デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2021.8.27

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
4款 商業会議所聯合会
■綱文

第22巻 p.752-811(DK220066k) ページ画像

明治35年12月8日(1902年)

是日、臨時会第一日ノ会議ニ於テ、栄一欧米漫遊ノ報告演説ヲナス。


■資料

渋沢栄一 日記 明治三五年(DK220066k-0001)
第22巻 p.752 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三五年     (渋沢子爵家所蔵)
十二月八日 曇
○上略 九時過東京商業会議所ニ抵リ、全国商業会議所聯合会ヲ開ク、午後一時ヨリ聯合会ニ対シテ欧米旅行ノ視察ニ関シテ報告ヲ為ス、畢テ二・三ノ協議ヲ為シ ○下略


明治三十五年十二月開設 臨時商業会議所聯合会議事速記録 第六―四四頁 刊(DK220066k-0002)
第22巻 p.752-770 ページ画像

明治三十五年十二月開設
臨時商業会議所聯合会議事速記録  第六―四四頁 刊
明治三十五年十二月八日午後一時二十五分開議
  出席委員     三十三名 ○氏名略
 - 第22巻 p.753 -ページ画像 
○三十四番(大阪、法橋善作君) 此場合ニ於キマシテ男爵閣下ガ欧米御漫遊ノ際我全国商業会議所ヲ代表サレテ御尽シ下スツタ景況、又男爵閣下ガ欧米商工業ノ有様ヲ御観察ニナツタ吾々ノ利益トナルヘキ事ニ付テノ御考等ヲ拝聴致シタイト思ヒマスル、此場合ニドウカ御報告旁々御話ヲ下サルヤウニ願ヒマス
○中略
○会長(東京、渋沢栄一君) 然ラバ私カラ漫遊ノコトニ付イテ申上ゲルヤウニ仕リマセウ
○三十六番(神戸、藤田松太郎君) 御報告ヲ承ルニハ便宜上其御席デ御述ベ下スツテハ如何デス
○会長(東京、渋沢栄一君) 此場合チヨツト会長ヲ替ヘテ、私ハ報告席ニ就イテ申述ベルコトニ致シマシセウ……馬越君チヨツト此席ニ御就キ下サイ
   (是ニ於テ馬越副会長会長席ニ就ク)
○副会長(東京、馬越恭平君) 不肖ナガラ会長席ヲ汚シマス、コレヨリ渋沢男爵ノ御報告ガゴザイマス
○欧米漫遊報告演説  (明治三十五年十二月八日臨時商業会議所聯合会ニ於テ)会長、会員諸君、此聯合会ニ於キマシテ私ガ本年欧米ヲ経過致シマシタ事柄ニ付テ御報告ヲ致シ得マスルノハ、誠ニ私ノ名誉トシテ甚ダ喜ビ升コトデゴザイマス、回顧シマスレバ、恰度七箇月以前即チ本年ノ春ノ臨時聯合会ニ於テ、私ガ欧米漫遊ノコトヲ企テマシタニ付テ、斯ル機会ニ多少商工業ニ実験アリ且相当ナル歳月ヲ其間ニ経過シテ居ル私ガ、此旅行ニ付テ日本ノ商工業者ノ意志ヲ欧米ノ国々ヘ充分ニ疏通シ、又彼等ノ日本商工業者ニ対スル感情ヲ成ルベクタケ鄭寧ニ聞キ取ツテ、帰国ノ後ニ御報道スルヤウニト云フ御趣意ヲ以テ、之ヲ約言シマスルト、意志疏通ト云フ趣意ノ御附託ヲ受ケマシタ、簡単ナ文字デゴザイマスカラ短ク解釈シマスルトホンノ御茶一杯ト云フヤウニモ聴エマスルシ、又広ク解釈シマスルト余程大問題トモナリマスルシ、所謂之ヲ開ケハ六合ニ瀰リ、之ヲ巻ケバ退イテ密ニ蔵ルト云フガ如キ事柄ト私ハ思ヒマシタ然ルニ私ノ旅行ハ根ガ漫遊ニシテ、殊ニ言語モ通ジマセス文字モ読メマセス、又商工業ノ実験ト申シマシタ所ガ諸君ノ御承知ノ通リ何事モ充分ナル成功ヲ見タ私デゴザイマセヌノデ、日本ノ事柄スラ其真相ヲ尽シテ居ラヌノニ、海外ニ向テ諸君ヲ代表シテ商工業者ノ意志ヲ疏通スルナドト云フコトハ難事ト心得マシタケレド、併シ未来ノ日本ハ決シテ日本ダケデ事業ヲシテソレデ満足ダトハ云ヒ得ラレヌ、是非共世界的ニ我カ日本ノ商工業ヲ進メテ行カネバナラヌト云フコトハ毎々聯合会ニ於テ発表サレタ趣意デアリマスカラ、私ハ諸君ノ御意中ヲ能ク御察シ申シテ居リマスルシ、私自身モ始終左様ニ心掛ケテ居リマスレバ、仮令自由漫遊トハ申シナガラ斯カル時機ヲ唯タ無駄ニ費スヨリハ重大ナ事柄デハアルケレドモ、御引受申シテ、出来得ル限リ事情ヲ通ジ彼等ノ真相ヲモ知リ得ルヤウニ致シタイト思フテ、推シテ御附託ヲ受ケタ次第デゴザリマス、併シ前ニ申上ゲタ通リ、旅行ノ時日モ甚タ短カウゴザリマシタシ、又言語不便ナ所ヨリシテ、前陳ノ如キ抱負ハ持チマシタケレドモ、其抱負ノ十分ノ一モ達シ得ラレマセヌノハ甚ダ
 - 第22巻 p.754 -ページ画像 
慚愧ニ堪ヘヌノデゴザリマス
旅行ノ模様ハ第一ニ亜米利加ヲ先ニ致シマシタデ、先ヅ商業会議所トシテ訪問致シマシタノガサンフランシスコ・シカゴ・ニウーヨーク・ボストン、此四箇所デゴザリマシタ、其他ノ都会ニモ或ハワシントンナリ、ビツツブルグナリ、ヒラデルヒヤナリニ参リマシタガ、ヒヤデルヒヤニハ商業会議所ハゴザリマセヌデ商品陳列館ヲ訪問致シマシタ欧羅巴ニ参リマシテハロンドン、続テマンチエスタル・グラスゴー・リバープール・ヱジンボロウ・ニウカツスル・シヱツフイルド等ノ地方ヲ経過致シマシタガ、此ニウカツスルヤ、ヱジンボロウ・シヱツフイルドナドニハ商業会議所ガゴザイマセヌ趣デ訪問ハ致シマセナンダ又大陸ニ渉リマシテハ白耳義デブルツセルノ商業会議所ヲ訪問致シマシタ、ソレカラアントワルプデ、アントワルプノ商業会議所、又独逸ニ参リマシテ伯林・ハンブルグノ両所ヲ訪問シ、再ビ英吉利ニ帰リテ倫敦カラ更ニ発シテ帰途仏蘭西ヲ経過致シマシタ故ニ、巴里ノ商業会議所ヲ訪問シテ、続テリオンニ於テ商業会議所ヲ訪問致シマシタ、詰リ此五箇国デゴザイマシタ、尚ホ其外ニ伊太利ヲ通過シテ帰国致シマシタケレドモ、伊太利ハ唯タ羅馬デ古キ寺院ヲ見物スルトカ、其他ノ名所古蹟ヲ弔フニ過ギマセヌ、帰リ途ハ印度海ヲ通過シマシタカラ、恰度世界ヲ一週シタ訳ニナリマスケレドモ、詰リ旅行ト滞在トデ総テ日数ガ五箇月ト十五・六日ヲ費シタト云フ次第デゴザイマス、経過ノ大体ハ今申上ゲマシタ通リデ之ヲ繰返ヘシテ亜米利加カラ其訪問シマシタ順序ヲ申上ゲマスト、サンフランシスコノ商業会議所ハ其会頭ガニウホールト云フ人デ、会議所ニ訪問シマシテ会議所ノ事務ノ取扱振リモ一ト通リ見マシタ、又会頭タルニウホール氏ニモ面会シテ此方ノ考ヲモ述ベ、先方ノ思フテ居ルコトモ承リマシタガ、詰リ暫時ノ会話ニ過ギマセヌカラ、詳シウ此方ノ意志ヲ尽シ又向フノ考案ヲ聴取ルト云フ程マデニハ申上ゲラレマセヌ、其会議所ノ有様ヲ見マスルト頗ル簡易デ、殊ニ同国ハ人ヲ使ハヌノヲ自慢トスル如キ流儀デゴザリマスカラ、桑港ノ商業会議所ニハ唯タ一人ノ人デ総テノコトヲ間ニ合セテ居ラレタノデ、私ハ先ヅ一驚ヲ喫シタト云フ位ノ有様デゴザリマシタシカゴニハボールド、オフ、トレードト称ヘテ商業会議所ニ似タヤウナモノデスガ少シク形チヲ異ニシテ居リマス、而シテ此ボールド、オフ、トレードハ穀物取引所ヲ持ツテ居リマシテ、取引所ハボールド、オフ、トレードノ監理ニ属シテ居リマス、此取引所ノ有様ヲ委シク見セ且ツ説明シテ呉レマシテゴザリマス、取引所ノ体裁ハ其相場立ノ振合又ハ立会ノ手続等マデ日本ト違ツタコトハナイヤウデスガ、会員組織デアツテ、株式組織デナイト云フコトダケガ大ニ異ナルヤウニ見受ケマシタ、実ニ盛ンナモノデ、且ツ聞ク所ニ依ルト、左様ニ厳シイ法制ノ検束ハナイケレドモ、別ニ違約者ガアツテ折合トカ泣キトカ云フヤウナ事柄ハ殆ントナイト申シテ居リマシタ、商業会議所ノ設ケハナイ故ニ商人ノ会合シテ其意見ヲ発表スルト云フコトハナイケレドモ、併シボールド、オフ、トレードトシテハ考ヲ申述ベルコトモ屡々致シテ居ルト云フ話デゴザリマシタ、ニウヨーク商業会議所ニテハ、今ノ会頭ノジヱサツプト云フ人ハ病気旅行中デゴリマシタ為メニ面会シ得ラレマセ
 - 第22巻 p.755 -ページ画像 
ンダガ、併シ先年日本ヘ参ラレタチヤーレス、スミスト云フ人ガゴザイマス、此人ハ今尚商業会議所ノ理事委員長ノ位地ヲ持テニウヨークニテハ名誉アル人物ダサウデゴザイマス、先年ノ縁故モゴザイマシタカラ着早々先方カラ尋ネテモ呉レ私モ亦訪問ヲ致シマシタ、遂々会頭ジヱサツプ氏及同氏ノ催ニテ一ノ宴会ヲ開イテ私ヲ歓迎スルト云フコトデ其宴ニ臨ミマシタ、元来ニウヨークノ商業会議所ニテハ会員カ二千人モアルト云フ位ナ極ク自由組織デ、日本ノ商業会議所トハ殆ント趣ヲ異ニシテ居ル仕組デアリマス故ニ、左様ナ多人数ガ残ラズ集ツタノデハナイ、役員ノ向キ其他商工業者トシテ顔役ト申スヤウナ人達ガ来会サレタヤウニ見受ケマシタ、殊ニ時節ガ炎暑中デアツタ為メニ避暑ニ出掛ケタ人ガ多イ故ニ多数ナ客ハ出来ヌカラト云フテ、来集ノ人ハ主人ノ位地デハ十四・五名デゴザイマシタガ頗ル懇切ナル待遇ヲ致シ呉レマシタ、此席ニ於キマシテハ恰モ好機会デゴザイマスカラ、即チ御附託ノ趣旨ヲ以テ充分申述ベマシタ、其申述ベタ事柄ニ対シテハ来会ノ人々即チニウヨークノ商業会議所ヲ代表シタ人達ハ喜ンデ吾々ノ意志ヲ諒諾スルト云フコトデ、且ツ来会者ノミナラズ追々会員ニ示シ、其他ノ商工業者ニモ伝ヘルデアラウト云フ挨拶ヲ受ケマシテゴザイマス、話ガ少シ前ニ戻リマスガ是ヨリ先キニ六月十六日ニワシントンニ参リマシテ大統領ニ謁見ヲ致シマシタ、其大統領ニ謁見ヲスルトキニ、国務大臣ニモ両人程、即チ大蔵長官ノシヤウト云フ人ト、国務長官ノヘート云フ人ニ面会致シマシテ、日本ノ商工業者ハ斯ル希望ヲ以テ居ルト云フコトヲ申述ベル好イ機会ト心得マシタカラ、大統領及ヒ国務大臣ニ委シク其事ヲ申述ベマシテゴザイマス、シヤウ・ヘーノ両氏ニ対シテノ談話ハ僅ニ十分若クハ十五分ノ時間デゴザイマシタケレドモ、大統領ハ相当ナル時間ヲ与ヘ歓待シテ呉レマシテ、例ノホワイトハウスノ書斎ノ楼上ニ引イテ共ニ差座シテ緩々ト話シテ呉レマシタカラ、其談話ハ興味アル有様ニマデ及ヒマシテゴザイマス、但シ大統領ハ頻リニ日本ノ軍事ニ付キ、若クハ美術ニ付テ褒詞ヲ述ベラレマシタカラ、私ハ是ニ答ヘテ、ドウゾ私ガ次回ニ閣下ニ謁スルトキニハ商売デ褒詞ヲ受クルヤウニシタイト云フ事ヲ笑ヒナガラ申シマシタラ大統領モ大ニ笑ヒマシテ、イヤサウ言ハレルト、日本ノ商工業ガ未ダ軍事トカ美術トカ云フモノヨリ位地ガ低イヤウニ考ヘテ居ルカノ如ク貴君ガ察セラレタカ知ラヌガ、私ハサウ云フ意味デ云フタノデハナイ併シ既ニ貴君ガサウ云ハレルト止ヲ得ス其事実ガアルカ知ラヌトノ答ヲセネハナラヌ、此問答ニ付テモ貴君ガ真ニ商工業ニ熱心ダト云フコトハ明カデアル、宜ナリ全国ノ商業会議所ハ貴君ニ代表ノ位地ヲ与ヘタノデアラウト云フヤウナ閑談ニ渉リマシテゴザイマス、之ハ別段価値アル御話デハゴザイマセヌガ、所謂好対話デアツタト云フコトハ申上ゲラレヤウト思ヒマス、殊ニ大統領ハニウヨーク商業会議所ニモ私ガ手紙ヲヤルカラ其手紙ヲ明日公使館ニ届ケルト云フ事デ、其翌日公使館ノ方ニ届ケテ呉レマシタ、而シテ其手紙ハ頗ル懇篤ナ書状デアツタヤウニゴザリマス、亜米利加ニ於テモウ一ツ吾々ノ意志ヲ彼ノ国民ニ知ラセルト云フ機会ヲ得マシタノハ、米国亜細亜協会ト云フモノガニウヨークニ組立テラレテアル、之ハ東洋ニ営業ヲスル商人ノ団体デ
 - 第22巻 p.756 -ページ画像 
アツテ、此亜細亜協会ガ私ノ旅行ヲ機会ニ歓迎会ヲ開キタイカラ臨席シテ呉レト云フコトヲ着スルト直チニ照会サレマシタ、且此亜細亜協会ノ幹事ニ立ツテ居ル人ガ横浜ニモ支店ノアル米国貿易商ノ人デアリマシテ、出席ノ有無ヲ問合セテ参リマシタカラ喜ンデ出ヤウト答ヘマシテ、恰度六月ノ三十日ニ亜細亜協会ノ歓迎会ニ出席致シマシタ、亜細亜協会ハ即チ亜細亜ニ対スル営業ヲ為ス人ノ寄合デアルカラ、亜細亜カラシテ此商工業ニ従来苦心経営シテ居ル渋沢ガ参ツタカラ、斯ル機会ニ協会ノ大会ヲ開イテ此来遊者ヲ歓迎スルノデアル、而シテ此渋沢ハ日本ノ商工業ニハ斯々ノ功労ガアルト、前ニ申ス通リ私ガ力ノ乏シイ成功ノ少ナイニモ拘ラス頻リニ賞讃スル言語ヲ以テ、且ツ将来亜細亜ニ対スル仕事ニ付テ日本ト力ヲ協セテスルト云フコトハ最モ亜米利加人ノ望ム所デアルト云フ趣意ヲ以テ、私ニ対シテ歓迎ノ言葉ヲ述ベマシテゴザイマス、私モ好機会ト考ヘマシタカラ、即チ各地ノ商業会議所デモ斯ル話ヲシタ、大統領ニモ斯ウ云フコトヲ云フタ、亜米利加人ハ此ノ如ク百事進ンデ行クガ、併シ此国民ハ此進歩ダケデハマダ満足セヌト云フコトハ其仕事ノ上ニ現ハレテ居ル、甚シキハ世界ノ仕事ヲ皆亜米利加人ガシナケレバ承知セヌト云フヤウニ見ユル、世界ノコトハ暫ク措テ、此亜細亜協会ノ如キハ最モ東洋ニ力ヲ入レルデアラウガ、其東洋ニ力ヲ入レルニ能ク御注意ヲ請ヒタイノハ即チ日本人デアル、日本人ハ商工業ニ於テ力ノ強イ者デハナイ、資本モ豊ナル者デハナイ、器械トカ学術トカモ勝レテ大ナル力ヲ以テ居ルトハ思ハレヌ併シナガラ同ジ亜細亜ノ中デハ先進国タルコトハ失ハヌ、決シテ後ヘニ瞠着シテ居ラヌ積リデアル、其亜細亜ノ中デ、例ヘバ支那デアレ朝鮮デアレ、之ヲ開発スルト云フコトニ付テハ、吾々日本人ヲ疎外ナサルト云フコトハ、寧ロ亜米利加人ニ取テハ、不利益デアラウト云フコトヲ私ハ言ヒタイ、否ナ露骨ニ言ヘバ、日本ト協力セネバ其事業ノ進ミニ損デアルト云フコトヲ注意シタイノデアル、ソレハ何デアルカト云フト、第一ニ風俗トカ人情トカ或ハ言語トカ文章トカ云フモノハ、東洋中デ日本ガ前ノ二国ニ近イト云フコトハ敢テ論スルマデモナイ、又国ガ至テ接近シテ居ルト云フコトモ論スルマデモナイ、現ニ是迄ノ実例ニ照ラシテ見テモ何カノ機変ニ際会シテ速カニ之ヲ保護スルノハ何処ノ国デアルカト云フコトハ言ハズシテ明カデアルト思ヒマス、左スレバサウ云フ国民ト手ヲ引合フト云フコトハ其啓発ニ付テノ好手段便益ナ方法ト云フコトハ極ク明カデアラウト思フ、日本人モ亦ソレヲ望ンデ居ル、故ニ向後亜米利加ニ於テ即チ亜細亜協会ノ如キ有力ナ団体ガ力ヲ入レテ、東洋ノ朝鮮又ハ支那等ノ開発ニ対シテハ日本人ヲ疎外セヌヤウニスルガ利益ト思ヒマスカラ、諸君ハ此点ニ着眼セラレルデアラウト云フ趣意ヲ以テ申述ベマシタ、果シテ其言葉ガ適当スルカ或ハ自負ニ過ルカ其辺ハ私自身ニハ評論致シ兼ネマスガ、蓋シ彼ニ於テハ多少耳ヲ傾ケタカト私ハ存ジマスルノデアリマス、亜米利加ニ於テハ新聞ニ雑誌ニ問ハレルト答ヘタコトモ数回デゴザイマシタカラ、折ニ触レ機会ニ乗ジテ前ノ趣意ヲ以テ述ベタコトハアリマシタケレドモ多人数相会シテノ談話トシテハ前ニ申述ベタ位ノコトデゴザイマス続イテ英吉利ニ於テハ倫敦ノ商業会議所ニ於ケル会合デアリマス、諸
 - 第22巻 p.757 -ページ画像 
君ノ御承知ノ通リ、日英同盟ノ事ニ付テハ其際東京商業会議所ニ於テハ電信ヲ以テ喜ビヲ述ベ、先方カラモ委シイ手紙ヲ以テ申越サレテ相通信シテ居ル間柄デモゴザイマシタカラ、倫敦着早々私ヨリモ名刺ヲ通シマシタガ、会頭ハ病気旅行中デゴザイマシテ、書記長ノモーレート云フ人ガ尋ネテ呉レマシテ、色々ナ引合ヲシマシタ末、是非一会ヲ開イテ其席ニ於テ全国商業会議所ノ附託ノ趣意ヲ申述ベテ欲シイト云フコトデゴザイマシテ、即チ七月ノ二十五日ニ倫敦商業会議所ニ参ツテ、予テ御附託ヲ被ツテ居ル意志疏通ノコトヲ一場ノ演説トシテ申述ベマシテゴザリマス、英国ニ対シテハ前ニ申ス通リ今日ノ境遇トシテ至テ親睦ナル国柄ニモ相成テ居リマスカラ、成リ得ベキタケハ此方ノ事情モ鄭寧ニ知ラセル必要ガアルト考ヘマシタノデ、例ヘバ維新以後ノ貿易ノ景況、若クハ銀行諸会社ノ模様、又ハ重立ツタ経済的進歩ノ景況ヲ数字ニ掲ゲ事実ニ示シテ申述ベルノヲ利益ト考ヘマシタ、殊ニ我日本ノ右様進歩シタノモ多少彼ノ国ニ関係ヲ持テ居リマスカラ、ソレ等ノ意味カラ説キ起シテ、日本ノ経済ノ進歩ハ三十有余年ノ間ニ斯ク斯クニナツテ居リマスケレドモ、併シ是デ満足トハ云ハレヌト明言シ、末段ニ於テハ亜米利加ニテ申述ベタト同ジヤウナ意味デ、英吉利ガ支那ニ対シテハ関係ノ多イト云フコトハ世界ノ人ノ皆認メテ居ル所デアル、此大ナル利益此大ナル関係ヲ益々進メテ行クト云フコトニ付テ、便益ナ方法ハ何デアルカト云ヘバ、日本人ト協力スルノデアルト云フ趣意ヲ申述ベマシテゴザリマス、蓋シ此日来会セシ会員ノ数モ数十人ニシテ一場ノ演説ヲ致シタニ過ギマセヌカラ、ソレニ対シテハ批難モナシ、エライ賞讃モ受ケマセヌ、申サバ唯ダ一言言ヒ流シト云ハレルカモ知レマセヌガ、其所ニ相集ツタ人達ハ至極最モナ意見ダト云フノデ、遂ニ全会一致ヲ以テ私ノ申述ベタコトニ同意ヲ表シ、将来其趣意デ共ニ相提携シタイト云フコトヲ本会議所モ企望スルト云フ答ヲサレマシタ、其席ニ於テ一ツノ問題ノ如クニ出マシタノハ日本ニ対スル希望ト云フ意味デ商売上ノ取引ニテ付テ二・三ノ批難ガアツタ、之ハ随分聴クヲ厭フ言辞ガ見ヘマシタ、夫ハ何デアルカト云フト、ドウモ日本ニ於ケル商売上ノ取引ガ甚ダ不規則デアル、約束ガ固クナイ、何レノ国モ商売人ハ正直律義ナ人バカリ打揃ツタ訳ニハ行カヌカラ、或ハ約束ガ欠ケタリ事柄ガ間違ツタリスルコトノナイトハ言ハレヌガ比較的ニ日本ノ貿易ニ付テハ其事ガ多イ、甚シキハ或ル貿易商人ヨリ「インボイス」ヲ作リ替ヘテ呉レナドヽ云フ注文ガアル、是等ニ至ルト殆ント商業道徳ノ何者タルヲ顧ミヌヤウナコトニ聴エル、自今益々親密ニ相提携シテ行クニハ商業道徳ヲ厚クシテ行クヨリ外ハナイト云フコトハ、単リ日本ニ望ムバカリデナク諸国皆一致ト言ハナケレバナラヌノデ、商業会議所ノヤウナ有力ナ団体ニ於テ左様ナ事ガアラウトハ思ハヌガ、貴君ガ帰国ノ後当業者同志ノ人ニモ相謀ツテ、努メテ此徳義ヲ厚クシ約束ヲ固クスルト云フコトヲ希望致ス、蓋シ箇様ナコトヲ申スハ失礼ノヤウニ当ルカラ申上ルコトヲ憚カルケレドモ、斯ク同盟シテ力ヲ協セテ行カウト云フニハ忌憚ナク心情ヲ吐露スルノデアルカラト云フ、決シテ攻撃的デナクテ寧ロ忠告的ニ申述ベラレタ、但シ仮シヤ忠告デアツテモ、我カ不徳義ヲ譏ルト云フコトニナリマスカラ
 - 第22巻 p.758 -ページ画像 
其席ニ於テ聞キマシタ私ハ何ヤラ耳ヲ刺レルヤウナ観念ヲ持チマシタケレトモ、己自身ハ外国人ニ対シテ約束ヲ欠イタヤウニハ考ヘマセヌガ、併シ此約束ガ固クナカツタガ為メニ横浜ナリ神戸ナリニ貿易上種種ノ面倒カアツタト云フコトハ度々耳ニシタノデスカラ、此忠告ハ辱ケナク了知シタ、勤メテサウ云フコトハ注意スルデアラウト云フコトヲ答ヘテ別レマシテゴザイマス、是等ハ斯ル会合ノ席デ申述ベルノハ甚タ好マヌコトデゴザイマスガ、詰リ経過談ノ事実デゴザイマスルデ憚ラズ陳述致ス次第デアリマス、英吉利ニ於テハマンチエスタル及グラスゴーノ商業会議所ヲ訪問致シマシタケレドモ、皆是等ノ地方ハ漸ク一日若クハ一日半位シカ居リマセヌ、而シテ彼ノ工場ヲ見ル此人ニ面会ヲスルト云フヤウナ約束ヲ持チツヽ参リマシタカラ、其会頭ニ遇フテ充分ナ話ヲスルト云フマデニ至リマセヌ、或ハ書記長ヲシテ訪問ヲサセテ彼方ノ書類ヲ貰ヒ此方ノ書類ヲ贈リ、斯ル用向デ罷リ出デタト云フコトヲ通ジタニ過ギマセヌ、故ニ英吉利ニ於テノ商業会議所ノ訪問ハ先ツ倫敦ヲ重トシタト申上ゲルヨリ外ハゴザイマセヌ、其外ニ尚ホ一ツ申上ゲテ置クノハ、此倫敦ニ於テ支那協会ト云フモノガゴザイマス、恰度亜米利加ノ亜細亜協会ト同ジヤウナ組織デ、支那ニ対シテ営業ヲシテ居ル人達ノ団体デゴザイマスカラ、亜米利加ニ於ケルト同様ニ私ノ来遊ヲ機会トシテ協会員ノ重立タル人ガ会合ヲ開キ、サウシテ歓迎ノ宴会ヲシヤウト云フコトデ、其名前ハ忘レマシタガ、タシカデボンシヤー倶楽部トカ申ス所ニ案内ヲサレマシタ、其時ニ主人トシテ宴席ヲ開キマシタノハウイルリアム、ケスウイツクト云フ人デ、此人ハ殆ンド七十ニ垂ントシテ居リマスガ、下院ノ議員ヲシテ居リマシテ保守党ノ相当ナ位地ニ居テ商売人ノ側デハ力アル人物デゴザリマス、横浜ノ英一番ト云フノハ此人ノ店デゴザリマス、神戸ニモ支那ニモ此人ノ店ガアリマス、此人ガ当夜ノ主人デ、来会シタ者ガ恰度二十人バカリゴザイマシタ、林公使モ臨席致サレマシタ、併シ其会ハ私ノ為メニ開カレタノデゴザイマスカラ当夜ウイルリアム、ケスウイツク氏ハ支那ニ対スル未来ノ経営ニ関スル意見ト、又私ニ対シテ是マデノ経歴トヲ相関聯シテ、斯ル貴賓ヲ吾々此支那協会ガ迎ヘルノハ将来ノ大利益デアルト云フ趣意ヲ以テ私ヲ褒メ、且ツ未来ノ希望ヲ述ベラレマシタデゴザイマス、私モソレニ対シテ一場ノ答ヲ致シテ其会ニ謝シマシテゴザリマス、其趣意ハ、詰リ彼ノ言フ如ク私ハソレ程ノ力ガナイト云フコトヲ述ベルト同時ニ、私ノ力ハ薄クテモ其希望ハ至極尤デ日本人トシテハ大ニ力アルト云フ事ヲ私ハ玆ニ言ヒ得ルノデアル、既ニ商業会議所ニ於テモ斯ク斯クト云フ事ヲ述ベテ、即チ此席ニアルケスウイツク君ハ当日ノ会頭トシテ私ノ希望ハ充分諒諾シタト云フ事ヲ答ヘラレタ、又斯ル機会ニ御話ヲシテ置キタイノハ、此支那協会ニ於テ常ニ能ク注意シテ東西両洋ノ商工業者ノ誤解ヲ解クコトヲ勉メラレタイノデアル、此席ニ列スル御互ヒノ間ハ両方ノ人情風俗ヲモ稍々知リ得テ居ルカラ誤解ヲ惹起スコトハナイガ、追々交通ガ盛ニナツテモ元来両洋ノ商人間ノ人情・風俗・習慣ノ違ツテ居ルト云フコトヲ記臆シテ貰ヒタイ、此違ツテ居ルカラシテ些細ナコトニ或ハ徳義ガ薄イトカ信義カ固クナイトカ云フコトヲ互ヒニ譏リ合フ、其結果益々悪感情
 - 第22巻 p.759 -ページ画像 
ヲ惹起スコトガアルカラ御互ヒニ左様ナコトノナイヤウニ、能ク事情ヲ知ツテ居ル人ガ此誤解ヲ解クコトヲ務メネバナラヌ、即チ事情ヲ知ツタ先輩者ノ責務ト云フテ宜カラウト思フ、自分等モソレヲ務ムルガ此席ニ居ル人々ハ時々其事ニ注意シテ貰ヒタイ、又一方ニハソレヲ務ムルト同時ニ他ノ一方ニハ内ニ顧ミテ勤メテ誤解ヲ生ゼシメヌヤウニセネバナラヌ、之ハ此協会ニモ望ムシ、吾々モ当事者ニ協ル所存デアルト云フ趣意ヲ述ヘラレタ、ソレハ如何ナル理由カト云フト先月ノ二十五日ニ商業道徳論ガゴザイマシタカラ、是等ヲ自ラ説キ且ツ答ヘルト云フ意味デ申述ベタノデアリマシタ
ソレカラ白耳義ニ参リマシテノ商業会議所訪問ハアントワルプデハ商業会議所ノ会頭ニモ面会ヲシマシタ、商工業高等会議議長タルストロウスト云フ人ニモ面会シマシテ、各地デ申述ベタ事ヲ繰返シマシタガブラッセルデハ時ガ差支ヘタ為メニ書記長ヲシテ書類ヲ贈リ且ツ余ノ来意ヲ伝達セシメタニ過キマセナンダ
続イテ伯林ニ参リマシテ漸ク四日居リマシタケレドモ工場ニ約束シテ二・三見物シナケレバナラヌシ、銀行モ二・三訪問セネバナラヌノデ時間ノ都合モ得ラレナカツタカラ、同市ニハ兼テ商人会ト云フモノガ組織セラレテアル事ヲ聞キマシタガ、其商人会ヘハ行キ得ズニ会頭ヘルツ氏ノ自宅ニ参ツテ御附託ノ意味ヲ申述ベマシタ、伯林ノ商人会ノ体裁ハ如何ナル有様デアルカ聞イテ見ヤウト思ヒマシタガ、其会頭ト云フ人ハ至テ老人デ、モウ八十才位ノ人デ、附随スル書記モ居リマセヌカラ唯タ訪問シテ此方ノ希望ヲ申述ベタニ過キマセヌ、且此老人ハ無遠慮ニ一体意思疏通ト云フノハドウ云フ事カ、何ヲスルノカト斯ウ頭カラ詰問ヲサレマシタ、故ニ其説明ニハ窮シマシタ、併シ私ハ之ニ答ヘテ、意思疏通ト云フテ是迄通ジテ居ラヌト云フ訳デハナイ、日本人カ斯ク考ヘテ居ル欧羅巴人ハ斯ウ思フテ居ルト云フ事ハ大抵通シテ居ルケレトモ、双方ノ事情ガ充分ニ通シテハ居ラヌ、又風俗ガ大変違フ、言語ガ通ゼヌ、宗教ガ違フ、総テノ事柄ガ違フカラシテ或ル場合ニ誤解ヲ惹起ス、此誤解ヲ成ルタケ無クシタイ、ソレカラ御互ノ真相ヲ能ク知リタイ、例ヘバ日本デ金融必迫ト云フト日本ノ国ガ直グニ破産スルヤウニ他ノ国デハ誤解スル、サウ云フ誤解ハ畢竟意思ノ疏通ガナイカラデアル、事情ガ審カニ分ルナレバ此点デ斯ウ云フ差支ガアル斯ウ云フ困難カアルケレドモ、此廉々ハ進ンデ行クト云フ局所局所ガ了解スルコトニナル、左様ニシタイト云フノデアル、又意思疏通ヲ大キク言フナレバ今マデノ日本ノ商売ハ日本ノ範囲内ニ商売シテ居ツタト云フ如クニ欧羅巴人ハ観察シタデアラウガ、近頃ノ日本ノ商売人ノ希望ハ是非此日本ヲシテ欧羅巴人ト同ジ趣意同ジ方法同ジ働キデ所謂世界的ノ商売ヲシヤウト云フノデアル、即チ出来得ル限リハ内国ニ向テ海外ノ人ガ仕事ヲスル事ヲ歓迎スルノデアル、又ソレト同時ニ吾々モ他ノ地方ニ対シテ出来得ル限リ力ヲ伸バシテ働イテ見タイト斯ウ云フ趣意、斯ル考ヲドウゾ欧羅巴ノ商工業者ニ諒知シテ欲シイ、左様ナ考ナレバ吾々ハ日本ノ商売人ト斯ウ云フ意念ヲ以テ未来ニ提携シヤウトカ、或ハ又競争シヤウトカ云フ御考モ知リタイ、之ガ即チ意思疏通ノ註釈デアルト述ベマシタガ、成程サウ聞イテ見レバ能ク分ツタ、ソ
 - 第22巻 p.760 -ページ画像 
レナラバ意思ノ疏通ト云フ事ハ貴君ノ註釈ヲ承知スル、ソレハ誠ニ結構ナ事ト御同意ヲ表スルト云フ事デ、此ヘルツト云フ人ハ殆ント耳モ遠シ眼モ悪ルシ、余程老年ナ人デゴザイマシタ故ニ左様ニ無遠慮ナ質問ヲサレタモノト見ヘマス、此質問ニ於テ私ノ答ガ果シテ諸君ノ思召ト適合シタカ否ヤハ分リマセヌガ、唯タ疏通デハ分ラヌ註釈ヲセヨト云フ質問ヲ受ケテ、始メテ独逸デ意思疏通ノ講釈ヲ致シマシタト云フコトハ一ツノ笑談柄デゴザリマシタ、続テ参リマシタノガハンブルグデ、之ハ港トシテ実ニ盛ナモノデ敬服スベキ設備デアリマス、併シ商業会議所ハ唯タ僅カニ訪問シタニ過キマセヌデ、別ニ委シイ談話ヲスルト云フ時機ハ得マセナンダ
ソレカラ再ビ英吉利ニ帰リテ、更ニ仏蘭西ニ参リマシテ巴里ノ商業会議所ヲ訪問シマシタ、巴里ノ商業会議所ハ日本ト同シヤウニ法律ニ依テ制定サレテアツテ人数モ左様ニ多数デハゴザイマセヌ、併シ場所ト言ヒ一体ノ仕組モ規律立ツテ居ツタヤウニ見受ケマシタ、同所ノ会頭ヒユームーズ氏ハ私ヲ引見シテ申サレマスニハ、少シ時ガアレバ特ニ貴君ノ為メニ盛ナル歓迎ノ宴ヲ張リタイト思フタカ、余リ日ガ迫ツテ居ルカラ左様ナル設備ヲ為ス訳ニ行カヌ、止ムヲ得ス其事ヲ省キ只玆ニ当会議所ノ決議ニ依リ重立タル会員ガ会合シテ貴君ヲ迎ヘルノデアルト云フテ、会頭ハ特ニ私ニ対シテ鄭寧ニ歓迎ノ言葉ヲ述ベテ三鞭ヲ抜イテ祝シテ呉レマシタ、私ハ此席ニ於テモ矢張リ他ノ地方ニ於テ述ベタト同シ趣意ヲ以テ来意ヲ告ゲマシテ、再ビ又此会頭カラ此来意ニ対シテ当商業会議所ハ此所ニ来会シタ者ガ一致シテ承諾致シマスル、依テ貴君帰国ノ後全国商業会議所及東京商業会議所ニ当会議所ハ貴君ノ来意ヲ充分ニ諒諾シタト云フコトヲ伝ヘテ呉レト云フコトヲ申述ベラレマシテ、続テ会議所ノ関係シテ居ル国民貿易会ト云フモノヲ一見シマシタ、之ハ政府ト会議所トノ協力ニ依テ成立シテ居ルヤウニ見受ケマシタガ、余程費用ヲ掛ケテ手続モ具備シテ居ツテ種々ナル調査ガ成立ツテ居リマス、多クハ海外貿易ニ係ルコトデアルト申サレマシタ其貿易会ノ主事トシテコラン、ドウラバウト云フ人ガ特ニ責任ヲ持テ百事担任シテ居ラレマス、従事スル人モ二十名位居リマシテ、各部ニ分レテ調査ヲ致シ居ツタヤウデアリマス、是等ハ至極ノ良制度デ私ハ見傚ヒタイト思ヒマシタ、日本デ農商務省若クハ外務省其他種々ナル方面デ海外ノ模様ヲ色々ニ調査スルヨリモ、寧ロ彼ノヤウナ仕組ニシテ商売人ト政府トカ協同シテ一部局ヲ設ケテ、サウシテ充分ナル統計種々ナル調査ヲ取纏メテ商工業者ニ知ラセルヤウニシタナラバ、唯タ形チノミデナイ事実ニ於テ裨益スル所ガ多カラウト考ヘマシテゴザイマス
欧米各地ノ商業会議所ヲ訪問シタノハソレダケデゴザイマス、尚ホ其外ニ里昂ニ於テ商業会議所ヲ訪問シマシタガ、出席員モ退カレタ後デ唯ダ訪問シタダケニ過ギセマヌ、伊太利ハ前ニ申上ゲタ通リノ次第デゴザイマス、斯ル有様デゴザイマスデ商業会議所ヲ訪問シ商工業者ノ会合ノ機会ニ於テ御附託ノ趣意ヲ通ズルト云フコトニ勉メタノハ、前来陳情致シタ通リノ次第デゴザイマスカラ此段御聞置ヲ願ヒマス
第二ニ申上ゲタイノハ欧米ノ商工業ノ現況デゴザイマス、此事ハ前ニ
 - 第22巻 p.761 -ページ画像 
申上ゲマス通リ言葉ノ通ゼヌ、書物ノ読メナイ者ガ、短カイ時間ニ迚モ真相ヲ窺ヒ知リテ、諸君ノ御利益ニナルコトヲ申上ゲルヤウナコトハ出来マセヌガ、併シ眼ニ見タダケデモ陳述スルトシマシヨウ、但シ是迄或ル場所ニ於テモ述ベマシタカラモウ新聞等デ御覧下スツタ御方モアリマセウカラ、面白クナイ談話ト御聴取下サルデアラウト考ヘマスケレドモ、併シ前ノ商業会議所ノ訪問、意思疏通ダケデハ私モ何ヤラン申シ残ス感シガ致シマスカラ、此欧米両地方ニ対スル商工業ノ有様之ニ対スル観察ト云フコトヲ一言申上ゲタイト考ヘマス、亜米利加ノ事業ノ進歩ト云フモノハ実ニ驚イタモノデゴザイマス、マア何ト譬ヘテ宜ウゴザイマセウカ、殆ンド言語ニモ想像ニモ尽シ得ラレヌト言ハネバナラヌ、第一彼ノ国ハ土地ノ広イノト地味ノ宜イノト農事ノ発達シテ居ルノトデ、農業国トシテ既ニ業ニ亜米利加ハ世界ニ雄飛スルコトガ出来ルノデアル、此農業国トシテ雄飛スルコトノ出来ル上ニ又工業ガ大ニ進ンデ居ル、而シテ商売モ極ク簡便ニ極ク手広ク仕事ヲスルト云フコトニ長シテ居ル、所謂三拍子揃ツタ国ト申シテ宜カラウト思フ、殊ニ此国ハ工賃ノ高イト云フコトガ或ル点ニ於テハ損害ヲ与ヘルト云フコトハナイデハアリマスマイ、偖リナガラ或ル点ニ於テハ寧ロソレガ刺撃トナツテ利益ヲ増スト云フヤウナ現況ガ見ヘル、人ヲ使ハヌコトハ実ニ驚キ入ツタモノデ、如何ナル場所ヘ参リマシテモ事務員抔ハモウ僅カナ人デヤツテ居ル、度々申ス事柄デ或ハ諸君ノ御耳ニモ這入ツテ居ルカモ知レマセヌガ、ナイアガラノ瀑布ニ依テ水力電気ヲ起シタ事業ノ有様ヲ見マシテモ人ヲ使ハヌコトノ一証トスルニ足リマスノデ、現ニナイアガラノ水力電気ヲ今既ニ落成シテ其中ノ三分ノ一ハ電力ヲ供給シテ居ルト云フコトデアリマシタ、其高ハ幾ラカト云フト拾万五千馬力デ、更ニ又彼ノ会社ガカナダ方面ニ設計シテ居ル、其設計モ殆ント竣工セントシテ居ル、ソレガ出来上ルト幾ラノ馬力ヲ持テ居ルカト云フト二拾万馬力、即チ三拾万バカリノ馬力ノ水力電気ガ僅カノ間ニ成立テ居ル、ソレデ拾万五千馬力ノ水力電気ノ人夫ハ幾ラ使ツテ居ルカト言ヘバ、職工ガ僅カ二十四人デヤツテ居ル、チヨツト見ルト人ガ居ルカ何ニカ分リマセヌ……ナイアガラノ水力電気ハ、例ノシカゴ近傍ノ湖水ガ大河トナツテ流レテナイアガラニ於テ百七十幾尺ヲ落下スル、其所ニ竪ニ穴ヲ掘リテ、瀑布ノ水ヲ引クト云フ構造デゴザイマス、而シテ其水ノ落ツル所ニ「トルビン」ガアリテ、其「トルビン」ヲ水力デ廻ハス、「トルビン」ノ廻ル力デ摩擦電気ヲ起ス、斯ウ云フ仕掛デアリマス、成程簡便ナ方法デゴザイマスカラ人数ハ要ラヌ筈デアル、如何ニ亜米利加人デモ煙草ノ製造トカ時計ノ製造トカ云フモノハ、日本程ノ人数ハ居ラヌトシテモ相当ノ職工ガ居リマスガ、水力電気ノ場所ハ人ガ居ルカ居ラヌカ分ラヌ、其場所ヲ見タ後デ事務所ニ参リテ見マシタカ、其日ハ休日デアリマシタガ兼テ通知シテ置キタル為メニ副社長ガ出テ居リマシテ色々説明ヲシテ呉レマシタ、私ハ此水力電気ハ遠送スルモノトノミ考ヘテ居ツタ所ガサウ云フコトデハナイ、其近所ニ会社ガ大キナ地面ヲ持テ居リマシテ工業町ヲ造ルノデモウ既ニ色々ナモノヲ造リテ居ル、前ノ十万馬力ノ水力ハ既ニ三分ノ一ハ約束シテ使用シテ居リマス、彼ノ仕方デ段々ニ進ンデ行キマスレ
 - 第22巻 p.762 -ページ画像 
バ甚シキハ彼ノナイアガラノ瀑布ハ皆水力電気ニナリハセヌカ、軽ク計算シテモナイアガラ瀑布ノ水力ハ八百万馬力アルト云フコトデアリマスガ、実際ニ勘定シマシタラ何千万馬力ニナルカ知レマセヌガ、併シ実地今申上ゲマシタ通リ三十万馬力ハ既ニ動力ニ変ジタノデアリ升其事務所ニ参リマスルト、副社長ノ居ル所ガ畳十畳敷位ノ狭イ所デ其次ノ間ニ事務員ガ数名居ルト云フ有様デス、何百万円ト云フ資本ヲ投シテ何十万馬力ヲ出ス所ノ水力電気ノ工場ノ職工ガ二十四・五人シカ居リマセヌ、事務員及職員トシテモ十四・五人ノ人デ彼レダケノ大キナ事業ヲ経営シテ居ルト云ウコトデアリマス、ソレカラ彼ノ有名ナルカーネギーノ鋼鉄工場ヲ見マシタガ是モ驚キ入リタノハ其工場ノ広大ナル設備ノ完全ナル河ニ沿フテ運輸ノ便ヲ為シテ居リマス、殊ニ驚イタノハ其事務所ノ小サイノデス、事務所ニ参リタノハ私共六人デアリマシタガ六人ノモノガ這入リ切レヌ……這入リ切レヌト云フノハ少シ過言デ人ハ這入リマシタガ椅子ガナイ、私ト外ニ三人ノ人ガ腰ヲ掛ケテ他ノ人ハ起ツテ居ツタト云フ有様デス、閑ナ人ガ其所ヘ来テヤー今日ハ暑イトカ寒イトカ今年ノ議会ガ何ウナルカト云フヤウナ無駄ナ話ハヤツテ居ラヌモノト見ヘル、而シテドウ云フ姿ニ此工場ヲ見セテ呉レルカト云フニ、中々念入リニ見セテ呉レマシタ、迚モ半日位デハ鄭寧ニ見ルコトハ出来ヌカラ粗末ナモノデハアルガ社員ノ食事ヲスル処デ食事デモナスツテ、午前午後一日御覧ナサラヌト概略ナリトモ見ルコトガ出来マセヌカラト云フノデ、而モ大雨ノ降ル最中着衣ヲビシヨ濡レニシテ見マシタガ、昼頃ニ食事ヲシテ二時頃又工場ニ這入テ到頭日ノ暮方マデ見マシタ、其ノ工場ノ壮大ナコト、仕掛ケノ新式ナルコト、規模ノ鞏固ナルコト、恰モカーネギー其人ヲ工場ニ現ハシテ見セルヤウニ思ハレマシタ、又事務員ニ青年輩ノ多イノニモ一驚ヲ喫シマシタ、私抔ハモウ年ヲ取リテ兎角ニ物ヲ懸念シテ若イ者ハ安心ガ置ケヌト云フ感ジガ起リマスガ、カーネギーハ余程英断ノ人ト見ヘマス、蓋シ同氏ハ十二歳ノ時父ニ従テ蘇格蘭カラ彼所ヘ来テ初メハ糸巻小僧カラ出テ火夫ニナリテ一年半バカリヲ精勤シ、殆ント一日ノ間ニ十三時間位勤メタサウデス、十五・六ノ年ニ電信技手ニナリテソレカラ鉄道会社ノ社員トナリ、例ノ石油事業デ大ニ利益ヲ得タガ、石油事業ハ投機仕事ダカラ彼レデハ行末ガ安心ガ出来ヌト云フノデ、遂ニ鋼鉄事業ニ力ヲ入レテ此ノ如キ盛大ナモノトナツタト云フノダサウデス、是ハ私ガ反訳書デ其一班ヲ窺ヒ知ツタノデアリマスガ、其事務所ノ小サイノト事務員ノ年ノ若イノトニ依テ見マシテモカーネギー氏ノ剛毅真摯ナル事ハ知レマス、副支配人ト云フ位置ニ居ル人ハ僅カ三十歳位デ書記長ト云フノガ廿四・五歳位、其副ニ居ツタ人ハ至テ小僧デヤツト学校ヲ出タ位ノ人デシタ、会見ノ後ニ需用ノ模様、供給地ノ有様ナドヲ聞ヒテ見マシタ、元来亜米利加ハ鉄ノ販路ハ殆ント欧洲ヲ圧倒スルト云フコトヲ聞キマシタカラ定メテサウ云フヤウナ強イ意念ヲ以テ他国ニ向テ販路ノ拡張ニ勉メテ居ルデアラウト想像シテ頻リニ質問ヲシテ見マシタガ、怪訝ナ顔ヲシテ、イヤ左様ニ私共ハ海外ニ売拡メヌデモ内地ダケデ需要ガ盛ンデアル、此工場デハ軌条ノ注文ヲ受ケテ東洋ニ多少出シタコトモアルガ、海外ニ出シタノハ僅カナモノダ、欧羅巴
 - 第22巻 p.763 -ページ画像 
ノ工場デハ他国ニ鉄物ヲ出スト云フヲ自慢シテ居ル者モアルサウデスガ、私ノ工場ニ於テハ内地ノ需用ニ充タサレテ海外ヲ観ルニ暇ガナイ位デアルト云フ答ヲシテ居リマシタ、其他ヒラデルヒヤニ於テボルドウインノ汽車製造工場、又シカゴニ於テ客車ノ製造プルマンカールト唱ヘテ盛ンナモノデアリマス、ソレカラボストンニ参リテ其近傍ノウヲルサムト云フ地ニ時計製造会社ガアリマス、之モ随分盛大ナモノデ日本ニモ多ク輸入スルヤウデアリマス、其他紐育ニ於テ煙草ノ製造所ヲ一覧シマシタ、此煙草会社ト云フノガ現ニ日本ニ村井兄弟会社ト協力シタ例ノ亜米利加煙草会社デアリマス、社長ハジユークト云フ未ダ壮年ナ人デ、余程実力ノアル人デアツテ其工場ハニユヨークノ向フ河岸ニゴザイマシテ、大キナ仕掛ケテ且ツ嶄新ノ器械ヲ以テ経営シテ居リマス、又見マセヌ場所デ尤モ寒心ニ堪ヘヌノハテキサス地方ノ紡績事業ダサウデス、之モ段々進ンデ居ルヤウデスガ殊ニ九十九年○一八九九頃ニ、凡ソ百万錘ヲ殖ヤシタト云フコトデアリマス、諸君ノ御承知ノ通リ綿ハ充分出来マスルシ、サウシテ新シイ器械デ紡績及ヒ織物ヲヤル、ソウシテ其製造品ハ何処ヲ目的トスルカト言ヘバ東洋ヲ目的トシテ居ルノデ、日本ノ大敵ト云ハネバナラヌ、前年コムモドール、ペルリ或ハハルリス抔ガ来リテ日本ノ夢ヲ覚シテ呉レタ其恩人タル亜米利加ハ、焉ゾ知ラン工業ニハ我々ノ頭ヲ悩マス一大勁敵タル亜米利加トナリハセヌカト思ヒマス、之ハ悪意デハナイ止ムヲ得ヌ事デスガ、之ニ対シテハ吾々ハ勉励スルヨリ仕方ガナイト思ヒマス、加フルニ近頃南部ノ方デ米ヲ頻リニ耕作スル、其耕作ノ方法ハ大ニ進ンダト云フ噂ガゴザイマスガ、唯ダ一ツ彼ノ国デ懸念スルノハ工場主ト職工トノ間柄ガ常ニ不円満デアル、諸君ノ御案内ノ通リ此頃漸ク解ケマシタ石炭ニ対スル「ストライキ」ナドハ随分激烈ナモノデ、其前ニハドソント云フ地方ノ絹織物工場モ「ストライキ」ノ為メニ騒動シテ居リマシタカラ、一見シタイト思ヒマシタガ不幸ニシテ見ル事ガ出来得マセナンダ幸ヒニ彼レガ早ク済ミマシタカラ、日本ノ生糸ニエライ妨害ヲ来サズニ済ミマシタガ、ドウシテモ是カラ先工業ニ対シテハ米国ニハ同盟罷工ガ屡々起リハシナイカト思ヒマス、又亜米利加ガ近頃左様ニ竜ノ天上スルヤウナ勢ヲ以テ進ンデ行クノハ蓋シ此四・五年農作物ガ誠ニ宜ク出来タ、之ガ為メニ大ニ力ヲ得テ居ルデハナイカ、若シ彼ノ国デモ農業ガ大ニ不作ト云フ事デアリマシタナラバ、局面一変ノ時期ガナイトモ申サレマスマイト思イマス、懸念ヲ申セバ此二点デアラウカト思ヒマス、英吉利ハ御承知ノ通リ一千七百年代カラ商工業ハ言ハヾ独リ舞台デ東洋ニマデ専ラニシテ居ツタト言ツテモ宜イ位デ、イエスト、インジアンノ頃カラ段々印度地方ニ力ヲ入レ、国ヲ挙ゲテ商工業ニ勉メ、殊ニ東洋ニ対スル商業ノ仕組ハ彼ノ国程盛ンナル国ハゴザイマセヌ、印度海ヲ経過シテ帰国シテ見テモ、英吉利ノ実力ノ確乎トシテ居ルコトハ実ニ羨シイヤウデス、地中海ヲ超ヘテマルタ近所、ソレカラシテ蘇西・古倫母・新嘉坡・香港・上海……上海ハ見マセナンダケレドモ、私ハ東洋ノ旅行ニハ英吉利ノアルト云フ事ダケガ知レルト言ヒタイ位デアリマス、而シテ其設備ハ何レノ地方ニ於テモ皆完全シテ居ル、恰度私ガ三十五・六年前ニ行キ又帰途ニ前ニ云フ香港ニ寄リテ見
 - 第22巻 p.764 -ページ画像 
タガ今度見マシタ処デハ実ニ其進歩ハ意想外デアリマシタ、香港ノ太平山ナドハ殆ンド別荘地トナリテ居ル、其山ハ高サカ一千八百尺アル其山ニ「ケーブルカール」ヲ以テ交通ノ途ヲ開キ別荘地ニシテ居ルノデス、登ル時ニハ人ガ倒ニナリテ天井ヲ上リテ、其天井ノ上ニ別荘ガアルト云フ有様デアリマス、蓋シ是等ハ皆英人ノ力デヤツタト云フテモ宜イデス、其他種々ナル設備カアリテ船渠抔モ盛大ノモノガアリマス、又新嘉坡ノ有様モ其以前ハ微々タル一碇泊所デアツタニ過ナカツタノガ、今日ハ実ニ立派ナモノデ古倫母ト雖モ其通リ、到ル処一驚ヲ喫シマシタ、ソレカラ蘇西運河ノ事ニ付テモ恰度一千八百六十七・八年頃英吉利ノ首相ビーコンスフヒイルドガ一夜ニ命令シテ運河ノ株式ヲ十六万七千株総体ノ金額ガ四千二・三百万円ト云フ金高ヲ以テ買ハシテシマツタ、サウシテ今蘇西運河ハ英吉利人ガ全権ヲ持テ居ルノデス、彼ノ事ハ外交上頗ル敏腕ナル取扱デアツタト、今尚ホ褒メラレテ居ル、私ガ先年通行シタ時分ニハ工事中デアリマシタガ今度見テ驚キマシタ、其利益モ亦莫大ナモノダサウデス、日本郵船会社ノ船ガ一艘通過シテモ何万円ト云フ通過料ヲ取ラレルデ、一日中ニハ少ナクモ五六艘ハ通過シマス、其収入ノ大ナル事察セラレマス、是等ハ皆英吉利ニ属シテ居ルノデス、又本国タル英吉利ヲ見マシテモ、倫敦ノ繁昌ハ唯タ雑沓ト言ツテ宜イ位デ、工場ナドハ左マデ敬服スルモノハ見マセヌガ、盛ンナノハ瓦斯事業デス、之ハ余程大キナモノデ、英吉利人程瓦斯ヲ多ク使フ人ハゴザイマセヌ、昔カラ使ヒ慣レテ居ルノデアリマス、倫敦ニハ三ツノ大キナ会社ガアリテ供給シテ居ルサウデス、私ノ見タ会社ハ其資本ヲ注入シテ居ル高ガ一億三千万円、一日ノ製造高ガ五千万立方尺ダサウデス、其他副製物モ総テノ物ガ出来マス、日本デハ「コルタール」「ピツチ」硫酸「アンモニヤ」抔ハ出来マスガ、未ダ染物其他ノ薬品ニナルベキモノガ出来ズニ居ルノハ遺憾デアリマス、倫敦デハ副製物ハ有リト有ラユル物ガ皆出来ル、工場ノ面積ノ広イコト、又其仕掛ノ壮大ナル事、見物人ノ為メニ特ニ鉄道ト機関車ガ備ヘテアリマス、私モ其機関車デ始終案内セラレテ能ク工場ヲ見セテ呉レマシタ、亜米利加デモ電気ト瓦斯ハ随分盛ンデゴザイマシテ、電気事業ハ英吉利ヨリハ寧ロ亜米利加ノ方ガ盛大ニ見ヘマシタガ、併シ瓦斯事業ハ英吉利ニ一着ヲ輸スルヤウニ考ヘマシタ、港ノ設備ハ倫敦ハ余リ敬服致シマセヌ、例ノテームス河ノ港ノ設ケナドハ随分不完全デ、東京湾・大坂湾ハ恥辱カシイト言フテ首ヲ縮メヌデモ宜イヤウニ思ヒマシタ、之ニ引換ヘテ独乙ノハンブルグノ港ナドハ能ク出来テ居リマス、為メニ近頃英吉利デモ頻リニ気ヲ揉ンデ、港湾改良委員ガ出来テ頻リニ調査ヲ致シテ居ル趣デアリマス、併シ玆ニ至ルト英吉利ハ個人ノ権利ガ大変ニ強イカラ僅カノ権利ヲ持テ居ル人カラ議論ガ出ルト思切ツテ改良スルコトハ出来ヌ、思切リテ金ヲ出シテ市ヘ買上ゲテシマツテ、市ガ全権ヲ持チテヤツタラ宜カラウト云フ説モアリマスガ、ソレハ何レノ日ニ行ハルヽカ分ラヌト云フ有様デアルサウデス、一体ノ人気ガ亜米利加ト違ヒマシテ極ク落付イテ居リマス、所謂ドツシリトシタ有様ガアル、其代リ機敏デナイ、新ラシイ方ニ改進シテ行クコトハ甚ダ鈍イヤウニ見ヘマス、一個人ノ交際モ言ハヾ当座ノ交際ガ宜ク
 - 第22巻 p.765 -ページ画像 
ナイ、併シ深ク交リテ見ルト至テ実直デアル、又贔屓強イ観念ガアル故ニ頼母シイ、併シ敏捷ダ怜悧ダト云フ批評ハ如何アリマセウカ、故ニ或点ニ於テハ亜米利加・独逸アタリノ人ニハ一着モ二着モ輸スルト云フ事ガナイトハ申サレマスマイガ、詰リ資本国ト云フ事ハ今尚ホ立派ニ其位地ヲ保チ得ルト観察致シマス、亜米利加ハ内地ノ事業ノ多イ為メニ内地ニ卸ス資本ガ甚タ忙ハシイ、之ニ引換ヘテ英吉利ハ其点ニハ行渉リテ居ル、殊ニ資力ノ強イ華族ノ連中ナドハ日本ト大ニ相違シテ居ル、是ハ内ヲ譏テ外ヲ褒メルヤウデアリマスガ、英吉利ノ貴族ハ勇気ガアリテ敢為ノ気象ニ富ンデ居ル、充分働ク力ヲ持テ居ル、私ハ常ニ新聞ヲ見テ華族ノ悪口ガ載セテアルト彼レハ新聞ガ唯タ悪口ヲ書クノダト考ヘテ居リマシタガ、熟々考ヘテ見マスルト日本ノ華族ナドハモウ少シ力ヲ入レテ国ノ為メニ働クヤウニシマセヌケレバ有テ有リ甲斐ナシ、何ノ役ニモ立タヌト放言シタイヤウニ思フノデス、欧羅巴ノ貴族ハ大ニ其力ガ進ンデ居ルカト思フノデアリマス、政治界ニアレ商売界ニアレ、顔ヲ出シテ働イテ居ル華族ガ指ヲ屈スルニ遑ナイ位デゴザイマス
白耳義ハ余リ申上ゲル程ノコトハゴザイマセヌ、至テ貯蓄ニ富ンテ居ル国デ、又事業モ進ンデ居ル、商売ナリ工業ナリ随分盛ンデアリマスガ、併シ世ノ中ニ面目ヲ現ハシテ居ラヌ、製造事業ナドモ多クハ英吉利ノ下請負ヲシテ居ルト言フコトテアリマス、彼ノ国デ有名ナノハ製鉄事業ト硝子事業デス、独逸ニ参リマシテハ例ノヱツセンノクルツプノ鉄工場ヲ見マシタ、又ジツセルドルフデ恰度博覧会ガゴザイマシタ為メニ此博覧会ニ臨ンデ色々出品ナドモ見マシタガ、ヱツセンニ於ケルクルツプノ鉄工場ハ御話スル価値ガ充分アルヤウニ思ヒマス、殊ニクルツプノ職工ノ取扱振リノ厚キコトハ実ニ敬服ナモノデアリマス、不幸ニモ此クルツプ氏ハ過日病死サレタト云フ事ガ新聞紙ニ見ヘマシテ、其病死ノ有様ヲ見マスト社会党ノ新聞ガ頻リニクルツプヲ攻撃シタ為メニ、非常ニ同氏ノ神経ニ感触ヲ与ヘテ遂ニ脳溢血ヲ起シテ死ンダト云フコトデアリマス、此クルツプノ病死ヲ独逸皇帝ガ大ニ悼ンテ朕ノ親友タルクルツプ云々ト言ハレテ、彼ノ家族若クハ事務ヲ執ル人ニ言聞カシタ趣意書ヲ見マシタガ、私共ガ此新聞ノ事ヲ聞キマシテモ意外千万デ、彼ノ通リノ注意ヲ以テ職工ノ待遇ヲ厚フシテ居リナガラ尚ホ左様ナ批評ヲ受クルト云フコトハ余リ酷イコトデハナイカト考ヘマス、彼ノコロニート称ヘテ七箇所ノ職工寄宿所ガヱツセンニアリマス、クルツプノ各所ノ工場ニ使用スル職工ハ総体二万六・七千人アルサウデスガ、ヱツセンノ工場ニ使ウ職工ガ壱万人バカリデ、ソレガ七箇所ニ区分サレテ、中ニハ通勤スル者モアリマセウガ、多クハ皆寄宿所ニ居リマス、其寄宿所ノ取扱ヒハ実ニ親切ナモノデ、迚モ日本ニ於テハ彼ノヤウナ職工ノ待遇ハ為シ能ウマイト思ヒマス、其親切ナ藹然タル美風、家族的タル処置ナドニ付テハ殆ンド涙ノ流レルヤウニ見ヘマシタ、老養法モアレバ、育児法モアレバ、学校モアリ、病院モアリ倶楽部モアリ、娯楽所モアリ、皆七箇所ニ分レテ設ケテアリマス、サウシテ其取扱振リハ実ニ行届イタモノデス、殊ニ皇帝・皇后両陛下ガ大ニ是ニ意ヲ注イテ屡々コロニーニ行幸ガアリ、倶楽部ナドニモ御立
 - 第22巻 p.766 -ページ画像 
寄ガアリテ食事ノ模様ヲ見ラレ、之ハ結構ナモノヲ食ベサセル、斯ウ云フ気ノ毒ナ職工ナドニハ成ルタケ待遇ヲ宜シクシテヤルヤウニト始終奨励ヲ与ヘラレル、現ニ倶楽部ノ料理場ノ所ニ鍋ノ蓋ガ二ツ額ニシテ懸ケテアリマス、何故斯ウ云フモノヲ額ニシテアルカト聞イテ見マシタ所ガ、去年皇帝ガ参ラレテ、今日ノ料理ハ何デアルカト言フテ蓋ヲアケテ見ラレタ所ガ、其中ニ芋ト牛ガ煮テアツタ、其所デ鍋ノ蓋ガ皇帝ノ御手ニ触レタト云フノデ、紀念ノ為メ額ニシテ大切ニシテアルノダト云フ事デス、大ナルハ皇帝、小ナルハ皇太子ノ御手ガ触レタノダト云フテ居リマシタ、ソレカラ又コロニーノ一室ニ婆サンノ住居ツテ居ル所ニ皇后ガ御出デニナツテ、其二階ニ御案内ヲ申上ゲマシタラバ、二階ノ窓ヲ御覧ニナリテ此窓ハ山ガ見ヘテ好イ景色ダ、此窓ハ美景ノ窓ト名附ケタラ宜カラウト言ハレタノデ今デモ美景ノ窓ト名附ケテ居ルサウデス、斯ク屡々行幸サレテクルツプヲ賞讃シ、且ツ職工ニ対シテクルツプノ注意ノ厚キコトヲ皇帝ガ認ムルト云フコトヲ世ニ表白シテ居ルノハ、決シテ形式デハナイヤウニ見受ケマス、実ニクルツプノ工場ノ壮大ナルト仕懸ケノ盛ンナルトコロニーノ完全シテ居ルノデ、其所ニ住ツテ居ル職工ガ鼓腹撃攘ノ姿ヲ見テ誠ニ感服ヲ致シマシタガ、併シ前ニ申シマシタ通リ不幸ニシテクルツプハ病死サレマシタ誠ニ悼シイ訳デ其攻撃ハ全ク正鵠ヲ失ツタモノデアツタラウト私共ハ考ヘマス
伯林ニ於テ電気ノ工場ヲ見マシタガ、電気ハ実ニ盛ンナモノデ学者デナケレバ詳細ナル批評ハ出来マセヌガ、或ハ亜米利加デアラウガ独逸デアラウガ私共ハ自分ノ意見トシテハ申上ケルコトハ出来マセヌ、其他銀行ヲ二・三見マシタガ之ハ寧ロ亜米利加・英吉利ノ方ガ盛ント申シテモ宜イ位デアリマス、ハンブルグニ参リマシテ見タノハ港デゴザイマス、之ハ実ニ感心デハンブルグノ港湾ト云フモノハ模範ニナルヤウニ考ヘマス、エルベト云フ河口カラ四十哩余上流ニナツテ居ル港デアリマスガ、所謂人為ニ依テ出来テ居ル港デ知識ト金力トニ依テ造ラシタノデアリマス、保税倉庫ハ美麗ニ秩序的ニ建築シテアリマシテ、夫モ一箇所デナイ何処カラモ都合ノ宜イヤウニ運送ノ便宜ヲ図リテヤツテアリマス、併シ現在ノ組織バカリデハ尚ホ足ラヌト見ヘテ例ノハンブルグ、アメリカント云フ大会社ノ船ヲ入レル船渠トシテ、更ニ築港ヲ要スルト云フコトデ、新規ニ一ツノ港湾ヲ造リツヽアリマス、此新シク造ルバカリデモ弐千万円余ヲ要スルト云フコトデス、未ダ工事ハ半成ニモ至ラヌ位デス、是等ヲ委シク見セテ貰ヒマシテ、其計画ノ盛大ナルト注意ノ周到ニシテ、総テガ学問的ニ出来テ居ル所ハ真ニ羡シイ、独逸ガ左様ニ海運ニ力ヲ入レルノハ亜米利加トノ関係デス、亜米利加ノ農産物ガ年々進ンデ其関係ハ欧羅巴ト重モニ取引ガアル、其取引ノ場所モ以前ハ英吉利デアリマシタケレドモ独逸ガ其取引ノ位地ヲ取ラウト云フ考デ、ハムブルグハ亜米利加ノ為メニ左様ニ立派ニ港湾ヲ改良シタモノト見ヘマス、宜ナリ倫敦ニ於テモ近頃港湾改良論ガ起ツタノデアリマス、ケレドモ此点ニ於テハ英国ハ既ニ遅シト批評シテモ宜イカト思ヒマス、独逸ノ海運業ハ実ニ立派ナ船ヲ持テ、最モ良イ港湾ニ拠リテ、最モ良イ仕掛ケデヤツテ居ルノデス、殊ニ近来北支那
 - 第22巻 p.767 -ページ画像 
ニ対スル航路モ種々ニ注意ヲ致シテ居リマス、独逸ノ商売・工業・運輸ニ力ヲ入レマス事モ決シテ英・米ニ劣ル所デハナイ、寧ロ或ル点ニ於テハ優ル有様ガアルカト思ヒマス、仏蘭西ノ模様ハ大分違ヒマシテ巴里ハ所謂極ク美ナル都府、娯楽ニ都合ノ宜イ場所ノヤウニ観察ヲ致シマシタ、私モ三十六年前ニ参リマシテ半年バカリ居リマシタカラ巴里ノ市街ハ処々見覚ヘガアリマスガ、今日ノ有様ハ大分変リテ居リマス、第一交通機関ガ馬デ引クモノヽ外ハナカツタノガ今日ハ電気鉄道ニ変リテ居リマス、ソレカラチユイロリー王宮ガナポレオンノ繁昌ノ時分ニハ大層立派デゴザイマシタガ、一千八百七十年ノ乱デ焼ケテシマヒマシテ今ハ邸園ニナリテ居リマス、又大劇場《グランドヲベラ》ハ巴里ニ於テ最モ自慢ナル建造物デ政府ガ力ヲ入レテ居ル、国ノ一ツノ名物トモ云フヘキモノデアル、昔日私ガ滞留シタ時分ニハ建築中デアリマシタノガ立派ニ落成シテ、而モ演劇興行中デゴザイマシタカラ幸ヒニソレヲ一覧スルコトガ出来マシタ、演劇ガ国風観察ニ付テ一ノ談柄トナルノハチト浮イタ話ノヤウニ聞ヘマスガ、仏蘭西ノ劇場ハ国ノ道具トシテ持テ居ルヤウデス、ゴブランノ織物トカ、セーブルノ陶器トカ、又ハ今ノ劇場ナドハ政府ガ最モ注意シテ外国ニ誇リテ居ル一ノ治国ノ要具デゴザイ升、此劇場抔ノ繁盛ナ処カ充分落成シテ居リマシタカラ、其等ハ大分変リタ所ガアリマシタガ其他有名ナ市街又ハ建造物ニ於テハ余リ変リタルコトハアリマセヌ、彼ノ地ハ市内ニ総テ煙リヲ出スコトヲ嫌フテ、工場ハ多ク市外ニ在リ升為メニ、常ニ市中ハ清潔ニシテ黒イ煙ハ見ヘマセヌ為メニ、工業繁昌ト云フ方カラハ大ニ趣キヲ異ニシマシテ其代リニ住居シテハ居心ノ宜イト云フコトハ申サレマス、尚ホ種々ナル娯楽所抔ハ三十有余年ノ進歩デ総テノ装置設備ガ何モ彼モ整頓シテ居ルヤウデアリマスカラ、若シ長ク遊ンデ居テ且ツ私ノ年ヲシテ今二三十年若カラシメマシタナラバ此娯楽ニ耽ツタノデアラウト思ヒマスガ、不幸ニシテ老境ニアル私ニハ只眼タケノ楽ミヲ取リタバカリデアリマス、工業ハ左程ニ発達シテ居ラヌヤウニ見ヘマスガ、併シ国内ニハ諸方ニ石炭モ出ル所ガアリテ事業モ盛ンデアルト云フコトハ在留ノ日本人モ賞讃シテ居リマシタ、ソレト貯蓄ニ富ミ資金ノ豊カナコトハ英吉利ニ劣ラヌ、彼ノ中央銀行ノ金貨準備ナドハ仏蘭西ハ万国第一デアルト言フテ誇リテ居リマス、併シ経済上ニ付テ日本ニ対スル観念ハ先ツ好クナイ方ト思ヒマス、何故ナレバ露西亜トノ関係ガ余程強イ、是ト同時ニ自ラ日本ニ対シテ疎外ノ念ヲ有シテ居リハセヌカト想像サレマス、クレジー、リヲネー銀行ノジヱルマント云フ人ニ段々質問シテ見マシタガ、私ガ今申シタヤウニ曝露シタ答ハシマセヌガ、其言語中ニ多少其意味ガ含マレテ居ルヤウニ聞取リマシタ、併シ決シテ日本ニ対シテ悪感情ヲ持テ居ルト云フコトデハゴザイマセヌ、唯ダ比較的他ノ国ヨリカ親ミガ薄イト云フコトハ蓋シ免レヌコトヽ思ヒマス、ソレカラ伊太利ハ前ニモ申シタ如ク経過ニ過ギマセヌノデ別ニ報告スヘキ要件モアリマセヌ、之ヲ要スルニ欧米四・五箇国ノ旅行ヲ致シテ各地ノ商業会議所ヲ訪問シ、発途前ニ御附託ニナツタ趣意ヲ申述ベタ顛末ハ前段ニ述ヘマシタ次第デアリマス、又商工業者トシテ各地ヲ経過シタ観察ハ誠ニ皮想ノ見デ、諸君ノ御利益トナル程ノコトハ申上ゲ得
 - 第22巻 p.768 -ページ画像 
ラレマセヌガ、先ツ概況前ニ開陳シタ通リデゴザイマス
想フニ右等ノ国々ノ左様ニ発達スルノハ帰着スル所ハ人ニ在リト思ヒマスレバ、即チ吾々モ人デアリマスカラ、将来我日本ヲ改善スルニ付テハ御互ヒニ大ニ注意シナケレバナラヌコトヽ思ヒマス、而シテ欧米諸国実業発達ノ潮流ハ甚ダ急デアルト云フコトヲ同時ニ考ヘナケレバナラヌト思ヒマス、欧羅巴若クハ亜米利加ガ自国ノミデ働クデナクテ他ニ向テ働キ掛ケルト云フノガ即チ潮流ノ急ナル所以デ、御互ヒニ注目シテ居ル、隣国ニ対スル種々ノ計画ハ皆此潮流ノ急ナルコトヲ表白スルモノデアリマスカラ、吾々ハ日本ダケデ宜イト言ヘバソレマデヽアリマスガ、若シサウデナイト考ヘタ以上ニハ如何ニシテ宜カラウト云フコトハ実ニ将来ノ大問題ニシテ、吾々ハ其方向ニ迷フト言ハナケレバナラヌ、故ニ或ハ諸君ノ思召ニ違フタカ又ハ御趣意ニ適応シタカ分リマセヌガ、英吉利・亜米利加・仏蘭西・独逸ナドニ於テ私ハ日本ノ商工業者ハ斯様ニ考ヘテ居ル、斯ウ云フ希望ヲ持テ居ルト云フコトヲ叮寧反覆申シタノハ、今日諸君ニ向テ其判断ヲ請ハネバナラヌノデアリマス、発途ノ際ハ不注意ニシテ意思疏通ノ内訳ヲ伺ヒ定メテ参リマセヌデシタカラ、或ハ私ガ誤リタカモ知レマセヌケレドモ、私ハ自ラガ信シテ左様ニ申シタノデアリマスカラ、此事ハ御諒承ヲ願ヒマス果シテ私ノ言フタ事ガ誤ラヌモノトシマスルナラバ、即チ日本ノ商工業者ノ意思トシテ将来ニマデ其方針デ進メテ行クト云フコトヲ勉メナケレバナラヌ、若シ然ラズシテ私ノ欧米各地ニ於テ述ベタル言語ハホンノ一場ノ触レ流シデアツタト云フヤウニナルナラバ、私一人ノ不面目デハナイ、日本ノ商工業者ノ不面目デハナイカト憂ヘマスルカラ、未来ノコトハ吾々ノ責任トシテ大ニ考ヘナケレバナラヌト思ヒマス、是ニ於テ先頃東京商業会議所ニ於テモ希望ヲシマシタノハ、第一ニハ今日我商工業ヲシテ世界的ニシテ行カウトスルニハ其目的ニ届キ得ルヤウニシナケレハナラヌ、今迄ハ政治上モ商売上モ兎角ニ内外ノ区別ヲ付ケテ赤鬚ダトカ毛唐人ダトカ云フ観念ヲ以テ待遇スルト云フヤウデアル、実ニ宜クナイコトヽ思フ、又法律規則ニ於テモ多少外ヲ疎ンスルヤウナ嫌ヒガアル、是デハ真ニ世界的ニ進ムコトガ難イデハアルマイカト思ヒマス、内ヲ賤ミ外ヲ尊フト云フコトハ宜シクナイカラ望ミマセヌガ、仮リニ海外ノ有様ヲ見テモ寧ロ外ノ客ヲ敬愛スルヲ文明国ノ態度ノヤウニ思フ、吾々モ大国民ノ度量ヲ以テ内外共通シテ仕事ヲスルト云フコトヲ考ヘタナラバ、外国人ダカラ斯ウシテヤルト云フヤウナ疎外的ノ観念ハ止メネバナラヌ、政治ニアレ商売ニアレ、サウ云フ意念ハ勉メテ排除シタイト希望スルノデアリマス、ソレカラ第二ニハ既ニ海外ニ意思ヲ疏通スルト云フコトハ、私ノ一家言トスルナラバ無責任トシテモ宜シウゴザイマセウガ、有力ナル全国商業会議所ノ代表者トシテ申述ベタコトデアルカラ、一遍言フタガ後トハ何ノ音沙汰モナクシテ足レリト云フコトハ世ノ中ノ実務トシテハ可笑シナモノデハアルマイカ、左レバ是カラ先誰ニ欧米渡航ヲ勧告スルト云フ訳デハアリマセヌガ、意思ノ疏通ヲ継続スル手段ニ付テハ之ヲ全国商業会議所ノ聯合会デ申合セヲスルカ、或ハ其他ノ方法ニ拠リテ日本ノ商工業ノ有様ヲ海外ニ知ラセ、又海外ノ事情ヲ知ル手続ヲ未来ニ継続的ニ
 - 第22巻 p.769 -ページ画像 
講究シタイト思ヒマス、而シテ其方法ハ如何ニシテ宜シウゴザイマスカ、ドウゾ充分ナル御考慮ヲ願ヒマス、今日敢テ研究問題トシテ此聯合会ニ提出スルノデハアリマセヌガ、左レバト云フテイツデモ思ヒ附イタ時ヤルト云フ緩漫ナ問題デハナイカト考ヘマス、ソレカラ第三ニ御互ヒニ力ヲ用ヰナケレバナラヌノハ、英吉利人ニ忠告サレタ商業道徳ト云フモノヲ大ニ修メテ、吾々ノ間ニモ共ニ安心スルヤウニスルト同時ニ、海外ノ人々ニモ日本ノ商売人ハ約束ノ固イモノデアル、道徳ノ厚イ者デアルト云フヤウニ思ハレルヤウニシナケレバ、未来ノ日本ヲシテ真ニ事業ヲ発揚サセル事ハ難イノデハアルマイカト思ヒマス、此三要件ハ過日東京商業会議所ヘモ自分ノ希望トシテ申述ベテ、此事ニ付テハ或ル場合ニハ吾々自分ノ反省ノミニ止ラズ、政府又ハ政党ノ力ヲ仮リネバナラヌ事モアルデアリマセウト考ヘマシタガ、幸ヒ其時ニ諸官庁ノ人々モ臨席サレテ居リマシタカラ、同情ヲ表シテ下サルナラバ共ニ力ヲ併セテ戴キタイト云フコトヲモ申述ベテ置キマシタ、故ニ此席ニ於テモ亦繰返シテ申述ベルノデアリマス、未来ノ希望トシテハ他ニモ数箇条アルデアリマセウガ、前来開陳シタコトヲ幸ヒニ諸君ノ御賛同ヲ得マスルナラバ、未来ニ是非共貫徹シタイト希望シテ止マヌノデゴザイマス、長タラシイ旅行談デ諸君ヲシテ面白イト云フ御感ジヲ抱カシムルコトノ出来ヌノミナラズ、利益ヲ与ヘルト云フコトモ出来ヌノハ慚愧ノ至リデゴザイマスガ、御附託ニ依ツテ各地ヲ巡回シタ経過ノ大略ハ前来陳述致シタ通リデゴザイマス、是デ御免ヲ蒙リマス(拍手起ル)因ミニ一言申添ヘマスガ、各地ノ商業会議所ヲ訪問シタコトニ付テハソレソレ取調ベマシタ報告書モゴザイマスカラ、書面ニシテ追テ御覧ニ入レルヤウニ致サウト思ヒマス、故ニ今申述ベマシタコトモ或ハ文字ニ現ハシテ再ヒ御覧ヲ願ウヤウニ相成リマセウ、蓋シ重複ニ過ギタコトデアリマスガ、他日進呈致ス積リデアリマスカラ左様御含ミ置キヲ願ヒマス、今一ツ申添ヘテ置キマスコトハ矢張リ御附託ニナリマシタコトデ、時ガアツタラ支那ニモ廻リテ参ルヤウニト云フ御趣意ノヤウデアリマシタガ、自分モ其覚悟デ参リマシテ、帰途ニハ印度洋ヲ通リマシタガ、生憎時モ悪クアリ、又少々他ノ事情ノアリマシタ為メニ、香港カラ船ヲ換ヘテ広東ニ渉リ上海ヘ廻リテ参ラウト云フ予想ハ遂ニ実行ガ出来マセヌデ、之ハ御思召ニ背イタヤウナ訳デアリマス、ドウゾ悪カラズ御諒承ヲ願ヒマス
○三十二番(京都、中村栄助君) 私ハ全会ニ代ツテ一応御挨拶ヲ致シ併セテ謝意ヲ表シタイト思ヒマス、此前ノ聯合会ノ時期ニ於キマシテ恰モ当会議所会頭渋沢男爵ノ欧米漫遊御旅行ノ御準備ガゴザイマシテ其際当聯合会ニ於テ今男爵ノ御述ベニナツタ通リ、彼我商工業者ノ意思疏通並ニ彼国商工業ノ真相ヲ御観察願ヒタイト云フ趣意デ、男爵ニ全国商業会議所並ニ商工業者ノ代表ヲ願ヒ、サウシテ其点ヲ希望シタ次第デゴザイマス、サテ唯今御報告ヲ承リマスルト、各国ノ商業会議所ハ勿論、各地ノ有名ナル位地アル人々ヲ御訪問ナサレ、又或工場ニ付イテハ事業若クハ其事務ニ至ルマデ綿密ニ御視察ナスツテ唯今詳細ナル御報告ヲ下サイマシテ、洵ニ吾々満足致シマスル次第デゴザイマス、是ハ全ク男爵渋沢君ノ数年来商工業ニ対スル御鍛練ト御経験トニ
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依ツテ特別ナル力ヲ以テ御観察下スツタ所ノ十分ナル御報告ヲ得テ、実ニ吾々ハ大ナル利益ヲ得タ次第デゴザイマス、是ニ対シマシテハ実ニ言葉ヲ以テ感謝スルニ足リナイコトデゴザイマスガ、尚ホ終リニ臨ンデ男爵ノ御注意ナリ、又御希望ナリニ至ツテハ、吾々各会議所ハ大ニ是ニ付イテハ感ズル所ガアルコトヽ考ヘマスルデ、是非履行スベキハ履行シ、遂行スベキハ遂行シ、詰リ実行致シタイト希望スル次第デゴザイマス、誠ニ短日月ノ間ニ斯カル御観察ヲ下サレテ、其真相ヲ窺ヒ知ルコトノ出来ル御報告ヲ得マシタコトハ、吾々不肖ナル言葉ヲ以テ謝意ヲ述ベルコトガ足リナイコトデゴザイマスガ、全会ニ代ツテ一言ノ御挨拶ヲ謹ンテ申上ゲル次第デゴザイマス
   (是ニ於テ馬越副会長会長席ヲ退キ、渋沢会長着席ス)
   ○栄一是年十月三十日欧米歴遊ヨリ帰朝ス。


渋沢男爵欧米漫遊報告 全国商業会議所聯合会編 第一―二〇三頁 刊(DK220066k-0003)
第22巻 p.770-811 ページ画像

渋沢男爵欧米漫遊報告 全国商業会議所聯合会編
                      第一―二〇三頁 刊
渋沢男爵欧米漫遊報告
    報告
過般小生欧米漫遊ノ際貴会ノ御決議ヲ以テ御附託相成候我国商工業者ト欧米商工業者トノ間ニ意思ノ疏通ヲ図ル件ハ、常ニ注意ヲ加ヘ、各地商業会議所訪問ノ際ハ勿論、其他ノ機会ニ際シテモ、其趣旨貫徹候様精々尽力仕候、猶漫遊ノ行程及各地商業会議所等訪問ノ顛末ハ別紙ニ為書取置候間、右ニテ御了知相成度、此段別紙ヲ添ヘ及御報告候也
  明治三十五年十二月十二日        渋沢栄一
    商業会議所聯合会
            御中
 追申本文ノ件ニ関シテハ、欧米各地到ル処ノ我カ帝国公使館員・領事館員及在留日本人諸氏ヨリ直接間接ノ幇助ヲ得タルコト不少、依テ玆ニ一言ヲ附記致候也

○欧米漫遊行程
 五月十五日   横浜発
   二十三日  ホノルヽ著(一日滞在)
   二十四日  同地発
   三十日   桑港著(四日滞在)
 六月三日    同地発
   五日    ソルトレーキシチー著暫時下車即日同地発
   六日    デンワル著暫時下車即日同地発
   八日    シカゴ著(二日滞在)
   十日    同地発
   十一日   ピッツボルグ著暫時下車即日同地発
   十二日   フィラデルフィア著(一日滞在)
   十三日   紐育著(二日滞在)
   十五日   紐育ヲ発シ華盛頓ニ至リ十七日紐育帰著(四日滞在)
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   二十一日  紐育ヲ発シナイアガラニ至リ二十三日紐育帰著(三日滞在)
   二十六日  紐育ヲ発シボストンニ至リ帰路ニウヘーヴンヲ経テ二十八日紐育帰著(四日滞在)
 七月二日    紐育発
   十日    リバープール著直ニ同地発
   同日    竜動著(二十日滞在)
   三十日   竜動ヲ発シリバープール・マンチヱスタル・ヱジンボロウ・ニゥカッスル・シヱッフィルド等ヲ経テ八月七日竜動帰著(十二日滞在)
 八月十九日   竜動発
   同日    ブラッセル著(五日滞在)
   二十一日  ブラッセルヲ発シアントワルプニ至リ即日ブラッセル帰著
   二十二日  ブラッセルヲ発シリージ地方ニ至リ即日ブラッセル帰著
   二十三日  ブラッセルヲ発シタミーン及ジユーメ地方ニ至リ即日ブラッセル帰著
   二十四日  ブラッセル発
   同日    ヱッセン著(二日滞在)
   二十六日  ヱッセンヲ発シジッセルドルフニ至リ即日ヱッセン帰著
   同日    ヱッセン発
   二十七日  伯林著(四日滞在)
   二十九日  伯林ヲ発シポッダムニ至リ即日伯林帰著
   三十一日  伯林発
   同日    漢堡著(二日滞在)
 九月二日    同地発
   三日    竜動著(四日滞在)
   七日    同地発
   同日    巴里著(八日滞在)
   十日    巴里ヲ発シベルサイユニ至リ即日巴里帰著
   十二日   巴里ヲ発シガイヨン地方ニ至リ即日巴里帰著
   十五日   巴里発
   同日    里昂著(二日滞在)
   十六日   里昂ヲ発シブルゴアン地方ニ至リ即日里昂帰著
   十七日   里昂発
   十八日   羅馬著(二日滞在)
   二十日   同地発
   二十一日  ブリンヂシ著
   同日    同地発
   二十四日  ポルトセード著(一日滞在)
   二十五日  同地発
 十月八日    古倫母著(一日滞在)
 - 第22巻 p.772 -ページ画像 
   九日    同地発
   十六日   新嘉坡著(二日滞在)
   十八日   同地発
   二十四日  香港著(一日滞在)
   二十五日  同地発
   三十日   神戸著
○欧米各地商業会議所等訪問顛末
  ○略ス。本資料第二十五巻国際親善、外遊ノ中「欧米行」ノ条ニ収録ス。
○附録欧米各地商業会議所状況一斑
    (一) サンフランシスコ商業会議所
一、サンフランシスコ商業会議所ト称シ、商工業上ノ利益ヲ保護進捗シ且ツ商事上ノ紛議ヲ仲裁スルヲ目的トス
一、経費ヲ負担スル会員ヲ以テ組織シ、其全般ノ事務ハ、毎年会議所年次定期総会ニ於テ選挙スル十五名ノ常議員ヲ以テ組織スルサンフランシスコ商業会議所役員会ト、常議員ニシテ会議所及役員会ノ正副会頭タル者トヲ以テ、之ヲ行フモノトス
一、役員会ノ権能ハ次ノ如シ
 一会議所ノ財務ヲ処理スルコト
 二会議所書記長・会計主任・図書掛其他必要ナル職員ヲ、会員若クハ其他ノ者ノ中ヨリ任命スルコト、此等ノ職員ハ役員会ノ命ニヨリテ事務ヲ取扱ヒ、役員会ノ定ムル所ニヨリ、報酬ヲ受クルモノトス
 三会議所経費ヲ徴収シ且ツ会員ノ経費負担額ヲ一箇年十二弗以上ニ於テ之ヲ定ムルコト
  役員会ノ徴収スル総テノ経費ハ、会員十名ヨリ会頭宛ノ書面ヲ以テ抗議ヲ申出ツルコトアルトキハ、定期又ハ臨時総会ニテ其経費ノ同意ヲ得ル迄ハ之ヲ徴収スルコトヲ得ス
 四会議所会員ヲ選定承認スルコト
 五会議所積立金其他ノ資産ヲ管理スルコト
一、常議員ニシテ会議所会員タル資格ヲ失ヒ、病気若クハ不在等ノ理由アルニアラスシテ三回以上役員会ニ欠席シタルトキハ、其職ヲ失フモノトス、此場合ニハ次ノ定期総会ニ於テ其補欠選挙ヲ行フ
 役員会ノ定期会議ハ毎月第二火曜日ヲ以テ開会ス、臨時会議ハ常議員三名ノ請求アリタルトキ会頭之ヲ招集ス、会議ハ五名ノ出席ヲ以テ成立スルモノトス
一、役員会ハ次ノ常置委員ヲ置キ以テ常務ヲ行フ、常置委員ハ会頭之ヲ常議員中ヨリ選出ス
  一 会計委員三名
  二 図書委員三名
  三 会員資格調査委員三名
  四 仲裁委員五名
  五 再審委員五名
  六 外国貿易及関税法委員三名
  七 内国商業委員三名
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  八 河湾及海運委員三名
  九 迎接委員三名
一、会頭ハ役員会及会議所ノ各会議ヲ主宰シ臨時ニ之ヲ招集ス、且ツ年次定期総会ニ於テ前年中ノ会議所ノ事務ヲ報告シ且ツ会議所ノ利害上必要ナリト信スル注意ヲ与フルモノトス、又会員トシテ投票権ヲ有スル外ニ役員会及会議所ノ総ヘテノ会議ニ於テ可否同数ノ場合ニ決定権ヲ有ス、副会頭ハ会頭不在ノ場合ニ之ニ代ハルモノトス
 会頭・副会頭不在ノ場合ニハ臨時議長ヲ選挙ス
 会頭・副会頭ハ合衆国及カリフホルニア州ノ公民ニ限ル
一、書記長ハ会議所事務ニ関スル書類ヲ保管シ、往復文書ヲ会議ニ報告スルコト、及会員ノ現在数及一年間ノ移動ヲ年次定期総会ニ報告スルコトヲ司リ、又同時ニ役員会ノ書記長トシテ総ヘテノ書類ヲ保管シ、仲裁・再審委員会ニ出席シ、事件ノ要領及判決ヲ記録スルモノトシ、其記録ハ会議所会員ノ随覧ヲ許スモノトス、其他会議所及役員会ノ命スル事務ヲ行フ
 会議所ノ文書ニハ会頭及書記長署名シ会議所ノ印章ヲ捺用ス
一会計主任ハ会計委員ノ監督ノ下ニ収入金経費ノ収受、会議所積立金ノ保管又ハ会議所ノ支払ニ関スル事務ヲ司リ、且ツ会計委員及会頭ノ指揮ニヨリ会議所ノ資金ノ預入ヲ取扱フ、又常ニ収支ノ計算ヲ為シ、其状況ヲ役員会ニ報告ス、又会計委員ノ証明ヲ得テ一箇年間収支計算ノ報告ヲ年次定期総会ニ提出スルモノトス
一、図書掛ハ会議所々有ノ図書ノ目録ヲ調製保管シテ会員ノ閲覧ヲ許ス、又年次定期総会ニ前年中ノ書籍ノ増加ヲ購入・寄贈等ニ分チ、寄附者ノ姓名ヲ明カニシテ報告スルモノトス
 書記長・会計主任及図書掛ハ一人ニテ兼任スルコトヲ得
一、会議所定期総会ハ三箇月毎ニ開クモノニシテ一月・四月・六月・十月ノ各第三火曜日ト定ム
 其会議事項ノ順序ハ次ノ如シ
  一 諸記録ノ朗読
  二 往復文書ノ報告
  三 補欠選挙
  四 仲裁・再審委員会ノ報告
  五 其他委員会ノ報告
  六 未決事務ノ報告
  七 新規事務ノ報告
 会議所年次定期総会ハ毎年一月之ヲ開ク、其会議事項ノ順序ハ次ノ如シ
  一 諸記録ノ朗読
  二 書記長ノ報告
  三 会計主任ノ報告
  四 図書掛ノ報告
  五 会頭ノ報告
  六 補欠選挙
  七 其他ノ事項
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一、会員ハカリフホルニア・オレゴン・ネヴダ・ワシントン各州ニ在住スル商事会社・商人・商品仲買人・製造業者・銀行家・地方保険会社役員ニシテ、会員資格調査委員ニ宛テタル申込書ヲ提出シ、役員会ニ於テ三名ノ否認投票ナキトキハ入会ヲ許与セラルヽモノトス又会員資格調査委員会及役員会ノ一致ヲ以テ選出セラレタルモノハ会員タルコトヲ得
 名誉会員ハ会員資格調査委員会及役員会ノ一致ヲ以テ選挙セラレ、会議所会員三分ノ二ヲ以テ承認セラレタル場合ニ於テ当選スルモノトス、名誉会員ハ合衆国ニ功労アルモノニシテ毎年二人マテ之ヲ推選スルコトヲ得、其選挙ハ投票ニヨル
一、会員ハ会議所ノ必要ニヨリテ役員会カ要求スル金額ヲ会計主任ニ納入スル義務ヲ有ス、其金額ハ前金トシ、三箇月ニ三弗以上六弗以内トス
 此義務ハ州ニ不在ノ故ヲ以テ之ヲ免ルヽコトヲ得ス、若シ三箇月此等支払ノ義務ヲ拒ミ又ハ怠ルトキハ、役員会ノ三分ノ二以上ノ投票ヲ以テ之ヲ除名ス
一、会員ニシテ会員ヲ辞セントスルトキハ其旨ヲ書記長ニ届出ツヘシ但シ負担スル経費ヲ全納セサレハ正当ニ辞シタルモノト認メラレス
一、仲裁手数料ハ仲裁又ハ再審委員会ノ招集ニ対シ五弗ヲ、又判定ノ@本ニ対シテ五弗以上ヲ書記長ニ支払フヲ要ス、此手数料ノ外、各当事者ハ事件ノ大小ニヨリテ委員会ノ定ムル所ニ従ヒ更ニ十弗以上百弗以内ノ手数料ヲ支払フヲ要ス、但シ当事者カ会議所会員タル場合ニハ其委員会ニテ徴収スヘキ手数料ノ半額ヲ支払フ
 此等ノ手数料ハ総ヘテ会計主任ニ納ムルモノニシテ、其半額ハ会議所ノ費用ニ充テ、其他ハ此等事件審問ノ為メ正規ニ出席シタル委員ニ均一ニ分配ス
 仲裁又ハ再審委員会ニ於ケル判定ハ、次ノ定期総会ニ報告スルモノトス
一、現任役員ノ氏名ハ次ノ如シ
 会頭ジヨージ アルマー ニウホール
 第一副会頭エドワード アール ディモンド、第二副会頭ウイルリアム イー ミグセール、書記長・会計主任兼図書掛イー スコツト(理事及各種委員ノ氏名ハ略ス)
一、会議所ノ経費ハ一千九百二年一月二日ニ終ル一箇年五千六百五十弗六十七仙ナリ
    (二) シカゴ市商務会議(Board of Trade of the City of Chicago)
一、商業取引ヲ容易ナラシメ、商人間ノ慣例ノ統一ヲ計リ、商業上ノ公義ト平等トノ主義ヲ確立シ、商業上ノ紛争ヲ仲裁シ、商業及経済ニ関スル報告ヲ与ヘ、共同ノ便宜ニヨリ会員ノ従事セル商業ノ進歩ヲ期スルヲ以テ目的トス
一、会員タラント欲スルモノハ、会員二名以上ノ紹介ニヨリ、其ノ職業・姓名ヲ記載シ、書面ヲ以テ会員資格調査委員ニ申出ツ、委員ハ委員会ヲ開キ其ノ資格ヲ調査シ、十日以上取引所ノ掲示場ニ公告セ
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シ後、役員会ニ於テ十名以上ノ同意アルトキハ之ヲ会員トス
 会員タルノ資格ハ成年以上ノ男子ニシテ、善良ナル性質ヲ有シ、充分ナル信用アルモノニ限ル
 会員ニハ商務会議ノ印章ヲ具ヘ、会頭及書記長ノ署名アル会員証ヲ与フ
 会員ニシテ通知ヲ受ケテヨリ三十日以内ニ於テ会費ヲ支払ハサルトキハ、会費ヲ支払フトキマテ商務会議ニ出入スルコトヲ禁シ、一年間会費ヲ支払ハサルトキハ之ヲ除名ス
一、会頭一名・副会頭二名・常議員十五名ヲ置キ、会頭・副会頭・常議員ニヨリテ役員会ヲ組織シ、商務会議一切ノ事務ヲ処理シ、及其所有セル不動産ヲ管理ス
一、会頭ハ総会及役員会ヲ主宰シ、必要ト認ムルトキハ臨時ニ総会若クハ役員会ヲ召集スルコトヲ得、会頭ノ任期ハ一箇年トシ、毎年之ヲ改選ス
一、副会頭ハ会頭不在ノ節若クハ其任務ヲ行フ能ハサルトキ会頭ニ代リテ其任務ヲ行フ、副会頭ヲ分テ第一副会頭・第二副会頭トシ、其就任ノ順序ニヨリ之ヲ定ム、副会頭ノ任期ハ二箇年トシ、毎年一名ツヽ之ヲ改選ス
一、常議員ノ任期ハ三箇年トシ、毎年五名ツヽ之ヲ改選ス
一、役員ノ選挙ハ毎年一月二日後ノ最初ノ月曜日午前十時ヨリ午後二時マテニ取引所ニ於テ之ヲ施行ス
一、役員会ハ毎年選挙後ノ最初ノ火曜日ニ開会シ、商務会議ノ事務ヲ行フニ必要ナル書記長・副書記長・会計主任・書記・書記補・雇員及監視員・検量員等ヲ任命ス
 役員会ハ必要ナル場合ニ於テ粉類・穀類・食料品・酒類・材木其他会員ノ取引セル商品ノ等級及品質ノ標準ヲ定メ、監視員・検量員等ヲシテ烙印若クハ記号ニヨリテ其等級・品質・数量等ヲ証明セシメ取引ノ際便宜ヲ与フルコトアルヘシ
 役員会ハ毎週火曜日ニ之ヲ開ク、若シ火曜日大祭日ニ当ルトキハ休会ス
 常議員理由ナクシテ六回引続キ役員会ニ欠席スルトキハ退職セシモノト見做シ、直ニ補欠選挙ヲ行フ
一、仲裁委員ハ商業上ノ紛争ニ関シ当事者ヨリ判決ヲ請求シタルトキ其事件ヲ審査シ、之ニ判決ヲ与フ、仲裁委員ハ十名トシ、会員ノ中ヨリ之ヲ選挙ス、任期ハ二箇年トシ、毎年五名ツヽ之ヲ改選ス、仲裁委員ハ同時ニ再審委員タルヲ得ス
一、再審委員ハ仲裁委員ノ与ヘタル判決ニ対シ再審ヲ請求シタルモノニ対シ、再審ノ上之ニ最後ノ判決ヲ与フ、再審委員ハ十名トシ、会員ノ中ヨリ之ヲ選挙ス、任期ハ二箇年トシ、毎年五名ツヽ之ヲ改選ス、再審委員ハ同時ニ仲裁委員タルヲ得ス
一、仲裁及再審ノ判決書ハ審判後二日以内ニ書記長ヨリ之ヲ当事者ニ与フ
 会員ハ何人ニテモ書記長ニ請求スルトキハ審判記録ヲ検閲スルコトヲ得
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 仲裁委員及再審委員ハ適当ナル理由ナクシテ審判ニ欠席シタルトキハ、一日三弗ノ過料ヲ課ス
一、仲裁及再審ノ手数料ハ左ノ如シ
  五百弗ヨリ一千弗マテノ事件      十五弗
  一千弗ヨリ一千五百弗マテノ事件    二十弗
  一千五百弗ヨリ二千五百弗マテノ事件  二十五弗
  二千五百弗以上ノ事件         五十弗
一、書記長ハ商務会議ノ印章・書類及不動産ヲ保管シ、シカゴ市ノ商工業ノ統計及同市ニ輸出入シタル商品ノ統計ヲ調製シ、又会頭ノ命ニヨリ常議員及会員ニ宛テ役員会及総会召集ノ通知書ヲ発シ、仲裁委員会・再審委員会及役員会ニ出席シ、議事ヲ記録シ、会費及手数料ヲ徴集シ、之ヲ会計主任ニ渡シ、其他役員会ノ命スル一切ノ事務ヲ行フ
一、副書記長ハ役員及書記長ノ命ニヨリ書記長ノ任務ヲ行ヒ、書記長不在ノ節ハ書記長ノ代理ヲナス
一、会計主任ハ書記長ヨリ商務会議ニ属スル資金ヲ受取リ之ヲ保管シ会頭ノ記名アル書記長ノ命令書ニ従ヒ金銭ノ支払ヲナシ、総会ニ於テ収支ノ計算報告ヲナス
 金銭ノ収支ハ商務会議ニ備ヘラレタル会計台帳ニ記載シ、何時ニテモ役員若クハ委員ノ閲覧ニ供スルコトヲ得セシム
一、現任役員ノ氏名ハ次ノ如シ
  会頭ウイルリアム エス ワーレン
  第一副会頭エドワード エス アダムス、第二副会頭ウイルリアム エル グレグソン、書記長ジー エフ ストーン、会計主任イー エー ハミル、副書記長アール エス ウォーシントン
一、商務会議一箇年間ノ経費ハ最近ノ報告ニヨレハ二十六万一千二百三十七弗ナリ
    (三) フィラデルフィア商品陳列館
一、フィラデルフィア商品陳列館ハ市参事会及市会ヨリ選出セラレ市長ノ認可ヲ得タル十四名ノ終身監理人及現任ペンシルヴァニア州知事・フィラデルフィア市長・フィラデルフィア市参事会々長・フィラデルフィア市会議長・同市教育局長・同市公立学校長・ペンシルヴァニア州教育長官・同州山林長官等ヲ以テ之ヲ管理スルモノトス
一、フィラデルフィア商品陳列館ハ館長・副館長・会計主任・書記長総ヘテノ事務ヲ行フ
一、其目的トスル所ハ次ノ如シ
 一世界ノ各地ヨリ商業ニ関スル諸報告ヲ蒐集シ、以テ直接ニ商業者ヲ利スルコト
 二外国製ノ商品ヲ陳列シ、自国ノ製造業者ニ外国市場ノ需要ニ関スル適切ナル智識ヲ与ヘ依テ以テ其製造品ノ販路拡張ヲ助クルコト
 三世界各地ノ生産物見本ヲ蒐集シ、自国製造業者・販売者及消費者ニ最モ有要ナルモノヲ識別撰択スルノ便ヲ与フル事
 四各地ノ生産物ヲ精密ニ試験シ、学理的若クハ他ノ有要ナル報告ヲ与ヘ、依テ以テ製造業者及消費者ニ撰択取捨ノ便益ヲ与フルコト
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一、陳列館ハ次ノ各部ニ分ツ
 一 原産物部
  (イ) 各地ノ原産物同種ノモノヲ一室ニ蒐集シテ、比較研究ノ資ニ供スルコト(物品別)
  (ロ) 各国ノ原産物ヲ国別ニ一室若クハ数室ニ陳列シテ、各国産物全体ニ関スル綜合的観察ノ資ニ供スルコト
 二 学術及試験部
  此部ハ蒐集シタル総テノ産物ノ品質及比較価格ヲ調査スル為メニ設ケタルモノニシテ、新ニ出品アリタルトキハ、此部ノ試験室ニ於テ最モ完全ナル方法ヲ以テ物理・化学及植物学等必要ナル試験ヲナスモノトス
 三 外国製造品部
  此部ニ於テハ現時亜米利加・濠洲・南亜弗利加及其他ノ重要ナル市場ニ販路ヲ有スル商品ヲ蒐集シ、自国製造業者ヲシテ外国ノ競争者カ前記市場ニテ如何ナル商品ヲ販売シ居ルヤヲ知ラシメ、従ツテ新商品ヲ製造シ新販路ヲ開始スルコトノ有利ナルヲ覚ラシムルカ為メナリ
 四 図書館部
  陳列館ノ重要ナル一部ハ学術及商業ニ関スル公開図書館部ナリトス、此部ニテハ生産者及消費者ニ便益ヲ与フル所ノ学術図書及統計書類、学術・経済・商業ニ関スル新聞雑誌、領事庁及其他ノ官庁ノ諸報告等ヲ蒐集シ置キテ、質問ニ対スル答案ノ材料ニ供シ、兼テ調査ヲナサントスルモノヽ参考材料ニ備フ
 五 通信部
  此部ハ外国商業ニ関スル総テノ事項ヲ蒐集類別シ、又図書館部ノ材料ヲ調査シ置キテ質問者アリタルトキハ明瞭ナル答案ヲ与フ
  此通信部ハ夥多ノ北米領事、本館顧問委員ヲ派遣シタル総テノ商業会議所、各国政府及其特派員及在外ノ本館通信員等之ヲ概括スレハ数千ヲ超ユル団体ト通信ノ関係ヲ有ス
  此部ハ外国市場ノ趨勢、貨物ノ売買高・運賃其他一切ノ報告ヲ蒐集スルヲ以テ、当国ノ商業者及製造業者ハ此部ニ問合セ依テ以テ取引ヲ開始スルヲ得可シ
    (四) ニウヨーク州商業会議所
一、ニウヨーク州商業会議所ハ商工業ヲ保護進捗シ且ツ貿易航海等ニ関スル紛議ヲ仲裁スル目的ヲ以テ組織シタル商人ノ団体ニシテ、米国独立前即チ一千七百六十八年四月五日ノ創立ニ係ルモノナリ、当時発企人タリシ者ノ氏名左ノ如シ
                ジヨン クルーガル
                ジヨージ フヲツリオット
                ウオルター フランクリン
                ヱリアス デスブローゼス
                ウイルリアム ワルトン
                ロバルト ロツス ワッドル
                ジヱームス ジヤンシー
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                サミユール ヷルブランク
                アチヱソン トムプソン
                ジヤコツブ ワルトン
                セヲフイラクト バキー
                ロウレンス コルトライト
                ロバルト ムーレー
                トーマス ホワイト
                トーマス ランダル
                フユー ワルレース
                マイルス シヤルブルーク
                ウイルリアム マカダーム
                アイザック ロウ
                アンソニー ヴンダム
 当初ハ単ニニウヨーク商業会議所ト称セシカ、降テ米国独立後即チ一千七百八十四年ニ至リニウヨーク州政府ノ認可ヲ経、其組織ヲ変更シテ更ニ之ヲニウヨーク州商業会議所ト改称セリ、今ノニウヨーク州商業会議所即是ナリ
一、商業会議所役員ハ会頭一名、副会頭十二名、会計主任・書記長各一名ニシテ、投票ヲ以テ之ヲ選挙シ、其最多数者ヲ当選者トス
 副会頭ハ三名ヲ以テ一部トナシ、之ヲ四部ニ分チ、年々一部ヲ改選スルモノトス
 毎年五月ノ総会ニ於テ会頭・副会頭・会計主任・書記長ノ選挙ヲ行フ役員ニ当選シタルモノハ在職間各其事務ニ従事スルモノニシテ、若シ就職ヲ拒ムカ若クハ辞職スルカ死亡スルカ又ハ疾病等ニ罹リ為メニ欠員ヲ生シタル場合ニハ、次ノ定期総会ニ於テ補欠選挙ヲ行フ
 会頭ハ三箇年以上就職スルコトヲ得ス、但シ選挙投票四分ノ三ヲ得ルモノハ此限リニアラス
一、会頭ハ会議所ノ事務ヲ監督シ、定期総会及臨時総会ニ於テ議長トナリ、又特別委員ヲ選定ス(会議所ノ特ニ命スル場合ヲ除ク)会頭ハ会計報告書其他会議所ニ関スル総テノ書類ニ署名ス
 会頭ハ会員十名ノ請求アルトキハ臨時総会ヲ開キ、書記長ヲシテ其開会ノ目的・場所及日時ノ通知ヲナサシムルモノトス
 副会頭ハ会頭不在中年長順ニ依リ会頭ニ代リテ其事務ヲ掌トルモノトス
 会計主任ハ金銭ノ出納ヲ司リ、規則ニ依テ定メラレタル外ハ総ヘテ理事委員ノ許可ヲ得テ其出納ヲ行ヒ、且ツ金銭出納ニ関スル帳簿ヲ整理シ、定期総会ニ於テ其謄本ヲ会員ニ配布ス、此謄本ハ特ニ命シタル監査人ノ監査ヲ経テ会頭ノ承認ヲ得ルモノトス
 書記長ハ会議所ノ事務ヲ掌リ、建物・財産(不動産ヲ除ク)ノ保護ヲナシ、家具・図書・絵画・肖像・証書類及通信書類ヲ保管シ、文書ヲ整理ス、必要ト認ムルトキハ財産ニ火災保険ヲ附ス、又総テ会議ニ出席シ先例ニ従ヒ議事ヲ記録保管ス、又理事委員及其他ノ常置委員会ノ議事ヲ記録シ、或ハ特別委員ノ事務ヲ補助ス
 又会頭ノ命ヲ受ケ通信報告ヲナシ、総テノ書類ニ会頭ト連署シ、会
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議所ノ諸印ヲ保管ス
 書記長ハ又会計ノ事務ヲ補助シ、又理事委員ノ指揮ニ従ヒテ年報ヲ編纂スルモノトス
 書記長不在ノ時ハ会頭会員中ヨリ其適当ト認ムルモノニ代理ヲ委任スルコトアルヘシ
一、毎年五月ノ定期総会ニ於テ会員中ヨリ三年ノ任期ヲ以テ財産管理委員ヲ選挙シ、之ニ会頭ヲ加ヘテ財産管理委員会ヲ組織シ、不動産ヲ管理ス、委員ニ欠員ヲ生シタル場合ニハ次ノ定期総会ニ於テ選挙ヲ行ヒ補充スルモノトス
 財産管理委員ハ不動産ノ保護・管理又ハ受渡、建築ノ変更、新築其他不動産ニ関スル契約ニ係ル諸事項ヲ取扱フモノニシテ、別ニ会計掛及書記ヲ選定シ、若シ必要ト認ムルトキハ補助員ヲ採用スルコトヲ得
 会議所ニ属スル不動産ノ譲渡又ハ質入ハ定期総会若クハ臨時総会ノ決議ヲ経ルコトヲ要ス、不動産ニ関スル書類ハ会議所ノ印ヲ捺シ、会頭及書記長連署ス
 財産管理委員ハ会計主任ヲ経テ会議所ノ為メニ特ニ寄附シタル現金又ハ証券ヲ受理シ、寄附ノ目的ニ従ヒ之ヲ処分ス、但シ慈善事業ニ関スル寄附ハ除ク
 会頭ハ財産管理委員会ノ議長トナリ、会務ヲ処理シ、書記ハ財産管理委員ノ命ニ従ヒ記録ヲ整理ス、会計掛ハ財産管理委員会ニ属スル金銭ヲ保管シ、借家料及其他ノ収入ヨリ生スル金銭ヲ収納シ、又財産管理委員会ノ命ニ依リ仕払ヲナシ、金銭出納簿ヲ整理ス、且ツ財産管理委員ノ指揮ヲ受ケテ不動産ヲ管理ス
一、会議所ニハ左ノ常置委員ヲ置キ各其常務ヲ行フ
  一 理事委員(会頭・年長ノ二副会頭・会計主任・書記長ヨリ成ル)
  二 財政及貨幣委員
  三 外国貿易及関税法委員
  四 内国商業委員
  五 港湾及海運業委員
  六 保険委員
  七 州税市税委員
  八 慈善基金委員
 理事委員会ヲ除クノ外各常置委員会ハ委員長一名・委員四名ヨリ組織シ、毎年五月定期総会ニ於テ選挙ス、欠員ヲ生シタルトキハ定期総会ニ於テ補充ス、委員会ハ三名ノ出席ヲ以テ成立スルモノトス
 理事委員ハ会議所ノ財産及事務ヲ管理シ、書記長ノ顧問トナリテ之ヲシテ年報ノ調製ヲナサシム、且ツ会議所ニ対スル仕払請求書ヲ監査シ、財産管理委員ノ主管ニ属スルモノヲ除キ会頭ノ承認ヲ経テ其仕払ヲ命ス、会頭不在ノトキハ副会頭一人之ヲ代理ス
 理事委員ハ諸員ノ給料及報酬額ヲ決定シ、毎年五月ノ定期総会ニ先タツ一回前ノ定期総会ニテ次ノ定期総会ニテ選挙スヘキ役員ノ指名ヲナスヘシ、又会員ノ退会ヲ許可シ、会費ノ払戻ヲナス
 又会員中不徳ノ行為アリトノ告発ヲ受クル場合ニハ其事由ヲ会議所
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ニ報告ス、毎月定期総会ニ先タツ火曜日ニ於テ会議ヲ開ク
 慈善基金ニ関スル委員ハ慈善事業ニ充ツル為メ寄附金ヲ管理シ、之ヲ適当ノ時期ニ従ヒテ処分ス、其他ノ委員ハ其嘱託セラレタル事項ヲ調査研究シ、其結果及委員ノ意見ヲ会議所ニ報告ス、各委員ハ其議事ノ顛末ヲ記述シ、之ヲ毎年五月ノ定期総会ニ報告スヘシ
一、会議所ハ州法ノ定ムル所ニ従ヒ別ニ次ノ委員ヲ設ク
 一 水先案内者委員
  水先案内者委員ハ三名ニシテ、任期ヲ三年ト定ム、特ニ開キタル臨時総会ニ於テ投票ヲ以テ選挙ス、死亡・辞職等ニ依リ欠員ヲ生シタルトキハ臨時総会ヲ開テ補充シ、其補充委員ノ任期ハ当選ノ日ヨリ起算ス(一千八百五十二年六月二十八日通過紐育州々法)
 二 海員寄宿舎委員
  海員寄宿舎委員ハ一年ノ任期ニシテ、毎年五月ノ定期総会ニ於テ会議所会員中ヨリ一名ヲ選挙シ、紐育及ブルークリンニ於ケル水夫寄宿舎ヲ監督ス(一千八百六十六年三月二十一日通過紐育州々法)
 三 航海学校委員
  航海学校委員ハ三名ニシテ、其任期ヲ一年ト定ム、毎年五月ノ定期総会ニ於テ会議所会員中ヨリ投票ヲ以テ選挙ス(一千八百七十三年四月二十四日通過紐育州々法)
  前記委員ニシテ死亡・辞職等ニ依リ欠員ヲ生シタル時ハ、水先案内者委員ヲ除クノ外定期総会ニ於テ補充ス
一、会議所定期総会ハ毎月第一木曜日ニ開会スルモノニシテ、出席者二十五名ヲ以テ成立ス、若シ定数ニ充タサルトキハ会頭ハ同月中ニ開会ノ日ヲ定ム、又定期総会ノ定日カ大祭日ニ相当スル時ハ次週ノ木曜日ニ延期ス、但シ会議所会員多数ノ決議ニ依リ此規則ニ依ラサルコトヲ得
 臨時総会ハ会員十名ノ請求アリタルトキ又ハ会頭若クハ副会頭ノ年長者ノ必要ト認ムル場合ニ於テ開会ス、其場合ニハ開会ノ一日前ニ場所・開会日時及其目的ヲ各会員ニ通知ス、又臨時総会ニ於テハ招集ノ目的事項以外ニ渉ルコトヲ得ス
 会議所ノ定期総会ハ次ノ順序ヲ以テス
  一 諸記録ノ朗読
  二 会員指名ニ関スル理事委員ノ報告
  三 会員ニ関スル投票
  四 理事委員ノ報告
  五 他ノ常置委員ノ報告
  六 財産管理委員ノ報告
  七 特別委員ノ報告
  八 未決事務ノ報告
  九 新規事務ノ報告
一、紐育州及其附近ノ州ニ於ケル商人及商業貿易ニ直接ノ関係ヲ有スルモノニアラサレハ会員ト為ルコトヲ得ス、会員タラント欲スルモノハ会員一名ノ副署シタル書面ニ履歴書ヲ添ヘ之ヲ会議所理事委員
 - 第22巻 p.781 -ページ画像 
ニ申出テ、理事委員之ヲ承認スル時ハ其旨ヲ次ノ定期総会ニ報告ス定期総会ハ之ヲ投票ニ付シ若シ五票以上ノ否認投票ナキ場合ニハ会員タルモノトス
 会議所ハ不徳ノ行為アル会員ヲ除名スルコトアルヘシ、除名ハ定期総会ニ於テ其会員ヲ審問シ、出席者三分ノ二以上ノ投票ニ依リ之ヲ決ス
 書記長ハ会員ノ入会料及会費ヲ納メシ者ニ会員証ヲ交附スヘシ
 会員ニシテ其数一千五百名(名誉会員ヲ除ク)ヲ超ユルトキハ何人モ入会スルコトヲ許サス、但シ死亡又ハ他ノ事項ニヨリ欠員ヲ生シタル時ハ申込順ニヨリ入会ヲ許スモノトス
 名誉会員ハ定期総会或ハ臨時総会ニ於テ理事委員ノ指名ニ依リ之ヲ選挙ス
 名誉会員ハ会員ノ有スル総テノ特権ヲ有シ、会費ヲ払フノ義務ナシ
一、会議所会員ハ入会料二十五弗ノ外会員タル間会費トシテ毎年二十弗ヲ払フモノトス
 理事委員ハ場合ニヨリ会費ヲ払戻シ又何時ニテモ会員ノ辞職ヲ容ルルノ権アリ
 会員ハ退会スルトキマテノ会費ヲ払フヘシ、会費払込ヲ二箇年間停滞セシ会員ハ理事委員之ヲ除名ス
    (五) ボストン商業会議所
一、ボストン商業会議所ハ、一千八百八十五年マッサチュセッツ州法律第二百四十四号ヲ以テ、従来ボストン市ニ存在スルボストン商品取引所及ボストン農産物取引所ノ二者ヲ相合シテ組織セラレタルモノナリ
一、会議所ノ目的ハ次ノ如シ
  一 ボストン市商品取引所ヲ経営監督スルコト
  二 商業上ノ公正主義ヲ発揮スルコト
  三 商慣習ノ一致ヲ計ルコト
  四 弊害ヲ匡正スルコト
  五 重要ナル実業上ノ報告ヲ蒐集頒布スルコト
  六 紛議ヲ調停スルコト
  七 ボストン市ノ一般商業上ノ利益ヲ伸張スルコト
一、会議所ハ別ニ恵与基金ナルモノヲ設ケ、会員ノ死亡シタル場合ニ其遺族ヲ救済スルモノトス
一、会議所ノ役員ハ会頭・第一副会頭・第二副会頭・会計主任・書記長及十二名ノ常議員ヨリ成ル、会頭及副会頭ハ毎年ノ年次総会ニ於テ投票ヲ以テ之ヲ選挙ス、常議員ハ投票ヲ以テ選挙シ、毎年四名ツツヲ改選ス、会頭・副会頭及常議員ハ役員会ヲ組織シ、会議所ノ事務ヲ行フモノトス
 会計主任・書記長ハ何レモ役員会之ヲ任命ス
 会頭ハ会議所及役員会ノ会議ヲ主宰ス、又年次総会ニ於テ又ハ自ラ適当ト認ムル時機ニ於テ、会議所ノ繁栄幸福ヲ増進スヘキ事柄及会議所ノ効用ヲ増加スヘキ事柄ヲ協議発言シ、其他会議所会頭ノ職務上行フヘキ多クノ職務ヲ行フモノトス
 - 第22巻 p.782 -ページ画像 
 副会頭ハ会頭不在ノ場合ニ其職務ヲ代理スルモノトシ第一副会頭先ツ之ニ代ル、会頭及第一副会頭不在ノ場合ニハ第二副会頭之ニ代ル会頭及両副会頭不在ノ場合ニハ役員会ニ於テ常議員中ヨリ代理ヲ選定ス、但シ特ニ之ヲ選ハサルトキハ現任常議員ノ年長者之ヲ代理ス
一、役員会ハ会議所ノ定款ニ牴触セサル範囲内ニ於テ必要ナル諸規則ヲ定ム、又会議所ノ財政及事務ヲ処理シ、会員ノ資格ヲ判定ス、又会議所ノ規則ニ違反スルモノヨリ科料ヲ徴収スル権ヲ有ス
 役員会ハ会議所内ニ相当ノ室ヲ設ケ、新聞紙・市場報告・電報及統計報告ヲ備ヘ付ケ、其他会議所ノ効用ヲ増進シ、法律ノ主意ヲ実行スルニ適当ナル事務ヲ行フ、且ツ会議所及会員ノ利益ヲ増進スルニ必要ナリト認ムル書記長其他ノ掛員ヲ任命シ、又会計主任・書記長ノ報酬ヲ定ム
 役員会ノ定期会議ハ毎月最終ノ火曜日ニ之ヲ開ク、若シ大祭日ニ当ルトキハ翌日之ヲ開ク、臨時会議ハ五名ノ常議員ノ請求アリタルトキ又ハ会頭ノ之ヲ命スル時ニ開クモノトス
 常議員ハ無報酬トス
 役員会ハ常議員中ヨリ別ニ室内取締委員会・財務委員会・電信委員会及会員資格調査委員会ヲ組織ス、此等委員会ノ委員ハ各三名トス同時ニ役員会ハ会議所ノ会員ニシテ常議員ニアラサルモノヽ中ヨリ次ノ委員ヲ指名ス、其委員ハ各五名トス
  一 仲裁委員
  一 運輸委員
  一 海事委員
  一 市場報告委員
  一 報告統計委員
 此等ノ委員ハ各其任期ヲ一年ト定ム、仲裁及運輸ニ関スル委員ヲ除ク外ハ常議員ノ意見ニヨリテ之ヲ廃止スルコトヲ得ルモノトス
 役員会ハ会議所会員ノ業務上ノ失行ニ対シ、会員ヨリ会頭若クハ書記長ニ対シ書面ヲ以テ申出ツルモノアルトキハ、之ヲ審議ス、審議ノ結果其行為カ会議所ノ諸規約ニ反シ又ハ会議所ノ面目利益ヲ毀損スルモノアルトキハ、役員会ハ定数ヲ以テ集マリタル会議ニ於テ、譴責・停止又ハ除名スルコトヲ得、除名ノ場合ニハ少ナクモ十票以上ノ投票ヲ要ス、除名セラレタル会員ハ役員会ニ於テ少ナクモ十票以上ノ投票ヲ以テ可決セラルヽニアラサレハ会員ノ資絡ヲ回復スルヲ得ス
 役員会ハ年次総会ニ其事務ノ報告ヲ為スモノトス
 会計主任ハ会議所ノ総ヘテノ収入ヲ受納シ、常議員ノ指揮ノ下ニ此等ノ収入ヲ処理ス、役員会ノ命令又ハ財務委員ノ申告ニアラサレハ会議所ノ資金ヲ支出スルヲ得ス、又金銭出納簿ヲ調製シ、且ツ之ヲ保管シ、財務委員ノ要求ニヨリテ其報告ヲ同委員会ニ提出シ、且ツ少ナクモ毎月一回財務ノ状況ヲ報告ス
 会計主任ハ三月・九月ノ定期役員会ニ於テ会計ノ報告ヲ為シ且ツ年次総会ニ於テ役員会ヨリ提出スヘキ会計報告ヲ調製ス、而シテ此等ノ報告ハ総ヘテ提出ノ前ニ財務委員ノ監査ヲ受クルヲ要ス
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 会計主任不在ノ時ニハ支払証書ニ会頭署名スルモノトス
 書記長ハ会議所又ハ役員会ノ会議記録ヲ保管シ、又総ヘテノ会議ノ通告ヲ為ス、又会議所ニ必要ナル総ヘテノ雇員ヲ雇入ルヽコトヲ得書記長ハ仲裁委員ノ要求ニヨリ会議ニ出席シ、又会頭ノ要求ニヨリ他ノ総ヘテノ委員会ニ出席シ、其記録事務ヲ処理ス、又会議所ノ規定ニヨリ課セラレタル会員ノ科料ヲ徴収シテ之ヲ会計主任ニ引渡スモノトス
 室内取締委員ハ会議所ノ使用スル各室ヲ監督シ、且ツ許可セラレサルモノヽ出入ヲ検査ス
 財務委員ハ会議所ニ対スル手形ヲ検査シ、且ツ金銭ノ出納、預金等ヲ監理シ、会計主任ノ収支計算ヲ検査スルモノトス
 電信委員ハ電信・電話ニ関スル事務ヲ監督ス、仲裁委員ハ会議所会員ノ請求ニヨリ会員間ニ起ル商事上ノ紛議ヲ審判スルモノトス、会員ニシテ商事上ノ紛議ニ付キ仲裁ヲ委託スルコトヲ拒ミ、又ハ仲裁委員ニ仲裁ヲ委託スルコトナク他ノ会員ニ対シテ直チニ司法上ノ訴訟ヲ提起スルモノハ、会員ノ資格ヲ失フモノトス、然レトモ役員会ニ於テ遅延ノ為メニ法律上ノ権利ヲ失フモノナリト認メラレタル場合ハ此限リニアラス
 仲裁委員ノ判定ハ五百弗以上ノ義務ヲ負ハシムルヲ得ス、但シ両当事者ヨリ仲裁開始ノ前ニ仲裁委員長ニ宛テ書面ヲ以テ其判断ニ服スルトノ同意書ヲ提出シタル場合ハ此限リニアラス、会員ニアラサル株式会社・商会又ハ一箇人ニシテ、会議所会員トノ取引上、会議所ノ定メタル商業上ノ公正主義又ハ商慣習ニ背反スルモノアリ為メニ紛議ヲ生シタル場合ニハ、仲裁委員ノ判決ヲ求ムルコトヲ得
 運輸委員ハ会議所ノ利益ニ関スル総テノ運輸ニ関スル事項ヲ管理シ且ツ必要ナル契約ヲ鉄道会社・汽船会社ト結フコトヲ得ルモノトス
 海事委員ハ港湾ニ関スル事項ヲ攻究シ、且ツ適当ナル尽力ヲ為スヘシ、委員会ハ会議所ノ蒐集スル海事上ノ諸報告ヲ管理シ、且ツ会員ニ利益ナル改良ニ関シテ役員会ニ建議スルモノトス
 市場報告委員ハ会議所ノ発行スル市場報告ニヨリ公示セラルヽ相場表其他ノ報告ヲ整理スルモノトス
 報告及統計委員ハ生産ノ統計ニ関スル日々ノ報告ヲ鉄道及汽船ヨリ了知シ之ヲ会議所ノ帳簿ニ記載シ会議所ノ室内ニ保存スルモノトス役員会ハ又次ノ商業上ノ委員会ヲ組織スヘシ
  粉類ニ関スル委員
  穀額ニ関スル委員
  食用品ニ関スル委員
  「バター」及「チ―ス」ニ関スル委員
  鶏卵ニ関スル委員
  豆類ニ関スル委員
  果物ニ関スル委員
 此等ノ委員ハ各種生産物ノ検査ニ関スル事務ヲ行フモノトシ、各三名ヲ以テ組織シ毎年一名ツヽ改選スルモノトス
一、会員死去スルトキハ其申出ノ日ヨリ三十日以内ニ規則ノ定ムル金
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額ニ依リ恵与基金中ヨリ其遺族ニ金員ヲ支給スルモノトス
一、会議所々有ノ土地建物ハ別ニ不動産管理委員ヲ置テ之ヲ保管ス、不動産管理委員ハ会頭・会計主任及役員会ヨリ選定シタル三名ノ委員ヨリ組織ス、三名ノ委員ハ毎年一名宛改選スル者トス
一、現行役員ノ姓名ハ次ノ如シ
  会頭ウイルリアム エッチ リンコルン
  第一副会頭ジヨージ エッチ リオナード、第二副会頭レロイ エス ブラヲン、書記長エルウイン プレストン、会計主任ダニエル デー モース、法律顧問チヤーレス エス ハムリン
一、会議所一箇年ノ経費(一千九百二年一月九日ニ終ル一箇年間)ハ報酬・修繕費・燃料・水料・点灯料・電信電話料・印刷費・諸税其他合シテ約八万弗余トス
    (六) 倫敦商業会議所
一、倫敦商業会議所ト称シ、又略シテ「ゼー、チヤンバー」ト謂フ
一、所在地ヲ倫敦ト定ム、現在ノ建物ハ倫敦市イヱスト チープ街十番地ニアリ
一、一千八百八十一年十月七日ノ設立ニシテ、其設立規約書ニハ左記ノ人々署名セリ
        商業者倫敦市長  ダブルュー マックアーサー
        商業者庶民院議員 チヤーレス マグニアツク
        商業者      フィリップ ハースチフィールド
        銀行業者     ジエー エッチ トリットン
        茶業者      スミス ハリソン
        商業者      エドワード パワー
        同        ウオルター リーフ
        仲買商      ダフルュー ジェー トムソン
        製造業者     ジヨセフ ヒックス バッキングハム
     前記ノ署名ハ公証人フレデリック ハレーシー ジヤンソン証明ス
一、設立規約書第三条ニ拠レハ会議所ノ目的左ノ如シ
 一 倫敦市ニ於ケル商業・貿易・運輸及製造工業ノ発達並ニ内外及殖民地貿易ノ進歩ヲ企図スルコト
 二 商業・貿易・運輸及製造工業ニ関スル統計及諸報告類ヲ蒐集シ且ツ頒布スルコト
 三 前掲ノ事項ニ関係アル諸法令ノ研究調査ヲ為スコト
 四 商業・貿易又ハ製造工業ニ関スル紛議ノ仲裁ヲ為スコト
 五 其他商工業ノ拡張進歩ニ有益ナル事項ヲ取扱フコト
一、会議所ハ専ラ商業上ノ目的ヲ以テ組織スルモノナルヲ以テ、政治上ノ事項、政党上ノ問題ヲ討議スヘカラス、且ツ会員ハ此等ノ諸問題ヲ提出スルコトヲ得ス
一、私設団体ニシテ法人組織ナリ
一、会議所ハ会議所ノ経費ヲ負担スル多数ノ会員ヨリ成立シ、常議員会其業務ヲ行フ、而シテ常議員会ノ行フ業務ハ毎年会議所総会ニ報告シ、其承認ヲ経ルモノトス
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一、会議所ニハ会頭・副会頭・会計主任・名誉監査役等ノ役員アリ会頭ハ毎年会議所総会ニ於テ之ヲ選挙ス、会議所ノ総ヘテノ会議ヲ主宰シ、特別議員ヲ選定スル権ヲ有ス、現任会頭ハブラッセー卿ナリ
 副会頭ハ前会議所会頭及前常議員会議長ニシテ会議所会員ノ資格ヲ有スル者ヲ以テ之ニ任ス、会頭ト同シク特別議員ヲ選定スルノ権ヲ有ス、現任副会頭ハロード アヴヱベリー、サー レジナルド ハンソン、サー アルバルト ケー ロリット、ジエー ハーバートトリットン、ダヴィツド ホワード、ドクトル ウオルター リーフ、ダブルュー エッチ ウィルランス、アルバルト ジー サンデマン、トーマス エフ ブラックウエルノ九氏トス
 会計主任ハ会議所総会後初メテ開カルヽ常議員会ニ於テ互選ス、会議所ノ会計ヲ監督シ、常議員会其他ノ会議ヲ会頭若クハ常議員会議長・副議長ニ代リ主宰スル権能ヲ有ス、現任会計主任ハフレデリック ホイネー氏ナリ
 名誉監査役ハ毎年総会ニ於テ会員又ハ会員外ノ者ヨリ二名ヲ推選ス会計主任ノ総会ニ報告スル会計報告ヲ監査証明スルモノトス
一、常議員会ハ左ノ四種ノ議員ヲ以テ組織シ、会議所ノ事務ヲ行フモノトス
 一 選定議員
  会議所総会ニ於テ内規ニ定メタル選挙規定ニ拠リ会員全体ヨリ選挙スルモノニシテ、毎年其三分ノ一ツヽ退職シ之ヲ改選スルモノトス、退職シタルモノニシテ一箇年中ニ三回以上会議ニ出席シタルモノ、若クハ常議員会ノ許可ヲ得テ欠席シタルモノハ再選セラルヽコトヲ得、選定議員ノ定数ハ之ヲ三等分スルコトヲ得ヘキ数ニテ、定期総会又ハ臨時総会ニ於テ之ヲ定ムルモノトス、但シ三十六名ヲ超過スルコトヲ得ス、選定議員ノ現在数ハ総員三十六名ナリ
 二 指名議員
  常議員会ノ決議ニヨリ認定セラレタル倫敦ノ各実業団体ノ指名シタルモノニシテ、各実業団体ハ各一名ヲ指名スルモノトス、各団体カ指名ヲ為シタル時ハ書面ヲ以テ会議所書記長ニ通告ス、此指名議員ハ其団体カ指名ヲ取消シ又ハ変更スルマテ常議員会議員タルヘシ、指名議員ヲ指名シタル団体ノ除名ハ会議所定期総会又ハ臨時総会之ヲ行フ、指名議員ノ現在数ハ三十三名ナリ
 三 特別議員
  特別議員ハ現任倫敦市長・現任倫敦市選出代議士・現任英蘭銀行総裁・現任ロイド社長・現任株式取引所長・現任倫敦商業会議所会頭及副会頭及会議所ノ選定スルモノヨリ成立ス、特別議員ノ現在数ハ十三名ナリ
 四 代理議員
  会議所会員ハ常議員会ノ認定ヲ以テ其業種ニヨリテ部属ヲ組織スルコトヲ得ルモノニシテ、此等ノ部属ハ内規ニ拠リテ常議員会議員ヲ選出スルコトヲ得、代理議員ハ即チ是ナリ
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  今現在ノ部属ヲ観ルニ其総数ハ左ノ四十四部《(マヽ)》ニシテ、現在代理議員ハ三十四名ナリ
    濠洲貿易業部           麺包及菓子製造業部
    製本業部             醸造業部
    加奈太貿易業部          セメント業部
    化学工業部            石炭業部
    珈琲及ココワ業部         ダイヤモンド及宝石業部
    東印度支那貿易業部        電気業部
    土木業部             美術業部
    氈毛業部             家具業部
    金銀業部             果実菜蔬業部
    鋳鉄業部             ランプ業部
    革皮業部             製造工業部
    海上保険業部           肉及家畜業部
    鉱業部              楽器業部
    製油業部             紙業部
    写真業部             保蔵食料器業部
    印刷業部             食料品業部
    南亜弗利加貿易業部        南及中央亜米利加貿易業部
    織物業部             材木業部
    煙草業部             玩具小間物業部
    商標業部             時計業部
    南亜弗利加貿易業部《(マヽ)》   西濠洲貿易業部
    白鉛製造業部
 会員ハ自由ニ其利害ノ関係ニヨリ此等ノ部属ニ入ルコトヲ得ルモノトス
 指名議員及代理議員ハ常議員会ノ決議カ自己ノ団体又ハ自己ノ属スル部属ノ利益ヲ損フモノト認メタル時ニハ、其決議ヲ次回ノ常議員会マテ延期セシムルコトヲ得
 常議員会ハ八・九両月ヲ除キ少クモ毎月一回開会スルモノトシ、其会議ハ総会後初メテ開カルヽ常議員会ニ於テ互選シタル常議員会議長之ヲ主宰シ、不在ノ時ハ副議長・会計主任之ニ代ル、常議員会ハ必要アル場合ニ於テ委員会ヲ招集ス、会議所会員ハ此等委員トナルコトヲ得ヘク、会員外ノ者ト雖トモ委員タルコトヲ得、但シ会員外ノ委員ハ投票権ヲ有セス
 常議員会ハ議長・副議長又ハ議員五名ノ申出アルトキハ臨時会ヲ開ク、但シ此場合ニハ少ナクモ二日以前ニ書記長ヨリ開会ノ通知ヲ為スモノトス、今定款ノ定ムル所ニヨリ常議員会ノ任務ヲ列記スレハ左ノ如シ
 一 会議所ノ事務及其収支決算ヲ年次定期総会ニ報告スル事
 一 書記其他必要ト認ムル事務員ヲ任命シ、必要ニ応シテ専門家ヲ聘スルコト
 一 設立規約書及ヒ定款ニヨリ常議員会議ヲ開クコト及其決議ヲ実行スルコト
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 一 会議所全体ノ事務ヲ処理統轄スルコト
 一 会議所ノ名称ヲ以テ行動スルコト
 一 国会ニ提出スル請願書其他ノ文書ニ会議所ノ印章ヲ使用スルコト
 一 会員総会ニ於テ商議セサル会議所ノ総ヘテノ職権ヲ行使スルコト
 一 会議所ノ事務取扱上内規ノ規定変更又ハ削除ヲ為ス必要アルトキハ、会議通知書ニ之ヲ記シテ各常議員ニ報知シ、次回ノ常議員会議ニ於テ決議ノ上之ヲ実行スルコト
 以上ノ事務ヲ行フ為メニ常議員会ハ更ニ左ノ常置委員会ヲ選定ス、一ハ一般ノ常務ヲ行ヒ一ハ会計事務ヲ行フモノトス
 一 常務委員会ハ十五名ヲ以テ組織シ、常議員会ニ於テ行フヨリハ少数ノ委員ニ託スルノ適当ナリトスル総テノ事務ヲ行フモノトス其決議ハ印刷シテ次回ノ常議員会ニ提出スルモノトス
 一 会計委員ハ十五名ヲ以テ組織シ、会議所ノ支出ニシテ常議員会ニ提出スヘキモノハ先ツ会計委員会ニ提出セラルヽモノトス、此会議ハ会計主任ヲ議長ト定ム
一、常議員会ノ外常議員会ノ諮詢ニ応スルヲ専務トスル委員ヲ設置ス此委員ハ会員総会ニ於テ前常議員中ヨリ選定スルモノト、常議員会ニ於テ選定スルモノトノ二ヨリ成立ス、常議員会ニ於テ選定セラレタルモノハ、次回ノ総会ニ於テ之ヲ否認セラルヽトキハ其職ヲ失フモノトス
一、会員ノ数ハ無制限ニシテ、何人ト雖トモ常議員会ニ於テ承認セラレタルモノハ会員タルコトヲ得ルモノトス、会員ノ候補者ハ選挙申込書及設立規約書・定款及内規ヲ遵奉スル旨ヲ記シタル契約書ニ調印シ、会員二名ノ保証ヲ得テ之ヲ提出シ、常議員会ノ多数ヲ以テ之ヲ決スルモノトス、而シテ常議員会ノ承認ヲ経テ入会料及会費ヲ納入スルトキハ、会員タル資格ヲ生スルナリ
 以上ハ箇人ノ場合ナリ、会社ノ場合ニハ選挙申込書及契約書ニ会社員名簿ヲ添フルコトヲ要ス
 又常議員会ハ政治・外交・実業・財政ニ於テ著名ナル人ヲ特ニ名誉会員ニ推選スルコトヲ得ルモノトス、名誉会員ハ前述申込ノ手続及入会料・会費ヲ支払フコトヲ要セス
一、入会料ハ二「ギニー」(凡我カ二十円)トス、而シテ会員ノ負担スル会費ハ会議所総会ノ決議ヲ以テ定ムルモノニシテ、現在ハ一箇年箇人会費ハ一「ギニー」会社会員ハ二磅ニシテ、一月一日、四月一日、七月一日、十月一日ニ之ヲ徴集ス、箇人会員ニシテ十五「ギニー」ヲ納ムルトキハ終身会員タルコトヲ得、会社ハ終身会員タルコトヲ得ス
 会員ニシテ退会セントスルトキハ、会費ヲ全納シタル年度末ヨリ一箇月前ニ書記長ニ申出テサレハ次年ノ会費ヲ免レサルモノトス、会員ニシテ会費ヲ六箇月滞納スルトキハ之ヲ除名シ、事務局ニ掲示ス但シ未納金額ハ徴集セラルヽモノトス
 会議所会員ハ書記長ニ申告シテ、常議員会ニ出席スルコトヲ得、而
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シテ議長ノ許可ヲ得テ発言スルコトヲ得ヘシ、然レトモ投票権ヲ有セス
 会員現在数ハ箇人・会社ヲ合シテ三千八百十一名、其他ニ終身会員二百二十九名ナリ
一、会議所定期総会ハ毎年一回常議員会ノ定メタル日ニ開会ス、臨時総会ハ常議員六名若クハ会員五十名ノ請求ニヨリ書記長之ヲ招集ス定期総会ノ決議ハ出席者ノ四分ノ一ノ請求ニヨリ投票ヲ要スル場合ノ外ハ出席者ノ多数ヲ以テ決ス、而シテ此決議ハ特ニ臨時総会ヲ開キ其廃棄ヲ議スル場合ノ外ハ、決シテ之ヲ廃棄スルコトヲ得ス
 定期総会ニ於テ議定スヘキ事項ハ(一)常議員会ノ報告(二)会計報告(三)次年会頭ノ選挙(四)常議員ノ補欠選挙及諮詢委員ノ選定(五)名誉監査役二名ノ選挙(六)其他設立規約書及定款ニ牴触セサル諸般ノ事項ヲ協議シ、必要ノ場合ニハ之カ実行ヲ計ルコト等トス
 定期総会ハ又常議員会ノ請求ニ依リテ常議員定数ノ変更、指名議員ヲ選出スル団体ノ除名、特別議員及名誉会員ノ進退及業種部属ノ解散又ハ新設ノ諸事項ヲ行フモノトス
 会議所又ハ常議員会ノ名誉役員ハ三年間在職ノ後ハ再選セラルヽコトヲ得ス
一、会議所ノ業種部属ハ常議員会ノ許可ヲ得レハ会員自由ニ之ヲ組織シ得ヘク、其部属会議長又ハ其代表者ハ其部ニ関スル事項ヲ常議員会ニ提出スルコトヲ得、然レトモ此部属会ノ決議ハ常議員会ノ決議ヲ経ルニアラサレハ会議所ヲ拘束シ、又ハ会議所ノ印章ヲ使用スルコトヲ得ス、但シ緊急ノ場合ニハ常議員会其他ノ会議ニ於ケル議長ノ承認ヲ得テ之ヲ行フコトヲ得、此場合ニハ次ノ常議員会ニ之ヲ提出スルコトヲ要ス
一、倫敦商業会議所ハ当事者カ倫敦仲裁々判所ニ訴フルコトヲ欲セサルカ、又ハ其事項カ会議所ニ関係スルモノニシテ仲裁々判所ニ於テ受理シ能ハサル商事上ノ紛議ニ係ルトキハ、仲裁ヲ為スモノトス、此場合ニ常議員会ハ仲裁委員会ヲ組織ス、委員会ハ必要ト認ムル場合ニ於テ更ニ仲裁人三名ヲ任命スルノ権能ヲ有ス
 又労働紛議ノ決定及同盟罷工ノ調停ニ関シテハ常議員会ハ自ラ委員会ヲ組識シ、又ハ此等ノ目的ヲ以テ別ニ組織セラレタル他ノ団体ニ託シテ之ニ当ラシメ、又ハ此等団体ト協同シ、又ハ会議所ノ費用ヲ以テ此等団体ノ経費ヲ支弁シ、且ツ常議員会ニ於テ便宜ト認ムル特権ヲ賦与シ、会議所ノ一室ヲ使用セシムルコトヲ得
 会議所ノ仲裁ヲ請求スルモノハ、仲裁請求書ニ会議所ノ内規ヲ遵奉スル旨ヲ記シタル書面ヲ添ヘ当事者調印ノ上書記長ニ申出ツルモノニシテ、此申出アリタルトキハ書記長ハ之ヲ受理シ、仲裁委員会ニ提出ス、仲裁委員会ハ直チニ仲裁ヲ為スカ、又ハ別ニ仲裁人ヲ選定シ仲裁ノ任ニ当ラシム、仲裁請求ノ場合ニハ会員ハ一磅一志、会員外ノモノハ二磅二志ノ手数料ヲ添フルコトヲ要ス
 仲裁委員会ハ当事者ノ請求ニヨリ仲裁人ノ仲裁ニ付更ニ再議スルコトヲ得、此場合ニハ当事者ハ会員ナレハ十五磅十五志、会員外ノ者
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ナレハ二十一磅ノ手数料ヲ添ヘ書面ヲ以テ書記長ニ申出ツルヲ要ス
一、倫敦商業会議所ハ別ニ実業教育委員会ヲ組織シテ実業教育ノ奨励ヲ企図ス、現任実業教育委員会長ハサー アルバルト ケー ロリット氏、副会長ハジヨージ エヌ フッパー氏ナリ
 同委員会ハ其目的ヲ達スル為メ次ノ方法ヲ採用ス
 一 実業教育ニ関スル課目及時間ヲ一定シ、各実業学校ヲシテ此標準ニ拠リテ其設備ヲ為サシムルコト
 二 実業ニ関スル課目ニ就キテ試験ヲ行ヒ、其登第者ニ学力証明書ヲ授与スルコト
 三 会議所会議室ニ於テ商業ニ関スル課目ノ講義ヲ為スコト
 英国・印度其他殖民地ヨリ実業教育ニ関スル会議所ノ教育計画書・要領書・試験問題、其他初等・高等試験ニ関スル書類ヲ要求シ来ルモノ年々増加シ、一千九百一年ニハ計画書一万四千通、要領書一万六千通ニ及ビ各階級ノ学校ニ於テ採用セラレタリ
 学力証明書授与ニ関スル試験ハ初等・高等ノ二種ニ分チ、両者其課目及程度ニ差等ヲ設ク、而シテ此試験ニ合格スルモノハ会議所ノ証明書ヲ授与セラレ、之ニ依テ相当ナル職ニ就クコトヲ得ルモノトス一千九百一年五月ニ挙行シタル此試験ニ於テ、初等科受験者七百五十四名中百六十七名登第シ、高等科受験者一千百十九名中六百五十名登第セリ
一、倫敦商業会議所ハ会員各自ノ利益ヲ計ル為メニ次ノ各種ノ事業ヲ経営ス
 一 会議所内ニ会員室ヲ設ケ種々ノ目的ヲ以テ会員ノ自由ニ之ヲ使用スルコトヲ許ス
 二 商品ノ商標ニ関シ商標条例ノ適用ヲ知ラシメ、疑義アル場合ニハ官庁ノ意見ヲ問フ
 三 原産地証明ニ就キ仏国・伊太利・露西亜・土耳其・西班牙・ブルガリアニ対シテ原産地証明書ヲ発シ、其他ノ諸国ニ対シ必要ナル場合ニハ特別証明書ヲ発ス
 四 商慣習・商業用語ノ定義・物品市価ニ関シテ特別証明書ヲ発ス
 五 瑞西・露西亜・ルーマニア・西班牙・ブルガリアニ旅行スル行商ニ対シテ証明書ヲ発ス
 六 行商ニ対スル法規ニ関スル通告ハ世界何レノ地ニモ供給ス
 七 諸外国及殖民地ニ於ケル訴訟代理人等ノ人名ハ要求ニ応シテ之ヲ報知ス
 八 各国ノ貿易及商品ニ関スル統計書類ハ要求ニ応シテ之ヲ備フ
 九 各国諸商品ノ製造業者人名ハ無手数料ニテ之ヲ知ラシム
 十 諸外国及殖民地ノ代理店ノ名ハ之ヲ備ヘ置ク
 十一 諸外国及殖民地輸入税率ハ之ヲ備ヘ置ク
 十二 会議所ハ一般公衆又ハ一部ノ利害ニ関係アル訴訟判決例ヲ蒐集ス、其費用ハ会員ノ寄附金又ハ利害関係ヲ有スル会社ノ出金ヲ以テ之ニ充ツ
 十三 会議所ニ対スル文書ハ各国ノ商業上・法律上・経済上ニ関スル有力ナル意見ヲ知ルニ必要ナルヲ以テ、之ヲ会議所ノ雑誌ニ掲
 - 第22巻 p.790 -ページ画像 
載ス
 十四 会議所ハ会議所雑誌ヲ発行シ、無代ニテ会員ニ配布ス
 十五 会議所ハ各国政府ノ商業報告書・英国領事報告書及多クノ雑誌ヲ備置キテ会員ノ随覧ニ供ス
 十六 会議所ハ職業案内部ヲ置キテ支配人・書記・簿記掛・速記者等ノ職ニ就カンコトヲ望ム人々ノ名簿ヲ備ヘ置キ、会員ノ随覧ニ供ス
 十七 会議所ハ屡々殖民地及外国政府ノ為メ原料品又ハ製造品ノ見本ヲ陳列シ会員ノ随覧ニ供ス
 十八 会議所ハ船渠・鉄道・海峡等ノ賃銭・諸税ヲ調査シ、会員ノ閲覧ニ供ス
    (七) マンチエスタル商業会議所
一、マンチエスタル商業会議所ト称シ、英蘭ヲ以テ所在地ト定ム
一、設立規約書第三条ニ掲ケタル目的ハ左ノ如シ
 一 英国ノ内外及殖民地ノ貿易・商業及製造工業ノ保護伸張ヲ計リ且ツ特ニマンチエスタル市・サルフオード邑及近域ノ商工業ノ保護進捗ニ努ムルコト
 二 此等ノ貿易・商業及製造工業ニ関聯スル諸問題ヲ研究スルコト
 三 此等商工業ニ関スル諸法令ノ改善ヲ計ルコト
 四 商事上ノ紛議ヲ仲裁スルコト
一、会議所ハマンチエスタル市及其附近市町ノ銀行業者・製造業者商人及商業ニ関係セル者ヨリ成立ス
一、会員二名以上ノ推挙ニヨリ委員会ニ於テ承認シタルモノニアラサレハ会員タルコトヲ得ス、会員トナリシ後三箇月ヲ経過スルニアラサレハ総会・委員会部会ニ於テ投票ヲナスコトヲ得ス
一、会費ハ一票ノ投票権ヲ有セル会員ハ、一箇年一「ギニー」(凡我カ十円)二票ノ投票権ヲ有セル会社ハ、一箇年二「ギニー」(凡我カ二十円)トシ、組合及団体等多数ノ投票権ヲ有セルモノハ其投票数ニ応シテ会費ヲ負担ス、会費ノ滞納二箇月以上ニ及フトキハ投票権ヲ失フ
一、会議所ノ事務ハ二十四名以上ノ常議員ニヨリテ組織サレタル役員会ノ処理ニ属ス、常議員ノ任期ハ三箇年ニシテ毎年総数ノ三分ノ一ヲ改選ス
 常議員ハ成ル可クマンチエスタル・サルフオード及其附近ノ地方ニ於テ従事セル各種ノ商工業ヲ代表セルモノヲ選挙ス
一、同種類ノ商業若クハ工業ヲ代表セル会員二十五名以上アルトキハ其商業若クハ工業ヲ以テ一部属ヲ組織ス、其部長ハ役員会ニ其部属ヲ代表スル常議員タルコトヲ得
一、会議所ノ会頭・副会頭及会計委員ハ、毎年役員会ニ於テ常議員中ヨリ選挙ス、会頭及副会頭ハ引続キ三箇年以上其任務ヲ行フコトヲ得ス
一、書記長ハ役員会ニ於テ毎年之ヲ任命ス、若シ書記長ヲ補助スル書記必要ナルトキハ、役員会ニ於テ之ヲ任命ス
一、会員ノ総会ハ毎年一月ノ最後ノ週間若クハ二月ノ最初ノ週間ニ召
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集シ常議員及会計委員ノ報告及其年度ノ会計検査委員二名ヲ任命シ其他ノ事務ヲ処理ス
 常議員十名以上若クハ会員四十名以上ノ請求アルトキハ会頭若クハ副会頭ハ臨時総会ヲ召集ス、若シ会頭及副会頭不在ナルトキ若クハ之ヲ拒絶スルトキハ書記長之ヲ召集ス
一、役員会ハ会頭(会頭不在ナルトキハ副会頭)ノ命ニヨリ何時ニテモ召集スルコトヲ得、会頭及副会頭不在ナルトキ若クハ之ヲ拒絶シテ役員会ヲ召集セサルトキハ、常議員五名以上ヨリ請求書ヲ差出シ書記長ヲシテ役員会ヲ召集セシムルコトヲ得
 役員会ハ八月ヲ除クノ外毎月少クモ一回開会ス
一、会計委員ハ毎年十二月三十一日限リ決算ヲナシ、会計検査委員ノ承認ヲ受ケ総会ニ報告ス
一、書記長ハ会議所ノ事務要件ヲ記録書ニ記録シ毎日適当ナル時限ニ於テ会員ノ検閲ニ供スルモノトス
一現任役員ノ氏名ハ次ノ如シ
  会頭ジヨン トムソン、副会頭ウイルリアム フオッグ、会計主任ヂー エッチ ガッダム、書記長エリジアー ヘルム
    (八) グラスゴー商業会議所
一、社会公共ノ利害ニ関スル商工業ノ事件ヲ熟議シ、且ツ共同ノ団結ニヨリテ会員各自ノ便益ヲ致スヲ以テ目的トス
一、会員ヲ分テ通常会員及名誉会員トス、通常会員ハグラスゴー及東部スコットランドノ銀行家・商業家及工業家ニシテ、会議所ノ定メタル規則ニ従ヒ入会料及会費ヲ支払フモノトシ、名誉会員ハ会議所ノ役員会ニ於テ推選シタルモノニシテ、入会料及会費ヲ支払ハサルモノトス、名誉会員ハ十二名ヲ以テ定数トス
一、総会ヲ分テ年次総会・定期総会及臨時総会トス
 年次総会ハ一月第三月曜日ニ召集シ、定期総会ハ四月第三月曜日、七月第四月曜日、十月第三月曜日ニ召集シ、臨時総会ハ必要ナルトキ臨時ニ召集ス
 臨時総会ノ召集ハ会頭(不在ノ節ハ副会頭)必要ト認メタルトキ、又ハ常議員十名以上若クハ会員二十名以上ノ請求アルトキニ限ル
一、役員会ハ会議所ノ規則ニ於テ定メタル一定ノ時期ニ召集ス、会頭副会頭・書記長若クハ五名以上ノ常議員必要ト認ムルトキハ何時ニテモ臨時役員会ヲ召集スルコトヲ得
一、会議所ノ役員ハ会頭一名・副会頭一名・常議員三十六名及書記長一名トス
一、会頭及副会頭ハ役員会ニ於テ常議員ノ中ヨリ選挙シ、其任期ヲ一箇年トス、会頭及副会頭ハ引続キ二年以上選挙セラルヽコトヲ得ス
一、役員会ハ常議員中ヨリ内務部委員・外務部委員及財務部委員各一名ヲ選挙ス
一、常議員ハ会員ノ中ヨリ選挙シ、任期ハ四箇年トシ、毎年九名ツヽ改選ス
一、会頭ハ総会及役員会ヲ主宰ス
一、副会頭ハ会頭不在ノ節会頭ニ代リ総会及役員会ヲ主宰ス
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一、書記長ハ会議所ノ印章・記録及其他ノ文書ヲ保管シ、通信其他一切ノ事務ヲ処理ス、若シ役員会ヨリ命セラレタルトキハ、規則ニ従ヒ金銭ノ出納ヲ会議所ノ会計簿ニ記入シ、毎年十二月三十一日ニ決算ヲナシ、年次総会ニ之ヲ報告ス
一、役員会ニ於テ必要ト認ムルトキハ、書記長ノ外別ニ会計主任・書記及図書掛ヲ任命シ、書記長ヲ補佐セシムルコトアリ
一、会議所ノ現任役員ハ左ノ如シ
  会頭         ジヨージ ハンダサイド ヂック
  副会頭兼名誉会計主任 ジヱー デイ ヘッダーウイック
  理事         ヘンリー ブロック外三十五名(氏名略)
  内務部委員      ジヱー デイ ヘッダーウイック
  外務部委員      ウイルリアム ジヤックス(法学博士)
  財務部委員      ヱ ヱス ミチー
  書記長        ウイルリアム ヱッチ ヒル(法学博士)
  図書掛        ウオルター ハルスト
一、一千九百一年度ノ会議所経費ハ左ノ如シ
  五百八十七磅七志六片
    内訳
   百三十六磅四片       地代及諸税
   二百七十五磅        俸給
   九十九磅一志三片      印刷費
   七十七磅五志十一片     郵税筆墨及諸雑費
    (九) アントワルプ商業会議所
一、最広義ニ於ケル商業・工業及航海ニ関スル各般ノ問題ヲ研究シ、必要又ハ有益ト認ムル革新ヲ施シ、又ハ之ヲ拡張シ、及商業ノ自由ヲ阻礙スルモノヲ除去スルヲ以テ目的トス
 項目ニ関係ナキ諸問題殊ニ政治問題ニ関渉セサルモノトス
一、会議所ハ中央部委員会之ヲ代表シ、其目的ヲ達スルニ適法ナル方法即チ討論・会議・集会・新聞広告・移檄・冊子配賦等ニ依ル公告ヲ為スコトヲ得ルモノトス
 会議所ハ正会員ヨリ組織セラレ、其員数ハ無制限トス
 名誉会員ノ資格ハ会議所ニ対シ顕著ナル功労アル者ニ対シテ中央部委員会之ヲ附与ス
一、中央部委員会ハ会議所ノ事務ヲ管理スルモノニシテ、次ノ諸員ヲ以テ之ヲ組織ス
 一総会ニ於テ選挙規程ニ依リ選挙セラレタル二十一名ノ会員
 二各部属ノ部長
一、中央部委員会ハ毎年二名ノ副会頭及会計主任ヲ委員中ヨリ選定シ又選挙規程ニ依リ選挙セラレタル二十一名中ヨリ会議所会頭及書記長ヲ選定ス
 同一商会ニ属スル者ハ何等ノ名義ニ依ルモ一名以上中央部委員会ニ加ハルコトヲ得ス
 役員ノ選挙ハ無記名投票ヲ用ヰ、過半数ヲ以テ之ヲ決ス、若シ過半数ヲ得ルコト能ハサルトキハ第二回ノ投票ヲ為シ過半数ヲ以テ之ヲ
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決ス、第二回ノ後更ニ投票ヲ行フトキハ多数決ニ依ルモノトス
 役員ハ三箇年間在職スヘキモノトシ、毎年十二月ニ於テ三分ノ二ノ改選ヲ為スモノトス
 何等ノ名義ヲ以テスルモ、引続キ三箇年以上中央部委員タルコトヲ得ス
 満期トナリタル委員ハ一箇年以後ニアラサレハ再選セラルヽコトヲ得ス、又各部属ノ部長トシテ中央部委員会ニ加ハルコトヲ得ス
 会議所会頭ハ中央部委員トシテ満期ニ達シタルトキハ、右ノ規定ニ拘ラス選挙規定ニ依リ再選セラルヽコトヲ得
 中央部委員会ハ会議所ノ事務ヲ処理シ、且ツ其会計事務ヲ管理ス
 中央部委員会ハ内部ノ細則ヲ定メ、一人又ハ数人ノ有給事務員ヲ置クコトヲ得
 中央部委員会ハ商工業ノ進歩上必要ナリト認ムル場合ニ於テ総会ヲ招集ス
 中央部委員会ハ議事録・会議所記録・税率・通商条約・領事官報告其他所持ノ商業ニ関スル書類ヲ整備シ、他ニ携帯セシムルコトナク会議所書記局ニ於テ会員ノ展閲ニ供ス
一、会員ハ商業・工業及航海ニ関スル事業ノ種類ニ従ヒ、中央部委員会ノ認可ヲ得テ部属ヲ設置スルコトヲ得
 部属ヲ組織スルトキハ特殊ノ名称ヲ附シ、其設備ノ要領及内規ヲ具シ中央部委員会ノ議ニ附スヘシ
 各部属ハ部長ヲ選挙ス、其任期ハ三年トス、部長ノ任期満了シタルカ又ハ中央部委員会ニ出席スル能ハサル事由アルトキハ、副部長又ハ特ニ代表ヲ為スヘキ部員ヲシテ出席セシム
 会議所ノ各会員ハ其欲スル所ニ従ヒ数箇ノ部属ニ加入スルコトヲ得各商会ハ其会員又ハ附属員ノ員数ノ多少ニ拘ハラス各部属ニ於テハ一箇ノ票決権ヲ有ス
一、会議所会員タラント欲スル者アルトキハ会員一名ノ推薦ニ依リ中央部委員会ニ於テ無記名投票ヲ以テ許否ヲ決ス
 会員一箇年ノ会費ハ二十「フラン」(凡我カ八円)トシ、前以テ之ヲ差出スモノトス
 会員十名以上ヨリ書面ヲ以テ或会員ヲ除名センコトヲ請求スルトキハ、中央部委員会ハ重大ナル事由アル場合ニ於テ之ヲ除名スルコトヲ得
 前項ノ場合ニ於テハ中央部委員少クトモ四分ノ三以上出席討議シ、且ツ其出席者四分ノ三以上ノ多数ニ依ルニアラサレハ、議決ヲ為スコトヲ得ス
一、中央部委員会ハ少クトモ毎月一回之ヲ開ク
一、書記局ハ中央部委員会ノ集会及総会ヲ招集ス
一、会議所ハ毎年十二月ニ総会ヲ開ク、会員ハ其総会ニ出席スルノ義務アルモノトス
 右総会ニ於テハ、其年度内ノ会計ノ状況及会議所ノ事務並ニ其成績及進行スヘキ事務ヲ報告ス、次テ中央部委員ノ一部改選ニ付キテ投票点検ヲ行ヒ、及役員ニ選任セラレタル者ヲ告知ス
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 右総会ニ欠席スル者ハ二「フラン」ノ過料ニ処ス
一、会議所会員二十五名以上ノ請求アルトキハ、十五日以内ニ総会ヲ招集ス
一、会議所現任役員ノ氏名ハ次ノ如シ
  会頭シヤール コルチー
  副会頭ヱル クリキヨン、副会頭ア モルレン、書記長センゴッド、会計主任フヱルナンド ヂヤルデン
     選挙規定
一、各部属ハ定期選挙ニ付キ候補者ヲ推薦スルノ権アリ、二十五名以上ノ団体ハ均シク此権利ヲ有ス
一、候補者推薦ハ毎年十二月一日以後書面ヲ以テ会議所書記局ニ差出スヘシ
 右ノ推薦ハ部長及書記長ノ署名又ハ候補者ノ属スル団体全部ノ署名ヲ以テスルモノトス
一、推薦セラレタル候補者ハ同時ニ其承諾状ヲ差出スヘシ
一、候補者名簿ハ遅クトモ十二月二十二日マテニ之ヲ締切ルモノトス
一、候補者名簿ハ少クトモ選挙開始前四日マテニ総会員ニ配賦シ、投票ノ用ニス
一、選挙ハ総会ノ日及其日ノ二日以前ヨリ会議所ニ於テ午後一時ヨリ三時マテノ間ニ執行ス
一、各投票人ハ各自ニ其ノ召集状ヲ交付シテ、選挙ニ干与セルコトヲ証ス
一、投票ハ二箇ノ錠前ヲ有スル投票函中ニ集メ、其鑰ハ封印ヲ施シテ開票ノ時マテ之ヲ保管ス
一、選挙施行期間中ハ投票函ニ封印ヲ施スモノトス、封印ハ毎日最終ニ臨席シタル委員之ヲ施スモノトス
一、総会期日ニ於テハ午後三時ニ於テ選挙終結ヲ宣言シ、投票函ハ全ク閉鎖スルモノトス
一、次ニ投票函ヲ総会ノ会場ニ移シ、開票ノ点検ヲ行フ
一、候補者ハ投票ノ多数ヲ得ルモノヲ以テ当選トス、若シ同数ナルトキハ年長者ヲ以テ当選トス、選挙ノ結果ハ毎年度ノ報告朗読ノ後之ヲ発表スルモノトス
    (十) ブラッセル商工聯合会
一、ブラッセル商工聯合会即チブラッセル商業会議所ハ一千八百七十五年八月六日ヲ以テ設立シタル商人ノ団体ニシテ、其創立委員ハ次ノ如シ
  前商事裁判所長・前商業会議所会員 前代議士・前信用組合長 故アントワーヌ ダンセル
  工業家                          ミギヨー デルスタンシユ
  前商事裁判所長                     故ヱデー クリユイー
  前ブラッセル市長                     セーアッシユ ビユール
  前商人・前商事裁判所長                  フイヱヴヱー ステンレー
  前ブロンズ商会代表者                  故ヱフ フールコール
  前商事裁判所判事                    故ヱル ヒユアール
  前商事裁判所判事                     テーアッシユ スニヱール
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  前商人・前商事裁判所次長                故ヱル ウアレール
一、商工聯合会ハ全ク政党以外ニ独立スルモノニシテ、其目的ハ次ノ如シ
  一商工業ノ有形無形ノ発達及商工業ニ関スル学芸ノ発達ヲ企図スルコト
  二商工業ノ各部類ニ対シ一般及特別ノ保護ヲ為スコト
 以上二箇ノ目的ヲ達スル為メ左ノ方法ニ依ル
  一中央部委員会ニ依リテ相互ニ連絡ヲ通スル同業会《シヤンブルシンジカール》ノ創設ヲ力ムルコト
  二聯合会ノ保護スル各種ノ事業ニ対シテ必要ナリト認ムル処置ヲ適法ナル方法ニ依リテ促シ、又諸官衙トノ交通ヲ便ニシ、且ツ同業会並ニ特別加盟組合《アツソシアツシヨンアツフイリヱ》ノ綜合的意見ヲ聞クコト
一、会員ハ正会員《エフヱクチーフ》・特別加盟組合会員及名誉会員ヲ以テ之ヲ組成ス、正会員タラントスルトキハ中央部委員会ノ許可ヲ要ス、聯合会ノ同業会ヲ組織スル者ハ正会員ニ限ル
 各正会員ハ毎年十二「フラン」(凡ソ我カ四円八十銭)ノ会費ヲ差出スモノトス
 白耳義ニ住居スル外国商工業者ハ同業会員ノ資格ヲ以テ入会ヲ許スコトヲ得
 特別加盟組合員ハ商工聯合会以外ニ在ル白耳義組合ノ組合員ニシテ中央部委員会ノ定ムル条件ニ従ヒ加入シタル者ナリ、名誉会員ハ聯合会ニ対シ又ハ其保護スル事業ニ対シ特別ノ功労アリタルカ又ハアルヘキ者ニ其資格ヲ許与スルモノトス
一、正会員及特別加盟組合会員ノ会費ハ前以テ之ヲ差出スモノトシ、且ツ聯合会ヘ加入ノ日附ニ拘ラス全年度分ヲ差出スノ義務アルモノトス
 会員ハ会費以外ニ何等ノ負担ナキモノトス
 年度ハ一月一日ニ始マル
 聯合会役員又ハ同業会及学芸部ヨリ中央部委員会ニ選出スル代表委員ハ白耳義国人若クハ白耳義ノ国籍ヲ取得シタル者ニ限ル
一、同業会ハ特殊ノ職業上ノ利益ヲ代表シ且ツ之ヲ保護スル為メニ設立スルモノニシテ、何レモ全然自治トシ、其内部ノ組織ヲ定ムルノ全権ヲ有シ、且ツ其格別ナル事務ノ費用ヲ負担スルモノトス
 同業会ハ自ラ其管理者ヲ任命シ、且ツ中央部委員会ニ於ケル代表委員ニ充ツル為メ、其会員中ヨリ三名ヲ選任ス
 同業会ノ権限ハ左ノ如シ
 一 同業会員タルノ許否ヲ決定スルコト
 二 同業会ノ利害ニ関スル諸問題及中央部委員会ヨリ送附スル諸問題ヲ研究スルコト
 三 仲裁受任者トシテ各当事者ヨリ直接ニ委任スル紛議ヲ判断スルコト、但シ其紛議ノ当事者カ聯合会ニ属スル者ナルト否トヲ問ハサルモノトス
 四 鑑定人又ハ報告者トシテ裁判所ニ対シ会員ノ協力ヲ藉スコト
 五 単独ニ又ハ共同シテ其職業上ノ利益ノ為メ必要ナリト認ムル総
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ヘテノ行為ヲ為シ、且ツ其処置ヲ為スコト
 六 各同業会ハ其業務ノ実況ヲ毎年中央部委員会ニ報告スルコト
一、学芸部ハ商業及工業ニ関スル学術技芸ノ利益ヲ保護スル為メニ設クルモノニシテ、工芸部・商法部・経済学部・土木及工業ニ応用スル科学部ノ四部ニ分タル
 学芸部ハ格別ノ職業的利益ヲ代表セス、聯合会ノ正会員及名誉会員ハ職業ノ差別ヲ問ハス部員タルコトヲ得
 各部ハ其役員ヲ任命シ、又中央部委員会ニ於ケル代表委員ニ充テンカ為メ其部員三名ヲ選任ス
 部ノ権限ハ左ノ如シ
 一 部員タルノ許否ヲ決定スルコト
 二 部ニ利害ノ関係アル諸問題ヲ研究スルコト
 三 部ノ担任スル事項ニ対シ有益ナリト認ムル総テノ行為ヲ為シ及其処置ヲ為スコト
一、中央部委員会ハ聯合会ヲ代表シ、且ツ総テノ事務ヲ処理スルモノニシテ、次ノ諸員ヲ以テ組織スルモノトス
 一 聯合会中ノ同業会及学芸部ノ代表委員
 二 特別加盟組合ノ代表委員但シ特別加盟組合ノ代表委員ハ聯合会ノ内部ノ管理ニ関スル問題以外ノ諸問題ニ付キテ議決権ヲ有スルモノトス
 三 正会員ノ総会ニ於テ毎年選任セラルヽ十二名ノ委員
 聯合会役員ハ中央部委員会カ一月十五日以後ノ第一月曜日ノ会議ニ於テ一箇年ノ任期ヲ以テ選任スル十名ノ会員ヨリ成ル、即チ会頭一名副会頭二名・書記長二名・会計主任一名・図書掛一名・補助員三名トス
 各役員ノ任期ハ一箇年トシ、引続キ四回以上重任スルコトヲ得ス、必要アル場合ニ於テハ役員中再選シ得ヘカラサル者ヲ毎年抽籤ヲ以テ定ム
 役員任命ニ対スル新候補者ノ推薦ハ、少クトモ四日以前ニ之ヲ為スヘシ
 中央部委員会ノ権限ハ左ノ如シ
 一 聯合会正会員タルノ許否及退会ヲ宣言スルコト
 二 名誉会員ノ資格ヲ附与スルコト
 三 同業会ノ設置ニ付キ取調ヲ為スコト
 四 聯合会ノ為メ特別ノ功労アル役員ニ対シ栄誉ヲ表彰スルコト
 五 特別ノ取調ヲ要スト認ムル問題ヲ研究スル為メ委員会ヲ設クルコト
 六 領事官ノ選挙、商工高等会議議員ノ選挙、其他政治上ノ選挙ヲ除ク外、中央部委員会カ利害ノ関係ヲ有スト認ムル選挙ニ付キテ聯合会ノ保護スル候補者ヲ指定スルコト
 七 聯合会ノ会務処理ニ関スル規則ヲ作リ、且ツ其規則及定款ノ施行ヲ監督スルコト
 八 諸般ノ処分ヲ為シ、且ツ其有益ト認ムル事務ヲ報告スルコト
 九 会費其他ノ収入ヲ受領シ、会務ノ為メ必要ナル出費ヲ為スコト
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 十 年度ノ終了ニ際シ計算ヲ為シ、及三名ノ委員ヲ以テ調査セル収支予算ヲ決定スルコト
 十一 常務ヲ執行スル為メ一人又ハ数人ノ事務員ヲ任用シ、其給料額ヲ定ムルコト
 十二 定款ニ定メナキ問題及事件ヲ解決スルコト
一、聯合会正会員ノ総会ハ毎年一月中ニ招集ス
 総会ニ於テ議決スヘキ事項左ノ如シ
 一 前年度ニ於ケル聯合会ノ事務及聯合会ノ実況ニ関スル中央部委員会ノ報告
 二 会計ノ検査及予算ノ議決
 三 中央部委員十二名ノ選任
 中央部委員会ハ必要アリト認ムルトキ又ハ聯合会ノ正会員少クトモ百名ノ署名ヲ以テ理由ヲ附シタル総会招集請求書ヲ受取リタルトキハ、中央部委員会ハ之ヲ招集スルモノトス
一、中央部委員会ノ現任役員及委員ノ氏名ハ次ノ如シ
  会頭   土木受負人 州参事会員     レオン モノワイヱー
  副会頭  元老院議員 商事裁判所長    ヱドウランノワー
  同    工業家・ヴヱネヂユラ合衆国領事 アルベル ヴアン オワイ
  書記長  革皮商             ヱヌ ヴアン ブジン
  同    工業家             ヱフ ヴアン フォヱガルデン
  会計主任 前領事裁判官 大理石商     アドウ ブルマケー
  図書掛  領事裁判官 布製造人      ヴアネ パルマンチヱー
  補助役  前商事裁判所次長        プヱイスレー
  同    商事裁判所次長 塗料商     ヱルネスト ヴアンヱレウヰク
  同    商事裁判所次長 前商人     フランソワー イスウイン
  委員                   ヱム アッケルマン外百九十名(略)
  名誉会頭                 ヱー ベー ヴヱルボヱコヴオン 外
                       二名(略)
  名誉会員                 セ アッシユ ビユール外二名(略)
  法律顧問                 ヱミール マルチニー
  通信員  前組合長 在巴里市       ヒヱラール
  同    製造家 在巴里市        マザロース
一、同業会《シヤンプルシンジカール》ノ種類ハ商工業ノ部類ノ異ルニ従ヒテ各箇ニ創設セラレ、一千九百〇一年(明治三十四年)ノ報告書ニ依レハ其数五十四種ニシテ、尚ホ改造中ニ係ルモノ四種アリト云フ、而シテ会ニ会長副会長・書記・書記補・会計掛・世話役・代理者等《デレゲイ》ノ役員ヲ置キ、会員ノ数ニ付テハ固ヨリ一定セス、少キハ十数名ヨリ多キハ百数十名ニ至ルモノアリ、尚ホ他ニ何レノ同業会ヘモ加ハラサル会員十六名アリト云フ
一、五十有余ノ各同業会ノ開会日ハ予メ聯合会即チ商業会議所ノ大会議室ノ都合ヲ測リテ毎月一定ノ日時表ヲ作リテ其日ヲ示セリ、例ヘバ泥工同業会ハ毎月第一月曜日午後八時マテ洋酒商同業会ハ第二月曜日午後八時マテ、又洋傘商同業会ハ第三日曜日ノ午後十時マテ、各大会議室ニ於テ任意ニ会議スルコトヲ得ト云フカ如シ
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一、其他会議所ノ狭少ナル室ハ書記局・図書室及各種ノ特別委員会ノ会場等ニ充ツ、又書記局ノ執務時間ハ日曜日及祭日ヲ除ク外毎日午前九時ヨリ十二時マテ及午後二時ヨリ十時マテト一定セリ
一、学芸部ハ前述ノ如ク四部ニ分チ、一、工芸部・二、商法部・三、経済学部・四、土木及工業ニ応用スル科学部トセリ、就中商法部ハ会員最モ多数ニシテ、其員数百五十余名アリ、部長ニハ弁護士ユーベールブリユナール氏ヲ推セリ
一、特別加盟組合(聯合会以外ニ設立セル白耳義組合ニシテ聯合会ノ許可ヲ得テ入会セルモノ)ノ種類ハ左ノ如シ
  一 ブラッセル麦酒醸造組合
  二 自耳義同胞組合(商人・工業家・旅客・商工業使用人等ノ貯金ヲ預ルヲ目的トス)
  三 ブラッセル旅店・料理店・コーヒー店・同業組合
  四 泥工請負組合
    (十一) 普国商業会議所
伯林ニハ従来私人ノ共同シテ組織セル商人会ナルモノアリテ、稍々商業会議所ト同様ナル事務ヲ行ヒツヽアリト雖トモ、未タ法律ニヨリテ組織セラレタル所謂商業会議所ナルモノアラサリシカ、近時商人会及市内有志者相謀リ、一千八百九十七年八月十七日発布普国商業会議所法ニヨリテ商業会議所ヲ組織スルノ企画アリ、今ヤ其設立準備中ニアレトモ、未タ定款認可ノ運ヒニ至ラスト云フ、故ニ玆ニハ普国商業会議所法ノ摘要ヲ掲ケテ以テ参考ニ資ス
一、商業会議所ハ其地区内ニ於ケル商工業者一般ノ利益ヲ図リ、殊ニ商工業ノ発達ノ為メ報告建議ヲ為シ、又ハ意見ヲ開申スル官庁ノ参考機関ナリトス
一、議員ハ選挙ニヨリ之ヲ定ム
 左ニ掲クル者ニシテ営業税ヲ納ムル者ハ選挙権ヲ有シ、且ツ商業会議所ノ経費ヲ負担スルモノトス、但シ其納税額ニ制限ヲ附スルコトヲ得
 一 商業会議所ノ地区内ニ於ケル商業登録簿ニ商店主トシテ登録セラレタル商人(自然人ト法人トヲ問ハス)
 二 商業会議所ノ地区内ニ於ケル商業登録簿若クハ組合登録簿ニ登録セラレタル会社若クハ組合ニシテ商業ヲ営ムモノ
 三 商業会議所ノ地区内ニ於テ、鉱業ヲ営ム鉱業権者若クハ借用人(自然人ト法人トヲ問ハス)但シ商業登録簿若クハ組合登録簿ニ登録セラレサル者ト雖トモ除外スルノ限ニ在ラス
 四 商業会議所ノ地区外ニ於ケル商業登録簿ニ登録セラレタル企業ニ属スル事業所ニシテ、商業会議所ノ地区内ニ於テ性質上及範囲上商人的ニ組織シタル営業ヲナスモノナルトキハ其支店主、但シ其支店カ商業登録簿ニ登録セラレサル場合ニ於テモ除外スルノ限ニ在ラス
一、左ニ掲クルモノハ選挙権及経費負担ノ義務ヲ有セス
  甲 帝国及王国ノ事業
  乙 農業及山林業ニ関聯シタル副業
  丙 農業組合及手工業組合
  但シ乙・丙ニ掲ケタルモノハ其加入ヲ申込マサル場合ニ限ル
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一、満二十五歳以上ノ独逸国臣民ニシテ選挙権ヲ行使スルコトヲ得ル者ハ商業会議所議員ノ被選挙権ヲ有ス
一、商業会議所ハ定款ヲ以テ選挙権者ノ部属ニ依リ又ハ経費ノ負担額ニ依リ選挙権者ノ等級ヲ分チ、又ハ総テノ選挙権者ヲシテ、平等ニ選挙ヲ為サシムルコトヲ定ムルコトヲ得
 選挙ハ選挙権者自ラ無記名投票ヲ以テ之ヲ行フ
一、議員ノ任期ハ六箇年トシ、二箇年毎ニ其三分ノ一ヲ改選ス
 商業会議所ハ議員カ其行為ニ依リ公衆ノ尊敬ヲ失ヒタリト認ムルトキハ、本人ヲ訊問シタル上、総議員ノ三分ノ二以上ノ多数決ヲ以テ之ヲ除名スルコトヲ得
 商業会議所ハ定款ニ依リ議員ノ外ニ予備議員ヲ設クルコトヲ得
一、市町村及荘園ハ商業会議所ノ要求ニ依リ、其徴収経費ノ百分ノ三以内ノ報酬ヲ受ケ、商業会議所ノ経費ヲ徴収ス、商業会議所ノ経費ハ公課トス、滞納経費ハ市町村税ト同一ノ方法ニ依リ之ヲ徴収ス
 一箇年ノ経費カ営業税ノ十分ノ一ヲ超過スル賦課ヲ必要トスルトキハ、予メ商工務大臣ノ認可ヲ経ルコトヲ要ス
一、商業会議所ハ毎年初ニ於テ会頭一人・副会頭一人若クハ二人ヲ議員中ヨリ互選ス
一、商業会議所ハ法人トス
一、商業会議所ハ直接ニ其報告書ヲ中央官庁ニ提出スルコトヲ得
一、商業会議所ハ商工業ノ進捗ヲ図リ又ハ商工業ニ従事スル職工徒弟ノ技術的・事務的教練教育及道徳上ノ保護ニ必要ナル営造物及設備ノ設立維持又ハ補助ヲ為スコトヲ得
一、商業会議所ノ所在地ニ於ケル商業仲立人ハ商業会議所之ヲ任命ス但シ県知事ノ認可ヲ要ス
一、取引所及其他商業ニ関シ設ケラレタル公共ノ営造物ハ商業会議所ヲシテ之ヲ監督セシムルコトヲ得
    (十二) ハンブルグ商業会議所
一、ハンブルグ商業会議所ハハンブルグ商業会議所法及事務規定ニ拠リ設立シタルモノナリ
一、ハンブルグ商業会議所法ノ定ムル所ニ拠レハ、会議所ノ権限左ノ如シ
 一 商業及航海業委員会・間接税委員会・移民委員会其他ノ委員会ニ議員ヲ出席セシムルコト
 一 商事裁判官ヲ推選スルコト
 一 裁判所ノ命ニ依リ鑑定人ヲ指名スルコト
 一 移民輸送船ノ監督官ヲ任命スルコト
 一 船舶及其附属品司検官ヲ任命スルコト
 一 取引所ヲ管理シ且ツ相場表ヲ発行スルコト
 一 当事者ノ請求ニヨリ紛議ヲ仲裁スルコト
一、会議所ハハンブルグ政庁ノ諮問ヲ受ケ、又独逸帝国商業ニ関スル問題ニ就キテハ之ヲ審査シテ、同市選出ノ上院議員ニヨリテ帝国ノ国会ニ提出スルヲ例トス
一会員ハ市内ニ住居スル名誉アル商人ヨリ選挙スルモノニシテ、其総
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数二十四名トス
一会員ハ毎年会頭及副会頭ヲ選挙ス
 四年間引続キ会頭タルモノハ一箇年ヲ経タル後ニアラサレハ再選セラルヽコトヲ得ス
一、会議所ノ経費ハ毎年市ヨリ受クル補助金六万五千馬克ノ外、其監督スル取引所ノ手数料及商人会登録簿登録料ヲ以テ之ニ充ツルモノニシテ、其決算ハ毎年之ヲ市庁ニ報告スルモノトス
    (十三) 巴里商業会議所
一、巴里商業会議所ハ一千八百九十八年四月九日発布ノ仏国商業会議所及工芸諮問法ニ準拠シテ設立シタルモノニシテ、官庁ニ対シテ其地区内商工業ノ利益ヲ代表スルノ営造物トス
一、会議所議員ノ数ハ三十六人トス、其任期ハ六年トシ、毎二年其三分ノ一ヲ改選ス、但シ再選セラルヽコトヲ得ルモノトス
一、議員正当ノ理由ナクシテ六箇月間召集ニ応セサルトキハ、会議所ノ申告ニヨリ商工務大臣之ヲ辞職者ト認定ス
一、会議所ハ現議員過半数ノ決議ニヨリ、議員中ヨリ会頭・副会頭・書記長・会計主任等ノ役員ヲ選任ス、役員ハ毎二年議員ノ一部改選後改選スルモノトス、但シ再選セラルヽコトヲ得
一、会議所ハ現議員半数以上出席スルニアラサレハ決議ヲ為スコトヲ得ス、決議ハ投票者ノ過半数ニ依リ、可否同数ナルトキハ議長之ヲ裁決ス
一、会議所ハ其地区内ニ於テ議員ノ定数ヲ超ヘサル通信議員ヲ命スルコトヲ得、通信議員ハ会議ニ列シテ意見ヲ陳フルコトヲ得ルモ、決議ノ数ニ入ルコトヲ得ス
一、会議所ノ経費ハ営業税ノ附加税ヲ以テ之ヲ支弁ス
一、会議所ハ商品市場・共同倉庫・公共競売場・商品倉庫・戎器試験場・蚕糸検査場・常設博覧会・商業博物館・各種実業学校等商用営造物ノ建設費ヲ補助シ若クハ分担スル為メ、政府ノ許可ヲ得テ負債ヲ起スコトヲ得
 前記ノ負債並ニ営造物ノ事業費ハ必要ノ場合ニ於テ営業税附加税ヲ以テ之ヲ支弁ス
一、会議所ハ種々ノ権限ヲ有ス、今仏国商業会議所及工芸諮問法ノ規定ニヨリ其要領ヲ掲クレハ左ノ如シ
    仏国商業会議所及工芸諮問法(一千八百九十八年四月九日発布)
 第十一条 商業会議所ハ左ノ権限ヲ有ス
  一商工業ニ関スル問題ニ付キ政府ノ諮問ニ応シ意見ヲ提出スル事
  二商工業ノ繁栄ヲ図ルヘキ方法ニ関シ意見ヲ提出スル事
  三第十四条及第十五条ニ規定シタル許可ヲ受ケ、商業会議所ニ於テ保護スヘキ利益ニ必要ナル工事ノ施行及事務ノ管理ヲ確保スル事
 第十二条 左ノ事項ニ関シテハ商業会議所ノ意見ヲ諮問スルコトヲ要ス
  一商習慣ニ関スル規則
  二其地区内ニ於ケル新商業会議所・商品市場・商事裁判所・工業
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裁判所・仏蘭西銀行支店・共同倉庫及新商品競売場ノ設置
  三其地区内ニ於テ官庁ヨリ特許シタル運輸業ノ運賃
  四法律若クハ特別ノ規則ヲ以テ定メタル事項、殊ニ其地区内ニ於テ施行スヘキ公共ノ工事ノ有益ナルヤ否ヤ、及其工事ノ費用ヲ支弁スル為ニ徴収スヘキ租税若クハ通過税
  五監獄ニ於ケル囚徒ノ工銀
 第十三条 商業会議所ハ政府ノ諮問ニ応スル外左ノ事項ニ付其発意ニ依リ意見ヲ提出スルコトヲ得
  一商業・税関及経済ニ関スル制度ノ改正
  一関税率
  一官庁ヨリ特許シタル運輸事業ニシテ其地区外ニアルモ其地区ニ利害関係アルモノヽ運賃及規則
  一行政上ノ許可ヲ得テ其地区内ニ開設セラレタル商用営造物ニ関スル徴収金及規則
 第十四条 商業会議所ハ許可ヲ得テ共同倉庫・競売場・商品倉庫・戎器試験場・蚕糸検査場・常設博覧会・商業博物館・商業学校・実業学校・商工業講義所等ノ商用営造物ヲ設立及管理スルコトヲ得前項ノ営造物ニシテ私設ニ係ルモノヽ管理ハ其出金者若クハ寄贈者ノ希望ニ従ヒ之ヲ商業会議所ニ委任スルコトヲ得、又国・県若クハ市町村ニ於テ設立シタル同性質ノ営造物モ亦其管理ヲ商業会議所ニ委托スルコトヲ得
  営造物ノ性質上法律若クハ勅令ヲ要セサル場合ニ於テハ、商工務大臣ノ決定ヲ以テ第一項ノ許可ヲ与フルコトヲ得
  法律若クハ勅令ヲ要セサル場合ニ於テハ、此種ノ営造物ニ関スル規則及徴収金ノ最高率ハ商工務大臣之ヲ認可ス、実際徴収スヘキ徴収金及対価ハ設立書ニ大臣ノ決定ヲ要スル旨記載シタル場合ノ外県知事ニ於テ之ヲ公布ス
  商業会議所ハ大臣ノ許可ヲ受ケ自己ノ為ニ要スル建物若クハ商用営造物ニ要スル建物ヲ取得若クハ建設スルコトヲ得
 第十五条 商業会議所ハ一千八百七十年七月二十七日ノ法律ヲ以テ規定シタル方式ニ依リ公共工事ノ受許者トナリ、若クハ公共業務殊ニ其地区内ニ於ケル海港若クハ水路ニ関スル業務ヲ委托セラルルコトヲ得
 第十六条 登録仲立人ノ数不充分ニシテ其地ニ於ケル各種ノ商業若クハ取引ヲ代表スルニ足ラサル場合ニ於テハ、商業会議所ハ登録仲立人組合所ノ意見ニ依リ、其地ノ未登録仲立人及商人ノ若干名ヲシテ登録仲立人ト共同シ商品相場ノ認定ニ与ラシムルコトヲ得商業会議所ハ輸出向キ仏国商品ノ原産地証明書及外国ニ於ケル行商ノ身分証明書ヲ交付スルコトヲ得
  商業会議所ハ毎年税関事務ニ要スル鑑定官ノ補助員ノ任命ニ関シ商工務大臣ニ意見ヲ提出スヘキモノトス
 第十七条 商業会議所ハ各省大臣ト直接通信ヲ為ス、商業会議所ハ其ノ委托セラレタル業務ノ執行ニ関スル総テノ問題ニ付キ商工務大臣ニ建言スルコトヲ得
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  商業会議所ハ毎年其事務ノ総報告ヲ商工務大臣ニ提出ス可シ
 第十八条 商業会議所ハ其地ノ商工業ノ利害ニ関スル総テノ問題ニ付キ、他ノ商業会議所・工芸諮問会若クハ其地区内ノ諸官庁ト直接通信スルコトヲ得
  又商業会議所ハ自己ノ権限ニ属スル事項ニシテ其地区ト利害ノ関係ヲ有スルモノニ付キ、其会頭ヲ以テ他ノ商業会議所トノ間ニ協約ヲナスコトヲ得
 第十九条 商業会議所ハ会議ノ報告ヲ公示スルコトヲ得
 第二十条 一市内ニ一ノ商業会議所及一若クハ数多ノ商品市場アル場合ニ於テハ、其商品市場ノ管理ハ商業会議所ニ属スルモノトス但シ公共ノ場所ニ関スル市長及警察ノ権利ヲ妨クルコトナシ
  商品市場ヲ設クヘキ場所ハ県達ヲ以テ之ヲ指定ス
  巴里有価証券市場ニ関シテハ此規定ヲ適用セス
一、巴里商業会議所ハ現ニ仏国商業会議所及工芸諮問法ニ拠リ各種ノ実業学校、生糸・毛糸・紙ノ各検査場、銃器試験場、商品市場等ノ営造物ヲ監督管理シ、其他或ハ輸出貿易奨励会・外国語研究会ヲ補助スル等、其経営スル所一ニシテ足ラス雖トモ、就中最モ注目スヘキモノハ一千八百九十八年ヲ以テ組織セラレタル国民貿易会ノ補助是ナリ、即チ同会議所ハ国民貿易会設立ノ際ニ地所ノ買入・家屋ノ新築其他ノ企業費トシテ百十万法ノ多額ヲ支出シ、猶爾後毎年少カラサル補助金ヲ支給シテ、直接間接ニ其事業ヲ助成スト云フ、依テ参考ノ為メ次ニ国民貿易会ノ設立並ニ政府ト巴里商業会議所トノ間ニ締結シタル協約確認ニ関スル法律、協約書ノ訳文及其事業ノ成績等ヲ掲載スヘシ
    ○国民貿易会ノ設立並ニ政府ト巴里商業会議所トノ間ニ締結シタル協約確認ニ関スル法律
 共和国大統領ハ貴衆両院ノ協賛ヲ経テ国民貿易会設立ノ法律ヲ玆ニ頒布ス
 第一条 国民貿易会ヲ設立ス
  本会ハ公設物トス
  本会ハ商工務省ノ管轄ニ属ス
 第二条 本会ハ貿易ノ発達ト、外国・殖民地及保護国ニ於ケル我国商品ノ販路拡張トニ裨益スル総テノ事項ニ附キ、我国商工業者ノ商業上ノ問合セニ応スルヲ以テ目的トス
 第三条 本会ノ財源ハ左ノ如シ
  一支給金年額七万法、一千八百九十八年以後ハ商工務省ノ予算中特ニ国民貿易会ナル一款ヲ設ク
  二本法ノ附属協約書ノ規定ニヨリ本会ノ費用中巴里商業会議所カ負担スル部分
  三本法第八条及第九条ニ掲クル商工業税ノ附加税
  四官庁・商業会議所・同業組合又ハ一箇人ヨリ受クル補助金・生存贈与・遺嘱贈与其他総テノ寄贈
  五右ノ外法律ノ規定ニヨリ本会ノ所得ニ属スル総テノ収入
 第四条 本会ノ会計ハ商業会議所ノ会計ト同一ノ規則ニ従フ
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 第五条 本会ノ設備又ハ執務ニ関シ巴里商業会議所カ与フル協力ノ条件ヲ定ムルタメ、商工務大臣及巴里商業会議所間ニ締結シタル一千八百九十七年十一月十四日附ノ協約並ニ一千八百九十八年一月二日附ノ追加規定ヲ確認ス
  右ノ協約並ニ追加規定ハ三法ノ定率税ニヨリ登記ヲ経テ之ヲ本法ニ附加ス
 第六条 本会ノ組織・執務・役員ニ関スル規則及本会廃止ノ場合ニ於ケル清算方法ハ、前示ノ協約書第九条以下並ニ追加ノ規定ニ従フ、但シ巴里商業会議所ノ同意ヲ経テ行政規則ノ形式ニ於ケル勅令ヲ以テ之ヲ修正変更スルヲ妨ケス
 第七条 本会廃止ノ場合ニ特別充用ノ指定アル生存贈与・遺嘱贈与其他ノ寄贈ニ係ル有価物アルトキハ、商工務大臣ノ報告ニ基キ、勅令ヲ以テ公設物又ハ准公設物中贈与者ノ意思ヲ満タシ能フモノニ之ヲ附与ス
  右ノ場合ニ特別充用ノ指定ナキ生存贈与・遺嘱贈与其他ノ寄贈ニ係ル記名公債其他ノ記名証券アルトキハ国有ニ帰ス
 第八条 本会費用ノ一部ヲ補ンカ為メ一千八百九十八年一月一日ヨリ、一千八百八十年七月十五日ノ法律第卅八条(其後同法ニ加ヘタル修正変更法参照)ニ定メタル巴里商業会議所管内ノ営業税納賦者ヨリ営業税ニ対スル比例附加税ヲ徴収ス
  課税ノ割合ハ毎年一法ニ対シ四分ノ一参トス
 第九条 本会ノ事務拡張ノ為メ、就中不動産ノ獲得其他建築ニ要シタル債務ノ利子支払ノ為メ、巴里商業会議所カ更ニ資本ヲ給与スルノ必要アル場合ニハ、右ノ附加税ヲ一参マテ増徴スルコトヲ得
 第十条 前条ノ場合ニ徴収スヘキ税額ノ割合ハ、商工務大臣ノ報告ニ基キ、年々勅令ヲ以テ之ヲ定ム
 貴衆両院ノ討議協賛ヲ経タル本法ハ国家ノ法律トシテ之ヲ執行ス
   巴里ニ於テ一千八百九十八年三月四日
      共和国大統領      フヱリックス フォール
      郵便・電信・商工務大臣 ヱンリ ブーシヱ
      大蔵大臣        ジョールジュ コシュリー
    ○協約
 商工務大臣ハ貴衆両院ノ協賛権ヲ留保シ、巴里商業会議所ハ一千八百九十七年十一月十一日ノ決議ニ基キ其会頭ヲ代理者トシ、其間ニ協約スルコト左ノ如シ
 第一条 商工務大臣カ国民貿易会ノ設立ヲ経営スルニ当リ、巴里商業会議所ハ通商事項問合部ヲ設クルノ趣旨ヲ以テ「フヱード」街三番ニ築造シタル不動産ヲ同会ノ使用ニ供センコトヲ申込メリ
  右不動産ノ獲得費・建築費其他ノ設備費ノ概総額百十万法ハ巴里商業会議所ノ負担トス、但シ巴里商業会議所ハ該地所建物其他其備附ケタル動産物ノ所有権ヲ有ス
  右不動産ノ無償貸借ハ巴里商業会議所カ国民貿易会ニ与フル補助ノ一部トス
 第二条 巴里商業会議所ハ均シク補助ノ名義ヲ以テ、国民貿易会ノ
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来訪者ニ限リ其商業図書部ノ入場ヲ許可ス
  右国民貿易会来訪者ノ入場ニ関スル条件並ニ規則ハ商業会議所別ニ之ヲ定ム
  右図書部ハ商業会議所本館内既設部分ヲ拡張シ、更ニ国民貿易会事務所ニ充テタル建物ノ二階ノ一部或ハ全部ヲ占ムルニ至ルヘシ
 第三条 巴里商業会議所ハ均シク補助ノ名義ニヨリ、無償ニテ国民貿易会ノ会計事務ヲ担任ス
 第四条 巴里商業会議所ハ国民貿易会補助ノ名義ニヨリ、其管理費及事務費ノ一部分担ノ目的ヲ以テ、法律ノ規定ニ基キ、営業税ニ対スル四分一参ノ比例附加税ヲ課スルコトヲ得
  国民貿易会ノ事務拡張ノ為メ、就中不動産ノ獲得費及其建築費ニ充テタル債務ノ利子償却ノ為メ、新ナル資本ヲ要スル場合ニハ、巴里商業会議所ノ発議ニ基キ、閣議ヲ経テ、営業税ノ比例附加税ヲ其最多額一参マテ増課シ得ヘキ旨法律案ヲ以テ規定ス
 第五条 国民貿易会ハ公設物トス
 第六条 商工務省ハ毎年七万法ヲ補助ス
 第七条 国民貿易会ハ該官庁・商業会議所・同業組合又ハ一個人ヨリ生存贈与・遺嘱贈与其他諸種ノ寄贈ヲ受クルコトヲ得
 第八条 国民貿易会ノ会計ハ商業会議所ノ会計ト同一ノ規則ニ従フ
 第九条 国民貿易会ハ外交官・領事官又ハ殖民地ノ諸官吏ト通信ス但シ其所轄主務省若クハ該主務省ノ代理権アルモノヽ手ヲ経ルヲ要ス
  国民貿易会ハ内地ノ商業会議所・技術製造会議所又ハ在外仏国商業会議所ト直接ニ通信スルコトヲ得
 第十条 外交官・領事官又ハ商業代理者ヨリ受クル商業上ノ参考事項ヲ補ハンカ為メ、商工務大臣ハ内地・殖民地又ハ外国ニ在ル仏国商工業者中ヨリ輸出入業ニ最モ実地経験アルモノヲ選択シテ、国民貿易会ノ通信員トス
  右通信員ハ貿易商議員ト称ス
  貿易商議員ノ任期ハ五箇年トス、但シ再選スルヲ妨ケス
  貿易商議員ハ名誉職トス
 第十一条 商工務大臣ハ理事会ヲ任命ス
  商工務大臣ハ当然理事会ノ会長トナル
  理事会ハ左ノ者ヲ以テ構成ス
   巴里商業会議所会頭(理事会ノ第一副会長トナル)
   地方商業会議所会頭七名
   巴里商業会議所役員六名(同会議所之ヲ指名ス)
   巴里又ハ地方ノ同業組合聯合協会会頭二名
   国民貿易会貿易商議会二名
   商工務省商事局長
   大蔵省関税局長
   外務省通商局長
   農務省農事局長
   公共土木省鉄道局長
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   国民貿易会々頭
   殖民省書記官長又ハ局長一人
   通商局第三部長及国民貿易会書記(右二名ハ当然理事会ノ書記トナル、但シ議決権ヲ有セス)
  理事会ハ国民貿易会ノ組織及事務部ノ監督ニ任シ其完成ヲ謀ル
 第十二条 事務委員会ハ左ノ者ヲ以テ構成ス
   巴里商業会議所会頭   委員長トナル
   地方商業会議所会頭五名 理事会之ヲ指名ス
   巴里商業会議所役員三名 同会議所之ヲ指名ス
   国民貿易会々頭
   国民貿易会書記(事務委員会ノ書記ヲ兼ヌ、但シ議決権ヲ有セス)
  事務委員会ハ日常事務ノ進行ヲ謀ル
 第十三条 理事会ハ三箇月ニ一回以上会合シ、事務委員会ヨリ事務上ノ報告ヲ聴キ、事業ノ完成ニ必要ナル諸問題ヲ決議ス
 第十四条 事務委員会ハ毎月二回以上必要ニ応シテ会合シ、会長ヨリ事務進行上ノ報告ヲ聴キ、事務上ニ関スル処置方法ヲ処決ス
  事務委員会ハ毎年予算ヲ編成ス
  右予算ハ商業会議所及理事会ノ同意ヲ得、商工務大臣ノ検閲ヲ経ヘシ
 第十五条 国民貿易会々頭ハ、商工務大臣ノ報告ニ基キ、勅令ヲ以テ之ヲ任命ス
  若シ行政官中ヨリ会頭ヲ任命シ、所轄主務大臣ノ認可ヲ経テ一時国民貿易会附ヲ命シタルトキハ、其会頭ハ猶ホ其所属官庁ニ在勤スルモノト見做サレ、進級並恩給ノ権ヲ保有ス
  書記(一名)部長(数名)其他ノ事務員ハ、会頭ノ発議ニ基キ、事務委員会自己ノ定ムル採用条件ニ照シテ之ヲ任命ス
  書記・部長其他ノ《(「第十六条」ノ文字脱カ)》事務員ハ恩給ヲ受クルノ権ヲ有セス、但シ第十五条ノ場合ハ此限リニアラス
  故ニ其受クル手当金ヨリ何等ノ義務的控除ヲ受クルコトナシ、右恩給権ヲ有セサル役員等ヲ国民養老年金会社ヘ任意加入シ、以テ容易ニ其利益ニ与ラシメンカ為メ、国民貿易会ハ同会社ヘ各役員ノ箇人的払込額ト同一額ヲ其在職年間払込ム、但シ其俸給額ノ百分ノ五ヲ超過スルヲ得ス
 第十七条 国民貿易会ハ商業官報ノ印刷・発行及販売ニ任ス
  国民貿易会ハ現在ノ儘ニテ之ヲ継続スルト、将タ事務委員会ノ意見ニ因リ他ノ定期発行方法若クハ他ノ記事材料分割方法ヲ採ルトハ、其自由トス、但シ左ノ事項ヲ除ク
  商業官報中仏国並外国ノ商業上ノ立法・行政規則・公書、仏国ノ外交官・領事官ノ報告並通信ニ関スル部分、及此等事項ニ関スル附録ハ従前ノ通リ商工務省ニ於テ之ヲ編纂シ、通商局ニ於テ之ヲ校閲ス
  其他ノ諸欄ハ従前ヨリ存スルモノナルト将タ将来更ニ設クルモノナルトヲ問ハス、事務委員会ノ監督ノ下ニ国民貿易会之ヲ編纂ス
 - 第22巻 p.806 -ページ画像 
商業官報印刷費ヲ補ヒ以テ従前ヨリ為シタル諸官庁・内外商業会議所等ヘノ無償配付ヲ持続センカ為メ、商工務省ハ予定額一万二千五百法ヲ以テ商業官報並其附録九百部ヲ予約ス
  若シ商業官報ノ定期刊行数又ハ其紙数ヲ増加スル場合アルトキハ商工務省ノ予約数九百部ハ其増加ノ比例ニ応シテ之ヲ減少ス、但シ商工務省ノ予算カ上掲一万二千五百法ノ予定額ヲ増加スルヲ許ス場合ハ此限リニアラス
  右複通調成ス
    巴里ニ於テ一千八百九十七年十一月十四日
      郵便・電信・商工務大臣 エンリー ブーシヱ印
      巴里商業会議所会頭   ドローネー ベルビール印
    ○追加規定
 商工務大臣ハ貴衆両院ノ協賛権ヲ留保シ、巴里商業会議所ハ一千八百九十七年十一月十一日ノ決議ニ基キ其会頭ヲ代表者トナシ、一千八百九十七年十一月十四日附ノ協約ニ左ノ通リ追加補充スルコトヲ合意セリ
 第一条以下第十七条ニ至ル変更ヲ加ヘス
 第十八条 巴里商業会議所ハ本協約ヲ以テ定メタル約款ヲ二十年間履行スヘキコトヲ約諾スヘシ、但シ巴里商業会議所ハ商工務省カ本協約第六条ニヨリ負担シタル補助金七万法ヲ其予算ヨリ削除スル場合ニハ、右約款ノ取消ヲ要求スルノ権利アルコトヲ明示的ニ留保ス
  商工務省カ補助金ヲ廃止スルニ至ルモ、其当時特別充用ノ指定ナキ生存贈与・遺嘱贈与其他ノ寄贈財産ヨリ生スル年益七万法ニ達スル場合ニハ、巴里商業会議所ハ本協約ノ取消ヲ要求スルノ権利ヲ有セス
 第十九条 会計年度末ニ至リ特別充用ノ指定ナキ生存贈与・遺嘱贈与其他ノ寄贈財産ヨリ生シタル金額其他処分シ得ヘキ金額アルトキハ、必要ナル当座資金ヲ引去リ其残額ヲ以テ、仏国記名公債又ハ政府カ最少額ノ利息ヲ担保スル記名ノ債権其他記名ノ有価証券ヲ買入ルヘシ、但シ商工務大臣カ反対ノ決定ヲナストキハ此限リニアラス
 第二十条 国民貿易会ヲ廃止スル場合ニハ其所有ニ属スル資産ヲ精算スルコト左ノ如シ
  第一特別充用ノ指定ナキ生存贈与・遺嘱贈与其他ノ寄贈行為ニ係ル有価物ハ、商工務大臣ノ報告ニ基キ、公設物又ハ准公設物中寄贈者ノ意思ヲ充タス性質ヲ有スルモノニ附与ス
  第二フヱイド街ノ不動産其他巴里商業会議所カ法律案第九条ノ規定ニヨリ会ノ事務拡張ノ為メ新タニ取得シ又ハ建築スル不動産ハ同会議所ノ所有トス
  第三動産物「コレクシヨン」其他諸種ノ図書記録ハ之ヲ巴里商業会議所ニ附与シ、同会議所ニ備附ケシム
  第四特別充用ノ指定アル生存贈与・遺嘱贈与其他ノ寄贈行為ニ係ル記名公債其他ノ記名証券ハ国有ニ帰ス
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 右複通調製ス
   巴里ニ於テ一千八百九十八年一月二日
      巴里商業会議所会頭   ドローネー ベルビール印
      郵便・電信・商工務大臣 ヱンリー ブーシヱ印
    ○国民貿易会ニ関シ政府ト巴里商業会議所トノ間ニ締結シタル協約変更ノ勅令
 仏国大統領ハ郵便・電信・商工務大臣ノ報告ニ基キ、国民貿易会設立ニ関スル一千八百九十八年三月四日附ノ法律ニヨリ、一千八百九十七年十一月十四日郵便・電信・商工務大臣ト巴里商業会議所トノ間ニ締結シタル協約ニヨリ、一千八百九十八年一月二日附該協約ノ追加規定ニヨリ、一千八百九十八年二月二日附巴里商業会議所ノ議決ノ抜粋書ニヨリ、一千八百九十八年二月十四日及三月十七日附巴里商業会議所会頭ノ書翰ニヨリ、参事会ニ諮詢シ、玆ニ勅令ヲ発スルコト左ノ如シ
 第一条 一千八百九十七年十一月十四日附ノ協約ニ左ノ変更ヲ加フ
 第二条 地方商業会議所会頭ハ、其任期間何時ト雖モ、自己ニ差支アル場合ニ自己ヲ代理スル会議所議員一名ヲ予メ選定シ置クコトヲ得
 第三条 同業組合ノ代表権ハ左ノ如シ
  理事会 巴里又ハ地方ノ工業又ハ商業同業組合聯合協会会頭二名及工業同業組合会長二名
  事務委員会 理事会ナル工業同業組合会長一名
 第四条 事務委員ハ商工務大臣理事中ヨリ選抜シテ之レヲ任命ス
  巴里商業会議所ヲ代表スル事務委員ハ理事中ヨリ同会議所之ヲ指名ス
 第五条 理事並ニ事務委員ノ任期ハ五箇年トス、但シ再任ヲ妨ケス
  理事又ハ事務委員カ其任命ヲ受クルノ原因トナリタル職務ヲ止ムルトキハ、当然理事又ハ事務委員ノ職ヲ失フ
  右ノ場合ニハ其同職ノモノヲ選択シテ之ヲ補欠ス
 第六条 商業官報中商工務省ノ編纂ニ属セサル部分ハ、同省ノ監督ヲ受ケテ国民貿易会之ヲ準備ス、但シ其校正案ハ印刷ニ附スル前商工務省ノ検閲ヲ受クヘシ
 第七条 商工務大臣ハ本勅令ノ施行ニ任ス
  本勅令ハ官報ヲ以テ公布ス
   巴里ニ於テ一千八百九十八年四月二十五日
       共和国大統領      フヱリクス フオール
       郵便・電信・商工務大臣 ヱンリー ブーシヱ
    ○国民貿易会事務成績
      通信及口頭問合ノ件数表

図表を画像で表示通信及口頭問合ノ件数表

                     一八九八年七月十八日ヨリ一九〇〇年十月三十一日ニ至ル   一九〇〇年十一月一日ヨリ一九〇一年十月三十一日ニ至ル   合計                         通信問合   口頭問合                通信問合     口頭問合        人員、物件其他 事務部総務局 本局ニ属スル事          六、九八五  一、七五〇              一、九九六     八一九               一一、五三〇        務ニ関スル件     外国及仏国殖民地ニ於ケ 第一部 ル商業家ノ有スル声聞及        三八、六三七    六二一             二三、二六五     三八一               六二、八八四     信用ニ関スル件  以下p.808 ページ画像  第二部 世界ノ数箇国ニ亘ル商工         九、八六〇  一、二四九              六、四一五     五七八     業上ノ調査ニ関スル件 特ニ左記各国ニ於ケル商工業上ノ 欧羅巴     六、九四五    九八九              四、二三七     七一九 参照事項ノ問合ニ関スル件    亜細亜     一、一九三    五二二                五二六     三七四                 亜弗利加      六六九    三九八                四八九     二四四                 亜米利加    二、〇八五    六二六              一、一五二     五七一                 オセアニー     三二一    一八二                一三五     一四三               五八、九六〇                 仏国諸殖民地  二、二三〇    七六九                四七二     四〇二 代理店ヲ需ムル件                一、〇二四    一九九                四二八     三二一 商工業雇人ヲ需メ又ハ之ニ応スル件        一、八五三    八五五                九二五     五一四 入札ノ件                    三、二九七    七〇〇              一、七〇三     四六一 取引申込ノ件                    七五〇    一七九                八五九     四四七 第三部税関及統計ニ関スル件           一、七九〇  三、一七九              一、五八七   二、一〇九                八、八六五 第四部運輸ニ関スル件                五八三    二六二                四五六     二四一                一、五四二 第五部専問学術上ノ問合セ事項            二〇七    一五五                 七二      八八                  五一七    ニ関スル件 受信回答状及感謝状               二、〇九四      …              六、八五六       …               三八、五五一 縦覧室ノ借覧人                     …  一四、九二一                 …   五、八六四    総計                     八九、五二三  二七、五五六            五一、五七三  一四、二七六                                                                              一八二、八四九                               一一七、〇七九                    六五、八四九                            一箇月平均四、三七二件               一箇月平均五、四八二件 


 第一部ハ右ノ外尚本会ノ諸種ノ刊行物ヲ取扱フ
    ○国民貿易会業務摘要
      公設物(一千八百九十八年三月四日附法律)
 国民貿易会ハ外国貿易ノ発達又ハ外国・仏領殖民地及保護国ニ於ケル我邦生産品ノ販路拡張ニ裨益スル諸種ノ問合セニ応スルヲ以テ目的トス
 本会ハ口頭ノ問合セナルト書面ノ問合セナルトヲ問ハス、左ノ諸点ニ関シ無償ニテ応答ス
 第一 仏国内地ノ工業消費又ハ通過商業ヲ目的トシテ外国ヨリ仏国ニ向フトコロノ原料品又ハ製産品ニ関シ
 第二 外国・仏領殖民地又ハ保護国ニ於テ販路ヲ求メ得ヘキ仏国製産品ニ関シ
 第三 仏国以外ニ於テ行フヘキ起業又ハ取引ニ関シ――外国ニ於ケル公共土木工事又ハ入札引受(入札条件書・図面等ノ通知)ニ関シ
 第四 内外ノ関税、諸種ノ郵税、其他商業又ハ航海上ノ諸税ニ関シ
 第五 運輸問題ニ関シ(鉄道運賃、海上又ハ河川運輸ニ関シ)
 第六 支払条件ニ関シ、荷造ニ関シ
 第七 市場ノ景気ニ関シ、其他出来得ル限リ外国・仏領殖民地又ハ保護国ニ於ケル諸商家ノ声聞ニ関シ
 国民貿易会ハ商業官報ヲ発行ス
 此官報ハ週刊ニシテ、商業・工業及海事ニ関スル有益ナル事項ヲ掲載ス
 又仏国外交官又ハ領事官ノ商業上ノ報告ヲ纂集シタル附録ヲ発行ス
 予約殖民地又ハ外国
    一年     六箇月     三箇月
   三十二法半  十六法七十五  八法七十五
 但シ求メニヨリ標本ヲ送致ス
    ○一千九百年度ニ国民貿易会カ受ケタル補助金
 四、〇〇〇《(法)》   馬耳塞商業会議所
 - 第22巻 p.809 -ページ画像 
 一、〇〇〇   ダンケルク同上
 一、〇〇〇   ルーベー同上
 一、〇〇〇   ルーアン同上
   五〇〇   ボルドー同上
   三〇〇   ヱピナール同上
   三〇〇   サンテチヱンヌ同上
   二〇〇   カルカソンヌ同上
   一五〇   サンカンタン同上
   一〇〇   アルマンチヱール同上
   一〇〇   バイヨンヌ同上
   一〇〇   ベルフオール同上
   一〇〇   コギヤック同上
   一〇〇   ドウーヱー同上
   一〇〇   オンフルール同上
   一〇〇   ラロシヱール同上
   一〇〇   マンス同上
   一〇〇   ペリニュー同上
    五〇   ヱヴルー同上
    五〇   マザメー同上
    五〇   ペルピニュヤン同上
    五〇   チユール同上
    四〇   ヌヴェルス同上
    三〇   モンリヱソン同上
    三〇   ニーヌ同上
    二八   プール同上
    二八   チヱール同上
    二五   ブールジユ同上
    二五   シヤルトウル同上
    二五   ラ ローシユ シユリオン同上
    二〇   タルブ同上
    二〇   サンブリウー同上
    一〇   ニオール同上
 一、〇〇〇   マダカスカール総督府
   五〇〇   仏国玻璃製造同業会議所
   五〇〇   仏国輸出奨励会
   五〇〇   仏国砂糖商同業組合
   二〇〇   仏国硝子瓶製造業組合
   一五〇   電気工業同業組合
   一〇〇   仏国製帽及附属業組合高等委員会
   一〇〇   ヱピーヌ市コスト木綿同業組合
   一〇〇   コニヤック市コニヤック酒商同業組合
   一〇〇   石油業同業会議所
   一〇〇   写真製造販売業組合
   一〇〇   食料品卸売商並ニ其附属商工業組合
 - 第22巻 p.810 -ページ画像 
   一〇〇   製薬同業会議所
   一〇〇   レンス市工業会社
   一〇〇   巴里絹物商工同業会議所
   一〇〇   里昂同業会議所聯合協会
    七五   仏国織物並ニ新物同業会議所
    五〇   兵器弾薬銃猟品商工同業会議所
    五〇   「セミラック」並ニ玻璃製造同業会議所
    五〇   「ダイヤモンド」真珠宝石商並ニ玉工同業会議所
    五〇   紙商工同業会議所
    五〇   化学製品同業組合
    五〇   金具商工同業会議所
    五〇   博戯具並ニ扇子同業会議所
    五〇   葡萄酒薬用酒精卸売商聯合会
    三〇   玩具遊戯具同業会議所
    二五   流行物同業会議所
    二〇   寺院用肖像家具類同業会議所
   二五〇   在巴里仏国貿易商議員レモン氏
   二〇〇   在ボーベー市仏国貿易商議員ヂュポン氏
   二〇〇   在巴里仏国貿易商議員ルイ ゲラン氏
    五〇   在オデッサ仏国貿易商議員ヱイサン氏
   二〇〇   サンテチゥンヌ仏国兵器車輪製造所
   一五〇   タランス市ア ギーヨーム会社
    五〇   在ボルドー市ビユツソー氏
 千九百二年ニ於テ仏国貿易会カ消費スル「インキ」並ニ糊ノ供給
        ヂジヨン「インキ」化学製品製造会社
    (十四) 里昂商業会議所
一、里昂商業会議所ハ其創立最モ早キモノニシテ、欧洲商業会議所ノ嚆矢ト称セラル、而カモ今日ハ一千八百九十八年四月九日発布ノ仏国商業会議所及工芸諮問法ニ遵拠スルヲ以テ、其性質・権限等大要巴里商業会議所ト同一ナリ、唯タ里昂商業会議所カ経営シツヽアル実行上ノ設備ニ於テハ稍々其趣ヲ異ニスルモノアリ
一、里昂商業会議所ハ生糸検査場及織物博物館ヲ直接監督ス、又商業学校・植物学校等ニ関係スルコトアレトモ、コレハ直接関係スルモノニアラス
一、里昂商業会議所ハローレン県ノ半部ヲ以テ其地区トス
一、議員ノ総数ハ二十一名ニシテ、議員選定委員之ヲ議員候補者中ヨリ選定ス
一、議員選定委員ハ、県知事・商業裁判所判事・会議所議員ヲ以テ組織ス
一、議員候補者ハ経費負担者中ヨリ選出セル議員候補者選挙人之ヲ選挙ス、但シ被選挙人ハ全ク資格ノ制限ナキモノトス
一、会議所ノ経費ハ営業税ニ附加ス、其附加率ハ百分ノ七乃至八ト定ム
一、里昂商業会議所ノ収入ハ独リ此附加金ノミニアラス、其建物ノ一
 - 第22巻 p.811 -ページ画像 
部ヲ商事裁判所・工業裁判所・仲裁々判所・株式取引所・商品取引所等ニ賃貸スルヲ以テ、此収入亦少シトセス、其他其監督ノ下ニアル生糸検査場ノ収入モ亦其一大財源ナリトス