デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

8章 政府諸会
1節 諮問会議
6款 農商工高等会議
■綱文

第23巻 p.281-284(DK230033k) ページ画像

明治29年6月6日(1896年)

是ヨリ先四月二十八日勅令第百五十二号ヲ以テ農商工高等会議規則公布サレ、是日栄一、議員ヲ仰付ラル。


■資料

法令全書 明治二九年下巻 内閣官報局編 刊 【朕農商工高等会議…】(DK230033k-0001)
第23巻 p.281 ページ画像

法令全書 明治二九年下巻  内閣官報局編 刊
朕農商工高等会議規則ヲ裁可シ、玆ニ之ヲ公布セシム
 御名 御璽
  明治二十九年四月二十八日
             内閣総理大臣 侯爵 伊藤博文
             農商務大臣  子爵 榎本武揚
勅令第百五十二号(官報四月二十九日)
    農商工高等会議規則
第一条 農商工高等会議ハ農商務大臣ノ監督ニ属シ、海外貿易ニ関スル事項ニ付、農商務大臣ノ諮問ニ応シ意見ヲ開申ス
第二条 農商工高等会議ハ海外貿易ニ関スル事項ニ付、関係各省大臣ニ建議スルコトヲ得
第三条 農商工高等会議ハ会務整理ノ為メ規則ヲ議定シ、農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第四条 農商工高等会議ハ議長・副議長各一人及議員二十人以内ヲ以テ之ヲ組織ス
第五条 特別ノ事件ヲ審議スル為ニ臨時必要ノ場合ニ於テ、前条定員ノ外臨時議員ヲ命スルコトヲ得
第六条 議長・副議長・議員及臨時議員ハ、官吏又ハ農商工ニ関スル学識若クハ経験アル者ノ中ニ就キ、農商務大臣ノ奏請ニ依リ内閣ニ於テ之ヲ命ス
第七条 議長ハ議事規則ニ依リ議事ヲ整理シ、会議ノ決議ヲ農商務大臣ニ具申ス
第八条 議長事故アルトキハ副議長ヲシテ事務ヲ代理セシム
第九条 農商工高等会議ニ幹事二人ヲ置キ、農商務省高等官ヲ以テ之ニ充ツ
 幹事ハ議長ノ指揮ヲ承ケ庶務ヲ整理ス
第十条 議長・副議長・議員及幹事ニハ一箇年三百円以内、臨時議員ニハ事件ノ軽重ニ応シ其ノ都度相当ノ手当ヲ給スルコトヲ得
第十一条 農商工高等会議ニ書記ヲ置ク、議長及幹事ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ従事ス
 書記ハ農商務省判任官又ハ其ノ他ノ者ニ就キ之ヲ命ス
第十二条 書記ニハ事務ノ繁閑ニ応シ相当ノ手当ヲ給スルコトヲ得
第十三条 農商務大臣ニ於テ必要ト認ムルトキハ、議員又ハ其ノ他ノ者ヲシテ海外貿易ニ関スル諸般ノ調査ヲ為サシムルコトヲ得
 - 第23巻 p.282 -ページ画像 

青淵先生公私履歴台帳(DK230033k-0002)
第23巻 p.282 ページ画像

青淵先生公私履歴台帳          (渋沢子爵家所蔵)
    任免叙授
明治廿九年六月六日 農商工高等会議々員被仰付 同 ○内閣


第一回農商工高等会議議事速記録 第一―六頁 明治三〇年四月刊(DK230033k-0003)
第23巻 p.282-284 ページ画像

第一回農商工高等会議議事速記録  第一―六頁 明治三〇年四月刊
    諮問案
第一 清国長江航路調査員派遣ノ件
 長江ハ清国中最モ殷富ナル腹部ヲ横断スル大河ニシテ、上海ハ其河口ニ位シ、従来ノ開港場鎮江・九江・蕪湖・漢口・宜昌ノ五市、及馬関条約ニ依テ新ニ開カレタル沙市・重慶ノ二市皆其沿岸ニ在リ、実ニ清国ノ貨物及旅客ヲ集散スルノ一大要河ナリ、而シテ其河口ヨリ宜昌ニ至ル間ハ従来既ニ支那人及欧米人ノ設立ニ係ル数会社アリテ盛ニ汽船ヲ往復シ優ニ利益ヲ収得スト雖トモ、宜昌ヨリ重慶ニ至ル間ハ未タ汽船ノ来往ヲ見ス、今ヤ我邦ハ馬関条約ニ依リ此ノ河川ニ於ケル航路拡張ノ特権ヲ得タリ、然ルニ此間ノ航路ハ其収利ノ多キハ疑ナシト雖トモ、天然ノ困難ニ加フルニ人為ノ妨害ヲ予期セサル可カラサルヲ以テ、専門ノ技師ヲ派遣シ充分ノ調査ヲ遂グルニ非サレハ該条約ノ結果ヲ収ムルコト頗ル難カルヘシト信ス、依テ玆ニ其要否ヲ諮問スル所以ナリ
第二 海外金融機関ノ件
 海外貿易ヲ拡張セント欲セハ金融機関ノ設備ヲ計ラサルヘカラサルコト更ニ言ヲ俟タス、政府ハ常ニ横浜正金銀行ニ対シ其支店若クハ出張店ノ増設・資金ノ増加・事務ノ拡張ヲ促カシ以テ其要ニ応セシメンコトヲ勉ムルモ、尚ホ我国海外金融機関ノ不備ヲ訴ヘ之カ拡張ヲ建議スルモノ少ナカラス、且現今我邦ノ海外貿易ハ益々隆盛ノ気運ニ向フノ際ナレハ之ニ応スルノ準備ヲナスノ必要ヲ認ム、依テ玆ニ其方法ヲ諮問ス
第三 税関監督保税倉庫設置ノ件
 本邦ノ各貿易要港ニ於テ、税関ノ監督ヲ受ケ輸入品ニ対シ輸入税一時免除ノ特許ヲ受クルニ足ルヘキ確実ナル倉庫ヲ設置シ、銀行ト連絡ヲ通シ其預ケ人ニ対シ輸入品ノ倉預リ証書ヲ付与シ、必要ナル場合ニ於テハ之ヲ担保トシテ金融ノ便ヲ得セシムルコトハ、貿易上緊要ノ事件ニシテ其利益亦尠少ナラサルヘキナリ、依テ玆ニ税関監督保税倉庫設置ノ要否ヲ諮詢ス
第四 重要輸出品販路拡張ノ件
 本邦ノ輸出額ハ逐年増加スルニ従ヒ販路モ亦稍々拡張セラルヽト雖トモ、未タ広ク世界ノ各重要市場ニ向ヒテ我商品ヲ輸出スルノ盛況ヲ呈セス、偶之ヲ輸出スル者アルモ久シカラスシテ其販路ヲ失フニ至ル所以ノモノハ、主トシテ粗品ヲ高価ニテ販売シタルカ、若クハ此等市場ノ民衆ガ未ダ我商品ノ真性ト真価トヲ知悉セサルトニ原由スルモノ多シ、依テ海外ニ於ケル帝国領事館・公設博物館・商業会議所・私設陳列所又ハ確実ナル内外人ノ商店ニ我見本ヲ無料ニテ送
 - 第23巻 p.283 -ページ画像 
付陳列シ、我商品ヲ購買者ニ媒介周知セシメ以テ新市場ヲ開発シ販路ヲ拡張シ、併セテ直取引ノ便ヲ開キ直輸出ヲ隆盛ナラシメント欲ス、依テ玆ニ其適否及方法ヲ諮詢ス
第五 海外通信ノ件
 海外ニ於ケル農商工業上ノ通信ヲ盛ニシ其情況ヲ詳知スルハ貿易上必要ノ条件タリ、従来帝国領事海外各地ニ駐在シ、常ニ通信報告ヲ怠ラス当業者ニ便益ヲ与フルコト少カラスト雖モ、今日我邦ノ海外貿易ハ日ニ月ニ隆昌ニ赴キ尚ホ海外通信ノ設備ヲ一層完全ニシテ其報道ヲ敏活ナラシムルノ必要ヲ認メ、玆ニ其方法ヲ諮詢ス
第六 海上保険ノ件
 外国貿易ヲ拡張スルニ当リ、航海・保険及金融ノ三機関ハ密接相離ルヘカラサル関係ヲ有シ、又互ニ相待チテ其効用ヲ全フスルモノナリ、然ルニ本邦ノ海上保険会社ハ重ニ日本近海ニ於ケル貨物船舶ノ保険ヲ取扱フニ止マリ、海外ニ往復スル船舶及輸出入貨物ノ保険ニ至リテハ主トシテ外国保険会社ニ依頼スルヲ常トシ、将来ニ於ケル航路ノ拡張及金融機関ノ発達ニ伴フ能ハサルノ感アリ、随テ外国貿易上ニ及ホスノ不利益鮮少ナラサルヲ認ム、依テ玆ニ海外ニ対スル本邦海上保険業ヲ発達拡張セシムルノ方法ヲ諮問ス
第七 職工ノ取締及保護ニ関スル件
 本邦工業ノ発達ニ伴ヒ旧来ノ毎戸製造ハ漸次工場製造ニ変遷スルハ勢已ムヲ得サルノ情況ナリ、而シテ今ヨリ傭主職工間ノ関係ヲ円滑ニシ資本ト労力トノ権衡ヲ維持シ、以テ相互ノ利益ヲ永遠ニ保全シ以テ諸般ノ紛擾ヲ未然ニ防遏スルノ目的ヲ以テ必要ナル法令ヲ制定スルハ、工業発達上ノ緊要事件ナルヲ認メ、玆ニ其区域程度及方法ヲ諮問ス

          農商工高等会議々長
              枢密顧問官 伯爵 佐野常民
          農商工高等会議副議長
              農商務次官    金子堅太郎
          農商工高等会議議員(任命順次)
               逓信次官 男爵 鈴木大亮
           農商務省農務局長    藤田四郎
           農商務省商工局長    安藤太郎
            外務省通商局長    藤井三郎
              大蔵書記官    添田寿一
                従四位    渋沢栄一
                正五位    藤田伝三郎
                従五位    土居通夫
                従五位    園田孝吉
                正六位    中上川彦二郎
                正六位    大倉喜八郎
                正六位    原善三郎
                従六位    広瀬宰平
 - 第23巻 p.284 -ページ画像 
                正七位    益田克徳
                       益田孝
                勲三等    近藤廉平
                勲四等    森村市左衛門
                       浜岡光哲
                       井上角五郎
                       山本亀太郎
          農商工高等会議幹事
            農商務省参事官    有賀長文
            農商務省参事官    織田一



〔参考〕明治三十二年十月開設 第八回商業会議所聯合会議事速記録 第一七三頁 刊(DK230033k-0004)
第23巻 p.284 ページ画像

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録  第一七三頁 刊
明治三十二年十月十六日午前十時二十分開議
  出席委員     四十七名 ○氏名略
○上略
○商工局長(木内重四郎君) ○中略 此海外貿易拡張費ハ明治二十九年度カラ始メテ起リマシタノデ、金子堅太郎サンガ農商務次官デアツタ時デアリマス、当時実業家ノ賛成モアリ又両院ノ協賛ガアリマシテ、此最モ必要ナル費用デアルト私共カ考ヘテ居ル所ノ拡張費ガ生シマシタノデス、ソレ以来本年度ニ至ルマデ四ケ年間仕事ヲ継続致シテ居リマス、其仕事ハドウ云フコトヲシテ居ルカト申シマスルニ、第一ニハ農商工高等会議ヲ開クコト、第二ニハ実業練習生ヲ海外ニ派遣スルコトデアリマス、第三ニハ商況視察員ヲ海外ニ派遣スルコトデアリマス、此商況視察ニ付テハ或ハ農商務省ナリ若クハ他ノ役所ナリノ官吏ヲ派遣スルコトヽ、民間ノ実業家ヲ派遣スルコトヽ二色ニナツテ居リマス次ギニハ海外ニ商品陳列所ヲ設置スルコトデアリマス、次ニハ諸般ノ報告ヲ印刷シテ当業者ニ配付スルコト、及ビ急ナルモノハ電信ヲ以テ海外カラ報告ヲ得テ之ヲ当業者ニ知ラシムルコト、之ハ調査報告ト云フ項目ニナツテ居リマス、其次ニ工芸試験費デアリマス
農商工高等会議ハ二十九年ノ四月ニ始メテ規則ガ出来マシテ、其第一回ハ二十九年ノ十月ニ開キマシタ、ソレカラ第二回ハ翌三十年ノ三月ニ開キマシタ、サウシテ三十年ノ六月ニナツテ更ニ規則ヲ改メマシテ第三回ノ会議ハ昨三十一年ノ十月ニ開キマシタ、色々重要ナル問題ガ数多クアリマシタ、議員ハ総テ熱心ニ御討論ガアツテ吾々ニ最モ有益ナル智識ヲ与ヘタノミナラズ、政府ノ商工業ニ対スル政策ヲ決スル上ニ於テ少ナカラヌ裨益ヲ与ヘタコトヽ思ツテ居リマス、併シ此事ハ三十年ノ六月ニ規則ヲ改正シテ、従前ハ海外貿易ニ関スル事項ヲ審議スル諮問府デアリマシタガ、其後ニハ総テ農商工ニ関スル総テノ重要ナル事項ヲ諮問スル機関トナリマシタニ付テ、自カラ海外貿易拡張費ヲ以テ其費用ヲ支出スルノハ不都合デアルト云フコトニナリマシテ、別ノ費用ニナリマシタ ○下略