子、吉田忠右衛門君）　只今五十二番ノ言ニ依レバ、委員諸君モ協議案ヲ以テ完全ノモノトハ認メラレザル如ク、詰マリ何ニカ好キ考モアラバト相談サルヽノデスカラ、論弁ニ苦ミマス、之ガ善ケレバ之ガ悪シ、誠ニ何方ヲ取ツテ宜イカ決シ兼ネマス、先ヅ何時マデ協議会ヲ開イテ居ツテモ、ドンナ名案ガ出マスカ知リマセヌガ、格別ナコトモナカラウト思ヒマスカラ、先ヅ此案ヲ以テ本会ニ附スト云フコトヲ希望致シマス
○四十四番（八王子、平林定兵衛君）　四十四番ハ会社ノコトハ十分ソレデ宜イヤウデスガ、一個人ニ対スルノガ会社ニ対スル如クデ、営業税ト云フモノハ詰リ一個人ガ主デアリマスカラ、ソレヲ以テ往ツテ一個人ニ対スルト云フノハ穏当ヲ欠クヤウデアリマス、ドウシデモ会社ト云フモノハ別ニ入レナイト云フ位ニシテ若シ置クナラバ会社ハ置クノハ宜イガ、是デハ会社ガ営業税ノ主ニナツテ一個人ノ営業ハ《（従脱カ）》トナツテハ字句ノ上デおかしいカラ、私ハ大体委員ノ修正ガ最モ宜イト思ツテ居リマスカラ、唯一個人云々丈ケハ取除ケテ貰ヒタイ、サウスレバ私ハ満足スル
○四十三番（八王子、吉田忠右衛門君）　四十四番ハ頻リニ会社々々トやかましく言ハレマスガ、会社ヲ抜クト見易イ取リ易イト云フガ、取リ易イバカリガ目的デハナイ、一個人デヤツテ居ルノハ大キイノモ出来マセウガ、現在ソンナニ大シタ一個人デヤツテ居ル仕事ハナイ、若シイカヌト云フコトガ分レバ、其時分ニナツテ仕直スト云フコトモ幾ラモ出来マス、現在ノ有様ヲ見マスト会社ト一個人ハ分ケテ一向差支ナイデスカラ飽迄モ修正案ヲ可ト致シマス
○五十二番（東京、中野武営君）　一寸協議案ヲ今ヨリ御議決ナサレマスナラバ尚気付イタコトガアリマスカラ御考案ヲ煩シタイ、先刻協議
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ヲ申シタ諸君ノ御承諾ヲ得ナケレバナラヌ、ト云フノハ今度修正シタ項ノ営業税法ノ欠点ト云フモノハ其一ト云フ以前ノ二ト云フ中ニ原案ニアル通リ「安ンゾ其結果ノ公平ナルヲ得ンヤ、殊ニ倉庫業ノ建物ニ至ツテハ営業資本ノ大部分ヲ占ムルコト猶汽船会社ノ船舶、鉄道会社ノ車輛ニ於ケルカ如シ、然ルニ其賃貸価格ニ向ツテ課税セントス、仮令税率ニ於テ多少斟酌ヲ加ヘタリトスルモ決シテ公平ヲ得タリト謂フベカラサルナリ」此四行ノ文字デ、倉庫ノ建物ノコトヲ上ゲテ云フタノデゴザリマスガ、前後ノ釣合ヲ以テスレバ寧ロ角立テヽ倉庫業ノコトハドウダト云フヨリハ、趣意ニ変ル所ガナイ以上ハ「安ンゾ」カラ「謂フベカラザルナリ」マデモ削ツテ仕舞ツタラドウダラウ、斯ウ云フコトガ一ツ、モウ一ツハ今度委員デ起草シマシタ其三ノ所ハ「徒ニ自己ノ納税額ノ軽減セラレンコトヲ希望スルモノニ非ザルモ、国民ノ本分トシテ負担スル所ハ著シキ懸隔ナカラシムルコト国家経済ヲ燮理スル所以ノ本道ナリ」デ止メテアル、我商工業者ヲ受ケテ云フ以上ハ「本道ナリト信ズ」ト云フコトニ止メテ置カント宜クナカラウト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　税ヲ軽減シタイト云フコトバカリヲ望ムモノデハナイガ、斯様斯様ニ思フト云フコトニ言ハヌト「ハ」ト云フ字ニ係リマセヌ
○六番（赤馬関、瓜生寅君）　「国民ノ本分トシテ負担スル所ハ」「何々ノ本道ナリ」デ止ツテ居ル
○三十六番（上田、黒沢鷹次郎君）　修正文ノコトハ委員諸君ニ御任セシテ置クコトニシタラドウデセウ
○三十番（仙台、木村一是君）　一寸四十一番ニ御尋シマスガ、紡績業ヲ先刻ノ御話ノ宮城県ダカデ課税ニサレテハ紡績業ガ立タヌト云フ御話デゴザリマシタガ、サウ致シマスルト一個人ノ紡績業ヲヤリマス場合ニハドウナリマスカ
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　ソレデ先刻述ベマシタ訳デ、製造業ノ中ニハ百種ノ製造業ガ是ニ籠ルト思ヒマス、凡ソ今日デハ一個人トシテ紡績業ヲ営ンデ居ルモノハナイヤウニ思ヒマスガ、追々世ガ進ムニ従ウテナイトハ明言ハ出来マセヌ、ソレヲ御心付キニナリマシタカラ、委員ノ考ヘ付キマシタコトハ御手許ニアル通リデゴザイマスカラ、之ニ更ヘルニドウシヤウ、此中独リ製造業ノミナラズ外ノ御心付イタ収入等ハ宜クナイデナイカト云フ御考ガ……
○三十番（仙台、木村一是君）　此物品販売業ノ米ノ販売ナドモ矢張大変売上金高ガ多クテ其割合ニ利益ガナイ、斯ウ云フヤウナモノガゴザリマスカラ、等級ト云フモノガ宜イト考ヘテ第二読会ガ出来マシタガセメテ物品販売業ヲ大別シテ甲乙二タ通リ位ハ出来マセヌカ、サウスルト或ハ正当ナ方法ガ出来ハシマセヌカ
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　利益ト云フヤウナコトニ重キヲ置イテ居リマスノデ……
○五番（長崎、松田源五郎君）　等級ヲ廃スベシト云フ全廃ノ意見デモアリマセヌノデ、等級ト云フ上ニ就イテハ余程研究シナケレバナラヌコトデアルト思ヒマス
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○三十番（仙台、木村一是君）　余リ細カナ等級ヲ別ツコトハ出来マスマイガ、等級ガ全廃ニナリマシテハ只今申シマス通リ多数ノ日用品ノ如キハ多数ノモノヲ売上ゲテ数デコナスト云フ商売ト、骨董品ノ如ク一品一物ヲ売ツテ利益ヲ得ルモノト同一ノ率ニシテ、売上金高ヲ以テシテハ大変不公平ナ結果ヲ来スカト考ヘマス
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　三十一番ノ考ヘマス所デハ詰リ過日来研究ニ研究ヲシテ出来タ所ノ此修正案ガ宜カラウト思ヒマスデ、成程協議会ノ今ノ案モ宜イカ知レマセヌガ、先ヅ一目シテドウセ等級ト云フモノガ必要デアル、其等級ヲ区別スルコトガ困難ダト云フカラ斯ウ云フ変体物ガ出来テ来タト云フ訳、甚ダ等級ヲバ区別スルニ苦シイト云フ意味デゴザリマスカラ、此等級ヲ別ケタラ宜カラウト云フ、此方カラ目安ヲ付ケナイカラ曖昧ナ訳ナンデスケレドモ、又等級ヲ付ケルコトガ必要ダト云フコトデ即チ委員諸君ノ修正サレタ所ノ吾々ガ諸君ト共ニ数日委員ニモ脳漿ヲ絞リ来ツタモノヲ提出シマシテ、即チ政府デモ其当局者モ之ニ等級ヲ付ケルニ必要ダト云フコトヲ考ヘ付ケテ貰ヒ、又吾々ハ諸君ト共ニ等級ノ付ケ方ハ是ハ宿題トシテ考ヘテ、斯ウ云フ風ニ付ケタガ宜イトカ、或ハ其中ニ議会ナリ又当局者ガ之ヲ容レテ意外ナ等級ヲ付ケタ時ニハ改正ヲスルコトヲ又商業会議所ガ務メマスコトニシタラ宜カラウト思フ、ソレデ甚ダ漠トシテ居ルヤウデスガ等級モ何モナイモノヲ出スヨリハ、等級ト云フ処ヘ当局者ノ眼ノ著ク方ガ効用ガアラウト考ヘマスデ、先ツ協議案ヨリハ寧ロ修正案ヲ可トスル方デアリマス
○四十番（大坂、土居通夫君）　折角委員ニ御託シシマシテ段々御取調ヲ経、協議ニ付スルト云フノハ万止ムヲ得ヌコトニ至ツタコトダラウト考ヘマス、最モ老練ナ諸君ガ親シク御取調ベニナツタコトデゴザリマスデ、又協議案ニ依ツテ親シク拝見シマスニ別ニ之ニ対シテ斯ウシタラ宜カラウト云フ名案モゴザリマセス、此通リデ纏マルヤウニ致セバ宜カラウト考ヘマスデ、成ルベク此協議案ノ成立ツヤウニ希望致シマス
○四十五番（知多、天野伊左衛門君）　只今等級ニ就イテ御論モゴザリマスケレドモ、委員会ニ於テモ希望ノ方ハ過半数ヲ得テ居ル位デアリマスレド、等級ト云フコトハソレハ吾々実業者ヨリ立法者ノ方ガ総テ御考ハ宜イシ、又当局者即チ政府ノ側ニ於テモ御考ハ必ズ名案ガアラウト思ヒマス、併ナガラ等級其物ヲ組立ル上ニ於テ考ヘテ見ルト云フト、寧ロ実業者ノ方ガ其手数ガ煩雑デアルカ組立ガ困難カト云フコトハ明ニ知ツテ居ルカ知ラヌ、ソレカラ段々研究ヲシテ見ルト云フト、等級ト云フモノハ物品其物ニ付ケル等級デアルカ、営業其物ニ付ケル等級デアルカト云フニ、営業其物ニ付ケル等級デアルカラ、営業ト云フテモ今日数百種ノ営業其物ニ付ケテモ種類ガ多クナツテ来ル、類別シテ三十トカ二十種ニ等級ヲ付ケルコトヲ分ケルト云フト、必ズヤ物品ニ依ツテ別ケテ往カナケレバナラヌ、依ツテ別ケタ以上ハ一営業ノ下ニ立ツタ人ハ夫丈ケノ物品ヲ取扱フカト云フトサウデナイ、甲営業ノコトモ取扱ヒ、乙営業ノコトモ取扱フダラウ、ダカラ只今申シタ通リ等級ヲ別ツト云フ上ニ於テ之ヲ二十ノ等級ニ分チ、若クハ三十ノ等
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級ニ分ツタ上ニ於テ、又税金ノコトト云フモノガ起ツテ参リマス、サウスルト一商人ノ上ニ於テ、此人ハ是丈ノ納税ヲスル人デアルト云フ資格ヲ其等級ヲ以テ見ルコトモ出来ナイ、加之必ラズヤ甲種ノ営業ヲシテ居ル者ガ甲種バカリデ立ツモノデナク、二ツノ中ニ見込ガ付ケバ乙種ノ営業ニ往ツテ物品ヲ取扱フ、其取扱フ上ニ於テ乙種ノ物品ヲ取扱フ方ガ多数ノ売上ゲヲスルト云フコトガ間々アルコトデアリマス、其点マデフミ込ンデ研究シテ見ルト、殆ド等級ノ付ケヤウガナイ、ソレデ等級ト云フコトニ於テ意見ヲ其筋ヘ具申スルニ己レ自カラ事業ヲヤツテ居ル商業会議所ニ這入ツテ居ル吾々ガ、自カラノ考ノ定ツタモノヽナイ点ニ就イテ漠トシテ等級ヲ付ケタラ宜イト云フコトハ其筋ニ対シテ言ヘナイ、是ガ等級ノ上ニ就イテ多クノ人ノ頭ヲ悩シタノデ、此場合ドウシテモ商業会議所トシテ具申スルコトハ出来ヌト云フ点カラ斯ウ変化シテ来タノデアリマス
○三十番（仙台、木村一是君）　三十番ノ等級ト申スノハ只今ノ等級ガイカヌト云フノデハナク、紡績・米・肥料等ハ其売上ノ万分ノ一ヲ取リ、モツト利益ノアル商人ハ之ヲ万分ノ二ニスルト云フ売上金高ヲ押ヘテ、ソレニ等差ヲ付ケルト申ス意見デゴザリマス、例ヘバ此商店ハ一等、此商店ハ二等営業ト云フヤウニ、全体ニ就イテ一等税・二等税ト云フ等級ヲ申シタノデハナイノデス
○会長（東京、渋沢栄一君）　詰リ三十番ノ御説ハ私ガ疑ヲ以テ申セバ其中ノ保険業・物品製造業ニ於テ収入金ヲ以テ課税標準トスル、試ニ万分ノ五トスルト製造業ノ万分ノ五ト保険業ノ万分ノ五デハ営業ノ状態ガ違フカラ、製造業ノ方ハ原料ヲ買ツテ売ツタ売上代ト、保険業ノ保険料ト標準ハ之ニ依ツテ取ツテモ税率ニハ差等ヲ立テル方ガ宜イト云フノト同様デスナ、若シ等級法ヲ止メルト斯ウ云フ意味ガアツタガ宜カラウト云フコトヲ私共モ感ズルデス
○三十番（仙台、木村一是君）　営業税法ニゴザリマスノハ製造業・船舶業デ税率ヲ分ケテアル、是ハおもしろくナイ、此処ニモ亦修正案トシテ製造業・船舶業トシテ並ベテアリマスト、矢張今ノ通リ税率ヲ分ケラレルカ知ラヌト云フ恐レガアリマス、私ハ一緒ニシナケレバナラヌト思ヒマス、是ハ営業税法ノ不完全ナ点ト思ヒマス、サウ云フヤウニ税率ヲ同フスルモノハ同フシ、異ニスルモノハ異ニスルト云フ丈ケハ御修正案ノ中ニ入レテ置キタイト云フノデス
○会長（東京、渋沢栄一君）　今三十番ノ意味ハ何処カノ中ニ同一税率デナイト云フ、業ニ依ツテ斟酌ヲ加フベキモノダト云フ意味ヲ書イテ置カント、此会議所ノ意見ガ同一税率ヲ課スルモノヽ如ク見ラレハセヌカ、サウスルト事実ト違ヒハセヌカト云フ議論デゴザリマセウ、私共モ一寸疑ヒマス、第四ニ就イテ製造業ノ収入金ト保険業ノ収入金トハ種類ガ違フ、ソレハ同様ニ万分ノ五ト掛ケルト一方ハ利益ニ掛ケ、一方ハ売上金ニ課スルト云フ違ヒガアル
○有志会員（東京、佐久間貞一君）　収入金ヲ課税標準トスルニ過ギザレバサウハ読メマスマイ、率ガ異ナルモノト見テ、例ヘハ米屋ハ千分ノ一トナツテ、荒物屋ハ百分ノ一ト変ルカ知ラヌ、標準トスルノデアルカラソレヲ政府ニ任セヤウト云フノデ、此方カラ何ハ幾ラ是ハ幾ラ
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ト云ハヌデソレヲ政府ニ任セヤウト云フノデ……
○三十番（仙台、木村一是君）　ソレハソレデ宜イガ、標準ハ是ニアルガ標準トシテ等差ヲ附スルト云フ丈ノコトヲ入レタイ
○有志会員（東京、佐久間貞一君）　是デ何デモ差支ナイト思フ、標準トスルト云フノデアリマスレバ総テノ物品ハ同ジ課税ヲシナイデアラウト思ヒマス
○三十番（仙台、木村一是君）　所ガ標準トスルト云フ文字ガアルカラ標準ハ目安デアリマスカラ目安ト云ヘバ同ジ目安同ジ率ト云フコトニナリハセヌカト思フ
○有志会員（東京、佐久間貞一君）　私ドモハサウ読ミマセヌ
○三十番（仙台、木村一是君)　皆様ガサウ見ヌト仰シヤレバ強ヒテトハ申シマセヌ
○番外（大坂書記長、浜田健次郎君）　此方法ト云フコトヲ止メマシテ左ノ標準ニ依リソレニ適宜ノ課税ヲナスコトニシタラドウデセウ
○三十番（仙台、木村一是君）　右ハ売上金額ヲ課税標準トシテ等差ヲ附スルトカ何トカ云フコトニシタラドウデス
○会長（東京、渋沢栄一君）　前置デ以テ大抵意味シテ居ル訳ニモナル左ノ標準ニ依リ相当ノ課税ヲスルト云フカラ、相当ト云フ中ノ標準ハ押ヘ所、相当ハ一ニ当ルモノモアリ三ニ当ルモノモアルト見レバ、書イテナクテモサウ云フ意味ニナル、唯左ノ標準ニ依リ相当ノト云フ相当ハ標準ダケヲ云フヤウニ見エル、例ヘバ物品販売商ニ万分ノ五ヲ掛ケルトカ銀行業ニ万分ノ七ヲ掛ルトカ、印刷業ニ万分ノ八ヲ掛ルガ相当ダト見ラレハセヌカトノ恐レガアル、商業会議所ノ考ヲ妙ニ思ヒハセヌカ、サウスルト製造業ト保険業ト同ジ収入ニシテ同率デ掛ケルト云フコトハ不当ダト云フ人ニ疑ヲ生ジハセヌカ、物品販売ニモ其種類ガアルダラウ、或ハ儲ケノナイ商売ト相当ニ利益アル商売ニハ税ヲ異ニスルガ宜イト云フコトハドナタモアリマスカラ、其意味デ云フナラバ……
○十二番（浜松、中村忠七君）是ハ会長ノ御述ノ通リ一云々ト云フ物品販売業ト云フモノハ是ハ別ケマセヌノデスナ
○会長（東京、渋沢栄一君）　仮ニ申スト呉服屋ニ対スル税率ハ分ケルコトハ本案ノ意味ナルヤウ委員デハ仰シヤル
○十二番（浜松、中村忠七君）　私ハ其精神ガ明ニ分ツテ居レバ賛成デス
○五十二番（東京、中野武営君）　サウデナイ、サウナルト等級法ニナリマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソレナラ別ケナイト仰シヤルノデスナ、サウスルトソコニ議論ガアルノデナイカト云フノデ、保険業・製造業ニ就イテ厚薄ヲ論スル恐ガアリハセヌカト云フノデス
○有志会員（東京、佐久間貞一君）　ソレナラバ大変米屋ノヤウナ利益ノ薄イモノト、外ノモノト同ジ租税ヲ掛ケルコトニナツテ宜クナイ
○五十二番（東京、中野武営君）　ソレハ始メカラ論ガアルカラ、ソレハ第二段ニスルト云フノデス
○有志会員（東京、佐久間貞一君）　ソレデハ政府ニ任セルノデスカ
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○五十二番（東京、中野武営君）　継続問題トシテヤルト云フノデス
○三十六番（上田、黒沢鷹次郎君）　五十二番ノ御弁明ハ第四バカリデスカ
○十二番（浜松、中村忠七君）　私ガ質問ノ時ニ第四ノ時格別ノ税率ヲ賦スルト云フコトハアツタト思ヒマス
○三十六番（上田、黒沢鷹次郎君）　私ハサウ聞キマシタガ等級ガ分ツテ各種ニ分ケルト云フテ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　此方ハ等級ヲ立ルニ就イテ説明ヲ仰シヤツタノデ、此処デ協議会ニ出タ原案ノ一・二・三・四・五・六ト云フノハ、其一部ニ就イテ通ル税率ヲ異ニスル御考ガアルト云フコトニ私ハ考ヘマシタ
○有志会員（東京、佐久間貞一君）利益ノ厚薄ヲ問ハス同税率デ取ラレタラ立行キハセヌ
○五十二番（東京、中野武営君）　此同ジ標準ヲ以テ万種違フテ居ル利益ノ厚薄アル営業、之ニ一税率ヲ以テヤルノハ不公平ダト云フ、ソレヲ救ヒタイタメニ等級ヲ設ケルト云フノガ前ニ云フテ居ル通リ、所ガ等級ハ甚ダイカヌモノデアルト云フトコカラ、ソレヲ極メル上ニ就イテ余程ノ研究ヲ要スルコトハ第二段ニシテ、然ラバ此等級案ノ通リニシテハドウカト云フト、今ノ現行法律ト五十歩百歩デ違ハヌ、ソレデ今度ノ協議案ハ成ルベク救ヒ得ラレル限リ救ヒタイト云フノデ、区別ガ立テ得ラレヽバ立テヤウト云フノデ、六ツニ別ツテ立テタノデ、此一部々々ニ就イテ品ヲ別ケ等級ヲ立ツルト云フコトニスルヨリ仕方ガナイ、若シ利益ノ厚薄ニ依リ税率ヲ別ニスルガ宜イトナレバ、第二段ノ研究ヲ又此処デヤツテイカナケレバナランコトニナル
○会長（東京、渋沢栄一君）　大分混雑シテ来マシタカラ少シ休憩ヲシマセウ
　　午後四時五十五分休憩
　　午後五時十分（休憩後）開議
○会長（東京、渋沢栄一君）　引続イテ大体ヲ御協議ニナツテ愈々其御纏リノ模様ニ依ツテ本会議ニ掛ルヤウニ致シタウゴザイマスカラ……
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　異議ゴザイマセヌ
　　　〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼ブモノアリ〕
○十四番（豊橋、白井直次君）　只今御協議会ノ御相談ニナツタ結果ハドウ云フノデスカ、今ノ意味ガ解セラレマセヌカラ一応御述ベ下サルヤウニ願ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　課税ノ率ガドウナルカト云フノデスカ、是ハ委員会ノ御見込ハ此処ニ一・二・三・四・五・六トゴザイマス、此一ノ物品販売業云々此一種類ニ対シテハ売上金額ト云フ標準ニ依ツテ同率ノ課税ヲシテ宜シカラウト云フ考、銀行ノ総益金ハ銀行ガ大キカラウガ小サカラウガ同ジ率ノ課税ヲシテ宜シイ、金銭貸付モ宜シイ併シ四ノ保険業・物品貸付業・製造業云々ト各種ゴザイマスカラ、此四ノモノハ残ラス収入ノ金額ニ依ツテ同率ニナルト云フ趣意デハナカツタ、四ノ方ハ各種アルカラ一種ニ対シテ同ジ率ダガ、試ニ云フテ見ヤウナラバ、保険業ト製造業ト云フモノハ随分率ヲ異ニスル必要ガア
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ルカラ其率ヲ異ニスルト云フコトガアツテモ宜シイ、斯ウ云フ趣意デアル、即チ其他ノ幾ツカ標目ノゴザイマス部分ハ、若シ必用ナラバ其標目一種ニ就イテ率ヲ挙グルコトハセヌ積リダカラ、標目ノ異ナルニ就イテ税カ異ナルト云フコトハアルデアラウト思フタト云フ説明デス
○十四番（豊橋、白井直次君）　ソレデハコノ文面デ其意味ガ分ルト云フノデスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソレデ分ルノデス、左ノ標準ニ依リ税ヲ取ルト標準ヲ掲ゲテアツテ、相当ノ税ヲ課スト云フコトハ細カナコトヲ書カヌカラ一種類ニ対シテ一率ヲ以テスルガ、種類ヲ異ニスル時ニハ別ノ率ヲ用ユル場合ニハ異ニスルト云フコトハアルト云フノデス
○十四番（豊橋、白井直次君）　ソレデ種類ヲ異ニスルト云フ意味ハ……
○五十二番（東京、中野武営君）　標準ハ何ニ依ルカト云フ事ヲ専ラニシテ、此標準ニ依ツテ何分ノ率デスルト云フコトハ分ツテ居ラヌ、率ハ税ヲ課スル点ニアルカラ之ヲ深クドウスル斯ウスルト云フ決定ハシテ居ラヌケレドモ、吾々ノ考ハ会長ノ仰シヤツタ通リ、第四ノ如キモノハ此処デ十二アル、是ハ一率ニシテ仕舞フト極メタノデハナイ、乍併対ナ率モアラウシ是丈ケニ依ツテ率ヲ立テルガ必要ナラバ私ニ於テハ異存ハナイ、併シ製造業ト云フモノヽ中ニハ種々ナモノガアル、ソレヲ損得ヲ区別シテ委員ガ製造其物ニ就イテ種類別ケヲシテ、是ハ利益ガ多イカラドウスル是ハ利益ガ少ナイカラドウスルト云フソコマデ立入ツテ論究スルコトニナルト大変ナ混雑ヲ惹起スカラ、等級ノコトハ断念ヲシテ居ル位デアルカラサウ云フ積リハナイ、此処ニ目ヲ挙ゲテアリマスニ就イテ税率ヲ本ニスルノガ正当ダト云フノハ私共反対セヌガ、之ヲ起スニ税率ハ何程ニスルト云フコトマデハ立入ツテ居リマセヌカラ、玆デ其事ノ御協議ガ必要ナラバ論ジテ宜シイ、併シソレヲナサルナラバ意味ノ分ラヌ所丈ケヲ示シテ前記ノ如クト云フ此処ヘ文章中ニ唯意義ヲ少シ示ス位ニシテ宜カラウト思ヒマス、尚申シテ置キマスガ四項ニ書損ニテ倉庫業ガ抜ケテ居リマスカラ是ハ入レルノデス
○会長（東京、渋沢栄一君）　委員長ノ御説ハ何処等ガ此文字ヲ入レルニ宜カラウト云フノデスカ
○五十二番（東京、中野武営君）　私ハサウ云フ意味ヲ明ニスルノガ宜イト云フ御考ナラバ、其趣意ヲ文章ノ中ニ入レテ置イタラ宜カラウト云フノデ、四項ニ入レルト五項ニモ六項ニモアリマスカラ……
○三十番（仙台、木村一是君）　先刻カラ入レナクテモ分ルト云フ御説ガ大分ゴザイマスガ、分ラナイカラ疑ガ起リマスノデスカラ、其一ト云フ所ハ能ク疑ノゴザイマセヌヤウニ、今日迄ニ御討議下スツタ委員長始メヲ煩シテ、其一ト云フ所ヘ各種ト云フ意味ヲ御入レヲ願ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　斯ウナツテハイケマセヌカ、一個人ハ左ノ標準ニ依リ各種類ニ就イテ相当ノ率ヲ定メ、相当ノ課税ヲナスコトソレナラバ疑ガアリマセヌガ
○五十二番（東京、中野武営君）　各種類ニ嫌ガアリマス、是モ細別スルト種々ノモノニナツテ、種類ガ種々ノモノガ沢山アリマス、ソレデ此位ナコトハ意義サヘ分レバ宜イガ、若シ其疑ガアルナラバ前記ノ如
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クト書イタ尻ヘ持ツテ往ツテ間違ハヌヤウニ括弧シテ入レルガ宜カラウト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　文章ハドウトモ分ルヤウニ書クコトガ出来マスガ、前ニ各種類ト云フト一・二・三・四ガ種類ダトハ云ヘヌカラ、サウ思ハレテハ困ルデスナ
○五十二番（東京、中野武営君）　其種類ト云フ一・二・三・四ト書イテアルカラ之ヲ以テサウダト思ハレルト困ル、説キ別ケシタコトニ疑ガアルナラバ別ニ工夫セニヤアナリマセヌ
○五番（長崎、松田源五郎君）　何モ書カヌ方ガ却テ分ルヤウニ思ヒマス
○四十二番（四日市、井島茂作君）　其文ダト置ク方ガ宜イト思ヒマス
○十二番（浜松、中村忠七君）　私ハ三十番ニ同感デ、収入金額ニ依リ相当ノ課税標準ヲ定ムルコトト書イテ置クガ宜イト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　兎ニ角細カニ書カヌト書キ切レマセヌ、種類ト云フテモ定義ガナイカラ……
○十二番（浜松、中村忠七君）　若シソレガイケマセヌケレバ、四ガ保険業デ、五ガ貸付業ト、十ナリ十二ナリ並ベテ往ク間ニ同一ノモノダケ同一ニシテ置クコトニシタイ、甚ダ書体ハ可笑クナリマスガ、精神ガ其処ニアリマスカラ書体ノ可笑イ位ハ頓着セズニ願ツテ置キタイ
○番外（知多書記長、鬼頭孫三郎君）　法律通リ税率ガ改メタイト云フ希望ヲ以テ居ルモノニハ……課税標準ガ並ベテアリマスガ、括孤、五物品貸付業、右ハ収入金額ヲ以テ云々ト云フコトヲ、括孤ヲ付シテ一一ヤリマシタラ宜イデセウ
○会長（東京、渋沢栄一君）　後ニ附記スルト云フコトニナスツタラ宜イジヤアリマセヌカ、字句ハ委員ヘ託スルコトニシテ
○三十番（仙台、木村一是君）　左様願ヒマス
　　　〔「賛成、々々」ト呼フ者アリ〕
○十二番（浜松、中村忠七君）　同感
○十四番（豊橋、白井直次君）　字句ノ修正ヲ願ツテ此儘ニヤリマシタラ宜シウゴザリマセウ
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　三十一番ハ誠ニ安心ガ出来マセヌガ、畢竟委員長ヲ始メ誠ニ其模糊トシテ居ルノデアリマス、サウナレバ宜イト云フノデアツテ、要スル所協議案ハ苦シ紛レニ成立ツテ出掛ケテ来タノデアツテ、実ニ等級ヲ立テルガ六ケ敷ト云フ至難デアルカラ、先ツ当分法律第三十三号ノ改正ヲヤツテ置カウ、其後ニ等級ノコトヲ研究シテ而シテ後ニ完全無欠ノモノヲ持出サウト云フニ過ギナイ誠ニ姑息ノ至リダラウト思ヒマス、左様ナレバ私ハ寧ロ第三十三号ヲ其儘置イテ、彼ノ税率ノ下ニ改正ノ方法ガ立タヌトシテ服従シテ居ツテ、彼ノ税ヲ果シテ徴収シテ往ツテ其中ニハ必ス不完全ナ点ガ続々出来テ来ルダラウカラ、サウスレバ課税者ノ弱点ヲ見付ケ、又々吾々ガ其間ニ研究シテ往ツタラ完全無欠ナ改正法ガ出来ヤウカラ、なまじい姑息ナコトヲ以テ改正スルト云フノハ甚ダ宜シクナイ
○会長（東京、渋沢栄一君）　委員会ニ対シテ弁護ヲスル訳デハアリマセヌガ、三十一番ノ御意見トハ少シ違ヒマスマイカ、等級ヲ立ルト云
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フ法案デス、此法案ヲ寧ロ今日ハ抜イタガ宜イト云フニ就イテ其等級ノ立テ方ノ至難ダト云フコトハ貴君ノ御話ナスツタ通リダケレドモ、此処ニ案ヲ出スト云フハ、現法ヨリハ此方ガ簡易デ宜イカラ是ハ斯ウ改正シタイト云フ一段落ニ於テハ、別ニ姑息デナイノデ、十分ナル修正意見ヲヤラウト思ツテ其一番ノ要点ハ安心ガ付カヌカラ之ヲ云フコトヲ蹰躇シヤウト云フ丈ケデ、姑息ト云フ方ガ御責メナサルノハ少シ酷ナヤウニ考ヘマス
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　私ガ考ヘルトドウモ姑息ナヤウデス
○五十二番（東京、中野武営君）　私共ハ是デ宜イト思フケレドモ、尚懸念ガアルトスルナラバ、斯ウ云フ風ニ云ツタラ分リマセウ、此仕舞ニ持ツテ往ツテ例ヘバ第四ニ営業種類ヲ数項ニ分ツト書イテ、第四・第五・第六ト営業種類ヲ並列スルガ、同一標準ノモノヲ一率ニ定メルノデナク、其業其業ニ依テ相当ノ率ニ於テ区別ヲ立テル趣意デアルト云フ講釈ノミ書ケバ宜イ、前記ノ如クト云フ前ニ一ノ解釈ニシテ書ケバ宜イ、サウスレバ意味ヲ明ニスルコトガ出来ル
○会長（東京、渋沢栄一君）　一字下ゲタ解釈文ニ書ケバ宜ク、一種類ニ立テ居ルモノヲ格別ニ区別スルノデハナイガ、各業ノ同一標準ノモノハ一率ノ下ニスルノデハナイト云ツテ置ケバ宜、一業ト云フモノニ対シテ種類ヲ別ケヨト云フコトハ望マヌガ、第四ノ如キハ各業皆一率ニスルト云フ訳デハナイト云フコトヲ次ノ理由書ニ書クノデスナ
○五番（長崎、松田源五郎君）　其辺ハ委員ニ御任セスルコトニシテハドウデス
　　　〔「賛成、々々」ト呼ブ者アリ〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　如何デゴザイマス、然ラバ一体ノ会議ノ体裁カラハ極ク適当ナ順序デハゴザイマスマイ、如何トナレバ二読会ノ修正意見ガ法案ガ変ツテ修正案ガ出タガ、是ハ会議ガ此委員ノ協議会ニ依ツテ出タ草案ヲ此処デ採用シテ、前ノヲ捨テヽ之ニ代ヘルニ此出タ案ヲ以テスルト云フナラバ、不適当ノ議決トハ云ヘヌト思ヒマス故ニ愈々サウナルト云フコトニ致シテ、本会ニ移シテ二読会ノ節ニ修正議ヲ御議シニナルヤウニナサイマスカ
　　　〔「異議ナシ、異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ協議会ハ是デ相済ミマシテ本会ニ移リマス
　　午後五時三十五分協議会ヲ終リ本会議ニ移ル

○会長（東京、渋沢栄一君）　サウ致シマスト、第一ノ修正意見ハ如何デゴザイマセウ、第一営業税法ノ欠点、此委員会ノ修正意見ハ別ニ御異議ガゴザイマセヌケレバ二読会ノ採決ヲ致シタイト思ヒマスガ
　　　〔「異議ナシ、異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　第一ニ対シテ委員会ノ修正ニ御同意ノ御方ハ御起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数、第二営業税法改正ノ要領其一、即
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チ今御手許ニ配ツテゴザイマス案デス、是ガ修正案トシテ本議題ニ登リマスモノデゴザイマス
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　賛成、異議ゴザイマセヌ
　　　〔「異議ナシ、異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○十二番（浜松、中村忠七君）　一寸伺ヒマスガ、サウスルト此文章ノ方ニハ幾ラカ衝突ガ出来ル所ガゴザイマセヌカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　ゴザイマセヌ、前ノ文案ノ等級ニ掛ツタコトハ皆削除サレマスカラ
○五十二番（東京、中野武営君）　削除サレマシテ蒟蒻版デ刷ツタノガ其一ニ廻リマスカラ文章ニ衝突ハ生ジマセヌ
○四十六番（知多、小栗政治郎君）　此物品販売業ノ等級ヲ設ケルト云フコトモ決シラレス、尚又其種類ヲ区別スルト云フ御説モ出テ、利益ニ依ツテ課税スルト云フ御説モ成立タヌヤウデスガ、サウスルト段々御話ノアリマシタ売上金高ヲ以テシテ利益ノ少ナイモノト、売上高ガ少クテ利益ノ多イモノト同率ノ下ニ立テルト云フコトニナルト、今日実地営業者ノ手前デハ甚ダ苦シム人モアリ、不公平ヲ唱ヘル人モアラウト思ヒマス、大体此最初ノ政府案デ見マスト、三ト一ノ比例ニナツテ居ル、余リ其差ガ隔チマシテハ如何デゴザイマスカラ、二ト一位ノ比例ノ比例ニシテハ如何デゴザイマセウカ、卸売ト小売商ノ区別ガ六ケ敷ト云フ御説モ出テ居リマス、細カニ議論ヲスルト別ヲ立テルニ困リマスガ、大抵差異ハ実業者ノ間ノ間ニ於テ付イテ居ラウト思ヒマス若シ之ヲ両方兼テ居ルナラバ其金高ノ多キニ従ヒ、従フニ就テハ三ト一ト違ハヌヤウニスルガ宜イト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　別ニ今ノ卸売・小売ニ就テハ賛成ガナイヤウデゴザイマスナ
○三十八番（博多、是松右三郎君）　私ハ卸売ト小売ハ区別ヲ立テタガ宜カラウ、若シ出来ナケレバ寧ロ卸売・小売ノ文字ハ省クガ宜イト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　税率ハ卸売ハ万分ノ五、小売ハ万分ノ十五ト定メルト云フコトニナツテ、其区別ハ出来ヌト云フ理由ハ論ジテアリマスガ、御気付ガナカツタラ御論ハ成立チマスガ、関聯シタ事柄ガアツタノデス、第一ノ方ニモ……
○九番（金沢、山田清三君）　九番モ四十六番ニ同感デ、此収入ト云フコトモ成立タズ、売上金額ニナリマスレバ従テ卸売・小売ト云フモノハ区別ヲ付ケズバナルマイト思フ、或論者ハ卸売・小売ト云フモノニ於テハ調ベ方ニ困難ト云フコトガアル故ニ、卸小売ト云フコトヲ文字ヲ変ヘテ或ハ販売業ハ二ツニ分ツテ甲乙ノ二種ニ分ツトカ云フコトニシタ方ガ宜イ、或ハサウスレバ甲ハ卸売、乙ハ小売ニ適スルト云フコトニ税率ヲセネバ、到底売上金ハ同一ナモノデ往キマシテハ卸売ハ非常ナ難義ヲ来スコトデアルダラウト思フ、故ニ甲乙ノ二種ニ別ケタイ積リデス
○五十二番（東京、中野武営君）　念ノ為メ申シマスガ先刻協議会ノ時分ニ一寸申シマシタ通リ、四ト云フ項ノ中ニ製造業ト云フ次ニ倉庫業ト云フノヲ落シタ筈デゴザイマスカラ、入ツタモノト見テ御議シヲ願
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ヒマス
○六番（赤馬関、瓜生寅君）　是ハ卸売ト小売トハ原案ニゴザイマス通リ中々私ハ別チ難イト思ヒマス、商売ガマダ大仕掛デナイ小仕掛ノ国柄デゴザイマスカラ、立派ナ製造所デ小売ヲスル、私共実業者トシテ洋紙ヲ扱ヒマス上ニ於テ立派ナ製造所ガ素人即チ新聞屋ノ如キモノニモ売リマス、卸売トハ名指サレマセヌ、総テ大阪ニ往ツテモ承ツテ見ルト判然ト卸売ト小売トノ区別カナイヤウニ考ヘマス、販売高ニ来マス時ニハ別ニ大差ハナクテ宜イト思ヒマス、ソレニ卸売ト小売トハ日本ハ大変差ガアリマセヌカラ、税ハ同シニ取ツテモ一向差支ナイ、然ルニ小売カラ沢山取ツテ卸売ノ方ガ少ナイ、日本デハ反対ニシテモ宜イ位テ、大キナ所デ小売ヲスルカラ小売商ハ甚ダ迷惑、ドウモ平均デアル方ガ実際宜ササウニ本員ハ考ヘマス
○十二番（浜松、中村忠七君）　私ハ原案ガ賛成デゴザイマス、其理由ハモウ前々カラ屡々アツタコトデゴザイマスカラ、其通リ致シタウゴザイマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ卸売ト小売トヲ別ケヤウト云フ四十六番ノ御発議ニハ三十何番カト九番トノ御賛成ガゴザイマスデ、之ヲ採決シテ見ナケレバナリマスマイ
○三十八番（博多、是松右三郎君）　一寸一言申シマスガ、先刻其区別ハ分ラヌト云フ御話デゴザイマシタガ、私ノ博多ナドデ見マスト、卸商ト小売商トハ立派ニ分界ガ立ツテ居リマス、一人デシテモ卸売ハ卸売、小売ハ小売ト別段ニ店ヲ張ツテ居ル位ノモノデゴザイマス、又是迄営業税ヲ納メルニハソレソレ鑑札ヲ受ケテソレソレ区別ガゴザイマス、ソレデ卸売ノ売高ト云フモノハ例ヘバ十円アツテモ三歩トカ五歩トカノ利益ガ少ナイ、然ルニ利益ノ少ナイモノニ向ツテ同一ノ税ヲ課スルト云フノハ少シ苛酷ダラウト考ヘマス、是ハドウシテモ区別ヲ立テネバナラヌ、一寸一言申シマス
○六番（赤馬関、瓜生寅君）　六番ハ博多ノ会議所ノ御方ニ伺ヒマスガ私ハ此間博多ヘ往ツテ「ナツメ」屋ヘナド買ヒニ往ツテ買物ヲスルトドンドン売リマス、サウ云フ場合ニハドウ云フ租税ノ取リ方ヲシマスカ、小売ト両方シマスカ、兼テ卸売トノ区別ハ困難ダト云フコトヲ聞イテ居リマスカラ、博多デハドウ云フ風ニシテ居リマスカ、伺ツテ置キタイ
○三十八番（博多、是松右三郎君）　今御話ノ「ナツメ」屋ナド一軒ノコトヲ以テ言フトキハ或ハサウ云フ嫌ガナイトモ云ヘマセヌ、一体ノ製造業ハ幾分カサウ云フ弊ハアルデゴザイマス、例ヘハ洋酒ヲ製造スル者其他模造品ヲ製造スル者ナドハ卸売・小売ノ別ガ紛ラハシイコトガゴザイマス、併シ物品ヲ販売スル店、製造業デナイモノニハ卸売・小売ノ別ヲ廃スル必要ハナカラウト思ヒマス
　　　〔「採決、々々」ト呼ブ者アリ〕
○四十番（大坂、土居通夫君）　此卸売ト小売トノ区別ハ商業ノ中心トモスベキ我大坂ニ於キマシテモ意見書ヲ出ス為ニ親シク取リ質シマシタガ、区別ハ判然立チマセヌ、調ベマシタ上同一ノモノニ認メテ意見書ヲ出シマシタヤウナコトデ、御参考マデニ申シテ置キマス
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○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　自分モ是ハ同一ヲ希望スルノデアリマス、成程小売ト云フモノガ仮ニ収益ガ多イモノト見マシテモ、中中数種ノモノヲ常ニ備ヘテ居リマシテ、需用者ガ出テ来ルノヲ待ツテ居ルノデ、金ノ運転上カラ考ヘテ見マシタナラバ、実ニ小売ト云フ奴ハ迀遠ナ話ダラウト思ヒマス、之ニ代ルニ卸売ハ如何ニモ売リマス上ノ益金ハ少額デゴザイマセウケレドモ、資本ヲ運転シマス上カラ考ヘマシテモどなたカ反対ニシテモ宜イト仰シヤツタガ、実ニサウ云フ感ジモ幾分カ自分モ持ツテ居リマス、併シ是ハサウスルコトモ出来マスマイ、此分界ハ調ベモ困リマスシ、縦令分ルトシテモ左様ノ訳ト思ヒマスカラ同等ニ致シマスノヲ正当ト思ヒマス
　　　〔「採決、々々」ト呼ブ者アリ〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　最早御論旨ガ尽キマシタカラ四十六番ノ小売《（卸売ト脱カ）》トヲ分ケルト云フ方ノ御説カラ決ヲ採リマス、四十六番ノ御説ニ御同意ノ御方ハ御起立ヲ乞ヒマス
　　　起立者　　少数
○会長（東京、渋沢栄一君）　少数デゴザイマス、原案ニ就イテ決ヲ採リマス、原案ニ御同意ノ御方ハ御起立ヲ願ヒマス
　　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数デゴザイマス、是デ其一ハ済ミマシタ、二・三・四・五・六及此今ノ五十二番委員長ノ御説デ此処ニ附記スルト云フ文章ハ或ハ尚此会議デ更ニ前ノ委員ニ附記ヲ委託スルコトニ御決シニナリマスカ、或ハ字句ヲ備ヘテ御議決ニナリマスカ、ソレカラ続イテ前記ノ如ク営業税法ヲ云々ト云フマテニ続イテ御議決ヲ願ヒタウゴザイマス
○三十六番（上田、黒沢鷹次郎君）　前ノ委員ニ委託致シタウゴザイマス
　　　〔「同感、々々」ト呼ブ者アリ〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ二・三・四・五・六及仕舞ノ末文マデヲ議ニ付シマス、但シ此或ハ四ノ項、五ノ項、六ノ項ニ入レルト種類ニ依ツテ税率ガ或ハ変ルト云フコトヲ、先刻一寸御話ノ如キ意味ノ字句ヲ入レルト云フコトヲ、以前ノ委員ニ御附託スルモノト見做シテ御発議ヲ願ヒマス
○九番（金沢、山田清三君）　二カラ六マデ一緒ニ御採リデスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　左様デス
○九番（金沢、山田清三君）　之ニ対シテハ此中本員ハ賛成シテ居ルモノモアリ、又反対ノ意見ヲ持ツテ居ルモノモゴザイマスガ、願クハ別別ニ御採リヲ願ヒタイ
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソレナラバ貴君ノ反対ノ箇所丈ケヲ仰シヤツテ下サルヤウニ願ヒタイ
○九番（金沢、山田清三君）　過日来屡々述ベテ居リマスガ、収益金ト云フコトヲ述ベテ居リマスデ、或ハ又六ノ方ニ至ツテ報償金額ト云フモノハ賛成シテ居ルノデ、サウ云フコトニナリマスト別々ニシテ頂キタイ
○会長（東京、渋沢栄一君）　何処々々ヲ収益金ニシタイト云フ御修正
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ヲ仰シヤレバ宜イ、御同意ノ方ハ仰シヤランデ、サウスレバ貴君ノ御趣意ハ分リマス
○九番（金沢、山田清三君）　銀行業・金銭貸付業ハ収益ニシタイ、ソレカラ四ノ項目モ五ノ項目モ収益デ宜イ、六ダケハ法案ノ通リト云フ修正ナンデス
○会長（東京、渋沢栄一君）　サウスルト二カラ五マデ皆収益ニシタイト仰シヤルノデスナ
○六番（赤馬関、瓜生寅君）　私ハ四ノ項目ノ中物品貸付業ノ次ヘ家屋貸付業ヲ入レタイ、赤馬関カラ出テ居リマス意見書ニアリマス、其理由ハ理由書ニ書イテゴザイマス
○三十六番（上田、黒沢鷹次郎君）　其四ノ項目デゴザイマスガ、総体ノ決議ガ異ナツテモ宜イコトヽ考ヘマス、先刻申シマシタ修正デ前ノ委員ニ任ストナツテ居リマス、右ハ収入金額ヲト云フノヲ売上金及収入金額ト委員ニ於テ修正スルコトヲ望ンデ置キマス、其意味ニシタイト思ヒマス、一言述ベテ置キマス
○十九番（高崎、中島伊平君）　此四ノ項目ヘ家屋貸付業ヲ追加スルト云フ六番ノ説ニ賛成
○二十番（仙台、木村一是君）　六番ニ賛成
○会長（東京、渋沢栄一君）　九番ノ御説ハ御賛成ガゴザイマセヌ、六番ノ四ノ項目ノ中ニ家屋貸付業ノ一ケ条ヲ入レルノハ御賛成ガゴザイマス
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　唯今ノ御説ハ家屋貸付業ハ第四項ニ入レルノデスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　四ノ項目中ニ入レルト云フ御説デス
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　私ハ第三項ノ所ヘ入レタイト云フ考デゴザイマス、賛成ガナケレバ仕方ガゴザイマセヌガ
○会長（東京、渋沢栄一君）　六番ノ御考ハ一方ニ物品貸付業ガアルカラ入レタイト云フノデセウ
○六番（赤馬関、瓜生寅君）　六番ハ何処デモ宜イ、併シ物品貸付業ノ次ノ方ガ都合ガ宜イカラ其方ニシタイノデス
○会長（東京、渋沢栄一君）　六番ノ家屋貸付業ヲ四項ニ挿入シタイト云フ御説ニハ御賛成ガアリマスカラ、此御説ニ就イテ決ヲ採リマス
○四十四番（八王子、平林定兵衛君）　其貸付業ト貸付業デナイノトガ分リマセウカ、家ヲ一軒貸ス人モアリ十軒造ツテ貸ス人モアルト、業ニヤル人ト業デナイモノガ区別ガドウ云フモノデスカ、分リマセウカ
○三十番（仙台、木村一是君）　只今御尋ガゴザイマシタガ、成程一軒自分ノ住居ノ為ニ建テヽサウシテ住フ必要ガナクナツテ貸スト云フヤウナ、ホンノ営業外ニ貸スト云フ方ハ素ヨリ営業税ヲ賦課スルト云フコトハシマセヌガ、物品貸付業ノ如キモサウ云ヘバサウナルダラウト思ヒマス、ソレデ此東京辺ハトウカ知リマセヌガ、田舎ノ土地ノ如キハ現ニ家屋ヲ貸付テソレヲ以テ立派ナ営業ニシテ居ル営業者ガゴザイマス、一般営業税ヲ何業ニ拘ラズ賦課サルヽニ拘ラズ、家屋貸付業者ノミ営業税ヲ免ルヽト云フコトハチト公平ヲ得ヌカト云フ嫌ガゴザイマス、故ニ六番ヲ賛成シマス
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○十一番（鹿児島、宮里正静君）　私ハ此ニ第三項ノ処ニ金銭貸付業ノ所ニ入レルニ就イテ一寸御参考マデニ申シテ置キマス、何方デモ宜イト云フ御話デコザイマスガ、私ハ制限ヲ立テタイ、抑々本項ニ依ツテ見マスト金銭貸付業ハ五百円未満ノモノニハ営業税ヲ課セズト云フ明文ガアリマス、夫故ニ家屋貸付業ニモ五百円未満ノモノニハ課セズト云フ明文ヲ入レルガ宜イデハナイカ、僅カノ家賃ヲ取ルニ此税法ヲヤツテハ甚ダ困リマスカラソコデ貸付高ノ制限デ制裁ヲ設ケテ置キタイ
○四十六番（知多、小栗政治郎君）　私ハ此貸家ヲバ課税標準ノ中ニ入レルト云フコトハ大不賛成、東京ハ地所ト家ノ持主トハ違ツテ居ルト見テ居リマス、総テ場所ニ依ツテ家賃ヨリ地所ノ賃ヲ取ルト云フ土地ガアル、果シテ貸家ノ営業ヲ以テ之ヲ加ヘルモノナラバ、地所貸付ノモノモ加ヘナケレバナラヌト云フコトニナル、何処マデモ貸家ヲ営業ニスルモノハ少数デアリマスカラ、是等ニ税ヲ課スルノハ宜シクナイト思ヒマス
○六番（赤馬関、瓜生寅君）　私ハ決シテ問題外トハ心得ナイ、即チ等シク家其物ヲ貸スノデアリマス、之ヲ税法外ニ置クト云フ事ハ不公平ト思ヒマス、別ノモノヲ入レルノデナイ、且十一番ハ金銭貸付業ノ中ニ入レルガ宜イト云フ御説デスガ、右ハ貸付金額ヲ課税標準トストアルノデ、若シ此例ニ依レバ家ヲ造ツタ原価ヲ課税標準トシナケレバナラヌヤウニナルカラ、寧ロ物品貸付業ノ第四ノ項ニ入レタガ穏当ト思ヒマス
○有志会員（東京、佐久間貞一君）　私ハ家屋ノ貸付業ニ税ヲ課スルト云フコトハ賛成スルコトハ出来ナイ、今日家屋ヲ借リテ居ル者ハ先ツ下層ノ人デナケレバナラヌ、多ク立派ナ処ハ借リテ居ラヌ方ガ何方カト云ヘバ多イ、必シモ下層ノ人ト云ヒ能ハナイニモセヨ、一般貧民社会ハ家屋ヲ借リテ居ル、然ラバ自然其人々ニ向ツテ営業税ヲ課スルヤウナモノデアツテ、営業以外ニ課スルコトニナル、成程形ハ営業者即チ家ヲ建テヽ居ルモノニ課スルノデアルガ、家賃ガ高クナルノハ免レヌカラ、此等ハ特ニ商業会議所ガ注意シテ宜イト思ヒマス、自然政府ガ下級ノ貸家ニ営業税ヲ掛ケナカツタノハ其辺ヲ考慮スル所ガアツタノデ、今どなたカノ御説ノ如ク地面ノ上ニ建テタ家屋其物ニ税ヲ課スルコトニナルト地代マデモ入レテ置カネバナラヌ、サウスルト課税ノ上ニ於テ大変ニ面倒ニナル、先ヅ一般ノ上ノ社会ノ改良ト云フ上ニ於テ最モ家屋ノ税ナドハ課セナイヤウニシテ、成ルベク衛生上ニ適当シテ往カナケレバナラヌト云フ国家ハ責任ヲ以テ居ル、其上高イ家ニ住ハヌ貧民――人ノ家屋ヲ借リテ居ルモノガ多イ、其モノニ向ツテ少シノ税ヲ取ツテ即チ家賃ガ段々騰貴シテ来ルト云フヤウナコトニ向ツテハ会議所ハ成ルベク議シタクナイ、斯ルモノヨリ営業税ヲ取ルベキモノデナイト云フ議論デアリマス
○四十一番（大坂、亀岡徳太郎君）　家屋ノ賃貸ニ向ツテ営業ト見テ税ヲ課スルト云フコトハ最モ私共ハ不同意ノ位置ニ居ルモノデゴザイマス、段々先刻四十六番ノ御述ベニナリマシタヤウナコトガゴザイマス又各地方デハ営業ト看做ス可キ御説ガ出マシタケレドモ、我大坂辺リデハ随分無営業者ニシテ数百軒ノ貸家ヲ持ツテ之ヲ貸シテ居ル人ガナ
 - 第22巻 p.189 -ページ画像 
イコトハナイ、併シ之ヲ以テ家屋貸付業ト見テ営業ノ中ニ入レルト云フコトハ悪イ、抑モ家ヲ一軒借リマスレバドウ云フコトヲシテ借リマスカ、例ヘバ今日此家ヲ一軒借ラウト思ヒマスト、愈々貸借ノ約定ガ整ヒマスト、先ヅ借ル方デ家主ニ向ツテ物品ヲ持ツテ往キマストカ、酒ノ切手ヲ一枚持ツテ往キマストカシテ、漸ク之ヲ私ガ此家ヲ拝借スルト云フ御印シノ為メダト云フテ、大坂辺リデハ一ノ物品ヲ持ツテ往ツテ御頼ミシテ来ルト云フ風デ、其時ニ六ケ敷契約書ガ出来ヤウト云フ有様、此土地ニ於キマシテモ前ニ私ガ少シ都合アツテ或ル所デ家ヲ借ル約束ヲシマシタラ矢張サウ、素ヨリ東京ニ於テモサウデゴザイマス、東京ニハ或ハ家屋貸付業ノ看版ヲ掛ケテ営業スルモノガアルカ知レマセヌガ、此等ヲ営業者ト見ルト云フコトハ甚ダ穏当デナイト思ヒマス
　　　〔「採決、々々」ト呼ブ者アリ〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　モウ大抵御論旨モ尽キマシテゴザイマセウ、然ラバ六番ノ第四ノ項ニ向ツテ家屋貸付業ヲ加ヘルト云フ御動議ニハ御賛成モゴザイマスデ決ヲ採リマス、六番ノ御動議ニ御賛成ノ御方ハ御起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　少数
○会長（東京、渋沢栄一君）　少数デゴザイマス、別ニ他ノ項目ニ就テ御説ガゴザイマセヌケレバ、此二カラ致シテ六マデ、ソレカラ仕舞ニゴサイマス附記ヲ合セテ原案ニ向ツテ決ヲ採リマス、原案ニ御同意ノ御方ノ御起立ヲ乞ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数デゴザイマス、次ハ其二即チ会社ニ対スルノデス、先刻朗読ヲ致シマシタカラ朗読ハ省キマス
○十四番（豊橋、白井直次君）　モウ一応朗読ヲ願ヒマス、原案ガアリマセヌカラ
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ朗読致シマス
　　　（書記朗読）
○四十四番（八王子、平林定兵衛君）　私ハ此項ハ削除シタイト云フ意見デス
○三十一番（宇都宮、須永信夫君）　三十一番ハ今度始メテ原案ニ賛成致シマス
○一番（静岡、北村五郎兵衛君）　原案異議ナシ
○十四番（豊橋、白井直次君）　原案賛成
○会長（東京、渋沢栄一君）　今ノ削除説ハ御賛成ガアリマセヌカラ原案ニ就イテ決ヲ採リマス、其二ノ項ニ対シテ御同意ノ御方ハ御起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数、其三即チ第二ノ其三是モ委員会ニ於テ修正サレタル文章デゴザイマス、モウ一遍朗読致シマス
　　　（書記朗読）
　　　〔「異議ナシ、異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　賛成
 - 第22巻 p.190 -ページ画像 
○会長（東京、渋沢栄一君）　其三ニ就イテ決ヲ採リマス、別ニ御異議ガゴザイマセヌカ、原案ニ御同意ノ御方ハ御起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　全員
○会長（東京、渋沢栄一君）　総起立、是デ二読会ハ相済ミマシテゴザイマス、続イテ三読会ノ確定議ニ御取掛リヲ願ヒタウゴザイマス

○十二番（浜松、中村忠七君）　二読会決議ノ通リ全体大賛成デゴザイマス
○五番（長崎、松田源五郎君）　一寸御相談ニ申上ゲテ置キマス、是ヲ以テ確定ト云フニ至リマスノハ本員ニ於テ勿論異論ハゴザイマセヌ、乍併若シ此文字上ニ於テ前後矛盾スルヤウナコトガ万一ゴザイマシタナラバ、夫等ハ宜シク修正スルト云フコトヲ委員ノ人ニ御任セシテ置クト云フコト丈ノ御許シヲ得テ置キマシタナラバ如何デゴザイマセウカト考ヘマス、多分ソンナコトハナカラウトハ考ヘマスガ、修正ノコト故若シ不都合ノコトガアルカモ知レヌト考ヘマスカラ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　只今既ニ幾ラカ附記スルコトヲ委員ニ御委託ニナツタヤウデスカラ、アレハ三読会ニモ併セテ御議決ニナルヤウニ、尚其他モト云フノデセウ
○二番（静岡、尾崎伊兵衛君）　賛成
○五番（長崎、松田源五郎君）　会長ノ仰セ通リ
○三十六番（上田、黒沢鷹次郎君）　賛成
○会長（東京、渋沢栄一君）　三読会モ変ツタ御発議モゴザイマセヌケレバ、第一・第二ヲ引括メテ採決シテ宜シウゴザリマスカ
　　　〔「異議ナシ、異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ五番ノ御意見ノ如ク、若シ字句ノ修正等ヲ必要トスルコトガアルトキニハ、即チ昨日定マツテ居ル委員ニ附託シテモウ一遍字句ノ吟味ヲシテ貰ツテ、其上デ必要ト云フ認メガ付イタ以上ハ、字句ノ修正ハ此方ニ託スルト云フコトニ申シテ置キマス
○十一番（鹿児島、宮里正静君）　御参考マデニ申シテ置キマス、サウナレバ後ノ始末旁々御議シニナツタラドウデス
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソレハ御相談シテ置カナケレバナリマセヌ、然ラバ五番ノ御説ニ依ツテ三読会ノ決議ヲ採決致シマス、五番ノ説デ原案ニ御同意ノ御方ニ御起立ヲ乞ヒマス
　　起立者　　全員
○会長（東京、渋沢栄一君）　全会一致デゴザイマス、偖本案モ三読会マデ議了致シマシタガ、只今十一番ノ御説モゴザイマスカラ、凡ソ斯ウ云フ手順ニシヨウト云フ御考デモ御打合ナサル必要ガアリマスカ
○四十八番（京都、中野忠八君）　四十七番ハ一ツ建議ト申スカ、先ヅ御相談デゴザイマスガ、本会ノ決議ハ聯合会規則ノ第三条ノ但書ニ依ツテ「本会ノ決議ハ各会議所ヲ覊束セズ」ト云フコトガゴザイマス、今日迄ノ結果ニ依リマスト、従来ノ聯合会ニハ色々沢山ノ問題モ出マシテ吾々ガ決議ヲシテ各地ニ持帰ツテモ、各地ノ会議所ノ意見ニ任シテアル為メニ必要ナ問題ガ二・三ノ会議所ヨリ建議・請願ヲ以テ出テ
 - 第22巻 p.191 -ページ画像 
来ナイト云フコトガアリマス、ソレモ其会議所ノ決議ニ附スカラ止ムヲ得ヌ次第デハゴザイマスカ、本問題ノ如キハ実ニ聯合会開ケテ以後ノ大問題デモアリマスシ、此会議ノ決議ヲ余程重クシナケレバナルマイト存ジマス、願クハ此会議ノ結果ヲ各会議所ニ於テ再ビ会議ニ附シテ、其決議ヲ以テ其筋ニ上申或ハ請願スルノ手続ハ出来得ラレマスレバ十分ノコトデゴザイマス、否出来得ラレマセウト考ヘマス、万一本会ノ決議ニ其意思ノ悖戻シタヤウナ決議ニナツタラ或ハ是等ノ法文ヲ扣除スルト云フコトニシマシテ、ソレヲ以テ上申或ハ請願セラルヽト云フコトニナルト、此大問題ノ意見ガ各地区々ニナルノミナラズ、此決議ヲ以テ東京カラデモ出シテ貰ヘバ大変其モノニ就テノ障害ニナラウト思ヒマス、寧ロ意思ニ反シ変ツタ意見ノ議決ガ出来タナラバ、出シテ貰ハヌ方ガ得策デアラウカ知ラヌト思ヒマス、私ハドウモ物ヲ云フコトガ下手デ御聴取リ悪イカ知ラヌガ、此決議ヲ正シク傷ケナイヤウニシタイト思ヒマス、先日既ニ会長カラほてるノ宴会ノ席デ、各大臣モ列席セラルヽ中デ、本会ノ決議ハ最モ商業者ニ当箝ツテ居リ、且現行ノ法律ヨリモ勝ツテ居ルト云フ意味デ御演舌ガアツテ、或大臣ノ如キハ一片ノ力ヲ投ズルトマデ仰シヤイマシタカラ、内閣大臣ニ於テモ本会ノ決議ハ十分重ンゼラレルコトヽ思ヒマスカラ、願クハ聯合会規則第三条ノ但書ニ依ラズニ御纏メノ附クヤウニ致シタイト云フ考デゴザイマス
　　　〔「同感、々々」ト呼ブ者アリ〕
○十二番（浜松、中村忠七君）　只今中野君ノ御注意ガゴザイマシタガ既ニ本会ガ聯合会規約ノ第三条ト云フモノニ覊束セラレヌ為メニ、斯ク鄭重ニ数日ヲ費シタノデゴザイマスデ、諸君ノ今日迄議了サレマシタ御意思ノ中ニハ、全体夫等ノ文章ノ同一ノモノヲ建議・請願スルコトハ此議場ノ大勢トシテ自カラ定ツテ居ラウト思ヒマス、私ハ是迄ノ聯合会ハ制限ガアリマスカラ伺ヒ切リデ帰リマシタカラ、本会ハ本会デ決議シタモノハ必ズ全体其通リニ建議・請願スルコトヽ只今迄信ジテ居リマシタ、然ルニ中野君カラアヽ云フ風ナ御考ガアリマス、是迄議シ去リマシタ精神ニ幾ラカ緩ミヲ付ケルヤウニ思ヒマスカラ、是ハ別段御考ガアリマスナラバ格別、成ルベクナラバ最早是迄議シ去リマシタモノ故御迷惑デモ東京ノ御会議所デ一遍ノ印刷物ニナスツテ下スツテ、吾々ハ其通リ謄写シテ建議・請願スルコトニシタイノデゴザイマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　聯合会ノ規則デハ中野君ノ御説ノヤウニナツテ居リマスカラ、此聯合会ノ規則トシテハ貴君ノ仰ノヤウニハ出来兼ネマス
○九番（金沢、山田清三君）　九番ハ我会議所ノ意見ニ依ツテ修正説ヲ提出シタコトデ、乍併ソレハ行ヘヌ暁ニ於テ結了シマシタ所ヲ持帰リマシテ聯合会ノ決議ヲ守ツテ成ベク――デハナイ、素ヨリ其決議通リニ我会議所ヨリ建議スルコトヲ十分主張スル考デゴザイマス、尚此段ハ各員ニ於テ御注意アランコトヲ願ヒマス
○五番（長崎、松田源五郎君）　五十二番ニ一寸御尋ネ致シマス、東京商業会議所ノ御意見ヲ御尋ネシマス、此議事ガ成立チマシタナラバ東
 - 第22巻 p.192 -ページ画像 
京ノ会議所デハドウ云フ手続ニナサル御思召デセウカ、貴衆両院ニ請願ヲシ、大蔵大臣ニ建議ヲスルト云フ丈ケニ御止メ置キト云フ思召デゴザイマセウカ、其辺ハドウ云フ手段方法ヲ採ツテ本会ノ決議シタコトヲ実施スル御考デアリマセウカ、少シ御見込ヲ伺ツテ置キマス
○五十二番（東京、中野武営君）　当会議所ノ方デハ其辺マデノ決議ハシテ居リマセヌノデゴザイマスガ、会議所ノ意見トシテ御答ヲ申上ル事ハ少シ私ノ分限トシテ出来マセヌガ、併シ私ガ考ヲ申シマスレバ、商業会議所トシテ別ニ此事ニ就テ運動スルト云フガ如キ事ハ為シ得ラレナイ事柄ダラウト思ヒマス、併シ幸ニ今東京デ此諸君ガ御寄リニナツテ、数日間斯ノ如ク御熟慮ノ上決議ヲナサレタニ就テハ、此建議書ハ是カラ漸々各商業会議所ニハ相当ノ手続ヲ経テナサルナラ時間ガアリマスガ、差向キノ所ハ此結果トシテ既ニ確定議ニナリマシタカラ、先ツ定ツタトシテ相成ルベクハ此中カラ五人サンナリ三人サンナリ御協議ノ上御定メニナツテ、大蔵大臣ナリ農商務大臣ナリ、直接ニ租税ノコトニ関係シテ居ル大臣ニ向ツテ、今日斯ウ云フ風ニ心配シタカラ他日此建議書ハ出スカラドウゾ十分ニ政府ニ於テ攻究ヲシテ下サルヤウニト云フコトノ趣意ヲ、此際大臣ニ御陳情下スツテ置イタナラバ、大変宜カラウト私ハ考ヘマス、ソレカラ以上ハ建議書ヲ各地ノ商業会議所ニ於テ其筋ヘ差出スヨリ外商業会議所ノ働キハアルマイト思ヒマス、私ハサウ云フ風ニシタイト云フ考デゴザイマスガ、今申ス通リ五人サン位ガ御苦労デゴザイマスケレドモ、明日デモ一ツ是等ノ大臣ニ此会ノ有様ヲ御陳述下サルナラバソレガ一番宜カラウト云フ考デス
　　〔是ヨリ尚運動方法ニ付キ二・三ノ打合セアリシ末、陳情ノコトハ会長及前ノ修正委員ニ託スルコトニ決定セリ〕
○五十二番（東京、中野武営君）　最早議事ガ終リマシタカラ、此間ノ委員会ニ就キマシテ修正ノ文案ヲ起草致シマシタ意思ニ就テハ、各商業会議所カラ御出京ニナツテ居リマス事務員方ノ中カラ御助力ヲ願フタノデ、ソレハ京都ノ新井君、大坂ノ浜田君、神戸ノ桂君、長崎ノ一野君、名古屋ノ上遠野君、知多ノ鬼頭君、広島ノ鹿野君、東京ノ萩原君、小崎君、是等諸君ノ始終委員会ノコトニ就キマシテハ出席ヲシテ貰ヒシノミナラズ、筆モ執ツテ貰ヒ色々力ヲ尽クシテ貰ヒマシタノデ大変委員会ハ之ガ為メニ便利ヲ得マシタノデゴザイマス、私カラ諸君ニ此事ヲ御報告申上ゲテ、併セテ謝辞ヲ述ベマス
　　　〔議員一同謝辞ヲ述ブ〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　聯合会ノ議事モ皆様ノ御骨折ヲ以チマシテ全ク十分ノ審議討論ヲ尽クシテ本日結了ヲ致シマシテ、誠ニ御骨折千万ト感謝ノ至リニ堪ヘマセヌノデゴザイマス、但シ此議場ニ於テハ御修正御意見ハ種々御討論ガアツテ、他ノ説ヲ取ラウトカ、又ハ攻撃ト云フ場合モゴザイマシタガ、総テ誠ニ衷情カラ出テ、相争フトカ相鬩クトカ云フコトナク、真実御意思ヲ御発表ニナツタヤウニ拝見シマシタ、不肖ノ私ガ会長席ヲ涜シマシタノハ甚ダ失礼、且ツ議事ノ整理ニ就テ不都合千万ニ往々傾イタト云フ思召モアツタラウト思ヒマスガ斯様ナ円満ナ結果ヲ得マシテ誠ニ満足ニ存ジマスニ就キマシテ、益々不肖ノ私ガ長ク此席ヲ涜シマシタ謝辞ヲ申上ゲマス、続イテ中野君カ
 - 第22巻 p.193 -ページ画像 
ラ只今御礼ヲ述ベラレマシタ通リ、各地ノ書記長諸君ノ御骨折ヲ願フタコトヲ深ク謝シマス
　　此時四十番（大坂、土居通夫君）ハ議場ノ中央ニ進ミ、一同ニ代リテ左ノ挨拶ヲ述ベラレタリ
私ハ議員一同ニ代ツテ御挨拶ヲ致シマス、此度臨時聯合会ヲ開キマシタニ就キマシテ、最初ヨリ種々ノ御準備且御手数ヲ掛ケマシテ、開会ニ就キマシテハ東京商業会議所ノ会頭即チ会長ニ御苦労ヲ願ヒマスシ又中野君ハ副会長ニ御苦労ヲ願ヒマシテ、十九日以来今日迄六日ニシテ重大ノ今度ノ事件モ先ヅ結了致シマシタ、会長ノ御整理、委員長ノ御苦労ト尽ク其宜シキヲ得テ都合好ク今日ニ至リマシタノハ一同感謝ニ堪ヘマセヌ、ソレノミナラス、去ル廿二日ハ東京商業会議所ノ諸君ノ御厚意ニ依リマシテ帝国ほてるノ方ヘ御招待被下マシテ、一同参上致シマシタ所、各大臣・各次官其他ノ方々ノ臨席モゴザリマシテ、一同其席末ニ加ハリマス光栄ヲ得、且其席ニ於キマシテハ聯合会ヲ開キマシタ要点ヲ審ニ御述ベニナリマシテ、実ニ一々感謝ニ堪ヘヌ訳デゴザイマス、廟堂ノ諸君モ深ク御聴入ニナツタト認メテ居リマス訳デゴザイマス、又昨日ハ会長ノ御厚意ニ依リマシテ大勢ガ御別荘ヘ御招キニ預リマシテ、種々又珍シイ御余興ナドヲ拝見致シマシテ誠ニ一同有難存ジマス、偖テ一同ヨリ一夕宴会ヲ開キマシテ色々御苦労ヲ掛ケマシタ報酬トシテ御招キヲ致シタイト云フ発議者モゴザイマシタガ、本年四月博多ニ於テ聯合会ノ時分ニ以来此地方カラ寄ツタ者ガ亭主トナツテ其地方ノ方々ヲ御招キヲスルコトハ廃サウト云フヤウナ御打合セガアツタサウデゴザイマス、其上ナラズ此会員中ニ於テモ早ク帰国シタイト云フモノモゴザイマスシ、又御受ケナサル方デモ御煩忙デ御困リニナツテ居ルコトモ承ツテ居リマスカラ、甚ダ不本意デゴザイマスガ、先ヅ御馳走ハ喰逃ゲニシテ立去リマス、議員一同ニ代ツテ謝辞ヲ申述ベマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　ドウモ御丁寧ノ御挨拶ヲ戴キマシテ有難ウ存ジマス、然ラバ是ニテ閉会仕リマス
　　午後六時四十分閉会
　　　○本巻明治三十年十一月五日、同年十二月四日ノ両条、並ニ本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治二十九年四月二十五日、同年十一月六日、同年十二月十七日、同三十年五月七日、同年十月八日、同年十一月二十七日ノ各条参照。
　　　○営業税法ハ其後明治三十二年及ビ同三十五年ノ両度ニ亘リ改正サレタレドモ局部的改正ニ過ギズ、聯合会ノ所期シタルガ如キ改正ハ行ハレザリキ。
　　　　（明治財政史第六巻）

東京経済雑誌　　第三五巻第八七八号・第一〇〇二―一〇〇五頁　明治三〇年五月二九日
　　○各地商業会議所の営業税改正意見摘要
今や営業税法の苦情は天下到る所に反響し、到底其改正を要することとなれり、去れば余輩は玆に全国各地商業会議所の営業税改正意見を蒐め、其要を摘み、左に掲げ以て読者の参考に資す
　　　　△東京商業会議所意見
其一　営業税法以外別に会社税法を創定し、会社組織を以てする営業
 - 第22巻 p.194 -ページ画像 
は総て同法に属せしめ、会社収入の利益を標準として相当の課税を為す事
其二　一個人の営業に対しては左の方法に依り相当の課税を為す事
　（一）　物品販売業
　　右は売上金額（卸売と小売とを問はず）を課税標準と為す事
　（二）　銀行業　保険業　金銭貸付業　物品貸付業　製造業　印刷業　写真業　倉庫業　運送業　運河業　桟橋業　船渠業　船舶碇繋場業　貨物陸揚場業
　　右は資本金額を課税標準と為す事
　（三）　土木請負業　労力請負業
　　右は請負金額を課税標準と為す事
　（四）　席貸業　料理店業　旅人宿業
　　右は建物賃貸価格及従業者を課税標準と為す事
　（五）　公なる周旋業　代弁業　仲立業　仲買業
　　右は報償金額を課税標準と為す事
　以上各業は営業の情態に応し毎営業を若干の等級に分ち、毎等級相当の税率を定む、但等級は課税標準（物品販売業の売上金額、銀行業等の資本金額の類）に依りて分つ事
　又毎営業の等級を定むるに当りては、各地適宜の区域内に営業税調査委員若干名を置き、之を調査せしむる事、但営業組合あるものは其組合に調査を附託するも妨けなし
其三　税率は現法に比し徴税費の減ずる分量に応して之を軽減する事
　　　　△高崎商業会議所意見
一　物品販売に於ける小売・卸売の税率を同一にすること
二　料理店業・旅人宿業・席貸業を除くの外建物賃貸価格を以て課税標準とするを廃すること
三　従業者の年齢に制限を附し、納税義務を負担せしむる事
四　倉庫業外拾業に通して従業者は普通従業者と労役者の二者に区別して税率を設くること
五　従業者の員数計算法を変更すること
六　会社税法を創定し、会社組織を以てする営業は営業税法より分離し、会社法に属せしめ課税をなすこと
七　家屋貸付業者を物品貸付業者の部に算入し、相当の課税をなすこと
　　　　△富山商業会議所意見
一　物品販売業に於て卸売・小売の区別を廃し、同一の税率を以て賦課すること
二　資本金額を課税の標準とする諸営業は資本金額の代りに収益金を以て課税標準とし、建物賃貸価格を廃すること
三　席貸業・料理店業・旅人宿業に対しては、同法規定の課税標準の外に収益金を加ふること
四　従業者又は従業者中職工労役者、十五歳以下の者は之を半減すること
　　　　△広島商業会議所意見
 - 第22巻 p.195 -ページ画像 
一　資本金を標準とする課税は一切之を廃止し、之に代ふるに収益税を以てするを可とす
二　写真業の従業者は職工労役者と他の従業者とを区別せさる事
三　席貸業・料理店業・旅人宿業の課税標準中に純益金額の一項を加ふる事
四　資本税廃止の結果として銀行業・保険業・金銭貸付業・物品貸付業は純益金千分の十五、倉庫業は千分の十五、製造業・印刷業は千分の十、写真業は千分の十五、運送業・運河業・桟橋業・船渠業・船舶碇繋場業・貨物陸揚場業は千分の二十、席貸業・料理店業並に旅人宿業は千分の二十と為す事
五　製造・印刷二業は建物賃貸価格の税率を千分の二十に減する事
六　従業者中年齢十五年以下は席貸・料理店・旅人宿・製造・印刷の五業を除く外無税とす、席貸業・料理店業・旅人宿業の従業者中十五年以下は五十銭とし、又製造業・印刷業の職工労役者は二十銭とし、十五年以下は十銭とする事
　　　　△長崎商業会議所意見
一　主として課税標準を売上金額其他の如き営業より生する収入金額及其営業に従事する所の従業者に限る事
二　税率を軽減し、仍て生する国庫収入の欠額は他の財源より之を補足する事
三　免税の範囲を拡張し、公なる周旋業・代弁業・仲立業・仲買業の報償金額一年百円未満のものは免除する事
四　営業者をして一定の帳簿を備付記載せしむる事
　　　　△赤馬関商業会議所意見
一　資本金を課税の標準となすものは土地に等級を分ち、税率に等差を設くる事
二　建物貸付を業とするものを物品貸付業中に加ふる事
三　運送業の中船舶・汽車の積荷取扱人は仲立業・仲買業と同じき標準に依り課税する事
四　一個人の資本算定に当り他より借入れたる土地建物の価格は資本金額中より除去する事
　　　　△知多商業会議所意見
一　席貸業・料理店業・旅人宿業を除くの外は建物賃貸価格を課税標準中より除去する事
二　従業者は総て課税標準と為さゝる事
三　本税修正の為めに生する不足は他の税源より塡補する事
四　酒類製造業を営業税法範囲外に置く事
　　　　△大坂商業会議所意見
一　物品販売業に於ける課税標準売上金額を売買益金と更むる事
二　物品販売業に於ける小売・卸売の税率を同一にする事
三　土木請負業・労力請負業の課税標準請負金額を改めて請負益金とし、其税率を千分の十と為す事
四　従業者に制限を附し、幼者其他主として営業に従事せさる者の税率を全廃若くは軽減する事
 - 第22巻 p.196 -ページ画像 
五　倉庫業・運送業・運河業・桟橋業・船渠業・船舶碇繋場業・貨物陸揚場業・土木請負業・労力請負業の諸業に通して従業者を普通従業者と労役者との二種に区別し、税率に等差を附する事
六　従業者の員数は前年に於ける平均に依る事
　　　　△四日市商業会議所意見
一　税率の程度を軽減する事
二　会社税法を設けて会社組織の営業は純益に課税する事
三　一個人の営業は其資本金の多寡に応し（資本金に拠り難き営業は特に収入金に拠り比準を以て資本金を算定し）適宜等級を設け、之を標準として相当の税率を定むベし、各市町村（地区の広大なる市町村は適宜数区に分ち毎区）に若干の評定委員を設け、委員会は営業者の実況に拠り其相当の等級を評決すべし
　　　　△堺商業会議所意見
一　営業税法第十二条第一号の物品販売業に於ける小売の税率万分の十五を万分の十に改むる事
二　同条第五号にある船渠業を第四号に移して、製造業等に伍せしめ職工労役者に関する課税標準及其税率を船渠業にも適用する事
三　同条の末尾に「各種業に関する従業者の年齢十五年未満の者には税率の半額を課す」の一項を設くる事
四　第十六条第三項に「従業者は前年に於る最多数のときに依る」とある最多数の三字を平均数の三字に改むる事
五　第二十八条第一項の但書を「市町村長の選定に係る評価人の費用は異議申立人の負担とす」と改むる事
六　第三十一条第一項の第二号中「其最多数のときに於て」の十字を削除する事
七　第三十四条中「一円以上」を「五銭以上」に改むる事
八　第三十六条を「府県郡市区町村は此税法に依り納税義務を有する営業者の営業に対し、府県税・地方税、郡市町村税、若くは区町村費を課することを得す」と改むる事
　　　　△仙台商業会議所意見
一　本法の大体に就きては本法の必要を認む
二　課税標準に関しては席貸業・料理店業・旅人宿業を除くの外は建物賃貸価格を除却する事、且製造業・印刷業・写真業の三業のみ従業者を普通従業者と職工労役者との二種に区別せられ、他は一般従業者とせられたれ共、倉庫業・運送業・運河業・桟橋業・船渠業・船舶碇繋場業・貨物陸揚場業・土木請負業・労力請負業の諸業従業者にも亦区分を設けられたき事
三　税率に関しては従業者に制限を附し、幼者又は主として営業に従事せさる者の税率を全廃又は軽減する事
四　税額の算定に関しては従業者は前年に於ける最多数のときに依り計算するの規定なれども、右は前年中に於ける平均に依るを以て至当となす事
　　　　△神戸商業会議所意見
一　現行営業税法第十二条中課税標準の内より建物賃貸価格・従業者
 - 第22巻 p.197 -ページ画像 
及労役者の目を削除すること
二　現行営業税法に於て課税せらるべき営業者の内、会社組織の営業及銀行を削除すること
三　右第二の営業に対し、別に会社及銀行業税法を新設し、其資本払込金額に依て利益金を推定し、之に百分の一半の税額を賦課すること
四　営業税法としては単に売上金額・上り金額・資本金額・請負金額及報償金額に課税すること
五　以上全体の修正意見にして実行せらるゝことを得ば大に徴税費を減す可きか為め実際は増税と同一の効力あるも、尚ほ政府に於て歳入に不足を告ぐるときは、市街宅地の地価を修正して其不足を塡補するか、又は家屋税若くは屋賃税を設けて一般に課税すべし
　　　　△尾道商業会議所意見
一　物品販売業に於ける課税標準売上金額を改めて売買益金と為すこと
二　物品販売業に於ける卸売・小売の税率を同一にすること
三　各業に於ける課税標準建物賃貸価格を全廃すること
四　貸席業・料理業・料理店業・旅人宿業の課税標準を収益金となすこと
五　従業者税に区分を附し、十五歳未満のものには半額を課すること
六　従業者の員数計算法は前年に於ける平均となすこと
　　　　△松江商業会議所意見
一　営業税法の課税標準たる売上金額・資本金額・請負金額・報償金額・建物賃貸価格、従業者を廃して総て各営業の利益金を以て課税の標準とする事
二　前項の利益金は各営業の状態を異にするに従ひ一定すべからざるものありと雖も、要するに製造品の原質物代価、販売品の原価、其他利息、場所物件の借入料、雇人給料等の金額を総収入金中より控除して算定する事
三　課税の最低限度を利益金壱百円以上とする事
四　税率は累進税の主義に依り利益金額に階級を付し、最低階級より或る階級まで税率を累進せしめ、以外は比例税率を設くる事
五　利益金額は営業者より申告せしむる事
六　営業税調査委員会を設けて営業者の申告したる利益金額を公平に査定せしむる事
七　営業者前項の査定に不服なるときは再審を求むるの権能を与ふべき事
　　　　△鹿児島商業会議所意見
一　課税標準を左の如く改正すべし

　業名　　　　　　　　　　　　　　　　　　　課税標準
　各種会社　　　　　　　　　　　　　　　　　　純益金
　物品販売業（各人）　　　　　　　　　　　　　売上金額
　銀行業・保険業・金銭貸付業・物品
　貸付業（同）　　　　　　　　　　　　　　　　資本金額
 - 第22巻 p.198 -ページ画像 
　倉庫業（同）　　　　　　　　　　　　　　　　建物賃貸価格
　製造業・印刷業・写真業（同）　　　　　　　　資本金額
　運送業・運河業・桟橋業・船渠業・船舶繋場業・
　貨物陸揚場業（同）　　　　　　　　　　　　　上り金高
　土木請負業・労力請負業（同）　　　　　　　　請負金額
　席貸業・料理店業・旅人宿業（同）　　　　　　上り金高
　公ナル周旋業・代弁業・仲立業・仲買業（同）　報償金額