デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2021.8.27

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
4款 商業会議所聯合会
■綱文

第22巻 p.705-741(DK220061k) ページ画像

明治34年1月23日(1901年)

是日ヨリ二十七日迄東京商業会議所ニ於テ、第九回定期会ニテ可決セル国家経済ノ方針ニ関スル件其他緊急案件討議ノ為メ臨時会開催セラル。栄一、東京商業会議所ヲ代表シテ之ニ参会ノ予定ナリシモ、病後用務多端ノ為メ大倉喜八郎之ニ代ル。


■資料

渋沢栄一 日記 明治三三年(DK220061k-0001)
第22巻 p.705 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三三年     (渋沢子爵家所蔵)
十二月八日 晴 風強ク寒甚シ
○上略 大坂ホテルニ抵リ、同地商業会議所会員集合ノ席ニ抵ル、特別会員外山脩造・森作太郎・村山竜平・副会頭小泉清左衛門・三谷軌秀・今西林三郎諸氏会員一同ヲ率ヘテ来リ迎フ ○栄一韓国視察ノ帰途七日午後大阪ニ到着 午餐ノ饗宴アリテ後、韓国視察ニ係ル一場ノ演説ヲ為ス、畢テ会議所連合会《(聯)》ノ件ニ関シ、三谷・今西諸氏ヨリ内話アリシモ、帰京後東京商業会議所ニ於テ評議ノ上回答スヘキ旨ヲ約シテ去ル ○下略
   ○中略。
十二月二十一日 晴
○上略 十一時東京商業会議所役員会ニ出席ス ○下略
  ○中略。
十二月二十三日 晴
○上略 夜六時商業会議所ニ抵リ、役員会ヲ開ク ○下略


東京商業会議所報告 第一〇〇号・第六頁 明治三四年二月刊(DK220061k-0002)
第22巻 p.705 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇〇号・第六頁 明治三四年二月刊
○第百七十回役員会議 十二月 ○三三年二十一日開
 出席者
  渋沢栄一君   雨宮敬次郎君
  井上角五郎君  馬越恭平君
  渋沢喜作君   小野金六君
午前十一時開議、左ノ事項ヲ決議セリ
○中略
 一 大阪商業会議所ヨリ会頭ヘ照会ニ係ル臨時聯合会開会ニ関スル件ハ次回ノ役員会議ニ於テ之ヲ議スル事


東京商業会議所報告 第一〇〇号・第六頁 明治三四年二月刊(DK220061k-0003)
第22巻 p.705-706 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇〇号・第六頁 明治三四年二月刊
○第百七十一回役員会議 十二月 ○三三年二十三日開
 出席者
  渋沢栄一君    大倉喜八郎君
  雨宮敬次郎君   中沢彦吉君
 - 第22巻 p.706 -ページ画像 
午後七時開議、左ノ事項ヲ協議セリ
 一 大阪商業会議所ヨリ会頭ヘ照会ニ係ル臨時商業会議所聯合会開会ニ関スル件ハ明年ヲ待テ篤ト協議ノ上何分ノ回答ヲ為スヘキ事


東京商業会議所報告 第一〇〇号・第一頁 明治三四年二月刊(DK220061k-0004)
第22巻 p.706 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇〇号・第一頁 明治三四年二月刊
○九十九回臨時会議 明治三十四年一月十七日開
 出席者
  井上角五郎君 ○外二十一名氏名略
午後四時五十分開議
渋沢会頭欠席ノ為メ大倉副会頭議長席ニ就キ、先ツ左ノ件々ヲ報告ス
○中略
 一 臨時商業会議所聯合会開会ノ件
    明治三十三年十二月二十三日附ヲ以テ大阪外五会議所ヨリ本年一月中旬東京ニ於テ臨時商業会議所聯合会ヲ開会致度旨請求アリタルヲ以テ、其請求ニ応シ本月二十一日本会議所ニ於テ開会ノ事ニ決シ、十二月二十六日附ヲ以テ其趣ヲ各地会議所ヘ通知セリ


東京商業会議所報告 第一〇〇号・第一―二頁 明治三四年二月刊(DK220061k-0005)
第22巻 p.706 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇〇号・第一―二頁 明治三四年二月刊
○九十九回臨時会議 明治三十四年一月十七日開
 出席者
  井上角五郎君 ○外二十一名氏名略
午後四時五十分開議
渋沢会頭欠席ノ為メ大倉副会頭議長席ニ就キ、先ツ左ノ件々ヲ報告ス
○中略
次ニ議長ハ左ノ件ヲ議事ニ附ス
 一 臨時商業会議所聯合会参会委員二名選挙ノ件
本件ハ全会一致ヲ以テ左ノ両君ヲ委員ニ挙クルニ決ス、但シ会頭渋沢栄一君ハ目下病中ナルヲ以テ、若シ出席叶ハサル時ハ副会頭大倉喜八郎君之ニ代ルヘキ事ニ決ス
                   渋沢栄一君
                   井上角五郎君

渋沢栄一 日記 明治三四年(DK220061k-0006)
第22巻 p.706-707 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三四年     (渋沢子爵家所蔵)
一月十七日 風又ハ雪
午前萩原源太郎来ル、商業会議所ノ事ヲ談ス ○下略
  ○中略。
一月二十二日 曇
○上略 此夜商業会議所臨時会ヲ開クニ付出席ス
  ○中略。
一月二十四日 曇
○上略 午後四時帝国ホテルニ抵リ、京釜鉄道株式募集ノ為、各地商業会議所出京員ヲ招キ会社成立ニ至ルノ経過ヲ述ヘ、株式引受ノ事ヲ勧募
 - 第22巻 p.707 -ページ画像 
ス、畢テ共ニ晩餐ヲ供シ、食卓上商業会議所ニ関スル演説ヲ為ス ○下略
   ○栄一ハ一月五日ヨリ流行性感冒ニ罹リ十六日頃迄病床ニアリ。右臨時会ノ開催セラレタル二十三日頃ハ既ニ病床ヨリ離レシモ、病後用務多端ノタメニ参会セズ、副会頭大倉喜八郎ヲシテ之ニ代ハラシメタリ。



〔参考〕明治三十四年一月開設 臨時商業会議所聯合会報告 第一―八七頁 刊(DK220061k-0007)
第22巻 p.707-740 ページ画像

明治三十四年一月開設
臨時商業会議所聯合会報告  第一―八七頁 刊
    ○開会地ニ於ケル準備
明治三十三年十二月二十三日、臨時商業会議所聯合会開会ノ件ニ付大阪外五会議所ヨリ左ノ照会ニ接シタリ
 曩ニ第九回商業会議所聯合会ニ於テ可決セシ国家経済ノ方針ニ関スル件ハ当時夫々其筋ヘ建議相成居候得共、尚進テ其実行ヲ期シ、且該建議ノ細目ニ就キ講究スル必要アリ、加之目下ノ時局ニ於テ協議ヲ遂クヘキ緊急事件モ多々有之、幸ヒ今期帝国議会開会中ニ於テスルコト最モ機宜ニ適スルモノト思考致候ニ付、来ル明治三十四年一月中旬臨時商業会議所聯合会ヲ東京ニ開会致度候間、可然御取計相成度、商業会議所聯合会規則第七条及ヒ第八条ニ基キ此段及御依頼候也
  明治三十三年十二月二十三日
                    岡山商業会議所
                    大津商業会議所
                    大阪商業会議所
                    和歌山商業会議所
                    阿波商業会議所
                    堺商業会議所
              右代表
               大阪商業会議所会頭代理
                  副会頭 小泉清左衛門
    東京商業会議所会頭 男爵 渋沢栄一殿
  追申、開場期日等御通知ノ際ハ、本件ニ関スル意見ノ外他ニ新議案提出アルモ差支ナキ旨御附記相成度候
右ノ照会ニ接シタルヲ以テ、東京商業会議所ニ於テハ其請求ニ応シ、明治三十三年十二月二十六日附ヲ以テ、各地会議所ニ左ノ通知書ヲ発シタリ
 今般大阪商業会議所外五会議所ヨリ、曩ニ第九回商業会議所聯合会ニ於テ可決シタル国家経済ノ方針其他緊急ノ事件ニ関シ、明年一月中旬臨時商業会議所聯合会ヲ東京ニ開会致度旨ヲ以テ、別紙ノ通リ其手続取扱方本会議所ヘ依頼有之候ニ付、即チ右聯合会ノ義ハ明治三十四年一月二十一日午前九時東京市麹町区有楽町一丁目一番地東京商業会議所ニ於テ開設候事ニ決定候間、此段別紙ヲ添ヘ及御通知候也
  明治三十三年十二月二十六日
            東京商業会議所会頭 渋沢栄一
    各地商業会議所宛(各通)
  尚々左ノ件々申添候也
 - 第22巻 p.708 -ページ画像 
  一 来会員ノ氏名ハ明年一月十日迄ニ本会議所ヘ通知セラレ度事
  一 来会員到着ノ上ハ直チニ本会議所ヘ報知セラレ度事
  一 本文聯合会ニ於テハ別紙ニ記載シタル事項ノ外ニ他ニ新議案ヲ提出スルモ妨ナキ事
○中略
此通知書ニ対シ参会ヲ断リ来リシハ鹿児島・湊・博多・津・久留米・直江津・赤間関・小樽・松江・静岡・大垣・富山・青森・太田・石岡ノ十五会議所ニシテ、其他ノ四十二会議所ハ孰レモ委員又ハ事務員ヲ派遣スル旨通知アリタリ(尾ノ道・伏見ノ二会議所ハ後ニ至リ事故ノ為メ参会ヲ断リ来リタリ)

    ○参会員氏名
各商業会議所ヨリ参会セラレタル委員ノ氏名ハ左ノ如シ(氏名通知順)
 浜松 (常議委員)中村藤吉君
 高知 (会頭)  松村俊男君
 名古屋(会頭)  奥田正香君  (会員)  上遠野富之助君
 川越 (副会頭) 中井尚珍君
 八王子(副会頭) 平林定兵衛君 (常議委員)松本房次郎君
 広島 (会頭)  桐原恒三郎君 (副会頭) 早速整爾君
 桑名 (会頭)  高松範重君
 和歌山(会頭)  志賀法立正君
 大阪 (常議委員)今西林三郎君 (特別会員)三谷軌秀君
 金沢 (会頭)  水登勇太郎君
 豊橋 (常議委員)服部弥八君  (常議委員)遠藤安太郎君
 宇都宮(常議員) 大村仙助君
 京都 (副会頭) 中村栄助君  (常議員) 林長次郎君
 福井 (会員)  渡辺嘉左衛門君
 酒田 (会員)  佐藤直中君
 堺  (副会頭) 柴谷武次郎君
 松山 (常議員) 仲田槌三郎君
 阿波 (常議委員)庄野謙一君
 熊本 (会員)  迫源次郎君
 高崎 (副会頭) 反町慎哉君
 長崎 (副会頭) 松尾巳代治君
 大津 (会頭)  西村卯兵衛君
 四日市(会頭)  井島茂作君
 水戸 (常議員) 小泉茂兵衛君 (常議員) 塙七平君
 函館 (常議員) 遠藤吉平君
 神戸 (会頭)  山本亀太郎君 (会員)  坪野平太郎君
 仙台 (会頭)  遠藤敬止君  (常議員) 小林八郎右衛門君
 横浜 (会頭)  大谷嘉兵衛君 (会員)  左右田金作君
 高岡 (会員)  高広次平君
 山形 (常議委員)川合小四郎君 (会員)  川合孫四郎君
 - 第22巻 p.709 -ページ画像 
 前橋 (常議委員)藤井新兵衛君
 新潟 (常議委員)清水禎三郎君
 佐賀 (副会頭) 西村万次郎君
 岡崎 (特別会員)志賀重昂君
 岐阜 (会頭)  渡辺甚吉君
 栃木 (副会頭) 桜井源四郎君 (常議委員)和田善吉君
 東京 (副会頭) 大倉喜八郎君 (常議委員)井上角五郎君
右ノ外岡山・上田・栃木《(知多)》ノ三会議所ハ事務員ノミ会同セラレタリ
各商業会議所ヨリ参会セラレタル有志会員ノ氏名左ノ如シ(氏名ハ通知順)
 大阪 (特別会員)森作太郎君
 京都 (会員)  田中源太郎君 (会員)  富田半兵衛君
 同  (常議委員)堀五郎兵衛君
 高崎 (会員)  山崎修蔵君
 神戸 (会員)  横田孝史君
 東京 (会頭)  渋沢栄一君  (副会頭) 中野武営君
 同  (常議委員)雨宮敬次郎君 (常議委員)馬越恭平君
 同  (常議委員)加東徳三君  (常議委員)中沢彦吉君
 同  (常議委員)渋沢喜作君  (常議委員)小野金六君
各商業会議所ヨリ参会セラレタル事務員ノ氏名左ノ如シ(氏名ハ通知順)
        高知 (書記長)  北川貞彦君
        広島 (書記長)  岡田庄四郎君
        和歌山(書記)   木村一雄君
        大阪 (書記)   中村孝太郎君
        京都 (書記長)  岩村茂君
        堺  (書記長)  小谷力造君
        熊本 (書記長)  野々口永二郎君
        長崎 (書記)   一野喜三郎君
        知多 (書記)   桜内幸雄君
        四日市(書記長)  久納重吉君
        水戸 (書記)   増田秀見君
        函館 (書記長)  原田良八君
        仙台 (書記長)  堀源太君
        横浜 (書記長)  岡田猛熊君
        高岡 (事務員)  星野隣君
        岡山 (書記長)  布施謙太郎君
        岐阜 (事務員)  原真澄君
        上田 (書記長)  箕輪五助君
        栃木 (書記)   佐伯正門君
        神戸 (書記)   後藤逸馬君
        川越 (書記長)  鶴岡伊作君
        東京 (書記長)  萩原源太郎君
○中略
 - 第22巻 p.710 -ページ画像 

    ○会議ノ開閉
本会ハ明治三十四年一月二十一日ヲ以テ開会ノ予定ナリシモ、同日賛同会議所ノ数定数ニ達セサリシ為メ二日間延会シ、二十三日開会、二十七日閉会セリ

    ○正副会長ノ選挙
本会ノ正副会長ハ別ニ投票ヲ用ヒス、先例ニ依リ全会ノ請求ヲ以テ東京商業会議所委員(副会頭)大倉喜八郎君ヲ会長ニ、同(常議委員)井上角五郎君ヲ副会長ニ推薦セリ

    ○農商務省吏員ノ臨場
農商務省商工局商事課長以下属僚ハ本会ニ臨場シテ議事ヲ傍聴セリ

    ○議案
各商業会議所ヨリ提出アリシ議案ハ左ノ如シ
○議案第一号             (長崎商業会議所提出)
    清国ノ法律制度改廃ニ関シ要望ノ件
一 日清両国ニ於ケル貿易ノ進歩発達ヲ期スルカ為メ清国ニ於テ制度法律ノ改廃新定ヲ要スルモノ鮮少ナラサルヘキニ付、調査委員ヲ挙ケテ之ヲ調査セシメ、以テ其筋ニ要望スルアラントス
    理由
  吾人ノ視ル処ヲ以テスレハ、今日清国ニ於テ重苛ナル釐金税ノ賦課アルカ為メ我製産品ノ販路ヲ阻碍シ、又貨幣制度及度量衡制ノ確立セサルカ為メ彼我取引上ノ不便尠少ナラスシテ、我当業者ノ往々不測ノ損害ヲ被ムリ、更ニ清国ニ於テ米穀輸出ノ禁ヲ続行シツヽアルカ為メ我製産界ノ進歩ヲ害スルト同時ニ、清国産業ノ為メニモ極メテ不得策タルヲ免カレサルカ如キハ、一トシテ日清貿易ノ進歩発達ヲ阻害スルノ原因ナラサルハナシト雖トモ、更ニ仔細ニ点検スル時ハ此種ノ障碍物ハ多々屈指スルニ遑アラサルヘキヲ確信ス、今ヤ北清事変ノ局面ハ北京ノ陥落ト共ニ一転シテ外交ノ舞台ニ移リ、帝国ノ利害得失ハ一ニ樽爼ノ間ニ決定セラレントシツヽアリ、吾人カ斯ル障碍物ヲ苅除シ日清貿易ノ進歩発達ニ資スヘキ法律制度ノ施行ヲ期スルハ、正ニ今日ヲ以テ時宜ニ適セルモノト云ハサルヘカラス、是玆ニ本案ヲ提出スル所以ナリ
○議案第二号             (大阪商業会議所提出)
    国家経済ノ方針ニ関スル意見
国家経済ノ方針ニ付キテハ曩ニ第九回全国商業会議所聯合会ニ於テ之ヲ決シ、各会議所亦其ノ意ニ基キ其ノ筋ニ意見ヲ開申セシトコロアリト雖モ、尚ホ未タ尽サヽルモノアルノミナラス、其ノ議ノ容レラレテ本年度ノ予算ニ上リシモノアルヲ聞カス、故ニ此ノ機ニ際シ、玆ニ前議ヲ再説シ、且新ニ意見ヲ加ヘ、以テ政府当局者ノ採納ヲ仰カント欲ス、其項目左ノ如シ
 一 我カ工業及商業ハ左ノ方針ニ依リ大ニ保護奨励ノ策ヲ立テ速ニ
 - 第22巻 p.711 -ページ画像 
之ヲ実行スルコト
  (イ) 輸入品中内地ニ於テ生産シ得ヘキモノヽ工業ヲ発達セシメ以テ輸入ヲ防遏スルコト
  (ロ) 特ニ輸出ニ利アル工業ヲ保護シ輸出ノ増大ヲ図ルコト
  (ハ) 清・韓両国、印度及ヒ南洋諸島ニ対スル輸出貿易ヲ拡張スルコト
  (ニ) 前三項ノ方針ニ依リ精細ナル調査ヲ遂ケ、其ノ保護奨励スヘキ品類ヲ撰択スルコト
  (ホ) 保護奨励ハ或ル特殊ノ場合ヲ除クノ外、間接ノ方法ニ依ルコト
 二 貯蓄奨励ノ方法トシテ左ノ制度ヲ設クルコト
  (イ) 農工銀行法ヲ改正シ、其ノ事業中ニ貯金ノ預託ヲ受ケシメ且ツ其ノ預金ノ凡ソ五分ノ一ヲ払戻準備ニ供ヘ、其ノ他ハ規定ノ貸出方法ニ依リ之ヲ貸与セシムルコト
  (ロ) 町村行政事務ノ一部トシテ其ノ町村民カ農工銀行ニ預託スル貯金ノ取扱ヲ為サシムルコト
  (ハ) 普通教育中一層勤倹貯蓄ノ気風ノ養成ニ力メシムルコト
 三 外務省中通商局ヲ廃シ、更ニ農商務大臣ノ監督ノ下ニ外国貿易事務局ヲ置キ、各開港場ニ其ノ支局ヲ設ケ、海外領事其ノ他ノ官公署又ハ公私ノ団体及ヒ個人ト直接通信ノ道ヲ開キ、輸出入貿易ノ真相ヲ観察調査シ、秩序的発達ヲ奨励シ、以テ当業者ノ行動ヲ適良ナラシムルコト
 四 工業試験所ハ其ノ本所ノ外、全国ヲ数区ニ分チ各区枢要ノ地ニ支所ヲ置キ、本支所ニ或ル工産品模範工場ヲ設ケ、広ク工業者ノ技術練習ノ資ニ供シ、且ツ高等技師数十名ヲシテ絶ヘス其ノ管内各工場ヲ巡視セシメ、其ノ施設経営ノ適否ヲ調査シ、其ノ秩序的発達ヲ奨励シ、以テ当業者ヲシテ技術上経済上及整理上其ノ行動ヲ適良ナラシムルコト、猶ホ工業試験所ト地方行政官署・商業会議所及ヒ重要物産同業組合トノ関係ヲシテ宛モ農事試験場ト地方行政官署及ヒ府県郡町村農会トノ関係ニ於ケルカ如クナラシムルコト
 五 其ノ他ハ第九回全国商業会議所聯合会ノ決議事項ノ実行ヲ要請スルコト
○議案第三号             (東京商業会議所提出)
    経済整理ノ件
民間資本ノ欠乏ヲ充実スルノ手段トシテ外資ヲ輸入シテ、内国公債ヲ償還シ、私設鉄道ヲ買収シ、且ツ之ト同時ニ幣制ニ改良ヲ加ヘテ硬貨主義ノ実行ヲ勉メ、以テ経済ノ整理ヲ図ル事
以上ノ主旨ヲ以テ政府ニ建議シ、貴族・衆議両院ニ請願スル事
    理由
  全国商業会議所ハ昨年五月ノ定期聯合会ニ於テ国家経済ノ方針ヲ議定シ、当時夫々其筋ヘ建議シタル所アリシカ、今ヤ更ニ臨時聯合会ヲ開テ鋭意其趣旨ノ貫徹ヲ希図セントス、是レ目下ノ時局洵ニ機宜ニ適スルノ挙措ニシテ、本会議所ノ深ク多トスル所ナリ、
 - 第22巻 p.712 -ページ画像 
蓋シ全国商業会議所カ曩ニ議定シタル国家経済ノ方針ナルモノハ固ヨリ適順ノ画策タルヲ失ハスト雖トモ、是畢竟常時ニ行フヘキ摂生法ニシテ、経済界ノ萎靡衰憊ヲ極ムルコト今日ノ如キ場合ニ際シテハ、仮令之ヲ実行スルモ其効験緩慢ノ憾ナクンハアラス、今熟々経済界ノ現況ヲ案スルニ、民間ノ資本ハ比年益々欠乏シテ各部ノ経済脈絡全ク其営養ヲ失シ、若シ一日ヲ緩フセハ或ハ将ニ不治ノ難症ニ陥ラントス、斯ノ如キ非常ノ場合ニ際シテハ決シテ常時ノ摂生法ノミヲ以テ満足スヘキニアラス、須ク病ノ由テ起ル所ヲ診察シテ、別ニ之カ根治ノ法ヲ講セサルヘカラス、其法他ナシ、外資ヲ輸入シテ左ノ二策ヲ断行スルニ在リ
   第一 内国公債ヲ償還スル事
   第二 私設鉄道ヲ買収スル事
  目下経済界ノ萎靡衰憊ヲ根治スルノ法ハ之ヲ外ニシテ他ニ良策ナキヲ信スルナリ、蓋シ今後一・二年ヲ期シテ内国公債凡弐億円ヲ償還スルモノトセハ、能ク民間ノ資本ヲ充実ニシテ大ニ経済脈絡ヲ興奮スルノ効アルヘク、殊ニ私設鉄道買収ノ事タル、前内閣ガ既ニ之ヲ規画シテ帝国議会ニ提案シタル所ニシテ、其利害ハ復玆ニ詳論ヲ要セス、今若シ之ヲ実行スルトキハ独リ民間ノ資本ヲ充実ニスルノ効アルノミナラス、運輸機関ノ発達ニ裨補スル所亦少シトセス、之ヲ要スルニ此二策ヲ断行スルトキハ、経済界ノ病源ヲ根治スル上ニ於テ其効験極メテ顕著ナルヘキヲ信スルナリ
  今本会議所ハ此二策ヲ断行スルニ当リ更ニ一事ノ施設ヲ希望スルモノアリ、何ソヤ、即チ我カ幣制ヲ改良シテ硬貨主義ノ実行ヲ期スルコト是ナリ、思フニ現行貨幣制度ノ下ニ於テハ硬貨主義実際ニ行ハレスシテ金融ノ一張一弛其常ナク、動モスレハ財界ノ秩序ヲ擾乱スルコトヲ免カレス、若シ此際現行幣制ヲ改良スルコトナクシテ俄ニ多額ノ外資ヲ輸入スルトキハ、一時民間ノ資本ヲ充実ニシテ経済界ニ回春ノ効ヲ奏スルコトアルモ、幾許モナク其資本復タ欠乏シテ今日ノ萎靡衰憊ヲ再演スルノ恐ナシトセス、是亦深ク鑑戒ヲ要スル所ナリ、故ニ外資ヲ輸入シテ前ノ二策ヲ断行スルニ当リテハ、之ト同時ニ我幣制ヲ改良シテ硬貨主義ノ実行ヲ勉メ要スルニ其根治ノ策ヲシテ完全ノ効果ヲ収メシメンコトヲ希望ス然リ而シテ前ノ二策ト云ヒ、将タ幣制ノ改良ト云ヒ、共ニ重大ノ問題ニシテ、之ヲ実行スルニ当リテハ予メ慎重ノ調査ヲ遂ケ、時ノ情況ニ応シテ緩急宜ヲ制セサルヘカラサルコト勿論ナリト雖トモ、此等ハ挙テ之ヲ当局者ニ一任シテ可ナリ、今ヤ臨時商業会議所聯合会ノ開設ニ際シ、本会議所ハ玆ニ此一案ヲ提出シテ、以テ其賛同ヲ請ハント欲ス
○議案第四号      (大阪商業会議所委員三谷軌秀君提出)
    取引所改良ニ関スル意見
凡ソ商工業ノ進歩発達ヲ期図スルヤ、必ス人為的物価ノ変動ヲ避ケ、事業ノ安固ヲ保全セサルヘカラス、若シ物価ニシテ屡々変動シ、商工業者ヲシテ安心以テ其ノ業ニ従事スルコト能ハサラシメンカ、商工業ノ進歩発達ハ到底得テ望ムヘカラサルナリ
 - 第22巻 p.713 -ページ画像 
熟々取引所法制定以来ノ物価ノ変動ヲ察スルニ、自然ノ趨勢ニ因ラス真ノ需要供給ニ伴ハサルモノアリテ、相場ノ高低常ニ其ノ平準ヲ失シ為メニ物価屡々暴騰暴落シテ商工業著ノ安心ヲ欠キ、其ノ経営ヲ過タシメタルノ実蹟アリ、洵ニ各地ニ取引所ヲ設置セシ以来且其ノ盛ナルニ従ヒ最モ然リトス、而シテ今取引所ノ作用ヲシテ斯ノ如キ不良ノ結果ヲ生セシメタル原因ヲ案スルニ、主トシテ定期売買ノ方法其ノ宜シキヲ得ス、転売買戻ヲ以テ前ノ売買ト相殺セシメ、前ノ売買ハ単ニ差額計算ニ止メ、其ノ契約ヲ履行スルト否トノ自由ヲ当事者双方ニ許与シタルカタメナリ、請フ左ニ其ノ理由ヲ開陳セン
 一 凡ソ商事売買ニ要スル当事者ノ意思ハ、単ニ利益ヲ得ルノミニアラスシテ其ノ目的物ノ得喪ニ存スト雖モ、取引所ノ定期取引ノ多クハ然ラスシテ、目的物ニ対スル観念極メテ薄ク、其ノ甚タシキニ至リテハ全ク無キモノアリ
 二 凡ソ売買ノ目的物ノ供給者ハ物価ノ高キヲ望ミ需要者ハ其ノ安キヲ欲スト雖モ、取引所ノ定期取引ノ多クハ然ラスシテ、売主非常ノ下落ヲ望ミ買主無限ノ騰貴ヲ欲ス、故ニ相場ノ高低ニ対スル当事者ノ思意正反対ナリトス
 三 取引所ノ定期取引ノ受渡高ハ実際甚タ僅少ニシテ、其ノ取組高ノ多キモ十分ノ一、少キハ三百分ノ一ニ過キス、故ニ最少ノ資金ヲ以テ最多ノ取引ヲ為シ、徒ラニ架空ノ需要供給ヲ喚起ス
 四 取引所ノ当事者ハ多ク其ノ目的物ノ需要供給者ニアラスシテ単ニ市場ノ状況ニ因リ売買スル者ナルカ故ニ、其ノ需給ノ増減激甚ニシテ常ニ其ノ真相ト背馳セルノミナラス、屡々其ノ実数ニ超過セル取組ヲ為スコトアリ
以上掲クル所ノモノハ皆是レ取引所ノ定期取引ニ相殺ノ方法ヲ以テ転売買戻ヲ許シ、其ノ取引ノ責任全ク差額計算ニ止マリ目的物ノ受渡ヲ要セサルノ結果ニシテ又相場ノ暴騰暴落ヲ生スルノ原因タリ、故ニ定期売買ノ方法ヲ改正シテ其ノ病根ヲ断チ、此ノ原因ヲ除去スルニアラサレハ、到底相場ノ高低ヲシテ其ノ平準ヲ得セシメ公定相場ノ実アラシメント欲スルモ豈ニ得ヘケンヤ
夫レ然リ、而シテ此ノ人為的相場ノ変動ハ独リ取引所内ノ空取引ニ止マラスシテ、広ク経済界ノ波瀾ヲ惹起シ、商工業ノ発達ヲ妨害シ、社会ノ秩序ヲ紊乱スルコト甚タ大ナリ、今左ニ其ノ関係スル所ノ最ナルモノヲ開陳スレハ
 一 人為的相場ヲ以テ真ノ物価ヲ左右スルノ実アリ、故ニ金融界ニ不時ノ波瀾ヲ起シ、商工業者ヲシテ不安ノ念ヲ懐カシムルコト
 二 目的物其ノ物ノ取引ニ関係ナキ多大ナル空取引ノタメニ多額ノ通貨ヲ吸収シ、商工業ノ金融ヲ繁劇ナラシムルコト
 三 株式会社ハ其ノ性質零砕ノ資ヲ糺合シテ大事業ヲ起スニアリテ数千万円ノ大会社ト雖モ其ノ株式ノ単位ハ百円内外ナリトス、然ルニ取引所ニ於ケル株式ノ相場変動常ナク、危険多キヲ以テ貯蓄的資本ヲ糺合スルコト能ハヌ故ニ、株式ノ応募者真ノ資本家少クシテ会社ノ基礎脆弱ナルコト
 四 商工業者ヲシテ取引所ハ単ニ相場師ノ差益ヲ争フ所ナリトノ妄
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念ヲ懐カシメ、且転売買戻法ニ依ルカ故ニ、取引所ノ取引ハ多ク片立トナリ、一人ノ仲買人カ同品ノ売方ト買方トノ委託ヲ受ケタルトキハ取引所ノ勘定ハ零トナリ、其ノ双方ノ委託者ニ対スル責任ハ単ニ仲買人ノ一身ニ止マリ危険多キ実アルヲ以テ、取引所ニ於テ商品ヲ売買スル者甚タ稀ナリ、故ニ空取引ニ不便ナル雑穀・砂糖・塩・炭又ハ油取引等ノ取引ニ於ケルカ如ク、又三品取引所ノ綿・木綿ニ於ケルカ如ク、又各取引所ノ直取引ニ於ケルカ如ク、其ノ取引僅少ニシテ、遂ニ商品取引所ノ発達ヲ害シ、物貨集散ノ機関タル公市場ノ備ラサルコト
 五 取引所ノ公定相場ヲシテ今日ノ如ク人為的相場タラシムルハ新法典ノ精神ニ反ス、故ニ商法第三百十七条及ヒ競売法第十一条第二項・第十二条等ノ保証ハ、却テ其ノ被保証者ヲ害スルノ原因トナリ危険多キコト
 六 空取引盛ナルニ従ヒ倍々投機心ヲ助長シ奢侈ノ風ヲ増進スルノ実勢アリ、故ニ破産者ヲ続出シ国力ヲ衰耗スルコト
 七 取引所税額ヨリ算出スルニ、取引所及ヒ仲買人カ売買当事者ヨリ徴収スル手数料ハ少クモ一ケ年一千円以上ナリトス、此ノ金額ハ多ク空売買ノタメニ費消スルモノニシテ、殊ニ空取引ノ盛ナル今日ニ於テ破産者ノ増加ハ数ノ免カレサル所ナリ、故ニ商工業者ノ浮沈頻繁ニシテ信用取引甚タ危険ナルヲ以テ信用制度ノ発達ヲ妨害スルコト
 八 定期取引ニ失敗シテ他人ノ財産ヲ費消スル者甚タ多ク、殊ニ銀行・会社ノ使用人ニシテ数万円乃至数拾万円ノ社金ヲ蕩尽シ、大ニ其ノ荼毒ヲ社会ニ及ホス者尠カラサルコト
等是ナリ、是レ皆取引所ノ定期取引ノ方法其ノ宜シキヲ得サルカタメナリ、豈ニ猛省セサルヘケンヤ
取引所ノ定期取引ニ転売買戻ヲ許スノ弊害正ニ斯ノ如クナルニモ拘ラス、一ニ重キヲ取引所ノ利害ニ措キ、徒ラニ事ヲ取引所法ノ改正ニ託シ、敢テ之ヲ救済スルノ途ヲ講セサルカ如キハ、決シテ国家ニ対シ当局者タルノ職責ヲ尽セルモノト謂フヘカラサルナリ、故ニ本会議所カ政府当局者ニ要望スル所ノモノハ敢テ事例ヲ海外ニ索ムルカタメ日時ヲ遷延スル事ナク、且今ヤ経済界不況ノ秋ニ方リ一日モ速ニ、先ツ該勅令第十三条ノ第四号ヲ改正シテ買戻ヲ禁シ、転売ハ特別規定ノ下ニ於テ権利移転ノ手続ニ依ラシメ以テ其ノ弊害ヲ矯正シ、以テ取引所ノ売買ノ実体ヲシテ普通商事売買ト同一ナラシメラレン事是レナリ、而シテ今之ヲ禁センカ、其ノ弊害ヲ去リテ正業ニ遷ルノ間随テ類似取引ノ起ルハ数ノ免カレサル所ナルヲ以テ、取引所外ニ於ケル類似取引ノ禁ヲ厲行シ、以テ其ノ弊ニ陥ラサラシメン事ヲ勉メサルヘカラサルナリ、抑々取引所ナルモノハ其ノ設立区域内ノ商工業発達ノタメ物貨集散ノ機関トシテ特許セル公設営業所タルヘキモノニシテ、固ヨリ課税スヘキモノニアラサルノミナラス、真ノ売買取引ヲ為スニ当リテ可成其ノ費用ノ減少ヲ図ルコトヲ要ス、故ニ取引所税ハ速ニ之ヲ全廃セサルヘカラス、其ノ他取引所ノ組織、定期取引ノ期間及ヒ売買ノ方法等ニ付テハ暫ク現行法ヲ存置シ、敢テ其ノ改廃ヲ強制セス、自然ノ推移
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ニ一任セラレンコトヲ望ム
以上開陳シ来レル所ノモノハ刻下ノ急務ニシテ、経済界ノ波瀾ヲ避ケ商工業ノ発達ヲ図リ、社会ノ秩序ヲ保持スルカタメ遂行セサルヘカラサルノ事項タリ、故ニ本会議所ハ政府当局者ニ対シ独リ重キヲ取引所ノ利害ニ措カスシテ、力ヲ商工業ノ進歩、経済利益ノ発達ニ置キ、宜シク速ニ明裁快断以テ之ヲ実行シ、国家ノ福利ヲ増進スルヲ期セラレンコトヲ切望ス
○議案第五号             (新潟商業会議所提出)
一、試掘鉱区課税ノ義ニ付政府ヘ建議セントスルノ件
    理由
  農商務省ハ本期ノ帝国議会ニ向ツテ鉱業条例ノ改正案ヲ提出シ、其主要ナル改正トシテ鉱山試掘地ニ対シテ課税セントスト聞ク、該改正案ノ果シテ議会ニ現ハルヽヤ否ヤハ未定ニ属スト雖モ、若シ政府之ヲ提出シテ議会之ニ協賛ヲ与フルニ於テハ、本邦ニ於ケル鉱業ノ前途ハ之カ為メニ其発達ヲ阻礙セラルヽノ虞アリテ、而カモ其課税ノ到底非理タルヲ免カレサルモノアルナリ
  本邦ニ於ケル鉱業界カ近時漸ク世人ノ注視スル所トナリテ将来ノ啓発ノ稍ヤ期待セラルヽニ至リタルハ、職トシテ鉱区試掘ノ認可ヲ得、之ニ向ツテ鉱脈ノ存否ヲ探検シタルモノヽ多カリシニ由ラスンハアラス、然ルニ一朝此試掘鉱区ニ対シテ課税スルカ如キアラハ、其所謂探検者ナルモノハ遂ニ念ヲ鉱業界ニ断チテ復之レニ向ツテ掘鑿ヲ試ミント欲スル者ナキニ至ラン、而シテ今日ノ鉱業界ハ今尚ホ探検時代ニ属ス、殊ニ我カ越後及ヒ北海道ニ於ケル石油事業ノ如キハ、是レ大ニ日本ノ富源ヲ開発ス可キモノアリテ而カモ其油脈判然セス、即チ所謂探検者ノ手ニ拠ツテ扶掖啓導セラルヽヲ俟チツヽアル也、現ニ政府ノ如キモ本県鉱業者ノ冀望ヲ容レテ愈々油田ノ調査ヲ実行セントシツヽアルニアラスヤ、試掘鉱区ニ対スル課税ノ非理ナル是レ其一ナリ
  政府カ該改正案ヲ提出スルノ理由ハ、鉱区占有ノ弊害ヲ矯正スルニ在リト唱フルト聞ク、鉱区ノ占有或ハ多少ノ弊アルヘシ、然レトモ只其占有スルト云フノ一事ヲ以テ課税セントスルハ謬見ナリ試掘ハ読ンテ字ノ如ク鉱物ノ存否ヲ探検スルモノニシテ、掘鑿ノ結果果シテ利益ヲ見ルヲ得ルヤ否ヤハ是レ予期シ得可カラサル事柄ナリトス、然ルニ之ニ向ツテ課税セントスルカ如キハ、其課税ノ目的物タル性質ヲ具備セサルモノニ対スル失当ノ処置ナリト謂ハサル可ラス、況ンヤ政府ハ試掘出願ニ対シ既ニ現行条例ニ依テ若干ノ手数料ヲ徴収シツヽアルニアラスヤ、此手数料ハ是レ即チ鉱区ノ占有ニ対スル課税ナリト看做スヲ得可シ、試掘鉱区ニ対スル課税ノ非理ナル是レ其二也
  該改正案提出ノ理由トシテ更ニ曰ク、試掘地ニ課税セハ虚業家ノ跋扈ヲ防キテ資本家ノ手ニ帰セシムルヲ得可シト、是レ皮相ノ見解ニシテ、資本家ノ鉱山ニ対スル姿勢ハ率ネ之ヲ目シテ山師仕事ト做シ、従ツテ資本ヲ放下スルヲ嫌厭シツヽアルハ従来ノ弊所トシテ算フヘキモノタリ、故ニ所謂探検者ナルモノハ寧ロ冒険ニ富
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メル小資本家ニ待ツヲ得テ、之レヲ大資本家ニ望ムモ得可ラサル也、然ルニ政府カ如斯理由ヲ以テ改正セントスルカ如キハ蓋シ今日ノ資本家ナルモノヲ誤認シタルモノニシテ、角ヲ矯メテ牛ヲ殺スノ謂ヒニ成リ了セン、是レ豈ニ鉱業界ノ為メニ策ノ得タルモノナランヤ、試掘鉱区ニ対スル課税ノ非理ナル是其三也
以上ノ如キ理由ヲ具シ、政府ニ建議シテ課税ニ反対ナルノ意ヲ表明シ以テ政府ノ発案ヲシテ該条例不備ノ修正ニ止マラシメント欲ス、是レ本案ヲ提出シタル所以也
○議案第六号
     (大津・岡山・大阪・和歌山・四日市・名古屋・長崎・熊本・伏見・福井・高知・神戸・阿波・堺・京都・広島会議所提出)
    協定税率廃止ニ関スル建議(請願)
港ハ国ノ門戸ニシテ海関ハ即チ其鎖鑰ナリ、一国経済ノ緩急ニ応シテ鎖鑰ノ開閉ヲ制スルハ元ヨリ其国自衛ノ権利ニ属ス、苟モ独立自主ノ邦国皆此自由ナカル可カラス
不幸我国ノ通商条約ニハ一種ノ協定税率ナルモノアリテ、向フ十年間ハ自主ノ権利ヲ箝制セラレ、尚門戸アルモ任意ニ鎖鑰ノ開閉ヲ為シ能ハサルカ如シ、今試ニ我国現行ノ税率ヲ以テ之ヲ欧米各国ノ税率ニ対比セハ、課税ノ軽重素ヨリ同日ノ論ニアラス、例之ハ本邦ノ綿糸ノ輸入税ハ、加工ノ程度ヲ論セス、百斤ニ付僅ニ四円拾八銭ナルモ、仏国ニ於テハ其晒シタルモノ百斤ニ付六拾壱円五拾四銭ヲ徴スルカ如シ、之ヲ以テ我ノ彼ニ輸出スルハ難ク、彼ノ我ニ輸入スルハ易ク、為メニ我国商工業ノ発達ヲ阻害スルコト最モ甚シ、若シ一タヒ此協定税率ヲ廃棄シテ、機ニ臨ミ時ニ応シテ自由ニ改定スルコトヲ得ハ、必ス我カ商工業ノ発達ヲ期スルヤ昭カナリ、既ニ綿糸及綿布ノ二品ノミニ於テモ、数千万円ノ輸入ヲ減少シテ、忽チ内地ニ其生産力ヲ増殖スルコトヲ得ルヤ必セリ、由是観之、此協定税率ノ今日ニ存在スルハ、洵ニ国家ノ一大病源ニシテ、我商工業ノ健全ハ遂ニ得テ望ム可カラス、豈ニ一日モ速ニ芟除セスシテ可ナランヤ、政府(貴院)ハ宜シク確固不抜ノ態度ヲ執リ、此協定税率ノ廃棄ニ努力セラレンコトヲ切望ニ堪ヘサルナリ
○議案第七号
     (大津・岡山・大阪・和歌山・四日市・名古屋・長崎・熊本・伏見・福井・高知・神戸・阿波・堺・京都・広島会議所提出)
一協定税率廃止期成同盟組織ノ件
    理由
  我国現行ノ協定税率ヲ廃止スルノ件ハ我国民ノ当サニ勉ムベキ緊急事項ナルニ依リ、爰ニ有志相謀テ期成同盟会ヲ組織シ、以テ一日モ速ニ此目的ヲ達センコトニ努力セントス
○議案第八号          (函館商業会議所提出 酒田・新潟・浜松商業会議所賛成)
一東京商船学校函館分校ノ存続及拡張ヲ逓信大臣ニ建議スルノ件
    (趣旨)
目下逓信省部内ニ行ハルヽ東京商船学校函館分校廃止ノ議ヲ遏メ、且ツ海運ヲ発達セシムル方法ノ一端トシテ、同分校ノ拡張ヲ計ランコトヲ逓信大臣ニ建議セント欲ス
    理由
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  我国現下ノ状勢ニ於テ海事教育ノ拡張ヲ計ラサル可カラサルハ論外ノ事ニ属ス、之ヲ欧米ノ先進諸国ニ徴スルニ、海員ノ養成ハ必ス国家自ラ経営ノ任ニ膺リ、船舶ノ出入稍ヤ繁多ナル海港ニハ悉ク商船学校ヲ置キ、徒ダ其ノ及ハサランコトヲ恐ルヽモノヽ如シ彼ノ民業ニ依ルヲ重ンジ敢テ海陸軍ノ学生ヲモ自費トシテ顧ミサル英国ニ於テモ、仍ホ海事教育ハ殆ント国庫ノ費用ヲ以テ之ヲ施行スルヲ見ル、以テ海事教育ノ如何ニ国家ニ重ヲ為スヤ識ル可キナリ、然ルニ此際ニ臨ミ我逓信省ハ之ヲ拡張セサルハ勿論、却ツテ已ニ在ル商船学校即チ日本北半部ニ於ケル唯一ノ海事教育機関タル東京商船学校函館分校ヲモ廃止セントス、其ノ失措タルヤ多言セスシテ炳カナリ、而シテ本件ハ単ニ函館一地方ノ利害ニ影響スルニ止ラス、其干繋汎ク全国一般ニ及フ可キモノナルカ故ニ、同分校ヲ廃止セサルハ勿論、却ツテ之カ拡張ヲ計ランコトヲ本会ニ於テ可決シ、其趣旨ヲ具シテ逓信大臣ニ建議スルノ甚タ切要ナルヲ信ス、是本案ヲ提出スル所以ナリ
○議案第九号
一壱円紙幣回収延期ヲ再ヒ政府ニ要請スルノ件
    説明
  右ハ先年横浜ニ開会ノ聯合会ニ水戸商業会議所ヨリ提出シ宿題トナリテ、後チ東京ニ開会ノ際決議ノ結果、出席員中中野武営君・土居通夫君・塙七平君外一名ヲ陳情委員トシテ当時政府ニ要求スル所アリ、後チ幾分回収延期ノ状アリシト雖トモ、目今ニ至リ一層減少ノ傾向ヲ呈シ、地方ノ如キ諸取引ニ甚タ不便ヲ感シ、就中水戸地方ハ大ニ不都合ヲ生シ居レリ、因テ曩ノ聯合会決議ニ基キ更ニ政府ニ要求スル所アラント欲ス
   明治三十四年一月廿四日
                  水戸商業会議所委員
                 提出者  小泉茂兵衛
                  山形商業会議所委員
                 賛成者  川合小四郎
                  大阪商業会議所委員
                 同    三谷軌秀
                  豊橋商業会議所委員
                 同    服部弥八
○議案第十号
一商業会議所聯合会規則中左ノ如ク訂正セントス
 第五条ニ左ノ但書ヲ追加ス
  但会議ノ決議ニ依リテハ定期会議ノ開期及其開設地ヲ変更スルコトヲ得
 第十一条中「四分ノ三以上」トアルヲ「過半数」ト改ム
    理由
  口頭ヲ以テ陳述スヘシ
右提出候也
  明治三十四年一月廿四日
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                  金沢商業会議所委員
                 提出者  水登勇太郎
                  東京商業会議所委員
                 賛成者  井上角五郎
                  仙台商業会議所委員
                 同    遠藤敬止
                  広島商業会議所委員
                 同    桐原恒三郎
                  松山商業会議所委員
                 同    仲田槌三郎
                  岐阜商業会議所委員
                 同    渡辺甚吉
○議案第十一号
一四国官設鉄道第一期線ヘ繰上ノ件
    理由
  本件ハ昨年五月聯合会ニ於テ可決シ、各建議並ニ請願書ヲ呈出セシモ未タ実施ヲ見ス、仍テ此際本聯合会出席員中ヨリ委員ヲ選挙シ、他ノ決議事項ト共ニ其実行ヲ当局大臣ニ開陳スル事
                   提出者
                     高知商業会議所
                     阿波商業会議所
                     松山商業会議所
                   賛成者
                     大阪商業会議所
                     岡崎商業会議所
                     和歌山商業会議所
                     堺商業会議所
○議案第十二号
一民法第三百七十四条ノ改正ヲ政府ニ建議シ、貴族・衆議両院ヘ請願ノ件
    理由
  民法第二編第十章第二節ニ於テ抵当権ノ効力ニ関シ左ノ規定アリ
   第三百七十四条 抵当権者カ利息其他ノ定期金ヲ請求スル権利ヲ有スルトキハ、其満期ト為リタル最後ノ二年分ニ付テノミ、其抵当権ヲ行フコトヲ得、但其以前ノ定期金ニ付テモ満期後特別ノ登記ヲ為シタルトキハ、其登記ノ時ヨリ之ヲ行フコトヲ妨ケス
  右規定ノ解釈ニ関シテ二説アリ、第一説ハ同条ニ利息其他ノ定期金トアリ、而シテ約定期限後ニ於ケル利息モ所謂法律上ニ於ケル遅延利息ト称スヘキモノニシテ、亦利息ノ一種類タルヲ失ハス、果シテ然ラハ該条ノ適用ハ遅延利息精算ノ日ヲ以テ満期日トシ、溯リテ二ケ年間ハ抵当権ノ範囲ニ属スルモノトシ優先ノ権利アルモノトセサルヘカラスト云ヒ、第二説ハ法文ニ利息其他ノ定期金トアリテ、其他ノ定期金ナル文詞ハ間接ニ利息カ定期金ノ中ニ包
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含スル場合ヲ意味セラレ、其但書ニ於テハ単ニ其以前ノ定期金トノミアリテ、利息ナル意味ノ表現ナキ上ハ同条ニ於ケル利息ハ定期金ノ性質ヲ有スルモノヽミヲ指シテ、抵当権ノ範囲ヲ定メタルモノトス、元来約定期限後ノ利息ハ之ヲ遅延利息ト称シテ利息ノ名称アリト雖モ、其実質ハ違約ニ基ク損害賠償ニ外ナラスシテ、予定セラレタル支払期限ノ存スルコトナキヲ以テ所謂満期ナルモノヽ存在スルコトナキノミナラス、期限後ノ利息ハ登記法ノ定ムル所ニ従ヒ第三者ニ対シ優先権ノ公示ナキニ依リ、約定期限後ノ利息ハ該法条ノ規定以外ニアリテ優先ノ権ナシト云フニ在リ
  以上二個ノ解釈ハ法曹間ニ於ケル争議ノ一問題ニ属スト雖トモ、明治三十三年五月二日大審院ハ配当表ニ対スル異議事件ノ上告ニ対シ、大阪地方裁判所並ニ同控訴院カ第一説ノ理由ニ基キ与ヘタル第一・二審ノ判決ヲ斥ケ、第二説ノ論旨ニ依リ約定期限後ノ利息ハ抵当権ノ範囲ニ属セサルコトヲ断シ、以後同院総部聯合会ニ於テモ其判決ヲ維持シタリ、左レハ民法第三百七十四条ノ解釈ハ今ヤ抵当ノ貸金ニ対シテハ其約定期限後即チ遅延利息ニ対シテハ優先ノ権利ヲ与ヘサルモノト認メサルヘカラサルカ故ニ、更ニ同条ノ規定ニ就キ其利害ヲ審按スルニ左ノ結果ヲ生スルヲ認ム
 第一 現行民法ノ規定ハ結約当事者ノ意思ニ反ス
  凡ソ物上ノ担保ヲ以テ信用ノ基礎トスル抵当貸借ニ在リテハ、対人的信用ノ結約者間ニ存在セサルヲ常トスルカ故ニ、其債権ハ専ラ抵当物件ノ上ニ存在セサルヘカラス、既ニ然ルカ故ニ結約者間結約当時ノ意思ニ在リテハ債権ヲ担保スル抵当物件ハ其債権ノ元本ハ勿論、之ニ起因スル約定利息及ヒ約定期限後ノ遅延利息ト雖トモ猶ホ依テ以テ其債権ノ弁済ヲ確実ナラシム、是対人的信用存セサルモノヽ間ト雖モ貸借関係ノ成立アリテ其取引ヲ安全ナラシムル所以ナリ、然ルニ今ヤ物上ノ担保ヲ信用ノ基礎トスルモノニ対シ期限後直チニ法律ハ対人的信用取引ヲ強ユルモノナリ、況ンヤ民法施行以前ニ於テハ該判決ノ認ムル如ク期限後ノ利息ニ付テモ抵当権ヲ得セシメタルヲ、今俄ニ此習慣法ヲ改ムルニ於テヲヤ
 第二 現行ノ民法規定ハ債務者ヲ虐待ス
  約定期限後ノ利息ニ対シ其抵当物件ノ上ニ優先ノ権利ナシトセンカ、物上ノ担保ヲ信用ノ基礎トスル債権者ハ何ヲ安ンシテ以テ期限後ニ於ケル自己ノ債権ヨリ生スル利益ノ安全ヲ保ツヲ得可キヤ約定期限到ル即チ仮借ナク直チニ厳重ナル督促ニ継クニ裁判上ノ救済ヲ求メサルヘカラス、是レ猶ホ以テ其利息ヲ安全ニ保護スルコトヲ得サルナリ、是ニ於テカ貸借成立ノ当時ニ於テ期限後数月若クハ数年ノ間ニ於テ終ニ以テ其元本及ヒ約定利息ノ弁済ヲ得ヘキ時期ヲ予想シ、之レカ損害ヲ計慮シテ、以テ其最初ノ貸付債権額ヨリ其損害ヲ控除セサルヘカラス、是レ高利ナル貸付ノ弊風ヲ助長シ、更ニ不幸ナル債務者ヲ駆テ再ヒ之ヲ究境ニ陥ラシムルモノナリ
 第三 現行ノ民法ハ経済上ノ利益ニ反ス
  物上ノ担保ヲ基礎トスル抵当債権ニ於テ期限後ノ利息ニ物上ノ優
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先権ナシトセハ、抵当権者ハ其資本運転ニ於テ其利益ヲ安全ニ保護スルヲ得サルカ故ニ、常ニ其貸出ヲ容易ニセサルヘシ、是レ経済上固定ノ資本ヲ流通セシムル途ヲ閉塞スルノ甚タシキモノニシテ、資本ノ供給運転ヲ阻害スルノ結果ヲ生ス
 上来ノ理由ニヨリ民法第三百七十四条ノ規定ハ今日民情ニ適合セサルカ故ニ、一定ノ制限ノ範囲ニ於テ約定期限後ノ利息ニ対シ優先権ヲ与フヘキコトニ改正ヲ請求スルハ経済上必要ノ急務ナルヲ認ムルニ依リ、此ニ本案ヲ提出ス
   明治三十四年一月廿四日
                  金沢商業会議所委員
                 提出者  水登勇太郎
                  神戸商業会議所委員
                 賛成者  坪野平太郎
                  高岡商業会議所委員
                 同    高広次平
                  水戸商業会議所委員
                 同    小泉茂兵衛
○議案第十三号
一富山・直江津間官設鉄道第一期線ヘ繰上ノ件
    理由
  本件ハ一昨年五月聯合会ニ於テ可決シ、各建議並ニ請願書ヲ呈出セシモ未タ実施ヲ見ス、仍テ此際本聯合会出席員中ヨリ委員ヲ選挙シ、他ノ決議事項ト共ニ其実行ヲ当局大臣ニ開陳スル事
                   提出者
                     金沢商業会議所
                     高知商業会議所
                     阿波商業会議所
                     松山商業会議所
                     酒田商業会議所
                   賛成者
                     大阪商業会議所
                     岡崎商業会議所
                     和歌山商業会議所
                     堺商議会議所
○議案第十四号
    醸造銀行設立ノ目的
一 本行ハ政府ト営業者ノ間ニ立テ業務ヲ執行スルノ責ニ当ル事
一 政府ニ対シテハ醸造税徴収請負者トシテ醸造家納税ノ担保ト為リ且営業上ノ便益ヲ計リ、納期ニ際シ税金ニ差支フル向ヘハ手形ノ割引ヲ以テ政府ニ代納スル事
一 此目的ヲ執行スルニハ取締方法ナカルヘカラス、故ニ全国醸造家ノ営業組合ヲ組織シ、連帯負担ノ責任ヲ以テ厳重ニ取締ヲ為サシメ、東京ニ本部ヲ置キ、各府県ニ支部ヲ置ク事
一 経費ハ総テ組合ニ於テ方法ヲ設ケ徴収ヲ為ス事
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一 右取締ノ為メ総テ営業願ハ銀行ヲ経由スルモノトシ、銀行総裁ハ万事ヲ審査シタル上当該官庁ノ許可ヲ申請スル事
一 醸造技師・庫人等ハ銀行ヨリ鑑札ヲ交付シ、別ニ取締ノ厳則ヲ設クル事
一 醸造石高届等ハ旧慣法ニヨリ十月三十一日迄ニ組合ニ届出、支部ニテ取纏本部ニ届ケ、本部ヨリ銀行ニ届クル事
一 検査法ハ別ニ厳則ヲ設クル事
一 銀行ハ徴税ヲ負担スルニ付、特典ヲ以テ税金怠納者ニ限リ財産ニ対スル優先権ヲ法律ヲ以テ有セシムル事
一 本法ヲ執行スルニ於テハ政府ハ徴税費ヲ省キ、営業者ハ検査上ニ在テ障碍ヲ除去スルヲ得ル事
一 資本金ハ参千万円トシ株式組織トス、凡株式ノ募集ハ発起人ニテ三分ノ一、醸造当業者ヨリ三分ノ一以上、残余ハ世間一般ニテ募集スル事
一 役員ハ総裁・副総裁・取締役・監査役・支配人トス
一 正副総裁及監査役ハ政府ヨリ任命シ、取締役及支配人ハ株主中ヨリ選挙スル事
一 資本金ノ使用方ハ三分ノ一ヲ公債証書及確実ナル有価証券トシ、政府ニ供托スル事
一 政府ハ特典ヲ以テ納税ノ場合税金額ノ三分ノ一以上九十日以内ノ手形ヲ以テ代納ヲ許サルヽ事
一 其他業務ニ在テハ普通銀行業務ヲ執行スル事
一 本行ハ醸造ノ機関タルヲ以テ醸造家ニ対シ多ク貸附ヲ為ス事
                  松山商業会議所委員
                 提出者  仲田槌三郎
                  和歌山商業会議所委員
                 賛成者  志賀法立正
                  阿波商業会議所委員
                 同    庄野謙一
                  広島商業会議所委員
                 同    桐原恒三郎
○議案第十五号
    商法中改正意見
一商法中第百四十五条ヲ左ノ如ク改正セント欲ス
第百四十五条 株式ノ金額ハ均一ナルコトヲ要ス
  株式ノ金額ハ五十円ヲ下ルコトヲ得ス、但一時ニ株金ノ全額ヲ払込ムヘキ場合ニ限リ之ヲ五円マテ下スコトヲ得
    理由
  国民ノ儲蓄心ヲ誘導発生セシメ、零砕ノ資ヲ集メテ大資本ト為シ国家ノ殖産工業ヲ発達セシメハ国利民福共ニ多大ナラントハ現下ノ輿論タリ
  然レトモ如何セハ其ノ方法全キヲ得ルヤハ未タ疑問ニ属ス、玆ニ商法第百四十五条ニ弐拾円トアルヲ五円ト前顕ノ如ク改正セハ零砕ノ資ヲ集メテ大資本ト為シ、国家ノ殖産工業ヲ発達スルノ一便
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法タル必然ナリト思考ス
 以上ノ主旨ヲ以テ政府ニ建議シ、貴衆両院ニ請願スル事
  明治三十四年一月二十七日
                  栃木商業会議所委員
                 提出者  桜井源四郎
                  水戸商業会議所委員
                 賛成者  小泉茂兵衛
                  前橋商業会議所委員
                 同    藤井新兵衛
                  金沢商業会議所委員
                 同    水登勇太郎

    ○調査委員報告
○清国ノ法律制度改廃ニ関シ要望ノ件 議案第一号ノ調査ヲ九名ノ委員ニ附託シ、松尾巳代治・大谷嘉兵衛・坪野平太郎・柴谷武次郎・志賀法立正・井島茂作・迫源次郎・反町慎哉・平林治兵衛君委員トナリ審議ノ末左ノ如ク報告ス
   清国ノ法律制度改廃ニ関スル件調査報告
本件ハ刻下ノ時局ニ於テ極メテ必要ト認ムルモ、重大ノ問題ニシテ匆卒ニ議了シ難キニ付、別記ノ通リ決議致候条此段及報告候也
  明治三十四年一月二十四日
        清国ノ法律制度改廃ニ関スル件調査委員長
                      松尾巳代治
    臨時商業会議所聯合会々長 大倉喜八郎殿
 (別記)
  第一、主トシテ本件調査ノ任ニ当ラシムルカ為メ継続調査委員トシテ十一商業会議所ヲ挙クル事
  第二、継続調査委員ハ本聯合会ノ開期中政府ニ向テ注意ヲ促カシ適当ノ施設ヲ怠ラサラシムヘキ事
  第三、各商業会議所ニシテ本件ニ関シ意見アルトキハ調査委員ニ通知スヘキ事
  第四、継続調査委員ハ可成来ル五月開設ノ第十回商業会議所聯合会迄ニ本件ノ調査ヲ了シ報告スヘキ事
 本件ハ更ニ五名ノ委員ニ再調査ヲ附託シ、早速整爾・高広次平・塙七平・小林八郎右衛門・川合小四郎ノ諸君委員トナリ、左ノ如ク報告ス
   清国ノ法律制度改廃ニ関スル件再調査報告
 本件ハ刻下ノ時局ニ於テ極メテ重大ノ問題ナリト思量スルモ、其調査ニ於テ欠クル所アルニ依リ之ヲ宿題トシ、長崎商業会議所ニ依託シテ大体ノ方案ヲ作ラシメ、次回ノ定期聯合会ニ提出セシムル事ニ決定仕候間、此段及報告候也
  明治三十四年一月二十六日
        清国ノ法律制度改廃ニ関スル件再調査委員
                      塙七平
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    臨時商業会議所聯合会々長 大倉喜八郎殿
○国家経済ノ方針ニ関スル件及取引所改良ニ関スル件 議案第二号及第四号ノ調査ヲ九名ノ委員ニ附託シ、三谷軌秀・奥田正香・服部弥八松村俊男・高松範重・中村栄助・志賀重昂・川合小四郎・小泉茂兵衛ノ諸君委員トナリ、審議ノ末左ノ如ク報告ス
    国家経済ノ方針ニ関スル件及取引所改良ニ関スル件調査報告
 本会ノ附託ニ係ル第二号議案国家経済ノ方針ニ関スル件及第四号議案取引所改良ニ関スル件ニ付、遂審議候処第二号議案ハ別紙ノ通リ修正可決シ、第四号議案ハ目下ノ時局ニ於テ必要ノ案件ナルモ事重大ニシテ匆卒議了シ難キヲ以テ宿題トシ、篤ト講究ノ上次回ノ聯合会ノ議ニ附スルコトニ決議致候条、此段及報告候也
  明治三十四年一月二十六日
           国家経済ノ方針ニ関スル件及取引所
           改良ニ関スル件調査委員長
                      奥田正香
    臨時商業会議所聯合会々長 大倉喜八郎殿
 (別紙)
   第二号議案国家経済ノ方針ニ関スル件修正案
 第一項中(二)ノ品類調査ハ政府ニ要望スルノ外各会議所ニ於テモ之ヲ調査スルヲ可トシ、別ニ左ノ決議案ヲ設ク
    決議案
 第二号議案第一項ノ方針ニ依リ、次回ノ全国商業会議所聯合会ノ開会ヲ期シ各商業会議所ハ互ニ助成シテ其保護奨励スヘキ品類ノ調査撰択ヲナシ、且ツ其保護奨励ノ方法ヲ講究シ、之ヲ同会ニ提出スルコト
 第二項中(イ)(ロ)ヲ削除シ、更ニ左ノ(イ)(ロ)ヲ設ク
  (イ) 郵便貯金中左ノ方法ニ依リ抽籤奨励金付定期定額預金ノ法ヲ設クルコト
  一 預金額ハ一口一円トシ、一万口ヲ以テ一組トス
  二 組合ハ預金証券ノ日附順ニ依リ、毎郵便為替貯金管理本支所管内ヲ通シ一万口ニ満ツル迄ノ者ト其番号トヲ以テ之ヲ編成ス
  三 預金期間ハ一ケ年・三ケ年及ヒ五ケ年ノ三種トス、但一ケ年定期預金ハ三ケ年ノ後之ヲ廃ス
  四 一ケ年定期預金ハ無利息トシ、其予定利息金ノ全額ヲ奨励金ニ充テ、又三ケ年定期預金ノ利息ハ、三ケ年通利一割トシ、其残余ノ予定利息金ヲ奨励金ニ充テ、又五ケ年定期預金ノ利息ハ、五ケ年通利二割トシ、其残余ノ予定利息金ヲ奨励金ニ充ツ
  五 奨励金ハ五十円・十円・五円ノ三等ニ分チ、一等ハ一個、二等ハ十個乃至二十個ヲ限度トシ、三等ハ其残額ヲ五ニテ除シ得タル数ヲ以テ其個数トス
  六 予定利率ハ凡ソ年五朱トス
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  七 預金証券ハ記名式トシ、一口一枚宛ヲ各預金取扱所ニ於テ交附ス
  (ロ) 各市町村ニ名誉職貯金奨励委員ヲ設クルコト
 第三項中「外務省中通商局ヲ廃シ更ニ」ノ十二字ヲ削除ス
 第四項中「猶ホ工業試験所ト地方行政官署商業会議所及ヒ重要物産同業組合トノ関係ヲシテ、宛モ農事試験場ト地方行政官署及ヒ府県郡町村農会トノ関係ニ於ケルカ如クナラシムルコト」ノ七十七字ヲ削除ス
○経済整理ニ関スル件 議案第三号ノ調査ヲ九名ノ委員ニ附託シ、井上角五郎・渡辺甚吉・山本亀太郎・仲田槌三郎・左右田金作・伊藤熊夫・遠藤敬止・水登勇太郎・桐原恒三郎ノ諸君委員トナリ、審議ノ末左ノ如ク報告ス
    ○経済整理ニ関スルノ件調査報告
兼テ附託セラレタル第三号議案経済整理ノ件、遂審議候処委員ノ意見ハ別紙ノ趣旨ヲ以テ各商業会議所ヨリ政府ヘ建議シ、且ツ貴族・衆議両院ヘ請願スヘシト決定シ、猶此際本聯合会出席員中ヨリ数名ノ委員ヲ選挙シ、本件決議ノ趣旨ヲ当局大臣ヘ陳情スル方可然ト決定致候間此段及報告候也
  明治三十四年一月二十四日
             経済整理ニ関スル件調査委員長
                      井上角五郎
    臨時商業会議所聯合会々長 大倉喜八郎殿
 (別紙)
 目下経済界ノ萎靡衰憊ノ極ニ沈淪セルコトハ蔽フヘカラサルノ事実ニシテ、殊ニ民間ノ資本ノ如キハ比年益々欠乏シテ、各部ノ経済脈絡全ク其営養ヲ失シ、若シ一日ヲ緩フセハ、或ハ将ニ不治ノ難症ニ陥ラントス、斯ノ如キ場合ニ際シテハ須ラク速ニ之カ救治ノ法ヲ講セサルヘカラス、其法他ナシ、外資ヲ輸入シテ左ノ二策ヲ断行スルニ在リ
  第一 内国公債ヲ償還スル事
  第二 私設鉄道ヲ買収スル事
 目下経済界ノ萎靡衰憊ヲ根治スルノ法ハ之ヲ外ニシテ他ニ良策ナキヲ信スルナリ、蓋シ此二策ヲ断行スルトキハ能ク民間ノ資本ヲ充実ニシテ大ニ経済脈絡ヲ興奮スルノ効アルヘク、私設鉄道買収ニ至リテハ更ニ運輸機関ノ発達ニ裨補スル所少シトセス、若シ夫レ外資輸入ニ対シテ担保ヲ提供スルカ如キハ未タ以テ国家ノ信用如何ヲ云為スルニ足ラス、要ハ只其輸入方法ノ便否如何ニ在ルノミ
 今此二策ヲ断行スルニ当リ更ニ一事ノ施設ヲ希望スルモノアリ、何ソヤ、即チ我幣制ヲ改良シテ硬貨主義ノ実行ヲ期スルコト是ナリ、思フニ現行貨幣制度ノ下ニ於テハ硬貨主義実際ニ行ハレスシテ、金融ノ一張一弛其常ナク、動モスレハ財界ノ秩序ヲ擾乱スルコトヲ免レス、若シ此際現行幣制ヲ改良スルコトナクシテ俄ニ多額ノ外資ヲ輸入スルトキハ、一時民間ノ資本ヲ充実ニシテ経済界ニ回春ノ効ヲ奏スルコトアルモ、幾許モナク其資本復タ欠乏シテ今日ノ萎靡衰憊
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ヲ再演スルノ恐ナシトセス、是亦深ク鑑戒ヲ要スル所ナリ、故ニ外資ヲ輸入シテ前ノ二策ヲ断行スルニ当リテハ、之ト同時ニ我幣制ヲ改良シテ硬貨主義ノ実行ヲ勉メ、要スルニ其根治ノ策ヲシテ完全ノ効果ヲ収メシメンコトヲ希望ス、然リ而シテ前ノ二策ト云ヒ、将タ幣制ノ改良ト云ヒ、共ニ之ヲ断行スルニ当リテハ予メ慎重ノ調査ヲ遂ケ、時ノ情況ニ応シテ緩急宜ヲ制セサルヘカサルコト勿論ナリト雖トモ、此等ハ挙テ之ヲ当局者ノ施措ニ一任セント欲ス
○試掘鉱区課税ニ関スル件 議案第五号ノ調査ヲ九名ノ委員ニ附託スルニ決シ、中村藤吉・中井尚珍・大村仙助・佐藤直中・庄野謙一・遠藤吉平・藤井新兵衛・清水禎三郎・西村万次郎ノ諸君委員トナリ、審議ノ末左ノ如ク報告ス
    試掘鉱区課税ニ関スル件調査報告
第五号議案本委員会ニ於テ審議ノ結果、鉱区占有ノ弊ハ他ニ矯正ノ方法ヲ求ムルコトヽシ、試掘鉱区ヨリ徴税スルハ本案理由書中ニ云ヘルカ如ク鉱業ノ発達ヲ阻害スルノ措置ナリト認メ、本案ヲ可決シ、尚ホ本会ニ於テ陳情委員ヲ選ミ当局者ニ此趣旨ヲ陳情スルヲ可トスルコトニ決議相成候間、此段及報告候也
  明治三十四年一月二十四日
           試掘鉱区課税ニ関スル件調査委員長
                      庄野謙一
    臨時商業会議所聯合会々長 大倉喜八郎殿
○協定税率廃止ニ関スル件 議案第六号及第七号ヲ便宜一括シテ其調査ヲ十二名ノ委員ニ附託シ、上遠野富之助・桐原恒三郎・今西林三郎林長次郎・迫源次郎・西村卯兵衛・坪野平太郎・小林八郎右衛門・大谷嘉兵衛・清水禎三郎・志賀重昂・井上角五郎ノ諸君委員トナリ、審議ノ末左ノ如ク報告ス
    協定税率廃止ニ関スル件及期成同盟会組織ノ件調査報告
第六号協定税率廃止ニ関スル建議・請願ノ件ハ之ヲ可決シ、第七号協定税率廃止期成同盟会組織ノ件ハ別紙ノ通リ同盟会規程相定メ且ツ附帯ノ決議致候、尚ホ第六号案ハ目下緊急ニ属スルモノナルヲ以テ、特ニ実行ヲ期スル為メ数名ノ委員ヲ選挙シ当局ヘ陳情致候様致度、右第六・七号議案調査ノ結果此段及報告候也
  明治三十四年一月二十六日
           協定税率廃止ニ関スル件及期成同盟
           会組織ノ件調査委員長
                      井上角五郎
    臨時商業会議所聯合会々長 大倉喜八郎殿
 (別紙)
    協定税率廃止期成同盟会規程
 第一条 本会ハ協定税率廃止期成同盟会ト称シ、現行協定税率廃止ノ遂行ヲ目的トス
 第二条 本会ハ其事務所ヲ東京商業会議所内ニ置ク
 第三条 各商業会議所ハ有志トシテ本会ニ同盟スルモノトス
     同盟各商業会議所ハ代表者三名以内ヲ届出ツルモノトス
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 第四条 同盟各商業会議所代表者中ヨリ評議員若干名ヲ撰定シ本会ニ関スル事務ヲ評定セシム
 第五条 評議員ノ互撰ヲ以テ幹事若干名ヲ撰定シ、専ラ常務ヲ掌ラシム
 第六条 同盟各商業会議所ハ会費トシテ一会議所一ケ年拾円以上ヲ出金スルモノトス
 第七条 評議員会ノ評定ニ係リ実業団体ノ特ニ同盟ニ加ハルヲ許スコトアルヘシ
      但シ此場合ニ於テハ同盟各商業会議所ト権限ニ於テ異ナルコトナシ
 (附帯決議)
    協定税率廃止期成同盟会規程ニ関スル決議
 本会ハ各商業会議所ノ同意ヲ求ムヘキモノナリト雖トモ、事件ノ目下緊急ニ属スルヲ以テ今回ノ臨時商業会議所聯合会出席委員ノ決議ニ依リ評議員ヲ選定シ、次期大会迄ハ一切ノ権限ヲ之ニ附スルモノトス
  但シ評議員ハ仮ニ五十名以内ヲ選挙スルモノトス
○東京商船学校函館分校ノ存続及拡張ノ件 議案第八号ノ調査ヲ五名ノ委員ニ附託シ、中村藤吉・佐藤直中・庄野謙一・遠藤吉平・山本亀太郎ノ諸君委員トナリ審議ノ末左ノ如ク報告ス
    東京商船学校函館分校ノ存続及拡張ノ件調査報告
第八号議案審議ノ末本案ヲ可決シ、且ツ他ノ決議ヲ逓信大臣ニ陳情スル際ニ臨ミ同陳情委員ヲシテ本件ヲモ併セ具述セシムルヲ可トスルコトニ決議致候間、此段及報告候也
  明治三十四年一月二十六日
           東京商船学校函館分校ノ存続及拡張
           ノ件調査委員長
                      遠藤吉平
    臨時商業会議所聯合会々長 大倉喜八郎殿
○四国官設鉄道第一期線ヘ繰上ノ件 議案第十一号ノ調査ヲ三名ノ委員ニ附託シ、早速整爾・佐藤直中・西村万次郎ノ諸君委員トナリ、審議ノ末左ノ如ク報告ス
    四国官設鉄道第一期線ヘ繰上ノ件調査報告
兼テ本会ヨリ附託セラレタル四国官設鉄道第一期線ヘ繰上ノ件ハ篤ト遂審査候処、本件ノ主旨ヲ採用シ、其実行ヲ当局大臣ニ開陳スルノ事ハ之ヲ他ノ委員ニ委託スル事ニ相決シ候間、此段及報告候也
  明治三十四年一月二十六日
            四国官設鉄道第一期線ヘ繰上ノ件
            調査委員長
                      西村万次郎
    臨時商業会議所聯合会々長 大倉喜八郎殿
○民法第三百七十四条改正ノ件 議案第十二号ノ調査ヲ九名ノ委員ニ附託シ、桜井源四郎・小泉茂兵衛・中井尚珍・志賀法立正・三谷軌秀林長次郎・坪野平太郎・水登勇太郎・藤井新兵衛ノ諸君委員トナリ審
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議ノ末左ノ如ク報告ス
    民法第三百七十四条改正ノ件調査報告
兼テ本会ヨリ附託セラレタル第十二号議案ハ其後篤ト遂審議候処、別記ノ如ク修正可決致候ニ付、此段及報告候也
  明治三十四年一月二十七日
         民法第三百七十四条改正ノ件調査委員長
                      三谷軌秀
    臨時商業会議所聯合会々長 大倉喜八郎殿
 (別記)
    遅延利息ニ抵当権ノ付与ニ関スル建議・請願ノ件
     理由
 民法第三百七十四条ノ規定ニ関スル解釈ニ二説アリ、第一説ハ同条ニ所謂利息ナル語ハ、元本返還期限後ニ於ケル利息ヲ包含スヘキコトハ民法中損害金ノ意味ニ利息ナル語ヲ用ヒタル箇所多キニ徴スルモ明カナリ、蓋シ遅延利息ナルモノハ金銭ニ関スル債務ノ不履行ヨリ生スル損害ノ賠償ナリト雖モ、亦利息ノ一種類タルヲ失ハス、且此ノ利息ハ日ニ生シ日ニ弁済期ノ到ルモノナレハナリ、故ニ遅延利息モ亦満期トナリタル最後ノ二年分ニ付テハ抵当権アリト、又第二説ハ法文ニ利息其他ノ定期金トアリテ、其他ノ定期金ナル文詞ハ間接ニ利息カ定期金中ニ包含スル場合ヲ意味セラレ、其但書ニ於テハ単ニ其以前ノ定期金トノミアリテ利息ナル意味ノ表示ナキハ、同条ニ於ケル利息ハ定期金ノ性質ヲ有スルモノノミヲ指シテ抵当権ノ範囲ヲ定メタルモノトス、元来期限後ノ利息ハ之ヲ遅延利息ト称シテ利息ノ名称アリト雖モ、其実質ハ違約ニ基ク損害賠償ニ外ナラスシテ、予定セラレタル支払期限ノ存スル事ナキヲ以テ所謂満期ナルモノヽ存在スル事ナキノミナラス、期限後ノ利息ハ登記法ノ定ムル所ニ従ヒ第三者ニ対シ優先権ノ公示ナキニ依リ、約定期限後ノ利息ハ該法条ノ規定以外ニ在リテ優先ノ権ナシト云フニ在リ、是レ法曹間ニ於ケル学理講究問題トシテ甲乙其議ヲ戦ハシ、或ハ法文ノ不備ヲ論シ、或ハ用語ノ適否ヲ批難スルカ如キハ、固ヨリ学者ノ正ニ勉ムヘキトコロナリト雖モ、今ヤ事実問題トナリ、明治三十三年五月二日大審院ハ配当表異議事件ノ上告ニ対シ、大阪控訴院カ第一説ノ理由ニ基キ与ヘタル第二審ノ判決ヲ斥ケ、第二説ノ論旨ニ依リ期限後ノ利息ハ抵当権ナシト断シ、下級裁判所皆之レニ傚ハントスルノ傾向ヲ現ハシ、国民権義ノ消長ヲ決セントス、豈ニ看過スヘキモノナランヤ、抑モ学理問題トシテハ甲乙何レカ是ナルカ今玆ニ之ヲ論断スルコトヲ得スト雖モ、第二説即チ大審院ノ採ル所ニ依レハ
第一 我カ習慣法ニ反ス
 民法施行以前ニ在リテハ、凡ソ物上ノ担保ヲ以テ信用ノ基礎トスル抵当貸借ニ在リテハ、対人的信用ノ結約者間ニ存在セサルヲ常トスルカ故ニ、其債権ハ専ラ抵当物件ノ上ニ存在セサル可ラス、既ニ然ルカ故ニ債権ヲ担保スル抵当物件ハ、其債権ノ元本ハ勿論之レニ対スル利息及ヒ遅延利息ト雖モ其債権ヲ担保セシメ、其抵当権ノ存在ヲ認メタリ、之レ即チ対人的信用存セサルモノヽ間ト雖モ、貸借関
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係ヲ成立セシメ、其取引ヲ安全ナラシムルノ必要アレハナリ、然ルニ今俄ニ此ノ習慣法ヲ改メ物上ノ担保ヲ信用ノ基礎トスルモノニ対シ期限後直チニ対人的信用取引ヲ強ユルノ必要アルカ
第二 債務者ヲ虐待スルノ結果ヲ生ス
 約定期限後ノ利息ニ対シ其抵当物件ノ上ニ優先ノ権利ナシトセンカ物上ノ担保ヲ信用ノ基礎トスル債権者ハ何ヲ安ンシテ以テ期限後ニ於ケル自己ノ債権ヨリ生スル利益ノ安全ヲ保ツヲ得可キヤ、約定期限到ル即チ仮借ナク直チニ厳重ナル督促ニ継クニ裁判上ノ救済ヲ求メサルヘカラス、之ヲ求ムルモ其手続中ニ属スル利益ハ尚ホ之ヲ安全ニ保護スルコトヲ得サルナリ、是ニ於テカ貸借成立ノ当時ニ於テ期限後、其元本及ヒ利息ノ弁済ヲ得ヘキ時期ヲ予想シ、其間ニ属スル利息ヲ計慮シテ以テ其最初ノ貸附債権額ヨリ之ヲ控除スルカ如キ所謂高利貸ノ弊風ヲ助長シ、更ニ不幸ナル債務者ヲ駆テ再ヒ之ヲ究境ニ陥ラシムルニ至ラン
第三 経済上ノ利益ニ反ス
 物上ノ担保ヲ基礎トスル抵当債権ニ於テ、期限後ノ利息ニ物上ノ優先権ナシトセハ、抵当権者ハ其資本運転ニ於テ其利益ヲ安全ニ保護スルヲ得サルカ故ニ、其貸出ヲ容易ニセサルヘシ、是レ経済上固定ノ資本ヲ流通セシムル途ヲ閉塞スルノ甚タシキモノニテ、資本ノ供給運転ヲ阻害スルノ結果ヲ生ス
 民法ノ精神夫レ何レニ在ルカ、民法ハ私権ノ関係ヲ規定シ其権利ヲ保護シ、国利民福ヲ増進セシムルヲ以テ其目的ナリトセハ、第一説ヲ採ラサルヘカラス、果シテ然リトセハ国情ニ悖リ私権ヲ害スヘキ大審院ノ裁判例ハ宜シク速ニ之ヲ改ムルノ策ヲ講セサルヘカラス、若シ不幸ニシテ第二説ヲ是ナリトセハ、民法第三百七十四条ノ規定ハ、須ラク之ヲ改メサル可ラス
以上開陳スル理由ナルヲ以テ、速ニ遅延利息ニ優先権ヲ与ヘ、抵当権ヲ保護シ、以テ我カ習慣及ヒ国情ニ適合セシメラレンコトヲ

    ○議事ノ経過及決議
○議案第一号                  (長崎提出)
一清国ノ法律制度改廃ニ関シ要望ノ件
  本件ノ要旨ハ、日清両国ニ於ケル貿易ノ進歩発達ヲ期セントスルニハ、清国ニ於ケル制度・法律ノ改廃新定ヲ要スルモノ鮮少ナラサルヘキニ付、委員ヲ挙ケテ之ヲ調査セシメ、以テ其筋ニ要望スヘシト云フニ在リ、乃チ之ヲ会議ニ附シタルニ委員九名ヲ選挙シテ之ニ調査ヲ附託スルニ決シ、其後委員ハ前記ノ如ク報告シタルニ原案・報告トモ少数ニテ消滅シタルモ、更ニ五名ノ委員ヲ選挙シテ之ニ再調査ヲ附託スルニ決シ、其後委員ハ審議ノ末、本件ハ刻下ノ時局ニ於テ極メテ重大ノ問題ナリト思量スルモ、其調査ニ於テ欠クル所アルニ依リ、之ヲ宿題トシテ長崎商業会議所ニ依頼シテ大体ノ方案ヲ作ラシメ、次回ノ定期聯合会ニ之ヲ提出セシムルコトニ決シタル旨ヲ報告シタルニ、衆議ノ上之ヲ宿題ト為スニ決ス
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○議案第二号                  (大阪提出)
一国家経済ノ方針ニ関スル件
  本件ノ要旨ハ、曩ニ第九回商業会議所聯合会ニ於テ決議シタルモノヲ修正増補シ、再ヒ政府当局者ニ建議スヘシト云フニ在リ、乃チ之ヲ会議ニ附シタルニ、九名ノ委員ヲ選挙シテ之ニ其調査ヲ附託スルニ決シ、其後委員ハ審議ノ末前記ノ如ク之ヲ修正可決セル旨ヲ報告シタルニ、衆議ノ上之ヲ可決ス
○第三号議案                  (東京提出)
一経済整理ノ件
  本件ノ要旨ハ、民間ノ資本ヲ充実スルノ手段トシテ内国公債ヲ償還シ、私設鉄道ヲ買収シ、且ツ之ト同時ニ幣制ニ改良ヲ加ヘテ硬貨主義ノ実行ヲ勉メ、以テ経済ノ整理ヲ図ルヘキ旨ヲ政府ニ建議シ議会ニ請願スヘシト云フニ在リ、乃チ之ヲ会議ニ附シタルニ九名ノ委員ヲ選挙シテ之ニ其調査ヲ附託スルニ決シ、其後委員ハ審議ノ末前記ノ如ク之ヲ修正可決セル旨ヲ報告シタルニ、衆議ノ上之ヲ可決ス
○議案第四号           (大阪委員三谷軌秀君提出)
一取引所改良ニ関スル件
  本件ノ要旨ハ、取引所ノ定期取引ニ相殺ノ方法ヲ以テ転売買戻ヲ許スハ商工業ノ発達ヲ阻害スルモノナルヲ以テ、速ニ取引所法第十三条第四号ヲ改正スヘキ旨ヲ政府当局者ニ要望スヘシト云フニ在リ、乃チ之ヲ会議ニ附シタルニ、第二号議案ト同一ノ委員ニ其調査ヲ附託スルニ決シ、其後委員ハ審議ノ末、本件ハ目下ノ時局ニ於テ必要ノ案件ナルモ事重大ニシテ匆卒議了シ難キニ付、之ヲ宿題トナシ篤ト講究ノ上、次回ノ聯合会ノ議ニ附スルコトニ決シタル旨ヲ報告シタルニ、衆議ノ上之ヲ宿題ト為スニ決ス
○議案第五号                  (新潟提出)
一試掘鉱区課税ニ関スル件
  本件ノ要旨ハ、試掘鉱区ニ課税スルハ鉱業ノ発達ヲ阻害スルノ虞アルヲ以テ、之ニ課税スルカ如キコトナカルヘキ旨ヲ政府ニ建議スヘシト云フニ在リ、乃チ之ヲ会議ニ附シタルニ、九名ノ委員ヲ選挙シテ之ニ調査ヲ附託スルニ決シ、其後委員ハ審議ノ末前記ノ如ク本件ヲ可決セル旨ヲ報告シタルニ、衆議ノ上之ヲ可決ス
○議案第六号            (京都外十五会議所提出)
一協定税率廃止ニ関スル件
  本件ノ要旨ハ、協定税率ノ今日ニ存在スルハ国家ノ一大病源ニシテ商工業ノ発達ヲ阻害スルモノナルヲ以テ、一日モ速ニ之ヲ廃棄スルニ勉メラレ度旨ヲ政府ニ建議シ、議会ニ請願スヘシト云フニ在リ、乃チ之ヲ会議ニ附シタルニ、十二名ノ委員ヲ選挙シテ之ニ調査ヲ附託スルニ決シ、其後委員ハ審議ノ末前記ノ如ク之ヲ可決セル旨ヲ報告シタルニ、衆議ノ上之ヲ可決ス
○議案第七号            (京都外十五会議所提出)
一協定税率廃止期成同盟会組織ノ件
  本件ノ要旨ハ、協定税率ノ廃止ハ我国民ノ当サニ勉ムヘキ緊急事
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項ナルニ依リ、有志相謀テ期成同盟会ヲ組織スヘシト云フニ在リ乃チ之ヲ会議ニ附シタルニ第六号議案ト同一ノ委員ニ其調査ヲ附託スルニ決シ、其後委員ハ審議ノ末前期ノ如ク報告シタルニ、衆議ノ上同盟会規程中第七条ヲ削除シテ之ヲ修正可決ス
○議案第八号                  (函館提出)
一東京商船学校函館分校ノ存続及拡張ニ関スル件
  本件ノ要旨ハ、目下逓信省内ニ行ハルヽ東京商船学校函館分校廃止ノ議ヲ遏メ、且ツ海運ヲ発達セシムル方法ノ一端トシテ同分校ノ拡張ヲ計ランコトヲ逓信大臣ニ建議スヘシト云フニ在リ、乃チ之ヲ会議ニ附シタルニ、五名ノ委員ヲ選挙シテ之ニ調査ヲ附託スルニ決シ、其後委員ハ審議ノ末前記ノ如ク本件ヲ可決セル旨ヲ報告シタルニ、衆議ノ上之ヲ可決ス
○議案第九号          (水戸委員小泉茂兵衛君提出)
一一円紙幣回収延期ヲ再ヒ政府ニ要請スルノ件
  本件ハ第八回商業会議所聯合会ニ於テ可決シタルモノニシテ、各地商業会議所中ヨリ既ニ其筋ヘ建議書ヲ提出セシモ、未タ採納セラルヽニ至ラサルヲ以テ、此際再ヒ之カ回収延期ヲ政府ニ要請スヘシト云フニ在リ、乃チ之ヲ会議ニ附シタルニ、衆議ノ上之ヲ可決ス
○議案第十号          (金沢委員水登勇太郎君提出)
一商業会議所聯合会規則中改正ノ件
  本件ノ要旨ハ、商業会議所聯合会規則第五条ニ「但シ会議ノ決議ニ依リテハ定期会議ノ開期及其開設地ヲ変更スルコトヲ得」ノ但書ヲ加ヘ、且ツ第十一条中「四分三以上」トアルヲ「過半数」ト改ムヘシト云フニ在リ、乃チ之ヲ会議ニ附シタルニ、衆議ノ上之ヲ可決ス
○議案第十一号            (高知外二会議所提出)
一四国官設鉄道第一期線ヘ繰上ノ件
  本件ハ第九回商業会議所聯合会ニ於テ可決シタルモノニシテ、各地商業会議所中ヨリ既ニ其筋ヘ建議セシモ未タ採納セラルヽニ至ラサルヲ以テ、此際再ヒ之カ実行ヲ当局者ニ要請スヘシト云フニ在リ、乃チ之ヲ会議ニ附シタルニ、調査委員選挙説並ニ原案トモ少数ニテ消滅シタルモ、更ニ三名ノ委員ヲ選挙シテ之ニ其調査ヲ附託スルニ決シ、其後委員ハ審議ノ末前記ノ如ク之ヲ可決セル旨ヲ報告シタルニ、衆議ノ上之ヲ可決ス
○議案第十二号         (金沢委員水登勇太郎君提出)
一民法第三百七十四条改正ノ件
  本件ノ要旨ハ、民法第三百七十四条ノ規定ハ今日ノ民情ニ適合セサルカ故ニ、一定ノ制限内ニ於テ約定期限後ノ利息ニ対シ優先権ヲ与フルコトニ改正セラレンコトヲ政府ニ建議シ、議会ニ請願スヘシト云フニ在リ、乃チ之ヲ会議ニ附シタルニ、九名ノ委員ヲ選挙シテ之ニ其調査ヲ附託スルニ決シ、其後委員ハ審議ノ末前記ノ如ク之ヲ修正可決セル旨ヲ報告シタルニ、衆議ノ上之ヲ可決ス
○議案第十三号            (金沢外四会議所提出)
 - 第22巻 p.731 -ページ画像 
一富山・直江津間官設鉄道第一期線ヘ繰上ノ件
  本件ハ第八回商業会議所聯合会ニ於テ可決シタルモノニシテ、各地商業会議所中ヨリ既ニ其筋ヘ建議セシモ未タ採納セラルヽニ至ラサルヲ以テ、此際再ヒ之カ実行ヲ当局者ニ要請スヘシト云フニ在リ、乃チ之ヲ会議ニ附シタルニ衆議ノ上之ヲ可決ス
○議案第十四号         (松山委員仲田槌三郎君提出)
一醸造銀行設立ニ関スル件
  本件ノ要旨ハ、政府並ニ醸造業者ノ便益ヲ謀ルカ為メ法律ヲ以テ醸造銀行ヲ設立セラレンコトヲ望ムト云フニ在リ、乃チ之ヲ会議ニ附シタルニ、衆議ノ上之ヲ宿題ト為スニ決ス
○議案第十五号         (栃木委員桜井源四郎君提出)
一商法第百四十五条改正ノ件
  本件ノ要旨ハ、国民ノ貯蓄心ヲ養成シ、零砕ノ資ヲ集メテ大資本ト為シ、国家ノ殖産興業ヲ発達セシムル為メ商法第百四十五条ニ改正ヲ加ヘ、一時ニ株金ノ全額ヲ払込ムヘキ場合ニ限リ之ヲ五円迄下スコトヲ許スヘシト云フニ在リ、乃チ之ヲ会議ニ附シタルニ衆議ノ上之ヲ宿題ト為スニ決ス
○中略

    ○懇親会 附定期聯合会ノ開期及開設地ノ変更
一月二十七日午後三時、東京市芝区芝公園紅葉館ニ於テ各商業会議所参会員ノ懇親会ヲ開キ、席上新潟商業会議所委員清水禎三郎君ヨリ、来五月東京ニ於テ開会スヘキ第十回聯合会ヲ八月ニ延期シテ新潟ニ於テ開会シタキ旨発議セルニ、満場異議ナク之ニ決シ、且ツ該決議ハ聯合会ニ於ケル本会議ノ決議ト同一ニ見做スコトニ決シ、午後七時散会セリ

    ○実行委員ノ建言陳情
明治三十四年一月二十七日、本聯合会ノ決議事項ヲ政府ニ建言シ、且ツ之ヲ陳情スル為メ、実行委員トシテ五会議所ヲ指定シ、其出席員ヲシテ之ニ当ラシムル事ニ決シ、即チ京都・大阪・横浜・神戸・東京ノ五会議所委員ニ推薦セラレタルヲ以テ、其出席員諸氏ハ、経済整理ニ関スル件、国家経済ノ方針ニ関スル件、協定税率廃止ニ関スル件、試掘鉱区課税ニ関スル件、四国官設鉄道及富山・直江津間官設鉄道第一期線ヘ繰上ノ件、東京商船学校函館分校ノ存続及拡張ニ関スル件、壱円紙幣回収延期ニ関スル件ニ付、内閣総理大臣ヲ始メ各関係大臣ニ建言書ヲ進達シ、貴族・衆議両院ヘ請願書(経済整理ニ関スル件、国家経済ノ方針ニ関スル件、協定税率廃止ニ関スル三件ノミニ就テ)ヲ提出シ、且ツ各大臣ヲ歴訪シテ其趣旨ヲ陳情セリ、建言書ノ全文ハ附録トシテ左ニ之ヲ掲載ス(請願書ノ本文ハ建言書ト同一ニ付、別ニ掲載セス)
附録
    経済整理ニ関スル建言
目下経済界ノ萎靡衰憊ノ極ニ沈淪セルコトハ蔽フヘカラサルノ事実ニ
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シテ、殊ニ民間ノ資本ノ如キハ比年益々欠乏シテ、各部ノ経済脈絡全ク其営養ヲ失シ、若シ一日ヲ緩フセハ或ハ将ニ不治ノ難症ニ陥ラントス、斯ノ如キ場合ニ際シテハ須ラク速ニ之カ救治ノ法ヲ講セサルヘカラス、其法他ナシ外資ヲ輸入シテ左ノ二策ヲ断行スルニ在リ
  第一 内国公債ヲ償還スル事
  第二 私設鉄道ヲ買収スル事
目下経済界ノ萎靡衰憊ヲ根治スルノ法ハ之ヲ外ニシテ他ニ良策ナキヲ信スルナリ、蓋シ此二策ヲ断行スルトキハ能ク民間ノ資本ヲ充実ニシテ、大ニ経済脈絡ヲ興奮スルノ効アルヘク、私設鉄道買収ニ至リテハ更ニ運輸機関ノ発達ニ裨補スル所少ナシトセス、若シ夫レ外資輸入ニ対シテ担保ヲ提供スルカ如キハ未タ以テ国家ノ信用如何ヲ云為スルニ足ラス、要ハ只其輸入方法ノ便否如何ニ在ルノミ
今此二策ヲ断行スルニ当リ更ニ一事ノ施設ヲ希望スルモノアリ、何ソヤ即チ我カ幣制ヲ改良シテ硬貨主義ノ実行ヲ期スルコト是ナリ、思フニ現行貨幣制度ノ下ニ於テハ硬貨主義実際ニ行ハレスシテ、金融ノ一張一弛其常ナク、動モスレハ財界ノ秩序ヲ擾乱スルコトヲ免カレス、若シ此際現行幣制ヲ改良スルコトナクシテ徒ニ多額ノ外資ヲ輸入スルトキハ、一時民間ノ資本ヲ充実ニシテ経済界ニ回春ノ効ヲ奏スルコトアルモ、幾許モナク其資本復タ欠亡シテ今日ノ萎靡衰憊ヲ再演スルノ恐ナシトセス、是亦深ク鑑戒ヲ要スル所ナリ、故ニ外資ヲ輸入シテ前ノ二策ヲ断行スルニ当リテハ、之ト同時ニ我幣制ヲ改良シテ硬貨主義ノ実行ヲ勉メ、要スルニ其根治ノ策ヲシテ完全ノ効果ヲ収メシメンコトヲ希望ス、然リ而シテ前ノ二策ト云ヒ、将タ幣制ノ改良ト云ヒ、共ニ之ヲ実行スルニ当リテハ予メ慎重ノ調査ヲ遂ケ、時ノ情況ニ応シテ緩急宜ヲ制セサルヘカラサルコト勿論ナリト雖トモ、此等ハ挙テ之ヲ当局者ノ施措ニ一任セント欲ス
右ハ臨時商業会議所聯合会ノ決議スル所ニシテ、其委託ニ依リ謹テ建言ス
  明治三十四年一月二十九日
                  東京商業会議所委員
                      大倉喜八郎
                      井上角五郎
                  京都商業会議所委員
                      中村栄助
                      林長次郎
                  大阪商業会議所委員
                      今西林三郎
                      三谷軌秀
                  横浜商業会議所委員
                      大谷嘉兵衛
                      左右田金作
                  神戸商業会議所委員
                      山本亀太郎
                      坪野平太郎
 - 第22巻 p.733 -ページ画像 
    内閣総理大臣
    大蔵大臣
           宛(各通)
    農商務大臣
    逓信大臣

    国家経済ノ方針ニ関スル建言
凡ソ国家ノ健全ナル発達ヲ期図スルヤ、必ス先ツ国家経済ノ方針ヲ確立シ施シテ悖ラス行ヒテ愆ラサルノ成案ナカルヘカラス、若シ其ノ成案ナカランカ政府ノ期スル所国民之ヲ成ス能ハス、国民ノ為ス所政府之ヲ助クル能ハス、両者自ラ相和スルヲ得スシテ遂ニ官民共ニ労憊事ヲ敗ルニ至ル、豈ニ深ク考ヘ遠ク慮ラサルヘケンヤ
熟々我カ国家経営ノ実蹟ヲ案スルニ、政府ハ屡々商工立国ノ国是ナルヲ唱道スルモ、専ラ政府事業ノ完成殊ニ軍備ノ拡張ヲ図ルニ急ナルカタメ、民間事業ノ進歩発達殊ニ外国貿易事業ノ助成ニ厚カラスシテ、政費ノ分配其ノ宜シキヲ得ス、保護ノ方法其ノ当ヲ失シ、未タ経済ノ方針確立セス、未タ商工立国ノ実挙ラス、是ニ於テカ我カ商業会議所聯合会ハ曩ニ国家経済ノ方針ヲ議定シ、夫々建議・請願スルトコロアリト雖トモ、尚ホ尽サヽルモノアルノミナラス、其ノ議ノ容レラレテ本年度ノ予算ニ上リシモノアルヲ聞カス、故ニ今玆ニ前議ヲ再説シ且新ニ意見ヲ加ヘ敢テ其ノ採納ヲ仰カント欲ス
政府事業ノ完成殊ニ軍備ノ拡張固ヨリ忽ニスヘカラス、然レトモ彼ノ小市街ニ於ケル電話架設ノ如キ、其ノ他急施ヲ要セサルモノ又ハ其ノ完成期ヲ一時延長シ或ハ其ノ施設ヲ前後シ得ヘキモノナシトセス、且政府通常ノ経費モ亦之ヲ節減シ得ルノ余地ナキニアラス、故ニ此等ノ歳出金額ハ宜シク速ニ民業ノ保護奨励ニ之ヲ転用シ、一ハ以テ民間事業ノ進歩発達ヲ図リ国費ノ負担ニ耐ヘ得ルヲ期シ、一ハ以テ官民事業ノ均衡ヲ計リ、国費ノ分配其ノ宜シキヲ得セシメサルヘカラス、之ヲ要スルニ、国民経済ノ充実ヲ図ラスシテ独リ政府事業ノ完成ヲ望ミ富国ノ策ヲ講セスシテ強兵ヲ望ムハ、猶ホ根柢ヲ枯燥シテ樹木ノ繁茂ヲ希ヒ、動力ヲ供給セスシテ機関ノ運転ヲ欲スルカ如キノミ、豈ニ猛省セサルヘケンヤ
抑々本邦今日ノ如キ国家ノ生存上短少ノ期間ニ長大ナル進歩発達ヲ期待スルノ必要アル邦国、殊ニ彼我ノ経済事情ニ非常ノ懸隔アルノミナラス、貨幣制度ノ変革ニ因リ銀貨ノ利便ヲ失シ外国貿易上輸入ハ常ニ輸出ニ超過スルノ実勢アル邦国ニ在リテハ、単ニ国民ノ自営力ニ倚頼シテ自然ノ発達ニ一任スヘカラス、政府タル者宜シク国情ヲ詳ニシ国勢ノ趨ク所ヲ察シ国家経済ノ方針ヲ確定シ適当ナル施設ヲ為シ、以テ民業ヲ発達セシメ速ニ商工立国ノ実ヲ挙ケサルヘカラサルナリ、商工保護政策ヲ断行スルノ必要アル夫レ斯ノ如シ、然リト雖モ或ル事業ノ保護ニ於ケルカ如ク若シ其ノ方法宜シキヲ得サルトキハ種々ノ弊害ヲ醸生シ反テ他ノ事業ヲ阻害スルニ至ラン、故ニ特種ノ場合ヲ除クノ外専ラ間接ノ方法ヲ撰択シ、且ツ我カ外国貿易ハ欧米ニ不利ニシテ東亜ニ便ナルノ事情アルヲ以テ、欧米ニ対シテハ輸入ヲ防遏シ、清・韓・印度及南洋諸島ニ対シテハ輸出ヲ拡張スルノ方針ニ依リ、或ル工産品
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ヲ保護奨励セサルヘカラス、而シテ今試ニ我経済事情ヲ観察スルニ
 一 資本充実ナラスシテ金利高貴ナルコト
 二 事業ノ経営適良ナラスシテ商工業ノ秩序整頓セサルコト
 三 貿易機関不備ニシテ販路ノ拡張困難ナルコト
 四 運輸機関完備セスシテ貨物ノ集散利便ナラサルコト
等幾多ノ不利事情ノ存スルモノアリ、而シテ古来曾テ金利高貴ニシテ商工業ノ旺盛ヲ致セシ邦国ナキカ如ク、此等不利事情ノ存スル間ハ我カ欧米諸国トノ貿易ハ逐年倍々輸入超過ノ度ヲ強メ、正貨ノ流出ヲ促シ、遂ニ国力ヲ衰耗スルニ至ルヤ必セリ
故ニ官民協心戮力以テ之ヲ補充スルニ努メサルヘカラス、然リ而シテ今左ニ其ノ施設経営ノ急ナルモノヲ列挙スレハ
 第一 興業銀行ノ設立ヲ迅速ニシ、工業資金ヲ疏通スルコト
 第二 神戸ニ東亜貿易ノ機関銀行ヲ設立シ、横浜正金銀行ト相応シ共ニ通商貿易ノ利便ニ供スルコト
 第三 金融機関ヲ改善シ其ノ行動ヲ適良ナラシメ、以テ商工業ノ安固ヲ図ルコト
 第四 金庫ノ制ヲ改正シテ国庫金ノ運用ヲ敏活ニシ、其ノ出納ヲ簡明ニスルコト
 第五 納税手続ヲ改正シテ租税ノ上納ニ小切手ヲ使用スルコトヲ得セシメ、商業手形ノ発達ヲ奨励スルコト
 第六 左ノ方法ニ依リ一層勤倹貯蓄ヲ奨励スルト同時ニ、民間零砕ノ資ヲ吸収スルコト
 (イ) 郵便貯金中抽籤奨励金附定期定額預金ノ法ヲ設クルコト
   一 抽籤奨励金附定期定額預金ハ一口壱円トシ、一万口ヲ以テ一組トス
   二 組合ハ預金証券ノ日附順ニ依リ、毎郵便為替貯金管理本支所管内ヲ通シ一万口ニ満ツル迄ノ者ト其ノ番号トヲ以テ之ヲ編成ス
   三 預金期間ハ一ケ年・三ケ年及ヒ五ケ年ノ三種トス、但シ一ケ年定期預金ハ三ケ年ノ後之ヲ廃ス
   四 一ケ年定期預金ハ無利息トシ、其ノ予定利息金ノ全額ヲ奨励金ニ充テ、又三ケ年定期預金ノ利息ハ三ケ年通利一割トシ、其ノ残余ノ予定利息金ヲ奨励金ニ充テ、又五ケ年定期預金ノ利息ハ五ケ年通利二割トシ、其ノ残余ノ予定利息金ヲ奨励金ニ充ツ
   五 奨励金ハ五拾円・拾円・五円ノ三等ニ分チ、一等ハ一個、二等ハ十個乃至二十個ヲ限度トシ、三等ハ其ノ残額ヲ五ニテ除シ得タル数ヲ以テ其ノ個数トス
   六 予定利率ハ凡ソ年五朱トス
   七 預金証券ハ記名式壱円券トシ、各預金取引所ニ於テ之ヲ交付ス
 (ロ) 各市町村ニ名誉職貯金奨励委員ヲ設クルコト
 (ハ) 普通教育中一層勤倹貯蓄ノ気風ノ養成ニ力メシムルコト
 第七 土地所有権・鉱山採掘権ヲ外人ニ許可シ、及ヒ外人ヲシテ我
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カ公債・株式其ノ他有価証券ヲ取得セシムルノ便ヲ与ヘ、以テ自然事業的外資輸入ノ途ヲ開クコト
 第八 実業学校ヲ増設シ商工業者ノ智識ヲ啓発スルコト
 第九 商工業練習ノタメ有為ノ青年ヲ海外ニ派遣シ、及ヒ自ラ視察又ハ見習ノタメ渡航スル者ヲ保護奨励シ其取締ヲ完全ニシ、商工業者ヲシテ海外ノ事情ニ通暁シ商工業ニ練達セシメ、漸次我カ国民ヲシテ外国貿易ノ任ニ当ラシムルコト
 第十 輸入品中内地ニ於テ生産シ得ヘキモノヽ工業ヲ発達セシメ、以テ輸入ヲ防遏スルコト
 第十一 輸出ニ利アル工業ヲ保護シ、輸出ノ増大ヲ図ルコト
 第十二 前二項ノ方針ニ依リ精細ナル調査ヲ遂ケ、其ノ保護奨励スヘキ品類ヲ撰択スルコト
 第十三 工業試験所ハ其ノ本支所ノ外全国ヲ数区ニ分チ、各区枢要ノ地ニ支所ヲ置キ、本支所ニ或ル工産品模範工場ヲ設ケ広ク工業者ノ技術練習ノ資ニ供シ、且高等技師数十名ヲシテ絶ヘス其ノ管内各工場ヲ巡視セシメ其ノ施設経営ノ適否ヲ調査シ、其ノ秩序的発達ヲ奨励シ以テ当業者ヲシテ技術上経済上及ヒ整理上其ノ行動ヲ適良ナラシムルコト
 第十四 農商務大臣ノ監督ノ下ニ外国貿易事務局ヲ置キ、各開港場ニ其ノ支局ヲ設ケ海外領事其ノ他ノ官公署又ハ公私ノ団体及ヒ個人ト直接通信ノ道ヲ開キ、輸出入貿易ノ真相ヲ観察調査シ、秩序的発達ヲ奨励シ、以テ当業者ノ行動ヲ適良ナラシムルコト
 第十五 政府事要ノ物品ハ力メテ其ノ供給ヲ内国産ニ取リ、産業奨励ノ精神ヲ助長シ、国民ヲシテ徒ニ舶来品ヲ貴重スルノ妄念ヲ除去セシムルコト
 第十六 重要物産同業組合ヲ督励シ、且之ヲ補助シ其ノ業務ヲ釐革シ其弊害ヲ矯正スルコト
 第十七 現行通商条約上実行シ得ル範囲内ニ於テ海関税率ヲ改正シ内国産品ヲ保護シ其ノ産出ヲ奨励スルコト
 第十八 鉄道殊ニ港湾接続鉄道ヲ速成シ、海陸ノ連絡ヲ完成シ各部ノ統一ヲ図リ、且特別運賃ノ制ヲ立テ及ヒ之ヲ奨励シ、内国産品ノ運搬ニ便ヲ与フルコト
 第十九 航海奨励法ヲ改正シ同法ノ保護ヲ受クル船舶ヲ以テスル運送ニ付キテハ特別運賃ノ法ヲ設ケ、内国産品ノ輸出ニ便ヲ与フルコト
 第二十 海外必要ノ地ニ領事館ヲ増設シ、通商貿易ノ利便ヲ与フルコト
等是ナリ、以上ハ実ニ国家ノ生存上必ス急施セサルヘカラサル重要ノ事項タリ、切ニ望ムラクハ快断明裁、微意ノ在ル所ヲ容レ、以テ速ニ之ヲ実行セラレンコトヲ
右臨時全国商業会議所聯合会ノ決議ヲ経、且其ノ委託ニ依リ謹テ建言候也
   明治三十四年一月二十九日
                  東京商業会議所委員
 - 第22巻 p.736 -ページ画像 
                      大倉喜八郎
                      井上角五郎
                  京都商業会議所委員
                      中村栄助
                      林長次郎
                  大阪商業会議所委員
                      今西林三郎
                      三谷軌秀
                  横浜商業会議所委員
                      大谷嘉兵衛
                      左右田金作
                  神戸商業会議所委員
                      山本亀太郎
                      坪野平太郎
    内閣総理大臣
    大蔵大臣
           宛(各通)
    農商務大臣
    逓信大臣

    協定税率廃止ニ関スル建議
港ハ国ノ門戸ニシテ海関ハ即チ其鎖鑰ナリ、一国経済ノ緩急ニ応シテ鎖鑰ノ開閉ヲ制スルハ元ヨリ其国自衛ノ権利ニ属ス、苟モ独立自主ノ邦国皆此自由ナカル可カラス
不幸我国ノ通商条約ニハ一種ノ協定税率ナルモノアリテ向フ十年間ハ自主ノ権利ヲ箝制セラレ、尚門戸アルモ任意ニ鎖鑰ノ開閉ヲ為シ能ハサルカ如シ、今試ニ我国現行ノ税率ヲ以テ之ヲ欧米各国ノ利率ニ対比セハ、課税ノ軽重素ヨリ同日ノ論ニアラス、例之ハ本邦ノ綿糸ノ輸入税ハ加工ノ程度ヲ論セス百斤ニ付僅ニ四円拾八銭ナルモ、仏国ニ於テハ其晒シタルモノ百斤ニ付六拾壱円五拾四銭ヲ徴スルカ如シ、之ヲ以テ我ノ彼ニ輸出スルハ難ク彼ノ我ニ輸入スルハ易ク、為メニ我国商工業ノ発達ヲ阻害スルコト最モ甚シ、若シ一タヒ此協定率ヲ廃棄シテ機ニ臨ミ時ニ応シテ自由ニ改定スルコトヲ得ハ、必ス我カ商工業ノ発達ヲ期スルヤ昭カナリ、既ニ綿糸及綿布ノ二品ノミニ於テモ数千万円ノ輸入ヲ減少シテ忽チ内地ニ其生産力ヲ増殖スルコトヲ得ルヤ必セリ、由是観之、此協定税率ノ今日ニ存在スルハ洵ニ国家ノ一大病源ニシテ我商工業ノ健全ハ遂ニ得テ望ム可カラス、豈ニ一日モ速ニ艾除セスシテ可ナランヤ、政府ハ宜シク確固不抜ノ態度ヲ執リ、此協定税率ノ廃棄ニ努力セラレンコトヲ切望ニ堪ヘサルナリ
右本年一月全国商業会議所臨時聯合会ノ決議スル所ニシテ、其委託ニ依リ謹テ建議仕候也
  明治三十四年一月二十九日
                  東京商業会議所委員
                      大倉喜八郎
                      井上角五郎
 - 第22巻 p.737 -ページ画像 
                  京都商業会議所委員
                      中村栄助
                      林長次郎
                  大阪商業会議所委員
                      今西林三郎
                      三谷軌秀
                  横浜商業会議所委員
                      大谷嘉兵衛
                      左右田金作
                  神戸商業会議所委員
                      山本亀太郎
                      坪野平太郎
    内閣総理大臣
    外務大臣
           宛(各通)
    大蔵大臣
    農商務大臣

    試掘鉱区課税ニ関スル建言
政府ハ本期ノ帝国議会ニ向ツテ鉱業条例ノ改正案ヲ提出シ、其主要ナル改正トシテ鉱山試掘ニ対シテ課税セント聞ク、該改正案ノ果シテ議会ニ現ハルヽヤ否ヤハ未定ニ属スト雖モ、若シ政府之ヲ提出シテ議会之ニ協賛ヲ与フルニ於テハ、本邦ニ於ケル鉱業ノ前途ハ之カ為メニ大ニ其発達ヲ阻礙セラルヽノ虞アルヲ免カレス、蓋シ本邦ニ於ケル鉱業界カ近時漸ク世人ノ注視スル所トナリテ、将来ノ啓発ノ稍ヤ期待セラルヽニ至リタルハ、職トシテ鉱区試掘ノ認可ヲ得テ鉱脈ノ存否ヲ探撿シタルモノヽ多カリシニ由ラスンハアラス、然ルニ一朝此試掘鉱区ニ対シテ課税スルカ如キアラハ、其所謂探撿者ナルモノハ遂ニ念ヲ鉱業界ニ断チテ、復之レニ向ツテ掘鑿ヲ試ミント欲スル者ナキニ至ラン、是レ試掘鉱区ニ課税スルノ不可ナル所以ナリ
政府カ該改正案ヲ提出スルノ理由ハ鉱区占有ノ弊害ヲ矯正スルニ在リト聞ク、鉱区ノ占有或ハ多少ノ弊アルヘシ、然レトモ鉱区ノ試掘ハ鉱物ノ存否ヲ探撿スルモノニシテ、掘鑿ノ結果果シテ利益ヲ見ルヲ得ルヤ否ヤハ予期シ得可カラサル事柄ナリトス、然ルニ之ニ向ツテ課税セントスルカ如キハ、其課税ノ目的物タル性質ヲ具備セサルモノニ対スル失当ノ処置ナリト謂ハサル可ラス、況ンヤ政府ハ試掘出願ニ対シ既ニ現行条例ニ依テ若干ノ手数料ヲ徴収シツヽアリテ、此手数料ハ即チ鉱区ノ占有ニ対スル課税ナリト看做スヲ得ヘキニ於テヲヤ
右ハ臨時商業会議所聯合会ノ決議スル所ニシテ、其委託ニ依リ謹テ建言ス
  明治三十四年一月二十九日
                  東京商業会議所委員
                      大倉喜八郎
                      井上角五郎
                  京都商業会議所委員
 - 第22巻 p.738 -ページ画像 
                      中村栄助
                      林長次郎
                  大阪商業会議所委員
                      今西林三郎
                      三谷軌秀
                  横浜商業会議所委員
                      大谷嘉兵衛
                      左右田金作
                  神戸商業会議所委員
                      山本亀太郎
                      坪野平太郎
    農商務大臣 林有造殿

    東京商船学校函館分校ノ存続及拡張ニ関スル建言
我国現下ノ状勢ニ於テ海事教育ノ拡張ヲ計ラサル可カラサルハ論外ノ事ニ属ス、之ヲ欧米ノ先進諸国ニ徴スルニ、海員ノ養成ハ必ス国家自ラ経営ノ任ニ膺リ、船舶ノ出入稍ヤ繁多ナル海港ニハ悉ク商船学校ヲ置キ、徒タ其ノ及ハサランコトヲ恐ルヽモノヽ如シ、彼ノ民業ニ依ルヲ重ンシ敢テ海陸軍ノ学生ヲモ自費トシテ顧ミサル英国ニ於テモ、仍ホ海事教育ハ殆ント国庫ノ費用ヲ以テ之ヲ施行スルヲ見ル、以テ海事教育ノ如何ニ国家ニ重ヲ為スヤ識ル可キナリ、然ルニ我逓信省ハ之ヲ拡張セサルハ勿論、却ツテ現在ノ商船学校即チ日本北半部ニ於ケル唯一ノ海事教育機関タル東京商船学校函館分校ヲモ廃止セントス、其ノ失措タルヤ多言セスシテ炳カナリ、而シテ本件ハ単ニ函館一地方ノ利害ニ影響スルニ止ラス、其干繋汎ク全国一般ニ及フ可キモノナルカ故ニ、同分校ハ之ヲ廃止セサルハ勿論、却ツテ一層ノ拡張ヲ計ランコトヲ望ム
右ハ臨時商業会議所聯合会ノ決議スル所ニシテ、其委託ニ依リ謹テ建言ス
  明治三十四年一月二十九日
                  東京商業会議所委員
                      大倉喜八郎
                      井上角五郎
                  京都商業会議所委員
                      中村栄助
                      林長次郎
                  大阪商業会議所委員
                      今西林三郎
                      三谷軌秀
                  横浜商業会議所委員
                      大谷嘉兵衛
                      左右田金作
                  神戸商業会議所委員
                      山本亀太郎
 - 第22巻 p.739 -ページ画像 
                      坪野平太郎
    逓信大臣 原敬殿

    四国官設鉄道及富山・直江津間官設鉄道ヲ第一期線ヘ繰上ニ関スル建言
四国官設鉄道及富山・直江津間官設鉄道第一期線ヘ繰上ノ件ハ、曾テ全国商業会議所聯合会ニ於テ之ヲ可決シ、既ニ各地商業会議所中ヨリ其筋ヘ建議書ヲ呈出セシモ未タ実施ヲ見ルニ至ラス、然ルニ本件ハ国家運輸機関整備ニ於テ一日モ緩フスヘカラサルモノナルヲ以テ、此際速ニ之カ実行ヲ期セラレンコトヲ切望ス
右ハ臨時商業会議所聯合会ノ決議スル所ニシテ、其委託ニ依リ謹テ建言ス
  明治三十四年一月二十九日
                  東京商業会議所委員
                      大倉喜八郎
                      井上角五郎
                  京都商業会議所委員
                      中村栄助
                      林長次郎
                  大阪商業会議所委員
                      今西林三郎
                      三谷軌秀
                  横浜商業会議所委員
                      大谷嘉兵衛
                      左右田金作
                  神戸商業会議所委員
                      山本亀太郎
                      坪野平太郎
    逓信大臣 原敬殿

    壱円紙幣回収延期ニ関スル建言
壱円紙幣回収延期ニ関スル件ハ、曾テ全国商業会議所聯合会ニ於テ之ヲ可決シ、各地商業会議所中ヨリ既ニ其筋ヘ建議書ヲ呈出セシモ未タ採納セラルヽニ至ラスシテ、今日ニ於テ壱円紙幣ハ益々減少ノ傾向ヲ呈シ、各地方共ニ諸取引上甚タ不便ヲ感スルニ至レリ、是レ壱円紙幣ノ回収ハ須ラク之ヲ延期セラレンコトヲ望ム所以ナリ
右ハ臨時商業会議所聯合会ノ決議スル所ニシテ、其委託ニ依リ建言ス
  明治三十四年一月二十九日
                  東京商業会議所委員
                      大倉喜八郎
                      井上角五郎
                  京都商業会議所委員
                      中村栄助
                      林長次郎
 - 第22巻 p.740 -ページ画像 
                  大阪商業会議所委員
                      今西林三郎
                      三谷軌秀
                  横浜商業会議所委員
                      大谷嘉兵衛
                      左右田金作
                  神戸商業会議所委員
                      山本亀太郎
                       坪野平太郎
   大蔵大臣 子爵 渡辺国武殿


〔参考〕渋沢栄一書翰 萩原源太郎宛 (明治三四年)二月四日(DK220061k-0008)
第22巻 p.740-741 ページ画像

渋沢栄一書翰  萩原源太郎宛 (明治三四年)二月四日    (萩原英一氏所蔵)
○上略
別紙書類一覧済返上仕候、聯合会之手続ハ大概了知仕候、評議書ハ小印返上仕候、其中国家経済ノ方針ニ関スル建議ト題スル分ハ朱線塗抺多くして、建議之全文明了ニ無之様被存候、前置ハ相略し一何々と申事より相始候義ニ候哉、為念御伺申上候
右等当用可得貴意、如此御坐候 匆々不一
  二月四日
                        渋沢栄一
    萩原源太郎様
  ○清国ノ法律制度改廃ニ関スル儀ハ第十回定期会ニ再ビ提出サレ可決セラレタリ。本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治三十四年九月十五日ノ条参照。
  ○国家経済ノ方針ニ関スル儀ニ就イテハ本巻明治三十三年五月十七日、同年五月二十五日ノ両条、並ニ本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治三十三年三月二日、同年六月五日、同三十四年二月六日、同年九月九日ノ各条参照。
  ○経済整理ニ関スル儀ニ就イテハ前記国家経済ノ方針ニ関スル諸条項、並ニ本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治三十四年十一月七日ノ経済整理ニ関スル条項及ビ同年二月二十一日ノ条参照。
  ○取引所改良ニ関スル儀ハ第十回定期会ニ再ビ提出サレタレドモ、提案者タル大阪商業会議所委員ヨリ撤回セラレタリ。本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治三十四年九月十五日ノ条参照。
  ○試掘鉱区課税ニ関スル儀ニ就イテハ本資料第二十一巻「東京商業会議所」明治三十四年二月六日ノ条参照。
  ○協定税率廃止及ビ協定税率廃止期成同盟会組織ノ儀ニ就イテハ本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治三十四年二月六日ノ条参照。
  ○一円紙幣回収延期ヲ再ビ政府ニ要請スルノ儀ニ就イテハ本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治三十一年五月二十日及ビ同三十三年四月三十日ノ両条、並ニ本巻明治三十二年十月十一日ノ条参照。
  ○四国官設鉄道第一期線繰上ノ儀ニ就イテハ本巻明治三十三年五月十九日ノ条参照。
  ○富山・直江津間官設鉄道第一期線繰上ノ儀ニ就イテハ本巻明治三十二年十月十二日ノ条参照。
  ○醸造銀行設立ニ関スル儀ハ第十回定期会ニ再ビ提出サレタレドモ、提出者ヨリ撤回セラレタリ。本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治三十
 - 第22巻 p.741 -ページ画像 
四年九月十五日ノ条参照。
  ○商法第百四十五条改正ノ儀モ第十回定期会ニ再ビ提出サレタレドモ、否決セラレタリ。本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治三十四年九月十五日ノ条参照。



〔参考〕東京経済雑誌 第四三巻第一〇六五号・第一一五―一一六頁 明治三四年一月二六日 ○協定税率撤去同盟会(DK220061k-0009)
第22巻 p.741 ページ画像

東京経済雑誌  第四三巻第一〇六五号・第一一五―一一六頁 明治三四年一月二六日
    ○協定税率撤去同盟会
頃日京都市に開きたる関西商業会議所聯合会に於ては、京都商業会議所の提出に係る協定税率撤去の議を可決し、案を具して之を東京市に開くべき全国商業会議所聯合会に建議し、尚其の目的を達せんことを期する為め協定税率撤去同盟会を組織することに決したり、今其の建議案を見るに左の如し
    協定税率廃止に関する建議(請願)○前掲ニツキ略ス
保護税を課するに不便なるが為に協定税率を廃止せんとするものと見えたり、成る程協定税率を廃止し、輸入税を重課する時は、保護の結果として興起する業あるべしと雖、消費者たる国民は為に高価を仕払ふの損失を免かるべからざるを奈何せんや、之を要するに歳入の目的を外にせは、協定税率を廃止すべき正当の理由あるべからず、歳入増加の為には協定税率を廃止するの必要もあるべしと雖も、独立国が自主の権利を以て外国と契約したる税率を半途にして如何にして廃止するを得べき乎、相手方にて応ぜざれば其までの事ならずや