デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2021.9.1

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
4款 商業会議所聯合会
■綱文

第22巻 p.873-897(DK220071k) ページ画像

明治35年12月11日(1902年)

是日臨時会第四日ノ会議ニ於テ、大阪商業会議所ノ提出ニ係ル保護政策ノ確立実行ニ関スル儀上程サレ委員附託トナリ、同日午後ノ会議ニ委員調査案提出サレ可決セラル。栄一会長トシテ議事ヲ司宰ス。


■資料

渋沢栄一 日記 明治三五年(DK220071k-0001)
第22巻 p.873-874 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三五年    (渋沢子爵家所蔵)
 - 第22巻 p.874 -ページ画像 
十二月十一日 曇
○上略 九時商業会議所聯合会ニ出席ス ○下略


明治三十五年十二月開設 臨時商業会議所聯合会議事速記録 第一四〇―一八〇頁 刊(DK220071k-0002)
第22巻 p.874-892 ページ画像

明治三十五年十二月開設
臨時商業会議所聯合会議事速記録  第一四〇―一八〇頁 刊
明治三十五年十二月十一日午前十時四十分開議
  出席委員     二十四名 ○氏名略
○上略
○三十五番(大阪、三谷軌秀君) 今会長ノ御示シニ依ルト前会ニ引続イテ工場法案ヲ議スト云フ御宣告デゴザイマシタガ、第五号議案ガ未ダ議事ニ上ツテ居リマセヌノデ、議事ノ都合ニ依ツテドウ云フコトニナルカ分リマセヌガ、願ハクハ此際第五号議案ヲ議事ニ付シテ、ソレガ済ンデカラ工場法案ニ移ルヤウニ致シタイト思ヒマス、諸君ニ御差支ガナケレバサウ云フコトニ願ヒマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 全会ニ御異議ガナケレバ五号議案ヲ先キニ議事ニ付スルヤウニ仕リマス
   (「異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○会長(東京、渋沢栄一君) 然ラバ五号議案ヲ議事ニ付シマス、朗読致サセマス
   (書記朗読)
○議案第五号            (大阪商業会議所提出)
一保護政策ノ確立実行ニ関シ意見開申ノ件
商工立国ハ官民ノ夙ニ唱道シ来レル所ニシテ、富国強兵ハ上下ノ寤寐ニ思望シテ止マサル所ナリ、而シテ商工立国ノ実体ハ産業ノ発達ヲ待チテ始テ全キヲ得ヘク、産業発達ハ保護政策ノ効果ニ依リテ漸ク大成スルヲ得ヘキナリ、之ヲ要スルニ保護政策宜シキニ適ヒ、各種産業能ク発達シテ経済実力内ニ充足スルニ及ハヽ、富国ノ実以テ自ラ挙リ、強兵ノ体以テ自ラ備ハルニ至ルヘシ、是ノ故ニ本会議所ハ全国各会議所ト共ニ屡々意見ヲ披陳シ、商工立国ノ実体ヲ具足セシメテ富国強兵ノ隆運ニ達セント欲セハ、須ラク先ツ国家経済ノ方針ヲ確立シ、保護政策ヲ画定正用シテ産業ノ発達大成ヲ促進スヘキヲ主張セリ
然ルニ政府ニ於テハ明ニ其ノ要ヲ認メ其ノ議ヲ説クニモ拘ハラス、政派党与ノ操縦ニ忙殺セラレ、応急臨機ノ政略ニ汲々トシテ、国家経済ノ料理上未タ各省ニ通シテ産業保護ノ画策ヲ一定シ、応和斉々以テ之カ実行ニ努ムルニ遑アラス、左顧右眄事ニ当リ、物ニ触レテ僅ニ箇々断々タル施設ヲ為スニ過ギス、従テ其ノ労スル所其ノ費ス所ノ比較的ニ大ニシテ、其ノ得ル所毎ニ小ナルノ不利アルノミナラス、全局各省ニ対シ相互ノ応和作用自ラ不完全ナルカタメ、其ノ効験モ亦自ラ顕著強力ナルコト能ハサルノ憾アリ、豈ニ痛惜スヘキノ極ナラスヤ
夫レ行政整理ト云ヒ財政整理ト云ヒ、固ヨリ今日ニ於テ必要ノ大問題タルヲ失ハスト雖モ、若シ産業保護ノ政策ニシテ確立セス、各省ノ間ニ於テ気脈疏通セス、其ノ経営スル所啻ニ動モスレハ相支牾シテ一貫大成ノ序緒ニ就クヲ得サルノミナラス、却テ互ニ排キ抑制スルノ実況ヲ存スル間ハ、到底十分整理ノ目的ヲ達シ、内外ニ対シテ国家ノ福利ヲ永遠ニ保全スルコト能ハサルナリ、殊ニ現下ノ一問題タル海軍拡張
 - 第22巻 p.875 -ページ画像 
問題ノ如キモ、細カニ我ガ国力ノ如何ヲ考ヘ国家経済ノ整理上ヨリ究査セハ、宜シク富力増進ノ後ニ於テスヘキナリ、此ヲ後ニシテ彼ヲ前ニスルガ如キハ啻ニ経倫上其序ヲ顛倒セルノミナラス、其効果自ラ完全ナルヲ得サルヤ必セリ、是ニ依リテ之ヲ観レバ、今日ニ於ケル国家経営上ノ最大要務ハ、一日モ速ニ産業保護ノ政策ヲ確立シ、各省相和シテ之ヲ実行シ、依リテ以テ国富先ツ能ク内ニ充チテ兵威自ラ能ク外ニ張ルノ真正隆運ニ到達セシムルニアルノミ、故ニ此ノ際各会議所ニ於テモ右ノ要旨ニ基キ、極力一致以テ当路ニ対シ、完全ナル保護政策ノ確立実行ヲ促致セラレンコトヲ切望ス
○三十五番(大阪、三谷軌秀君) 此保護案ニ対スル提出ノ理由ヲ聊カ説明致シタイト考ヘマス、本案ハ極ク簡略ニ申シマスレバ、一言以テ掩フコトノ出来ル問題デアリマスルシ、之ヲ詳説シマスレバ、随分長キニ渉ル問題デアルト考ヘマス、此際提出シタ理由ニ付キマシテハ、少シ詳細ニ渉ツテ説明ヲシ、諸君ノ御参考ニ供シタイト考ヘマス、其中最モ不用ト考ヘマス所ノモノハ成ルタケ略スコトニ致シマスガ、勢ヒ多少長キニ渉ルカモ計リ難フゴザイマスカラ、此辺ハ予メ御諒承ヲ願ヒマス、サウシテ此問題ノ意味ヲ誤解ナク細カニ説明スルニ至リマシテハ、言葉ヲ飾ラズ直言シ、或ハ平タク言フ方ガ便利ナコトモアルカト考ヘマス、其辺ニ付イテハ言葉咎メノナイヤウニ、此議案ノ意味ヲ御諒察ヲ願ヒタイト考ヘマス、故ニ言葉ノ為メニ意味ヲ誤解セラレヌヤウニ予メ御断リヲ致シテ置キマス、本案ハ此保護政策ノ確立ト云フ題号ト致シマシテハ当聯合会ニ提出スルガ始メテデゴザイマスケレドモ此議案ノ精神骨髄トナル所ノモノハ三十三年ノ五月ニ開カレマシタ臨時会ニ大阪商業会議所其他各商業会議所カラ出シマシタ所ノ国家財政整理問題ニ関スル八件カ九件カノ議案ヲ総括シテ委員ニ付託シテサウシテ其委員ノ手許デ調査ノ上報告ヲシテ此聯合会ニ於テ決議ヲシサウシテ特ニ当局大臣ニ委員ヲ出シテ能ク事情ヲ陳述シタ国家経済整理ノ方針ニ関スル問題中ノ即チ第二ノ第四ニ掲ゲタ事柄ナンデス、即チ曩ニ決議シタ第二ノ第四ニハ「特別ノ事情アル輸入物品ト同一物品ノ製造者ニ対シ免税其他適当ノ保護ヲ与フルコト」斯ウ云フコトガ書イテアツタノデゴザイマス、サウシテ昨年ノ一月ノ臨時聯合会ニ於キマシテ、今ノ第二ノ第四ヲ細別シテ、曩ノ決議ダケデハ意味ガ能ク分ラヌ、ドウ云フモノニ対シテ、ドウ云フヤウニ保護ヲ行フカト云フコトハ、モウ少シ細カニ立入テ研究スルノ必要ガアルト云フコトデ、昨年ノ一月ノ臨時聯合会ニ於テ今ノ項ヲ五ツニ別チテ、サウシテ其題目ハ「我工業及商業ハ左ノ方針ヲ以テ保護奨励ノ策ヲ立テ速ニ之ヲ実行スルコト」ト致シテ、サウシテ其内訳ハ「(イ)輸入品中内地ニ於テ生産シ得ベキモノヽ工業ヲ発達セシメ以テ輸入ヲ防遏スルコト(ロ)特ニ輸出ニ利アル工業ヲ保護シ輸出ノ増大ヲ図ルコト(ハ)清・韓両国、印度及ビ南洋諸島ニ対スル輸出貿易ヲ拡張スルコト(ニ)前三項ノ方針ニ依リ精細ナル調査ヲ遂ゲ、其保護奨励スベキ品類ヲ撰択スルコト(ホ)保護奨励ハ或ル特殊ノ場合ヲ除クノ外間接ノ方法ニ依ルコト」斯ウ云フ事柄ニ致シマシテ、是レモ其際ノ委員会ノ決議ニ依テ斯ク相成タ次第テゴザイマス、故ニ此問題ノ本趣意ニ付キマシテハ、既
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ニ二回マデモ此聯合会ノ決議ヲ経タコトデゴザイマスカラ、諸君ニ於テモ大体ニ於テハ無論御異存ノナイコトヽ信スル訳デゴザイマス、而シテ其際ニモウ一ツ決議ヲシタ事ガアツタノデアリマス、ソレハ其保護奨励スヘキ品類ノ撰択ヲスルコトニ付イテ各会議所ガ努メテ其調査ニ従事シヤウ、サウシテ当局大臣ニモ其事ヲ要望シテ、政府ニ於テモ十分サウ云フコトヲヤツテ貰ウト云フコトガ、尚ホ加ヘテ決議シタ事柄デアツタノデス、爾来大阪商業会議所ニ於テモ其調査ニ付イテハ敢テ怠ルト云フ訳デハアリマセヌケレドモ、未ダ十分ニ調査ガ結了シテ居リマセヌ、併シ其品類調査ノ如キモノハ速ニシナケレハナラヌ問題デゴザイマスガ、国家トシテ未ダ保護政策ヲ実行スルト云フコトノ意思ガ定マツテ居ラヌモノヽ如クニ考ヘルノデアリマス、ソレデ此案ハ吾々商業会議所其他商工業者ノ口ニ依テ屡々唱道ヲシテ遂ニ玆ニ至ラシメ、之ヲ以テ一ツノ国是トシテ政党政派ノ異同ニ関セズ動カスベカラサル一定ノ方針ト致シタイト云フノガ最モ私共ノ希望スル所デゴザイマス、又時事問題ノ如ク今之ヲ出セバ採用セラレルトカ採用セラレヌトカ云フコトニハ顧慮スルモノデゴザイマセヌ、強イテ斯クシナケレバ我国家ノ経済ヲ料理スルコトガ出来ヌト云フ考デアル、故ニ時ニ応ジ機ニ触レ、此事ヲ屡々唱道スルコトガ必要デアラウト云フ趣意カラ、本案ヲ提出シタ次第デゴザイマス、而シテ曩ニ決議シマシタ所ノ国家経済整理ノ方針ニ関スル問題中ニハ種々ノ事柄ガ掲ゲテゴザイマシテ、詰リ全体ノ財政ノ整理ト云フ方カラ観察シタタメニ有ラユル方面カラ観察シテ種々ノ望ミヲ提出シタノデアリマスガ、其中ニ政府ニ於テ全ク採用セラレ或ハ其意見ヲ幾部分採用セラレ、又既ニ採用セラレントシツヽアルモノモ多々アリマス、則チ其時要望シマシタ興業銀行ノ如キハ既ニ設立ガ出来、又タ海陸聯絡線ノ如キモ既ニ政府ガ計画シツヽアルト云フコトデアリマス、又タ工業試験所ノ如キモ政府ノヤツテ居ル工業試験所ノ拡張ハ吾々ノ望ンデ居ルモノヨリハ小ナルモ、農商務省ハ省令ヲ発シテ府県郡ノ工業試験所及工業伝習所ノ規則ヲ設ケマシタ、而シテ我ガ大阪府ノ如キハ則チ府会ニ議案ガ提出サレテ、三十六年度ヨリ府立工業試験所ヲ興スト云フ事ニナリマシタ、其他貿易事務館設置ノ如キ、又タ領事館増置ノ如キ、吾々ノ希望シタ所ノ事ガ幾分カ採用セラレテ行ハレテ居ルガ如キデアリマスガ、併シ保護政策ヲ行ウト云フ趣意ガ官民ノ間ニ貫徹シテ、而シテ上下争フベカラザル一定ノ確立シタル問題トナツテ居ルカト云フニ、決シテ今日ノ場合ハサウデナイト思ハレルノデアリマス、時ニ応ジ或事柄ノ施設モシ亦保護ヲ行フ事アルモ、其趣意ニ至ツテハ終始一貫シテ一定ノ方針カラ割出シテヤルト云フコトガ未ダ行ハレヌノデアリマス、ソレカラ又商工立国ト云フ事柄ハ常ニ人ノ唱道スル所デアリマスガ、我国現在ノ有様ハ果シテ商工立国デアルカト云フコトヲ考ヘテ見マスレバ、マダ商工立国ノ実ハ備ハラヌモノト考ヘル、則チ輸出入品ヲ調査シテ見テモ能ク分ルコトデアラウト考ヘマス、輸入品中ノ多クハ工業品ガ輸入ニナルノデアリマス、輸出品ノ多クハ天産物デアル、我工産品ガ輸出ノ多額ヲ占メテ居ラヌト云フコトハ、我日本ハ工業国デナイ、則チ商工立国ノ実ガ未ダ備ハツテ居ラヌト云フコトハ明カデアラウト思ヒマス
 - 第22巻 p.877 -ページ画像 
併シ農本国トシテ農業ヲ以テ将来ノ日本ヲ維持スルコトガ出来、又之ヲ発達セシムルコトガ出来ルカト云フコトヲ考ヘテ見マシタナラバ、到底此小面積ニ過大ノ人口ヲ有シタ日本ノ国情ニ於テ、農業ヲ以テ将来国ヲ発達セシメルコトガ出来ヌト云フコトハ、殆ド争ノナイ問題デアラウト考ヘマス、サウスルト勢ヒ商工立国即チ世人ノ今唱道シテ居ル商工立国ト云フ事ハ、遂ニ之ヲ実ニシナケレハナラヌ国柄デアラウト思ヒマス、其商工立国ノ実ヲ備ヘントスルニハ、即チ商工業ノ発達ヲセシメナケレバナラヌ、之ヲ発達セシムルニハ、目下ノ形勢即チ世界ノ大勢ヲ考ヘ、彼我ノ状況ヲ対照観察スルニ、保護政策ヲ断行スルノ外手段ナキモノト信ジマス、今或人ノ言ノ如ク、之ヲ自由ニ放任シテ我工業ハ十分発達シ得ベキモノデアルカト云フコトヲ観察スルニ、到底保護政策ニ頼ルニ非ズンバ我商工業ヲ発達セシムルコトハ出来ナイ、是レハ私共ノ観察ト致シマスレバ殆ント争ノナイ事柄デアロウト思ヒマス
然ルニ右申シマシタ如ク多少保護ニ意ヲ用ヒ或経営施設ヲスルニモ拘ハラズ、官民一致或ハ政府ノ中ニモ各省同一ノ意見ト同一ノ方針トヲ以テ終始一貫シタル保護政策ガ未ダ行ハレヌ、何ガ故ニ保護政策ガ本当ニ行ハレヌカ、何ガ故ニ保護政策ガ画一セヌカト云フコトヲ考ヘテ見マスレバ、之ハ私共ノ誤解カモ知リマセヌガ、私ノ観察カラシマスルト云フト、即チ自由貿易論ノ我国ニ這入ツタノガ一番早クシテ、サウシテ其自由貿易論ノ余弊ガ今尚存在シテ居ツテ、殊ニ学者要路ノ人ノ間ニ其持論ヲ主張スル者ガアル、ソレガタメニ此保護政策ノ実行ニ今尚大ニ障害ヲ与ヘテ居ルト考ヘル、此自由貿易論ハ時ト場合トニ依ツテハ甚ダ必要ナコトデアリマスルシ無論自由ニナラナケレバナラヌト云フ場合モアリマスケレドモ、之ハ皆其時ト場合トニ因リ、一国ノ国情ニ因リ、貿易ノ状況ニ因リ異ナリ、又需要品ノ品類ニ因テ異ナル訳合デアル、ソレデ我日本ガ将来商工立国トシテ商工業ヲ発達セシメナケレバナラヌト云フ場合ニ於テ、彼我ノ工業カ対等若クハ我カ優勢ニシテ工業品ニ付テハ所謂供給者ノ地位ニ立ツ場合ニ於テハ大ニ自由貿易ヲ主張スヘキ問題デアロウト思フ、我国ガ需要者ノ地位ニ立ツ場合ニ於テモ、其品ハ到底我国ニ於テ発達スベカラザルモノテアツテドウシテモ他ノ供給ヲ仰クベキ物ニ付テハ自由貿易ハ我ガ国家ニ取ツテハ利益デアルケレドモ、其品ガ我国ニ於テ生産発達シ得ヘキ場合ニ於テハ、之ヲ進メテ遂ニ輸入ヲ防遏スルノミナラズ進ンデ他ニ出スニ至ルマテ、彼我対等若クハ我優勢ニ至ルマデ我事業ヲ進メナケレバナラヌト云フ場合ニ於キマシテハ、ドウシテモ保護政策ニ依ラナケレバ此事業ヲ発達セシムルコトガ出来ナイト云フ事ハ、今日各国共ニ採ツテ居ル所ノ保護政策ノ実例ニ徴シテ明カナコトデアラウト考ヘル、ソレデサウ云フ事情モ分ラズ唯ダ個人主義カラ此自由貿易論ヲ唱ヘル者ガアリマスガ、各国ニ於テ各々其事情ヲ異ニシテ居リマスカラ、一国ノ独立ヲナサシメントシ又之ヲ発達セシメントスルノニハ、矢張保護政策ヲ必要トスル場合ハ多々アル事柄デアリマス、又日本ノ現下ノ国情ニ於テドウシテモ是レデナケレバナラヌ問題デアルト私ハ信ズルノデゴザイマスル、サウシテ次ニハ是迄行ツタ所ノ保護ノ方法ト云フモノ
 - 第22巻 p.878 -ページ画像 
ガ甚ダ宜シクナイ、今迄シテ来タ所ノ或団体トシテ行ツタ一部分ノ保護ノ仕方ハ宜クナイト考ヘルノデアリマス、之ハ今日保護政策ヲ実行スル所ノ一ツノ障害トナツテ居ルカノ如ク考ヘル、其宜シクナイノハドウ云フ点ガ宜クナイカト云ヘハ、即チ其保護スベキ品ノ撰択ヲ誤ツタコトモ多々アルト考ヘルノデアリマス、又保護ノ方法モ事業ト云ヒ仕事ト云フヨリハ、人ト云フコトガ主タルモノトナツテ保護セラレタルモノガ往々アル、ソレデ或人若クハ或会社ヲ目的トシテ保護ヲ与ヘルカラシテ、其人ガ遂ニ保護ノ利益ニ甘ンジテ事業ノ発達ニ勉メナイ又他ノ人ハ保護ヲ得タカラ、元来保護ヲ得ナケレバ事業ヲ発達セシムルコトガ出来ヌノデアルニ、他ニ保護ガアツテ見レバ其他ノ人ハ之ヲ企画スルコトガ出来ヌト云フノデ、遂ニ内地ニ於ケル競争者ヲ起シテサウシテ其事業ニ勉励セシメルト云フ事ガナイノデアル、保護ヲ受ケル者ハ保護ノ利益ニ甘ンジテ、其保護ガ終レバ其事業ガ廃絶スルト云フコトハ今日マデ多々例ガアリマス、サウ云フ保護ノ仕方デアルカラ遂ニ保護ヲ受ケル人ハ中ニハ相当ナ人モアリマセウガ、又中ニハ種々ノ運動ノ結果保護ヲ受ケルト云フコトニナツテ、仮リニ玆ニ拾万円ノ保護ヲ受クルトスレバ、少ナクトモ三・四万円ハ運動費ニナツテ消ヘテ仕舞フト云フコトモ決シテ事実ナイコトデハナカラウト思ヒマス、斯ノ如キノ保護ハ他ノ事業ヲ害シテモ益トハナラヌノデアル、私共ノ望ム所ノ保護ハ決シテ斯クノ如キモノデハナイノデアル、此ノ如キ保護ハ国家ニ害ヲ与ヘテモ利益ハ与ヘナイ事柄デアルト考ヘル、ソレニモ拘ハラズ、既往ニ行ツタ所ノ保護ハ往々サウ云フ事柄ガアルノデ、ソレガ則チ此保護政策ノ実行ヲ大ニ妨ゲツヽアル所ノ一種ノ弊害デアルト考ヘル、故ニ将来保護政策ヲ採ラントスルニハ、此ノ如キ手段方法ハ断ジテ排斥シナケレバナラヌ事柄デアルト考ヘルノデアリマス、ソレカラ其次ニハ外国トノ関係上保護政策ヲ採ルニ当ツテ一番害少クシテ又利益ノ大ナルモノハ関税デアリマスガ、悲イカナ我国ノ外交条約ノ中ニハ協定税率ナルモノガアツテ未ダ全然関税ノ自由ヲ得ナイノデアル、是ガタメニ此保護政策ヲ採ルニ付イテハ極メテ困難ナ事情ガ今尚存在シテ居ルノデ、曩ニ諸君ト共ニ協定税率ノ廃止ノ意見ヲ出シタイノデアリマスケレドモ、事外国トノ条約ニ属シ今俄ニ之ヲ主張シタ所ガ直チニ実行ヲ見ルコトガ出来ナイ問題ト考ヘル、是等ノ原因ハ皆以テ此保護政策ノ確立セサル所以ニナツテ居ルコトヽ考ヘル
然ラバ吾々ノ主張スル所ノ保護政策ハ如何ニシテ為スカ、又ドウ云フモノニ対シテ之ヲ為スカト云フ即チ保護セントスル所ノ方法・希望等ニ付テ少シク詳述シタイト考ヘマス、先ヅ第一ハ即品類ノ撰択デアル其品類ノ撰択ニ付大体ノ方針ニ付テハ、昨年一月ニ決議シマシタ所ノ「イロ」ニ当ツテ居ルモノデ、今現ニ外国品ヲ仰イデ居ル所ノ、内地デ拵ヘル事ガ出来ナイ物ニ向ツテ内地デ無理ニ保護シテヤラセルノハ大変不利ナ話デアツテ、サウ云フモノハ保護スベキ品類ニ加フベキモノデハナイ、矢張リ是ハ外国品ヲ仰イデ行クノハ国家ノ利益デアルト考ヘルノデアリマス、ソレデ此保護スベキモノハ今彼我ノ国情ニ照シテ資本・金利・知識等ニ於テ差異ガアルタメニ我ニ充分ノ発達ヲ見ナイ、サウシテ彼ノ供給ヲ仰ナケレバナラヌト云フ品ニ付テハ其等差ノ
 - 第22巻 p.879 -ページ画像 
程度マデヲ保護スレバ内地ニ於テ十分出来ルノデアル、サウシテ之ヲ保護シテ内地デ製造セシムレバ遂ニ外品ノ輸入ヲ仰ガナイデモ事ガ足リルノデアル、又進ンデハ海外ニ輸出スル時期モ到来スルデアラウ、即チ保護ヲシナイデモ適当ニ製造シ得ベキ時期ニ至ルマデ保護スル、其保護スル程度ニ付イテハ即チ漸次発達スルニ従テ保護ノ度ヲ軽メテ来テ、サウシテ独立シテ遂ニ産業ノ発達ヲ見ルニ至レバ之ヲ止メルヤウニ致シタイノデアリマス、サウシテ其ノ保護ハ物品ニ対シテ保護スルノデアツテ人ニ対シテノ保護デナイカラシテ、我版図内ニ於テ生産スルモノハ何人ニ限ラズ甲ノ会社デアルト乙ノ人デアルト、或ハ外国人デアルト内国人デアルトヲ問ハズ、必ズ我日本ノ版図内ニ於テ或品ヲ拵ヘルモノニ対シテハ保護ヲ与フルト云フヤウニシナケレバ、我国内ニ於ケル競争マデ防圧スル事ニナツテ来テ、遂ニ其保護ハ一私人ガ壟断シテ国家ヲ利サナイト云フ結果ニ至ルデアラウト考ルノデアリマス、次ニハ特ニ輸出ニ利有ル工業ヲ保護シ輸出ノ増大ヲ図ル事、斯フ云フ事柄ノ二ツテアリマス、此事ニ付イテハ、先ツ今日ノ所ニ於テハ輸出品トシテ我工業品ヲ欧羅巴ニ輸出シテ、サウシテ大ニ欧羅巴ニ於テ彼ト争フ、其争ヒ得ルノ程度マテ保護スルト云フ事ハ是ハ実際望ムヘカラサル事柄デアルト考ヘマス、則チ其工産品ノ輸出地トシテ今日目スヘキ所ノモノハ則チ清・韓両国及南洋諸島デアル、此処ニ出ス所ノ工業品ニ付イテハ、将来支那方面所謂東洋ニ於テ日本ト欧羅巴ト大ニ競争シナケレハナラヌト云フ現状デアラウト思ハレル、此市場ニ於テ欧羅巴ト日本ト競争スル上ニ付イテハ今日ノ日本ノ知識・金利・資本ト云フ上ニ於テハ工業品ノ競争スル力ガ悲イカナ無イト云ツテモ宜イデゴザイマセウ、体能ク云ヘバ甚ダ力ガ乏シイト云フ訳デアラウト考ヘル、是等ノ物ヲ保護シテ他ノ地ニ於テ競争シ得ルノ便益ヲ与ヘテヤラナケレバ我工業ヲ発達スルコトガ出来ヌト考ヘルノデアリマス、其品類ニ付キマシテハ今ドレドレト云フコトヲ一々申上ゲルコトハ出来マセヌガ、先キニモ申上ケマシタ如ク、我会議所デモ多少取調ベテハ居リマスケレドモ、未タ全ク終ヘテ居リマセヌ、併ナガラ今心付イタ一・二ノ物ヲ挙ゲテ云ヒマスレバ、綿織物ノ類、金巾其他ノ品物デアリマス、ソレカラ製糖・印刷料紙・縮緬・{2C5D9}絽・フランネル・毛織物、鉄道ノ客車・貨車、化学製品・同薬品・染料・彩料及ヒ塗料類ノ如キモノ、今一歩ヲ進メテ云ヘハ是等ノ物ハ単ニ輸入ヲ防遏スルコトカ出来ルノミナラス、綿織物ノ如キハ進ンテ輸出スルコトモ十分為シ得ルノ見込ノアルモノデアラウト考ヘル、サウシテ其輸出入ノ額ヲ見マスルト、既往五箇年ノ平均ニ置キマシテモ綿織物ノ輸入額ハマダ一千万円以上ノ輸入ヲシテ居ルノデアリマス、製糖ノ如キニ至ルト千三百五十何万円ノモノガ五箇年平均ノ中ニ這入ツテ居ル、印刷用紙ノ如キモ五箇年ヲ平均シテ百三十五万円余ノ輸入品カアルノテアリマス、其他ノ輸入品ヲ合算シテ見マスルノニ実ニ少カラヌ額ニ達スルノデアリマス、是等ノモノハ漸次外国品ヲ仰ガズシテ我内地テ造ルヤウニ至リマセヌケレバ、我国ヲシテ商工立国ノ実ヲ備ヘル事ガ出来ヌト考ヘルノデアリマス、又目下農商務省ノ則チ計画シテ居ル板硝子ノ如キモ是ヲ保護スベキ一ノ品デアル、板硝子ノ需用ハ年々歳々我国デハ増加
 - 第22巻 p.880 -ページ画像 
シテ居リマス、然ルニ我国ニ於テハ是ガ未ダ完全ニ出来ナイ、然レドモ今農商務省デヤラントシツヽアル保護ノ方法ハ宜シクナイト考ヘルソレハ曩ニ申シタ如クデアツテ、或会社ニ何程ノ保護ヲヤルト云フコトカラ遂ニ他ノ発達ヲ妨ゲルノデアル、此板硝子ハ内地デ出来ヌカト云ヘバ、諸君モ御序デニ御覧ニナレバ分リマスガ、大阪ノ島田硝子工場ノ如キハ現ニ出来ルノデアリマス、併ナガラ未ダ職工モ熟練シナイ資本金モ乏シイ、技術モ十分デナイカラ、外国品ト競争スルコトハ出来ナイ、ケレドモ板硝子ハチヤント出来テ居ルノデアリマス、是等ハ個人トシテ刻苦経営シテ其板硝子ヲ漸ク拵ヘテ居ルノニ、或一・二ノ会社ニ年度ヲ期シテ何十万円ト云フ金ヲ与ヘテ保護スルト云フヤウナコトニナレバ、遂ニ他ノ板硝子ノ製造業者ハ成立ツコトガ出来ヌコトニナツテ他ノ発達ヲ害シ、保護ヲ受ケタ者ハ自己ノ利益ニ甘ンジテ事業ノ発達ニ勉メナイト云フコトニナルノデアリマス、故ニ是ハ品質ノ等級ヲ設ケ、其製造高ニ依テ保護ヲ与フルコトニシテ、凡ソ我帝国ニ於テ板硝子ヲ製造スルモノハ此標本ニ依テ拵ヘルモノハ何程ノ保護金ヲ与ヘル、ソレハ詰リ何程ニ対シテ何程ヤルト斯ウ云フコトヲ公ケニシテ置キマスレバ皆進ンデ勉励スル、ソレダケノ保護金ヲ合算シテ見レバ、今日自ラヤツテ見ルト云フトドウモ外品ト競争スル力ガナイ、損ガ行クモノデモ、其保護金デ損ガ行カナイ収支償フト云フコトニナツテ来ル、大ニ前途利益ヲ得ルト云フコトデ各自競フテ之ニ従事シ、サウシテ産業ハ自然ニ発達シテ来ルコトニ至ルノデアル、既往ノ保護ガ斯ノ如クスレバ保護ノ効能ガアツタト考ヘルニ、惜イカナサウ云フコトガ出来ナクテ、或ル会社ナリ人ヲ指シテヤル、其人ガ独占シテシマツテ他ニ利益ヲ分配シナイ、保護ヲ終ハレバ事業ガ破レルト云フ事ガ屡々アツタノハ此一ツノ弊因ノ結果ト思ヒマス、又此ノ如キ保護ヲ為サントスルト、何レモ其保護ヲ得ントシテ政府ニ要望セントスルモノハ多々益々殖ヘテ来テ、遂ニ保護ヲ得ル者ハ曩ニ申シタル如ク拾万円ノ保護モ三・四万円ハ運動費ニ消ヘルト云フ事ニナツテ来ルノデアルカラシテ、此ノ如キ保護ノ方法ハ吾々ハ断ジテ排斥シタイノデアル又斯ウ云フ方法ヲ以テ国家ノ産業ヲ勧メルト云フコトハ出来ナイモノデアルト信ズルノデ、ソレカラ次ニ保護ノ方法ト致シマシテハ、彼ノ砂糖ニ対スル消費税ノ如キ消費税ヲ課スル事柄デアリマス、是レハ一面ハ保護奨励ノ財源ヲ得ル、又一面ニ於テハ其品物ニ対シテ大ニ保護スルト云フコトニナルノデアリマス、然ルニ彼ノ砂糖消費税ノ如キハ消費税ヲ課スルノミニシテ、内地デ製糖業ヲ営ンデ居ル砂糖ノ製造ニ対シテ保護ト云フモノヲ与ヘナイカラ、遂ニ小資本ノ日本ノ製糖業者ハ益々困難ノ地位ニ陥ツテ、保護ノ利益ハ少シモ得ナイト云フコトニナツテ居リマス、大体砂糖ノ製造ヲシテ我ガ日本デ発達セシムルコト粗製糖ヲ輸入シテ之ヲ精製シ或ハ原料ニ依テ粗製糖ヨリ造ルニシテモ我内地ニ於テ此砂糖ノ製造ヲナセル我ガ内地ノ砂糖製造業ノ発達ヲ希望スルト云フ上カラシテ消費税ヲ課スルト云フコトニ致シマスレバ、彼ノ一面協定税率ハアリマシテモ消費税ノ結果協定税率ヲ上ゲタト同ジヤウニ外国カラ這入ツテ来ルモノハ高クナルノデアリマス、其徴収シタ所ノ消費税金ヲ以テ内地デ製造スル所ノ砂糖ニ対シテ之ト同率若
 - 第22巻 p.881 -ページ画像 
クハ低率デモ宜シウゴザイマセウ、又場合ニ依ツタラバ事情ニ依ツタラバモツト高クテモ宜ウゴザイマセウ、即チ内地デ製造スル砂糖業ニ対シテ一方デ奨励金ヲヤル、ソウスルト云フト彼ノ外国デヤツテ居ル五割トカ十割トカ云フ関税ヲ輸入品ニ課スルト同ジ結果ガ起ツテ来ルノデアル、今協定税率ニ依ルト云フト砂糖税ノ如キハ即チ百分ノ十シカ掛ケラレヌト云フコトニナツテ居ルノデ、若シ之ニ消費税百分ノ四十ヲ掛ケタナラバ五割ノ輸入税ヲ課シタト同ジコトニナル、サウシテ取ツタ四十ノ消費税ヲ以テ内地デ製造スル砂糖ニ対シテ奨励金若クハ保護ヲ与ヘル、其奨励金モ一個人若クハ一家トシテ受クルノデハナイ予メ品質ノ標本ヲ定メ置キ、此標本ニ適応シタ砂糖ヲ製造スル者ニ付テハ、百斤ニ付テ何程奨励金ヲヤルト云フ事柄ニシテヤル、ソウスルト云フト内地デ製造スル者ガ詰リ消費税ヲ課セラレナイト云フ結果ニナツテ来ル、サウスルト内地ノ製造業ハ生産費ガ安ク外国ノ砂糖ハ関税ト消費税ト二ツ食ウガ為メニ大変ニ高クナル、サウスルト内地デ製造スルノガ発達シテ来ルト斯ウ云フコトニナツテ来ル、然ルニ此事柄ハ通商条約上果シテ為シ得ベキ事柄デアルカ否ヤト云フコトハ大ニ注意ヲセヌケレバナラヌ事柄ト考ヘル、故ニ曩ニ或ル当局者ニ私一個人トシテ質シタコトモアリマス、又各国通商条約モ一応ハ通覧シタコトモゴザリマスガ、少シモ条約上差支ガナイト私ハ信スルノデアル、消費税即チ内地税ヲ賦課スル事柄ハ条約ハ禁ジテハナイ、即チ此実例ニ於テハ砂糖消費税ヲ現ニ課シテ居ルノデアル、砂糖ハ協定税率ノ掛カル輸入品デアル、之ニ対シテ現ニ消費税ヲ課シテ居ル、各国何レモ異議ヲ言ツテ居ラナイ、然ルニ或人ハ、消費税ヲ掛ケルノミナレバ宜イガ内地デ拵ヘル物ニ対シテハ、一方デ消費税ヲ掛ケナガラ一方デ奨励金ヲヤルト云フト遂ニ協定税率ノ効能ヲ薄カラシムルニ至ル、即チ之ヲ悪ルク言ヘバ裏ヲ潜ルコトニナル、斯ウ云フ三百代言的ノコトハ外交上出来ナイ《(ト云フ脱カ)》者ガアリマス、ケレドモ私ハ其ハ杞憂ニシテ決シテソンナ心配ヲスルコトハナイ、条約ノ明文上差支ナイコトヽ信ジマス、即チ日英条約ノ七条ニハドウ云フコトガ書イテアルカト云フト、日英条約ノ七条ニハ両締盟国ノ一方ノ臣民ハ他ノ一方ノ版図内ニアリテ云々倉入・奨励金・便益及税金払戻等ノ事項ニ就テハ全ク内国臣民ト均等ノ取扱ヲ享クベシトアリ、即チ保護スル上ニ於テハ人ニ依リ区別ヲセズニ、英国人ガ日本デシテモ日本人ニ与フル保護ト、同一ノ保護ヲ与ヘルト斯ウ云フコトニナツテ居ル、ソレカラ他ノ国ノ条約モ皆大同小異デアル、又或物ニ対シ其生産地ヲ目的トセザル一般ノ内国税タル消費税ヲ賦課スルコトヲ禁ズルノ条項ハ何レノ条約ニモ規定シテナイノデアル、故ニ玆ニ人ヲ指サズ私ノ先キニ申ス如ク物品ヲ指シテ、ソレソレ奨励金ヲ与ヘル、其品物ハ我版図内デ出来ル者ハ英吉利人ガ来テヤラウガ、独乙人ガ来テ製造シヤウガ、仏蘭西人ガヤラウガ、我ガ内国人ガヤラウガソレハ問ハナイ産業ヲ保護スルノデアルカラシテ我ガ日本ノ版図内デ製造スル者ニハ是ダケノ奨励金ヲヤルト云フノハ、啻ニ条約上少シモ差支ナキノミナラズ間接保護ノ本義デアル、又人ヲ指シテヤルノハ前ニ縷々申上ゲタ如ク産業ヲ発達セシムル所以デナイト私ハ信ズルノデアリマス、此ノ如ク致シマスレバ遂ニ唯其業ガ進ムノ
 - 第22巻 p.882 -ページ画像 
ミナラズモウ一ツ他ニ多大ナル利益ガアルト思ハレル、即チ今日迄此聯合会デモ屡々決議致シマシタ所ノ自然的外資輸入ト云フ事ハ之ニ依テ初メテ這入ツテ来ルト思フノデアル、今ノ消費税ト奨励金トノ作用ニ依テ四割・五割ノ保護ヲ与ヘタナラバ、彼ノ国デ製造シテ持テ来テハ引合ハナクナル、サウスルト云フト我ガ内地ノ工業者ハドウデアルカ、未ダ智識モ充分ナラナイ資本モ充分ナラナイト云フ事柄カラ、ドウモ安ク出来ナイト云フ事ニナルト、即チ彼外人ハ資本ト智識ト機械トヲ持テ来テ我内地デ自ラ製造スルト云フコトニナル、サウスレバ彼レ資本ト智識ト機械トヲ持テ来テシマシテモ、我ガ日本国内デスルノハ日本ノ産業デアル、サウシテ遂ニ持テ来テ卸シタ資本モ機械モ智識モ皆持テ帰リハシナイ、皆日本人ニ授ケテシマウ、遂ニ其仕事ヲ日本ニ持テ来テ完全ニ教ヘテ行クト云フコトニナル、是ガ尤モ国家ノ産業ヲ発達セシムルニ必要ナ事柄デアツテ、又諸君モ御承知ノ如ク各国ノ歴史ヲ見マシテモ、後進国ノ進歩スル場合ニハ必ズ先進国ガ這入ツテ来テ先進国ノ智識ト資本トヲ持テ来テヤラナケレハ、幾ラ痩我慢ヲシテ人ノ世話ニナラナイト言ツテモ到底今日ノ競争場裡ニ於テ智識モ足ラズ、資本モ足ラズシテ、競争スルコトハ出来ナイト思フ、左スレバ我国ヲ長足ニ進歩セシムル一大原因ハ何ニ在ルカト云フト保護政策ノ応用ニ在ル、保護政策ノ応用ハ右申ス方法ニ拠ラズンバ到底発達サセルコトハ出来ナイモノト信ズルノデゴザリマス
次ニ此保護政策ヲ実行スルニ付テ是モ官民共ニ注意ヲ願ヒタイ事柄ガゴザリマス、大体私共ノ主張スル所ノ保護政策ハ右申スヤウナ趣意デアル、所ガ今日迄ノ保護政策ガ違フノミナラズ、官吏ト云フモノガ商工業者ニ対スル考ガマルデ違ウト思フノデアル、今度農商務省ハ彼ノ商工事務官トカ貿易事務官トカ云フヤウナモノヲ置カレルサウデゴザリマスルガ、之レヲ置カレルニ付テハ特ニ希望致シタイト思フコトガアルノデゴザイマス、デ是マデ出来テ居ル所ノ工業試験所ニセヨ、或ハ農業試験場ニセヨ、蚕業試験所ニセヨ、ドウモ官吏ト云フト一種特別ナ人間ノ様ナ考ヲ以テ居リハシナイカト思ハレマス、サウシテ此商工業ヲ発達セシメントスルニハドウシテモ今日ノ場合ニハ貿易事務官モ必要デアル、商工事務官モ必要デアル、是等ノ人ガ商工業者ノ世話ヲスルノガ己ノ役目、世話ヲスルノガ当リ前デアルト云フコトデ、極メテ親切ニ極メテ平易ニヤツテ呉レナケレバ、世話ヲスルガ職掌デ居リナガラ一種特別ナル仕事ヲ持ツタ別ノ人間デアルト云フ考デ居ルガ為メニ、他ノ者ハ即チ他ノ商工業者ニ於テハ気ノ毒ナヤウナ考デ、只管懇願歎願セヌケレバシテ呉レナイト云フ考ヲ以テ居ル、行ツテシテ貰フガ当リ前ダト云フ考ヲ持テ居ラナイ、ソレガ為メニ相親シイ間ニアラザレバシテ呉レナイト云フコトニナリ、其不知ノ者ハ他ノ知ルベヲ求メテ之レニ依願シ直接相談シナイト云フ事柄ガ出来テ来ル、故ニ或ル僅カノ事柄ヲ頼ンデモ、何カ土産物デモ持ツテ行カナケレバナラヌ、何カ御礼デモ持ツテ行カナケレバナラヌ、此方ラデモ思フガ向フデモ何カ持テ来テ呉レサウナモノダト云フヤウナモノデ、遂ニ狡猾ナ者ガ利益ヲ得テ正直ニスル者ガ保護ヲ受ケナイ、世話ヲ受ケナイト云フ結果ニナルノデアリマス、之カ為メニ世間屡々現ハルヽ所ノ収賄其
 - 第22巻 p.883 -ページ画像 
他ノ問題モ原因ヲ為ス所ハ即チ玆ニ胚胎スルト私ハ考ヘルノデアリマス、デ此商工業者ニ接スル所ノ官吏ハ殆ンド商工業者ノ身ノ如クナツテ、サウシテ人ノ世話ヲスルノガ当リ前ノ考デ極メテ親切ニシテ貰ウ者モ気ノ毒ナコトモ何モナイ、給料ヲヤツテ傭フテアルノダカラシテ世話ヲシテ貰フノガ当リ前ト云フ考デスルト、今言フ情弊ヲ除クコトガ出来、遂ニ商工業ヲシテ発達セシムルコトガ出来ルト思ヒマス、是等ノコトハ細事ノコトノ様デアルガ弥々保護政策ヲ確立シテ各種ノ方面ニ就テ保護ヲ与フルト云フコトニナレバ、官民共ニ其辺ニハ注意ヲシナイト遂ニ弊害ヲ起ス一原因ニナリハシナイカト考ヘマス
ソレカラ終リニ臨ミマシテモウ一言申上ゲテ置キタイノハ、此意見書中ニモ書イテゴザイマスガ、斯ウ云フ事柄ガ他ノ政略問題或ハ党略問題ナンゾト動モスレバ混用スルコトガアリマス、遂ニ是等ノモノモ未ダ国是ト定ラナイ間ニ於テハ国是ノ確立ヲ妨グルコトガ屡々アルノデゴザイマス、故ニ此国家ノ問題タル行政整理トカ財政整理トカ云フ事柄ニ付キマシテモ、先ヅ日本ノ国是ヨリ定メテ我邦ヲドウスルカト云フコトカラ観察シテ、商工立国保護政策ヲ執ルトスレバ官府ノ組織モ之ニ準ジテヤツテ貰フコトニ致シタイト云フガ私共ノ希望ナンデアルソレカラ彼ノ海軍拡張ノ如キハ敢テ此問題トハ関係シナイコトデアル又海軍拡張ニ反対スル意志デモナイノデアル、併シナガラ此世間ニ唱ヘテ居ル所ノ海軍拡張ナルモノハ、或ハ商工業ノ点トカ日本ノ経済上ノ点トカ云フコトヨリハ、国情ノ上カラ東亜ノ形勢上カラ立論シテ必要ヲ唱道シテ居ル問題デアルト私ハ信ズルノデアル、成程其方カラ言ヘバ固ヨリ必要ナンデゴザイマセウ、今私ノ問題ニ付テハサウ云フ方面ハ観察セズシテ、即チ此商工業ヲ発達セシムル方カラ立論致シマスル故ニ、是ヨリ立論致シマスレバ日本ノ武備ト商工業即チ国ノ富トノ権衡ハ、現在ニ於テ既ニ武備ノ方ハ商工業ノ実力ヨリハ進ンデ居ルト云フ感ジガアルノデゴザイマス、此唯タ商工業ノ保護政策ガ忽カセニナツテ而シテ武備ノ拡張ガ益々進ンデ行クト云フコトニナレバ、遂ニ国民ハ其費用ニモ堪ヘナイト云フコトニモ至リマセウシ、又其効果ハ全キヲ得ナイモノニナリハシナイカ、即チ国力ト伴ハナイト云フ結果ガ起リハシナイカ、今順序カラ言ヘバ国本ヲ立テ国ヲ富マスト云フ事ノ経営策ガ先ヅ先キデハナイカト思ヒマス、ソレカラ又此海軍ノ拡張ヲシテ今暫ク放任シテ置ケバ、列国トノ戦闘力ノ上ニ非常ナ等差ヲ生ジテ権衡ヲ失スルト云フコトモ一ツノ理由ラシイガ、商工業ノ方ハ如何デアル、我商工業ハ果シテ欧羅巴ニ対峙スルノ力ヲ持ツテ居ルカ、彼等ト競争スルノ度ニ居ルカト云フ事ヲ考ヘテ見マスレバ、殆ンド話ニナラナイ、較ベモノニナラナイダラウト思ヒマス、其事ハ先日会頭ノ御報告ニ依テモ明ラカニ分ツテ居ルモノト思ヒマス、サウシテ見マスレバ此方ヲ進メテ行カナケレバ、之ヲ一日延セバ一日延ビルダケ、此保護政策ガ後ルレバ後ルヽダケ彼ハ駸々トシテ進ンデ行ク、我ハ遅遅トシテ動カナイト云フ事ニナレバ其懸隔ガ収拾スベカラザル程度ニ達シハシナイカ、ソレデ軍備ノ拡張ノ急ヨリハ吾々商工業ノ方カラ立論シマスレバ、勢ヒ此保護政策ヲ確立シテ商工業ヲ進メルト云フコトハ目下今日日本ノ急務デハナイカト考ヘルガ故ニ、順序トシテ彼ノ事
 - 第22巻 p.884 -ページ画像 
モ一言玆ニ言フノデアリマシテ、敢テ之ヲ以テ政府ニ反対意見ヲ示ストカドウスルトカ云フ意味ハ更ニ持テ居ラナイ訳デゴザイマスカラ、此辺モ予メ御了承ヲ願ヒタイ、唯々海軍拡張ニ反対トカ何トカ云フ問題デモナシ、又ソウ云フ意モナイ、是モ必要デアラウガ吾々ノ立場カラ立論スレバソレハ後ニシテモ此方カラヤツテ貰イタイ、ソレガ今日日本ノ国情即チ国家ノ財政上・経済上・国力上カラノ観察ノ上ニ於テハ相当ナ順序ヂヤナイカト云フニ過ギナイコトデゴザリマス、ソレカラ又サウスレバ此案ヲ如何ニスル積リデアルカト斯ウ云フ御疑問モゴザリマセウガ、私共ノ考ニハ最初チツト申述ベテ置キマシタ如ク、今此案ヲ政府ニ出シ、或ハ議会ニ出シ、目下直チニ政府ノ既ニ計画シマシタコト、各政党ノ既ニ決議シタモノヲ引繰回ヘシ此通リニシテ呉レト、斯ウ云フヤウナ今日前《(目カ)》ニ於テ望ミヲ属スルモノデハナイノテアル併シナカラ今日此問題ノ起ツテ居ル場合ニ於テ、既ニ先年以来唱導シ来ツタモノカ黙ツテシマツテ引込ンデ仕廻ヘバ、遂ニ其声ガナクナツテ来テ□方ノ方ニ自然偏シテ行キハシナイカト云フ恐レモアル、又大体ノコトデナクテモ其中ノ小部分デモ、今度ノ予算ニハ色々ナ商工業発達ノコトニ付テモ個々断々タルコトニ付テモ経営シタコトガアル、是等ニ対スル事柄モ昨今ノ風説ニ拠レバ軍艦製造ノ為メニ皆削除シテシマウト云フコトガアルガ、之モ削除ニナルカナラヌカ知ラヌガ是等ノ点ニ付テモ矢張注意ヲ促シタイノデアル、要ハ吾々ノ意見ハ時ニ臨ミ機ニ応シ屡々之ヲ唱導シ、一面政府ニモ意見ヲ開陳シ、一面ハ諸君ハ各地ニ於テ、或ハ政党ニ御関係ノ者ハ其政党ニ依リ、或ハ政党以外ニ立タレル者ハ政党以外ニ各地方デ屡々其意見ヲ主張シ、特ニ此趣意ハ市選出議員諸君ニハ一致ノ連絡ヲ願ツテ此輿論ヲ喚起シテ、遂ニ政党ヲシテ政府ヲシテ之ニ赴カシムルト云フコトニ仕遂クルノガ必要デハナイカト考ヘルノデアル、私ガ諸君ニ望ム所ハ即チ玆ニ在ルノデゴサイマスレバ悪カラズ御諒承ヲ願ヒタイト考ヘマス、又是迄大体ニ付テハ決議シタ問題デモゴザイマスルカラ此上一層御尽力ヲ煩シタイト考ヘマス、以上申述ブル所ヲ以テ本案提出ノ理由ト致シマス
○有志十一番(東京、雨宮敬次郎君) 唯今三十五番ノ保護政策ノコトニ付テノ御説明ハ能ク分リマシタ、且ツ此事柄ト云フモノハ昨年ノ一月ノ臨時聯合会ニモ御提出ニナリ、既ニ建議ニナツテ居リマス、又今日マデ政府ノ執ル所ノ方針ト云フモノハ人ニ保護シテ品物ニ保護シナイト云フコトハ誠ニ適切ナ御論デ、万々之ハ御賛成申スノデ、私ガ喋喋シマセヌデモ三谷君ガ彼レ程細カニ御説明ニナリマシタカラ御分リニナリマシタラウガ、日本ノ保護ト云フモノハ既ニ今日マデ保護ヲ与ヘテ人ニ儲ケサセテ、サウシテ品物ニ構ハナイト云フ保護ノ仕方デゴザイマスカラ、私ハ昨年モ賛成シマシタ、又今年モ大阪カラ御提出ニナリマシタカラ此保護政策ノコトニ付テハ一々御賛成致シマスシ、尚ホ先刻ノ御説ニハ輿論トシテ之ヲシタラバ宜カラウト云フ御説デゴザイマスガ、此第五号案ノ中ノ保護政策ダケノコトニ止メテ海軍云々経済上云々ト云フ国家ノ大問題ニ係ルモノハ除キマシテ、是非共此保護政策ダケハ又本会ノ会員諸君ノ御決議ニ依テ、三谷君ノ述ベラレタ通リノコトヲ以テ政府ヘ兎モ角モ建議ヲ出シテ戴キタイト云フ希望ヲ私
 - 第22巻 p.885 -ページ画像 
ハ昨年カラ抱イテ居ル、又此末項ニ至リマシテ海軍拡張ハ少シ早過ギル、先ヅ殖産興業ノ発達、商工立国ヲ以テ而シテ後ニ海軍拡張ヲスルガ宜イト云フコトハ言ヒタイコトハ最モ吾々同感デゴザイマスガ、今日ノ場合トシテ此事ヲ加ヘルト云フ事ハ少シ面白カラヌカトモ思ヒマスカラ此事柄ダケハ抜キニシテ、保護政策ノ一点ニ止メテ此会カラ御建議ヲ出スコトニシテ戴キタイト云フ本員ハ考デゴザイマス、之ニ付キマシテ一ツ諸君ニ御諮リ致シタイト思ヒマス、併シ東京商業会議所ニ於キマシテハ二十九年以来今三谷君ノ述ベラレタヤウナ事柄ニ付、其外政費膨脹シテハ誠ニ商工業者ガ難渋致シマスルト云フコトハ明治二十九年・三十年・三十一年、此三年ノ間ニ、時ノ内閣ニ向ツテ今日ノ経済上ノ惨状ヲ来タスト云フコトヲ憂ヘマシテ、会頭モ屡々訪問モサレマシタ、会員ノ中デモ訪問サレマシテ過大ニ膨脹サレテハ困リマスルト云フコトヲ三年続ケテヤリマシタケレドモ、一ツモ糠ヘ釘ヲ打ツ如クナツテシマツテ今日ノ惨状ヲ極メタモノデゴザイマス、其事実ダケヲ此所ニ申上ゲマス、明治二十九年三月十二日附ヲ以テ戦後経済ノ儀ニ付大要左ノ如キ建議ヲ内閣総理大臣ニ提出シタ「今日政府ガ財政ヲ整理セラルヽニ当リマシテハ務メテ急激ノ施設ヲ避ケ、能ク国力ヲ図リ民度ヲ察シ以テ徐々漸進スルノ方針ヲ執ラレン事ヲ切望ス」云云之ガ二十九年デゴザイマス、ソレカラ明治三十年十二月二十八日附ヲ以テ財政整理ノ儀ニ付大要左ノ意味ノ建議ヲ内閣総理大臣・農商務大臣ニ提出シタ、「戦後ノ政策過度ニ膨脹シタルガ為メ財政ノ基礎将サニ危期ニ陥ラントスルノ状アルニ因リ、此際大ニ財政ノ整理ヲ尽スノ要アリ、其整理ノ方針ノ二・三ヲ挙グレバ、第一政費ハ国力ニ伴ハシムベキコト、第二軍備ノ減縮ヲ図ルコト、第三政費ノ分配ヲシテ其宜シキヲ約セシムベキコト、第四歳計……ヲ簡明ニシ、国帑ノ運用ヲ敏活ナラシムベキコト、第五国帑ノ取扱手続ヲ簡明ナラシムベキコト第六外資ヲ募集シテ内国公債償却ノ資ニ充ツベキコト」此六個条ハ明治三十年十二月二十八日ニ此商業会議所カラ時ノ政府ヘ出シタノデ、又明治三十一年五月十六日附ヲ以テ民間資金ノ運転ヲ円滑ナラシムル儀ニ付大要左ノ如キ意味ノ建議ヲ内閣総理・大蔵・農商務ノ三大臣並ニ貴衆両院ヘ提出シマシタ「清国ヨリ収受シタル償金残額ヲ以テ内国公債ヲ償還シ民間ニ於ケル資金ノ運転ヲ円滑ナラシメ、尚ホ外債ヲ募集シテ財政計画上ノ必要ノ費用ヲ支弁スルハ財政経済ノ整理上最モ必要トスル所」云々、此二十九年・三十年・三十一年ト三箇年ニ掛ツテ之ハ長イイロイロノ理由書ガ附イテ之ヲ出シマシテ、会頭始メ会員一同デ心配致シマシタケレドモ少シモ御用ヒナイ、一昨日モ申シマシタ通リ此時ノ会議所ノ案ヲ聞イテ呉レマシタ事ナレバ二億万ノ借金ハ今日致サズニ済ンダノデ、ケレドモ此時ニ云フコトヲ聞イテ呉レマセヌタメニモウ二億万ノ外債ガ起ツテシマウ、今日ハモウ銀行ノ中ヘ金ガ這入ツテ居テモ使ヒ人ハナイ、何ノ病根カ分ラナイ金ガ余ツテ居テ商工業ガ発達シナイト云フ、金ノ使ヒ人ガナイト云フノハ借財ノ為メデ殊ニ吾々共社会ト云フモノハ政治家トカ云フ方ヨリモ算盤ノ事ハマルデ雲泥ノ違ヒデ、一番能ク分ツテ居リマスカラ此事ヲ能ク申上ゲテモ先様ガ御聞入レガナイ、今保護政策ト云フ事ハ三谷君ノ仰シヤル通リ
 - 第22巻 p.886 -ページ画像 
御尤千万デ一言モナイケレドモ、何ヲ言ツテモ聞イテ呉レマセヌ、既ニ省令十六号ノ件ニシテモ昨日加藤サントカ仰シヤル方カラ余リ商工業者ヲ馬鹿ニシテ居ルトカ云フ御説モゴザイマシタガ、何分ニモドウモ聞イテ呉レマセヌガ、併シ之ハ先方ガ悪イトバカリ思ツテ居ルノハ違ヒカト思ヒマス、正宗ノ刀モ使ヒ手ニ依ツテ切レマスシ、此聯合会モ現ニ皆サンノ力ヲ以テシマスレバ国家ノ為メニ意思ノ貫徹ノ出来ナイト云フ事ハアリマセヌカラ、是ニ於テ諸君ニ私ハ御話ヲシタイト云フノハ今政界ハ何レノ方針ニアルカト云フト、所謂建議書ニモアル通リ海軍拡張、地租ヲ復旧シヤウトカ、此二大問題ニ付テハ政党ト政府ト軋轢ヲ起シテ、既ニ解散ノ悲運ニ陥ラントスル有様ハ皆サンモ御承知デゴザイマセウ、幸ニモ今日此会ヲ開キマシタニ付キマシテハ是非共之ニ対シマシテ、今度ノ大政党ト政府ノ軋轢ハ是マデノ従来ノ如ク改進党・自由党ト云フヤウナ訳デナク、彼ノ時ノ軋轢ト云フモノハ所謂藩閥ヲ斃サウトカ或ハ藩閥ガ圧倒スルトカ云フノデ、理モ非モナク政府ト云フ者ニハ衆議院ガ反対シタモノデゴザイマス、此十七議会ニ於テノ政党ト政府トノ衝突ハ決シテ感情ノ衝突デナクシテ算盤上ノ衝突デアル、何ノ今ノ政府ヲ斃シテ取ラウトカ憎イトカ可愛トカ云フノデナク、唯タ算盤上ノ行違ヒデアル、此行違ヒ即チ孰レカ是カ非カハ聯合会ノ諸君ガ御判決ナサレバ一時ニ直グ分ツテシマウ事デアル、之ガ分ラナイト云フノハ失礼ダケレドモ算盤玉ニ暗イ人達デアルカラ、之ヲ算盤ノ暗イ人達ニ任カシテ置イテ黙ツテ御帰リニナルト云フ事ハ誠ニ遺憾ナ事ト思ヒマス、幸ニ東京・大阪・神戸・京都・名古屋、五会議所ノ委員ガ御出ニナツテ居リマスカラ、此委員ノ御方ガ十五日ナリ二十日ナリ御残リニナリマシテ、ドウカ此政府ト大政党トノ衝突ノ所ニ行ツテ政府ニ向ツテ予算ヲ削ツテ呉レト云ヘバ予算ヲ無論削ルデゴザイマセウ、デ此諸君ニ於テ御人ガ足リナイナラバ東京ニモ大阪ニモ何レニモアリマスカラ、商業会議所ノ聯合会ノ委員カラ嘱託シタト云ヘバ大阪カラモ出テ来マセウ、ドウカ一ツ今日折角順境ニ向ハントシツヽアル経済界ヲ、又此所デ解散ノ悲運ガ起レバ国民一般ハ困難ノ上ニ大困難ヲスル事デゴザイマスカラ、是非共算盤ノ上ノ事ヲ明カニシテ、吾々共算盤玉ヲ執ル商工業者ガ出テ行ツテ、俗ニ言ヘバ仲裁トカ、或ハ標準ヲ示ストカ云フカ何ト云フカ知レマセヌガ、此事ヲ致スコトヲ是非共一ツ諸君ニ御賛成ヲ願ヒタイト思ヒマスガ、是モ唯ダ此儘御帰リニナリマシタ以上ハ、此所ニ是ダケノ大問題ガ起ツテ居ルニモ拘ハラズ、商工業者ガ直グニ頭ノ上ニ直接ニ利害ヲ来タスモノヲ見捨テヽ帰ルト云フコトハドウモ実ニ不人情ナ話デゴザイマスカラ、折角今日御寄リニナツタ諸君デゴザイマスカラ此事ヲ能ク御考ヲ願ツテドウゾ此五会議所ノ諸君ダケハ十日ナリ二十日ナリ御滞在ノ上デ、此算盤玉ノ衝突ノ判明セン事ヲ一ツ御調ベニナリマシテ、則チ衝突ノ廉ガアレバ両方カラ五分五分ツヽ持寄ルト云フコトニシタナラバ円滑ニ治ツテ、或ハ此保護政策モ又是マデノ種々ノ建議モ皆政府ニ採ツテ貰ウト云フコトモ出来マセウガ、ソレモセズニ是モセズニ、唯タ自分ノ言ヒタイコトヲ言ツテ帰ツテシマツテハヤツテ呉レマセヌ、ドウシテモ斯ウシテモ此方チカラモ無駄ノ運ビヲシナケレバ向フモシテ呉レナ
 - 第22巻 p.887 -ページ画像 
イカラ、是非共之ハ一ツ諸君ガ徹頭徹尾此事ヲ御心配下サイマシテ、ドウカ五会議所ダケハ御残リニナリマシテ十分ニ御心配ヲ願ヒタイ、ソレデ此保護政策ノ儀ニ付キマシテハ今三谷君ガ縷々御述ベニナリマシタカラ私ハ申述ベマセヌ、殊ニ砂糖ノ事ニ付キマシテモ何ノコトニ付キマシテモ誠ニドウモ御尤ノ御説ダカラ万々御賛成ヲ致シマスカラドウカソレダケニ止メテ海軍拡張云々ト云フコトハ除キマシテ、今ノ五会議所ガ御調ベニナツタ上デ発表ヲ願ウト云フコトニシテ、之ハ建議アランコトヲ希望致シマス
○八番(富山、関野善次郎君) 私ハ此第五号ハ全然賛成デ、ソレカラ此書面ノ趣意モ全然賛成デ、今有志会員十一番ハ此行政整理トカ財政整理トカ若クハ海軍拡張ナドト云フコトハ抜ク方ガ宜シイト云フノデスケレドモ、二十九年・三十年・三十一年、東京商業会議所ガ経済意見トシテ提出セラレタコトヲ承ツテ見マスルト、尚ホ是ヲ揚ゲテ宜シカラウト思フ、ソレデ私ハ全然賛成シマス、次デ提出者ニ御尋ヲシマスガ是等ノモノニ相協ツタ現今保護シテ居ルモノハ或ハ御取調ベ又ハ御気附キガアツタナレバソレヲチヨツト承リタイ
○三十五番(大阪、三谷軌秀君) 此方法ニ違ツタ保護ノ仕方ハ、今迄シテ居ル事業ニ対シテ之ハ極ク主デアラウト思フノデ、唯ダ農工銀行トカ或ハ興業銀行トカ勧業銀行トカ云フモノハ銀行ヲ直接保護ヲシテ居ルケレドモ、ソレハ銀行ヲ保護スルタメデナク商工業ノ金融ノ機関デ間接ノ保護ニナツテ居リマスケレドモ、其他ノ事業或ハ民業ヲスルト云フコトハ大概其方デアツテ、唯タ単リ此方法デヤツテ居ルモノハ船舶製造法ダト思ヒマス、アレハ何所デ製造シテモ此方法デヤレバ一艘デ何程ヤルト云フコトニナツテ居リマス、或航海業ニシテモ線路ト云フモノガアルケレドモ、人ト云フモノガ通常食付イテ居ル此方法ニ依ツテト云フモノハ、船舶製造法保護ヨリ外ナイト思ヒマスガ、或ハ外ニアルカ何ウカ
○三十九番(名古屋、上遠野富之助君) 本案ニ付キマシテ意見ヲ言ヒマスト大変長イコトニナリマセウシ、大抵御話ノ付イテ皆サンノ御趣意モ分ツテ居リマスガ、唯保護政策ノ確立実行ト云フヤウナ風ニシテ大体ノ決議ヲ為スハ宜シウゴザイマスガ、其理由ノ成分ニナツテ居リマスルモノモ其儘ニ此所デ決議スルト云フコトハ甚ダドウモ困ルヤウニ思ヒマス、趣意ハ提出者ニ十分御賛成ハシマスガ、此場合斯ウ云フ風ニ所謂産業保護ト云フ風ノ意味ヲ以テ各会議所ガ一ツ其趣意デ意見ヲ出スヤウト云フ決議ニ此所デ御取極メヲ願ヒタイト思ヒマス
○二十四番(静岡、森田勇次郎君) 私モ三十九番ノ唯今ノ意見ト同ジヤウナ考ヲ持ツテ居リマスルノデゴザイマスルガ、唯今提出会議所ノ御意見ハ余程御綿密ニ御取調ベニナツタ御論デ、産業保護ト云フ政策ニ付テノ御意見ハ十分分リマシテゴザイマス、併シ提出者モ御話ニナリマシタヤウニ保護ノ方法ニモ種々アリマセウシ、又其品目等ニ付テモ十分調ベナケレバナラヌ事柄デ且又政府モ産業保護ヲセヌト云フ考デハナイ、従前ヨリシテ産業保護ノ政策ハ稍々執ツテ居ルガ、唯ダソレガ総テニ一貫シテ居ラヌト云フ提出者ノ御意見ナンデ、併シナガラ之ヲ一貫スベシト此方カラ注文スルニハドウ云フ程度マデソレヲ貫ク
 - 第22巻 p.888 -ページ画像 
トカ、ドウ云フ方法デ如何ナル産業ニマデ及ボスノデアルカト云フ成案ヲ此所ニ立テヽ、政府ニ注文スルトカ或ハ議会ニ於テソレヲ主張スルト云フコトデアリマセネバ、唯産業保護ノ政策ヲ確立セヨト云フ注文デハ注文ヲ受ケタ者モ余程困ルデアラウト思フ、私共縦シ議員ニ向ツテ其注文ヲ為サウト思ツテモ、代議士ニシテ見マシテモ余程ソレハ困ルデアラウト思フ、故ニ此御趣意ハ御尤モデアラウト思フガ、若シ之ヲ細カニ摧イテイロイロ議論ヲ闘ハシマスレバ、ソレハマア殆ンド昔カラ尽キナイ議論デ、産業ノ発達ハ自由放任ノ政略ガ宜シイノデアルカ、保護政策ガ宜シイノデアルカト云フ事柄ハ、大分以前カラ長イ間ノ議論デ、又実ニ断案ノ下ツテ居ラヌ、唯ダ国情ニ依ルト云フ事ダケハ凡ソハ定マツテ居ル、即チ米国ハ保護政策ニ依ツテ成功シタガ、英国ハ自由政策ニ依ツテ成功シタ、唯国情ニ依ツテハソレガ分ルノデアル、然ラバ日本ハドウデアルカ、米国ニ近キカ英国ニ近キカト云フ事ハ、提出者ハ保護政策ヲ執ラネバ進ンダ国々ト日本ガ競争スル事ガ出来ナイ、保護政策ニ依ツテ而シテ幼稚ナル日本ガ競争シテ行カウト云フ事ニナル、日本ハ保護ガナケレバ闘フ事ガ出来ナイト云フ国情ニハ相違アリマスマイ、故ニ其点ハ極ツテ居ルト仮リニシマシタ所デ、偖テ保護ノ方法デアル、米国ハ何ウ云フ保護ノ方法デ成功シタカト云フト提出者ノ御意見ノ通リ関税策デアル、関税ノ方法デアルケレドモ惜イカナ日本ハ其方法ヲ持タナイ、唯産業ニ向ツテ事業ニ向ツテ保護金ヲ与ヘヤウ、ソレラニ保護金ヲ与ヘヤウ、或ハ事業ニ就テノ便宜ヲ与ヘヤウト云フ事ニナツテ来マスレバ、余程之ハ細カナ所マデ調ベテ見マセヌト中々直チニ保護政策ヲ確立セヨト云フ事ヲバ絶叫スルコトハ出来ナイト思フ、何故カナレバ凡ソ産業保護ノ政策ヲ執ラウトシテ政府ガドレダケノ金ヲ備ヘテ居ツタナラバ此政策ノ確立スル事ガ出来ルダラウカ、今造船業デアルトカ航海業デアルトカ云フニ向ツテ僅カノ業ニ保護シテ居ル金デサイモ、随分マア少ナカラヌ金デアル、今後尚ホ或ハ板硝子ノ製造、綿織物ノ製造、印刷用紙ノ製造、砂糖、客車ソレ等ノ事ニ向ツテモ産業ヲ保護スルト云フ事ニナリマスレバ、凡ソドノ位ナ備ヘ金ヲ政府ガ持ツテ居ツタナラバ産業保護ノ策ヲ立テル事ガ出来ルダラウカ、其財源ハ何所カラ得ヤウカ、日本ハ商工立国デアルカラ農業ノ方カラ出スト云フコトニナルト大分喧シイ、之ハ議論ニナツテ来ル、故ニ御精神ハ頗ル御尤モナコトデゴザイマスカラ、将来大ニ之ハ研究ヲシテ方略ヲ設ケナケレバナラヌコトデアルト思ヒマスル故ニ、此御精神ニ賛成ヲシテ置イテ其取調方又将来ノ注意ト云フコトニ付キマシテハ各々吾々ガ之ヲ持帰リマシテ、充分調査ノ上ニ此御精神ニ従ツテ一ツ働クト云フ事柄ニ止メテ置キタイト云フ希望デアリマス
○番外八番(大阪、浜田健次郎君) 今二十四番カノ御説ハ御尤モデアリマスガ、併シナガラ吾々ノ此所ニ寄合ウト云フモノハ、決シテ斯ク斯クノ案ヲ出シテ政府ヲシテ直チニ斯ク斯クノコトヲ施設セヨト云フ具合ニ、方案ヲ定メテ之ヲ提出シ、サウシテ政府ヲシテ其通リニヤレ金額マデモ定メ種類マデモ定メテヤルト云フコトニナレバ、政府ハ吾吾ノ言フ通リニナルカト云フトサウデナイ、所謂政府全体ノ頭モ纏ツ
 - 第22巻 p.889 -ページ画像 
テ居ル、民間モ事々物々努メテ居ルト云フ訳ニハ行カナイ、即チ大体ノ議ヲ御決議ニナリマスレバ、吾々モ退イテソレソレ調査モシ、斯ク斯クニナツテ宜シイト云フコトモ一部一部ノ調査モシテ、政府ノ参考ニ供スルコトモゴザイマセウ、又政府ハ十分国家ノ為メニ御取調ベ下スツテ案ヲ立テヽ、ソレソレ議会ナリ何ナリニ御出シニナツテ差支ナイ、吾々自ラガ斯ウ云フ方案ヲ立テヽ斯ク斯クニセヨト云フコトハ未ダ今日ノ場合ハ出過ギテ居ルノミナラズ、事実或ハ出来掛ツタ所デ是等ハ到底吾々共ニ於テノミ指定スベキモノデハナイト思ヒマス、御趣意モ此所ニ分ツテ居リマスガ、直チニ斯ク斯クニシテ呉レト云フノデハナイ、其趣意ヲ明カニシテ所謂政府其モノガ之ニ伴ツテヤツテ呉レト云フコトデ、即チ其趣意ガ御賛成ナレバ此案ト云フモノハ全体ニ於テ此所デ満場一致デ御議決下スツテ少シモ差支ナイト思ヒマスカラ、ドウカ御賛成ヲ願ヒマス
○三十五番(大阪、三谷軌秀君) 先刻、一言申残シタコトガゴザイマス、唯今二十四番サンノ財源云々ト云フ御注意ノ点モアリマシタカラ一言補ツテ置キタイト思ヒマス、其私ノ申上ゲル保護方法ニシマスレバ、ヤル金ハ多額ニ要ラナイ、ソレモ品ニ依ツテ要ル事モゴザイマスルガ、今曩キニ申シタ硝子製造ノ如キニ付テハ仮シ此所ニ硝子一枚ニ付テ何程ヤルト云フ事ニシタ所ガ未ダ中々沢山ナモノハ出来ナイ、サウスルト渡ス金ハ極ク少額デアル、詰リ出来ル製品ノ品質ト数量トニ対シテヤルノデアルカラ少ナイノデ、ソレカラ砂糖ノ如キニナルト既ニ出来テ居ル物ガアル、ソレカラ印刷用紙ノ如キモ是等ノ物ニ付テハ輸入ヲ仰グノミナラズ内地ノ生産高モ随分アリマスカラ渡ス金モ大分アリマセウガ、之ハ免ズル積リナンデ、他ノ財源ハ仰ガナイ、例ヘバ綿織物ヲ保護セントスレバ先ヅ以テ綿織物ニ消費税ヲ掛ケテシマウ、サウシテ輸入品カラ税ヲ取ツテ内地ノ綿織物ニ補助ヲヤル、政府ハ儲ツテ損ハ行カナイ、此消費税ハ国庫ノ歳入ヲ目的トスルノデハナイカラ税ノ掛ケ方ノ趣意ガマルデ違ウノデ、ソレデ輸入品ニ掛ケル消費税ハ大体輸入品ヲ目的トシテ掛ケル、法律ノ結果ハ均一ダケレドモ目的トスル所ハ輸入品ニ掛ケルノガ消費税ノ目的ニナツテ居ル、之ガ百分ノ二十ダ三十ダト云フ税率ヲ一時ニ掛ケルト物価ニ変動ガ起ル、サウシテ税法実施前ニ見越シ輸入ガ起ル、ソレデ国家ノ経済ニ波瀾ヲ起シマスカラ百分ノ五トカ三トカ云フモノヲ掛ケル、サウシテ内地ノ生産ヲ一方ニ保護スルモ、銭モ少ナシ徒ラニ高イモノヲ内国人ニ使ハセルモ国家ノ不利デアルカラ、物価ノ激変ヲ避ケテ、一方ニヤル方モ内地ノ製造ガ少ナイカラ渡ス銭モ少ナイノデ、ソレデ率ニ付テハ最初程率ヲ高クスル、率ハ高クテモ実際渡ス銭ハ少ナイ、ソレデ内地ノ産業ガ進ムニ従ツテ率ヲ落シテ来ル、ソレデ消費税ノ方ハ内地ノ生産ガ起ルニ従ツテ上ゲテ来ル、ソレデ三割・四割ト云フマデ掛ケテ、宜ウ這入ラヌマデ消費税ヲ掛ケテシマウト云フ考デ、其二ツノ内地ノ奨励金ノ率トサウシテ消費税ノ率トノ一定ノ目的ヲ以テ其働キヲ付ケテ行クト云フト、物価ノ激変ヲ避ケテ自然ニ輸入ヲ防イデ製造ガ出来テ行クト云フ事ニナル、然ルニ現今ノ砂糖消費税ノ如キハ消費税ダケ掛ケテ内地ノ砂糖業ニ対シテ奨励金ヲ与ヘナイ、内地ノ砂糖ガドンドン進ンデ
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行クカラ今ノ消費税ガ保護ノ目的デナクテ国庫ノ歳入ヲ目的トシテ居ル、輸入品ガ幾ラ殖ヘテモ構ハヌ、内地ノ砂糖業ガ斃レテモ構ハヌト云フ取リ方デアル、サウシテ輸入額ガ減ツタカト云フト減ラナイ、即チ今一千万円以上アル、サウシテ三十五年度ノ消費税ノ予算ト云フモノハ六百万円バカリデアル、今度議会ニ提出スル三十七年度ノ予算ハ三千七百万円余リデアル、ソレハ其三十六年度ノ予算ニハ三千七百万円ト云フコトニナツテ居ル、是等ハ歳入ヲ目的デ掛ケタンダカラ内地ノ砂糖業ハマルデ潰レテシマウテモ構ハヌト云フ仕方デアル、之ヲ砂糖奨励金ニナレバ僅カニ五十万円・六十万円ノ奨励金ヲヤレバ内地ノ砂糖ハ発達スルト云フコトニナツテ来ル、輸入額ト内地ノ生産額トハサウスルト懸隔ガ附クノデ、同ジ内地ノ砂糖ニ渡ス銭ハ七百万円余ノ十分ノ一カソコラシカナラヌノデ、財源ニ付イテ憂フルコトハナイト思ヒマス
○三十六番(神戸、藤田松太郎君) 本員ハ此海軍拡張云々ヲ除イテ他ハ此儘デ宜カラウト思ヒマス、併ナガラ本案ハ重大ナ問題デ尚ホ十分慎重ニ調査ヲ重ネテ、修正スベキ箇条ガアレバ修正シテ出スヤウニ致シタイト考ヘマスカラ、調査委員ヲ五名設ケテ調査ヲ付託シタイト考ヘマス、ソレニ若シ御賛成ガナケレバ本員ハ之ヲ持帰ツテ尚ホ十分調査シタイト思ヒマス、併シ折角聯合会ヲ開イタノデスカラ成ルベク此場合決議シタイト考ヘマスカラ、願ハクハ委員ヲ設ケテ十分調査ヲ致シテ貰ヒタイト思ヒマス
○四十三番(金沢、村田庄四郎君) 私ハ十一番ノ説ノ如クヤハリ海軍拡張云々ト云フコトハ取除イテ、サウシテ本会デ委員ニ付託セズ直チニ之ヲ決議シテ出スコトニ致シタイト考ヘマス
○三十九番(名古屋、上遠野富之助君) 段々御説モゴザイマスガ、是ハ題目デ精神ダケヲ決議シテ置ク方ガ宜カラウト思ヒマス、調査委員ト云フ御説モゴザイマシタケレドモ今日カラ明日マデノ間デハ十分ニ調査スルコトハ難イ、少シバカリ修正ヲ加ヘルコトシカ出来ヌト考ヘマス、サウ云フコトデアルナラバヤハリ大体ノ意味ガ此意味デアルト云フコトニシテ置イテ、サウシテ各会議所ガ銘々建議書ヲ差出ストキニ、十分各会議所ノ考モ其精神ニ附加ヘテ出スヤウニシタナラバ趣意モ明了ニナツテ宜カラウト考ヘマスカラ、此事ニ附イテハ私ハ無論賛成デアリマスカラ、唯ダ大体ノ精神ヲ決議シテ置クコトニシタ方ガ宜カラウト思ヒマス、ドウカサウ云フ風ニ即決ヲ願ヒタイト考ヘマス
○二十六番(栃木、石塚新吾君) 私ハ三十六番ノ委員説ニ同意致シマス、唯今承ル所ニ依レバ本案ニ同意ノ御方モアルシ、又十一番ノ海軍拡張云々ヲ除クト云フ説ニ同意ノ御方モアルシ、尚ホ又精神決議ニ止メタイト云フ御説モアリマス、斯ク幾ツニモ意見ガ分レテハ甚ダ困リマスカラ、ドウカ斯ウ云フコトハ成ルベク満場一致ヲ以テ決議シテ、サウシテ其筋ヘ提出シタイト思ヒマス、ドウカ願ハクハ委員ニ之ヲ付託シテ、サウシテ一ツニ纏メテ満場一致ノ決議ヲ致シタイト考ヘマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 三十六番ノ委員説ハ其筋ヘ建議シヤウト云フ、其建議文案ヲ作成シヤウト云フ御考デスカ
○三十六番(神戸、藤田松太郎君) サウデス
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○四十三番(金沢、村田庄四郎君) 承ハル所ニ依レバ本案ニ対シテハ意見ガイロイロニ分レテ煩雑ノヤウデアリマスガ、考ヘレバ本案ハ随分重大ナ問題デ、モウ十二時ヲ過ギテ居リマスカラ、コレニテ御休憩ヲ命ゼラレテ、午後多少控席デ打合等モ出来ルコトデアラウト考ヘマスカラ、コレニテ休憩ヲ願ヒタイト思ヒマス
○三十四番(大阪、法橋善作君) 本問題ハ我大阪商業会議所カラノ提出案デ、幸ニ議場ノ諸君ハ大体ニ於テ余リ御不同意ハナイ趣デ、稍々御採用下サルト云フ傾デ大ニ満足シテ居リマスガ、サリナガラ今承レバ意見ガ三ツニ分レテ居リマスケレドモ、著シイ反対モアル訳デハゴザイマセヌシ、私共希望スル所ハ各会議所ヘ御持帰リニナツテ寧ロ御審査ヲ下サレ、此意思ヲシテ普及セシメルコトニ御骨折ヲ願ヒタイコトハ論ヲ俟チマセヌガ、目今ノ場合此聯合会ニ於テ之ヲ決議シテ世ノ中ニ意思ヲ表示シテ貰ヒタイ、サウシテ一日モ早ク此事ヲバ満天下ノ人ニ知ラシテ実行ヲ計ル方ガ利益デアラウト思ヒマスカラ、願ハクハ字句ノ修正其他多少御懸念ノ箇条モアル御方ガアラウト思ヒマスカラドウゾ委員ニ付託シテ調査ヲスルヤウニ御配慮ヲ願ヒタイト考ヘマス
○二十四番(静岡、森田勇次郎君) 敢テ諸君ノ説ニ反対スルノデハアリマセヌガ、私ガ提出会議所ニ向ツテ少シク意見ヲ述ベタイノハ、大体御説明ヲ承ハレバ趣意ハ十分能ク分リマスガ、唯ダ案ノ儘デハ御説明ノ趣意ガ極ク幽カシカ現ハレテ居リマセヌ、唯ダ産業保護ト云フ文字デ、其文字ヲ御解釈ニナツテ砂糖ニハ斯ク斯ク、綿織物ニ付テハ斯斯ト云フ御話ガアレバ始メテ保護ノ方法モ稍々分リマスガ、併ナガラ其保護スベキ産業ヲ択ムトナツタナラバ先程御挙ゲニナツタ六・七ノ種類ノミニハ止マルマイ、マダ他ニモ沢山アルデアラフ、又政府モ唯産業保護ヲセヨト云ツタ所ガドウ云フ産業ニ対ツテドウ云フ保護ヲシテ宜シイヤラ分ラヌ、併ナガラ其保護ノ仕方ハ此方ハ知ラヌ、唯産業保護ノ策サイ立テバ宜シイト云フコトデハアリマセヌカラ、此所デ決議ヲスル以上ハ政府ニ他日突込ムヤウニシナケレバナラヌ、突込ム以上ハ其保護ノ方法等ハ誤リノナイヤウニシナケレバナラヌ、故ニ是デハ大体ニ過ギマセヌカラモウ少シ細カク、約ソコレコレノ物ニ対ツテ斯ウ云フ方針ヲ執リタイト云フコトニシマセヌト如何ナモノデアラウカ、寧ロ精神的決議ニ止メテ置イタ方ガ宜シクハアルマイカト考ヘマスカラ重ネテ申上ゲマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 食後ニシヨウト云フ御説モゴザイマシテ余リ時バカリ遅レル嫌モアリマスカラ、本案ニ対シテハイロイロ御説ガアリマスガ、之ヲ大別スルニ二ツニ分レテ居リマス、即チ精神決議トシテ置イテ建議トカ精神《(請願カ)》トカ云フコトハシナイ方ガ宜カラウト云フ御説ト、之ヲ委員ニ付託シテ其筋若クハ世ニ表白スルト云フ運ビニシタラ宜カラウト云フ御説ト、此二説ニ分レテ居リマスガ別ニ御発議ガナケレバ採決ヲシヤウト考ヘマス
   (「異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○三十五番(大阪、三谷軌秀君) 採決ノ方法ニ付イテ希望ヲ述ベマスガ、委員付託ノ方カラ先キニ採ツテ戴キタイ、文字ヲドウシヤウト云フ御方ハ本文ノ幾分ヲ修正スルト云フノデアルカラヤハリ委員付託ノ
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方ヘ同意シテ戴イテ、委員付託ガ成立タナケレバ精神決議ト云フ方ヲ採ツテ戴キタイト思ヒマス
○四十三番(金沢、村田庄四郎君) 本員ハ十一番ノ説ハ少シク違フヤウニ思ヒマスガ、十一番モヤハリ委員付託ニスルト云フ御積リデアリマスカ
○会長(東京、渋沢栄一君) 大別スルト二説ニナルト申上ゲタノデス
○有志十一番(東京、雨宮敬次郎君) 唯今ノ御尋ネハ原案ノ儘デハ困リマスガ、保護政策ト云フコトハ一日モ早ク之ヲ実行シテ貰ヒタイ、唯海軍云々ノコトハドウモ面白クナイカラ取除クヤウニ致シタイ、併シ保護政策ハ一刻モ猶予シテ居ラレヌ、是ニ付イテハ本員ハイロイロ御話シタイコトガアリマスガ、御腹ガ減ツテ居リマスルカラ御饒舌リハ致シマセヌガ、要スルニ之ハ緊急問題デアルカラ満場一致ヲ以テ決議シテ建議シタイト云フ本員ノ意見デアリマス、ソレデ此文案ノ儘デハイケマセヌカラ委員ヲ設ケテ削除スベキ所ハ削除シテ、明日御議定ヲ願ヒタイト思ヒマス
○三十六番(神戸、藤田松太郎君) 若シ委員説ガ成立テバ委員ノ数ハ五名トシテ会長指名ニ願ヒタイト思ヒマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 採決致シマス、本案ヲ建議若クハ請願等ノ趣意ニ引直スタメニ委員ヲ設ケルト云フ御動議ニ賛成ガアリマスカラ、此方カラ先キニ決ヲ採リマス、委員数ハ五名トシテ会長指名ト云フコトデアリマス、此委員説ニ御同意ノ御方ハ起立
  起立者  多数
○会長(東京、渋沢栄一君) 多数デアリマス、委員説ニ決定仕リマシタ……唯今委員ヲ御指名申上ゲマス、森田勇次郎君・三谷軌秀君・藤田松太郎君・上遠野富之助君・村田庄四郎君、此五名ノ御方ニ委員ヲ御付託シマス、コレデ暫時休憩致シマス
  午後零時三十五分休憩


明治三十五年十二月開設 臨時商業会議所聯合会議事速記録 第一九七―二〇五頁 刊(DK220071k-0003)
第22巻 p.892-896 ページ画像

明治三十五年十二月開設
臨時商業会議所聯合会議事速記録   第一九七―二〇五頁 刊
明治三十五年十二月十一日午前十時四十分開議
  出席委員     二十四名 ○氏名略
○上略
○副会長(東京、馬越恭平君) 第五号議案ヲ議事ニ付シマス
   (書記朗読)
○三十六番(神戸、藤田松太郎君) 唯今朗読ニナリマシタ如ク委員会デ決定致シマシタ、唯ダ委員会ノ希望ハ聯合会デハ大体ヲ示スニ過ギナイコトニ致シマシテ、各会議所デハ成ルベク十分ニ御調査ヲ下スツテ是ヨリ一層優ル所ノ案ヲ其筋ニ御建議アランコトヲ希望致シマス、最初ノ建議文ヲ斯様ニ取捨致シマシタガ、若シ諸君ニシテ御意見ガアルナラバ十分御意見ヲ御加ヘアランコトヲ希望致シマス
   (「異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○副会長(東京、馬越恭平君) 第五号議案ニ付マシテ唯今委員長ヨリノ御報告ニ対シテ続イテ御賛成ガアリマシタカラ、別段御異議ガナケレバ決定シテ宜シウゴザイマスカ
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○三十六番(神戸、藤田松太郎君) 諸君ニ御異議ガアリマセヌシ、是ニ御同意下サルコトデアリマスレバ是ハ如何ナモノデセウ、聯合会ノ会長ノ名儀ヲ以テ各主務大臣ニ提出シテ戴キタイト思ヒマスガ、如何デス
○三十五番(大阪、三谷軌秀君) 三十五番モ三十六番ト同様此決議ハ文簡ニシテ而シテ甚ダ大ナル貴重ナ問題デアリマスカラ、総理大臣始メ各大臣ヘ会長ヨリ覚書トシテ聯合会デハ斯ク決議シタト云フコトヲ出シテ御貰ヒ申シタイト考ヘマス、サウシテ各会議所ハ尚ホ此精神ヲ以テ飽迄之ヲ主張シテ絶ヘズ御尽力ヲ願ヒタイ、又此際ニ於テモ尚ホ其地方地方ニ依ツテ御異見ガアレバ詳細御意ヲ付ケテ御同様出スコトニシテ、聯合会ハ各大臣ニ提出スルヤウニ致シタイト思ヒマス、ドウカサウ云フヤウニ御決議ヲ願ヒマス
○副会長(東京、馬越恭平君) 三十五番如何デゴザイマセウ、是マデサウ云フ慣例ハナイサウデス、委員ノ名儀ヲ以テ各大臣ヘ出シタコトハゴザイマスガ、聯合会ノ会長ノ名儀ヲ以テ書面ヲ出シタ例ハ是迄ナイサウデス
○三十六番(神戸、藤田松太郎君) ソレデハ委員ノ名儀ヲ以テ出スコトニ致シタイ
○三十五番(大阪、三谷軌秀君) 別ニ意見開陳書トシテ条例ニ依テ出スコトハ出来ヌ筈デゴザイマス、ケレドモサウデナク聯合会ニ於テ此ノ如ク決議シタカラト云フコトデ出スノハ会長ノ名前デ出シテモ差支ナイコトヽ考ヘマス、ソレデ委員ノ名前デ出シタト云フノハ決議ノ趣意ヲ当局大臣ニ陳情スルト云フ陳情委員ヲ拵ヘタコトハ屡次アリマス其場合ニ陳情委員ガ出テ筋書的ノモノヲ委員ノ名デ出シタコトハアリマスガ、斯ウ云フ意味ノ決議ヲシタカラ参考ニシテ呉レイト云フコトヲ会長ノ名前ヲ以テ出スコトハ一向差支ナイト思ヒマス
○三十九番(名古屋、上遠野富之助君) 差支ヘナイト云ヘバ無論差支アリマスマイガ、斯ウ云フコトヲ決議シタト云ツテ覚書ヲ出シテ見タ所ガ甚ダ意味ノナイ話デ、ソレヨリハヤハリ各会議所デ出スト云フコトニシマセヌト、此取扱方ニ付イテ此席ニ出席シテ居ル所ノ委員ト云フヤウナ人々ハ、又已ムヲ得ズ此所デ決シタ文案デ聯合会ト云フ公会デナイモノデ決シタモノヲ出スコトニナルト取扱ガ難儀ニナル、会長ガ余程難儀ト云フコトニナリハセヌカ、ソレヨリモ各会議所別々ニ出シタ方ガ宜カラウト思ヒマス、前ノ第四号議案ノ貯蓄ノコトニシマシテモ成ルベクハサウシタイニ違ヒナイガ、此聯合会ナルモノハ十分ノ権能ノアル会デアレバ、此所デ当局ニ提案シ得ルモノヲチヤント具ヘテ聯合会ノ会長ノ名前ヲ以テ迫ルト云フコトハ大変宜イケレドモ、既ニ聯合会ノ規則ニモ其決議ハ各会議所ヲ覊束セズトアツテ、殆ンド此所ノ相談ト云フモノハ徳義上ノ御相談トモナルノデアリマス、斯ウ云フ大キイ問題ハ銘々持帰ツテ鄭重ニ能ク審議討論シテ、サウシテ今少シ詳細ニ尽シタモノニシテ、詰リ言ツテ見レバ今日此所デ決議スルコトハ大綱領ト云フコトニシテ、今少シ細目ニ亘ツタモノマデモ取極メテ各会議所ガ歩調ヲ一ニシテ政府ニ提出スルト云フ順序ニシタ方ガ、取扱ノ方カラ言ツテモ趣意ヲ徹底スル上カラ言ツテモ宜クハナイカト
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思ヒマスガ、尚ホ是迄ノ慣習モサウ云フ風ニナツテ居ルヤウデアリマスカラ、サウ云フ風ニシタ方ガ宜カラウト考ヘマス
○番外八番(大阪、浜田健次郎君) 今ノ御説ハ御尤モデスガ、各会議所ガ此趣旨ニ依ツテ手ヲ聯ネテ同ジ歩調ヲ以テ意見ヲ出スヤウニスルノハ固ヨリ希望スル所デスガ、ソレハ一面サウ願ツテ、一面ニ於テハ此所デハ此ノ如ク大体決議シタト云フコトヲ前触的ニ覚書トシテ提出シテ置キマスレバ、即チ此会ガソレガタメニ決議シタ訳デモナンデモナク、所謂皆様ノ御決議ニナツタ其モノヲ参考トシテ出シテ置クノデ其上尚ホ各会議所ハ持帰ツテ更ニ出スノデアリマスカラ一向差支ヘナイコトヽ考ヘマス、ドウカ然ルベク御取計ヲ願ヒマス
○三十九番(名古屋、上遠野富之助君) 大変シツコク言フヤウデスガソレヲ聯合会ガ極メテ覚書トシテ前触的ニ各大臣ニ出スト云フノデハ意味ノナイヤウニナリハシマセヌカ、農商務大臣位ニ前触スルノハ宜イガ、此案ニ限ツテ各大臣ニ回ハスト云フノハドウモ面白クナカラウト思ヒマス
○番外八番(大阪、浜田健次郎君) 各大臣デハアリマセヌ、内閣総理大臣・農商務大臣・大蔵大臣ト此三大臣ニ対ツテ出スノデス
○三十九番(名古屋、上遠野富之助君) ドウ云フ名ヲ以テ覚書トシテ出スノデスカ
○番外八番(大阪、浜田健次郎君) 会長ノ名デ宜カラウト思ヒマス、則チ吾々ノ希望ハ将来是ガ法律トシテ公布サレルマデハ成ルベク覚書デモ宜イカラ、聯合会ノ会長ノ名ヲ以テ法律ニ差支ナイ限リハ此方法ヲ執ルト云フ手段ヲ以テ御進ミ下サルヤウニ願ヒマス、此聯合会ニ於テ斯々決議シタト云フコトヲ参考トシテ出スコトノ慣例ヲ害ノナイ限リ御開キ下サレバ、当路者ヲシテ是ニ重キヲ措カシムルコトニ至ルデアラウト考ヘマスカラ御差支ナクバサウ願ヒマス
○三十九番(名古屋、上遠野富之助君) 差支ハアリマセヌガ甚ダ面白クナイコトデアルト考ヘマス、此決議ハ此所ニ意思ヲ発表シタモノデアリマス、当局大臣若クハ総理大臣ニ対ツテ提出スルモノハモウ少シ意味ノ十分徹底シタモノヲ出シタイト思ヒマス、覚書ニシテ出スヨリハ吾々モ委員ノ一人デアリマスガ、此精神デ輿論ヲ喚起スルノモ宜イ又之ヲ世ノ中ニ公表スルノハ必要デアリマスガ、大臣ニ前触レスルト云フコトハ害ハナイガ無益ナコトデアツテ、却テ意味ノナイコトニナルカラ止メタ方ガ宜カラウト考ヘルノデス
○三十五番(大坂、三谷軌秀君) 強イテ三十九番ノ意見ガアリマスカラ一言述テ置キマスガ、大体斯ウ云フ問題ニ付キマシテハ手続ヲ敢テ争フベキ問題デハナイ、則チ是デ指令ヲ貰ウトカ認可ヲ受クルトカ云フヤウナ権利上ノ問題デハナクシテ、一口ニ云ヘバ此決議シタ事柄ガ新聞ニ出レバ其新聞ヲ見テ貰ツテモ宜イノデアリマス、斯ウ云フ議論ガ聯合会ニ於テ出タサウダガ、此議論ヲ採ルノガ得策カ否ヤト云フコトヲ新聞デ見テ貰ツテモ宜イノデアリマスケレドモ、ソレヨリモ聯合会長ノ名ヲ以テスレバ恐ラク多忙ト雖トモ見ズニ捨措クコトハアルマイカラ、此所デ決議シタ事柄ヲ当局者ノ耳ニ入レタイト云フノデアリマス、サウ致シタ所ガ三十九番ノ言フ如ク各会議所ガ能ク取調ベテ其
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土地土地ノ事情ヲ審ニシテ更ニ提出スルト云フコトニ一向牴触モセズ亦悪例デモナイト思ヒマス、曩キニ資格問題ニ付イテ委員ノ名前デ出シタコトモアリマス、又曩キニ国家経済ノ問題ノトキニモヤハリ委員ノ名ヲ以テ出シタト記憶シテ居リマス、委員ノ名前デスルノト会長ノ名前デスルノトハ場合ガ違ウ、陳情委員デアルカラ委員ノ名前ヲ以テスルノデアル、陳情委員ヲ別ニ設ケヌ以上ハ会長ノ名ヲ以テシテモ差支ナイト思ヒマス、亦悪例デモナイト思ヒマスカラ一言申述ベテ置キマス
○番外十一番(東京、萩原源太郎君) 御参考ノタメニ申上ゲマスガ、聯合会長ノ名前ヲ以テスルノハ差支ハナイト思ヒマスガ、唯ダ少シク手続ガ欠ケテ居リハセヌカト思ヒマス、聯合会会長ト云フノハ其会ノアル時ダケ出来テ居ルノデアリマシテ、明日ニモ御閉会ニナレバ此閉会ニナルト同時ニ会長ト云フモノハナクナルコトニナリハ致シマスマイカ、ソレデ其後ヘ残ツテ聯合会長デ公文ヲ発スルノハ少シ手続ノ上ニ於テ妙ナコトニナリハ致シマスマイカ、或ハ聯合会ガ開会地ノ会議所ニ御委託ニナツテ其筋ヘ届ケテ貰ウトカ云フヤウナコトハ開会地ノ会長ハ承知サヘスレバ差支ナイト思ヒマスガ、唯ダ聯合会ノ名ヲ以テ公文書ヲ出スノハ如何デアリマセウカ、ソレデ詰リ開会地ノ会議所ニ御委託ニナルト云フコトデアレバ、会長サヘ承知スレバ差支ナイト思ヒマス
○三十四番(大坂、法橋善作君) 此事ニ付イテハ段々御議論モアリマスガ、私ハ御同様寄ツテ此ノ如ク決議シタ事ヲ当局者ニ上申スルト云フコトハ左程ヤカマシク言フ必要ハナイト思ヒマス、先刻来ノ御話ヲ承ハレバ帰スル所此会ノ力ヲ弱カラシムルト云フコトニナルデアラウト思ヒマス、唯ダ聯合会ハ各会議所ヲ覊束セズト云フノハ、其議権ニ対シテ自由ノ行動ヲ為スコトヲ妨ゲテハナラヌト云フノデ、畢竟手続ノムヅカシイト云フノハ、法律ガ聯合会ヲ公ニ認メテ居ラヌト云フコトニ帰スルノデアリマス、併シナガラ創立以来十数年来国務大臣ガ臨席シテ演説ヲシ当局者ガ此会ニ臨ンデ説明シタト云フコトハ、法律ガ認メタト同ジ有力ナ実体ガ備ツタノデアリマスカラ、此場合ニ聯合会ノ力ヲ弱カラシムルヤウナ行動ハ甚ダ妙デナイト思ヒマス、又番外カラ聯合会ノ決議ハ閉会シタラ終ルト云フコトヲ言ハレマシタガ是モ感服セヌ、決議ノ事項ヲ其時ニ唯ダ執行スルノデス、取リモ直サズ委託事件ヲ執行スルノデアリマス、当聯合会デ決議シタ事柄ヲ聯合会長ノ名ヲ以テ当該官庁ニ提出シテ戴キタイト云フノデアリマスカラ之ヲ郵便デ御出シ下サルトモ、将又御自分デ御持チ下サルトモ手続ハドウデアラウトモ何所カラモ覊束サレルコトハナイ、成ルベク御同様ニ寄ツテ話スル以上ハ多数ガ認メテ斯ク斯クト決議シタ事柄ニ対シテハ、法律ニ牴触セザル限リハ種々ノ手段ヲ以テ尽スト云フコトハ一向差支ナイ、銘々意見ノ自由ヲ害シテハナラヌカラ覊束スルコトハ出来マセヌガ、聯合会デ多数ヲ以テ決議シタ事柄ヲ会長ノ名ヲ以テ出シタ所ガ何等ノ差支ガアルトハ認メマセヌ、尚ホ各地ノ商業会議所ガ之ヲ宜イト思フナラバ尚ホ一層詳細ニ建議シテ貰ヒタイ、サウシテ之ヲ一日モ早ク実行ノ出来ルヤウニ御方針ヲ取ツテ戴キタイ、今日決議シタ事柄ガ
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閉会後権能ガ無クナツタカラ進達ガ出来ヌト云フコトハナカラウト信ジマス
○二十四番(静岡、森田勇次郎君) 是ハ手続論デハアリマスケレドモ大変好イ機会デアリマスカラ一言申述ベテ置キマスガ、ソレハ聯合会規則改正ノ必要ガイツシカ起ルデアラウト思ツテ居リマシタガ、果然唯今起ツテ来テ居ルノデアリマスガ、聯合会ガ種々ノ重大ナル議案ヲ議シテソレヲ議シ放シテ各会議所ガ政府ニ建議ヲシテモ宜シ、セズトモ宜シ、ソレハ一切自由ノ行動ニ任シテ置クト云フノハ、聯合会ソレ自身ガ誠ニ軽イモノニナルノデアリマス、今マデ農商務省・大蔵省アタリデ聯合会ヲ輒モスレバ蔑視スルノハサウ云フコトガ稍ヤ原因デハナイカト思ヒマス、聯合会ガ当局者ノ仕事ニ関スル事柄ハ無論総テ決議ノ事皆之ヲ当局者ニ報告スルコトヲシナケレバ、折角決議ヲシテモ何ノ効能モナイト思ヒマス、唯今ノ保護政策ニ関スル決議バカリデハナイ、凡ソ聯合会ノ決議ト云フモノハ総テ聯合会々長カラ其筋ヘ報告シテ戴クコトニシタイ、成程各会議所ガ其決議ノ実行ヲ各自由ニ致ストハ云フモノヽ、聯合会ヲ玆ニ開ク以上ハ決議ハ聯合会ノ名ヲ以テ致スガ当然ナコトヽ思ヒマスカラ、今ノ場合ガ違ヒマスルナラバ又其適当ナル場合ニ私ハ発議致シマスガ、聯合会規則ノ第三条ノ中ニ「其可決事件ノ実行ヲ計リ殊ニ政府当局ニ係ルモノハ之ヲ当局者ニ報告スルモノトス」ト云フ文字ヲ挿入シタイト考ヘマス、総テ聯合会ノ決議ハ関係ノ当局者ニ報告スルノガ当然デアリマスカラ、若シ場合ガ違フト言ツテ御叱リヲ受ケレバ更ニ適当ナル場合ニ発議シマスガ、聯合会ノ規則ニ是レダケノ文字ヲ挿入シテ置キタイト思ヒマス
○副会長(東京、馬越恭平君) 二十四番ノ御意見ハ時宜ニ依ツテ更ニ御持出シニナルヤウニ致シタイト思ヒマス……採決ヲ致シマス、三十六番ハ聯合会々長ノ名儀ヲ以テ主務省即チ其筋々ヘ上申スルヤウニト云フ御説デ、段々御賛成者モアリマス、ソレニ対シテ三十九番ハソレハ宜クナイト云フ御説デアリマスガ、先ヅ三十六番ノ御説ニ御同意ノ御方ハ起立ヲ願ヒマス
  起立者  少数
○副会長(東京、馬越恭平君) 少数デゴザイマス
○三十五番(大坂、三谷軌秀君) ドウスルノデス、決議シ放シデスカ
○副会長(東京、馬越恭平君) 各会議所カラ御出シニナルト云フコトニナリマシタ……今日ハコレデ散会致シマス


明治三十五年十二月開設 臨時商業会議所聯合会報告 第二二―二三頁 刊(DK220071k-0004)
第22巻 p.896-897 ページ画像

明治三十五年十二月開設
臨時商業会議所聯合会報告  第二二―二三頁 刊
○上略
 本件 ○議案第五号ハ五名ノ委員ヲ選挙シテ之ニ其調査ヲ附託スルニ決シ、森田勇次郎君・上遠野富之助君・村田庄四郎君・藤田松太郎君・三谷軌秀君委員トナリ、審議ノ末別記ノ如ク修正可決シタル旨ヲ報告シタルニ、衆議ノ上之ヲ可決ス
    調査報告
  保護政策ノ確立実行ニ関スル意見開申書案
商工立国ハ官民ノ夙ニ唱道シ来レル所ニシテ、富国強兵ハ上下ノ寤寐
 - 第22巻 p.897 -ページ画像 
ニ思望シテ止マサル所ナリ、而シテ商工立国ノ実体ハ産業ノ発達ヲ待チテ始テ全キヲ得ヘク、産業ノ発達ハ保護政策ノ効果ニ依リテ漸ク大成スルヲ得ヘキナリ、之ヲ要スルニ保護政策宜シキニ適ヒ、各種産業能ク発達シテ経済実力内ニ充足スルニ及ハヽ、富国ノ実以テ自ラ挙リ強兵ノ体以テ自ラ備ハルニ至ルヘシ、是ノ故ニ全国各会議所ハ共ニ屡屡意見ヲ披陳シ、商工立国ノ実体ヲ具足セシメテ、富国強兵ノ隆運ニ達セント欲セハ、須ラク先ツ国家経済ノ方針ヲ確立シ、保護政策ヲ画定正用シテ産業ノ発達大成ヲ促進スヘキヲ主張セリ
然ルニ政府ニ於テハ明ニ其要ヲ認ムルニモ拘ハラズ、其画策未タ一定セス、偶々保護スル所アルモ其方法宜シキヲ得ス、其目的トスル所多クハ業ニアラスシテ人ニ存スルカ故ニ、其労費大ニシテ其効果極テ小ナリ、是レ豈ニ痛惜スヘキ極ナラスヤ
今試ニ保護政策ノ要決ヲ示セハ、輸入品中内国ニ於テ十分生産シ得ヘキ物品ニ対シテハ一方ニ適度ノ消費税ヲ課シ、以テ関税作用ノ不備ヲ補ヒ、又一方ニハ宜シク産業ノ性質ヲ究メ数量ト品質ニ応シテ適量ノ奨励金ヲ付与シ、以テ産業ノ発達ヲ完クセハ、国富能ク内ニ充チ、兵威能ク外ニ張ルノ隆運ニ到達シ得ヘキナリ、仍テ此際政府当局ニ於テ速ニ完全ナル保護政策ヲ確立実行セラレンコトヲ切望ス
  ○保護政策確立ノ建議ハ既ニ当会、並ニ東京商業会議所ニ於テ国家経済ノ方針ニ関スル建議ノ一環トシテ取扱ハレタル所ニシテ、之ニ就イテハ本巻明治三十三年五月十七日、同年五月二十五日、同三十四年一月二十三日ノ各条、並ニ本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治三十三年六月五日ノ条参照。
  ○本件ハ第十二回定期会ニ再ビ提案セラレ、東京商業会議所ニ於テモ明治三十六年七月本件ニ就キ当局ニ建議セリ。