デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治33年5月19日（1900年）

是日第九回定期会第三日ノ会議ニ於テ、阿波・高知・松山三商業会議所ノ聯合提出、大阪商業会議所ノ賛成ニ係ル四国鉄道第一期線ヘ繰上ゲノ儀上程サレ可決セラル。栄一会長トシテ議事ヲ司宰ス。

明治三十三年五月開設
第九回商業会議所聯合会報告　　第三二―三三頁　刊
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　阿波商業会議所
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　高知商業会議所
○議案第一号　　　　　　　　　　　　　松山商業会議所　提出
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大阪商業会議所　賛成

一四国鉄道第一期線ヘ繰上ノ件
　　理由　四国ノ地タル固ヨリ南海ニ僻在スト雖トモ、土ハ耕耘ニ適シ、海ハ煮ルヘク山ハ鋳ルヘシ、物産頗ル饒多ナリトス、而シテ一葦帯水ヲ隔テヽ本洲ニ通スルノ便ヲ有スト雖トモ、如何セン鉄道ノ全通セサルカ為メニ交通不便運輸沮滞シ、将ニ繁殖セントスルノ物産、興起セントスルノ工業モ萎靡振ハス、可惜ラ国家ノ富源ヲ埋没シツヽアリ、豈ニ慨嘆ニ堪ユヘケンヤ、近時二・三私設鉄道ノ布設ヲ見ルニ至レリト雖トモ、其四国縦貫線ハ之レヲ私設会社ニ望ムヘカラスシテ、必スヤ国家ノ経営ニ待タサルヘカラス而シテ私設鉄道ノ開ケテヨリ其地方ニ於ケル交通運輸ハ頓ニ利便ヲ感スルニ至リシハ実際明白ナル事実ナリ、況ンヤ四国縦貫鉄道ノ全通スルニ於テヲヤ、交通至便、物貨ノ集散円満ニ国家経済ノ上ニ至大ノ利益ヲ与フルヤ必セリ、且ツ夫レ国防軍備ノ上ニ於テモ亦タ四国縦貫鉄道ノ必要ナルハ喋々細説スルヲ須ヰスシテ明カ
 - 第22巻 p.662 -ページ画像 
ナリ、嗚呼四国縦貫鉄道ハ如此ク国家経済ノ為ニ、国防軍備ノ為メニ速ニ竣成スルノ要アリ、左レハ嘗テ衆議院ニ於テ第一期線ニ繰上ノ建議並ニ鉄道敷設法案ノ建議通過セシコトアリシモ、今日猶ホ第二期工事ニ属シ何レノ日果シテ其着手ヲ見ルヘキヤ予メ之レヲ知ル能ハス、今ヤ全国到ルトコロノ幹線ハ国家ノ経営トシテ之ヲ設計シ、毎年数百万円ノ国費ヲ支出シテ着々其工事ヲ進行セシメツヽアリ、四国ノ地素ト南海一団ノ島嶼ニ過キサルモ其人口ノ多、物産ノ饒、決シテ彼ノ奥羽線若クハ陰陽連絡線ニ譲ラサルナリ、然ルニ国家ハ措テ之レヲ問ハス、四国ノ地ヲ挙テ経営ノ外ニ置カントス、実ニ経国ノ一大欠典ト謂フ可シ、四国縦貫鉄道ノ開通セサルハ啻ニ四国ノ富源ヲ開拓セサルニ止マラス、実ニ国家経済ノ上ニ於テ国防軍備ノ上ニ於テ至大ノ不利不便ヲ与ヘツヽアルモノナレハ、之レヲ第一期ニ繰上ケ速ニ工事ニ着手シ以テ国家ノ交通機関ヲ完成セシメラレンコト切望ノ至ニ堪ヘス、希クハ聯合各商業会議所ハ宜シク協同一致之ヲ政府ニ建議シ、帝国議会ニ請願シ、以テ本所ノ希望ヲ達スルニ尽力サレンコトヲ

明治三十三年五月開設
第九回商業会議所聯合会議事速記録　　第六六―七三頁　刊
明治三十三年五月十九日午前十時十五分開議
　　出席委員　　　　　四十九名　○氏名略
○上略
○会長（東京、渋沢栄一君）　○中略　ソレデハ協議案第二号ハ御提出者ノ出席ヲ待テ議シマスヤウニ仕リマス、之デ継続案ハ相済ミマシテゴザイマスカラ、本年ノ新規ノ議案ニ移リマス、議案ノ第一号四国鉄道ヲ第一期線ニ繰上ゲノ件、之ヲ議題ニ致シマス、之ハ阿波商業会議所・高知商業会議所・松山商業会議所・大坂商業会議所、四箇所ノ聯合提出デゴザイマス
○十一番（阿波、川真田徳三郎君）　提出ノ理由ヲ述ヤウト思ヒマスガ書記ノ朗読ハナイデスカ〔「朗読省略」ト呼ブ者アリ〕
○会長（東京、渋沢栄一君）　別ニ御異議ガナケレバ朗読ハ省略シマス
○十一番（阿波、川真田徳三郎君）　私ハ此提出者ヲ代表致シマシテ一応提出ノ理由ヲ諸君ニ訴ヘヤウト思ヒマス、由来四国ノ土地ガ未ダ曾テ国家ノ経営外ニアルト云フコトハ諸君モ御承知ノコトデアル、此四国ノ土地ハ四面環海ノ国デ、僅カニ海岸ニ沿フテ居リマスル一部分ガ開ケテ居ルト申シテ過チハナイノデアリマス、已ニ昨年ノコトデアリマシタガ、司法大臣閣下ガ四国御巡回ノ節ニ、四国ノ中央ヲ御巡回ニナリマシテ、サウシテ言ハレルニハ、四国ノ土地ハ恰モ台湾ニ均シイ土地デアル、将来拓クニ於テハ国家ノ得ル処ノ利益ハ実ニ枚挙ニ遑マナイ位ノ有様デアルニモ拘ハラズ、今日国家ノ利益ヲ其儘ニシテ置ト云フモノハ、蓋シ交通機関ノ不完全ナルガユヘニ此処ニ至ツタノデアル、一日モ早ク此機関ヲ拵ヘテ将ニ起ラントスルトコロノ工業、将ニ繁殖セントスルトコロノ物産、之ヲ挙ゲテ国家ノ利益ヲ図ルト云フコトハ即チ四国ノ土地ニ居ル吾々有志ノ改良スベキコトデハナイカト云
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フ御説モゴザイマシタ、私ハ諸君ハ御承知ト申シ上ゲタイケレドモガ四国ノ土地ニ事実御出ニナツテ御通行ニナツタ御方ハ余リ少ナカラウト思ヒマスガ、斯ク信ズル所ノ私モ漸ク昨秋デゴザイマシタ、サウ云フ通行ナサレタ所ノ貴顕ノ方々ノ御説モ承リ、久シク此コトヲ思ツテ居リマシタカラ、恰度機会ヲ得マシテ四国ノ土地ヲ高知ニ出デ、松山ニ出デ、実地ヲ巡回致シマシタ、実地ハ実ニ驚クベキ地デ、又経営スベキモノガアリマシテ、之ヲ換言致シマスレバ四国ノ土地ハマダ三分ノ一位シカ拓ケテ居リマセヌ、中央ニアルトコロノ山間其他ニ於テ利益ノ残ツテ居ルコトハ実ニ夥ダシイモノデアルト云フコトヲ感ジタノデアリマス、只諸君ニ訴ヘルノニ漠然トシタ所ノ証拠ノミデハイケマセヌカラ、私ハ実地ニ臨ンダ訳デアリマス、然シテ此線路即チ四国ノ縦貫線ヲ実地ニ行ナウタコトナラバ、得ル所ノ利益ハ前ニ述ル通リ国家経済ノ上ニ於キマシテモ、国防軍備ノ上ニ於キマシテモ、交通ヲ便利ニ致ス以上ハ将ニ四国ノ貨物ノ円満ニ運輸交通モ出来ルノデアリマス、已ニ国家ハ毎年数百万円ノ国費ヲ支出シテ全国ニ亘ル所ノ官線鉄道ト云フモノヲ経営スル今日デアル、四国ノ土地ハ元ト南海ノ一端デアリマスケレドモ、其物産タル三百万以上ニ達シテ居ル、今現ニ進行シツヽアル所ノ官線中ニモ奥羽線其他山陰・山陽所謂陰陽聯絡線ノ如キハ、其関係スルトコロ僅カニ二百万円ニ足ラヌト云フ地方モアルヤウニ私ハ認メテ居ルノデアル、併ナガラ段々前ニ述マスル通リ、四国ノ土地ニハ即チ本島ニゴザルトコロノ有志其他ノ御方々ノ余リ御通行ガナイカラ、自然四国ノ土地ガ鉄道ナドノ開ケルノガ遅レテ、国家ノ利益ヲ其儘ニ置イテアルノデアルト信ジマス、ノミナラズ国家ガ是マデ四国ノ土地ニ対スル所ノ経営ヲシナカツタト云フテ私ハ過マラヌト信ジマス、要スルニ四国鉄道ノ開通ハ啻ニ国家ノ富源ヲ助長セシムルノミナラズ、国実経済ノ上ニ於キマシテモ、軍備上ニ於キマシテモ、之ハ一日モ早ク実行シナケレバナラヌト云フコトハ、ドナタカノ御説ニモアリマシタ地方問題ニアラズシテ国家ト云フコトヲ以テ言ハシメレバ、台湾ノ土地ニ数百万円ノ金ヲ年々入レテアルモノヲ寧ロ此ノ四国ノ土地ニ移シ、今日マデ一定ノ方針ヲ立テヽ経営シタナラバ大ナル利益ガアルデアラウト信ジテ疑ハヌノデアリマス、ソレデ只私ハ諸君ニ対シ四国ノ事情ヲ述ベテ、吾々提出者ノ至誠ヲ諸君ノ至誠ニ訴ヘテサウシテ公平ナル御判断ヲ請フテ、四国ニアル所ノ利益ヲ国家ノ為メニ貴方ガタニ請フテ、サウシテヤリタイト云フノガ吾々ノ希望スル所デアリマス、故ニ第二期線ニナツテ居ル所ノモノヲ第一期ニ繰上ゲ、サウシテ国家交通ノ機関ヲ完成セシムルト云フノガ私ノ希望デアリマス、諸君宜ク御賛成ヲ願イタイノデアリマス、終リニ一言申シ上テ置カウト存ジマスルノハ、此問題ハ即チ法律ノ改正デアリマシテ、今建議シテ国家ノ経済ガ許サヌニモ拘ハラズ之ヲ是非シヤウト云フ訳デハナイ、即チ之ヲ諸君ニ訴ヘ一期ニ為シテ国家ノ利益ヲ図ルベキノ価値アルト云フコトヲ御認ニナツテ、サウシテ法律ノ改正ヲ致ス外ナイト云フコトヲ御承知ヲ願ヒタイ、又諸君ニ申シ上ゲルマデニ及ビマセヌガ、已ニ此今日ノ場合ヲ見テ直チニ鉄道ノ敷設ノ如キハ将来測量セニヤイカヌト云フヤウナ御考ヘヲ他ニ持テ御出デノ御方モアルヤウニ承
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リマスケレドモ、元々交通機関ノ発達ヲ奨励シテ国家ノ利益ノ埋没シテ居ルモノヲ何処マデモ掘テ、然シテ国家ノ発達ヲ図ルト云フコトハ御同感ノコトデアリマセウ、已ニ一昨日モ廻ツテ居ル所ノ経済救済意見ト云フモノガアリマス、此中ニモ言ツテアル「或ル人経済界ヲ救フノ一策トシテ政府事業中鉄道ノ如キモ之ヲ中廃セント説ク者アルモ、将来斯カル議論ヲ悲シマズンバアラズ、ナントナレバ国家ノ発達上鉄道ノ必要ナルハ宛モ児童ノ教育ニ学校ヲ要スルト一般ナリ」云々トアル、是レト恰度同ジコトデアツテ、即チ此鉄道ヲ完全致シテ四国ノ将ニ繁殖セントスル所ノ物産、将ニ興起セントスル所ノ工業ヲ起スト云フコトハ、諸君ノ至誠ニ訴ヘテ此案ヲ通過セシメテ而シテ一日モ早ク国家経済ノ許ス限リ早ク講ジテ貰ヒタイト云フノガ大体ノ趣意デアリマスカラ、宜ク諸君御賛成アランコトヲ希望致シマス
○七番（豊橋、三浦碧水君）　十一番ニ伺ヒマスガ、第一期線ノ線路ト云フモノハ何哩位アリマスカ、サウシテ其費用ハ大体ドノ位ヒニナリマスカ
○十一番（阿波、川真田徳三郎君）　マダ此縦貫線ノ線路ガ何程ニナルト云フコトハ私ハ調ベテ居リマセヌ、元ト此第二期ニナツタ時分ニハ私ハ当時職ヲ衆議院ニ奉ジテ居リマシタガ、其時分ニハ多度津カラ琴平ヲ経テ、サウシテ高知ヲ経テ高知カラ種崎ニ達スルト云フノデ、サウシテ徳島カラ脇ヘ出ルノガ第二期線ノコトヽ思ヒマシタ、ソレデ私ガ又第二期線ニ之ヲ取ルト云フニ付テハ認メガ付イテ居リマセヌカラ之レダケノモノハ啻ニ吾々ノ鉄道ニ対スル比較線ト云フ考ヨリカ、要スルニ四国ノ縦貫線ハ何レノ処ノ方面カラ起点トナリ終点トナラウトモ、宜シク政府当路ノ人ノ御指定ヲ願フ外ナイト斯ウ思ヒマス、故ニマダ予算等ハアリマセヌ
○三十二番（大阪、佐伯勢一郎君）　一寸申シマスガ、私ハ大阪商業会議所デ、只今四国鉄道ノ建議ニナツタ理由ヲ御述ベニナリマシタガ、只今ノ御述ニナツタ御趣意ヲ承リマシテ賛成ヲシタ方ノ地位デアリマス、此書面ヲ只今見マシタガ、大坂会議所ハ提出者ニナツテ居リマス只今申シ上ゲマスル通リ建議者デハゴザイマセヌガ、只今ノ建議者総代トナツテ御述ニナツタ如クニ意味合ヲ承リマシタノデ、詰リ此建議ニ賛成ヲシタノデアリマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　賛成ト云フコトガ大坂会議所ノ頭マニ付クベキコトデアツタノガ、提出者ト見做シテ私ガ申シ上ゲタノハ印刷ガ悪ルカツタタメニ間違ヒマシタ、大坂商業会議所ハ賛成デアツテ提出者ハ三ケ所デアツタノデゴザイマス、一寸簡単ニ再ビ申シ上ゲマス
○二十七番（長崎、松田源五郎君）　本員ハ本案ニ対シテハ全然賛成デゴザイマス、抑モ四国線ヲ第二期線ニ加ヘタト云フコトハ甚ダ不当デアルト云フコトハ其当時本員等ハ少シク衆議院ニ関係シテ居リマシタカラ其当時カラ此ノ感ジヲ持テ居リマシタ、ソレガ其当時ハ調査上如何ナル都合デアツタカ二期線ニナツタノハ甚ダ遺憾デアツタノデゴザイマス、其理由ハ只今十一番カラ述ラレマシタ如キ同一ノ感ジヲ持テ居リマスカラ玆ニ贅弁ハ要シマセヌ、兎ニ角本員ハ全然賛成致シマス
○十九番（神戸、杉山利介君）　十九番ハ此案ヲ賛成致シマス、理由ハ
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只今聞キマスル所ノ御説ト同様ナ訳デアリマスカラ、全然賛成致シマス
○四十一番（高知、谷脇静一君）　提出ノ理由ハ十一番ヨリ細カニ述ラレマシテ再演スルノ要ハゴザイマセヌガ、只四国ハ海ヲ隔ツタ一島デゴザイマシテ、諸君ノ中ニハ彼ノ地ノ事情ニ通ジナイ御方モアラウト存ジマスルノデ、十一番ノ諸君ニ申シ述ベラレタ中ノ不測ノ感アル国防ノ上ニ付キマシテ簡単ニ一言申シタイト思ヒマス、我国ガ若シモ一朝締盟国ト国際ノ破レテ紀淡海峡ガ実地ニ必要ヲ感ズル場合ニハ、軍略ト致シマシテ敵艦ガ品川湾ヲ突クト云フコトハ免レナイ数デゴザイマセウガ、又軍略トシテ京摂間ヲ襲フモ又数ノ許サヌ次第デアリマス……斯ル場合ニハ阿波ノ出羽港若クハ土佐ノ野根港、此両港ナドガ敵艦ヲシテ根拠地タラシムルデアラウト思ヒマス、今聯隊ガ高知ニアリ松山ニアリ、丸亀ニアル、斯ル軍備ハアルガ尚ホソレニ通ズル鉄道ナルモノガナイノハ甚ダ国防ノ上ニ於キマシテモ遺憾デゴザイマス、マダ申上ゲタイコトモゴザイマスケレドモ、余リ重複ニ渉ル嫌ヒガアリマスカラ、国防ノ上ニ付キマシテ一言ヲ致シマス
○五十三番（堺、酒井包義君）　本員モ本案ニハ全然賛成ヲ致シマス、国防上ノコトハ吾々ハ素人デ分リマセヌガ、兎ニ角四十一番カラ御述ニナリマシタ通リデ別段ニ理由ハ述ベマセヌ、又採決セラレンコトヲ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　本案ニ対シテハ段々賛成ノ御説ガ出マシテゴザリマスル、最早御討議ガゴザイマセネバ決ヲ採リマスヤウニ致シマス、本案ニ御同意ノ御方ハ御起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数デゴザリマス、原案ニ決定仕リマス
　　　○四国縦貫鉄道ノ第一期線繰上ゲハ実現セズ。（日本鉄道史中篇・第二三―五三頁参照）

日本鉄道史　鉄道省編　　中篇・第二七五―二七六頁　大正一〇年八月刊
　○第十四章　私設鉄道
　　　　第一節　概要
○上略
是月　○明治三五年二月政府ハ衆議院建議案ニ基キ北海道鉄道線及四国縦貫線ヲ助成スルニ決シ、明治三十五年度予算追加予算外国庫ノ負担ト為ルヘキ契約ヲ要スル件トシテ、北海道鉄道及徳島鉄道ニ補助金ヲ下付スル契約案ヲ提出シ、又四国予定線中川田ヨリ高知ニ至ル線ノ私設許可ニ関スル法律案ヲ提出シタリ、是ヨリ先四国予定線中山田野地ヨリ須崎ニ至ル線、及徳島ヨリ川田ニ至ル線ハ明治二十九年法律第七十七号ヲ以テ之カ私設許可ヲ公布セラレタルモ、該法律ニ依リ山田野地・須崎間ノ私設ヲ許可セラレタル会社ハ解散シタルヲ以テ、該法律中該区間ヲ削除シ新ニ法律ヲ以テ川田・高知間ノ私設ヲ許可セントスルモノナリ〔北海道予定線中小樽・函館間ニ就テハ明治三十年法律第三十五号ヲ以テ之カ私設許可ノ件公布セラレタリ〕以上両案ハ二十六日議場ニ於テ討議ノ末特別委員ニ附託セラレシカ、二十八日議員堀家虎造外三
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名ハ政府ニ質問シテ曰、政府ハ私設鉄道会社ニ補給スルノ必要ヲ感シ予算外国庫ノ負担ト為ルヘキ契約ヲ要スル件ヲ本院ニ提出セラレタリ政府ニシテ一旦内地鉄道会社ニ対シ補給ノ端ヲ開ク以上ハ、鉄道政策ノ大方針ヲ定メ予メ之カ財源ト鉄道経済トヲ精覈シ、線路ノ緩急、事業ノ難易等ヲ慎重ニ調査セザルヘカラズ、然ラザレハ啻ニ鉄道政策ヲ誤ルノミナラズ、財政紊乱ノ原因ト為ルヘシ、政府ハ予メ之カ一定ノ方針アリヤ否ト、三月七日政府ハ答弁シテ曰、軍事上及経済上ニ於テ緊要已ムヘカラズト認ムル場合ニ於テ私設鉄道ヲ助成シ以テ其企業ヲ完成セシメントスルハ政府ノ従来執リ来レル方策ニシテ、今回私設鉄道補助契約ニ関スル件ヲ提出シタルモ畢竟其方策ニ依リタルニ外ナラズト、而シテ四国予定線中私設許可法律案ハ既ニ三月四日ヲ以テ特別委員長ノ報告アリ、同日衆議院之ヲ可決シタルモ同月六日貴族院之ヲ特別委員ニ附託シ、八日特別委員長ハ之カ否決ヲ報告シ、議場ハ委員会ノ議ヲ容レ該法律案ヲ否決シタリ、而シテ政府提出ニ係ル私設鉄道助成ノ為予算外国庫ノ負担ト為ルヘキ契約ニ関スル件ハ衆議院之ヲ可決シタルモ、貴族院ニ於テハ私設許可法律案否決ノ結果、徳島鉄道ニ対スル補助ヲ削除シ、北海道鉄道ニ対スル補助ノミ可決シタリ
○下略