デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

8章 政府諸会
1節 諮問会議
1款 鉄道会議
■綱文

第23巻 p.141-150(DK230024k) ページ画像

明治29年12月14日(1896年)

是日栄一、第八回鉄道会議ニ臨ミ、鉄道起業稟請ノ処分ニ関スル件ニツキ審査委員長ニ推サル。十五日委員会ヲ開キ、私設鉄道条例ノ規定条件ヲ標準トスル外別ニ制限ヲ加フル必要ナキ旨ノ答申案ヲ決シ、十六日之ヲ当会議ニ報告、可決セラル。


■資料

松方家文書 第六一号 【諮詢第二百四拾九号/鉄道起業稟請ノ処分ニ関スル件】(DK230024k-0001)
第23巻 p.141-142 ページ画像

松方家文書  第六一号            (大蔵省所蔵)
諮詢第二百四拾九号
                      鉄道会議
別紙鉄道起業稟諸ノ処分ニ関スル件ヲ諮詢ス
  明治二十九年十二月十四日
                逓信大臣 子爵 野村靖
(別紙)
    鉄道起業稟請ノ処分ニ関スル件
 現今一般経済上ノ関係ニ於テ鉄道起業許否ノ緩急如何ヲ諮詢ス
    理由
 私設鉄道敷設ノ免許状又ハ仮免許状ヲ下付シタルモノ既ニ尠カラスト雖モ、尚新ニ其敷設ヲ申請セルモノ其数頗ル多ク、随テ之ニ要スヘキ資金亦巨額ニ達セリ、夫レ斯ノ如ク鉄道起業ノ勃興セルハ、社会ノ進運ニ伴フ経済上自然ノ現象ナルモ、俄ニ此等多数ノ起業ヲ許シ、巨額ノ資金ヲ固定セシムルトキハ、其結果経済市上ニ不測ノ変況ヲ呈スルノ恐亦ナキニアラス、依テ一般経済上ノ利害ニ関シ、其ノ実勢ヲ覈査シ、既往ノ実歴ニ鑑ミ、以テ許否ノ緩急ヲ決定スルハ目下ノ急務トス、是レ本件ヲ諮詢スル所以ナリ
    参照
 明治二十九年十二月ニ於ケル全国官設鉄道及既設鉄道会社ノ線路総哩数ハ四千六百九十哩余、其資本金ハ(官設ハ建設費)二億六千六百九十六万九千四百六十円(外ニ逓信省ニ於テ順次予算ヲ提出スヘキ官設鉄道建設費千三十八万三千六百四十五円、及拓殖務省ニ於テ官設鉄道トシテ敷設予定ノ線路五百六十二哩、資本金千八百五十六万二千〇五十円アリ)仮免状下付中ノ線路総哩数ハ千五百四十三哩余、資本金ハ六千九百八十七万五千五百円ニシテ、私設鉄道出願中ニ係ルモノヽ線路総哩数ハ一万二千三百五十一哩余、資本金ハ六億〇六百九十万八千二百七十四円ナリトス、故ニ今之ヲ合算シテ以上ノ総計ヲ示セハ線路哩ハ実ニ一万九千百四十六哩ノ長キニ、資本金ハ九億七千二百六十九万八千九百二十九円ノ多額ニ達スルモノトス、其ノ詳細ハ左表ノ如シ ○表略ス
 今又官設鉄道及免許状以上ノ会社ニ就キ将来使用ノ資本金(官設ハ建築費)年割概算額ヲ算出シ参考ニ資スル左 ○次頁表ノ如シ
    審査委員会報告書
諮詢第二百四十九号鉄道起業稟請ノ処分ニ関スル件ハ、委員会ニ於テ審議ノ末左案ヲ以テ答申シ、然ルヘキモノト議決セリ
     案
 諮詢第二百四十九号鉄道起業稟請ノ処分ニ関スル件ハ、左ノ通リ議

 - 第23巻 p.142 -ページ画像 

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                           逓信省所管                                           拓殖務省所管              官 設                          私 設                       官 設      私 設                    合 計       建設費予算      改良費予算       計            払込未済資本金      計           建築費予算    払込未済資本金      計               円          円           円           円            円         円           円          円             円 三〇年度  五、三二七、三三三  三、〇〇〇、〇〇〇   八、三二七、三三三  二〇、一一二、六七五   二八、四四〇、〇〇八   二七五、一三〇     一二〇、四五七    三九五、五八七    二八、八三五、五九五 三一年度  八、九四七、四七〇  三、六〇〇、〇〇〇  一二、五四七、四七〇  一五、二〇三、四三六   二七、七五〇、九〇六                四〇、一五三     四〇、一五三    二七、九七一、〇五九 三二年度  八、八五〇、〇〇〇  三、六〇〇、〇〇〇  一二、四五〇、〇〇〇   六、〇三〇、六三七   一八、四八〇、六三七                                     一八、四八〇、六三七 三三年度  八、二九三、七四七  三、六〇〇、〇〇〇  一一、八九三、七四七   三、九二一、八一三   一五、八一五、五六〇                                     一五、八一五、五六〇 三四年度  六、一五〇、〇〇〇  三、八〇〇、〇〇〇   九、九五〇、〇〇〇   三、二四五、七九一   一三、一九五、七九一                                     一三、一九五、七九一 三五年度  一、五二六、七九二  三、八五三、〇〇〇   五、三七九、七九二   一、三二八、六八三    六、七〇八、四七五                                      七、七〇八、四七五 三六年度               六〇〇、〇〇〇 六〇〇、〇〇〇         三六七、九〇二     、九六七、九〇二                                        九六七、九〇二                                          年度別ニナシ難キモノ  同上                    同上 其他                                       二、四二二、四八五    二、四二二、四八五             四、八一〇、〇〇〇  四、八一〇、〇〇〇     七、二三二、四八五 合計   三九、〇九五、三四二 二二、〇五三、〇〇〇  六一、一四八、三四二  五二、六三三、四二二  一一三、七八二、七六四   二七五、一三〇   四、九七六、六一〇  五、二四九、七四〇   一一九、〇二七、五〇四 


 決セリ
 一現今一般経済上ニ於テ起業熱高度ニ達シ、金融稍ヤ逼迫ヲ告クルト雖モ、抑モ事業ノ成否ハ資本ノ供給如何ニ依ルモノナレハ、到底帰着スル所ハ金融ハ事業ヲ制スルモノニシテ、事業ノ許否如何ニ依テ金融ヲ制セントスルハ寧ロ本末ヲ誤ルモノナリ
 一鉄道起業ニ対スル資本ノ給否如何ハ、起業者タル資本家自身ノ案算ニ依ルヘキモノニシテ、政府カ一定ノ標準ヲ仮設シ、之ニ依テ許否ヲ決セントスルハ、到底害多クシテ益ナキモノト信ス
 一国家ノ存亡ニ関スル如キ特別ノ事情アルトキ、政府カ公債其他ノ法ニ依リ資金ヲ吸収スルカ為メ、他ノ事業ニ資本ノ流入スルヲ停止スルノ目的ヲ以テ、起業ノ許可ヲ一時制限スルコトアルハ、政治上一時ノ必要ニ基ク不得止ノ処分ナリト雖モ、現今ニ於テハ右ノ如キ特別事情ノ存在スルヲ認メス
 右ノ理由ナルヲ以テ、政府ハ私設鉄道条例ニ規定セル条件ヲ評準トシ、之ヲ許否スヘキモノトス
右報告候也
  明治廿九年十二月十六日
                審査委員長 渋沢栄一
    鉄道会議々長代理 男爵 児玉源太郎殿

 - 第23巻 p.143 -ページ画像 

第八回鉄道会議議事速記録 第一号 明治二九年一二月一四日(DK230024k-0002)
第23巻 p.143-144 ページ画像

第八回鉄道会議議事速記録  第一号 明治二九年一二月一四日
 明治二十九年十二月十四日(月曜日)午前十時三十分開議

    出席
    男爵 児玉源太郎
  議員   平井晴二郎    松本荘一郎 子爵 堀田正養
       伊集院五郎 子爵 曾我祐準     富田鉄之助
       阪谷芳郎     土屋光春     鳩山和夫
       柴四朗      松平正直     中橋徳五郎
    子爵 岡部長職     西山志澄     望月右内
    男爵 鈴木大亮
  臨時議員 渋沢栄一     中上川彦次郎   原善三郎
       三野村利助    浜岡光哲     山本亀太郎
○議員一同仮席ニ著席
○議長代理(男爵児玉源太郎) 是ヨリ会議ヲ開キマス
○中略
   〔逓信大臣子爵野村靖臨場〕
   〔議員一同起立〕
○逓信大臣(子爵野村靖) 諸君、鉄道会議ニ就キマシテ御集会下サリマシテ、自分ニ於テモ甚ダ満足致シマス、此会議ニ於キマシテ、即チ諮問ノ案ヲ提出致シマス考デゴザリマス、之ニ就キマシテ大要ノコトヲ陳述ヲ致シマス、此鉄道敷設ニ就キマシテハ、我国ニ於テ固ヨリ必要ナ件ハ申スマデモナイ、従ツテ既ニ敷設ヲ願出テアリマスモノガ、其件数ハ四百件余ニナツテ居マス、此中ニ就キマシテハ、未ダ調査ヲ経マセヌモノモアリマスガ、早晩何レモ諸君ノ御審議ヲ煩スコトハ勿論ノコトデアリマス、然ルニ此鉄道事件ハ、他ノ事業ヨリモ最モ資本ヲ要シマスモノデアリマスノデ、現今ノ有様ニ於キマシテハ、此経済市場ノコトヲ深ク顧ミナケレバ、其事業ノ発達ヲ妨グルコトヽ存ジマス、故ニ先ツ各願出テアリマスル鉄道敷設ノ箇所ニ就キマシテハ、之ヲ許スヤ否ヤ、ト云フノ緩急ニ於キマシテハ一ノ問題ト存ジマス、是ガ為ニ、先ヅ緩急如何ノコトヲ諮詢ヲ致シテ、御審査ヲ願マス積リデゴザリマス、従ヒマシテ、此審査ニハ最モ慎重ヲ加フルベキ条件ト存ジマス、依ツテ会議規則第五条ニ依リマシテ、之ガ為ニ特別ニ臨時議員ヲ設ケラレマシタ、右ノ趣意ニ依リマシテ、其諮詢ノ案ニ就キマシテ、諸君ノ篤ト御審査ヲ経マシテ、速ニ御報告アランコトヲ希望致シマス ○中略
   〔逓信大臣子爵野村靖退場〕
○議長代理(男爵児玉源太郎) ○中略 左様ナレバ諮詢第二百四十九号ヲ議事ニ掛ケマス、朗読致シマス
   〔書記朗読〕 ○略ス

   ○諮詢案第二百四十九号委員附託案討議略ス。
○議長代理(男爵児玉源太郎) 左様ナレバ決ヲ採リマス、此諮詢案全部ヲ委員ニ附托シテ調査ヲサセルト云フコトノ決ヲ採リマス、ソレニ
 - 第23巻 p.144 -ページ画像 
同意ノ諸君ハ起立
  起立者  多数
○議長代理(男爵児玉源太郎) 多数デゴザイマス、サウ云フコトニ致シマス ○中略 委員ノ御方ヲ指名致シマス、鳩山君・阪谷君・金子君・渋沢君・中上川君・原君・三野村君・浜岡君・山本君、其中デ委員長ハドウゾ互選ニナスツテ下サイ、調査ノ期日ハ斯ノ如キ漠タル問題ト云フ名ノ付イタ問題デゴザイマスデ、議長モ何日ト指命スルノハ甚ダ困難デゴザイマス、成ル可ク早ク御調査ヲ了ハラレテ御報告アラムコトヲ希望致シマス、今日ハ是レデ散会致シマス
  正午十二時散会


第八回鉄道会議委員会議事速記録 明治二九年一二月一五日(DK230024k-0003)
第23巻 p.144-149 ページ画像

第八回鉄道会議委員会議事速記録  明治二九年一二月一五日
 明治二十九年十二月十五日(火曜日)午前九時五十五分開議

    出席
  逓信次官 男爵 鈴木大亮
  委員      渋沢栄一    鳩山和夫  阪谷芳郎
          中上川彦次郎  原善三郎  三野村利助
          浜岡光哲    山本亀太郎
○委員長(渋沢栄一) ソレデハ昨日附托サレマシタ委員会ヲ是ヨリ開キマス
○(阪谷芳郎) 意見ヲ述ベテ宜シウゴザイマスカ…… ○中略 本員モ昨日以来段々考案ヲ尽シマシタガ、詰リ此度政府ガ臨時議員ヲ設ケラレテ御質問ニナツタト云フモノハ、目今ノ金融市場ト云フモノハ随分八釜敷問題ニナツテ居リマスカラシテ、其八釜敷問題アルニモ拘ラズ、一方ニ於テ四百何件ノ出願ト六億カラノ資本ヲ要スル起業ト云フモノヲ容赦ナク許シテ仕舞フト云フコトハ、無定見デナイカト云フ御懸念カラ起ツタモノデゴザイマス、夫故ニ鉄道会議カラ相当ノ御答弁ヲスルト云フコトモ、目今ノ事情又必要カト存ジマス、ソレデ私ノ考ハ詰リ五ツニ帰着致シマスノデ、五ツノ点ニ就イテ調査委員ハ本会議ニ向ツテ報告シタラ宜カラウト思フ、其第一ノ点ハ現今成程金融ト云フモノハ必迫ヲ告ゲテ居ル、乍併事業ガ成立ツト成立タヌト云フコトハ、元ト資本ノ供給如何ニ依ルコトデアツテ、到底此金融ガ事業ヲ制スルモノデアル、事業ノ許否如何デ金融ヲ制スルト云フコトハ出来ヌ、即チ金融ガ縮レハ自然事業ガ縮ルノデアツテ、金融ハ事業ヲ制スルモノデ事業ノ許否如何デ金融ヲ制スルト云フコトハ本末ヲ誤ツタモノデアルト云フコトヲ極メテ宜カラウト思フ、第二ニハ鉄道ノ起業ニ就イテ、資本ガ十分デアルカ十分デナイカト云フコトハ、鉄道ヲ目論ム人ノ考ニ依ルモノデアル、当局者ナリ若クハ一種ノ会議ニ依ツテ、一定ノ標準ヲ設ケテ、其標準デ以テ鉄道ノ許否ヲ決スルト云フコトハ、寧ロ弊害ノ多イコトデアツテ、益ト云フモノヽ少ナイモノダラウト思ハレマス、ソレカラシテ第三ニハ国家ノ存亡ニ関スルヤウナ非常ノ場合ニ、他ノ事業ニ資本ヲ流入スルコトヲ停止スルト云フ目的デ以テ、起業ノ許可ト云フコトヲ一時制限スルト云フコトノ必要ハ、政治上避クベカ
 - 第23巻 p.145 -ページ画像 
ラザルコトデアルト思フ、乍併目今ニ於キマシテハ、右ノ如キ国家ノ存亡ニ関スルト云フヤウナ、特別ノ事情ノ存スルコトハ認メナイ、斯ウ私ハ三ツノ点ヲ答弁シタラ宜カラウト思フ ○中略 乍併今日並ニ将来ニ於キマシテ、我国ノ金融市場ト云フモノハ、戦後起業熱ノ盛ナ為ニ、軍備拡張其他政府ノ戦後経営事情ノ為メ、巨額ノ負担ヲシテ居リマスカラ、成ルベク金融市場ノ負担ヲ軽減スルコトニ注意シナケレバナラヌ、或ハ又起業家ト云フモノハ単ニ権利株ヲ以テ目的トスルト云フヤウナ猥リナ起業ト云フモノヲ誘フヤウナコトヲセヌヤウニ、成ルベク鉄道ノ起業ヲ実着ニスルヤウニ注意ヲ加ヘテ往ツテ、鉄道ノ許可ト云フモノヲ猥リニスルガ為ニ、今日既ニ巨額ノ負担ヲ背負ツテ居ル金融市場ヲ、態々鉄道事業ノ為ニモウ少シ重イ負担ヲ被セルコトハセヌト云フ注意ヲスル必要ハアルダラウト云フ、此四件乃至五件半リノ点ニ就イテ答弁スルヨリ外ナイト本員ハ信ジマス
○(鳩山和夫) 阪谷君ノ御意見ガゴザリマスガ、私モ同ジヤウナ考デアルカ知リマセヌ、マダ時期ガ早イカ知リマセヌガ、諸君ノ御参考ニ供シマス、詰リ委員会カラ本会ニ報告スベキ意見ハ斯ウデゴザリマス一応玆デ読ミマス
 経済上ノ事項ニ関シテハ自ラ之ヲ支配スル規律ノ存スルアリ、故ニ私設鉄道ノ許否ニ就テハ、政府ハ私設鉄道条例ニ規定セル条件ヲ標準トシテ之ヲ許可スベキモノトス
詰リ此趣旨ハ、経済上ノコトハ勿論ソレニ関スル自然ノ規律ガアツテソレニ背クモノハ損ヲシ、其順風ニ従フ者ハ得ヲスル、ソレト鉄道ノ敷設ト云フコトハ多少ノ関係ハアルガ、全ク別問題ト考ヘル、又今ノ私設鉄道条例ニ依ルト「既設ノ鉄道ニ妨害ヲ生ズルノ虞アリ、又ハ其地方ノ状況鉄道ノ布設ヲ要セズト認ムルトキハ、願書ヲ却下スベシ」ト云フコトガアツテ、此二ツノ場合ノ外ハ鉄道ノ出願者ガアレバ或ハ之ヲ許可スルト云フ規定ニナツテ居マス、私ハ此法律ノ改正ヲナス必要ハ今ニ於テ見ナイト考ヘマス、此法律ヲ改正シナイ以上ハ、金融ノ方ノ理由ヲ楯トシテ、政府ハ私設鉄道ヲ許サナイト云フコトハ宜クナイカト考ヘル、サウ云フヤウナ理由デ詰リ提出シマス
○中略
○(中上川彦次郎) 全体ノ諮問ノ御趣意ヲ拝見シマシテ、能ク考ヘテ見マスト云フト、詰リ此唯今六億万円ニモ資本金ガ上ルト云フモノハ今ノ日本ノ国力ニ相応シテ居ルカ、国力ガ之ニ堪ヘルヤ否ヤト云フ大問題デアラウト思フ、此問題ニハ恐ラク返答シ得ル人ガアルマイト考ヘマス、十三・四万噸ノ軍艦ハ国力ニ応ズルヤ否ヤ、二十万噸ノ軍艦ハ国力ニ応ズルヤ否ヤ、是迄八千万円払ツテ居ツタ国民ガ二億五千万円払ハナケレバナラヌ、之ハ国力ガ堪ヘルヤ否ヤ、之ハ中々六ケ敷問題デゴザリマスガ、漠ト吾々ガ考ヘタ時ニ、余リ堪ヘヌトモ云ヘヌデアラウト思ハレル、是迄ノ税ガ三倍ニナツタ処デ日本デサウ狼狽クコトモアルマイ、ソコデ六億万円ナラ狼狽クカ狼狽カンカ、之ハ中々分ラヌ、三億万円ナラ宜イト請合フカ六億万円ナラ宜イト請合フカドウカ、之ハ中々分ラヌ、デスカラ何億万円マデハ宜シイ、今ノ国力ハ斯様ナモノデゴザルト云フコトヲ、判然表ニデモ挙ゲテ言フト云フコト
 - 第23巻 p.146 -ページ画像 
ハ出来得ラレマスマイ、若シソレヲヤツタナラバ余程大胆ナ大利口者カ大馬鹿者ダラウト思ヒマス、国力如何ト云フ論ハ六ケ敷、善イ加減ニ是デ大抵宜カラウ位デ愈々往ケルカ往ケヌカト云フコトハ、人間社会ノコトダカラトウトデモ工夫ガ付イテ改マリマセウカラ、世ノ中ヲ渡ツテ往クニ凡ソ目的ガアツタラ、ソレデ往ツテ宜クナイカト考ヘマス、国力如何論ノ御諮問ナラバ迚モ鉄道会議ガ返答ノ出来ナイ話デ、日本四千万ヲ集メテ聞イテモ分リマセヌカラ、之ハ甚ダ難問題デゴザリマス、況ンヤ何千万円ナラ宜イカト云フナラ尚分ラヌ ○中略 先程阪谷君ノ御論モゴザリマシタヤウニ、資本ガアツテ後ノ起業デ、起業ガアツテ資本ガ生レテ来ルノデハナイカラ、今ノ日本ニ鉄道線路ヲ敷イテモ、之ニ応ズル録ガナケレバ出来ヌノデゴザリマスカラ、出願シタ線路ハ如何ニモ一万里モ二万里モゴザリマセウガ、実地之ヲ支ヘルニ就イテ恐ラクハ出来ハシマスマイト思フ、資本ガナケレバ出来ナイノデスカラ、資本ノ出シ人ガ出シタクテモナイト云フ訳デアレバ、例ヘバ鉄道ヲ敷設シテ宜イト云フ免状丈ケヲ貰ツテモ、経済界ニ顧ミテ資本ニ不足ヲ起スト云フコトガアレバ、起シタクテモ経済界ノ方ガ金ヲ握ツテヰテ金ヲ出シサヘシナケレバ宜イカラ、免許状ガ下ツタカラト云ツテ決シテ経済界ヲ蹂躪スル憂ハナイト思ヒマス ○中略 天下ノ資本ハ中中公平ナ眼デ、中々利害ヲ能ク考ヘマスカラ、無鉄砲ノ所ヘ持ツテ往ツテ鉄道ヲ架ケテ損ヲシテ仕舞ツテ大困リニ困ツテ、固定資本ニナツテ経済界ガ大騒動ヲスルト云フコトハアラレナイト私共考ヘマス、心配ナクズンズン許シタナラバ、之ハシタリ許サレタカト云フテ願下ルモノモアリマセウシ、出来得ラレル奴ナラバドンドン拵ヘテ往クコトニナリマセウ、極ク善イ線路デモ、金利ガ高イ、中々金ヲ掛ケテハ引合ハヌト云フコトガアレバ延期モシマセウ、好イ加減ニスルト云フコトハナイ、事業ト金融社会ト相談ヅクデ甘イ工合ニ出来得ラレルト考ヘマスカラ、余リ心配スルノハ詰リ馬鹿気タ心配デナイカト思ヒマス私ナドハサツサト御許シニナル方ガ却テ宜カラウト云フ考デアル、其外モウ一ツニハ、目下ノ経済上ノ有様ト云フヤウナコトガ政府ノ御考デ、近来大分金融ガ迫ツタトカ株ガ下ツタトカ云フコトデ、甚ダ之ニ就テハ大恐慌ノ風ガ吹イテ来タナドト云フコトヲ言伝ヘ、新聞ニ喋々論ズルト云フヤウナコトガ、痛ク御心配ノ種ニデモナツタノデハナイカト考ヘマス、此事ハ私モサウ嗚呼ケ間シク此恐慌ハ斯ウダトカアヽダトカ銘ヲ切ツテ申上ルコトデゴザリマセヌ、又十分分ルコトデモアリマセヌガ ○中略 私ハ是ハ決シテ永続スルコトデナイト思フ、又世間デハ戦後経済云々ト云ツテ、従ツテ恐慌ガ必ズ来ルモノダトカ、或ハ大ニ恐慌ガヤツテ来タト云フ人モアリ、或ハモウ済ンダト云フ人モアルガ、何デモナイコトデアリマシテ、少シク手心デ小春ノヤウナオ天気ニモナリマセウ、少シク恐慌デ雨天ニモナリマセウ、寒クモナリマセウガ、之ハ聊カナコトデ、日本全国ノ経済ニ取ツテハ誠ニ聊カナ事件デ、極ク小波瀾デ、毎度コンナコトハゴザリマセウ、之デエライ恐慌デモ来ルヤウニ、大キナ波デモ持ツテ来テ、日本中海ノ下ニデモ沈ムヤウナ考ヲ致シテ居ル人ガアリマスガ、之ハ断ジテナイト御請合ヲ致シテハ甚ダ嗚呼ケ間敷コトダガ、御請合申シ得ルト思ヒマス ○中略 若シ
 - 第23巻 p.147 -ページ画像 
此今ノ波瀾ヲ政府デ御覧ニナツテ、之デハナラヌ、此際ニ往ツテ六億万円ノ鉄道ヲ許シタナラバ、政府ハナンダト云ハレテモ困ルト云フ御考ガアルナラバ、ソレハ御心配過ル、決シテ今ノ経済社会ノ目下ノ市場ヲ御覧ニナレハ御心配ニ及バヌト、私ガ請合ツテモ仕方ガナイガ、御請合申シテ宜イト信ジテ居リマスノデゴザリマス ○中略 私ハ縮小論ナドト云フ御心配ハ少シモ無用ノコトデ、余リ杞憂過ギハセヌカト存ジマス
○中略
○委員長(渋沢栄一) 私ハ此席カラ申スノハ委員会ノ性質上如冋ト思ヒマスガ、矢張リ委員ノ一人デアリマスカラ、此案ニ対シテ愚見ヲ申述ベル丈ケノ自由ハアルダラウト思ヒマス、此ノ諮問案ハ実ニ重要ナ問題デアルト云フコトハ誰モ能ク呑込ミマスコトデアリマスガ、余リ重要ナ問題過ギテ之ニ御答ヘスル智恵ノナイト云フコトハ、中上川サンノ縷々御述ベニナツタ通リ、私モ然ウ思フ、是レガ果シテ幾万円位ナラバ適当ダラウト云フコトヲ知ル御方ハ、弘法大師ナラデハナイト思ヒマス、人間デハ知ルコトハ到底六ケシイデアラウ、逓信大臣ハ御利口ダガ分ラヌカラ御尋ネニナツタ、逓信大臣ガ利口デ分ラヌ以上ハ此ノ委員会ガ幾ラ利口デモ分ラウ筈ガナイ、緩急如何ト云フコトハ、詰リ此ノ程度デ宜カラウト云フコトハ、論スル必要ハアルカ知ラヌガ其程度ヲ認メルコトハ中々六ケシイト思フ、而テ若シ之レガ分ツタト見タ所ガ、精算ガドウ附クカ、例ヘバ何十万円丈ケハ許シテ宜イト云フ精算ガ果シテ附キ得ルカ、此ノ経済ト云フモノハ成ル可ク自然ニ任カセタガ宜カラウト云フコトハ、私ノ常ニ申スコトデアツテ、此ノ経済上ニ対シテハ務メテ人為ノ制裁ヲ防ギタイト云フ精神デアル、夫レガ善良ノ意見ト私ハ信ジテ居ル、然ルニ爰ニ緩急ヲ斟酌シヤウト云フノハ、人為ヲ以テ制裁ヲ附スルノデアルカラ、善良ナ考ヘハ出来得マイト思ヒマス、若シ多数ガ宜イト云フナラ夫レガ尤モカ知ラヌガ、出来ル丈ケノモノハ出来テ往クデアリマセウ、仮令ヒ願ツテモ出来ヌモノハ出来ヌ、事実力ノ無イモノハ出来ヌ、阪谷君ガ経済ノ原理カラ起業ガ資本ヲ拵ヘルノデナクテ、資本ガ自ラ制裁ヲ与ヘルト云フコトヲ被仰ツタガ、丁度其通リデアリマス、若シ然ウナラバ一方ノ注意ヲ与ヘルト云フコトモ、行政上ニハ何ノ効能モナイト思フ、ソコノ思ヒ入レハ私モ御同意デアル、所謂無暗ニ権利株ト去フモノガ……アルカナイカ知ラヌガ、若シアツタナラバ然ウイフモノニ対シテ許シテ往クコトハ宜クナイト云フコトハ言ヘルカ知ラヌケレトモ、其部分ハ是レデアルト云フコトハ迚モ言ヒ得ルコトデナイ、故ニ其ノ御斟酌モ詰リ不必要ダラウト思フ、経済社会ニ対シテハ其必要ノ多イ為メニ此資本ヲ幾分カ取ラレル、ダカラ中上川サンガ御心配ニナラヌ程ニ往カヌカモ知ラヌ、私ハ意気地ノ無イ方デ、ヒヨツトスルト怖イト云フ方ノ意見ヲ持チマス、夫故ニ政府ノ事業モ軍備拡張モ成ル可ク徐々ニシテ貰ヒタイト云フ方ノ希望ヲ持ツノデアリマス、商売社会ノ金ヲ軍備拡張ニズンズン取ツテ往クト云フノハ、商売社会ノ圧迫ヲ来シハシナイカト云フコトヲ恐レル点ハ、阪谷サンノ言ハレルヨリハ尚ホ掛念スルノデ是レハ決シテ安心トハ言ヘヌ、安心トハ言ヘヌガ制裁スル道ガナイ、
 - 第23巻 p.148 -ページ画像 
良シ道ガアツテモ是レハ宜クナイト思フ、宜クナイ以上ハ、此ノ御諮問案ニ対シテ、然ウ云フ様ナコトハ御座イマセヌト御答ヘスル外ハナカラウト思フ、詰リ自分モ帰宿スル所ハ阪谷君ノ前半段ニ御同意シテ或ハ其意味ヲ少シク精シク被仰ツルモ宜ウ御座イマセウ、併シ鳩山君ノ御答ノ方ガ能ク分リハ致シマスガ……詰ル所御趣意ニ於テハ殆ト阪谷君・鳩山君ト御同意デアリマスガ、阪谷君ノ後段ノ注意スルガ宜イト云フ老婆心ヲ被仰ツテモ、行政官ニ迷惑ヲ与ヘル様ナモノデアラウト思ヒマス
○中略
  午前十一時休憩
  午前十一時四十分開会
○委員長(渋沢栄一) 委員会ヲ継続シマス、如何デ御座イマセウ、委員ノ決定ヲ請ヒ度イト思ヒマスガ、段々御論ノ末阪谷君ノ提出ノ案ガ議題トサレマシタガ、其案ハ五項ニ分タレテ居リマス、併シ中上川君鳩山君等ハ第四項・第五項ノ注意ヲ与ヘルトカ予防スルガ必要トカ云フコトハドウシテモ除イタ方ガ宜カラウト云フ御意見デアリマス、夫レニ対シテハ原案ノ提出者タル阪谷君モ御同意ニナツタ、ソコデ御差出ニナツタ案ノ体裁ヲ修正シマシテ、初メノ「諮詢第二百四十九号現今一般経済上ノ関係ニ於テ鉄道起業許否ノ件ニ関シ、本員等調査委員ニ選定セラレタルニ依リ、本月十五日委員会ヲ開キ、逓信大臣ノ出席ヲ請ヒ、諮詢ノ趣旨ヲ質問シ、討議審査ヲ尽シ、左ノ如ク決定セリ」ト云フ前置キヲ除イテ「一、現今一般経済上ニ於テ起業熱高度ニ達シ金融稍ヤ逼迫ヲ告クルト雖モ、抑モ事業ノ成否ハ資本ノ供給如何ニ依ルモノナレハ、到底帰着スル所ハ金融ハ事業ヲ制スルモノニシテ、事業ノ許否如何ニ依テ、金融ヲ制セントスルハ、寧ロ本末ヲ誤ルモノナリ」「二、鉄道起業ニ対スル資本ノ給否如何ハ起業者タル資本家自身ノ案算ニ依ルヘキモノニシテ、政府カ一定ノ標準ヲ仮設シ之ニ依テ許否ヲ決セントスルハ、到底害多クシテ益ナキモノト信ス」「三、国家ノ存亡ニ関スル如キ特別ノ事業アルトキ、政府カ公債其他ノ方法ニヨリ資本ヲ吸収スルガ為メ、他ノ事業ニ資本ノ流入スルヲ停止スルノ目的ヲ以テ起業ノ許可ヲ一時制限スルコトアルハ、政治上一時ノ必要ニ基ク不得止ノ処分ナリト雖モ、現今ニ於テハ右ノ如キ特別事情ノ存在スルヲ認メス」右ノ理由ヲ以テ政府ハ私設鉄道条例ニ規定スル条件ヲ標準トシテ之ヲ許否ス可キモノナリ」ト致シテ、夫レデ宜シウ御座イマスカ
○(原善三郎) 夫レナラ何モ評議ハ要ラヌ様ニ思ヒマス
○委員長(渋沢栄一) 即チ緩急如何ヲ諮詢スト云フコトデアルカラ、緩急如何ヲ斟酌スルニハ及ハヌト本会ハ思ヒマスト云フ趣旨デアリマス
○(浜岡光哲) 私ハ夫レニ御同意ハ出来ヌ
○(原善三郎) 私モ御同意ガ出来ヌ、賛成ヲ得ヌカ知ラヌガ少数者ノ意見トシテ出シマス
○中略
○委員長(渋沢栄一) 夫レデハ委員会ハ是レデ閉ヂマス
 - 第23巻 p.149 -ページ画像 
  正午十二時散会
   ○阪谷芳郎提案ノ第四項及ビ第五項左ノ如シ。
    一然シ乍ラ現今及将来数年ノ間ニ於ケル我邦金融市場ハ、戦後起業熱ノ盛ナルト軍備拡張其他政府ノ戦後経営事業ノ為メ、巨額ノ需用ヲ負担スルヲ以テ、鉄道ノ起業ニ就テモ政府ハ勿論当業者並銀行家ノ大ニ注意ヲ要スルハ論ヲ待タス、而シテ特ニ当局者ニ於テハ、線路ノ調査ヲ鄭重ニシ既設若クハ既定線ナキ地方ト雖モ、地方ノ情況鉄道敷設ヲ必要トセス、其収利ノ見込乏シキモノハ、之ヲ他日ニ延期スルノ方針ヲ執リ、市場ノ負担ヲ軽減スルコトニ注意スヘシ。
    一又鉄道起業ヲ許可スルニ付キ、出願ノ前後ニ重キヲ置クハ決シテ無用ニアラサルモ、之ニ拘泥スルハ不可ナリ、政府ハ宜ク起業者ノ資産果シテ其出願ノ事業ニ応スルニ足ルヤ如何ヲ精密ニ調査シ、出願ノ線路ハ出願者ニ於テ相当ノ技師ヲ使用シ、工費並ニ営業ノ収支ニ付テ適当ノ調査ヲ為シタルヤ如何ヲ確メ、線路ハナルヘク既設ヲ延長シ、若クハ之ニ併セントスルモノヲ選ヒ、以テ鉄道ノ起業ヲ実着ニシ、彼ノ無資産ニシテ濫リニ鉄道ノ起業ヲ目論見、所謂権利株ノ利益ヲ目的ニシテ投機的ニ奔ル者ヲ抑制シ、金融市場ノ擾乱ヲ予防スルハ必要ノ注意ナリト信ス。(第八回鉄道会議委員会議事速記録ニ拠ル)


第八回鉄道会議議事速記録 第二号 明治二九年一二月一六日(DK230024k-0004)
第23巻 p.149-150 ページ画像

第八回鉄道会議議事速記録  第二号 明治二九年一二月一六日
 明治二十九年十二月十六日(水曜日)午前十時三十分開議

    議事日程
  一 諮詢第二百四十九号鉄道起業稟請ノ処分ニ関スル審査委員会報告ノ件

    出席
  議員  男爵 児玉源太郎 ○外十八名氏名略
  臨時議員   渋沢栄一  ○外五名氏名略
○議員一同著席
○議長代理(男爵児玉源太郎) 是ヨリ会議ヲ開キマス、日程ノ第一ニ移リマス、渋沢サン御報告ヲドウゾ
○二十二番(渋沢栄一) 諮詢第二百四十九号ノ鉄道起業稟請ノ処分ニ関スル件ハ、一昨日議長ヨリ委員ヲ御指名ニナリマシテ、九名ノ委員ガ成立チマシテゴザリマス、依ツテ委員会ノ経過ヲ概略玆ニ申上ゲマス、本案ノ今日ニ於テノ至急ノ問題ト申スコトハ、一目シテドナタニモ明ナ訳デゴザリマスガ、奈何セン御下問ニ対シテ十分ナル御答ヲスルコトニ甚ダ苦ミマス、或ハ風ヲ追ヒ雲ヲ捕フルヤウナ嫌ヒヲ免レマセヌ、果シテ之ヲ緩ニ致スガ宜カラウ急ニ致スガ宜カラウト云フ程度ヲ見出スコトニ苦ミマスノデゴザリマス、委員会ハ九人デゴザリマシタガ、一人欠席ニナリマシテ、八人ガ各々審議ヲ尽シマシテ、玆ニ御報告ヲ致シマシタ通リ、三要項ニ分ケマシテ、即チ現今一般経済上ニ於テ起業熱ノ高クナツテ居ル為ニ、金融ガ必迫スルト云フ現象ハアルケレドモ、乍併事業ノ成否ト云フモノハ資本ノ供給ニ依ルモノデアルカラシテ、詰リ帰スル所金融ハ事業ヲ制スルト云フ事実ハアルケレドモ、事業ノ許否ニ依ツテ金融ヲ制サウト思フノハ、寧ロ本末ヲ誤ツタ
 - 第23巻 p.150 -ページ画像 
結果ニナルデアラウ、又鉄道起業ニ対スル資本ノ給否如何ハ、起業者タル資本家自身ノ判断ニ依ルベキモノデ、政府カラ一定ノ標準ヲ仮ニ設ケテ之ニ許否ヲ決シヤウト云フコトハ、帰スル所ハ害ガ多クテ利益ガ少ナカラウト思フ、又国家ノ存亡ニ関スル如キ、或ル特別ノ事惰ニ依ツテ政府ハドウシテモ此日本ノ其国ノ通貨ヲシテ己ノ手ニ吸収シタイト云フ意思ヲ以テ、止ムヲ得ヌ場合カラ、政治上他ノ事業ノ進ミヲ止メル如キ処置ヲスルト云フコトガナイトハ言ヘヌ、去リナガラ今日ノ場合ハ左様ナ特別事情ノ存在スルコトハ認メヌ、カク二段三段ニ切リ分ケテ考ヘテ見マスト、本問題ニ対シテハ現今政府ノナサルベキコトハ、矢張リ私設鉄道条例ニ規定セラレテアル条件ヲ標準トシテ許否スルコトヲ至当ト認メル、ト云フコトニ帰宿致シマシタノデゴザリマス、尚之ニ附帯シテ――乍併前ニモ申シマシタ通リ、起業熱ノ高度ニ達シタ所カラ、随分此鉄道会社ノ成立ツ時ハ弊害ガ多クナリマスカラ幾ラカ之ヲ手心スルト云フ意味ヲ加ヘルガ宜カラウト云フ御説ハ、委員会ニ種々ゴザリマシタ、去リナガラ、果シテ斯ル進度ニ依ツテヤルト云フ見据ヘノ定マラヌモノヲ、行政官庁ニ於テ御手心アル如キ申シ分ハ、詰リ為シ能ハヌ望ミヲ云フヤウナ嫌ガアルカラ、寧ロ本会ニ於テ意思ヲ判然シテ申上ル外ナカラウト云フコトデ、今申上ゲマシタ手心シテ成ルベク其進度ヲ幾ラカ拒グト云フガ如キ意味ヲ書加ヘヤウト云フ説ハ、今前ニ申述ル理由カラ消滅致シマシタノデゴザリマス、詰リ此三要件ニ依ツテ現在ノ御処置ハ鉄道条例ノ第三条ニ記載スル標準ヲ以テ許否ヲ決シラレルガ至当ダラウト表決致シマシタ次第デゴザリマス、委員会ノ経過ヲ一応申シマス
   ○少数意見並ニ討論略ス。
○議長代理(男爵児玉源太郎) 大概御討論モ尽キタ様デアリマスカラ採決致シマス ○中略 然ウ致シマスト此総体ノ委員即チ委員長渋沢君カラ御報告ニナリマシタ案ニ付テ決ヲ採リマス、即チ第一読会之ニ同意ノ諸君ハ起立ヲ請ヒマス
  起立者  多数
○議長代理(男爵児玉源太郎) ○中略 然ウ致シマスレバ第三読会ヲ続ケマス、別段御異議ガゴザイマセヌケレバ、夫レニ決シマス、夫レデ御諮リ申シマスガ、仕舞ノ右及報告候也ト云フノヲ、右及答申候也ト変ヘマシテ、審査委員長渋沢栄一ト云フ所ヲ鉄道会議議長代理男爵児玉源太郎ト改メテ逓信大臣ヘ答申致シマス ○中略
  正午十二時散会
   ○栄一ハ、第八回鉄道会議ニハ右ノ問題ノタメニノミ臨時議員トシテ十二月十四日・十五日・十六日ノ三日間出席シ、爾後同年十二月十九日ヨリ翌三十年四月五日ノ間ニ於ケル九日間ノ各会議ニハ出席セズ。
   ○本款明治二十六年十二月十一日ノ条参照。