デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

8章 政府諸会
1節 諮問会議
6款 農商工高等会議
■綱文

第23巻 p.327-367(DK230037k) ページ画像

明治29年10月19日(1896年)

是日第一回第一日ノ会議ニ、海外金融機関ノ設備ニ関スル諮問案上程サレシガ、同案ハ本邦海上保険業ノ発達ニ関スル諮問案ト密接ナル関聯ヲ有スルニヨリ、之ト併セ審議スルニ決ス。二十一日第三日、二十二日第四日ノ会議ニ本案海上保険ニ関スル諮問案ト同時ニ上程サレシガ、再ビ分離スルニ決シ、単独審議ノ末特別委員ニ附託セラル。二十三日第五日ノ会議ニ委員決議案上程サレ、可決セラル。栄一、毎回会議ニ列席シ、第四日ノ会議ニ於テ、横浜正金銀行ノ業務拡張ヲ計ルノ法至当
 - 第23巻 p.328 -ページ画像 
ニシテ、他ニ海外金融機関ヲ設クルハ疑問ナル旨ノ意見ヲ述ブ。


■資料

第一回農商工高等会議議事速記録 第七九―一〇二頁 明治三〇年四月刊(DK230037k-0001)
第23巻 p.328-342 ページ画像

第一回農商工高等会議議事速記録  第七九―一〇二頁 明治三〇年四月刊
明治廿九年十月十九日(月曜日)午前十時農商務省議事堂ニ於テ開会
出席者十九名欠席者三名ニシテ、仮席次左ノ如シ
○中略
○議長(伯爵佐野常民君) 是レヨリ第二諮問案ノ議事ニ移リマスガ、一応幹事ヲシテ議案ヲ朗読サセマス
   〔有賀幹事朗読〕
  第二諮問案
    海外金融機関ノ件
海外貿易ヲ拡張セント欲セハ、金融機関ノ設備ヲ計ラサルヘカラサルコト更ニ言ヲ俟タス、政府ハ常ニ横浜正金銀行ニ対シ、其支店若クハ出張店ノ増設・資金ノ増加・事務ノ拡張ヲ促カシ以テ其要ニ応セシメンコトヲ勉ムルモ、尚ホ我国海外金融機関ノ不備ヲ訴ヘ之カ拡張ヲ建議スルモノ少ナカラス、且現今我邦ノ海外貿易ハ益々隆盛ノ気運ニ向フノ際ナレハ之ニ応スルノ準備ヲナスノ必要ヲ認ム、依テ玆ニ其方法ヲ諮問ス
〔左ノ参照ハ朗読ヲ経サレトモ参考ノ為ニ掲グ〕

 参照第一号
    東京商業会議所海外直輸出入業ニ関スル調査報告抄録
 貿易ノ機関タル銀行ヲ増設シテ大ニ金融ノ便ヲ開クコト
  我直輸業者ノ金融機関タルモノハ、唯一ノ正金銀行アルノミニシテ、未ダ当業者ニ充分ノ便利ヲ与ルニ足ラズ、金融機関ヲシテ完備セシメンニハ更ニ貿易ノ機関タル有力ノ銀行ヲ増設シ、正金銀行同様ノ便利ヲ与ヘ、両者ヲシテ相竢テ金融ノ便ヲ達セシメハ、其結果競テ当業者ノ便利ヲ図リ且ツ金利モ亦能フ限リノ程度迄低下スルニ至ラン
  又金銀ノ比価時々変動スルガ為メ、我直輸業者ガ外国ヨリ商品ヲ仕入ルヽニ当リ予メ其仕入直段ヲ算定スルヲ得ス、随テ其取引ノ際違算ヲ生ズルノ恐アリ、是当業者ノ大ニ困難ヲ感ズル所ナリ、故ニ今後貿易ノ機関タル銀行ヲシテ海外諸国ニ対スル為替売買ヲ外国銀行ノ如ク取扱ハシメ、以テ我直輸業者ヲシテ取引上ノ安固ヲ得セシメンコトヲ望ム

 参照第二号
    大阪商業会議所ノ海外貿易上金融機関拡張ニ関スル意見書
 我カ国力ヲ増大シ我民福ヲ増進スル幾多手段中、今日ニ於テ最モ必要ナルヲ直輸出入貿易ノ発達トス、而シテ直輸出入貿易ノ発達タル決シテ朞月ニシテ之ヲ能クスヘキモノニアラサルノミナラス、朝野心ヲ一ニシテ経営努力、以テ之ヲ援助スル所ノ諸機関ノ具備完全ヲ謀ルニアラサレハ、到底良策ヲ迅速ニ収ムルコト能ハサルナリ
 - 第23巻 p.329 -ページ画像 
 直輸貿易ノ発達ヲ助成スルニ必要ナル機関ハ固ヨリ一ニシテ足ラスト雖モ、就中最モ必要ナルヲ交運業ト金融業トノ二業トス、交運・金融ノ二業ノ商工業ニ於ケルハ猶ホ双翼ノ鳥ニ於ケルカ如ク、又両輪ノ車ニ於ケルカ如キナリ、若シ其ノ一ニシテ不備不完全ナラシメンカ、商工業殊ニ直輸貿易業上見ルヘキノ発達ヲ期スヘカラサルナリ、況ヤ両者ノ共ニ不備不完全ナルヲヤ
 交運業ニ関シテハ近時朝野人士ノ大ニ注意スル所ナリ、今ヤ幸ニシテ漸ク拡張ノ端兆ヲ開キ前途多望ノ熱運ニ上ラントス、国家ノタメ真ニ慶賀スヘキノ至ナリト謂フヘシ
 然ルニ翻テ我金融業ノ現状ヲ顧レハ、国外商工業上ノ機関トシテ稍稍見ルヘキノ功ヲ奏セリト雖モ、其海外貿易ヲ助成スルノ機能ニ至リテハ未タ幼弱不備ノ境涯ヲ脱スルコト能ハス、試ニ我カ国ニ存立スル百参十五ノ国立銀行(此ノ資本総額六千参百参拾余万円)及ヒ八百有余ノ私立銀行(此ノ資本総額八千余万円)中、横浜正金銀行其他二・三ノ銀行ヲ除キ、支店又ハ代理店ヲ海外ニ設ケ若クハ外国銀行ト特約ヲ結ヒテ為替取組ノ業ヲ営ムモノ果シテ幾行カアル、憶ヒテ此ニ到レハ転タ痛嗟ニ堪ヘサルナリ、斯ノ如キ不備不完全ナル金融機関ヲ以テ直輸貿易ノ発達ヲ望ム、其進歩ノ渋難ナル固ヨリ怪シムニ足ラサルナリ、我交運業ニシテ幸ニ拡張セラルヽニ至ルモ之ト同時ニ金融機能ニシテ適度ノ振作ヲ謀ルニアラサレハ、其ノ効果或ハ予望ニ副フコト能ハサラントス、之ヲ要スルニ今日ニ於テ海外ニ対スル金融機能ノ完備ヲ謀リ其活動ノ円満ヲ計ルハ、国家経済ノ上ヨリスルモ将タ又個人経済ノ上ヨリスルモ実ニ急務中ノ急務ナルモノナリ
 果シテ然ラハ対外金融機能ノ完備円満ヲ期スルニハ当ニ如何スヘキ乎、他ナシ一方ニ於テハ有力ナル金融業者ヲ勧誘シ、自ラ進ミテ海外要地ニ支店若クハ代理店ヲ開設セシムルト同時ニ、一方ニ於テハ適宜ノ方案ヲ画出シ国庫ノ補助ヲ与ヘテ業務ノ進歩ヲ速致スルニアルノミ、或ハ説ヲ為ス者アラン、曰ク海外貿易ハ主ナリ、金融ハ従ナリ、海外貿易ニシテ進歩セハ、金融機能ノ如キハ自然ノ必要ニ迫ラレ自ラ海外ニ其ノ勢力ヲ張ルニ至ルヘキナリ、今日ニ於テ強テ之ヲ奨励シ之ヲ保護スルカ如キハ不自然ナリ、人工的ナリ、故ニ其労費ノ大ニシテ其効果却テ小ナルヲ免レサルヘシト、此説タル経済自然ノ発達ニ関スル原理常則ノミヲ知リテ、変通機ヲ制スルノ道ヲ弁セサル者ノ言ノミ、世界現実ノ大勢ニ対シ我カ国今日ノ時運ニ際シ徒ラニ自然ノ発達ニ一任シテ其他ヲ顧サルカ如キハ決シテ識者ノ為サヽル所ナリ、況ンヤ社会事物ノ関係ノ複雑ナル、其ノ活動作用ノ常ニ連環性ヲ有スルヤ、時ニ或ハ従ナル事業ヲ先キニシテ以テ主タル目的事業ノ発達ヲ、誘起振作スルノ却テ得策タリ捷径タルコトアリ、彼ノ鉄道ノ布設ト、地方生産力ノ発達トノ関係ノ如キ即チ是ナリ、今日ニ於テ直輸貿易ノ発達ヲ期スルカタメニ先ツ大ニ対外金融機能ノ拡張ヲ奨励保護スルノ必要ヲ説クモ、亦全ク此ノ理ニ外ナラサルナリ、不自然ノ業、人工的ノ事、是レ全ク自然ヲ助ケ天工ヲ補フニ外ナラサルナリ、是本所カ卑見ヲ具シテ速ニ採納実行セラレン
 - 第23巻 p.330 -ページ画像 
コトヲ切望シテ止マサル所以ナリ、然リ而シテ補助ノ範囲・方法・年限・制裁・義務・監督等ノ諸点ニ至リテハ、当局者ニ於テ十分審議セラレンコトヲ希望スルハ勿論ナレトモ、左ニ数箇条ノ希望点ヲ挙ケテ参考ノ一助ニ供フ、冀クハ速ニ審議アランコトヲ、謹テ意見開申候也
  明治廿九年七月
            大阪商業会議所会頭 土居通夫
    農商務大臣 子爵 榎本武揚殿
      補助ニ関スル希望点
 一補助ノ範囲
  元来補助ノ目的タル、我外国貿易ノ発達ヲ謀ランカタメ海外ニ対スル金融ノ円満ヲ期スルニアルカ故ニ、政府当局ニ於テモ銀行資本ノ大小、営業信用ノ確否、海外地方ノ事情、在外支店出張所若クハ「コルレスポンデンス」約定先キノ多少等、幾多ノ事情ヲ参酌シテ出来得ル限リ普ク補助ヲ与ヘラレンコトヲ希望ス、但シ帝国臣民ノ資本ノミヲ以テ営業スル銀行ニ限ルコト
 一補助ノ方法
  各自営業ノ勤惰巧拙ニ準応シテ補助ト奨励トノ両目的ヲ達スルタメ、一種屈伸力アル補助法ヲ採用セラレンコトヲ希望ス、即チ本所ノ考案ニテハ海外ニ対スル為替取組高ヲ標準トシ、半季毎ニ取組総高ニ対シ千分ノ一ヨリ少カラサル補助金ヲ与フルヲ可トス、但右補助金額ハ各銀行本店ヨリノ申請書(地方庁経由)ニ依リ審査決定スヘキモノトス
 一補助ノ年限
  元来此ノ種ノ補助ハ決シテ永久ニ附与スヘキモノニ非スシテ、業務開始ノ初期ニ際シ営業取引僅少ノタメニ生スル収利上ノ欠損ヲ補足シ、以テ其発達ヲ助成シ、独力経営ノ根底ヲ培養鞏固ナラシムルニ外ナラサレハ、本所ノ考ル所ニテハ十ケ年ヲ限リ之ヲ附与スルヲ可トス、但右期限内ト雖モ業務能発達シ主務大臣ニ於テ別ニ補助金ヲ下附スルノ必要ナシト認メタルトキハ、予メ一箇年前ニ通告ヲ為シ置キ以テ補助金ノ下附ヲ廃止スルコトアルベシ、又銀行自己ノ都合ニ依リ期限内ニ海外ニ対スル営業ヲ休止シタルトキ、若クハ銀行ニ於テ不都合ノ廉アリタルカタメ、当局大臣ヨリ業務ノ休止ヲ命セラレタルトキハ、其ノ月限リ補助金ノ下附ヲ休止ス
 其ノ外
  補助ヲ受クル銀行ニ対スル制裁法
  同監督法
  補助ヲ受クル銀行カ政府ニ対シ負フ所ノ義務
 等ノ諸点ニ至リテハ今一々ニ之ヲ言ハス、例ヲ推シ宜シキニ従ヒテ適宜ニ審議制定セラレンコトヲ希望ス

○幹事(有賀長文君) 本案ニ就キマシテモ一通リ提出ノ趣意ヲ弁明致シテ置キタウゴザリマス、海外貿易拡張ニ金融機関ノ必要ト申スコ
 - 第23巻 p.331 -ページ画像 
トハ、今更ラ喋々ヲ要シマセヌコトデ、此案ニモ申述ベテゴザリマスル通リニ政府ハ従来横浜正金銀行ニ対シテ保護ヲ与ヘマシテ、即チ横浜正金銀行ト日本銀行トノ間ニ特約ヲ結バシメマシテ、再割引ノ便利ナドヲ与ヘ、又貿易拡張ト共ニ出張店若クハ支店ノ増設ヲ促シ、或ハ資金ノ増加ヲ促シ、其他事務ノ拡張ヲ促シマシテ、貿易ノ拡張ニ応ズルコトヲ力メマシテゴザリマスルガ、諸君モ疾ニ御承知ノ通リ、本省ニ対シマシテ各地ノ商業会議所若クハ実業団体若クハ商業会議所聯合会等ヨリ頻リニ、現今ノ金融機関ハ我海外貿易ノ拡張ニ伴ツテ行クニハ不足デアルト云フノ建議ヲ提出ニナツテ居リマスルノデゴザリマス、又本省ニ於キマシテモ益々拡張スル貿易ニ応ズルノニハ、尚ホ計画ヲ怠ラヌヤウニシナケレバナラヌト存ズル故ニ、其方法ヲ諮問ニナリマシタ次第デゴザリマス、本省デハ今日ノ金融機関ハ貿易ノ拡張ニ応ズルニハ不足デアルト云フコトニ就キマシテ、之ヲ認メテ居リマスガ、偖其第二段ノ問題タル所ノ、夫レナレバドウシテ其不備ヲ補フカト云フ方法ニ至リマシテ、即チ此度諸君ノ御考慮ヲ願フ次第デゴザリマス、唯今マデ其方法ニ就キマシテ本省ニ出テ来マシタモノハ、第一、東京商業会議所会頭、此処ニ御列席ノ渋沢君ヨリ御提出ニナツテ居リマスル所ノ方法、即チ我直輸出ヲ奨励スル方法ハ幾ラモアルケレドモ、其中デ最モ必要ナルモノハ海外金融機関ノ不備ヲ整フノデアル、其方法トスル所ハ現在ノ横浜正金銀行ハ即チ唯一ノ銀行デ独占ノ傾キガアル、故ニ今モウ一ツ海外貿易ニ対スル金融機関ヲ設置シテ、互ニ競ヒ互ニ力メシメタナラバ冀クハ以テ金融機関ノ進行ヲ得ルデアラウ、互ニ競争スルト云フ事ハ知ラズ識ラズ其間ニ双方相進メルト云フ傾キガアルニ違ヒナイコトデアルト云フノガ、東京商業会議所カラ御提出ニナツテ居ル所ノ第一ノ方法デゴザリマス、第二ノ方法ハ、即チ大阪商業会議所カラ御提出ニナツテ居リマスル所ノ建議案デゴザリマシテ、此処ニ御列席ノ土居君カラ御提出ニナツテ居リマスルガ、其建議ノ趣意ハ恰モ彼ノ航海事業ニ対スル航海奨励法ノ如ク、海外金融機関ニ対シ一般ニ法定ノ補助ヲ与ヘタラバ宜カラウ、例ヘテ申セバ為替取組額ノ千分ノ一補助スルト云フノガ、建議書ノ趣意デアリマス、苟モ確実ナル海外ノ金融機関デアツテ、海外ノ金融ヲ図ル銀行ナラバ、其取組為替高ノ千分ノ一ヲ毎半期毎ニ補助スルナラバ、起スコトガ出来テ互ニ精励シ其不備ヲ補フコトガ出来ルダラウト云フ説デゴザリマス、又第三ニハ唯今此処ニ御列席ノ山本議員カラ伺ヒマシタ説デ既ニ神戸ノ商業会議所ノ決議ヲ以テ本省ニ提出シテアル由ニテ、未ダ其建議ハ本省ニハ到着致シマセヌガ、其意ヲ承ハリマスレバ初メノ半分ハ東京商業会議所ノ趣意ト同様デゴザリマス、即チ横浜正金銀行一ツデハ兎角「ものぽりー」ノ傾キガアル、決シテ勉強シナイト云フノデハナイガ、知ラズ識ラズ「ものぽりー」ト云フ傾ヲ生ズル結果ガアルダラウカラ、神戸ニモウ一ツ置キタイ、横浜ハ欧米各国ニ対スル貿易ノ要港デアル、神戸ハ東洋及ビ南洋ニ対スル要港デアル、我邦ノ貿易ハ欧米ニ力ヲ用ヰルト同時ニ東南洋・濠州等ニモ力ヲ用ヰルト云フコトデアルカラ、此際モウ一ツ置キタイト云フ、
 - 第23巻 p.332 -ページ画像 
東京商業会議所ノ趣意ニ、之ヲ神戸ニ置クト云フコトヲ追加シタル趣旨デゴザリマス、唯今マデニ建議ニ為ツテ居ル所ノ方法ト云フモノハ此三ツデゴザリマス、尚ホ其他如何ナル方法ガ適当デアルカ、即チ其方法ニ付キ御考慮ヲ仰ギタイ次第デゴザリマス
○五番(原善三郎君) 「海外貿易ヲ拡張セント欲セバ、金融機関ノ設備ヲ計ラザルベカラズ云々」トアル此御諮問案ハ、此金融ヲ助クルト云フ御見込ハドウスレバ宜イト云フノデゴザリマスルカ
○幹事(有賀長文君) 即チ其方法ヲ御協議ヲ願ヒタイノデゴザリマス
○五番(原善三郎君) 政府ノ方デモ斯ウ云フ方法ト云フ、何カ方法デモアレバ御相談モ出来マスガ、此御注文ニ就イテハ余程ムヅカシイ金ヲ貸ス人ト借ル人トノ間ノコトデスカラ、信用ト云フモノヲ拵ヘナケレバ、幾ラ金ハアツテモ融通ハ附キマセヌ、又呉レルヤウナ金ヲ拵ヘルト云フヤウナ訳ニモ行キマセヌ、此金ノ取扱ハ信用ノ外、融通ノ附ケヤウハナイ、信用ガアレバ正金銀行デモ十分融通ハ附ク彼処デ融通ガ附ケラレナイト云フノハ、信用ガ足ラナイノデゴザリマス、尤モ大変ニ困ルト云ウ場合ハ、此節ナドハアリマスルケレドモ、間々サウ困ルト云フヤウナコトハナイ、其商人ニ信用サヘアレバ融通ハ附キマス、最早ヤ正金銀行ヘハ日本銀行ノ安イ金ヲ貸シテアリマス、今度ハ第一銀行ニ金ヲ貸シテヤラスルカ、ヤラセヌカ、サウ云フコトニシタラ名ハ附キマセウガ、安イ利息ノ金ヲ借リタト云フテモ本ヲ失フヤウナコトハ決シテ銀行ハシナイ、コヽノ所ガ至ツテムヅカシイ、夫レハ保護ト云フコトガアルナラバ、万一ノ損耗ハ政府デ持ツトカ何トカナラナケレバナラヌ、ソコノ御相談ハ金融ノ為メニ建議ヲナスツタモノモアルガ、本統ニ海外輸出貿易ヲ助ケルト云フコトハ、中々匆卒ニ御相談出来ナイ、能ク此事ヲ御熟考ガアツタナラバ、何トカ法ガ附キマセウガ、第二ノヤウナ議案ヲ担ギ出シテモ、中々一時間ヤ二時間デハ纏マルマイト思ヒマス、信用ノ無イ人ニ金ノ貸シヤウハナイ、金ヲ貸サナケレバ向フニ損ガ立ツ、金ヲ貸セバ銀行ハ立タナイヤウナコトニナル、丁度銀行ハ施シヲスルヤウニナルカラ、信用ノ無イ者ニハ金ヲ貸スコトハ出来ナイ
○三番(藤田伝三郎君) 五番ニ御尋ネ致シマスルガ、第二諮問案ハ重大ナモノデアルト仰ツタガ、何カ宜イ御考ヘガゴザリマスカ
○五番(原善三郎君) 渋沢サンヤ、中上川サンナドハ私ヨリモ十段モ上ノ人物デアリマスカラ、調ベテ貰フテモ宜イガ、私ハ余程ムヅカシイト思フ、皆サンノ御議論ガ混ジタラ尚ホ分リ悪ウナル、矢張リサウスルト、保護主義ニナルト思ヒマス
○幹事(有賀長文君) 一応趣意ヲ申述ベタウゴザリマスルガ、唯今モ五番議員カラ、其方法ハ中々困難デアルカラシテ短時間デハト云フコトデゴザリマシタガ、必ラズ時間ハ限ツテ居ル訳デモゴザリマセヌ、又此処ニ御列席ノ議員ニシテ此問題ヲ御定メニナリマセネバ、他ニ之ヲ定メルモノハ余程少ナイダラウト考ヘマス、時間ニハ限リハゴザリマセヌカラ、若シ此必要ガ無イト云フコトデゴザリマスレバ、夫レハ一ツノ御説デゴザリマスルガ、必要ガアルト云フコトデゴザリマスレバ十分ニ皆様ノ御意見ヲ伺ヒタイ次第デゴザリマス、
 - 第23巻 p.333 -ページ画像 
先程カラ仰セノ通リ、金融ガ得ラレナイノハ信用ガナイカラデアル夫レハ仰セノ通リデゴザリマスガ、一方ノ貿易ニ従事スル者ハ、正金銀行ハ不信切デアツテ、与ヘテモ宜イ信用ヲ与ヘナイト云フコトデアル、正金銀行ハ信用ガアレバ勿論与ヘマスガ信用ガナイカラ与ヘヌ、是レハ何方モ尤ノ次第デゴザリマス、双方ノ言フ所ハ尤ノコトデ、即チ信用ト云フ言葉ノ程度ノコトデゴザリマス、信用ト云フモノハ形ヲ備ヘタ判然トシタモノデモナイ、信用ト云フモノハ不定ノモノデアリマスカラ、双方ノ言葉ガ尤ノヤウニ聴ユルノデアリマス、ソコノ処ハ全ク実業者ノ云フノガ尤デアルカ、又正金銀行ガ少シク「ものぽりー」ト云フ所ガアルカ、其辺ヲ此処デ十分御審議下サツテ、若シ信用ヲ与ヘル余地ガアルノニ信用ヲ与ヘヌト云フヤウニ、多少「ものぽりー」ノ傾キデモアルナラバ、十分此処デ御審議ガアツテ、時間ハ一時間二時間ト限ラレタ訳デモアリマセヌカラ、御討議ヲ願ヒタイ、此席ヲ措テ他ニ求メルコトハ余程困難ナコトデアラウト思ヒマス
○五番(原善三郎君) 唯今ノ御説明デ宜ク分リマシタ、実ハ私モ此方法ニ就キマシテハ考ヘナイコトモゴザリマセヌ、熟考モシタノデゴザリマスガ、何分ニモ是レマデノ経験ノ上デハ法ハ附キマセヌ、若シ附キマシテモ一時間位デドチラニカ極メマシテ、多数デ御決シニナツタナラバ極ク無効ノモノト思ヒマスカラ、議長ノ御指名デ委員ヲ三人置クカ五人置クカ、此中カラ然ルベキ者ヲ御指名ニナツテ、会議ノ末日迄ニ御勘考ニナツテ、委員会ノ結果ヲ報道シテ下サルコトニ致シタラ宜カラウ、委員ノ御選定ハ私ハ議長ノ御指名デ御極メニナル方ガ宜カラウト思ヒマス
○十五番(浜岡光哲君) 唯今ノ五番説ハ御尤ノコトヽ思ヒマスカラ、五番説ニ賛成致シマス、併シ此事ニ就キマシテハ全ク正金銀行ダケデ足レリトシナイ、如何トナレバ唯今五番ノ述ベラレタ如ク、信用ガアルカラドウ、信用ガ無イカラドウト云フコトデハナイ、実際ノ所ハ既ニ日本ノ商人ニシテ便宜ヲ得ヤウトスルニハ上海「ばんく」デ取引スル方ガ、正金銀行デ取引スルヨリ便宜ダト云フコトデアル実際サウナツテ居ル、夫レハドウカト云フト、正金銀行ニシマシテモ、最初十分ニ拡張シ過ギテ多少損失ヲ来シタ場合モアツタカラ、其後余程厳シクナツテ、夫レガ自ラ慣習ヲナシテ居ルダラウト思ハレマス、夫レデ、ドウシテモ是レハ別ニ金融ノ機関ヲ設ケテ、他ノ銀行デモ外国ニ手ヲ出ス以上ハ、相当ノ保護ヲ与テ正金銀行ト同様位ナコトハシテヤル方ガ宜カラウ、是レカラ外国品ノ輸入ニシマシテモ、亦輸出ニシマシテモ一ノ会社・一箇人ニ止マラズ、誰ニモサスト云フコトニナツタナラバ、随ツテ銀行ノ方モ鎖国主義デハ行カナイ、サウスルニハ、夫レニ就イテ保護ヲ与ヘテ最初ハ便利ヲ与ヘナケレバナルマイ、即チ保護ヲ与ユル方法ニシナケレバナルマイト思ヒマス、是レ等ノコトニ就イテハ正金銀行ニ関係ヲ持ツテ居ルコトデゴザリマスカラ、是カラ余程注意ヲシテ千思万考シナケレバナラヌ、五番ノ如ク委員ヲ置イテヤルト云フコトニナレバ、誠ニ鄭重ノ話デアラウト思ヒマスカラ、委員ヲ置クト云フ趣意ニ賛成ヲ致シ
 - 第23巻 p.334 -ページ画像 
マス、最初ノ五番ノ御心配トハ少シク違ヒマスガ、委員ヲ置クト云フコトニハ同意シマス
○十四番(金子堅太郎君) 唯今委員説ガ成立チマシテ、私モ夫レハ賛成致シマスガ、之ニ就イテ一言委員ニ御附託ニナル前ニ、簡単ニ述ベ置キタイト思ヒマス、私ガ本案ニ賛成スルノハ、決シテ信用ノ無イ者ニ金ヲ貸セバ《(脱アルカ)》、夫レヲ貸サナイカラ今日ノ金融機関ハ不便ヲ感ズルト云フヤウナコトハ眼中ニ置カナイ、国家経済ノ上カラ、外国貿易ヲ計画スル眼カラシテ賛成スルノデアツテ、決シテ箇人的信用如何ハ眼中ニ置カナイ、一体日本ガ外国貿易ニ従事シ、輸入シ輸出シテ我国ノ利便ヲ図ルト云フ考ヘカラ海外ニ踏出ス以上ハ、外国ニ設備シテ居ルダケノ金融機関ハ日本モ備ヘナケレバ、今後戦後ノ経営トシテ又内地雑居ノ時機ニ至ツテ、私ハ彼等ニ匹敵スルコトガ出来ナイト思ヒマス、午前ニ喋々致シマシタ通リ、外国ト交際ヲ始メタ沿革カラ少シ此歴史ハ直言スルノハ憚リマスガ、実ハ正金銀行ノ頭取ノ園田君ガ居ラレマスレバ大ニ同君ノ意見ヲ聴キタイト思ツテ居リマシタガ、不幸ニシテ園田君ガ居ラレヌカラ已ムコトヲ得マセヌ、又大蔵省ノ当局委員モ御出席ニナツテ居リマスガ、実ハ私ハ海外ニ在ル正金銀行支店・出張店ノ有様ヲ聞クト、残念ナガラ海外ニ行ツテ外国貿易ヲスルダケニ整ツテ居ラヌ、夫レデ十五番ノ浜岡君ノ如ク海外貿易ニ従事シテ居ラルヽ方ノ御経験ノ御話ハ、誠ニ今日ニ適当シテ居ル、正金銀行モ海外ニ支店ヲ出シテ居ルガ、正金銀行ニ行ツテ為替ヲ組ムヨリ上海香港「ばんく」ニ行ツテ為替ヲ組ム方ガ余程便利デアル、何トナレバ上海香港「ばんく」ニ一万円入レテ振出シ手形ヲ買入ルレバ、宇内各国何レニ於テモ取引ノ途ガ附イテ居ル、例ヘバ孟買デ綿ヲ買フ、直グ夫レニ三千円ヲ払フ、又埃及カラ綿ヲ買フ、夫レニモ払フ、仏蘭西カラ織物ヲ買ヒ、英吉利カラ器械ヲ買フト云フテモ、夫レモ一枚ノ手形ヲ持ツテ行ケバ如何ナル品物デモ日本ニ輸入スルコトガ出来ル、其一万円ノ金ヲ上海香港「ばんく」ニ払込ムニハ、横浜デ生糸ナラ生糸ヲ売込ンテ払込ムト云フヤウナコトニスルコトモ出来ル、我内地ニ於テ払込ンデ置ケバ、紐育デモ漢堡デモ、何処ニ行ツテモ金ハ取レル、海外ニ視察ニ行ク者ナドデモ、上海香港「ばんく」ノ手形ヲ持ツテ居レバ何処ニ行ツテモ入ルダケノ金ヲ取ルコトガ出来ル、然ルニ日本ノ正金銀行ノ有様ノソコマデ完備シテ居ラナイノハ、彼国ノ法律ノ制裁ノアルカラ出来ナイノカモ知レマセヌガ、或ハ今浜岡君ノ申サレタ如ク、貸倒レガアツタカラ今日ハ収縮的ノ方針ヲ採ツテ容易ニ貸出サヌノデアツテ、有金ガ無イカラ貸出サヌノデハナイ、独リ日本商人ノ信用ガ有ル無イニ依ルデハナク、随分信用ノアル人ニモ貸渋ルヤウナコトガアリハセンカト思フ、私ノヤウナ考ヘヲ起シタ者ハ立派ナ日本ノ商人ノ中ニモアル、ソコデ彼国ノ銀行ハ、既ニ宇内ヲ蛛ノ巣ノ如ク網羅シテ、一所ニ金ヲ入ルレバ其支店ノ有ル所ハ何レニ於テモ取レル途ヲ開イテ居ル、若シ内地雑居ノ暁ニ至ツタナラバ、上海香港「ばんく」ハ我富岡ナリ、名古屋ナリ、京都ナリ、神戸ナリ、其他ノ開港場ニ支店ヲ置イテ商売ヲ始メルダラウ、サウナツタナラバ恐クハ
 - 第23巻 p.335 -ページ画像 
正金銀行ヨリ外国銀行ニ行ツテ取組ヲスル方ガ宜イト云フコトニナラウト思フ、一方ハ日本銀行ヨリ助勢シツヽアルト云フテモ、外国銀行ノ如ク利子ヲ安クスルコトハ出来ナイ、然ラバ利子ノ安イ外国銀行ノ方ニ附クニ相違ナイカラ、戦後ノ経営ヲナス際ニ、又内地雑居ノコトモ目前ニ迫ツテ居ルカラ、日本銀行ハ十数年成立ツテ居リ既ニ経験モアルカラ、之ヲ一層拡張シテ、責メテハ外国ノ銀行ラシクシテ、内地雑居ノ後ハ彼国ノ銀行ノ便ニ依ラズ、我邦ノ銀行ノ利便ニ依リタイト思ヒマス、既ニ航海奨励法ニ依ツテ外国ニ出ス船モ出来、夫レニ積ム荷物モ出来、独リ外国為替ニ至ツテ外国ノ銀行ニ依ルト云フコトハ私ハ遺憾千万ト思フ、是等ヲ今日ヨリ経営スルト云フコトハ、是ハ私ハ国家ノ経営トシテモ、又諸君ノ御従事ナサルル実行《(業カ)》ノ発達ヲ計ルニ就テモ、必要デアラウト考ヘマス、ソコデ大阪商業会議所ナリ、東京商業会議所ナリカラ出タ意見ヲ見テモ、実ハ正金銀行ノ様ナ相当ナモノヲ立テマシテ、ソレゾレ補助ヲ与ヘルトカ、即チ海外銀行ニ十分ノ補助ヲ与ヘルヤウニシタナラバ宜イカト考ヘマス、此法ニ就テハ私ハ又根底ヨリ日本ノ銀行ト彼国ノ銀行ト同一ノ基礎ニ立タシメルト云フ暁ニ至ラナケレバ、如何程苦慮シテモ、今日正金銀行ノ頭取ノ園田君ニシテ若シ此所ニ列席セラレテ居ツタナラバ、我輩ノ斯ノ如キ疑団ヲ懐イテ居ル所ヲ或ハ十分御説明ナサルデアラウガ、不幸ニシテ其説明ヲ聞クコトガ出来マセヌ、終リニ私ガ本日最モ諸君ニ御考案ヲ請ヒタイト思フコトハ……其方法ヲ研究シタイト云フノハ、先ヅ一億六十万円ノ償金ノコトデアリマス、其取扱ニ就テハ、日本銀行デモ、正金銀行デモ、既ニ人ヲ遣ツテ、又大蔵大臣ハ主任ノ官吏ヲ派出シテ、夫々其方法ヲ研究シテ居ル際デモアルカラ、実ニ千歳一遇デアル、此償金ヲ利用シテ我邦ノ銀行ト欧米諸国ノ銀行ト結ビ付ケ、即チ「これすぽんでんす」ヲ組ミ互ニ支払計算スル方法ガアルナラバ、此時機ヲ失ハズ其方法ヲ講究シタイト思フ、我輩ハ銀行ノ業務ニハ不案内デアル、経済上ニ就テハ別ニ意見モナイガ、此処ニハ銀行ニ御経験ノアル諸君モ居ラツシヤルカラ、此償金ノアル間ニ、日本銀行ナリ正金銀行ナリガ欧米ノ銀行ト同様ナ組織ニスル方法ガナキヤ否ヤ、其方法ガアルナラバ、ソレニ就テハ斯ウスレバ宜イトカ云フコトヲ御示シ下サツタナラバ、政府ニ於テ又計画スルコトモ出来ル、其方法ハ先ヅ銀行其レ自身ガ其標準ヲ計画シ、官民相俟ツテ計画シテ、恰モ郵船会社ノ船ガ日本ノ国旗ヲ樹テヽ倫敦ノ港ヘ這入ルヤウニ、日本ノ銀行ト彼ノ国ノ銀行ト互ニ「これすぽんでんす」スル方法ガナイカ、アルナラバ其方法ヲ御尋ネシタイト云フ、是ハ農商務大臣ノ御諮問案ト私ハ信ズル、併ナガラ其方法ハドウシテ立テルカト云フコトノ御質問ガアレバ、我輩ハマダドウスルカト云フ、実ハ成案ハナイ、然ラバ斯ウシタナラバ宜カラウト云フコトハ、償金ヲ倫敦ニ預ケル時分カラ考ヲ懐イテ居ルノミナラズ、日本銀行ナリ、正金銀行ナリ、大蔵省ナリカラ主任ノ者ガ三人揃ツテ倫敦ニ参ツテ居ルコトデアルカラ、ソレデ此償金ヲ利用スルト云フコトハ、銀行ノ営業トシテモ、又国家ノ金融機関ニ失フベカラザルコトハ、右ノ三君モ倫敦ニ於テ講究
 - 第23巻 p.336 -ページ画像 
シテ居ルダラウト思ヒマスガ、此高等会議ニ於テモ其方法ヲ研究シテ送ツタナラバ、大ニ三人ノ参考ニナラウト思フ、又彼等ノ意見アル所ヲモ聞キテ内外相応ジ、相俟ツテ此事ヲ研究スルノハ将来海外貿易ヲ拡張スルニ付イテ必要デアラウト思フ、故ニ私ハ此案ハ最モ今度御諮問ニナツタ中デ、至難至重ノ問題デアル、至難至重ナルト同時ニ又目下急要ナモノデアルト思ヒマス、故ニ其方法等ハ考案ヲ設ケテハ審議ニナルノガ最モ必要デアラウト思フカラ、若シ又諸君ノ御意見ガアレバ御示アラムコトヲ希望シマス、私ガ金融機関ニ就テ多少考ノアル所ヲ陳ベテ、諸君ノ御参考ニ供シ、併セテ委員ヲ御設ケニナルナラバ、其方法ガ実施サレルヤウナ十分ナル御調査ガアツテ、時日ハ急イデ急ガヌモノト思ヒマスルカラ、ドウゾ中途半パノコトニナラヌヤウニ、海外ノ銀行ト同一ノ地位ヲ保タシメルダケノ御意見ヲ御示ニナラムコトヲ願ヒマス
○七番(益田孝君) 私ハ今金子君ノ御演説ガゴザイマシタシ、実ハ海外貿易ヲ取扱ツテ居リマシテ即チ直接ノ関係ヲ有ツテ居リマス、始終正金銀行ノ今日ノ金融機関ニ対シテ、借人ノ一人デゴザイマスカラ、殊更其実際ニ当ツテ居リマスカラ、一応自分ノ意存ヲ申陳ベタウゴザイマス、正金銀行ノ即チ金融機関ニ対シテハ、海外貿易ニ就テ種々ナルコトヲ正金銀行ニ一番ニ請求致シマシタ一人デゴザイマス、随分此金融ノ機関、運輸ノ機関、海上保険ノ機関、サウ云フ機関ノ中デ一番重モナル金融機関デアル、即チ法律ヲ異ニシテ居ル外国ノ銀行ノ下ニ立ツ間ハ、所詮立派ナ海外貿易ハ出来マイト諦メツツ、先年以来涙ヲ呑ンデ其機関ヲ希望シテ居ツタノデゴザイマス、近年ニ至リマシテ幸ヒ此正金銀行ニ対シマシテハ、日本銀行ヨリ数多ノ保護モ与ヘ、又正金銀行モ奮発サレマシテ余程働キガ付キ、先年トハ違ツテ参リマシタ、固ヨリ私ハ自分ノ営業トシテハ、今日マデモ恐ロシク小言ヲ申シ、今後トテモ倍々不足ヲ正金銀行ニ訴ヘル一人デアリマスガ、今日此処ニ立チマシテ、扨テ此案ヲ以テ必要ヲ御認メニナリマシタノガ、適当デアルヤラ、又適当デアツタナラバ其方法ハドウシタラ宜カラウカト云フニ、仮リニ之ヲ立派ナ議員《(案カ)》トシテ考ヘテ見マスルト、迂濶ニハ申セマセヌコトト自分デ深ク信ジマスルシ、固ヨリ外国ノ銀行ト申シタ所ガ、英吉利ハアレ丈東洋ニ貿易ヲ持ツテ居リマス、故ニ三ツモ四ツモ銀行ガゴザイマス、ケレドモ矢張本統ノ働キヲシ、自身ノ花主モアリ、数十年其花主ヲ拵ヘテサウシテ数十箇所ニ、自分ノ地歩ヲ固メタル立派ナ銀行デナケレバ、ドウシテモ本統ノ貿易上ニハ役ニハ立タヌ、デ香港上海「ばんく」……アノ銀行一ツアルノミ、他ノ銀行モ出テハ居リマスガ、東洋ノ貿易上ヱライ働キヲ為シテハ居ラヌ位ノコトデアリマスカラ、矢張已ムヲ得ズ貿易ヲ盛ンナラシムル事ヲ最モ努ムル所ノ香港上海「ばんく」ニ外国人ハ行カザルヲ得マセヌ、ソコデ銀行ガ唯幾ツ出来タ所ガ、更ニ此金融機関ニ効用ヲ為スモノデハナイト云フコトヲ申シマスサウデアル、ソコデ今金子君ノ仰セラレタル千歳一遇ノ此償金ヲ取寄セルニ就テ、此処デ業務ヲ伸バサナケレバナラヌト云フノハ現ニ其業務ハ仰セラルヽ通リニ伸ビテ居リマスル、又五・六年
 - 第23巻 p.337 -ページ画像 
前マデハ、実ニ小言ガ多クアツテ、是デハ到底イケヌカラドウカシナケレバナラヌ、「ものぽりー」デハイカヌ、モウ一ツモ立テナケレバナラヌト小言ノ数ヲ並ベタノデアリマシタガ、此二・三年以来正金銀行《コノカタ》ハズツト進ンデ来テ居リマス、何時ニナツタナラバ我々ノ満足ヲ与ヘテ呉レルカト言ヘバ、如何ニ働カウト思ウテモソレ程ノ花主ガゴザイマセヌ、香港上海「ばんく」ノ如キハ、其同胞ノ人達ガ沢山商売人ニナツテ出テ居ルカラ、ソレダケノ花主ハアルケレドモマルデ花主トスル所ハ日本人ニアラズシテ、外国人デアル、外国人ヲ花主トシテ自分ノ営業ヲ盛ニシヤウトスルニハ、余程ノ経験ヲ有シ、又ソレニ対スル資本モイル、然レバ一支店ヲ開クト言ツテモ容易デナイ、正金銀行ニ向ツテ小言ヲ言フ時分ニハ、此商業会議所ノ云フ所ヨリ尚ホ数倍モ言フコトガアルケレドモ、又向ウノ身ニ取ツテ見ルト能ク考ヘナケレバナラヌ、ソコデ着々歩ヲ進メテ或ハ香港或ハ新嘉坡ノヤウナ必要ナ所ヘハ支店ヲ開クヤウニナリマセウ、是等ハ如何ヤウニ責メテモ、矢張リ少々花主ガ殖エ需要ガ増スト云フコトデナケレバ、此機関ヲ設ケテモ、中々一朝一夕ニ出来ベキ訳ノモノデナイカラシテ、是ハ容易ニ責メル訳ニモイカヌ、然ラバ是カラ先キハドウスレバ宜イカト言ヒマスレバ、前申上ゲル通リ、幾ツ出来タカラト言ツテモ、ソレ程ノ度合ニ達セヌ以上ハ、役ニ立タヌト言フ以上ハ、必ズ正金銀行ニ力ヲ副ヘテ、サウシテ働カセル、之ヲ働キ得ルヤウニスルニハ自ラ日本銀行デ助クル所ガアレバ、ソレニ対シテ制裁力ガアルデアリマセウ、然ラバ役員ガ悪ルケレバ御取換ニナルナリ、又仕事ガ足ラナケレバ勧メラレルコトモ見ルデアロウ、詰リ日本銀行ヨリ正金銀行ガ、ソレヲ承ツテ仕事ヲシテ居ルノデアルカラ、即チ制裁ハ十分付ケルコトガ出来ル、出来ル以上ハ一方ノ小言ヲ言フ方カラ……「ものぽりー」ト言フ方ハ宜イガ、即チ其働キト云フモノハ、矢張正金銀行ヲシテ上海香港「ばんく」ニ負ケルコトハセヌ方ガ第一ノ考案ダト思ヒマス、固ヨリ牛荘ニモナイ天津ニモナイト随分小言ヲ言ツテ、追々拡張サセルコトニ頭取自ラ倫敦ニ出テ種々苦心シテ居ルニ相違ナイ、其働キノ上ニハ著シク二三年以来現ハレテ居ツテ、償金ヲ取寄セルコト抔ニ就テハ殆ド今日香港上海「ばんく」ハ顔色ナシデ、全ク為替ト云フモノハ正金銀行デ取扱ツテ居ル、或ハ償金ヲ取寄セル時機ガ遅イト早イ丈デアツテソレガ後ニ無クナルト云フヤウナコトニナツテハ、由々シキ大事デアル、ソコデ日本銀行ガ後援ニナルデアリマセウ、其後援ヲチヤント押ヘテ居ルガ、正金銀行ガ増資モシタノデアルカラシテ、先ヅソレ丈ノ精神ハ絶ヘズ進ムコトデアラウト心窃ニ(口デハ小言ヲ言フケレドモ)喜ビ居ル所デゴザイマス、固ヨリ借人ト貸人トノ間デアルカラ、小言ハ百モ出マセウ、ケレドモ迂濶ニ小言ヲ利イテ自ラ首ヲ縊ルヤウナ拙ナコトヲスルコトハイカヌ、デ私ハ委員ヲ御選ニナサルノハ勿論金融機関ヲ拡張スルニ付テ必要デアルト認メマスガ、其方法ハ一方ニハ制裁ヲ付ケ一方ニハ奨励ヲスルト云フ外ニナイト考ヘルニ付キ、玆ニ愚案ヲ申上ゲマス
○二十一番(添田寿一君) 此正金銀行ノコトハ、私ノ直接ニ責任ニ関
 - 第23巻 p.338 -ページ画像 
ルコトデゴザイマスカラ、是マデ正金銀行ニ対シテ政府ガ加ヘタル処為ニ付キ、大要ヲ申上ゲタ方ガ便宜ダラウト思ヒマス、此正金銀行ノコトニ付テ長々御話モゴザイマシタ、私ヨリ他ニ御承知ノ御方モゴザイマスカラ私ハ略シマスガ、正金銀行ハ隠然政府ガ関係シテ居ツテ、正面ハ日本銀行ト正金銀行トノ関係ニ過ギナイケレドモ、旧トノ歴史ガゴザイマスカラ、則チ此銀行ニ向ツテ政府ハ出来ルダケノ監督ハ加ヘテ居ル積リデゴザイマス、丁度今七番ノ陳ベラレマシタ如ク、政府ハ正金銀行ニ向ツテ監督ヲ加ヘテ居リマス、監督ノ方針ハ総テノ拡張ト云フコトニ在ル、何デモ出来ルダケノ事業ヲ拡ゲロト云フ方針ヲ執ツテ居リマスノデ、ソレガ或ハ意ノ如ク届カヌ場合モアリマセウガ、随分支店抔ヲ設ケル場合ニ於キマシテハ、或ル所デハソコニ日本ノ商人ガ一人モゴザイマセヌト云フコトデ已ムヲ得ヌコトデアリマスガ、御承知ノ通リニ明治二十七年以後カラ取引先ヲ増シマシタコトハ十七箇処デゴザイマシテ、大概日本ト商業ノ関係アル所ニハ取引ノ途ガ付イテ居リマスノデ、旁々取引ノ場所ハ殖シマス方針ヲ執ツテ居リマス、ソレカラ資本ノ如キモ御承知ノ通リ、既ニ本年ハ余程増額ヲ致シマシテ、先ヅ今日ノ伸張ニ於テ大概是位ナラバト云フ所マデ増加致シテアル訳デアリマス、総テ出来ルダケ拡張増進ノ方針ヲ執ツテ居リマス、此側カラモ御不便トゴザイマスナラバ、唯ソレハ事実意ノ如ク運バヌト云フ訳デ、別段御調査ノ必要ハアルマイト思ヒマス、政府ノ方針ハ拡張ト云フコトニアルノデアリマス、ソレデ金子議員ノ御注文ハ申スマデモナク、今日ヤツテ居リマスノデ、償金ヲ利用スル抔ト云フコトハ疾カラヤツテ居ルノデアリマス、実ニ此拡張ニ就キマシテハ独リ日本商人ノ取引上ノミナラズ、矢張向ウノ銀行ノ信用ニ在ルノデアリマス、唯正金銀行デ困ルト言ツテモ、ソレハ商人ノ言フコトニ信用ヲ置イテ初メテ取引ガ出来ルト云フコトハ申スマデモゴザイマセヌ、然ルニ此日清戦争ノ御蔭デゴザイマスカ、此償金ノ御蔭デゴザイマスカ、余程正金銀行ノ信用ト云フモノガ増シマシテ、諸方カラ取引ヲ申出ルト云フコトハ実ニ謝スベキコトデアリマス、此償金ハ固ヨリ十分利用致シマシテ、予テ金子議員ノ言ハレル通リ、種々苦心シテ居リマシテ、先ヅ正金銀行ニ対スル方針ハ別段此上御注文ヲ受ケナクテモ、唯此先キハ同一ノ方針ヲ以テヤル積リデ私ハ居ルノデアリマス、然ルニ此処ニ一ツ正金銀行ニ向ツテ強ク御攻撃ノ種類ノ変ハツテ居ルノハ、ドウモ威張ツテ居ルトカ、余リ面倒嗅イトカ、ドウモ己レニ信用ヲ置カヌトカ云フコトノ御攻撃デゴザイマスガ、是ハ政府ト雖モドウモ言ヒヤウガナイ、不確実ト認メル者デモ信用ヲ与ヘナイノハ悪ルイトモ言ヘナイ、不確実ト認メルモノデモ構ハヌカラ貸付ケロト云フコトハ、如何ニ政府ガ監督権ヲ有ツテ居リマシテモ出来マセヌカラ、此側ノ御注文ニハドウモ応ズルコトハ出来マセヌ、此困難ヲ避ケマスルノニハ、ドウカ信用ノアル御方ガ続々外国貿易ニ従事ナサルヤウニシタイト思ヒマス、ソレハ正金銀行モ商売デゴザイマスカラ、確カナ御花主サマデゴザイマスナラバ、無論喜ンデ貸スニ違ヒナイ、此点ニ付テ言ヘバ寧ロ正金銀行ヨリ貿易ニ従事セラル
 - 第23巻 p.339 -ページ画像 
ル御方ノ側ニ望ムノデアリマス、是ハ人物養成トカ人物改良トカ云フコトニ関シマシテ、之ヲ急ニ御調査ニナツタトテモ一朝一夕ニ分ルコトデハアリマスマイカラ、詰リ帰スル所ハ拡張ノ方針ト云フコトニナルヤウデゴザイマス、中ニモ今一ツ立テタラ宜カラウト云フ御説モアルヤウデアリマスケレドモ、今一ツ立テタ所ガ、所謂貿易上カラ不完全ト認メラルヽ正金銀行ガ又一ツ立ツヤウナモノデアツテ、詰リ不確実ナル人ノ為ニ、モウ一ツ立テヤウカト云フ結果ニナリハシマイカト思ヒマス、又取組高ニ就テ言フトキニナレバ、是ハ聞ク所ニ拠レバ今日色々世間デ申シマスガ、如何デゴザイマセウカ少シ私ハ軽々シク言フベキコトデハナカラウト思フノデ、兎ニ角是ハ信用ニ基イタ話デゴザイマスカラ、信用ハドウモ法律トカ政府ノ保証トカ云フモノデ無闇ニイケルモノデナカラウト思フ、好ンバ或ル方法ニ因ツテ銀行ヲ立テタ所ガ、此銀行ガ外国ニ信用ガナケレバ決シテ連絡ガ付カナイノデアリマス、此処ハ余程考ヘモノデゴザイマシテ、詰リ皆サマノ御考ハ正金銀行ノ仕事ヲ、モウ少シ拡張シナケレバナラヌト云フコトニナリマセウガ、既ニ其方針デヤリ来ツテ居ルノデアリマスカラ、別段御調査ノ必要ハアルマイカト思ヒマス今一ツ不信任ト認ムル者ニ貸セイト云フコトハ、是モ一ツ考モノデアラウト思フ、旁々私ハ特別委員ヲ設ケテ御調査ノ必要ハナカラウト思ヒマス
○十五番(浜岡光哲君) 唯今ノ七番ノ御説ハ能ク穿ツタ御話デアツテ事実ノヤウニ考ヘマス、ソレデ単ニ委員ヲ置クト云フコトハ、余程注意シテ慎重ニ調ヲシナケレバナラヌト云フコトハ、尚ホ考ヘマスルト、政府ノ当局者添田寿一サンモ段々政府ノ御方針ヲ陳ベラレマシテ、能ク分リマシタ、尚又日本銀行ナリ、正金銀行ノ頭取モ海外ニ出張シテ居ラルヽ以上ハ、尚ホ十分取調ベテ、斯ノ如キ方法ヲ以テ、斯ノ如クヤツタラ宜カラウト云フ、十分ノ考ヲ有ツテ帰ヘラルルダラウト思ヒマスカラ、此処デ尚ホ取調委員ガ調ベラルヽニ就テハ、能ク海外ノコトヲ調ベタ人ニ聞糺シ、斯ノ如キ方針デ斯ウシテヤルト云フコトヲ承ツタ其上デ、能ク研究スルノガ必要デアラウト思ヒマスカラ、更ニ前説ヲ取消シマシテ、此案丈ハ暫ク決議ヲスルトカ取調ベルトカ云フコトハ延バサレタイト思フノデアリマス、折角ノ御諮問デアリマスケレドモ、御諮問ニ対シテ討論スルコトハ暫ク延バシタイト云フコトヲ建議致シマス
○十四番(金子堅太郎君) 私ハ添田君ニ伺ヒマスガ、正金銀行ハ宇内貿易ノ盛ナル場所ニハ払出手形ヲ発シテ日本商人ニ便宜ヲ与ヘルコトハ、欧米ノ銀行ト同様ニナツテ居ルノデゴザリマスカ
○二十一番(添田寿一君) 外国ノ法律デ禁ゼザル範囲内ニ於テハ、御尋ネノ通リ出来ルコトニナツテ居リマス、但シ米国ト云フ所ハ各州ノ法律ニ依リマシテ、其国ノ国立銀行ニアラザレバ銀行ノ事業ヲ営ムコトヲ得ズト云フ法律ノアル為メニ、已ムヲ得ズ銀行トシテハ働クコトガ出来ナイノデ、或一私人即チ行員一箇ノ名義ヲ以テ出来ルダケノ便宜ハ附ケテ居リマスケレドモ、法律ノ許サナイ所デスカラ何シロ十分ノ働キハ米国デハ少シク出来ナイノデアリマス
 - 第23巻 p.340 -ページ画像 
○十四番(金子堅太郎君) モウ一ツ伺ヒマスガ、倫敦ノ有名ナル「ろすちやいるど」ノ銀行「まーちやんと・ゑきすちゑんぢ・ばんく」ナドハ、亜米利加デ、現ニ取引ヲヤツテ居ル、欧洲各国ハ皆亜米利加ニ於テ其法律ノアルニモ拘ハラズ、他ノ銀行ト同様ノ働キヲナシテ居ル、独リ日本ノ銀行ハ一箇人ノ資格デヤツテ居ルト云ハルヽガ私ノ聞ク所デハホンノ名義ダケデアルト云フコトデアル、倫敦ニハ正金銀行ノ「これすぽんでんす」ガアルガ、正金銀行ノ振出手形ノミデハ行カヌ、至ル所ノ国ノ名ト滞在ノ日数トヲ勘定シテ、其日ノ相場デ各国ノ金ヲ買ツテ、夫レ夫レノ銀行ニ払込ンデ、其銀行デ手形ヲ貰フト云フコトヲ聞イテ居ル、私ハ戦後今日ノ取扱ハイザ知ラズ、其以前ハ外国ノ銀行同様ノ働キハ出来ナカツタト思フ、夫レハ信用ノ如何ニ依ルコトデアル、故ニ戦勝ノ結果トシテ償金ヲ利用シテ十分業務ヲ拡張スル方針デアルト云フコトハ、吾々モ能ク知ツテ居ル、国民モ知ツテ居ルガ、夫レヲドウスレバ其方針ガ立ツカ、僅カ一億六千万円ノ償金ガ存シテ居ル間ハ宜イガ、夫レガ無クナレバ正金銀行モ顔色無シト云フヤウニナリハセヌカ、又一変シテ我邦ノ銀行社会ハ秋色惨憺タル有様ニ陥リハセヌカト云フコトヲ憂ヒマス其辺ハ大蔵省デハドウ云フ機関ヲ備ヘ、何処マデハ外国貿易ヲ拡張スルカト云フ所マデ、詳ハシク取調ブルノ目的ヲ以テ当該官吏ヲ御出シニナリマシタカ、唯々償金ガアルカラ之ヲ利用シテ一方ニ於テハ利益ヲ進メ、一方ニ於テ之ヲ監督スルト云ヘバ、一言ニシテ要領ヲ得テ、チヨツト聞クト誰レモ夫レニ反対ハナイガ、拡張スルト云フ方法ハ欧羅巴ノ銀行ト同様ノ方法ニスルト云フノデアリマスガ、前途ノ方法ハ償金ノ有ル間ニ附ケテ貰ヒタイ、其方法ガアレバ問フ必要ハナイガ、其方法ハ今迄伺ヒマシタ所デハ分ラナイ、私ハ其方法ヲ聞キタイノデ、益田君ナリ、添田君ナリ、御意見ガアレバドウ云フ方法デヤルト云フコトヲ聴キタイト思ヒマス
○七番(益田孝君) 私ハ申スト、今ノ正金銀行ハ攻撃者デモ保護者デモナイ、正金銀行ノコトヲ申立テニ来テ居ルノデハナイガ、私ガ知ツテ居ルコトダケヲ申シマス、正金銀行ハ東洋ノ貿易ヲ掌ルガ主デアル、即チ香港上海銀行ト同ジデアツテ、欧羅巴ノ他ノ銀行デ欧羅巴ノ内々ノ利ヲ図ル銀行トハ違フカラ、欧羅巴ノ内地ナリ、宇内ヲ廻ツテ行クニハ、正金銀行ノ手形デハ不融通カ知ラヌガ、苛モ上海香港銀行ガスルダケノ事ハシテ貰ヒタイ、上海香港銀行ハ斯ウ云フコトモスルガ、ドウデアルカト云フヤウナ攻撃モアリマシタ、夫レガ此節ハ夫レニ応ズルト云フコトニナツテ、一昨年・昨年アタリカラ著シク発達シマシタ、夫レハ私共ガ見ル所デモ、香港ニ於テモ又日本ニ於テモ先ヅ輸入輸出商人ヲ後ロニ立テヽ、正金銀行ニ向ツテ受ケ得ルダケノ便宜、即チ香港上海「ばんく」ガ与フルダケノ便宜ハ、正金銀行モ確カニ与ヘルヤウニナリマシタ
○二十一番(添田寿一君) 折角ノ御尋ネデゴザリマスカラ極ク簡単ニ附加ヘ置キマス、今七番カラ正金銀行ノ御答ハ致シテ居ルト思ヒマスガ、償金利用ノコトニ就キマシテハ、即チ幾分カ平常ヨリ為替買入レト云フコトヲ倫敦ニ於テ増額致シテ居リマスル、是レハ償金ノ
 - 第23巻 p.341 -ページ画像 
コトニ関係スルコトデ余リ詳ハシクハ申シマセヌガ、今七番ノ述ベラレマシタ働キヲ、尚ホ一層拡張スル積リデゴザリマス、然ルニ其償金ノ有ル間ハ宜シイ、無クナツタラドウデアル、収縮シハセヌカト云フ、御懸念ハ至極御尤デゴザリマス、夫レハ其為替資金ヲ利用スル其前ニ、既ニ当局者デハ考案ヲ致シテ居ルコトデゴザリマシテ御承知ノ如ク本年ノ三月頃ニ於キマシテ資本ノ増加ト云フコトモ、幾分夫レニ関係ヲ持ツテ居リマスルノデ、今一ツハ極ク是レハ秘密ニ属シマスルコトデ、此席デハ申上ゲ兼ネマスルガ、先ヅ或資金ノ働キニ依ツテ成ルベク永続セシムルヤウナコトニシタイト云フ考案中デゴザリマス、是レダケヲ申述ベ置キマス
○一番(大倉喜八郎君) 金融機関ノコトニ就キマシテ先刻ヨリ御論モゴザリマシタシ、又正金銀行ノコトニ就キマシテモ七番ヨリ大層御弁明モゴザリマシタガ、一体正金銀行ガ是レマデ日本ノ海外貿易ニ便利ヲ与ヘタルヤ否ヤト云フコトハ、種々公衆モ論ジテ居ル所デゴザリマシテ、東京ノ商業会議所ナリ、大坂商業会議所ナリ、皆此実業者ハ困ルト云フコトヲ言ツテ居リマス、吾々モ永年取引ヲシテ居リマスルガ、海外貿易ノコトニ就イテ色々小言ヲ申シマシタ、夫レハナゼカト云フト、海外ノ西洋人ノ「ばんく」ノ与ヘマスルダケノ働キガドウシテモ出来マセヌ、其為メニ日本ノ商人トシテ嘆息シタノデゴザリマス、併シ是レハ先刻益田君カラ、三年以前カラト云フコトデゴザリマシタガ、近年ニ至リマシテ余程直リマシテ、一体其人モ得マシタデアラウ、又内地ノ準備モ幾分整ヒマシタノデ、十分整理モ附イテ、先ヅ働キモ附イテ参リマシタガ、日本ノ金融機関ハ正金銀行一ツアレバ足レリト云フコトハ保証ハ出来マセヌ、他ニ力アル銀行ノ出来マスノハ宜カラウト思ヒマス、或ハ又正金銀行ニ対シ、モウ一層実際ノ機関ヲ備ヘテ働ラカスルト云フノモ、海外ノコトハ海上保険ト共ニ此金融機関ハ交通シテ行カネバナリマセヌ、ナゼナラバ海外ニ為替ヲ附ケマスル、即チ荷為替ニハ海上保険ヲ附ケル、是レハ大抵銀行ノ差図ニ依ツテ附ケマスルノデ、私ハドノ保険会社ヲ一番信用スルト云フト、其保険会社ノ保険ヲ附ケルト云フノガ普通デアツテ、金融機関ノ働キヲ滑カニ致シマスルニハ、海外ニ航海致シマスル船舶ニ保険ヲ附ケルノハ、日本ノ保険会社ハ確カニ附ケ得ラレヌ、其保険会社ハ欧羅巴ノ「ばんく」モ信用スル、日本ノ正金銀行モ信用スルト云フヤウニ保険業ガ発達シナイト云フト、独リ金融機関バカリ発達シテモ行キマセヌト思ヒマス、故ニ、第二案ハ暫ク議決スルコトヲ延バシマシテ、第六ノ海上保険ノ諮問案ヲ議シマスル時ニ聯帯シテ、私ハ何カ方法ヲ見附ケタイト思ヒマス、他ニモウ一ツ銀行ヲ起シテ保護ヲ与ユルヨリ、寧ロ海上保険業ニ保護ヲ与ヘ、今日ノ正金銀行ニ鞭ヲ打ツテ働カスルトカ、何トカ宜イ方法ハアリマスマイカ、唯今即答ハ出来マセヌカラ、第二ト第六トノ諮問案ハ聯帯シテ議スルヤウニシテ、暫ク此議決ハ御延ベヲ願ヒマス
○議長(伯爵佐野常民君) 此第二諮問案ハ追々御討論モゴザリマスル通リ、実ハ海外貿易ニ就キマシテハ、最モ緊要ノコトデアラウト思
 - 第23巻 p.342 -ページ画像 
ヒマスルガ、今三通リバカリ説ガ出テ居リマスル、夫レニ就イテ決ヲ採リマスデゴザリマセウガ、尚ホ其前ニ御意見ノゴザリマスル御方ハ、成ルベク御述ベニナルコトヲ望ミマス
○十四番(金子堅太郎君) 私ハ五番ノ委員説ニ賛成致シマシタケレドモ、今大倉君ノ御説ガ出マシテ後廻ハシニシタ方ガ宜カラウト思ヒマスカラ、前ノ賛成ヲ取消シマシテ一番説ニ賛成致シマス
○十一番(渋沢栄一君) 私モ賛成致シマス
○二十番(広瀬宰平君) チヨツト一言致シマス、先刻委員ヲ立テルト云フ御説ガ出マシテ、私ハ取急イデ居リマシタカラ委員ニ附スルモ必要デアラウト思ヒマシテ賛成シテ居リマシタガ、一番カラ後廻ハシニシテ第六ト聯帯シテ議スルト云フ説ハ至極尤ト思ヒマスカラ私モ前ノ賛成ヲ取消シマシテ一番説ヲ賛成致シマス
○十三番(近藤廉平君) 私モ一番説ヲ賛成致シマス
○議長(伯爵佐野常民君) 唯今諸君御聴キニナル通リ、第二ノ諮問案ハ、第六ノ諮問案ニ聯帯シテ議決シタイト云フノニ、追々御賛成モゴザリマスルカラ、決ヲ採リマス、第二ハ第六ノ諮問案ト一緒ニ議シテ、今議決スルコトハ見合ハスト云フ、一番ノ説ニ御同意ノ御方ハ起立ヲ願ヒマス
  起立者  多数
 多数デゴザリマス、夫レデ第六諮問案ノ所デ議決スルコトニ致シマセウ、今日ハ是レデ散会致シマス
午後四時十五分退散


第一回農商工高等会議議事速記録 第一九七―二〇四頁 明治三〇年四月刊(DK230037k-0002)
第23巻 p.342-347 ページ画像

第一回農商工高等会議議事速記録  第一九七―二〇四頁 明治三〇年四月刊
明治二十九年十月二十一日(水曜日)午前九時四十分開議
          出席者
            議長  伯爵 佐野常民君
            一番     大倉喜八郎君
            二番     藤田四郎君
            三番     藤田伝三郎君
            四番  男爵 鈴木大亮君
            五番     原善三郎君
            七番     益田孝君
            八番     安藤太郎君
            九番     山本亀太郎君
            十番     中上川彦二郎君
            十一番    渋沢栄一君
            十四番    金子堅太郎君
            十五番    浜岡光哲君
            十六番    益田克徳君
            十七番    藤井三郎君
            十八番    森村市左衛門君
            十九番    土居通夫君
            二十番    広瀬宰平君
 - 第23巻 p.343 -ページ画像 
            二十一番   添田寿一君
          欠席者
            十三番    近藤廉平君
○中略
○議長(伯爵佐野常民君) ソレデハ第六ノ諮問案ニ移リマス、是ハ第二ト聯帯シテ議スルコトニナツテ居リマス、朗読致サセマス
   〔織田幹事朗読〕
  第六諮問案
    海上保険ノ件
外国貿易ヲ拡張スルニ当リ、航海・保険及金融ノ三機関ハ密接相離ルベカラサル関係ヲ有シ、又互ニ相待チテ其効用ヲ全フスルモノナリ、然ルニ本邦ノ海上保険会社ハ重ニ日本近海ニ於ケル貨物船舶ノ保険ヲ取扱フニ止マリ、海外ニ往復スル船舶及輸出入貨物ノ保険ニ至リテハ主トシテ外国保険会社ニ依頼スルヲ常トシ、将来ニ於ケル航路ノ拡張及金融機関ノ発達ニ伴フ能ハサルノ感アリ、随テ外国貿易上ニ及ホスノ不利益鮮少ナラサルヲ認ム、依テ玆ニ海外ニ対スル本邦海上保険業ヲ発達拡張セシムルノ方法ヲ諮問ス

○一番(大倉喜八郎君) 此御諮問案ニ付キマシテハ、前回第二案ト聯帯シテ議スルコトニ極ツテ居リマス、是ガ第二案ト甚シイ関係ガゴザイマスルト申スコトハ、今回御諮問案中最モ緊要ノ価値アルコトト存ジマスルデ、忌憚セズ聊カ実況ヲ申述ベタイト私ハ考ヘマスルデ、御許シヲ願ヒタイト存ジマス、此海外金融ノ機関ト申シマスルモノハ、今日日本デハ横浜正金銀行ガ唯々一行アルノミデゴザイマス、此正金銀行ノコトニ付キマシテハ、前回ニ七番議員ナドノ此論説モゴザイマシテ承知致シテ居リマストコロデ、此実況ハドウカト申シマスルト、随分日本唯一ノ銀行デゴザイマスルカラ、華主ニ対シテハ一体ニ外国人ノ数年慣レマシタ信用アル銀行程ノ働キハ、遺憾ナガラ出来ナカツタト云フコトハ明カニ申サレマスノデゴザイマス、他ニ銀行ガゴザイマセヌカラ、謂ハヾ為替ヲ頼ンデモ、金融ノ便ヲ申込ミマシテモ、嫌ヤナラ御ヨシナサイト云フヤウナ有様ガ実際アツタノデゴザイマス、ソレガ為ニ東京商業会議所、或ハ大坂商業会議所等ヨリ皆斯ノ如キ意見書ガ出テ居リマシテ、一ケ所ノ銀行デハ不便デアルト云フコトハ、既ニ此附属案ニモ出テ居ル通リ明カニ分ツテ居リマス、トコロガ此銀行ガ昨今大層敏活ノ働キヲ務メ掛ケテ来マシタノデゴザイマス、三年前ヨリハ大変ニ善クナツタト云フコトハ、是モ明カニ言ヒ得ラレマスノデ、ソレハ何ウ云フ訳デサウナツタラウカト存ジマスノニ、私ノ考ヘマス所デハ日清戦争以来清国ノ償金ヲ日本政府ガ受ケ込ンデ、此金銀貨ノ運輸ヲ正金銀行ガ申付ツテ居リマシテ、実際ニ多分ノ金ノ運輸ヲ致シマスカラ、信用ガ一時ニ発達致シマシタ、ソレニ又日本銀行ト云フ後楯ガゴザイマスカラ、大ニ仕事ガ円満ニ滑カニナルヤウニナツテ、今日ニ於キマシテハ三ケ年前マデノ不都合ハ見マセヌノデゴザイマス、左リナガラ此償金ノ運搬其他ノ為ニ海外ノ信用モ高マリ、働キモ滑カニナツ
 - 第23巻 p.344 -ページ画像 
タト申シマスルモノヽ、償金ハ何時マデモ「ばんく・おふ・いんぐらんど」ニ預ケテ置クノデハナイ、何レ五ケ年カ六ケ年ノ内ニハ注文品ガアリマシテ、先ヅ軍艦ナドノ注文品ニ対シテ、払込ンデ仕舞フト云フコトニナリマシタナラバ、或ハ三年前ト同様ノ正金銀行ニナツテ、日本ノ海外商業者ニ不便ヲ与ヘハシナイカト云フ憂ガゴザイマス、ソレハ実際ドウ行キマセウカ知レマセヌガ、又一方カラ考ヘマスト右ノ憂ノアル代リニ、今日ノ如ク信用ガ嵩ンデ来テ、サウウシテ行員モ追々事務ニ熟練シテ来マスルシ、外国人モ大ニ信用ヲ高メテ来テ、金銀貨ノ如キハ正金銀行ガ大抵価ノ権利ヲ持ツテ居リマシテ、今日ハ「上海香港ばんく」、「しやーつる・ばんく」モ正金銀行ノ鼻息ヲ窺フ有様デゴザイマス、此機ニ応ジテ正金銀行ガ尚ホ慎ミヲ加ヘ、銀行員ガ何レモ外国商売ニ敏腕ヲ揮ヒマシタナラバ、今一ツ別ニ正金銀行ト同ジヤウナ物ヲ建テヽ競争ヲサセナクトモ或ハ宜クハナイカト云フ考ヲ、本員共ハ持ツテ居ルノデゴザイマス、ソコデ仮リニ正金銀行ガ是マデヨリハ一層モ二層モ奮発ヲ致シマシテ、外国銀行ト同ジヤウニ敏活ナル振舞ガ出来ルト云フトキニハ、何ガ入用カト云フニ、丁度唯今御諮問ニナツテ居ル海上保険会社デゴザイマス、是ハ最モ必要デゴザイマスノデ、銀行ニ為替ヲ組ミマシテモ、正金銀行ハ幾ラカ日本ニゴザイマスル海上保険会社ヲ信ジテ為替ヲ組ミマセウケレドモ、外国ノ「ばんく」ハ、今日ゴザイマスル海上保険会社デハ、甚ダ申シ悪ウゴザイマスガ、重キヲ置キマセヌノデゴザイマス、他ノ「ばんく」、他ノ保険会社ノ保険ヲ附ケテ下サルナラバ為替ヲ引受ケマセウト云フノガ普通デゴザイマス、ソレデ荷物ヲ運送致シマスニハ海上保険会社ノ信用如何、ソレニ付イテ「ばんく」ノ働キト云フモノガ極密著致シテ居リマスノデゴザイマス、今日海上保険会社ハ日本ニ幾ツアルカト申シマスルト、本統ニ海外貿易ニ関係アル為替ノ保険ヲ附ケマスノハ、丁度益田君ノ関係シテゴザル海上保険会社ガタツタ一ツホカ日本ニハゴザイマセヌ後ハ幾ラゴザイマセウガ、海陸保険ダトカ種々近頃保険会社ガ出来マシテゴザイマスケレドモ、□ハ余リ歯牙ニ懸ケマセヌ、サウシテ一ツアル海上保険会社ハドレ程ノ信用ヲ持ツテ居ルカト申シマスト私ガ聞キマシタ所デハ確カ百二十万円ノ資本デゴザイマス、ソレモ半分払込ニナツテ居ルト云フヤウナコトデ、半分ノ金ハ六十万円、外国人ノ眼カラ見ルト六万ぽんど払込ンダ保険会社ダト云フノデ、誠ニすもーる会社デゴザイマセウ、我々ハ甚ダ遺憾ニ存ジマスノデゴザイマス、尤モ株主ニハ御歴々ノ方ガゴザイマスガ、此株主ハ株式会社デゴザイマスカラ転々致シマス、ソレデ決シテ株主ガ良イカラト云ツテ信用ハ出来マセヌ、シテ見ルト日本ニ於テ保険会社ニ大ニ信用ノアルモノガ成立チマセヌケレバ、銀行機関ノ発達ヲ滑カニ致スニハ御諮問ノ通リ非常ナ差閊ヲ致スノデゴザイマス、依テ私ノ考ヘマス所ハ、正金銀行一ツデハものぽりースル、モウ一ツ拵ヘテナリ競争サセテ、今日ノ海上保険会社ニ便利ヲ与ヘタイト云フ精神ヲ、先ヅ暫ラク正金銀行一ツニ止メテ置クノモ、五年ヤ六年ナラ随分宜カラウト思フ、其間ニハ熟練シマス、愈々イカナイトキハ其時
 - 第23巻 p.345 -ページ画像 
ハ正金銀行ヲ笞ツテ是カラ先キ外国人ノ「ばんく」ト同ジヤウナ働キヲシテ貰フヤウニシテ、モウ一ツ殖サウト云フ精神ヲ海上保険ノ方ヘ向ケテ、此保険会社ハ如何ナル方法ヲ以テシテモ誠ニ盛大ニ成立タセマスコトガ、今日必要ノ場合ダラウト存ジマス、尤モ海上保険会社ト申シマシテモ、先刻申シマシタ通リチビチビシタノガ沢山起ツテ居リマスカラ、ソレハ混ジマセヌヤウニ、海外ヘ出マスル荷物ニ保険シタモノ、或ハ海外カラ来マシタ荷物ニ保険シタモノ、此高ニ依ツテ幾分ノ保護ヲ与ヘルト云フヤウナ方法ガ或ハ出来ナイコトモナカラウト思ヒマス、是ハ余程必要ナ問題デゴザイマスルデ、第二ト第六ト聯帯シテ委員ヲ組ミマシテ、充分ニ練リ上ゲテ見タイト、斯様ニ本員ハ思ヒマスノデゴザイマス、是ハ御諮問案中最モ重要デゴザイマスカラ、考ヘテ居リマスルコトヲ皆サンニ申上ゲマスルノデゴザイマス
○九番(山本亀太郎君) 第六ノ諮問案ハ第二諮問案ト密着ノ関係アルコトハ、一番カラモ第二諮問案ノ議事中ニモ御意見ヲ拝聴致シマシタガ、私ノ考ヘデハ既ニ戦勝ノ結果トシテ我邦ニハ銀行ハ続々勃興スル、依ツテ内地ノ金融ハ大ニ滑カニ取引ガ出来ルト考ヘマス、併ナガラ此程ハ或地方ニ於キマシテハ、聊カノ恐慌ヲ惹起シテ居ルノガ多ウゴザリマス、然ルニ海外ニ向ツテノ貿易、即チ為替等ニ於キマシテノ金融ト云フモノハ、正金銀行ガ独占シテ居リマスカラ十分ニ其モノガ便利ヲ与ヘテ呉レマセヌ、吾々ガ横浜・神戸等ニ於キマシテ僅ノ荷物ヲ亜米利加ナドヘ送リマスニ、尤モ信用ガアリマセヌデハゴザリマセウケレドモ、例ヘバ十万円ノ貨物ヲ亜米利加合衆国其他ニ送リマスル際ニハ、「いんぼいすめん」ニ於テ荷受先ノ約束ガアリ、向フカラ注文ノ品ナレバ「いんぼいす」一杯ニ約束ヲ附ケル此方カラ委托販売ノモノナレバ七分五厘又ハ八分ニ為替ヲ附ケル、夫レナドハ容易ニ為替ヲ取組ムコトガ出来マスルガ、「くれぢつと」以外ノ分十万円ノ荷物ヲ船ニ積込ミマシテ七分ナリ八分ノ金ヲ借入ルヽ際、即チ十万円ノ為替ニ七分五厘・八分マデハ貸シマセウガ、夫レニ対シテ根抵当ハ入レテ貰ハナケレバナラヌ、宜シイ根抵当ハ入レマセウ、併シ時ト場合ニ依ツテハ、此頃種々ノ商業上ノ関係カラ手前ノ方ニ根抵当ガナイト云ヘバ、夫レデハ確実ナル銀行ニ保証シテ貰ヒタイ、保証サヘ出来レバ為替ハ取組マセウト云フコトニナル、十万円ノ内デ七万円借リマスニ就イテ、七万円ノ根抵当ヲ要スルノデアリマス、即チ十万円ノ商売ニ二十万円持ツテ掛ラネバナラヌト云フ場合ガ多イノデゴザリマス、併シ銀行者ハ株式組織デ、人ノ資本ヲ預ツテ商売ナサルノデアルカラ、其位確実ニスルノハ当然ノコトデアル、吾々ガ正金銀行ノ地位ニ立ツタラ其位厳重ニシナケレバナラヌカト思ヒマス、是レハ信用如何ニアルコトデゴザリマスガ、随分厳格ナル取扱デアリマス、依ツテ此御諮問案ニモ之ニ応ズルノ設備方法等ハ如何ト云フコトデゴザリマスガ、即チ今年五月デゴザリマシタカ、全国ノ商業会議所聯合会ガ筑前ノ博多デ開カレマシタ、其際ニ大阪会議所カラ御提出ニナリマシタ金融機関拡張ノ件ト云フコトガ議決ニナツテ居リマスノミナラズ、東京・神戸其他ノ
 - 第23巻 p.346 -ページ画像 
会議所ヨリモ金融機関拡張ノ件ヲ夫レ夫レ提出ニナリマシタガ、吾吾ノ望ミマス所ハドウゾ出来ルダケハ東京ノ商業会議所カラ御提出ニナツテ居ル所ノ、今一方彼ト相対峙スル所ノモノヲ設置スルコトヲ希望致シマス、又設置スルニ付テハ全国ニ多数ノ銀行モアリマスカラ、其中ノ重ナル信用ノアルモノヲ、政府ヨリ御指定ニナリマシテ、当時ノ正金銀行ト相対峙スルモノヲ設置スルコトヲ希望致シマス、尤モ之ハ申上ゲヌデモ分リ切ツタコトデゴザリマスルガ、何商売ニシテモ独占ト云フコトニ致シテ放任シテ置キマスルト、種々ナル弊害ハ起リマスマイカ、夫レニ対シマシテ取引先ノ意ニ満チマセヌコトガ間々起ルノハ数ノ免レヌコトデゴザリマス、其他ニ競争者ガゴザリマスレバ七分シカ貸サヌ所デモ七分五厘ハ貸ウト云フコトニナリ、金利ナドモ幾分低廉ニナラウト思ヒマス、故ニ第二ノ諮問案ニ就キマシテハ、本員ハ是非トモ東京ノ会議所カラ御提出ニナツテ居ル通リ、今一方ニ新ラシク設ケルカ、従来カラアル、信用アル銀行ニ御指定ニナルコトヲ希望致シマス、続キマシテ第六ノ海上保険ノ件デゴザリマスルガ、是レハ一番モ述ベラレマシタ通リ東京海上保険会社ト云フノハ、立派ナル諸君ノ御設置ニナツタ会社デゴザリマス、又大阪デ申シマスレバ日本海上保険会社ガアリマス、又其他海陸保険会社ト云フモノモアリマス、夫レ夫レ資本金ヲ増加シテ十分ニハアリマセヌケレドモ、相当ノ金モアルヤウニ承知致シテ居リマス、何分四分ノ一払込メバ営業ガ出来ル、アトハ必要ニ応ジテ払込メバ商売ガ出来ルト云フヤウナコトデ、先刻大倉サンガ御述ベナツタ通リ「上海香港ばんく」・「ちやあたー・ばんく」ハ、日本ノ保険会社ノ保険デハ為替ハ取組マナイト云フコトモ屡々耳ニ致シマス、是等ハ方法ガアリマスレバ、ドウカ保護ヲ与ヘ、或ハ其他ニ十分信用ヲ置クト云フヤウナコトヲ、御講究アランコトヲ希望致シマス、チヨツト一言此コトヲ申上ゲテ置キマス
○十五番(浜岡光哲君) 第六諮問案ニ対シ、第二ノ諮問案ト聯帯シテ議スルヤウニト云フコトデアリマシテ、問題ガ二ツアルノヲ一緒ニ込メテ意見ガ出テ居リマスルガ、矢張リ二ツニナランコトヲ希望致シマス、是レハ委員ヲ置クト云フ一番ノ趣意カラ、二ツノ案ヲ一緒ニシテ意見ヲ出スト云フコトニナツタノデゴザリマセウガ、果シテ此両諮問案ヲ一緒ニ議スルト云フコトニナリマスルト、是レハ委員ヲ置カナケレバ決議ノ時ニモ大変可笑クナリハセヌカト思ヒマス、故ニ十五番ハ一番ニ賛成ヲ致シマシテ、此二ツノ御諮問案ヲ一ツノ委員ニ附託シテ、御答申ノ方法ヲ定メタ方ガ宜カラウト思ヒマス
○十九番(土居通夫君) 第二ノ諮問案ニ就イテハ過日種々ノ御意見モゴザリマシタケレドモ、終結ニ至ラズシテ遂ニ第六ノ諮問案ニ合シテ議スルト云フコトニナリマシタ、第二ノ諮問案ニ対シマシテハ是レハ本年ノ四月ニ全国ノ商業会議所ノ聯合会ガ筑前ノ博多ニ開ケマシタ、其際大坂ノ商業会議所ノ意見トシテ提出致シマシタ事柄デゴザリマス、然ルニ聯合会ニ於テハ多数デ議決ニナリマシテ、其後大阪商業会議所カラ更ニ総理大臣・大蔵大臣・農商務大臣等ニ開申書ヲ出シマシタ事柄デ、敢テ正金銀行ノ反対ニ立テ之ヲ打毀ハスト云
 - 第23巻 p.347 -ページ画像 
フ趣意デモゴザリマセズ、先ヅ戦勝ノ結果トシテ一層貿易ノ数モ増加致シマシタカラ、将来一ノ正金銀行バカリ頼ンデ居ツテモ行届カヌ所ガアルダラウト云フ所カラ、斯ウ云フ案ヲ出シマシタ、七番ノ御説ニ依ツテ先年ノ正金銀行トハ大ニ面目ヲ改メテ、近年ニ至ツテハ一ノ銀行デ十分行届クト云フ御説明モゴザリマシテ、其点ニ於テハ了解致シマシタガ、唯一ノ銀行ヲ何時マデモ立テテ置クト云フノモ将来ノ貿易上ノコトカラ考ヘマスルト、甚ダ不完全ノモノデアラウト考ヘマスルデ、冀クハ東京商業会議所建議ノ如ク、同様ノモノガモウ一ツ出来ルコトヲ希望シマスル、尤モ為替金高ノ千分ノ一ト云フコトヲ申立テヽゴザリマスルガ、夫等ノ方法ニ至ツテハ詳細取調ベタコトデモゴザリマセヌデ、其点ニ向ツテハ詳ハシイ説明ハ致シマセヌ、唯々成立ツコトハ東京商業会議所ト同様ノ意見ヲ持ツテ居リマス
○九番(山本亀太郎君) 一番ノ委員説ニ同意致シマス
○十四番(金子堅太郎君) 委員ニ附託スルト云フ説ガ出マシテ、夫レモ宜ウゴザリマスルガ、委員ニ御附託ニナル前ニ一寸意見ヲ申上ゲテ置キタウゴザリマスガ、唯今直グニ委員附託説ノ可否ヲ御問ヒニナリマスカ、マダ決ハ御採リニナリマセヌカ、私ハ此問題ハ十分御審議ヲ願ヒタイト思ヒマス
○議長(伯爵佐野常民君) 十四番ニ申シマスガ、委員説ハ今ハ問ハナイ考ヘデゴザリマス、ドウモ余程重大ナ問題デゴザリマスルコトハ昨朝モ略ボ述ベマシタ通リデ、一ツノ正金銀行ヲ立テヽ夫レヲ何処マデモ拡張スルガ宜イト云フ御説ト、夫レカラ又ドウシテモ独占サシテ置イテハユカナイト云フ、既ニ東京ヲ初メ大阪其他各商業会議所ノ御意見モ出テ居ル、各商業会議所ノ意見ハ総テノ商業社会ノ意見ト見傚サナケレバナラヌ、一ツデハ不便ヲ感ズルカラ、是非モウ一ツ立テナケレバ行カナイト云フ御説デアルカラ、是レハ実際上外国貿易ヲ保護スルニ就イテ、現今ノ如ク一ツ立テヽ置クガ宜イカ、即チ一ツニシテ置クノガ我邦ノ貿易ヲ拡張サスル為メニナルカ、又相対スルモノヲ作ツテ共ニ共ニ張合ハセテスルガ宜イカト云フコトハ、外国貿易上ニハ極メテ重要ナル問題ト思ヒマス、委員ニ附托スルニ致シマシテモ、各議員ガ十分其利害得失ノアル所御貯ヘノアル説ヲ御提出ニナツテ、委員ニ附托スルガ宜イト思ヒマス、今日ハ十二時ニ大分近マリマシタカラ、先ヅ中途デ会議ヲ止メマシテ、尚ホ明日改メテ御討議ヲ御尽シヲ願ヒマス
  午前十一時四十分散会


第一回農商工高等会議議事速記録 第二〇五―二三五頁 明治三〇年四月刊(DK230037k-0003)
第23巻 p.347-360 ページ画像

第一回農商工高等会議議事速記録  第二〇五―二三五頁 明治三〇年四月刊
明治二十九年十月二十二日(木曜日)午前九時四十分開議
          出席者
            議長  伯爵 佐野常民君
            一番     大倉喜八郎君
            二番     藤田四郎君
            四番  男爵 鈴木大亮君
 - 第23巻 p.348 -ページ画像 
            五番     原善三郎君
            七番     益田孝君
            八番     安藤太郎君
            九番     山本亀太郎君
            十番     中上川彦二郎君
            十一番    渋沢栄一君
            十三番    近藤廉平君
            十四番    金子堅太郎君
            十五番    浜岡光哲君
            十六番    益田克徳君
            十七番    藤井三郎君
            十八番    森村市左衛門君
            十九番    土居通夫君
            二十番    広瀬宰平君
            二十一番   添田寿一君
          欠席者
            三番     藤田伝三郎君

○議長(伯爵佐野常民君) 諸君、昨日ニ引続キ開会致シマス
○十九番(土居通夫君) 建議ヲ致シマス、此第二諮問案ハ第六諮問案ト併セテ議スルコトニナリマシテ、既ニ昨日二・三意見ヲ述ベタ方モゴザイマスガ、是ヲ一ツニシテ議シマスルト錯雑スルデアラウト思ヒマスカラ、矢張別々ニシテ議スルヤウニ御改メヲ願ヒマス、調査委員ニ附スルヤウナコトガゴザイマスレバ、或ハ併セテ御託シニナツテモ宜シウゴザイマセウガ……
○議長(伯爵佐野常民君) 十九番ニ申シマスガ、最ハヤ是ト聯帯シテ議スルガ宜イト云フコトニナツテ居リマス、今又ソレヲ変ヘルト云フト、更ニ議決ヲ採リ直サナケレバナリマセヌガ可否ニ問ヒマスカ
○十九番(土居通夫君) 左様デゴザイマス
○十六番(益田克徳君) 私モ十九番ニ同意デゴザイマス、此間、是ヲ一緒ニシテ論ジタガ宜イト云フコトニ極マリマシタガ、熟々又考ヘ直シマスルニ、昨日アタリノ御論ヲ承ツテ見マスルト、一方ニ賛成シテ一方ニ賛成ガ出来ナイト云フヤウナ場合ニナリマスト、可否ヲ御問ヒニナリマシタラ両方共潰レルヤウナ結果ヲ生ジマセウ、又論ズル上ニ於テモ甚ダ錯雑シヤウト考ヘマスカラ、先ヅ以テコヽデ金融ナラ金融ノ方ノ片ヲ附ケテ、ソレカラ保険ノ方ニ移リマシタ方ガ宜カラウト思ヒマス、或ハ委員ヲ御拵ヘニナル場合ニナリマシタラ両方兼ネルコトモ宜シカラウト思ヒマスガ、併シ今両方一緒ニ論ジマシタラ余リ複雑ヲ生ジテ、却ツテ了解ニ苦ムヤウナコトモアラウト思ヒマス、ソレデ別々ニシタイト思ヒマスカラ、十九番ニ賛成致シマス
○一番(大倉喜八郎君) 此聯帯ノコトニ付キマシテハ、尚ホ一番カラモ是ヨリ申上ゲマスルデゴザイマスガ、其前ニ第六ノ海上保険ノ件ニ付キマシテハ自ラ各自営業モ異ツテ居リマス、ソレデ是ヲ専門ト
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致シマスル人ハ十六番デゴザリマスルデ、十六番ニ今日マデノ経験並ニ此海上保険ニ付イテ外国ノ営業ノ有様実況ヲ一応陳述セラレマスルコトヲ望ミマス、サウシタラ大ニ我々共ノ参考ニナリマセウト思ヒマス
○十四番(金子堅太郎君) 賛成
○二番(藤田四郎君) 賛成
○議長(伯爵佐野常民君) 唯今一番カラ十六番ニ御請求ニナリマシタコトハ……
○十六番(益田克徳君) 十九番ハ是ヲ別々ニシテ議スルト云フコトデソレニ賛成ガアリマスカラ、是ヲ極メテカラノ方ガ、順序ガ宜カラウト思ヒマス
○一番(大倉喜八郎君) 然ラバ分ケマスコトニ付キマシテ一言呈シマス、此第二ト第六ノ御諮問案ニ付キマシテハ、私ハ非常ニ密着シテ居ルト思ヒマスカラ矢張、両方共纏メマシテ委員ニ掛ケテ、サウシテ充分練リ上ゲマシタ上デ、更ニ又御評議ヲ致スコトハ何ノ差閊モナイコトヽ思ヒマス、且今日ノ此戦勝後ノ形勢ト申シマスルモノハ即チ日本ノ国其物ガ海外ニ営業ヲ拡張致シマスルト云フ場合デゴザイマシテ、御諮問案ノ精神モ其通リデゴザイマセウ、抑海上保険ハ補助ガナクテハ出来マセヌコトデ、且ツ金融機関ニ補助ヲ与ヘテ遣ルト云フヤウナコトハ、此手順ヨリ参リマセヌケレバ行キマセヌト思ヒマス、其大要ヲ申シマスレバ、是ハ何レ委員ニ托シタ後ノコトデゴザイマスガ、日本ノ国ハ今日既ニ一億何万円ト云フ金ヲ「ばんく・おぶ・いんぐらんど」ニ預ケテアル、此金ナドヲ利用スルヤウナコトハ是カラ成立ツダラウト思ヒマス、又ソレカラ活動スル働キガナケレバ日本ノ外国貿易ハ進マヌト思ヒマス、旁々銀行ナリ海上保険ノ業ヲ発達セシムル方法ガ必ズアラウト思ヒマス、兎ニ角ニ実際ノ所ヲ皆サンガ練リ合セテ、練ツタ上ニ是デ別ニナルガ宜イト云フ所ヲ議場ヘ報告致シテモ、何モ差閊ハナイト思ヒマスカラ、私ハ矢張第二ト第六ト聯帯シテ委員ヲ御組ミニナリマシテ協議ヲスルト云フコトニナリタイト希望致シマス
○議長(伯爵佐野常民君) 十六番ハ今十九番ニ御賛成ニモナリマシタガ、併シ此コトハ最前聯帯シテ議スルト云フコトニナツテ居リマス其同ジコトヲ又更ニ問題ニ出シマスルト云フコトハ議長モ頗ル困リマス、先ヅ今ノ議決ヲ採リマスニハ混雑ヲ致シマセウカラ、別々ニ採ルコトニシテ、其討議ヲ致スノハ此儘御議シニナリマシテ、更ニ差閊ヘヌコトヽ存ジマスカラ、唯今一番ノ請求ニ応ジマシテ、即チ第六ノ海上保険ノ件ニ付キマシテ御説明ヲ煩ハシマスガ宜シカラウト思ヒマス
○四番(男爵鈴木大亮君) 如何デゴザイマスカ、十九番ハ別々ニ議スル方ガ都合デアラウト云フコトデ、ソレニ十六番ノ賛成ヲ得テ居リマスカラ、矢張議場ニ御問ヒニナリマシタ方ガ宜シウゴザイマセウ
○議長(伯爵佐野常民君) 議場ニ問ヒマセウガ、一旦議決シテアルコトヲ又更ニ問題ニ出スト云フコトハ頗ル不体裁ナコトデ、サウスルト何時マデモ本統ノ終結ハ得ラレナイト思ヒマス
 - 第23巻 p.350 -ページ画像 
○四番(男爵鈴木大亮君) 少シ後ヘ戻ルヤウナ嫌ハゴザイマスケレドモ、兎ニ角一ノ意見トシテ提出シテ居リマス、ソレニ賛成ヲ得テ居ル以上ハ、矢張議場ニ御諮リニナル方ガ順序デアラウカト存ジマス併シ又議長ノ御考デ、発言者ガソレニ服シマスレバ宜シウゴザイマスガ、兎ニ角此処ノ場合ハ議長ノ意見ヲ御引キニナリマシタ方ガ、適当ノ御処置デアラウト思ヒマス
○二番(藤田四郎君) 此間御議シニナリマストキノ御決議ノ趣意ハ、詰リ第六ニ関係ガ多イカラ六ヲ議スルトキマデ待タウト云フノデ、必ズ是ト一緒ニヤラウト云フ事柄トハ思ヒマセヌデゴザイマシタガチヨツト御参考マデ申上ゲテ置キマス
○議長(伯爵佐野常民君) ソレハ聯関シテト云フコトデアリマシタ、併シ今段々御説モゴザイマスカラ一応議場ニ……
   〔此時内閣総理大臣兼大蔵大臣伯爵松方正義君・農商務大臣子爵榎本武揚君臨席、一同立礼ス〕
 議長カラ諸君ニ御尋ネ致シマス、唯今十九番ノ建議ノ通リ関聯シテ議スルト云フコトニナツテ居ルノヲ、今又各別ニ議スルト云フ十九番ノ御意見ガ出テ居リマス、ソレニ賛成モゴザイマスルデ一応御尋ネ致シマス
○十三番(近藤廉平君) 賛成
○七番(益田孝君) 賛成
○八番(森村市左衛門君) 賛成
○十一番(渋沢栄一君) 賛成
○議長(伯爵佐野常民君) サウスルト一応御同意ノ御方ノ起立ヲ煩ハシマス
  起立者  多数
 多数デゴザイマス、ソレデハ再ビ戻リマシテ、今ノ第二問ノ方カラ先キニ御述ベニナルヤウニ願ヒマス
○中略
○議長(伯爵佐野常民君) 唯今ノ建議ハ御聴キナサレル通リニ、第二諮問案ノ行掛リノ議事ニ取掛リマス
○幹事(有賀長文君) 此第二ノ諮問案ノ件ニ就キマシテハ、過日参考書類ト致シマシテ、東京商業会議所ノ会頭渋沢栄一君ノ当省ニ対スル御建議案ト、大阪商業会議所会頭土居通夫君ノ御建議案トハ印刷ニ致シマシテ御配布致シマシタガ、一昨日神戸商業会議所会頭山本亀太郎君ヨリノ建議ガ到着致シマシテゴザイマスガ、是ハ印刷スル暇ガゴザイマセヌデシタガ、チヨツト朗読致シマセウト思ヒマスル
○十四番(金子堅太郎君) ソレハ廻ハシテアリマスカラ、別ニ朗読セヌデモ宜カラウ
○二番(藤田四郎君) 若シソレガ短イモノナラバ、チヨツト読ンデ貰ツタ方ガ宜シウゴザイマス
   〔有賀幹事朗読〕
    海外貿易上金融機関ノ拡張ヲ要望スルノ義ニ付開申
  今ヤ戦後ノ経営ニ方リ、我国力ヲ増大ニシ我民福ヲ進捗スル幾多ノ手段中其最モ必要ナルモノハ海外貿易ノ発達ナリトス、就中目
 - 第23巻 p.351 -ページ画像 
下ノ状勢大ニ直輸貿易ヲ奨励セサル可ラス、而シテ此直輸貿易ノ発達ヲ助成スルニ有力ナル機関ハ運輸及金融ノ二業ナリ、然ルニ運輸業ニ関シテハ既ニ朝野ノ大ニ注意スル所トナリ、幸ニ拡張ノ端緒ヲ開キ前途頗ル有望ノ地位ニ上レリ、翻テ金融業ノ現況ヲ顧レハ国内商工業ノ機関トシテハ稍ヤ見ル可キノ功ヲ奏セリト雖モ其海外貿易ヲ助成スルノ機能ニ至リテハ未タ幼弱不備ノ境ヲ脱スルコトヲ得ス、故ニ我政府ハ前年有力ナル資産家ヲ勧誘シテ横浜正金銀行ヲ創設セシメ、尋テ其条例ヲ発シ之ヲ保護ノ下ニ立タシメ以テ其業務ヲ営マシム、同行ハ其条例ヲ遵守シ海外枢要ノ地ニ支店又ハ出張所ヲ設置シ、一方ニハ他ノ銀行ト通信取引ヲ締結シ以テ大ニ其営業ノ区域ヲ拡張セリ、爾来同行カ内外商人ニ対シ其便利ヲ謀リタルハ深ク同行ニ謝スル所ナリ、然レトモ海外直輸貿易ノ発達ヲ奨励スルニ急迫ナル今日ニ於テ、一個ノ横浜正金銀行ノミニ頼ラシムルハ時勢ノ許サヽル所ナルノミナラス、同行ヲシテ保護ヲ独占セシメ他ノ競争ノ外ニ立タシムルモ亦策ノ得タルモノニアラサルヲ以テ、同行カ内外商人ニ対シ其便利ヲ謀リタルモノ多キニ拘ハラス、玆ニ他ニ海外貿易ヲ助成スヘキ金融業ノ増加ヲ企望スルノ已ヲ得サルニ至レリ、本所ハ反覆審議ノ末今日ノ実勢ト我政府ノ経験トニ徴シテ一・二ノ確実ナル内地銀行ヲ選ミ、之ニ相当ノ保護ヲ与ヘ海外金融ノ衝ニ当ラシムルヲ以テ其策ノ得タルモノト思考セリ、冀クハ卑見ノ所在ヲ察シ採納実行アラン事ヲ本所ノ成議ニ依リ謹テ意見開申候也
   明治廿九年十月十六日
            神戸商業会議所頭取 山本亀太郎
     農商務大臣 子爵 榎本武揚殿
   追テ本文意見開申書ハ大蔵大臣ヘモ提出致置候、此段申添候也
○十四番(金子堅太郎君) 私ハ金融機関ノコトニ就テハ、前回ニ縷々諸君ノ清聴ヲ汚シマシタガ、当初ノ議場ノ景況ニ拠レバ、頻リニ彼正金銀行ト云フモノヲ眼中ニ置イテ論ジタカノヤウニ思ヒマス、又私ハ日本ノ海外金融機関ト云ヘバ正金銀行ヲ毎モ例ニ取リマシタ、サウシテ其例ヲ本題ノヤウニ論ジタカト云フコトハ後ニナツテ感ジマシタ、此航海奨励法ニ依テ既ニ我邦ヲ離レテ外国ニ連絡ヲ付ケルト云フコトガ法律デ出来テ居リマスレバ、仮令ソレガ完全無欠トハ言ハレマスマイケレドモ、其次ニ必要ナモノハ、其船ニ積ム所ノ荷物ニ為替ヲ付ケテ往ク、為替ヲ付ケルニハ保険、此三ツガ始終転輾シテ、相俟ツテ貿易ノ効ヲ為スモノデアル、ドウゾ此金融機関ノコトヲ論ズルニ当リマシテハ、本員等ノ希望スル所ハ、航海奨励法ハ宇内ノ慣例ニ因ツテ海商律ト云フモノヽ範囲内デヤラナケレバナラヌ、金融機関モ宇内ニ蜘蛛ノ巣ノヤウニ張リ廻ハシテ、如何ナル港ト雖モ、如何ナル商業地ト雖モ、彼国ノ銀行ノ数位ヰニ達スルマデニシナケレバナラナイ、我邦ノ海外貿易ヲ拡張スルニ就テ、日本ノ金融機関ハ私立デアラウガ公立デアラウガ何デモ良イ、銀行トシテ宇内ノ潮流ニ流レ込ミ、宇内ノ蜘蛛ノ巣ニ組ミ付ケテ、彼ト我トノ金融機関ガ相須ツテ効ヲ為スヤウニシナケレバナラヌ、我国ノ金融
 - 第23巻 p.352 -ページ画像 
機関ヲ補テ我国ノ金融機関ノ必迫スルトキハ、亦彼国ノ金融機関デ補ヘルヤウニシナケレバナラヌ、ソレデ幸ナルカナ償金ガ今日ハ宇内ノ親銀行タル「ばんく・おふ・いんぐらんど」抔ニ預ケテアルカラ、ソレデ此日本ガ海外貿易ヲナスニ付テ彼国ノ銀行ト同一ノ働キヲサセタイト云フコトハ、本員等ノ希望スル所デアル、故ニ正金銀行ハ斯ウスレバ其目的ヲ達スルトカ、或ハ正金銀行デナクトモ、三菱銀行ト云フヤウナ資産ノ豊富ニシテ信用アル銀行、又其他ノ是ヨリ起ル銀行ニシテ確カナモノナラバ、海外ノ金融機関ノ設備ト同様ナモノガ出来ルトカ云フコトヲ御経験ノアル諸君ニ伺ヒタイノデアリマス、殊ニ此処ニ御列席ノ御方ハ、銀行ノコトニ就テハ御経験ノアル御方デアリマスカラ、ソレニ就テハ必ズ御抱負ガアラウト思ヒマス、故ニ必ズシモ正金銀行ト云フモノハ私ハ眼中ニ置キマセヌ、ソレヲ眼中ニ置クト云フト、或ハ重役ノ人トカ又株主ノ人抔ニ対シテ御陳述ナサルニ付テ、甚ダ御遠慮ガアラウト思ヒマス、我々モ亦幾分カ遠慮ガアル、ドウカ宇内ノ貿易ヲ流通セシムル金融機関ハ、日本ノモノハ不幸ニシテ開国以来二十九年ノ間、貿易ト云フモノガ完全ニ出来テ居ラヌ為メニ、殆ド唯公債証書ヲ預ツテ金ヲ貸ストカ株券ヲ抵当トシテ金融ヲスルト云フ位ナコトデアル、幸ナルカナ倫敦ノ銀行ニ公債ノ利子ヲ払ラウト云フ必要モ起リ、銀行ナリ其他海外貿易モ段々発達シテ来ルト云フ関係モアルカラ、今日戦後ノ経営トシテ航海奨励法ノ必要ナルコトハ無論デアル、ソレニ倫敦ニ償金ノアル中ニ其正金ヲ我邦ニ引込ムニ付テハ、我邦ノ金融機関ト彼国ノ金融機関ノ融通ヲ付ケルトナリマスト、或ハソレニ付テハ斯ノ如クニ設備モシタイトカ、斯ノ如キ法律ヲ出シ斯ノ如キ保護ヲ与ヘナケレバナラヌトカ、又斯ノ如キ基礎ヲ立テナケレバナラヌトカ云フ御名案ハ必ズ諸君ノ中ニアリマセウト存ジマス、寧ロ正金銀行ト云フコトヲ止メテ、大体金融機関カラ論ズルコトニシテ、国家ノ海外貿易ニ対スル機関ノ設備ヲ全クシタイト云フコトハ、本員等ノ希望デゴザイマスル、ドウカ十分其点ニ就テハ諸君ノ御高説ヲ伺ヒタイト思ヒマス、サウシテ何卒此案ハ連日議シタコトデアルカラ、委員ヲ御設ケニナルナリ、又斯ウスレバ宜イト云フ御考案ノ立ツコトニナル、ソレヲ希望致シマス、実ニ此事ハ輦轂ノ下ニ在リテ日本ノ商工業ノ中心タル所ノ東京商業会議所ナリ、第二ニハ商工業ノ最モ発達シテ居ル大坂ノ商業会議所ナリ、又貨物ノ輻輳シテ税関ノ狭隘ヲ告ゲ今日国家ノ隆運ニ処スルダケノ設備ガ出来ナケレバナラヌト主張スル神戸ナリ、其他全国ノ商業会議所ノ聯合会ト云フテ毎年集ル実業家ノ大会カラ、ソレゾレ考案ヲ立テヽ農商務大臣ニ御建議ニナツタコトデゴザイマスシ、政府モ此事ニ就テハ何トカ方法ヲ立テタイト思ツテ居リマスカラ、其時ノ御賛成ニナツタ御方ハドウ云フ趣意デ御賛成ニナツタカ、其辺ヲ伺ヒタイト思ヒマス、ソレデ農商務省ト云フモノハ実業家ノ建議ヲ重ジテ、殊ニ商業会議所ノ如キ法律上出来テ居ル実業家団体カラノ建議ハ、慎重鄭寧ニ取扱ツテ居ルコトデアレバ、十分御論議ニナツテ政府ヲシテ諸君ノ御建議ヲ全ウシ諸君ノ御趣意ノ貫徹スルヤウニシテ、ドウカ今日ノ金融機関ヲ完全
 - 第23巻 p.353 -ページ画像 
ニシタイト思ヒマス、併シ又正金銀行ハ斯ウシテ呉レトカ、一千万円ニ対シテ利子ヲ正金銀行ニ与ヘテアルカラ、アノ通リノ銀行ノモウ一ツモ起ルヤウニヤリタイトカ、又外国ノ金融ヲ取扱フ銀行ニ対シテ千分ノ一ヲヤルト云フコトハ、政府ナリ、又ハ日本銀行ガ之ニ同意スルヤ否ヤト云フコトハ直チニ起ル問題デアルガ、是ハ人ニ責ムルニ難キヲ以テスルノデアル、日本銀行ハ株式会社デアルカラ、政府ハ之ヲ自由ニ左右スルコトガ出来ヌ、其辺ハ実ニ当局者デモ如何トモスルコトガ出来ナイ、政府デ又ソレ丈ノ保護ガ出来ルカト言ヘバ、今日議会ノ協賛ヲ得ナケレバナラズ、悉ク実業家ノ希望ヲ達セシムルト云フ訳ニハ行カナイ、之ニ就テハ殆ド板挟デ誠ニ其良案ヲ発見スルニ苦ンデ居ルカラ、実業ニ御経験アル御方ハ、今日ハ幸ヒ大蔵大臣モ御臨席ニナツテ居ルカラ其方法ヲ御示シ下サレ、当局者ヲシテ安心セシメルヤウナ方法等ヲ御示シニナルコトヲ私ハ偏ニ希望致シマス
○十一番(渋沢栄一君) 第二ノ御諮問案ニ就テハ、唯今チヨツト已ムヲ得ヌ用事ガ出来マシテ玆ニ居リマセナンダ故ニ、十四番ノ御陳ベニナリマシタ事柄ハ始カラ終リマデ悉ク窺ヒマセヌデシタガ、原案ノ出マスルニ就テハ、御考ノ在ル所ヲ委ハシク御示シニナリマシタシ、又之ニ付テ曾テ農商務大臣ヨリ各地ノ商業会議所ヘ御諮問ニナツタ、海外貿易ノ発達上ニ関シテ東京商業会議所ハ、詰リ金融機関ガ不足デアルト云フコトヲ建議致シマシタ、ソレ等ニ就テハ今度此列席ノ中ニ印判ヲ付イタ者モアルデアラウガ、現ニ御指示シニナリマシタ通リ、私ハ東京商業会議所ノ議員ニ備ツテ居ルカラ、十四番ノ仰シヤル通リ此案ニハ能ク関係シテ存ジテ居ルノデゴザイマス、即チ私ノ名ヲ以テ提出シマシタカラ、私ハ之ヲ知ラヌトハ申シマセヌ、但シ此案ニ就テ、私ハアノ通ノ論デアツタカ、同意デアツタカ如何ト云フニ、左様デハナイト私ハ申上ゲナケレバナラヌ、商業会議所デ委員ヲ組ンデ評議ノアツタ時分ニ、希望ノ点ハ斯ク様々ノ説ガ出デ、即チ建議シテアル通リノ説ガ出タ、私ノ考ヘル所デハ丁度十四番ノ陳ベラレル通リ、一方ニ求メル所ガ多クテモ、之ニ応ズル途ト云フモノハ、唯自然ノ成立ヲ以テ其業務ヲ進メテ参ル、其力ガ付イテ参レバ、外国人モ信用シテ相当ノ取引ノ出来ル途ガアルト云フト、此銀行ノ業務ガ進ミ行クナラバ、是モ何程出来テモ宜イモノデアリマスケレドモ、玆ニ正金銀行ノ扱ガ不便ダト言ツテ、詰リ他ノ補助法カラシテ或ハ日本銀行ニ下附シテヤルガ宜カラウガ、一体銀行ナドト云フモノハ悪ルク言ヘバ、一夜作リノ法立テヽ設立スル果シテ未来ハ有効ニ働得ルカ如何ト云フコトハ、私共甚ダ疑ヒマス又其助クルト云フコトガ若シ為シ得タ所ガ、有効ニ働得ルカト云フ疑ガアルノミナラズ、限リナク之ヲ助ケルト云フコトガ出来ルカト云フコトハ、モウ一層懸念シナケレバナラヌト思ヒマス、然ラバ仮リニ其望ガナイトシテ見ルト其法ヲ立テルニ甚ダ苦ム、農商務省ニゴザル御方々ガ色々ノ書物ニモ拠リ、智慧ヲ振ウテ御考ナスツテスラ方法ガナイ、十四番ハ朝飯前ノコトダラウト言ハレマスガ中々実際ニ居ル者ハ猶更智慧ガ乏シイカラ、左様ナ法立テ等ハゴザイマセ
 - 第23巻 p.354 -ページ画像 
ヌ、若シ之ヲ他ニ独リデヤルト云フコトニナレバ法立テガ付キマセウケレドモ、利益ト云フトキハ其方向ガ成立タナケレバナラヌト思ヒマス、我々ガ商業会議所ニ於キマシテ此答申ヲ致シマシタ時ノ思入レノ希望ヲ申セバ、不足ト云フコトヲ已ムヲ得ズ言ハナケレバナラヌ、併ナガラ他ニ一ツ同ジヤウナ有様デ以テ、右ト左ヲ補ケルト云フ法ヲ設ケルマデノ希望ハ致シマセナンダノデゴザイマス、故ニ今日ノ第二ノ諮問案ニ対シテ色々法立テガアリサウナモノト種々考ヘマシタ所ガ、今申上ゲマシタ通リ一方ニ助成トカ保護トカ云フ引立テル途ガナイト、十分金融機関ガ発達シテ来ルト云フコトハ、其成立ツタ所ノ自然ノ力ニ依ラナケレバナラヌ、其自然ノ力ニ依ラナケレバナラヌト云フトキニハ其時ヲ待タナケレバナラヌ、丁度先ダツテ此案ニ付キマシテ七番ガ已ムヲ得ズ漸次ノ進ミヲ待ツヨリ外ニ仕方ナカラウ、併ナガラ一方ニ正金銀行ハ是マデノ行掛リモアルカラ、尚ホ望ムベキダケヲ希望シ、又一方カラ特典ヲ御与ヘナサラウト云フニ過ギナイト云フ意見ヲ陳ベラレマシタヤウニ記臆シテ居リマス、私ノ存寄リハ右申上ゲルヨリ他ハアリマセヌ、外ニ宜イ方案ガアルナラバ、ソレヲ伺ツテ御同意ヲ表シタイト思ツテ居リマス
○二十番(広瀬宰平君) 二十番ハ十一番ノ精神ト大抵同ジヤウデアリマスガ、併シ之ヲ棄テヽ宜イカ、進ンデ此機関ヲ達発セシムルガ宜イカト言ヘハ、正金銀行一ツ眼中ニ置カズシテ、続々他ニ金融ノ機関タル銀行ヲ設立スルコトヲ希望スルノデアリマス、然レドモ此保護ト云フ点ニ付テ、ソレヲ目的トシテヤラナケレバナラヌト云フトキニナレバ、私ハ極賛成ノコトデアリマス、何トナレバ此正金銀行ニ向ツテ日本銀行ガ之ヲ保護シタト云フコトハ余程正金銀行ガ苦ンデ年月ヲ経タ暁、又ソレニ確カナル経験ガアルト云フコトカラ、日本銀行ガ保護シタコトデゴザイマシテ、是ハ政府モ容易ナラヌコトト考ヘ、前ノ総裁モ之ガ為メニ辞シマシタコトデ、今ノ総裁ニナツテ成立チマシタ位デアル、今日斯ノ如キ機関ヲ設クルニハ保護ヲ与ヘズニヤルト云フコトハ決シテ行ハレヌト思ヒマス、私眼中ニハ正金銀行ノ他ニ何カ宜イ方法ガアツテ、進ンデ設立サレルト云フコトハ極私共ノ希望スル所デ、一ノ銀行ニ依頼スレバドウシテモソレハ専断トカ専横トカ云フヤウナコトヲスル、是非競争者ガアツテ、初メテ世界ニ競争シテコソ総テガ進歩スルモノデアル、之ニ対シテ保護ヲ全ウシテ行カネバナラヌト云フトキニハ、其道ハドウシテ執ツテ往クカト云フト、十年ヤ十四・五年モ刻苦シタ暁ニ補ケネバナラヌト云フコトガ顕ハレテ来ルト思ヒマス、ソレハ今日ハ能ク分ツテ居ルコトデアリマス、併ナガラ政府ニ於キマシテ十分此農商務省デ御宛ガイノ金ガアリマシテ、是非此機関ヲ作ラネバナラヌカラ、政府ナリ日本銀行ヨリシテ是ダケノ保護ヲシテヤルト云フコトデ御勧メニナルナラバ、私ハ大変望ムノデアリマス、併シソレハサウ云フ訳ニイクマイト思ヒマス、冀クハ此日本ニ在ル大キナ私立銀行ノ屈指ノ方々ガアリマスカラ、此屈指ノ方々ガ、我日本ノモノバカリノ仕事ヲシナイデ、外国ニ対シズンズン仕事ヲシヤウト云フコトデ、大キナ銀行ガ、アチラヘ出テ往ツテヤルト云フコトガ重要ナコトデ
 - 第23巻 p.355 -ページ画像 
アリマス、決シテ正金銀行ダケデハ、是等ノコトハ出来マイト思ヒマス、同行ノ成立ハ古ルイ、私ハ先ヅ先ニ独立心ヲ懐イテ千辛万苦シタ暁ニ、ドウシテモソレダケノ人物ガ揃ウテ、是ダケノ保護ヲ与ヘテモ決シテ之ヲ失ハヌト云フコトヲ認メタ上デナケレバ、保護ト云フモノハ与ヘヌ、唯私ノ考ヘマスル所デハ、ドウゾ日本ノ有力ナル銀行ガ外国ニ向ツテ盛ンニ店ヲ開イテ貰ヒタイト云フコトニ過ギマセヌ
○二十一番(添田寿一君) 唯今二十番カラ陳ベラレマシタ所ハ至極御同感デゴザイマス、過日申上ゲマシタ如ク、是マデ先ヅ政府ノ一ノ機関ト致シマシテ正金銀行ニハ出来ルダケノ鞭韃ヲ加ヘテ居ル積リデゴザイマス、ソレデ先ヅ今日少シク不満足ヲ与ヘルデアラウト思ヒマスル点ハ、正金銀行ガ確実デアルヤ否ヤト云フコトヲ認定スル上ノ見解ノ差デゴザイマシテ、ドウモ信用ノ乏シイ人ニ向ツテ、或ハ十分ニ融通ヲ付ケテ呉レナイト云フコトガアルノデゴザイマス、ソレハ如何トモ監督権ヲ以テモ、無理ニ不確実ト認メル者ニ金ヲ貸セト云フコトハ言ハレル道理ノモノデゴザイマセヌカラ、ソコニ至ツテハ已ムヲ得ズ銀行ノ認定ニ譲ツテ居リマスカラ、先ヅ出来ル丈ケ業務ノ拡張、支店ノ増加ヲ計ルト云フコトヲ頻リニ勧メテ居ルノデゴザイマス、正金銀行拡張ト云フコトデゴザイマスナラバ、最早此会議ノ勧メヲ俟タズシテ、成ルタケ勧メル積リデアルト云フコトヲ申上ゲタイノデゴザイマス、此ノ事ニ就キマシテハ昨日デアツタガ、ドナタカ多クハ七掛ケ八掛ケト云フコトガアリマシタケレドモ随分信用スルトキニハマル貸ノコトモアルノモアリマス、之ハ信用ノ事実ニ適用セラルベキ問題デアルカラ、ドウモ其点ヲ以テ正金銀行ニ不満足デアルト云フコトハ言ヒ難カラウト思フノデアリマス、故ニ此正金銀行ノ問題ニ就キマシテハ、別段委員ヲ御選ビニナルト云フ必要ハナカラウト思ヒマス、併シ別ニ銀行ヲ設ケルトカ云フ問題モゴザイマスレバ、是ハ御話ガ変ハリマスノデゴザイマスケレドモ、別ニ御設ケニナルト云フコトハ、今廿番ノ陳ベラレマスル通リ今日既ニ有力ナル銀行ガ沢山アルノデス、是等ノ銀行ハ何ヲ苦ンデ海外ニ十分ノ手腕ヲ伸バサヌカ、殊ニ私ノ希望スル所ハ幸ヒ此国立銀行ノ問題モ結了ヲ告ゲマシテ、則チ是ガ日本ノ銀行ノ先ヅ最モ発達シタモノデゴザイマス、国立銀行ガ外国ニ支店ヲ出スト云フコトハ、大蔵大臣ノ認可ヲ得ヨト云フ規則ガゴザイマシタケレドモ、最早私立銀行トナツタ以上ハ少シモ覊束サレルコトガナイ、内地ニ数多ノ銀行ガ起ツテ居ル今日ニ於キマシテハ、冀クハ有力ナル国立銀行ナリ私立銀行ハ、海外ニ向ツテ手ヲ伸バシテ御働キノアル事ヲ、私ハ頻リニ希望致シテ居リマス、此事ニ就キマシテハ従来余程苦心シテ居リマス、□故ニ我邦ノ金融機関ト、外国金融機関ト関係ノ付カナイカト云フコトニ就キマシテハ、既ニ此前ニ申上ゲマシタ通リ彼ノ信用ガナケレバ行ハレルコトガゴザイマセヌ、我銀行制度ノ有様ヲ外国ニ知ラスルト云フコトニ就キマシテハ、外国ノ有力ナル雑誌若クハ書籍等ニ我銀行ノ状況ヲ申送ツテ居リマスル位デ、成ルベク彼ノ信用ヲ得ルヤウニ致シマシテ、ドウカ有力ナル銀行ガ此点ニ
 - 第23巻 p.356 -ページ画像 
目ヲ着ケラレルヤウニアリタイト云フコトガ、希望ニ堪ヘナイノデアリマス、併シ保護ガナクテハドウモ出来ヌト云フ御話ニナリマスルト、其処ニ至ツテハ甚ダ残念ニ感ジマス、俗ナ言葉デ申スト甚ダ情ケナイト申スノデアリマス、随分此外国為替ノコトニ就キマシテハ危険モゴザリマセウケレドモ、詰マリ夫レハ銀行ノ一般ノ危険デ是レハ保護ガナクテハナラヌト仰ツシヤレバ何モ申上ゲルコトハナイガ、願クハ先ヅ御始メニナツテ、サウシテ事実已ムヲ得ヌ時ハ、相当ノ保護モ成立ツタ上デ随分出来ルコトデアリマス、正金銀行ガ千万円低利ノ利子デ借入レテ居ルノハ、再割引ノ一ノ方法ニ過ギナイ、今日十分業務ガ確実ト認メル銀行ガ出来レバ、政府ガ誘導セヌデモ日本銀行ニ頭ヲ下ゲヌデモ、日本銀行ハ貸出ヲスルト云フコトハ、是レハ営業上勿論ノコトデアラウト思ヒマスカラ、別段此点ニ就イテ宜イ方法ト云フモノハ、二十番ノ云ハレル通リ無カラウト思ヒマス、若シ今日或手形ノ取組高ニ幾分補助スルト云フコトニナリマシタナラバ、是レハ考ヘモノデアリマス、先ヅ第一ハ歳計予算ノ問題デアリマス、予算ハ議会ガ協賛ヲ与ヘタト云フテモ、余程之ハアブナイ希望デアルト思ヒマス、二十番ノ云ハルヽ通リ其為メニ銀行ヲ立ツルト云フ弊ガ起ツテ来ルデアラウ、夫レハ何処マデ保護ヲスルノデアルカ、又何個ノ銀行ヲ補助スルノデアルカ分ラヌ、又彼ノ銀行ニハ補助シテ己レノ銀行ニハ補助セヌト云フヤウナ議論ガ起リ、詰マリ際限ナク国費ヲ以テ銀行業ヲ営マスルト云フコトニナリハセヌカト思ヒマス、玆ハ余程御考ヘモノデゴザリマシテ、内地ノ銀行ノ有力家ハ外ニ目ヲ御着ケニナリ、私ノ考ヘデハ正金銀行ハ台湾或ハ支那地方、又ハ亜米利加ナリ濠洲ナリ全般ニ眼ヲ着ケテ居リマスカラ、一部ノコトニハ手ガ伸ビナイ、サウ云フ一部ノモノニ目ヲ着ケテ手腕ヲ振ハルレバ、十分ニ余地ガアルト思ヒマスカラ、成ルベク自カラ振ツテヤルト云フコトニ目ヲ着ケラレナケレバナラヌ又銀行ヲ立テヽモ外国ニ信用ガナケレバナラヌ、ドレダケノ働キガアルヤ否ヤ、ドレダケノ積立金ガアルヤ否ヤ、働キノ無イ銀行ハ外国銀行モ決シテ信用ヲ置クモノデハナイ、正金銀行デモ余程色々ナル変遷ヲ経マシテ今日マデニ至リマシタガ、夫レデモ日清戦争前マデハ信用ガ無ツタノデゴザリマスカラ、ムヤミニ御立テニナツテモ外国銀行ノ信用ハ得ラレナイト思フノデゴザリマス、故ニ別段此事ニ就イテ宜イ御考ヘガアレバ拝聴致シマスルガ、正金銀行ノ問題デゴザリマスナラバ、唯今申ス通リ二ツハ要ルマイ、又別ニ立ルト云フコトモ余程ムヅカシカラウト思ヒマス、第二諮問案ハ従来政府ガ取来ツタ方針ヲ益々進行スルヨリ外ハナイカト思ヒマス、又其通リ御議決ニナリマシテハ如何デアラウカト思フノデゴザリマス
 ○二十番(広瀬宰平君) 今一言致シマス、廿一番ノ御説モ略ホ大同小異デゴザリマスガ、私ハ此問題ハ保護ヲ与ヘルカドウカト云フコトヽハ思ヒマセヌ、是レハドウシタラ宜カラウト云フ原案ト考ヘマス、然ラバ之ヲ否決スル訳デナクシテ、此農商務省デ従来幾種ノ銀行ガ内地ニ立ツテ居ルニ、彼方ニ出テヽ仕事ヲセヌカト云フ奨励法デゴザリマスカラ、ドウゾ十分御勧メニナツテ彼方ニ出テ仕事ヲス
 - 第23巻 p.357 -ページ画像 
ルコトヲ希望致シマス、之ハ否決スルコトデハナイ、保護ヲ与フルト云フ御問デモゴザリマセヌカラ、是レハ屈指ノ銀行デ我邦ノミナラズ彼方ニ出テ銀行業ヲ始メルヤウニ、ドチラカラデモ御勧メニナツテ、正金銀行一ツヲ眼中ニ見ズシテ行カウト云フ御諮問デアリマス、併シ此間ノ議事カラ頻リニ正金銀行ヲ攻撃スルヤウナ議論ガアル、正金銀行モ今日ニナリマシテハ既ニ頭取ガ洋行ヲシテ取調ベテ居ル、就イテハ日本銀行モ彼方ニ調ベニ行ツテ居ルカラ、戦後ノ経営ニ就イテハ、正金銀行モ日本銀行モ随分尽シテ居ル、夫レガ帰ツタ暁ニ、マダ正金銀行ノヤリ方ガ悪ルイト云フナラバ十分攻撃スルモ宜シイガ、未ダ夫レガ戻ラヌ、今日之ヲ攻撃スルノハ少シク匆卒デハナイカト思ヒマス、冀クハ日本内地ダケノ銀行デハ困リマス、多少彼方ニ往キマセヌトイキマセヌ、斯ウ云フ考ヘガゴザリマス、国家的経済ヲ以テ論ジマスルト、詰マリ日本銀行ノミヲ目的ニシテハ大変ニ間違ツタコトヽ考ヘル、夫レデ亜米利加ニ恐慌ガアレバ、此仏蘭西ナリ、其他金持チノ国カラ、金ヲ引込ムト云フコトヲシナケレバナラヌ、是レハ今日日本ノ商売人ガ、進ンデ外国ノ商人ト交際シテ心安クナツテ来ルト、日本ニ金ガ足ラヌカラオ前ノ所ノ安イ金ヲ入レテ呉レヌカト云フコトハ、互ノ交際上カラ成立ツテ来ル、日本銀行ヲ相手ニセズトモ外国カラ金ヲ引出スコトガ出来ル、外国デハ皆其通リニヤツテ居ル、是レハ政府独リ握ラネバナラヌト云フコトデハナイ、国民カラシテ自ラ振ツテ握ラナケレバナラヌト私ハ考ヘマスル、水ノ低キニ流ルヽガ如ク、彼方ガ低クテ此方ガ高ケレバ、低イ方ニ流レテ来ナケレバナラヌ、条約改正ノ後ハ必ラズサウナルデアラウト思ヒマス、日本人モ外国人ト並立ツテ、サウ云フ国家経済ノ方法ヲ取ラントナラバ、独リ政府ニ依頼シ又日本銀行ノミニ依頼シテ居ツテモ、日本銀行ハ即チ有限ノ身代ガアルカラ、サウ云フ訳ニモ行クマイト考ヘテ居リマス、余計ノコトデゴザリマスルガ一言此事ヲ述置キマス
○一番(大倉喜八郎君) 第二御諮問ニ就キマシテ一言実際ノ有様ヲ申上ゲマセウト思ヒマス、先刻廿一番ヨリ是レマデノ海外貿易ニ就イテ、間然スルコトノナカツタヤウニ御弁明デゴザリマシタガ、日本ノ海外金融機関ハ、全ク正金銀行一個所ヨリ是レマデモ無ク、今日モ無イノデゴザリマス、他ニ海外ノ為替ハドノ銀行モ取組ミマセヌ取組ンデモ引合ヒマセヌ、危険ガ多クシテ利益ガ少ナイ、之ヲヤツテ居ルノハ正金銀行、夫レニ付テ間接国家ノ利益ヲ増殖スルト云フ便宜ヲ力メマスルト云フ所カラ、日本銀行ヨリ幾分ノ保護ガアル、斯様ニ心得テ居ルノデアリマス、所デ此正金銀行ガ戦争前マデノ働キハドウカト云フト、吾々ハ廿一番ノ仰セラルヽヤウニ、完全無欠ノモノデナカツタト云フコトハ、忌憚ナク明言スルコトガ出来ル、如何トナレバ各人個々信用ノ如何ニ依ルト云フコトハ、是レハ申スマデモゴザリマセヌ、然ラバ其人ノ信用ニ依テ敏活ノ働キヲナサルナラバ宜イガ、決シテサウデハナイト云フコトガ出来マス、或場合ニ於テ或外国人ヲ信用シテヤツタコトガアル、所ガ其外国人ガ破産シタ、之ニ驚イテ俄ニ規則ヲ拵ヘテ一ノ筆法デ、何モ彼モ抵当ガ無
 - 第23巻 p.358 -ページ画像 
ケレバナラヌ、担保ガナケレバナラヌ、信用貸モ、一ケ年百万円ノ取引ヲシテ居ル人モ、一万円ノ取引シテ居ル人モ同ジコトデアル、其時是レデハ困ル、誠ニ難渋ヲスル、是レハ正金銀行ヨリ他ノ銀行即チ外国人ノ銀行ノ方ガ至極便宜デアルト云フコトヲ感ジテ居ツタト思ヒマス、サウ云フヤウナ感ジガ幾ツモ集ツテ、東京商業会議所ノ議論トナリ、建議トナリ、神戸・大坂商業会議所モ同ジヤウナコトヲ云フヤウニナリマシタ、所ガ有難イコトニハ日清ノ戦争ガ勝利ニナリマシテ、夫レカラ清国ヨリ償金ヲ取入レバ、其償金ハ倫敦ノ英蘭「ばんく」ニ御預ケニナツテ居ル、其取扱ヲ正金銀行ニサスルト共ニ、正金銀行ノ信用モ殖ヘテ来、又正金銀行モ自然ノ制裁デ方方カラ批難ヲ受ケルカラ、大層改革シテ近来ハ大変ニ善クナリマシテ、実ハ香港上海「ばんく」デモ先達テ、七番カラ正金銀行ノコトニ就イテハ顔色ナシト云フ有様ダト言ハレマシタガ、実ニ其通リノコトデゴザリマス、大層海外ノ信用ガ高マリマシテ、夫レカラ働キモ敏活ニナツテ、誠ニ結構ノコト、吾々モ喜ンデ居リマス、併シ考ヘテ見ルト、英国ニ金銀貨ヲ日本政府ガ御預ケニナツタ、其働キヤ何カノ為メニ敏活ノ働キヲスルヤウニナツタノデアリマスガ、此金銀貨ハ永ク「ばんく」ニ御預ケニナルモノトモ思ハレマセズ、夫レ夫レ国家ノ重要ナ御買物モアリマセウ、皆支払ツテ仕舞ツテ償金ガ既ニ無クナツタ時ニ、正金銀行ハ元ノ黙阿弥ニナツテ敏活ノ働ガ復タ鈍クナリ、矢張リ元ノ正金銀行ニナリハスマイカト云フ憂ヲ抱ク者モアリマス、左様ニ今日ハ申スモノヽ、彼レモ一旦信用モ固マリ敏腕ノ人モ這入リ、其人ヲ得テ居ルカラ仮令償金取扱ヲセズトモ、是レカラ一層滑カニ働キガ附クダラウ、サウスレバ正金銀行ニ対スル銀行ヲ他ニ立テヽ彼是レスルヨリモ、今ノ正金銀行ニ一層モ二層モ働カスルヤウニスルガ宜イデハナイカト云フコトニナツテ居リマス、併シ吾々ガ見ル所デハ正金銀行一ツアルカラ、夫レデ満足デアルト云フコトハ思ハレマセヌ、他ニ力アル銀行ヲ見附ケテ、夫レガ保護ヲ仰グ場合ニハ相当ノ保護ヲ与ヘテ、夫レヲ成立タセルト云フ必要ガアリハセヌカト思ヒマス、其方法ハドウスルガ宜イカト云フト、先刻十一番又ハ二十番ノ云ハルヽ如ク甚ダ苦ムノデゴザリマス夫レデ此事ハ余程必要ナコトデゴザリマスカラ、矢張リ委員ヲ御立テニナリマシテ、力アル銀行ガ日本ニ沢山ゴザリマスカラ、夫レニ応ズルヤウナ方法ガアリハセヌカト云フコトハ、モウ少シ練ツタ上デ審議シタイト思ヒマスカラ、兎ニ角委員ヲ御立テニナツテ一練リ練ツテ見タイト思ヒマス
○十九番(土居通夫君) 此諮問案ニ対シマシテハ、昨日一通リ愚見ヲ述ベマシテゴザリマスルガ、尚ホ今日此正金銀行ノ営業ヲ或ハ妨ゲルカノヤウナ演説モゴザリマシタカラ一応申シマスルガ、此貿易ノ発達ヲ助ケマスルニハ金融機関ヲ設クルハ必要デアルト云フ精神デ大坂商業会議所ニ於イテハ之ヲ総会ニ問フテ議決ヲ致シマシテ、今年ノ四月博多ノ商業会議所聯合会ニ提出シマシテ、聯合会ニ於テハ多数ノ賛成ヲ得テ可決致シマシタ、其後大坂商業会議所ガ意見書ヲ提出致シマシタ訳デゴザリマス、尤モ正金銀行ガ今日営業シテ居ラ
 - 第23巻 p.359 -ページ画像 
レマスル廉ニ対シテ、或ハ信用ガ乏シイトカ不完全デアルトカ云フコトカラシテ、別ニ一行ヲ設ケナケレバナラヌト云フ考ヘデハナイ段々此貿易ガ発達シテ来マスルニ付テハ、一ノ正金銀行ニ依ツテ居ツテハ何レ行届カヌ所モ出来ルダラウト云フ考ヘカラシテ、他ニモ正金銀行同様ノモノガ出来タナラバ、大キニ貿易上便宜デアラウト云フ考ヘカラ申シタノデアリマス、夫レデ正金銀行ガ今日営業ヲシテ居リマスル所デ十分不便ナコトハナイ、貿易上総テノコトニ便宜ヲ与ヘルト云フコトデアレバ、別ニ銀行ヲ設ケル必要モナイヤウナモノデゴザリマスルガ、併シ将来ヲ推及シテ考ヘマスルト云フト、矢張リ一ツノ銀行ニノミ依ツテ居ルノハ甚ダ面白クナイト考ヘマス夫レデ新タニ銀行ヲ起シマスルニハ、到底幾ラカノ便宜ヲ与ヘルトカ、保護ヲ与ヘルトカ云フコトヲシマセネバ、中々容易ニ自分カラ進ンデ外国ニ手ヲ出スト云フヤウナコトハナカラウト考ヘマスル、夫レデ幾ラカ保護ヲ与ヘルト云フ方法ヲ添ヘテ意見書ヲ提出シタノデゴザリマス、其方法ニ至リマシテハ、詰ラナイコトデモ取調ベタ所モゴザリマスガ、其方法ノ御諮問ニ付テハ説明スルコトハ出来マセヌ、唯一ノ正金銀行ノミナラズ、尚ホ同様ノ銀行ノ成立ツコトヲ希望致シマスル
○此処ニ大蔵大臣ノ演説アリタレトモ略ス
○二番(藤田四郎君) 一番ノ委員附託説ガ出テ居リマスガ、此第二案ニ付キマシテハ前回モ、亦今回モ大分御討論ガゴザイマシテ、最早是カラハ委員ガ調査シタラバ宜イコトヽ存ジマス、本会ノ凡ソノ考ハ分ツテ居ルヤウデゴザイマスカラ、尚ホ委員ニ於キマシテ調査スルヤウニ一番ヲ賛成致シマス
○十四番(金子堅太郎君) 本員モ賛成致シマス
○議長(伯爵佐野常民君) ソレデハ、一番ノ御説ハ委員ヲ別々ニスルト云フ御建議デスカ
○一番(大倉喜八郎君) モウ既ニ別々ニナリマシテゴザイマスカラ、委員モ矢張別々デ宜シカラウト思ヒマス、委員ハ五名若クハ七名ガ宜イト存ジマス
○十四番(金子堅太郎君) 決ヲ御採リニナル前ニ一言申上ゲテ置キマス、今一番ノ御説ハ第二ノ金融機関ダケノ委員ヲ設クルト云フ御説デゴザイマスカラ、ソレダケ御設ケニナツテ、前回カラ私ガ申シマス通リ、航海奨励ノコトモ最モ金融機関ニ必要デアリマス、又此次ニ御議シニナル第六ノ海上保険モ必要デアリマス、即チ貨物保険・航海奨励・金融機関、此三ツハ相俟ツテ離ルベカラザルモノデアリマス、先ヅ仮リニ一番ノ御説ノ金融機関ダケ委員ヲ設ケルコトニナスツテ、後ハ議事ノ模様ニ依ツテ、同一ノ委員ニ御託シニナルトモ其処ハ議長ノ御見込ヲ以テ御計ヒニナルヤウニ希望致シマス
○二番(藤田四郎君) 一番カラ今五名若クハ七名ト云フ御話デゴザイマシタガ、十四番ノヤウナ御説モゴザイマスカラ、ドウカ七名ニ願ヒマス
○七番(益田孝君) 賛成
○十四番(金子堅太郎君) 賛成
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○十六番(益田克徳君) 私ハ少シ十四番ノ御説ニハ御不同意ヲ申上ゲタイ、是ハ何レ聯関シテ居ルニ相違ゴザイマセヌ、ケレドモ皆夫々其仕事モ分レテ居ルモノデゴザイマスカラ、又必要ノ人ヲ加ヘナケレバナラヌ、僅カナ人数デゴザイマシテ総体委員ニナルト云フコトモ出来マスマイ
 矢張リ是ハ一案ヅヽ御分ニナツテ、持分ヲ御極メナスツタ方ガ或ハ運ブダラウト思ヒマス、遊ンデ居ル人ハ皆手明キニナツテ、委員ニ当ツタ人ハ悉クヤラナケレバナリマセヌカラ、是ハ唯第二諮問案ノ委員ダケ御極メヲ願タウゴザイマス
○議長(伯爵佐野常民君) 十四番説モ左様デゴザイマス、第六ノ海上保険ニナリマシテ、委員ニ附託スルト云フトキニ、別ニスルガ宜イカ、前ノ通リ一緒ニスルガ宜イカハ、其節又御議論ガゴザイマセウカラ、其辺デ宜シウゴザイマセウ、サウ致シマスト、七名ト云フ御説デアリマスガ、是ハ御投票ニナリマスカ
○十六番(益田克徳君) 議長ノ御指名ヲ願ヒマス
○十五番(浜岡光哲君) 賛成
○十四番(金子堅太郎君) 賛成
○二番(藤田四郎君) 賛成
○議長(伯爵佐野常民君) ソレデハ此第二諮問案ハ、委員ニ附託シテ其方法等ヲ詳シク調査シテ貰フト云フコトデ、委員ハ七名トシテ、其指名ハ議長デ指名致スガ宜イト云フ、唯今ノ御説デゴザイマスガ是ヲ衆議ニ問ヒマス
○七番(益田孝君) チヨツト伺ヒマス、此委員ハ重大ナコトデゴザイマスカラ、大分時日モ掛リマセウト思ヒマス、サウスルト開会ガサウ長ク続キマスカ、若クハ又ソレガ一度ニ済マヌトキハ継続シテ委員ガ調ベテ、此次ノ会ヘ御持出シニナリマスカ、皆用事ノ都合モゴザイマスカラ、一応伺ツテ置キマス
○議長(伯爵佐野常民君) ソレハ開会中ニ御報告ニナツテ、議決ガ出来マスレバ此上モナイコトデスガ、又委員ノ調ベニ依リマシテ開会中ニ報告ガ出来ヌ、尚ホ篤ト調ベナケレバナラヌト云ヘバ、其時ニ御衆評ノ方ガ宜シウゴザイマセウ、先ヅ今ノ所デハ御調ガ出来レバ開会中ニ御調ヲ願フト云フコトニ……
○四番(男爵鈴木大亮君) 委員説ニ付イテ御採決ニナリマシテハ如何デスカ
○議長(伯爵佐野常民君) ソレデハ、唯今ノ委員ヲ附託スルト云フノ一番ノ建議ニ賛成ガアリマス、ソレニ御同意ノ御方ハ御起立ヲ願ヒマス
  起立者  多数
 多数デゴザイマス


第一回農商工高等会議議事速記録 第二五一―二六〇頁 明治三〇年四月刊(DK230037k-0004)
第23巻 p.360-366 ページ画像

第一回農商工高等会議議事速記録  第二五一―二六〇頁 明治三〇年四月刊
明治二十九年十月二十三日(金曜日)午前九時五十分開議
          出席者
            議長  伯爵 佐野常民君
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            一番     大倉喜八郎君
            二番     藤田四郎君
            三番     藤田伝三郎君
            四番  男爵 鈴木大亮君
            五番     原善三郎君
            七番     益田孝君
            八番     安藤太郎君
            九番     山本亀太郎君
            十一番    渋沢栄一君
            十三番    近藤廉平君
            十四番    金子堅太郎君
            十五番    浜岡光哲君
            十六番    益田克徳君
            十七番    藤井三郎君
            十八番    森村市左衛門君
            十九番    土居通夫君
            二十一番   添田寿一君
          欠席者
            十番     中上川彦二郎君
            二十番    広瀬宰平君
○中略
○議長(伯爵佐野常民君) ○中略 ソレカラ第二諮問案ニ対スル委員方ノ御調査ノ報告ガゴザイマス、是ヲ朗読致サセマス
   〔有賀幹事朗読〕

    第二諮問案委員会決議
  本会ハ、政府カ従来執リ来レル横浜正金銀行ノ業務拡張ノ方針ヲ益々増進セラルヽコトヲ必要トシ、例ヘバ香港上海銀行ト比較シテ業務上優者ノ地位ニ立ツコトヲ力メ、殊ニ清国ニ向テ業務ヲ拡張スルニ当テハ彼ノ商習慣ニ伴フノ方針ヲ執リ、就中台湾ノ如キニハ可成速カニ支店ヲ設置セシムルヲ緊要ナリト信ス、内地ノ有力ナル銀行ニシテ又海外金融機関トノ取引ヲ開始スルモノアリテ他日其ノ業務拡張上必要ナリトセハ、政府ニ於テ見込アリト認ムルトキハ、一方ニ於テハ日本銀行ニ対シ兌換銀行券保証準備発行ノ制限ヲ緩メ、一方ニ於テハ日本銀行ヲシテ其銀行ニ対シ再割引ノ便宜ヲ付与セシムル等相当ノ奨励方法ヲ設ケ、以テ貿易ノ発達ヲ隆盛ナラシメラレンコトヲ望ム
  右及御報告候也
   明治廿九年十月廿二日      委員 大倉喜八郎
                   同  益田孝
                   同  安藤太郎
                   同  山本亀太郎
                   同  森村市左衛門
                   同  土居通夫
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                   委員 添田寿一
    農商工高等会議々長 伯爵 佐野常民殿

○十四番(金子堅太郎君) 私ハ委員長デモ、又委員ノ中ドナタデモ宜シウゴザイマスガ、御説明ヲ願ヒタウゴザイマス、香港上海銀行ト比較シテ「業務上優者ノ地位ニ立チ」ト云フノハ、ドウ云フ御趣意デゴザイマスカ
○二十一番(添田寿一君) 唯今十四番カラ御尋ネモゴザイマシタガ、此委員会ノ経過ヲ申上ゲルノガ順序ト思ヒマス、ソレヲ申シマシタラ其間ニ自ラ十四番ノ御尋ネナスツタコトモ御了解ガ願ハレルヤウニナリハセヌカト存ジマスノデゴザイマス、此第二諮問案ハ本会デモ余程重キヲ置カレマシタルモノト見エマシテ、特ニ七名ノ委員ト云フモノヲ御指名デ選定ニナツタノデゴザイマスカラ、委員会モ鄭重ニ致シタ積リデゴザイマス、不肖ノ私ハ委員長ニ投票サレマシテ甚ダ慚愧ニ堪ヘマセヌデゴザイマスガ、能ク各員ノ御意見ヲ窺ツテ置キタイト存ジマシテ、大略三段ニ論点ヲ分ケマシタノデゴザイマス、第一ニ此正金銀行ニ向ツテ如何ナル改良ヲ促スベキデアルカ、正金銀行ハ如何ナル点ニ於テ貿易従事者ニ不満足ヲ与ヘテ居ルカト云フコトヲ皆サンニ御尋ネ致シマシタ、第二ニ他ニ正金銀行ニ類似スル貿易専務ノ銀行ヲ必要トスルヤ否ヤ、第三ニハ果シテ必要アリトセバ、其設置ノ方法並ニ是ニ向ツテ与ヘル所ノ奨励方法如何ト云フ、先ヅ三ツノ点ニ付イテ委員ノ意見ヲ尋ネマシテゴザイマス、第一ニ付キマシテハ余程種々ナル御意見ガ出マシタノデ、是ハ昨日総理大臣兼大蔵大臣ノ御言葉ニ拠リマシテモ、成ルベク表白致シテ置ク方ガ其希望ニ適フ訳デアラウト存ジマスカラ、少シク御退屈デアルカモ知レマセヌケレドモ、重モナル点ダケヲ本会ニモ申上ゲテ置ク方ガ宜カラウト存ジマスノデゴザイマス、先ヅ最モ此コトニ付イテ熱心ニ述ベラレマシタ中ニ就キマシテ、益田委員ノ如キハ、ドウシテモ此正金銀行ト云フモノヽ業務ノ程度若クハ標準ト云フモノヲ定メテ置カナケレバナラヌ、是ハ改良ヲ促スニ臨ンデモ如何ナル程度ニ於テ是ヲ促スベキデアルカト云フコトノ標準ガ必要デアルト云フ御趣意カラ、先ヅ以テ香港上海銀行ト云フノ程度マデ位ニ発達セシムルノ必要ガアルト云ア御説デゴザイマシタ、成ルベク香港上海銀行ガ為ス事件ノコトダケハ正金銀行ニシテ貰ハウト云フ御希望デアルノデゴザイマス、其他同委員ノ御説ノ中ニ随分此英・米・印度アタリノ出張所ニ於キマシテハ、上海銀行ニ較ベテモ恥カシカラヌヤウニ業務ガ機敏ニ行ハレテ居リマスケレドモ、全体ニサウデナイ殊ニ此正金銀行ニ向ツテ大ニ望マナケレバナラヌノハ、支那ノ北部例ヘバ牛荘ノ如キ所ニ於テハ、殆ド重キハ置イテ居ラヌヤウデアルガ、是等ノ点ハ余程将来我貿易ヲ拡張スル上ニ於テハ欠点ト云ハナケレバナラヌ、又最モ治湾ノ如キハ他ト違ツテ、ドウシテモ正金銀行ト云フモノハ其手腕ヲ伸サナケレバナラヌ所デアル、又今日ノ資本ノ如キデハ或ハ他日不足ヲ告ゲルカモ知レヌカラ、将来ニ於テハ益々資本ヲ増加シテモ貿易ヲスル者ノ必要ニ応ジナケレバナラヌノ
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デアル、其他支那人ヲ相手ニスル場合ニ於テハ、成ルベク其信用ヲ得、是等ト競争シテ営業上便益ヲ充分其華主ニ与ヘルヤウニ勉メナケレバナラヌノデアルト云フヤウナ点ガ、重モニ述ベラレタ所デアリマス、又大倉委員ノ如キハ、戦争前マデハ余程正金銀行ノ働キガ不完全デアリマシテ、ソレガ為ニ今日外国銀行ニ依頼シテ居ル場合デアツテ、例ヘバ香港上海銀行ノ如キニ営業上取引ヲ為ス方ガ便益デアルト云フ如キニ至ラシメテ居ルノデ、是ハ改良スベキ必要ノ点デアル、又委員《(同脱カ)》モ台湾ノ如キニ支店ヲ置クト云フノハ必要デアルト申サレマシタノデゴザイマス、森村委員ニ於キマシテハ、今日正金銀行ハ余程改良ヲ加ヘテ居ルカラ、此上ハ鞭韃ヲ加ヘルノ必要ハ殆ド御認メナサラヌヤウデゴザイマスノミナラズ、目下頭取モ英国ヘ参ツテ居リマシテ種々攻究ノ際デゴザイマスカラ、其帰ツタ上ニ於テ業務ノ改良ト云フコトヲ怠ルナラバ、其時ハ皷ヲ鳴ラシテ責メルガ宜シイガ、マダ今日其調査モ出来上ラヌ際ニ是ニ難キヲ求メルコトハ如何アランカト云フヤウナ御考デアリマス、ソレカラ山本委員ノ如キモ、正金銀行ハドウモ業務ノ確実ヲ貴ブカ知ラヌガ、十万円ノ資本ヲ送ルニハ二十万円ノ資本ガ要ルト云フコトハ余程不便ナコトデアル、殊ニ米国ニ在ル出張店ナドノ正金銀行ノ役員ハ、華主ヲ取扱フノニドウモ少シク尊大ニ流レルヤウナ弊ガアルト云フヤウコトヲ述ベラレマシタ、併シ就中神戸ノ如キハ大ニ近来改良ヲ認メルト云フコトノ説デアリマシタ、ソレカラ土居委員ノ如キハ、ドウシテモ今日増加スル貿易ニ向ツテ唯一ノ正金銀行デ甘ンズルト云フコトハ、数ノ上ニ於テ出来ナイコトデアル、ソレデドウシテモ此正金銀行ノミヲ責メルト云フコトデハ満足ガ出来ナイヤウナ御考ノヤウニ認メマス、ソレカラ第二ノ点ニ付キマシテハ、即チ今ノ土居委員ノ御話カラ殆ド関聯シテ御分リニナルデゴザイマセウガ、総テドノ委員ノ御方モ、他ニモウ一ツモ二ツモ有力ナル貿易銀行ガ出来レバ是ニ越シタルコトハナイト云フコトヲ異口同音ニ述ベラレマシテゴザイマス、此点ニ付キマシテハ最早略シテ申上ゲマセヌ、ソレカラ第三ノ点ガ余程苦心ヲ致シタ点デアリマス、果シテ他ニ銀行ガ入用デアルト云フナラバ其方法如何、又奨励ノ方法如何ト云フ点デアリマシテ、是ニ付キマシテハ大倉委員ノ如キハ、ドウシテモ国家ガ金銭ヲ以テ貿易銀行ノ業務ヲ奨励スルト云フヤウナコトハ甚ダ宜シクナイ、殊ニマダ銀行ガ出来ナイ先キニ保護金ヲ以テ釣リ出スト云フコトハ大変弊害ノアルコトデ、出来タ上ニ相当ノ方法ヲ以テ奨励スルニアラザレバ宜シクナイト云フ御説デゴザイマシタ、又益田委員ノ如キモ、ドウモ詰ラヌ保護保護ト云フ言葉ハ御免蒙リタイト云フコトガ、余程御熱心ノヤウデゴザイマシタ、其他ノ委員ニ於カレマシテモ、大概此点ニ於キマシテハ今申上ゲマシタ辺ト同様ニ認メマス、ドウシテモ濫リニ保護ヲスルト云フコトハ宜シクナイ、又保護金ナドヲ見当テニ銀行ヲ起サセルト云フコトハ宜シクナイ、ソレデ内地ノ確実ナル銀行ガ例ヘバ出来タ上ニ於テ多少外国為替ノ上ニ業務ヲ拡ゲテ、其上ニ於テ尚ホ進ンデ之ヲ拡張スルト云フ際ニ必要ナルトキハ、相当ノ保護ヲ与ヘルコトハ宜シイト云フコトニ、大概帰
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着シタヤウデアリマス、ソレデ詰リ方法ハ色々御尋ネシマシタケレドモ、其方法ハ殊ニ現金ナドヲ以テ交付スルト云フコトハ……国費ヲ以テ保護ヲ与ヘルト云フコトハ宜シクナイト云フ御説デゴザイマシテ、結局再割引ノ方法ヲ以テスル外ナカラウト云フコトニ帰シマシタノデアリマス、ソレデ昨日モ総理大臣兼大蔵大臣カラ、成ルベク其行ハレルヤウナ方法マデ具シタラ宜カラウト云フ御注意モゴザイマシテ、唯再割引ト云フダケデハ少シク方法ヲ講ズルノガ不親切デアルト云フ嫌ヒガゴザイマシタ、故ニ更ニ此再割引ヲ日本銀行ニナサシムルニ付イテハ、彼ノ八千五百万円ト今日限ラレテ居ル、保証準備兌換銀行券発行ノ制限ヲ多少拡張シテナリト、此再割引ノ必要ガ起ツタトキニハ充分日本銀行ハ喜ンデ為シ、之ニ向ツテ難キヲ求ムルコトガナイヤウニシナケレバナラヌト云フコトデ、詰リ最前御朗読ニナリマシタ所ノ決議案通リ決議ヲ致シタ訳デゴザイマス、是ダケデ十四番ニ御了解ヲ願ハレマスレバ幸ヒデゴザイマスガ、尚ホ足リマセヌナラバ御質問ヲ願ヒマス
○十四番(金子堅太郎君) モウ一ツ伺ヒマス、「内地ノ有力ナル銀行ニシテ又海外金融機関トノ取引ヲ開始スルモノアリテ」トアル此海外金融機関ト云フノハ、外国ノ銀行ト云フコトデアリマスカ、又ハ銀行ノ外ニ金融機関ガアルノデゴザイマスカ、金融機関ト云フノハ矢張外国ノ銀行ト云フコトデゴザイマスカ
○二十一番(添田寿一君) 左様デゴザイマス
○十四番(金子堅太郎君) 分リマシタ、私ハ此問題ニ付イテハ前々カラ度々申シマシタ通リ外国貿易ノ上ニ於テ最モ必要デアラウト思ヒマス、又世人モ此コトニ付イテハ、余程注目シテ居ルコトデアリマス、此御答申ト云フモノガ政府ヘ出マスレバ、是ニ拠ツテ大蔵省ハ勿論、又農商務省ナドモ大ニ将来ノ方針ヲ定メ、即チ高等会議ノ決議ニ依ツテ実業家ノ建議ガアレバソレニ答ヘ、又実業家ニ向ツテ奨励ノ力モ尽サナケレバナラヌコトデゴザイマスカラ、何卒文字ハ余リハツキリ書キ過ルノモ宜シクナイガ、又余リ曖昧ニナラヌヤウニ私ハ希望スルノデゴザイマス、拝見致シマスト、少シ修正ヲ願ヒタイノデ、ソレハ趣意ニ於テハ聊カ違ヒハ致シマセヌガ「此方針ヲ益益増進セラルヽコトヲ必要トシ、例ヘバ香港上海銀行ト比較シテ業務上優者ノ地位ニ立ツコトヲ力メ」ト云フノハ、或ハ銀行ナドニ御関係ノ人ニハ御分リデゴザイマセウガ、今添田君カラ委員ノ御決議ノ精神ヲ拝聴致シマシタ、即チ此案ハ海外貿易ニ最モ必要ナルモノデアルカラ、香港上海銀行ト比較シテ「海外貿易ニ緊要ナル設備ヲ完全ニシ」其業務上優者ノ地位ニ立ツコトヲ力メ」ト云フ一句ヲ此間ヘ入レタウゴザイマス、其理由ハ香港上海銀行ト比較シテ業務上優者ノ地位ニ立ツト云フト、コチラガ上海「ばんく」ヨリハ成ルベク利息モ余計取ルヤウニシ、総デ人員等ヲ増スト云フヤウナコトニ見ヘル、何ノ為ニ業務上優者ノ地位ニ立タシメルカト云ヘバ、是ハ宇内各国ノ海外貿易ニ必要ナル金融機関ノ設備ガアツテ、ソレデ上海香港「ばんく」ト比較シテ完全デアリ、宇内各国公ケニ行ハレル一般ノモノニ比較シテ信用モアリ、又資金ノ備附ケ等総テノコトヲ
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言フノト見ヘマスカラ、願ハクハ諸君ノ御賛成ヲ得テ、成立チマスレバ、私ハ比較シテト云フ下ヘ「海外貿易ニ緊要ナル設備ヲ完全ニシ」ト云フ文字ヲ入レタウゴザイマス、其次ハ殊ニ「清国ニ向テ業務ヲ拡張スルニ当テハ彼ノ商習慣ニ伴フテ」ソレデモ分ツテ居リマスガ、彼ノ商習慣ト云フノヲ「彼国特殊ノ商習慣」ト云フコトニシタイト思ヒマス、随分支那ト云フ国ハ色々特殊ノ習慣ガゴザイマシテ、例ヘバ広東・牛荘・芝罘ハ上海アタリトハ違ヒ、又昨日委員会デ拝聴シマシタヤウニ蘇州・杭州ヘ参ルト矢張其地方地方ノ模様ガ違ヒマス、斯ウ云フヤウナ訳デアリマスカラ「彼ノ国特殊ノ」ト云フ字ヲ入レタイ、ソレデ「就中台湾ノ如キニハ可成速ニ支店ヲ設置セシムルハ緊要ナリト信ズ、内地ノ有力ナル銀行ニシテ又海外金融機関トノ」トアル此「又」ハ「信ズ」ノ下ヘ往クベキノガ、或ハ顛倒シタノデアラウト思ヒマス、是ハ文字ノコトデスガ「信ジ」ト云フノデ是デ正金銀行ノコトガ済ンデ、又内地ノ有力ナル銀行ニシテ又ト云フ字ハ上ヘ御入レナスツタ方ガ宜シクハアリマセヌカ、ソレカラ「海外金融機関トノ取引ヲ開始スルモノアリテ」トアル、此金融機関ハ独リ銀行ノミデハナイト云フ解釈ガ随分ナキニシモアラズデ、今二十一番ノ御説明ニ依レバ外国銀行ト云フコトガ明カニ分ツテ居リマス、ソレデ唯金融機関ト云フト、倉入証書ノ取引ナリ倉庫会社トモ保険トモ、色々ノモノト取引ヲ開始スルヤウデアリマスカラ「又内地ノ有力ナル銀行ニシテ外国銀行トノ取引ヲ開始スルモノアリ」ト斯ウ御直シヲ願ヒタウゴザイマス、サウスルト此趣意ハ聊カモ傷ケマセズ、御精神モ貫徹シ又我々責務ヲ持ツ者ノ為ニモ明カニナリマスカラ、修正案ヲ提出致シマス
○十五番(浜岡光哲君) 第二御諮問案ニ対スル委員会ノ報告ハ承知致シマシタ、此文章論ニ付イテハ種々異議モゴザイマセウガ、文章ニ書キマスト、是位ノコトデ御諮問案ニ対スル委員会ノ報告ヲ完全ナモノト存ジマス、尚ホ十四番カラ御注意ノアリマシタ此文章ノ字句ニ至ツテハ、多少加ヘネバナラヌ所モアリ、削ラナケレバナラヌ所モゴザイマスガ、此点ハ幹事ニ御任セシマシテ纏メルコトニシテ、此趣意ダケヲ賛成致シマス
○十一番(渋沢栄一君) 字句ノ修正ノコトガ金子君カラ出マシタ、私モ修正ヲ試ミタイト思ヒマスガ、余リ文字ニ拘泥スルヤウデゴザイマスカラ全体ニ付イテ申シマス此「就中台湾」ト云フ字ダケハドウシテモ御取換ヲ願ヒマス、就中台湾ト云フト支那ノ領分ノヤウニ見ヘマス、ソレデ是ハ「又」ト段ヲ換ヘテ言フタ方ガ宜カラウト思ヒマス、「又台湾ノ如キハ」ト斯ウ「就中」ヲ「又」ト云フ字ニ御修正ガアリタイト思ヒマス、其外「優者ノ地位ニ立ツコトヲ力メ」ト云フノハ寧ロ「立タシムル」ト云フ方ガ宜カラウト思ヒマス、其他字句ノ修正ヲ申セバ色々アリマスガ、就中ト云フ文字ニ付イテハ最モ修正アラムコトヲ希望シマス
○廿一番(添田寿一君) 至極御尤モノ御忠告デゴザイマスカラ、委員ニ於キマシテハ異議ハゴザイマセヌ、「就中」ト云フ字ヲ「而シテ」ト換ヘマシテ、「又」ト云フ字ヲ内地ノ「内」ノ字ノ上ニ願ヒマスコ
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トニ……
○十一番(渋沢栄一君) 「而シテ」デモ「又」デモ宜シウゴザイマス
○二番(藤田四郎君) 文字ノコトハ十四番・十一番カラノ極必要ナル事柄ニ付イテ御話ガアリマシタガ、尚ホモウ一ツ申上ゲテ置キタイト思ヒマスノハ、有力ナル銀行ニシテ海外金融機関トノ取引ヲ開始スル云々トアリマスガ、金融機関ト云フ字ハ或ハ議長ニ於テ御直シナサルカ知レマセヌナレバ、先ヅ十四番カラ出マシタコトデゴザイマスガ、別ニ「トノ取引」ト云フト、何ンダカ是ニ向ツテ「これすぽんでんす」ノヤウナ文章ニ見ヘマスカラ、矢張是ハ「金融機関ト取引ヲ開始スル」トシタウゴザイマス、「トノ」ト云フコトニナルトドウモ横文字カラ考ヘマスニ「これすぽんでんす」ノヤウニナリマスカラ、矢張是等ノ所モ御直シヲ願ヒタウゴザイマス、其他ノコトハ十四番・十一番ニ賛成シマス、随分直シタイ文字ガ外ニモ色々アリマスカラ、宜シク議長ニ於テ然ルベク御直シヲ願ヒタウ存ジマス
○十一番(渋沢栄一君) 大体ノ趣意ニ変ラヌ限リハ、文章ハ幾ラカ御修正ガアリタイヤウニ考ヘマス
○議長(伯爵佐野常民君) 唯文字・文章等ニ於テ御修正ノ意見ガ出マシタガ、大体ニ於キマシテ御同意デアツテ、文章ニ稍々修正ヲ加ヘマシテ提出ニナルヤウニト云フ御意見ニ御賛成モアリマスカラ、夫レニ就イテ今可否ヲ御尋ネ致シマス、御意見ノ大体ニ御同意ニナリ聊カノ文章ハ議長ノ方デ尚ホ修正ヲ加ヘマス、其通リニ可決スルト云フニ御同意ノ御方ハ御起立ヲ請ヒマス
  全会一致
 夫レデハ文章ハ出来マシタ上デ、尚ホ御報告致シマス

〔左ノ第二諮問案決議ハ議長ニ於テ修正セシモノナリ、但シ議場ニ朗読セサルモ参照ノ為メ玆ニ掲グ〕
  本会ハ、政府カ従来執リ来レル横浜正金銀行ノ業務拡張ノ方針ヲ益々増進セラルヽコトヲ必要トシ、例ヘバ該銀行ヲシテ香港上海銀行ト比較シ業務上優者ノ地位ニ立ツコトヲ力メ、殊ニ清国ニ向テ業務ヲ拡張スルニ当テハ彼ノ商慣習ニ伴フノ方針ヲ執リ、而シテ台湾ノ如キニハ可成速カニ支店ヲ設置スル等、海外貿易ニ緊要ナル設備ヲ完全ニセシムルヲ緊要ナリト信ス、又内地ノ有力ナル銀行ニシテ外国為替ノ業ニ従事スルモノアリテ、他日其業務拡張上必要ヲ生シ政府ニ於テ相当確実ナリト認ムルトキハ、日本銀行ニ対シ兌換銀行券保証準備発行ノ制限ヲ緩メ、日本銀行ヲシテ其銀行ニ対シ再割引ノ便宜ヲ付与セシムル等相当ノ奨励方法ヲ設ケ以テ貿易ノ発達ヲ隆盛ナラシメラレンコトヲ望ム
   ○横浜正金銀行以外ノ海外金融機関ハ設置サレザリキ。本件ニ就イテハ本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治二十九年三月十二日・同年四月二十五日・同三十二年一月十九日・同三十四年九月十五日ノ各条、並ニ本資料第二十二巻所収「商業会議所聯合会」明治三十五年十二月九日ノ条参照。



〔参考〕明治財政史 同史編纂会編 第一三巻・第八八二頁 明治三八年二月刊(DK230037k-0005)
第23巻 p.366-367 ページ画像

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冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。