デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2021.8.27

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
4款 商業会議所聯合会
■綱文

第22巻 p.568-643(DK220049k) ページ画像

明治33年5月17日(1900年)

是日第九回定期会第二日ノ会議ニ於テ、国家経済ノ方針ニ関スル儀審議サレ、委員附託トナル。二十二日第五日ノ会議ニ委員調査案上程サレ可決セラル。栄一、会長トシテ議事ヲ司宰ス。


■資料

明治三十三年五月開設 第九回商業会議所聯合会議事速記録 第三五―五五頁 刊(DK220049k-0001)
第22巻 p.569-576 ページ画像

明治三十三年五月開設
第九回商業会議所聯合会議事速記録  第三五―五五頁 刊
○議案第三号             (函館商業会議所提出)
一外国人ニ土地所有権及鉱山採掘権ヲ許与センコトヲ其筋ニ建議スルノ件
  理由 外国人ニ、土地ヲ所有シ鉱山採掘業ヲ営ムノ権ヲ許与スルノ可ナルハ、東京商業会議所ノ調査及其意見ニ徴シテ極メテ明白更ニ言ヲ費スヲ須ヰサルナリ、故ニ第九回聯合会ニ於テ本件ヲ議事ニ附シ、可決ノ上各商業会議所ヨリ是ヲ其筋ニ建議センコトヲ望ム
○中略
○議案第五号             (金沢商業会議所提出)
一輸出羽二重検査所ヲ横浜・神戸二港ヘ設置セラレンコトヲ政府ヘ請願ノ件
○中略
○議案第六号             (横浜商業会議所提出)
一絹織物模範工場設置建議ノ件
  理由 我カ邦ノ輸出貿易品タル其種類枚挙ニ遑アラスト雖トモ、就中輓今長足ノ進歩ヲナシ、殆ント生糸ニ亜クノ地位ヲ占ムルニ至レルモノヲ絹織物トナス、今斯業ノ現状ヲ顧ルニ、其多クハ羽二重・甲斐絹ノ未加工品ニ過キスシテ、未タ他ノ高等織物ヲ製織シ以テ海外ニ輸出スルヲ得サルハ、独リ当業者ノ遺憾トスル所ニ非ルナリ、故ニ若シ欧米ニ於ケル新式ノ機械ヲ購入シ、或ハ外国ヨリ熟練ナル専門ノ技師ヲ招聘シ、最新ノ学理ト実験トニ基キ撚糸再整染色及製織ニ充分ノ改良ヲ加ヘ、精巧ノ品ヲ試織セシメテ汎ク当業者ノ模範タラシメ、加フルニ一般当業者ノ需ニ応シテ内外国ノ織物ヲ解剖分析シ、其良否ヲ検査セシメテ、普ク当事者ノ参考ニ資スルカ如キ適当ナル保護奨励ノ道ヲ設ケナハ、倍々卓逸ナル高等織物ヲ産出シ、遂ニ多額ノ輸出ヲ見ル、蓋シ難キニアラサルヘク、又屡々耳ニスル羽二重ノ粗製濫造ヲ防キ、併セテ其改善ノ速カナルヲ期スルヲ得ヘシ
○議案第七号             (博多商業会議所提出)
一海陸運輸交通ノ連絡ヲ図ル義ニ付建議ノ件
  理由 我邦貿易通商上最モ不便不利ヲ感スルモノハ貨物運輸機関ノ不備不完全ナルニ在リ、而シテ我国ノ交通運輸上最モ不完全ナルハ海陸ノ連絡極メテ不備ナルニ在リトス、海陸連絡機関ノ不備ナル今日ノ如キ有様ニテハ、啻ニ通商貿易上不便ヲ感スルノミナラス、其不利施ヒテ輸出入品ノ価格ニ影響ヲ及ホスヤ頗ル大ナルモノアリ、斯クノ如クニシテ焉ソ能ク貿易ノ発達ヲ計ルコトヲ得ンヤ、抑モ内地鉄道ト商港トノ連絡我国ノ如ク不完全ナルハ、世界文明国中殆ント其比ヲ見ス、築港突堤ノ不完不備ハ姑ク擱クモ鉄道ノ軌条波止場ニ出ツルモノナキニ至テハ豈驚カサルヲ得ンヤ私設鉄道ノ事ハ今言フヘキ場合ニアラスト雖、差当リ官設鉄道ニシテ神戸・横浜ニ出ツルモノヽ如キハ一日モ早ク其軌条ヲ埠頭ニ
 - 第22巻 p.570 -ページ画像 
出シ、若シクハ既ニ出テタルモノハ便宜其設計ヲ改メテ、以テ船舶ヨリ陸揚シタル貨物ヲ直チニ貨車ニ積込ムヲ得セシメ、又ハ鉄道ヨリ来ル貨物ヲ直チニ船舶ニ積入ルヽノ便ヲ得セシメサルヘカラス、斯ノ如クセハ波止場ヨリ人力ノ貨車ヲ経テ鉄道停車場ニ至リ、若シクハ停車場ヨリ波止場ニ至ルノ費用ト時間ヲ省キ通商貿易上少カラサル利益アルヘシ、以上ノ理由ヲ以テ逓信大臣及農商務大臣ニ建議セント欲ス
○議案第八号             (博多商業会議所提出)
一模範工場設立ニ関スル議ニ付意見開申ノ件
    理由
  我国ノ海外貿易近年著シキ進歩ヲ為シタルハ喜フヘシト雖モ、動モスレハ輸入超過ヲ来シ、而シテ我国ノ物産海外ニ歓迎セラルヽノ度年次減退スル傾向アルハ転タ痛嘆ニ堪ヘサルナリ、蓋シ茶・生糸ノ如キ我国ノ特産物ハ年々輸出増進ノ実アルモ、苟モ技巧ヲ加ヘタル工業品ハ未タ大ニ増加シタリト謂フ能ハス、試ニ貿易年表ヲ見ルニ、欧米諸国ヨリ工芸品ヲ我国ニ輸入スルモノ益々多クシテ、我国ノ加工品未タ彼ニ需用セラルヽモノ多カラス、偶々之アルモ次第ニ声価ヲ失墜シテ又顧ミルモノナカラントス、陶器ノ如キ其技術初メハ我国ヲ師トシタル仏・独諸国ニ於テスラ今ヤ遥ニ我ヨリ精巧妙緻ナリ、絹織物ニ至テハ仏国ヲ始メ米国ノ発達実ニ驚クヘクシテ到底我ノ企テ及ハサル妙技ニ達セリ、固ヨリ原料ハ生糸ニシテ、我国又ハ支那・伊太利等ヨリ輸出スルモノ多キニ居レトモ、之ヲ製織スルニ至テハ原料ノ本場所タル我国ノ機業染術甚タ幼稚ニシテ遥ニ彼ノ米国ニ及ハス、況ンヤ独逸ヲヤ、仏国ヲヤ、現ニ我貿易当業者ハ、何時販路ノ杜絶ヲ見ルモ測ルヘカラサルヲ以テ常ニ危殆ヲ抱ケリ、畢竟機械ノ精巧ナラサルト理化学ノ応用未タ其ノ妙ヲ得サレハナリ、深ク慨スヘシト為ス、又陶器ハ我国ノ焼方・染色法及意匠ノ拙劣ナルニ由リ、常ニ仏国産・独逸産ニ圧倒セラルヽノ気味アリテ、今日ノ儘ニ推行クトキハ前途甚タ覚束ナシト云フ、其他紡績ト云ヒ、本綿織物ト云ヒ、形付ト云ヒ、絹織物仕上方ト云ヒ、到底欧米先進国ノ妙技ニ及フヘクモアラス、而シテ此等ノ技術ニ就テハ我政府ノ官吏及民間ノ有志夙ニ彼国ニ遊ヒテ研究セント試ムルモ、工業ノ秘密ハ宛カモ軍国ノ秘密ノ如ク厳ニ外人ニ窺知セシメス、随テ我国ノ人民ハ知ラス知ラス精巧ニシテ低廉ナル外国品ヲ需用スルヲ以テ、輸入額年々増加スルノ一方タルノミナラス、隣国支那ノ大市場モ将来遂ニ欧米諸工業国ニ占取セラレントス、抑モ支那ハ人口多ク富源渥ク、且ツ年ヲ追テ文化ニ赴クハ争フヘカラサル事実ナルヲ以テ、此市場ハ比隣国ヲ立ツル所ノ我国大花主ナラシメサルヘカラス、然ルニ惜哉、我国ノ工業幼稚ニシテ製品拙劣ナルカ為ニ、遂ニ空ク他国ニ領奪セラルルニ至ラントス、故ニ本会議所ハ切ニ望ム、将来我国輸出貿易上有望ナル物品、若シクハ輸入減退上内国産奨励ノ要アル物品ニ就キ、精良ナル新機械ヲ購入シ、熟練ナル外国技師ヲ聘用シテ、我国政府ノ手ニ模範工場ヲ起シ、以テ当業者ニ見習ハ
 - 第22巻 p.571 -ページ画像 
シメ、而シテ見習終リ民間ニ此事業行ハルヽニ至ラハ、模範工場更ニ別種ノ事業ヲ始メ常ニ民間工業者ノ指導ヲ為スハ、蓋シ工業立国ノ国是ヲ定メタル我国今日ノ一大急務ナリトス、例ヘハ絹織物ノ如キ、機械・織方・染色・仕上方等ニ関シテ幼稚ナル我国ノ工業者ハ、之ヲ放擲スレハ容易ニ外国ノ精良ニ企及スヘクモアラス、生糸ノ如キ年々五・六千万円ノ輸出アルモ若シ之ヲ織立テ一種ノ絹織物トシテ輸出スルトキハ一億円以上ヲ得ルコト難キニアラス、陶器ノ類亦然リ、然ルニ新機械ハ其価頗ル高ク且技術ハ一種ノ秘密ニ属スルヲ以テ、我国カ之ヲ知ルノ法唯非常ノ高給ヲ以テ適当ノ外国教師ヲ聘用スルノ外途アルヘカラス、而シテ幼稚薄資ナル民間工業者ハ到底自カラ之ヲ断行スル能ハサルヲ以テ、已ムナク政府ハ年々若干ノ国費ヲ投シテ模範工場ヲ起サンコトヲ望マサルヲ得ス、斯クノ如クシテ我国ノ工業品漸ク精巧ナルニ至ラハ、外ハ以テ支那ノ大市場ニ永ク我国ノ製品ヲ需用セシメ得ヘク内ハ以テ外品ノ輸入ヲ減スルヤ極メテ大ナルモノアラン、然ラハ則チ政府ハ摸範工場ノ為ニ好シ年々百余万円ヲ費ヤスモ、我国ハ工業発達技術改善ノ結果トシテ却テ年々数千万円ヲ利スルニ至ルヘキヤ明カナリ、或ハ政府ノ産業的事業ハ毎ニ失敗ニ終ルヲ以テ一切之ニ反対ナリト主張スルモノアレトモ、我国紡績事業ノ今日アルハ畢竟新町紡績所ノ摸範ニ由リテナリ、鉱山事業ノ如キ亦三池・佐渡ニ於ケル政府ノ企画ニ学フ事甚タ多シ、而シテ政府カ之カ為メニ損失セシ処ト其後民間ニ利益スル所トヲ比較スレハ、政府最初ノ損失ハ今日民間ノ巨利ヲ博スル原因ナリシヤ争フヘカラス、且ツ此ノ摸範工場タルヤ政府自ラ事業ヲ為スニアラス、民間事業ノ為メニ摸範的研究所ト為リ、将来工業発達ヲ資クル為ニ国費ヲ以テ製造改良法ノ研究ヲ為シ摸範ヲ示スニ過キサルモノナレハ、損失ハ勿論其期スル所ニシテ、唯他日大ニ民間工業ヲ利セントスルニ在リ
  右ノ理由ナルヲ以テ本会議所ハ切ニ摸範工場設立ノ急務ナルヲ信シ、玆ニ意見ヲ具シテ其筋ニ開申セント欲スル所以ナリ
○議案第九号             (大阪商業会議所提出)
    国家経済ノ方針ニ関スル意見開申書
凡ソ国家ノ健全発達ヲ期図スルヤ、必ス先ツ国家経済ノ方針ヲ確立シ施シテ悖ラス行ヒテ愆ラサルノ成案ナカルヘカラス、若シ国家経済ニ関シテ方針定ラス、其ノ施措スル所ニシテ取捨宜シキニ適セサルモノアラシメンカ、政府ノ期スル所国民之ヲ成ス能ハス、国民ノ成ス所政府之ヲ助クル能ハス、両者為ニ自ラ相和スルヲ得スシテ遂ニ共ニ労憊事ヲ敗ルニ至ルハ東西史実ノ明ニ教フル所ナリ、国政料理ノ任ニ在ル者豈ニ猛省セスシテ可ナランヤ
夫レ富国強兵ハ之ヲ唱フコト易ク之ヲ実ニスルコト極テ難シ、而シテ富国強兵ノ実ヲ得ルト否トハ国家経済ノ調理宜シキヲ得ルト否トニ依リテ定マルモノナリ、是レ本会議所カ敢テ此ノ大問題ヲ査究シテ卑見ノ在ル所ヲ開陳スル所以ナリ
今熟々我為政者カ政府事業ヲ経営スルノ実蹟ヲ尋ヌルニ、其ノ方針ノ
 - 第22巻 p.572 -ページ画像 
全ク積極的ナルコト別ニ喋々スルヲ要セス、政府事業ニシテ既ニ全ク積極的方針ニ依リテ経営セラレツヽアル以上ハ民間事業モ亦同シク積極的方針ニ依リテ経営セラレサルヘカラス、而シテ民間事業ヲシテ積極的方針ニ依リテ十全ナル進歩発達ヲ遂クルヲ得セシメンニハ、国民タル者固ヨリ十分ナル覚悟ト非常ノ奮発トヲ以テ業務ニ従事スルヲ要スルハ勿論、政府タル者モ国家ニ代リテ之ヲ庇護シ之ヲ助成スルヲ努メサルヘカラス、然ルニ我カ国ノ実況ヲ察スルニ、政府ハ口ニ専ラ民間事業進歩発達ヲ熱望スルヲ唱フレトモ、其ノ実際ニ於テハ一ニ政府事業ノ完成ヲ図ルニ急ナルカタメ、動モスレハ民間事業ノ振興ヲ抑制スルノ傾アリ、是ヲ以テ政府事業ノ著々年ヲ逐ヒテ成緒ニ就クニ反シ民間事業ハ屡々頓挫ヲ来シ、当業者ノ比較的ニ多大ノ苦心ヲ為スニ拘ハラス、其ノ発達甚タ緩慢ニシテ其ノ甚シキニ至リテハ却テ退歩ノ状アルモノアリ、是レ豈ニ国家経済上軽々ニ看過スヘキノ事相ナランヤ政府事業ノ完成固ヨリ忽ニスヘカラス、然リト雖モ真実能ク政府事業ノ完成ヲ期セハ必スヤ民間ノ事業十分ニ発達シ、経済利益大ニ増進シテ国費ノ負担力増大スルニアラサレハ能ハサルナリ、直言スレハ国民経済ノ充実ヲ図ラスシテ政府事業ノ独リ完キヲ望ムハ、猶ホ根柢ヲ枯燥シテ樹木ノ繁茂ヲ希ヒ、動力ヲ給充セスシテ機関ノ運転ヲ欲スルカ如キノミ、之ヲ要スルニ、民業ノ整理発達ヲ図ルハ即チ政府事業ヲ遂行完成スルノ要道タリ、此ヲ重ンシテ彼ヲ忽ニスルカ如キハ国家ヲ料理スルノ途ニアラサルナリ
夫レ然リ、而シテ今民業ノ整備発達ヲ謀ルヤ、国民タル者固ヨリ自ラ進ミテ経営努力スル所ナカルヘカラスト雖モ、本邦今日ノ如キ国家ノ生存上外ニ対シ内ニ対シ比較的ニ短少ナル期間ニ於テ比較的ニ長大ナル進歩ヲ期得スルノ必要アル邦国、殊ニ外国貿易事情極テ不利不良ニシテ輸入常ニ輸出ニ超過スルノ実勢アル邦国ニ在リテハ、単ニ国民ノ自営力ノミニ一任シテ其ノ目的ヲ成達スルヲ望ムヘカラス、政府タル者宜シク国情ヲ詳ニシ、国勢ノ趨ク所ヲ察シテ経済ノ方針ヲ定メ、適当ノ施設ヲ為シ、以テ国民ノ経営作業ヲ保護助長シ、以テ速ニ国力ヲ充実シ国勢ノ伸張ヲ図ラサルヘカラサルナリ、即チ本会議所カ政府当局ニ対シ切望スル所ノ第一義ハ、国家経済ノ方針ヲ飽クマテ積極的ニ取リ、宇内列強ノ行動ニ鑑ミ、国地天与ノ長所ニ基キ、速ニ商工立国ノ実ヲ挙ケンコト是レナリ、而シテ商工立国ノ実ヲ挙ケントスルヤ、其ノ手段固ヨリ一ニシテ足ラス、従テ此ニ之ヲ悉議細論スルヲ得スト雖モ、試ニ左ニ最要ナルモノ二・三ヲ挙示セントス
元来我カ外国貿易ハ其ノ基礎未タ堅固ナラス、殊ニ貨幣制度ノ変革後ハ輸入貿易ノ一方自ラ至大ノ利便ヲ占メ、輸出貿易ハ彼我経済事情ニ非常ノ懸隔アルカタメ彼我ニ対シ到底等分ノ競争力ヲ有スルコト能ハス、従テ若シ自然ノ運勢ニ放任シテ特ニ注慮補正スル所ナクンハ、我カ経済利益ハ、遂ニ殆ント増進スル能ハサルノ悲境ニ淪没シ了セントス、豈ニ遠ク慮リ深ク計ラスシテ可ナランヤ、而シテ彼ニ対スル我カ外国貿易上ノ不利点タル此ニ之ヲ細論スルヲ得スト雖モ、今試ニ其ノ最ナルモノヲ列挙スレハ
 一 資本ノ匱乏
 - 第22巻 p.573 -ページ画像 
 二 金利ノ貴高
 三 信用取引ノ幼稚
 四 商工業ノ小規摸
 五 商工智識ノ幼稚
 六 工産品種類ノ少数
 七 貿易機関ノ不備
等幾多ノ不利事情相応シ、共ニ働キテ彼ヲシテ貿易上益々優勝ノ勢力ヲ占メシメ、我ヲシテ倍々劣敗ノ地位ニ立タシメントス、換言スレハ益々我カ競争力ヲ弱ハラシメ、我カ輸出入貿易ヲシテ常ニ不利不良ノ情勢ノ下ニ立タサルヲ得サラシメ、動モスレハ輸入超過ノ勢ヲ大ニシ正貨ノ濫出ヲ促シテ止マス、然リ而シテ此ノ不良事相タル我カ貨幣制度ニシテ今日ノ儘ニ我カ輸出力ニシテ依然タラハ、逐年倍々其ノ度ヲ強メ遂ニ国力ヲ衰耗セルニ至ルヤ必セリ、故ニ政府当局ニ於テハ須ラク国家経済ノ全局ヲ観査シテ巧ニ妥当適良ナル保護政策ヲ施シ、内ハ有利多望ノ産業殊ニ原料ヲ内国産ニ取ル所ノ工業ヲ鼓舞奨励シ、外ハ直接若クハ間接ノ方法ヲ利用シテ大ニ輸出貿易ノ増進ヲ助クルニ努ムルヲ要ス、斯ノ如クニシテ後始テ外国貿易ノ順勢ヲ保占シ、正貨準備ノ豊大ヲ必期シ、依リテ以テ我カ貨幣制度ヲ鞏固ニシ、頼リテ以テ我金融事情ヲ健全ナラシメ、其ノ結果遂ニ我カ商工利益ヲ増進シ国富国力ヲ拡充スルヲ得ヘキナリ
斯ノ如ク適良妥当ノ保護政策ニ依リテ国産ノ発達貿易ノ拡大ヲ図ルト同時ニ、他ノ方面ニ於テハ種々ノ手段方法ヲ講シテ産業資本ノ充足ヲ図ラサルヘカラス、例ヘハ国庫金制度ヲ改正シテ安全ニシテ且ツ利巧ニ之ヲ活用スルノ道ヲ開キ、又ハ平易利便ナル法制ヲ設ケテ零砕資本ヲ糾合シ貯蓄心ヲ養成スルヲ力メ、又ハ特殊株式ノ所有権・土地所有権・鉱山採掘権等ヲ外人ニ附与シテ外資ノ輸入ヲ誘致スル等、為スヘキノ事極テ多ク、施スヘキ策甚タ尠シトセサルナリ、是レ実ニ政府当局者タル者ノ大ニ考慮画策スルヲ要スル所ナリ
幸ニ保護政策ニ依リテ以テ産業ヲ進メ貿易ニ利シ、又巧妙利便ノ方法ニ依リテ以テ資本ノ充足ヲ得タリトスルモ、若シ彼ヲ経営シ此ヲ運用スルノ任ニ当ル者ニシテ其ノ人ヲ得サラシメンカ、其ノ効果決シテ完全ナル能ハサルナリ、而シテ実業教育ノ力ニ依リテ非常ニ国家経済ノ発達ヲ助成シタルノ実蹟ハ、独逸国ノ最近世史ニ於テ最モ顕著ナルモノナリ、是ニ於テカ、本会議所ハ一面政府当局ニ対シ、益々労費ヲ吝マスシテ実業教育ノ進歩普及ヲ図ランコトヲ切望シテ止マサルナリ
以上開陳シ来レル所ハ、国家経済ノ方針ヲ確立シ、国家ノ生存上必ス先ツ施設セサルヘカラサル重要事項ヲ略述シタルニ過キサルナリ、然リト雖モ政府能ク之ヲ実施シ国民能ク之ヲ奉行スルニ於テハ、啻ニ幸ニ国家ノ利福ヲ保全シ得ルノミナラス、進ミテ以テ国力ヲ伸張シ、国運ヲシテ長ニ隆泰ナルヲ得シムヘキナリ、切ニ望ムラクハ快断明裁微意ノ在ル所ヲ容レ、以テ速ニ施設スル所アランコトヲ
右本会議所ノ決議ニ依リ意見開申候也
   年 月 日
                     会頭名
 - 第22巻 p.574 -ページ画像 
    内閣総理大臣
           宛
    各大臣
○議案第十号             (京都商業会議所提出)
一日本興業銀行ノ速成ヲ其筋ニ促スノ件
    理由
  日本興業銀行ハ生産ノ発達ヲ助長スルノ機関タリ、然ルニ創立委員ノ選定ヲ見タルニ止マリ、其創立ノ遅緩ナルハ甚タ遺憾トスル所ナリ、以是一日モ速ニ此機関ノ運用ヲ開始センコトヲ望ム
○中略
○議案第十二号            (京都商業会議所提出)
一納税ニ手形及公債利札ヲ使用セシムルコトヲ其筋ニ意見開申ノ件
    理由
  従来現金ノミヲ以テ納税セシムルノ制ヲ改メ手形及公債利札ヲ納税ニ使用セシムルトキハ、民間資金ノ円転ヲ裨益スルヤ甚タ大ナリ、以是適当ノ方法ニ依リ手形及公債利札ヲ以テ納税ニ使用セシメンコトヲ望ム
○議案第十三号
此経済案ハ之ヲ一篇ノ建議トシテ政府ニ提出シ議会ニ請願スルノ心組此経済策中特ニ土地所有問題ノ如キ、興業銀行問題ノ如キ、箇様ナル重要ノ問題ハ、単独ニ一意見書ヲ詳細ニ書認メ、併セテ政府ニ提出シ議会ニ請願スル心組
    経済策
一我国経済ノ現状ハ之ヲ自然ニ放任スヘキカ、将タ之ヲ矯正スルノ策ヲ施スヘキカ
 経済現状ノ輙《(較)》モスレハ変調ヲ呈シ逆境ニ陥ルモノ、官民事業ノ偏重偏軽ニシテ、戦後経営当初ノ見込ノ如クナラサルニ基因セサルハナシ、故ニ其偏重偏軽ヲ矯正スルニハ相当ノ策ヲ施サヽルヘカラス
一矯正ノ策ハ之ヲ消極ノ方針ニ由ツテ定ムヘキカ、将タ積極ノ方針ニ由ツテ定ムヘキカ
 官業ノ偏重ナル主トシテ軍備ノ拡張ニ由ルモノニシテ、各国交渉ノ有様ヨリ之ヲ打算スルニ、軍備ノ拡張ハ或ル程度迄之ヲ止ヲ得サルモノト云フノ外ナシ、然レハ官業ノ消極ハ到底謂フヘクシテ行フヘカラス、如カス民業ヲ積極的ニ発達セシメテ相互ニ並行セシメンニハ、而シテ官業ハ出来得ル限リ之ヲ抑制シ民業ハ其平均点迄伸張スルヲ目下適当ノ方針ト云フヘク、即チ所謂程度アル積極方針ヲ取ルヲ要ス
一官業ノ偏重ヲ抑制スルノ策如何ン
 軍備ハ到底縮少スヘカラサルモ、軍艦買入ノ如キ、砲台建築ノ如キ其事業ノ期限ヲ延長シテ二年ヲ三年、三年ヲ五年ニ成工セシメ、一時多額ノ支出ヲ抑ヘ得ルコト敢テ出来難キニアラス、其他官業ニ至リテハ中央地方ノ事業共ニ之ヲ縮少スルノ道ナキニアラス、且ツヤ政府通常ノ経費モ亦タ余輩ノ見ル処ニテハ尚ホ幾分カ節減シ得ルノ余地ヲ存セリ
一民業ノ偏軽ヲ伸張スルノ策如何ン
 - 第22巻 p.575 -ページ画像 
 目下経済ノ変調逆境ヲ矯正セントセハ、後来民業ヲ発達シテ縦令ヘ今日ニ輸出入不平均ノ甚タシキヲ見ルコトアルモ、終ニ之ヲ取返シ尚ホ大ニ国力ヲ進メ得ルヲ期セサルヘカラス
 後来民業ヲ発達スルノ策タルヤ他ナシ、曰ク資本ノ充実、曰ク事業ノ奨励、曰ク不生産的消費ノ抑制、曰ク民業ノ安固、此等ヲ実行セハ或ル程度迄民業ヲ発達セシメ、所謂其偏軽ヲ伸張スルコト蓋シ難カラサルナリ
一資本ヲ充実スルノ手段如何ン
 一 鉄道ヲ国有ニシ、民間資本ノ固定セルモノヲ流通セシメ、且ツ時機ヲ見計ラヒ之ヲ抵当ニ外資ヲ輸入スル事
 一 興業銀行ヲ速カニ開設スル事
 一 土地所有ノ権利、鉱山開掘ノ権利ヲ外人ニ許可シ及ヒ外人ヲシテ我国諸株券所有ノ便ヲ与ヘ、其資本ヲ投入スルノ道ヲ開ク事
 一 時機ヲ見計ヒ公債及諸債券ヲ外国市場ニ売出ス事
 一 外人ト共同資本ノ事業ヲ開クヲ便ニスル事
 一 信用取引ノ発達ヲ謀ル事
 一 清・韓・露国等トノ取引ニ付、機関銀行ヲ設クル事
一事業ヲ奨励スルノ手段如何ン
 一 輸出品ノ製造ヲ奨励シ、輸出品組合ハ相当ノ補助ヲ与ヘ其発達ヲ促ス事
 一 輸入品同様ノ物品ヲ国内ニテ製造スルモノヲ特別ニ保護スル事
 一 製造品ノ摸範タルヘキ工場ヲ設立シ、海外ニ商工業視察ノ為メニ及ヒ練習ノ為メニ商工業者ヲ派遣シ、総テ商工智識ノ普及ヲ謀ル事
 一 政府ノ物品ヲ買上クルニハ内国産ヲ取リ、又其代価ノ支払ヲ迅速ニシ、勉メテ内国産奨励ノ精神ヲ助長スル事
 一 運輸交通ノ機関ヲ完備シ、海陸ノ接続ヲ十分ニシ及ヒ其統一ヲ謀リ、特ニ内国産ノ運搬ヲ便利ニスル事
一不生産的消費ヲ抑制スルノ手段如何ン
 一 一般人民ノ貯蓄ヲ奨励スル事
一民業ニ従事スルモノヲシテ安心シテ営業セシムルノ手段
  兌換制度ヲ改良シ、金利ノ平準ヲ謀リ、勉メテ急劇ナル金融ノ緩急ヲ起サヽル事
以上ノ手段ヲ並ヒ行フテ民業ハ漸ク積極ニ復シ、官業却テ幾分カ其積極ノ度ヲ減スルトキハ、終ニ両者並行シテ食足リ兵足ルノ国運ヲ見ルノ日アルヘシ、云々
右提出候也
  明治三十三年五月十七日
                  東京商業会議所委員
                      井上角五郎
○議案第十四号            (京都商業会議所提出)
一鉄道国有ノ実行ヲ期シ、其筋ニ意見ヲ開申スルノ件
   ○議案第五号並ニ第十四号ハ、其後再ビ国家経済ノ方針ニ関スル建案ヨリ分離ノ上審議スルニ決シタレバ、コヽデハ特ニ理由書ヲ省略セリ。尚両案ニ
 - 第22巻 p.576 -ページ画像 
就イテハ本巻明治三十三年五月二十三日ノ条参照。


渋沢栄一 日記 明治三三年(DK220049k-0002)
第22巻 p.576 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三三年       (渋沢子爵家所蔵)
五月十七日 曇
○上略 午前十一時過東京商業会議所会員有志ノ催シニ係ル各地会議所員招宴ノ為ニ帝国ホテルニ抵ル、午餐後経済財政ニ関スル問題ニ付テ協議会ヲ開キタルモ、議事ハ会議所議場ニ於テセントノ動議アリテ、直ニ会議所ニ抵リ討論ノ後委員撰定ノ事トナリテ、十五名ノ委員ヲ撰定シテ、午後五時ニ閉会ス ○下略


明治三十三年五月開設 第九回商業会議所聯合会議事速記録 第二二―四三頁 刊(DK220049k-0003)
第22巻 p.576-585 ページ画像

明治三十三年五月開設
第九回商業会議所聯合会議事速記録  第二二―四三頁 刊
明治三十三年五日十七日午後三時開議
  出席委員     四十九名 ○氏名略
○上略
○会長(東京、渋沢栄一君) 議案ガタントアルケレドモ、国家経済ニ対スル方針ヲ鼇頭第一ニ議題ニスルカ如何ト云フコトヲ伺ツタノデスカラ、ソレガ爰ニキマリマセヌト此レガ議題ニナラヌノデゴザイマス
   〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○会長(東京、渋沢栄一君) 別ニ御異議ナイノデアリマセウ
○六十二番(東京、井上角五郎君) 先刻協議会ニ於キマシテ、国家経済ノ問題ニ付テハ委員ヲ選ンデ、各自ノ考ヘ即チ広ク輿論ヲ集メ、其委員ノ力ニ依ツテ起草シテ見ヤウト云フ御話デゴザイマシテ、今ヤ其問題ニ這入ツテ居ル、此所ニ至リマシテ東京商業会議所ノ提案トシテ提出スベキモノハ未ダゴザイマセヌ、又東京商業会議所ガ夙ニ此事ヲ憂ヒテソレソレノ手段ヲ取ツテ相当ノ研究ハ致シテ居リマスガ、此研究ノ結果未ダ纏ツタ所ハゴザイマセヌガ、併シ私ハ東京商業会議所カラ選出セラレテ出テ居ル所ノ委員即チ井上角五郎一個人トシテ此所ニ一ツノ提案ヲ致シタイ、其提案ナルモノハ委員会ニ於テ二・三ノ人ガ唱ヘ又広ク輿論ヲ探グレバ或ハ将ニ斯ノ如キモノガ今日ノ問題デハナカラウカト思フ所ノモノヲ箇条書ニ書認メテ、未ダ文章ト云フマデニモ至ツテ居リマセヌガ、ソレヲ一個人ノ名義即チ聯合会ノ一人ノ名義ヲ以テ提出致シタイト心得マスガ、ソレヲ提出シテ即チ起草委員ニソレガ廻リマスレバ私共ノ本懐デゴザイマスガ、此所デ提出シテ差支ゴザイマスマイカ
○会長(東京、渋沢栄一君) 別ニ差支ゴザイマスマイト考ヘマス
○六十二番(東京、井上角五郎君) 唯今此所ニ書イタモノガゴザイマシテ三・四冊ゴザイマス、皆サンノ中ヘ差上ゲルコトガ出来マセヌカラ三・四人ノ御方ニ差上ゲマシタガ、詰リ朗読致シマスケレドモ之ハ文章ニハナツテ居リマセヌ
○議案第十三号
 此経済策ハ之ヲ一篇ノ建議トシテ政府ニ提出シ、議会ヘ請願スルノ心組
 此経済策中特ニ土地所有問題ノ如キ、興業銀行問題ノ如キ箇様ナル重要ノ問題ハ、単独ニ一意見書ヲ詳細ニ書認メ、併セテ政府ニ提出
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シ議会ニ請願スル心組
   経済策
一我国経済ノ現状ハ之ヲ自然ニ放任スヘキカ、将タ之ヲ矯正スルノ策ヲ施スヘキカ
 経済現状ノ輙モスレハ変調ヲ呈シ逆境ニ陥ルモノ、官民事業ノ偏重偏軽ニシテ、戦後経営当初ノ見込ノ如クナラサルニ基因セサルハナシ、故ニ其偏重偏軽ヲ矯正スルニハ相当ノ策ヲ施サヽルヘカラス
一矯正ノ策ハ之ヲ消極ノ方針ニ由ツテ定ムヘキカ、将タ積極ノ方針ニ由ツテ定ムヘキカ
 官業ノ偏重ナル主トシテ軍備ノ拡張ニ由ルモノニシテ、各国交渉ノ有様ヨリ之ヲ打算スルニ、軍備ノ拡張ハ或ル程度迄之ヲ止ヲ得サルモノト云フノ外ナシ、然レハ官業ノ消極ハ到底謂フヘクシテ行フヘカラス、如カス民業ヲ積極的ニ発達セシメテ相互ニ並行セシメンニハ、而シテ官業ノ出来得ル限リ之ヲ抑制シ民業ハ其平均点迄伸張スルヲ目下適当ノ方針ト云フヘク、即チ所謂程度アル積極方針ヲ取ルヲ要ス
一官業ノ偏重ヲ抑制スルノ策如何
 軍備ハ到底縮少スヘカラサルモ、軍艦買入ノ如キ、砲台建築ノ如キ其事業ノ期限ヲ延長シテ二年ヲ三年、三年ヲ五年ニ成工セシメ、一時多額ノ支出ヲ抑ヘ得ルコト敢テ出来難ニアラス、其他官業ニ至リテハ中央地方ノ事業共ニ之ヲ縮少スルノ道ナキニアラス、且ツヤ政府通常ノ経費モ亦タ余輩ノ見ル処ニテハ尚ホ幾分カ節減シ得ルノ余地ヲ存セリ
一民業ノ偏軽ヲ伸張スルノ策如何
 目下経済ノ変調逆境ヲ矯正セントセハ、後来民業ヲ発達シテ、縦令ヘ今日ニ輸出入不平均ノ甚タシキヲ見ルコトアルモ、終ニ之ヲ取返シ尚ホ大ニ国力ヲ進メ得ルヲ期セサルヘカラス
 後来民業ヲ発達スルノ策タルヤ他ナシ、曰ク資本ノ充実、曰ク事業ノ奨励、曰ク不生産的消費ノ抑制、曰ク民業ノ安固、此等ヲ実行セハ或ル程度迄民業ヲ発達セシメ、所謂其偏軽ヲ伸張スルコト蓋シ難カラサルナリ
一資本ヲ充実スルノ手段如何
 一 鉄道ヲ国有ニシ、民間資本ノ固定セルモノヲ流通セシメ、且ツ時機ヲ見計ラヒ之ヲ抵当ニ外資ヲ輸入スル事
 一 興業銀行ヲ速カニ開設スル事
 一 土地所有ノ権利、鉱山開掘ノ権利ヲ外人ニ許可シ、及ヒ外人ヲシテ我国諸株券所有ノ便ヲ与ヘ、其資本ヲ投入スルノ道ヲ開ク事
 一 時機ヲ見計ヒ公債及諸債券ヲ外国市場ニ売出ス事
 一 外人ト共同資本ノ事業ヲ開クヲ便ニスル事
 一 信用取引ノ発達ヲ謀ル事
 一 清・韓・露国等トノ取引ニ付、機関銀行ヲ設クル事
一事業ヲ奨励スルノ手段如何
 一 輸出品ノ製造ヲ奨励シ、輸出品組合ハ相当ノ補助ヲ与ヘ其発達
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ヲ促ス事
 一 輸入品同様ノ物品ヲ国内ニテ製造スルモノヲ特別ニ保護スル事
 一 製造品ノ模範タルヘキ工場ヲ設立シ、海外ニ商工業視察ノ為メニ及ヒ練習ノ為メニ商工業者ヲ派遣シ、総テ商工智識ノ普及ヲ謀ル事
 一 政府ノ物品ヲ買上クルニハ内国産ヲ取リ、又其代価ノ支払ヲ迅速ニシ、勉メテ内国産奨励ノ精神ヲ助長スル事
 一 運輸交通ノ機関ヲ完備シ、海陸ノ接続ヲ十分ニシ及ヒ其統一ヲ謀リ、特ニ内国産ノ運搬ヲ便利ニスル事
一不生産的消費ヲ抑制スルノ手段如何
 一 一般人民ノ貯蓄ヲ奨励スル事
一民業ニ従事スルモノヲシテ安心シテ営業セシムルノ手段如何
 一 兌換制度ヲ改良シ、金利ノ平準ヲ謀リ、勉メテ急劇ナル金融ノ緩急ヲ起サヽル事
以上ノ手段ヲ並ヒ行フテ、民業ハ漸ク積極ニ復シ、官業却テ幾分カ其積極ノ度ヲ減スルトキハ、終ニ両者並行シテ食足リ兵足ルノ国運ヲ見ルノ日アルヘシ、云々
右提出候也
  明治三十三年五月十一日
                 東京商業会議所委員
                      井上角五郎
ト云フノガ、是ガ即チ私カラ今諸君ニ提出シヤウトスル意見ノ大体ヲ書キマシタノデ、此意見ハドウ云フヤウニスルカト云フト、之ヲ私共ノ考ハ文章ニ為サズシテ、政府ニ之ハ是デ建議シ、議会ニモ請願スル同時ニ是ダケノ重ダツタ箇条例ヘバ興業銀行ノ箇条、土地所有ノ箇条ノ如キ重ダツタ箇条ハ、其箇条ダケデ重ナル理由ヲ作ツテ矢張リ政府ニ建議シ、議会ニ請願スル、要スルニ吾々ノ経済ノ方針ハ斯様デアル其方針ノ一部特ニ大切ナルコトヲ挙ゲレバ箇様ナ風デアルト云フ風ニシテ、二重ニナル嫌ヒガアルガ決シテ差支ナイ、経済ノ根本的方針ヲ立テヽ尚ホ一部々々ノ方針ヲ立テタイ、是ヲ文章トシテ出スガ宜イガ勿論完全ナモノトモ認メマセヌ、大体ノ箇条ダケ書イテ置キマシタガ若シ委員ガ出来マスレバ委員ノ参考タルベキ原稿ト見做サレレバ実ニ本員ノ仕合セデゴザイマス、是ダケヲ申述ベマス
○五十四番(京都、中村栄助君) 唯今井上君ノ御意見ガ出マシタニ付テ、一応京都商業会議所ノ意見ノ中未ダ提出ニナラヌモノガゴザイマシテ、其事ハ唯今述ベラレマシタ資本充実ト云フ上ニ外資輸入ト云フ趣意ヲ以テ鉄道ヲ国有ニシタイト云フ意見書ガ出ルノデゴザイマス、多分今日出マセウト存ジテ居リマスカラ、之ヲ矢張リ委員ガ出来マスレバ御調査ノ上ニ御審議ヲ願ヒタイト存ジマス、唯今ノ議案モ段々井上君ノ弁明ニモゴザイマシタガ、是等ノコトモ唯ダ単ニ爰ニ説明ガゴザイマスカラ、尚ホ委員ガ選バレマシタ上ニハ充分細カニ此速成ヲ希望スルニ付テハ其趣意ヲ述ベタイ考デ居リマス、一言唯今ノ御意見ガ出マシタニ付テ申述ベマス
○二十七番(長崎、松田源五郎君) 唯今爰ニ附セラレテ居リマスノハ
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此第九号議案ニ付テ委員ヲ設クルヤ否ヤ、左様ニ心得マスガ
○会長(東京、渋沢栄一君) 今申シマシタノハ九号ト限ツタ意味デハナカツタノデ
○二十七番(長崎、松田源五郎君) サウ致シマスルト井上サンノ唯今御建議ニ付テノ委員ト云フコトニナリマスカ、ドウ云フ案ニ委員ヲ設クルカ、原案ガドレニ依ツテト云フコトニナリマス
会長(東京、渋沢栄一君) ソレハ会議ノ決著ニ依リマス、先ヅ目下ノ経済社会ニ付テト云フコトニナツテ居リマス
○六十二番(東京、井上角五郎君) 唯今私ノ申シマシタノガ早口デアツテ如何ハシウゴザイマスガ、国家経済ノ方針ニ付起草委員ト云フモノヲ御設ケヲ願ヒタイト私共ハ考ヘル、其起草委員ノ手ニ渡ルベキ問題ハ、議案三号・五号・六号・七号・八号・九号・十号、並ニ私ノ今唱ヘタモノハ其起草委員ノ手ニ渡シテ整理シタナラバ如何デアルカ
○二十七番(長崎、松田源五郎君) サウナリマスト、大阪ノ此九号議案ガ本ニナルト云フコトニナリマセヌカ、唯今井上サンノ御話ノト九号議案ノ標題ガ同ジモノデアリマスカラ、九号議案ノ委員ヲ挙ゲルトシテ、ソレニ井上サンノ御説ヲ附加ヘ、各議案モ……ト云フ順序ガ宜クハアリマセヌカ
   〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○三番(名古屋、上遠野富之助君) 唯今ノ二十七番ノヤウニ考ヘル、矢張九号ノ大阪提出ノ議案ト云フモノヲ爰デ議案トシマシテ、サウシテ委員ヲ設ケマシテ、デ唯今井上サンカラ出マシタヤウナモノハ委員ノ調査ノ場合ニ於テ矢張リ御出シニナツテ、方々カラ御出シニナツタモノト同一ノ取扱ヒニナルヤウニシタラバ宜カラウト思ヒマス、ソレカラ私ハ此委員ヲ設ケマスルニ付キマシテ、其委員ヲ設クル前ニ十分ニ一ツ皆サンノ御意見ヲ伺ウ方ガ宜クハアリマセンカト思ヒマスルデ直チニ委員ヲ設ケマシテ、サウシテ各会議所ニ斯ウ云フ考ガアル斯ウ云フ事情ガアルト云フコトヲ其委員ニ御話ニナルト云フヤウニスルハ同ジヤウナモノデハアルケレドモ、ソレヨリハ此席デ凡ソ皆サンノ御話ガ、唯今井上君カラシテ御述ベニナツタヤウナ風ニ皆御話ニナツテ大抵ノ御意向ガ能ク皆サンニ徹底シテソレカラ委員ト云フモノガ出来マスト、大変ニ此委員ノ取調上モ工合ノ宜イコトデアル、サウ云フコトニ願ヒタイト思ヒマス、ソレデ私共尚ホ此委員ト云フコトニ付テハ斯ウ云フ希望ヲ持ツテ居リマス、今井上君ノ御述ベニナツタヤウナ国家経済ノ方針ニ関シマスル意見ト云フコトハ、是ハ如何ニモ大体ノ将来国家ノ経済ガ斯クアルベキモノデ、斯ウセニヤナラヌト云フヤウナコトヲ御極メニナリマスル、即チ大経綸ノ取調ベ委員ニナリマスルガソレヨリハ此昨今ノ経済社会ニ付テ誠ニドウスレバ宜イ、兎ニ角東京ニ行ツタナラバドウカ宜イ御考ガアリハセヌカ、別段今日ノコトハドウモ宜イ考ハナイト思フガ、サウ云フヤウナ考デ出京シテ来タト云フヤウナ御話ハ先刻段々御話ニナツタ御方モアルヤウデ、先ヅ目下ノ急ヲ如何ニシテ、此応急ノ策トシテハ斯ウ云フ風ノ治療法ニシタイト云フ取調ベト、ソレカラ此前途ノ国家経済ノ方針ニ関スルコトヽ、自然私ハ二様ニナリハセヌカト思ヒマスデ、ソレヲ併セテ此委員ニ付託ス
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ルト云フヤウナ意味ヲ以テ委員ヲ指定シタイト思ヒマス
○二十九番(金沢、水登勇太郎君) 唯今ノコトハ国家経済ノ方針ニ関スル所ノ問題ト極ツテ居ル所ノ事柄デアル、唯今此問題ニ限ツテノミ御相談ヲシテ居ルト思ヒマス、ソレデ之ハ先刻協議会ニモ御相談ガアリマシタヤウニ、矢張委員ヲ選ンデ宜カラウト思ヒマス、併シ委員ヲ選ミマスルコトハ選ミマスル、而シテ各地ノ目下ノ状態ヲ述ベマスルコトハ之ハ余程参考ニモナルダラウト思ヒマスカラ、出来ベキダケサウ云フコトヲ私ハ希望致シマス、今三番ノ御話ニ目下ノ救済策ハ如何ニスルカト云フ問題モ出マシタケレドモ、之ハ是デ更ニ別問題トシテ御相談シテ宜カラウト思ヒマス、ソレカラソレニ因ミマシテ、先刻三十八番カノ御話デ当局ノ御方ノ御臨席ヲ願フト云フ御話モアリマシタガ、之ハ敢テ私ハ不同意ハ決シテ唱ヘマセヌガ、既ニ此委員ガ立チマシテ委員ガ相当ノ御調ベニナルコトヽ存ジマスル故ニ、私ハ若シソレ等ノコトガ出来マスレバ宜シ、若シ出来マセヌケレバ委員ガ自ラ進ンデモ政府ノ方針ヲ聞クト云フコトハ必要デアラウト思フテ居リマス、一概ニ臨席ヲノミ請ハナケレバナラヌト云フヤウナ畢竟事柄デモアルマイト思ヒマス、要スルニ私ノ云フ所ハ、兎モ角モ目下ノ経済ニ対スル事柄ニ付テノ矢張委員ヲ立テルノヲ第一ニ致シマシテ、ソレカラ漸次今三番ノ御説モ或ハ必要ダラウト思ヒマスカラ、是等ノコトモ又次イテ御相談ヲ願フコトニ致シタイト思ヒマス
○五十六番(熊本、堀部真臣君) 私ハ協議会ノ席ニ於テ、委員ノ選定ニ付テハ協議会デセズ、本会議ニ至ツテ十分ニ議論ヲ闘ハシテ、其上デ委員ヲ極メテ正式ニヤル方ガ宜シイト云フコトヲ述ベマシタ、熟々考ヘマスルニ、到底此事ヲ何時マデ申シテ居ツタト云フタトコロガ、唯ダ議論許リデ十分ナコトニ至ルマイト考ヘマス、又議案ト云フモ幸ヒ大阪ノ九号議案ト云フモノガアリマスカラシテ先ヅ之ヲ議題トシテ松田君ノ先刻述ベラレマシタ通リ先ヅ之ヲ本案トシ、ソレカラ井上君ノ建議サレタノモ併セテ付託シテ、又其他京都カラ出ルト云フコトモ御話モゴザイマシタ、ソレデ其委員ト云フノガ広ク地方ニ到テノ状況ト云フコトモアルコトデスガ、定数ハ十何名トカ云フコトモ協議会ニハ何誰カノ御話モアツタヤウデスガ、モウ少シ多クシテ到底本会議デモ十分ニ纏リガ附キマスマイガ、十五名以上二十名以下ト云フ委員ニナリマスレバ大概事情モ分リマシテ、余リ二十名ト云フノハ多ウ過ギルカ知レマセヌケレドモ、先ヅ十五名位ノコトデモ宜ウゴザイマセウカラ、サウシテ能ク取調ヘテ行ク方ガドウデモ纏ツテ行ケルト思ヒマス、其委員ノ選定法ハドウカ会長ノ御指名ニ願ヒタイト考ヘマス
○三十三番(大阪、三谷軌秀君) 私モ別ニ今爰ニ述ベルコトハゴザイマセヌガ、今問題ニナツテ居ル議案ニ付テ色々御意見モアルヤウデゴザイマスガ、私ノ考デハ詰リ大阪カラ提出シタ九号議案ヲ主トシテ、ソレニ外ノモノヲ後ニ付ケルトカ、外ノモノヲ主トシテ大阪ヲ後ニ附ケルトカシテ、ソレデ先刻井上君ノ示シタ所ノ三号以下ノ議案ト、ソレカラ井上君ガ提出セラレタ議案総計八ツノ議案ヲ一ツノ問題トシテサウシテ此第八号議案《(等カ)》ニ対シテ委員ヲ設クルト云フコトニ致シタイト考ヘマス、委員ノ数ニ付テハ今十五名以上二十名ト云フ御説モゴザイ
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マシタガ、余リ委員ノ多過ギルノハ却ツテ委員会ノ進行上如何ト考ヘマスルデ、先ヅ多クテモ十五名ニ止メタイト存ジマス、サウシテ指名ノ事柄ハ固ヨリ議長ノ指名デ宜シイ、先ヅ此問題ヲ決シテ、委員ノ選挙ヲシマシテ、而シテ他ノ問題ニ移ルコトニ致シタイ、今問題ニナツテ居ルノハ是ダケノ議案ガ問題ニナツテ、是ニ対シテ起草委員ヲ置クト云フコトガ問題ニナツテ居ルト考ヘマスカラ、先ヅ此事カラ決シテサウシテ他ノ問題ニ移ルコトニ致シタイト考ヘマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 私ガ此最初ノ議場ニ諮リマシタノガ、果シテ大阪ノ九号議案ダケ目的ニシテ申上ゲタ意味デハナカツタ、即チ今日ノ経済ト云フモノニ対シテ調査トカ若クハ起草トカ云フコトヲ、此議場ニ一議案トシテ御議シニナルカト云フコトヲ伺ツタ積リデアリマスカラ、即チ其事デ御議シガ始ツテ居ルト云フ考デ、経済問題ヲ此議場ノ議題トシテ、ソレニ附帯シタモノハ皆其委員ニ託スルナレバ託スルト云フコトヲ御極メニナレバ宜カロウト思フ、委員ノ名ヲ附ケルノハ国家経済ノ方針ニ関スル調査及ヒ起草委員トカ、サウ云フコトニナレバ順序デゴザイマスマイカ、私ノ御諮リシタ精神ハソレデアツタノデ
   〔「異議ナシ、異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○会長(東京、渋沢栄一君) 然ラバ此委員説ガ段々御多数ノヤウデゴザイマスルデ、別ニ御異議デゴザイマセネバ、今ノ案ヲ何レ何レノ案ヲ付託シテ宜ラウ、ト云フコトハ此案ヲ付託シヤウ、ソレハ否トカ応トカ云フコトハ後トデ極メルコトニシテ、兎ニ角委員ノ数ト指名ノ仕方ト云フコトヲ御極メヲ願ヒタウゴザイマス
○十六番(知多、井口半兵衛君) 私ハ此委員ヲ十五名トシタイ、正副会長ハソレニ加ハル、ソウシテ十三名選ムコトニシテ、各地方ヨリ公平ニ選挙スルコトニシタイ
○四十五番(松山、仲田槌三郎君) 今委員ヲ御定メニナルニ付キマシテ意見ヲ提出シテ御参考ニシタイト思ヒマス、私ハ委員デゴザイマスガ、当商業会議所ヨリ御照会モアリマシタガ、我ガ会議所ハ此案ハ重大ナ事件デゴザイマスルデ容易ニ決スルコトガ出来マセヌカラシテ、能ク取調ベテ議スト云フコトデ宿題ニナツテ居リマスカラ、私ガ会議所ヲ代表シテ此事ハ出シマセヌデゴザイマスガ、私一個ノ意見トシテ御参考ニ申上ゲテ置キタイト思ヒマス、ソレハ差支ハゴザイマスマイカ
○会長(東京、渋沢栄一君) 宜シウゴザイマス、此案ニ対シテノ御意見ヲ御述ベニナリマスノハ宜シウゴザイマス
○四十五番(松山、仲田槌三郎君) 私ハ此経済ノ問題ニ付キマシテ憂慮致シマスガ、就キマシテハ是ハ此経済ノ病ニ相遇フテ居リマスルコトハ原因ガアラウト思フ、ソレデ其原因ヲ能ク糺シテ治療ヲシマセヌケレバナラヌト思ヒマス、デ第一ニ此ノ如ク不経済ニナリマシタコトハ即チ金融ノ必迫ヨリ斯クナツタ訳デゴザイマスガ、原因ハ大体我国ハ農立国デアリマシタモノデゴザイマスカラ総テ此米ノ豊凶ニ依ツテ此利害ヲ生スル訳デアラウ、所デ一昨年ノ不作ヨリ起リマシテ大ニ経済社界ヲ乱シマシタ次第デアリマス、既ニ昨年ニ至リマシテ恢復ヲ致
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シマシタ、所ガ昨年ノ七・八月頃マデハ大ニ順潮ニ赴イテ居リマシタ其順潮ニ赴イテ居リマシタモノガ貿易ノ順ヲ得マシタ、固ヨリ其一ツデハゴザイマスガ、大体ソレニ米価ガ下落シマシテ、下落シマシタニ付キマシテハ米価ニ要スル所ノ代金ト申シマスルノハ大ニ減シマシタ所ガ不幸ニシテ又不作ノ声ヲ聴クヤウナコトニナリマシタ、其後カウシテ又再ビ米価ガ元ニ復シマシタヤウナコトデ、ソレ等ニ付キマシテハ矢張リ又異状ヲ来シマシタ、之ヲ我国四千万人凡ソ四千万人ノ人ニ五合宛トシマシテ二百万《(十)》石一日ニ要リマス、此ノ差ガ安イ時ヲ七円、高イ時ヲ十五円ト見マスルト、八円ノ差ヲ生ジ、八円ノ差ヲ生ジマスト百六十万円ト申シマスルモノ一箇月ノ金融ニ差ヲ生ジテ来マスル訳デ、之ヲ一箇年ニ積算致シマスルト彼是二千万円カラノ差ガ生ジテ来マス、之ハ大キニ此金融上ニ影響シテ来タモノト思ヒマス、又ソレダケノ融通ガ農家ニ附イテ来マシタガ、農家ハ貯蓄心ノ薄イモノデゴザイマシテ、必ズソレダケノ利益ガゴザイマスレバソレニ対シテ奢侈ニ耽ケル訳デアラウト思ヒマス、サウ致シマスルトソレダケノ需用ヲ増シマシタモノガ、即チ農家ノコトデゴザイマスルカラ奢侈ト申シマシタ所ガ衣服ヲ余計拵ヘル位ノモノデ、サウスルトソレガ即チ棉花ニ関係ヲシテ来マスルコトヽ思ヒマス、既ニ貿易表ヲ見マシテモ先ヅ輸入ノ多ウゴザイマスルノハ棉花デゴザイマス、所デ其棉花ハ金巾等ニナツテ輸出スルカト申シマスルト、之ハ其三分ノ一位シカ輸出シテゴザイマセヌ、アトハ皆内国デ費消シテシマイマス、是ハ即チ其農家ニソレダケノ余力ヲ生シサセマシタカラシテソレダケノ購買力ヲ来シタモノト思ヒマス、是等ニ付テモ能ク注意シテ療治致サンケレバナラヌコトヽ思ヒマス、又大体此貿易ニ於キマシテ一向之ヲ指揮致シマスル所ノモノガゴザイマセヌ、之ヲ取締リマシテ之ヲ奨励致シテ行キマスル所ノ機関ガゴザイマセヌ、今日外国ト日々戦フテ居リマスル此商戦ノ軍略ガ無ウテハ到底行カヌ、個人ノ戦ニナル、悪ク申セバ席旗ノ戦ト言ハナケレバナラヌ、是ニハドウシテモ参謀部ガナケレバ行カヌ、ソレヨリシテ其参謀部ヨリシテ外国ニ対シテモ売先ヲ糺シテ、物品ヲ取調ベルヤウナコトヲ致シマセヌケレバ行カヌ訳デアラウト思ヒマス、第一其指揮ヲスル所ノ機関ヲ設置シマスルコトヲ建議セラレンコトヲ希望致シマス、デ尚ホ又申上ゲタイコトガゴザイマスガ、委員ヲ御定メニナリマシテカラ申上ゲマス
○四十二番(浜松、内田政治君) 御説明伺ヒマシテゴザイマスルガ、帰スル所此国家経済ノ方針ニ関スル意見ト云フコトハ議長ノ御説明ノ通リ諸君御異議ハナイノデ、本員モソレハ其如クニ感ジマスルノデ、委員ノ数ト云フコトニ付テ未ダ一定シナイト考ヘマスルガ、其委員ノ数ハ多クハ二十名ト云フ説モアル、本員ノ考ヘル所ニ依ルト意見ノナイ……之ハ甚ダ露骨ナコトヲ申上ゲルヤウデゴザイマスガ、詰リ意見ノナイ者ヲ出シタ所ガ詰ラヌ話デゴザイマスカラ、ソレデ御意見ノアル所ヲ以テ纏メル方ガ肝腎デ、意見ノナイモノハ何時マデモナイモノデアルカト云フト、喧嘩ト云フモノハ吹掛ケラレルトスルト云フノハ順序デゴザイマスカラ、起草委員ガ出来マスレバ其起草ヲ以テ直チニ肯諾スルト云フコトハ期セラレン、大体多クノ委員ヲ拵ヘテ足手纏ヒ
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ニナツテ困リハシナイカト思ヒマス、御意見ノナイ人ハ止メタ方ガ宜イト、露骨ニ申セバ斯ウ云フコトデ、詰リ田舎カラ出テ参ルノハ東京ニ参リマシタナラバ諸君ノ御説モアラウカト云フノデ、世間ニ出テ人様ノ御意見ヲ伺ツテ心ヲ働カスト云ノデゴザイマスカラ、判断力ハ銘銘共持ツテ居リマス故ニ、幸ニ東京・大阪・京都トカソレソレ御意見ヲ御提出ニナツテ居リマスカラ、此地方ヲ以テ委員ノ数ニ定メマス、ソレカラシテ諸地方カラ御意見ノアル御方ハ此委員ニ挙ゲラレタ御方ニ充分ニ事情ヲ尽シ、其材料トナルベキモノハ充分ニ申上ゲル義務ガアルノデゴザイマスカラ、本員等モ蓄ヘテ居リマス、先ヅ委員ガ挙ゲラレネバ討論スル途ガナイト云フノデハゴザイマセヌカラ、此御方々ニ委員ヲ託スル、斯ウ云フノデ十五名ト云フノハ賛成ナノデ、此提出ニナツテ居リマス諸君ヲ挙ゲテ委員ノ数ト云フ斯ウ云フコトニ御指定ヲ希望致シマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 幾名ニナリマスカ
○四十二番(浜松、内田政治君) サウスルト京都ニ、大阪ニ東京、ソレカラ神戸ガ意見ガゴザイマス、詰リ此経済ニ付テノ御意見ノ御提出ニナツテ居ル所ヲ以テ組織スル……
○一番(赤間関、松尾寅三君)@最早申述マスル必要モゴザイマセヌガ出席ノ諸君各国家経済ノ上ニ付テ御意見ノナイ御方ハナイト考ヘマス何レモ確定ト云フダケノコトハ申上ゲラレヌデゴザイマセウケレドモ意見ノナイ御方ハナイト考ヘマスルデ、早ク穏カニ十五名トシテ前説ノ通リニ御願ヒ致シマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 委員ハ十五名説ガ多イヤウデゴザイマスガ、ソレニ依ツテ採決致サウト思ヒマス
   〔「異議ナシ、異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○会長(東京、渋沢栄一君) 十五名デ議長指名ハ御多数ノヤウデゴザイマスガ
   〔「異議ナシ、異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○会長(東京、渋沢栄一君) ソレデハ別ニ御起立ニ問ハヌデソレト決定シテ宜シウゴザイマスカ
   〔「異議ナシ、異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○会長(東京、渋沢栄一君) 然ラバ十五名ト致シマシテ、其委員ハ当席ノ議長ガ御指名致スコトニ仕リマセウ、委員ハソレデ決定致シマシテゴザリマス
○四十一番(高知、谷脇静一君) 私ハ其十五名ノ委員ガ賛成デゴザイマスガ、当会ノ正副会長、当商業会議所ノ委員即チ渋沢君・井上君ノ二名ヲ加ヘテ、他ノ十三名ハ曩キニ十一番カラ御説ノヤウデゴザイマシタ、サウ云フコトニ願ヒタイト思ヒマス
   〔「同意」又ハ「賛成」ト呼ブ者アリ〕
○六十二番(東京、井上角五郎君) 六十二番ハ唯今ノ御説ニ反対ヲ致シマス、如何ニモ東京商業会議所ノモノヲ二人マデ御入レ下サルト云フコトハ甚ダ名誉トハ心得マスガ、若シ是ガ会長ノ指名ノコトデアリマスカラ会長ガ指名スルナラバ私ハ一人其委員ニ加リタイト自ラ希望スルト同時ニ、当商業会議所ノモノヲ二人採ラズニ、会長ソレ自身ハ
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何時デモ総テノ委員会ニ臨ンデ、意見モ言ヒ得ルコトデゴザイマスカラ、各地ノ意見ヲ聞クガ為ニハ十四名ヲ各地カラ選ベト云フコトニ致シタイ、即チ正副会長トモト云フ制限ハ御除キニナルコトヲ希望致シマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 唯今ノ御説モゴザイマシタガ、今ノ会長指名ト云フコトデ人数ハ十五名ト極リマシタ上ハ指名ト云フコトヲ御定メニナツテカラ、又制限附ノ指名ト云フコトニナルト甚ダ会長ガ迷フ故ニ、前ニ御極メニナツタ通リテ宜シイデハアリマセヌカ
   〔「異議ナシ、異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○会長(東京、渋沢栄一君) 若シ必要トアツタナレバ会長自身ヲ指名スルカ知レマセヌ、ソレデハ此委員ニ託スル議案ハ何レ何レデ宜シイカト云フコトヲ御決シヲ願ヒタイ
○六十二番(東京、井上角五郎君) 私ガ総テノ議案ヲチヨツト一読致シタ所デ調ベタノガゴザイマスカラ御参考マデニ申上ゲマス、議案ノ第三号外国人ニ土地所有権・鉱山採掘ノ権利ヲ持タスルノ案ト申シマスル函館商業会議所カラ出テ居リマス、ソレカラ議案第五号輸出羽二重検査所ヲ神戸・横浜二港ヘ設置セラレンコトヲ政府ヘ請願ノ件金沢カラ出テ居リマス、此輸出羽二重検査所設置ト云フカ如キハ今日ノ貿易問題ニ非常ナ関係ノアルモノデゴザイマスカラ矢張リ是モ入レタラハ宜カラウ、ソレカラ第六号ノ横浜カラ出テ居リマス絹織物模範工場設置建議ノ件、ソレカラ第七号ノ博多カラ出テ居ル海陸運輸交通ノ連絡ヲ図ルノ建議、第八号ノ模範工場設立ニ関スルコト、ソレカラ大阪カラ出テ居ル国家経済ノ方針、第十号ノ京都カラ出テ居ル日本興業銀行ノ速成ヲ促ス件、此外ニ私ノ提出致シマシタル案ト併セテ今日印刷ニ掛ツテ居リマスガ、未ダ諸君ニ御配付ニハナリマセヌト云フ京都カラ出テ居ル鉄道国有ニ付テノ問題、都合十《(九)》デゴザイマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 十二号ハドウデス、納税ニ手形及公債利札ヲ使用セシムルト云フ意見
○六十二番(東京、井上角五郎君) 是モ加ヘテ宜シウゴザイマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 金融ニ関スル一ツノ改良方法ト云フテ宜ウゴザイマセウ、是モ御加ヘニナツテ差支ヘナイヤウデ
○六十二番(東京、井上角五郎君) ソレダケヲドウゾ御任セニナルヤウニ……
   〔「異議ナシ、異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○会長(東京、渋沢栄一君) 皆サマ能ク御了解ニナリマシテゴザイマスカ、三号・五号・六号・七号・八号、ソレカラ九号・十号・十二号ソレカラ六十二番ノ井上君カ今申述ベラレマシタ案デアリマス
○六十二番(東京、井上角五郎君) モウ一ツ京都カラ鉄道国有ノ案ガ出テ居リマス、ソレハ印刷ニナリマセヌ
○会長(東京、渋沢栄一君) サウデスカ、京都ノ会議所ニ伺ヒマスガ
   〔「今日必ズ出ルコトニナツテ居リマス」ト呼ブ者アリ〕
○会長(東京、渋沢栄一君) ソレデハ是ハ未来ノ約束デゴザイマスカラ、出タラバ此委員ニ付託スル……
   〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
 - 第22巻 p.585 -ページ画像 
○会長(東京、渋沢栄一君) 左様致シマスレバ此委員ハ十五名成立致シマシタデ委員ノ御指名ヲ致シマス、赤間関ノ松尾寅三君、名古屋ノ奥田正香君、阿波ノ川真田徳三郎君、仙台ノ伊沢平蔵君、神戸ノ杉山利介君、函館ノ斎藤又右衛門君、横浜ノ大谷嘉兵衛君、鹿児島ノ宮里正静君、長崎ノ松田源五郎君、金沢ノ水登勇太郎君、大阪ノ三谷軌秀君、岡山ノ香川真一君、京都ノ中村栄助君、熊本ノ堀部直臣君、東京ノ井上角五郎君、此十五名ニ御依頼ヲ致シマス
○二番(名古屋、奥田正香君) チヨツト伺ヒ置キマスガ、自分モ委員ノ一名デ御指名デゴザイマスガ、私共ノ所カラ二名出テ居リマスカラ願クハ人名デナク会議所デ何レデモ出席シテ宜シイト云フコトニ願ヒマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 会議ノ御評議デゴザイマスガ、個人ニ極メマスカ、或ハ若シ場合ニ依リ又ハ地方ニ依ツテハ御旅行シタ御方ハ相代リ合ウコトガ出来ルト極メマスカト云フノデ
   〔「ソンナ例ガアリマスカ」ト呼ブ者アリ〕
○二番(名古屋、奥田正香君) アリマス、是マデソンナ例ガアリマス
○十九番(神戸、杉山利介君) 唯今二番カラノ御話ガ出テ居リマシテ会議所カラ二人或ハ三人出テ居ラルヽ所モアルヤウニ思ヒマスカラ、之ハ代リ合ツテヤリマスコトヲ御許シニナルコトヲ願ヒタイ
   〔「賛成、々々」ト呼ブ者アリ〕
○会長(東京、渋沢栄一君) ソレデハ此委員会ノ御相談ニ任カシタラバ宜イデハゴザイマセヌカ、サウ此処デチヤント誰デモ随意ニ出ルト云フコトニナサイマセヌデモ、奥田君ノ御出席ノナイ時分ニハ名古屋ノ何誰カ出テ御相談スルコトガ出来ルト云フヤウニ極メテ置イタ方ガ宜イデハアリマセヌカ
   〔「異議ナシ、異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○会長(東京、渋沢栄一君) 然ラバ今御指名致シタ委員ハ御苦労ナガラ御承諾ヲ願ヒマス


渋沢栄一 日記 明治三三年(DK220049k-0004)
第22巻 p.585 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三三年     (渋沢子爵家所蔵)
五月十九日 晴
午前商業会議所聯合会ヲ開ク、午後二時議事ヲ了シ、松方大蔵大臣ヲ官舎ニ訪フ、聯合会出席ノ事ヲ請フモ承諾ヲ得ルニ至ラス、更ニ山県総理ヲ訪フテ同シク之ヲ請フモ同意ヲ得サリシ ○下略
五月二十一日 晴
午前農商務省ニ抵リ、大臣ニ面会シテ、会議所ニ出席ノ事ヲ請フモ同意ヲ得ス ○下略


明治三十三年五月開設 第九回商業会議所聯合会報告 第五五―六〇頁 刊(DK220049k-0005)
第22巻 p.585-588 ページ画像

明治三十三年五月開設
第九回商業会議所聯合会報告  第五五―六〇頁 刊
    ○調査委員報告
○財政経済ノ方針ニ関スル件 議案第三号・第五号・第六号・第七号第八号・第九号・第十号・第十二号・第十三号・第十四号ヲ一括シテ十五名ノ委員ニ調査ヲ附託シ、松尾寅三・奥田正香・川真田徳三郎・伊沢平蔵・杉山利介・斎藤又右衛門・大谷嘉兵衛・宮里正静・松田源
 - 第22巻 p.586 -ページ画像 
五郎・水登勇太郎・三谷軌秀・香川真一・中村栄助・堀部直臣・井上角五郎ノ諸君委員トナリ、審議ノ末左ノ如ク報告ス
    財政経済ニ関スル調査委員報告
全会ノ附託ニ係ル財政経済ニ関スル調査ノ件篤ト遂審議候処、第三号第五号乃至第十号・第十二号乃至第十四号議案中独リ第五号議案ヲ別ニ議スヘキモノトシ、其余ヲ一括シテ別紙ノ如ク相決シ候間、此段及御報告候也
  明治三十三年五月二十一日
              財政経済ニ関スル調査委員長
                      井上角五郎
   第九回商業会議所聯合会々長 男爵 渋沢栄一殿
(別紙)
    国家経済ノ方針ニ関スル意見
 凡ソ国家ノ健全ナル発達ヲ期図スルヤ、必ス先ツ国家経済ノ方針ヲ確立シ、施シテ悖ラス行ヒテ愆ラサルノ成案ナカルヘカラス、若シ其ノ成案ナカランカ、政府ノ期スル所国民之ヲ成ス能ハス、国民ノ為ス所政府之ヲ助クル能ハス、両者自ラ相和スルヲ得スシテ、遂ニ共ニ事ヲ敗ルニ至ル、豈ニ猛省セスシテ可ナランヤ
 熟々政府事業ヲ経営スルノ実蹟ヲ尋ヌルニ、其方針ノ全ク積極的ニ出ツルコトハ別ニ喋々スルヲ要セス、戦後経営ニ於テ特ニ然リト為ス、本会モ亦タ各国交際ノ現状ヨリ之ヲ考フルニ、政府事業就中軍備ノ当ニ積極的タルヘキヲ信シテ疑ハス、勿論軍備ト雖トモ尚ホ軍艦買入ノ如キ、砲台建築ノ如キ、期限ヲ延長シテ一時多額ノ支出ヲ抑ヘ難キニアラス、其他ノ政府事業ニ至リテハ中央・地方共ニ之ヲ縮少シ得ヘク、且ツヤ政府通常ノ経費モ亦タ幾分カ節減シ得ルノ余地ヲ存セリ、故ニ此等ハ須ラク速ニ節減ノ手段ヲ講セサルヘカラス而シテ政府事業ノ全ク積極的方針ニ依リテ経営セラルヽト同時ニ、民間事業モ亦タ積極的ニ依リテ経営セサルヘカラス、蓋シ真ニ政府事業ノ完成ヲ期セハ必スヤ民間ノ事業ヲ発達シ、経済ノ利益ヲ増進シテ国費ノ負担ニ耐ヘ得ルヲ期セサルヘカラサレハナリ、然ルニ実際ハ之ニ反シ、政府ハ専ラ政府事業ノ完成ヲ図ルニ急ナルカ為メ、動モスレハ民間事業ノ振興ヲ抑制シ、政府事業ノ着々年ヲ逐ヒテ緒ニ就クニ拘ハラス、民間事業ハ発達緩慢ニシテ却テ退歩ノ状ヲ呈セリ、是レ豈ニ軽々ニ看過スヘケンヤ
 然リ而シテ、民業ヲ発達セシメ政府事業ト相応シ、共ニ倶ニ充分ナル成績ヲ収メント欲セハ、詳ニ其原因ヲ研究シテ矯正スルノ策ヲ取ラサルヘカラス、今玆ニ民間事業ノ発達セサル所以ノ原因ヲ列挙スレハ
  一 資本ノ充実セサルコト
  二 商工事業経営ノ適良ナラサルコト
  三 貿易機関ノ整頓セサルコト
  四 運輸交通機関ノ完備セサルコト
 以上四項ハ目下経済ノ変調ヲ呈シ逆境ニ陥リタル原因ニシテ、戦後経営ノ漸ク完備シ政府事業ノ緒ニ就クト共ニ、就中資本ハ匱乏シテ
 - 第22巻 p.587 -ページ画像 
金利ハ高貴トナリ、之ヲ此儘ニ放任スルトキハ根柢ヲ枯燥シテ樹木ノ繁茂ヲ望ムカ如ク、国家ノ健全ヲ希フモ豈ニ得ヘケンヤ、故ニ国民一般ニ協心戳力シテ此等ノ原因ニ対シ矯正スヘキハ論ヲ俟タスト雖トモ、政府タルモノ豈ニ之ヲ庇護シ助成セサルヲ得ンヤ、請フ左ニ之ヲ矯正スルカ為ニ施設スヘキ策ヲ述ヘン
 第一 資本ノ充実ヲ期スルコト
  一 興業銀行ノ設立ヲ迅速ニシ工業資金ヲ疏通スルコト
  二 金庫ノ制ヲ改正シテ国庫金ノ運用ヲ敏活ニシ、其出納ヲ簡明ニスルコト
  三 小切手ヲ納税ニ使用スルコト
  四 抽籤割増ノ制ニ由ツテ貯蓄ヲ奨励シ、以テ民間零砕ノ資ヲ集ムルコト
  五 土地所有権・鉱山採掘権ヲ外人ニ許可シ、及ヒ外人ヲシテ我カ公債・株式其他有価証券ヲ所有セシムル便ヲ与ヘ、以テ自然外資輸入ノ途ヲ開クコト
 第二 商工事業経営ノ適良ヲ期スルコト
  一 実業学校ヲ増設シ商工業者ノ智識ヲ啓発スルコト
  二 商工業練習ノ為メ有為ノ青年ヲ海外ニ派遣シ、及ヒ視察ノ為メ渡航スルモノヲ保護シ、特ニ其取締ヲ完全ニシ、海外ノ事情ヲ熟知シ商工ノ事業ニ練達セシムルコト
  三 工業試験場ヲ拡張シ且ツ新ニ工産品模範工場ヲ設立シ、技術ヲ練磨シ、製造ノ発達ヲ奨励スルコト
  四 特別ノ事情アル輸入物品ト同一物品ノ製造者ニ対シ免税其他適当ノ保護ヲ与フルコト
  五 政府需用ノ物品ハ力メテ内国産ニ取リ、内国産奨励ノ精神ヲ助長スルコト
 第三 貿易機関ノ完備ヲ期スルコト
  一 神戸ニ東亜貿易ノ機関銀行ヲ設立シ、横浜正金銀行ト相応シ共ニ通商貿易ノ利便ニ供スルコト
  二 通商貿易ノ発達ヲ図ル為メ必要ノ地ニ領事館ヲ置ク事
  三 重要物産同業組合ヲ督励補助シ、其ノ業務ヲ釐革シ、其ノ弊害ヲ矯正スルコト
 第四 運輸交通機関ノ完備ヲ期スルコト
  一 鉄道其他運輸交通ノ機関ヲ速成シ、以テ各部ノ統一ヲ保チ、海陸ノ連絡ヲ謀リ、且ツ特別運賃ノ制ヲ立テ、内国製品ノ運搬ニ便ヲ与フルコト
  二 航海奨励ノ保護ヲ受クル船舶ヲ使用スル運送業者ハ勉メテ運賃ヲ低廉ニシ、内国産ノ輸出ヲ便利ニスルコト
 以上開陳シ来レルモノハ国家ノ生存上必ラス施設セサル可ラサル目下ノ重要事件ナリトス、若シ夫レ官民事業ノ積極的方計ヲ取ルノ日ニ当リテハ、自ラ一般人民ノ所得ヲ増加シ、不生産的消費ヲ増進スルコトアルヲ免カレ難シ、是レ本会ノ前段ニ於テ貯蓄奨励ノ方法ヲ設ケタル所以ニシテ、単ニ資本ノ充実ヲ計ルノ主旨ノミニ出タルニアラサルナリ、且ツヤ民間事業ノ創設又ハ拡張スヘキモノ多々アル
 - 第22巻 p.588 -ページ画像 
ノ今日ニ於テハ、人民ヲシテ安心シテ起営スルコトヲ得セシメサルヘカラス、於是乎本会ノ政府ニ希望シ特ニ日本銀行ニ注意ヲ請ハントスルハ、彼ノ金利ヲ高低スルニ当リテヤ成ルヘク経済ノ実況ニ鑑ミ勉メテ急劇ノ変動ヲ避ケ、従来動モスレハ実業家ヲシテ不安危懼ノ念ヲ懐カシメタルカ如キ行動アリシモノ之ヲ後来ニ戒シメラレンコト是ナリ
 本会ハ以上ノ意見ヲ具シテ之ヲ当路ノ参考ニ供ス、切ニ望ラクハ、快断明裁速ニ之ヲ実行シ、経済ノ現状ヲシテ官民事業倶ニ共ニ発達拡張セシムルヲ期センコトヲ


渋沢栄一 日記 明治三三年(DK220049k-0006)
第22巻 p.588 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三三年       (渋沢子爵家所蔵)
五月二十二日 曇
○上略 九時半、商業会議所聯合会ニ列ス、終日議長席ニ在テ議事ヲ整理ス ○下略


明治三十三年五月開設 第九回商業会議所聯合会議事速記録 第九九―二一七頁 刊(DK220049k-0007)
第22巻 p.588-640 ページ画像

明治三十三年五月開設
第九回商業会議所聯合会議事速記録  第九九―二一七頁 刊
明治三十三年五月二十二日午前十時三十分開議
  出席委員     四十四名 ○氏名略
○会長(東京、渋沢栄一君) 諸君、コレヨリ開会ヲ致シマスガ、今日ハ此財政経済ニ関スル調査委員ノ報告カ御座リマスルデ之レヲ議題ト致シタウゴザイマス、昨日ハ午後カラ差支ヘカゴザリマシテ欠席ヲ致シテ相済ミマセヌデ御ザイマシタ、チヨツト其段御断リヲ致シテ置マス、コレヨリ調査委員ノ報告ヲ議題ト致シマス、朗読ヲ致サセマス
   〔書記調査報告書ヲ朗読ス〕
○中略
○六十二番(東京、井上角五郎君) 本員ハ此所ニ於テ先ヅ委員会ノ経過並ニ大体ノ説明ヲ致ソウト考ヘマス、本月十七日本会ニ於テ十五名ノ委員ヲ挙ゲラレマシテ、十八日ニ会合ヲ致シマシタ、而シテ委員長ニハ井上角五郎ヲ選挙セラレ、其一日ハ専ラ此問題ノ討議ニ日ヲ費シマシタ、サウシテ三谷軌秀君・中村栄助君並ニ井上ヲ挙ケテ起草ヲ致サセルコトニ相成リマシタ、其結果起草委員ノ起草致シタルモノヲ昨日問題トシテ終日討議ヲ尽シ、即チ諸君ノ前ニ提出致シタ所ノ案ヲ得マシタ、勿論之ヲ以テ財政経済ニ関スル方針ヲ立テ得タルモノデアル完全ナルモノデアルトハ申シ兼ネマスケレドモ、委員諸君ガ十分ニ骨ヲ折ツテ相当ニ尽力シタト云フコトハ諸君ニ於テ御認メヲ願ヒマス、元来我カ日本国ハ経済ニ就テ如何ナル方針ヲ採ルベキモノデアルカ、実ニ此経済ノ方針ガ定ラヌト云フ事ハ甚ダ困ツタ事デアルト云フ事ハ世間一般ノ議論デアツテ、今其方針ハ如何ニスベキカト云フニ、此国ノ現状ハ如何ナルモノデアルカト云ハヾソレデ充分デアル、我国カ外国ト交際ヲ開イテ以来日清戦争以前ニ十五・六・七年ノ当時ニ立返ツテ諸君ガ御考ニナツタラドウデアル、其当時ニ日本ノ経済ハ積極的デナケレバナラヌ、何故カ資本ハ決シテ充実セヌ、金利ハ外国ヨリ高イノデアル、商工業ハ甚ダ面白クナイ、ソレカラ外国貿易ガ其当時ハ未ダ条約改正ガ出来テ居ナカツタ為メ貿易ノ機関ガ整頓シテ居ナイカラ
 - 第22巻 p.589 -ページ画像 
日本ノ品物ヲ外国ニ輸出スルニモ外国人カ之ヲナス、外国ノ品物ヲ日本ニ輸入スル之モ外国人ガナス、日本人ハ居ナガラニソレヲ待ツテ居ルト云フ有様デアツテ、ドウカ之ハ十分ニ矯正ヲシナケレバナルマイ其原因ヲ調ベテ何トカ之ヲ矯正シナケレバナラヌト申サレタノハ明治二十五・六・七年ノ際デアツタガ、ソレハ仮リニ日清戦争ナカリシ我日本国トシテモヤラナケレバナラヌ所ノ仕事デアツテ、日本経済ノ方針ハ飽迄積極的デアルベシト云フ事ハ明カナ事デアル、彼ノ戦後軍備拡張ト云フコトヲ政府ハ致サレタ、之ニハ我々モ賛成ヲ表シタモノデアツテ、又今日ニ於テモ止ムヲ得ナイモノト信ジテ居ル、併シ今日ハ国費モ既ニ三倍ノ多キニ至リ、公債ノ利子ト云フモノモ是迄ニナカツタ多額ノモノヲ出サナケレハナラヌト云フ時ニ当ツテ、此経済ハ如何ニスベキカト云フ事ハ大イニ考ヘナケレバナランノデアル、一体我国ノ有様ニ於テハ戦争ナカリシト雖モ経済ノ方針ハ積極的ナラサル可ラザルモノデアルガ、今日ニ至ツテハ益々其積極的方針ヲ取ラナケレバナラヌト云フ事ハ分リ切ツタ事デアル、事業ノ方モ一層其強味ヲ来シタ、彼ノ戦争後償金ノ這入ツタ際ニ於テモ余程万事ニ注意ヲシナケレバナラヌ筈デアルノニ、事業熱非常ニ膨脹シ、種々ノ事業ヲ計画シテ甚シキハ山ノ上ヘ鉄道ヲカケテ見ヤウ、又甚シキハ東海道ト北海道ト通ジタ「カナル」ヲ起シテ見ヤウナドト云フカ如キ、実ニ其目的モ分ラザル様ナ事業ヲサヘ企テタルモノガアルト云フ如キ、其責決シテ政府ニアリト言ヘナイ、我々人民ニアルノデアル、我々人民ハ大ニ其当時ヲ回顧シテ後来ヲ慎マナケレバナラヌト云フ考デ居ルカラ、戦後ノ経済事情ニ於テ或部分ハ我々ハ其責ヲ分ツ積リデアルガ、併シ大体ニ於テ政府ガ此国ガ当然取ラナケレバナラヌ所ノ積極的ノ方針ト言フモノヲ取ラヌト云フ疑ガアルノデアル
今輸出入ノ平均ヲ計ルト云フニ於テ、少シ輸入ガ超過シテ来ルト直ニ金利ノ引上ゲヲスルノデアル、成程金利ノ引上ゲト云フ事ハ一時輸出入ノ不平均ヲ抑ヘルコトハ出来ル、又二十八・九年ノ如キ甚シク人民ガ事業熱ニ浮カサレタ時ニハ其効用モアルケレドモ、大体ニ於テ此輸出入ノ不平均ハドウ云フ原因カラ起ツテ居ルカト云フ事ヲ能ク調査スルト、之ハ即チ政府ガ軍備拡張其他ノ事業全般ニ於テ入費ヲ使ウ、之ハ止ムヲ得ナイトシテモ、兎ニ角入費ヲ使ウガ為メニ即チ其金ガ外国ヘ出テ、其結果トシテ不生産的ノ輸入ガ超過シタト云フノガ輸出入不平均ノ一ノ原因、又一ノ原因ハ経済社会ニ積極ノ方針ヲ取ラヌト云フ事ニ付テハ、鉄道ノ「レール」其他ノ原料ヲ買入レルト即チ生産的ノ輸入ノ方ヲ多クシナケレバナラヌト云フ事ニナルカラ、輸出入ノ不平均ヲ生ズルト直ニ金利ヲ引上ゲル、其結果ハドンナモノカ、イツモ金利ヲ引上ゲタ結果ハ生産的ノ輸入ヲ減スルト云フ事ハ少ナイ、何ニ致セ政府ノ方針ナルモノハ其政府事業ヲ或程度迄積極ニスルガ当然デアルト同時ニ、又此民業ノ方モ積極ニシナケレバナラヌノデアル、ソレハ軍備拡張ノ如キ、軍艦買入・砲台建築ノ如キ、二年ヲ三年ニ延バスコトモ出来ヤウ、其他ノ事業ニ至ツテモ大体ヲ倹約スレバ倹約ハ出来ルノダカラ、サウシタラ幾ラカ政府ノ費用ニ於テモ減ジ得ル事ガ出来ル、ソレハ是非断行シテ貰ヒタイ、サウシテソレ丈ケ民業ノ方ヘ力ヲ
 - 第22巻 p.590 -ページ画像 
入レテ之ヲ進メテ貰ヒタイノデアル、ドウカ外国カラ買入レテ居ル所ノモノデモ我国デ出来ルモノハ、之ヲ我国デ求メルヤウニシテ貰ヒタイ、我々ハ戦後経営ノ為メニ多クノ資本ヲ欠乏セシメラレタ、従テ金利ハ騰貴スルト云フ様ナコトトナリマシタ、コレニ書イテアル四ツノ原因ノ中第一ノ資本ノ充実ト云フ事ハ速ニ計ツテ貰ヒタイノデアル、ソレカラ我々ガ日本銀行ヘ注意ヲ望ムノハ、此金利ノ引上ゲニハ相当ノ注意ヲ用ヒテ、我々人民ヲシテ安心シテ商売ノ出来ル様ニシテ貰ヒタイ、要スルニ資本ノ充実セザル事、商工業経営ノ適良ナラザル事、運輸交通機関ノ完備セザル事《(貿易機関ノ整頓セサル事脱カ)》、此四ツノ原因ガ積極ナラザル可ラザル民業ヲシテ此変調ヲ来サシメタルモノト思フカラ、此四ツニ対シテハ各々相当ノ手段ヲ尽シテ之ヲ正シテ往クガ宜カラウ、我々ハ敢テ一時此際ニドンナ姑息ナ事ヲシテモ、此変調ヲ救ヒタイト云フモノデハナイ、恰モ下痢ヲ病テ居ル者ニ向ツテ下手ナ医者ガ下痢ヲ止メル薬ヲ用ユルヤウナ事ハ望マナイ、凡ソ下痢スル病人ガアツタナラバ更ニ一層下痢サシテ置テ、然ル後ニ相当ノ根治薬ヲ用ユルト云フノハ当然デアルカラ、一時金利ヲ引上ゲテ輸出入ノ不平均ヲ抑フルト云フ姑息ナ事ヲ望ムノデナイ、三・四年ノ間ニ十分練リ抜イタ考ヘヲ以テヤツテ貰イタイト云フノデス、之ガ即チ委員報告ノ大体デアリマス、尚ホ逐条ニ付キマシテハ御尋ネニ応ジテ一々御答ヘ致シマス、終リニ一言致シマスガ、例ヘバ横浜ヨリ出テ居ル絹織物模範工場設置ノ件、之ハ我々モ其必要ヲ認メテ居リマス、之ハ賛成ヲスルト同時ニ別ニサウハ書カズニ、之ハ単ニ工産品模範工場ヲ設立シト書イテ置イタガ、此絹織物ノ事ナドハ尤モ急ナル事ト考ヘテ居リマス、又同業組合ヲ保護スル事ノ説明トシテ、香川君カラ花莚業ト云フモノハ就中保護シナケレバナラヌト云フ御議論モ出マシタガ、我々モ十分ニソレハ認メテ居ルガ、此所ヘハ単ニ同業組合ヲ保護スルト書イテアリマス、又金沢カラ出テ居リマス羽二重検査所ノ問題、之ハ実ニ急ニヤルガ宜カロウ、必要ナ事デアルト委員会ノ多数カ思ツテ居リマスガ、併シ此問題ハ別ニ議シタ方ガ宜敷イ様ニ心得マシタノデスカラ、之ハ会長ニ置キマシテ此問題ガ了ツタ後ニ更ニ本議ニ付セラレンコトヲ希望イタシマス
○二十番(神戸、横田孝史君) 本問題ハ最モ重要ノ事ニ属スルガ故、此討議ニ先タツテ当局大臣ニ出席ヲ求ムルト云フ満場一致ノ希望ヲ先日述ベテアツタ様ニ心得テ居リマス、昨日副会長タル井上君ノ御話デハ渋沢会長ヨリソレ等ノコトハ御計ヒ下スツタ様ニ伺ヒマシタ、此事ハ尤モ必要ナル事ハ申スマデモアリマセヌガ、抑モ此聯合会ナルモノハ如何ナル事ヲ決議致シマシテモ、本会議決ノ効力ハ聯合各会議所覊束セズト云フ事ニナツテ居リマス故ニ、或ハ此所ニ決議ニナリマシテモソレソレ各会議所デハ其事ヲ建議シ或ハ当局者ニ希望ヲ述ベルニモセヨ、此会ノ決議通リ各会議所ガ其行動ヲ共ニスルト云フ事ハ出来ヌノデアル、併ナガラ此会ノ出席者ハ事実ニ於テ各商業会議所ヲ代表シテ居ルモノデ之ハ見易イ理屈デアル、此席ニ於テ本問題ヲ攻究論議スルニ当局者ノ出席ヲ望ムト云フ事ハ、必ズシモ当局大臣ノ一場ノ講話ヲ拝聴スルト云フ丈ケノ意味デナイト云フコトハ勿論ノ話デアル、仮シ当局大臣ガ此席ニ於テ一場ノ演説ヲナスト云フ御考ガナイ又其材料
 - 第22巻 p.591 -ページ画像 
ガナイト云フ場合デ御座リマシテモ、我々ガ是等ノ問題ニ付テ攻究論議スル所ヲ親シク御聞取リニナルト云フコトハ随分必要ノ事デアラウト考ヘル、ソレ故ニ我々ハ出席ノ事ヲ御交渉シマシタ次第ニ付、其出席ノ有無ヲ此所デ承ハルヤウ致シタイ
○会長(東京、渋沢栄一君) 井上君カラ昨日御話下サイマセナンダカ左様ゴザイマスレバ一応其訪問ノ顛末ヲ申上ゲルヤウ仕リマセウ、一昨々日即チ土曜日ニ大蔵大臣ト総理大臣ヲ訪問シマシテ、幸ニ親シク御目ニ掛ツテ、爰ヘ御出席下スツテ御意見ノアル所ヲ御申聞ケヲ願ヒタイト云フ事ヲ十分ニ御話ヲ仕リマシタガ、大蔵大臣ノ答ヘラレマス所デハ、出席シテ御話ヲスルノ御請求ニ応ジ兼ネルトハ申サヌケレドモ、既ニ案モ立ツテソレニ対シテ委員モ出来タト云フ以上ハ、其委員会ノ議決トシテ斯ク斯クト云フヤウナ方法モ必ラズ議セラレルダラウカラ、ソレ等ヲ一応承知シタ上デ又意見ノアル所ノ御話スル場合ニ或ハ至ルカト思フ、今爰ニ当局大臣トシテ、斯様ノ意見ヲ持ツテ居ルトカ、斯ウ云フ事ハ議決ニナツテモ不同意ダトカ云フヤウナ意向ヲ申スト云フ事ハ、少シ差支ヘルト云フ意味ノ答デゴザイマシタ、最初相対ノ経済上ノ意見ノ御話合ヒハゴザイマシタケレドモ、ソレハ余談ノ事デ、今玆ニ私ガ斯ウ云フ御話ヲシタト云フ事ヲ申上ゲル必要ハナカラウト思ヒマス、要スルニ御断リハセヌケレドモ、ソチラデ成立ツタ意見ヲ見タ上ニ出ルト出ヌヲ申上ゲタイ、斯ウ云フ御話ニ過ギマセヌ、総理大臣ニモ御目ニ掛ツテ御話ヲ致シマシタガ、総理大臣ノ御答モ略略似タヤウナ事デ、東京商業会議所ノ諸君ガ来ラレタ時分ニ自分ノ考ハ概略御話シテ置イタ、此財政経済ノ事ニ付テハ私ハ素人側ノ男デ十分ナ意見ヲ蓄ヘテ御話スルト云フ事ハ甚ダ困ル、併シ政府ノ側デ軍備ト云フモノヲ減ズルト云フ事ハ今日ノ場合ドウシテモ出来兼ネルト思フ、自分ノ意見ハ斯様デアルト云フ事ヲ東京商業会議所ノ諸君ノ来タ時ニモ御断ハリヲシテ置イタノデアル、デ話セト云フナラバソレヲセヌト拒絶申ス訳デハナイ、大約マア大蔵大臣ノ御答ト同ジヤウナ事デ何カ斯ウシヤウト云フ案ガ成立ツタラソレ等ニ依ツテ又再ビ考ヲ申ソウト斯フ云フ挨拶デアリマシタ、一昨日ハ休日、ソレカラ昨日ハ農商務大臣ニ面会シマシテ親シク御話ヲシマシタ、之ハ商業会議所トハ至ツテ縁ノ近イ御方デ、外ノ国務大臣ハ出テ御話ヲナサラヌデモ農商務大臣トシテハ此聯合会ヘ対シテ出テ来テ一言御挨拶下サルノハ当然ト云ツテ宜カラウト思フ程ノ事デス、又昨年モ出ラレタノデアル、旁々以テサウ他人視ナサラヌヤウニシテ欲シイト云フ位ノ事迄ハ御話ヲ致シマシタ、スルト諸君ガ国家ノ為メニ此所ニ会議シテ種々御心配ナサル事ヲ無用ノ骨折トシテ傍観スルナドト云フ意味ハ決シテナイ、併シ当局者ノ意見トシテ此大問題ニ対シテ説ヲ述ベルト云フ事ハチト御答ガ出来兼ネル、只ダ昨年ノ様ナ塩梅ナレバ、御苦労デ御ザツタト云フ御挨拶ニナラ出モシヨウガ、偖テ其望ミヲ持タレタ場合ニソレ丈ケノ御挨拶ヲシテ他ノ事ハ存ジマセヌト云フ事ハ余リ今日ノ場合面白カラズ、又自分ガ斯ル方針ヲ持ツテ行ウト云フ事ハ自カラ廟議ノアル事デアツテ、又農商務大臣トシテ其事ヲ明言スルト云フ事モ如何ダシ、又諸君ニソレヲ明言スル迄ニ考モ定ツテ居ラヌ、旁々以テ出席スルト云
 - 第22巻 p.592 -ページ画像 
フコトハ差支ヘルト申サレマシタ、然ラバ委員ノ人達ガ出テ御意見ヲ伺ウト云フハ如何デアラウカト云フ事ヲ御打合セヲシテ見マシタガ、資格ヲ定メテ質問トカ答弁トカ云フコトニナルハ之以テ甚ダ即答致シ兼ネル、斯ウ云フ御答デアリマシタ、逓信大臣ノ方ヘモ出マシタガ、之ハ出席サレマセヌデ次官ニ申置キマシタガ、マダ出席ノ有無ハ返答ヲ得マセヌデ御座イマス、四大臣訪問ノ顛末ハ右ノ通リデゴザリマス
○十二番(阿波、根本民治君) 只今経済救済ニ対スル委員ノ大体ノ方針トシテノ御報告ガアリマシタ、併シ十二番ハ了承カ出来マセヌカラ一応質問致シマスル、詰リ委員ノ報告ニ依リマスト政府ノ事業ヲ或程度迄積極ニスル、又民間ノ事業モ或程度迄之ヲ積極ニシテ、両々相並行シテ此経済ヲ円満ニ処理シテ行クト云フ事デアル、此政府ノ事業ヲ或程度迄ハ積極ニスルト云フコトデスガ、十二番ノ意見デハドウモ此程度ト云フコトニ就テ大ニ了解ニ苦シム、或程度ト云フハドコラマデ之レヲ云ツタモノデアルカ、実ハ甚ダ今ノ委員長ノ報告ガ漠トシテ居ツテ甚ダ解スルニ苦シム、尤モ此意見書ニ依ツテ見マスルト或ハ此軍艦ノ購入ノ年限ヲ延バストカ、或ハ砲台ノ建築等ニ対シテ年限ヲ延バストカ、或ハ其他政府ノ事業トシテ居ルモノヽ年限ヲ延バストノ意見ニナツテ居リマスガ、全体此軍艦ノ買入或ハ砲台ノ建築ヲドウスルト云ハバソレニ対スル所ノ一ノ成案ガナクバナラヌ、又官業ノ年限ヲ延バスト云ヘバ、之ハ是程ノ年限ヲ延ベテモ差支ヘナイト云フコトヲ示サネバナラヌ、只或程度ト云フタ丈ケデハ其主意ガ明カデナイヤウニ思フ、所ガ委員長ノ説明ニヨルトソレラノ説明ハ少シモナイ、只或ル程度云々ト云フ丈ケデアル、之ハ例ヘバ仮リニ砲台ノ建築ガ出来タトスルト即チ夫レニ大砲ヲ据ヘ付ケルコトヲモウ一年延バスト云フヤウナ事デ、所謂不具者ヲ拵ヘルト云フコトニナル、ソレ程迄ニ今日ノ国家経済トシテヤラナケレバナラヌト云事マデニ迫ツテ居ルノデアリマセウカ、是等ノ事ハサウ窮屈ニシマセヌデモ別ニ方法ノアルコトデアラウシ、地方カラ申シテ見マスルト、杞憂ニ渉リマスケレドモ、或ハ木曾川ノ改修工事或ハ淀川ノ改修工事トカ云フ様ナモノニ対シテ国家ガ補助シテ居ル金ハ、或ハ之ヲ大ニ延バシテ此完成ヲ遅々タラシメル即チ此地方ニ対シテモ年限ヲ幾分カ延スト云フ事ハソレ等ヲ指シタモノデアラウカ、否委員ノ考ヘハサウデナイ、地方ニ対シテハ官業トシテヤルモノハ年限ヲ延バサヌト云フノデアルカ、ドウモ分ラナイ、又政府ノ経済上費用ヲ節減シ得ルト云フ事ガ書イテアル、之ハドウ云フ事ヲ指シテ云フノデアルカ、所謂各省ノ官吏ノ頭数ヲ減ラスト云フヤウナコトデアルカ、是等ノ事ニ至ツテハドウモ漠トシテ分ラヌ、要スルニ委員長ヨリ報告ノ或程度迄積極ノ方針ヲ以テ進ムト云フ事ヲ詳シク御説明アラン事ヲ希望致シマス
○五十四番(京都、中村栄助君) 私ハ只今委員長カラ御報告ニナリマシタニ付キマシテ一言議場ニ御諮リヲ致シタイト思ヒマスノハ、過日委員ニ一括シテ依託サレマシタ問題デアルニ拘ハラズ、此東京商業会議所ノ提出ニ係ル議案中ニモゴザリマスルシ、又第十四号ノ京都商業会議所提出ノニモアル即チ鉄道国有問題デアリマスガ、之ハ起草委員ニ於テ即チ第四ノ運輸交通機関ノ完備ヲ期スルト云フ中ノ第一項ニ但
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書ヲ加ヘテゴザリマシタ所ガ、委員会ニ於テ此但書ハ主意ニ添ハナイ遠クナルト云フ事カラ削ラレマシタノデ御座リマス、尤モ此成案中ニ洩レマシタモノハ別問題トシテ本会ニ於テ御議シニナルヤウニト云フ報告ガ御座イマシタ、ソレデ本員ノ希望致シマスルノハ之ハサウ云フヤウナ訳デ洩レテ居リマシタカラシテ、是非之モ既ニ議案トナツテ出テ居リマスモノデアリマスカラ本会ニ於テ御議シヲ願ヒタイノデアリマス、ドウカ其事ヲ御諮リヲ願ヒマス、万一ニモサウ云フ主意ノ違フト云フ事デ之ガ消滅シテ仕舞フト云フ事ニナリマスレバ、我々ハ大イニ議論ヲ闘ハシテ見タイト考ヘマス、此事ヲ会長マデ希望致シテ置キマス
○六十二番(東京、井上角五郎君) 只今根本サンカラ御尋ネガ御座イマシタカラ御答致シマス、丁度問フ者ト答ヘルモノト代ツテ居ル様ナ極ク皮肉ナ御言葉デアリマシタ、私共モ軍備ノ上ニ於テ或ハ軍艦ノ買入ニシテモサウ無暗ニ延バスト云フ事ノ出来ヌノハ知テ居ル、砲台ニシテモサウデアル、ソレハ各々見ル所ガアルカラ一概ニ斯ウト云フ事ハ出来ナイガ、之ヲ延シ其無用ヲ節スルト云フ事ハ幾ラモ出来ル、又行政ノ費用ノ如キニ至ツテハ其節減ノ方法ヲ申スト半日申上ゲテモ云ヒ尽セナイガ、仮リニ根本サンノ御近所ノ能ク分ル事ヲ申上ゲテモ、彼ノ郡視学官ノ如キアレラヲ設ケテアルニ付イテハ大分議論モ喧マシイ、コレラハ尤モ注意スベキ事デ段々其個条ヲ挙ケレバ随分ゴザイマスガ、要スルニ之ハ決シテ行ハレヌト云フ事ハナカラウト思フノデアリマスケレドモ、今日委員会ノ報告ヲ致シマシタ通リ、報告ノ主意ハ経済ノ方針ヲ定メルノガ主眼デアツテ、政府ノ費用ニ向ツテ節減ヲ加ヘルノガ主眼デハナイ、故ニ政府ノ事業ガ積極デナケレバナラヌガ、出来得ベク丈ケハ之ヲ節シテソレ丈ケ民業ノ発達ヲサセルヤウニ致シタイト云フノデス、ドウモ文章ハボンヤリシテ居ルヤウデアリマスガ決シテ見込ノナイ考ヲ書イタノデハナイ、之丈ケ御答ヘ致シテ置キマス、ソレカラ中村君ノ御説ニ付キマシテハ此本会デサウ御認メニナリマスレバ委員会ノ方デハ異論ハゴザリマセヌ
○四十五番(松山、仲田槌三郎君) 私ハ御主意ニハ反対デハ御座イマセヌ、此軍艦買入ノ事、砲台建築ノ事ト云フモノハ爰ヘ入レルノハ御止シニナツタラ宜カラウト思フ、其趣意ハ軍艦トカ砲台トカ云フ事ヲ之ヘ入レ商業会議所カラ意見ヲ提出スルヤウニナリマスト、此事ガ新聞ナドヘ出テ外国ヘ参ルト大ニ日本ノ国勢上工合ガ悪イト思ヒマス、只節倹シ得ラルヽ丈ケハ節倹シテ貰ヒタイト云フ趣意ガ透レバ宜カラウト思ヒマスカラ、之ハ除イテ、ソコハ延長シ得ラルヽ丈ケハ延長スルコトヲ望ムト云フヤウニ修正致シタイ
○会長(東京、渋沢栄一君) コレハマダ第一読会ノ内デゴザイマス
○二十三番(横浜、大谷嘉兵衛君) 二十三番ハ委員ノ十五名ノ一人デアリマス、ソレデ別ニ爰ニ意見ヲ申述ベルト云フ次第デハアリマセヌケレドモ、委員会ニ置キマシテモ自分ノ意見ノアル所ハ述ベマシタモノデゴザイマス、実ハ全体ヲ私ハ賛成スルト云フ次第デハナイ、其事ハ自然本会ニ移リマシテモ一言申述ベマスカラト云フ事ハ委員長ヘ申上ゲテアリマスノデゴザイマス、夫故ニ別ニ反対ヲスル程ノ事モナイ
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昨日モ其反対ヲセヌトカ何トカ言フテ、サツパリ其意志ノ定マラヌト云フノデ御叱リヲ受ケマシタガ、国民ガ詰リ此レ位ノ注意ハ自ラ致サナケレバナラヌト云フ感念カラシテ、昨日ノ委員会デモ其話ヲ致シマシタノデアリマス、ソレハ他ノ義デハゴザリマセヌ、此国家経済ノ事ニ付キマシテハ此委員会ノ案デ見マスルト、既ニ政府ガ致シタ事ガ今日ノ経済界ヲ斯ク迄ニナラシメタル様ニ出来テ居ルデ、私ノ考ヘニスルト之ハ政府バカリデゴザイマセヌ、戦勝ノ余栄ト云フヤウナ事カラシテ、政府モ事業ヲ拡張致シマシタケレドモ、又続イテ民間ニ於テモ凡テノ事業ト云フモノガ拡張致シマシタト云フ事ハ、敢テ過言デナカラウト思ヒマス、ソレニ国威ノ挙ルト共ニ国家一般ノ地位モ高マリ、生活ノ程度モ度外ニ進ンダカト私ハ思ヒマス、故ニ政府ノ事業バカリヲ以テ斯ク迄ニ立至ツタト云フ事ハ断言出来ヌト思ヒマス、詰リ只今申シタ如クデ民間ノ事業モ戦争後幾分カ進歩シタト云フ事ハ勿論デ、其非常ニ勃興シタ結果今日ノ輸入超過ト云フ事ハ伴フテ来ル事ト私ハ存ジマス、故ニ私共カ考ヘマスルト之ハ何トナク言ヒ悪イ事デス、況ンヤ彼ノ政府ガ軍事拡張ニ付テハ年々国会ノ議決ヲ経テ決行セラレツツアリ、議員諸君ハ務メテ国家経済ノ事ハ御心配ナスツタデアラウトハ思ヒマスケレドモ、斯ク迄ニハ至ラヌモノト御考ニナツタガ為メ、今日ノ究境ニ瀕シタルモノニアラザルナキ歟、蓋シ国会議員ハ我々人民ノ代表者デアリマス、然ラバ我々ガ認メテ居ラヌトモ云ヘズ、旁以テ今日政府ガ無暗矢鱈ニ事業拡張ヲヤルト云フ事ニ付テハ少シク遠慮モ必要デアラウカト思フノデアリマス、亦タ民間事業ノ発達ハシナイカト云ウト正ニ進ンデ居リマス、政府ガ民業ニ対シテ保護奨励ヲシナイカト云フト無論奨励シテアリマス、之ハ今日始ツタノデナク、維新此方、法律其他政府ニ関係アル事物ハ残ラズ最早万国ト較ベマシテモ敢テ劣ラヌ程度ニ進ンデ居ルノデアリマスケレドモ、民間ノ事業ハナカナカサウハ参リマセヌカラ、今日ノ軍事拡張・軍艦買入ノ如キハドウカ出来ルナラバ一年ノモノハ二年ニ延バシ、二年ハ三年ニ、三年ハ四年ニスルト云フヤウニ致シタイ、決シテ今日此事業ヲ止メルト云フノヂヤアリマセヌ、サウ云フ事ニシテ貰ヒタイト云フ事ヲ私ハ希望スルノデアリマス、ソレ故ニ此案ノ大体ニ付テ昨日申述ベタノデアリマスガ、決シテ此精神ハ悪イ事デハナイ、飽マデモ努メナケレバナラヌ事デアル、又シナケレバナラヌ今日ノ場合デアリマスカラ、成可ク只サセルバカリデナクシテ自カラモ努メナケレバナラヌト云フコトヲ感念致スノデアリマス、ソレニ付キマシテ之レニ反対スルト云フ次第デハナイケレドモ、本案ノ精神ガ私ハソコニ出デラレンコトヲ爰ニ申述ベテ置キマスル、尚ホ二次会ヲ開ク事ニナリマシタナラバ又逐条ニ付キマシテハ多少修正シタイト思フ事モゴザイマスカラ、ソレハ其時ニ意見ヲ述ヘマス
○十二番(阿波、根本民治君) 今二十三番ハ委員ノ一人トシテ段々御述ベニナリマシタケレドモ、二十三番ハ横浜ニモ居ラレル御方、殊ニ貿易上ニ於テハ重キヲ置カレテ居ル御方デアル、段々御演説ノ要旨モ能ク拝聴ヲ致シタ、詰リ二十三番ノ御説ハ日本今日ノ文明ハ決シテ外国ニ一籌ヲ輸スル事ハナイ、従ツテ此軍艦ノ製造トカ砲台ノ建築ト云
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フ此日本ノ国威ヲ海外ニ発揚スル事ヲ此所デドウコウト云フテ決スルハ甚ダ不面目デアリマスカラ、斯フ云フ事ハ爰ニ削除シテ貰ヒタイ、即チ日本ノ国権拡張ニ関スル事ヲ此所ヘ書クノハ名分上悪イト云フ解釈ヲ以テ委員会ニ示サレタト云フ段々御説明ガアリマシタケレドモ、帰スル所ハ其点ニアルダロウト思ヒマス、之ヲ確メ置キマセヌト甚ダ私モ二次会ニ於テ賛否ニモ苦シミマスカラ、委員トシテノ二十三番ヘ一応伺ヒマス
○二十三番(横浜、大谷嘉兵衛君) 二十三番ハ委員デハゴザイマスケレドモ、委員ノ極ク詰ラナイ方デ、其実ハ経済上ノ事ハ更ニ分ラナイ方、横浜ニ居リマシテモ貿易上ノ事ニハ十分ナラザルモノデス、故ニ十二番ノ如キ御経験ノアル御方ニ私ハ御答申ス丈ケノ力ハゴザリマセヌケレドモ、併シ大体ハ御問ヒノ如クデアリマシテ、又此軍艦買入ノ如キモノハ私モ昨年来外国ヘ参リマシタ所カラ其実地ニ就テ研究モ致シマシタ所ヲ申シマスルト、先ツ以テ此軍事ヲ拡張スル事、軍艦買入ノ如キハ国ヲ維持スルノ基ヒナルノミナラス、平和ヲ維持スルト云フ上カラ先ツ以テ之レハ致サナケレバナラヌト信ズル所デ、国民モ軍事ノコトニハ努メナケレバナラヌ事ト思フ、之レガ私ノ精神デアリマス昨日モ申シマシタケレドモ民間ニ於テ一銭デ済ムモノヲ三銭ノモノヲ使ヒ、三銭デ済ムモノヲ五銭ノモノヲ使ウト云フニ其ノ程度ガ高マツテ、実業上ニ於キマシテハ外国ト対等ハ出来マセヌケレドモ、驕ル方ニ於キマシテハナカナカ盛ンニナツテ来タカト思ヒマス、故ニ節倹ニシテサウシテ国ヲ守ルト云フノ方針ヲ取ル事ヲ第一ニ努メナケレバナラヌト存ジマスノデアリマス、ソンナラ之ハ節倹サヘシタラ今日ノ回復カ出来ルカト申スニ、精神ガサウナルト輸出ニ於キマシテモ輸入ニ於キマシテモ何レニ於キマシテモ大ニ注意ガ出テ来マセウト思ヒマスケレドモ、今日ノ所デ見マスト詰リ二十九年カラ三十年・三十一年ニ至リマシテ今日ノヤウニ経済上ガ喧マシイコトニナリマシタガ、其時ハ皆サンノ御心配カラシテ漸クニソレガ治ツタト云フノガ三十一年中頃カラシテ、三十二年ノ先ヅ上半期ト云フモノハ大ニ宜カツタト思ヒマスルガ、其後ニ又段々悪クナツテ今日ニ及ンダ、故ニ之ハ政府バカリデナクドウシテモ民間ニ於テ出来得ル丈ケノ事ヲ致シテ置キマシタナラバ或ハ宜カツタカモ知レヌ、サウシテ見マスルト、只政府バカリヲ責メルコトハ出来ナイ、併ナガラ此案ニ付テハ一モ悪イ事ハナイ、皆結構ナ事デアリマスケレドモ私ハ只ソコニ考ガアリマス、一言之丈ケノ事ヲ申シテ置キマス
○二十九番(金沢、水登勇太郎君) 別ニ会長カラ御宣告モゴザイマセヌケレドモ、今ハ第一次会ト認メテ宜シウゴザイマスカ
○会長(東京、渋沢栄一君) サウ御認メ下サツタラ宜シウゴザイマセウ
○四十五番(松山、仲田槌三郎君) チヨツト質疑ヲ致シマス、此第一資本ノ充実ヲ期スルコトトアリマス、此手段方法ニ就キマシテ第二ニ「金庫ノ制ヲ改正シテ国庫金ノ運用ヲ敏活ニシ其出納ヲ簡明ニスルコト」トアル、此金庫ノ制ヲ改正スルト云フ事ニハ何ゾ方法ノゴザイマスルノデアリマセウカ、此制ハ先ヅ明治初年以来各地方ノ国庫金ハ其
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各地方ノ銀行ガ取扱ツテ居リマスガ、近頃農工銀行ト云フモノガ出来マシテ此銀行ガ其取扱ヲナスト云フ事ニナツテ居リマスヤウデアリマス、ソレガ為メニ運用ノ活溌ヲ欠クカラ是ハ矢張リ以前ノ通リニサセルト云フヤウナ御主意デスカ、又別ニ何カ御名法デモアリマスカ、ソレカラ第四ノ「抽籤割増ノ制ニ由ツテ貯蓄ヲ奨励シ以テ民間零砕ノ資ヲ集ムルコト」トゴザイマス、此貯蓄ノ事ハ貯蓄銀行条例ガ出テ居リマスカラソレニ依ツテ起ツテ居ルノデアリマス、ソレニモ拘ラズ抽籤割増ト云フ事ヲ更ニ行ヒマスル、銀行ト申シマスルモノハ只貯蓄割増ノミヲ恰モ富籤ノ如ク為シ、ソレニ心ヲ寄セサセマスル迄ニ止マリ、方法ハ矢張リ普通貯蓄ト同様ナ訳デハゴザイマスマイカ、今日ノ貯蓄法デゴザイマスルト元ヨリ一円ヨリ何億万ニ積マセル主意デハゴザイマスケレドモ、コレハ積マセル迄ノ主意ヲ示シタモノデ随意ニ引出ス事モ出来マスルガ、爰ニ提出セラレタル主意ハ只貯蓄ヲサセタイト云フ主意カラ行ヒマスル事トスルト、民間ノ資ヲ集メテモソレハ其人ガ何時デモ引出セルト云フ事デハ一向金融ノ利益ニハナリマスマイト思ヒマス、何カ之ニハ御主意ガアリマスノデスカ、ソレヲ御説明ヲ願ヒマスル……
○六十二番(東京、井上角五郎君) 只今ノ御尋ノ貯蓄ハサシテモ何時テモ引出セルデハナイカト云フ事デゴザイマスガ、之ハ詰リサウ云フ抽籤割増ノ手続キヲ貯蓄銀行ニ許シテ、サウシテ貯蓄ヲ一般ニ奨励シヤウト云フ事デアリマスル、其詳シイ方法ニ付テハ十分ナル考ハマダ致シテ居リマセヌ、ソレカラ金庫ノ制ヲ改正シテ云々ト云フ条項ニ付テハ委員中ノ三谷軌秀君ニ此御答ヲシテ頂キタイト思ヒマス
○三十三番(大坂、三谷軌秀君) 今委員長カラ此事ニ付テ私ニ答ヘロト云フ事デアリマシタカラ簡単ニ四十五番サンノ御問ニ対シテ御答イタシマス、爰ニ掲ゲマシタ金庫ノ制ヲ改正シテ云々ト云フ事柄ハ、現行ノ金庫制度ノ下ニ置クト金庫ト云フモノハ独立シタモノニナツテ居ツテ、政府ガ之ヲ日本銀行ニ取扱ハセテ居ルト雖モ日本銀行ガ業務トシテ居ルノデハナイカラ、其国庫金ノ所在ト云フモノハ社会ニ不明デアル、時ニ多額ノ金額ガ国庫ニ這入リ又其金額ガ数年ニ跨ツテ国庫ニ集マルト云フ事柄ハ会計法ノ上ニアルノデアル、其金額ガ社会ノ人ハ幾ラアルカドウナツテ居ルカト云フコトガ今日ノ金庫制度ノ為メニ分ラナクナツテ居ルノデアルカラ、ソレデ之ヲ日本銀行ノ行務ノ一ニ移シタイ、サウスレバ営業報告ニ依ツテ幾ラアルト云フ事ハ分ツテクルノデアルシ、旁以テサウ云フヤウシタイト云フノ主意デアリマス
○十二番(阿波、根本民治君) 甚ダ委員長ヘ向ツテ御気ノ毒ナ事デアリマスガ今一ツ質問シマス、此土地所有権・鉱山採掘権ト云フコトヲ一応伺ヒマス、此問題ハ尤モ慎重ヲ要セネバナラヌ問題デアリマスガ既ニ横浜トカ神戸トカ或ハ東京トカ云フ地方デアリマスルト、外国貿易ノ事或ハ外国人ノ事ニ付テ凡テ見タリ聞タリ、所謂外物ノ刺撃上カラ外国人トモ接シ又商業ノ取引上ニモ便利ガアル、所ガ退イテ之ヲ三府五港ノ外、所謂田舎ニ付テ見マスルトナカナカ其辺ノ発達ノ程度ハ遺憾乍ラ実ハ低イト云フ憾ミヲ私ハ持ツテ居ル、是等ニ対シ此地方ヲモ挙ケテ凡テ外国人ニ其土地ヲ所有サセルト云フ事ハ甚ダ私ハ危険デ
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ハナカロウカト云フ感念ヲ抱イテ居ル、詰リ国家ノ将来ニ対シテ甚タ之ハ杞憂ヲ抱カザルヲ得ヌノデアル、委員会ニ於テ外国人ニ土地所有権ヲ与ヘ或ハ鉱山採掘権ヲ与ヘルト云フコトハ、元ヨリ此文面ニ依リマスルト外資輸入ヲスルガ為メトアルガ、外資ヲ輸入スルト云フノハ委員会ノ決議デハ現在ノ財政ヲ救済スルト云フ事ノミノ目的デアルカ又将来ニ対スル所ノ希望デアルカト云フ事ヲ伺ヒタイ、現ニ横浜或ハ名古屋地方ノ如キハ之ニ対シテ多少御意見モアツタヤウニ聞イテ居ルドウモサウ云フ商業ノ盛ナ地方ノ御方ニシテモ之ハドウデアラウカト云フ、所謂脳ヲ病マシムルト云フハ是又大ニ一考スベキ事デアルト十二番ノ如キハ信ジテ疑ハヌノデアル、土地所有権ヲ与ヘルト云フコトハ只現今ノ救済策トシテヤルト云フ事ナラバドウモ少シ早計ニ失シテハ居ラヌカト考マスガ、此事ハ矢張将来ヲ大イニ慮カルト云フ意志カラ出タノデアリマセウカ、此点ニ付キマシテハ私ハ甚タ了解ニ苦シムノデアル
○六十二番(東京、井上角五郎君) 只今ノ御質問ト云フ内ニ又委員長ヲイヂメルト云フ事モ含ンデ居リマセウ、要スル所ハ十二番ノ御議論デアルト認メマス、既ニ私ハ目下ノ救済手段トシテ応急ノ方法ハ勿論講ジナケレバナラヌガ、此案ハ日本銀行ガ金利ヲ引上ゲルコトヲ何時デモスルガ如キ事ハシナイノデアル、必ラズ其病源ヲ直サナケレバラナヌト云フ事ヲ説明中ニモ申シマシタガ、決シテ土地所有権ヲ許シテ到底今日ノ儘デヤリ切レナイカラ屋敷地ヲ半分外国人ニ売ツテ家ヲ維持シヤウト云フガ如キ、ソンナ窮策ニ出タノデハアリマセヌ、之ハ所有権ヲ与ヘマスニモ徐々ニ許ス方法モアリマセウ、又都会ノ地ニ限ルト云フ方法モアリマセウ、之ハ従来長イ間ノ事ヲ考ヘテ出シマシタノデス、ソレカラ斯ウ云フ事ヲスルノハ危険デアルトカ何トカ云フコトモアルガ、私ハ決シテ之ハ毫モ差支ヘナイ、之ヲ許スハ当然ノ事デアツテ外国ニ対シテ国ヲナサントスレバ各国同様ニ致サネバナラヌト思ヒマス、此上ノ事ハ議論ニナリマスカラ逐条ニ至ツテ議論ガ始マリマシタラ十分御相手モ致シマセウ
○十二番(阿波、根本民治君) モウ一応御尋ネシマス、サウスルト委員会ノ決定ハ土地所有権ヲ与ヘルト云フコトハ所謂政府ヲシテ条件付ニヤラスト云フノデスカ、或ハ横浜・神戸・長崎トカ云フ部分ニ限ツテ土地所有権ヲ与ヘテ置イテ、ソレカラ追々全体ニ及ボスト云フ意志デアルカ
○六十二番(東京、井上角五郎君) 勿論何処迄モ与ヘテ宜シイ、斯ウ云フノデゴザイマス、委員会ニ於キマシテモ条件付ト云フ御議論モアツタ、併シソレハ当局者ガ止ムヲ得ナイト見レハ条件付トスルデアラウガ、我々ノ希望ハ何処迄モ与ヘテ宜シイト云フ希望ニシテ置カウト云フ事デ斯ウナリマシタ
○七番(豊橋、三浦碧水君) 此案ハ委員ノ御調査ガ誠ニ完全ニ出キタト思ヒマス、逐条ニ付キマシテハ幾分ノ意見モゴザイマスガ、大体ハ可トシテ直チニ可決セラレンコトヲ希望イタシマス
○会長(東京、渋沢栄一君) ソレデハ二読会ヲ開クベキヤ否ヤト云フ事ヲ採決致サウト存ジマス、委員ノ御提出ニナリマシタ意見書ニ対シ
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テ二読会ヲ開クベシトスル御方ノ起立ヲ願ヒマス
  起立者  多数
○会長(東京、渋沢栄一君) 多数デゴザイマス、二読会ヲ開クニ決シマス、二読会ハ食事後ニ開キマス、御休憩ヲ願ヒマス
  正午十二時休憩
  午後零時三十分開議
○会長(東京、渋沢栄一君) 引続キマシテ此国家経済ノ方針ニ関スル問題ノ二次会ヲ開キマスル
○有志十四番(東京、田口卯吉君) 二次会デハ質問ヲ致シマシテモ宜シウゴザイマスカ
○会長(東京、渋沢栄一君) 御質問ニナツテ宜シウゴザイマセウ、重要ナ問題デゴザイマスカラ御質問ガアリマスレバ……
○有志十四番(東京、田口卯吉君) 此御議シニナリマスルコトハドウ云フコトニナリマスカ、私ハ此第一ノ資本ノ充実ヲ期スコトト云フコトニ付テ少シ質問ヲシテ見タイト思ヒマス、只今質問シテ宜シウゴザイマスカ
○会長(東京、渋沢栄一君) 宜シウゴザイマス
○有志十四番(東京、田口卯吉君) 委員長若クハ其他ノ委員カラデモ宜シウゴザイマスガ、此資本ノ充実ヲ期スルコトト云フコトノ第一ニ興業銀行ノ設立ヲ迅速ニシ工業資金ヲ疏通スルコトト云フ箇条ガ出テアリマスガ、此意味ガ矢張リ金融ノ必迫、商業上ノ困難ヲ救フトイフ方法ニナルトノ御意見ガゴザイマスガ、ソコヲ伺ヒタイ、私共ガ考ヘル所ヲ以テシマスルト従来此勧業銀行ヲ拵ヘマシタリ台湾銀行ナドヲ拵ヘマシテ民間ノ資本ヲ其方ヘ注ギ込ンデシマイマスルト却ツテ金融必迫ノ基ヲ為スヤウデ、今日民間デ高クテモ勧業銀行ナリ是等ノ銀行ハ民間ノ金融トハマルデ別世界ヲ為シテ居ル、成ルベク此資本ハ世間一般ノ銀行ノ庫中ニ止ツテ居テ貰ヒマスルト、金融ノ必迫ノ時分ニハソレ相当ノ利益ガアツテ社会ノ融通ヲ為シ、又金利ノ緩ンダ時分ニハソレ相当ニ下ツテ普ク通ズルト云フコトニナリマスカラ、斯ウ云フ特種ノ銀行ヲ建テマスコトハ、今日ノヤウナ場合ニハ成ルベク遅クシテ貰ヒタイ、仮令国家ノ意志デモ民間ノ金融ヲ斯ンナ所ニ注ギ込ンデ貰ヒタクナイト云フ意見デアル、依テ此第一条ヲ設ケラレタ御趣意ヲ伺ヒマス
○六十二番(東京、井上角五郎君) 此案大体ノ事ニ付キマシテハ、曩ニ十二番ニ御答シタ通リニ唯目下トカ今日唯今ト云フ意志デ経済ノ方針ヲ定メル考デナイト云フコトハ、只今ノ質問者モ委員会ノ意見ハ御承知下スツタコトデアラウト思ヒマス、左様ナル考ニ於テ委員会デハ興業銀行ヲ早ク設立シテ相当ナル方法ヲ設ケタナラバ、即チ工業資金ト云フモノガ疏通シテカラニ工業世界自ラ資本ノ幾分カ益ヲ得ルコトガ出キヤウカト云フノデ此条項ヲ設ケマシタ、既ニ政府及国会ガ之ヲ建テヘキモノトシ法律ガ定ツテ居ル以上ハ速カニ建テヽ貰ヒタイト云フコトカラ、設立ヲ迅速ニスルト云フコトニシマシタノデ、是ガ為ニ民間ノ資本ヲ注ギ込ムト云フコトハ質問者ノ意見デ、吾々ハ之デ工業資金ノ疏通ガ出来ルト思ツテ居リマス、見込ノ違フコトハ御意見トシ
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テ……
○三番(名古屋、上遠野富之助君) 此場合ニ意見ガゴザイマスガ申述ベテ宜シウゴザイマスカ、此「以上四項ハ目下経済ノ変調ヲ呈シ逆境ニ陥リタル原因ニシテ、戦後経営ノ漸ク完備シ政府事業云々」トアリマス所デゴザリマス、段々前段カラ此原因ト云フモノハ四項ニ分ツテ「今爰ニ民間事業ノ発達セサル所以ノ原因ヲ列挙スレバ」トシテ資本ノ充実セザルコト、商工事業経営ノ適良ナラザルコト、貿易機関ノ整頓セザルコト、運輸交通機関ノ完備セザルコト、此四項目ハ成程民間事業ノ発達セサル所以ノ原因ニハ相違アルマイト思ヒマス、併シナガラ「以上四項ハ目下経済ノ変調ヲ呈シ逆境ニ陥ツタル原因」ト又玆ニゴザイマス、此四項ハ私ノ見ル所デハ遠因デアラウト思ヒマス、目下経済ノ変調ヲ呈シ逆境ニ陥ツタ近因ト云フモノハ前ニ列挙シテアル四項デハナクテ、私ノ考ヘル所デハ目下経済ノ変調ヲ呈シ此ノ如キ逆境ニ陥ツタル所以ハ昨年来此日本銀行ノ兌換伸縮ノ度合ガ誤リハセヌカ又金利ノ高低ニ少シ激変ガアツタガ為メニ今日ノ変調ヲ来シタト云フコトガ重ナル近因デ、遠因モ近因モ総テ此四項ニアルト云フヤウデ、此趣意ハ少シ徹定セヌヤウニ私ハ思ハレル、殊ニ此末項ニ参リマシテ特ニ日本銀行ニ注意シテ貰ヒタイト云フコトガ突如ト出テ居リマスルガ、ドウ云フ訳デ日本銀行ニ特ニ注意ヲ加ヘタノデアルカ、突如ト爰ニ出タ其趣意ガ少シ前ニ充分ニ述ベテナイヤウニ思ハレルデ、私ハ箇様ニ修正ヲ致シタイト思ヒマス、此以上四項ト云フ所ガ以上四項ハノ「ハ」ヲ「ニ」ニ直シマシテ、以上四項ニ加フルニ昨年来金利ノ高低ニ激変アリタルハ「目下経済ノ変調ヲ呈シ、逆境ニ陥タル所以ナリ」ト、サウシテ原因ト云フ所カラ「就中資本ハ匱乏シテ金利ハ高貴トナリ」ト云フ所マデ削リマシテ「故ニ之ヲ此儘ニ放任スルトキハ」ト修正ヲ致シマスレバ、先刻委員長カラ段々ニ御説明モゴザリマシタ通リ成程此戦後経営以来着々政府ノ事業ハ進歩シテ民間ノ事業ハ其割合ニ発達シナカツタト云フコトハ明カデアル、ソレニ付テノ原因ハ斯ク斯クデアルト云フコトハ是モ能ク分ツテ居リマスガ、目下経済云々ト云フコトニ在ツテハ其四項目ヲ以テ目下経済ノ変調ト云フコトニ帰スルコトハ行クマイト思ヒマスカラシテ、ソレハ矢張リ昨年金利ノ高低ニ激変アツタガ為ニ此ノ如キモノニ至ツタモノデアルト云フコトヲ唱ヘマスレバ、末項ニ行キマシテ日本銀行ニ特ニ注意ヲ請ハルヽ所ノ趣意モ能ク徹定ハセンカト、斯ウ云フ趣意デ只今述ベマシタ通リニ修正ヲ爰ニ致シタウゴザイマス
○二十三番(横浜、大谷嘉兵衛君) 二十三番ハ、大事ノ問題デゴザイマスルデ、彼是ト意見モゴザイマセウカラ成ルベクナレバ順序ヲ追テ願ヒマシタ方ガ捗取リガ宜カラウト思ヒマス、ドウカソレハ会長ノ御見込ミニ依テヾ宜シウゴザイマスガ、便宜ノ為ニ或ハ逐条トカ或ハ幾条トカ云フヤウナコトデ成ルタケ錐雑シナイヤウニ致シタイト思ヒマス
○四十五番(松山、仲田槌三郎君) 私ハ前ニ述ベマシタ―一次会デ誤ツテ述ベマシタケレドモ、意見書ニ修正ヲ加ヘタウゴザイマス、其修正ハ「政府事業就中軍備ノ当ニ積極的タルベキコトヲ信ジテ疑ハズ」
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彼レカラ下「勿論軍備」以下「砲台建築」云々ヲ削リテ「国政ヲ酌量セラレ及ブタケハ省略或ハ延期セラレンコトヲ望ム」ト云フ意味ノ文字ニ修正シ、二行目ノ其他政府事業云々ヘ続キマスヤウニ致シタウゴザリマス
○十二番(阿波、根本民治君) 詰リ四十五番ノ意思ハ、此軍備ノ拡張トカ、或ハ軍艦ノ買入ヲ大ニ此間ノ年限ヲ延バストカ何トカ云フ、国家自衛ノ策タル此事ヲ或ハ継続年限ヲ延バスナドト云フコトハ、甚タ国家自衛ノ策ニ於テ不得策デアルカラ削除スルト云フノ意思デ、私モ同感デ、軍艦ノ買入ヲ延バストカ砲台ノ建築年限ヲ緩ウスルトカ云フコトヲ此文章中ニ臚列スルコトハ私モ不同意デ、此項ダケハ私モ削除スルト云フ考デ即チ四十五番ト同感デアリマス、文章ハ未ダ咄嗟ノ際デ体ヲ為シマセヌガ、此軍艦買入トカ砲台建築トカ云フコトヲ削ツテ宜シク文ヲ為スト云フコトハ能ク会長ノ御手元デ然ルベク案ヲ為スヤウニシテ、兎ニ角軍備ニ関スルコトヲ此文章ノ中ニ臚列スルハ不同意デ、四十五番ニ賛成シマス
○二十番(神戸、横田孝史君) 最早二次会ニ移ツテ居ル場合デアリマスルガ、先刻二十三番ノ御注意モアリマシタガドウ云フ工合ニ之ハ御議シニナリマスカ
○会長(東京、渋沢栄一君) 修正ノ御意見ダケ前ニヤツテ修正ノ所カラ極メテ行ク外ハゴザリマスマイ、逐条ト申シテモ文章ガゴザリマスカラ文章ヲ逐条ト云フ訳ニハ参リマセヌ、先ツ今ノ所デハ本文ニ至ツテ資本ノ充実ト云フ箇条書ニナルマデノ修正ノ御意見ヲ成ルタケ御討論ニナリマシテ、ソレニ依ツテ運ンデ行クヤウニ致シタラ宜カラウト思ヒマス
○二十番(神戸、横田孝史君) ソレデハ会長ノ御考デハ一枚ノ終マデ意見ノアルモノハ述ベルノデ、之ハドウデゴザイマセウカ、随分規則上ノモノト違ツテ決ヲ採ル人ノ考デ如何様ニモ是等ノコトハ出来ルモノデ、先ツ以テ此全体ノ意見ガアリマスレバ述ベルト云フコトニ致シタイト存ジマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 全体ノ御意見モ宜ウゴザイマスガ、之ヲ決シテ宜カラウト云フノハ順ヲ追ツテ決セヌト後トノ御説ガ先キニナツタリ先ノ御説ガ後カラ出タリスルト混雑ダラウト思ヒマス、四十五番ハ初ノ文章ニ於テ縮少ノ意味ヲ斯ウ物ヲ指定シテ言ヒタクナイト云フニ過ヌヤウデ、ソレカラ三番ノ意見ハ以上四項云々ト云フコトニ修正意見ヲ御述ベニナツタノデス、故ニ修正意見ノアルダケ賛成ヲ採テ行ク外ハナカラウト思ヒマス
○二十番(神戸、横田孝史君) 若シ全体ニ付テ意見ノアル人ハ……
○会長(東京、渋沢栄一君) 錯雑サヘセネバ全体ニ付テ御述ベニナツテモ宜シウゴザイマス
○四十五番(松山、仲田槌三郎君) 私ノ趣意ハ此趣意ヲ省クト云フノデハアリマセヌ、趣意ハ成ルベク丈ケ酌量セラルヽダケ酌量シテ貰ヒタイ、併シ砲台トカ軍艦ノ買入ヲ見合セルトカ、軍事上ニ関係スルコトヲ商業会議所カラ云フノハ面白クナシ、又外国ニ対シテモ面白クナイカラ趣意ハ採ツテサウシテ其品ヲ指スノヲ省キタイト云フ趣意デ
 - 第22巻 p.601 -ページ画像 
○会長(東京、渋沢栄一君) 然ラバ四十五番ノ趣意ハ斯ウナツテ宜イノデアリマセウ「勿論軍備ト雖モ尚ホ云々」ヲ除イテ、期限ヲ延長シテ一時多額ノ支出ヲ抑ヘ難キニアラズト斯ウ続ケバ宜イノデゴザイマスデセウ、軍艦ト砲台ヲ爰ニ明記シナクテモ宜カロウト云フ御趣意ナンデスナ
○二十番(神戸、横田孝史君) 二十番ハ此何レノ項目ニ当ツテ当嵌ムヘキカ適切ナル条項ヲ見出シマセヌガ故ニ、先刻御尋ヲスル際ニモ申上ゲテ置イタ、偖テ此全体ニ付テノ意見カト申セバサウデモナイノデスガ、其挿入スベキ場所ニ付テ稍ヤ迷ヲ生スルガ故ニ爰デ一言希望ヲ述ベテ見タイト思ヒマス、段々委員諸君ニ於テハ色々御研究ノ末此提案ガ御出来ニナツタコトデゴザイマスルガ、尚ホ私共ノ希望シマスル所デハ戦後ノ日本トシテ色々此事業ノ濫発ト云フヤウナ時代ガアツタノデアル、ソレ故ニ唯ダ其際ニハ事業ノ目的如何ト云フモノニ付テ充分取調ベ或ハ見込ミヲ立テナイデ興ツタヤウナ場合ガ幾ラモアラウト思フ、是ハモウ他ノ或ハ国ノ例ニ照ラシテ見テモサウ云フコトハ免レヌコトデアラウト思フ、既往ノコトハ爰デ敢テ論究スル必要ハナイ、今日ハ是ヲ如何ニスルガ必要カト言ヘバ即チ事業ノ整理デアル、尚ホ語ヲ約メテ適切ニ申セバ、或ル事業ノ合併デアルト云フヤウナコトガ必要デアラウト私共ハ考ヘマス、例ヘバ銀行ノ如キ全国ヲ統計致シマシテ二千以上ノ銀行ガアル、其資本額ハ四億四千万デアル、四億四千万ト云フ銀行資金ハ先ツ今日日本ノ事業ノ上デハ余リ不足ナイ資金カモ知レナイ、然ルニ之ハ二千以上ノ銀行ガ分割シテ使用致シマスルガ故ニ、其四億以上ノ資金ト雖モ十分ニ利用スルコトノ出来ナイト云フ所ノ憾ミガアラウト思ヒマス、例ヘバ国ヲ治メルニ、昔シ徳川ノ時代即チ封建ノ世ニ在テハ凡ソ三百ノ諸侯ガ六十四州ヲ支配シテ居ツタ、然ルニ維新革命以来ハ一ノ明治政府ノ下ニ之ヲ統一スルコトヲ得タト云フ意味合ト同ジコトデ、此銀行タル金融界ニ於テモ同一デアラウト思ウ、デ固ヨリ其目的性質等ニ依リマスルガ故ニ、此二千以上ノ銀行ヲ一・二ニ之ヲ合併スルト云フコトハ至難ノコトデアリマセウケレドモ、此ノ如ク多数ノ銀行ニ之ヲ分割スルト云フ事ニ付キマシテハ例ヘバ準備金ノ如キ其他到底出来ナイ、デ是等ノコトハ決シテ大蔵大臣一個ノ脳髄デモ参リマスマイ、又法律ヲ以テスル訳ニモ参リマスマイガ宜シク民間ノ実業者ハ其心シテ以テ合併統一ヲ成ルベク図リ、又図ル方法ニ依リマシテハ圧制干渉トマデ行キマセズトモ、銀行条例ノ下ニ成ルベク小サナ銀行ノ続発スルコトヲ防グ所ノ途モ随分附カヌコトモナカラウト考ヘマス、其点ニ付テ十分ノ方策ガ附キ、就中実業者銀行者ハ能クソレ等ニ着眼スルト云フコトニ致シマスレバ、此四億四千万ノ銀行資金ヲシテ今日ヨリ遥カニ広ク便宜ニ之ヲ使用スル途ガアルダラウト思ヒマス、其他啻ニ銀行ノミナラズ、例ヘバ旅行ヲ致シマシテモ即チ自分ノ所在、仮リニ神戸カラ奈良マデ行クトスレバ、或ハ梅田デ汽車ヲ乗替ヘ、天王寺デ乗替ヘ、僅カ数十哩ノ所ヲ旅行スルニ数箇所デ乗替ヘヲシナケレバナラヌ、啻ニ旅客ノミナラズ貨物ノ運輸モ其通リ不便デアル、年来ノ事実カラ見マシテモ、大阪鉄道ト関西鉄道ノ合併ハ実ニ吾々局外者カラ見ルト誠ニ必要ナコトデアル、何故其重役
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ナリ多数株主ハ是ニ同意シナイカト云フ事ハ局外カラ疑ヒノ観ヲ為スノデ、是等ニ就テモ当業者ハ宜シク其方針ヲ以テ之ニ当リ、又政府ハ干渉圧制トマデシナクテモ、成ルベク勧誘的ニ或ハ将来小サナ鉄道ヲ許サナイト云フコトモ、法ノ立方ニ依リマシテハ出来ヌコトハナカラウ、独リ鉄道・銀行ノミナラズ百般ノ商工業ニ対シマシテモ今日ハ事業整理ノ必要ノ時デアルトシマスレバ、政府ハ之ヲ勧誘的ニ当業者ハ主動的ニ此事ヲ為スト云フコトハ、実ニ目下デハナイ永遠ノ経済ノ為ニ必要ノコトデアラウト思ヒマス、彼ノ米国ニ於テ近来「トラスト」問題ガ盛ンニ起ル、此「トラスト」組織ノ起リマシタ以後ハ、或ル石油会社ハ既ニ九割ノ配当ヲ為スト云フコトデ、是等ハ必シモ「トラスト」組織ノ為メデハアルマイガ、要スルニ事業ヲ簡便ニシ会社ノ利益ヲ多クスルト云フコトガ重ナル原因トナツテ居ルト云フコトハ明カナ事実デアラウト考ヘラレル、ソレデソレ等ノ只今申述ベルヤウナ意見ニ付キマシテハ、此案ニ対シ何レノ項目ニ対シテ意見ヲ吐イタモノカト云フコトニ付テ苦ミマスルガ故ニ、一先ツ自分一・二ノ意見ヲ吐露シテ更ニ委員諸氏ニ於テ再調査ヲ願ハンカト考ヘマシタケレドモ、折角ニ是マデノ成案モ出来テ居リマスガ故ニ、或ハ此銀行ノ如キハ第二枚目ノ第一条資本ノ充実ヲ期スルコトヽ云フ部面ニデモ挿入スルコトガ出来ハシマイカ、或ハ此鉄道ノ合併意見ノ如キハ第四ノ運輸交通機関ノ完備ヲ期スルコトヽ云フヤウナ所ニデモ挿入ハ出来ハシマイカト考ヘマスケレドモ、何分其法律的若クハ規約体ノモノヲ議スルト違ヒマスルガ故ニ、甚ダ挿入ノ部面ニ対シテ苦シム訳デアリマス、併シソレ等ハ唯ダ些末ナル所ノ一点デアル、私共ノ希望ハ本議案ニ対シテ修正的ニ希望スルニハ、維新ノ実例ヲ挙ゲテ先ツ此ノ如クニ致シタイト云フ考デ
○有志五番(東京、雨宮敬次郎君) モウ只今二十番ノ御尋ノ如ク総論ノ上ニ付テ御話ヲ致シテ宜シイ訳デ、私ハ折角委員諸氏ガ御心配ヲ下サレマシテ此案ガ出来マシテ、此四ノ項目ニ於テハ誠ニ御尤モ千万ノコトデゴザイマスケレドモ、其後ノ細則ニ至リマシテハ事々物々私ハ考ヘヲ異ニスル、今日此案ヲ拵ヘルニ是ダケノ人ガ寄リ合ツテ心配ヲシテ隙ヲ潰スト云フノハドウカト云フト、目下ノ経済上ハ如何ニモ危急存亡ニ及ンデ来タ、斯ウ云フニ過キナイノデ、三番ノ先刻ノ御説ニ依レバ、昨年来ノ金利ノ激変ニ依ツテ斯ウナツタト云フ御説モアル、又大谷サンノ御説ニハ三十一年二月ニハ財政モ整理シテ緒ニ就イテ、三十三年ノ半ハ頃マデハ安心ヲ得ラレタト云フ御説ガアル、一々是等ノ御説ハ私ノ考トハ全ク正反対ニナツテ居ル、是ダケノ理由ヲ一寸申上ゲタイ、此経済界ガ今日斯ウ云フ風ニナツタ原因ハ、抑モ先日懇話会ノ席上デモ私ガ申シマシタ、昨日ヤ今日ノ話デハナイ、戦争ノ時即チ第九議会此方ノ事デアル、其誤リガ来タト云フコトハドウモ諸君ガ私ト同感ニナツテ下サラヌカラ矢張リ斯ウ云フ案ニナル、私ノ考デハドウシテモ第九議会以来ノ誤リデ、井上君ノ述ベラレタ戦争后ドウダト云フト積極的デハナカツタ、ソレカラ後取ルベキモノヲ取ラズニ於テ斯ウト云フコトヲ井上君ガ述ベラレタカラ、私ガ申シタナレバ重複ニナルカラ述ベマセヌガ、ドウシテモ此経済界ノ誤リハ明治二十八年
 - 第22巻 p.603 -ページ画像 
第九議会ニ始ツテ居ル、東京商業会議所ハドウシタカト云フト、二十九年・三十年ニハ、其様ニ過大ニ政費ヲ膨脹ナサイマスト民間ヲ保護シナイ姿ニナリ、両輪相対シマセヌゾト云フ建議ハ、爰ニ会長モ居ラレマスガ、二度モ政府ニ向ツテ提出シテ置イタ、併シ当時政府ハ共ニ倶ニ発達サセルト云フ事デアルカラ、成程政府ノ事業ガ膨脹スレバ民間ノ事業モ共ニ膨脹サセテ呉レルダラウト云フノデ待ツテ居ツタ、所ガ此方デノ商工業ニ何モ手ヲ着ケテ居ラレナイ、サレバ一体財政経済ハドウナツテ来ルカト云フト、先日モ申上ゲマシタ通リ、二年前ニ四千参百万円ノ公債ヲ売ラナケレバ、有ル丈ケノ正貨ヲ外国ニ出シテヤラナケレバナラヌ、ソレデナケレバ兌換制度ノ基礎ガ立タヌト云フコトハ明カデ、又昨年ニ至ツテモ其通リ、彼レダケノ製艦費ヲ払ツテヤルコトニナレバ一億五千万円デ、八千六百万円ノ正貨デハドウシテモ支払ツテヤラレヌ、支払フニハ借リズニ置イタナラモウ日本ノ兌換制度ハ昨年ニデモ破レズニハ居ナイノデアリマス、尚ホ引続イテ今年ニ至ツテドウカト云フト、当月ノ上半期ノ輸入超過ヲ四百万円ニ仮定スルト、一月ヨリ今日迄最早五千六百万円以上ノ輸入超過ニナツテ居リマス、是ニ対シテ二千何百万円ノ正貨ハ出テシマイマス、シテ見レバドウシテモ今年ニ至ツテモ又外資ヲ入レテ此兌換制度ヲ繋イデ行クヨリ仕方ガナイト思ヒマス、之ヲ一般国民トシテ心配シナイデ茫然トシテ居ルト云フコトハドウシテモ出来ナイ、ト云フコトハ一年ヤ二年前カラ始ツタノデハナイ、前々カラ申シタ通リ第九議会カラモウ六ツノ議会ヲ経テ来テ居ル、ソレダケニ此病源ガ固ツテ固リ抜イテ来タノデ今日ハ大病ニナツテ如何トモスルコトガ出来ナクナツタ、外国ニ行ツテ借リヤウト思ヘバ、倫敦デハ御承知ノ通リ八十六円デ手取リニナツタ公債ガ既ニ八十一円ニ下ツテシマツテ居ルノデ、最早昨年ノ如クニ外資ヲ借入レラレナイト云フ国ノ信用ニナツテシマツタト云フコトハ分リ切ツタコトデ、我ガ商工業ノ有様ヲ見マスレバ仕掛ケタモノヲ途中デ廃メル、モウ是カラハ進ムコトハ出来ナイノデアル、諸君ガ能ク
御話ニナリマスガ労働者ニ金ガ這入ツタ為メニ驕奢ヲ益スト云フコトニナリマシテ、今日ハ日本ノ国家ガ経済上ノ為エドウ成リ行クカト云フコトハ先日モ申上ゲマシタガ、伊藤侯爵ガ九州ニ於テノ演説ハ新聞デ御覧ニナリマシタラウ、金ガナイナゾト云フコトハ西洋人ガ驚愕シタト云フ、西洋人モトンマデアル、日本ノ経済ガ分リ切ツテ居ル、是ガ分ラズニ驚愕スルヤウナ人間許リナレバ宜イガ、最早今日ハドウモ斯ウモ何ヲシテ居ル間モナイジヤナイカ、此時ニ当ツテ先刻来御説ノ地所所有権或ハ又興業銀行ハ今マダ立ツテハ早イ、興業銀行ヲ建ツテドウナルカト云フコトハ無事大平ノ時ニ議論スベキ事柄デ、今諸氏ノ爰ニ御提出ニナツタ案ハ一ツトシテ国家ノ為ニ皆用ヰネバナラヌ訳ノモノダラウト思ヒマス、併シ斯ウ云フコトヲ言ツテ居ル間ガナカラウト思ヒマス、之ヲ言ヒマシタ所ガ此四項目ニ於テハ一々誠ニドウモ一言モナイ、此原因カラ起ツタト云フコトハ分リ切ツテ居リマスガ、細別ニ至リマシテハ何モ彼モ政府ガヤツテ居ル、興業銀行ハ政府ガ委員ヲ選挙シテヤツテ居ル、是ガ出来タカラトテ四分ノ一ノ払込デ二百五十万円、是ニ五倍スル規則通リノ金ヲ借リタ所ガ壱千弐百五拾万円、
 - 第22巻 p.604 -ページ画像 
所デ日本銀行ノ今日有価証券ハ幾ラアルカト云ヘバ八千万円以上アリマセウ、ソコヘ弐百万円位ノモノヲ建テテ貰ツテモ迚モ救済ノ出来ル訳デハナイ、政府ガ努メテ居ル、明日カ明后日カ委員会ヲ開イテ成立サセヤウトシテ居ルカラ、貴君方少シ遅イジヤナイカ、私ノ方デハ委員会ヲ開イテ居リマスト云フカモ知レマセン、又鉄道運輸ノ便ヲ開イテ貰ハネバナラヌト二十番ノ御説モアツタ、斯ンナコトモ政府ハ確信シテ十四議会ニ出シテ居ル、唯タ議院ガ承諾シナイ為メニ其儘ニナツタノデ、斯ンナコトヲ今日言ツテ見タ所ガ、逓信大臣ハ諸君ノ御心配ノコトハ私共ノ方デハ先ニヤツテ居リマス、五年・十年ヲ期シテ統一ヲ図ル積リデアツタガ議員ガ承諾シテ呉レナイカラ、御心附ハ忝ナイガ私共ハ少シ先ニヤツテ居リマシタト云フコトニナレバ、何モナイダラウト思ヒマス、其他ノ事柄ハ偖テ置キ、就中国家ノ大問題ト思ヒマスノハ土地所有権・鉱山採掘権デ、今十二番サンノ御説モ伺ヒマシタ是ニハ反対モアルマイシ、諸君ノ中ニモ賛成ト反対トノ二ツアル、是等ノコトハ一ニ此会議ノ力ヲ以テヤツタナレバ、或ハ土地所有ヲ許スガ是ナリト云フ論ガアルト云フコトガ幾分カ強マリハセヌカト思ヒマス、其他商業学校ヲ置カネバナラヌコトモ是モ政府デ心配シテ居リマス、ト云フテ政府ハ残ラズ是ダケノ事ヲ持ツテ行クナレバ、農商務大臣デモ、大蔵大臣デモ、総理大臣デモ、充分説明スルダラウト思ヒマス、唯ダ説明ニ苦シムト云フノハ、土地所有権ノコトダラウト思ヒマス、其外ハ私共先刻カラ拝見スルト、皆政府デ心配シテ居ルコトデ、唯ダ爰デ私ノ皆サンニ御話シテ是非共御賛成ヲ得タイト思ヒマスノハ皆サンガ御笑ヒニナルカ知レマセヌガ鉄道国有デゴザイマス、鉄道国有ノ利害ヲ知ラズシテ慢ニ鉄道国有ハ相場師ノ餌食ニナルトカ云フヤウナ新聞ハ何ニモ分ラヌ書生サンガ書クノダカラ仕方ガナイトシテ、唯ダ鉄道ヲ国有ニシナケレバナラヌト云フ理由ヲ御話致シマスカラ、是ニ対シテ御質問ガアリマスレバ幾ラデモ御答致シマス、ドウシテモ運輸交通ガ便利ニナラナケレバ殖産工業ガ開ケヌト云フコトハ皆サンガ今日マデ鉄道ニ乗テ充分御承知ダラウト思ヒマス、鉄道運賃ガ騰ルト折角発達シタ産業ガ縮ンデシマイマス、交通ノ便宜ヲ与ヘネバナラヌト云フノハ十年前カラ私ガ唱ヘ出シタ所ノ持論デアリマス、是ガ高クナルト云フノハ、煙草一本デモ運輸交通ニ係ラヌモノハナイカラ不便ニナルノデ、安ウシナケレバ迚モ先進国ノ人民ニ勝テルモノデハナイ、運賃ガ高クナルト商工業ガ進マナイ、ドウシテモ運賃ヲ安クシテ四千万ノ同胞ニ与ヘテヤラナケレハナラヌ、徹頭徹尾国有論ヲ主張シテ居レバ雨宮ハ株ヲ持ツテ居ルカラ鉄道ヲ売ツテ儲カルダラウト云フ者ガアル、是レハ鉄道ノ株券ヲ持ツテ居ル味ヲ知ラナイ人ガ言フノデ私ガ儲ケタト云フノハ鉄道屋ノ外ニ儲リハシナイ、鉄道デ私ガ儲ケタト云フハ株券ヲ創業ノ時ニ持ツテ十年ナリ二十年ナリ持ツテ居ルカラデアル、私ハ持ツタ株券ヲ一枚デモ売ツタコトハナイ、株ヲスルモノト事業ヲスルノト世ノ人ガ間違イテ行ケナイ、私ガ五十万ダカ百万ダカ何百万ト云フカ知ラヌガ、其利益ト云フモノハ甲武鉄道ト炭礦鉄道ノ株ヲ持ツタ切リデ居タカラ儲ケタノデアル、是カラ先キモ儲カルト云フコトハ分ツテ居ル、然ルニ大概ノ人ハ動モスレバ株屋ニナツテシ
 - 第22巻 p.605 -ページ画像 
マウカラ困ル、鉄道株ハ大変儲カルモノデアル、故ニ自分ノ慾許リ掻イテ国家ノ為ニ鉄道ノ賃銀ヲ高クシテハナラヌ、ドウシテモ鉄道ノ運賃ハ安クシテ、サウシテ交通運輸ノ便宜ヲ充分ニ付ケネバナラヌ、殖産興業ノ支障ハドウ云フ訳デサウカト云フト、鉄道条例ヲ拵ヘルトキニハ一哩ノ運賃ハ一銭五厘デアツタガ今日ハ三銭モスル、其当時ハ一哩ノ鉄道ヲ架ルニハ三万円カ四万円デ鉄道ガ出来タ、所ガ今日ハ七万円・八万円モ金カ掛ルカラ運賃ヲ三銭ニ上ゲネバナラヌト云フコトニナル、三銭ニ之ヲ騰ゲタ以上ニハ迚モ事業ハ出来ナイ、事業ガ出来ナイト云フ其証拠ヲ取ツテ御話スレバ、何処ノ方モ御承知デゴザイマセウガ、昨年一銭六厘ノモノヲ九厘ニ北越鉄道ガ上ゲルト言ハレタ為ニ露西亜ト亜米利加ノ石油ガドシドシ這入ツテ来ル、是ガ小サイヤウデアルケレドモ斯業ガ発達シマスマイ、私ガ所有シテ居ル鉄鉱ヲ先年若松製鉄所デ買イタイト云ヒ、約束ハ二十箇年間毎年ニ五万噸ヅヽ売ツテ呉レト云フノデ、日本鉄道ニ運賃ヲ掛合ツテ見ルト、一年ダケハ出来ルガ二十箇年ハ出来ナイ、倍額ナレバシマセウト云ハレタ、併シ之ハ三十万円ガ六十万円ニナル丈ケダト云フカハ知ラヌガ、結局若松ノ製鉄所ニ売ルコトハ出来ズニ、空シク深山ニ宝ヲ埋没シテシマウト云フコトニナル、ソレヲ国有ニスレバ運賃ヲ上ゲズニ利益ガアルト云フ算盤ガ持テルニモ拘ラズ、之ヲ国有ニスルコトヲ非難ヲシタリ種々ノコトヲ言ツテ四千万ノ同胞ニ対シテ損ヲサセル、貧乏ニナレト云フコトヲ言ツテ居ルノハ如何ニシテモ不都合ナ話ト思ヒマスカラ、私ハ十年来熱心ニ鉄道国有ヲ唱ヘテ居ル、成程経済界ノ都合ニ依ツテハ或ハ色々説ガアリマセウケレドモ、分ラナイコトニハ今ノ運輸交通ノ運賃ヲ安クスル方ガ宜イカ安クセズニ高クスルガ宜イカト云フト、既ニ昨年カラ京浜間ノ鉄道モ運賃ガ上リマシタ、是ガ段々上ツテシマヘバ倍数マデ上ツテ行ク、今日ニ於テハ急ニ此事カ分ラヌカラシテ人ガ何トモ言ツテ居リマセヌガ中々運賃ガ高クナルト殖産工業ノ発達ハ決シテ出来ナイ、私ノ考ニハ之ヲ国有ニシテシマイマスレバ二十五年・三十年ヲ待ズシテ唯タ営業費サヘ出セバ無代価デ歩行ケルト云フコトニナル、チヨツト算盤ノ方ヲ御話致シマスケレドモ、第一私ノ考ヘマスニハ官線ノ東海道線、ソレト九州カラ青森マデノ鉄道線路ヲ以テ純益ヲ考ヘテ御覧ナサイ、能ク覚ヘマセヌガ田口君ハ御承知デ一年利益ガ六百万円、民設ノ方ガ七百万円チヨツト、一千五百万円ハ今日ノ所確カニアル、私ノ考デハ一千五百万円ノ純益ガアツテ此鉄道ヲ三億万円デ買ツテ四朱ノ利付デ借リタ所ガ三百万円純益ガ残ル、日本ノ公債ニハ今マデ一トシテ返済ヲスルトキニ返済準備ト云フモノヲ公債ニ取ツテ置カナイ、ト云フノハ三百万円ヲ四朱ノ殖利法デ三十年カラヤリマスルト四億万円カラニナリマス、シテ見ルト千五百万円ヲ鉄道ガ稼イデ其為メニ千弐百万円払ツテ差引三百万円ノ純益ガアル、之ヲ四朱ノ殖利法デ三十年据置クト三億ヲ超ヘテ四億万円近クノ資本ニナリマス、国家ノ利益ハ進ムコトアツテモ退クコトハナイノデアル、或ハ二十年カ三十年ノ間ニハ国有ニナツタ為メ期セスシテ経済界カ裕ニナツテ来ル、是ガ起ツテ来タ以上ニ外国ニ向ツテ金ヲ借レバ其時コソ外国ガ喜ンデ金ヲ貸シテ呉レル、今日ノ所デハ食ウコトガ出来ヌデ友達ノ所ヘ
 - 第22巻 p.606 -ページ画像 
チヨツト内々ニ金ヲ借リニ行ク如ク、人ノ眼ニ立タナイヤウニ金ヲ借リヤウト云フコトニナツテ居ルカラ六朱ノ金ヲ借リタ、日本ノ富ヲ以テ数フルトキニハ二億・三億ノ資本ニ困ルノ困ラヌノト云フ国デハナイ二億万・三億万何デモナイ、其金ヲ借ルノニ内々デ狐鼠狐鼠行ツテ借リテ来ルト云フ借方ハ詰ラヌノデ、今マデ私ノ述ベマシタ如ク鉄道ヲ買上ケテ壱千五百万円ノ純益ニナルモノヲ買ツテ、三百万円ヲ償却準備ニ積立ツテ置ク事ガ起ツタ以上ハ外国人ガ喜ンデ向フカラ貸シニヤツテ来ル、何故貸シニヤツテ来ルカト云ヘバ支那ヲ御覧ナサイ、権力ヲ以テ諸外国ガ彼所ノ鉄道ノ占有権ヲ取リタガツテ居ルト云フコトハ昨秋カラ此一月アタリノ新聞デモ分リマセウ、支那ノ未開国デサヘ鉄道線路ノ権力ヲ得タイト云フノデ兵力ヲ以テ争ツテ居ルノデアル、ソウシテ見レバ日本ノ如キ開ケタ国ガ今言ツタ所ノ計算ヲ以テ之ヲ預ケルカラ金ヲ借サンカト言ヘバ、向フノ人モ立派ニ算盤ヲ持ツ人デアルカラ成程ソレ等ノ確実ナル物ヲ持ツテ居レバ貸シタクナル、諸君デモ貸シタクナル、自然外資ヲ輸入スル、大丈夫貸スダラウト云フテモ精算ノ取レナイモノニ金ヲ貸サレナイ、今此所ニ居ル諸君ニシテ金ヲ貸借スルコトアリトセバ抵当ノナイ者ニハ貸サレナイ、然ラバ日本モ抵当ヲ出シテ外資ヲ入レルトスレバ、私ノ考デハ三朱カ四朱デ百円ノ額面デ大丈夫借リラレルト思ヒマス、ドウシテモ二朱ハ安ク借リラレルト思ヒマス、昨年六朱デ借リタモノナレバ五十年間一朱違ウト一億三百万円ノ差ヲ生ジ、四朱デ借ルモノヲ三朱デ借リ一朱ヲ積立ツテ置クト一億三百万円ノ殖利法ニナリマス、六朱デ借ルト四朱デ借ルノハ其差如何、今日ハ左様ナコトデハ到底仕方ガナイ、先日モ申上ゲタガ外資ヲ輸入スルニハ第一土地所有権ヲ与ヘ、或ハ公債ニ裏書ヲシヤウ或ハ大銀行ヲ建テテ政府ヲシテ保証ヲサセヤウト云フヤウニ、色々ノ外資輸入ノ手段ハアリマスケレドモ、要スルニ六朱以上ノ利息ニ附カナケレバ向フデ金ヲ貸サナイ、個々別々ニ借ルコトニシタ以上ハ迚モ仕方ガナイ、ソレヨリモ先ツ国家ガ金持ニナツテ地盤ヲ固メルコトニ私ハシタイト思フ、丁度軍サヲスルニ内ノ秩序ヲ立テズニスルト負ケテシマウ、内ノ準備ヲ整ヘテ而シテ外資ヲ入レルト云フナレバ宜シイ又一家ノ内ニ譬ヘテ見レバ主人ガ金ヲ借リテ来ルナレバ安ク借ラレルモノヲ、番頭モ妻君モ手代モ借ニ行クカラ高ク借入レルト云フコトニナル、今マデノ外資輸入ナント云フノハ全体一トシテ私ハ賛成シマセヌ、第一ニ先ツ外資ヲ沢山入レ低利ノモノデ日本ノ五朱ノ公債ヲ四朱ニ整理シテシマウ、何分今日ノ場合ハ外資ヲ姑息手段デ入レルト云フコトハ絶対的国家ノ為ニ憂イテ居ル、デ私ノ考デハ目下ノ経済ノ現状調査ト云フコトハ皆サンガ唯御一人カ御二人リ御起立ガナイダケ、殆ンド満場一致デ御起立ニナツテ居ル、シテ見ルト目下ノ経済界ガ実ニ危急存亡タルハ皆御同感ト思ヒマス、御同感ノ御精神カラ取ツテ見マスルト是丈ケノコトヲ議シタノジヤ到底マダ私ハ皆サンノ御起立ノ御精神ヲ徹底スルト云フニハ至ルマイト思ヒマス、故ニ外資ヲ輸入スルニハ是々ノコトヲセヨト云フコトヲ単独ニヤツタ方ガ宜カラウト思ヒマス、鉄道ヲ国有トシテ外資ヲ入レルト云フ単独ノ方法ニシマシタナレバ私ハ宜カラウト思ヒマス、御調ベニナリマシタ箇条ハ中中重要
 - 第22巻 p.607 -ページ画像 
ナ箇条デアリマスケレドモ、此箇条ヲ履行シテ居ル間合ガナイ、要路ノ有力者ニモ遇ヒマシテ種々話シテ見マシタガ、何レノ御方モ外資ヲ輸入スルハ宜イガ、今マデノ如ク驕奢ニ奔リ若クハマルデ道楽息子ノヤウナ仕様ノナイ者バカリダ、此人間ニ金ヲ与ヘテヤレバ戦後ニ五・六億万ノ金ヲ使ヒ潰シテシマツタノト同ジコトデ、滅多ニ外資ヲ輸入サレナイト云フノガ勢力アル方ノ議論デアル、ソレデハ外資ハ輸入セヌカト云フト、入レルニハ違ヒナイガ高利ノ金ヲ借リルヨリモ安イ利息デ借リタイト云フテ見テモ、国ガ抵当ヲ入レテ金ヲ借リルノハ恥カシイ話デアル、高クテモ無抵当デ借リナケレバナラヌト云フノデ、信用借リヲスル結果国ヲ潰シテシマウカ、抵当付デ安ク借リテ向フヨリ勝利ヲ得ルカ、ト言ツタナレバ、抵当付デ金ヲ借リテ、国ヲ富マシタ方ガ宜イ、無抵当デ借リテ貧国ニナルヨリハ抵当付テ借リテ富国ニナル方ガ宜イ、今マデ使ツタ金ハ砂利ヘ水ヲ入レタヤウナモノデ吾々共ノ上カラ言ヘバ日清戦争ノ最中デアル、一億万ノ金ヲ貸シテシマツタ上ニ又其上ニ種々ノコトヲヤツテ戦争ノ当時ト商工業界ハ同ジコトデ今度這入ツテ来ルノハ決シテサウ云フ訳デハナイ、何故ナレバ不生産的ノ公債ガ生産的ノ公債ニナレハ、驕奢ニ耽ラウト云フコトハ決シテ出来ナイ、是ニ対スル利益ノアル事業ヲスル、驕奢ニ奔ルト云フコトハナイ、吾々共ガ使ツタ金ハチヤント算盤ヲ立ツテ此算盤ニ合ハヌ金ヲ出サヌ、相当ノ賃銀ヲ取ルカラシテ労働者ニシテ見テモ無駄ナ浪費ハシマセヌ、今日ハ生産的ノ公債ヲ募ルト云フコトガ先ツ必要デアル所ガ此儘ニ放任スルト生産モ不生産ト化シ滅茶苦茶ニナル、モウ一億四千三百万円ハ外資ヲ借リテシマツタ、之ヲ棄テ置ケバ一層輸入ガ超過スルノデ防グコトハドウシテモ出来ナクナル、来年モ更来年モ此通リドウスルカト云フニ至ルダロウト思ヒマス、然ルニ私ノ考ノ如クシテ参リマスレバ、国家運輸交通ノ機関モ整ヒ、公益ヲ平等ニ得セシメテ、国家ノ殖産工業ヲ発達サセテ、一方ニハ戦後経済ノ誤ツタ秩序ヲ回復シマス、是ヨリ外ニハ詮術アリマセヌ、諸君ガ御同意下サレテ是ガ通ルコトニナリマスレバ国家ノタメニ実ニ喜ブベキモノト思ヒマス併シ之ハ敬次郎一人ノ意見デゴザイマスカラ、諸君カ国家ヲシテ泰山ノ安キニ措ク御名論ガアリマスレバ拝聴致シタウゴザリマス、私ハ是ヨリ外考ヘマセヌ、又是ニ付キマシテハ六十枚バカリ書イタモノガアリマス、此書イタモノハ細カニ書イテアリマスガ中々之ヲ読ムト三十分モ掛リマスカラ、何レ活版ニデモシテ諸君ノ御手許ニ差上ゲル積リデアリマス、之ヲ御同意下サレ政府ニ迫リ輿論ヲ喚起シタナラバ国家ハ泰山ノ安キニ至ルコト三年・五年ヲ待タズシテナラウト思ヒマス、一言申シ上ゲマス、尚ホ御尋ノコトガアリマスレバ何ナリトモ御答致シマスカラドウゾ御尋ヲ願ヒマス
○三番(名古屋、上遠野富之助君) チヨツト先刻述ベマシタ中ニ少シ申シ落シタ所ガアリマスカラ補ツテ置マス、斯ウ云フコトニナル「以上数項ニ加フルニ昨年来兌換券ノ伸縮其当ヲ得ズ金利ノ高低ニ激変アリタルハ国家経済ノ変調ヲ呈シ逆境ニ陥リタル所以ナリ」ト云フコトニ直シテ、サウシテ金利ハ高貴トナリト云フ所デ消シテシマツテ「此儘ニ云々」ト斯ウ云フ修正ニ致ス、ソレカラ只今五番サンデスカ段々
 - 第22巻 p.608 -ページ画像 
御説ガゴザイマシタガ、三番ノ説ハ云々ト云フコト仰ツタガ、私ハ矢張リ戦後ノ経営ニ付テ国家経済ノ方針ハ一ツ誤ツテアルト云フコトハ此修正案ニ同意ナノデ、併シナガラソコハ同意デアルケレドモ、此国家ノ経済社会云々ト云フコトニ付テハ之ハ亦特種ノ事情ガアルト云フコトデアル、ソレカラ又雨宮サンノ御論デハ全体ニ調査委員ノ意見ト云フモノハ姑息ナ意見デアル、斯ンナ小サナ根生デハ行ケハセナインダ、早ク鉄道ヲ国有ニシテシマツテソレヲ抵当ニシテ低利ノ金ヲドント玆デ借リテサウシテヤラネバ行ケナイノデアル、ソレ位ノ考ガナクツテ、サウシテ斯ンナ注文ナレバ政府ノ人等ハ百モ承知デアルト云フヤモ知レズ、左様ナ注文ヲ爰ニ並ベタトテ何ンノ役ニモ立タヌノデアルト、殆ンド叱ルカ如ク訴ヘルガ如キ段々ノ御話デアル、如何ニモ雨宮サンノ御説ハ之ハ雨宮サンノ御見識ト申スノデ私共ハサウハ思ハヌノデアル、成程軍艦モ買入レル、マア政府ガ積極的ノ方針デ計画モサレタンデアリマスカラ外国ニ払ハンナラヌモノモアル、又其金ノ都合ニ依リテハ今日ノ財政計画ノ上カラ如何ニモ仰シヤル通リ去年モ外債ヲ募集サレテ随分高イ利息ノ金モ借リタノデアル、併シ今後ハソレデハ外債ヲ募集セヌデ宜イカト云フト、ソレハ随分募集シナケレバナラヌ、現ニ今日モ当局者ハ其計画中デアルケレドモ私共ノ考ヘル所デハ已ムヲ得ヌ、之ハ必要上払ハネバナラヌ金デアツテ、一時外国カラ金ヲ借リルト云フコトハ国家ノ歳計上仕方ガナイトキニハ借リテモ宜イノデアル、所ガ金ノ方ノ都合ト云フモノハ何モ今サウ国家ノコトハ自分ノ一家ノ遣リ繰リ相談ノ如ク私シハ考ヘヌ、金利ノドウ斯ウハ最モ大事ノモノデアツテ一国ノ歳計上ニ顧ミナケレバナラヌモノデアルケレドモ、唯タ一本調子ノ、金ヲ借ル人ハドウシテモ是ダケノ抵当ヲヤラナケレバ安イ金ヲ外国ハ貸サヌモノデアルト云フコトヲ見込ミテ議論ヲ立テルニハ及ブマイ、今日日本ノ経済社会デアツタナレバ或ハ外国人モ日本ヲ信用シテ金ヲ貸サヌカモ知レナイ、御同様ニ骨ヲ折ツテ随分此国モ商工業或ハ外交其他総テノ点ニ於テ世界ニ信用ヲ厚クスルダケ地位ヲ進メルト云フコトハ、国民挙ツテ今日力ヲ尽シテ居ルノデアルカラ、何モ今日高イ利息ノ外債ヲ募ツテ居ルカラ何時モ日本ハ外債ト云フモノハ大変高イ利息デナケレバ借リルコトハ出来ナイトモ限ラナイ、又何ヲ苦ンデ慌シク、今日ドウシテモ日本ニ対シテハ高イ利息デナケレバ金ヲ貸サヌカラシテ、此鉄道モ政府デ買ツテ貰ヒ、ソレカラ之ヲ抵当ニシテ一ツ相談シヤウジヤナイカト云フ此方チカラバカリ馬鹿ニ頭ヲ下ゲル必要モナカラウト思ヒマス、又私ハ算盤ノ勘定ハ知ラヌト仰シヤルカ知レマセヌケレドモ、隣国ノ支那ナドガヤツト鉄道ヲ拵ヘサウシテ外債ヲ募集スル、成程日本ハ少シ高カツタカ知レナイケレドモ、兎モ角信用デ彼レ丈ケニ成効サレタト云フコトハ、私ハ不愉快ニハ思ハヌ、随分国家ノ為ニ相当ノ信用ガアルモノト思ツテ居ル、私ハ支那ヤ朝鮮ノヤウニ思ハレテモ構ハナイ、安イ金ヲ借レバ宜イ、ドウデモシテ借金ヲシテヤルガ宜イデハナイカ、算盤ヲ知ラヌ奴デアル、ソンナ腹ノ小サイコトデハ行ケナイト云ウヤウナ一酷ナ考ハ私バ起サヌ、兎モ角モ日本ノ経済ハサウ単純ナモノデハナイ、充実シナイ資本ガアツタナラバソレヲ充実サセヤウ、又色々是ダケノ四項目
 - 第22巻 p.609 -ページ画像 
ニ掲ゲテアル事ニ不備ノ点ガアレバ完備スルガ宜シ、又日本国ノ兌換制度ニ付テモ基礎ガ確立シテ居ラヌナレバ斯ウ云フ風ニヤラナケレバナラヌト云フコトハ随分ソンナニ慌テンデモヤレルコトデアル、未ダサウ経済社会ヲ悲観的ニ思フニモ及バヌ、又今日慌ニモ及バヌ、若シ試ニ此ノコトガドウシテモ今スグ国有鉄道ニシテサウシテ外国カラ金ヲ借リナケレバ国家ヲ奈何セン、日本ノ経済ハ危急存亡ノ時デアルト云フナレバ、何故ニ先月アタリカラ御騒キニナツタカ、誠ニ救済ト云フコトハ近イコトデ、是程ニ国家ノ大事デアルト云フナレバ、モウ少シ平生ニ御考ガアル筈デアル、今日危急存亡ノ場合デアルト仰ツシヤルニ及ブマイト思フ、憂ハ皆同ジデアル、先月来金利ガ段々騰貴シテ来テ急ニ事情ガ斯ウナツテ来タ、ソレデ今日ヲ奈何セント云フコトハ一体此問題ノ起リデアツタ、併シナガラ今日ヲ奈何セン、ソンナコトヨリ根底カラ病根ガアルカラシテ、段々治療法ヲヤラウジヤナイカト云フカラ討究爰ニ至ツタノデアルケレドモ、今国家危急存亡ノ場合デアル、今日ヲ奈何セント云フ位ニ有志ノ五番サンカ仰シヤルガ、私シハソレ程ニ切迫シタトハ思ヒマセヌ、デ私ハ矢張リ此委員提出ノ案ヲ基礎トシテ、是ダケノ考ニ唯今私カ提出シタ修正ヲ加ヘ、尚ホ少々修正シタイト云フ考ガアリマスケレドモ、ソレハ複雑ニナリマスカラ後トデ述ベルトシマシヤウ
○六十二番(東京、井上角五郎君) 六十二番ハ議事ノ順序ニ付テチヨツト申上ヤウト思ヒマス、仲田サンノ議論モ一ツノ修正動議ニナツテ居リマス、上遠野サンノ議論モ一ツノ修正動議、ソレニ横田サンカラハ更ニ附加ヘノ動議、是等ノ修正動議ソレガ彼方ラ此方ラトチヤンポンニナリマシテハ何分纏リマセヌカラ、先ツ第一条・第二条トナツテ居リマセヌケレドモ、文章ノ切レ目々々ヲ逐条ト致シマシテ、初メノ三行ダケヲ議事ニ掛ケ、次ニハ丁度十行バカリアルソレヲ議事ニ掛ケテ、切レ目々々ヲ逐条トシテ御掛ケ下スツテ、サウシテヤツテ見テ済ンダ所デドウモ是デハ不折合ダト云フコトガアツタナレバ、更ニ元ヘ戻ツテ相談シテモ宜シ、三読会モアルコトデアリマスカラ、文章ノ切レ目切レ目ダケヲ逐条トシテ一条毎ニ御議シニナルコトヲ希望致シマス、ソレトモウ一ツハ、一ノ動議ガ出マシテモ未ダ賛成ガナクテ成立ツテ居ナイト云フ問題ハ、之ヲ駁スルト云フコトハ廃シタ方ガ宜カラウ、現ニ今モ上遠野君ノ雨宮君ノ議論ニ対シテ御弁駁ト云フカ何ト申シマスカ、雨宮君ノ議論ハ成立ツテ居ナイ以上ハ少シク無駄デハナカツタカト思ヒマス、実ハ私ハ今日中ニ此事ガ結了スルコトヲ望ミマスカラ、議事ノ順序ニ付テ一寸意見ヲ申述ベマス
○二十三番(横浜、大谷嘉兵衛君) 二十三番モ六十二番ト同感デ、先刻私ガ申上ゲタノデ大ニ錯雑スルコトヲ嫌ヒマシテ申上ゲタ次第デアリマスルデ、御採用ヲ願ヒマスナレバ大変幸ヒデアリマス、尚ホ若シ御採用ガゴザリマセヌデゴザイマスレバ、私ハ自分ノ意見ノアル所ヲ全般ニ付テ尚ホ項目ヲ挙ゲテ申上ゲナケレバナラヌガ、サウシマスルト錯雑スルト思ヒマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 今六十二番ノ御説ガゴザイマスガ、三行ニシマセヌデモ爰ニテ議題ニ致シマシテ、表題及説明カラシテ一枚隔
 - 第22巻 p.610 -ページ画像 
ツテ「豈軽々ニ看過スベケンヤ」是ノ二次会デゴザイマス、ソレデ四十五番ノ修正ノ御意見ハ十二番ハ全体ニ御賛成デアリマスカ、御賛成ラシクモアリ御賛成デナイヤウデモアル
○十二番(阿波、根本民治君) 私ハ四十五番ノ御意見ガ伺ヒ取レナカツタンデシタガ
○会長(東京、渋沢栄一君) 斯ウ云フ訳ナンデ、此「勿論軍備ト雖モ尚ホ軍艦買入ノ如キ砲台建築ノ如キ」ト云フ字ヲ除キ「期限ヲ延長シテ一時多額ノ支出ヲ抑ヘ難キニアラス」ト続ケテシマイタイ、物ヲ指シテ此所ヘ延期サレタイト云フ意味ヲ明言スルコトガ宜クナイト云フ字句ノ修正デ
○十二番(阿波、根本民治君) 四十五番モ矢張リ「政府事業中軍備ノ当サニ積極的タルベキヲ信ジテ疑ハズ」之ハ入レルンデスカ
○四十五番(松山、仲田槌三郎君) サウデス、ソレハ入レルンデス
○十二番(阿波、根本民治君) 十二番ハ何デゴザイマス、チヨツト文章ヲ為シマセヌガ、詰リ此箇条ニ於キマシテ軍備ノ拡張云々ト云フコトノ文字ヲ私ハ総テ削除スルト云フ考デ
○会長(東京、渋沢栄一君) 四十五番ニ賛成デハナイデスナ
○十二番(阿波、根本民治君) 四十五番ノハ……私ハ丸切リ軍事ト云フコト、或ハ海軍トカ、軍艦買入・砲台建築ト云フコトハ削ツテ、其次ヘ持ツテ行ツテ政府内部ノ或ハ官吏ノ節減ヲスルトカ、中央トカ地方部ノ官吏ノ数テモ減ズルトカスルコトハアルケレドモ戦後経営ノ軍事ニ関スルコトハ総テ削除シタイト云フノデ、咄嗟ノ間デ文章ヲ為シマセヌカ、兎ニ角私ノ精神ハ「軍備ノ当サニ積極的タル」云々カラ以下「軍艦買入ノ如キ砲台建築云々」ハ削除スルト云フ考ヘデ、チヨツト文章ヲ為シマセヌガソレハ三次会マデ文章ハ出来マス、兎ニ角軍事ヲ唄フテ置クコトハ不同意デ、四十五番ト意味ガ違ヒマスカラ動議トシテ提出シマス
○二十三番(横浜、大谷嘉兵衛君) 此精神ハ何デアリマスルケレドモ成ルベク文字上ニ於キマシテハ、穏カニシタナレバ宜カラウト云フノデ、矢張リ十二番・四十五番ノ御考ト同ジテ、之ハ政府ノ事業トシタナラバ、軍艦ヲ買入マスノモ或ハ陸軍拡張ニアリマシテモ砲台建築ニシマシタ所ガ軍事拡張デ、モウ少シモ差支ナイト思ヒマス、政府ノ事業デ網羅シテ居ルト私ハ存ジマスカラ、ソレ故ニ此「戦後ノ経営ニ於テ特ニ然リト為ス、本会モ亦各国交際ノ現状ヨリ之ヲ考フルニ政府事業ニ於テモ」「一時多額ノ支出云々」ト云フコトニ続ケテ行キマシテ、其先キニ其他ノト云フコトガアルカラ、且ツヤマデ飛バシテ「其政府通常ノ経費」ト斯ウ行キマスレバ、政府ノ事業総テヲ網羅シテ居ラウト思ヒマスカラ、却ツテ其方ガ宜カラウト考ヘマスノミナラズ、先程十二番ト四十五番ノ御説ノ如ク他ヘ聞ヘマシテモ其方カ宜カラウト思ヒマス、政府事業ダケデ少モ差支ナイト云フコトヲ私ハ認メマシテゴザイマス
○会長(東京、渋沢栄一君) サウ致シマスト文章ヲ為シマセヌデス、ソレデハ言フコトガ分ラヌ文章ニナリマスガ
○十二番(阿波、根本民治君) チヨツト二十三番ニ御相談シタイ、タ
 - 第22巻 p.611 -ページ画像 
ツテ文章ヲ作リ掛ケヤウトシテモドウシテモ此前後ノ関聯ハ保タナイ要スルニ軍備ト云フコトヲ此文面ニ唄ウト云フコトハ、国威ノ上ニ於テモ国権拡張ニ於テモ不利益デアルカラ国際上甚ダ面白クナイ、是ハ削除スルガ宜イト云フノハ大体ノ方針デ、ソレデスカラ其文章ハ後トニ譲ツテ、全体本案ニ斯ウ云フヤウナ軍艦買入トカ砲台建築ト云フコトヲ唄ヒ置クガ善イカ悪ルイカト云フコトノ大体論ガ定マレバソレデ宜イ
○二十三番(横浜、大谷嘉兵衛君) ソンナラバソレデ宜シイ、精神ハ其通リデアリマス、併シナガラ之ヲ文章ニ出スダケノ所ヲ控ヘテ置キタイト云フ精神デアリマスカラ、ソレデ十二番ト同ジデゴザイマス
○二番(名古屋、奥田正香君) 私ハ委員ノ一人デアリマスカラ委員説ヲ維持スルノデモアリマセヌガ、文章ハ追テ文案トシテ三次会ニデモ御直シヲスルト云フコトデゴザイマス、頻リニ砲台建築トカ軍艦ノ買入ト云フコトヲ言ツテ置クノハ国威ニモ関係スルカラト云フコトデ意味ハ少シモ悪クナイガ成ルベク穏カニスルト云フ御趣意デアルケレドモ、私ハ原案ノ通リデ宜シカラウト思ヒマス、固ヨリ此軍備ノ拡張ハ果シテ国力ト伴フテ居ルヤト云フコトハ曾テ商業会議所聯合会デ議シテ、既ニ横浜聯合会ノ節ニモ軍備ハ過大ニ失シテ居ル、軍備縮少ノ為ニ特ニ建議ヲシヤウカト云フマデニ、既ニ東京デ致シタトキニハ只今ノ会長即チ渋沢君ノ御発議ニナツタヤウニ覚ヘテ居リマス、ドウシテモ私共ハ軍備ノ拡張ハ過大ニ失シテ居ルト云フコトハ、即チ国力デ今日ノ日本トシテハ多大ニ失シテ居リハシナイカト云フ考ガアル程デアリマス、然ルニ此案ハ全ク過大ニ失シテ居ルカラ縮少セヨト云フコトガ眼目ニナツテ居ル、唯ダ例ヘニ引イタノデ軍艦ノ買入・砲台建築ノ如キ此中デモ延長シ得ラルヽモノハ延長シ、縮少シ得ラルヽモノハ縮少シ、延長シ得ラレナイモノハ仕方ガナイ、縮少シ得ラレナイモノハ仕方ガナイ、斯ウ云フコトニナツテヲル、今日ノ日本ノ国力ニ伴ハンノデ即チ民力ニ伴ハヌ軍備ノ拡張デアルナレバ縮少モシタイ、去リナガラ今日縮少ト云フコトヲ唱ヘマスレバ或ハ今日マデ支出シタ金カ無用ニナルト云フ御説ガアルカ知レナイ、軍艦ヲ半バ造ツテ其儘ニシテ置ケナイ、砲台モ一方ハ出来テ居ツテモ一方ハ捨テヽ置クト云フコトニナリハシナイカト云フ如キ、先キノ則チ軍備縮少論ノ如キハ遺憾ナガラ其論ヲ採ルゴトハ出来ナイ、私ハ今日ノ国家経済ノ方針ヲ立ツルト云フコトハ、仮ニ心得ナケレバナラヌコトモ随分此緩急ヲ図ツテスルト云フヤウナコトニシタイト云フ考カラ委員説ニ賛成シタ、軍備ノ縮少ハ出来ナイモノデアル、又各国ニ対シテモ不面目デアルト申シテモ宜イ、又先刻何誰カノ御説ニモ既ニ今日ハ殆ント滅亡ニ近イ程ノ有様ニナツテ居ルト云フ御論モアツタト思ヒマス、是等コソ実ニ日本トシテ恐ルベキコトデアル、今日ノ軍備ハ過大ニ失シテ居ルノ恐レハアルカモ知レマセヌケレドモ、之ハ大ニ縮少スルト云フコトハ出来マセヌ、即チ政府ノ事業ハ積極的之ハ信ジテ疑ハヌト論ジテ居ル、去リナガラ斯ル場合ニハ已ムヲ得ヌトキニハ経済ノ方針ヲ立テル上ニ付テハソレヲ幾ラカ縮メルト云フコトモ必要ナコトデアル、既ニ渋沢会長ガ首相ニ出席ヲ請フタトキニ、ドウシテモ此軍備縮少ハ出来ナイト云フ
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コトハ御明言ナスツタト云フコトデアリマスカラ、既ニ政府ニ於テモ軍備ノ縮少ハ出来ナイト御明言ナサル、之ハ又幾ラカ信ジテサウ仰シヤル、吾々ハ軍備ハ少シ過大ニ失シテ居ル、去リナガラ唯ダ吾々ハ希望ハ延期シ得ラルヽモノハ其緩急ヲ図ツテ延期シテ貰ヒタイト云フコトデ、事ニ害ナキ限リハ決シテ遠慮ニハ及バヌ、今国家経済ノ方針ト云フコトノ重キヲ思ヘバ忍ビ難キヲ忍ビ節シ難キヲ節シ又延ベ難キヲ延ベテ、不都合ノナイ限リハサウシテコソ然ルベキデアルト思ヒマス故ニ僅カノ文字ニ汲々トシテ之ヲ省クト云フコトハ感心致シマセヌ
○三十八番(岡山、香川真一君) 私ハ時間ヲ費スコトヲ恐レテ成ベク黙シテ居リマシタガ、反対ノ議論ガ盛ニゴザイマシテ、本案ノ意思ハ能ク今奥田サンカラ述ベラレマシタ、私ハ奥田サンノヤウニ弁舌ガ能クアリマセヌカラ短カウゴザイマス、私ハ本案通リデ宜カラウト思ヒマス、軍備ノコトヲ書イタラ何ガ差支マスカ、若シ是ガ外国ニデモ聞ヘテ甚ダ不面目デアルト云フコトデゴザイマスレバ、国ガ貧乏ヲシテ之ハ溜ランカラ救済シヤウジヤナイカト色々相談ヲシテ建議スルモ甚ダ恥入ツタ次第ト言ハナケレバナラヌ、少シモソレハ差支ナイコトヽ思ヒマスル、依ツテ本案ヲ維持致シマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 大抵御発言モ尽キタヤウデスカラ採決シヤウト思ヒマス、四十五番ノ此文字ヲ削ルト云フ御説ハ賛成ガゴザイマセヌ、十二番ノ軍備云々ト云ウ文字ヲ除クト云フ是ニハ二十三番ノ御賛成ガゴザイマス、其説デ採決致シマス、文字ノ成案ハ成立ツテ居リマセヌガ、併シ之ハ軍備ト云フ文字ヲ除イテサウシテ此所ノ字句ニ修正ヲシタイト云フノデゴザイマス、此意味デ決ヲ採リマス、是ニ御賛成ノ諸君ハ御起立ヲ願ヒマス
  起立者  少数
○会長(東京、渋沢栄一君) 少数……次ギニ移リマシテ、然リ而シテカラ第一ト云フ前マデヲ議題ニ致シマス
○三番(名古屋、上遠野富之助君) 「以上開陳シ」ト云フ所デゴザイマス、以上数項ニ加フルニ昨年来兌換券ノ伸縮其当ヲ得ズ、且ツ金利ノ高低ニ激変アリタルハ目下経済ノ変調ヲ呈シ逆境ニ陥リタル所以ナリ、ソレカラ之ヲ「此儘ニ」ト云フ上ニ「故ニ之ヲ此儘ニ」トサウ修正シタイ
○二番(名古屋、奥田正香君) 私ハ之ヲ入レタ方ガ至極宜イヤウデゴザイマスカラ賛成致シマス
○六十二番(東京、井上角五郎君) 六十二番ハ委員長トシテ、只今ノ修正ハ御賛成モアルヤウデゴザイマスカラ一言弁ジテ置キマス、委員会ハ目下民業ノ発達セザルハ一・二・三・四トアリマスルガ如キ原因ガアツテ発達シナイノデアルト斯ウ認メテ居ル、此四ツノ原因ナルモノガ充実シナイト云フノガ一層充実シナクナツタト云フノハ、一方ノ釣合ニナツタト認メテ居ル、ソウシテ兌換券ノ伸縮若クハ金利ノ引上高低ノ如キモノハ、寧ロ其四ノ原因ニ対シテ将サニ政府ガ施シタ其手段ガ誤ツタノデアルト認メルノミデアツテ、金利ヲ引上ゲルモノガアツタカラ初メテ今日世ノ中ガ不景気デハナイノデ、其世ノ中ノ景気ノ悪クナル原因ガアツタ、其将サニ働キヲ逞ウスル際ニ金利ノ引上ゲヲ
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ヤツタカラ一層甚シクナツタノデ、今日経済ノ事情トシテ盛ツタ業トシテ悪ルイ業デアツタケレドモ、彼ハ薬ヲ誤ツタノデ、今日ハ病源トシテ認メルノデアリマセヌカラ、此説ニ反対シテ委員説ノ通過ヲ希望致シマス、併シ文章ニ於テ「目下経済ノ変調ヲ呈シ逆境ニ陥リタル原因ニシテ」ト云フノハ匆卒ノ際デゴザイマシタカラ、少シ多ウ過ギルヤウデスカラソレハ御削ニナツテモ宜シイ、政府ノ事業ノ緒ニ就クト共ニ就中資本ハ騰貴シテト書イタ方ガ宜イト思ヒマスカラ、削ルダケノコトハ動議トシテ私一個人カラ提出シマス
○四十五番(松山、仲田槌三郎君) 削ル方ニ賛成シマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 此項ニ付テハ修正ガ二説デアリマス、三番ノ御説ハ此「以上数項ニ加フルニ云々」ト云フ文字ヲ加ヘテ「此故ニ此儘ニ」トシタイト云フ修正意見デ是モ二番ノ賛成ガアリマス、六十二番ハ其御説ニ対シテハ委員会ノ思入ヲ御述ベニナツテ反対スルト同時ニ、文字ニ対シテ以上数項ハ原因ニマデ削ツタラ宜カラウ、戦后経営ト云フノヲ此項ノ書初メニシタナラバ宜カラウト云フ斯ウ云フ御意見デ、是ニモ賛成ガアルヤウデ、順ニ依ツテ決ヲ採リマス、三番ノ修正意見ハ能ク皆サンガ御分リニナリマシタラウ、三番ノ修正意見ニ御同意ノ御方ハ起立ヲ請ヒマス
  起立者  少数
○会長(東京、渋沢栄一君) 少数……六十二番ノ修正即チ「以上数項ハ目下経済ノ変調ヲ呈シ逆境ニ陥リタル原因ニシテ」ト云フノヲ除イテ、四項ヲ並ベテ書イタ所ヘ戦後経営ノ漸ク完備シ政府事業ノ云々ト云フコトニ致シタイト云フ動議ニ御同意ノ御方ハ起立ヲ請ヒマス
○二十番(神戸、横田孝史君) チヨツト伺ヒマス、六十二番ニチヨツト御尋シマスガ「国家経済ノ」云々ト云フ文字ヲ削除致シマスルト「戦後経営ノ漸ク完備シ政府事業ノ緒ニ就クト共ニ就中資本ハ騰貴シ」云云、斯ウ云フヤウニナリマスト、政府ガ即チ過大ノ軍備ヲ為スガタメニ民間事業ノ資本ガ其等ニ吸集サレテ事業ガ振ハナクナツタト斯ウ云フコトニ解釈シテ宜イノデスナ、文章ノ上カラ自ラサウナリマセウ
○六十二番(東京、井上角五郎君) 之ハ削リマシテモ削リマセヌデモ同ジコトデゴザイマシテ、ソウ極ク厳密ニ解釈セラレマスト横田サンノヤウニ考ヘマスケレドモ、私共ハ稍ヤ其傾キハナキニアラズト信ジテ居リマス
○二十番(神戸、横田孝史君) ソレデハ止ムヲ得ズ同意ヲ致シ兼マス
○二番(名古屋、奥田正香君) 折角委員長ノ修正説デスガ、吾々委員ハ即チ目下経済ノ変調ヲ呈シ逆境ニ陥リタル原因ニシテ、此原因ヲ尋ネテ而シテソレソレノ手段ヲ講ズルト云フコトニ決シマシタノデ、矢張リ之ハアリマセヌト何ノコトヤラ分リマセヌカラ
○二十番(神戸、横田孝史君) 同感
○会長(東京、渋沢栄一君) 然ラバ六十二番ノ修正説ガ少数デ消滅シマスナ
○二番(名古屋、奥田正香君) 固ヨリ有力ナル委員長ノ何デゴザイマスカラ消滅ニ帰サント云フ……
○六十二番(東京、井上角五郎君) 意味ハ変ラヌト思フガ変ルカ知ラ
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ン……
○会長(東京、渋沢栄一君) 兎ニ角六十二番ノ修正御意見ガ出テ、四十五番ガ同意ノヤウデス、六十二番ノ文字ヲ削ルノ説ニ御同意ノ方ハ起立
  起立者  少数
○会長(東京、渋沢栄一君) 少数、ソレデハ今度ハ第一・第二・第三第四ト四ツ一緒ニシテモ宜ウゴザイマセウカ
○六十二番(東京、井上角五郎君) 一項ヅヽ
○会長(東京、渋沢栄一君) 然ラバ第一ダケニ致シマス
○二十三番(横浜、大谷嘉兵衛君) 二十三番ハ先程雨宮サントソレカラ田口サンノ御話ヲ聞イテ見ルト、興業銀行ノ組織ニ関スルコトナドハモウ既ニ委員会マデモ明日トカ明後日トカニ迫ツテ居ルト云フコトデアリマス、詰リ之ハ爰ニ掲ゲテゴザイマシタ所ヘ既ニヤリツヽアルト云フコトニナリマシテハ却ツテ持出スダケノモノデナイカト思ヒマス、之ハ削リタイト思ヒマス、ソレカラ第五ノ土地所有権ノコトデゴザイマスガ、之ハ昨日モ亜米利加合衆国ノ各地ニ於キマシテノコトヲ幾分カ聞イテキマシタカラ其事ヲ述ベマシタ、ソレカラ墺斯太利アタリ匈牙利アタリノ状況ヲ聞イテアリマシタカラ、相当ノ取締ノ条件ヲ置キ或ハ下渡シノ条件ト云フコトガ必要デアラウカト思ヒマスデ、相当ノ条件ヲ附スルト云フコトハ宜カラウト思ヒマス、唯ダ之ハ文章ニ於キマシテハ宜シク可決ノ上願ヒタイト思ヒマス、相当ノ条件ヲ附スト云フコトニ致シタイト思ヒマス
○二十番(神戸、横田孝史君) 私共モ、此第一項ノ第一興業銀行ノ設立ヲ迅速ニシ工業資金ヲ疏通スルコトト云フノハ、今日ニ至ツテ初メテ唱道スヘキモノデナイト思ヒマス、之ニ加フルニ先刻全体ニ対シテ意見ヲ述ベテ置キマシタガ、既設ノ銀行其他ノ商工業ニ関スル事業ハ成ルヘク合併セシムル所ノ方策ヲ講究スルト同時ニ、将来興ルベキ銀行其他ノ事業ハ成ルベク資本ノモノニ対シテハ、制裁的相当ノ方法ヲ設ルト云フコトニ致シタイ、ソレカラ此第四項ノ「抽籤割増ノ制ニ由ツテ貯蓄ヲ奨励シ以テ民間零砕ノ資ヲ集ムルコト」此貯蓄ヲ奨励スルト云フコトニ付キマシテハ、恐クハモウ今日ノ輿論ト言ツテ宜イ、兎ニ角何人ト雖モ其必要ヲ信シテ疑ハヌノデアリマス、去リナカラ抽籤割増ノ制即チ恰モ富籤制ト類シタ所ノ方法ニ依ツテ貯蓄ヲ奨励スルト云フコトハ、一面ニ於テ勤勉貯蓄ト云フコトヲ奨励スルト同時ニ、或ハ極端ノ例カハ存ジマセヌガ富籤・賭博ト云フモノヲ一方ニ禁ジテアルト云フ制ニ対シテ矛盾ヲシハシナイカト云フ感念ガアル、デ是等ハ宜シク其市町村制トマデ行カナクテモサウ云フ方法デ寧ロ強制ニ近イヤウナ途ニ由ツテ方法ヲ立テルコトガ出来ルカト思ヒマス、御承知ノ通リニ台湾ニ於ケル官吏ハ至ツテ是マデハ面白クナカツタ、然ルニ総督府ノ方ニ於テ或ハ内訓カ何カ分リマセヌガ、官吏ニ対シテハ月給ノ幾分ヲ必ズヤ貯蓄スベキコトニナツテ居ル、ソレ以来尻ガ落付クト同時ニ大変品行モ能クナツタト云フコトモ聞イテ居ル、必ズシモ其真似ヲシヤウト云フノデハナイケレドモ一例トシテ見テモサウ云フ話モアル、此一項ハ何トカモウ少シ普及セシムル所ノ方法ニ之ヲ改正シタイ
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何分本日初メテ此議案ヲ接手シマシタノデアリマスカラシテ、議場ニ臨ンデ今少シ時間ガゴザイマスレバ自分ノ手ニ於テ何トカ修正案モ出来ヤウト思フ、先ヅ以テ自分ノ主張スル所ノ精神ハ此ノ通デアリマスソレカラ第五項ノ土地所有・鉱山採掘云々、之ハ私共宜シク削除致シタイト思ヒマス、此項ニ対シテ議論ヲシマスルコトヲ好ミマセヌガ、若シモ五項ニ対シテ維持説ガ出マスレバ已ムヲ得ズ自分ノ意見ヲ其場合ニ吐露スルコトニ致シタイ
○十二番(阿波、根本民治君) 二十三番モ二十番モ段々御申述ニナリマシタガ、二十三番ハ「土地所有権・鉱山採掘権ヲ外人ニ許可シ、及ヒ外人ヲシテ我ガ」云々ノ所ヲ「許可シ及ビ」マデヲ削除スルト云フノデスカ、又ハ此項ヲ総テ削除スルト云フノデスカ
○二十三番(横浜、大谷嘉兵衛君) 違ヒマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 二十三番ハ相当ナル条件ヲ附シテ土地所有権・鉱山採掘権ヲ外人ニ許可シ、及ヒ外人ト云フノハ此儘ニ置カウト云フノデ、二十番ハマルデ抜キタイト云フノデ……
○十二番(阿波、根本民治君) 有価証券マデ削除スルト云フノデスカ
○二十番(神戸、横田孝史君) 我カ公債云々ハ之ハ此儘存シマス、土地所有権・鉱山採掘権是ダケヲ削除シタイ
○十二番(阿波、根本民治君) 然ラバ二十番ヲ賛成シマス、有価証券ハ二十番モ外人ニ許ルスト云フノデス、其他ノコトハ原案賛成
○二番(名古屋、奥田正香君) 折角進行ニナリマスカラ今更此議事ノ順序ヲ彼是スルノハ却ツテ議事ノ進捗ヲ妨ゲマスルガ、之ガ可否ヲ採ルニハ一・二ト分ツテ之ヲ御採リ下サル方ガ便利ダラウト思ヒマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 第一ガ一議案ニナツテ居リマスガ、第一ノ中ニハ色々御注文ガアリ、ソレニ御賛成ガアリマスト、其廉々ニ付テ採決シナケレバナラヌト思ヒマス
○二番(名古屋、奥田正香君) 第一ハ之ハ成程段々ノ御説モアリマシテ、之ヲ止メルト云フ持論モ敢テ彼是論ズル程ノ必要ハナイガ、既ニ政府ハ此意味ニ膺テ迅速ニシテ呉レト云フノデ既ニヤツテモ居ラルヽデアルガ、尚ホ其上ニ催促スルト早ク出来ルノデゴザイマセウカラ此儘ニシテ置キ、第二ノ所ハ私モ委員ノ一人デ此出納ヲ簡明ニスルノ意デ矢張リ国庫金ノ運用ヲ敏活ニスルコトデ「其出納ヲ簡明ニ」ト云フ七字ダケヲ除キタイ、第四ハ単ニ割増ノ制ニ由ツテ云々、余リボンヤリシテ居ルヤウデアリマスカラ、是モ二十番ニ於テ又別段之ヲドウスルト云フ御説ガ出マセヌナラ、私モ之ハ後トヘ廻シ一ツ能ク論究シテ極メタイト思ヒマス、単ニ抽籤割増ダケガ此意味ニナツテ居リマスノデ、ドウ云フ風ニシテヤルト云フコトヲモウ少シハツキリトシタイ、第五ハ之ハ矢張リ二十番ト同感デアリマス、去リナガラ私ハ之ヲ悉ク抺殺シタイト思ヒマス、成程此土地・鉱山・株式其他有価証券ヲ外人ニ所有セシムル権ヲ与ヘルハ随分是デ効用モアリマセウケレドモ、此案ノ成立ハ土地所有権ヲ許シテ而シテ我ガ公債・株式ノ所有ノ便ヲ与ヘルノデ、土地ノ所有ヲ許シテナイト鉱山採掘モ許サレヌノデハナイ公債・株券ダケハ特ニ便宜ヲ与ヘルコトニシマスルト此場合ニ於テハ全部削リタイ考デ
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○一番(赤間関、松尾寅三君) 私ハ委員ノ一人デゴザイマスケレドモ強チ原案ヲ維持スル方デハゴザイマセヌ、併シナガラ興業銀行ハ今日委員会ヲ開カレル場合ニハナツテ居リマスガ、是モ委員ノ仕方デ経済社会ノ模様ヲ見テ遅々トシテ何時設立ノ場合ニ運ブカ其辺モ分リマセヌカラ、此項ハアツテ差支ナイト思ヒマス、又貯蓄奨励ノ必要ガアリマスガ如何ニモ富籤ノ法ヲ以テ勧メルト云フヤウナコトハ或ハ世間デハ又如何ナル説ヲ為スカモ知レマセヌカラ、此ノ如キコトモ宜シク何方ラニ改メテ置イテモ敢テ異議ハゴザイマセヌガ、此第五土地所有権鉱山採掘権ト云フコトニ付キマシテハ本員ハドコマデモ原案ヲ維持スルノデ、抑モ国家経済ノ方針ニ関スル意見ト云フコトニ至リマスルト永久ノコトヲ云フノデゴザイマス、私ハ此度ノ国家経済ノ方針トカ或ハ矯正トカ云フ問題ニ付テハ実ニ此項目ガ骨子ト認メテ居ルノデ、若シモ土地所有権モ鉱山採掘権モ株式モ公債モ皆与ヘナイト云フ事ニ致シマスレバ、諸君ハ前途商工業ノ発達ヲ如何シテ図ラレルカ、私ハ望ンデ得難イト考ヘル、固ヨリ本件ハ天下ノ大問題デ農家ハ大反対デゴザイマスルカラ、或ハ輿論ニ訴ヘタナラバ我々ノ希望ハ少数ニナルカモ知レマセヌケレドモガ、苟モ今日商工業者トシテ経営シナケレバナラヌト云フ我輩ニ於キマシテハ、諸君モ宜シク遠大ノ御考ヲ持ツテ此案ダケハ宜シク御講究ヲ願ヒタイト私ハ考ヘル、之ニ付テ私ハ斯ウ云フダケノ理窟ハ持ツテ居リマセヌガ、釈迦ニ説法デ議事ノ進行ヲ妨ゲナイ考ヘデ、私ノ意見ダケハ申述ベテ置キマスガ、追々反対ガアリマスレバ私モ意見ヲ申述ベマス
○四十四番(大垣、小寺成蔵君) 私ハ此問題ニ付キマシテハ一項ト四項ハ別ニ論ガゴザイマセヌ、五項ハ二番ト同説デアリマス、ソレデ公債・株式・有価証券云々ト云フコトモ矢張リ二番ト同説デ、之ハ殊更ニ爰ニ掲ゲヌノデモ所有サセルコトハ出来ルト思ヒマス、又其諸株式ノ中ニ鉄道株式ダケガ所有ガ出来ルカ出来ヌカト云フコトガ一ツ疑問ニナツテ居ル、之ハ土地所有権・鉱山採掘権ヲ外人ニ与ヘルト云フコトニナレバ矢張リ併セテ鉄道ノ方モ出来ルカト思ヒマスカラ、此五項ハ全然削ルト云フ意見ニ賛成シマス、賛成シマスル所以ハ、今日土地所有権・鉱山採掘権ヲ許シタカラトテ敢テ差支モゴザイマスマイガ、未ダ今日ハ之ヲ外人ニ与ヘルト云フ時機デナカラウト思フ、何故ナラバ此権ヲ許与スルコトハ政府ガ条約ヲスルニ方リ他日ノ補償トシテ全然特立ニナツテ居リマス、況ンヤ関税ニ至ツテハ一ツノ協定税率ノ下ニ支配ヲ受ケテ居ル、シテ見マスレバ対等条約ト云フ訳ニハ参リマセヌ、何レ遠イカ早イカニ此協定税率ト云フモノヲバ排除シテシマハナケレバナラヌト考ヘマス、之ヲ排除スルニハ何ニカ其交換問題ガナイト中々出来ナイト考ヘマス、ソレデ是等ノコトハ今鉱山ノ開掘権ヲ与ヘ土地所有権ヲ与ヘタ為ニ、日本ノ経済ニドウ云フ益ガアルカト云フト、大シタ益ハナカラウト思ヒマス、是等ハ他日其時機ノ来ルノヲ待ツテ之ヲ与ヘテ然ルベキモノト考ヘマスカラ、此五項ハ全然削除ニナルコトヲ賛成シマス
○三十八番(岡山、香川真一君) 此問題ハ委員会デハ非常ニ勢力ガ強ウゴザイマシタガ、本会ニナルト至ツテドウモ勢力ガナクナツタヤウ
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デス、併シ此問題ニ付キマシテ利害得失ヲ詳シク調タモノガゴザリマセヌカラ意見ハ述ベマセヌガ、唯時機ガ早イトカ彼所ハ削ツタラ宜カラウト云フハドウ云フ訳デ不都合ガアルノカ分リマセヌガ、私共ハドウシテモ之ヲ許サニヤ外資ノ這入ツテ来ルコトハアルマイ、国ト国ト対等ト云フ点カラ論ジマシテモ、外国デハ勝手次第日本人ガ行ツテ鉄道モ敷ケバ鉱山モ採掘シ土地モ所有サセルト云フ権ヲ許シテ居ルノニ日本デハドウモ外国人ハ恐ロシイカラソンナコトハ許サレヌト云フハ少シク独立ノ体面ヲ損ジハシマイカト云フレ虞カゴザイマス、私モ短カク言ヒマスルガ、内地雑居ハ未ダ早イ、ドウモ法律ナドニ明カニ内地雑居ヲ許スニ於テハ外国人ガ這入テ来テ日本人ガドンナ目ニ遇フカ知ラント酷ク恐レテ居リマシタガ、内地雑居モ許サレタラ一向ソンナ景色ガナイ、又這入ツテ来ナイ、今土地所有権・鉱山採掘権ヲ許シタカラトテ俄カニ来テドンドン買フモノデモアルマイト思ヒマス、併シ是等ヲ許シテ置カヌト外資輸入ノ途ヲ開クト云フコトハ出来ヌト云フ虞レガゴザイマスカラ、私ハ本案ヲ賛成シマス
○会長(東京、渋沢栄一君) チヨツト御待下サイマセ、此第一ノ項目ハ逐条ニ付テ採決センナラヌ場合デゴザイマスガ、此項目ニ付テ最モ今御注意ニナツテ居マス第五項ニ付テハ、私モ聊カ説ヲ陳述シテ見タイ考ヘモゴザイマス、此場合会長ヲ代ヘマシテ決議ニ付テ自分ノ意見ヲ申上ゲタウゴザイマス、井上君暫時御代リ願ヒ致シマス(於是渋沢会長自席ニ就キ、井上副会長代ツテ会長席ニ着ク)
○六十一番(東京、渋沢栄一君) 此外国人ニ土地ヲ所有サセ鉱山採掘ノ権ヲ与ヘルト云フ問題ハ、是カラ先日本ノ経済ノ進メ方ニ付テハ大ニ注意スベキ問題ト考ヘマスル、而シテ又此事ニ付テハ懸念スル点モ大ニアルデアラウト思ヒマスル、宜ナリ此事ハ世ノ中ヘ出マシテ種々ナル議論ヲ来シ所謂討論ノ一問題トナルコトハ誠ニ左様ナ性質デアルト申シテモ宜カラウト考ヘル、偖テ此案ニ対シテ懸念サレマスル論旨ガ、或ハ力アル外国人ニ我ガ土地所有権ヲ与ヘル若クハ鉱山ノ採掘ヲ許ルスト云フ事ニナレバ、遂ニ資本ト勢力トデ皆兼併サレテシマウデアラウト云フガ如キ虞レヲ持ツタメニ、之ヲ危ムト云フ点モアルヤウデゴザイマス、又或ハ今ノ条約ガ未ダ以テ真正ノ対等デナイカラ之ヲ許スハ他日時機ガアルデアラウガ、斯ル一ツノ善イ交換的ノ品物ヲ俄カニ与ヘテシマウハ不利益デハナイカト云フ考ヲ以テ、此案ヲ早ク運バシメナイ方ガ宜カラウト云フ御説モアルヤウデゴザイマス、又或ハ仮シ許ストシテモガ単純ニ無期限ニヤラヌ方ガ宜カラウト云フ、少シ婆心ヲ抱ク御説モアリマスヤウデゴザイマス、皆御尤モ千万デ、決シテ是等ハ総テ宜シク考ヘベキコトヽハ思ヒマスケレドモ、私ノ卑見ヲ以テシマスルト、ドウモ日本ノ未来ガ決シテ左様ニ団体ヲ立テヽ外国人ヲバエラウ恐レル嫌ウト云フヤウナ情愛ヲドウモ持タナイ方ガ宜イ所デハナイ、寧ロ持ツベカラザルモノデアルトマデ言ヒタイト考ヘマス、誠ニ昔日ニ対照シテ見マスト、今日ノ内地雑居ハ何デモナイ程ニ成リ来ツタガ、昔ハ又一方ニ危ミヲ持ツテ、開港ト云フ場合ニハ幾ラカ危惧ヲ抱イテ、程過ギテ進ンデ今日ノ様ニ時代ガ変化シテ来タト云フ事ハ、少シ長イ経歴ヲ御持チニナツタ諸君ニハ段々此一場中ニモ多
 - 第22巻 p.618 -ページ画像 
クアラツシヤイマセウ、斯ク申上ゲル渋沢ナドハ外国人ヲ刀デ斬ラウトマデ考ヘタ程ノ滅法界ナ思ヒ違ヒヲシタノデゴザイマス、結局ノ問題ハ日本人民即チ日本ノ商工業ガ迚モ外国人ト伍スルコト出来ルヤ否ヤト云フコトガ御互ヒニ最モ観察ヲ強ムベキモノデハナイ、成程今日ノ場合デハ勢力ト言ヒ又技術其他種々ノ力ハ彼ヨリ勝ツタトハ申サレマセヌ、否ナ負ケルト言ハナケレバナラヌデゴザリマセウ、決シテ吾吾ガ或ハ印度人トカ若クハ亜米利加ノ土人トカ云フヤウナ種類デナイト言フコトハ御互ニ充分信ジテ、又自負デハナイ事実左様デアルト申シ得ラルヽト思フノデアリマス、デ或ハ兼併ト云フ恐ガゴザイマスケレドモ、此議論カラ言ヒマスレバ、日本ニ於テモ気支マスレバ、智恵ノ長ケテ居ル金ノ多イ者ニ力ガ強ウ付クト云フコトハ免レヌコトデアル、亜米利加ノ今日開ケテ参ツタノハドウ云フ事実デアルカト申シマスレバ、門戸ヲ大ニ開イテ外国人ニ充分ナル権利ヲ与ヘタト云フノガ国ノ繁盛ヲ為シタルト云フコトハ、歴史ニモ事実ニモ明カニ見ヘテ居ルデハゴザイマセヌカ、決シテ左様ニ開イタカラト云フテ私共ハ却ツテソウドンドントハ這入ツテ来ナイト思ヒマス、併シ此程度ヲ以テチヤント防衛的ニシテ置クト云フハ、寧ロ国ノ進ミヲソレ丈ケニ遅々サセルモノデアラウト云フコトヲ深ク憂フルノデゴザイマス、デ吾々日本ノ商工業者ガ若シ今申シマシタ如ク印度ノ土人トカ亜米利加ノ土人トカ云フ位地デナイコトハ御互ニ信ジ得ラルヽナラバ、許シタカラトテ別ニ外国人ニ占領サレルト云フコトヲ深ク憂フルコトハナカラウト私共ハ厚ク信ジマスル、又第二ノ交換的ニシタガ宜カラウト云フモ、是ハモウ殆ンド外交家トシテ一ツノ政略トモ申スベキヤウニ考ヘマスルカラ、或ハ御趣意ノアル御説カモ知レマセヌ、併シ今ノ協定条約ト云フモノハ十幾年ヲ経過スレバ改正スベキモノニ相成ツテ居ル、果シテ其御方ノ御説ノ如ク交換スベキ材料トナルトシタ所ガ其年限ヲ短縮サレルカト云ヘバ、イヤ交換物ヲ以テ其年限ヲ縮ルコトガ出来ルト仰シヤイマセウガ、私ハ此コトヲ許シタカラトテ時期ヲ縮メルト云フコトハ出来ルモノデハナイ、斯ル協定税率ニ付テハ之ヲ許シタカラトテ之ヲ交換物ト見做シテモ宜カラウ、ソレハ例ヘバ速カニ改正シ得ラレヌト之ハ彼ノミ求メルコトデハナイ、我邦ヨリシテサウシテ我ガ版図内ノ土地ノ上ニ山林ヲモ有シ工業モ進ムト云フコトヲ努ムルハ即チ国ヲ富マス大ナル働キデアルトハ云ヘ、吾々ノ希望スル所ハ、仮令今ノ経済社会ガ甚ダ偏重ヲ現ハシタカラ差措ケヌ、斯様ナ救済方法ガアルデアラウ、斯クシタナラバ宜カラウト云フ一時ハ評議ガゴザイマシタガ、決シテ今日危急デアルト云フ如キ懸念ハナイノデ、或ハ日本トシテサウ云フ宜イヤリ方モアラウ、又演説ノ調子トシテ左様ニ言フコトガアラウガ、御互ヒニ如何ニモ国ガ倒レルト云フマデ論ゼンデモ宜カラウ、モウ一歩進ンデ言ツタナレバ、斯クテモ東洋ノ商工業ノ中心ニ致シタイト云フコトハ、倶ニ共ニ希望シテ居ル場合デハゴザイマセヌカ、此将来ノ中心ニナラウト云フニハ中心ニナルダケノ施設ハドウシテモ御互ニソレ丈ケノコトニ仕向ケテ行クト云フコトハ即チ其国民タルモノヽ態度デハナイカト考ヘマス、旁々以テ此第五項ハ原案ヲ只管維持シタフゴザイマスルデ、自分ノ愚考ヲ一言呈シテ諸君ノ御考ヲ煩
 - 第22巻 p.619 -ページ画像 
シマス
○二十九番(金沢、水登勇太郎君) 此問題ハ軽忽ニ決議スルコトハ難カラウト思ヒマス、決議前ニ休憩ヲ致シタイ
○副会長(東京、井上角五郎君) 渋沢サン御代リ下サイマスカ(於是井上副会長自席ニ復シ、渋沢会長議長席ニ着ク)
○会長(東京、渋沢栄一君) 今休憩ノ御説ガ出マシタ、随分皆サン精神ヲ御砕キノヤウデゴザイマス、暫時爰デ休憩シマシテハドウデゴザイマス……暫時爰デ休憩仕リマス
  午後三時休憩
  午後三時十五分開議
○会長(東京、渋沢栄一君) ソレデハ是ヨリ開会仕リマス
○二番(名古屋、奥田正香君) 休憩前ニハ六十一番ノ金玉ナル御説明ヲ拝聴シ、二次会ニ雨宮君カラノ懇篤ナル御話モ拝聴シマシタ、然ルニ本員ノ頑迷不霊ナル反省ノ時間否ナ休憩ノ時間ヲ与ヘラレタニモ拘ラズ未ダ全然賛成スルコトガ出来マセヌデ、一応自分ノ間違ツテモ居リマセウガ意見ヲ述ベマシテ、尚ホ御諭シヲ請フタ後ニ可否ヲ決シヤウト云フ考デス、固ヨリ此六十一番カラ段々御陳弁ニナリマシテ、土地所有権・鉱山採掘権ヲ外人ニ許可シナイト云フ論者ノ説明ハ斯ク斯クデアラウ、第一ニハ恐怖心、唯タ外国人ニ土地ヲ所有セシメタナラバ外国人ノ資本ノ豊富ナル、兼併ノ弊ヲ生ジテ遂ニ前途如何ニモ日本国ガ悲境ニ陥リハシナイカ、第二ニハ之ハ又時機尚ホ早シ、即チ税権回復ノトキニ之ヲ交換材料ニシナケレバナラヌ、ソレヲ軽々シク許ルスノハ宜シクナイト云フコトデアルト、充分ニ弊ヲ御論ジナサル点ニ於テ殆ンド余蘊ナク御弁ジニナツタト思ヒマスガ、併シ税権回復ナドニ与ヘル価ノナイモノデアル、ソレニ交換問題ニハナラヌモノデアルト云フ御趣意ニ聴エルヤウデアリマスガ、而カクソレ程ノ効ヲ見《(ヌ脱)》、ソレ程ノ利益ノナイト云フモノナレバ、本案ニ掲ゲテゴザイマスル此外資輸入ノ途ヲ開クト云フコトニ付テハ矢張リソレ程ノ効用モナカラウト思ヒマス、外国人モ例ヘバ金ハ日本ニ貸シタイ、如何セン土地所有権ヲ許シテナイ、鉱山採掘権ヲ許シテナイ、斯ウ云フ場合ニ運ンデ居ルナレバ、無論此場合ニ許シタナラバ外資ガ這入ルダラウト思フ、是モ人々面ノ変ル如クニ見込ミモ変リマスカラ、何レ之ヲ許シサイスレバ外資ノ這入テ来ヌコトハナイノデアル、土地所有権・鉱山採掘権ヲ許シテナイカラ之ニ依ツテ殆ンド外資ハ輸入シナイ、若シ強イテ輸入セントスレバ非常ナ高利ノ金ヲ借リナケレバナラヌ、斯ウ云フ御見解ヲ下シタ御方モアリマセウガ、自分ノ如キハ之ヲ許シタ所ガ外資ノ輸入ノ途ガ開ケナイノガ開ケル程ノ効用ハナカラウト思ヒマス、又既ニ他ノ論者ノ御述ベニナリマシタ如ク余程重大ノ問題ダト云フコトハ承リテ居リマス、此重大ノ問題ガ今日許シテ明日又禁ズルト云フコトノ出来ルナラバ、吾々モ敢テ憂フル所ハナイノデアリマスケレドモ、一度之ヲ許シタモノハ数年ノ後ト雖モ之ヲ回復スルト云フコトハ到底出来マセヌノデ、即チ吾々モ以前ハ攘夷家ノ一派デアツタト思ヒマスガ今日国ヲ開イタ以上ハ最早鎖港ト云フコトハ為シ得ラレント同様ニ、一遍開イタモノヲ又引戻スコトハ出来ナイト思ヒマスカラ、重大ノ事
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件ナレバ充分ニ講究スベキモノデ、咄嗟ノ間ニ之ヲ決議スベキモノデナカラウ、又之レハソレ程ニ憂フルコトハナイ、当局者モアル、或ハ制限ナドハ措カナクテモ自ラ制限ヲ措クコトヽナラウ、斯ウ又当局者ニ重キヲ措イテ何トカナラウト云フコトナレバ言フ必要ハナイ、此ノ如ク決シタ以上ハ取捨ハ当局者ニアリマシテモ、爰デ可決シタモノハ即チ全然行ハレルモノト見ナケレバナラヌカラシテ、吾々ノ如キ未ダ此事ノ分ラヌ以上ハ充分ニ之ヲ研究シ、各地方ノ会議所ニ於キマシテモ其土地ノ商工業者ノ団体ニモ図リ、又会議所デモ充分ニ研究ヲ致シテ、果シテ諸君ノ御述ベナサル通リノモノデアレバ、吾々モ安心シテ同意ヲ致シマセウト思ヒマスケレドモ、之ヲ直チニ私ハ此事ニ付テ同意ヲ仕兼ネルト云フノハ、重大ナル問題ナルガ故ニ充分ニ此事ハ講究シタイ、夫レニ目下ノ救済策ニナルト云フモノデモナシ、直チニセンナラヌモノデモナイ、充分ニ是等ノ問題ハ講究シテ宜イモノデ、又講究シタナラバ果シテ諸君ノ御説明ノ如クニナラウト思ヒマス、或ハ極ク講究シタナラバ、今日ニ於テハ安心ナモノデ少シモ懸念ト云フ事ガナイト云フノガ、案外ニ懸念スルコトガ出来ヤウト思ヒマス、既ニ他ノ事ヲ引用シテ来レバ長クナリマスノデ、彼ノ貨幣制度ノ如キ、日本ハ即チ貨幣ガ共通ニナツテ居ラヌ故ニ金利ガ高イ、即チ欧米諸国ハ安キハ二朱高キモ四朱ニ上ラヌト云フ程ノモノガ日本デハ非常ニ高イ、ソレカラ貨幣制度ガ異ナル故ニ他ノ金ガ這入ツテ来ナイ、金貨本位ナレバ貨幣ノ動揺ヲ除ケルノミデナク、即チ金融モ世界的ニナリ、又金利モ安クナルト云フ御見込ミデアルト見ヘテ、即チ其時ノ財政当局者又学者間ニ於テモ一モ顧慮スル所ハナイト云フヤウナコトデアツタ、私ハ果シテ金貨本位ノ宜イト云フコトヲ知リマセヌノデ、一時一般ニ日本ニ唱ヘマシタケレドモ遂ニ前代未聞ノコトヲ為サツタ、貨幣制度ノ問題ハ何レガ宜イカ知リマセヌガ、今日ノ所デ金利モ安クナリマセズ、殆ント今日デハ共通ノ貨幣トナツテハ居ラヌト見ヘマシテ、欧羅巴諸国デハ金利ガ引下ツテモ日本デハ高イト云フヤウナコトデ、其時ノ財政当局者デモ若シ貨幣制度ヲ改メタナラバ金利モ滑カニナルト云フ事ガナラヌト同様デ、爰デ御考ナサツタ所デハ一ツノ懸念モナイ、一ノ憂フベキコトモナイト云フコトガ、案外ニ実地ノ上ニ出来ナイトモ限ラヌ、之ハ世ノ中ノコトハ予想通リニ行カヌノデ其時ニ止メテ置ケバ宜イ、或ハ丁度日本銀行ガ兌換券ヲ出シ過ギタカラ其時ニ縮メレバ宜イト云フヤウニ、鉱山採掘権・土地所有権ヲ与ヘテ再ビ誤ツタカラ直スト云フコトハ出来ナイ、貨幣制度ヲ改メテモ世界的ニ金融ガナツテ居ラヌカラト云フテ其制度ヲ容易ニ変ヘル事ハ出来ナイ、ソレヨリモ今一層本件ハ出来悪イト思ヒマス、ソレデ私共ソンナラバ論者ノ御述ナサル如クソレハ唯ダ杞憂ニ過ギヌノデアル、之レハ差支ヘル、ソレニ向ツテハ又一言ヲ加ヘテヤルト云フ御説モゴザイマセウガ、私共ハ左様ニ感ゼヌノデ、分ラヌカラ能ク研究シテ、衆智ヲ集メテ然ル後ニ分ルヤウニシタイト思ヒマス、吾々地方ト雖モ商工業者モアリマスカラ充分ニ研究シタラバ分ラウト思ヒマス、デ之ヲ決シテ、害ガアル、此ノ如クシタナラバ亡国ノ兆デアル、之ヲ許シテハナラヌ、ト云フヤウナ、以前ノ鎖港攘夷論カラ以テ之ヲ排斥スルノデハナイ、須ク
 - 第22巻 p.621 -ページ画像 
此時ニ向ツテハ土地所有権・鉱山採掘権モ許サンナラヌコトデアラウ又既ニ内地雑居ハ許サレテ居ル、法権ノ回復モ出来タ、他日ハ税権ノ回復モ駸々トシテ進マンナラント思ヒマスガ、私ハ是ニモ緩急順序ガアルコトデ、直チニ許スト云フコトハドウデアラウカ、ドンナ場合ニモ許スベキモノデハナイト思ヒマス、諸君ノ段々御許シニナルニ付テ御述ニナツタ利益ノコトニ付テハ全然同意デアル、同意デアルガ何故ニ削除スルト云フ御反問ニナリマスレバ、即チソレ等ハ尚ホ熟考シ、充分是等ノコトハ調査モシ、又議論モ闘ハシテ、然ル後ニ利益アツテ一害ナイト云フ見据ノ付イタ上ニ許シタイト思ヒマス、決シテ此事ヲ許スガ悪イト云フノデハナイ、此場合ニ於テ削ルト云フノハ熟考スルノ趣旨ニ過キナイノデ、若シ何ノ差支モナイ事デアルト云フヤウニ分リマスレバ、無論之ハ賛成スルノデアリマス、併シ之モ唯タ交換問題ニナラナイト云フコトモ未ダ成ルカ成ランカ分リマセヌ、又外資ヲ輸入スルニ幾分カ容易ク出来ルト云フナレバ、出来ルト云フ方ニ賛成シマセウケレドモ、此土地所有権・鉱山採掘権ヲ許シタカラ直チニ外資ノ輸入ガ沢山出来テ、最早各条項ニ載セテアルヤウナコトヲシナクテモ資本ノ充実ハ之ヲ以テ足ルト云フコトハナカラウト思ヒマス、有志会員ノ書イタノデモ鉄道国有ノ外ニハ少シモ此危急ヲ救フコトハナイ鉄道国有ヨリ外命ヲ助クルコトハナイト云フコトニ論究ニナツテ居ル者モアリマス、私ハソレ程ニ思ツテ居リマセヌ、人命ナドハ旦夕ニ迫ルト云フコトガアリマスケレドモ、国家ノ生命ハサウ云フ短カイモノデナクシテ、今年中ニ鉄道ヲ国有ニシナケレバ潰レテシマウト云フ訳デハナイ、然ラバ此場合ニ於テ是非建説ヲシナケレバラヌトハ思ヒマセヌ、去リナガラ此事ニ付テハ尚ホ事情ガアリハシナイカ、成程農民ナドノ騒グノハ決シテ憂フルニ足ラヌ、商工業者ヲ以テ成立テバ宜シイト云フ御説モアリマセウ、曩ニモ外国人ノ思惑如何ト云フコトヲ段段承ツテ居リマスガ、私共モ決シテ外人ガ持ツテ行クモノデモナイ、負ツテ行クモノデモナイト云フコトハ、知ツテ居リマスケレドモ、天下ノ広キ、未ダ私共同様ナモノガ我邦デハ多イカラ、持ツテ行クモノデハナイト云フノヲ持ツテ行クガ如クニ見做シ、外国ニ奪ハレタ如キ感覚ヲ以テ、支那デアルトカ土耳古デアルト云フヤウナ騒ギニナルト日本ノ野蛮ヲ現スヤウナコトニナル、今日ノ人民ハサウ云フモノバカリハナイ、二番ノ云フ如キ人間ハ一人モナイ、都鄙ノ別ナク三歳ノ童子モ知ツテ居ルト云フカ知ランガ、私ハ一般ガサウ進ンデ居ラント思ヒマス、今日ノ如キ決シテ鉄道ヲ抵当ニスルカラ非常ニ安ク金ガ這入ルト云フノハ果シテドノ点カ分ラン、天下ノ広キ、村落等ニ行キマスレバ、若シ此事ガ可決シタト云フコトニナリマスト、却ツテ騒ヲ起スコトガアリハシナイカト信ジマス、併シ何処モ彼処モ皆一様ニ害ナキモノト認メテ、総テノ者ニ建議サセルヤウニシタイト云フ議論カラシテ申スノデ、決シテ猥ニ駁撃スルノデハナイ、殊ニ六十一番等ノ有力者カ殊更ニ席ニ着イテ、頑迷者ヲ開発ノタメニ充分御述ベ下スツタカラ、万々私共心配ハナイト考ヘマスケレドモ、万一アツタトキニ大変ト思ヒマスカラ、場合ハ《(コノ脱カ)》暫ク削除スルト云フ意見ヲ述ベマシタノデアリマス
 - 第22巻 p.622 -ページ画像 
○七番(豊橋、三浦碧水君) 私モ此議案ニ付キマシテ意見ヲ述ベマス私等ノ会議所ナドデモ昨年此聯合会デ案ヲ東京カラ御出シニナリマシテ、持帰ツテ能ク調査セヨト云フ其時ノ相談デアリマシタカラ、其後続イテ度々討論ヲ致シマシタ所ガ、マア大概先ツ之ハ開放シテ宜イト云フ意見ガ多イケレドモ、幾ラカ条件ヲ附ケナケレバナラナイト云フ其条件ノ附ケ方ニ付テ色々議論ガアリマシタガ、総テ之ヲ許シタナラバ地面ヲ持ツテ行カレルト云フヤウナ感念ヲ抱クモノハ東海道辺ニハ少クナイト云フヤウナコトデ、最モ之ハ賛成致シマス、ソコデ之ヲ縮メテ申シマスルト、之ヲ調査々々ト言ツテ置キマシテハソレダケ其進歩ヲ妨ゲルト云フニ止マル、以前此開国鎖国ノ論ニ付キマシテ随分立派ナ人ヲ殺シタリ、或ハ戦争ノ端緒ニナツタコトガアリマシタ、ガソンナコトヲシマシタ所ガ日本ノ進歩ヲ少シ後レサセタニ止マル、又其後ニナリマシテ雑居論ニ付キマシテモ長イ事論ジマシタ、雑居シタラバドンナ事ガ起ツテ日本ノ人民ガ苦シメラルヽヤウニ公事訴訟ニ付テモ宜イヤウニヤラレルダラウト云フヤウナ論ガアリマシタケレドモ、詰リソレヲ論ジテ彼方此方ヲ後レサセタダケガ進歩ヲ遅延サセタダケニ止マル、其他総テノコトガサウデ、大勢ノ上デ迚モ止マルベキモノデモアリマセヌ、又随分当時デハ民間ノ貿易モ余程進ンデ参リマシタカラ、マンザラ向フノヤウニ丁度一丁字モ知ラント云フモノガ多数ヲ占メテ居ルト云フノデモアリマセヌカラ、ソウ赤子ノ腕ヲ捻ヂラレルヤウニナルト云フコトモナシ、又憂フル程ノコトハナイト思フカラシテ、一日モ之ハ早ク許スコトニシマシテ、サウシテ其城壁ヲ去ルコトニシ、自ラ賤ンデ居ルニハ及バナイ、サウシナイト却テ野蛮国ヲ表白スルノデ迚モ調和出来ヌト云フヤウニナリマスカラ、左様ニ外国ニ見ヘヌヤウニシタイト思フノデ、之ガ為メ外資ヲ輸入スルニ効用ヲ見ヤウト云フノデハナイ、兎ニ角日本ハ一人並ニナツタカラ分ラヌコトヲ云フヤツハ少ナイト云フコトヲ外国ニ知ラセタイ……
○五十一番(博多、緒方道平君) 五十一番ハ二番ヲ賛成シマス、先刻カラ六十一番モ縷々御話ニナリマシタ、其外御説ガアリマシテ謹聴致シテ居リマシタ、依ツテ五十一番モ今二番ノ反対サレマスルヤウニ絶対的反対ダノ、許サヌト云フヤウナノデハアリマセヌ、併シナガラ五十一番ハ博多デアリマスガ、田舎ハ田舎相応ニ憂慮致シマス、未ダ能ク意見ガ定マツテ居リマセヌカラ大ニ心配シ過ギテ居ルカモ知レマセヌ、又外ノコトモ段々御説明ガゴザイマシタカラ、私ハ博多ノモノトシテ見マスルト、先刻来皆サンカラ御話モゴザイマシタ通リ之ハ許ルスト云フコトハ殆ント其時機ガ来タコトデアラウトハ思ヒマスケレドモ、今直クニ原案ニ同意スルコトハ如何ト存ジマス、現ニ賛成ナスツテ御出ニナル御方ノ御説ヲ充分承ツテ居リマシテモ、之ヲ今直クニ許シタカラソレデ直クニ外資ガドシドシ此方ラニ這入ツテ来ルトハ決シテ思ヘナイ、ケレドモ我国ノ体面トシテ此城壁ヲ取ラズニ置クコトハ如何ニモ品位ヲ保ツ上ニ於テ恥ルヤウナ心持ガスルト、是モ酷イ悪ルイコトハゴザイマスマイケレドモ、半分リノ私カラ考ヘテ見マスルト先ツ今日ノ所ハ二番ニ賛成スルヨリ致シ方ナイノデ、今本案通リニ決シタ所ガ俄カニ外資ガ這入ル、外国人ガ資本ヲ屹度持テ来ルトモ限リ
 - 第22巻 p.623 -ページ画像 
マセヌ、之ハ矢張リ朝鮮近傍ニ居リマスル田舎者ノ考デゴザイマセウケレドモ、此所有権ハ与ヘテ煩ヒヲ生ゼンヨリ、能ク熟考シテ決シタク存ジマス、各文明国ノ例ヲ聞イテ見マスレバ大抵ハモウ許サヌ所ハナイヤウニ昨日モ承リマシタカラ、ドウカ許シタクハゴザイマスガ、二番モ申シマスル通リ一旦許シテ取返シノ出来ヌコトデアリマスカラ杞憂ノ余リ二番ヲ賛成シマス
○十二番(阿波、根本民治君) 既ニ十二番ハ午前ニ於キマシテ質問ノ場合ニ殆ンド十二番ノ意思ノアル所ハ発表シテ、実ハ委員長六十二番ニモ伺ツタ訳デ、私ハ絶対的ニ土地所有権ヲ与ヘナイト云フノ意思デハナイ、詰リ約シテ言ヘバ尚早論ト云フニ外ナラヌ、今日諸君ガ熱心ニ此問題ヲ講究サレルガ、実ニ是等ノ問題ガ二派ニ分レテ、或ハ頭数カ十余計ニ在ツタトカ五ツ余計アツタトカ云フコトヲ以テ議決シ、以テ真ニ是ガ商工業者ノ輿論ト私ハ認メルニ少シ苦シム、詰リ之ハ都会ニ居ラレル御方ノ見聞ハ外国ノ商工業ノ摸様ヲ見ルノト、田舎ニ居ツテ田舎ノ全体ノ上ニ徴シテ見ルノト、其点ニ至ツテハ多少着眼スル所ガ異ナルノデアラウカト私ハ存ジマス、又先刻二番ノ述ベラレタ如ク直チニ爰デ議決シテ是ガ実地ニ行ハルヽモノカ否ヤト云フコトモ是モ疑問ニ属スル、今日是非此問題ノ可否ヲ決着シナケレバナラヌト云フ場合デナイ、若シ決定シタ所カ、経済救済策ノ一ツニ備ヘテ既ニ明年カラ必ス行ハレル、大ニ資本ガ這入ツテ来ルト云フ訳ニモナルマイト思ヒマス、甚ダ遺憾ナ訳デゴザイマスケレドモ、此土地所有権・鉱山採掘権ト云フダケノ項ハ之ハ矢張リ宿題トシテ、明年ニ一ツ御延ベナスツテ、各商業会議所ハ明年マデニ大ニ講究ヲ遂ゲテ、更ニ明年ノ此会ニ於テ大ニ討論ヲスル方ガ宜シ、又ヤルト云フ場合ハ実ニ満場ノ一致ヲ以テヤルト云フ位デナケレバ、実ニ日本ノ腹ハ定ツタト言ハレント思ヒマス、今日爰デ採決セラルヽト云フト殆ント可否半バスルカモ知レヌ、迚モ大多数ヲ占メルト云フ訳ニハ行クマイト思ヒマス、之ヲ以テ仮シ許ストシテモ、是カ即チ日本ノ商人全般ノ輿論デアルトモ附カヌト思ヒマス、甚ダ水ヲ入レタヤウナ話デゴザイマスケレドモ、此議決ハ明年ニ御延シニナル方ガ宜カラウト思ヒマス、ソレトモ是非ト云フコトデゴザイマスレバ、私ハ賛成ノ方ニ起立セヌノデアリマスケレドモ、此問題ハ何レガ勝ツタ所ガ面白クナイト云フ考デアリマス
○二十七番(長崎、松田源五郎君) モウ大分議論モ尽キマシタガ、時ヲ惜ム以上ハ述ベル必要モナイガ、段々之ヲ延ソウトカ或ハ宿題ニシヤウトカ云フ御説ガ出マスカラ已ムヲ得ズ一言述ベネバナラヌ、只今十二番ノ御説即チ之ヲ宿題ニシテ来年マデ延ベヤウト云フノハ御尤モノヤウデゴザイマス、若シ此五項バカリガ単独ニ出テ居リマスレバ或ハ左様ナ御説ニ暫ク御同意スルカモ知レマセヌガ、此五項ト云フノハ他ノ項ニ皆関聯シテ居ルカラ是ダケ宿題ニシテ延バスト云フコトガ出来ヌト云フ以上ハ、ドウシテモ之ハ否トカ可トカ云フコトニ片付ナケレバナラヌト考ヘマス、私ハ無論之ハ可トスル論者デアツテ、サウシテ可トスル所ノ理由ハ既ニ是マデ同感者カラ充分述ベラレマシタカラ殊更ニ爰ニ新説トシテ述ベルダケノコトハ何ニモナイ、併シナガラ爰ニ一言述ベタイト思フコトハ、此外資ヲ輸入スルト云フコトハ皆サン
 - 第22巻 p.624 -ページ画像 
御同意デアツテ是ニハ勿論御不賛成ハナイト云フコトハ分リ切ツテ居ル、其外資ヲ輸入スルト云フ上ニ於テ目下ドウ云フ手段ヲ取テ入レルヨリモ自然ニ這入ト云フコトガ必要デアル、ソレガ希望デアルト云フコトハ又是モ御多数ノ御意嚮ノヤウニ思ハレマス、是ガ自然ニ這入ト云フコトノ上ニ付テハ如何ナル方法手段ヲ執ルカト申セバ、先ヅ外人ヲ歓迎シ外人ノ商業ヲ歓迎スル等ノ手段ヨリ外ニ途ハナカラウト思ヒマス、唯タ自然ニ待ツト云フモノヽ、此方ラハ城壁ヲ築イテ斯様々々ノコトハ許スコトハ出来ヌト云ヒナガラ外資ヲ輸入スルコトハドウシテモ出来ヌト思ヒマス、ソレニ依ツテ私ガ外資ヲ輸入スルト云フ上ニ付テハ此地所所有権・鉱山採掘権ノミナラス、此外ニモ何カ外資ヲ入レル手段ニ付テ差支ノアルモノガアツタナラバ何デモ取テ総テ開放シ外資ヲ輸入スルト云フノ方法ヲ講ジタイノデ、彼等ヲ歓迎スルト云フコトヲ主ニ致シマスル以上ハ障壁ニナルベキモノハ何デモ取テ除ケネバ行カヌト思ヒマス、サウシテ歓迎シナケレバ這入ツテ来ヌト思ヒマス、箇様ニ私ハ存ジマス、ソレデ若シ此土地所有権或ハ鉱山採掘ノ権ヲ与ヘタナラバ如何ナル害ガアルカト云フナレバ、是ニ付テ反対者ノ御説ヲ伺ツテ居ルニ害ト云フコトハ一ツモ未ダ見出サヌ、国情ガ未ダ許サヌデアラウ、或ハ一般国民ガ未ダ其機ニ進ンデ居ランデアラウ、箇様ナ予想ヲ以テ御論ジニナルヤウデアルガ、国民一般ニ之ヲ問ヒマスレバ、内地雑居モ即チ不可ト致シテ居リマスル論者ノ如キ、極メテ今日デモ或ハ之ハ不可トスル人ガ国民多数ノ意嚮ダト云フカモ知レマセヌ、知レマセヌガ、唯ダ土地所有権ヲ外国人ニ許スト云フ単独ノ考デ、又鉱山採掘権ヲモ外国人ニ許シタカラトテ何程ノ障害アルベキカ許スカ許サンカト云フナレバ許サヌ方ガ或ハ宜イカモ知レマセヌ、併シナガラ大体ノ希望ガ外資ノ輸入ヲシタイ、資本ノ充実ヲ図リタイト云フカラ以テ行ツテ許ルスカ許サヌカト云フナレバ、ドウシテモ許シタ方ガ宜カラウ、害ト云フ方ニ付テハ吾々ハ害ノアル所ヲ見出サヌノデ、反対論者ニシテ害ノアル所ヲ指摘スルコトハ出来ナイ、左様ナル以上ハ之ハ許ルシテモ少シモ差支ナイト厚ク信ズルノデアリマス、依ツテ此案ヲ賛成スルノデアリマス
○三十八番(岡山、香川真一君) 段々御論ガ出マシタガ、今二番ノ御説ガ一番御勢力ガアルヤウデゴザイマス、二番ハ懇々切々実ニ御意見ヲ御述ベニナリマシテ、ドウデモ鄭重ノ上ニ鄭重ヲ加ヘテ能ク考ヘテ見ント、ドウ云フ此ノ先憂ガ起ルカモ知レヌト云フ誠ニ行届キタル御意見デゴザイマス、段々満場ヲ見マスルト決シテ外人ニ土地所有権・鉱山採掘権ヲ永世許スベカラザルモノデアルト云フ御説ハナイ、又アル筈ガナイ、ドウシテモ許サネバナラヌノガ当リ前デアルト思フ、唯ダ爰デ直グスルカ、モウ少シ延バスカト斯ウ云フ二ツニ止ツテ居ルヤウデゴザイマス、ソコデ私ガ一ツ仲裁説ヲ出シマスノデ、成程マア之ハ考ヘタラ行届イテ宜イコトニ違ヒゴザイマスマイガ、之ハ決シテ奥田サンノ御説ヲ反駁スルノデモ何デモゴザイマセヌガ、之ヲ言ツテ見ルト、貨幣制度ハ決シテ一朝一夕ニ行ハレタモノデハナイ、色々考ヘテ学者モ色々論ガアツタ、然ルニ其結果矢張リ今奥田サンノ御述ベニナツタ通リデゴザイマス、余リ考ヘルト却ツテ面白イコトガ出ヌカ知
 - 第22巻 p.625 -ページ画像 
レヌ、併シ是ニ一ツ文字ヲ加ヘタラバドウデゴザイマセウ、皆サン御意見ハアルマイト思ヒマス、文字ハドウ加ヘタラ宜イカ分ラヌト思ヒマスガ、私ハ時機ヲ見計ラヒトカ何トカ云フ文字ヲ加ヘタナラバ、何誰モ御異論ガナイト思ヒマス
   (「採決」ト呼ブ者アリ)
○四十五番(松山、仲田槌三郎君) チヨツト意見ヲ述ベマスガ、第一ニ「興業銀行ノ設立ヲ迅速ニシ工業資金ヲ疏通スルコト」トアリマスガ、此条ハ削除ニ賛成デアリマス、第二ノ「金庫ノ制ヲ改正シ、国庫金ノ運用ヲ敏活ニシ、其出納ヲ簡明ニスルコト」ト云フノハ二番ハ此出納ヲ簡明ニスルコトト云フ文字ヲ削ルト云フノデ、私ハ是ニ賛成デアリマス
○七番(豊橋、三浦碧水君) 之ハ一緒ニ採決ナサルノデスカ
○会長(東京、渋沢栄一君) 一緒ニハ行キマセヌカラ順ヲ追ツテ採決シマシヤウ
○七番(豊橋、三浦碧水君) 私ハ第一項ニハ何誰カ御述ベノ如ク反対デアリマス
○四十五番(松山、仲田槌三郎君) 此第三ハ原案ニ賛成、ソレカラ第四ヲ削除、其削除ノ理由ハ抽籤割増ノ法ヲ用ヰマスルコトハ甚ダ不当ノコトデアラウ、元来近頃ノ形勢ハ富籤様ノコトハ余程流行シテ参ツタヤウデ……
○会長(東京、渋沢栄一君) 二十番ノ御説ト同ジヤウナンデスナ、二十番ガ矢張リ修正シタイ、唯タ貯蓄奨励ト云フモノニシテ少シ強制的ノ意味ヲ加ヘタイト云フ御説ガ出テ居リマス
○四十五番(松山、仲田槌三郎君) ソレナラモウ其理由ハ、省キマセウ、ソレカラ此第五ニ付キマシテ私ハ今日マデ意見ヲ定メテ居ラヌ、意見ヲ定メヌニ付キマシテハ多々理由ガアル、其理由ヲ一言述ベ置キマセヌケレバ我ガ商業会議所ヲ代表シテ参ツテ責任ガ果セヌ、此土地所有権ハ条約改正ヲシタ以上モウ之ハ附添フテ居ルモノト見做シテモ宜イノデハアリマシヤウガ、今日之ヲ許サレテ居ラヌニ付キマシテ段段趣意モゴザイマセウ、私共ノ大ニ杞憂ヲ抱キマスルコトハ雑居ニナツタカラトテ直チニ土地ヲ所有サセマスト、今日マデノ外人ハ客分ノヤウナ訳デ土地ヲ所有シテ見マスルト最早日本人ニナツタヤウナ心持ガ起リ、追々ソレニ付キマシテ弊害ヲ醸シテ来ヤウカト思ヒマス、之ガ為メ可ト致シマセナンダノデ、併シ先刻渋沢男爵ガ御述ベニナリマシタガ、御憂慮ナサレタ昔ハ外人ヲ斬ラウトマデ思ハレタトノ事ニゴザイマス、然ルニ男爵ハ商工業社会ニ御出デナサレテ最早此所有権ハ許サネバナラヌト云フ御考デゴザイマスルニ付キマシテハ、多々理由ノ存スルコトデ、吾々モ考及バヌ所デアラウカト思ヒマス、依テ私ハ賛成致シマス
○二十三番(横浜、大谷嘉兵衛君) 私ハ先キニ説ヲ出シマシタガ、此第五ニ至リマシテハ大問題デアルカラ輿論ノ力トシタイ位ノモノデアルケレドモ、各国ニモアル如クドウカ条件ヲ附シテ貰ヒタイ、条件ト云フコトニ付テハ此方ラカラ注文スルノデハナイ、ドウカ各国ノ例モアルシ各国デ行ウテ居ル所ノ今日マデ盛ンニナツテ居ル所ノ部分ヲ比
 - 第22巻 p.626 -ページ画像 
較シテ、サウシテ其条件ヲ置イテ貰ヒタイ、斯ウ云フノガ私ノ望ミデソレデ商業会議所ガ土地所有権ヲ外国人ニ許サヌトカ何トカ云フコトハ実ニ致シタクナイ、若シ否決ニナルナレバ矢張リ宿題ニシタ方ガ却ツテ穏カデアリマス、多分此案通リ可決スルダラウト思ヒマスケレドモ、私ハ自分ノ説ハ消サナイノデ、ドウカ適当ノ条件ヲ附シテ許シテ貰ヒタイト云フノハドウダト云フト、匈牙利ナドデハ其条件ノ為ニ匈牙利ト云フモノハ非常ナ長足ノ進歩ヲシテ居ル、実ニ私ハ感服シタ、其条件ガ宜イカラトテ細カク御話スルト余リ長クナリマスカラ話シマセヌ、昨日一寸ト致シマシタ、所デ亜米利加ニ於テモ其通リ特別ナル条件ガアリマスカラソレガ為ニ条件ヲ入レタ方ガ宜イト云フ考デ、若シソレガナカツタナラバ矢張リ本案通リガ宜カラウト思ヒマス
○二十番(神戸、横田孝史君) 議論スルノデハアリマセヌ、皆サンノ御注意ダケ、此土地所有権・鉱山採掘権ヲ外人ニ許可シ云々ト云フコトニ付テハ段々先刻来御高説モ承リマシタガ、私共ノ最前此五項ヲ削除スルト云フタノハ其所マデ議論ヲシヤウト云フ考デナカツタ、抑モ是等ノ問題ヲ目下経済ノ方針ニ関スル意見ト云フコトノ下ニ可否ヲ論ズルハ甚ダ好マナイ、即チ性質カラ申セバ目下救済策ヲ論ズルニ当ツテ此問題ヲ否決スルハ少シク考フベキコトデアルト云フコトデアル、然ルニ議論ガ横道ニ渉ツテ頻リニ可否ヲ議論スル様デ、二十番モ若シ口ヲ開クナラ反対デアルガ、之ハ別案トシテ決スル方カ本統デアラウト思ヒマス、先刻雨宮君ガ金ヲ借リルニハ威張ツテ借リルガ宜イ、決シテ金ヲ借リルニ頭ヲ下ゲテ謝テスルニ及バヌト云フ説モアリマシタガ、日本ノ国情ハ未ダニ攘夷鎖港論者ガナイトモ言ヘナイ、土地所有権ヲ外人ニ与ヘルノハ、此際ニ於テ可否ヲ論ズルノハ大ニ考フベキ時デアリハシナイカト云フニ外ナラヌノデ、本問題ニ付テハ自ラ意見ガアリマスケレドモ、此趣意ニ依テ観レバ意見ヲ吐露スルノ必要ガナイ他ノ案件ト共ニ目下ノ救済策トシテ之ガ可否ヲ決スルハ此国ノ体面カラ考ヘテモ宜シクナイ、ソレ故ニ削除センコトヲ望ムノデ、強イテ可否ヲ論ズルナレバ已ヲ得ズ反対スルノデ、説ガ斃レタナラバ三十八番ノ時機ヲ見計ラツテト云フコトニ賛成スルヤウニナリマス
○五十四番(京都、中村栄助君) 此際第一項ノコトニ付キマシテハ充分議論ガ尽キテ居ルト考ヘマスカラ一言述ベテ置キマスガ、之ヲ削除スルト云フ御説ハ田口君ノ御説、又実際此案ノコトハ最早政府ガヤツテ居ルト云フヤウナ趣意デ、近日創業委員会ガアルカラ最早要ラヌト云フヤウナ御趣意ニ承ハツタガ、決シテサウ云フ軽々ナ訳デハナク、此銀行ハ固ヨリ性質モ違ヒ事情ニ依ツテハ外資輸入ニモ及ブト云フヤウナ銀行デアリマスルシ、又爰デ創立委員ガ寄リマシテモ既ニ昨年ノヤウナ拓殖銀行ノ一年半モ掛ツタト云フ例モゴザイマスカラ、之ハ是非共私ハ存在シテ置キタイ考ヘデアリマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 大抵御論ガ尽キマシタヤウデスガ、此第一カラ五マデノ各項ニ付テ二十三番ハ此興業銀行設立云々ト云フ項目ハ除クト云フ、是モ御賛成ガゴザイマス、ソレカラ二十番モ一ツハ除ク、又別ニ銀行会社合併ヲ努ムルト云フ意味ノ箇条ヲ加ヘタイト云フ此二十番ノ御説ハ賛成ガゴザイマセヌヤウデ、ソレカラ五ノ前段ヲ除
 - 第22巻 p.627 -ページ画像 
ク、四ニ抽籤割増ト云フ修正ヲ加ヘル、此ノ四ノ方法ニ付テハ四十五番ハ之ヲ賛成スルト仰シヤリマシタ、ソレカラ二番ハ即チ五ヲ除クト云フ御説……チヨツト二十番ハ五ノ前段ヲ除キ後段ヲ活スト云フ趣意二番ハ五ハ除キソレカラ二ノ金庫ノ制ヲ云々ト云フニ付テ字句ヲ修正スル、是ニモ御賛成ガアリマス、ソレカラ十二番ガ五ヲ宿題ニスル、之ハ御賛成ガナイ、二十三番ノ御説、之ハ一ツノ修正御意見トナツテ居ルヤウデ、二十三番ノ御説カラシテ決ヲ採ツテ行クヤウニ仕リマス二十三番ノ五ニ相当ノ条件ヲ附スト云フ……
   (「一カラ御ヤリニナツテ」ト呼ブ者アリ)
○会長(東京、渋沢栄一君) 第一ノ興業銀行ノ設立ヲ迅速ニシ云々ト云フ箇条ヲ除クト云フ御説ニ御同意ノ方ハ起立ヲ願ヒマス
  起立者  少数
○会長(東京、渋沢栄一君) 少数デゴザイマス、二ノ字句ヲ修正スル即チ二番ノ御説デハ「金庫ノ制ヲ改正シ、国庫金ノ運用ヲ敏活ニスルコト」ダケニシテ「其出納ヲ簡明ニスルコト」ト云フ字ヲ削ルト斯ウ云フ御説ガゴザイマシタ、是ニモ賛成ガゴザイマス、此御説ノ決ヲ採リマス、二ノ字句修正ニ付テ賛成ノ御方ハ起立ヲ願ヒマス
  起立者  少数
○会長(東京、渋沢栄一君) 二十番ノ御説ニ此四ノ「抽籤割増ノ制ニ依ツテ貯蓄ヲ奨励シ、以テ民間零砕ノ資ヲ集ムルコト」ト云フコトヲ抽籤割増ノ制ト云フ字ハ除キタイ、サウシテ「貯蓄ヲ奨励シ民間零砕ノ資ヲ集ムル」ト云フコトニ修正スルト云フ御説、是ニ賛成ノ方ハ起立ヲ願ヒマス
  起立者  少数
○会長(東京、渋沢栄一君) 少数デゴザリマス
○二十九番(金沢、水登勇太郎君) 此次ハ第五ノ御採決ニナルト思ヒマスガ、御採決ニ付テ伺ツテ置キマス、之ハ先刻ノ御話ニ依レバ前段ヲ削ルト、全部ヲ削ルト、サウシテ原案ト三ツニナリマス、兎ニ角前段ヲ削ルト全部ヲ削ルト云フノハ其基ク所ノ趣意ハ土地所有権・鉱山採掘権ヲ許スト否ト云フニアリ、依テ前段ヲ削ルト全部ヲ削ルトヲ各一ツトシテ御採決ニナリ、サウシテ前段ヲ抜クト云フコトニナレバ……私ハ夫レニ付意見ヲ持ツテ居リマス、御採決ニナルヤウニ……
○会長(東京、渋沢栄一君) 併シ採決ニ臨ンテ居リマスカラ……
○三十四番(栃木、石塚新吾君) 二番ノ説カラ先ニ御採リニナランコトヲ希望致シマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 即チ二番ノ御説ハ全体ヲ削ルト云フ論デ是ニハ大分賛成ガゴザイマスカラ二番ノ全部ヲ削ルニ御同意ノ方ハ起立ヲ請ヒマス
  起立者  少数
○会長(東京、渋沢栄一君) 少数デゴザイマス、ソレデハ二十番ノ前段ヲ削ルト云フ御説ニ向ツテ決ヲ採リマセウ、二十番ノ前段ヲ削ルト云フニ御同意ノ方ハ御起立ヲ願ヒマス
  起立者  少数
○会長(東京、渋沢栄一君) 少数、モウ一ツ如何デゴザイマセウ、二
 - 第22巻 p.628 -ページ画像 
十三番サンニ御相談デアリマスガアナタノ説モ決ヲ採リマセウカ
○十二番(阿波、根本民治君) 私ノ土地所有権ヲ宿題ニスルト云フハ賛成ガナカツテ消滅シタカラ、土地所有権及鉱山採掘権ハ此明文通リデアルト兎ニ角表面ノ上カラ総テ許ルスト云フコトニナル、此私ノ議論ガ斃レマシタ以上ハ私ハ更ニ二十三番説ニ移ル考デ、仮シ斃レマシテモ意思ハ全ウスル
○六十二番(東京、井上角五郎君) 私共ハ爰デ一体議論ヲシテ議論ニ勝チサヘスレバ宜シイト云フノデナクテ、実行ヲ見タイト云フノデアルカラ原案維持ノ説モ唱ヘモセズ、平生ノ御饒舌リニモ似ズ黙ツテ居リマシタ訳デアリマスガ、各々採決ノ順序ヲ極メテ全部削除説ヲ先ツ採ツテ一部削除説ニ及ンデ、云ヒ換ヘレバ寧ロ反対論ニ都合ノ宜イヤウナ起立ノ方法ヲ議長ハ御採リニナツタ、此際ニ於テ更ニ二十三番ノ説ヲ成立タスト云フ発議ニナルコトハ寧ロ議長カラ御止メニナツテ、即チ只今ニ於テハ原案ガ成立ツタモノト御認メ下スツテ満場ノ諸君モ御同意下サル方ガ宜イト心得マスカラ、十二番ノ説ハ御採用ニナラナイト云フコトヲ希望致シマス
○二十三番(横浜、大谷嘉兵衛君) 先刻十二番ニ会長カラ御尋ネニナツテ居リマス、可否ヲ採ラウカ採ラヌカト云フ御尋デゴザイマス、モウ形勢ニ依リマシテ可否ヲ採ルニ及ビマセヌ
○会長(東京、渋沢栄一君) ソレデハ第一ノ……
○三十三番(大阪、三谷軌秀君) 第一項ノ一カラ五項マデ決シマスルト、此第一項ノ資本ノ充実ヲ期スルト云フ部分ニ於テ一ツノ動議ヲ提出致シタイト考ヘマス、ソレハ順序ハ或ハモウ少シ前ニ置イタ方ガ宜イカモ知レマセヌケレドモ、今前ノコトヲ動カス必要モナイト思ヒマスノデ、即チ六ト致シマシテ此所ニ一項ヲ加ヘタイト考ヘル、其加ヘタイ文言ヲ爰ニ読上ケマス、ソレハ「内国公債ノ一部ヲ特ニ三箇年以内ニ於テ償還スルコト」ト云フ項目デ、爰ニ三箇年以内ト云フコトヲ書キマシタノハ戦後経営ノ為メ各種ノ官業大半ノ結了ガ以后三箇年間掛ラナイノデアル、サウシテ地租増徴ノ期間モ以后三箇年間ト云フコトニナツテ居ル、此三箇年ニ於テ戦后経営ガ略ボ全ウスルト云フ時機ナンデ、其時機ニ於テ民間資本ノ充実ヲ期シテ民業モ是ニ並行セシムルハ極メテ必要デアル、又軍事公債ニ多額ノ資本ヲ募集シナカラ、三億何千万円ノ取ツタ償金ハ皆他ニ使用シテ、民間公債ノ償還セラレナイト云フコトハ国民中大ニ遺憾ニ思ツテ居ル問題デアラウト考ヘル、故ニ此事ヲ加ヘテ資本充実ノ方法ニ致シ、サウシテ金額ノ多少ニ就テハ希望スル所モアリマスガ、先ヅ少ナクトモ一億円位償還シテ貰ヒタイト云フ考デゴザイマスケレドモ、之ハ財政上ノ都合モアル訳デアツテ、償還ノ途ヲ立テレバ一方ニ此ノ資金ノ額ヲ調ベルト云フ必要モゴザイマスカラ、今書面上ニ金額ハ定メズシテ其額ハ希望ニ止メ、一方ニハ政費ノ節減ヲ為シ一方ハ外国カラ入レルトモ或ハ地租ノ増徴ヲスルトモ、兎モ角モ為シ得ル方法ニ依ツテ公債ノ一部ヲ償還シテ貰ヒタイト云フコトニシタ方ガ宜カラウト云フ考デ、金額ヲ爰ニ明記セズ年限丈ケヲ限ツテ内国公債ノ一分ヲ償還シテ貰ヒタイ、ソコデ「特ニ」ト云フ字ヲ入レタノハ既定ノ償還年度ヲ待タレナイ、既定ノ償還年度
 - 第22巻 p.629 -ページ画像 
カアツテ其年度ニハ何程還ヘスト云フコトガアルガ、其意味ヲ現ハス為ニ「特ニ」ト云フ字ヲ加ヘタダケデ、ドウカ満場諸君ノ御賛成ヲ希望致シマス
   (「賛成」ト呼ブ者アリ)
○二十番(神戸、横田孝史君) 三十三番ニチヨツト御尋ネシマスガ場合ニ依ツタラ賛成致シマス、内国債ノ一部分ト云フモノハ凡ソ一億万ト今仰ツシヤリマシタガ、政府ハ此金ヲ如何ニシテ拵ヘルカト云フニ至ツテハ唯ダ此方ラバカリガ都合ガ宜イカラ償却ヲシテ呉レト云フ訳ニモ行キマスマイ、既ニ御承知ノ如ク政府ハ目下事業ヲ経営スルガ為ニ明治三十五年ヲ期シテ一億何千万ト云フ公債ヲ新タニ募集シナケレバナラヌ、加フルニ之ハ或ハ聞誤リカハ分リマセヌケレドモ、彼ノ教育基金ト云フヤウナ名ノ下ニ散布シタ金ヲ整理的ニ本当ニ鍔目ノ合ウヤウニ補充シテ穴ヲ埋メルニハ、更ニ二億円ノ公債ヲ募集シナケレバナラヌト云フ如キコトモ聞イテ居ル、僅カ三十五年ト言ヘバ向フ二箇年ヲ出デナイ、其所ヘ以テ行ツテ此既発ノ公債ヲ償却スルト是ガ一億円、併セテ三億円、如何ニシテ之ヲ償却セシムベキヤト云フノ御成案ガゴザイマスレバ承ツテ置キマスルト云フト賛成ヲ致シマスル場合ニ便宜ガアラウト思ヒマス
○三十三番(大阪、三谷軌秀君) 詰リ金額ヲ申出ヌト同時ニ、此ヲ以テ還ヘスト云フ目ハナイ、今一億円ト云フ金ハ遊ンデハ居ラナイノデアルケレドモ、国情ニ於テ民間資本ノ欠亡ヲ来タシ、サウシテ其結果タル政府事業ト民間事業トノ並行ヲ失シテ居ルト云フ今日ノ現状ニ於テ、此民間事業ヲ進メルト云フ点ニ付テハ又一ツノ策ヲ執ラネバナラヌト云フノハ皆サンノ御認メニナツテ居ルコトデアル、又是モ民間資金ヲ充実セシムル為メニ還サンケレバナラヌ、還ヘス必要ガアリトスレバ増税ヲスルナリ何ナリ、一年ニ三千万・四千万ノ金ヲ還ヘスコトハ敢テ難イコトデナイト思ヒマス、唯ダ要ハ還ヘス必要ガナキヤ否ヤト云フノデ、爰ニ金ガ遊ンデ居ルカラ是デ還ヘスト云フ容易イ問題トハ思ハヌ、還ヘス必要ガアルト云フナレバ還ヘス方法ハ随分アルダラウト思ヒマス
○六十二番(東京、井上角五郎君) 六十二番ハ只今ノ発案ニ賛成致シマス、唯終リノ方ニ償還スルコトヽ言ヒマシタノヲ償却トデモ書イテ政府ハ或ハ抽籤デ戻スコトニナリマセウシ市場カラ買上ゲルト云フコトモ差支ナカラウト思ヒマス、償却ト云フ文字ニ直シテ差支ナケレバサウ御直シヲ願ツテ賛成ヲ致シマス
○三十三番(大阪、三谷軌秀君) 償還ヲ償却ニシタイト云フ六十二番ノ御説デゴザイマスガ、何方ラニナリマシテモ私ハ差支ナイ
○三番(名古屋、上遠野富之助君) 私ハ唯今ノ説ニハ反対ト云フ訳デゴザイマセヌガ、ドウモ反対セザルヲ得ヌヤウニ考ル、ト云フノハ今三十三番ノ御説デゴザイマスルト、場合ニ依ツテハ或ハ増税ヲ以テスルカ、其償却方法ハ此方ラカ成案ガアルジヤナイト云フ事ヲ二十番ノ質問ニ対シテ御答ニナリマシタガ、蓋シ私ハ初メ斯ウ云フ事ト考ヘタ三十三番ノ御発議ニハ一億円政府デ償却スルガ宜カラウ、到底政府ハ金ガアリハシマイ、サウスルトドウシテモ之ハ外債デモ募集シテサウ
 - 第22巻 p.630 -ページ画像 
シテ還ヘシテ呉レルデアラウト云フ御考ノ御発議ト初メハ承ツテ居ツタ、然ルニ今二十番ノ御話デ見ルト中々今外債ト云フコトハ余程困難デアラウ、況ンヤ民間ノ資本ガ充実シナイ、其充実ヲ期スルノ方法トシテ若シ増税ヲ課シテモ云々ト云フヤウナコトニナルト、之ハドウモ事実行ハレヌ話シデハナイカ知ラント私ハ思フデ、斯ウ云フコトハ今現ニ財政ノ繰リ廻シノ悪ルイト云フコトハ吾々モ分ツテ居ル、其所ニ向ツテ救済ノ催促ヲ喧シク三年間ニ是ダケノコトヲシテ貰ウ、是ダケト云フコトハ宜ウ言ハヌケレドモ、或ル範囲内ニ於テシテ貰ウト云フヤウナコトヲ爰デ言ヒ出スト云フコトハドンナモノデアラウカ、私ハ少シク之ハ見合セタ方ガ宜クアリハセンカト思ヒマス
○一番(赤間関、松尾寅三君) 私モ三番ト同感デゴザイマス、只今ノ動議ニハ容易ニ賛成ヲ表スルコトハ出来マセヌ、モウ議事ノ進行ノ妨デゴザイマスカラ余計ナ理由ハ述ベマセヌ
○会長(東京、渋沢栄一君) 此第一「資本ノ充実ヲ期スルコト」ト云フ項目ノ中ヘ第六トシテ三十三番ハ一項目ヲ加ヘタイト云フ一ノ動議ガ出マシテ、御賛成ガゴザイマス、ソレハ詰リ公債ノ一分ヲ三年ヲ期シテ償却スルト云フ方法デアル、此事ニ付テハ別ニ御説ガゴザイマセヌケレバ決ヲ採ルヤウニ仕リマス、三十三番ノ此一項ヲ加ヘルト云フ御説ニ御同意ノ御方ハ御起立ヲ願ヒマス
  起立者  少数
○会長(東京、渋沢栄一君) 少数デゴザイマス、第二ニ移リマス
○二十番(神戸、横田孝史君) 如何デゴザイマスカ、モウ四時半デゴザイマスカラ、迚モ本日全部結了ト云フコトハ困難デアラウト思ヒマスガ
○会長(東京、渋沢栄一君) 未ダ是ガ済ミマシテモ確定議ガゴザイマス、今日之ヲ半分議シテ置キマスト明日中々終日掛ツテモ議了シ兼ハシマセヌカ、皆サンノ御思召次第デ……
   (「モウ少シ辛棒シマセウ」ト云フ者アリ)
○会長(東京、渋沢栄一君) 然ラバ第二ヲ議事ニ附シマスル、第二ハ一カラ五マデヾゴザイマス
   (「採決」ト呼ブ者アリ)
○会長(東京、渋沢栄一君) 第二ハ余リ御説モゴザイマセンナ
   (「異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○会長(東京、渋沢栄一君)大層早ク済ミマス、ソレナラバ第三ニ移リマス、第三「貿易機関ノ完備ヲ期スルコト」
   (「異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○二十三番(横浜、大谷嘉兵衛君) 二十三番ハ東亜貿易ノ必要上「神戸ニ東亜貿易ノ機関銀行ヲ設置シ、横浜正金銀行ト相応シ共ニ通商貿易ノ利便ニ供スルコト」ト云フ是デアリマス、是ハ昨日ノ委員会ニ於キマシテモ私ハ掌務ヲ分ケルト同ジヤウナモノデ、却ツテ便宜デナクシテ障害ヲ与ヘルデアラフ、ノミナラズ同ジ資本ト云フヨリ外致シ方ナイ、日本ニ在ツテ日本ノ金ヲ殺キマスノデ正金銀行ハ神戸ニハ支店モアリマスレバ充分ソレデ事ガ足リル、又今日ノ日本ノ商業社会デゴザイマスレバ、若シ支那地方ニ於テ正金銀行ノ支店ガ足リマセヌヤウ
 - 第22巻 p.631 -ページ画像 
デアツテ或ハ充分デナイト云フコトガゴザイマスレバ、必要ノ場所ニ正金銀行ノ支店ナリ出張所ナリヲ設クルコトヲ請求シテ可ナリト思ヒマス、デ重モナル場合デハ同ジ資本ヲ二ツニ分ケルト敢テ変ラナイト思ヒマスノミナラズ、同ジ日本ノ銀行ガ競争スルト云フヤウナ傾キモゴザイマス、却ツテ発達上害ガアツテ、益ガナイモノト私ハ信ジマスル、デ銀行カ多クアレバ宜イト云フ計リデハゴザイマセヌ、今日ノ銀行デモ成ルベク一ツニ併セテヤリタイト云フ考ガゴザイマス、正金銀行ガ乗切テヤルヤウニ致スノモ諸君ノ望ミニ依ツテ充分ニ出来得ルダラウト思ヒマスカラ、今日之ヲ拵ヘタトテ救済策トハ言ヘナカラウト思ヒマス、今日ノ経済デ見マスルト尚更ラ設置セズニ正金銀行一方ニ止メテ置キ、充分ニ働カスト云フ方法ヲ執ル方ガ却ツテ上手段ト考ヘマス、此項ハ削除致シタイ、之ヲ提出シマス
○四十五番(松山、仲田槌三郎君) 私ハ此東亜銀行ヲ設クルト云フコトハ賛成デアリマス、反対ガ出マシタカラ意見ヲ述ベマスルガ、神戸ニ此銀行ヲ置ク必要ト思ヒマスルノハ、是マデノ慣例上ト云フモノガドウモ正金銀行ニ於テ余リ勤ヌヤウニ思ヒマヌ、ソレ故ニ貿易上ニハ益スル所ガ少カラウカト思ヒマスルデ、ドウシテモ此機関銀行ヲ置イタナラバ大キニ便宜ダラウト思ヒマスカラ、ドウカ之ハ成立シマスルコトヲ希望致シマス
○二十七番(長崎、松田源五郎君) 此東亜貿易銀行ト云フニ付テハ私モ委員会ニ於キマシテ只今大谷サンノ御説ト同ジヤウナ感情ヲ持ツノデ、之ハ無クシタラ宜カラウト云フ説ヲ述ベテ置イタコトガアリマシタケレドモ、必要デアルト云フコトデ存スルコトニナリマシタ、之ハ正金銀行ガ充分ニ働ヲ為スト云フコトガ為シ得ラレヽバ或ハ不用カモ知レマセヌガ、今日ノ有様デハ正金銀行ガ充分其働キヲナサンヤウニ伝承致シマスルガ、幸ヒニ二十番ハ其地ノコトヲ能ク御熟知デアラウト思ヒマスカラ、清国其他東洋各国ニ対シテ正金銀行ノ働キ振リヲ少シ御話下サレバ都合ガ宜イト思ヒマス
○二十番(神戸、横田孝史君) 此問題ハ決シテ地方問題デナカラウト私ハ固ク信ジテ居リマス、横浜ノ大谷サンカラ反対ノ御説ガ出テ私ガ弁明ヲスルト云フコトハ少シ変ナ嫌ヒガアリマスカラ、私共ハ此問題ニ付テ沈黙ヲ守ツテ居ル考デアツタ、然ルニ今二十七番カラノ御問モゴザイマスカラ一言申上ゲマス、大谷サンノ御説デハ、横浜ニ正金銀行ガアツテ其支店ガ神戸ニ設置シテアル以上ハソンナニ不便モナカラウ、ノミナラズ同性質ノ銀行ヲ二ツモ造ルト云フ事ハ得策デナカラウト云フ御説デアル、抑モ神戸港ノ商工業ノ発達或ハ貿易ノ伸張ト云フガ如キ事ニ付テハ充分考ノアル諸君デアリマスルガ故ニ、今爰ニ新タニソレ等ノ数字ヲ掲ゲ来ツテ比較ヲ取ルノ必要モナイ訳デゴザイマスガ、現ニ此亜細亜貿易且ツ南洋諸島ニ対スル近来貿易事業ノ進歩ハ、実ニ著シキ有様ヲ呈シテ居ルト云フコトハ、申スマデモナイト思ヒマス、従ツテ亜細亜貿易即チ支那貿易ナリ南洋貿易ナリ或ハ台湾ノ関係ト云フ東洋方面ニ向テノ神戸ノ位置ハ実ニ日本ノ関門デアツテ、将来益々発達ヲ企図スベキノデアルニモ拘ラズ、此貿易ノ機関トシテ最モ必要ナル銀行ハ微々タルモノデアル、翻テ横浜ヲ視レバ現ニ一千弐百
 - 第22巻 p.632 -ページ画像 
万円ノ正金銀行ハ更ニ一倍シテ二千四百万円ノ大銀行トナリ、其外ニ百万円以上払ヒ込ミノ済デ居ル銀行ガ何デモ五ツ許リモアツタカト思フ、然ルニ三十年ノ統計ニ依ルト輸出ニ於テ横浜ハ八百七十万、神戸ハ三千三百九十万殆ンド四倍ノ額デアル、又輸入ニ於キマシテモ横浜港ハ二千三百万、神戸ハ五千七百万、殆ンド二倍半ヲ超過シテ居ルト云フ有様デアル、又金融機関設備ノ実況ヲ見マスルト百万円ノ銀行ハ一ツモナイ、最モ正金銀行ヲ初メ、第一ノ如キ、或ハ三井ノ如キ大銀行ノ支店ハゴザイマスケレドモ、此支店ト申シテモ日本銀行ノ大阪支店ニ於ケル如ク重役制度デゴザイマスレバ大ニ金融上便利ヲ得ルコトモゴザイマセウガ、神戸ノ支店ハ啻ニ正金ノミナラズ総テノ銀行共一支配人ノ下ニ任カシテアルト云フ有様デ、今此正金銀行ノ行動ヲ爰デ可否スルト云フコトハ私共敢テ好ミマセヌガ、凡ソ貿易ノ有様ハ斯ク横浜ト懸隔ガアル、輸出入共ニ或ハ三倍或ハ四倍ノ差ガアルノデス、然ルニ金融機関ヲ顧レバ横浜ニハ二千四百万円ヲ初トシテ百万円以上ノ銀行ガ数行設置サレテアルニ拘ラズ、神戸ニハ資本ノ払込額カラ申セバ漸クニシテ七・八十万円ノ額ニ上ツタ銀行ガ二行アツテ跡ハ十万二十万ニ止ツテ居ル、斯ウ云フ有様デアル、若シモ神戸ニ左様ナ金融機関ノ欠乏ガアレバ需用供給上自然ニ出来ルデハナイカト云フ理由モアラウト思ヒマスガ出来ナイ、而シテ正金銀行ニハ政府ガ少ナカラザル所ノ保護ヲ与ヘテ居ル、若シモ神戸ニ彼レダケノ保護ヲ与ヘルト云フコトガゴザイマスレバ直チニ正金銀行ノ如キモノデモ設置ガ出来ヤウト思ヒマス、兎ニ角横浜ハ貿易ノ機関ガアツテ一方デハ既ニ少ナカラザル国家ノ保護ヲ受ケテ居ル、然ルニ神戸港ニハ此銀行ノ設備ニ欠クル所アルト云フノハ種々ノ事情ニ於テ已ヲ得ナイコトヽ思ヒマスガ甚ダ遺憾ニ存ジテ居リマス、最モ神戸ニ於テハ「香港上海バンク」ト云フモノガゴザイマスケレドモ是等ハ重ニ外国人ノ為ニ働イテ居ル銀行デアル、或ハ日本人ニハ信用ガナイト云フナレバソレマデヾアリマスガ、要スル所居留地ノ銀行ナドハ外国人ノ貿易機関トナルノミニ止マツテ居ル、其唯一ノ貿易機関トシテ見ル正金銀行ハ実際日本人ガ金ヲ借リニ行クト金利ガ高イ、外国人ガ借リニ行クト安イ、ドウ云フ訳デアルカ外国人ハ安クナイト使ツテ呉レナイ、日本人ハ高イ利息ヲ使ツテ居ルカラ高クテモ差支ナイ、借リニ来ルト斯ウ云フコトモ銀行ノ当局者カラ聞イタコトモアル、ソレデ今神戸ニ東亜貿易ノ機関銀行ヲ造ルト云フノハ決シテ神戸一地方ノ為デナクシテ、即チ日本貿易ノ為メ否東亜貿易ノ為ト云フコトハ申スマデモナイコトヽ思ヒマス、政府ハ此金融機関ノ設備ニ努メルニ急ニシテ、既ニ中央ニハ日本銀行アリ貿易ノ機関トシテ横浜ニ正金銀行アリ、其他各府県ニハ農工銀行アリ或ハ台湾ヲ経営スル為ニハ台湾銀行ヲ造リ、北海道拓殖ノ為ニ拓殖銀行ヲ造リ、更ニ日本銀行ト相似タル所ノ彼ノ動産銀行即チ興業銀行ナルモノモ新タニ出来ルト云フ有様デアルニ、独リ最モ不便ヲ感ジテ居ル神戸港ニ此設備ノナイト云フコトハ前後ノ事実ト統計表ニ依ツテ其当ヲ得ヌト御話致シタ次第デ、今大谷サンノ御説ニ依ルト、一ツノ銀行ノ働キヲ二ツニ分クルト云フコトハ不得策デアル、如何ニモ此論ハ徹頭徹尾御同感デアル、私共ハ正金銀行ノ仕事ヲ半バ割イテ政府ノ保
 - 第22巻 p.633 -ページ画像 
護ヲ求メテ神戸ニ同様ノ銀行ヲ置クト云フコトハ考ヘテ居ラヌ、固ヨリ正金銀行ハ正金銀行トシテ重モニ欧羅巴若クハ亜米利加ニ対シテ即明治十年設置以来ノ歴史通リノ働キハ為シ得ラルヽ、ソレヲ尚ホ一歩進ンデ私共ノ一個ノ意見トシテ希望ヲ述ベマスレバ、無論是等ノ銀行ハ株主ノ利ヲ図ルバカリデナク貿易ノ伸張ヲ図ル所謂国益ノ為デアルケレドモ、国費多端ノ場合デアルガ故ニ既ニ貿易銀行トシテ正金ニ保護シアル以上ハ、新タニ設立スル銀行ノ保護ハ出来マイト云フコトデアリマスレバ、先年或ル方面カラ起リマシタ日清銀行即チ清国人ノ金アリ手腕アルモノト相結托シテ此組織ヲ為スト云フガ如キコトモ、充分其設立ニ努メマスレバ今日ノ形勢ニ於テハ敢テ難カラザルコトデアラウト思フ、先刻申述ベマスル如ク、而モ此ノ如キ国家事業殊ニ東亜貿易ニ対シテ必要ナル所ノ機関銀行デアリマスガ故ニ、無論委員会デ可決ヲ致シマシタル如ク本会デモ通過ヲ見ルコトデアラウト信ジマスルガ、却ツテ私共口ヲ開キマシタガ為ニ折角ノ国家問題ガ或ハ地方問題ニ見ヘルガ如キ奇観ヲ呈スルヤウナコトガアリマシテハナリマセヌト云フコトデ、此問題ニ付テハ別ニ口ヲ開キマセヌ積リデアリマシタガ、唯二十七番カラノ御話ガゴザイマシタカラ一言述ベテ置キマス
○二十三番(横浜、大谷嘉兵衛君) 二十三番ハ別ニ反対モ何モナイ、私ハ株主デモ何デモナイ、若シモサウ云フコトカラ御疑念ガアルト行ケナイ、私ハ国家ト云フ観念ヲ頭ニ措イテアルカラ決シテ神戸ダカラ横浜ダカラト云フ観念ハナイケレドモ、自然ニ競争ヲ起スヤウナモノヲ設クルコトハドウデアラウカ、正金銀行デハ未ダ仕事ガ足ラヌト云ツテ居ル、神戸デモ横浜デモ同ジモノデ支店デモ本店ト同ジ働キヲシナケレバナラヌト云フコトハ至当デアルト認メテ居ルカラ、若シモサウ云フ働キヲシナイト云フコトデアレバ無論ソレハ置カナケレバナラヌ、余リ時間ヲ妨ゲテ何デスケレドモ、正金銀行ノ今日ノ働キガドウモ神戸貿易上ニ充分デナイト云フコトヲモウ一応伺ヒタイ
○二十番(神戸、横田孝史君) 先刻説ヲ述ベマスル際ニモ一寸御断リヲシテ置キマシタ積リデ、是等ノ一銀行一会社ノ働キニ付テ可否スルト云フコトハ本員ハ好マンコトデ、唯其内ノ一ツヲ申シマスレバ、即チ日本銀行大阪支店ノ如ク重役組織デアツタナラバ、只今ヨリモ余程範囲ガ広ク働キカ出来ハシマイカト云フコトヲ思ヒマス、ソレカラ今一ツハ現ニ日本人ニハ利子ガ高クテ外国人ニ安イト云フ事実ガアルト云フコトヲ聞イテ居リマス、今細カニ正金銀行ノ神戸ニ於ケル支店ノ一・二ヲ聞込ンデアルト仮定致シマシテモ、爰デ喋々御披露的ニ御話スルコトハ甚ダ好ミマセヌ、且又正金銀行ハ正金銀行トシテ本支店ノ間自ラ規定ナリ方法ナリゴザイマシテ、相応ノ働キハ尽シ居ルノデアラウト思ヒマスガ、要スル所一支配人ノ下ニ属シタル支店ニ於キマシテハ、サウ充分ノ働キヲ望ムト云フコトハ却ツテ望ム方ガ或ハ無理ジヤナカラウカト云フ工合ニモ思ハレマス
   (「採決、々々」ト呼ブ者アリ)
○二十三番(横浜、大谷嘉兵衛君) 会長、私ノハ取消シ致シマス
○会長(東京、渋沢栄一君) ソンナラ第四ニ移リマス
○六十二番(東京、井上角五郎君) 其第四ニ御移リニナル前ニ一ツ追
 - 第22巻 p.634 -ページ画像 
加スルモノガゴザイマス、四ト云フ箇条ニ致シマシテ之ハ事情ヲ申上ゲマスガ、起草委員ガ起草致シマストキニ一ツ入レテゴザイマシタ、ソレカラ私カ其起草委員中デ文章ヲ縮メマシタトキニソレヲ其儘除キマシタ、取落シタト申シテ宜シイ、遂ニ昨日委員会デハ論ガ出マセヌデシタガ、左様ナモノガ爰ニ一ツ残ツテ居リマシタカラ一応申上ゲマシテ諸君ノ御賛成カ得ラレヽバ仕合デゴザイマスガ、兎ニ角議題ニ供シマス、四ト致シマシテ「四、現行通商条約上実行シ得ル範囲ニ於テ関税率ヲ改正シ内国産ノ産出ヲ保護スルコト」之ヲ例ニ照シテ見マスレバ或ハ棉花ノ輸入ヲ免税ニシタトカ、或ハ加工品ヲ免税シタトカ、原料品ヲ免税シタトカ云フ例、又外国品ノ税ハ今日ノ条約ニ依ツテモ強チ増減シ得ラレンコトハナイト云フヤウデ、税ヲ減ズトカ増ストカ云フヤウナ手段ヲ執ツテ内国産ノ産出ヲ増シタイト云フノガ本旨デゴザイマス
   (「賛成」ト呼ブ者アリ)
○二番(名古屋、奥田正香君) 何時モ委員長ニ御無礼致シマスガ之ハ賛成ヲ致シテ置キマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 六十二番ノ第三、貿易機関ノ完備ヲ期スルコトヽ云フニ今一項第四ヲ加ヘタイ、其加ヘル項目ハ今朗読致サレマシタ通リデゴザイマス、三十三番・二番等ノ御賛成ガゴザイマス、ソレデハ此説ニ御賛成ノ御方ノ起立ヲ願ヒマス
  起立者  多数
○会長(東京、渋沢栄一君) 多数……第四ニ移リマス、運輸交通機関ノ完備ヲ期スルコト
   (「異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○五十七番(直江津、大西徳太郎君) 此第四ノ項目中二ノ所ニ「航海奨励法ノ保護ヲ受クル船舶ヲ使用スル運送業者ハ勉メテ運賃ヲ低廉ニシ内国産ノ輸出ヲ便利ニスルコト」ト云フコトガゴザイマス、航海奨励法ニ拠ルモノハ即チ船舶ヲ堅牢ニシ又航路拡張ナドノ為ニ此保護ヲ与ヘラレタモノト思ヒマス、ソコデ此運漕業者ガ運賃ヲ低廉ニスルコトヽ一般運漕業者トハ少シ意味ガ違ツテ居ル、ソレデ政府モ航海奨励金ヲ与ヘラレタ趣意ト云フモノハ少シ意味ガ違ウダラウト思ヒマス、此運送業者トシテ航海奨励法ノ保護ヲ受ケテ居ル、特ニ運賃ヲ勉メテ低廉ニシナケレバナラヌト云フヤウナコトニナリマスト云フト、却ツテ輸出ノ便利ヲ妨ゲルヤウナコトニ或ハナリハセヌカト云フ考ヘデゴザイマス、ソレデドウ云フ訳ダト申シマスルト、運賃ニ此制裁ヲ与ヘ又或ハ低廉ニシロト云フコトヲ政府ガ干渉ヲナサルト云フヤウナコトニ若シ希望ヲシマスレバ、相当ノ航路補助金ト云フモノモ又与ヘナケリヤナラヌ、ソレカラ今ノ航海奨励法ノ保護ト云フノト少シ意味ガ違ヒマスルカラシテ、第一ノ「鉄道其他運輸交通ノ機関ヲ速成シ、以テ各部ノ統一ヲ保チ海陸ノ連絡ヲ謀リ、且ツ特別運賃ノ制ヲ立テ内国製品ノ運搬ニ便ヲ与フルコト」是ダケデ宜カラウト思ヒマス、航海奨励法ノ保護ヲ受ケル為メニ運賃ヲ勉メテ低廉ニスルト云フコトハ便利ナヤウデ便利デナイト思ヒマスデ、是ダケハ余リ運送業者ニ対シテ酷ナヤウニ思ヒマスカラ削除ヲ希望致シマス
 - 第22巻 p.635 -ページ画像 
○六十二番(東京、井上角五郎君) 六十二番ハチヨツト正誤致シマスガ、二、航海奨励ノ保護トゴザイマスガ奨励法ト云フ一字ガゴザイマシタ
   (「採決」ト呼ブ者アリ)
○会長(東京、渋沢栄一君) 只今ノ五十七番ノ御説ハ未ダ御賛成ガナイヤウデスナ、第四ニ付テ別ニ御動議ガゴザイマセネバ修正ハナイモノト認メマスル
   (「異議ナシ、異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○会長(東京、渋沢栄一君) 然ラバ第四ハ決定シマシテ、此後トノ末文デゴザイマス「以上開陳シタル云々」是カラ終リマデヲ議題ニ致シマス
   (「異議ナシ、異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○会長(東京、渋沢栄一君) 初メノ方ヨリ大層御運ビデスナ、二読会ハ此所デ総テ議了致シマシテゴザイマス
   (「三読会モ議決通リ」ト呼ブ者アリ)
○会長(東京、渋沢栄一君) 是ヨリ三読会ニ移リマスルガ、三読会ハ別ニ全体ニ付テ御異議ガゴザイマセネバ……
○四十五番(松山、仲田槌三郎君) 一寸私ハ御相談致シタイト思ヒマスガ、第二ノ「商工事業経営ノ適良ヲ期スルコト」ノ第二項ノ、商工業練習ノ為メ有為ノ青年ト云フノヲ有為ノ者トシタ方ガ宜カラウト思ヒマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 後トヘ御戻リデスナ……御賛成ガナイヤウデス……此本案ヲ全体通ジテ三読会ニ掛ケマス
○五十四番(京都、中村栄助君) 一寸此案ノ確定致シマス前ニ、先刻来議長マデ申シテ置キマシテ多分御異議ノナイモノト思ツテ居リマスガ、此第四ノ第一項ノ但書ガ抜ケマスルコトニナリマスレバ、空シク鉄道国有問題ト云フモノハ何処マデモ議サズシテ消滅スルト云フコトニナル、ソレ故ニ之ハ単独ニ御議シニナルモノト承知シテ居リマスガ其通リデゴザイマスカ
○会長(東京、渋沢栄一君) 全会ガ御同意デゴザイマスレバ別ニ議長ハ異議ハ申上ゲマセヌ、併カシ此第五号ノ議案ハ委員カラシテ殊ニ御辞リガゴザイマシタケレドモ、十四号議案ハ委員長ノ報告デハ矢張リ包含シタ意味ニナツテ居ルカラ、自ラ捨テラレタヤウナ形ニナリマス尤モソレハ鉄道国有トシテ是非議スルガ宜カラウト云フ全会ノ御意向デゴザイマスレバ、特ニ御議シニナツテ宜カラウト思ヒマス
○四十五番(松山、仲田槌三郎君) 賛成……
○二十九番(金沢、水登勇太郎君) 兎モ角モ之ヲ確定シタ後ニ御相談下サル方ガ順席上宜カラウト思ヒマス、此場合ニソレヲ議題トスルト云フコトハ順席上如何ト思ヒマス、兎モ角モ之ヲ確定議トスル御採決ヲ願ヒタイト思ヒマス
○五十四番(京都、中村栄助君) 其事ヲ本員ガ請求致シマスルノハ万一之ガ後トニナルト云フコトデゴザイマスレバ其心持デ願ヒタイ、何故ナレバ若シ之ヲ採ラヌト云フコトニナレバ三次会確定ノトキニ此但書ヲ提出シタイト思ヒマス、先決トシテ御採決ヲ願ヒタイ
 - 第22巻 p.636 -ページ画像 
○二十九番(金沢、水登勇太郎君) ソレデハモウ一ツ之ヲ確定致シマシテ其後ニ御相談スルト云フコトニ致シタイト思ヒマスカラ、之ヲ確定スルコトニ……
○二番(名古屋、奥田正香君) 最早三読会ノ説ヲ述ベテ宜シイノデスカ
○会長(東京、渋沢栄一君) 御説ヲ仰シヤツテ宜イノデスガ、今五十四番ハ、鉄道国有ヲ三読会確定ノ前ニ何トカセヨ、ト云ハレマスカラ……
   (「別ニ議スコトヲ請求スレバ宜イデハナイカ」ト云フ者アリ)
○五十四番(京都、中村栄助君) 更ニヤルト云フコトデ御発議ガアリマスガ、ソレナラバ異存ハナイノデス
○二番(名古屋、奥田正香君) 可決ニナリマシテモ今更ラ三読会ニ於テ更ニ強イテ削リタイト云フ程デモゴザリマセヌガ、抽籤割増ト云フコトハ私モ委員ノ一人デアリマシタケレドモ、全ク抽籤割増ガ主ニナリマシテ大変吾々ノ賛成シタ趣意ト違フノデ、寧ロ僥倖心ニ訴ヘテ大ニ奨励スルト云フハ一面ニ於テハ投機心ヲ促カスト云フコトデ却ツテ貯蓄ノ精神ニ反対シ妙デナイト思ヒマスカラ、此際四ハ削リマシテ五ヲ繰リ上ゲテ四トシタ方ガ宜クハアルマイカト思ヒマス、此コトハ吾吾会議所ニ持帰リマシテモ説明ニモ苦シムダラウト思ヒマス、貯蓄奨励ノ趣意ト抽籤割増ノ趣意ト相反スルヤウデ、勧業銀行ハ資金ヲ集メル為ニスルノデアリマスカラ之ハ削リタイト思ヒマス、強イテ飽マデ陳弁スルノ必要モアリマセヌカラ……
○六十二番(東京、井上角五郎君) 一寸二番ニ御注意致シマスガ、彼レヲ削ルコトニナリマスレバ末文ノ「一般人民ノ所得ヲ増加シ不生産的消費ヲ増進スルコトアルヲ免レ難シ云々」ト云フ所ノ条項ニ響キマスカラ、此条項ニ付テ修正スルト云フ御意見ヲ御述ベニナルコトヲ
○二番(名古屋、奥田正香君) 今ヤ三読会ノ場合デアリマスカラソレヲ修正スルカ文章ニ付テ充分ニ何ガゴザイマセヌ、強イテ私ハ争フノデハアリマセヌガ、抽籤割増ノ制ヲ除イテ「貯蓄ヲ奨励シ民間零砕ノ資ヲ集ムルコト」ト云フコトニ止メテ置キマシテ
○十一番(阿波、川真田徳三郎君) 私ハ二読会ノ決議ニ異議ハアリマセヌガ、唯ダ中村君ノ説ノアリマシタコトニ付テ一応注意シテ置カナケレバナラヌト思ヒマス、即チ委員ノ依託ヲ受ケタ所ノ京都商業会議所ノ鉄道国有問題ハ、委員会ニ於テハ否認ヲシタモノナルコトハ委員長ヨリ此問題ハ含有シテ居ルト云フ報告ニ依ツテ明カニ分ツテ居ル、然ラバ今特ニ此場合ニ於テ彼ノ問題ハ別ニ議スルト云フコトヲ会ガ認メマセヌト、提出スル場合ガナカラウト思ヒマス、若シ此会ガ鉄道国有ヲ更ニ講究スルト云フコトヲ認メテ置カネバ、此儘ニシテ三読会ヲ通過シタナラバ本案ノ報告ヲ出スト云フ場合ニハ否認シタモノデアルカラ拒ムト云フタラ、私ハ是ニ対シ故障ハ云ヘナカラウト思ヒマス、故ニ此会ガ更ニ鉄道国有問題ヲ講究スベカラズト云フコトニナルナレバ、中村君ハ三読会デ修正案ヲ出スノガ当然ダラウト思ヒマス、デアリマスカラ此順序ガ明カニナリマセヌト折角中村君ノ抱持スル意見ヲ述ベル場合ガ更ニナカラウト思ヒマス
 - 第22巻 p.637 -ページ画像 
○五十四番(京都、中村栄助君) 其コトハ御最モト思ヒマス、先刻陳弁致シテ置キマシタ通リ決シテ委員会ハ否認ト云フコトニナツテ居ラン、抑モ此鉄道国有問題ニ付テ可否ヲ極メタト云フ訳デハナイ、先刻述ベマシタ通リ但書ガ唯ダ是ニ同意ト云フコトデ削ツテ置カウト云ハレタノデアル、ソレ故ニ報告ノ場合ニ私ハ陳弁ヲ致シテ置キマシタ、ソレニモ拘ラズ鉄道国有ハ採ラヌ御説デアル、此聯合会ガ採用シナイモノデアルト云フコトニナリマスレバ私ハ少シ酷デアルマイカト存ジマス、凡ソ一会議所ガ案トシテ提出致シマシタ以上ハ審議討論シテ其可否ヲ極メルガ当然デアラウ、其場合ニ至ラズシテ唯消滅スルコトハアルマイト考ヘマスルノデ、ドウカ御諮リノ上御決シヲ願ヒタイノデ……
○会長(東京、渋沢栄一君) 会議ニ御諮リシマスルガ財政経済ニ関スル調査委員ノ報告ト云フモノニハ「第五号ハ別ニ議スベキモノトス」ト云フノデ、此十四号京都商業会議所御提出ノ鉄道国有ノ件ハ附託シテハアルガ、別ニ議スト云フ断リ書ガナイ以上ハ即チ十四号ハ国家経済ノ方針ニ関スル意見ニ包含サレタニ見ヘル、併シ包含サレタニ見ヘルカラ別ニ議スモノデナイトカ、別ニ議サウトカ云フコトハ会議デ御極メニナル方ガ宜カラウト考ヘマス
○七番(豊橋、三浦碧水君) 私ハ前ニ起草ナスツタトキニハ但書ガ附イテ居リマシタ、サウ云フ趣意デアレバ反対意見ヲ述ベル積リデアリマシタガ、委員会ハ削ツテ提出ニナリマシタ、誠ニ完全ナルモノト思ヒマシタ、今ニナツテ原案ガ極リマシテカラ彼是ト云フノハ不思議ナ話デアルト考ヘマス
○二十九番(金沢、水登勇太郎君) 此国有問題ハ一部カ全部デアルカ知レマセヌケレドモ、兎モ角元起草委員ニ託シタトキニハ国有ノ事柄ガ出テ居リマシタノデ、ソレハ委員会デハ否決ニナリマシタ、ソレデスカラ此案ヲ確定スルト云フ上ニ付キマシテハ是非之ガ出ニヤナラヌト云フコトデアルナレバ、更ニ御提出ニナツテモ差支ナイモノト思ツテ居ル、故ニ私ハ其可否ハ暫ク述ベマセヌガ其問題ヲ爰ニ討論スルコトニ付テハ私ハ全然同意ヲ致シマス、此議案ガ確定シマシタ後ニソレヲ論ズルト云フコトノ余地ヲ与ヘテ宜シイト云フ意見デ……
○六十二番(東京、井上角五郎君) 委員会ノ有様ヲ申上ゲマスト云フト、実ハ起草委員ハ鉄道国有ト云フコトハドウシテモ必要デアル、必要デナイト云フ論ハ暫ク措キマシテ、第四ノ「運輸交通機関ノ完備ヲ期スル」中ニ各部ノ統一ヲ保チ特別運賃ノ制ヲ立テヽ内国製品ノ運搬ニ便ヲ与フルト云フ、是ダケノコトヲスルニハ鉄道ハ国有ニセザルヲ得ナイト云フコトノ考ヲ持ツ者ガ多クテ、但書ニ「必要ナル鉄道ヲ買収スルコト」ト書イテ委員会ニ出シマシタ、サウシタ所ガ委員会デハ確カニ此席ノ二番議員即チ奥田君ト記臆シテ居リマスガ、之ハ爰ニ書ク必要ハナカラウ、且ツ鉄道国有ノ如キハ如何ナル金ヲ持ツテ如何様ニ買上ゲルト云フコトノ如キハ大ナル問題デアルカラ此席デ論ズル必要ハナイ、此所デハ削ルガ宜イト云フ御議論ガアツテ、外ニモ勿論削ル方ニ賛成者ガアツテ削リマシタケレドモ、議論トシテ発表サレタノハ是等ハ大問題デアルカラ別ニ論ズルガ宜イト云フ御説デアツタコト
 - 第22巻 p.638 -ページ画像 
ハ記臆シテ居リマス、就テハ京都商業会議所ニ満足ヲ与ヘルガ為ニハ未ダ羽二重検査所ノ問題モ残ツテ居リマスカラ、彼ノ問題ヲ議スル序ヲ以テ、京都ノ第十四号議案ダケヲ本会ニ附セラルヽコトヲ希望致シマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 別ニ全会ガ之ニ対シテ御異議ガゴザイマセヌケレハ、即チ今ノ鉄道国有問題ハ本会ガ別ニ議スベキモノト御極メニナツテ宜シウゴザイマセウ、詰リ此案ニ対シテ同意不同意ハ別問題デ、議スルト云フ余地ヲ附ケルハ差支ナカラウト思ヒマス
○二十番(神戸、横田孝史君) 即チ此財政経済ニ関スル調査委員報告ト云フモノニハ、矢張此第十四号議案即チ鉄道国有問題ニ関スル議案ハ之ヲ一括シテ審議ヲ遂ゲタガ、其極別紙ノ通リニ極メタ、此上カラ考ヘテ見ルト委員会ハ自然ノ間ノ否認デス、即チ否認シテ委員会ノ提出シタ案ニ依ツテ可否ヲ決スルノデアル、然ルニ本会議ノ如キハ帝国議会デアルトカ府県会トカ云フモノト違ツテ其辺ハドウデモ宜イ、自由デ宜イト云フナレバ兎モ角モ、苟モ会議ノ体面ヲ保タントスル上ニ於テハ如何デアリマセウカ、別段敢テソレヲ強ク議論ヲシヤウト云フ考デハゴザイマセヌケレドモ、是等ノ例ヲ作ツテ置クト聯合会タル一ツノ議会ニ否決サレタ問題ヲ、又重ネテ其会ニ出スト云フヤウナコトヲ自然許サンナラヌヤウナコトニナリハシナイカト云フコトヲ懸念スル……
○六十二番(東京、井上角五郎君) 此委員会デ今ノ通リ十四号ヲ一括スルト決シマシタノハ、如何ニモ但シ書ノ有タノヲソレヲ削リマシタノデアリマス、ソレデアルカラ鉄道国有ノコトハ委員会ハ議シタモノト云フノ外ハナイ、委員会デ左様決シマシタカラ斯様ニ報告シテ置キマシタ、併シ委員会デ決シタコトハ本会デ御改メニナツテモ悪ルイ例デモナカラウシ、是ハ懸念ニ及バヌ、議会ニモアル例デアラウト思ヒマス、委員会デ箇様ニ致シタ、委員会デ箇様ニナツタ手続ハ奥田君ノ御議論ガアツテ削ツタ、私ノ希望ハ本会ガ別ニスルコトヲ希望スルト斯ウ申シマシタガ、少シモ悪例ハ残サン、又委員会ノ決シタ通リ何デモカンデモヤツテシマハナケレバナラヌト云フノハソレゾ悪例デアラウト思ヒマスカラ、一応申シテ置キマス
○二十番(神戸、横田孝史君) 固ヨリ三次会ノ意見トシテ御提出ニナリマスレバ未ダ本案ガ確定ニナリマセヌカラ差支ナイケレドモ、此際確定議ヲ措イテ議スルト云フコトハ異例デハナイカト思ヒマス
○六十二番(東京、井上角五郎君) 委員会ノ極メタノデアルカラ考ヲ別ニスレバ宜イ
○二十番(神戸、横田孝史君) 本会ハ議案ヲ極メテ一括シテ託シタノデ、矢張リ修正ノ中ニハ加ツテ居ルカラシテ、三次会ノ説トシテ中村君ガ御出シニナレバ宜イ、之ヲ確定シテ置イテ別ニ出サウト云フノハ少シク異例デアルト云フノデ……
○三十八番(岡山、香川真一君) 二十番、大概ニ止メタラドウデアル不必要トシテ否決シタノデハナイ、唯但書ヲ爰ニ附ケルノハ可笑シイト云フノデソレダケ削ツタ訳デアル……
○二十九番(金沢、水登勇太郎君) ソレデ今二十番ガ喋々述ベラレマ
 - 第22巻 p.639 -ページ画像 
シタケレドモ、ソレ等ノコトハソンナニ力ヲ入レテ論スベキモノデナイ、今確定議ヲナサントスルニ当ツテ鉄道国有問題ト云フ如キ大キナ問題ガ出ルト云フコトハ余程私ハ面白クナイト思ヒマス、兎ニ角此事ハ一度ハ起ル問題デアル、ドウシテモ別ニ相談スル方ガ宜イ、ソレ故経済問題ヲ先ツ片付ケマシテ而シテ更ニ相談シテ議スルト云フニ、敢テ彼是ト口ヲ四角三角ニシテ論ズベキモノデナイト思ヒマス、二十番ハ御忍ビ下サイ、更ニ此問題ハ兎モ角モ別ニ議スルコトニ……
○会長(東京、渋沢栄一君) 御論旨ハ大体尽キタヤウデス……
○二番(名古屋、奥田正香君) 三読会ノ場合ト云フノデスカラ私モ強イテ之ヲ述ベントスルノデハアリマセヌガ、少シ妙ダト思ヒマスケレドモ、マア是ガ為ニ可否ヲ論ジタリシマシテ時間ヲ送ルノハ如何ト思ヒマスカラ、貯蓄奨励云々ト云フ修正説ハ取消シマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 御取消シニナリマスカ、然ラバ別ニ御異議ガナイヤウデスカラ五十四番ノ鉄道国有問題ハ別ニ議スベキモノト思ヒマス、ソレデ此財政経済ニ関スル調査委員ノ報告、其表題ニナリマシタノハ国家経済ノ方針ニ関スル意見、此案ハ逐条ニ分チマシテ充分審議ヲ致シ一次会・二次会・三次会即チ三次会ハ確定議ニナリマス原案ニ御同意ノ御方ハ御起立ヲ願ヒマス、之ハ確定議デゴザイマス
  起立者  満場
○会長(東京、渋沢栄一君) 全会一致、決定仕リマス
○六十二番(東京、井上角五郎君) 是ガ確定致シマシタ所デ尚ホ委員会ノ結果ニ付テ一言申上ゲマスガ、昨日委員会ハ時既ニ遅クナリマシテ原案ヲ決定致シマシタ、其時ニ香川君カラ御発議ガゴザイマシテ、遂ニ一ツノ協議会体ノモノニ致シマシテ話ヲ致シマシテゴザイマス、ソレハ如何ナルコトヲ話シタカト言ヘバ、兎ニ角聯合会ハ各大臣ノ出席ヲ求メテ意見ヲ述ベテ貰ヒタイト云フコトヲ本会ニ於テ決シテ、其結果各大臣ノ出席ハ先ヅナイヤウニ見ヘルシ、今日デハ果シテナイヤウニ思ハレルガ、各大臣ハ若シ出席シナケレバソレマデダト云フガ如キコトモ甚ダ言責ナキガ如ク思ハレルカラ、出来ナクバ此方ラカラ進ンテ各大臣ヲ訪問スル位ノ手段ヲ取ツテ、各大臣ヲ徒ラニ喚ビ出サウト云フ慰デハナカツタノデアル、若シ御出ガナクバ罷リ出テモ吾々ノ考モ話シ向フノ話モ聞イテ、目下ノ経済ヲ如何ニスベキカト云フコトニ付テ終局ヲ見ナケレバナラヌ、聯合会ノ中カラソレ等ノ為メニ委員ヲ設ルトカ、ドノ商業会議所ヲ運動委員ニ当テヽ置イテ、後日必要ノアルトキハ此経済ノ方針ノ上ニ付テノミナラズ、例ヘバ四国鉄道ノ如キ問題、又羽二重検査所ノ案ガ成立ツカ知リマセヌシ、鉄道国有ガ成立ツカ知レマセヌガ、唯タ決議シテ左様ナラト別レルヨリハ相当ナ委員ヲ設ケテ置イタ方カ宜カラウ、況ンヤ聯合会ニ於テ大臣ノ出席ヲ求メタコトモアルカラト云フノデ、委員会ハ協議ノ如クシテ別レマシテゴザイマスカラ、之ヲ唯ダ報告旁々諸君ニ申上ゲテ、何レ明日御会合モアリマセウカラソレマデニ御考ヘニナルトモ、或ハ此所ニ御極メニナルトモシテ、政府ニ吾々ノ意思ヲ貫徹スルト云フダケノ手続ヲ取ルコトヲ更ニ此聯合会ニ於テ策ヲ御立テニナルコトヲ希望致シマス、即チ委員長トシテ是ダケノコトヲ申上ゲテ併セテ希望ヲ述ベテ置キマス
 - 第22巻 p.640 -ページ画像 
○二十九番(金沢、水登勇太郎君) 只今六十二番ノ御話ハ至極相当ノコトヽ思ヒマスカラ、私ハ同意ヲ表シマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 今御考ヲ定メテ其事ノ貫徹手段ヲ執ルト云フ委員ノ如キモノヲ御極メニナリマスカ、明日ノ時間ヲ定メテ明日ソレ等ヲ議了シ、併セテ今申ス問題モ御極メニナリマスカ
○二番(名古屋、奥田正香君) 総テ議了シタ上ニ御諮リニナルヤウニ……


明治三十三年五月開設 第九回商業会議所聯合会報告 第六三―七〇頁 刊(DK220049k-0008)
第22巻 p.640-643 ページ画像

明治三十三年五月開設
第九回商業会議所聯合会報告  第六三―七〇頁 刊
    ○決議
○上略
○議案第三号
一外国人ニ土地所有権及鉱山採掘権ヲ許与セラレンコトヲ其筋ニ建議スルノ件   (函館提出)
  本件ノ要旨ハ、外国人ニ土地所有権及鉱山採掘権ヲ許与スルハ外資ヲ輸入スルニ極メテ便利ナルヲ以テ、速ニ其実行ヲ望ムト云フニ在リ
○議案第五号
一輸出羽二重撿査所ヲ横浜・神戸二港ヘ設置セラレンコトヲ政府ヘ請願ノ件   (金沢提出)
  本件ノ要旨ハ、我重要輸出品タル羽二重ノ粗製濫造ヲ未発ニ防カンカ為メ、之カ撿査所ヲ設置サレンコトヲ政府ニ建議スヘシト云フニ在リ
○議案第六号
一絹織物摸範工場設置建議ノ件                       (横浜提出)
  本件ノ要旨ハ、輸出絹織物ノ改善ヲ期スルカ為メ摸範工場ヲ設置シテ、普ク当業者ノ参考ニ資スヘシト云フニ在リ
○議案第七号
一海陸運輸交通ノ連絡ヲ図ル義ニ付建議ノ件                 (博多提出)
  本件ノ要旨ハ、我国ニ於テ海陸運輸交通ノ連絡極メテ不備ナルハ通商貿易上不利不便少ナカラサルヲ以テ、速ニ之カ連絡ヲ図ラレンコトヲ其筋ニ建議スヘシト云フニ在リ
○議案第八号
一摸範工場設立ニ関スル義ニ付意見開申ノ件                 (博多提出)
  本件ノ要旨ハ、我国重要物産ノ改善ヲ図ル為メ国資ヲ以テ摸範工場ヲ設立シ、広ク当業者ノ参考ニ資スヘシト云フニ在リ
○議案第九号
一国家経済ノ方針ニ関スル意見開申ノ件                   (大坂提出)
  本件ノ要旨ハ、速ニ国家経済ノ方針ヲ確立シテ官民事業ノ発達ヲ期図セラレンコトヲ望ムト云フニ在リ
○議案第十号
一日本興業銀行ノ速成ヲ其筋ニ促スノ件                   (京都提出)
  本件ノ要旨ハ、生産ノ発達ヲ助長スルカ為メ速ニ日本興業銀行ノ業務ヲ開始セラレンコトヲ望ムト云フニ在リ
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○議案第十二号
一納税ニ手形及公債利札ヲ使用セシムルコトヲ其筋ニ意見開申ノ件       (京都提出)
  本件ノ要旨ハ、民間資金ノ運転ヲ裨補スルカ為メ手形及公債利札ヲモ納税ニ使用セシメラレンコトヲ望ムト云フニ在リ
○議案第十三号
一国家経済ノ方針ニ関シ政府ニ建議シ、議会ニ請願スルノ件
            (東京商業会議所委員井上角五郎提出)
  本件ノ要旨ハ、官民事業ハ偏重偏軽ノ嫌アルヲ以テ、之ヲ矯正セラレンコトヲ望ムト云フニ在リ
○議案第十四号
一鉄道国有ノ実行ヲ期シ其筋ニ意見ヲ開申スルノ件              (京都提出)
  本件ノ要旨ハ、鉄道ヲ国有トスルハ資金ノ欠乏ニ苦シム目下ノ経済界ニ於テ最モ急要ナルニ依リ、買収資金ヲ外国ニ採ル趣旨ヲ以テ、鉄道国有法案第二条ヲ改正シ、次期議会ニ提出セラレンコトヲ望ムト云フニ在リ
   以上十件ハ便宜一括シ十五名ノ委員ヲ選挙シテ之ニ調査ヲ附託スルコトニ決シ、其後委員ハ審議ノ末、右ノ中輸出羽二重検査所設置ノ件ハ別ニ議スルコトヽナシ、其他ノ九件ヲ一括シテ報告シタルニ、衆議ノ上鉄道国有ノ実行ヲ期スルノ件モ別ニ議スルコトヽナシ、且ツ矯正策第三項第三節ノ次ニ「現行通商条約上実行シ得ル範囲内ニ於テ関税率ヲ改正シ、内国産ノ産出ヲ保護スルコト」ノ一節ヲ加フルコトヽナシテ之ヲ可決ス、其決議ノ全文ハ左ノ如シ
    国家経済ノ方針ニ関スル意見
凡ソ国家ノ健全ナル発達ヲ期図スルヤ、必ス先ツ国家経済ノ方針ヲ確立シ、施シテ悖ラス行ヒテ愆ラサルノ成案ナカルヘカラス、若シ其ノ成案ナカランカ、政府ノ期スル所国民之ヲ成ス能ハス、国民ノ為ス所政府之ヲ助クル能ハス、両者自ラ相和スルヲ得スシテ遂ニ共ニ事ヲ敗ルニ至ル、豈ニ猛省セスシテ可ナランヤ
熟々政府事業ヲ経営スルノ実蹟ヲ尋ヌルニ、其方針ノ全ク積極的ニ出ツルコトハ別ニ喋々スルヲ要セス、戦後経営ニ於テ特ニ然リト為ス、本会モ亦各国交際ノ現状ヨリ之ヲ考フルニ、政府事業就中軍備ノ当ニ積極的タルヘキヲ信シテ疑ハス、勿論軍備ト雖トモ尚ホ軍艦買入ノ如キ、砲台建築ノ如キ、期限ヲ延長シテ一時多額ノ支出ヲ抑ヘ難キニアラス、其他ノ政府事業ニ至リテハ中央地方共ニ之ヲ縮少シ得ヘク、且ツヤ政府通常ノ経費モ、亦幾分カ節減シ得ルノ余地ヲ存セリ、故ニ此等ハ須ラク速ニ節減ノ手段ヲ講セサルヘカラス、而シテ政府事業ノ全ク積極的方針ニ依リテ経営セラルヽト同時ニ、民間事業モ亦タ積極的ニ依リテ経営セサルヘカラス、蓋シ真ニ政府事業ノ完成ヲ期セハ、必スヤ民間ノ事業発達シ、経済ノ利益ヲ増進シテ、国費ノ負担ニ耐ヘ得ルヲ期セサルヘカラサレハナリ、然ルニ実際ハ之ニ反シ、政府ハ専ラ政府事業ノ完成ヲ図ルニ急ナルカ為メ、動モスレハ民間事業ノ振興ヲ抑制シ政府事業ノ着々年ヲ逐ヒテ緒ニ就クニ拘ハラス、民間事業ハ発
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達緩慢ニシテ却テ退歩ノ状ヲ呈セリ、是レ豈ニ軽々ニ看過スヘケンヤ然リ而シテ民業ヲ発達セシメ政府事業ト相応シ共ニ倶ニ充分ナル成績ヲ収メント欲セハ、民業ノ発達セサル原因ヲ研究シテ之ヲ矯正スルノ策ヲ取ラサルヘカラス、今玆ニ民間事業ノ発達セサル所以ノ原因ヲ列挙スレハ
 一 資本ノ充実セサルコト
 二 商工事業経営ノ適良ナラサルコト
 三 貿易機関ノ整頓セサルコト
 四 運輸交通機関ノ完備セサルコト
以上四項ハ目下経済ノ変調ヲ呈シ逆境ニ陥リタル原因ニシテ、戦後経営ノ漸ク完備シ政府事業ノ緒ニ就クト共ニ、就中資本ハ匱乏シテ金利ハ高貴トナリ、之ヲ此儘ニ放任スルトキハ根柢ヲ枯燥シテ樹木ノ繁茂ヲ望ムカ如ク、国家ノ健全ヲ希フモ豈ニ得ヘケンヤ、故ニ国民一般ニ協心戳力シテ此等ノ原因ニ対シ矯正スヘキハ論ヲ俟タスト雖トモ、政府タルモノ豈ニ之ヲ庇護シ助成セサルヲ得ンヤ、請フ左ニ之ヲ矯正スルカ為ニ施設スヘキ策ヲ述ヘン
第一 資本ノ充実ヲ期スルコト
  一 興業銀行ノ設立ヲ迅速ニシ、工業資金ヲ疏通スルコト
  二 金庫ノ制ヲ改正シテ国庫金ノ運用ヲ敏活ニシ、其出納ヲ簡明ニスルコト
  三 小切手ヲ納税ニ使用スルコト
  四 抽籤割増ノ制ニ由ツテ貯蓄ヲ奨励シ、民間零砕ノ資ヲ集ムルコト
  五 土地所有権・鉱山採掘権ヲ外人ニ許可シ、及外人ヲシテ我カ公債・株式其他有価証券ヲ所有セシムル便ヲ与ヘ、以テ自然外資輸入ノ途ヲ開クコト
第二 商工事業経営ノ適良ヲ期スルコト
  一 実業学校ヲ増設シ商工業者ノ智識ヲ啓発スルコト
  二 商工業練習ノ為メ有為ノ青年ヲ海外ニ派遣シ、及ヒ視察ノ為メ渡航スルモノヲ保護シ、特ニ其取締ヲ完全ニシ、以テ海外ノ事情ヲ熟知シ商工ノ事業ニ練達セシムルコト
  三 工業試験場ヲ拡張シ、且ツ新ニ工産品摸範工場ヲ設立シ、技術ヲ練磨シ、製造ノ発達ヲ奨励スルコト
  四 特別ノ事情アル輸入物品ト同一物品ノ製造者ニ対シ、免税其他適当ノ保護ヲ与フルコト
  五 政府需用ノ物品ハ力メテ内国産ニ取リ、内国産奨励ノ精神ヲ助長スルコト
第三 貿易機関ノ完備ヲ期スルコト
  一 神戸ニ東亜貿易ノ機関銀行ヲ設立シ、横浜正金銀行ト相応シ共ニ通商貿易ノ利便ニ供スルコト
  二 通商貿易ノ発達ヲ図ル為メ必要ノ地ニ領事館ヲ置クコト
  三 重要物産同業組合ヲ督励補助シ、其ノ業務ヲ釐革シ、其ノ弊害ヲ矯正スルコト
  四 現行通商条約上実行シ得ル範囲ニ於テ関税率ヲ改正シ、内国
 - 第22巻 p.643 -ページ画像 
産ノ産出ヲ保護スルコト
第四 運輸交通機関ノ完備ヲ期スルコト
  一 鉄道其他運輸交通ノ機関ヲ速成シ、以テ各部ノ統一ヲ保チ、海陸ノ連絡ヲ謀リ、且ツ特別運賃ノ制ヲ立テ、内国製品ノ運搬ニ便ヲ与フルコト
  二 航海奨励法ノ保護ヲ受クル船舶ニ使用スル運送業者ハ勉メテ運賃ヲ低廉ニシ、内国産ノ輸出ヲ便利ニスルコト
以上開陳シ来レルモノハ国家ノ生存上必ラス施設セサル可ラサル目下ノ重要事件ナリトス、若シ夫レ官民事業ノ積極的方針ヲ取ルノ日ニ当リテハ自ラ一般人民ノ所得ヲ増加シ、不生産的消費ヲ増進スルコトアルヲ免カレ難シ、是レ本会ノ前段ニ於テ貯蓄奨励ノ方法ヲ設ケタル所以ニシテ、単ニ資本ノ充実ヲ計ルノ主旨ノミニ出テタルニアラサルナリ、且ツヤ民間事業ノ創設又ハ拡張スヘキモノ多々アルノ今日ニ於テハ、人民ヲシテ安心シテ起営スルコトヲ得セシメサルヘカラス、於是乎本会ノ政府ニ希望シ、特ニ日本銀行ニ注意ヲ請ハントスルハ、彼ノ金利ヲ高低スルニ当リテヤ成ルヘク、経済ノ実況ニ鑑ミ勉メテ急劇ノ変動ヲ避ケ、従来動モスレハ実業家ヲシテ不安危懼ノ念ヲ懐カシメタルカ如キ行動アリシモノ、之ヲ後来ニ戒シメラレンコト是ナリ
本会ハ以上ノ意見ヲ具シテ之ヲ当路ノ参考ニ供ス、切ニ望ムラクハ快断明裁速ニ之ヲ実行シ、経済ノ現状ヲシテ官民事業倶ニ共ニ発達拡張セシムルヲ期センコトヲ
○下略
   ○明治三十三年五月二十五日、栄一ハ各会議所代表者ト共ニ山県総理以下大蔵・逓信・農商務ノ各大臣ヲ訪ヒ、国家経済ノ方針ニ関スル当会ノ決議其他ニ就キ協議セリ。本巻明治三十三年五月二十五日ノ条参照。次イデ明治三十四年一月二十三日ヨリ同月二十七日迄更ニ本件ヲ審議スルタメ臨時聯合会開催セラレタリ。本巻明治三十四年一月二十三日ノ条参照。
   ○本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治三十三年三月二日、同年六月五日、同三十四年二月六日、同年九月九日ノ各条参照。