デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治32年10月11日（1899年）

是日第八回定期会第一日ノ会議ニ於テ、金沢商業会議所ノ提出ニ係ル、書留郵便物ノ損害ニ対シ政府保証ノ責ニ任ズル規定ヲ設クルノ儀上程サレ、委員附託トナル。十八日第五日ノ会議ニ於テ、原案ト同一趣旨ノ委員会報告可決セラル。栄一会長トシテ議事ヲ司宰ス。

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第五二―六二頁　刊
　　　　○第一日
明治三十二年十月十一日午前十時四十五分開議
　　出席者
　　　委員　　　　　五十一名　○氏名略
○上略
○会長（東京、渋沢栄一君）　○中略　議案第二号ニ移リマスル、金沢商業会議所ノ提出案第二号
　　　（「書記朗読」）
　議案第二号　　　　　　　　　　　　　（金沢商業会議所提出）
　一書留郵便物ノ損害ニ対シテ政府保証ノ責ニ任スル規定ヲ設ケラレンコトヲ内閣総理大臣及ビ逓信大臣ヘ建議、貴衆両議院ヘ請願ノ件
　　　　理由
　　通信事業ハ商工業上重要ナル機関ニシテ、商工業者ハ是レニ依リテ各地ノ状況ヲ聴視シ、是レニ依リテ資金貨物ノ授受ヲ為ス者ナレハ、此ノ機関ニ不備ノ点アルトキハ、商工業者ニ与フル不便不幸実ニ少々ニアラサルナリ、故ニ郵便物ニ対シテハ、普通及ヒ書留ノ何レナルヲ問ハス、政府損害ノ責ニ任セサル現行条例ノ規定（郵便条例第六十六条）ヲ廃止シ、書留郵便物ニ対シテハ政府ノ過失懈怠ニ基ク損害ニ付テハ、政府賠償ノ責ニ任スルコトノ規定ヲ設ケラレンコトヲ望ム、但シ其ノ方法細目ニ関スル件ハ政府当
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局者ニ委任スル考ナリ、是レ却テ実際上便宜多カルヘシト認ムレハナリトス
　　又本件ニ関シテハ已ニ長崎商業会議所ヨリ第六回聯合会ヘ提案セシニ、其後撤回ニ終ハルニ至リシハ頗ル遺憾トナス処ナリ、之レヲ要スルニ書留郵便物ニ対スル政府保護ノ制度ハ目下急要ノ問題ニシテ、且ツ合理ノモノト信スルカ故ニ、此ニ本案ヲ提出セリ
○八番（金沢、山田清三君）　我会議所ガ本案ヲ提出致シマシタコトハ既ニ此所ニ理由ニモ述べテアリマスル通リニ、書留物ノ保証ト云フコトハ必要ヲ感ジテ居ル、ソレハ随分我地方ニ於テモ近頃実例モアルノデ、郵便物ノ損害ヲ被ツタモノハ近頃多イ、故ニ此政府ノ保証ト云フコトヲ非常ニ感ジテ居ル次第デアル、其事柄ハ明細ニ申上ゲヌデモ、郵便物ガ途中ニ於テ紛失シ、随分ソレガ為ニ大ナル損害ヲ来タス、畢竟其損害ヲ来シタルコトハ政府ニ今日保証ト云フコトガナイカラ差出人ガ損害ヲ被ムル次第デアル、斯ノ如キコトデアレバ安心シテ総テノ事ガ出来ナイ、故ニ此所ニ於テ政府ノ保証ト云フコトヲ求メタイト云フ考デ、今日ノ郵便ハ唯ダ其名前ハ書留デアツテ決シテ保証ト云フコトガナイ、政府ハ其責ニ任ゼヌト云フコトガ即チ六十何条カニ出テ居ル、デ相当ノ爰ニ於テ保証ト云フコトノ規定ヲ設ケラレンコトヲ希望シテ居ル次第デアル、各員モ御賛成ノ程ヲ希望致シマス
○五番（水戸、塙七平君）　チヨツト八番ニ御尋シマスガ、之ハ郵便物ノ損害賠償ニ対シテハ幾ラカ其極度ガナクテハナルマイカト思ヒマスガ、其辺ハ如何デゴザイマセウカ、幾ラノモノデモ政府ガ賠償ノ義務ニ応ズルト云フ訳デモアルマイト思ヒマスガ、外国ノコトヲ聞イテ見ルト大抵極度ガアルヤウニ思ハレマスガ
○十八番（京都、大沢善助君）　一寸今五番カラ御質問ガゴザイマシタカラ、序ニ私モ一寸加ヘテ問ヒタイト思ヒマス、京都商業会議所ニ於キマシテモ本案ニ対テハ賛成ノ意ヲ表スルモノデアリマス、併シ今五番ガ御尋ニナリマシタノト似テ居ルガ、一寸趣意ガ違ヒマス、京都商業会議所ニ於キマシテハ之ハ政府ガ保証ヲスルト云フコトヲ求ムルト同時ニ、差出人ガ幾分ノ義務ヲ負フト云フコトヲ承諾セネバナラヌト云フ考ナノデ、ソレハ此案中ニソレヲ含ンデ御承認ニナツタノデアリマスカ、二万円デモ三万円デモ書留サヘスレバ政府ニ保証ヲサセヤウト云フノデアリマスカ、ソレデアレバ賛成ハ出来ナイ、書留郵便物ノ保証金額ニ対シテ相当此方ラデモ保険料ヲ払ウ意味ガ混ツテアレバ賛成致シマス
○八番（金沢、山田清三君）　只今五番ノ御尋ネニ対シマシテハ、成程欧米各国ニモ政府ノ保証ト云フコトモアリマシテ、或ハ金額ヲ定メテアルコトモアルケレドモ、我会議所ノ提出シタ趣意ハ玆ニ於テ価格ヲ定メルト云フコトモシナイ、之ハ何程デモ我々ガ求ムル所ヲ、仮ヘバ壱万円デモ弐万円デモ、受ケベキモノニ対シソレニ応ズルダケノ保証ヲ仰ギタイハ固ヨリ希望ナノデアル、併シナガラ其所ニ至ツテ何ニカ政府ニ於テ差支ル事ガアレバ、奈何セン制限ヲ定ムルコトモソレモ当局者ニ一任シタイ、或ハ又今十八番サンノ御尋ノ、固ヨリ保証ヲ求ムルニ対シテ義務ト云フコトハソレハ無論ノコトデアル、ソレハ義務ハ
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負ハネバナラヌコトデアル、其等ノ点モ細目ニ至ツテハ当局者ニ一任シタイ、其方ガ却ツテ便利デアルダラウ、兎モ角政府ガ保証スルト云フコトニ対スルダケノ建議ヲシテ、其細目ハ当局者ニ一任シタイト云フ考デ……
○五番（水戸、塙七平君）　只今五番ガ八番ニ御尋ネシタノハ、ソレデハ八番ノ御説トシテハ御提案ニナルトキニハ唯ダ改正シテ呉レト云フノデ、幾ラマデト云フ極メハ置カヌト云フ御説デゴザイマスケレドモ壱円デモ二円デモト云フヤウナコトヲ仰セラレタ所ガ、サウ先キノ何モ付キマスマイガ、大抵御考ハ別ニゴザイマセヌノデスカ、五百円トカ千円トカ、壱万円ナント云フノハ少シ多ウ過ギルカラ、各国ノ何ヲ見マシテモサウ云フ風ニナツテ居ルヤウデアリマスガ、其辺ニ付テハ只タ政府ニ御任セニナルト云フノデ、御希望ノ幾ラデモ多ク政府デヤツテ呉レト云フノデアリマスカ、其辺ニ付テ賛否ヲ表スルタメニ一寸伺ツテ置キマス
○八番（金沢、山田清三君）　只今五番ノ御尋ハ御尤ノ次第デアルガ、総テ之ハ営業者ノ便利ヲ図リ安心ヲ図ルタメニ本案ヲ提出シタ次第デアル、其営業上ノ取引ニ至ツテハ、今左様百円ヤ五百円ダノト云フヤウナ規定ガアリマシテハ大ニ差支ヘルコトガアル、ソレハ事宜ニ依リマシテハ何程ナリソレニ対スルダケノ保証ヲシテ貰ヒタイ、又其金額ニ対スル丈ケノ義務ヲ負フコトハ無論ノコトデアルト云フノデ、金額ノ制限ハ何モ本会議ニ於テハ定メナイ
○番外二十番（金沢、伊藤鏢三郎君）　只今五番及大沢サンナドカラ御質問ニナツタ点モゴザイマスガ、本会議所ノ考ハ単ニ此郵便条例ノ六十六条ヲ廃止シテ仕舞フノミデハナイ、ソレヲ廃スルト同時ニ多少条例ノ中ニ或ルモノヲ加ヘ、又或ルモノヲ減ズルヤウナコトモアリマスマイガ、サウ云フコトモ若シ必要ガアレバシナケレバナラヌト思ヒマス、ソレデ無論政府ニ保証シテ貰ウ以上ハ、此事ハ一ツノ契約デゴザイマスカラ、政府ノ方ニノミサウ云フ重イコトヲ加ヘルト云フ訳ニモ行キマスマイカラ、差出人ノ方ニモ義務ヲ負ハナケレバナラヌト思フ此金高ノ事ニ付テモ巨万ノ事ニマデ政府ガ保証スルコトニナリマスルト、ソラ行ハレナイコトニナルト思ヒマス、此事ハ多年経験ノアル所ノ政府ニ任セル、政府ノ方ニヤツテ貰フト云フ考デ此案ヲ出シタノデ本会議所ノ希望ハ斯ウ云フ事ヲ政府デヤツテ貰ヒタイト云フコトヲ建議及請願ヲシタイト云フ、斯フ云フ考デゴザイマスカラ、ドウゾ御賛成アランコトヲ望ミマス
○五十五番（栃木、桜井源四郎君）　此本案ニ付キマシテハ栃木商業会議所モ意見ヲ出シタイ考デゴザイマシタガ、本回ハ間ニ合ハヌデゴザイマシタ、此金沢会議所ノ提出サレマシタノハ必ズ郵便モ紛失シ手形ナドモ紛失スルカラ御提出ニナツタモノト思ヒマス、我々ノ考ヘル所ニ依レバ、如何ニ政府ガ義務ヲ重クシテモ一々弁金スルト云フコトハ難イ話ト思ヒマス、去リナガラ吾々営業者トシテ之ヲ傍観スルコトハ出来マセヌカラ、栃木商業会議所ノ考デゴザイマシテハ、先ヅ以テ手形ヨリ書留郵便条例ト云フモノヲ一ツ編ンデ戴イテ、此中ニハ金ノ手形ガ這入ツテ居ル、銀行ノ手形ナリ或ハ何某ノ手形ガ這入ツテ居ル、
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其這入ツテ居ルモノニ限ツテ手形入リノ書留郵便ト云フコトニ政府ノ法律ヲ編ンデ戴イタナラバ心配ナカラウ、其手形ヲ受取ルトキニハ矢張リ銀行ニ行ツテ金ヲ受取ルトキノ手続ヲ致シマスレバ、政府ニ敢テ御心配ヲ掛ケルト云フコトハナカラウト云フ希望デゴザイマスガ、今回ハ提出致シマセヌガ、栃木商業会議所ハ金子入ノ書留郵便ト云フモノヲ政府ニ保証ヲ頼ミタイト云フ意見デゴザイマス、御参考ノ為メニ申上ゲテ置キマス
○三十八番（大坂、今西林三郎君）　私共モ此大体ニ於テ保証ニセヨ――書留郵便ニ保証ヲシテ呉レト云フコトハ寧ロ宜イコトデゴザイマスカラ、喜ンデ賛成センナラヌ話デアリマスガ、総テ其物ニハ一利一害ガアツテ、必ズシモ保証ヲシテ貰ハネバナラヌト云フ事ニナツテ居リマスト、其保証料ト云フモノヲ払ハンナラヌト云フコトニナツテ来ルカラ少シ考ヘナケレバナラヌ、或ル場合ニハ保証シテ貰イタイ時モアルシ、又保証シテ貰ハヌデモ宜イト云フコトモアル、必ズシモ何時デモ書留郵便ト云フモノハ保証ヲシテ貰フテ、サウシテ保証料ヲ払ハンナラヌト云フコトニナツテ来ルト、或ハ不便ナ又損ノ行クコトガアラウト思フノデ、ソレデ今五十五番サンノ御意見デゴザイマスガ、少シ提出者ノ意見トハ違ウヤウデアリマスガ、之ハ其例ヘバ此方カラ望ンダカラ保証ヲシテ呉レト云フ法ヲ設ケテ貰ウ法ガ宜イト云フ話ガアルソレナラバ宜カラウ、例ヘバ金子入ノ書留郵便ト云フモノノ方ヲ拵ヘテ貰ヒタイ、之ハ要ラヌダラウト思フ、之ハ為替ト云フモノガアルカラ為替デヤレバ宜イカラ郵便デヤル必要ハナイト思フ、又サウ云フ作法ハナイ、書留郵便ノ中ニ金ヲ入レテヤルト云フコトハナイノデ、只今此アルカモ知レマセヌガ、ソレハ為替ガ宜カラウト思ヒマス、大抵其為替手形トカ何トカ云フ大キナ金ノ場合ニ、無制限ニ政府ガ償却弁償ヲスルヤ否ヤト云フコトノ御議論モアルノデゴザイマスガ、サウ云フ話ハ政府ハ出来ナイト云フカ知レマセヌガ、併シ今日ハ出来ルデゴザイマセウ、所ガソレヲ四十五番サンノ言ハルヽ通リニ、此方ラカラ望ンデ金ガ何程入ツテ居ルカラ其取扱ヒニシテ呉レト云フコトヲ政府ニ言ヘバ政府ハヤル、ト云フ法律ヲ設ケテ呉レト云フ御趣意ナレバ、至極私ハ宜カラウト思フ、此方ラカラ望ンデヤルト云フコトニナルカラ、ドウシテモ斯ウシテモ書留郵便ハ保証ヲスル、其保証ヲスル代リニハ保証料ヲ払ハンナラヌト云フコトハ不便ノコトニナリハシナイカト思ヒマスカラ、一応御提出者ノ意見ヲ伺ツテ置キタイ
○三十六番（岡山、香川真一君）　只今問題ニナツテ居ルノハ、金沢商業会議所ノ御提出案丈ケデアルト心得テ宜シウゴザイマスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソウデゴザイマス
○八番（金沢、山田清三君）　只今二十何番サンデスカ提出者ノ意見ハ如何アルカト云フコトデ、最モ提出者ニ於テモ普通金銭等ニ関係ノナイモノニモ保証料ヲ払ツテヤラウト云フ考ハナイ、ソレハ前ニモ述ベマシタ通リ、現ニ金銭ノ多寡ニ依リ或ハ又鄭重ナル物品ニ依ツテソレソレ保証ヲ求メテ、ソレニ対シテ保証料ヲ払フト云フコトハ最モ相当ナコトデアル、唯ダ普通保証料ヲ如何ナルモノニモ同一ノ保証料ヲ払フト云フ趣意デハナイ、其品物ニ依ツテ保証料ヲ払フト云フコトニ致
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シマスレバ、敢テ其保証ヲ求メンデモ宜イト云フヤウナ品物ニ対シテハ保証料ヲ払ウニハ及バナイ、其保証料ヲ払ウベキモノニ対シテ払ウノデアルト云フ考デ、ソレ故ニ今ノ御心配ノヤウニ如何ナルモノニモ保証料ヲ払ウヤウナ結果ニナルト云フ御心配ハ要ラヌト思ヒマス
○五番（水戸、塙七平君）　五番ハ矢張リ之ハ委員付託ガ宜カラウト思ヒマスルカラ、委員ハ五名位デ宜イデセウ、五名位ノ委員ヲ選ンデ一ツ取調ベマシタ結果御提出ニナルコトヲ希望致シマス
○五十五番（栃木、桜井源四郎君）　五十五番ハ委員ヲ御挙ゲニナル上ニ就キマシテ聊カ栃木商業会議所ノ希望ヲ述ベテ置キマス、其希望ト申シマスルノハ即チ一ツハ手形或ハ約束手形或ハ銀行手形、此類ニ限ツテ書留郵便条例ト云フモノヲ特別ニ編ンデ戴イテ、ソレデ又吾々ガ政府ニ対シマシテ尽シマスル義務ガゴザイマセヌケレバ、此金沢商業会議所ノヤウニ丸ルデ政府ニ弁金サセルト云フ意向デゴザイマセヌカラ、吾々営業者ニ於キマシテモ政府ニソレ丈ケ手数ヲ掛ケナケレバナラヌ、其金額ハ矢張リ百円ニ付テ幾ラ、千円ニ付テ幾ラト云フ為替手形ニ段階ヲ付ケマシテ、取扱手数料ヲ政府ニ納メタイト云フ栃木商業会議所ノ希望デゴザイマス、宜シク御参考ノタメニ聊カ……
○六番（仙台、遠藤敬止君）　六番ハ此本案ハ、近頃吾々モ大キニ危険ヲ感ジテ居ルノデゴザイマシテ、大体ニ於テハ最モ賛成ヲ致シマスノデゴザイマスルガ、段々之ニ付テ保証ノ保険料ノ出シ方トカ、或ハ金額ニ制限ヲ置クトカ、随分之ハ調査ヲ要スルコトヽ存ジマスルカラ、此五番ノ委員説ニ賛成致シマス、委員ヲ挙ゲテ調査致シタ上ニ御審議ニナルコトヲ希望致シマス
○二十七番（熊本、下田耕造君）　委員説ヲ賛成致シマス、ドウカ委員ニ附託ニナルコトヲ希望シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　五番ノ御説ハ五名、議長ノ指名ト云フ委員説ノ御動議デスガ
　　　（「同意」又ハ「異議ナシ」ト呼ブ者アリ）
○会長（東京、渋沢栄一君）　二号議案モ又委員説ガ此大分賛成者ガ多イヤウデ……
○二十五番（八王子、吉田忠右衛門君）　其委員ニ付託スルナラバ、其目的等ノ善シ悪シヲ研究スルノカ、目的ヲ達スルニ付テノ方法、即チ金額ヲ定メテスルカ、或ル場合ニ就テ取除ケテ置クトカ、何ニカ其所ヲ御示シヲ願ヒタイ、一体此案ハ目的丈ケアツテ方法ハナイ、此ノ如キ不親切、ト云フノハ少シ御気ノ毒デスガ、実ニ不完全ナ議案ト思ヒマス、其方法ニ依ツテハ宜イトナリ悪イトナル、河ヲ渡ラウト思ツテモ鉄橋デ渡ルカ渡シ舟デ渡ルカ、其渡リヤウニ依ツテ善イ悪イガアルノデゴザイマスカラ、渡リヤウガアル、方法ヲ政府ニ任カスト云フノハ、唯ダ目的ダケジヤ一向頭ガアツテ尻尾ガナイ、今度ハ委員ヲ置クニ付イテ、ドレ丈ケノ事ヲ世話致スト云フコトヲ明カニ御示シニナツテ貰ヒタイ
○五番（水戸、塙七平君）　五番ハ委員付託ニ致シタイト云フ考ハ此所ニ書イテアル以外デス、詰リ其方法順序マデモ調ベテ見タイ、此問題タルヤ即チ宜イダラウト云フ賛成ノ結果委員ノ必要ヲ感ジタノデ、大
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体ニ於テ賛成ヲ致シテ置キマスケレドモ、委員ニ付ベキ取調ヲシタ方ガ宜ク取調ベガ出来ルダラウ、ソコデ口角泡ヲ飛バシテ論ジテ見マシタ所ガ又尻抜ケニナツテハ困ルカラ、委員デスツカリ取調ベタ結果ヲ御報道ニナツテ、ソレガ多数ノ賛成ヲ得タナラバ大層甘ク行クダラウト云フ考デ
○五十一番（宇都宮、村上浜吉君）　五番ニ一寸御尋致シマスガ、今番外ノ三十五番デシタカ御述ベニナツタ通リ、此案ハドウシテモ採ルモノト云フヤウナ考デ、サウシテ後トノ方法ニ付イテ、金高マデモ此委員ガ調査スルト云フヤウナ御趣意デ御挙ゲニナルノデアリマスカ
○五番（水戸、塙七平君）　左様
○五十一番（宇都宮、村上浜吉君）　五十一番モ其委員説ニ同意致シマス
○六十二番（東京、中野武営君）　只今番外カラ何番デゴザイマスカ、委員ニ条件ヲ付ケテ附託スルト云フ必要ガアルト云フコトデアリマスケレドモ、全体委員ヲ置クカラニハ余リ始メカラ斯フ云フコトヲ調ベロ、是丈ケノ権限ニスルト云フノハ成ルベクセヌ方ガ宜イ、委員ヲ置ケバ此所マデ調ベナケレバナラヌトカ、又此所マデ完全ニスルトカ、此箇条マデ決定スルト云フノハ考イテ見ナケレバナラヌ話デ、寧ロ委員ヲ置ク上カラニハ、定義ダノ、範囲ジヤノ、方針ダノ、目的ダノト云フコトヲ言ハズシテ置ク方ガ宜イ
○会長（東京、渋沢栄一君）　二号ニ付キマシテ五番ノ発議ノ委員説ガ賛成ガ大分アルヤウデス、御討議ガ尽キタラ採決ヲ致サウト思ヒマスガ、五番ハ此案ニ対シテ五名ノ委員ヲ置ク、其五名ハ議長ノ指名ニ致シタイト云フノデゴザイマス、五番ノ御説ニ御同意ノ御方ハ起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　御多数デゴザイマス

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第六八―六九頁　刊
　　　　○第一日
明治三十二年十月十一日午前十時四十五分開議
　　出席者
　　　委員　　　　　五十一名　○氏名略
○上略
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ今日ハ是デ閉会致シマス――只今段々此委員ノ御説ガゴザイマシテ、其委員ノ方々ヲ御指名致シマスガ、ドウモ頭ガ錯雑シテ参ツテ甚ダ窮シマシタ　○中略　ソレカラ此書留郵便物ノ損害ニ対スル政府保証ノ責ニ任ズベキ規定ヲ設クルト云フ件ニ付テハ、遠藤敬止君・山田清三君・大沢善助君・下田耕造君・桜井源四郎君、此五名様ヲ御指名仕リマス

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第七二頁　刊
　　　　○第二日
明治三十二年十月十二日午前十時五十分開議
 - 第22巻 p.432 -ページ画像 
　　出席委員　　　　　五十六名　○氏名略
○上略
○会長（東京、渋沢栄一君）　皆様御苦労デゴザイマス、開会ニ先立チマシテ一・二御報告申シマスコトガゴザイマス、昨日決議ノ結果委員ノ成立致シマシタ、此委員諸君ガ今朝委員会ヲ開カレテ委員長ノ互選ガゴザイマシタ、其結果ヲ申上ゲマス　○中略　書留郵便物ノ損害ニ関スル件ハ山田清三君ガ委員長ニ御当選ニナリマシタ

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第三四六―三四九頁　刊
　　　　○第五日
明治三十二年十月十八日午前十時十分開議
　　出席委員　　　　　五十名　○氏名略
○上略
○八番（金沢、山田清三君）　第二号議案ノ委員会ノ報告ヲ只今述ベテ宜シウゴザイマスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　宜シウゴザイマス、是カラ第二号議案ニ移ルヤウニ仕リマス、議案ヲ朗読致シマス
　　　〔書記議案ヲ朗読ス〕
　　　　議案第二号調査報告
全会ヨリ調査ヲ附托セラレタル本案ニ就テ委員会ハ別記ノ如ク決議候間此段及御報告候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　議案第二号調査委員長
　　明治三十二年十月十四日　　　　　　　　　山田清三
　　　　第八回商業会議所聯合会々長　渋沢栄一殿
（別記）
　　書留郵便ニ関スル現行規定ハ聊カ不備ノ嫌アルヲ以テ、差出人ハ往々損害ヲ蒙ムルヘキ疑惧ノ念アルヨリ商工業上其不便実ニ尠少ニアラザルナリ、故ニ政府ニ於テハ書留郵便ニ対シテハ郵便局員ノ過失怠慢ヨリ生シタル損害ニ付テハ、直接ノ損害ヲ免ルヽニ足ルノ規定ヲ設クルコトヲ必要ト認ム
○八番（金沢、山田清三君）　此件ハ前回ニ於テ委員会ニ託セラレタ件デアリマス、即チ私モ委員ノ一人デ委員会ヲ開キマシテ屡々詮議ヲシマシタガ、此件ハ金沢商業会議所ノ提出デアツテ、書留郵便ニ対スル損害ニ対シテハ政府保証ノ責ニ任ズル規定ヲ設ケラレンコトヲ望ムト云フ建議デアル、然ルニ委員会ニ於キマシテハ最モ現今ノ郵便条例デハ甚ダ不当ノ嫌ヒアルコトデアリマスルカラ、ソレニ対シテハ差出人ガ安心ヲスルト云フ規定ヲ設ケラレタナラバ宜イト云フコトニ決議シタ次第デアル、ソレハ成程保証ト云フコトニ対シテハ或ハ金額ノ制限ヲ定メル、或ハ又保証料ヲ規定スルコトモ委員会ニ於テ色々論ジマシタガ、ソレハ金額ニ制限ヲ定メタリ保証料ヲ納メタリスルコトハ委員会デハスルニハ及バヌ、唯ダ政府ニ於テ局員ノ怠慢カラ起ル所ノ損失ニ対シテ直接ニ損害ヲ免レル規定ヲ設ケラレタナラバソレデヨイト云フ所デ決議シタ次第デアル、此段ヲ御報告致シマス
○六番（仙台、遠藤敬止君）　六番ハ矢張リ此第二号議案ニ付キマシテ
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ハ委員ノ一人デゴザイマシテ、段々委員会ニモ加ハリマシテ審査ヲ遂ゲマシタ所ガ、其審査中ニ逓信省ノ通信局長ニ御目ニ懸ツテ色々是等ノ事情モ承ハリマシタコトモゴザイマスカラ、一応ソレ等ヲ御参考ノタメニ諸君ニ申シタイト思ヒマス、此書留郵便ノコトニ付キマシテハ保証ノ責ヲ政府ニ任ジテ貰ヒタイト云フコトニ付キマシテハ、金高モ実ハ相応ニ大キイ所ニ極メテ貰ヒタイト云フ、或ハ委員ノ中ノ一人デハ無制限ニシテ貰ツテ、保険料ヲ籠メテ郵便税ヲ其割合ニ払ツテ無制限ニシテ貰ヒタイト云フ御説モゴザイマシタガ、段々通信局長ナドノ御意見モ色々ニ聞イテ見マスルニ、今中々其無制限ニスルナント云フコトハ、到底国家ト云フヨリハ逓信省ノ経済ガ無制限ニ万一保証ノ責ニ任ズルヤウナコトデハ経済ガ迚モヤリ切レル話デハナイ、ソレデ各国ノ例ナドモ御話中ニ聞キマシタ、仏蘭西アタリデハ日本ノ貨幣ニ換算シマスレバ二百円アマリデアリマスガ千フランクトカデアリマスガソレカラ白耳義アタリデハモウチツト大キイト云フコトデ、独逸アタリモソンナ事、ソレカラ万国郵便条例ニ於キマシテハ僅カ五千フランクニ極ツテ居リマス、ソレデ其責ニ任ズル所ハ日本ニ換算シマスレバ十円《（マヽ）》前後ノモノデゴザイマセウ、ソレデ到底金高ヲ無制限ニ置クトカ何トカ云フコトハ到底郵便条例改正ノ上ニ入レル考モナシ、ヤリ切レルト云フコトハ出来得ラレヌ、ソレデヤルニシテモ精々デ百五十円カ弐百円位ノ処ノ金高ガ確リハ承ハリ兼ネマシタガ、マア其辺デ政府ノ方デモ段々調ベテ居ル事モアツテ、其辺ノ考ラシイヤウニマア洩レ聞キマシタノデゴザイマス、ソレニ其金ガ随分大キイ金高ニナル、郵便制度之カ制限ヲ半官半民即チ人民ノヤルヤウナ仕組ニナツテ居ル国ナドモアルヤウニ御話ニ聞キマシタガ、ソンナヤウナ事デアレバ、何ニカ引受ケタリ保険ノヤウニナツテ居ルトスレバ出来ルガ、今政府ノ官業トシテヤル時分ニハ到底大キイ金高ヲ請合ウト云フコトハ到底出来ラレヌ、之ハ精々大キクテ弐百円前後ノ所デ、或ハ日本ノ今ノ経済ノ程度カラ言ツタナラバ仏蘭西アタリカラズツト少ナクシテモト云フヤウナ御話モゴザイマシタ、ソレデ委員会デハ金高ヲ無制限ニ置クトカ金高ノ大キイ所ヲ望ンデモ建議トカ請願スル中ニハシタイト云フ委員ノ考モゴザイマシタガ、結局サウ云フコトヲ入レテモ行ハレナイコトト存ジマシテ、先ヅ金高ヲ入レズニ此報告ノ如キ決議ニナリマシタ次第デゴザイマス、一応チヨツト申上ゲマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　本案ニ対シテハ別ニ御質議等モゴザイマセヌガ、若シ御異議ゴザイマセネバ本案ノ採決ヲ致シマスル
　　　〔「異議ナシ」ト呼ブモノアリ〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　委員会ノ報告即チ原案ニ御同意ノ御方ハ御起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　御多数、三読会ヲ兼ネマシテゴザイマス

通信事業五十年史　逓信省編　　第一三一―一三二頁　大正一〇年三月刊
　○第二篇　第二章　内国郵便
　　　　第三節　郵便物の類別と其変遷
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○上略
　書留　は明治四年正月布告の郵便規則に於て「大切ノ書状ニシテ先方ノ返書又ハ受取書ヲ要スル場合ニ於テハ倍額ノ賃銭ヲ以テ其返書又ハ受取書ヲ差出人ニ送達ス」ることを規定したるに始まり、其十一月の郵便規則に於て書留郵便の制を設け、郵便局の帳簿に登記して逓送配達の受授を証することとし、普通賃銭の外手数料二十五里以内二銭其他四銭を徴するの制あり。当時尚送受の手続を鄭重にするに止まり、其亡失の場合に就き何等保障する所なかりしか、明治三十三年郵便法制定に際し一通十円の賠償を認むることとせり。小包郵便にありては創始の際より凡て書留同様の取扱に依りたるか、明治四十年に至り書留及普通の二とし、普通取扱に対しては送受の記録を省略すると共に、其亡失毀損に対し損害賠償の責に任せさることとせり。小包の亡失毀損の賠償は郵便法以前に在りては価格登記に対してのみ行はれたるも、明治三十三年郵便法に依りて価格表記以外の小包に対しても之を認められ其書留小包亡失毀損の場合に於ける賠償金額は現時二百匁迄弐円・以上二百匁迄毎に壱円として亡失並に毀損の程度に応して之を為すものとす。　○下略

法令全書　明治三三年上巻　　内閣印刷局編　刊
法律第五十四号（官報三月十三日）
　　　　郵便法
○上略
第三十三条　成規ニ依リ差出シタル郵便物ノ取扱ニ関シ郵便官署ハ左ノ場合ニ限リ其ノ損害ヲ賠償ス
　一　書留郵便物ヲ亡失シタルトキ
　二　小包郵便物若ハ価格表記郵便物ヲ亡失又ハ毀損シタルトキ
　三　郵便ニ依ル取立金ノ証券ヲ亡失シ又ハ其ノ効力ヲ失ハシメタルトキ
　賠償金額ハ命令ノ定ムル所ニ依ル