デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

8章 政府諸会
1節 諮問会議
1款 鉄道会議
■綱文

第23巻 p.118-125(DK230017k) ページ画像

明治26年3月21日(1893年)

是日栄一、第一回鉄道会議ニ出席シ、私設鉄道敷設ノ許否ニ関スル政府ヘノ答申ニ付意見ヲ条陳ス。尚ホ去ル二月十日ニ議セシ北陸線ニ関シ、修正案ヲ提出セシモ否決サル。


■資料

第一回鉄道会議議事速記録 第一四号 明治二六年三月二一日(DK230017k-0001)
第23巻 p.118-123 ページ画像

第一回鉄道会議議事速記録  第一四号 明治二六年三月二一日
 - 第23巻 p.119 -ページ画像 
 明治二十六年三月二十一日(火曜日)午後二時開会

    出席
  議員  箕浦勝人  渡辺洪基  渋沢栄一
                          ○外十名氏名略
○議員一同著席
○渡辺洪基(十七番) 私ハ今日議長ノ代理ヲ致シマス、就イテハ会ヲ開キマス――委員ノ報告ヲ朗読致サセマス
   〔書記報告書ヲ朗読ス〕
  諮詢第七号ヨリ第一四号ニ至ル私設鉄道許可ノ件ニ関スル報告
 本月十六日ノ会議ニ於テ諮詢第七号ヨリ第十四号ニ至ル私設鉄道許可ノ件ハ、内国一般ノ経済ニ影響ヲ及ホスモノナルヲ以テ、委員ニ附託シ調査セシムルコトニ決セリ、本員等其選ニ当リ之ヲ調査スルニ、今回諸会社ヨリ布設ヲ出願シタル鉄道ハ、茨城県下太田町・水戸市間外七線ニシテ、之ニ要スル建築費ハ総計五百弐拾九万弐千八百四拾七円六拾壱銭ナリ、而シテ本会議ガ曩ニ諮詢ニ応シ、布設許可ヲ可決シタル鉄道ハ、日本鉄道会社ノ尻内湊間支線・総武鉄道会社ノ小岩本所間支綿・摂津鉄道・甲武鉄道ノ新宿飯田町間線及播但鉄道ニシテ、之ニ要スル建設費総額ハ弐百万円ヲ下ラス、其他本会議ノ開設前既ニ許可ヲ得タル私設鉄道会社ニシテ其資本ノ残額ヲ未タ募集セサルモノ亦尠シトセス、此ノ如ク各私設鉄道会社カ今後若干年間ニ募集セントスル資本ノ多キノミナラス、政府モ亦本年度ヨリ毎年五百万円ノ鉄道公債ヲ募集スヘキ必要アリトス、此ノ状勢ヨリ押シテ考フルトキハ、向後資金ノ一時募集一時《(衍カ)》ニ輻湊シ、為メニ金融逼迫シ、其結果トシテ経済界ニ急激ナル変動ヲ起スコトナキヲ保セス、故ニ今ニシテ其資金募集ノ緩急ヲ慮リ、経済界ノ波瀾ヲ予防スヘキ計ヲ為スハ最モ緊要ノ事ト信ス
 鉄道敷設法カ政府ノ募集スヘキ公債額毎年大凡五百万円ヲ以テ標準ト為シタルモ、亦畢竟資金募集ト金融トノ関係ヲ慮リ、彼此其宜キヲ得セシメントノ主意ニ外ナラス、政府ハ既ニ官設鉄道ノ資金ニ付此顧慮ヲ為スヘキ必要アル以上ハ、私設鉄道ノ資金募集ニ付テモ亦同一ノ配慮ヲ要スヘキハ当然ノ事トス
 右ノ理由ニ依リ、委員会ハ本会議ヨリ本件ノ諮詢ニ対シ答申スルニ当リ併セテ左ノ意見ヲ逓信大臣ニ上申スル以テ相当ナリト議決セリ
    意見案
  今日ノ状況ヲ以テ見ルトキハ、今後官私設鉄道工事ノ為メ募集スヘキ資金一時巨額ニ達シ、国内一般ノ経済ニ影響ヲ及ホスヘキ虞アルニ依リ、政府ハ今ニ於テ相当ノ方法ヲ設ケ、若シクハ処分ヲ為シ、資金募集ニ随伴シテ起ラントスル経済上ノ急変ヲ予防セラレンコトヲ希望ス
 右及報告候也
  明治二十六年三月二十一日
                    委員
                     箕浦勝人
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                     有島武
                     佐藤里治
                     川田小一郎
                     中根重一
    鉄道会議々長 川上操六殿
  附記 本員等本件私設鉄道ノ許可ニ関スル諮詢案ヲ調査スルニ当リ、其参考書ニ掲クル運輸営業上収支概算ヲ見ルニ、会社純益ノ見積高往々甚シキ不当ナルモノアルヲ発見セリ、抑該収支概算ナルモノハ、会社ノ見込ニシテ予想ヲ記スルニ過キスト雖、政府ノ認可ヲ経テ確定スルモノナルヲ以テ、一般ノ人民ニシテ株主タラントスル者、其純益ヲ正確ナルモノト信シ、他日意外ノ損失ヲ被ムルコトナキヲ保セス、此ノ如キハ政府ノ私設鉄道監督ノ任務ヲ全フスルモノト謂フヘカラス、依テ自今当局者ハ会社ノ収支予算ヲ審査スルニ一定ノ標準ヲ設ケ、会社ノ見込如何ニ拘ラス、当局者ニ於テ資本ニ対スル純益薄クシテ、将来維持ノ目的ナシト認ムルモノハ、之ヲ許可セサルノ手続ヲ為スハ勿論、其不当ノ計算ハ更正セシメタル後、認可ノ手続ヲ為サンコトヲ希望ス、是亦本会ノ意見トシテ副申セントス
   ○有島武・佐藤里治・斎藤修一郎・中根重一等ノ発言略ス。
○渋沢栄一(二十四番) 意見書案ニ就イテ、自分モ色々考テ見マシタガ、如何ニモ此事ノ一時金融ノ逼迫ヲ惹起スルデアラウト云フ懸念ハ吾レ人共ニゴザイマスコトデ、丁度此意見案ノ生ズルノモ至極御尤ノコトヽ考ヘマス、去レバ相当ノ方法ト云フコトハ丁度今十三番 ○斎藤修一郎カラ御問デゴザリマシタガ、私モ甚ダ懸念シテ居リマシテ、望ハアルモノヽ何処マデト云フ目当ナイ方法ヲ設クルト云フコトハ、結局自分ニ斯フト云フ見込ナシニ希望ヲ云フ様ナ恐ハアリハセヌカ、果シテ此会議ノ決議ヲ重ジテ之ヲ御採用ナサルト云フテモ、唯単ニ相当ノ方法ト云フコトニシテ、右ニ走ルカ左ニ走ルカ分ラヌトマデモ云フ様ニナラウカト恐レマス、併シ他ノ事業ニマデ、此資金募集ニマデ政府ガ及ボスカ及ボサヌカト云フコトノ三番 ○有島武ノ御説ハ此処ニ論ズベキモノデハゴザイマスマイカラ、暫ラク此鉄道ト云フコトノミニ就イテ考ヘマスト、現ニ十五条 ○鉄道敷設法第十五条ニ鉄道会議ハ公債会議ノ御諮問ヲ受クル、又御諮問スベキ組織ニナツテ居リマスカラ、丁度之ヲ考ヘベキ丈ノ義務ヲ与ヘラレタト想像シテモ宜カラウガ、唯サウト申サズニ、之ヲ節制スル方法ト云フ丈ニ書イテ置イタラ宜クハアルマイカト自分ハ考ヘマス、均シク同ジ様ナ字デ一向価ハアリマセヌガ、例ヘバ節制スル方法ト書イテ置イタナラバ、ドウスルカト言ヘバ、丁度今私設鉄道条例ニ依ツテ請願シテ来ル者ニ認可ヲ与ヘテ行ク、ドウ云フ順序ニ若シ政府ガ之ヲ節制スル方法若クハ処分ヲナサウト考ヘマシタナラバ、総体ニ金額ガ何ノ位、又募集ガ何ノ位ニナルト云フ見込ヲ以テ、或ハ政府デ起スベキ金額ト引較ベテ見ルト、一年ニ鉄道ノタメニ使ウ金額ハ何レ程ニナルト云フ想像ガ生ズル、其想像カラ或ル場合ニハ年限ヲ延バサセルト云フコトモアルダラウト思フ、即チ方法若クハ処分ノ中デ判然ト年々幾ラト云フ、尚ホ政府ノ敷設法ノ如ク五百万ト為スコト
 - 第23巻 p.121 -ページ画像 
ハ出来マスマイケレドモ、金ヲ幾年ニ割ルト云フ手段ハ為シ得ラルヽト考ヘマスカラ、丁度委員諸君カラ御説モアツタ様ニ、斯クナサイマセト云フ様ナ方法ヲ附ケテ行クコトハ甚ダ考ガ附キ得ラレマスマイ、故ニ甚ダ詰リハ文字ノ修正ニ過ギナイガ「今ニ於テ之ヲ節制スル方法ヲ設ケ若クハ処分ヲ為シ」ト云フ意味ニ修正ガアリタイト考ヘマス、又第二ノ附記ノ箇条デアリマスガ、此私設鉄道条例ニ依ツテ許可ヲスルト云フ場合ニ於テ、成程政府ガ認可スルニ就イテ、私設鉄道会社ガ出シタ予算ガ甚ダ不相当デアツテモ……其タメニ人ニ損害ヲ与ヘルト云フコトハナイトモ申サレヌ、左様ノ場合ハ甚ダ此鉄道監督ノ任務ヲ全フスルモノデゴザリマセヌ、サリナガラ此「会社ノ見込如何ニ係ラズ、当局者ニ於テ資本ニ対スル純益薄クシテ、将来維持ノ目的ナシト認ムルモノハ、之ヲ許可セサルノ手続ヲ為スハ勿論」云々ト云フ言葉ハ、私設鉄道条例以外ニ迄行政権ヲ強クスルト云フ意味ニナツテ、穏カナラヌ文字ト思ハレル、利益ノ薄イト云フコトハドウ云フコトデアル、当局者ガ八分ト思ツタラ一割利益ガアルト云フモノハナイカ、不都合ガアレバ許可セヌト云フコトハ、私設鉄道条例デ既ニ監督シテ居ル、ソコデ其目論見、費用ノ大体ト云フノハ第二条ニモ規定シテアルガ、今迄ノ御手続ハドウデアツタカ知ラヌガ、果シテ二ト三ト勘定シテ六ト云フ計算デアツタナラバ、之レハ五デアルト云フコトハ分ルノハ勿論デアル、此荷物ガドレ程アルカ、乗客ガドレ程アルト云フ想像ニ至ツテハ決シテ分ラヌ、此ノ如ク想像上カラソウ云フ意見ヲ与ヘルト云フコトハ穏ナラヌコトデアル、前ニモ申ス通リ、精確ナラサルモノモ唯黙ツテ許可スルト云フ場合ガアツテハ甚ダ厭フベキコトデアルデ、之レモ私ハ此附記ニ対スル意味ヲ修正シタイ、即「収支予算ヲ審査スルニ一定ノ標準ヲ設ケ、其不当ノ計算ハ更正セシメタル後、認可ノ手続ヲ為サン」ト云フコト丈ニ区域ヲ狭ク致シタイ希望デゴザイマス、大体ハ委員ノ報告ニ御同意申上ゲマスガ、聊カ修正ノ意見ヲ申上ゲマス
   ○斎藤修一郎及ビ堀田正養発言略ス。
○斎藤修一郎(十三番) 只今修正案ヲ提出シテ置キマシタガ、尚ホ勘考シマシタ上デ今少シ提出ノ修正案ヲ修正致シタイ、夫レハ此ノ政府ハヨク以下「今ニ於テ相当ノ方法ヲ設ケ若シクハ処分ヲ為シ」ト云フ是丈ヲ削ツテ仕舞ヒマシテ、政府ハ資金募集ニ随伴シテ起ラントスル云々ト云フコトニ修正ヲ致シタイ
○箕浦勝人(一番) 本員ハ委員ノ一人デアリマスガ、詰リ委員ハ文字ニ拘泥スルノデハナイ、委員ノ意見ハ十三番ノ修正ノ通リノ意味ニ違ヒハナイ、文字モ其方ガ穏カデアルカラ賛成致シマス
○中根重一(二十一番) 十三番ノ通リデ、モウ意味ハ十分デアリマスガ、二十四番ノ所デアリマスガ、是ハシツカリ御修正ノ御趣旨ヲ御弁明ニナルヤウ願ヒマス、ドウモ漠然トシテ居リマスヤウデス
○渋沢栄一(二十四番) 私ノ考ハ一定ノ標準ヲ設ケト云フ所カラ「会社ノ見込如何ニ拘ラス」ト云フ三行バカリノ勿論其迄ヲ削ツテ、言ヒ換ヘレバ「一定ノ標準ヲ設ケ不当ノ計算ハ更正セシメタル後認可ノ手続ヲ為サンコトヲ希望ス」ト云フコトニ修正致シタイト云フ意味デゴ
 - 第23巻 p.122 -ページ画像 
ザイマス
○中根重一(二十一番) 是ハ御賛成モアリマシタガ、強ヒテ本員ガ反対スルノデハアリマセヌガ、モウ少シ御考ヲ願ヒタイ、一定ノ標準ヲ設ケ、不当ノ計算ハ更正セシメタル後、認可ノ手続ヲ為サンコトヲ希望スト云フコトニナリマスト、不当ノ計算ガアツタトキハ、斯ク変ヘロアヽ変ヘロト云フガ、併シナガラサウ変ヘ得ラレルトキハ変ヘラレマスケレドモ、土台更正ガ出来ナイ、初メカラ収支相償ハナイ鉄道ハ既ニ資本ノ利足ト云フモノハ得ラレナイモノデアルト云フコトモ勿論アルデゴザイマスガ、夫等ハ除イテ置イテ、只更正セシメタルモノト云フト、余リ事実ニ踈イヤウナ言葉ノ立テ方ニナラウト思ヒマスガ、何トカ御考ハゴザイマセヌカ、二十四番ニ御相談ヲ致シマス
○渋沢栄一(二十四番) マダ修正意見ヲ申上ケルニハ、時ガ早カツタヤウデスガ、モウ夫レデ議場ノ問題ニナツテ居ルカラ、二十一番ノ御問ニ御答ヘ申シマスガ、実ハ第三条ノ金融ノ大体ニ於テ不都合ナキト認ムルトキハ仮免状ヲ下付スルト云フコトガ書イテアルカラ、反対ノ言葉ヲ求ムレバ、不都合アリト認ムルトキハ仮免状ヲ与ヘヌト云フコトモ、私設鉄道条例ガサウ云フ制裁力ヲ持テ居ルト斯ウ思フノデアリマス、而シテ委員ノ報告サレタ文章デ見マスト、会社ノ見込ニハ拘ラヌ、当局者ニ於テ資本ニ対スル純益ガ薄クシテ将来維持ノ見込ガナシト認ムルト云フコトハ、計算ノ得失相償ハヌト云フ意味デアリマセウ併シ純益薄クシテトアレバ、純益ガドノ位厚イノデドノ位薄イト云フコトハ、此文字デハ言ヒ尽スコトハ出来ヌ、夫レハ不都合ト云フ方ノ見込ガ十分ニアル以上ハ、迚モ此場所ニ鉄道ノ工事ハ為シ得ラレヌト云フコトモ、不都合ノ部分ニ這入リマセウ、或ハ又計算ガ附カヌト云フノモ、随分不都合ノ部分ニ這入ルデアラウト思ヒマスガ、夫レヲ当局者ガ吟味スルコトハ十分出来ヤウト思ヒマス、然ルニ純益薄クシテ将来維持ノ目的ナシト認ムルモノ迄モ、尚ホ此鉄道敷設法ヨリモ鉄道条例ヨリモ一層ノ強ヨミヲ含マセテ、鉄道会議ガ当局者ニ望ムノト云フノハ、余リ穏カナラヌコトデアラウト思フ、ソコデ此許可ト云フ所カラ、人民ガ其計算ヲ信用スルコトガアルカラ、其計算書ニ於テ相当デアルカ不相当デアルカト云フコトノ一応吟味ヲシテ、夫レガ利益ノ立タヌ維持ノ附カヌト云フコトデアツタナラバ、私設鉄道条例ノ方カラシテ仮免状ヲ与ヘヌコトガ出来ルダラウト思フ、故ニ求メテ利益ガ薄イカラシテ必ス許可セヌト云フコトヲ、注意シテ御取扱ナサイト望マヌデモ宜カラウト云フ、斯ウ云フ意味デゴザイマス
○中根重一(二十一番) サウシマスト、不認可ノ事ハ是ハ言ツテナイ是ハ私設鉄道条例ノ第三条ニアルカラ、此処ヘハ只許可スル場合ノ方ノコトダケヲ言ツテ置クト云フノデスカ
○渋沢栄一(二十四番) 先ヅサウ云フヤウナコトデス
○中略
○議長代理(渡辺洪基) 夫ヂヤモウ議論ハ済ミマシテゴザイマスガ、チヨツト四番 ○堀田正養ニ尋ネマスガ、四番ハ渋沢君カラ出タ修正説ニ両方トモ御賛成デスナ
○渋沢栄一(二十四番) 前ノ修正説ハ引キマシテ、十三番ノ御説ニ同
 - 第23巻 p.123 -ページ画像 
意シマシタ
○議長代理(渡辺洪基) 夫デハ修正説ハ一ツニナツタノデスナ
○渋沢栄一(二十四番) 附記ノ方ノ修正ハアルデス
○議長代理(渡辺洪基) 今便利ノ為ニ二ツニ採リマス、始ニ意見案ノ方ノ修正説ヲ採リ、夫カラ附記ノ方ヲ採ルト云フヤウニシテ二度ニ採リマスカラ左様ニ……
○中略
○議長代理(渡辺洪基) 決ヲ採リマス、唯今申ス通リ附記ト本問ト別別ニ決ヲ採リマスガ、即チ意見案ニ「政府ハ資金募集ニ随伴シテ起ラントスル経済上ノ急変ヲ予防スルニ注意アランコトヲ希望ス」ト云フ修正ガ出テ居ル、此修正ニ就イテ決ヲ採リマス、即十三番ノ修正デアリマス、其修正ニ御同意ノ御方ハ起立
  起立者  過半数
○議長代理(渡辺洪基) 多数デアリマス――附記ノ方デ「自今当局者ハ会社ノ鉄道建設費及ビ収支予算案ヲ審査スルニ一定ノ標準ヲ設ケ不当ノ計算ハ更正セシメタル後認可ノ手続」云々ト云フ修正ガ出テ居リマス、其修正ニ同意ノ御方ハ起立下サイ
  起立者  少数
○議長代理(渡辺洪基) 少数デアリマス、ソレデ前ノ方ハ廃案説ガ出テ居リマセヌカラ修正ニ決シタモノト見マス、附記ハ廃案説モ出テ居リマスカラ原案ニ就イテ決ヲ採リマス、原案ニ御同意ノ方ハ起立ナスツテ下サイ
  起立者  少数
○議長代理(渡辺洪基) 少数デアリマスカラ附記ハ成立チマセヌ
   ○右ノ委員会ノ報告意見書ハ是年三月十六日ノ会議ニ於テ、諮詢第七号太田町水戸間馬車鉄道ヲ小機関車鉄道ニ変換敷設ノ件以下関西・南和・佐野・道後・南予・奈良等諸私設鉄道許可ノ件ニ関シ委員附託トナリ、ソノ結果報告セラレタルモノニカヽハル。当時鉄道企業熱ノ勃興シ、私設鉄道ノ請願続出スルヤ、之ガ認可ノ程度如何ハ巨額ノ投資ノ、経済界特ニソノ金融及ビ国家財政ニ関聯影響スル処大ナルヲ以テ、爾後毎回ノ鉄道会議ノ重要題目トナレリ。本款明治二十六年十二月十一日及ビ同二十九年十二月十四日ノ両条参照。


第一回鉄道会議議事速記録 第一四号 明治二六年三月二一日(DK230017k-0002)
第23巻 p.123-125 ページ画像

第一回鉄道会議議事速記録  第一四号 明治二六年三月二一日
 明治二十六年三月二十一日(火曜日)午後二時開会

○上略
○議長代理(渡辺洪基) 朗読ヲ
   〔書記諮詢第一五号ヲ朗読ス〕
 諮詢第十五号
                      鉄道会議
 明治二十六年度ニ於テ起工スヘキ北陸・奥羽両線路工事著手ノ件ヲ諮詢ス
  明治二十六年三月十五日
               逓信大臣 伯爵 黒田清隆
 - 第23巻 p.124 -ページ画像 
    北陸・奥羽両線路工事著手ノ順序
 一北陸線
   敦賀ヨリ起工シ、直チニ葉原・山中間ノ隧道開鑿、其他土工・橋梁等ノ工事ニ著手スル見込ニシテ、時宜ニヨリ森田ヨリ武生ノ方ニ向テモ亦起工スヘキモノトス
 一奥羽線 ○略ス
○渋沢栄一(二十四番) 此北陸線ノ方デ十八番 ○松本荘一郎ニ伺ヒタイノハ森田・武生ノ方ヘ敷クト云フノハ、森田ト云フノハ坂井港ニ近イト云フ御説明デアツタ様ニ思ヒマスガ、坂井港若クハ伏木ト云フノハ此方ニナツテ居リマセヌカラ止ヲ得マセヌガ、仕事ノ都合ニ依ツテドウシテモ海運ニ依ラネバナラヌ場合ガアレバ、工事施設上カラモ運送スル為メニ線ヲ著ケルト云フコトニ先程御仰ツタ様ニ思ヒマスガ、ソレハ為サル方ノ御考デスカ、或ハ場合ニ依ツタラ海運ノ便ニ依ツテ物ヲ運送スル、支線トハ申サヌデセウガ、運送ヲ著ケルト云フ方ノ御考ハアルノデスカ
○松本荘一郎(十八番) 御答シマスガ、此森田ト云フノハ即チ坂井港ニ流レテ出ル九頭竜川、其川ノ線路ガ横切ツテ居ル所、即チ線路マテ不充分ナガラモ船ガ使ヘル所デアリマス、併シナガラサウ云フ不十分ノ船ヲ使ウヨリ、坂井港ニ依ツテヤツタ方ガ宜イト云フコトヲ認ムルカモ知レマセヌ、併シナガラソレハ今立派ニ斯ウデアルト申スコトハ出来マセヌ
○渋沢栄一(二十四番) 森田ノ方ハ今ノ説明デ分リマシタガ、伏木ノ方ニ寄ツテ即チ向フデ言ヘバ富山ガ始メニナリマスガ、其方ニ就イテハマダサウ云フ御考案ハ立テナイノデスカ
○松本荘一郎(十八番) 其通リデス
○渋沢栄一(二十四番) 今御説明ニ依リマスト、越中・加賀・越前ノ三箇国ノ間ハ相互ノ交通ノ運送ハサウ沢山ナイト云フコトデアリマシタガ、成程越中ノ国ハ川ノ運送便利モ沢山アリマスケレドモ、併シ川ノ運送モ随分不便ナ所モアル様ニ承ハリ及ンデ居リマスカラ、私共ノ唯漠然タル想像説デハゴザリマスガ、果シテ此伏木ト云フモノニ連絡ヲシテ居ツテ、サウシテ越中ノ方ヲ逆ニ西ノ方ニ行クト云フコトニ就イテハ、丁度先刻斯ウ云フ方針ガアルト云フ、其方針ニ反スル様ニナリハシナイカト思ヒマス、例ヘバ越中ノ物産モ随分多イ、ソレガ伏木ニ出ル品物ノ運送ノ為メ、彼方カラ之ヲ起シテ行クノガ相当ノ経済ヲ立ツル訳ニナリハセヌカトマデ思フノデスガ、其方ノ著手ハ矢張ナサラヌデ、ズツト西ノ方カラ通シテ行クト云フ丈ノ御考デスカ
○松本荘一郎(十八番) ソレハ先刻来申シマス通リ、七ケ年ノ長キニ亘ル工事デアリマスカラ、七年ノ一番初メニ富山ニ行ケバ宜イト云フ御考ナラバ、其コトハ今ハ何トモ御答スルコトハ出来マセヌ、差向キ今手ヲ著ケルモノガ斯ウ云フ考デ、来年ナリ去来年ナリ富山ノ方カラ手ヲ著ケタ方ガ宜カラウト云フ意見ヲ定メタナラバ、其時ニ申立ツルカモ知レマセヌケレドモ、本年ノ所デハ決シテ懸離レタモノハ手ヲ附ケルノハ得策デナイ ○中略
   ○中根重一外二名発言略ス。
 - 第23巻 p.125 -ページ画像 
○伊藤大八(六番) 本員ハ奥羽線ノ工事著手ニ付キマシテ修正ノ意見ヲ提出シタイ ○中略
   ○佐藤里治外三名発言略ス。
○渋沢栄一(二十四番) 二十四番ハ六番ノ奥羽線ノ修正ニ就イテハ御同意デアリマス、デ六番ノ説ニ同意ヲスルト同時ニ、併セテ北陸線ニ就イテモ一種ノ修正説ヲ出シタイト思ヒマス、其理由ハ喋々述ベヌデモ奥羽線ノ十四番 ○佐藤里治ノ述ベラレタ理由ト同一デ、北陸線デモ時宜ニ依ツテ森田カラ武生迄ト云フコトハアルカ、先敦賀ヲ起点ト見レバ富山ト云フ方ニ何モ見込ハナイ、其土地間ノ地方ノ運輸或ハ交通ニ就イテハ甚ダ利益アル土地デハナカラウカト云フ意味ヲ以テ先刻十八番カラ御説明ガアツタガ、私ハソウデハナカラウカト思ヒマス、越中アタリハ土地ニ就イテモ相当ノ利益ハアリハシナイカト、反対ノ思想ヲ置ク位デゴザイマス、併シナカラ森田カラ武生迄時宜ニ依ルト云フ意味ニ存シテ置クト云フノハ、丁度奥羽線ノ米沢カラ――福島カラ通ジテ往クト云フ……大石田カラ山形ニ向フテ通ズル著手ノ順序ガ加ツタト同ジヤウニナル、元来三国・伏木ト云フ所ハ前ノ設計ノ時ニ頻リニ主張ヲシタガ潰レマシタ、ソレヲ今愚痴ヲ申シテモ仕方ガナイガ、アレ丈ノ北陸線ニハ海運ノ便ガアルノデアル、三国・伏木ニナルト、今十八番ノ御説明ニ依ルト、或ル場合ニハ運送ノタメニ支線ガ出来ルダラウ、ソレガ便利カモ知レヌト云フ御答モアツタカラ、此ノ土地カラ云フト果シテ適当シ得ヌヤウニ思フガ、海運ヲ今此方ガ欠イテ居ルカラ、願クハ斯ク修正シタイ「北陸線、敦賀ヨリ起工シ、直チニ隧道其他土工・橋梁等ノ工事ニ著手スルノ見込ニシテ、又時宜ニ依リ森田ヨリ武生・金沢・富山若クハ高岡ヨリ金沢ノ方ニ向ツテ起工スル見込ナリ」斯ウ云フ修正ニナツタ方ガ宜カラウト思ヒマス、六番ノ奥羽線ノ修正ニ御賛成ヲ申上ゲルト同時ニ北陸線ノ修正ヲ出シマス
○中略
○議長代理(渡辺洪基) 夫デハ北陸線ト奥羽線ト別々ニ取ラウト思ヒマスカラ左様御承知ヲ願ヒマス、夫デハ北陸線ノ所ニ修正ガゴザイマシテ「時宜ニヨリ森田ヨリ武生・金沢ノ方ニ向ヒ、又高岡ヨリ起工スヘキモノトス」ト云フ斯ウ云フ修正ニナツテ居リマス、此修正ニ御同意ノ御方ハ起立
  起立者  少数
○議長代理(渡辺洪基) 少数デゴザリマス、夫デハ此修正ハ消滅……夫レカラ奥羽線ノ修正ハ「一方ハ青森ヨリ起工シ弘前マデ大略土工等ヲ終リ、一方ハ時宜ニヨリ土崎及大石田ヨリ起工シテ各南北ニ向ヒ工事若クハ其準備ニ著手スルノ見込ナリ」ト云フ此ノ修正説ニ同意ノ諸君ハ起立
  起立者  過半数
○下略
   ○坂井港ト云フハ三国港ノ別称ニシテ越前阪井郡九頭竜川口ニアリ。