デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

8章 政府諸会
1節 諮問会議
6款 農商工高等会議
■綱文

第23巻 p.409-428(DK230040k) ページ画像

明治29年10月21日(1896年)

是日第一回第三日ノ会議ニ於テ、海外通信ノ設備ヲ完全ニシ其報道ヲ敏速ナラシムルノ方法ニ関ス
 - 第23巻 p.410 -ページ画像 
ル諮問案審議サレ、特別委員附託トナル。二十三日第五日ノ会議ニ於テ、領事館ノ増設・改善其他ヲ内容トスル委員決議案可決セラル。栄一之ニ与ル。


■資料

第一回農商工高等会議議事速記録 第一六六―一九一頁 明治三〇年四月刊(DK230040k-0001)
第23巻 p.410-426 ページ画像

第一回農商工高等会議議事速記録  第一六六―一九一頁 明治三〇年四月刊
明治二十九年十月二十一日(水曜日)午前九時四十分開議
          出席者
            議長  伯爵 佐野常民君
            一番     大倉喜八郎君
            二番     藤田四郎君
            三番     藤田伝三郎君
            四番  男爵 鈴木大亮君
            五番     原善三郎君
            七番     益田孝君
            八番     安藤太郎君
            九番     山本亀太郎君
            十番     中上川彦二郎君
            十一番    渋沢栄一君
            十四番    金子堅太郎君
            十五番    浜岡光哲君
            十六番    益田克徳君
            十七番    藤井三郎君
            十八番    森村市左衛門君
            十九番    土居通夫君
            二十番    広瀬宰平君
            二十一番   添田寿一君
          欠席者
            十三番    近藤廉平君
○中略
○議長(伯爵佐野常民君) 是ヨリ今日ノ第五諮問案ニ取掛リマス
   〔織田幹事朗読〕
  第五諮問案
    海外通信ノ件
海外ニ於ケル農商工業上ノ通信ヲ盛ニシ其情況ヲ詳知スルハ貿易上必要ノ条件タリ、従来帝国領事海外各地ニ駐在シ、常ニ通信報告ヲ怠ラス当業者ニ便益ヲ与フルコト少カラスト雖モ、今日我邦ノ海外貿易ハ日ニ月ニ隆昌ニ赴キ、尚ホ海外通信ノ設備ヲ一層完全ニシテ其報道ヲ敏活ナラシムルノ必要ヲ認メ、玆ニ其方法ヲ諮詢ス

〔左ノ参照ハ朗読ヲ経サレトモ参考ノ為メニ掲ク〕
 参照第一号
 ○商業交際官並領事増置 英国政府ニ於テノ商業交際官並ニ領事増置ノ件ニ付、倫敦駐在帝国一等領事林権助ヨリ去月一日附ヲ以テ左
 - 第23巻 p.411 -ページ画像 
ノ如ク報告アリ(明治廿九年九月十五日官報第三千九百六十六号公使館及領事館報告欄内記事ニ依ル)昨廿八年十一月九日本欄内参看
  昨年九月ニ於テ英国下院ニ起レル商業交際官ヲ増置スル議論ニ関シ其大要ヲ報告シタリ、当時増置ノ議論ハ寧ロ其要領ヲ得スシテ止ミタリシカ、其報告中ニ記載セル如ク商業交際官ヲ増置スルノ議論ハ当国ニ於テ有力実業者中ニ行ハレ居タルタメカ、当国政府ハ愈々増置ノ緒ヲ開ケルコトハ過日下院ニ於テ外務次官「カルゾン」ノ弁明ニ依リテ明ナリ、其言ニ拠レハ政府ハ今回二人ノ商業交際官ヲ増置スルコトニ決シ、一ハ伯林ニ駐在シテ独逸・和蘭及瑞典・諾威ノ諸邦ヲ監視シ、一ハ「マドリツド」ニ駐在シテ西班牙及葡萄牙ノ二邦ヲ監視スルコトヽ為ス計画ナリ、而シテ従来派遣シアル仏国巴里駐在ノ商業交際官ヲシテ仏蘭西・白耳義及瑞西ヲ注察セシメ、聖得堡ニ駐在スル者ヲシテ露国及欧洲西東部ヲ注察セシムルコトヽ為セリ
  英国政府ハ右商業交際官ヲ増置スルノ外、新ニ暹羅ニ二領事ヲ派シ清国新開港及雲南ニモ亦領事ヲ派スルノ議アリ
 ○英国商業交際官 英国ニ於ケル商業交際官増置ノ議ニ関シ、倫敦駐在帝国一等領事林権助ヨリ本年九月廿五日附ヲ以テ左ノ如ク報告アリ(明治廿八年十一月九日官報第三千七百十一号公使館及領事館報告欄内記事ニ依ル)
  英国下院ニ於テ在外々務官吏ノ予算ヲ議スルニ当リ適々商業交際官増置ノ発論ヲ聴ケリ、「サー・アルバルト・ローリツト」ハ国会議員タルノ外倫敦商業会議所会頭トシテ内外ニ知ラレ商業社会ニ重セラルヽノ人ナリ、氏ハ発論シテ商業交際官ヲ増置スルノ必要ヲ説キ、此官ハ英国外交官中仏国及露国ニ於テ唯二名(外ニ君士坦丁ニ一名アリトノ事ナリ)ヲ有スルノミナリ、尚ホ之ヲ置カント欲スル場所ハ欧洲ニ於テハ伯爾加里地方ニ一名、亜米利加ニ在リテハ中央及南米地方ニ一名、合衆国ニ一名、及東亜ニ於テ一名ニシテ、殊ニ将来起ラントスル日本ノ商工業ヲ注察セシムルノ要アルコトヲ主張セリ
  本論即チ商業交際官増置ノ議論ハ蓋シ前年来屡々起リタル問題ニシテ、之ニ反対スル者ノ言ニ曰ク、商業交際官ヲ増置スルトキハ他ノ大使館若クハ公使館ニ在勤スル普通外交官ハ、其駐在国ニ於ケル商工業及財政状況ヲ視察スルコトヲ慢ルヘシト、又曰ク適当ナル商業交際官ヲ求メント欲セハ非常ノ高俸ヲ給スルニアラサルヨリ其人ヲ得ルコト難ク、又之カ増置ニ対シテハ弊害・困難随伴スト、前商務院長「プライス」及現任内務大臣ノ如キハ此反対ノ説ヲ抱ケル趣ニテ、「サー・アルバルト・ローリツト」ノ希望ニ対シ、外務次官「カルゾン」ハ前言ヲ引キテ暗ニ之ヲ施行スルニ躊躇スルノ意ヲ示セリ
  此論ノ議会ニ発シタルハ単ニ奇ヲ好ムノ故ニアラスシテ、実業者多数ノ希望ヲ代表セルモノナリ、商業交際官ナル者ノ得失論ハ暫ク之ヲ措キ、一両年前以来此国実業者間並ニ商業会議所等ニ於テ之カ増置ヲ希望セルコトハ、実業者ノ団体ヨリ成レル商業会議所ノ決議案ニ依リテ之ヲ証スルニ足レリ、近年何ノ商工業ヲ問ハス外国ノ競争切ニ其歩ヲ進メ来レルコトハ此希望ヲ促シタルノ原因
 - 第23巻 p.412 -ページ画像 
ニシテ、尚ホ一層外交ノ力ヲ借リテ外国市場ノ状況ト商工業ノ進歩トヲ探リテ商戦ノ競争ニ勝ヲ制セント欲スルノ念慮ニ基ケルモノナリ、蓋シ普通外交官ハ智能ク通商工業ノ利害ヲ察スルノ明ヲ欠クコトアリ、又領事館ハ其職務一地域ノ局部ニ限リ、勢ヒ一国全体若クハ数国ニ渉レル商工業ニ注意スルコト能ハサルヲ以テ、商業交際官ナル者ヲシテ普通外交官ト領事官トノ間ニ立タシメ、通商上ノ視察ニ遺憾ナカラシメント欲スルナリ、今英国論者ノ希望スル所必スシモ一国ニ一名ヲ置カント欲スト云フニアラス、其希望スル所全世界中唯四・五名ヲ増置セント云フニアルヲ以テ、此事タル難事ト云フヘカラス、依テ本論ノ将来ヲ察スルニ若シ或ハ増置ノ実施ヲ見ルコト能ハスンハ、外交官ノ職務ニ通商視察ノ事項ヲ加フルコト従前ニ倍スルノ傾向ヲ生セン
  「サー・アルバルト・ローリツト」ハ英国領事官ノ数ト諸外国領事官ノ数トヲ比較シ、商業ノ割合ニ於テ英国領事ノ数ハ寡少ナルコトヲ論セリ、今其比較数ヲ見ルニ左ノ如シ
            人             人
    英吉利   七八六     伊太利   七二四
    仏蘭西   九五七     西班牙   七六一
    独逸    六五四     葡萄牙   五八一
    白耳義   四四八
  以上領事ノ数ニハ、所謂名誉領事ナル者ヲ含有セルハ論ヲ俟タサレトモ、其数ヲ以テ僅々三十七・八名(名誉領事ヲ含有シテ)ノ我帝国政府ノ領事ノ数ニ比スレハ甚シキ差違アルヲ見ルナリ、世界ノ市場ニ於テ自国ノ商利ヲ進メント欲セバ、実ニ商業者並工業者自身ノ勉強ト経営トニ由ルヘキコト勿論ナリト雖モ、外交ノ力ヲ待チテ競争上一歩タリトモ勝ヲ制セント欲スルコトハ近来各商業国ノ執ル所ノ方針ナリト云フヘシ

○幹事(織田一君) 此海外通信ノコトニ就キマシテハ諮問案ニ出イテアリマスル通リ、領事ガ今マデモ十分報告ヲ致シテ居リマシタガ、尚ホ此通信ヲ一層盛ンニシテ貰ヒタイ、便益ヲ開イテ貰ヒタイト云フ意見ガ、商業会議所初メ実業団体カラ出テ居リマス、其方法ニ就キマシテハ、或ハ領事館ヲモツト殖ヤシテ貰ヒタイト云フノモアリマスシ、領事館ノ中ニ商業上ノ通信ノミナラズ、製造法トカ物品ノ性質トカ、又ハ製造法ノ改良方法トカ、又ハ美術ニ関係シタ技術専門ノ人ヲ置イテ、其方ノ通信ヲ盛ンニシテ貰ヒタイト云フ説モアリマス、又今年ヨリ英国ガ拡張致シマス「こんまーしある・あツたツせー」領事ノ外ニ此通信ヲ専門ニスル所ノ商業通信官ト云フ特別ナル人間ヲ置イタガ宜カラウト云フ御説モゴザリマス、旁々今日ノ通信デハマダ不十分デアル、我日本国ハ外国ト商業上ノ有様ガ違ツテ居ル、風俗モ言葉モ違ツテ居ルカラ、海外各国ガ各々通信ノコトニ勉メテ居ルヨリモ尚ホ一層通信ノコトヲ勉メ、我商業上並ニ工業上ニ有ル所ノ不便ヲ補ツテ貰ヒタイト云フ説モゴザリマス、其方法ハ前ニ申ス通リ幾通リモゴザリマスガ、□ノ方法《(何カ)》ガ宜イカト云フコトニ就イテ此諮問案ヲ提出ニナツタ訳デゴザリマスカラ、ドウゾ其ノ
 - 第23巻 p.413 -ページ画像 
御積リデ御討議アランコトヲ望ミマス
○十七番(藤井三郎君) 私ハ此海外通信ノコトニ就キマシテ、一応外務省ニ於テ今日ヤツテ居ル実際ノコトヲ、諸君ノ御聴キニ入レヤウト存ジマス、外務省ニ於テ今日領事ニ訓令シテ報告致サセマスルコトハ、月報ト年報ト臨時報告トノ三ツニ種類ヲ分ケテ居リマス、月報ト云フノハ其月ノ輸出入若クハ其月ノ商況ヲ翌月報告スル、年報ハ其他ノ一年ノ輸出入並ニ商況ヲ翌年早々ニ報告スル、臨時報告ト云フノハ臨時ニ気ノ附イタコト、若クハ財政上ニ変動ノアルコト、又ハ茶ノ如キ、生糸ノ如キ、石炭等ノ如キ、貿易ノ上ニ種々ノ変動ヲ起シタル時ハ、電報ヲ打ツナリ或ハ書面ナリデ時々報告ヲサシテ居リマス、随分是レハ周密ニヤラシテ居ル積リデアリマス、併ナガラ此領事ノ配置ノ数ト云フモノモ限ツテ居リマスルシ、中ニハ十分貿易ノ発達シテ居ラナイ所ヘハ置イテ居ナイ所モアリマス、例ヘバ朝鮮地方・上海・倫敦・里昂若クハ紐育ノ茶・石炭、若クハ生糸ノ如キモノニ就イテハ、随分細カク電報デモヨコシ、又書イタモノヲ始終送ツテ来マス、是レハ毎年色々ノ方法ヲ考ヘテ、官報ニ載セタリ、通商報告ヲ拵ヘタリ通商彙纂ト云フモノヲ拵ヘテ無代デ遣ツタリ、或ハ極ク安ク民間ノ人ニヤラシテ見タリシテ、成ルベク民間ノ人ノ読易イヤウニヤツテ居リマスルガ、何分世間ノ人ハ読マナイ、益ガナイカラ読マナイノカ、面倒嗅イカラ読マナイノカ、売レル高ノ少ナイノヲ見ルト読ム人ガ少ナイ、今千部バカリ出テ居リマスルガ此中ニ本統ノ商売人ハ幾ラモ読マナイ、唯々商売上ノ理窟ヲ云フ者ガ、小言ヲ云フ時ノ材料ニ読ムノガ実際ニアルヤウデゴザリマス此領事ノ報告ト云フモノモ外務省カラ始終督促致スノデアツテ、当業者カラ促ガサレテ起ツタモノデハナイ、是レハ自分ニモ経験ガアリマスガ、森羅万象何デモ領事ニ持ツテ来ル、例ヘバ有馬ノ竹細工岐阜ノ提灯ナドヲ送ツテ来テ其嗜好ヲ調ベテ呉レトカ、或ハ軍艦ノ新発明ガアツタガドウ云フ風ニ造ルノデアルカ、或ハ電気デ金ヲ鍍スル発明ガアルガ是レハドウスルノデアルカト、実ニ籠・提灯ノヤウナモノカラ、其技術者デアツテモ殆ンド夫レヲ仕立テナケレバ分ラヌ電気ノ作用ト云フヤウナコトマデ、実ニ何デモ彼デモ領事館ニ聴キニ来ル、是レハドンナ人ガ居ツテモドンナ領事ガ居ツテモ、之ニ就イテ満足ナル報告ヲ与ルコトハ出来ナイ、又商売ノコトニ就イテモ、亜米利加ノ大統領ノ選挙ハドウ云フ風デアルカト云フヤウナコトノ報告ハ出来ルガ、来年ハドウ云フ形ノ扇子ガ売レルカ、着物ハドウ云フ模様ノモノガ売レルカト云フヤウナコトハ殆ンド領事デハ分ラナイ、此処ニ御出デノ浜岡サン・森村サンハ、紐育デ商売ヲシテ御出ナサルカラ御分リデセウガ、其家ニ行ツテ話シテ呉レト言ツテモ、一向存ジマセヌ知リマセヌト言ツテ置イテ、巴里ヤラ倫敦ニソツト送ツテ御出デニナルヤウナモノデ、向フニ行ツテモ実際商売ヲシテ居ル者ハ話シテ呉レヌ、決シテ自分ノ益ノアルコトハ領事ニ話シテ呉レヌカラ、到底領事其者ガ報告スルコトハ一般ノ商業ニ関シテ過去ノコトニ推考シテ、未来想像ヲ報告スルヨリ他ニハ出来ナイノデアル、私ノ考ヘデハ是レハ領事ノ悪ルイノデハナイ、誰ガ
 - 第23巻 p.414 -ページ画像 
行ツテモ其通リデ決シテ之ニ優ツタ報告ハ出来ナイト思ヒマス、勿論技術ニ向ツテハ特ニ金ヲ遣ツテ、亜米利加人ナリ英吉利人ニ頼ンデ、報告サスルノガ便利デアル、例ヘバ倫敦ノ「ゑこのみすと」ノ記者ニ頼ンデ報告サセテモ宜イ、併シ商業上ノコトハ向フノ者ニ報告サシテモ、向フノコトハ能ク分ルカ知リマセヌガ、日本ト関係シタ所ノ結附キヲ知リマセヌカラ、唯々金ガ掛ツテ日本ノ商人ヲ益スルヤウナ報告ハ出来ヌト考ヘマス、私ノ考ヘマスル所デハ、領事館ノ数ヲ追々殖スヨリ仕方ハアリマスマイ、来年カラ領事ノ数モ殖ヤス積リデアリマスガ、外務省ハ其領事ヲ監督シテ能ク報告ヲサセ、又当業者モ調ベルコトガアレバ、此領事ニ依頼シテ調ベルト云フヨリ、他ニ妙案ハ無カラウト思ヒマスケレドモ、諸君ニ於テ夫レニ優ル妙案ガアレバ喜ンデ賛成シヤウト思ヒマス
○十五番(浜岡光哲君) 此第五諮問案ハ表ニ現ハシマスルト、大変立派デアリマスガ、十七番ノ述ベラレマシタヤウナ有様デ余程ムツカシイ、ナゼカト云フト人ヲ得ルニムツカシイ、商業・工業ノコトガ能ク分ル人間デゴザリマシタナラバ、決シテ百弗ヤ百五十弗デ甘シテ向フニ居ル者ハナイ、サウスルト或ハ大学ヲ卒業シタ者トカ、或学校ヲ卒業シタ経済思想ノ有ル人トカヲ出スヤウニシナケレバナラヌ、夫等ノ人ヲ出シマシテ、差詰メ英吉利トカ或ハ亜米利加ニ投込ミマスレバ、亜米利加ヤ英吉利ノ事情ハ分リマスガ、日本トノ結附ガ附カヌ、日本デ商売ニ慣ルレバ皆惜ガツテ外ニ出サズ、自分モ出マスマイ、商館・商社等ニ置イテ居ル人ハ惜ンデ放サナイ、此事ハ誠ニヤリタイコトデアルガ、人ヲ得ルニ困難デアル、既ニ領事デサヘ日本ノ模様ヲ御承知ニナツテ居リ、彼方ノ模様ヲ知ツテ居ル人ヲ御遣リニナルノハ、余程困難デアラウト思フ位デアリマスカラ、況ンヤ商売ノ通信員ヲ撰ブト云フコトハ、十五番ハ人ヲ得ルニ困難ダラウト思ヒマス、人ガ無イ以上ハ商業ヤ工業ノ見習生ヲ出スヨリ他ニ仕方ハナイ、見習生ヲ出スト見レバ宜イガ、夫レデハ此御諮問案ノ御希望ニ副フト云フコトハムツカシイト考ヘマス、此諮問案ハ表ニ現ハシテ新聞紙ナリ雑誌ニ出シテハ立派ニ見ヘテ、其実効能ガ少ナイモノト思ヒマスカラ、此御諮問案ニ対シテ方法ヲ御答ヘスルコトハ出来ナイ、夫レ故ニ暫ク通信員ヲ置クコトハ、見合セラレタイト云フ考ヘデゴザリマス
○十四番(金子堅太郎君) 本案提出ノ理由ハ玆ニ委ハシク書イテゴザリマスガ、尚ホ少シク詳細ニ私ガ記憶シテ居ルダケヲ申シマスレバ海外通信ノコトハ今藤井君ガ御述ベニナツタ通リ、外務省ハ主任ノコトデアリマスカラ、今日マデ十分怠ラズ御遣リニナツテ、其報告ハ官報ナドニモ出テ居リ、又通商彙纂ナドニモ出テ居リマス、然ルニ毎年実業大会ガアリ、又五二会ガアリ、其他地方ノ商業会議所ノ聯合会或ハ各団体カラノ建議等ヲ見マスルト、何時モ領事館ニ適当ナル通信ヲ置イテ、モウ少シ機敏ニヤツテ貰ヒタイト云フ意見書ガ農商務省ニ参リマス、夫レデ農商務省ハ外務省ニ交渉シテ、領事館ハ成ルベク実業者ニ便宜ヲ与ヘ、事務ノ差支ヘヌ限リハ当業者ノ利益トナルコトヲ報告シテ貰ヒタイト云フコトヲ言ツテ、此方ニ来タ
 - 第23巻 p.415 -ページ画像 
書類ハ向フニ遣リ、向フカラ来ル所ノ報告ハ本省ニ集メ、又必要ナル事件ハ商業会議所又ハ各実業ノ団体ニ送リ、即チ内地ノ報告ハ外務省ヲ経テ外国ニ在ル領事ニ送リ、又外国ノ事情ハ農商務省ノ手ヲ経テ商業会議所ニ送ルコトニシテ居リマス、殊ニ日本ノ生糸ハ輸出品ノ第一等デアリマスカラ、農商務省ヨリハ里昂ノ領事ニ特ニ金ヲ遣ツテ報告ヲ依頼シテ居リマスカラ、四月頃ニナレバ先ヅ其年蚕業ノ将来ヲ予測シテ、今年ハ此位ノ発育デアルカラ不作デアルトカ、又ハ豊作デアルトカ云フヤウナコトハ、電報ヲ以テ外務省ニ云フテ来ル、外務省カラハ直グニ農商務省ニ通知シテ来マスルカラ、他ノ用ハ偖置イテ、先ヅ各商業会議所ニ通知シ、同時ニ官報局・各新聞社・通信者ニ遣ツテ、翌日ノ官報ナリ新聞ニ出ルヤウニシテ居リマス、又新繭ガ出来、新生糸ノ売出シ初メニ、里昂ノ相場ハ宇内ノ生糸ノ相場デアルカラ、其相場ノ上リ下リハ電報デ云フテ来ルヤウニシテ居リマス、又本月三日ニ生糸ノ相場ガ上ツタコトヲ通知シテ来マシタカラ、四日ノ官報ニハ生糸ノ上ツタコトガ載ツテ居ル、斯ノ如ク官報ナリ新聞ナリニ欧羅巴ノ景況ヲ載セテ知ラスルヤウニシテ居リマスカラ、当業者ハ御承知ノコトデゴザリマセウ、其他輸出重要品要覧ト云フモノヲ造ツテ、是レハ各地ノ商業会議所ナリ又県庁等ニモ夫レ夫レ御送リシテ居リマスルガ、是レニハ十万円以上ノ輸出品五十三品ニ就イテ、年々ノ輸出額カラ其種類ナリ外国需要地ノ景況・内地製造地ノ状況等ヲ、外務省ト農商務省ト提携シテ、外務省ハ外国ノ状況ヲ報道シ、農商務省ハ内地ノ状況ヲ取調ベテ、夫レヲ印刷シテ領事ニ送ツテ、斯ノ如キ有様デアルカラ之ニ拠ツテ報告ヲスルヤウニト、第一ヨリ第十四マデ項ヲ分ツテ其標準ヲ示シテ居ルカラ、領事ハ其項ニ依ツテ報告ヲシテ来ル、夫レヲ外務省カラ送ツテ来ルカラ、農商務省ハ其報告ヲ印刷シテ当業者ナリ商業会議所ニ毎年送ルヤウニシテ居ル、斯クマデシテ居リマスルガ、矢張リ実業団体トカ商業会議所等カラ建議ガアツテ、ドウモ報告ガ機敏デナイカラ吾々ノ望ム所ニ適ハナイ、成ルベク通信ヲ宜クシテ呉レト云フ建議デアル、然ラバ如何シタラ宜イカト云フ方法ニ至ツテハ、漠然トシテ無イノデアリマス、或意見ノ如キハ夫レ夫レノ技術家ヲ置ク事、英吉利辺リデ遣ツテ居ル「こんまーしやる・あツたツせー」ヲ置イテ呉レト云フテ来タ所モゴザリマス、其位ノモノデ、実ハ方法ハ無イノデゴザリマス、夫レ故ニ此案ヲ出シテ此処ニハ商業会議所ノ会員モ居ラツシヤレバ、又外国貿易ニ従事ナサル御方モアリ、又内地ノ商工業ニ頗ル経験ニ富ンダル御方モアルカラ、良イ方法ガアレバ夫レヲ云フテ貰ヒ、其方法ニ依ツテ十分ヤリタイト思フノデアリマス、併シ当業者ノ注文モ、偖ドウシタラ宜イカト云フコトハ今マデ農商務省デ計画シテ居ル点マデニモ達シテヰナイ、ソコデ尚ホ将来ト雖モドウ云フ方法ニスレバ宜イカト云フコトガ今日ノ問題デアツテ、如何ナ方法デヤレバ宜イト云フコトヲ諸君カラ云フテ下サレバ、其方法ニ拠ツテヤリタイト思ヒマス、夫レ故ニ私ハ寧ロ諸君ニ良イ方法ガアレバ云フテ貰ヒタイ、現ニ東京商業会議所ノ如キハ、海外ノ通信ガ不足スルヤウニ考ヘルカラドウカ十分ヤツテ貰ヒ
 - 第23巻 p.416 -ページ画像 
タイト云フ建議書ガ出テ居リマスガ、方法等モ御建議ニナルマデニハ御講究ニナツタコトト思ヒマスカラ、幸ニ思召ガアレバ云フテ下サレバ吾々モ考ヘタイ、又私ノ考ヘハ少シク先ノ話カモ知レナイガ是レモ併セテ諸君ノ御参考ニ供シタイト思ヒマス、海外ノ通信ヲ敏活ニシタイト云フコトハ、吾々ニ於テモ十分注意致シテ居ル所デアリマシテ、現ニ為シテ居リ又為シツヽアル、彼ノ輸出重要品要覧ヲ一読下サレバ御分リニナリマセウガ、随分外国ノ領事ノ報告ナリ、政府デ調ベタモノナドモ参照シテ編纂シテ居リマスカラ、先ヅ能ク出来テ居ルト思フテ居リマスノミナラズ、各国ノ公使館・領事館ハ彼ノ報告ヲ悉ク翻訳シテ本国ニ送ツタト云フコトヲ聞イテ居リマス又日本デハドウ云フ有様デ製造シ販買シテ居ルト云フコトモ、悉ク翻訳シテ本国政府ニ報告シタト云フコトデアリマス、彼レヲ一読ナシテ下サツタナラバ分リマセウガ、マダ他ニ方法ガアレバ御示シヲ願ヒタイ、又彼ノ上ニ午後報告ヲスルナラバ紐育ニハ如何ナル品物ガ行クカ、ドウ云フコトニ使フカ、其品物ニ就イテドウ云フ欠点ガアルカ、森村君ナドハ実際御扱デゴザリマスルカラ、雑貨ノコトナドハ御分リデゴザリマセウガ、製造スル者ハ如何ナルコトニ用ヰルモノカ知ラナイ、夫レデ紐育ニ行ク瀬戸物ハドウ云フ風ニスルガ宜イカ、独逸ニ白地ノ羽二重ガ行クガ之ニ就イテハドウ云フコトヲ調ベルカ、又生糸ガ亜米利加ニ行ク、之ニ向ツテハドウ云フコトヲ調ベルカト云フヤウナ方法ハ未ダ聞カナイ、モウ少シ事柄ニ渉ツテ所謂汎論デナク区域ヲ狭義的ニテ事柄ヲ限リ、物質ヲ定メテ報告スルヤウニシテ貰ヒタイ、実ハドウスレバ宜イカト云フ方法ニ困ツテ居ルカラ、良イ方法ガアレバ吾々ハ其ノ決行ヲ熱望シマス、先ヅ外務省ノ報告モ戦争前即チ廿七年頃ヨリハ余程海外通信ニハ重キヲ置イテ居ル、其例ヲ申シマスレバ、神戸デ是レハ山本君ハ御承知ノコトデゴザリマセウガ、近年花筵ガ盛ンデ三百万円以上モ出ル、夫レハドンナモノニナルノカ分ラナイカラ、視察員ヲヤラネバナラヌト云フコトニナリ、知事モ出テ来テドウモ彼ノ報告ハ分ラナイト云ヒマスカラ、何処ガ分ラナイカト云フト、総テドウナリ居ルカ分ラヌ夫レナラバ花筵ニ就イテノ輸出重要品要覧ヲ見ラレタラドウダト云フテ、夫レヲ見セマシタ所ガ、之ヲ見レバ明カニ分ル、斯ウ分ツテ居レバ別ニ視察員ヲ出ス必要モナイト云フヤウナコトデ、実ハ藤井君カラ先ニ仰ツシヤツタ通リ此方カラ送ツタモノハ見ズシテ、何カ政府ガ怠ツテ居ルヤウナ説ガ多イ、外務省ト農商務省ハ通信ノ事ニ就イテハ、随分骨ヲ折ツテ居リマスガ、一概ニ通信ガ足ラヌヤウナ論モ地方ニハアル、幸ニ此席ハ海外貿易並ニ内国産業ニ御経験ノ御方ガ御集リデアルカラ、如何ナル方法デヤツタナラバ、今ヨリ一層機敏ニ報告スルコトガ出来ルカ、忌憚ナク御話シ下サレタイト思ツテ居リマス、是レハ私ガ懐イテ居ル所ノ概略ヲ述ベテ御参考ニ供スルノデアリマス
○七番(益田孝君) 此諮問案ハ誰トテ悪ルイト申ス者ハゴザリマスマイ、誠ニ通信ヲ十分ニ致スト云フコトハ、商業発達ノ第一デゴザリマシテ、必要ト御認メモ御尤デゴザリマスルガ、其方法ニ就イテ適
 - 第23巻 p.417 -ページ画像 
当ヲ得ルハ至難デアルカラ、御諮問ニモナツタノデゴザリマセウガ御尋ネヲ受ケル吾々モ是レガ適当ト云フコトヲ申上ゲルコトハ、至難ノコトデアラウト思ヒマス、実ニ藤井サン其他カラモ色々御説ガゴザリマシタガ、近年各領事カラ各地ノ模様ヲ御報告ニナルノヲ折折拝見致シマシテモ、余程発達シテ参ツテ、吾々実業者ノ必要トスル所ヲ御報告ニナルヤウナ感ジガアリマス、吾々ガ能ク考ヘルト畢竟スル所、是レハ領事ノ職分デアル、其領事ガ実業ニ熱心ニシテ能ク実業家ノ必要トスル所ノ分ル人デナケレバナラヌ、所謂人ニ依ルノデアリマスカラ、其人ノ撰択ニ在ルト云フヨリ他アルマイト思ヒマス、夫レデ今ノ輸出重要品ノ状況及ビ今後ノ景況・見込等ヲモ臨時其変動ノ依ツテ起ル所ヲ報道セラレ、又通常ノ有様ヲモ一ケ年一度若クハ二度報知セラレタイト思ヒマス、先ヅ今ノ所デ領事ノ報告ヲ一番易ク世ノ中ニ公ケニシテ居リマスルノハ英吉利デアル、一寸シタ雑誌体ノ二・三枚ノモノヲ本国カラ派出シテ居ル所ノ領事カラ年々報告シマス、夫レカラ臨時ニ其処ニ起ツタコトニ就イテ英吉利人ノ参考ニナルコトハ、委シク調ベテ外務大臣ニ報告スル、夫レハ安ク売買ニナツテ居リマスルカラ私共モ取ツテ居リマスルガ、夫レニハ大抵一通リ領事館ノ報告ガ出テ居ル、流石ハ商業国ノ領事ダケアツテ、要所要所ヲ極ク摘ンデ短カク報告シテ居リマスル、夫レヲ読ンデ見マスルト其土地其土地ノ商業ノ有様ガ能ク分リマス、又日本銀行ガ創立シタナドト云フト、其創立ノ組織等ガ臨時ノ報告ニ見ユル、其臨時ノ報告ナドハ最モ必要ヲ感ジマス、又亜米利加ノ領事報告ハ出物ニナツテ出テ居リマスルガ、何分長文デ何時モ報告ガ長イヤウニ思ヒマス、先ヅ当業者ハ要所要所ヲ摘ンダモノヲ読ミタイ統計書ナドハ甚ダ迷惑デゴザリマス、流石ニ英吉利ハ其辺ノコトニハ能ク注意シテ居ルト常ニ心得テ居リマス、是レカラ尚ホ通信ヲ仔細ニスルニ就イテモ、此方ニ其通信ヲ極ク有難ク心得テ居ルモノヽ殖ユルノト、通信ガ綿密ニナルノト相待ツテ行カネバナラヌ、是レマデハ領事ノ報告モソレ程心シテ読ム者ハナカツタヤウデ、誠ニ折角ノ報告モソンナニ役ヲシナカツタ、近頃ニナツテ何カ調ベタイト言ツテ、矢張小言ヲ言ヒナガラ、他ニナイカラ外務省ヘ出テ願ヒモシマセウシ、アチラコチラノ領事館ノ報告又ハ調ベヲ追々見ル人ガ殖ヱテ来タヤウデアリマス、此殖エテ来ルニ従ツテ、益々敏活ニ報告スルト云フコトハ誠ニ結構ナコトデアリマス、如何ニモシテ斯ウ云フ風ニ是ダケノコトハ通常必要ナト云フコトヲ少シク当業者ノ望ヲ容レテ、金子次官ノ御陳ベニナツタヤウニ能ク願ヒタイ、又万々悉クト云フコトハ出来ルモノデナイカラ、必要ナルコトダケハ或ハ商業会議所ヘ御命ジナサルカ、若シ其事ガ必要トナレバ玆ニ特別委員ヲ選ンデ、凡ソノ報告スベキコトヲ御尋ネニナリマシテ、サウシテ領事館心得ニナルヤウニスルコトハ、必要デアリマセウ、若シ国費ガ許スナラバ、貿易者ノ殖ヱルニ従ツテ領事庁ノ参事官ノ如キ、若クハ此(報告書類ヲ示ス)参照書類ニゴザイマス商業交際官ト云フモノガ出来マシテ、詰リ人ヲ増シテ、例ヘバ孟買デアルトカ其他欧羅巴……倫敦抔ノ領事館ニ人ヲ殖シテ拡張スルトカ、又ハ支那ノ
 - 第23巻 p.418 -ページ画像 
上海デアルトカ云フ重モナル所ニハ、人ヲ増シテ之ヲ拡張シマスレバ、其道ヲ得マスルコトデアリマセウト存ジマス、併ナガラ前申上ゲマスル通リ必要ナル土地ニ人ヲ求メルト云フコトガ要用デアル、サウ一時ニムヤミニ綿密ニ報告ニナツタ所ガ、一向其効ヲ示サナイト云フコトニナリマセウカラ、漸ヲ追フテ、第一ニ領事其人ヲ御選ビナサレ、又場所ニ依テ其領事ガ才判官ヲ務メ或ハ知事ヲ務メルト云フヤウニ、例ヘバ支那・朝鮮抔ノ如キ所ニハサウ商業ノミニ「クロウト」ノ者ヲ御選ミナサル訳ニモ行キマスマイカラ、漸ヲ逐ウテ行クヨリ他ハアリマスマイ、要スルニ人ヲ得ルニ在ル、追々通信ノ必要ヲ認メテ参リマスカラ、其方法ヲ講究スルノガ必要ト存ジマス目下其方法ノ必要ノ部分ハ実業家ニ御尋ネナサツテ、其上デ領事館ニ向ツテ之ヲ報告セヨト云フコトヲ御訓令ナサレタイ、即チ漸ヲ逐ウテ人ヲ御遣リナサルト云フヤウナコトハ、先以テ目下ノ処必要デハゴザイマセヌカト心得マス
○三番(藤田伝三郎君) 七番説ニ賛成致シマシス
○二十一番(添田寿一君) 極簡略ニ申上ゲマス、大体ハ七番ト同ジ考ニナリマス、私ノ希望ハモウ少シ、七番ヨリハ急速デアルカト思フノデゴザイマス、今日マデノ領事ノ報告ニ就キマシテ大分色々ノ御注文モアリ、御非難モアルヤウデゴザイマスケレドモ、是ハ無理ヲ責ムルノト云ウテ宜イヤウニ考ヘマス、領事ト云フモノハ、最前十七番モ陳ベラレマシタ如ク、色々ノ仕事ヲ一時ニ申込マレテハ困ルト云フノデアリマス、東洋抔ニ於キマシテハ、才判権ヲ与ヘテ人民ノ訴ヲ決セナケレバナラヌトカ、種々雑多ノ仕事ヲ一人デヤルト云フコトハ、到底人力デ完全ニスルコトハ出来ナイト云フコトハ勿論ノコトデアリマス、斯ノ如キ現況デアリマスカラ、ドウモ完全シタ報告抔ヲ領事ニ望ミマスルノハ少シク難キヲ責ムルヤウニ考ヘマスルノデゴザイマス、ソレデ願クハ今日既ニ此領事館ヲ増設ニナリ、領事ヲ人選ニナリ、又其報知ヲ迅速ニ公布セラルヽナリノ如キコトハ、着々御着手ニナル必要ヲ当局者ハ御認メニナツテイラツシヤルカラ、七番ノ御希望ノ点ニ於テハ最早認メテ居ルト言ツテモ宜カラウト思ヒマス、此際至急ニ御着手ヲ必要ト存ジマスルノハ、各領事館ハ殊ニ此領事裁判権ヲ兼ネテ居ル、他ノ仕事ニ忙シキ地方ノ如キモノハ最モ先ニシテ、別ニ商業・工業ヲ専務ニ観察ヲシ、研究ヲシ又ソレニ付テ報告スベキ官吏ヲ増シテ置キ、ソレダケハ予算ノ上ニ増額セラレテ、直チニ此必要ナル場所ニ専務ノ官吏ヲ置カルヽト云フコトヲ御決行願ヒタイノデス、勿論其人ハ経済ニ眼ヲ付ケテ居ルヲ要シマスルガ、長官ハ格別任用ニ注意ヲ致シマシテ、成ルベク其地方ニ長ク在任サセルト云フコトニシタイ、経済上ノ視察抔ト云フコトハ、中々一年ヤソコラデ通暁ノ出来ル筈ノモノデナカラウト思ヒマス、領事ノ主トシテ為スベキ職務ヲ担任スル者ハ、常ニ余リ動カヌヤウナ仕組ニナツテ居リマセヌケレバナラヌト思ヒマス、且又此会デ十分調査ヲ自ラスルト云フ力ガゴザイマシテモ、随分調査ニモ色々手ノ要ルコトデゴザイマスカラ、別段ニ調査ノ為メニ手当ヲ与ヘテヤル位ノ奮発ヲ致シマシテ、他ノコトニハ関係セズ領事ノ指
 - 第23巻 p.419 -ページ画像 
揮以外ニ於テ所謂商業ダケニ眼ヲ濺イデ居ルト云フ一点ニ致シマシテ、成ルベク此事ハ速ニ御実行ニナルヤウニシタイト云フ希望デゴザイマス、大要ハ七番ト同ジイコトデアルケレドモ事ヲ速ニ行ハムコトヲ希望致シマス
○八番(安藤太郎君) 私モ唯今二十一番ノ陳ベラレマシタ点ニ賛成ヲ表シマス、十七番カラ先程色々領事ノ報告ニ対シテ困難ナコトヲ御話ニナリマシテ、私ハ詰リ御同感デゴザイマス、併ナガラ各地方ヲ巡廻致シマシタリシテ、実業家カラ訴ヘマスル所、又主務省ヘ建議致シマスルコトニ付キマシテハ、随分又報告ヲ熱望スルコトノ急ナル所ハモウ分ツテ居リマスル、ト申シテ先程十七番ノ御陳ベニナツタヤウナ塩梅ニ、名古屋ノ扇子トカ或ハ岐阜ノ提灯トカ云フヤウナ調ベニ対シテ、一々明細ナ報告ヲシナケレバナラヌト云フヤウナコトハ、ソレハ到底覚束ナカラウト思ヒマス、要スルニ領事館ハドコデモ用ガ多ウゴザイマスルデ、ドウシテモ比較的ニ人ガ少イト思ヒマス、殊ニ七番モ御話ニナリマシタヤウナ塩梅デ、或ル地方ノヤウナ、裁判モスレバ警察ノ事モシナケレバナラヌト云フヤウナ、沢山ノ仕事ヲ有ツテ居ル所デハ、到底十分ニ諸方ニ対シテドウ斯ウスルト云フコトハ出来ナイト存ジマスカラシテ、サウ云フ所ヲ始メトシテ追々実業者ノ求メニ応ズル人ヲ選ブノガ、最モ目下ノ急務ト存ジマスルカラ、私ハ二十一番ニ賛成ヲ致シマス
○七番(益田孝君) チヨツト二十一番ニ伺ヒマス、此裁判官ヲ勤メ、若クハ人民ノ世話マデモスルト云フ所ヲ先キニシテト云フ御説デゴザイマスガ、サウ仰セラルヽト、支那ト云ヘバ沙市モ重慶モ天津モト云フ訳ニナリマスカラ、今ノ報告ヲ先ヅソレハ急ナル所ヨリ始メルト云フノデ初メヨリ悉クト云フノデハアリマスマイ、中々金モ要ルコトデアリマス、例ヘバ人ヲ出サウトシタ所ガ支那デハ先ヅ上海トカ云フ方ニハ其専務ノ人ガアツテ、ソレガアノ近傍ヲ廻ハルトカ或ハ北部ヲ廻ルトカスルノデ、サウ悉クト云フ意味デナイ……領事館悉クソレヲ置カネバナラヌト仰セラルヽノデハナイノデスカ
○二十一番(添田寿一君) 私ノ希望ハ、若シ国民ガ許シマスナラバ経済的ニナル所ヘ置キタイ、例ヘバチヨツト今御話ノ支那ト云フ所デハ、上海或ハ南部トカ重要ナ所ヘ使フ場合ニモナリマセウケレドモ例ヘバ英国ノ「りばーぷーる」ト云フガ如キ所ニハ一箇所デモ宜イ場合ガアル、英国ノ如キハサウ必要モ迫ラヌカラ、寧ロ英国ノ金ヲ以テ又支那ノ方ノ観察ヲ先キニスルト云フコトハ誠ニ必要ヨリシテ宜カラウト思フノデ、必ラズ各領事館ニ置クト云フノデハゴザイマセヌ
○十九番(土居通夫君) 私ハ二十一番ニ賛成デス、曩ニ大阪商業会議所ニ於キマシテ領事館増設ノ事ヲ開申致シマシタガ、畢竟領事館ヲ外国ニ増設スルト云フハ、貿易ノ進ムニ従ツテ必要ヲ感ジマスルカラ置クノデス、然ルニ二十一番ノ御説ニハ追々斯ウ云フ方法ニ御着手ニナルト云フコトニナレバ、先ヅ二十一番ノ御説ハ至当ノコトヽ考ヘマスカラ賛成ヲ致シマス
○十七番(藤井三郎君) 私ハ最初ニ申上ゲマス通リノ趣意デゴザイマ
 - 第23巻 p.420 -ページ画像 
シテ、七番ノ仰ツシヤルコトニ同意致シマス、詰リ漸ヲ以テ領事館ノ数ヲ殖シ、領事ヲ督励シテ報告ヲ充分綿密ニスルヨリ外ハナイト思ヒマス、成程唯今二十一番ハ、東洋ノ領事ト云フモノハ才判権モ持ツテ居レバ、行政権モ持ツテ居リ、其他種々繁雑ダト仰ツシヤイマシタガ、ソレハソレニ違ヒナイ、其代リ東洋ニ在ル領事館ハ倫敦若クハ紐育アタリノ領事館ヨリズツト人数ヲ殖ヤシテアリマス、サウ云フ方ノ準備ハ充分届イテ居ル積リデアリマス、領事ノ職務ハ此処デ申上ル必要モゴザイマセヌガ、詰リ商業ノコトヲ報告シテ商売人ヲ益スルノガ第一ノ専務デゴザイマス、若シ此商業委員ト云フモノヲ送ツテ領事ヲ凌駕スルヤウナ技倆ガアツタラ宜カラウガ、私ハソレハ得難イノミナラズ、殆ド領事ヲ二人置クヤウナコトニナラウト思フ、領事ノ選択ヲ慎テ、領事ヲシテ是カラ報告ヲ綿密ニスルト云フ今七番議員ノ言ハレルヤウナ方針ハ、誠ニ同感デアリマス、此際特ニ金ヲ出シテ商業視察員ヲ別ニ置クト云フコトハ、詰リ領事ヲ二人置クト同ジコトトナラウト思ヒマスカラ、私ハ七番ニ賛成シテ二十一番ノ説ニ反対致シマス
○八番(安藤太郎君) 二十一番ノ御説ハ、唯裁判権ヲ持ツテ居ル所ダケニ人ヲ増員スルコトヽハ存ジマセヌ、ソレハ最モ必要ナ所其他手ノ廻ラヌ所ヘ急速ニ進メルコトデアラウト理解シテ、私ハ二十一番ニ賛成シマシタガ、唯今十七番ノ御説ニ其方ハ人ヲ増シテアル、他ノ方ハナカナカ忙シクテ手ガ廻ラヌト云フコトニ伺ヒマシタガ、尚ホ手ヲ廻ラヌカラサウ云フ所ヘ人ヲ置カナケレバナラヌカト存ジマス、強チ裁判権ヲ持ツテ居ル所丈ダケニ置クト云フコトニハ、私ハ二十一番ノ説ヲ理解致シマセヌ、チヨツト御断リ申シマス
○二十一番(添田寿一君) 十七番ノ御話ノ中ニ、領事ガ二人出来ルト云フヤウナコトニナリハシナイカト云フコトデアリマシタガ、サウナリマシテハ仰セノ通リ甚ダ不都合デアリマスガ、私ハ是ハ官制ニ基イテ明カニ職制ヲ定メ、総テ領事ノ指揮監督ノ下ニ立ツテ、唯領事ノ経済眼トナツテ働ク、領事ノ手足トナツテ働クト云フコトノ意味デゴザイマス
○議長(伯爵佐野常民君) 七番ノ御演説中ニ、勿論領事ノ数ヲ殖シ段段商業上ノコトニ付イテ報告ヲスルヤウナ人ヲ選択スル、ト云フコトハ分リマシタ、ソレカラ支那地方ナドノ裁判権ヲ持ツテ居ルヤウナ所ハ何分手ガ及ブマイカラ、矢張其方ハ別段ニ置クト云フコトハ御同意ノヤウナ御演説デアツタヤウデスガ、其御都合デスカ、ソレヲ伺ヒマス
○七番(益田孝君) 矢張十七番ノ御説デ、既ニサウ云フ所ニハ増員モシ、其手当ガ出来テ居ルト云フコトデゴザイマス、其人ノ適当デアルカ不適当デアルカト云フコトハ世ノ中デ何ント仰セラレマセウトモ、其用意ガ出来テ居ル、出来テ居レバ先ヅソレデ充分宜イト思ヒマス
○五番(原善三郎君) 七番・二十一番、尚ホ十七番ノ御説明ニ依リマシテ、大抵此第五ノ御諮問案ニ付イテハモウ御論ハ尽キマシタヤウニ考ヘマス、一応私モ賛成致シマスガ、ドウ云フモノデゴザイマセ
 - 第23巻 p.421 -ページ画像 
ウカ、報告其他ノコトニ付キマシテハ、充分外国ノ事情ニ精通致シテ居リマス語学ノ分ル人ヲ御選択ニナリマシタラ、随分是マデノ通リデ、当時ノ我邦ノ貿易ニ対シマシテハ大抵事ハ足リテ居リマセウカト思ヒマス、併シ望ミヲ充分ニ言ヒマシタナラバ、決シテ事ガ足リルト云フコトハ申サレマセヌガ、此御諮問ニ付キマシテハ唯今ノ所デ充分ダラウ、唯一ツ欧羅巴・亜米利加ノ物品ノ模様、時々ノ流行物ヤ何カノコトハ悉ク其報告デ御分リニモナリマセウ、又実際ノ商売ヲ致シテ居ル人ハ、其報告デ分リマセウガ、此急変電報ノコトニ付キマシテハ、領事館カラ通商局ヘ報告ニナリマシタ電報ヲ翌日ノ官報ニ載セル、其官報ニ載セルト云フコトハドウモ普通ノ商人ニハ届カナイ、何分ニモ又ソレヲ農商務省ヘ御通知ニナツテ、農商務省カラ御知ラセ下サルト云フ間ニ、其電報ノ趣意ガモウ二・三日ノ内ニ無クナツテ仕舞ツテ、ソレヲ知ル時分ニハ電報ノ効能ハ少シモナイヤウナ形ガ、折々アルヤウニ考ヘマス、其電報ニ拠リマシテ一両日位遅レマシテモ、相場ハチヤント認メガ附クコトモゴザイマスカラ、決シテソレデ不都合ト云フ訳デハナイノデスガ、是ハ相成ルベクハ通商局ニ急場ノ御通知ガアリマシテ、電報ノコトハ通商局ヨリ商業会議所ヘ直ニ御通知下サルト云フモノカ、或ハ此電報ハ急速農商務省ヘ領事カラ御通知ニナツテ、農商務省カラ直ニ商業会議所ヘ御通知下サルト云フコトニ致シマシタラバ、モウ一層急場電報ノ効能ガアラウカト云フ考デゴザイマス、是マデ順序ノアル所ヲ、是非斯ウシタイト云フコトハ一概ニ申シマセヌガ、相成ルベクハ外務省ノ通商局ト農商務省ト御話合ヒニナツテ、何レニカ其御送達ヲ下サルコトヲ希望致シマス、ソレダケハ七番ノ御説ニ残リマシタヤウニ考ヘマスカラ、チヨツト補ツテ置キマス
○二番(藤田四郎君) 唯今五番ノ御話ガゴザイマシタカラ、一応実際ノ状況ヲ御参考マデニ申上ゲテ置キマス、是マデ重要ノ貿易品ニ付キマシテ、殊ニ生糸ノ如キニ関係致シマスル貿易上ノ変動ニ付キマシテハ、前々ヨリ外務省ト協議ノ上デ、農商務省ノ経費ヲ以チマシテ必要ナル所ノ電報ヲ受取ルコトニ致シテ居リマス、トコロガソレヲ一番最モ関係アル方ヘ知ラセル運ヲ執ルト云フコトニ付キマシテハ、色々ノ所カラ注文モゴザイマシタ、トコロガ外務省カラ農商務省ヘ送ラレルノハ、一番早イ運ヲ執ツテ送ラレテ居ルノデ、農商務省カラ是ヲ世ノ中ヘ知ラセルニ付イテハ、或ハ商業会議所ヘ通知ヲ致スコトモゴザイマスシ、又或ハ斯ウ云フ事業ニ熱心ナル団体カラモ送ツテ貰ヒタイト云フコトノ注文モゴザイマシテ、送リマシタコトモゴザイマス、又所ニ拠リマシテハ、県庁ヘ送ツタ時モゴザイマス、ソレト同時ニ政府ハ官報及ビ東京・横浜新聞《(ノ脱カ)》ニ通知ヲスル方法ヲ執リマシタ、然ルニ今マデノ所ヲ見マスルト、官報ノ方ハ普通ノ規則ニ依リマシテ、何時マデニ来タモノデナケレバ載セナイト云フコトガゴザイマスカラ、斯ノ如キ特殊ノ電報ニ付キマシテハ特別ニ依頼ヲ致シマシテ、夜六時ニ往ツタモノデモ七時ニ往ツタモノデモ載セテ貰フ運ヲ執ツテ、ソレト同時ニ蒟蒻版ニ致シマシテ直グニ新聞屋・通信社両方ヲ喚出シテ通知ヲシマスガ、此点ニ付キマシテハ
 - 第23巻 p.422 -ページ画像 
尚ホ本日此諮問案ガ出マシタ趣意デモゴザイマスカラ、何レモ方法ニ付イテ御評議デゴザイマスガ、ドウモ新聞社ト云フモノハ、或ハ明日ノ新聞ヲ鉄道便等ノ都合ニ依リ其前日ニ出シタイト云フ事情モアルモノト見ヘ、既ニ刷リ立テ済トナル事モアリマス所カラ、先ヅ多クハ斯ウ云フ事柄ニ付イテ、ソレ程重キヲ置イテ居ラヌ新聞ガ多イノデゴザイマス、ソレガ為ニ現ニ充分時ガアルニ拘ラズ、モウ編輯締切ト云フ普通ノ場合ガ過去ツテ、其後デ校正主任トカ、係リノ当直ト云フ者ガ見ルト、斯ウ云フコトハ余リ利益ヲ持ツテ居ラヌカラデセウケレドモ、注意ノ届カヌコトガゴザイマシテ、ソレガ為ニ翌日ノ新聞ニ載ルコトガ往々洩レル、若シ是ガ翌日ノ新聞ニ出マシタナラバ今五番ガ御心配ナサルヤウナコトハナイダラウト思ヒマス斯ウ云フコトガ実際ノ都合デゴザイマス、又商業会議所ノ御話モゴザイマスガ、是モ場合ニ依リマシテ随分御困リデアラウ、重モナル能ク訳ノ分ツタ書記・書記長ト云フモノヲ置イテアル場所ハ宜シウゴザイマスガ、サウデナイト是モ矢張団体見タヤウナモノデアリマシテ、日々勤務シテ居ルト云フ訳デゴザイマセヌカラ充分効ハナイト思ヒマス、夫等ノ点モゴザイマスカラ、詰リ今日此第五諮問案ニ付キマシテハ、方法等モ充分ドウシテ貰ヒタイト云フコトノ御研究ヲ願ヒタイト思ヒマス、尚ホ御参考ニ一ツ申上ゲテ置キタイト思ヒマスガ、七番カラ御話ガアリマシタ所ノ、詰リ領事館ノ制度ニ付キマシテ七番ノ云ハレル所ノ説ハ、穏カナル方法デモゴザリマセウガ併シ其方法ヲ実際ニ応用シ得ルカト云フト、或ハ何時マデモ斯ウ云フコトバカリデ、効ヲ収ムルコトハ難クハナイカ、ト云フノハ現ニ今日ノ領事館ノ制度ニ於キマシテハ、官等ニ依ツテ報酬モ極ツテ居リ、是レハ各省ノ官制ト同ジヤウナ方法デアルカラ、一ト所ニ永ク居ルノハ嫌ヤガル、外務省ハ領事ハ永ク置キタイト思フケレドモ、中々サウハ行カナイ、故ニ或一・二ノ人ヲ除クノ外永ク一ト処ニ置クコトハムヅカシイ、是レハ官等ニ依ツテ俸給ノ定メテアルカラデアリマスガ、併シ先年ヨリハ今日ノ領事館ノ官制ハ発達シテ来テ、在勤俸ト官等ニ対スル俸給ト二ツニナツテ居リマス、之ヲ尚ホ一層拡張シテ其地方ニ依ツテ俸給ヲ定メ、其地方ニ居ル年限ニ依ツテ俸給ガ昇ルト云フヤウナ途ガアリマシタナラバ、此領事ト云フモノガ永ク一処ニ居ツテ其地方ノ状況ニ慣レルト云フ途ヲ開クヤウニナルデアラウ、是レモ一ツノ方法デゴザリマス、又廿一番カラ御話ノゴザリマシタ「こんまーしやる・あつたつせー」ト云フモノヲ置クコトモ又一ツノ方法デアラウ、又通信ノ方法ニ就キマシテ五番カラ御話ガアリマシタガ、要スルニ是等ノ方法ハ、斯ウ云フコトニ明カルイ御方ガ特ニ御相談アツテ御討論アランコトヲ望ミマス、依ツテ私ハ此方法ニ就イテハ、議長カラ特別委員五名バカリ御撰ビニナリ、答申案ヲ作ラレンコトヲ希望致シマス
○十一番(渋沢栄一君) 二番ニ賛成致シマス
○一番(大倉喜八郎君) 最早ヤ御論旨ハ尽キテ居ルヤウデゴザリマスルガ、七番ニ少シ望ミタイト思ヒマスルデ一言申上ゲマス、通信官ヲ置クト云フコトハ至極結構ナコトデゴザリマスルガ、此報告ヲス
 - 第23巻 p.423 -ページ画像 
ルニ敏腕ノ人ガ出来タト云フ暁ニハ、先刻十五番ヨリ申サルヽ通リ中々官途ニハ居ルマイ、貿易事業ニ通ジタ人ハ少ナイカラ、領事ヲ凌グ程ノ敏腕家ガ居ツテ其土地ノ総テノコトガ分ツタナラバ、是レハ民間ニ取ラルヽ、サウスレバ何時デモ新ラシイ人ガ行ツテ慣レナイ者ガ報告スルト云フヤウナ有様ニナルコトヲ憂ヒマス、夫レカラ是レマデノ領事館ノ報告ト云フモノハ、吾々ハ随分貴ンデ居リマシテ度々益スルコトモアリマシタガ、中ニハ随分陳腐ナルコトモゴザリマス、海外ノ新聞ノ切抜ト同ジヤウナコトガアリマス、此通信ノ事モ宜イト思ヒマスガ七番ハ尚ホ一層隆盛ニシテ欲シイト云フコトデ誠ニ結構デゴザリマスルガ、如何セン吾々ノ聞ク所デハ領事其人ガ如何程通信ノ便宜ヲ謀ツテモ、商売ト云フモノハ秘密デゴザリマスカラ、夫レ迄モ探ツテ報告シタイト思フテモ金ガ足リナイト云フコトヲ聞イテ居リマス、先刻八番ハ人ガ足リナイト仰ツシヤイマシタガ、人デハナカラウ、金ガ足リナイ為メニ十分ナ報告ガ出来ヌト云フコトハ予ネ予ネ承ツテ居ル、然ル上ハ七番ノ先刻ノ論旨ニ今一層差加ヘマシテ、領事ノ撰抜、通信ノ改良ト共ニ、是レマデ領事館ニ通信ノ為メニ遣ル金ヲ増スト云フコトニシテ、今日ノ御諮問ニ答ヘタイト思ヒマス、ドウモ費用ヲ増スコトガ一番必要ト考ヘマス
○十四番(金子堅太郎君) 段々方法ニ就イテモ御述ベニナリマシテ、大ニ私共モ利益スル所ガゴザリマス、先ニ益田君カラ漸次拡張シテ貰ヒタイト云フ御話デゴザリマスカラ、今農商務省ト外務省トデ計画シテ居ル所ヲ御話シ致シマシテ、尚ホ夫レガ足ラヌナラバ御意見ヲ伺ヒタイ、今迄ハ一般ノコトヲ申シマシタガ、将来ハ斯ウスル積リデアルト云フコトヲ申シマス、先ニモ述ベマシタ通リ、輸出重要品要覧ヲ各領事ニ送ツテ標準ヲ示シテアル、夫レヲ申シマスレバ御退屈カ知リマセヌガ、僅バカリノコトデゴザリマスカラ読上ゲマセウ、尚ホ此他ニマダ足リナイコトガアルナラバ御示シヲ願ヒタイ、輸出重要品要覧ノ第一類ハ農産物、第二類ハ水産物、第三類ハ工産物、第四類ハ林産物、第五類ハ鉱産物、其調ベル目的ハ第一五ケ年間ノ輸出額、第二種類、第三産地、第四輸出先国別、第五右諸国ヘ外国ヨリノ輸入高、第六内外物品ノ其市場ニ於ケル価額、第七日本製品ノ需要ノ目的及輸出先ノ嗜好、第八需用地ヘ輸出及販売手続、第九日本製品ノ欠点・長所及他国品トノ優劣、第十改良スベキ要点第十一現今需要ノ程度及将来ノ見込、第十二内国産地ノ状況、第十三外国産地ノ状況、是レダケヲ外務省ト協議シテ此標準ニ拠ツテ外国ノコトハ領事ニ報告ヲ求メ、一方ニ於テハ地方官庁ニ内地ノ状況ヲ調ベサセ、此通リノモノヲ造ツテ当業者ナリ商業会議所ニ送ツテ居ル、尚ホ進ンデ貿易品陳列館ヲ置キ、其処ニハ日本ノ貿易品ト外国カラ輸入スル貿易品ヲ陳列シテ内外物品ノ優劣ヲ比較スル、又向フカラ来ル雑誌・報告等ハ其処デ反訳シテ新聞ナリ雑誌等ニ出シ、普ク人ニ読マシムルノ考ヘデアリマスカラ、此貿易拡張費ハ本年度カラ向フ五ケ年間、即チ内地雑居ノ翌年マデ六万円ヅヽ予算ヲ組ンデ議会ニ請求シ夫レヲ色々ノ費用ニ分ケマスガ、第一ニハ海外ニ技師等ヲ派遣シ、又当業者カラ此者ヲ遣ツテ呉レイト云フ要求ガアレ
 - 第23巻 p.424 -ページ画像 
バ其人ヲ遣リ、サウシテ海外ノ事情ヲ技師ト当業者ニ十分見セテ先ヅ一ケ年廻ハラスル、夫レガ帰レバ其翌年ハ復タ他ノ者ヲ遣ツテ廻ハラスル、是レハ重ニ当業者カラ推薦シタ者ヲ遣ル、夫レハ視察員デアルカラ向フノ状況ヲ見テ帰ツテ来レバ、其事ヲ政府ナリ当業者ニ報告スル、今一ツハ商業ニ関スル見習生ヲ出ス、即チ三・四年間欧羅巴ニ於テ銀行ナリ保険業ナリ、其他普通ノ商売ナリヲ向フデ番頭ニナツテ実地見習フ者ヲ遣ル、其費用ハ半額ハ当業者カラ出シ、半額ハ政府カラ補助スル、夫レモ先カラ御話ガ出タ通リ、領事ハ国家ノ官吏デアルカラ当業者ノ望ムヤウニハ分ラヌ、真ニ当業者ガ喜ブヤウナ報告ヲ得ヤウト云フテハ、向フノ商売ノ秘密ヲ取ラネバナラヌ、又技術上ノ意匠ナリ流行ノ模様ナドハ、迚モ分リマセヌカラ向フノ経済雑誌ノ主筆トカ又ハ新聞記者トカ学者トカ、或ハ商業会議所ノ書記トカ、又ハ遊ンデ居テ時々経済上ノ意見ヲ書クトカ云フヤウナ人ニ頼ンデ、特種ノ事情ハ通信シテ貰フ、是レハ当会カラ領事ト協議シテ、其領事ノ命ヲ受ケテ必要ナル通信ヲ日本ニ送ル通信員ヲ置クガ宜イ、サウスレバ向フニ於テ余リ金モ入ラズ、取ラルヽダケノ便宜ヲ取リ、得ラルヽダケノ通信ヲ依頼スルヤウニト云フコトニシテ居ル、来年カラ其報告ガ纏マレバ、貿易品陳列館ニ於テ商工要覧トデモ名ヲ附ケ、一・二ケ月毎ニ報告書ヲ発行シテ御覧ニ入レルヤウニシヤウト云フ方針デ既ニ着手シテ居ル、尚ホ其上ニモ御考案ガアルナラバ、御示シヲ下サレバ如何ヤウニモ致シマセウガ、先ヅ御方《(当カ)》デハ随分勉メテ居ル積リデゴザリマス、夫レデモ足ラヌ、尚ホ斯ウスレバ宜カラウト云フ御考ヘガアレバ、御経験アル方々ノ御話ヲ願ヒタイト思ヒマス
○十五番(浜岡光哲君) 此通信ノ必要ト云フコトハ満場ノ諸君モ認メラルヽ所デアリマスルガ、其方法ト、夫レヲ実際ニ為シ遂ゲ得ルヤ否ヤト云フコトニ付テ議論ガアルノデゴザリマス、所ガ前ニ述ベマシタ如ク、其ノ人ヲ得ルト云フコトハ断然ムヅカシイト云フテモ宜イ、夫レデ今ノ所謂通信費ト云フモノヲ置イテ、通信ノ費用ヲ十分ニ備附ケマシテ、彼ノ地ニ於テ外国人ヲ其時々ニ使ツテ取調ベサセマシタナラバ、領事ガ直チニ調ベルヨリモ、其便利ヲ得タル西洋人ナリ支那人ナリ、其土地ノ人民ヲ使ツテ能ク調ベサスト云フコトガ必要デアラウ、偖其土地ノ人ヲ使フト云フコトハ、ドウシテモ報酬等ノ費用ガ入ルカラ、領事館ノ費用ノ中ニ通信費ト云フモノヲ別ニ置イテ、相当ノ者ヲ使ヘル丈ケノ予算ヲ立テラレタナラバ是レガ適切ニ行クダラウ、ナゼカナレバ、ドノヤウニ内地デ立派ナ人ヲ得テモ、商売ノコトハ能ク分ツテモ工業ノコトハ分ラナイ、殊ニ専門ノコトハ最モ分ラナイモノデゴザリマスルカラ、其調ベニ付テハ領事ノ脳髄デ相当ノ人ヲ使ツテ彼ノ事情ヲ報告サスルト云フコトガ必要ト思ヒマス、夫レニハ一番ニ費用ヲ増スト云フコトガ最モ適切デアルカラ、商業通信費ト云フモノヲ領事館ノ経費中ニ置カルヽコトヲ希望スルノデアリマス、尚ホ又十四番ノ唯今御報告ニナリマシタ御取調ベノ課目ト云フモノハ、至極綿密ニナツテ居リ敢テ間然スル所ハアリマセヌガ、尚ホ夫レニ附加ヘテ置キタイノハ、何分日本ハ是
 - 第23巻 p.425 -ページ画像 
レマデ久シク鎖港シテ居ツテ、僅ニ商売ガ開ケテ維新後本統ニ通商ヲスルト云フコトニナツタノハ二十余年ノ間デアリマス、夫レデゴザリマスルカラ、此内地ノ人ニ適スルト云フモノヲ重ニ造ツテ居ツタノガ今日ノ重要輸出品トナツテ居リマスルガ、併ナガラ文明ガ進歩スルト云フコトニナレバ自ラ重要品ノ中ニ消滅スルモノモ出来ルシ、又重要品モ入代ツテ今日仏蘭西乃至亜米利加ノ重要品ガ日本ノ重要品ニナルト云フヤウナコトモアル、夫レハ日本ノ今日ノ有様ハ極ク西洋ノ模造品ヲ造ルニ智慧ヲ得テ居ル人民デアルカラ、器械製造・紡績製造、又「まつち」ナリ其他「ぶらし」ナリ、殆ンド重要品ニナツテ居リマス、夫レハ或ハ欧羅巴ニ比較スレバ職工賃ガ安イト云フ所カラ、模造品ガ段々出来ルヤウニナツタノデアリマセウガ遂ニハ日本ノ重要品ニ入レラルヽヤウニナルカモ知レナイ、故ニ重要品ノミナラズ或ハ人工ヲ要スルモノデ、是レハ内地デ造ツテモ宜イト云フヤウナ製造品ハ、矢張リ彼方ノ製造スル方法等モ報告スルノハ最モ必要デアルカラ、今日ノ日本ノ重要品ノミナラズ右等ノコトモ十分ニ御取調ベニナリ、通信アランコトヲ希望致シマス
○十一番(渋沢栄一君) 私ハ二番説ヲ賛成シテ委員ヲ設ケルガ宜カラウト云フコトヲ申シテ置キマス、通信ノ方法ナドニ就キマシテハ、至ツテ不熟練デゴザリマスカラ、其事ニ就イテノ私ノ考ヘハゴザリマセヌ、段々御熟練ノ諸君ノ御討議モゴザリマスルシ、論旨ガ色々ニナツテ何レニ賛成シテ能イカ分リマセヌ、丁度黒人ノ御揃デ海外貿易ヲ実際ヤツテ御出ノ方ナリ、又ハ領事官ニナツテ御経験ノアル御方モアリマスカラ、其方々ヲ撰ンデ委員ヲ御組立テニナリ、或ハ其説ノ中ニハ大同小異ト云フヤウナ有様ガアツテ、誠ニ方針ガ一ニ帰サヌカラ、成ルベク之ヲ折衷シテ答案ノ立ツヤウニナリマシタラ吾々ハ賛成スルニモ宜カラウト思ヒマス、故ニ委員ヲ置カルヽコトヲ希望致シマス、又此通信ノ方法ニ付テモ農商務省デ御調ベノ附イテ居ル事柄ハ、十四番カラ御話シノ通リデアルガ、又商業会議所ナドノ考案モアリマスカラ、夫等モ一層詳ハシク聴イテ方法ヲ立テタイト思ヒマス、是レハ必要ハ全ク必要デアルカラ、其方法ヲ設クルノハ極ク賛成デゴザリマスルガ、其設ケヤウハ凡ソドウ云フ方法ニスルカ、其程度ハドウスルカト云フヤウナコトハ、委員ノ手ニ於テ一定シテ貰ヒタイト思フノデアリマス
○十九番(土居通夫君) 十一番ノ委員説ニ賛成
○議長(伯爵佐野常民君) 十七番ニ一寸御尋ネ致シマスガ、清国ナドノ領事ハ裁判権ヲ持ツテ居ルカラ其方ハ補ヒヲシテヤルト云フノハ矢張リ不足ノ人ヲ人数ヲ増シテヤルト云フノデゴザリマスルカ
○十七番(藤井三郎君) 職制・権限ナドモ余計殖ヘテ居リマスカラ、之ヲ領事館ノ忙ハシイノニ入レラレテハ困ル、是レハ領事ノ職務デハナイト思ヒマス
○二番(藤田四郎君) 私ハ委員附託ノコトヲ申上ゲマシタガ、議長カラ特ニ十七番ニ御尋ネガゴザリマシタカラ、一寸本員ノ見込ヲ申上マス、東洋ノ朝鮮・支那ニ於テ領事館ニ置キマスル定員ト云フモノハ、外務省ノ御方ガ御話シノ通リト吾々ハ信ジテ居リマス、併ナガ
 - 第23巻 p.426 -ページ画像 
ラ御承知ノ通リ地方長官ノ責任ト司法官ノ責任トヲ持ツテ居リマシテ、実際ノ商業報告ニ就キマシテモ、領事ハ同ジク責任ヲ持ツテ居ル、又処ニ依ツテハ此通信報告ノ為メニ其中ノ官吏ヲシテ特ニ扱ハスル処モアリマセウナレドモ、実際吾々ノ聞イテ居ル所又見マシタ所ニ於テハ、ドウモ今迄ノ通リデハ実際行カナイ、ト云フノハ中々事務モ繁多デアリ、殊ニ此両三年ハ外交上ノ関係等カラ一層変更等モ多カツタヤウニ新聞等ニモ認メマス、斯ウ云フヤウナ次第デゴザリマスルカラ、迚モ領事自カラヤルノハ暇ガ無イトシタナラバ、其領事ヲ補佐スル官員ガ専務ニヤル人ガアルカト云フト、有ツタリ無ツタリト云フコトハ、或ハ実際デハナイカト思ヒマス、是等ノコトニ就イテ殊更ニ「こんまーしやる・あつたつせー」ト云フヤウナモノヲ置クニシテモ、今迄ノ人デヤルニシテモ、内規デモ出来ナケレバナルマイト思ヒマス、是レハ第五ノ諮問案ノ方法ノ幾ツモアル箇条中ノ一ツニ過ギナイコトデアリマスガ、今十七番ノ御弁明アリシニモ拘ハラズ一応申シテ置キマス
○議長(伯爵佐野常民君) 唯今二番カラノ御説デ、必要デアルト云フコトハ、御一同ノ御意見ノヤウデアリマスガ、夫レニ就イテ其方法等ヲ委員ニ附託シテ取調ベルヤウニト云フ御意見ニ追々御賛成モゴザリマスガ、尚ホ之ニ就イテ決ヲ採リマス、二番説ニ御同意ノ御方ハ御起立ヲ願ヒマス
  起立者  多数
 多数デゴザリマス、夫レデハ委員ハ後デ御報告致シマス


第一回農商工高等会議議事速記録 第二四七―二五一頁 明治三〇年四月刊(DK230040k-0002)
第23巻 p.426-428 ページ画像

第一回農商工高等会議議事速記録  第二四七―二五一頁 明治三〇年四月刊
明治二十九年十月二十三日(金曜日)午前九時五十分開議
          出席者
            議長  伯爵 佐野常民君
            一番     大倉喜八郎君
            二番     藤田四郎君
            三番     藤田伝三郎君
            四番  男爵 鈴木大亮君
            五番     原善三郎君
            七番     益田孝君
            八番     安藤太郎君
            九番     山本亀太郎君
            十一番    渋沢栄一君
            十三番    近藤廉平君
            十四番    金子堅太郎君
            十五番    浜岡光哲君
            十六番    益田克徳君
            十七番    藤井三郎君
            十八番    森村市左衛門君
            十九番    土居通夫君
            二十一番   添田寿一君
 - 第23巻 p.427 -ページ画像 
          欠席者
            十番     中上川彦二郎君
            二十番    広瀬宰平君

○議長(伯爵佐野常民君) 諸君昨日ニ引続キノ会ヲ開キマス、第五諮問案ニ対シテ御委員ニナリマシタ委員方カラ調査ニ付イテノ報告ガゴザイマス、先ヅソレヲ朗読致サセマス
   〔有賀幹事朗読〕

    第五諮問案委員会決議
  一貿易ノ拡張ニ伴ヒ領事館ヲ増置シ、漸次名誉領事ヲ有給領事ニ改メ、通信報告ノタメ必要ナル経費ヲ増加シ、且可成此ノ職務ニ従事スヘキ人員ヲ充実ニシ、殊ニ農商工ノ事業ニ経験又ハ学識アル内外人ヲ撰任従事セシメ、領事ノ職務ヲシテ一層有効ナラシムル事
  一各種重要産物等ニ対スル通常報告ハ年一回ニ止メ然ルヘキモ、海外貿易ニ対シ著大ナル影響ヲ及ホシ市場ノ激変ヲ来スヘキ臨時ノ事件ハ、特ニ電信ヲ以テ随時最モ敏捷ニ商業会議所ノ如キ実業者ノ団体ニ送達シ、実業者ヲシテ容易ニ其ノ状況ヲ知悉セシムルノ便ヲ与フルコト
  右及報告候也
   明治廿九年十月廿二日      委員 藤田四郎
                   同  益田孝
                   同  山本亀太郎
                   同  藤井三郎
                   同  土居通夫
    農商工高等会議々長 伯爵 佐野常民殿

○二番(藤田四郎君) 唯今御朗読ニナリマシタ第五諮問案ヲ特別委員会デ決議シマシタ事柄ニ付キマシテ簡単ニ申上ゲマス、委員ガ寄リマシテ評議シマシタル所ガ、之ヲ要スルニ前回本会議ニ於キマシテ夫ニ諸君カラ御話ノアリマシタコトヨリ外ニ改ツタ事柄ハゴザイマセヌ、委員会ニ於キマシテハ、之ヲ纏メマシテ此通リ決議ニナリマシタ、即チ貿易ノ拡張ニ伴ヒ、或ハ領事館ヲ増置スルコトモ必要デゴザイマセウシ、又是マデ名誉領事ノヤツテ居リマシタ所ハ色々行掛リモアリマシテ直グ悉ク廃シテ仕舞フコトモ出来ヌカ知リマセヌケレドモ、更ヘナケレバナラヌ所モアルヤウデゴザイマス、サウ云フ所ハ外国人ノ名誉領事ノ無給ナルモノヲ、本統ノ領事ニシテ有給ノニ改メルヤウナコトニシテ、ソレカラ此通信報告等ノ為メニ特別ノ経費ト云フモノヲ設ケテ、或ハ其為ニ人ニ御馳走ヲシタリ、其他調ベタリスルヤウナ経費ト云フモノヲ増スト云フコト、ソレカラ或ハ特別ナル専門ノ外国人又ハ内国人ニシテ其地方ニ居ル人ニ頼ンダリ、又ハ特別ニ必要ナ場所ハ特ニ農商工ニ関係アル内国人等ヲ派シテ其領事館ニ置クコトモ必要デゴザイマス、次ノ事柄ハ各国ノ領事
 - 第23巻 p.428 -ページ画像 
ノ制度ト同様ニ、此報告ト云フモノハ一年ニ一回スルガ宜シイガ、併ナガラ電信ノ報告ニ付テハ最モ商売上ニ影響ヲ及ボスコトデアリマスカラ、是ハ政府ニ於テ一層今マデヨリハ注意ヲセラレテ、大統領ノ選挙トカ或ハ又糸ノ情況ト云フモノハ海外貿易ニ重大ナル影響ヲ及ボスモノデアルカラ、金ヲ惜マズ随時電信デ報ジテ貰ヒタイ、其電信ガ来タ暁ハ、ソレハ新聞ハ固ヨリノコトデゴザイマスガ、最モ注意ヲ望ム所ハ商業会議所、或ハ当業ニ関係ノ多イ所ヘハ特別ニ報ジテ貰ヒタイ、ト斯ウ云フ事柄ガ即チ決議ノ趣意デゴザイマス
○五番(原善三郎君) チヨツト二番ニ御問ヒ申シマス、此商業会議所ノ如キ特別ニ急報ヲシテ貰ヒタイト云フノハ、商業会議所ヘ直接ニナスツテ下サル訳デスカ
○二番(藤田四郎君) 決議ノ趣旨ハ、文案ニモゴザイマスル通リ随時最モ敏捷ニ商業会議所ノ如キ実業ノ団体ヘ送達スルニ付テ、是ヲ電信ニ致ストキハ暗号電信ニ拠ラナケレバ到底経費ノ掛ルモノデアルカラシテ、外務省カラ農商務省ヘ送ル、ソレヲ新聞屋ヘ送ルト同時ニ商業会議所ヘ送ルノデゴザイマス
○五番(原善三郎君) 訳文ニシテ……
○二番(藤田四郎君) 訳文ニシマシテ新聞社ナリ官報局ヘ送ルト同時ニ、蒟蒻版ニシタモノヲ商業会議所ヘ送ルト云フ意味デ決議シタノデアリマス
○十一番(渋沢栄一君) 特別委員ノ御取調ベノ通リ異議ハゴザイマセヌ、今ノ報告案ニ御同意ヲ申シマス
○十六番(益田克徳君) 賛成
○十五番(浜岡光哲君) 賛成
○議長(伯爵佐野常民君) ソレデハ即チ此報告案ノ通リ御同意ノ御方ノ起立ヲ煩ハシマス
  起立者  多数
 全会一致デゴザイマス
   ○本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治二十九年三月十二日、同年十二月十六日ノ両条参照。