デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

8章 政府諸会
1節 諮問会議
1款 鉄道会議
■綱文

第23巻 p.128-133(DK230019k) ページ画像

明治26年12月11日(1893年)

是日栄一、第三回鉄道会議ニ出席シ、私設鉄道許可ニ関シ審議シ、委員ニ選バル。委員ハ十九日報告書ヲ提出シ、議決ヲ経テ当会議意見トシテ逓信大臣ニ上申ス。


■資料

第三回鉄道会議議事速記録 第一号 明治二六年一二月一一日(DK230019k-0001)
第23巻 p.128-130 ページ画像

第三回鉄道会議議事速記録  第一号 明治二六年一二月一一日
 - 第23巻 p.129 -ページ画像 
 明治二十六年十二月十一日(月曜日)午前十時五十分開議
    出席
  議長  川上操六
  議員  佐藤里治  渋沢栄一 ○外十九名氏名略
○番外(中橋徳五郎) 番外ヨリシマシテ議場ニ今一ツ請求致シマス、諮詢第四十一号デゴザイマス、此件ハ私設鉄道許可ニ関シマスル方針ヲ政府ニ於テモ定メナケレハナラヌト云フ考ヘデゴザイマス、ソレヲ定ムルニ就キマシテハ、諸君ノ御意見ヲ問ヘマシテ、其御意見ヲ十分ナル参考ト致シタイト云フ逓信大臣ノ考ヘデアリマス、然ル所ガ一方ニ五十余件ト云フ私設鉄道会社ノ出願ト云フモノガ、前会以来本省ニゴザイマス、之ヲ処分スルニ就キマシテ、此方針ト云フモノガ極リマセヌ以上ハ、手ヲ附ケラレヌノガ殆ンド過半デアリマス、中ニハソレ迄ニ及バスシテ明カニ許サナケレバナラヌト云フモノモアリマスケレドモ、過半ハ即チサウ云フ性質ヲ有ツテ居ルモノデアリマス、ソレデ第一ニ此第三回ノ会議ニ於キマシテ、矢張リ議案ヲ提出シタ訳デアリマス ○中略
○一番(佐藤里治) 唯今幹事ノ御述ベニナリマシタノハ、四十一号ノ議事ノ一読会ヲ開キタイト云フノデアリマスカ、サウデゴザイマスレバ私ハ此四十一号ノミナラズ、今度ノ私設鉄道又官設鉄道ノ所謂比較線決定ノ方針ト云フ様ナコトニ就キマシテモ、総体ニ就イテ委員ヲ置キタイト云フ建議ヲ呈出シマス、ソレハ此四十一号ノ巨額ノ資本ヲ云云ト云フコトモアリ、又小会社分裂ノ弊ヲ予防スルト云フコトモゴザイマスガ、聞ク処ニ依レバ、私設鉄道ノ願ノ数ガ非常ニ多ク、此会議ニ掛ケルコトニナツテ居ルノデスガ、果シテサウ云フコトデゴザイマシタナラバ是レハ宜シク線路ノ調査ヲ先キニシナケレバナラヌコトヽ考ヘル、到底之ヲ一々議案ヲ附セラレマシタ所デ、可否ノ意見ヲ下ダスコトハ難イ、矢張リ一般ノ人ノ心配ヲシテ居リマスル巨額ノ資本ヲ投スルト云フコトニナツテ来マスルカラ、予メ其度合ヲ頭ニ一ツ考テ置カナケレバ、先ヅ此位ノ線路ハ私設ニ許ストカ、或ハ官設デドウスルトカ云フコトカラ、余程込ミ入ツタ考ヲ附ケナケレバ困ルダラウト考ヘマス、ソレデ今度出願ニナツテ居リマス総体ノ線路ニ就イテ調査ヲスルト云フ委員、ソレカラ矢張リ四十一号ノ経済云々、ソレカラ小会社分裂ノ弊ト云フコトモ、皆一緒ニシテ委員ヲ置キマシテ調査ヲ遂ゲテ、其委員ノ報告ニナツタ後、議事ヲ開クヤウニ私ハ致シタイト云フ考ヘデアリマス ○中略
○十九番(渡辺洪基) 今ノ佐藤君ノ説ニ同意デアリマス
   ○以下田健治郎・伊藤大八・箕浦勝人・堀田正養・鈴木大亮・川田小一郎等ノ質疑及ビ賛成意見略ス。
○二十三番(渋沢栄一) 二十三番ノ考ヘマス所デハ、四十一号ノ議題ヲ直グ御議シニナリマシテ一番ノ考デ差支ナイ様ニ思ヒマス、詰マリ官設鉄道ガ這入ラヌト言フノデ三番 ○伊藤大八モ縷々御述ベテアリマシタガ、官設鉄道ニ就イテ比較線ガドウトカコウトカ言ヒマスガ、詰マリ共ニ附託セネバナラヌ、ドウシテモ四十一号ヲ別ノ委員デ取調ベルコトハ出来ナイ、何故ト云フニ経済ノ如何、私設鉄道分裂ノ弊ト云フ様
 - 第23巻 p.130 -ページ画像 
ナモノガ一番重要ナ問題デアル、四十一号ニ依ツテ調査委員ヲ作ツテ於イテ、官設鉄道ノ比較線ニ就イテ逓信大臣ノ御決定ニナツタモノハ成タケ早ク御下附ニナツテ、御諮問ニナツテ、其御諮問ヲ同委員ニ附託スルコトテ七名ノ委員ヲ選ブト云フコトハ、一向差支ナイト思ヒマス、ソレデ委員ガ調査スルニ就イテ甚ダ面倒ダト云フコトハ、二十番 ○川田小一郎ノ御希望、或ハ十番 ○箕浦勝人ノ私設鉄道条例カラト云フ様ナコトニ就イテ、此調査委員ガ困難ト云フコトハ是レハ別問題デスカラ、四十一号ノ議事ニナルコトヲ希望シマス
○議長(川上操六) ソレデハ委員ヲ置クカ置カヌカト云フコトデ決ヲ採リマス ○中略 一番ノ御説ノ委員ヲ置キタイト云フコトニ御同意ノ方ハ起立ナスツテ下サイ
  総起立
○議長(川上操六) 総起立デゴザイマス ○中略 一寸諸君ニ御相談致シマスガ、委員ハ七名ト云フ御望デアリマシタガ、之ハ余程緊要ナ問題デアリマスカラ九名トシテハ如何デスカ
   〔異議無シ異議無シト呼ブ者多シ〕
○議長(川上操六) 九名デ宜敷ウゴザイマスカ、ソレデハ一番佐藤里治君・四番寺内正毅君・五番石黒五十二君・六番小室信夫君・七番田健治郎君・十番箕浦勝人君・十九番渡辺洪基君・二十番川田小一郎君二十三番渋沢栄一君、右ノ諸君ニ御委託申シマス、ソレデ二十日マデニ報告ヲ願ヒマス、十分余日モアリマスカラ成ルベク早ク御報告ヲ願ヒタイノデス――今日ハ是デ散会致シマス
  午後一時十五分散会
   ○諮詢第四十一号ノ本文ヲ得ス。蓋シ、私設鉄道会社ノ鉄道敷設請願ノ輩出スルニツキ(一)巨額ノ資本ヲ鉄道企業ニ投入スルカ為メニ生ズル経済上ノ変動ヲ予防スル方法如何(二)小鉄道会社分立ノ弊ヲ予防スル方法如何(三)鉄道ノ起業ニ関シ一定ノ営業収益ヲ標準トスルヲ得ルヤ、ノ三問題ニ関シ諮問セラレタルモノナリ。(第三回鉄道会議議事速記録・第一号―第四号)


第三回鉄道会議議事速記録 第二号 明治二六年一二月二一日(DK230019k-0002)
第23巻 p.130-131 ページ画像

第三回鉄道会議議事速記録  第二号 明治二六年一二月二一日
 明治二十六年十二月二十一日(木曜日)午前九時五十五分開議
    出席
  議長  川上操六
  議員  佐藤里治  渋沢栄一 ○外十九名氏名略
一 諮詢第四十一号調査委員会報告
○一九番(渡辺洪基) 諮詢第四十一号ノ調査委員ハ九名ノ調査委員ガ出来マシテ、追々数回会ヲ重ネマシテ、種々討論ヲ致シテ、其結果ヤ即チ諸君ノ御手許ニアル所ノ報告書ノ通リデアリマシタ ○中略 報告書ノ朗読ヲ……
   〔書記報告書ヲ朗読ス〕
    諮詢第四十一号調査委員会報告書
一巨額ノ資本ヲ鉄道起業ニ投入スルカ為メニ生スル経済上ノ変動ヲ予防スル方法ハ、連年之ニ投入スル資本額ヲ制限スルノ外、大体之ニ応スル方法ナシト雖モ、経済上ノ顕象ハ社会自然ノ状態ヨリ発生ス
 - 第23巻 p.131 -ページ画像 
ルモノニシテ、俄カニ政治上之ニ干渉スルモ、其効験ヲ見ル能ハサルヘシ、故ニ今其事業ヲ審議スルニ当ツテ、其実況ヲ精査シ、公私ノ利便最精確ナルモノニ向ツテ資本ヲ投入セシメ、其施設上有害ノ競争ヲ防キ、併セテ不経済的ノ放資ヲ避クルノ方法ヲ講シテ、適当ニ之ヲ施行セシムルヲ以テ、時宜ニ適シタルモノト思考ス
一小鉄道会社分立ノ弊ヲ予防スルノ方法ハ、鉄道線路ノ起終両点及地方ノ区画ヲ定メ、其区画内ノ線路ハ之ヲ一会社ノ経営ニ附スルヲ以テ適当ナリトス、然レトモ今法律規則ヲ制定シテ之ヲ実行スルニハ精密ナル調査ヲ要シ、仮スニ数年ノ時日ヲ以テセサレハ、其方法ヲ定ムルコト能ハス、故ニ今日ノ場合ニ於テハ其事業ノ実地ニ就キ之ヲ精査シ、其経営上為シ得ヘキ程度ニ於テ合併若クハ接続延長セシメ、小会社分立ノ弊ヲ防クヲ、時宜ニ適シタルモノト思考ス
一鉄道ノ起業ニ関シ、営業収益ノ標準ニ於テハ、地方ノ状況、企業ノ見込ニ依ルヲ以テ、予メ一定ノ標準ヲ定メ難シト雖モ、其事業ノ実況ヲ精査シ、既往ノ状態ニ鑑ミ、相当ノ利益アルモノニ限リ之ヲ施設セシムルヲ以テ適当ナリト思考ス
右及報告候也
  明治二十六年十二月十九日
             鉄道会議議員   佐藤里治
             同        寺内正毅
             同        石黒五十二
             同        小室信夫
             同        田健治郎
             同        箕浦勝人
             同        渡辺洪基
             同        川田小一郎
             鉄道会議臨時議員 渋沢栄一
○中略
○議長(川上操六) モウ一遍改メテ……重要ノ問題デゴザリマスカラ十分熟読ノ時間ヲ与ヘテ貰イタイト云フ三番 ○伊藤大八ノ動議ガ出マシタ ○中略 御同意ノ方ハ起立シテ下サイ
  起立者  過半数
○下略


第三回鉄道会議議事速記録 第三号 明治二六年一二月二三日(DK230019k-0003)
第23巻 p.131-133 ページ画像

第三回鉄道会議議事速記録  第三号 明治二六年一二月二三日
 明治二十六年十二月二十三日(土曜日)午後一時二十五分開議
    出席
  議員  佐藤里治  渋沢栄一 ○外十九名氏名略
○議員一同著席
○十三番(鈴木大亮) 一寸御報告ヲ申シ上ゲマス、今日ハ川上議長ハ支ヘガゴザリマスノデ、私ニ代理ヲ致スヤウニト云フコトデゴザリマス ○中略――前会ニ引続キマシテ四十一号案ヲ議シマス
○中略
○二十四番(中根重一) 之ハ何レ此儘大体報告ノ通リ逓信大臣ヘ御答
 - 第23巻 p.132 -ページ画像 
スルコトデアラウト思ヒマスガ、委員ノ御方ノ調ベタ趣意ニ異議ハゴザリマセヌガ、極ク適当ナコトヽ思ヒマスカラ、異議ノ申ヤウハナイガ、只贅文――無駄ナコトハ却テ言ハヌ方ガ宜ラウト思ヒマスガ、相成ルベクハ贅文ニ属スル丈ハ委員ノ御方デ御異存ガナクバ、幹事ニ御任セニナツテ削ルヤウニナスツタラドウデアラウカト思ヒマス、ト云フノハ「経済上ノ現象ハ社会自然ノ状態ヨリ発生スルモノニシテ、俄ニ政治上之ニ干渉スルモ其効験ヲ見ル能ハサルヘシ」ト云フコトデアル、斯ウ云フ極論ハドウモ全体宜クナイト思ヒマス、ソレハ政治上之ニ干渉スルハ効験ノナイトキモゴザリマセウ、丸デ無益ノ干渉ナルコトモゴザリマセウガ、併シナガラ或ハ大イニ経済上ノ現象ヲ政治上デ其力ヲ以テ直スコトガアル、又直サナクテモ幾分カ利益ガアルコトデ欧羅巴各国ノ歴史ヲ見レバ分ルコトデ、随分経済上ノ現象ヲ政治上デ幾分カ減ジタト云フ例ハアル、若シ捨放シニシテ置ケバ、一万破産スル所ヲ、喰ヒ止メテ半分ニ減ジタト云フコトモアル、且又此報告ハ前後矛盾シテ居ル、仕舞ノ方ニ鉄道ノ許否ノコトハ政府デヤル、サウシテ其許ス許サヌニ当ツテ所謂参酌ヲ加ヘテ、無益ナ鉄道ハ許サヌ、有益ノ鉄道ノミ許スト云フハ、サウ云フ経済上ノ恐慌ガ来ルノヲ予防スルト云フ手段ニナル、ソレ故ニ末ノ方デハ政府ノ権力ヲ以テ、政治上幾ラカ干渉シテ、鉄道ノ許否ノ権ヲ以テ、恐慌ノ来ラヌヤウニ予メ、ソレニ応ズル準備ヲサシテ往ク手段ヲ採ルト云フテ居ルノニ、前デハ「政治上之ニ干渉スルモ其効験ヲ見ル能ハサルヘシ」ト云フテ全ク前後矛盾シテ居ル ○中略
○三番(伊藤大八) 私モ二十四番ヲ賛成シマス ○中略
   ○渡辺洪基・箕浦勝人ノ修正意見略ス。
○二十三番(渋沢栄一) 此ノ文章ニ付テ段々御説ガゴザリマスガ、私モ委員会ニ列席シタ一人デ、此委員ハ三番ノ御説ニゴザリマス通リ、絶対的十分ナ力ヲ以テ、経済上丈ケニ目ヲ付ケテ、凡ソ此位ノ金ヨリホカ使ハセヌト云フ制度ヲ立テ得ルカ得ナイカト云フ考ヲ立テルニ付テ、其方法ガアルカナイカト云フコトガ一ツノ考案、而シテ立テ得タ所デ、経済社会ニドウ云フ有様ガ出ルカト云フ想像モ一ツノ考案、即チ種々ナ考案ガ索湊シテ其意思ガ纏ツテ一ツノ文章ヲ成シタノデアルカラ、或ハ首尾ト云フコトガ分ルノデアリマスカラ、文章トシテノ過疵ヲ御求メ下サラヌ方ガ宜シイト思フ、詰リ委員会ノ意思ハ、資本額ヲ制限スルト云フコトガ、絶対的ニ経済社会ノ変動ヲ予防スルニ好策デアルト見タノデアリマス、他ニモ方法ハアリマス、併シナガラソレヲヤルコトガ出来ヌジヤナイカ、スルトドウカト言フト、経済社会ノ現象ハ社会自然ノ状態カラ発生スルカラシテ、左様ナ手段ヲ取ツテ政治上カラ俄カニ之ヲ絶対的ニ干渉ヲスルコトハ効験ガ見エンニ依ツテ故ニ云々ト緩メタ意味デアリマスカラ、此文字ヲ取リ除ケルト云フコトハ、何分私ハ不同意デス、字句ガ不完全ト云フコトハ御駁撃ニ依ツテ大ニ委員モ悟ル所ガアリマスカラ、私ハ委員ノ一人デ此文ヲ提出シタモノデアリマスガ、聊カ一歩ヲ譲ツテコウ修正シタイト思ヒマス、ソレナラバ二十四番ノ御嫌ヒモナイト思ヒマス、ソレハ「社会自然ノ状態ヨリ発生スルモノナレバ、斯ノ如キ手段ヲ以テ、俄ニ政治上是ニ
 - 第23巻 p.133 -ページ画像 
テ干渉スルモ、其効験ヲ見ル能ハザルベシ、故ニ云々」ト云フタナラバ、資本額ヲ制限スルモ手段デアルガ、今ハ其効験ヲ見ルコトガ出来ナイト云フコトニナツテ、決シテ二十四番・三番ノ御嫌モ聊カ免レヤウト思ヒマスカラ、其修正説ヲ出シマス
○中略
○議長代理(鈴木大亮) 二十三番ノ修正ニ就テ採決シマス、二十三番ノ修正ニ同意ノ諸君ハ起立ヲ請ヒマス
  起立者  過半数
○議長代理(鈴木大亮) 多数デアリマス、二十三番ノ修正ニ決シマス
○中略
○議長代理(鈴木大亮) 最早ヤ論旨モ尽キタヤウニ思ヒマスカラ決ヲ採リマス ○中略 就キマシテ段々精密ナ御討議ニモナツテ居リマスカラ、別ニ起立ヲ煩ハサズ、原案ニ決定致シマス、就キマシテハ是デ三項共ニ終リマシタカラ、即チ此決定シタ趣意ヲ以テ、此報告書ヲ逓信大臣ニ答申ニナル訳デゴザリマス ○中略
 諮詢第四十一号私設鉄道会社ニ関スル件御諮詢ニ対シ本会議ノ意見トシテ左ノ通致議決候
   ○委員会報告ト殆ンド同様ナルヲ以テ本文略ス。
 右上申候也
  年 月 日                鉄道会議議長