デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治32年10月11日（1899年）

是日第八回定期会第一日ノ会議ニ於テ、仙台商業会議所提出ノ日本郵船株式会社航路補助金継続ノ儀ヲ政府ニ請願スルノ件、函館商業会議所提出ノ内国定期航海継続及ビ拡張ノ件、長崎商業会議所提出ノ帝国及ビ東洋諸港間ノ航海ヲ拡張シ若クハ確保スルガ為メ神戸浦塩・神戸天津・神戸牛荘・横浜上海・神戸馬尼刺ノ五航路ヲ特定航路トシテ補助センコトヲ其筋ヘ建議スルノ件、小樽商業会議所提出ノ内国航路補助継続及ビ拡張ノ件、大阪商業会議所提出ノ北清貿易拡張ニ関スル件ノ五議案上程サレシガ、五案ノ要旨ハ定期航路ノ補助ヲ継続シ又ハ更ニ之ヲ拡張シテ本邦北清間ノ貿易ヲ振興セシムベシト云フニ在ルヲ以テ、便宜之等ヲ一括シ委員ノ調査ニ附託ス。十八日第五日ノ会議ニ於テ、現在ノ内地沿岸定期航路ヲ保持スルト共ニ北海道沿岸及ビ北清ノ航路ヲ拡張スルコト、並ニ定期航海ニ対シ相当ノ補助金ヲ与フルコトノ二項ヲ内容トスル委員起草ノ建議案可決セラル。栄一会長トシテ議事ヲ司宰ス。

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会報告　　第二六頁　刊
 - 第22巻 p.386 -ページ画像 
○議案第一号　　　　　　　　　　　　　（仙台商業会議所提出）
一日本郵船株式会社航路補助金継続ノ義ヲ政府ニ請願スルノ件
　　　　理由
　　明治十八年以降政府ガ日本郵船株式会社ニ航路補助金トシテ下附シタル定額金八十八万円ハ、来ル明治三十三年九月限ナルヲ以テ明年後政府ハ該補助金ヲ継続シテ下附スルヤ否ヤ、或ハ金額ヲ減シテ下附スト聞ク、果シテ斯ノ如クンハ、日本郵船株式会社ハ航海営業上不利益ナル地方ニ於ケル寄港ヲ廃スルニ至ルヘク、従テ従来ノ寄港地タル地方ノ商業ハ為メニ萎靡不振ヲ来タシ、産業ノ発達ヲ妨ケ、施テ国力ノ増進ヲ阻害スルヤ明ナリ、焉ソ以テ時勢ノ進運ニ伴ヒ実業ノ発達ヲ期スルヲ得ンヤ、故ニ定額補助金ハ明年後更ニ継続下附アランコトヲ欲ス

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会報告　　第三〇―三一頁　刊
○議案第四号　　　　　　　　　　　　（函館商業会議所提出）
　一内国定期航海継続及拡張ノ件
　　（趣旨）　日本郵船会社ノ内国定期航海保護期限満了ノ後モ、尚ホ同社ヲシテ、北海道其他有要ノ諸港ニ定期ノ航通ヲ為シ、且ツ其ノ航路ヲ延長シ回数ヲ増加セシムルノ方法ヲ立ン事ヲ当聯合会ニ於テ決議シ、更ニ之ヲ各会議所ヨリ政府ニ具申セント欲ス
　　（理由）　郵船会社ニ対スル明治十八年九月附命令書ノ期限満了シ八十八万円ノ保護金ヲ下附セラレサルニ至ラハ、従来同社カ営ミ来レル定期航海ノ業亦タ自ラ廃絶スルハ多言セスシテ明カナリ、若シ同社ノ定期航海廃セラレンカ、国内一般物価ノ不平均、貨物ノ停滞、商取引ノ不敏ヲ見ルニ至ルハ勿論、交通及人文ノ開発亦挫折ヲ被ムルハ決シテ疑フ可カラス、殊ニ北海道ノ如ク万般ノ交通運搬一ニ船運ニノミ依ル地方ニ於テハ、商工殖産ノ諸業ニ及ボス影響至大実ニ測ル可カサルモノアリ、而シテ定期航海ノ奨励ハ現時世界各国商業政略ノ通義トスル所ニシテ、商工業ノ消長亦其便否ニ伴随スルノ事蹟ヲ呈シ、我国亦之ニ做フノ要アルヲ見ルナリ、故ニ右期限満了後即チ来三十三年九月以後ニ於テモ、同社ヲシテ定期航海ヲ営マシムル事ト為サヽル可カラザルハ勿論、之ヲ営マシムルニ就テハ、十年以前ニ成リタル旧方ヲ踏襲スルガ如キコトナク、更ニ各地ノ必要ニ応ジ大ニ其航路ヲ延長シ、亦回航度数ヲ増加セシメサル可カラス、固ヨリ本会議所ハ郵船会社庇護ノ為メ此ノ議ヲ立ツルニ非ラズ、然レトモ現時此任ニ当リ得ルモノハ同社ノ外ニアル可カラズ、是レ本案ヲ提出スル所以ナリ

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会報告　　　第三一―三五頁　刊
○議案第五号　　　　　　　　　　　　　（長崎商業会議所提出）
一帝国及東洋諸港間ノ航海ヲ拡張シ若クハ確保スルカ為メ、左記ノ五航路ヲ特定航路トシテ補助センコトヲ其筋ニ建議セント欲ス
　　（一）浦塩航路　　神戸ヲ起点トシ門司・長崎・朝鮮ノ要港ヲ経テ浦塩ニ達スルモノ、従来毎四週一回ノ航海ヲ、毎週一回トナス
 - 第22巻 p.387 -ページ画像 
　　（二）天津航路　　神戸ヲ起点トシ門司・長崎・朝鮮其他ノ要港ヲ経テ天津ニ達スルモノ、従来毎四週一回ノ航海ヲ、毎二週一回トナス
　　（三）牛荘航路　　神戸ヲ起点トシ門司・長崎・朝鮮其他ノ要港ヲ経テ牛荘ニ達スルモノ、従来毎四週一回ノ航海ヲ、毎二週一回トナス
　　（四）上海航路　　横浜ヲ起点トシ神戸・門司・長崎ヲ経テ上海ニ達スルモノ、従前ノ通リ毎週一回ノ航海
　　（五）馬尼剌航路　　神戸ヲ起点トシ門司・長崎・福州・厦門ヲ経テ馬尼刺ニ達スルモノ、毎二週一回ノ航海
　　　　理由
本案提出ノ理由ハ当会議所ヨリ逓信及農商務両大臣ヘ宛提出セル別記建議文案写ヲ以テ之ニ代フ
（別記）
　　　　帝国及東洋諸港間ノ航海拡張及補助ニ付建議
尨大ナル東亜大陸、蕞爾タル比律賓諸島、一トシテ我貿易上好箇ノ華主タラサルハナシ、而シテ今ヤ、西比剌亜鉄道ハ将ニ期年ナラスシテ其工ヲ竣リ、欧亜両大陸間ノ交通上ニ一大変革ヲ来サントシ、諸港已ニ無尽ノ宝庫トシテ世界強国ノ着目留意スル所トナリ、北清ニ南清ニ到ル所鉄道ノ敷設ヲ計営セラレ、比律賓・大連湾・威海衛亦我商品ノ一大需用地タラントス、是豈東亜ノ局面一変ノ機運ニ向ヘルモノニアラスヤ、我帝国ノ如キハ此時ニ際シ須ラク航権ノ拡張ヲ図リ、以テ貿易ノ進歩発達ニ資スル所ナカルヘカラサルナリ
然ルニ顧ミテ現今帝国ト此等諸邦間ニ於ケル交通上ノ実況如何ヲ観レバ、僅カニ日本郵船株式会社カ政府保護ノ下ニ於テ浦塩航路・天津航路・牛荘航路及上海航路ヲ開キ、定期航海ヲ営ミツヽアルモ、其航路回数ヤ極メテ尠少ク、殊ニ馬尼剌ノ如キハ濠州航船ヲ以テ近時漸ク毎月一回ノ寄港ヲナサシムルニ至リタルニ過キス、然カモ日本郵船株式会社ノ現在ニ受クル航海補助ナルモノハ、明年九月ヲ以テ終ハルヘキカ故ニ其結果トシテ爾後或ハ今日ノ定期航海スラ更ニ其回数ヲ減シ、若クハ廃セラルヽニ至ルヤモ亦未タ測ルヘカラサルナリ、而シテ此時ニ方リ欧州列国ノ東洋ニ於ケル航権拡張ノ施設ハ今ヤ大ニ吾人ノ戒慎ヲ要スヘキモノアリ、我邦タルモノ今日ニ於テ確乎タル方針ヲ定メ十分ナル計画ヲナスニアラスンバ、久シカラスシテ東洋ノ商権ト航権トハ挙ケテ之ヲ外人ノ手ニ委セサルヘカラサルニ至ルナキヤ未タ保スヘカラス、是レ当商業会議所カ玆ニ本建議ヲ提供シ、唯ニ既設ノ定期航路ヲ保続スルノミヲ以テ足レリトセス、進ンデ左ノ諸航路ヲ拡張シ以テ我貿易ノ発達ヲ促サンコトヲ切望スル所以ナリ
　（一）浦塩航路　　神戸ヲ起点トシ門司・長崎・朝鮮其他ノ要港ヲ経テ浦塩ニ達スルモノ、従来毎四週一回ノ航海ヲ、毎週一回トナス
　（二）天津航路　　神戸ヲ起点トシ門司・長崎・朝鮮其他ノ要港ヲ経テ天津ニ達スルモノ、従来毎四週一回ノ航海ヲ、毎二週一回トナス
　（三）牛荘航路　　神戸ヲ起点トシ門司・長崎・朝鮮其他ノ要港ヲ経テ牛荘ニ達スルモノ、従来毎四週一回ノ航海ヲ、毎二週一回トナス
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　（四）上海航路　　横浜ヲ起点トシ神戸・門司・長崎ヲ経テ上海ニ達スルモノ、従前ノ通リ毎週一回ノ航海
　（五）馬尼剌航路　　神戸ヲ起点トシ門司・長崎・福州・厦門ヲ経テ馬尼剌ニ達スルモノ、毎二週一回ノ航海
然レトモ爰ニ困難ナルハ、今日帝国ト西比剌亜・清国及比律賓間ニ於ケル交通貿易ノ関係カ、航海営業上ニ於テ未タ斯ル頻繁ナル定期航海ヲ開キ之カ持続ヲ許サヽルコト是ナリ、勿論航海奨励法ニ規定セル一般保護ヲ受クルノ便ナキニアラサルモ、荷客ノ増減ニ依リテ臨時其航路ヲ変換スルハ普通商船ノ常態ニシテ、到底此航海奨励法ニ基ク奨励金ノミヲ以テ船主ヲ覊束シ貿易ノ大道タル定期ノ航路ヲ持続セシメントスルモ得テ望ムヘカラサルヲ奈何セン、故ニ今上掲五航路ノ航海ヲ拡張シ之ヲ持続セントスルニ方リテハ、必スヤ之ヲ特定航路トシテ特別ノ保護ヲ国庫ニ仰キ、以テ徐ロニ其発達ヲ図ルノ外アルヘカラス、想フニ前陳スルカ如ク上掲五航路ノ航海拡張ハ、我貿易ノ前途ノ為メ極メテ必要ナリト同時ニ、政治上ニ於テモ亦決シテ忽カセニスヘカラサルモノナルヲ知ラハ、一日モ之カ保護ヲ躊躇シ以テ其実行ヲ遅延セシムヘカラサルヲ信ス
然リ而シテ我長崎港ハ、対支那・朝鮮・浦塩・馬尼剌ノ貿易ニ於テ多年一日ノ長アリ、然カモ今ヤ港湾改修ノ工事ニ着手シ、数年ヲ出スシテ港湾トシテノ設備ノ完全ナル蓋シ東洋ニ於テ其比類ナカラントス、若夫レ愈上掲五航路ノ航海拡張ヲ実行スルニ方リテハ、必スヤ貿易上ノ関係ニ於テモ、将タ船用品需給ノ関係ニ於テモ、之ヲ其各航路ノ一寄航地トシテ永ク指定シ置カサルヘカラサルヤ素ヨリ論ナキ耳
嗚呼東亜現今ノ趨勢ハ正ニ大転シテ帝国ノ雄飛ヲ促カシツツアリ、而シテ此ノ機一タビ逸スレハ復タ容易ニ得ヘカラス、仰キ願クハ閣下当会議所ノ微衷ヲ容レ、速カニ上掲五航路ノ航海拡張ニ対シ充分ナル施設ヲ為シ、以テ帝国ヲシテ千載一遇ノ好機運ニ投スルヲ得セシメラレンコトヲ、右当会議所ノ決議ヲ以テ建議仕候也
　　年　月　日　　　　　　　　　　　　　　　会頭名
　　　　逓信
　　　　　　　大臣宛
　　　　農商務

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会報告　　第四八頁　刊
○議案第十六号　　　　　　　　　　　　（小樽商業会議所提出）
一内国航路補助継続及拡張ノ件
　　日本郵船株式会社内国定期航海ハ、補給期限満了後尚之ヲ継続セシメ、且ツ各地ノ必要ニ応ジ航路ヲ延長シ回数ヲ増加セシムルノ方法ヲ立テン事ヲ当聯合会議ニ於テ決議シ、更ニ各会議所ヨリ其筋ニ建議・請願セント欲ス
　　　　理由
　　明治十八年以降政府カ日本郵船会社ニ対シ給与シ来リタル内国定期航路補助ハ、来ル三十三年九月ヲ以テ満期トナルカ故ニ、以後之ヲ停止スルカ如キコトアラハ、同会社ハ営業上定期航海ヲ廃止スルカ如クハ其回数ヲ減少スルノ外ナカルヘシ、元来定期航海ハ
 - 第22巻 p.389 -ページ画像 
商業上ノ秩序ヲ保持スル所以ノ要件ニシテ、我カ北海道ノ如ク四面環海、陸上交通機関ノ設備完カラサルモノニアリテハ、其必要一層切実ナレハ、之ヲ継続セシムルハ勿論、尚ホ其必要ニ応シ航路ノ延長回数ノ増加ヲ計リ、以テ商業ノ発達進歩ニ資スルハ国家ノ急務ナリトス、而シテ能ク之ノ任務ヲ遂行シ得ルモノハ郵船会社ノ外ナカルヘク、其補助額ハ当局者ニ於テ各航路ノ収支如何ヲ精査シ以テ各別ニ定ムルヲ適当ナリト信ス、是レ本案ヲ提出スル所以ナリ

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会報告　　第四九―五三頁　刊
○議案第十八号　　　　　　　　　　　　（大阪商業会議所提出）
　　北清貿易拡張ニ関スル件
北清貿易ノ拡張ヲ図ルハ方今国家急務ノ事タルヲ以テ、此ノ際其ノ拡張策ノ一手段トシテ、北清ニ対スル我カ航運業ヲ保護奨励シテ速ニ整備スルニ至ラシメンコトヲ政府ニ建議シ、及ヒ帝国議会ニ請願スル事
　　　　理由
　　凡ソ国富ヲ増進シ国力ヲ充実セント欲セハ、内産業ノ発達ニ力メ外商権ノ伸張ヲ期セサルヘカラス、而シテ産業ノ発達ト商権ノ伸張トハ、終始相関聯シテ互ニ応和シ、共ニ消長スルモノナルヲ以テ、常ニ心ヲ両者ノ関係ニ注キ力ヲ之カ両全策ニ尽サヽルヘカラス、今熟々我カ国ノ状態ヲ観察スルニ、産業漸ク内ニ進マントシテ商権未タ外ニ振ハス、商権外ニ振ハサルカ故ニ産業モ亦自ラ為ニ十全ノ発達ヲ為ス能ハサルノ実勢アリ、豈ニ慨スヘキノ至ナラスヤ、是レ実ニ本邦各会議所カ夙ニ屡々種々ノ方面ヨリシテ対外商権ノ拡充ヲ謀リテ怠ラサル所以ナリ
　　此ノ大目的ヲ達スルノ一要手段トシテ、今日ニ於テ十分力ヲ北清貿易ノ拡張ニ致スノ甚タ必要ナルヲ認ムルト同時ニ、其ノ事ヲ果スノ割合ニ容易ナルヘキヲ信シテ疑ハサルナリ、夫レ北清地方ト本邦トノ貿易ハ近年著シク増進シ、将来モ亦益々発達セントスルノ趨勢ヲ呈スルカ故ニ、此ノ趨勢ニ乗シテ該地方ニ於ケル我カ商権ノ暢大ヲ謀ルハ時方ニ我ニ利ナルノミナラス、我又能ク彼ニ対シ容易ク地ノ利ヲ制スヘキナリ、何ントナレハ北清地方ニ於ケル一般ノ経済事情ハ彼ノ南清地方ニ比スレハ未タ十分発達セス、一般経済事情ノ未タ十分発達セサルヤ、其ノ貿易上ノ関係自ラ南清地方ノ如ク盛大ナラス、貿易上ノ関係盛大ナラサルヤ、此ノ地方ニ於ケル諸外国ノ商権モ亦未タ強大ナラスシテ、我カタメニ其ノ間自ラ十分ノ余地ヲ存スルモノニシテ、従テ此ノ地方ニ於テ我カ商権ヲ拡充セントスルハ、他ノ地方ニ於テスルヨリモ能ク容易ニ能ク完全ニ其ノ目的ヲ達シ得ヘキハ理勢ノ当ニ然ルヘキ所ナレハナリ
　　時既ニ我ニ利ナルカ上ニ、我ニ於テ又地ノ利ヲ制シ得ヘシトセハ今日ニ於テ北清貿易ノ拡張ヲ謀ルノ必要ニシテ、其ノ奏功ノ最モ期シ易キコト以テ見ルヘキナリ、然リト雖モ苟モ対外貿易ノ拡張ヲ期スルヤ、航運・金融・保険・倉庫等幾多ノ必需機関ノ彼ニ対
 - 第22巻 p.390 -ページ画像 
シ能ク整備シ相応シ相助ケテ、以テ十分ノ利便ヲ済スルアルニアラサレハ、或ハ我商権ノ尚ホ未タ十分伸ヒサルニ先タチ形勢一変遂ニ他国ヲシテ其ノ欲スル所ニ任シテ商利ニ専ラニセシムルコトナキヲ保セス、是ニ於テカ北清貿易ノ拡張上朝野力ヲ協セテ一日モ速ニ此等必需機関ノ整備ヲ急ニシテ、以テ我カ国民ヲシテ勢ニ乗シ機ヲ逸セスシテ早ク其ノ目的ヲ達セシムルヲ得セシメンコトヲ切望シテ措カサルナリ、然リ而シテ此等諸機関中航運業ニ至リテハ其ノ性質国家ノ生存発育上最モ密着直接ノ関係ヲ有スルモノナルカ故ニ、政府ニ於テ此ノ際先ツ北清ニ対スル我カ航運業ノ整備ヲ図ルタメ適宜ノ手段ヲ実行セラレンコトヲ切望ス
　　元来、対清貿易上否ナ東洋貿易上、清国沿岸諸港間ニ於ケル航海上ノ主権ヲ我ニ於テ占握セシメサルヘカラス、即チ我ニ於テ日本香港間・日本上海間・日本北清間・香港上海間及ヒ上海北清間ノ航海業ヲ大成シ、以テ最モ敏速ニ最モ利便ニ航運ノ利ヲ済スルニ至ランコトヲ期スル者ナリ、而シテ今日ニ於テハ僅ニ我カ郵船会社ニ依リテ日本香港間・日本上海間及ヒ日本北清間ノ航運ニ従事セラレツヽアレトモ、彼ノ日本香港間ハ単ニ欧州航路ノ途次寄港ノ便ニ過キス、又彼ノ日本北清間ノ如キモ船繰ノ点ヨリ見ルモ、発着度数ノ点ヨリ見ルモ、未タ以テ定期線トシテ満足スヘキモノニアラス、勿論近頃ニ至リ大阪商船会社ニ於テモ新ニ北清ニ対シ定期線ヲ開クニ至リシト雖モ、是レ亦真ノ試航海ニ過キス、斯ノ如ク清国ニ対スル我カ航運業ニシテ不整備ナル間ハ、到底我ニ於テ対清貿易上優勢ノ地歩ヲ占ムル能ハサルナリ、然ルニ此等ノ諸線ヲシテ同時ニ完整ヲ告ケシメントスルカ如キハ事ノ実際上決シテ能クスヘキニアラサルカ故ニ、商業会議所トシテ先ツ北清ニ対スル航運業ノ整備ニ力ヲ尽サレンコトヲ政府ニ要望スルノ決シテ不当ナラサルヲ信ス
　　今ヤ我カ北清貿易ハ実際如何ニシテ運営セラレツヽアルカヲ考フルニ、前述セル如ク定期船ノ不足ナルカタメ其ノ十中ノ八・九ハ臨時不定期船ニ依リテ辛クシテ其ノ用ヲ弁シツツアリト雖モ、其ノ運賃ノ不定ニシテ比較的ニ不廉ナルカタメ、又其ノ発着期日ノ予定スヘカラサルカタメ、商利ヲ損シ商機ヲ失シ、以テ我カ商権ノ将ニ大ニ伸ヒントスルノ勢力ヲ抑ヘ、甚シキニ至リテハ共ノ既ニ得タル所ヲ害ハントスルノ不利境遇ニ在リ、即チ我カ紡績糸ヲ始メトシ、燐寸・紙類・木綿・海産物・茶・椎茸・昆布.薬品・雑貨等ニ至ルマテ、若シ運賃ニシテ低廉ニ、期日ニシテ一定セハ彼ノ地ニ於テ倍々大ニ其ノ販路ヲ拡大シ得ンコト決シテ難キニアラサルヘキハ、自他ノ経済事情ニ照シテ自ラ明ナル所ナリ、然リ而シテ今日ノ場合我カ航運会社ニシテ敢テ自ラ進ミテ其ノ定期船ヲ増シ、其ノ運賃ヲ低減シ得サル所以ハ、彼ノ販路積載貨物ノ不定量ナル一事ヲ始メトシ、彼我貿易ノ連絡関係ノ概シテ今尚ホ不備不定ノ状態ニ在ルカタメ、其ノ収支上大ニ懸念スル所アルニ因ルモノニシテ、強テ之ヲ求ムルハ或ハ難キヲ責ムルニ近キヲ以テ商業会議所ハ国家経済ノ関係上ヨリシテ、政府ニ対シ適量ノ保護
 - 第22巻 p.391 -ページ画像 
ヲ適当ノ航運会社ニ附与シテ、彼ノ不便ヲ医シ此ノ不利ヲ補フノ方策ヲ画立実行セラレンコトヲ要望シテ止マサルナリ、之ヲ要スルニ航運業ノ整備ハ、啻ニ直接ニ貨物運輸上ノ利便ヲ済シ商利ノ増進ヲ致スノミナラス、旅客ノ往来ヲ増シ通信ノ交換ヲ速ニシ、以テ能ク相互間ニ於ケル経済的事情、殊ニ商業的事情ノ疏通ヲ容易ニシ、連絡ヲ堅実ナラシムルモノナルカ故ニ、其ノ応響作用トシテ間接ニ自ラ金融・保険等他ノ必要機関ノ設備ヲ促進シ、其ノ機能ヲ完充セシムルノ効験アルヘキハ毫モ疑ヲ容レサルナリ
　　以上開陳シ来レルカ如ク、今日ニ於テ北清貿易ノ拡充ヲ謀ルハ時ノ宜ニ従ヒテ地ノ利ヲ制スルモノニシテ、我カ商権ノ伸張ヲ期スル上ニ於テ一日モ忽諸ニ附スヘカラサル所ナリ、仍テ本意見ノ速ニ成立センコトヲ希望ス

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第一三―二三頁　刊
　　　　○第一日
明治三十二年十月十一日午前十時四十五分開議
　　出席者
　　　委員　　　　　　五十一名　○氏名略
○上略
○六十二番（東京、中野武営君）　議事進行ノ上ニ付キマシテ一ノ建議ヲ致シマス、ソレハ今日迄提出ニナツテ居ル議案ガ十九号ニ至ツテ居ルノデゴザイマス、其中唯今議長カラ御報告ニナツタ三案ト云フモノハ未ダ印刷ハ出来テ居リマセヌ、併シ此十九号ニ至ル迄ノ議案ヲ調ベテ見マスルト、其中航路補助金ニ関スル問題ガ四ツゴザイマス、ソレカラ衆議院議員選挙法改正ニ関スル議案ガ五ツ、営業税法中改正ニ関スル議案ガ二ツゴザイマス、斯ウ問題ガ一ツニナツテ居ルモノデ、色色箇条ニ依テ違ヒハゴザイマスケレドモ、大体ハ同ジ案デアリマス、附キマシテハ此議事ノ進行ノタメニ、其案ノ場合ニ至ツテ委員ヲ選挙シテ調査ニ掛リマスルト云フト、自然ト此会ガ時間ヲ要スルト云フコトニナラウト思ヒマスカラ、一号議案ヨリ議スルニ先立ツテ唯今申シマスル案ノ委員ヲ設ケラレテ、其委員ニ附託シテ調査ヲサセルヤウナ都合ニ致シタイ、之ヲ再言致シマスレバ、航路補助金ニ関スル議案ハ即チ第一号・第四号・第五号・第十八号、此四ツノ議案デゴザイマスソレカラ衆議院議員選挙法改正ニ関スル議案ハ即チ第六号・第七号・第十三号・第十五号・第十七号、此五ツノ議案、ソレカラ営業税法ニ関係シマスルモノガ第十四号・第十九号、此二ツノ議案デゴザイマス即チ此三ツニ別ケマシテ委員ヲ設ケラレタナラバ都合ガ宜カラウト考ヘマス、ソレデ航路補助金ニ関スル委員九名ヲ置キ、衆議院議員選挙法改正ニ関スル委員モ同ジク九名、営業税法ニ関係シマスルモノハ五名ノ委員ヲ置ク、之ヲ建議致シマス
○中略
○二十七番（熊本、下田耕造君）　段々議論ガ二ツニナツテ面倒デゴザイマスガ、ドウカ六十二番ガ先キニ発議シテ居リマスルデ、其説ニ吾吾モ賛成致シマスカラ、六十二番ノ説カラ先ニ採決スルヤウニ致シタ
 - 第22巻 p.392 -ページ画像 
イ
○会長（東京、渋沢栄一君）　六十二番カラ三ツノ議案ニ対シテ委員ヲ置カウト云フ説ガ出マシテ、段々御賛成ガゴザイマスシ、且ツ先キニ出テ居ル案デゴザイマスカラ之ヲ先キニ採決シヤウト考ヘマス、六十二番ノ説ハ衆議院議員選挙法改正ニ関スル件ト、ソレカラ航路補助金ニ関スル件ト、営業税法改正ニ関スル件ト此三ツノ委員ヲ置ク、其委員ハ航路補助金ニ関スル件ハ九名ノ委員、衆議院議員選挙法改正ニ関スル件モ九名ノ委員、ソレカラ営業税法改正ニ関スル件ハ五名ノ委員ヲ置ク、其委員ノ指名ハ会長ニ致サセテ宜カラウト云フ御意見ノヤウデゴザイマス、此動議ニ付テ採決致シマス、六十二番ノ説ニ御同意ノ御方ハ御起立ヲ請ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　総起立デゴザイマス、委員ノ指名ハ追テ申上ルコトニ致シマス

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第六八―六九頁　刊
　　　　○第一日
明治三十二年十月十一日午前十時四十五分開議
　　出席者
　　　委員　　　　五十一名　○氏名略
○上略
○会長（東京、渋沢栄一君）　○中略　ソレデハ今日ハ是デ閉会致シマス――只今段々此委員ノ御説ガゴザイマシテ、其委員ノ方々ヲ御指名致シマスガ、ドウモ頭ガ錯雑シテ参ツテ甚ダ窮シマシタ、航路補助金ニ関スル件、此委員ガ九名、遠藤敬止君・伊予田徳次郎君・井嶋茂作君・香川真一君・坪野平太郎君・宮里正静君・今西林三郎君・奥田正香君北村五郎兵衛君、此航路補助金ニ関スル委員ハ今申上ケタ九名ヲ御指名仕リマス　○下略

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第七二頁　刊
　　　　○第二日
明治三十二年十月十二日午前十時五十分開議
　　出席委員　　　　　五十六名　○氏名略
○上略
○会長（東京、渋沢栄一君）　皆様御苦労デゴザイマス、開会ニ先立チマシテ一・二御報告申シマスコトガゴザイマス、昨日決議ノ結果委員ノ成立致シマシタ此委員諸君ガ、今朝委員会ヲ開カレテ委員長ノ互選ガゴザイマシタ、其結果ヲ申上ゲマス、航路補助金ニ関スル件デ奥田正香君ガ委員長ニ御当選デゴザイマシタ　○下略

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第二三二―二六九頁　刊
　　　　○第四日
明治三十二年十月十六日午前十時二十分開議
　　出席委員　　　　　四十七名　○氏名略
 - 第22巻 p.393 -ページ画像 
○上略
○会長（東京、渋沢栄一君）　○中略　委員会ノ御報告ニナツテ居ル航路補助金ニ関スル件、此調査報告ヲ御報道シマシテ而シテ之ヲ議ニ付シマスヤウニ仕リマス、議案ヲ朗読致シマス
　　　（書記議案ヲ朗読ス）
　　　　航路補助金ニ関スル件調査報告
予テ全会ニ於テ附託セラレタル航路補助金ニ関スル件ニ付キ調査ヲ遂ゲ候処、委員会ノ意見ハ別記ノ通リ決定候間、此段及御報告候也
　　明治三十二年十月十三日
　　　　　　　　　　　　航路補助金ニ関スル件調査委員長
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　奥田正香
第八回商業会議所聯合会々長　渋沢栄一殿
（別記）
　　一、現在ノ内地沿岸定期海路ハ之ヲ保持シ、尚ホ北海道沿岸及北清ノ航路ヲ拡張スル事
　　二、定期航海ニ対シテハ、航路ノ難易、収支ノ損益ヲ調査シ、相当ノ補助金ヲ与フルコト
○十番（名古屋、奥田正香君）　只今議場ニ報告ニナリマシタ件ニ付キマシテ聊カ其理由ヲ陳述シテ置キマス、此航路補助金ニ関スル件ハ調査ヲ調査委員九名ニ御託シニナリマシテ討議致シマシタ概略ヲ申上ゲマス、既ニ此航路拡張航路補助金ニ関スル事ニ付キマシテハ、稍々趣意ハ異ツテ居リマスケレドモ、第一ニ仙台カラノ御提出、第四号箱館ノ御提出、第五号長崎ノ御提出、第十八号ノ大坂ノ御提出ハ、航路ニ関スルモノデアリマスルカラ之ヲ一纏メニシテ調査ヲスルヤウニト云フ議決カラ委員選定ニナリマシタカラ、之ヲ調査致シマシタ、其結果ガ爰ニ第一・第二トシテ只今御朗読ニナリマシタ如キ趣意デアリマスガ、最モ此沿岸航路ト申シマシテモ、即チ此外国ニ向ツテ何シテ居リマスル航路ガ四航路、全ク内海ノ沿岸丈ケガ七航路、詰リ十一航路、此航路ハ只今郵船会社ノ如キモ航海シテ居リマスル、之ハ此儘ニ持続シタイト云フ精神、ソレハ既ニ仙台商業会議所等ヨリモ提出案ニ陳弁シテアル如ク、丁度明治三十三年ノ九月ヲ以テ即チ特定航路ノ郵船会社ト政府ノ約定ガ満期ニナリマスノデ、シマスルト詰リ始終航路ニナリマスルカ其先キノ事ハ漠トシテ認メガ付カヌノデゴザイマス、何分今日ノ日本ノ未ダ沿海ノ航路上ニ於テハ、到底此補助金ヲ与ヘズシテ是マデノ定期航路ヲ保持スルト云フ事ハ甚ダ難イダラウト思フ、又寧ロ之ヲ拡張シマスルトモ此回数ヲシテ減ズルト云フコトニナリマスレバ、非常ニ此商工業上ノ発達ヲ妨ゲル丈ケノコトデハナイ、非常ナ退縮ヲ見ハシナイカト云フ心配ヲ致シマスル、故ニ此沿岸定期航海ハ是マデノ如ク致シテ居ル、若クハ是ヨリ増ストモ減ゼヌヤウニ致シタイ既ニ今日ノ総テノ航路ト雖モ即チ此回数ニ指定シテアリマスル、即チ郵船会社ハ政府ノ命令シタルヨリハ数回シテ居ルト云フ事デ、ソラドウシテモ増サネバナラヌノデアルカラ、命令書ノ通リスレバ今少シクシナクテモ宜イケレドモ増シタノデアルト云フ、郵船会社等ニ答《（問ヒカ）》ヘマシタ所デハ、答デアリマス、デ併シ然ラバ是マデノ如ク政府ハ即チ此
 - 第22巻 p.394 -ページ画像 
郵船会社ノ資本金八百八十万円ニ対シテ即チ八十八万円ノ補助ヲスレバ宜イノダガ、是ハ甚ダ分リ悪クイ問題デアラウト思フ、ト云フノハ此総テノ航路ノ上ニ於テ取調ヲシテ見マスルト、悉ク損失ニナツテ居ル趣デアリマス、併シナガラ其最初ノ時ハ損失ガ立ツテモ、段々此商工業ノ発達等ニ伴フテ損害ガ少クナツテ居ネバナラヌ筈ト速了ノ見解ヲ下シタノデアリマスカラ、郵船会社ノ当局者ニ対ツテ其辺ヲ尋ネタ所ガ、豈計ランヤ案外ノ答弁ヲ得マシタ、寧ロ此命令書ニ由テ航海ヲ始メタ時ヨリモ今日ノ方ガ却テ損失ガ多イ、決シテ問ハルヽ如キ、最初ニハ損失ガ甚ダシカツタガ漸次損失ガ少イト云フ方ニ往ツテ居ラヌソレハドウ云フ事デサウ云フコトニナルカト云ツテ承ツタ所ガ、全ク種々ナ原因モアリマスルガ、即チ此陸地ノ鉄道ノ発達カラサウ云フコトニナツタト云フコトデス、ソレデ貨物ノ上ニ付テノ数量ニ於キマシテハ、即チ明治十八年十月ノ創業ノ当時ヨリハ漸次増シテ来タガ、運賃ノ減ツタト云フモノハ、貴重品、嵩ノ少クシテ運賃ノ高イト云フ物ハ多ク鉄道ニ積ムコトニナリ、米デアルノ其他嵩高デ運賃ノ安イト云フ物ハ多ク船ヘ積ムト云フ有様ニナツタガタメニ、極ク最近ノ所ニ往キマスルト、平均額ノ損失額ヨリモ多クナツテ居ル、其平均ノ損失ト云フノハ明治十八年ヨリ三十二年ノ三月ニ至ル迄ノ即チ十四ケ年ノ損失ヲ平均シテ見ルト、丁度八十五万何ンボニナルトカ云フ事デゴザイマス、是等ハ詳シク述ベル必要ハゴザイマセヌガサウ云フ訳合、自分等ノ考デハ今日八十八万円ノ補助ナラバ今日以後五十万円ナリ若クハ六十万円ナリニ漸次減ジテ、商工業ノ発達ト伴フテ終ニ助成金等与ヘヌデ宜カラウト思ヒマシタケレドモ、ナカナカ目下ノ所ハサウデナイノデス、寧ロ前日ヨリハ今日ノ所ハ損失ガ増シタト云フ有様デアリマス、若シ此説明ニシテ果シテ違ハヌト云事ニスルト、到底郵船会社ニ限ラヌトシタ所ガ相当ノ補助金ヲ政府カラ支給セラレズシテ、今日ノ航路ヲ維持スルコトハ甚ダムヅカシカラウト認メタノデアリマス、故ニ到底今日迄ノ航路ヲ維持スルニ付テハ相当ノ補助金ヲセネバナラヌト云フコトニ決シタ訳デゴザイマス、デ現在ノ航路ハ維持スル、尚現在ノ航路ト雖モ回数ヲ増シタイト云フノデアルケレドモ、此航路モ増ス、尚北海道ノ航路モ増ス、北清航路モ拡張スルト云フコトハ一時ニムヅカシカラウ、故ニ願ハクバ此北海道沿岸ニ付テハ是迄ノ回数ヨリ増シテ十分此貨物ノ集散等ニ付キマシテ不便ヲ感ゼヌダケノ事ハシタイ、又北清航路ノ如キモ願クバ是迄ノ回数ヨリモ増シマシテ、即チ此日清海岸ノ貨物ノ輸出入ヲ全ク運漕ノ出来ルヤウニ致シタイト云フ趣意デ、即チ此現在ノ沿岸定期航海モ之ヲ補助シ、尚北海道沿岸及北清ノ航路ヲ拡張スルコトニ致シマシタ、ソレカラ前申上ゲマスル如クデアリマスカラシテ、定期航海ニ対シテハ相当ノ補助金ハ与ヘナケレバナリマセヌ、サリナガラ是迄ノ如ク単ニ八十八万円ト限ツテ受負仕事ノヤウニシテ補助スルヨリモ、即チ定期航海ニ対シテ或ハ此航路ハ相当ノ利益ガアル、是ハ時期ニ依ツテハ補助金ヲ与ヘヌデモ出来ル、此航路ハ困難デアルカラ是ニ付テハ是ダケノ補助ヲシナケレバナラヌト云フコトヲ、十分ニ調査シテ補助金ヲ与ヘルヤウニシタラ宜カラウ、又斯ノ如クスレバ郵船会社ノ外ノ大坂商船会社デアルトカ又他ノ汽船
 - 第22巻 p.395 -ページ画像 
会社ナドデ、船ヲ殖シタ暁ニハ必ズシモ郵船会社ニ命令ヲセラレヌデモ出来ヤウト思ヒマス、デ此航路ハ何会社ガ引受ケタガ宜イ、何航路ハドノ会社ガ引受ケタガ宜イト云フコトニナリマスカラ、今後ハ一般ノ航海業者ニ対ツテ今日定マツテ居ル定期航海ヲ維持スルニ付テハ相当ノ補助金ヲ与ヘルヤウニ致シタイト云フコトニ委員会デハ決シマシタ、デ尚固ヨリ此委員ニ於キマシテモ、直チニ此委員会ニ附託セラレタモノヨリ今日十分ニ此北清航路ノ拡張ナリ、其他ノ事ニ付テモ、提出者ノ意見ハ十分ニ分ツテ居リマセヌケレドモ、要スルニ定期航海即チ命令書ノ期限三十三年九月デ打切ツテ、其儘ニ放任シテ置クハ宜クナイト云フノデ斯ノ如ク致シマシタ、デ此委員会ノ報告ヲバ可決セラレタ事ナラバ、若干ノ起草委員ヲ選ンデ其起草委員ニ附託ヲシテ十分ナル趣意ヲ認メタモノヲ以テ決議ヲスル、其決議ノ書面ヲ各会議所ヘ持帰ツテ願ハクハ各地トモ同一ノ建議ヲ致シタイ、斯ウ云フ意思ニ外ナラヌノデゴザイマス、尚郵船会社等ニ就テ取調ベタ書類モアリマスカラ、御質問ニ対シテハ御答致シマスガ、併シ要スルニ此二箇条ヲ認メタノガ大体ノ趣意デアリマスカラ、此段御報告致シマス
○八番（金沢、山田清三君）　航路補助金ノコトニ対シテ委員会ノ決議ハ最モ賛成デアル、此際ニ於キマシテ少シ委員諸君ニ御求ヲシタイノハ、成程今御演説中ニ今一層航路ヲ拡張シタイ、併シナガラサウハイカナイト思フ、故ニ是迄ノ現在ノ航路ヲ保持シテ、或ハ北海道・北清ニ及ボスヤウニ拡張シタイト云フノハ御尤モナ次第デアル、ソコデ唯委員諸君ニ御求メヲシタイノハ、本年七月勅令第三百四十二号ヲ以テ新開港場ノ発布ニナリマシタ二十有余箇所ノ所ヲ是迄ニシテ、尚寄港シテ居ル個所モアリマスガ寄港セナイ箇所ガ多イノデス、此新開港場ヘ対ツテ郵船会社等ハ寄港スルコトヲ此所ヘ第一項加ヘテ願ヒタイ考ナンデス、ソレハ尤モ必要アツテ此新開港場ト云フモノガ勅令デ御発布ニナツタノデス、故ニ是レダケハ是非今度航路拡張ノコトニ対シテ御加ヘヲ、委員諸君ニ於テヤラレムコトヲ希望スルノデス
○十番（名古屋、奥田正香君）　只今八番ノ御説モゴザイマシタガ、実ハ其辺ノ事モ委員会デ御説ガ出マシタケレドモ、マダ此新開港場トシテ御指定ニナツタ個所々々ト雖モ、将来ニ於テ有望ノ地デモ未ダ今日ハ貨物ノ集散等ニ付テハ或ハ寄港スル必要ノ無イ場所モアリマセウ、又現ニ寄港シツヽアル場所モゴザイマスカラ、其辺ハ十分御議ニナツテ御加ヘニナラウトモ、委員会ニ於テハソレ迄ノ事ハ加ヘマセナンダ畢竟此北海道及北清ノ航路ヲ拡張スルト云フノハ申ス迄モナイガ、成程此新規ニ指定ニナツタ開港場其他ニモ十分寄港ノ度数ヲ殖スコトハ至極宜イ訳デアルガ、今日悉ク十分ニ目的ヲ達スルコトハ出来マセヌカラ、先ヅ何レヲ先ニスルカト云ヘバ、北海道ノ沿岸、北清航路ヲ先ニスル、続イテ漸次及ボスコトハ出来マセウガ、此場合ニ於テハ兎ニ角現在ノ沿岸ノ定期航海ヲ保持シタイ、此現在ト云フ文字ヲ掲ゲマシタノハ即チ此命令書等ニアリマスル回数デハナクシテ、現ニ今航海シツヽアル度数ヲ少クモ減ゼラレヌヤウニシタイト云フノデアリマス、本会ニ於テハ其辺ハ如何様ニ御修正ニナラウトモ、委員会ハ斯ノ如ク第一項ヲ極メマシタノハ右ノ訳合デ決定致シマシタ
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○三十八番（大坂、今西林三郎君）　私モ此航路補助金ニ関スル委員ノ御附託ヲ受ケテ其席ニ列ツタモノデアリマスガ、大体ニ於テハ委員長ノ御報告ニナツタ通リデゴザイマス、然ルニ其北清航路ヲ拡張ト云フコトヽ、ソレカラ北海道沿岸ト云フコトヲ拡張スルト云フ事ニ付キマシテハ、就中北清航路ニ付キマシテ私ハ言ヒタイト思ヒマスガ、是ハ既ニ十八号議案トシテ大坂商業会業所カラ差出シマシタ書面ガゴザイマスルデ、ソレニ理由ガ詳シク書イテゴザイマス、願ハクハソレヲ御朗読下サルコトニシタラ大変捗ガ往クト思ヒマスルシ、能ク尽サウト思ヒマスカラ別ニ申上ゲマセヌガ、元来此事柄ハ色々ノ種類ガアツテ唯趣意ガ違ハヌト云フコトデ一括シテ議ニ附スト云フコトニナツタノデアツテ、少シヅヽ違ツタモノモ皆一ツニナツタノデアリマスカラ、是ハ各々其御提出ニナツタ御方々ニ御意見ガアラウト思ヒマス、是ガ決議ニナリマス前ニ能ク此事ヲ御承知ニナツテ置イテ御議決ニナツタ方ガ宜カラウト思ヒマスカラ、其事ヲ述ベヤウト思ヒマスガ、或ハ朗読ヲナスツテ下サルカ、サウ云フコトニ願ヒタイト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　朗読サセタ方ガ却テ早クナルト思ヒマスソレデハ三十八番ノ御希望ノ如ク大坂カラ御提出ニナツタ理由書ヲ朗読サセマス
　　　〔書記議案ヲ朗読ス〕
　○議案第十八号　　　　　　　　　　　　大坂商業会議所提出
　　　○前掲ニツキ略ス。
○九番（金沢、阿部太右衛門君）　本案ハ私等ニ於テモ大ニ賛成ヲ表スル次第デアリマシテ、ソレデマア八番ガ述ベマシタ如ク、本年勅令デ以テ発布セラレマシタ二十幾箇所ガ近々ニ出来、又貿易港ト云フモノニ対シテ固ヨリ寄港ヲシテ貰ウト云フコトニスルノハ最モ必要ダラウト本員ハ考ヘルノデ、此新開港ト云フモノハ、五箇年以内カ三ケ年以内デスガ、五万円《（噸カ）》ノ輸出入ガナイト廃港ニシテシマウト云フ厳シイ事柄ガアルノデ、固ヨリ物産ノ集散ニ付テハ運輸ヲ敏活ニスルト云フコトハ固ヨリソウナラナクチヤナラヌコトデアル、一方ニ結好ナ港湾ガアツテ之ヲ利用スルニハ相当ノ機関ガナクテハ到底行カヌノデ、又私等ノ近港カラ言フテ見ルト、長尾港ノ如キハ随分結好ナ港湾デアリナガラ、其近傍ニハ相当ノ汽船ヲ有シテ居ル人ガナイノデ、到底之ヲ盛ンニスル時分ニハ、一方ニ完全ナ監督ヲ与ヘテ運輸ノ便ヲ図ツテ貰ウト云フノハ最モ大事デ、長尾港ノミナラズ一般ニ今日指定セラレタ所ノ貿易港ハ最モ将来ニ望ミアリトシテ指定セラレタモノデアルカラシテ、必ズヤ之ニ対シテ定期ノ航海ヲシテ物産ノ運送ヲ敏活ナラシムルコトハ最モ大切ナコトデアリマスカラ、ドウカ調査委員ノ御調ベモ大ニ了解致シマシタガ、此第一項ハ固ヨリ此通リデ宜イノデゴザイマスガ、此所ヘ一ツ御加ヘヲ願ヒタイ、ソレデ現在ノ内地沿岸定期航海ハ之ヲ保持シ、尚ホ明治三十二年七月勅令第三百四十二号デ全国貿易港ニ指定セラレタル各港及北海道沿岸並ニ北清航海ヲ拡張スルコトト云フコトニ改正ヲセラレンコトヲ希望致シマス、ドウゾ各員モ御同意ヲ願ヒマス
○十七番（阿波、根本民治君）　十七番ハ調査委員ノ起草セラレタ案ニ
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賛成致シマス、段々八番ナリ九番ナリノ希望モアリマシタケレドモ、是非之ヲ此際ニ入レナケレバナラナイト云フ訳デモアリマスマイ、未ダ之ハ日モ浅イ、又此新航海ガ本年一回ト云フコトデモナイヤウデ、ソレ等ノ貨物ガ果シテ集散上ニ今日ノ場合ニ非常ノ不便ヲ与ヘルカ否カト云フコトハ、今少シク時日ヲ経ツタ方ガ却テ八番・九番ノ目的ヲ達セラルヽニ利便ニナラウト思ヒマス、先ヅ今日ノ所デハ調査委員ノ報告ヲ以テ私ハ可ト認メテ居リマス
○六十番（湊、鹿志村亀吉君）　此只今委員会ノ御報告モゴザイマシタ定期航海補助金ノ件デゴザイマスガ、只今大坂会議所ヨリ御提出ニナラレマシタ意見書モ御朗読デ拝承致シマシタ、デ此航海ノ補助ト云フコトニ付キマシテハ最モ各員ト共ニ不肖本員モ賛同ヲ致シマスル考デゴザイマス、併シ委員長ノ奥田君ヨリ御報告アラレマシタ一項ノ事ニ八番ノ御質問ガアリ、十番ノ御答ガゴザイマシタヤウニ拝聴致シマシタデ、今日ノ内地ノ航路ト云フモノガ果シテ十分完備シテゴザイマセウカト申シタナラバ、満場ノ多数ノ諸君ハ未ダ不完備デアルト御認メニナルダラウト考ヘマスデ、只今三十八番ヨリ未ダ其辺ノ事ハ時機ガ早イダラウト云フヤウナ御注意モゴザイマシテ、北清航路一方ノ事ニ大分重キヲ措イテ御説ガゴザイマシタヤウデゴザイマスケレドモ、併シ商業会議所ノ聯合会ト致シマシテハ商業ノ隆盛ヲ図リ、若クハ衰頽ヲ挽回サレルト云フノガ、即チ条例ノ四条デ政府ガ重キヲ措クデアラウト思ヒマス、デ今日ノ内地ノ沿岸ノ航路ト云フモノガ完備シテ居ルト斯ウ満場各員ガ御信認デゴザイマシタナラバ已ヲ得マセヌ、併シサウデアルマイト本員ハ考ヘマス、然ラバ明年九月ヲ期シテ日本郵船会社ハ補助金ノ期限ガ満了シマスルモノトシマスレバ、内地ト雖モ必要ト認メル所ノ地方々々ヘハ日本郵船会社ヲシテ寄港及入港或ハ出張所モ置カレル、斯ウ云フコトハ本議会ノ意見トシテ政府ニ請願スルコトハ相当ノ処置ト考ヘマス、若此内地沿岸定期航海ハ之ヲ保持シ、尚北海道沿岸及北清航路ヲ拡張スル件ト云フコトニナリマスルト、是マデノ内地ノ定期航路ト云フモノハ十分ソレデモウソレヲ継続シテ行ケバ完備シテ居ルト云フ見込デアレバ仕方ガアリマセヌガ、決シテサウデナイ、本会ガ其意志ヲ以テ建議・請願ヲ致シマシタ所ガ或ハ技術上ノ関係モアリ、或ハ物産ノ多少ニモ依ルノデアリマセウシ、其他数多ノ取調ベハ要スルモノト存ジマス、併シナガラ未ダ此内地沿岸ノ航路ト云フモノハ悉ク完備シタモノトハ信ジ難イヤウニ思ハレマスカラ、ドウカ第一項ハ之ヲ内地ヘモ寄港増設スルヲ必要ト認メル場合ハ拡張スルト云フ、サウ云ウ趣意ヲ以テ満場ノ諸君ノ賛成ヲ得テ加ヘテ置タイト本員ハ考ヘテ居リマス、単ニソレ丈ケノ意見ヲ述ベテ置キマス
○五十九番（酒田、鈴木喜八君）　本員モ調査委員ニナリマシタ一人デアリマシテ、委員長十番カラノ報告デ十分意ヲ尽シテ居リマスケレドモ、六十番或ハ八番等ノ御意見ガゴザイマスカラ一応申シマス、只今六十番カラ内地沿岸ノ定期航路ヲ今一層拡張シタ方ガ宜イト云フ御説ガゴザイマシテ、如何ニモ御尤デゴザイマス、併シナガラ今日中々国事多端ノ時期デアリマスカラ、自ラサウ充分ナ事ニハ参リマセヌ、デ北清航路ノ拡張ヲ希望シマスト云フノハ、今日北清ノ貿易ノ前途好望
 - 第22巻 p.398 -ページ画像 
ナル事、且又欧米各国、露西亜ノ如キハ非常ニ東洋航路ヘ補助シテ居ルト云フヤウナ事デ、内地沿岸ノ是マデノ航路ハ一週二回ノモノヲ或ハ三回・四回ニ拡張致シタイコトハ本員ノ希望デアリマスケレドモ、吾々ガ第一項ヲ必要ト認メマシタノハ、是ガ所謂今日ノ補助金額ガ期限ガアリマシテ、或ル今日ノ一般ノ論者ノ如ク政府ニ於テ補助セヌト云フコトニナリマスト、営利会社デアリマスカラ間ニ合ハヌ所ニハ定時航海ヲ中止スルト云フ場合ニナリマス、左様ナ場合ニナリマスト、是マデ折角発達シタ産業ナドニ於テ一大頓挫ヲ来シマスカラ、是非定期航海ハ必要デアル、必要ト認メマスル以上ハ今日吾々ニ於キマシテハ各線路トモ充分収支相償ウトハ認メラレヌ、故ニ相当ノ補助ヲ調査ノ上与ヘラレンコトヲ希望スルト云フノデ、是非一ツ委員会ノ調査ノ如ク御賛成ヲ願ヒタイ
○六十二番（東京、中野武営君）　私ハ此問題ニ付キテハ、中々チヨツト考ヘガ定メ兼ネマスガ、考定メラレヌカラト云フテ已ムコトハ出来マセヌ、随分之ハ帝国議会ノ大キナ問題ニナルノデアル、今此内地沿岸ノ定期航海ノ上ニ付キテ、色々鉄道ノ開ケマシタ事カラシテ以前ト変化ヲ来シテ、以前ハ大変航路ノ儲ケノアツタ所ガ今日ハ儲ガナイト云フ所モアラウシ、又其外ニ却ツテ航路ノ宜イ所モアルト云フコトハ即チ変化ガ年々ノ進歩ト共ニ来ルニ相違ナイ事実デゴザイマスガ、ソレニ付イテ今此保護ト云フモノニ付テ、保護ヲ一ノ会社ト云フモノニ特ニ保護ト云フモノガアルト同時ニ、其保護ヲ受ケテ航海ヲスルガ為ニ、他ニ又此営業ヲシマスル郵船ト云フモノガ、遂ニ其航路ト云フモノニ抵抗スルコトガ出来ズシテ、成立タズシテ行クト云フヤウナコトガ実際ニアリハセヌダラウカ、固ヨリ定期ト云フモノハ、少シ検束シタ事柄ナンデゴザイマスカラ、必ズ随意ノ航海トハ違ヒマスカラ、幾分カ違ウベキ筈ノモノデゴザイマスケレドモ、兎ニ角モ一会社ト云フモノニ保護ト云フモノガ出来テ居リマスト云フト、他ノ独立シテヤリ居ル所ノ郵船ト云フモノガ、ソレニ抵抗スルコト出来ズシテ、何時モ其船ガ敗ヲ取ル位ノコトニナツテシマウコトハ事実デアル、之ヲ私ハドウ云フ事実ノモノダラウカ一向迀遠デ心得兼ネルノデアリマスガ、此諸君カラ御出ル御方ノ中デ現在心得ヘテ居ル御方デ其傾キハドウナツテ居ラウカ、尤モ郵船会社ノ補助金ハ依然トシテ八十八万円トシテアルヤウナモノデアリマスカラ、ドウナツテ居ルカ知レマセヌガ、是カラ先ハ此委員会ノ御報告ノヤウニ、航路ノ難易ニ応ジテ補助金ヲ与ヘルト云フコトニシタ方ガ宜カラウト云フ御注意デアルカラ、成程ソコデ大分事ニ区別ガ附クノデアルガ、併シナガラ今申スヤウナ懸念ガ一ツアリハセヌカ、日本ト雖モ是カラ先キハ随分船モ沢山出来テ、少シハ競争シタ力ヲ持ツテシナケレバ到底行カナイ、政府ノ補助許リデ成立ツモノデハナイ、随分是カラ外国ヘ対スル所ノ外ノ国々ト競争ヲサセニヤナラヌ、ソレノ力ニ抵抗ヲシテ行ク丈ケニソレゾレ力ヲ用ヰテ尽シテ行カンナラヌト云フ時機ダラウト思フ、ソレト同時ニ内地ノ事ト云フモノハ日本ノ内輪ノコトデアリマスカラ、彼ノ競争者ガ互ニ起ツテズンズンヤツテ往ケルヤウナコトニシタイ、郵船会社ノヤウナ大キナ会社デアレバ内地ハ勿論ノコトデアリマスケレドモ、重モニ海
 - 第22巻 p.399 -ページ画像 
外ノ方ヘ力ヲ尽シテ往クト云フ寸法ニナラヌトイカヌト思ヒマスデ、実際ハドウ云フモノデアラウカ、内地ノ航路ニ付テ一ノ会社ト云フモノニ保護ヲスルト云フト他ノ商船ト云フモノヽ発達ニ妨ハアリハシナイカ、甚ダ私ハ迀遠ナ漠トシタ御尋ネヲスルヤウデアリマスガ、実際其辺ノ御研究ハドウカ伺ヒタウゴザイマス
○三十八番（大阪、今西林三郎君）　只今六十二番ヨリ御尋ネノ事柄ニ付キマシテ私ハ一言申述ベテ置カウト思ヒマス、是ハ事ノ大小ニ由ツテ違ウコトデアリマスカラ一概ニ私ハ六十二番サンノ満足ヲ得ルトハ思ハヌ、唯御参考迄ニ一言申述ベテ置キタイノハ、或会社ニ保護ヲシタナラバ他ノ運漕業者ガ害ヲ受ケル、ソレガタメニ発達ヲ妨ルト云フコトガアリハセヌカト云フ御懸念ガアルヤウデスガ、郵船会社ノ如キ大会社デアレバ抵抗ガ出来ヌカ知レマセヌガ、少シ小サイ例ヲ挙ゲテ云ヘバ大阪商船会社デアリマス、是ハ明治十七年ニ創業ヲシテ、其時分ニドウ云フ工合ニ成立ツタカト云ヘバ、既ニ多数ノ船持ガ競争ヲシテ倒レントシタトキニ、大阪ノ広瀬宰平ト云フ人ガソレヲ憂ヘテ合併シテ一ノ会社ニシタイト云フ段々話ヲシテ、ソレガ到頭二・三年モ掛カツテ一纏ニシタ、即チ大阪カラ関西・九州地方ヲ廻ツテ居ツタ船ヲ一纏ニシテ、而シテ一団体ノ商船会社ヲ拵ヘタ、其時ニハ一艘ノ残リモナカツタノデス、悉ク蒸汽船ト云フモノハアノ辺ヲ通ツテ居ルモノヲ皆纏メテ一団体ニシテ商船会社ヲ拵ヘタ所ガ、其纏メタアトデボツボツ出来テ営業ヲシテ居ル、俄ニ船ノ改良ヲスルトカ何ントカ云フテ政府ニ請願ヲシタリ或ハ政府モ亦郵便運送等ノタメニ使ウコトニナツテ、兎ニ角ソレニ命令ヲシテ四十万円ノ金ヲ遣ツテ船ヲ改良サシタ、其代リ定期航海ヲ開ケト云フコトデ開イタ、其時分私モ其会社ニ居リマシタガ、定期航海ヲ開クト同時ニ他ニ船ガ出来タ、何故船ガ出来タカト云ヘバ、此商船会社ノ船ハ定期航海デアリマスカラチヤント時間ヲ定メテ出ル、荷物ガ其処ニ来テ居ツテモ客ガ来テ居ツテモ構ハズ捨テヽ時間通リ出テシマヒマスカラ、其後ヘ廻ツタリ先ヘ廻ツタリシテ利益ヲ見ル、其商船会社ノ船ガ一艘出レバ大変利益ガアル、ソレハ皆商船会社ノ定期航海ノ影響カラ利益ヲ得テ居ル、ソレハ定期航海デ時間通リ出ルカラサウナル、時間ヲ一時間待テバ斯ウ云ウ荷物ガアル、アー云フモノガアルト云フ事ト分ツテ居リツヽ、命令ノ時間通リニ出ナケレバナラヌカラサウ云フ風ニナル、ダカラ其先ヘ廻ツテモ利益ガアルシ、又時ニ依ツテハ後ニ待ツテ居ツテ其荷物ヤ客ヲ取ルノデアリマス、サウデアルカラ大変ナ利益ヲ其間ニ居ツテ得テ居ルノデアリマス、利益ガアルモンダカラ先操々々船ガ出来テ、今日ハ明治十七年ニ纏ツタ商船会社ノ船ヨリハ多イ程ノ船ガ出来テ既ニ航海ヲシテ居リマス、尤モ商船会社ノ方モ台湾航路トカ或ハ長江航路トカ云フ方面ニ対ツテハ航路ノ拡張ヲシテ、相応ノ保護ハ得テ居リマスケレドモ、恐ラクハ其保護ヲ受ケタヨリハ自由ニ自分ノ好キナ所、荷物ノアル所ヲ航海シタ方ガ利益ダラウト私ハ思ツテ居ルノデアリマス、ソレデ影響ハドウ云フ工合ニ来テ居ルヤト云ヘバ、今申ス通リ年々其反対船トカ別派船トカ云フ商船会社以外ノ船ガ出来テ、終ニ今商船会社ノ方ノ船ハ七十艘バカリノ船ガアリマスガ、其以外ニ於テモ寧ロ商船会社ノ船数
 - 第22巻 p.400 -ページ画像 
ヨリ増シテ居ルト云フ有様デアリマス、之ヲ以テ見マスト決シテ害ドコロデハナイ、却テ其タメニ他ノ航海ヲスル営業者ガ増シハセヌカト云フ考ヲ私ハ持ツテ居ルノデアリマス、併シソレハ郵船会社ニ較ベテ見ルト商船会社ハ小サクシテ直ニ真似ガ出来ルト云フ訳デ、其間ニ立ツテ航海ヲスルヤウニナルカ知レマセヌガ、商船会社モ段々大キクナツテ反対船モ亦段々大キイ船ヲ拵ヘ、既ニ三千噸若クハ二千五百噸ノ大キナ船ガ出来テ居リマスカラ、恐ラクハ此保護ヲシタガタメニ害ヲ受ケテ発達ヲセナイト云フヤウナ心配ハナイノミナラズ、寧ロ却テ其発達ヲ助ケルヤウニナリハセヌカト云フ考ヲ、私ハ持ツテ居ルノデアリマス、殊ニ又今度此吾々ガ調査ヲ致シマシテ御報告ヲシタ是迄ニ八十八万円ト云フモノヲ政府ガ郵船会社ニ遣ツタト云フコトニ付テハ、遣リ方方法ハ私共ハ最早今日ハ当ヲ得テ居ルモノデアルマイ、一会社ニ保護ヲスル何会社ニ保護ヲスルト云フコトデナクシテ、其航路ヲ能ク取調ベテ其航路ノ収支計算等ヲ調査シテ、ソレニ対シテ保護ヲ与ヘルヤウニシ、商船会社ガ其保護金額デヤラウト云ヘバ商船会社ニヤラス、其他何会社ナリ其航路ニ対シテ、相当ノ船ヲ持ツテ居ルナラバソレニヤラスルト云フ風ニシタ方ガ宜カラウト云フ考ヲ以テ調査ヲシタノデアリマス、決シテ郵船会社ニ保護ヲスルト云フ趣意デナクシテ、定期航海其モノニ保護ヲスル、定期航海ヲ益々盛ンナラシメルト云フ趣意デゴザイマス、六十二番ノ御照会ノゴザイマス所ハ、私ガ只今申上ゲマシタコトガ果シテ御参考ニナルカ否ヤハ存ジマセヌガ、事ニ大小ガアリマスカラ或ハ当嵌ラヌカ知レマセヌガ、兎ニ角自分ノ思フテ居ル所ヲ御参考ニ申上ゲタ次第デゴザイマス
○番外二十番（金沢、伊藤鏢三郎君）　私ハ此問題ニ付キマシテハ、先刻私ノ方ノ代表委員ガ述ベマシタ通リニ、玆ニ皆サンニ御採用ヲ願ヒタイト思ヒマスカラ、御参考迄ニ一言申上ゲテ置カウト思フノデス、此新開港場ニ付キマシテハ、御案内ノ通リ此二ケ年内ノ輸出入額ガ五万噸若クハ七万噸ニ達シナイ時ハ其港ヲ鎖スト云フコトニナツテ居リマス、ソレデ今日ノ有様デ見マスルト此二ケ年内云々ト云フ条件ハ今日ノ有様デハ殆ド不能ノ条件ト云ツテ宜イ、或港ハ暗礁ガアルトカ、或港ハ浪ガ高イトカ云フタメニ、相応ノ貨物ガアルケレドモソレヲ積ムコトガ出来ルダケノ船ガ出入セヌト云フ所ガアルノデス、又或所ハ未ダソレ程ノ貨物ガナイタメニ来ナイカモ知レマセヌガ、兎ニ角其多クハ寧ロ貨物ガアツテモソレニ出入スル船ノ力ガ足ラヌト云フコトモアルノデス、サウ云フ次第デアリマスカラ、今日ノヤウナ有様デ居ツタナラバ二ケ年云々ノ条件ト云フモノヲ、五年ナリ七年ナリ若クハ十年ナリ先ヘ延シテモ、此五万噸以上ニ達スルコトガ出来ヌカモ知レヌト云フ場合ニナラヌトモ言ヘヌト思ヒマス、ソレデアリマスカラ既ニ政府ニ於テモソコ迄目ガ着イタナラバ――此補助金ガ若シ出マスルナラバ、寧ロ新開港場ニ船ヲ廻スコトニ補助ヲスルト云フコトニハ異議ハナイト思ヒマスカラ、ドウゾ其事ヲ御加ヘニナランコトヲ希望致シマス、サウスレバ一方ニ於テモ其処ニ船ガ廻ツテ会社ニ利益ガナイトシテモ私共何カ其方法ハアラウト思フ、或ハ荷物ヲ集メルトカ、或ハ暗礁ノアル港ナラバソレヲ破礁スルト云フコトモアラウト思ヒマスカ
 - 第22巻 p.401 -ページ画像 
ラ、兎ニ角彼ノ新開港場ヲ全キモノニシタイト思ヒマスカラシテ、ドウゾ諸君ニ於テ此案ノ修正ニ賛成アラムコトヲ希望致シマス
○二十四番（函館、伊予田徳次郎君）　只今六十二番カラシテ一ノ会社ニ保護ヲスルト云フコトニ付テハ、或ハ他ノ会社ガ迷惑ヲスルデアラウト云フヤウナ説モアリマシタガ、一応御尤モデアル、ソレニ付テハ三十八番カラシテ十分御説明モアツタヤウデアリマスカラ、六十二番ハ御承知デアラウカトハ思ヒマスガ、唯保護ト云フト聞エガ悪ルイヤウデアルケレドモ、是レ是レノ仕事ヲスルニハ是ダケノ補助ヲシテ遣ル、斯ウ云フコトニ付テハ別段差支ハナイ、郵船会社ニ限ラヌ、ドノ会社デモ構ハヌ、ソレダケノ仕事ヲシテ、若シ収支計算ヲシテ損失ガアツタナラバ補助ヲシテ遣ルト云フコトニ付テハ異議ハアルマイ、又定期航海ヲスルコトハ吾々ハ述ベル迄モナク満場諸君能ク御承知デアラウ、唯通フ船ヲ置イテソレデ事ガ足リルコトデナイ、ソレデ若シ損失ガアレバ補助スル、若シ定期航海ノアツタ場合ニ之ヲ補助セナイト云フコトニナツタナラバ、郵船会社其他ニ於テモ利益ノ有ル所ハ航海ヲスルダラウガ無イ所ハ決シテ往クモノデナイ、私ハ北海道ニ居リマシテ北海道ノ事ヲ言フハ何カ我田引水ノヤウデ甚ダ聞エガ悪ルイカ知レマセヌガ、又国家ノタメニ北海道ニモ定期航海ヲ開イテ居ル、之ヲ尚従来ノ回数ヨリモ十分ニ増シテ貰ウ、是迄沿岸ニシテ航海ヲシナイ所ハ十分定期航海ヲ開イテ貰ヒタイト云フ考ヲ持ツテ居リマスデ、此事ハ唯吾々ハ北海道ニアツテ北海道ノ事ヲ言フノミナラズ、実ニ国家ノ大ナル利益デアルカト考ヘル、北海道ハイツ迄モ今ノ有様デ置イタナラバ国防上其他、陸ナリ海ナリ其産物ヲ運ブニ於テ実ニ不便ヲ感ズル、故ニ十分ナル定期航海ヲ開イテ、サウシテ荷物ノ運搬ニ宜シク便利ヲ与ヘテ貰ヒタイト云フ考、之ヲ早クシナイト唯北海道バカリデナイ日本全体ノ不利益デアル、今六十二番ハ議会ニ於テモ大問題デアルト云フ考デアルカラチヨツト聞クト仰セラレタガ、実ニ御尤モナ訳デアリマス、外国航路ト競争シテ内地ノ事ハ棄置ク、是ハ宜クナイ、内地ノ商業ヲ発達セシメントスルニハ外国ノ事バカリヤツテ居ツテハイカヌ、外国ノ事ヲヤツタバカリデ内地ノ事ヲ発達セシメナケレバ実ニ馬鹿々々シイコトデアラウト考ヘル、殊ニ此商業ハ瞬間ヲ争フモノデアリマスカラ、ドウモ其不定期ナドハイカヌ、尚従来ヤリ来ツタモノヨリモ陸ナリ海ナリ十分便利ヲ与ヘ、此日本ト云フ国ガ十分ナル発達ヲスルコトヲ望ムモノデゴザイマス、今日ノ場合北海道――私ハ函館デアリマスガ、函館・小樽等ハ既ニ定期航海モ開ケテ船モ通ツテ居リマスガ、産物ノ出来マスル時期ニナルト船ガ足ラヌデ誠ニ荷物ノ積載ニ困ツテ、航海ノ度毎積残リニナルヤウナ訳デアツテ、殆ド困ツテ居ルヤウナ訳デアリマスカラ、ドウカ願ハクハ一層便利ヲ与ヘテ北海道ガ是カラ余リ内地ノ御厄介ニナラヌヤウニ願ヒタイト思ヒマス、保護ト云フト何ンダカ聞エガ悪ルイヤウデ、満場諸君或ハソレ等ノ事ニ付テ否決スルト云フヤウナコトハナイトハ認メテ居リマスガ、ドウカ本件ニ付テハ満場一致ヲ以テ御賛成アランコトヲ希望致シマス
○十二番（神戸、横田孝史君）　採決前ニチヨツト委員長ニ御尋ネ致シマス、私共大体ニ付キマシテハ本案ノ如キハ已ムヲ得ナイ所ノ案デア
 - 第22巻 p.402 -ページ画像 
ラウト思ヒマス、考ヘテ居リマスデ、此御尋ネヲシマスルノハ調査報告書ノ第一項現在ノ内地沿岸定期航路ハ之ヲ保持シ、則チ内地ノ分ハ先ツ従前ノ通リ之ヲ保持スルト云フコトガ少シク分ラナイ、先刻委員長トシテ委員会ノ経過御報告中ニモ承ツタヤウニ思ハレマス、近頃此汽車ノ延長、鉄道ノ開通ニ付テ運輸交通ノ上ニ於テ自然ノ変化ヲ来シテ居ルト云フ御話ガアル、固ヨリ将サニ然ルベキ事デアラウト思ヒマス、デソレデ或ル部分ハ仮令ヒ保護金ヲ与ヘテモ定期航海ヲ為サシメナケレバナラヌ所ガアツタケレドモ、此鉄道ノ延長即汽車ノ開通ニ付テハ陸路ノ便利、最早此海運ニ補助ヲ与ヘテマデ其必要ガナイト云フ結果ガ自然得ラレサウナモノデアラウト考ヘル、又ソレト同時ニ数年前マデ必要ヲ感ジナカツタガ、今日ニ於テハ補助金ヲ与ヘテ置イテモ定期航海ヲ開カシメナケレバ出来ヌ必要ノ場所ガアルダラウト云フ考ヲ持ツテ居ツタ、然ルニモ拘ラズ唯ダ内地ノ分ハ何ニカ為シニ漫然従前ノ通ニ保護サヘスレバ宜イカト云フ趣意ガ御尋ネノ要点、ソレカラ北海道沿岸ノ事ハ極メテ必要ヲ感ジテ居リマスガ、之ハ既ニ他ノ諸君中カラモ御話ガアツタヤウデ、又此第一項中ニモ其事ハアリマスデ、最モ我ガ日本ニ於テ既往ニ於テ且ツ将来ニ向ツテ必要ナルノハ即チ清国貿易デアル、然ルニモ拘ラズ此北清ト云フモノニ対シテハ必要デアルガ、南清ニ向ツテハ必要ガナイト云フ御話デハナカツタヤウデスガ唯単ニ此北清ト云フコトニノミナツテ居リマスデ、是ニ付テ此最モ御参考物トシテ見ルベキモノハ特ニ此朗読ヲ何誰カ御請求ニナツタ十八号議案ノ理由書ニ依ツテ見ルト、凡ソ委員会ノ意向ハ此辺デアツタラウカト云フコトヲ察スルコトガ出来ル、其理由ノ要点ニ依ツテ考ヘテ見ルト、例ヘテ言ヘバ南清・北清ト云フノニ仮リニ爰ニ区別ヲ附ケテ考ヘテ見マスルト、既ニ何誰カノ御説ノ中ニモゴザイマシタ通リ、文明ノ程度ニ於テ余程ノ相違ガアル、其比較的半開地方トモ見ルベキ北清ニ向ツテ航路ヲ開クト云フコトハ大ニ必要デアル、南清ノ方ハ比較的ニ於テ文明ノ地域デアルガ故ニ、保護金マデ与ヘテ此事ヲシナクテモ宜カラウ、恰モ東海道線ハ寧ロ此事ヲ後日ニ廻シテ置イテモ、中仙道線ヲ―之ハ鉄道ニ今例ヘテ申セバ、必要デアルト云フガ如キ意味合ノ如ク察セラルヽデ、私共ノ考デハ北清ニ向ツテ航路ノ必要ガアルト同時ニ、更ニ一層内地ニ向ツテ必要ガアル、ト云フモノハ彼ノ台湾トノ関係、若クハ南洋諸島トノ関係、厦門ノ如キハ既ニ其境域六箇国ノ六大列強ニ接シテ居ルト云フ如キ今日ノ有様デアル、故ニ貿易ノ中枢トモアルベキ場所デアル、既ニ台湾ニ向ツテハ政府ノ保護金ヲ与ヘテ定期航路ヲ開ケテアリマスケレドモ、彼ノ基隆ノ築港ナリ或ハ縦貫線トモ見ルベキ台湾鉄道ノ開通ヲ見ルマデハ基隆ニ向ツテ定期航路ヲ開ケバ便利ノヤウデアリマスガ、試ミニ実地ニ臨ンデ見ルト台湾ニ於ケル中央部トモ見ルベキ台北・基隆トハ僅々二十哩内外デアルニ拘ラズ殆ンド其海運ニ於ケル運賃ノ更ラニ三分ノ一位ノ運賃ヲ払ハンケレバナラヌト云フ、斯ウ云フヤウナ有様デ、大抵需要品及供給品ハ厦門乃至福州若クハ香港等ニ向ツテ関係ガ繋ツテ居ルト云ウヤウナ今日デモ有様デアル、ソレデ如何ニモ中仙道ハ不便デアルカラ先キニ鉄道ヲ敷カセナケレバナラヌ、先ツ東海道ハ馬車人力モアルカラ此鉄道ハ次ギ
 - 第22巻 p.403 -ページ画像 
ノ問題ニ廻ハシテ置ケバ宜カラウト、斯ウ云フヤウナ意味合デアリハシナイカト思ヒマス、理由書ヲ参考ニ特ニ朗読ニナツタ点カラ考ヘテ見ルトサウ思レル、果シテ然ルヤ否ヤ、此点ニ付テチヨツト御答ヲ願ヒタイ
○十番（名古屋、奥田正香君）　只今十三番カラ御尋デ、最モ此現在ノ定期航海ハ是マデノモノデ非常ナ満足デアル、非常ナ完全ナモノデアルトハ委員ニ於テ認メナイ、ソレハ既ニ先刻モ説明シタ通リデアリマス、デ固ヨリ此数年間ノ中ニ変遷ヲ致シテ居リマシテ、或ル航海ニ於キマシテハ損失ハ増シ或ル航路ニ於テハ損失ハ減ジタト云フ航路モアリマセウ、ソコデ唯ダ全体ノ定期航海ハ之ヲ保持ト云フノハ定期航海ヲ保持スルノデ、決シテ是マデノ如ク八十八万円ト云フ金ヲ限ツテ郵船会社ニ向ツテ補助スルト云フ精神デハナイ、第二ニ航路ノ難易、収支損益ヲ調査シト云フノガ、即チ変遷シタノガ其場合ニ於テ所謂相当ノ補助金ヲ与ヘルト云フコトデ御了解ヲ下サラウト思フ、ソレカラ又北清航路ノ拡張ト云フガ、何故ニ南清航路ノ拡張トハ言ハナイカト云フ、恰モ東海道ハ馬車・人力車ノ便ガアルカラシテ敷クニ及バナイガ須ク中仙道ニ敷クト云フヤウナコトデハアルマイカト云フ御尋ネデアリマスケレドモ、成程取リヤウニ依ツテドウデモ趣意ハ取レマセウガ兎ニ角南清航路ニハ相当ニ単リ日本ノ定期船ノミデナク外国船モ通ウ所デアリマス、デ今日北清航路ノ如キ甚ダシキ不便ハナカラウト思ヒマス、是モ又何方ラヲ先キニスルト言ヘバ、北清航路ヲ先キニシタイト言フ委員会ノ決議デ、固ヨリ南清航路・北清航路総テノ所ヲ悉ク定期船デ十分ニ不便ナカラシムルト云フコトハ、固ヨリ出来得ベクンバ非常ナ宜シイコトデアリマスカラシテ、之ハ御尋ネマデモナク委員会ニ於テモ委員一同希望スル所デアリマス、併シ物ニハサウ悉ク満足ト云フコトハ出来マスマイ、又是モ費用ナクシテ出来ルコトナレバデゴザイマスケレドモ、数十万若クハ数百万円ノ費用ヲ費サナケレバナラヌコトヲ今日ノ財政上、若クハソレハ政府ノ考ニアルカラシテ、商業会議所ハ須ラク希望丈ケ述ベテ置キサヘスレバ何ンナ広大ナ建議ヲシテモ宜イト云フ事デアレバドウデモ述ベラレマスケレドモ、願クハ実効ヲ収メヤウトスルニハ不便ナガラモ忍ブベキ所ハ忍ンデ、忍ブベカラザル所ハ大ニ拡張スル、デ拡張シテ然ル後ニ一歩々々進ンデ遂ニハ目的通リナラシメタイト云フ事ハ、何人ト雖モ之ヲ望マヌ事ハアリマセヌ、即チ現在ノ内地沿岸定期航海命令書ニ記載シテアル度数ヨリハ今日ノ実際ニ於テハ増シテ居ルガ、命令書通リノ度数デハ行ケナイカラ少ナクモ今日ノ実際ノ度数ニ毎年シタイ、併ナガラ為シ得ベクンバ殖ヘルヤウニシタイ、ソレハ望マシイ事デアルケレドモ、前後ヲ言ヘバ北海道ノ沿岸及ビ北清ノ航路ヲ先ツ先キニ拡張シタイノデアル、ソレデソレガ出来タ上ニ又引続イテ第一沿岸ノ各航路回数ヲ増スナリ、又先ニモ何誰タカ御述ノ如ク各指定セラレタ貿易港等ニ此目的ヲ極メテ或ハ為ニ航路ヲ開クト云フヤウナコトモ必要デモアリマセウ、一トシテ此定期航海ノ度数ヲ増シ、又新タニ拡張スルト云フ事ニ付テハ委員会ハ少シモ不同意ハナイ、唯ダ此実行上ニ於テドウデアラウカト云フ事ヲ図ツテ此ノ如ク出シタ訳ト御承知ヲ下サイ、決シテ東海道ハ捨
 - 第22巻 p.404 -ページ画像 
テヽ置イテ中仙道ニ鉄道ヲ敷クト云フノデハナイ、詰リ北清ノ方ニモ南清ノ方ニモ殆ンド鉄道ハ出来テ居ル、ソレヲ回数ヲ増ストカ或ハ一日三回発シタモノヲ五回ニスルトカ、五回ヲ十回ニスルトカ云フノデ此拡張ト云フ文字ハ如何様トモ解釈ハ下セマスケレドモ、総テノコトヲ捨テヽ置イテ北清ニハ是マデニナイ場所ニモ定期航海ヲ開クト云フ趣意デハナイ、出来得ベキ便利ヲ与ヘラレタイ、其場所ハ何レニスルト云ヘバ北海道及北清ヲ先キニシタイト云フ趣意デ、又何ンナニ変遷ガアツテモ是マデノ定期航海ノ場所ハ同ジ様ニ据ヘテ置クト云フノデハナイ、之ハドウ云フコトニナツテ居ツタカ分ラヌト云フノハ、即チ日本郵船会社ニ八十八万円ノ補助ガシテアツタノデ唯ダ此場所此場所ヲ補助ヲセイト云フ命令ガアルノデ、其航海ニ就テハ何程ト云フコトガナイ故ニ何ニモ比較スルコトハ出来ナイ、将来ハ此航路ノ難易ト収支ノ損益ヲ調査シテ固ヨリ損害ガ立タネバ補助スル必要ハナイ、又或ハ此ノ如クシテヤルトシテモ場所ヲ指定シテアルノデゴザイマスカラ遂ニハ此場所ハ仮令ヒ今日デハ必ズ必要トナツテ居リマシテモ左シテ保護ヲ与ヘヌデモ宜シイ場所モアリマセウ、又聊カノ補助ノタメニ定期航海ヲ維持スル場所モアリマセウ、ソレマデニハ未ダ立入ツテナイノデ、要スルニ諸会議所カラ提出ニナリマシタ建議ノ趣意ヲ取混ゼテ大体ノ趣意ハ此ノ如クデアラウト云フコトヲ出シマシタノデ、大体委員ノ意志ハ深ク加ヘテナイ、此案ニシテ満場ノ賛成ヲ得マシタナラバ須ラク詳細ナル書面ヲ調製シマスルヤウニ、起草委員ヲ選バレルヤウニシタイト云フコトハ、併セテ報告致シテ置キマシタ訳デ、先刻来八番・九番等ノ御説ニモ決シテ反対ハ致サヌト云フノハ、委員会ノ説ハ決シテ航海ノ度数ハ是マデノモノデ宜シイ、此上増シテハナラヌト云フ意味デハナイ、増シ得ベクンバ幾ラデモ増シテヤル、去リナガラ物ニ順序モアリ、又到底行ハレヌコトヲ唯ダ漠然ト云フノハ、余リ実業者ノ集合体カラ成立ツタ所ノ聯合会カラ言フコトデモアリマスマイト云フノ斟酌ヲ致シテ、此ノ如クシタト斯ウ御承知ヲ願ヒタイ
○六十二番（東京、中野武営君）　此御調査ニ当ツテ、管船局ナドノ方ヲ御取調ベニナリ何カ方針ノ分ツタヤウナコトハアリマセヌカ
○十番（名古屋、奥田正香君）　別段管船局等ニ付テハ取調ベマセナンダ、詰リ今日ノ既ニ定期航海ヲ扱ウテ居リマシタ郵船会社等ノ書類等モ取寄セマシテ又説明モ聞キマシタ、又其他ノ会社モ願クハ既ニ大坂商船会社等モ定期航海ヲ営ンデ居リマスカラ、是等ノ意見モ聞キタイト思ヒマシタガ、何分ドウモ遠方ノコトデゴザイマスカラ出来マセヌ管船局ハ取調ベマセヌ
○六十二番（東京、中野武営君）　序デニ此航路ノ事ニ付キマシテハ、余程世間ノ人ノ心配ニ思ツテ居ル問題デ、又郵船会社ガ従来八十八万円ノ補助金ト云フモノガ来年デ尽キマスルガ、ドウ云フコトニナリマスカ随分大キナ問題ニナルダラウト思フ、ソレガ為ニ東京商業会議所モ此問題ニ付キマシテ特ニ委員ヲ挙ゲテ今調査中デ居ルノデ、今日ノ此郵船ノ航路――定期航路中ニモ今日ハ最早爰ハ定期ニスルニハ及バヌ唯ダ別段サウセイデモ出来ルト云フ所モアル、又是非之ハ補助ヲシテヤラネバナラヌト云フ場所モ出来テ来ハセヌカ、是等ヲ選ンデヤラ
 - 第22巻 p.405 -ページ画像 
ヌト漫然従前ノ通リガ――従前ノ航路ハ一概ニ補助スルト云フヤウナコトデハ、随分此問題ノ中ニ立ツテ自説ヲ維持シテ却ツテドンナ契約ヲスルカ喧シクナルカラ、是等ハ随分実業上ノ利害トシテ調査セネバナラヌト云フ考デ委員ヲ置イテアル、ソレガ未ダ済ミマセヌカラ私共甚ダ迀濶トシテドノ点ガ不用トアルカ必要トアルカ今日考モナイノデアル、ソレ故ニ此委員会ノ現在ノ内地沿岸云々ト云フ現在ノモノガ全ク存在スルガ必要デアルヤ否ヤノ点ニ付テハ、私ハ此問題ニ付テハ如何トモ決着スル所ヲ知ラナイノデアル、併シナガラ今日分ラヌカラト申シテ致シ方ガナイ、ソレデ私ハ先ヅ大体一概ニ今マデノ保護ヲシテ助成金ヲ止メテシマウタラバ宜イト云フヤウナ無暗ナコトノ考ハナイノデアル、相当ナ必要ナ所ハ助成金ヲセニヤナラヌト云フ考ガアルト云フ丈ケガ今日残ツテ居ルノデアルガ、ソコヲ以テ見レバ先ヅ此上調査ヲシテ見タイ、審査スル所ハ後カラ出来テ後トカラ合点ガ行クノデアルカラ、今日ノ場合ニ於テハ先ヅ大体原案ニ御同意ヲ表シテ置クヨリ仕方ガナイ、併シ甚ダ内地ノ沿岸定期ト云フノガ悉ク必要デアルヤ否ヤト云フコトニ至ツテハ見識ガ足ラナイ、又聯合会ガ其所マデ調ベナサルコトハ附カナイト思ヒマス、蓋シ数日間ノ御調ベニサウナラヌト云フコトハ分リ切ツテ居ルコトデ、委員諸君モ其所ニハ遺憾ハナイカト思ヒマス、私共ソレガ分ラヌカラ甚ダ遺憾ニ思フケレドモ、先ヅ大体ドウゾ政府ガ無暗ニ助成金ガ行カヌモノデアルカラ止メテシマウト云フコトハナイヤウニ、必要ノ所ニハ助成金ヲ為シテモ定期ヲ維持シテ置キタイト云フ精神ニスルヨリ仕方ガナイ、一言此事ハ予メ予言ヲシテ置カナケレバナラヌ
○十番（名古屋、奥田正香君）　固ヨリ六十二番ノ御説ニ対シテ彼是論弁スル必要モアリマセヌガ、固ヨリ此委員会トテモ到底此航路ハ必ズ必要デアル不必要デアルト云フコトハ充分ニ調査ヲ遂ゲニヤナラヌ、其遂ゲルト云フコトハ容易ニ出来マセズ、又之ヲ軽々ニ確定致シマスレバ或ハ必要ナ所ヲ不必要ト断定シ、不必要ノ所ヲ必要ト断定スルヤウナ誤リモ出来ハシナイカ、併シ現在必要トシテ定期航路トシテアル所ハ、殆ンド定期航海ノ為ニ物産ノ集散ナリ又商業ノ秩序ガ立ツテ居リマスル故ニ、分ラヌトシテ見レバ現在ノ所ヲ以テ先ヅ可ナリトスルヨリ仕方ガナイト云フ意味デ、吾々ハ委員ト云フノヲ離レマシテ名古屋商業会議所ト云フ方デアリマシタナラバ、或ハ其近傍ノ所デ取調ベガ附イテ之ハ不都合デアルト云フ考ガ起ルカ知レマセヌケレドモ、全国ヲ通覧シテ爰デ調査スルト云フ以上分リマセヌケレバ、今日現在ヲ以テ必要ノ所ト認メタノデアリマス、是ハ無暗ニ邪魔セラレテハ大変ダト云フノデ之ヲ決議シタノデアリマス、決シテ全部モウ動カヌト云フノデハナイ、唯漫然サウ云フコトニシテ此通リデ宜イ、八十八万円ノ補助モ此通リデ宜イト云ツタナラバ非常ニ相違ハ出テ来ハシナイカ是ハ先例ニ依リテ計算ヲスレバ分カル話デ、補助ヲセズニ定期航海ヲ開イテ居ルノヲ是モ定期航海ヲ廃メサセナケレバナラヌト云フコトハナイカラ、今日ハ調査スレバ幾ラカ必要ナ場所ト不必要ナ場所ト定メナケレバナラヌ、其必要ト不必要ト云フコトハ近日ノコトデ取調ガ付カヌ、付カヌトスレバ現在定期航海ヲ開イテ居ル所ハソレガタメニ商
 - 第22巻 p.406 -ページ画像 
工業ノ秩序ガ立ツテ居ル、ソレヲ今一朝ニシテ打壊スルコトハ出来ヌカラ之ヲ補助スル、北海道航路ハ之ヲ拡張スルト云フニ過ギヌノデアリマス
○四十六番（豊橋、三浦碧水君）　私モ此委員ノ御報告ニ賛成デアリマスガ、唯此「内地沿岸定期航海ハ之ヲ保持シ」ト書イテアレバ、一ツモノヲイツ迄モ保持スルコトニナリマスカラ、ドヲカ「成ルベク」ト云フ字ヲ加ヘテ貰ヒタイト思ヒマスガ、併シ二項ニ書イテアル如ク尚調ベタ上デ万一必要ナコトト逃ゲルコトモ出来マセウガ……
○十番（名古屋、奥田正香君）　只今ノ御問ニ御答シマスガ、サウ云フ意味ナンデス、第二次項ニ「定期航海ニ対シテハ航路ノ難易、収支ノ損益ヲ調査シ」云々トアリマス、是ハ大体五会議所カラ出タノヲ集メテ斯ノ如ク報道致シマシタ、何々スルコトト云フダケノ文章デ是デハ取扱上困ルカラ、是ニ対シテハ其筋ヘ出ス建議若クハ請願書ナリハ成ルベク好イ文章ヲ起草スルタメニ若干ノ起草委員ヲ選バレルコトヲ希望スル、是ハ先キニ申シテ置キマシタ筈デス
○八番（金沢、山田清三君）　新開港場ヲ拡張スルト云フ説ハ成立ツテ居リマスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　アナタノ動議ハ御賛成ガゴザイマシタ、成立ツテ居リマス
○六十番（湊、鹿志村亀吉君）　六十番ハ本案ニ別段異議ハゴザイマセヌ、委員会ノ報告ニハ大体賛成デゴザイマスガ、玆ニ一ツ加ヘタイト思フノハ「尚ホ」ト云フ下ヘ「内国」ノ二字ヲ加ヘテ「内国及北海道」ト云フコトニシタイト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　八番ノ修正意見ハ、此報告ト異ツテ居ル場所ヲ皆入レル、ドウ云フ文章デス
○九番（金沢、阿部太右衛門君）　私モ八番ト同様ナンデス、ソレハ現在ノ内地沿岸定期航海ハ之ヲ保持シ、尚明治三十年七月《（二脱カ）》勅令第三百四十二号ヲ以テ貿易港ト指定セラレタル各港及北海道沿岸並ニ北清航路ヲ拡張スルコト、斯ウシタイト思ヒマス
○三十八番（大阪、今西林三郎君）　チヨツト御注意申シマスガ、内地沿岸ト書イタノハソレハ一ノ名称ト御看做ニナツテ宜カラウト思フ、何故カト云フト十三番カラ御尋ネガゴザイマシタガ、政府ガ郵船会社ニ命令シテ居ルノハ内地沿岸航路補助トシテアル、ソレデアリマスカラ北清・浦塩斯徳等モ這入ツテ居ルケレドモ、内地ト云フコトニナツテ居ル、其上ヘ内国ト云フコトヲ加ヘルノハ工合ガ悪ルクナツテ来ハセヌカト思フ、ソレカラ南清ノコトヲ御尋ネデゴザイマシタガ、委員ガ何カ不親切ノヤウデスガ、ソレハ御委託外デアルノデス、其以外ニ渉ツテ私共調査ヲ致シマセヌカラ左様御承知ヲ願ヒマス、ソレデ今ノ内国ト云フコトヲ北海道ノ上ヘ入レルト云フトチト余分ノ話デ、サウスルト支那・浦塩斯徳等モ書入レナケレバナラヌコトニナリマスカラソレ等ハ内国ノ方ヘ含ンデ居ルコトニ御承知ヲ願ヒタイ
○会長（東京、渋沢栄一君）　今ノ内国ト云フ文字ヲ入レルト云フ修正ハ別ニ賛成ガゴザイマセヌ、ソレカラ南清ト云フコトニ対シテハ十三番ノ御説モゴザイマシタガ、是非南清ヲ加ヘラレタイト云フ御説デモ
 - 第22巻 p.407 -ページ画像 
ナカツタヤウデス、故ニ之ハ議題ニナリマセヌ、併シ明治三十年勅令ヲ以テ定メラレタル貿易港云々ニ対シテハ段々御賛成ガアリマス、サウスルト一文字ヲ加ヘルト云フ今ノ八番・九番ノ動議ガアリマスカラソレヲ先ヅ採決致シマス、モウ御議論モ尽キタヤウデアリマスカラ決ヲ採リマス、此航路補助ノコトニ対シテ委員会ノ御報道ハ即チ二項ニ分レテ、第一ガ「現在ノ内地沿岸定期航海ハ之ヲ保持シ、尚北海道沿岸及北清ノ航路ヲ拡張スルコト」第二項ガ「定期航海ニ対シテハ、航路ノ難易、収支ノ損益ヲ調査シ、相当ノ補助金ヲ与ヘルコト」此一・二項共ニ確定議トシテ決ヲ採ルヤウニ仕リマスガ、玆ニ八番ノ御修正ハ第一項ニ対シテ「尚」ト云フ字ノ下ニ「明治三十年七月勅令ヲ以テ定メラレタル貿易港云々」ト云フ貿易港ヲ加ヘタイト云フ御意見デゴザイマス、此修正意見ニ御同意ノ御方ハ御起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　少数
○会長（東京、渋沢栄一君）　少数デゴザイマス、ソレデハ委員会ノ御調査、即チ委員ノ報道ニ対シテ御同意ノ御方ノ御起立ヲ請ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数デゴザイマス、原案ニ確定仕リマシタ
○十番（名古屋、奥田正香君）　玆ニ至ツテ若干名ノ起草委員ヲ、会長ノ御指名ヲ以テ御定メニナルヤウニ願ヒタイ
○会長（東京、渋沢栄一君）　更ニ建議文案ノ起草委員ヲ指名スルト云フノデスカ
○十番（名古屋、奥田正香君）　サウデス
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソレハ委員ノ御意見ハ幾名ノ人数ヲ立テルト云フノデスカ
○十番（名古屋、奥田正香君）　五名若クハ七名デ宜カラウト思ヒマス
○六十二番（東京、中野武営君）　此案ヲ立テルノハ今迄ノ委員デ宜カラウト思ヒマス、詰リ対ナ案件ヲ調ベルノデアリマスカラ別ニ委員ヲ置ク必要ハナカラウト思ヒマスガ、今ノ委員デハ何ゾ出来ヌト云フコトガアリマスカ
○六番（仙台、遠藤敬止君）　私モ委員ノ一人デゴザイマスガ、会議ノ結果或ハ否決ニナルカ知レマセヌガ其相談ヲ致シタノデアリマス
○十番（名古屋、奥田正香君）　何故ニ出来ヌカト云フ御質問デスガ、別段深ク意味ハゴザイマセヌ、決議ニナツタラ起草委員ヲ置カウト云フダケデ、深イ意味ハアリマセヌ
○八番（金沢、山田清三君）　私ハ是デ御決議ニナツタラ各会議所ヘ持帰ツテ文案シタラ宜カラウト思ヒマス、私共ハ自分ノ会議所ダケデ今ノ貿易港ヲ加ヘルコトヲ提出シマシタガ、併シ委員会デ決シタ事ニ対シテハ其決議通リ金沢ノ会議所ニ於テモ成ルベク守ツテ建議シタイ思フノデス、ソレニ対シテ各会議所カラ御建議ニナルコトデスカラ本会ニ於テ起草委員ヲ設ケルコトハ要ラヌト思ヒマス、各会議所デ起草シタラ宜カラウト思ヒマス
○六十二番（東京、中野武営君）　前ノ委員ニ御託シニナツタラ一番宜カラウト考ヘマス
 - 第22巻 p.408 -ページ画像 
○十番（名古屋、奥田正香君）　固ヨリ可決ニナツタ以上ハ起草委員ヲ選ムト云フコトニナリマセウガ、十番即チ一個人トシテハ矢張八番ノ説通リニ各会議所デ調査シテ此趣旨ニ違ハヌヤウニ起草シタラ宜カラウト思ヒマスカラ、八番ニ賛成致シマス
○十七番（阿波、根本民治君）　全体此調査委員ハ既ニ是ガ決シタ以上ハ更ニ起草委員ヲ挙ゲテヤツテ貰ヒタイト云フ希望ヲ先ニ御述ベニナツタ、然ルニ只今ニナツタラ各会議所ヘ持帰ツテヤツタラ宜カラウト云フコトニナツテ先ノ説ト矛盾シテ参リマシタ、私ハ六十二番ニ賛成シテ先ノ委員ニ之ヲ嘱托スルト云フ説デアリマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　委員ヲ作ルト云フ至ツテ簡単ナ説デス、別ニ御異議ゴザイマセネバ六十二番ノ説即チ前ノ委員ニ起草モ委託シタイト云フ是ニ賛成ガアルヤウデス、是ニ付テ採決ヲシヤウト思ヒマス、六十二番説ニ御同意ノ御方ノ御起立ヲ請ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数デゴザイマス、御苦労様ナガラ……委員指名ハ此一言デ申上ゲマス

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第三八〇―三八二頁　刊
　　　　○第五日
明治三十二年十月十八日午前十時十分開議
　　出席委員　　　　　五十名　○氏名略
○上略
○会長（東京、渋沢栄一君）　○中略　定期航路補助ニ関スル建議ノ文案ガ此御調査ヲナサツタ委員ニ御託シニナツテ居リマシタ其建議文案ガ玆ニ調製セラレマシテ御提出ニナリマシテゴザイマス、建議文案ヲ朗読致サセマス
　　　〔書記朗読ス〕
　　航路補助金ニ関スル件調査委員起草案
　　　　定期航路補助ニ関スル建議　（要旨）
　我ガ帝国ハ東洋第一ノ海国ナリ、是ヲ以テ通商貿易ノ発達上、経済実力ノ拡充上、其他一般国家ノ生存発育ノ完全ヲ期スル上ニ於テ、国家ハ常ニ大ニ力ヲ我カ航運機関ノ整備ニ尽サヽルヘカラス、就中定期航路ニ対シテハ最モ周到ナル注意ヲ施シ、最モ適当ナル方法ニ依リ、十分之カ補護助成ニ務メサルヘカラサルナリ、而シテ遠洋・近海及ヒ内地沿岸ノ三種定期航路ハ固ヨリ各自特別ノ関係作用ヲ有スト雖モ、結局三者常ニ相俟チ相応シテ以テ互ニ其本分ヲ完クスルヲ得ルモノナルカ故ニ、決シテ其一ヲ取リ其一ヲ捨ツルコト能ハサルナリ、仍テ内地沿岸及ヒ近海ノ定期航路ニ対スル現定補助年限ノ満了後ニ於テハ、更ニ此レ等各線路ニ対シ十分線路ノ特性、経営ノ難易、収支ノ関係等ヲ審按シ、適当ナル約束条件ノ下ニ夫々其必要ニ応シテ適当ノ補助ヲ加ヘラレンコトヲ要望ス、殊ニ北海道及台湾ノ如キ国際利益ノ保全上特別至重ノ関係アル航路ニ対シテハ一層進ミテ其規模ヲ拡張シ、其効用ヲ増大スルノ最モ必要ナルヲ認ム
　又近海航路ニ関シテハ内外幾多ノ情勢ニ鑑ミ、此ノ際第一着ニ北清
 - 第22巻 p.409 -ページ画像 
航路ニ対シ適当ノ補助ヲ与ヘ、以テ速ニ彼我交通ノ利便ヲ済充セシメラレンコトヲ切望ス、其他北陸地方ト露領浦塩斯徳トノ連結、及ヒ関西地方ト朝鮮諸港トノ連結ニ関シテハ更ニ一層利便ナル定期航路ヲ選定シ、将来ニ対シ国際貿易上十分ノ地歩ヲ確立セシメラレンコトヲ切望ス
○十番（名古屋、奥田正香君）　此起草ヲ託セラレマシタコトデ一応述ベテ置キマス、別段委員ニ於テハ御託シニナツタ原案外ニ踏ミ出シタ積リデハアリマセヌ、去リナガラ此文字上ノコトデアリマスカラ先キニ趣意ヲ決議ニナリマシタ第一・第二ニ分ケマシタ、現在云々定期航海ニ対シテハ或ハ幾ラカ権限ヲ超ヘタト云フヤウナコトガナイトモ、吾々委員ハ是迄ハ余程其辺ハ御寛大ノモノト思ツテ居リマシタガ今日ハ非常ニ苦シクナリマシタ、又是ガ不都合ナコトダ、是ガタメニ此文章ガ長過ギルコトデ、又台湾ト文字ガ見ヘテ居ルガ不都合ヂヤナイカト云フヤウナ一々文字ノ揚足ヲ取ツテ御攻撃ニナツテハ甚ダ迷惑ヲ致シマスカラ、最モ趣意ニ於テハ定期航海補助ニ関スル建議ト云フ要旨デゴザイマスカラシテ、ソレニ背イテハ居ラヌ積リデアリマスケレドモ遠洋ナドヽ云フコトハ航路補助ニ関スル調査ト云フコトニハナカツタノデ、併シドウシテモ此三者ヲ以テヤランナラヌト云フコトハ此定期航路ノ事ニ付テ相当ノコトヽ思ヒマスカラ述ベ置キマシタノデ、併シ細カニ顕微鏡懸ケテ御覧ニナリマスレバ或ハ権限ヲ超ヘタト云フヤウナ御感想ガアルカ知レマセヌガ、予メ御断リヲシテオキマス
○二十七番（熊本、下田耕造君）　只今ノ建議案ハ賛成シマス、序ニ一口述ベ置キマス、此印紙税ノトキニ満場一致ト宣告ニナツタヤウデスガ二十七番ハ起ツテ居リマセヌ、チヨツト五円未満云々ト云フトキニハ賛成シヤウト思ツテ居リマシタガ、引続キ変ツテ参リマシタノデマダ頭ノ小サイヤツデドチラニモ立チマセヌ、ドウカ多数トカ一人ヲ除クトカ云フヤウナコトニ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　私ガ見間違ヒマシテゴザイマス――此航路補助ノ文案ニ対シテ今委員長カラ御報道ノゴザイマシタ通リ、暇ガゴザイマセヌカラ写シハ御手許ヘ上ゲマセヌガ、只今朗読申シタ通リデ、委員長カラ差出シタ文案ニ依ツテ決ヲ採リマス、此文案ニ御同意ノ方ハ起立ヲ請ヒマス
　　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数デ、本議案ハ是デ既ニ議了ニ至リマシテゴザリマスル