デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

8章 政府諸会
1節 諮問会議
6款 農商工高等会議
■綱文

第23巻 p.451-491(DK230043k) ページ画像

明治29年10月22日(1896年)

是日第一回第四日ノ会議ニ於テ、栄一、同年発布ノ航海奨励法ヲ政府ニ於テ確実ニ実施スルト共ニ、同法施行規則及ビ造船規程ヲ簡明ニナサンコトヲ建案ス。該案、特別委員ノ審議ニ委ネラレ、栄一委員ノ一員トナル。二十六日第七日ノ会議ニ於テ委員決議案審議サレ、一部ハ可決、他ノ一部ハ再ビ継続委員ノ審議ニ附託セラル。栄一、継続委員
 - 第23巻 p.452 -ページ画像 
タリ。


■資料

第一回農商工高等会議議事速記録 第二一〇―二四三頁 明治三〇年四月刊(DK230043k-0001)
第23巻 p.452-463 ページ画像

第一回農商工高等会議議事速記録  第二一〇―二四三頁 明治三〇年四月刊
明治二十九年十月二十二日(木曜日)午前九時四十分開議
          出席者
            議長  伯爵 佐野常民君
            一番     大倉喜八郎君
            二番     藤田四郎君
            四番  男爵 鈴木大亮君
            五番     原善三郎君
            七番     益田孝君
            八番     安藤太郎君
            九番     山本亀太郎君
            十番     中上川彦二郎君
            十一番    渋沢栄一君
            十三番    近藤廉平君
            十四番    金子堅太郎君
            十五番    浜岡光哲君
            十六番    益田克徳君
            十七番    藤井三郎君
            十八番    森村市左術門君
            十九番    土居通夫君
            二十番    広瀬宰平君
            二十一番   添田寿一君
          欠席者
            三番     藤田伝三郎君
○中略
○子爵榎本農商務大臣 今日ハ松方総理大臣ノ御臨場ヲ願ヒマシテ、チヨツト是ヨリ御挨拶ガアリマス
○内閣総理大臣兼大蔵大臣伯爵松方正義君演説
 簡単ニ一言申シマス、日本帝国ノ現在・将来ノコトヲ考ヘテ見マスルノニ、農商工ノ事業ヲ発達セシメ海外貿易ノ拡張ヲ図ルハ最モ緊要ト信ジマス、殊ニ改正条約モ段々歩ヲ進メマシテ其実施ノ時機モ将ニ近キニアリマス、果シテ然ラバ此準備ニ於キマシテモ余程注意ヲ致サヌケレバナラヌコトデアリマス、本会ハ、海外貿易ノ事項ニ就キマシテ、諸君ガ各蘊奥ヲ吐露シテ意見ヲ御陳述ナサルヽ場所デゴザイマスカラ、実ニ其責務ノ重ク且ツ大ナルコトハ申スマデモゴザイマセヌ、又本大臣ハ農工商ノ隆盛ニ最モ重キヲ置イテ居ル者デアリマス、諸君ハ多年熟練ノ材能ヲ以テ、倍々国家ノ為ニ此任務ヲバ全ウ御尽シニナルコトヲ本大臣ハ切ニ望ミマス
○議長(伯爵佐野常民君) ソレデハ第二諮問案ヨリ議シマス
○十一番(渋沢栄一君) 今第二御諮問案ノ議事ニ掛ツテ居リマスガ、私ハ一ツ建議ヲ致シタイコトガゴザイマス、宜シウゴザイマスカ
○議長(伯爵佐野常民君) 宜シウゴザイマス
 - 第23巻 p.453 -ページ画像 
○十一番(渋沢栄一君) 幸ヒニ総理大臣ガ此会ニ御臨場成シ置カレマシテ、此会ノ現在・将来ニ於テ日本ノ商工業ニ大ニ関係スル……我我無芸ト雖モ此議場ニ参リマシタ以上ハ、聊ナガラ平素ノ実験ヲ充分ニ吐露シテ国家ニ報ズル所ノアルヤウニ致セト云フ、御懇切ナ至ツテ鄭重ナル御示シヲ拝聴仕リマシタ、大臣ニシテ此日本ノ商工業ニ御関係ノ強ク、又其責務ヲ重ク大キク御看做シ遊バサルヽコトハ我々モ厚ク信ジテ居リマス、幸ヒ総理大臣ガ御臨席ノ所デ一事件ヲ建議致サウト考ヘマスルノハ、即チ本年御発布ニ相成リマシタ航海奨励法ノ件デゴザイマス、熟々日本ノ海外ニ対スル貿易ノ事情ヲ考ヘマスルト、既ニ第一ヨリ第七ニ渉リマスル此御諮問案ハ是ヲ拡張シマスルニ付イテ緊要ノモノニ相違ゴザイマセヌ、併シ或ハ大体結論ヲシマスレバ、今玆ニ建議セント欲スル航海奨励法ナドハ、一分ノ軽キヲ置キハセヌカト思ヒマス、彼ノ航海奨励法ハ大ニ是ヨリ重イト云フコトハ明言シ得ラレヤウト考ヘマス、開会ノ際ニ農商務大臣ハ、日本ノ戦後ノ商工業ニ付イテハ外国ノ視線ガ最モ是ニ注射シテ居ルゾヨ、気ヲ附ケヨト仰セラレマシタ、是ハ御尤モ千万デ、我我無芸ト雖モソレダケノコトハ知ツテ居ル、トコロガ其注射ノ最モ強イト云フコトハ我々ガ証拠立得ルノデ、不肖ナガラ日本郵船会社ノ重役ノ一人ニ居リマスノデゴザイマスガ、現ニ是等ハ海外ニ係ル航路ニ付イテ、一昨年若クハ一昨々年頃ノ有様ト今日トハ殆ド雲泥霄壌ノ有様ニナツテ参リマシタ、例ヘバ「ぴーをー」会社ト郵船会社ニ於ケル交渉若クハ談判ノ如キモ、明治二十六年ハ明治二十九年ノ今日トハ異ツタ人ガ異ツタ土地デ話ヲスル如キ有様ニナツタノデゴザイマス、僅カ二・三年ノ間ニ郵船会社ガ決シテ賢クナリモシナケレバ大キクモナリマセヌ、畢竟後楯ガ……右様ノ法律ガ成立ツタニ依ルト私共ハ感ジマスノデゴザイマス、偖左様ニ有難イ法律デハゴザリマスルガ、唯恨ラクハ此法律ガドレ程ダケニ奨励ニ対スル金額ハ定メラルヽカト云フト、国家経済上ノ予算トチヤント適合スルコトノ出来ヌモノデハナイカト思ヒマス、私ハ国家ノ予算ナドノコトハ詳ハシク心得テ居リマセヌカラ疑ヒマスノカモ知レマセヌガ、若シ左様ナコトガアリマスルト云フト、此額ガ多ケレバ多イニ従ツテ、何ウニカ処分シナケレバナラヌ、例ヘバ国家ガ之ニ応ズルニ甚ダ苦ムト云フヤウナコトガアルカモ知レマセヌ、是レハ私一人ノ邪推デハナイ、殆ンド此業ニ従事スルモノハ皆其懸念ヲ懐イテ居ルヤウニ思ヒマス、既ニ四番議員ナドハ此事ニ付テハ実際ニ御責任ノアル所カラ、此程或議員ノ御討論中ニ其辺ハ懸念ニハ及バヌト云フ御弁明ガゴザリマシタケレドモ、併シ吾々此議場デハ其言葉ヲ聴イテ安心シテモ、家ニ帰リマスレバ懸念セザルヲ得ヌト思ヒマス、然ラバ此法律ト云フモノハ誠ニ根底堅固ト云フコトハ、或ハ言ヒ得ラレヌカト云フ恐レヲ持ツテ居リマス、又一方ニハ其事ニ専ラ力ヲ尽シテ十分ニ満足ナル成功ヲ見タイト共ニ、之ニ対スル当該官庁ノ処置振デゴザリマス、決シテ吾々ハ唯簡便ニ、無規律ニモ簡便ヲ好ムト云フノデハゴザリマセヌガ、既ニ其法ヲ以テ誘導シ奨励スルト云フ以上ハ、ナルベクダケ手数ヲ省キ、成ルベクダケ其事ノ行ハレ易イ
 - 第23巻 p.454 -ページ画像 
ヤウニアリタイ、例ヘバ施行細則ノ如キ、若クハ造船規程ノ如キ、是等ノ点ニ就キマシテモ、吾々共ハ或ハ繁褥過雑ノ規定ガアリハセヌカト云フ嫌ヒガナイデハナイト思フノデゴザリマス、右ノ如ク海外貿易ニ就イテ、誠ニ金科玉条トモ云フベキ結構ナル法律ヲ施行シテ、海外人ノ最モ注目スル且ツ此事ハ三年モ五年モ掛ツテ、世ノ中カラ種々ノ労ヲ以テ生レ出タル法律ガ、若シ私ガ疑フ如キ根底不確固ノ為メニ、又ハ之ヲ処置スル細則ニ於テ私ノ懸念スル如キ繁褥ノ嫌ヒガアルナラバ、斯ル業ヲ御開キナスツテ一方ニハ十分ニ御温メ下サツテ、一方ニハ忝ケナイコトニハ冷メタクスルト云フ嫌ヒガナイトハ申サレマスマイ、決シテ左様ナコトハナカラウト厚ク信ジマスルガ、ドウモ不安心ニ考ヘマスルカラ、今回ヲ以テ右ノ趣旨ヲ本会ヨリ政府ニ御建議ナサルコトヲ願ヒタイノデゴザリマス、何卒諸君ノ御賛成ヲ請ヒマス
○四番(男爵鈴木大亮君) 唯今十一番ノ御建議ヲ、モウ少シ伺ツテ置キタイノハ、其御希望ノコトハ今日施行ニナツテ居リマスル航海奨励法ト云フモノハ、将来安全ニ政府デ実施スルヤウニアリタイト云フ御精神ノヤウデアリマス、次ニ細則其他ノ法律上ニ於テ繁褥ニ失シテ居ルト云フコトデゴザリマスルガ、夫レヲ簡略ニスルト云フ御考ヘハ、何等ノ点ヲ指シテ云ハルヽノデアリマスカ
○十一番(渋沢栄一君) 今ノ施行細則若クハ造船規程ナドニ就キマシテ、此廉彼ノ廉ト云フコトヲ玆ニ悉ク申上ゲマスコトハ、私ハ致シマセヌ積リデゴザリマス、詰マル所夫レハ自ラ其職ニ当ル者ガ考ヘタナラバ、是レハ斯ウナシテ下サツタナラバ宜シクハナイカト云フコトガ、必ラズアルダラウト信ジマスルノデ、法律ガ出ル時ハ必ラズ、法ト云フモノハ成ルベク斯クアリタイト云フ仕掛ケニ、組立ルト云フコトハ勢ヒ已ムヲ得ナイ、又斯様ナ便ヲ採リタイト云フコトハ、人情ノ免カレナイ所デアリマシテ、独リ此法ノミナラズ、他ニ幾ラモアル、政府若クハ当局者ニ於テ成ルベク、此法ヲ取ラセタイト云フナラバ、其法ニ背カヌ限リハ、成ルベク便宜ヲ与ヘルト云フノガ人情ノ常、又道理ノ常デアリマス、私ハ成ルベク規律ニ違ハヌ限リ、便利ヲ与ヘルヤウニサレタイト云フ希望ヲ述ベタノデゴザリマス
○四番(男爵鈴木大亮君) 唯今ノ御弁明デハ十一番ノ御希望ハ、為シ得ルダケ手数ノ省ケルヤウニシタイト云フコトヽ考ヘテ宜カラウト思ヒマス、モウ一ツ伺ヒタイノハ、最前御述ベニハ奨励法ニ拠ツテ補助致スベキ金額ハドレダケニナルト云フコトハ、予定シ得ナカツタラウト云ウヤウナ御弁明ノアツタヤウニ承ハリマシタガ、奨励法ヲ将来共ニ完全ニ維持スルト云フコトヲ希望スル上カラハ、金額ハ何等ニ達スルトモ厭ハヌト云フ御趣意デゴザリマスルカ
○十一番(渋沢栄一君) 最早ヤ何等ニ達スルトモ厭ハヌト云フ御覚悟ヲ願フヨリ外仕様ハナイト思ヒマス、併シ航路ノ拡張ヲ希望スルト云フ上ニ付テモ、限リアル国ニ向ツテ限リナク船ヲ出スト云フコトマデモ御懸念ハ入ルマイ、併シドレ程マデ船ヲ出スト云フコトハ、今日誰デモ定メ難イコトヽ思ヒマス、故ニ今貴様ノ希望ハドウデア
 - 第23巻 p.455 -ページ画像 
ルカト云フト、望ミ人ノ生ジテ相当ト見ル限リト云フコトニ御考ヘ下サルヨリ他ハナイト思ヒマス
○四番(男爵鈴木大亮君) 唯今十一番ノ建議ノ御趣意ハ明瞭致シマシタ、十一番ノ建議ヲ賛成致シマス
○二十一番(添田寿一君) 十一番ノ御説ハ、伺ヒマスル所デハ法律ヲ施行セラレタイ、又其施行ヲ成ルベク簡易ニセラレタイト云フニ過ギナイヤウニ承ハリマシタガ、夫レハ別段此会デ御決議ニナラヌデモ、此法律ヲ制定施行スル以上ハ当然ノコトデハナカラウカト思ヒマスカラ、夫レダケデゴザリマスルナラバ、事々敷御建議ト云フマデノ手続ニハ及ブマイト信ジマスル故ニ、反対デハゴザリマセヌガ御見合セヲ御勧メ申上ゲルノデゴザリマス
○二番(藤田四郎君) 十一番ノ発言セラレマシタル建議ニ就キマシテハ、既ニ世ノ中ノ問題トモナツテ居ルコトデゴザリマセウ、皆様モ夫レ夫レ御調ベニモナツテ居ルコトデアリマセウケレドモ、今此処デ此事ヲ突然発言セラレテ、未ダ其建議ノ文案モ見ズ、御話デ大体ノ意味ハ分リマシタガ、苟モ此会ノ責任ヲ以テ建議ヲセラルヽ以上ハ、御話ノ事柄ハ繁褥ヲ避ケヨトカ、法律ヲ斯ウシテ呉レトカ云フノハ、是レハ当然ノコトデゴザリマスカラ、固ヨリ廿一番ノ御話ノ通リ建議セズトモ宜ウゴザリマセウガ、実際十一番ハ外ニ夫レニ就イテ御考ヘノ所ガアルダラウト思ヒマスカラ、尚ホ建議ノ文案ヲ具ヘテ航海奨励法其他ノ法律ト之ニ対スル施行細則デモ調ベテ、果シテ何処何処ノ箇条ガ実際困ルト云フコトヲ突止メタ上デ、農商務省カラ諮問セラルヽモノヨリ、最ウ一層大切ナモノデアルト云ハルヽナラバ、其時ヲ待ツテ夫レ夫レノ手続ヲ経テ建議セラルヽガ宜イト思ヒマス、御発言ナサルヽコトハ宜シウゴザリマスガ、今此席デ建議スルト云フコトハ御見合セヲ願ヒマス、殊更ニ今日ヲ外シテハナラヌト云フ程ノコトデモゴザリマスマイト思ヒマス
○七番(益田孝君) 十一番ノ航海奨励法ニ就イテ建議セラレタコトハ唯其法律ノ施行上便宜ヲ与ヘルコトヲ望ムト云ハレルヤウナ簡単ナコトニハ私ハ受取リマセナンダ、今皆様ノ御説ハ其ヤウニ傾イテ参リマシタガ、私ハ其演説ヲ承ツテ居リマスル間ニ大ニ御賛成ヲ申シタイト思ヒマシタ、是レカラ先キ法律若クハ其施行規則ヲ当該官庁デ取扱フ上ニ就イテ、人民ノ便利ニナルヤウニシテ呉レト望ム位ノコトデハナカラウト思ヒマス、私ハ此御諮問案ニハ出テ居リマセヌケレドモ、是レハ此会ガ建議ヲ仕リマシテ特別委員デモ置キ、最モ鄭重ニ取調ベヲシナケレバナラヌ事柄デアラウト存ジマス、其訳ハ第一此施行規則ハ経済上完全ナルモノデアルヤ否ヤ、私モ固ヨリ素人ノコトデゴザリマスカラ更ニ分リマセヌガ、此施行規則ニ依リマシテ、船ヲ英吉利ナドニ注文致シマシタ人ノ話ヲ聞キマスルト、商船トシテ無用ナルコトガ大分アル、例ヘバ英吉利ノ「ろいど」ノ規則、其規則ニ定メテアル所ニ拠ツテヤレバ、貨物ヲ運輸スルニ安全ヲ保ツト云フダケノコトハ、十分ナル調ベガ出来テ居リマスルガ、夫レヲズツト越ヘテ居ル、申セバ貨物運送ニ就イテハ少シ無用ナルホド鄭寧ナル規定ガアル、或ハ二千噸以上ノモノハ悉ク二重「でつ
 - 第23巻 p.456 -ページ画像 
き」ニスルナドト云フコトガアリマスカラ、大分批難ノ声ヲ承ハリマス、世ノ中ニハ経済上「ろいど」ノ規則位デ沢山デアルノニ、ナゼ金ノ掛カラヌ英吉利ノ会社ノ規則ヲ応用シナイカ、承ハレバ鉄板一枚マデ悉ク試験ヲ受ケナケレバ行カヌゾト云フヤウナコトモゴザリマスサウデス、シテ見マスルト世ノ中ハ一方ニ疑ヲ置キテ、実ハ彼ノ法案ハ通過シテ法律トナツタケレドモ、一方ニハ財政上難儀ナコトデアルカラ、先ヅ施行細則デ金ノ入ラヌ様ニシナケレバナラヌト云フヤウナ所カラ、彼ノヤウニナツタデハナイカト云フヤウナ疑ヒヲ起スモノモアリマス、夫等ノコトハ信用ハ致シマセヌガ、兎ニ角不経済デアル、貨物ヲ運送スルニ足ルベキ船ヲ造レバ宜シカリサウナモノニ、殊更ニ日本ニ限ツテ鄭重ニシナケレバナラヌト云フノハ不経済デハナイカ、寧ロ彼ノ法律ヲ止メタ方ガ宜イ、大イニ人ガ迷ツテ、実際ヤツテ見レバ一向効能ガナイ、不経済デアツテ適当シナイモノバカリアルト云フヤウナコトガ起リハセヌカト云フ迷ガ生ジテ来ル、夫レデ特別委員ヲシテ実際サウデアルカ、又其結果如何ニ依ツテ、此規則ハ決シテ疑フニハ及バヌ、又サウ不経済ノモノデナイト云フコトガ分レバ世ノ中ニ証明スルコトガ出来マス、又一方ニ於テハ其法律ガ不経済ノコトデアルヤ否ヤモ分ル、唯々荷物モ積マズニムヤミニ航海スレバ、奨励金デ立派ニ利益ガアルト云フヤウナ輩モゴザリマスガ、マサカサウ云フコトハナイノデゴザリマセウ一方ニハ奨励スベキ法律ヲ出シテ其実ヲ得ナカツタ、又一方ニハ無闇ヤタラニ無用ノモノマデ奨励金ヲ目的ニシテ船ヲ造ルト云フコトガナイヤウニ、法律ガ悪ルケレバ即チ法律ノ改正ヲ望ムコトハ、極ク適当ナルコトデアラウト思ヒマス、斯ノ如ク経済上大事ナコトデアリ、此農商工高等会議ノ如キハ即チ貿易上第一ノ機関トシテ居ルコトデゴザリマスカラ、特別委員ヲ置カレテ調ベヲスルト云フコトハ、決シテ無用ノコトデナイト存ジマスルカラ、私ハ十一番ノ精神ヲ賛成致シマシテ其取調ベヲ希望致シマス
○二十番(広瀬宰平君) 私モ十一番ニ賛成者ノ一人デゴザリマス、如何トナレバ海外貿易ニ対スル第一ノモノハ即チ航海デゴザリマス、其航海ガ基ニナツテ吾々ノ商売モ出来マスル、今日外国マデモ郵船会社ノ船ガ廻ハルヤウニナリ、此新事業ヲ初メル事ニナリマシタノハ、此奨励法ガ其当ヲ得タカラト云フ位ニ考ヘテ居リマスカラ、十一番ノ議論ニハ最モ同感デアリマスガ、此御諮問案ヲ結了致シマシテ後ハ、建議モ致シマセウシ、又吾々モ考ヘノアル所ハ十分言フガ宜イト云フコトモ、農商務大臣初メ言ハレマシタガ、此御諮問案モ余程運ンデ居リマスカラ、是レダケヲ決了致シマシタ後ニ建議ハ議スルコトニシテ、先ヅ今日ハ第二ノ案ニ早ク御着手ニナルコトヲ願ヒマス
○十四番(金子堅太郎君) 私ハ二十番説ヲ賛成致シマス、熟ラ十一番ノ御説ヲ拝聴シ、尚ホ又夫レヲ一皮ムクツテ詳細ニ今益田君カラ御話ニナリマシタガ、此問題ハ咄嗟ノ間玆デ建議案ヲモ見ズ、如何ナル点ガ我商工業ヲ発達サスルニ就イテ、現今ノ航海奨励法ハ不十分デアルト云フコトヲ判断スルコトガ出来ナイノミナラズ、斯ル重大
 - 第23巻 p.457 -ページ画像 
ノモノト十一番モ仰ツシヤル以上ハ、モウ少シ吾々ガ果シテ今ノ航海奨励法ナリ、造船規程ナリ、施行細則デハ、此点ガ商工業ヲ発達セシムル精神ハアルケレドモ、実際運ビガ附カヌト云フコトヲ看破スルヤウニ、事実ヲ挙ゲテ述ベラレタイ、サウスレバ吾々モ両手ヲ挙ゲテ賛成シ、又農商務省ノ本職トシテモ尽シタイト思ヒマスガ、唯々ドウゾ法律ヲ便宜ニ解釈シテ呉レイ、便宜ニ施行シテ呉レト云フコトデアルナラバ、廿一番ノ言ハルヽ通リノコトデアリマスガ、此事ハ海外貿易ヲ奨励スルニ最モ必要ナルコトデアツテ、即チ我国ヲ富マス第一着デアリマス、第二ニハ保険、第三ハ金融機関、此三機関ガ相関聯シナケレバ貿易ヲ発達スルコトハ出来ナイ、此三ツハ最モ審議シナケレバナラヌカラ、今少シ事実ヲ挙ゲテ其不完全ノ点ヲ御示シニナリタイ、近藤君ナドハ欧洲航路ノコト、又亜米利加・濠斯太剌利亜ナドニ航路ヲ開カレテ御経験モアリ、其辺ハ一々論ズル訳ニハ行キマスマイガ、一通リ此案ガ済ミマシタナラバ、更ニ御建議案ガ出テ、夫レニ就イテ十分ニ研究シタイト思フテ居リマス、先日長江航路ノコトニ付テモ、コンナモノハ出スニ及バヌ、既ニ分リ切ツタコトダト仰ツシヤツタニ付テハ、国家ノ為メニ実ニ憂慮ニ堪ヘヌ、既ニ分ツテ居ルコトデアルナラバ、日本人ハナゼ彼ノヤウナ所ニ航海セヌノデアルカ、或人ハ曰ク航海奨励法ハ支那ノコトハ眼中ニ置カナカツタト云フ、併シ遠洋航海ト云フテモ、遠洋ヲ渡ツタ先キガ海デアラウト河デアラウト、航海ヲ奨励スルニ付テ、長江航路ハ利益ガアルナラバ奨励スルガ適当デアル、是レハ四番ニ於テモ吾々ノ疑団、世人ノ疑団モ明瞭ニ解カレズ、是レハ特別ノ保護法デナケレバ行カヌト仰ツシヤツタ、其長江航路ハ航海奨励法デ行カナケレバ、更ニ之ニ対スル保護奨励法ヲ出サナケレバナラヌト云フガ、吾々熱心ニ希望スル所デアル、夫レハ長江航路ノ如何、貨物集散ノ如何ト云フコトナドハ、今マデ物産会社アタリデ調ベタモノモゴザリマセウガ、国家ノ事業トシテ調ベタモノハナイ、故ニ更ニ進ンデ造船家ノ意見モ聴キ、又経済家ノ意見モ聴キ、諸外国ノ実例ヲ調ベ、或ハ「みししつぴー」河ノ造船法ニ依ラナケレバナラヌトカ云フヤウナコトハ、余程慎重鄭寧ニ議サナケレバナラヌ、夫レヲ冷淡ニコンナコトヲ云フ議論ガ現ハレマシタノハ、誠ニ痛歎ニ堪ヘマセヌ、今此航海奨励法ニ就イテ国家ノ重要事件ト云フナラバ、モウ少シ其事実ヲ詳細ニ御述ベヲ願ヒタイ、一体上ベノ議論ニ流レテ居ルヤウデアル、私ハ此航海奨励法ハ熱心ニ調ベタイト思フテ居リマス、是レハ幸ニ十一番カラ御説ガ出マシタカラ、今廿番ノ述ベラレタ如ク後ニ御廻ハシニナツテ、皆サント斯ウ云フ議場ノ体裁デナク丸卓子《テーブル》ニ向ツテ膝組合ハシテ講究シテ見タイト思ヒマス、其上デ政府ニ建議スルナラバ、建議スルヤウニシタイ、今日ハ御繁忙ナルニモ拘ハラズ、総理大臣兼大蔵大臣ノ御出席ニナツタノハ再ビ得難イ機会デアリマスカラ、後日一ノ建議案トナツテ出シテ貰フコトニナシ、今日ハ大蔵省ニ最モ関係ノアル金融機関ノコトニ付テ諸君モ満腔ノ希望ヲ述ベテ御議論ニナリ、此案ノ済ンダ後ニ、航海奨励法ノコトニ付テハ、委員ヲ御選ビニナツテ御討議ニナツタ方ガ宜カラウ
 - 第23巻 p.458 -ページ画像 
ト思ヒマス、サウスレバ吾々モ喜ンデ賛成致シマス
○議長(伯爵佐野常民君) 十一番ニ申シマスガ、段々御建議ノ御趣意モアリマシテ夫レニ御賛成モゴザリマシタガ、二十番・十四番カラモ御演説ノアリマシタ通リ既ニ重要ノ問題ガ出テ居リマスルカラ、唯今ノ御建議ハドウゾ案ヲ御拵ヘニナリマシテ御持出シニナリ、サウシテ此次ノ会ニ十分ニ討論ニナルヤウニ致シタイ、唯今玆デハ委員ニ附託スルトカ何トカ云フ議決ハ採リマセズ、夫レハ建議案ノ出タル上ニ致シタイト思ヒマス
○十一番(渋沢栄一君) サウ致シマスルト、私ハ口頭ノ建議ヲ御許シニナツテ居ルヤウニ考ヘテ建議致シマシテ、賛成ヲ得タノデゴザリマスルガ、尚ホ更ニ成案ヲ具サナケレバ行カヌト仰ツシヤルノデゴザリマスルカ
○議長(伯爵佐野常民君) 口頭デ御建議ニナツテモ宜シイガ、何レ建議致シマスルニハ建議案ノ出来マシテ、夫レヲ建議セナケレバナリマセヌ、昨日ノ建議モ既ニ案ニナツテ居ルヤウナコトデゴザリマスカラ、願クハ今御陳述ノコトハ頗ル重要ノ点モアルシ、入組ンデ居リマセウト存ジマスルカラ、直グニ玆デ可否ヲ採ルト云フヤウナ訳ニハ参リマスマイカラ、願クハ案ヲ出サレマシテ諸君ガ篤ト御審議ニナルコトガ宜カラウト思ヒマス
○十一番(渋沢栄一君) 御採用下サラネバ已ムヲ得マセヌ
○中略
○十五番(浜岡光哲君) 議長ニ伺ツテ置キマス、第六ノ諮問案ヲ議スル間ニ十一番カラ建議説ガアリマスガ、アノ建議説モ此際委員ヲ御選ミニナルノデスカ、又ハ後ヘ御廻シニナリマスカ、ドウ云フ御都合ニナツテ居リマスカ、此際十一番ノ意嚮ハ誰モ賛成シテ居リマス左リナガラ唯今総理大臣ヨリ御懇切ナル御演説モゴザイマシテ、其御演説ニ伴ヒマシテ之ヲ審議スルニモ及ビマスマイカラ、此儘直ニ委員ニ附シマシタラ最モ宜カラウト思ヒマス、大抵航海奨励法ニ付キマシテハ、将来如何デアラウト云フコトハ、皆感ジテ居リマス
○四番(男爵鈴木大亮君) ソレハ先刻書面ニ案ヲ具ヘテ出スヤウニト云フコトデハゴザイマセヌカ、十一番ニ対シテサウ云フ御宣言ガアツタヤウニ心得マス
○議長(伯爵佐野常民君) 左様
○四番(男爵鈴木大亮君) 然ラバ書面ニ案ヲ具ヘテ出シマシタ節ニ、再ビ議シタラ宜シウゴザイマセウ
○議長(伯爵佐野常民君) 唯今ノ第二ハ、委員ニ託スルコトニナリマシタガ、続イテ相関聯シテ居リマス第六海上保険ノコトガゴザイマスカラ、其間ニ願クハ十一番ノ御建議ノ御趣意ヲ一ツ御書キ述ベニナツテ御差出ニナリ、其後デ尚ホ御議シニナツテ、サウシテ別ニ委員ニ託スルト云フコトニサレタラ宜カラウト思ヒマス
○十五番(浜岡光哲君) 唯今ノ御宣告ハ少シ了解シ兼ネマス、十一番ノ建議ハ此御諮問ニ附帯シテ居ルコトデ、今回ノ御諮問ハ第七デ終リマス、ソレデ若シ委員ニ附セラレルト云フコトデゴザリマスレバ早ク委員ニ附セラレル方ガ宜イト云フ考ヲ持ツテ居リマス、何故ナ
 - 第23巻 p.459 -ページ画像 
レバ、是ニ付イテ又再ビ開カレルト云フコトモ、最早帝国議会ノ開期ニ迫ツテ居リマスル際デゴザイマスカラ、如何デアラウカト思ヒマス、ソレデ願クハ委員ニ附セラレルナラバ、早ク委員ニ附セラレル方ガ唯今開ケテ居ル場合デアルカラ余程便利デアラウト思ヒマス
○七番(益田孝君) 賛成致シマス
○十三番(近藤廉平君) 私モ十一番ノ建議ヲ賛成致シマスル一人デゴザリマス、唯賛成スルバカリデナク、寧ロ進ンデ建議者ノ一人トナリタイ位デゴザリマス、ト申スノハ当業ノ吾々デゴザリマスカラ、此航海奨励法ガ発布サレタコトニ就キマシテハ、一番深ク考ヘヲ置カナケレバナラヌコトデアラウト思ヒマス、此航海奨励法ガ発布サレマシテ以来、或ハ世間航業者間ニ、疑惧ヲ抱イテ居ルト云フコトモ事実デアルノデゴザリマス、ト云フモノハ此法案通リニ、政府ハ支給サレルモノデアルト云フコトヲ確信シテ、当業者ハ之ニ従事シテ航業ノ拡張ヲ希望シテ居ルノデゴザリマス、所デ政府ハ国費多端ノ際デ、之ニ応ズルコトガ出来ナイデハナイカト云フ、恐レヲ懐イテ居ル、又実際其恐レガアルノデゴザリマス、夫レデ其点ヲ確カメ又一方ニハ施行ノ方法ヲ成ルベク簡易ニ、便宜ナ途ニシテ貰ヒタイト云フコトヲ熱望シテ居ルノデゴザリマス、十一番ハ先刻其趣意デ建議ヲシタノデゴザリマセウ、又四番ノ賛成サレタノモ果シテ其趣意デアラウト思ヒマス、私共モ其建議ニ就イテハ頗ル重大ノ関係ヲ持ツテ居ルノデゴザリマスカラ、委員ヲ御設ケニナツテ十分ニ調ベルダケノ価ノアルモノト考ヘテ居リマス、又此調査ニ付キマシテモ今即座ニ考ヘルト云フコトハ出来マセヌ、造船規程又ハ施行細則ニ付テモ箇条ガ沢山アリマスカラ、斯ノ如キ鋳形ニ造ツテ鋳形通リニ篏ツテ来ヨト申サレテモ、其鋳形ノ通リ実際篏ツテ行クコトガ出来ナイコトガアル、日本デ其通リニ実際ドウシテ従事スルカト云フコトニ付テモ多少ノ差支ガナイトハ云ヘナイ、夫レナラバ其差支ノアルダケノコトハ十分取調ベテ、其管轄庁ニ向ツテ修正ヲ御願ヒ申スコトヲ望ムノデゴザリマス、然ルニ今総理大臣ノ財政上ノ御演説モゴザリマシタガ、政府モ彼ノ法案ニ付テハ余程御心配ヲ抱イテ居ラルヽコトヽ存ジマス、又吾々当業者モ速力ト噸数トニ依ツテ、夫レダケノ奨励金ノ恩沢ニ浴スルコトノ出来ルモノデアルカドウカト云フ考ヘヲ持ツテ居リマス、若シ政府ノ御都合デ此法律ニ修正ヲ加ヘラルヽコトガアツタナラバ、既ニ当業者ハ確乎動カヌモノトシテ船ノ注文モシ十分設計ヲシテ居ルノニ、其為メニ非常ナ損害ヲ蒙ムルコトガアルト思ヒマス、実ハ管轄庁ニ対シテ建議シタイト云フノハ政府ノ趣意ハ何処ニ在ルカト云フコトヲ確カメタイト切ニ希望シテ居ルノデアリマス、唯今ノ所デハ彼ノ法律通リニ御施行ナサルノデアルカト云フコトガ、甚ダ憂慮ニ堪ヘヌノデゴザリマスカラ、ドウカ委員ヲ設ケテ十分ニ調査ヲシテ、此会期中ニ若シ出来マセヌナラバ、其為メニ一両日会期ヲ延バシテモ此建議ヲ御採用ニナリタイト思ヒマス、唯今ハ自分ガ当業者トシテ感ジテ居リマスコトヲ述ベマシタガ、ドウゾ委員ヲ御設ケニナルコトヲ望ミマス
○四番(男爵鈴木大亮君) 先刻ノ御宣告デハ、案ヲ具ヘテ建議ニナル
 - 第23巻 p.460 -ページ画像 
コトヽ思ヒマスガ、サウデゴザリマスルカ
○議長(伯爵佐野常民君) 一体ハ案ヲ設ケマスルノガ当然デゴザリマスルガ、既ニ席上デ書イテ御持出シニナリ、夫レガ議題ニナリマシテ既ニ委員ノ出来マシタ事モゴザリマス、夫レハ御衆決次第デゴザリマスカラ、十一番ノ説ヲ直チニ委員ニ附托シタイト云フニ、御賛成ノ御方モゴザリマスルシ、議場デ其通リスルガ宜イト云フコトデゴザリマスレバ、其通リニシテモ宜シウゴザリマス
○二番(藤田四郎君) 先刻ハ第六諮問案ヲ議スルト云フ箭先デゴザリマシタカラ、実ハ本員ナドモ廿番・十四番ナドト同ジク案ヲ具ヘルト云フコトヲ申シマシタガ、委員ニ附託シテ調査スルト云フコトデゴザリマスレバ、其後デモ意見ハ述ベラレマスカラ、既ニ賛成者モゴザリマスルシ、委員ニ附託サレテ宜イト思ヒマスカラ、前ニ申上ゲマシタコトハ取消シマス
○四番(男爵鈴木大亮君) 先刻ノ案ヲ具ヘルト云フ御宣告ヲ御取消シニナレバ差支ゴザリマセヌ
○十五番(浜岡光哲君) 先ニ案ヲ具ヘテト云フ御宣告ガアリマシタガ第四諮問案モ委員ニ附託サレマシタニ付テハ、此航海ノ件ニ付マシテモ委員ニ附托サレタイト、十五番ハ建議シタモノトシテ、之ヲ御採用下サツタナラバ差支ナカラウト思ヒマス
○一番(大倉喜八郎君) 十五番ノ説ハ穏当デ宜カラウト思ヒマスカラ委員説ヲ建議ニナツタモノト見テ、御採用ニナランコトヲ希望致シマス
○内閣総理大臣兼大蔵大臣伯爵松方正義君演説
 十三番ハ夫レヲ大変疑ツテ安心シナイト云フコトデスガ、財政上今ノ一件ニ付テ初メハ百万円ノ見込ノモノガ、六百万円モ七百万円ニモナリ、財源ガ無クナルカラ、ソコニハ大変心配シテ居ル、併シ前ニモ申シタ通リ、両院デモ可決シテ、サウシテ御裁可ニモナツタ法律案デゴザリマスカラ、夫レヲ左右スルト云フコトハ出来ナイ、ソコハ分リ切ツテ居ル、分リ切ツテ居ルガ、夫レヲ実施スル所ノ金ガナイカト云フ話デアリマス、夫レニハ外ノモノヲ省クカ、新タニ財源ヲ求ムルカ、ドチラカニシナケレバナラヌ、実際金ヲ遣ルダケノ話デ、其財源ノ出所ヲ何処ニカ求メネバナラヌカラ、夫レハ政府デモ心配シテ居ル、併ナガラ此法案ハ当年ノ議会マデハ出スコトハ出来マセヌ、殊ニ吾々共ガ今日大蔵省ニ職ヲ奉ジテ時日モナシ、迚モ当年ノ議会マデハ此財源ノ法案ヲ出スコトハ出来ヌ、篤ト考ヘタ上財源ノコトハ容易ナラヌコトデアル、兎ニ角七百万円モ、六百万円モ出スナラバ、ドウシテモ財源ヲ求メナケレバナラヌカラ、所謂苦心シテ居ルト云フコトヲ申シタノデ、唯其法律案ノ発シタノヲ吾々共ガ其法律ヲ左右スルト云フノデハナイ、ソコハ能ク十三番モ御了解ヲ願ヒタイ、斯ウ云フ法律ガ出来タ以上ハ、其通リ執行シナケレバナラヌ、執行スルニハ此法律ハ金ヲ以テ実施シナケレバナラヌト云フノデゴザリマスカラ、夫レダケノ財源ノ目途ヲ立テナケレバ実施スルコトガ出来ナイ、ソコヲ苦ンデ居ルト云フコトヲ申シタノデアルカラ、ソコハ明カニ御承知ヲ願ヒタイ
 - 第23巻 p.461 -ページ画像 
○四番(男爵鈴木大亮君) 先刻七番ノ御述ベニナリマシタ中ニ、航海奨励ヲ施行スルニハ余程金額ガ多クナルカラ、主務省ニ於テ施行細則ナリ、造船規定ナリヲ余程ムヅカシクシテ居ルト云フヤウナ御説ガアツタカノヤウニ記臆致シテ居リマスガ、全クサウ云フ事実ハナイノデ、航海奨励法ヲ政府ガ議会ニ向ツテ提出致シマスル前ニ、造船規定ノ調ベヲ着手シマシタガ、是レガ余程煩雑ナルモノデゴザリマスカラ、造船家若クハ機関ニ関シマシタル専門家ニ嘱托致シ、造船規定ノ調査ニ付キマシテハ既ニ一昨年来着手シテ居リマシタガ、如何セン海外各国ニ於キマシテモ、法律トシテ造船規程ノ如キモノヲ規定シテ居ル所ハ無イノデゴザリマス、就キマシテハ其参照ニ致ス為メニ「ろいど」ノ現在用ヰテ居リマスル規定ヲ重ニ取リマシタノデ、是レモ矢張リ「ろいど」ガ自分ノ保険業ノ為メニ設ケテゴザリマスノデ、法律トシテハ完全ノモノデハナイ、斯ル所カラ種々ノ学者ノ書籍ヲ集メマシテ、一昨年来着手致シマシタモノガ、今年ノ夏ノ初メニ至リマシテ、整頓致シマシタト云フ、一体ノ成立デゴザリマス、金ガ多ク要ルカラ厳シクスルトカ、又ハ施行細則ヲ困難ニスルトカ云フ意ハ毫末モナカツタノデゴザリマス、併ナガラ商売一偏ノ上カラ申シマシタナラバ、モウ少シ造船ノ仕方ヲ簡便ニスルコトガ出来ルト云フコトガゴザリマセウガ、併シ一ツノ造船ノ規定トシテ、造船ノ確実ナルコトヲ認メ、航海ノ安全ヲ保ツト云フコトヲ認メル上ニハ、是レダケノ事ハ備ヘナケレバナラヌト云フ所カラ、三百条以上ノ箇条ガ必要ニナツタ訳デゴザリマス、何カ政府ガ故意ニムヅカシイモノヲ設ケタト云フヤウニ観察ヲ御下シニナツテハ、折角法ヲ立テマシタ趣意ニ背キマスカラ、ソコノ所ハ能ク御了解ヲ願ヒマス、併ナガラモウ少シ簡便ニシテ呉ルレバ商売人ノ為メニ利益デアルト云フコトデアレバ、更ニ主務省ニ於テモ審議ヲ尽スコトハ勿論ノコトデゴザリマス、固ヨリ規定ノ成立チマシタ趣意ハ今申シマス通リデゴザリマス、又此航海奨励法ノ施行ニ就イテ補助金ハドレダケニナルカト云フコトハ、衆議院並ニ貴族院ニ於テ特別委員会デ屡々金額ノコトニ就イテ能ク交渉ガゴザリマシタ、又質問ヲ受ケタコトモアリマスガ、如何センドレダケノ程度ニ止マルカト云フコトハ予期シ難イ話デアリマス、又彼ノ法案ガ両院ヲ通過シテ現在ノ有様ヲ見テ居リマスガ、廿九年度ノ予算ニ対シテハ百万円以外ニハ過ギナイダラウト云フコトハ、当時委員会デモ申シタノデゴザリマス、併ナガラドレダケ増加シテ行クト云フコトハ、委員会デモ確カメタモノハ無ツタヤウニ記臆シテ居リマス、百万円ト云フコトハ大蔵省ノ廿九年度ノ財政計画ニ対シテ、十ケ年ノ見込ヲ調ベテアルノデゴザリマス、其十ケ年ノ計画ノ中ニハ、百万円ト云フコトヲ大蔵省ハ見テアルト云フコトハ聴キマシタ、実ニ奨励案ノコトニ就イテハ、ドレダケノ金額ニ昇ルカト云フコトハ未定ノ問題ニナツテ居リマス、然ルニ戦後ノ状況カラ致シテ、総テノ事業ガ発達致シマスルシ、夫レニ伴ツテ意外ニモ航海業ガ非常ナ進歩ヲナシマシテ、夫レデ両院ヲ通過スル時ノ状況モ詰マリ一変シタノデゴザリマス、主務省ハドレダケノ見込デアツタカト云フト、主務省デモ今日ノ如ク
 - 第23巻 p.462 -ページ画像 
俄カニ発達シヤウトハ思ハナカツタノデ、今大蔵大臣ノ御述ベニナツタヤウニ、金額ハドレダケニ達スルカ、又何年ヲ経過スレバドレダケニナルカト云フ、実況ノ観察ハ今日マデ見込ガ立チマセヌカラ十分御講究ニナランコトヲ希望致シマス、又委員ヲ御設ケニナルコトヲ賛成致シマス
○十三番(近藤廉平君) 唯今私ガ航海奨励法ノコトニ就キマシテ申上ゲマシタコトニ付テ大蔵大臣ノ御説明、尚ホ当局者ノ御説明ニ依テ能ク分リマシタ、私共ガ唯一ノモノトシテ希望シテ居リマスル法案ニ、若シ政府デ修正スルト云フヤウナ思召ガアルナラバ、当業者ハ迷惑スルヤウナ御修正ニナリハセヌカト云フコトガ甚ダ心配デ、誠ニ疑心暗鬼デ、私ガ先刻申述ベマシタコトモ或ハソウカモ知レマセヌガ、尚ホ一言申置キタイノハ、船ヲ造ルニモ一年以上ハ掛ル、夫レデ今カラ手ヲ着ケテ準備ヲシタ当業者ガ、若シ明年ニナツテ政府ハ国費多端デ望ミノ儘ニ金ヲヤル訳ニ行カナイカラ、或ハ制限ヲ加ヘルトカ修正ヲスルトカ云フコトガ起リ、又ハ一・二年ノ後ニ起ルト云フヤウコトニナレバ、当業者ハ用意ヲシタコトニ付テ誠ニ迷惑ヲスルコトガアラウト思ヒマス、依ツテ此法案ノ永ク存在ヲ致シテ居リマスルト云フコトハ当業者ノ希望スルノデアリマス、若シ夫レニ付テ修正デモアリハセヌカト云フ所カラ申シタノデアリマス、今二番ナリ四番ノ説モゴザリマシタ通リ、随分重大ノ関係ヲ持ツテ居リマスル問題デアリマスルカラ、私共モ委員ヲ御設ケニナツテ十分調査ニナリ、或ハ主務省ニ向ツテ建議スルダケノ価値ノアルコトヽ思ヒマスルカラ、ドウゾ委員ヲ御設ケニナルコトヲ希望致シマス
○十一番(渋沢栄一君) 私ノ建議致シマシタコトハ、口頭デ申上ゲマシタ為メニ案ヲ具セ、又他ノ御諮問案ノ仕舞ニセイト云フコトノ御示シヲ頂戴致シマシタ、私ハ委員ヲ設ケラレマスカ、又ハ私ノ意見ノ通リニ御議決ヲ希望致シマスガ、議長ノ御宣告ハ已ムヲ得ヌト思フテ居リマス、又案ヲ作ルガ宜カラウト云フ御説モアリマスカラ文案ヲ作ツテ、唯今幹事ノ御手許マデ出シマシタカラ、若シ議長ニ於テ此案ハ適当ト思召下サレバ会ニ諮ツテ、此案ニ依ツテ委員ヲ御立テニナルコトヲ希望致シマス、唯今案ヲ提出シマシタカラ議員ニ御諮リヲ願ヒマス
○議長(伯爵佐野常民君) 最前建議案ヲト申シマシタノハ、丁度第二ノ諮問案ヲ議スル前デゴザリマシタカラ、唯々口頭バカリヨリ案ヲ御出シニナツタ方ガ宜カラウト、斯ウ云フ積リデ申シマシタガ、追追此事ハ重要ノ問題デアルカラ、委員ニ附託シテ十分討議スルガ宜イト云フ方ニ御賛成モアリテ、又唯今案ヲ御出シニナリマシタカラ委員ニ附託スルニシテモ能ク御趣意ガ分ラウト思ヒマスカラ、之ヲ朗読致サセマス
   〔有賀幹事朗読〕

  本年三月法律第十五号ヲ以テ発布セラレタル航海奨励法ハ、海外貿易拡張ニ付テ至緊ノ関係ヲ有スルノミナラス、外国航業者ノ視線モ亦多ク此法律ニ注射スルノ景況ナリ、然リ而シテ此法律ニ対
 - 第23巻 p.463 -ページ画像 
スル我政府ノ方針ハ如何ナル程度ナルヤ、吾人聊疑惧ノ念ナキ能ハス、又頃日逓信大臣ヨリ発布セラレタル施行細則又ハ造船規程ノ如キハ未タ細密ノ調査ヲ経サレトモ、或ハ当業者ノ不便ヲ感ズルノ点ナキ能ハス、故ニ本会ニ於テ充分ニ之ヲ審議シテ適当ノ方案ヲ具シテ当該官庁ニ建議セント欲ス、此段農商工高等会議規則第二条ニ拠リ建議仕候也
   明治廿九年十月廿二日
            農商工高等会議々員 渋沢栄一
    農商工高等会議々長 伯爵 佐野常民殿

○議長(伯爵佐野常民君) 十一番ノ建議ハ御聴キノ通リデゴザリマスガ、矢張リ委員ニ附託シテ十分議スルト云フ最前ノ御説、又御賛成ハ御同様デゴザリマセウ、サウ致シマスレバ夫レガ決ヲ採リマス
○二十番(広瀬宰平君) 賛成致シマス、ドウゾ委員ニ御附託ヲ願ヒマス
○議長(伯爵佐野常民君) 唯今其決ヲ採リマス、十一番ノ御提出ノ案ヲ委員ニ附託スルト云フニ御同意ノ御方ハ御起立ヲ願ヒマス
  起立者  多数
 多数デゴザリマス
○十五番(浜岡光哲君) 委員ハ七名トシテ、議長ノ御指名ヲ願ヒタウゴザリマス
○議長(伯爵佐野常民君) 夫レデハ委員ハアトデ御報告致シマス


第一回農商工高等会議議事速記録 第二六〇―二六一頁 明治三〇年四月刊(DK230043k-0002)
第23巻 p.463-464 ページ画像

第一回農商工高等会議議事速記録  第二六〇―二六一頁 明治三〇年四月刊
明治二十九年十月二十三日(金曜日)午前九時五十分開議
          出席者
            議長  伯爵 佐野常民君
            一番     大倉喜八郎君
            二番     藤田四郎君
            三番     藤田伝三郎君
            四番  男爵 鈴木大亮君
            五番     原善三郎君
            七番     益田孝君
            八番     安藤太郎君
            九番     山本亀太郎君
            十一番    渋沢栄一君
            十三番    近藤廉平君
            十四番    金子堅太郎君
            十五番    浜岡光哲君
            十六番    益田克徳君
            十七番    藤井三郎君
            十八番    森村市左衛門君
            十九番    土居通夫君
            二十一番   添田寿一君
 - 第23巻 p.464 -ページ画像 
          欠席者
            十番     中上川彦二郎君
            二十番    広瀬宰平君
○中略
○議長(伯爵佐野常民君) 昨日航海奨励法ニ関シマスル調査委員ノ御苦労ヲ願ヒマシタ委員諸君ノ中ニ、四番ノ鈴木君ガ何分近来公務ガ差集フテ居リマシテ、昼後マデ此処ニ居ラレマスルコトガ出来マセヌ、漸ク昼マデ差繰フテ出テ居ル位デアルカラ、此委員ダケハ辞シタイト云フコトヲ御請求ニナツテ居リマス、公務上已ムヲ得ヌコトデ強テモ御止メ申サレマセヌカラ、三番ノ藤田君ニ御苦労ヲ願ヒタウゴザリマス
○三番(藤田伝三郎君) 承知致シマシタ
○議長(伯爵佐野常民君) 夫レデハ鈴木君ノ代リニ藤田君ニ御苦労ヲ願ヒマス
○二番(藤田四郎君) 此会デ申サナクテモ宜イトハ思ヒマスガ、私ハ委員デハゴザリマセヌケレドモ、此航海奨励法ニ就イテ建議ヲシマスルニハ鄭重ナル調査ヲ必要ト思ヒマスルカラ、四番ハ居ラレマセヌガ殊更ニ逓信省ノ専門ノ方ニ臨席シテ貰フコトガ必要ト思ヒマスカラ、其出席ヲ請フテ調査セラレンコトヲ希望致シマス、其コトヲチヨツト申上ゲ置キマス
○議長(伯爵佐野常民君) 夫レハ常民ガ申忘レマシタガ、其事ハ四番カラ詳ハシク御話モアツテ、若シ専門家ヲ必要トサルヽ時ハ詳ハシイ人ガ居リマスカラ、夫レヲ差出スト云フコトニナツテ居リマスカラ、委員諸君ニ御承知ヲ願ヒマス
○十一番(渋沢栄一君) 心得マシタ


第一回農商工高等会議議事速記録 第三六九―四〇五頁 明治三〇年四月刊(DK230043k-0003)
第23巻 p.464-487 ページ画像

第一回農商工高等会議議事速記録  第三六九―四〇五頁 明治三〇年四月刊
明治二十九年十月二十六日(月曜日)午前九時四十三分開会
          出席者
            議長  伯爵 佐野常民君
            一番     大倉喜八郎君
            二番     藤田四郎君
            三番     藤田伝三郎君
            四番  男爵 鈴木大亮君
            五番     原善三郎君
            七番     益田孝君
            八番     安藤太郎君
            九番     山本亀太郎君
            十番     中上川彦二郎君
            十一番    渋沢栄一君
            十三番    近藤廉平君
            十四番    金子堅太郎君
            十六番    益田克徳君
            十七番    藤井三郎君
 - 第23巻 p.465 -ページ画像 
            十八番    森村市左衛門君
            十九番    土居通夫君
            二十番    広瀬宰平君
            二十一番   添田寿一君
          欠席者
            十五番    浜岡光哲君
○中略
議長(伯爵佐野常民君) 夫レデハ此次ニ、一昨日議シ掛リニナツテ居リマスル航海奨励法ノコトニ付テ、御建議案ノ委員ノ報告、又先ノ方ニ細則ニ付テノ意見モ出テ居リマスルガ、御手許ニ廻ツテ居リマスカラ別段朗読ハ致サセマセヌ
 〔左ノ建議案ニ対スル委員会ノ決議ハ朗読ヲ経ザルモ参照ノ為メ玆ニ掲グ〕

    航海奨励法及施行細則・造船規程ニ関スル建議案ニ対シ委員会ノ決議
  航海奨励法ノ我国貿易ヲ増進スルニ最モ力アルコトハ多弁ヲ要セス、然ルニ此法ノ永久堅固ニ施行セラルベキヤ如何ニ関シ、航海当業者間ニ疑惧不安ノ念ヲ懐ク者少カラス、斯ノ如キハ国家大計上ノ不利之ヨリ大ナルハ無カルヘシ、政府ハ此際当業者ヲシテ疑惧ノ念ヲ去リ安心相競ヒテ是業ニ従事セシムルコトヲ力メラルヘキハ勿論、併セテ其施行細則及造船規定中別紙ニ記載スル条項ノ如キハ、本法ヲ施行ノ上ニ就テ其効力ヲ殺減シ又ハ阻害スルノ惧レアルモノト認ムルヲ以テ、速ニ之ヲ修正又ハ削除セラレンコトヲ希望ス
   右本会ノ決議ニ依リ建議候也
          農商工高等会議々長 伯爵 佐野常民
    逓信大臣 子爵 野村靖殿
  右報告候也
   明治廿九年十月二十日《(マヽ)》
                 委員  男爵 鈴木大亮
                 同      中上川彦二郎
                 同      渋沢栄一
                 同      近藤廉平
                 同      浜岡光哲
                 同      益田克徳
                 同      広瀬宰平
    農商工高等会議々長 伯爵 佐野常民殿

  (別紙)
  第一条 第四項ノ営業目論見書ハ実際行ハル可ラサル事ナルノミナラズ、又実ニ不必要ノ事ナルヲ以テ削除ヲ要ス
  第二条 船図ハ既往購入ノ船舶ニ就テハ船主ノ手元ニ現存セザルモノ多シ、故ニ是等船図ハ原製造所ヘ照会シテ始メテ之ヲ得ル
 - 第23巻 p.466 -ページ画像 
ヨリ外ニ道ナキヲ以テ、此三種ノ船図ヲ提出スルハ本法施行ノ日ヨリ六ケ月間ノ猶予ヲ与フルコトヽシ、其旨第一条ニ除外例ヲ追加スルヲ要ス、而シテ其猶予期間ニ提出セザルカ若クハ提出スルモ合格セザルトキハ既往ニ溯リテ其免許ヲ無効トスベシ
  第四条 第二項中株主ノ氏名ハ時々刻々変更スルモノナレハ、出願ノトキ之ヲ提出スルモ何ノ効能モナシ、蓋シ株主ノ氏名ヲ提出セシメントスルハ本法第一条中帝国臣民ノミヲ株主トスル云云トアルニ基クモノナラン、果シテ然ラバ其会社ヲ代表スル業務担当ノ役アル取締役ヨリ其株主ハ悉ク帝国臣民ナル旨ヲ明記シテ届出サセ、若シ其届出ノ後ニ於テ外国人ガ株主トナリタル時ハ直チニ之ヲ届出ルモノト為サバ其実ヲ得ベシ、宜シク此主意ニ改正スベシ
  第十二条 認許期間一箇年以内トアリ、若シ長航海ニシテ其中途ニ於テ満了トナルトキハ、日本ニ帰着シタル上更ニ相当ノ手続ヲ経テ認許ヲ受ケバ其認許ハ右航海中満了トナリタル時ニ溯リテ其効力ヲ与フベキ旨ヲ追加センコトヲ要ス、此ノ如クスルニアラザレバ、取扱手続ノ為メニ法律ノ精神タル奨励ノ本旨ヲ失ハン
  第二十七条 第三項外国人国籍・氏名・現住所・生年月日及ヒ履歴トアリ、然ルニ海員ノ如キハ何レモ常ニ遠方ニ航海シツヽアル者多ク、現住所・生年月日・履歴等ヲ知ル事ハ実際行ハレ難シ、又格別必要モナカルヘキ事柄ナレハ国籍・氏名ニ止ムヘシ
   第四項 海技免状写モ前同様ノ理由ニ依リ、其写ヲ得ルコト急場ノ間ニ合フヘキ事ニアラス、故ニ之ハ後ニテ届出ルモ妨ナキモノトスヘシ
  第四十三条 不必要ナリ、削除スル方然ルヘシ
  第四十四条 同シク不必要ナリ、削ルヘシ
      造船規程ニ対スル意見
  第八条 不必要ニ付全ク刪除スヘシ

○四番(男爵鈴木大亮君) 委員ノ御方ニ、ドナタデモ宜ウゴザリマスガ、此別紙ノ各項ニ付キマシテノ大要ノ趣意ヲ伺ヒタウゴザリマス改正ヲ求メル趣意ノ要領ヲ伺ヒマスレバ、賛否ヲ表スルニ甚ダ都合ガ宜カラウト思ヒマス
○十三番(近藤廉平君) 唯今四番カラ御尋ネノゴザリマシタ、施行細則・造船規程ヲ修正シタイト希望致シマスル趣意ヲ一通リ申述ベマス、此施行細則第一条・第二条・第四条・第十二条・第廿七条・第四十三条・第四十四条ト云フモノヽ条正ヲ建議シタイト存ジマスル趣意ハ、航海奨励法実施ニ付キ私共ハ是等ハ其必要ヲ認メナイト云フノ原由カラ此建議ヲシタイト思ヒマス、ト申スモノハ、航海奨励法ノ精神ハ即チ一般ノ奨励デアツテ、航路ヲ定メズ何レニ向ツテ出テモ此法ノ精神ニ違ハズ航海ヲスルナラバ、相当ノ恩沢ニ浴セラルルト云フ精神デアラウト思ヒマス、即チ速力・噸数・船ノ構造如何等ニ付テ合格スルモノナラバ、相当ノ奨励金ヲ得ラレルモノデアラ
 - 第23巻 p.467 -ページ画像 
ウト考ヘル、大体海外航路ハ御承知ノ通リ二様ゴザリマシテ、一ツノ航路ヲ定メ定期ヲ以テ航海スル即チ定期航海、是レハ国道ト云フモノト同ジデアラウト思ヒマス、海ノ上ニ一ツノ国道ヲ引ヒテ、時ヲ定メ日ヲ定メテ往来スルノハ、一ツノ道デアラウト思フ、其道ヲ往来スル船デアレバ、国家ハ之ニ対シテ相当ノ保護ヲシナケレバナラヌト思ヒマス、其保護ヲスル以上ハ、自ラ権利ト義務ヲ生スル、郵便ヲ取扱ハスルトカ其他種々ノ義務ヲ背負ハスルカラ、凡テノコトガ、其国道ヲ往来スルダケノ相当ノ資格ヲ備ヘテ居ル船デナケレバナラヌモノデアラウト思ヒマス、夫レニ代ツテ一般ノ奨励ト云フト、是レハ航路ノ定メガナイ、何レノ航路ニ向ツテ航海ヲシヤウガ夫レハ船主ノ勝手デアルカラ、ドノ方ニ向ツテ船ヲ遣ラウガ差支ナイ、唯々指定噸数・速力・構造等ニ違ハナイ以上ハ、夫レダケノ保護金ヲ与ヘラルヽモノデアラウト思ヒマス、サウスルト、夫レハ何ガ見込デアルカト云フト、船ノ構造如何、或ハ乗ツテ居ル技術者ガ確カナ者デアルカト云フコトデ知ル以上ハ、他ニ其船ニ対シテ義務ヲ負ハスルノハ私ハ不必要デアラウト考ヘル、夫レデ第一ニ夫程必要ノナイト思ヒマスルノハ、第一条ノ四項ノ営業目論見、夫レニハ色々ノコトガゴザリマシテ、ドウモ奨励金ヲ受ケル上カラ、夫レ程必要トハ思ハレマセヌ、船ガ或航海寄港地ニ到着スレバ、必ラズ其里数ニ依ツテ奨励金ヲ与ヘマスルカラ、其方ノ道ニ依ツテ確カニ、金ヲ呉レル方ニ向ツテ通知ヲスレバ、旅客ノ数、或ハ収支計算、或ハ船ノ積立金、大修繕ノ金、役員ノ賞与配当金ノ如何、損益ニ関スル目論見書マデ出スト云フ程ノ必要ハ当業者間ニ於テハ無イト思ヒマス、又施行細則ノ上カラ見マシテモ、夫レヲ取ル程ノ必要ハナカラウカト思ヒマス、前ニ申シマス通リ、船ガ堅牢デアツテ乗ツテ居ル者ガ確カナ者デ、又其船主モ確カニ日本人デアルト云フナラバ、夫レカラ以上ハ、極メラレタ法律ノ下ニ、其船ガ往来スルナラバ、奨励金ヲ与フルト云フコトニシテモ差支ナカラウト思ヒマス、是レガ第一条ノ第四項ヲ削リタイト考ヘル趣意デゴザリマス、夫レカラ第二条ノ船図ト云フモノモ、新タニ是レヨリ造船規程ニ拠ツテ船ヲ造ルモノハ、夫レハ宜ウゴザリマス、是レダケノ図面ハ固ヨリナケレバナラヌカラ持ツテ居ルノガ当リ前デアリマスガ、今現在シテ居ル外国カラ買入レタ船ニ対シテハ、造船元マデ行カナケレバ此船図ヲ取ルコトガ出来ナイ、此処デ之ヲ造ルトシマスレバ出来ヌコトハゴザリマセヌガ、随分多クノ時ト費用ヲ要スルノデゴザリマス、横截面図又ハ縦截面図ト云フモノヲ精密ニ調ベヤウト思フト、動イテ居ル機械ヲ取除ケナケレバ、精密ナル図面ハ出来ナイノデゴザリマス、夫レガ出来ナケレバ不合格ノモノトナレバ、奨励金ヲ受クルコトガ出来ヌノデゴザリマス、大抵是等ノコトハ六ケ月間ノ猶予ヲ与ヘラレタナラバ、其間ニ船ヲ造ツタ造船所ニ照会シテ取寄スルコトガ出来マスカラ、六ケ月間ノ猶予ヲ与ヘラルヽコトヲ希望スルノデゴザリマス、夫レカラ第四条第二項中ノ株主ノ氏名、是レハ会社ニ依リマスト、其株式ハ日々売買ニナリマスカラ、其氏名モ時々刻々ニ変更スルノデゴザリマス、其株主名簿ヲ出スト云フコトニナルト
 - 第23巻 p.468 -ページ画像 
極端カラ申スト、殆ンド毎日出サナケレバナラヌヤウニナル、此第四条第二項ノ精神ハ、日本帝国ノ臣民ト云フノデナケレバ、外国人ガ若シ這入ツテ此奨励金ヲ得ルヤウナコトガアリハセヌカト云フ認メヲ附ケル、一ツノ道具デアラウト思ヒマス、斯ノ如ク毎日ノヤウニ変ルモノヲ其都度届出ルト云フヤウナ手数ヲ致サナクトモ、責任ヲ負フテ居ル重役ヨリ、外国ノ者ハ這入テ居ナイト云フコトヲ、証明サスル手続モアレバ、或ハ一年ニ一両度考課状ニ依ツテ届サスルコトガ出来マセウト思ヒマス、是レモドウカ責ヲ負フテ居ル重役ヨリ証明ヲスルト云フコトニ改正ヲ求メルノデゴザリマス、夫レカラ第十二条ニ「認許証書ノ有効期間ハ一箇年以内」トアリマス、此一ケ年以内ト云フノハ随分短期間ト思ヒマス、欧羅巴其他ヲ永ク廻ル船ニナルト一年有余モ掛ルコトガアラウト思ヒマス、若シ其廻航中ニ既ニ期間満了シタ時ハ、ドウ云フヤウニ奨励金ヲ考ヘル上ニ付テサレルデアラウカ、其制裁ガ少シク乏シイヤウニ思ヒマス、若シ是レダケノハ満了ニナツテモ、実際ハ航海シテ来タニハ相違ナイ、又其間ニ合格ノ資格ハ欠ガナイト云フ認メガ附クノハ、元々遡ツテ期限満了ト雖モ保護ヲ受ケルコトニシタイト云フ望ミデゴザリマス、第二十七条ノ外国人ノ生年月及ヒ履歴上、是レモ実ハ確カニ技術家デアルト云フコトノ認メガ附キマシタナラバ、履歴或ハ生年月ト云フマデノコトニモ及ブマイ、現住所・或ハ履歴書・生年月ト云フマデ精密ニ調ベル必要ハナカラウト思ヒマス、又英国ノ免状又ハ日本ノ免状、英国領事ノ免状ヲ持ツテ居ルト云フコトガ、確カメラレマシタナラバ、夫レニ依ツテ其船ニ乗ルコトヲ許サレルト云フコトニシテ十分ダラウト思ヒマス、夫レカラモウ一ツハ、二十七条ニ「海技免状ヲ有スル者ナルトキハ其免状ノ写」ヲ出シテ逓信大臣ノ認可ヲ受クベシト云フコトガアリマス、又外国人ニシテ其本支店ノ事務員ト云フニ付テモ、生年月・履歴・国籍又ハ現住所ヲ調ベテ、届出ナケレバナラヌト云フコトニナツテ居リマスガ、之モ必要ハ無カラウト思ハレマス、本店・支店ノ間ニ使ツテ居リマスル外国人ノ氏名現住所・生年月マデ届ケルニハ及ブマイト思ヒマス、是レハ或ハ日本人ト外国人ト組合ツテ商売シテハ居ラヌカト云フコトマデニ、立入ツタルコトデゴザリマセウガ、是レハ外国人ガ幾人居ルト云フ届デ確カデアラウト思ヒマス、又外国ノ免状ヲ持ツテ居ル者ハ、其写ハチヨツト取レルヤウニ思ハレマスガ、中々面倒ナモノデアリマス折角船ハ出来タ、乗組員モ出来タガ、船ヲ出スコトガ出来ヌト云フヤウナコトガナイトモ申サレマセヌ、是レモ届位ニ止メテ置キタイサウスルト余程簡易デアラウト思ヒマス、夫レカラ第四十三条・第四十四条ハ、初メノ営業目論見ノコトニ付テ述ベマシタ趣意デ、第二条ヲ修正シマシタナラバ、第二条同様ノ趣意デ必要ハナカラウト思ヒマス、監査官吏マデ出テ来テ、逓信省ノ官吏ガ之ヲ調ベル必要ハナカラウト思ヒマス、此二ケ条ハ其趣意デ削除シタイト云フ望ミデゴザリマス、夫レカラ造船規定ニ対スル意見、造船規定第八条ニ「船舶ニハ左ニ記載スルモノヲ除クノ外船底全部ヲ通シテ二重底ヲ設クヘシ」ト云フコトガアリマシテ、「総噸数二千噸未満ノ船舶」
 - 第23巻 p.469 -ページ画像 
「特種ノ用ニ供スル為メ其構造ニ対シテ逓信大臣ノ認可ヲ受ケタル船舶」ト云フ此条項デゴザリマス、是レハ全部ヲ通シテ二重底ニシナケレバナラヌト云フ必要ハナイト認メルノデゴザリマス、ト申スモノハ先ヅ船ノ大小ヲ区別シテ二千噸トシマシテ、千九百噸ノ大キサノ船ハ二重底デナクテ宜イ、夫レハ危険ノ度カラ区別サレタモノデアラウガ、千五百噸以上ノ船ナレバ遠洋航海ニ用ヰラレヌコトハナイ、二千噸付上ハ二重底デナケレバナラヌト云フナラバ、二千噸以下ノ船ハ危険ガ少ナクテ、二千噸以上ノモノハ危険ガ多イト見ナケレバナラヌコトニナル、御承知ノ通リ世界中デ一番船ヲ多ク造ルノハ英国デアル、夫レダケアツテ、船ノ取締リモ其他総テノ事ニ関シテモ、一番英国ガ他ノ国ヨリ優ツテ居ラウト思ヒマス、其英国ノ造船ノ規定ニ就イテドウ云フコトニシテ居ルカト云フト、必ラズシモ二重底ニシナケレバナラヌト云フコトハナイト思フ、最モ重キヲ置イテ居ルろいどノ検査規則ニモ、航海スルニ堪ユベキ相当ノ資格ヲ備ヘテ居ル船ト云フコトヲ認メテ居ルヤウニ思フテ居ル、夫レカラ以上ハ特別ノ検査方法ヲ以テヤルトカ、即チ郵船会社ガ注文シテ居ルモノハ特別ノ検査ヲ経テ、余程丈夫ナ船デアリマス、大体ろいどノ検査法ニ拠ツテモ、二重底ニシナケレバ危険デアル、二重底ハ安全デアルト云フコトニハナツテ居ラヌヤウデゴザリマス、併シ危険ト云フコトハ、必ラズヤ出来ルダケ防イデ置カナケレバナラヌノデゴザリマス、此二重底ニ代ル危険ヲ防クコトモ、構造上ニ在ルダラウト思ヒマス、例ヘバ仕切ガ数アルトスレバ、其一部分ハ破レテモ他ノ部分ニハ及バヌカラ沈没スル恐レハナイ、二重底ト云フト一方カラ云ヘバ便利デアル、浅イ所ニ行クニハばらすとニ石ヲ入レテ居ルノヲ除クレバ浅イ所ニモ這入レルカラ、使用ノ上カラ云ヘバ便利デゴザリマスルガ、危険ノ上カラ申シテ見ルト、仕切ヲ多クシテ置ケバ或ハ夫程ノコトハナイト云ヒ得ラルヽノデアリマス、此条項ニ依ツテ全部ヲ通シテ二重底ニスル必要ハナイ、船ノ構造ニ依ツテハサウ云フ必要ハナイト思ヒマス、其為メニ或船ニ依ツテハ全部通シテ二重底ニナツテ居ラヌ船ガ多イ、舳ノ方ヲ二重ニスレバ、アトハ二重デナイト云フヤウニ、全部二重底ニナツテ居ラヌ船ガ多キニ居リハセヌカト思ヒマス、シテ見レバ奨励ヲスルト云フ方カラ考ヘマシテモ、斯ノ如キ不必要ナコトニ無理ニ金ヲ掛ケテ立派ナ船ヲ造ル、サウシテ出来タモノデナケレバ奨励セヌト云フナラバ、其奨励ノ目的ハ何レニ在リマスカ、外国貿易上ニ付テ他国ノ船ヨリハ安ク出来、総テ運賃等モ安ク上ルト云フ所カラ、初メテ競争ガ出来ルノデアリマス、英国ナドハ其趣意デアル、成ルベク金ノ掛ラヌヤウニ成ルベク他ノ船ト競争スルコトノデキルヤウニ出来テ居ルヤウニ聴キマス、此造船規程ナリ、此施行細則ニ依ツテ見マスルト、ドウモ其辺ノ手数ガ余程面倒ニナリマス、尤モ二重底ト云フコトニナリマスルト、或ハ此造船規程ニ依ツテ奨励金ヲ受ケルト云フコトハ、容易デナイト思ヒマス、サウ金ヲ沢山掛ケテ立派ナ船ヲ造ツテモ、容量何カガ同ジデアレバサウ運賃ハ余計取ラルヽモノデナイ、大体是レ等ノコトハ危険ノ度合ニ甚シキ恐レガナイト云フナラバ、他ニ仕
 - 第23巻 p.470 -ページ画像 
切ヲ多クスルトカ何トカ、夫レニ代ル一ツノ構造法ガアレバ夫レデ奨励金ヲ受ケルヤウニシタイト云フ希望デアリマス、是レハ唯々一二ノ廉ヲ挙ゲテ目下急ニ迫ツテ居リマスル廉々ノ修正ヲ希望スルノデゴザリマス、実ハ造船規定ノ中ニモマダ修正シタイ点ガゴザリマスルガ、三百何十条ノ多クノ箇条デ、又主務省ニ於テモ容易ナラヌ時ヲ取ツテ、是レダケノ調ベガアツテ居ルノデアリマスカラ、僅一日ヤ半日ノ間ヲ以テ詳ハシク之ヲ調ベル訳ニハ参リマセヌ、差向キ当業者ガ奨励金ヲ受ケルト云フ途ニ対シテ、是レダケノ障害ガアルト思ヒマスカラ、之ヲ取除ケルコトガ出来ルナラバ、皆有難ク喜ンデ此恩沢ニ服スルコトガ出来ヤウト思ヒマス、サウスレバ当業者ハ競フテ各地ニ航路ヲ開キ、船モ多クナルト云フコトニハ無論ナルダラウト思ヒマス、世間ガ之ニ付テ恐レヲ抱イテ居リマスルノハ、或ハ本項ノ精神ニ依ツテ当業者ガ設計準備ヲスレバ、此金ハ何時デモ取レルト云フコトニナツテ居レバ宜イガ、船ハ出来タガ玆ニ垣ヲ結ンデ是レカラ中ニ這入ルコトハ出来ヌ、着物ハドウ云フモノヲ着テ来ナケレバ行カヌト、斯ウ云フヤウナコトヲ云ヒ附ケラレタヤウナ感ジヲ世ノ中ニハ持ツテ居ルノデゴザリマス、成ルベク、ソレデ奨励ノ精神ニ伴ウテ海員ノ便利ト、サウシテ危険ナドノナイト云フコトノ認メガ付クナラバ、ソレニ依テ実際ノ法律ヲ十分施行サレルコトヲ希望スルノデアツテ、今モ申上タ通リニ海外貿易・航路拡張・定期航路ト云フコトニ就テハ、十分厳重ニ規約ヲ設ケテ監督シナケレバナラヌ、国土即チ海ノ上ニ於テ国土ヲ拓キマスニハ、十分便利ヲ与ヘ、又義務ヲ負ハセ、責任ヲ負ハシテヤラナケレバナラヌト思ヒマス、果シテ此修正ヲ求メ得ラレ、又当業者ガ之ニ従事シテ、新タニ航路拡張ヲ主張スル者ガアラウト思フ、サウスレバ平常ニ在ツテハ申スマデモナク、貿易ノ大機関トナツテ十分世ノ中ニ効用ヲ与ヘマセウシ、又有事ノ日ニハ兵馬ヲ運送スルト云フコトハ国家ニ必要ナモノトナルデアラウト思フ、即チ二十七・八年日清事件ノ時ニ参謀本部即チ大本営ニハ段々此船ノ数ガ多クナツテ、後ニハ四十万噸ナケレバ殆ド兵ヲ交エル際ニ運送船ガ足リナイト云フコトハ、其時分ニ承ツテ居リマス、今日ハ戦後デアルガ、尚三十万噸デモ足リナイ位ダト思ヒマス、是カラ果シテ参謀本部デ四十万噸ノ船ガ要ルト云フ御考ニナツテ居レバ、余程是カラ奨励ヲサルヽコトニナラヌト、ソレダケノ船ガ多クナラウト思ハレマセヌ、私ハドウカ畢竟戦後ノ経営トシテ此法律ヲ発布サレテ、平常ハ海外航路業即チ貿易ノ機関トナツテ十分ノ働キヲサセルヤウナコトニナリ、有事ノ日ニハ兵馬ノ運送船ニ供用サレルト云フヤウナコトニシタイト云フノデ、即チ政府ハ此法律ヲ発布サレタイト思ヒマス、簡略ニ自分ノ意見ダケヲ申シマス
○十四番(金子堅太郎君) 詳細ニ御説明下サレマシテ我々ハ此建議案ノ出タ御趣意ハ拝聴致シマシタ、併シ尚更ニ私ハマダ時間ガゴザイマスカラ、一ツ御示シヲ願ヒタウゴザイマス、此中ニ随分高等会議ノ建議デ出ル程ノ価値ノナイモノガ幾ラモアラウト思ヒマス、随分此間中我輩ノ賛成シタ、添田君ノ提出案ノ海外貿易ニ従事シテ功労
 - 第23巻 p.471 -ページ画像 
ノアツタ者ニ勲章ヲヤルト云フ、アノ案ハサウ云フコトハ当リ前ダト云フコトデ否決ニナツタニモ拘ハラズ、今度ノ御提出案抔デ見ルト、モソツトソレヨリモ簡易ナコトデアル、例ヘバ此船図ハ六ケ月猶予シテ呉レイ、是ハゑぢんばろーノ造船所ニ掛合ハナケレバナラヌカラ六ケ月ノ猶予ヲ与ヘテ呉レイ、トカ斯ウ云フコトハ之ヲ高等会議ト云フ、国家ノ農工商ノ大方針ヲ極メル会議デ議決シテ逓信大臣ニ提出スルト云フモノデアラウカ私ハ伺ヒタイ、是ハモウ郵船会社ノ社長ガ逓信大臣ニ会ツテ、是ハドウモ絵図デアルカラ本トノ造船所ニ折合ヒマスレバ六ケ月モ掛ルト云ウテ、膝組ミ合セテ言ヒマスレバ済ムコトデ、是レシキノコトヲ高等会議ニ当々ト御差出シナサルノハ如何デアラウカ、我々ハ其説明ヲ請ヒタイノデアリマス、ソレカラ第十二条ハ「認許証書ノ有効期限ハ一ケ年以内ニ於テ船舶ニ拠リ」云々トアリマスガ是ハ当然ノコトデ、海上法ノ一部分ヲ読ンダ者トカ航海業ニ従事シタ者ハ分リ切ツタ話デ、海ト云フモノハ波ガアツテ思フヤウニ航海ガ出来ナイノハ当リ前デアル、其年限ガ航海ノ途中デ切レタトキハ本国ヘ前着スルマデ猶予スルコトハ当リ前デアラウ、無論解訳上保険ノ法律ト云フモノハサウナツテ居ル、是ハ逓信大臣ニ会ハズトモ管船局長ト航海者ガ御相談ニナレバ済ムコトハ無論ノコトデアル、例ヘバ英吉利カラコチラヘ来ルニ六十日ノ期限ヲ以テ来ルモノガ、印度洋デ南風ノ為メニ大火災ガ起ツテ危険ノ位地ニ陥ツタカラ、已ムヲ得ズドコソコニ寄ツテ修繕抔ヲシタ為メニ後クレタト云フコトモアリマセウ、サウ云フコトハ行政官ガ聴キマセヌデモ法律ノ解釈デイケル、是等ノコトヲ高等会議カラ逓信大臣ニ建議スルノ必要ハアルマイト思ヒマス、ソレカラ又二十七条ノ此「国籍・氏名・現住所・生年月・履歴」ヲ出セイト云フコト是ハモウ分リ切ツタ話デ、日本ニ在留シテ居ル運転手・機関手・船長デモ雇入レルトキニハドコノ人デアルカト、其人ハ必ズ免状ヲ持ツテ居ル者ナラバ其生国ハ分ル、或ハ又横浜ノ居留地ノ何番ニ居ルトカ云フコトハ直グ分ル話デ、左マデ私ハムヅカシイコトデナイト思フ、又船ヲ動ス位ノ者ハ自分ノ生レタ月日ハ知ラヌヤウナ者ハナイ、或ハ履歴ハ是々デアルトカ、是モ左程高等会議カラ建議スルヤウナコトデハナイト思ヒマス、又第四項ノ「海技免状ヲ受有スル者ナルトキハ」云々ノコトモ是モ海技々術トアリマスカラ、海技免状即チ運転手トカ、機関手トカ、船長トカ云フモノガ持ツテ居ルニ相違ナイ、是ハ日本ノ海員雇入規則ニハ既ニ免状ノ写ヲ出サナケレバナラヌト云フコトニナツテ居ル、然ルニ今此写モ出スニ及バヌト云フトキニハ、甚ダ私ハ航海奨励法ハ之ガ為メニ困ル、国家ノ海外貿易ニ最モ必要ナル船ガ動カヌト云フヤウナ重大ナ事柄デナイ、其他方法ノコトニ就テモ伺ヒタウゴザイマスガ、併シ是等ノコトハ是非トモ高等会議デ決議シナケレバナラヌモノデゴザイマスカモウ一度伺ヒマス
○二番(藤田四郎君) 今十四番ノ御尋ニ御答ニナルト同時ニ承ツテ置キタイト思ヒマスノハ、此決議案ノ趣意ヲ見マスルト云フト、余程重大ナル決議案ノヤウニ思ハレマスルガ、其別紙ト云フモノヲ見ル
 - 第23巻 p.472 -ページ画像 
ト云フト、今十四番ノ御話ノヤウナ点ガアルカモ知レマセヌガ、重モナル部分ハ此今日安全ニ法律ヲ執行スルニ付テノ条件ナリト云フ程ノモノハ、航海奨励法ノ側ノモノハ余リ見ラレナイヤウナモノガ示サレテアルヤウニ見ラレマス、ソレカラ前回ニ渋沢君カラ御建議ノ時ニ、ドウカ此事ハ海員ノ御方ハ固ヨリ、当局ノ御方モアリ、専門ノ御方モアリマスルカラ、ドウカ司撿官ノ意見ナリ当局者ノ意見ヲモ、併セテ聞イテ貰ヒタイト云フコトヲ申上ゲテ置イタト思ヒマス、ソレ等ノ御調査ハ略々既ニ出来マシタノデゴザイマセウカ、即チ司撿官ノ之ニ対スル……別紙ニ対スル意見ニ付テハ分リマシタモノデアリマセウカ、又此細則ハ数百条カラ成立ツテ居リマスルガ、十三番ノ御話デハ沢山アルカラ直グニ調ベハ出来ナイケレドモ、差当リ迫ツテ居ルモノヲ調ベタト云ハレマスノデアリマス、併シ之ヲ見マスレバ左マデノモノデナイ、ソレカラ造船規程ノ八条ノ如キハ或ハ別ノモノカ知リマセヌガ、始メカラ出テ居ル所ノ事柄トシテハ或ハドウカト思ツテ居リマス、是等ノコトヲ指シタナラバ、決議ノ大体ノ目的ノコトヽハ寧ロ矛盾デモシハセヌカト思フ位ニ思ハレマスル、是等ノコトハ如何デゴザイマセウカ、若シモソレ等ノコトハ調ベルノ暇ガナイカラト云フコトナラバ、一層ソンナコトハ載セヌ方ガ宜イデハナイカ、若シ載セルトシタナラバハツキリ載セタ方ガ宜カラウト思ヒマス、是ハ私共ハ知ラヌコトデゴザイマスガ司撿官ト御相談デアリマシタカ、一応承リタイノデアリマス
○八番(安藤太郎君) 唯今十四番カラシテ、此別紙ニ就テハ高等会議ニ出スベキ程ノ値打ガナイヤウニ見エルカラ、其説明ヲ聞キタイト云フ其御説ニ賛成ヲ致シマス、此案ノ総体ノ説明ヲ伺ヒマス
○十三番(近藤廉平君) 第二条ノ件ニ付テ、今十四番ノ御質問ガゴザイマシタ、成程提出シタ箇条ノ中ニハ、高等会議ヲ煩ハス程ノモノデナイト云フ御趣意ノヤウニ承ハリマシタ、成程此箇条ニ就テハ悉ク区別ヲシテ見レバ、或ハソレ程ノ値ヒノナイモノカモ知レマセヌ併シ大体ノコトニ就キマシテハ、是ハ即チ今日当業者ニ於テハ面倒手数ヲスル程ノ必要ガナイト認メテ居ルノデス、此修正ノコトニ就テハ建議スルノ値ヒガ多イカラスル、値ガナイカラセヌト云フ値ノ区別ニ付テスル必要モナイト自分ハ考ヘテ居ル、即チ此航海奨励法ノ実行サレル上ニ就テ、成ルベク奨励ヲスルト云フノハ精神ト自分ハ思ツテ居リマス、シテ見レバ此箇条々々ニ就テモ、ソレダケノ修正ヲシ、造船規程或ハ施行細則ニ於テ逓信省ニ於テ修正ヲ求メテ得ラレルナラバ、当業者ハ余程便利ヲ得ラレルト思フノデス、又図面ニ於テ六ケ月……成程是ハ、管船局長ト相談シテヤレバイケルカモ知レマセヌ、併今申ス通リ此修正ヲ求メルコトニ就テ高等会議ニ於テスベカラザル事柄トマデ解釈スルノ要ハアルマイト思フ、又二十七条ノ外国人ニ就テハ、是ハ日本ニ居ル、神戸或ハ横浜ナリ、或ハ孟買トカ、其他ノ地方航海中、或ハ船長ガ他ノ事故ニ依テ船カラ降リタトキニハ其委ハシイコトハ知ルコトヲ得ラレヌノデアリマス、ソレ等ノ時ニモドウカ便利ニシテ置イタナラバ、其方ガ都合ガ宜カラウト思ヒマシテ出シタノデアリマス、ソレハ出来ヌコトハナイノ
 - 第23巻 p.473 -ページ画像 
デス、必ズ出来ヌトハ申シマセヌ、随分手数ノ掛ルノデアル、サウシテソレ程ノ手数ヲ掛ケル効能ガアルカ、ナイカト云フコトヲ私ガ申スノデゴザイマス、例ヘバ船長ガ航海中必要ガアツテ確カナ者ト認メテ外国人ヲ雇入レル、サウシテ雇入レルトキハドコソコノ人間デアルト云フコトハ確メマスレバ、生年月マデモ調ベルコトハ致シマセヌデモ、此法律ヲ実施スルニ差支ハナカラウト思フ、其他ハ之ニ附随シタコトデアリマスカラ略シテ置キマス
○十一番(渋沢栄一君) 今二番カラ致シマシテ、此委員会ニ対シテ、委員会ノ開クル前ニ施行細則抔ノコトニ付テハ、主務省ノ方抔ニ就テ調ベタラバ宜カラウト云フコトヲ言ツテ置イタ、造船規程ニ関シテハソレソレ技術官ナリニ質問シタリシテ、手ガ届イタカト云フ御尋ネデアリマス、ソレハ委員会デモ短イ間ノ取調デゴザイマシテ、今二番ノ御注意ノ通リニハ致シマセナンダノデアリマス、施行細則ニ於テハ、既ニ此会議中ニ御当局ノ御方モ居ラレマスルカラ伺ツテモ、ソレハ差支ナイト思ヒマスガ、大抵文章ノ上カラ分ルト考ヘマシテ、強イテ御注意申上ゲルト云フコトハシマセナンダ、又造船規程ニ於テハ中々条項ガ多ウゴザイマシテ、素人ノ我々ガ五日ヤ七日デハ委員ガ悉クアレヲ呑込ムト云フコトハ出来マセヌノデ、重モナル箇条ニ就テハドウスル、又二重底ト云フ規定ヲ削ラレテモ宜カラウト云フ精神ガ事実上ナイデモナイト考ヘマス、又事実上ニ付イテ或部分ハ二重底ヲ必要トスルト云フ人モゴザイマセウ、併シ慥ニ出来ル以上ハ二重底ニシナケレバナラヌト云フコトハ、万国普通ノ法デ、ドウシテモ二重底ノ方ハ飽マデ主張スル意思デアルト見エマセヌ、ソレソレ技師等ニ我々ガ聞糺シマシタ所ガ、技師等ノ答モ二重底ヲ絶対的ニ今ノ注文ノ如クスルガ宜カラウトハ言ハヌ人モ多ウゴザイマスノデ、総テ二重底ト云フコトヲ明瞭ニ記載スルコトハ必要デナカラウト考ヘマシタノデアリマス、或ハ施行細則ニ就テハ値ノナイ修正ヲ請フト云フ嫌ヒガアルト十四番ハ言ハレマスガ、事実問題ハ文章ノ上カラ見ルト誠ニ詰ラヌヤウデモ、実際ハ大層本業ノ妨ゲヲナスコトハ皆サンガ御感ジナイカモ知リマセヌガ、我々共ハ感ジマスルコトガ多イノデアリマス、ソレデ文章ガ如何ニ立派デモ随分想像的ノコトガ多ウゴザイマシテ、実際ノ上ニ値少イヤウナコトガ多カラウト思ヒマス、故ニ此案ヲ提出シマシタノデゴザイマス
○十四番(金子堅太郎君) 段々十三番・十一番カラ御説明ガ私《(マヽ)》ハ私ノ説ヲ主張致シマス、高等会議ガ時間ヲ費シテ……諸君ガ必要ナル時間ヲ費シテ之ヲ議シテ、ソレカラ議長カラ逓信大臣ヘ建議スルト云フヤウナ手続ヲセズトモ、航海業務ノ会社ノ重役ナリ、又ハ其代表人ガ往ツテ管船局長ト話ヲシテ、是ハ六ケ月ノ御猶予下サラヌカト言ツタ方ガ宜イト思フ、高等会議ニ因ツテ即チ十一番ノ仰シヤル通リ、ソンナ余計ナ手続ヲセズトモ出来ル、又是ハ幸ヒ鈴木君ノ御監督ノ逓信省ノコトデ、此議論ハ能ク御聴キニナツテ居ルカラ左マデ高等会議ガ正面カラ持ツテ往ク必要ガナクツテ、是ハ我々ノ見ル所デハ、実際業務ヲ執ラルヽ役員ガ直チニ御話合ヒニナル方ガ却テ御便宜デアラウト思フノデゴザイマス、凡ソ国家ガ法律トシテ出シタ
 - 第23巻 p.474 -ページ画像 
以上、又規則トシテ作ツタ以上ハ、ソレハ国家将来ニ遵奉スルノデアル、今日此法律ヲ実施スルト六ケ月ノ猶予ガナケレバ取レヌト云フコトハ言ハレマイト私ハ思ヒマス、又人間トシテこんもんせんすノアル者ノ言フベキコトデハナイ、是コソ早ク逓信省ヘ御話ニナレバ宜イ、第二条ハソレデ宜イトシテ、ソレカラ又私ハ第四条ニ株主ノ氏名ヲ届出ヨトアルケレドモ、既ニ株式会社ガ株式ヲ売買スル以上ハ、今日郵船会社ノ株主デアツテモ、翌日ハ他ノ会社ノ株主ニナツテ、毎日毎日変ハルト云フコトハ当リ前デアル、併シソレヲ今日書イテ出シタガ、直グニ翌ル日変ツタカラト云ウテ、改正シテ逓信省ヘ持ツテ往クト云フコトハナイ、ソレハ会社ニハ一年二回ノ、即チ前半期ト後半期トノ考課状ト云フモノガアルカラ、ソレヲ出シテ見セタラ直グニ分ルダラウト思ヒマス、是ハ時々刻々ニ変ハルモノヲ、始終願出テヽ書面ニ其日ノ株主現在ノ氏名ヲ書イテ出セイト云フ無理ハ仰シヤルマイト思フ、ソレガ一日違ツタタメニ航海奨励法ノ金ハヤラナイナゾト云フコトハアルマイト思ヒマス、此辺ハ能ク御話ニナツタラ宜カラウト思ヒマス、ソレカラ第十二条ノ「認許証書ノ有効期間ハ一ケ年以内ニ於テ船舶ノ現状ニ依リ之ヲ定ム」トアリマスガ、是ハ其時期ノ満了シタル時分ハ是々スルト云フノデ、斯ウ云フコトハ航海奨励法ノ精神ノミナラズ、日本ノ法律ハ皆大抵時効ヲ示シテアルダラウト思ヒマス、ソレカラ二十七条ノ三項ニ「被雇者ノ国籍・氏名・現住所・生年月及履歴」トアリマス、是抔モ日本人トシテハ大変面倒ナ喧シイヤウデアリマスケレトモ、西洋人ヲ雇入レナサレル時ニ、其人ノ名前抔ヲ聞クコトハ何デモナイ、例ヘハ私ハ金子堅太郎ト云フ者デ、処ハ麹町区一番町三十番地タトカ言ヘハ、チヨツトモ面倒ナコトハナイ、ぢよんぶらんヲ雇入レル時ニ御前ハドコダト云ヘバ、英吉利人デ横浜ノ居留地ノ何番、生年月ハ千何百何年ノ何月トカ、ソレカラ履歴ノコトヲ問ウテ御前ハ是マデ何ヲシテ居ツタト言ヘバ、私ハ中等学校ヲ卒業シテ、ソレカラろいどノ船ニ乗ツテ居ツタトカ、サウシテ今日尚航海ノコトニ従事シテ居ルトカ、斯ウ云フコトハ雇入レル時ニ問ハナカツタナラバ、却テ彼西洋人抔ハ不思儀ニ思フノデ、一向西洋人ハ不便ヲ感ゼヌノデアル、之ガ為メニ航海奨励法ノ実施ニ不便ヲ来スト云フコトハナイ、ソレハ海技免状ノ写ト云フモノハ逓信省ノ海技規則ニ因ツテ出セイト言ツテ居ル、又ソレガ為メニ困ツタト云フ事ハナイ、サウスルト第四十三条・第四十四条……是ハ第一条ノ営業目論見書カラシテ出テ来ルノデ、私ハ是ハ多少講究スベキ問題ダラウト思ヒマス、其次ニ造船規程ノ第八条……是モ必要ナコトデアル、ソコデ煎ジ詰メレバ、第一条・第四十三条・第四十四条及ビ造船規程ノ八条ト云フガ是ハ余程講究スベキ問題デゴザイマス、其他ノコトハ逓信省ト御話会ヒニナレバ出来ルコトデ、殊更高等会議ヲ煩ハス程ノコトハナイソレ故ニ此部分ダケハ断リ放シテ、ドウカ逓信大臣ニ仰ツタ方ガ宜カラウ、幸ヒ鈴木次官モ御出デノコトデアルカラ御協議ナサツタナラバ、ソンナニ高等会議ヲ煩ハスコトハナカラウト思フ、第一条・第四十三条・四十四条及八条ノコトニ就テハ、私モ別ニ意見ガアリ
 - 第23巻 p.475 -ページ画像 
マス、今玆ニ一々申シマスト余リ長クナリマシテ諸君ヲ煩ハシマスカラ止メマス、実ハ渋沢君ノ御説ガ出ナケレバ言ハヌノデゴザイマシタケレドモ、サウシタ方ガ御便利ダラウト思ヒマシタニ依テ、一言申上ゲテ御参考ニ供シマス
○四番(男爵鈴木大亮君) 唯今十四番、其他カラ段々御意見ヲ御陳ベニナリマシテ、高等会議デ議スルヤ否ヤト云フコトハ暫ク講究ニ属スルコトデアラウト考ヘマス、私ハ先ヅ此委員会ノ報告ノ大体ニ就テ一応申陳ベヤウト考ヘマス、此報告ハ前半ダケハ或ハ建議ニナツテモ宜カラウト思ヒマス、去リナガラ是モ是非トモ建議シナケレバナラヌト云フ事柄ノモノデモナカラウト思ヒマス、如何トナレバ既ニ法律ガアレバ、政府ハ法律ノ通リ実際ニ施行スルト云フコトハ申スマデモナイコトデ、別ニ現今ノ法律ヲ是非ヤツテ呉レイト云フコトハ言ハズモガナデゴザイマス、併シソレニ就テハ此法律ヲ左右スルヤウナコトガアツテハナラヌト云フ懸念カラシテ、政府ニ注意ヲ促シテ置クト云フ訳合カラ、建議ヲ致スノハ差支ハナカラウト思フガ、必ズシモ建議シナケレバナラヌト云フ事柄トハ認メマセヌ、此報告中後半即チ施行細則・造船規程ノコトニ関シテハ余程本員抔モ感ヲ懐キマスガ、委員ノ委ハシキ御説明ヲ承リマシテ其希望ノ点ハ誠ニ能ク了解致シマシタ、併シ此施行細則ト云フモノハ手続ヲ定メルモノデアリマスカラ是非是非変ヘネバナラヌト云フコトハナイ、即チ航海奨励法ノ第一条ニ規定シテ置キマスル通リ、ドウ云フ風ノモノガ航海奨励法ニ依テ保護金ヲ与ヘルカト云フコトガ、第一主眼トナツテ居ル、ソコデ此航海奨励法ヲ施行スルニ当ツテ何等ノ影響スルト云フコトヲ確メルト云フコトガ、最モ必要デアル、然ル以上ハ、是非共此施行細則ニ示シテアル通リニ、其事業ノ目論見ヲ見マセヌト、其船ヲ使用スル目的ガ分リマセヌ、若シ是レガ航海奨励法ノ第一条ノ趣意デナイト奨励金ハヤレナイノデアル、此船ヲ使用スル目的、其事業ノ計画ヲ明カニシナケレバ奨励法ヲ適用スル目的ヲ達スルコトガ出来マセヌ、即チ此奨励法ヲ適用スルニ細則ヲ定メテゴザリマス、大変面倒トカ、手数トカ云ハレマスガ、一ツノ事業ヲ初メヤウトスレバ必ラズ計画ガナケレバナラヌ、株式会社ハ株主ヲ募集スルトカ、株主総会ヲ開クトカ、会社ノ目的ガナケレバナラヌ又一箇人ノ商売デモ必ラズドンナコトヲシヤウト云フ計画ガナケレバナラヌ、ドンナコトデモ宜イト云フコトハナイ、ドウ云フ船ヲ造リ、ドウ云フ航路ヲ開キ、ドンナ費用ヲ掛ケテ、何等ノ利益ガアルト云フコトガ成立シナケレバ、事業ニ手ヲ出ス者ハナイ、夫レモ無シニスルナラバ丸デ事業ハ成立ヌ、其計画シテ居ルコトヲ書イテ出スノダカラ何ノ手数モ掛ラナイ、自分ノ思フ通リニ書イテアルモノヲ持ツテ来ルバカリデアル、夫レヲ見ナケレバ何等ノ用ニスルト云フコトガ分ラヌ、即チ此奨励法ヲ応用スル目途ガ立チマセヌノデゴザリマスカラ、是非共施行細則第一条ノ第四項ト云フモノハ、主務省ニ於テハ明瞭ニ之ヲ調査シナケレバナラヌ、是レハ随一ノ箇条デゴザリマス、又第二条ノ船ノ図面ト云フコトハ、是レモ大変ノ手数ト云フコトデゴザリマスルガ、若シ此図面ガゴザリマセヌト、奨励
 - 第23巻 p.476 -ページ画像 
金ノ下附ヲ請フテ参リマシタ時ニ、或ハ一々船ノ構造ヲ解放シテ見マセヌケレバ十分ニ検査ヲ為スコトガ出来ヌ場合ガアル、此図面ガアリ、仕様書ガアルト、現在成立ツテ居ル儘デ十分ニ検査ガ出来ル若シ図面ガナケレバ、折角出来テ居ル或部分ヲ取放サナケレバ船ノ構造ガ明カニ分ラナイ、船ノ構造ガ分ラナイト其船ノ堅牢又ハ羸弱ヲ判断スルコトガ出来ナイ、之ヲ判断スル為メニ此図面ヲ要スルノデアリマス、併ナガラ今其図面ガ日本ニ無イト云フコトハゴザリマセウガ、仕様書ガアレバ図面ヲ書クコトハ出来ル、又確カニ信用ノ出来ル船ナラバ仕様書ガアル、古船ナリ、出来合ノ間ニ合セニ買ツタモノナラバ仕様書モゴザリマスマイガ、夫等ノ船ニ対シテハ保護スルコトハ出来ナイ、造船規程ニ確カニ当篏ツタ完全ナルモノデナケレバ保護ヲ受ケルコトハ出来ヌ、将来完全ナル船ヲ造ラセヤウ、古船ナリ、世間デ云フ風来船ト云フモノニハ保護ハシナイノデアリマス、故ニ手数デハゴザリマセウガ、保護ノ目的ヲ明ラカニスルニハ是レダケノ手数ハ是非トモ必要ト認メテ規定シテアルカラ、ドノヤウナコトガアツテモ此箇条ヲ緩メルコトハ出来ヌ、船其物ニ付テノ必要ナル随一ノ箇条デアリマス、其次ニ株主ハ時々刻々ニ変ルト云フコトデアリマスガ、株式会社ハ株主ガ変ルト云フコトハ当リ前デアル、併ナガラ株主ガ総テ変ルト云フコトハナイカラ、会社ガ知リ得タル以上ハ夫レヲ逓信省ニ廻ハス、手数ト云ヘバ手数デゴザリマセウガ、株主名簿ヲ取扱フテ毎日知リ得タ儘ヲ逓信省ニ持ツテ来レバ夫レマデノコト、少シモ煩雑ナコトハナイ、手数ヲ省クト云ヘバ何モ止メテ仕舞ヘバ宜イガ、夫レデハ厳重ニナリマセヌ、サウシマスルト実際監督ト云フコトハ出来ヌ、物ヲ監督スル以上ハ、相当ノ手数ヲ要スルト云フコトハ自然ノ結果デ、是亦妄リニ此施行細則カラ削除スルコトハ出来ナカラウト本員ダケハ考ヘル、又認許期間一箇年以内トアルノハ、永イ航路ヲ航海スル間ニ期間満了ニナツタナラバドウカト云フノハ、是レハ独リ航海奨励法若クハ施行細則ノ効用カラ起ツタノデハナイ、別ニ船舶検査法ト云フモノガゴザリマシテ、其船舶検査法ニ航行期間ト云フモノガ掲ゲテアリマス、仮令奨励金ヲ貰フテモ貰ハヌデモ、船其物ニ附イテ居リマスル故ニ、施行細則ヲ動カシテモ船舶検査規則ト云フモノガアリマスカラ、即チ其本ヲ絶タヌト云フト何等ノ効能モナイ、其次ニ廿七条ノ外国人ノコト、是レハ段々十四番カラ御述ベニナリマシタカラ、敢テ弁ズルマデモナカラウト思ヒマス、此航海業ヲヤリマスルニハ最モ重要ナルモノデアレバ、何処ニ生レタ者デ、何処ノ人カ知ラズニ雇フト云フコトハアルマジキコト、必ラズ其人ヲ雇フ時ハ、其人ノ生レタ処ナリ、履歴ナリ、又従来従事シテ居ツタ職業ナリハ、余程綿密ニ調査ヲ為シタ上デナケレバ雇入ルヽコトハナイカラ、調査シタモノヲ其儘持ツテ来ル、是レモ手数ト云ヘバ手数デアルガ、決シテサウ面倒ナモノデハナイ、海技免状モ、海員免状モ、貴様ハドウ云フ所ニ居ツタカト云フト、向フカラ持ツテ来ル、航海業ニ対シテハ斯ウ云フ功績ガアルト云フヤウナコトハ、此方デ見ルコトヲ欲セナイデモ向フカラ持ツテ来ル、夫レヲ書イテ出スノデアルカラ、幾ラモ手数
 - 第23巻 p.477 -ページ画像 
ノ掛ルモノデナイ、又孟買ナリ濠洲ナリ、遠方デ困ルト云フコトモアリマスガ、夫レハ航海奨励法ノ何条カニ取除ケテアル、サウ云フコトハ臨時ニ取計ツテ後カラ届ケロト云フコトガアルカラ、サウ云フコトハ一向御心配ナシニ居ナガラニシテ知リ得ルコトデアル、若シサウ云フ取調ベモセズニ雇フト云フコトデアレバ、モツト厳密ニシナケレバ船ヲ任スルコトハ出来ナイ、其他廿三条・廿四条ニ対シテハ十四番モ御弁明ニナリマシタカラ更ニ申上ゲルマデモナカラウト思ヒマス、偖造船規程ノ、殊ニ八条ノ二重底ト云フコトニ付テ、大変ムツカシイヤウニ申サレマシタガ、成程今ハ世間ニ沢山アリマスマイガ、夫レハ造船術ノ発達前ニ出来タモノデ、古船ニ属シテ居ル、今新タニ造ラウト云フノハ成ルベク造船上完全ニスルト云フガ目的デアル、日本政府ガ航海業ヲ奨励シヤウト云フノハ、完全ナルモノヲ奨励シヤウト云フノデアル、何デモ船ノ数サヘ沢山アレバ能イト云フノデハナイ、改良進歩ガ必要デアルカラ、成ルベク改良進歩シタモノヲ進メルト云フガ目的デアル、今迄ハ二千噸以上デ二重底デナイ船ガアル、二重底デナケレバ使ヘナイト云フノデハナイ、矢張リ使ヘル、歩ルイテ居ルニ相違ナイ、併シ二重底ヨリ完全カト云フトサウデハナイ、二重底ハ船ノ構造ニ於テ完全ナルモノデアル商売一片カラ云ヘバ二重底ハ引合ハナイコトガアラウ、何デモ商売人ニ出来ルダケ安ク造レバ宜イト云フナラバ、金ハヤラズト宜イ、サウ云フコトヲ強イテ行ハセヤウト云フカラ、保護ヲスルト云フコトガ起ル、是レハ詳ハシク御質問ニナレバ造船学上ニ関係スルコトデ少シク困リマスガ、若シ此事ニ付テ詳ハシイ御質問ガアレバ其専門家ヲ出シマセウ、兎モ角二重底ハ必要デアル、又障壁ト雖モ二重底ト相待ツテ航海ノ安全ヲ保ツト云フコトハ、今日ノ造船学者ノ唯一ノ目的トシテゴザリマス、是レ以テ容易ニ削ルコトハ出来マセヌシテ見マスレバ此委員会ノ報告ハ前段ダケニシテ後ハ皆削ル方ガ宜カラウカト思ヒマス
○十番(中上川彦二郎君) 私モ此委員ノ一人デ、委員会ノ内幕ナドヲ申上ゲルノハ少々穏カデナイト思ヒマスガ、併シ此会議ニ左程御邪魔ニハナルマイト思ヒマスカラ申上ゲマス、先程ヨリ段々委員諸君ノ御話ヲ聴クト施行細則・造船規程中ノ箇条ニ付テノ御議論バカリデ、唯今四番ノ御話ニ大体論ガ少々拝聴ノ出来タ位ノコト、私ハ此建議ノ文章ハ抑モ嫌ヒナノデゴザリマス、ト申シマスノハ航海奨励法ハヤツテ呉レナケレバナラヌ、ソイツヲガタツカセテハ困ル、此奨励法ト云フ法律ニ対シ、安全堅固ニ施行サレンコトヲ希望スルト云フコトハ同意デアルガ、此施行細則ヲドウシテ欲シイ、造船規定中ニ斯ウ云フ面倒ガアルトカ云フコトハ、十四番ノ御論ガゴザリマスル通リ、殊ニ航海奨励ノ法ニ対スル些細極マルコトデアル、本法ガブラツク以上ハ其細則ハ善カラウガ悪カラウガドウデモナル、是レハ同一ノ席デ話サルヽコトデナイカラ、委員会ノ節ニ斯ンナ事ヲ持出スベキモノデナイ、「航海奨励法ノ我国貿易ヲ増進スルニ、最モ力アルコトハ多弁ヲ要セス、然ルニ此法ノ永久堅固ニ施行セラルベキヤ如何ニ関シ、航海当業者ニ疑惧不安ノ念ヲ懐ク者少カラズ、斯
 - 第23巻 p.478 -ページ画像 
ノ如キハ国家大計上ノ不利之ヨリ大ナルハ無カルベシ、政府ハ此際当業者ヲシテ疑惧ノ念ヲ去リ、安心相競ヒテ斯業ニ従事セシムルコトヲ力メラレンコトヲ希望ス」ト、斯ウヤツテ仕舞ツテ「併セテ其施行細則及造船規程中云々」ナドハ入ラナイ、詰マリ造船規程カ何カノ修正ヲ頼ム建議ヤラ、航海奨励法ノ建議ヤラ、ゴチヤゴチヤニナツテ甚ダ趣意ガ混雑スルカラ行カナイト云フコトヲクドク申シタノデゴザリマス、然ルニ何分多数ノ人ガサウ云ハレルカラ不服ナガラ服従シテ、甚ダ遺憾ニ思ツテ居リマシタガ、果セルカナ航海奨励法ハソツチ除ケデ、免状ハドウダトカ、届出ハドウダトカ、夫レハ誠ニ些細ナコトデアツテ、仮令夫レヲ修正シテモ航海奨励法ハ先日モ総理大臣ノ言ハルヽヤウニ、行ケルカ行ケヌカ分ラヌト云フヤウナコトニナツテハ、施行細則ハ論ズルニ足ラヌコトデゴザリマス、委員ノ一人タル私ガ、斯様ナコトヲ申シテハ穏カデナイカ知リマセヌガ、建議文ハ唯今私ガ読ンダヤウニ「従事セシムルコトヲ力メラレンコトヲ希望ス」ト云フコトニシテ、仕舞ノ方ノ施行細則及造船規程ニ関スルコトハ御削リニナランコトヲ希望シマス、万々一諸君御多数ノ御考ヘデ、是非施行細則・造船規程中ニ何カ云ヒタイコトガアルナラバ、一番仕舞ノ追テ書ニ、別紙記載ノヤウナ条項ハ、修正ガアツタラバ多分便利ダト思ヒマスルカラ、御参考ニ差出スト云フ位ノコトニ致シテ置クガ宜カラウト思ヒマス、本文ニ書クト云フノハ大層建議ノ趣意ガ混雑シテ大事ナコトヽ、極ク不大切ノコトヽ一諸ニナツテ迷ハレルダラウ、既ニ此議場ノ論デサヘ其要領ヲ得ヌヤウナコトデゴザリマス、委員ノ一人ガ修正スルヤウナ論ヲ出スノハ御笑ト考ヘマスルガ、一応内々ノ喧嘩ヲ諸君ニ申上ゲテ御考ヘヲ願ヒマス
○二番(藤田四郎君) 申上ゲルニモ及ビマセヌガ、実ハ此ノ航海奨励法ニ付テ十一番カラ最初建議ガゴザリマシタ時ニハ、丁度十番ノヤウナ趣意デアツタ、其時ニ七番カラ執行上ニ対スル実際ノ問題ガ出テ来テ、夫レガ為メニ一層能ク調査シナケレバナラヌト云フヤウナ場合ニ至ツタカト思ヒマス、然ルニ玆ニ出マシタモノニ付テ委員長カラ修正ノ理由、又十四番カラ夫レニ反対ノ御説モ出マシタガ、要スルニ数百条ノ箇条ノ中カラ指摘サル箇条トシテハ、余リ感服シタ箇条デナイト考ヘマスル、或ハ第二条ノ如キ、或ハ造船規定ノ八条ノ如キハ、是レハ実際上当業者ノ御方ニハ色々議論モアルコトデアラウト考ヘマスル、併ナガラ之ニ付テモ十一番カラ、ツヒ忙ハシイヤ其他ノ事情カラ、当局者ニ突止メル暇ガナカツタト云フ御話アツテ、四番ノ如キハ之ニ対シテ弁明ヲ与ヘテ反対サルヽト云フヤウナ場合デアリマスカラ、之ヲ此儘別紙ヲ附ケテ建議サルヽト云フコトハ感服シナイ、故ニ本会議ガ斯ウ云フ事柄ヲ大体ニ於テ必要トスルト云フ位ニ止メルガ宜イト思ヒマス、其法律ナリ其他細則ナリヲ、一ツデモ二ツデモ動カスト云フコトハ十分ニ調査ヲシタ上デナケレバナラヌ、ナゼナラバ此会カラ建議シタモノヲ復タ変ズルヤウナコトガアツタナラバ、実ニ当局者ハ迷惑デアラウ、依ツテ奨励法ハ固ヨリ、施行細則ノ如キ、逓信大臣ノ命令トハ云ヘ容易ニ変ヘナイ、
 - 第23巻 p.479 -ページ画像 
変ヘルナラバ、ヨクヨクノモノデナケレバ変ヘヌト云フコトデナケレバ、此法律ノ安全ヲ認メラレナイ、故ニ此方カラ出スナラバ余程能ク取調ベナケレバナラヌ、吾々カラ俑ヲ開イテ人ニ疑念ヲ起サスルハ宜クナイト思フ、過日総理大臣カラ財政上ノ御話モアリ、或ハ吾々ノ聴方ガ悪カツタカ知ラヌガ今年ハ行ハヌトアリマスカラ、来年ハ動キハセヌカト云フ疑念ガアル、夫レデ十番カラ御話ノヤウニ大体ノ建議ニ止メルカ、左モナケレバモウ一応能ク調査シテ出ス、唯々初メノ方ニ出テ居ルタケニスルカ、或ハ「ろいど」ノ規則ノ出来タ時分ハ二重底ノ規定ハ無カツタ、併ナガラ今日造船ノ術ガ進歩シテ、外国デハドウナツテ居ルカ、夫レ等ノコトヲ調ベタ上ニ出スカ、夫レデナケレバ十番ヨリ云ハルヽ通リ大体ダケノコトヲ建議シテ、法律ノ安全ヲ期サナケレバナラヌ、若シ是レガ実際ニ於テ甚ダ御困リノコトガアレバ、当業者カラ其関係ノ方ガ直キニ逓信省ニ行ツテ御話ガアツテモ差支ナイコトデゴザリマスカラ、斯ウ云フ一ツノ会カラ別紙ヲ以テ建議スルト云フコトハ甚ダ宜クナイト思ヒマス一言申上ゲテ置キマス
○十三番(近藤廉平君) 段々提出案ニ付キマシテ、御説モ出マシタヤウデゴザリマス、又委員中ノ同士打ノヤウナコトモ出マシタヤウデゴザリマスルガ、私ノ考ヘマスルニハ、最初建議ヲ致サレマシタ其時分ニ建議案ニ付テ箇条ハ示サレタモノデアル、其建議案ノ中ニ是レ是レト云フヤウナコトガアツテ、此建議ヲ御採用ニナツテ即チ出来タ案ト考ヘル、シテ見マスレバ、大体論ト此施行細則若クハ造船規程ト云フモノニ、当業者ガ不便不利ナルコトガアレバ当該官庁ニ建議スルト云フ精神ト思ヒマス、其建議案ガ可決ニナツテ、委員ヲ設ケラレテ、其委員ガ調査シタ報告デアルノデアリマス、或ハ価値ガアルカ無イカ、或ハ斯ノ如キコトハ行政官ニ就イテ質問スレバ分ルコトデアルト云フ説モ多イヤウデアリマス、夫レモサウデゴザリマセウガ、価値ガ多イカ少ナイカ、当業者ガ第一ニ蒙ツテ居ル不便不利ト云フモノハ事実ノ上ニ於テ確カニ在ル、シテ見レバ夫レヲ高等会議カラ主務ノ官庁ニ建議スルト云フコトハ、少シモ差支ナイト考ヘルノデアリマス、又大体論ニ付テハ成程本法ガ永世国家ノ法律トナツテ行クモノカ、行カヌモノデアルカ、固ヨリ発布サレタ法律デアルカラ、政府ヲ信用シテ認メルハ当リ前デアラウト思ヒマスガ今日ノ世ノ中ノ人モ此法律ハ動キハセヌカ、修正サレハセヌカ、過日総理大臣ノ御演説ニモ初メハ少ナイト思フテ居ツタコトガ、今日ハ存外多クナツタカラ、サウ沢山入ツテハ今日財政ノ力ガ及バヌカラ、ドウカ修正シタイト云フ考ヘデハアルマイカト懸念シテ居ル、夫レヲ以テ動カヌモノデアル、安心シテ当業者ハヤレト云フコトヲ確カメラレマスナラバ、何ヲカ当業者ハ苦心シマセウ、私ガ聴誤リカ知リマセヌガ、今年ノ議会ニハ出サヌト云フコトデアリマスガ、明年ニモ案ヲ出サルヽモノトスレバ、其修正デハ金ヲ多クスルト云フコトハアルマイ、金ヲ少ナク出サウト云フコトガ出ハスマイカト思ヒマス、シテ見レバ是レヨリシテ一年延ビ、二年延ビシテ居ル中ニ、此業ニ従事スル者ガ船ヲ買ヒ、船ハ出来テ来タガ、法律ハ修正
 - 第23巻 p.480 -ページ画像 
ヲ加ヘラレテ思フヤウニ補助ヲ受ケルコトガ出来ナカツタト云フナラバ、其時当業者ノ困難ハ如何デゴザリマセウ、果シテ是レカラ先キ、サウ云フ困難ガ落来ルモノトスレバ、今ヨリ当業者ハ其考ヘヲシナケレバナラヌ、成ルベク政府ニ向ツテ、此法律ハ動カナイ、当業者ハ安心シテ従事セヨト云フヤウナコトニ成行クコトヲ私共希望スルノデ、疑念憂慮ニ堪ヘヌト云フノハ其事デアリマス、此事ニ付テハドウゾ、政府ハ当業者ニ安心ヲ与ヘルヤウニサレタイ、併セテ当業者ガ目下ノ制度ニ不便不利ト云フコトガアルナラバ、当該官庁ニ建議シヤウト云フノハ、価値ノ無イ無理ナ望ミデハナイト思ヒマス、成ルベク法ノ精神ニ違ハヌヤウニ労ヲ省キ、手数ヲ省クト云フコトハ当リ前ト思フ、其精神ニ依ツテ此修正案ヲ委員ニ於テ決議シタノデアリマス
○一番(大倉喜八郎君) 先刻ヨリ十四番ナリ、四番ナリ、其他ノ議員ノ意向ヲ承ハリマシテゴザリマス、大体私ハ航海ノコトニ就キマシテハ素人デゴザリマスガ、民間ニ於テ実際今日必要ト思ヒマスルコトヲチヨツト一言申シマシテ、四番議員ノ参考ニ供シタイト思ヒマス、一体此細則ト云フモノハ、ドウモ諸君ノ御考ヘハ軽々ニ見テ居ラルヽト思フ、此施行細則ハ枝葉ノヤウデゴザリマスルガ、実際民間デ仕事ヲ執ル者ニ苦痛ヲ与フルモノハ施行細則デゴザリマス、何モ差支ナイヤウナコトデモ実際ニナルト余程困難ヲ感ジマス、十四番議員ハ、苟モ人間ノ感覚ノアル者ハサウ云フ不都合ナコトハシナカラウト云ハレマシタガ、是レガゴザリマスルノデアリマス、私ガ一例ヲ挙ゲテ申スト、今日東京ニ於テ水道ヲ布設ニナツテ居リマス此鉄管ヲ検査致シマスルニ施行細則ニ依ツテ検査致シテ居リマス、如何程欧羅巴デ堅固ナ調査ヲ致シマシテモ、法律上・保険上立派ナ「ゑんじいやー《(に)》」ガ証書ヲ添ヘテ参リマシテモ、東京ニ参リマスルト、皆ナ之ガ不合格ニナルト云フノハ、一方ノ施行細則ニ疵無キモノト云フコトガアルカラ、仮令水圧ニ合格シテ居ルモノデモ、疵ガアレバ受取ラナイカラ仕事ニ差支ユル、其結果不都合ナ現象ヲ顕シテ居リマス、先達テ内外人ニ、鉄管五千噸買ヒタイカラ、汝等是ニ向ツテ先ヅ予メ申出セ、良イ物ニ命ジテ遣ラウト云フコトヲ二十ケ所ヘ御配リニナリマシタ、トコロガ一人モ私ガ応ジマセウト云フ者ハゴザイマセヌ、苟モ東京ハ輦轂ノ下デ、百四十万ノ人民ガ居ル、其人民ヲ代表スル府知事ガ買フノデアリマスカラ、代価ヲ払ハヌコトハ決シテナイ、信用モゴザイマス、トコロガ、我東京府ニ向ツテ私ハ商売ヲシタフゴザイマセヌ、御前サンノ御求メニ応ジタクゴザイマセヌト云フテ一人トシテ是ニ応ズル者ノナイト云フノハ、東京府民トシテ甚ダ是ハ恥辱デゴザイマス、是ハ何カト云フト、施行細則ガ厳ニ過ギル為メニ実際行ハレナイコトニナツテ居ル、吾々ハ甚ダ遺憾ニ思ツテ居ルノデ、サウ云フヤウナ例ハ沢山ニゴザイマス、ソレデドウカ、此施行細則ハ必ズソノ当局ノ御方ハ軽々ニ看過シマセヌデ、能ク丁寧ニ実際行ナハレマスルヤウニ御注意ヲ希ヒタク思ヒマスノガ手前共ノ本意デゴザイマス、若シ此航海奨励法ニ附テモ施行細則ガ厳ニ失シテ嵌リマセヌケレバ、船ヲ拵ヘル人ガゴザイマ
 - 第23巻 p.481 -ページ画像 
スマイ、サウシタナラバ逓信省モ、ソノ点ニ御用心ガアリマスヤウニ、百万円ニ止マルト云フコトニ成リマスト、或ハソレガ奨励カモ知レマセヌガ、サウスルト下附致シマス金ニ対シテハ、殊ニ面倒デナクツテ宜シウゴザイマセウガ、航海ヲ御奨メナサル本意ニ背キマセウト思ヒマス、ドウモ上ニ立ツ方ニ殊ニ斯様ナコトハ軽々ニ、兎角看過シマスル弊ガゴザイマスルト思ヒマスルカラ、ドウカ斯ノ如キ重大ナコトハ、細事ト雖モ厚ク心ヲ御用ヒ下サルヤウニ四番議員ニ望ミ、併セテ実況ヲ一言申上ゲマスルデゴザイマス
○十一番(渋沢栄一君) 本案ハ私ガ発議者デ、遂ニ委員ヲ設ケラレテ調査ヲ致スコトニナリ、ソノ調査委員ニモ御指名ヲ蒙リマシテ、両三回委員会ヲ開イテ相談致シタノデゴザイマスルガ、施行細則・造船規定ガ是ニ加ハリマシタ為メニ、至ツテ事ガ混雑致シマシテ、或ハソノ条項中修正ヲ要望スルノハ斯ク斯クノ困難、斯ク斯クノ害ガアルト云フ点ヲ、穿鑿ガ能ク届イタカト云フ押シタ御尋ネヲ蒙ムルヤウナ次第デゴザイマシテ、止ヲ得ズ此委員会デ施行細則ニ附テハ或ハ稍々充分ニ調ベマシタケレドモ、造船規定ニ於テハ迚モ充分調ベタト云フ御答ヘハ出来マセヌノデゴザイマス、否出来マセナンダト云フコトヲ正直ニ御答ヘ致シマシタノデ、為メニ極ク肝要ナル本文ト附随シテ居ル御供ノ議論ガ混淆スル嫌ヒガゴザイマスルデ、止ヲ得ズ委員中十番ハ既ニ切リ放スガ宜カラウト云フ説ガゴザイマシタ、或ハ是ヲ追加ト書イテ出スガ宜カラウト云フ修正意見モゴザイマスルガ、併シ乍ラ愈々案ヲ制シテ其筋ヘ建議スルニ、追ツテ諾否決定シテ呉レト云フ文章ハ少シ如何デアリマセウカ、且ドウシテモ二番ノ御説ノ通リ苟クモ物ノ修正ヲ望ムナラ、モウ少シ念ヲ入レナケレバナラヌト云フノハ殊ニ御尤モ千万デ、甚ダ吾々頂門ノ一針ト謹ンデ敬服シナケレバナリマセヌ、故ニ私ハ希望シマス、即チ四番ノ御説ニ従ヒマシテ、前段ダケ今日御決議ニナリマシテドウゾ御建議ノアルヤウニ、而シテ後日即チ施行細則・造船規定ニ附キマシテハ、願クハ此所デ最前ノ委員ナリ若クハ更ニ御指名ノ上委員ヲ御命ジニナリ、是ハ継続委員トシテ取調ヲ致タシ、果シテドウシテモ更ニ此会議ニ対シテ建議シ、又其筋ヘモ言ハナケレバナラヌ急場ノ必要ガゴザイマスナラ、ソノ委員ガ詮議ノ上議長ニ開会ヲ願ウト云フコト迄ニシタラ宜カラウト思ヒマス、又ソノ事実切迫致シマセヌヤウナラ、他日開カレル会議ニ提出スルノヲ敢テ妨ゲハナイト思ヒマス、要スルニ後来即チ施行細則・造船規定ニ附テハ一ツ更ニ委員ヲ立テ置キマシテ、調査ヲ御命ジニナルヤウニ希望致シマス、ソレデ最初十一番ガ建議ヲ致シマシタ一般ニ審議ヲ致シト云フ意味ヲ建議案ニ書キマシテ、併シソノ審議ハ未ダ出来マセヌ故ニ、極ク重要ナル今日ニ必用ナル全般ノ大分ダケヲ、是非此会デ御議決ニナツテ、ソノ筋ヘ対シテ建議ノアルヤウニ願ヒマス、前半ト後半ト引分ケマスヤウニ致シタイト考ヘマスカラ、新案ヲ此所ニ提出シマス
○十四番(金子堅太郎君) 私ハ唯今ノ十一番ノ説ニ賛成致シマス、数度御協議ノ末本場ヘ御報告ニナツタ渋沢君カラ今ノ案ノ出ルノハ、誠ニ私ハ当初ヨリ諸君ノ慎重丁寧ナ御調査ノ結果、御報告ニ対シテ
 - 第23巻 p.482 -ページ画像 
反対論ヲシタノハ情誼上忍ンダ方ガ宜イノデゴザイマス、ケレドモ苟モ国家ノ大政ノ一部分ヲ此処デ議スルトキニ方ツテハ、情誼・私交ナドハ顧ミルニ足ラヌト思フテ、我輩ハ眼中唯国家アルノミデアルカラ、忌憚ナク私ノ意見ヲ陳述シマシタ、幸ヒナルカナ委員長ガ大体切リ放シテ、造船規定・施行細則ノ如キハ是ヨリ継続委員ヲ設ケテ慎重ニ調ベタ上デ、後日建議スルコトガヨカラウト仰ツシヤルノハ、実ニ私ガ満腔ノ希望デアルカラモウ別ニ喋々申シマセヌ、サウナルト、我々共ガ当初ヨリ此コトニ御賛成シタ精神ガ始メテ貫徹スルノデアリマス、私モ徒ラニ反対論ヲ試ミルノデハナイ、折角高等会議ノ第一回ノ会議ヨリ今日マデ、実ニ国家ノ機関ヲ斉ヘルコトニ付イテ充分諸君ノ御陳述ガアツテ、其言論タルヤ実ニ殆ド国家ノ農工商業ノ行政ノ基礎ヲ御定メニナル御論議ノミデゴザイマシテ、実ニ高等会議ノ品位ヲ一層高クシ、必ズヤ此議決ハ政府モ重ンゼラレルデアラウ、此時ニ方ツテ行政官ト実業家ハ事実ノ大体ヲ審議スルノニ、今マデノ議事中稍々軽々ノ嫌ヒハアリハシマイカ、一昨日之ヲ受取ツテカラサウ云フ感ヲ懐キマストコロガ、委員中十一番ノ議員ナドモ御同感ノヤウデアリマス、随分委員諸君ニモ其議論ガアツタヤウデアリマスカラ、サウスルト私ガ此処デ言フノミデハナイ我々ハ何処マデモ航海奨励法ト云フモノガ出タノヲ政府ガ変ヘルト云フコトハ決シテ好マヌ、苟モ両院ヲ通過シ 陛下ノ裁可ヲ得テ法律トナツテ国民ニ発布シタモノヲ、当局者ガ軽々ニ改正スルト云フ事ハ到底出来ナイト思フ、又其規則ヲ動カスヤウナ事ガアツテハナラヌト云フコトヲ、高等会議ガ決議スルノハ是ハ高等会議ノ当然ノ職務ト思フノデアリマス、而シテ施行細則・造船規程ニ付テハ法律ノ精神ヲ十分当業者ニ知ラシメ、十分当業者モ航海奨励法ノ精神ヲ遵奉シテ計画シツヽアルノニ、斯ウナツテハ誠ニ充分ナル働キガ出来ヌ、中途ニナツテ蹉躓スルヤウナ障害物ガ若シアルト云フコトナラバ、ソレハ私ハ諸君ガ御調査ノ後、航海奨励法ニ付テハ航海者ノ意見ヲ聴キ、当該官庁ノ意見ヲ聴キ、又造船規程ニ付テハ造船学者ノ意見ヲ聴イテ、広ク事実ト学理トニ徴シテ、サウシテ御成案ガ出マスレバ私ハ賛成シマス、決シテ私ハ此案ヲ排斥スルノデアリマセヌ、私ハ第一此航海ノコトハ、海外ニ向ツテ発達スルト云フコトヲ最モ熱心希望者ノ一人デアリマス、故ニ唯反対論ヲ唱ヘテ押潰スト云フコトハ毛頭ナイ、益々実業家ニ便利ヲ与ヘルヤウニ力ヲ尽シタイ、故ニ是位ノコトヲ別紙ニ御出シニナル位ナラバ他ニモマダ沢山アラウ、何カ詳シク調ベラレタナラ、マダ何カ意見ガアリハセヌカト思フノデゴザイマス、然ラバ聊カ万一ヲ裨益スルコトモ申上ゲタイト思ウテ居ル、ソレデ今ノ六ケ月ノ猶予トカ、或ハ年限ヲ制限シテハ航海者ニ取ツテ困ルト云フヤウナコトハ、是ハ如何ヤウニモ御協議ガアルナラバ出来ヤウト思ハレルカラ、目下ノ急ハ今ノ行政官ガ、国家ノ大本ニ付テハ動カサヌヤウナコトヲ希望スル、サウシテ動カヌ大本ヲ実際ニ施行シテ行キ、是々ナラバ誠ニ宜イト云フコトヲ、諸君ノ御経験ト、又当該官吏ノ意見ト、又我々一個ノ意見モ委員会デ諸君ニ陳述シテ、サウシテ此航海奨励法ノ本旨ヲ達シタイト
 - 第23巻 p.483 -ページ画像 
云フ満腔ノ熱心デゴザイマス、即チ当初ヨリ私ガ口ヲ開イテ反対ヲ試ミマシタノハ決シテ是ヲ揉ミ潰スト云フノデハナイ、私ノ意見デハ此施行細則ニ付テハ深思熟考シタ後、委員ノ御決議ニ依ツテ私ハ賛否ヲ決シタイト云フ訳デゴザイマスカラ、唯今十一番カラ御修正ノ動議ノ出タノハ、誠ニ私ガ言ハムト欲スル所ヲ御陳述下サレテ喜バシク存ジマス、ドウゾ高等会議デハ斯様ナ御決議ニナルコトヲ偏ニ希望致シマス
○四番(男爵鈴木大亮君) 先刻一番カラ施行細則ノコトニ付テ御注意デゴザイマシタガ、施行細則ト云フモノハ当業者ニ利益上少ナカラヌ関係ヲ与ヘルモノデアルカラ、主務省ニ於テハ余程綿密ニ注意セヌケレバナラヌモノデアルト云フ其御趣意ハ大ニ感服致シマス、御忠告ノ通リ致ス積リデゴザイマスガ、唯何カ鉄管ヲ買上ゲル手続ヲ引イテ来テ、アレガ不完全デアルカラ航海奨励法ノ施行細則モ不完全デアラウト云フ其御論旨ニハ少シク反対ヲ致サナケレバナラヌ、左リナガラ十一番ノ御建議ニ依リマシテ、既ニ四番ガ最前申述ベテ置キマシタ、前半ヲ存シテ後半ヲ削ラレルト云フ趣意ヲ御陳述ニナリ、加フルニ継続委員ヲ置イテ充分調査シタイト云フ御趣意デゴザイマスガ、最前四番ニ於キマシテハ、此後半ニ属スル施行細則・造船規程ナドノ条項ニ付テ、委員ヲ設ケテ更ニ調査スル必要ハナイト一応感ジマシタケレドモ、扨テ此外ニモ条項ガ多イコトデゴザイマスカラ、継続委員ヲ設ケテ御調ベニナリマシタナラバ、何ゾ有益ナコトヲ発見スルデモゴザイマセウカラ、継続委員ヲ置イテ充分調査スルト云フ説ニ御同意致シマス、又十四番・十一番ノ御説ハ先ヅ私ノ心ヲ得タリト思ヒマスカラ、継続委員ヲ御設ケニナルコトニ、成ルタケ満場諸君モ御賛成アラムコトヲ希望致シマス
○十三番(近藤廉平君) 私モ十一番ノ御建議案ノ修正ニ同意シマス、今十四番、或ハ四番ノ御意見モアリマシタガ、継続委員ト云フコトハ十一番ノ御説デゴザイマシタ、固ヨリ始メノ建議案ニ対シテデゴザイマスガ、後半ナル即チ施行細則・造船規程ノ不便不利ノ廉々ヲ審議シ、考案ヲ立テヽ当該官庁ニ建議スルト云フコトデ、其審議ヲスルニハ僅カナ時間デハ迚モ調ベ尽セルモノデナイコトハ皆サン御承知デアリマス、我々ハ委員ノ御選ミヲ受ケマシテ僅カ昨日・一昨日ノ間ニ調ベタノデアリマシテ、到底綿密ナル調ベモ審議モ出来ルコトデハゴザイマセヌ、ソレデ差当リ目下是等ノコトヲ修正ヲシマスレバ当業者ガ大ニ便利ヲ得ルデアラウト云フ考ガ、主トナツテ居リマス、如何ニモ継続委員ヲ置カレ時ヲ与ヘテ審議サセルト云フ方ノ御趣意デアレバ、喜ンデ其方ニ賛成致シマス
○二十番(広瀬宰平君) 私モ委員ノ一人デゴザイマス、段々委員デ前日来議シマシタガ、唯今委員中ニ異議ガアリマシタト云フコトデゴザイマス、委員会ノ内輪ノコトヲ申スノハ甚ダ議場ニ対シテ恥ヅルコトデアリマスガ、私ノ精神モ十番議員ノ精神ト同一デ、大体此建議書ノ現ハレタト云フコトハ疑惧・不安ノ念ガアルト云フノガ之デゴザイマシテ、後ノ施行細則ナドト云フモノハ、誠ニ我々ノ眼中ニモ極小部分ノコトデアルニ依ツテ、格別是ハ主務局ニ対シテ御相談
 - 第23巻 p.484 -ページ画像 
ヲ致シタラ宜カラウ、今日ハ政府ニ於テモ成ルタケ航海ノコトヲ奨励スルト云フノデ、或ハ其会社ニ不便不利ノアル所ハ癒シテ遣ラウト云フ精神ダカラ、施行細則ニ於テハ格別私共ハ力ヲ入レマセヌ、此疑惧・不安心ノ念ト云フノハ何カトゴザイマスレバ、過日総理大臣ノ御演説モゴザイマシテ、国家ハ誠ニ経済上ニ於テ多端デアル、能ク前後ヲ考ヘテ見ナケレバナラヌト云フ御演説デゴザイマシタ、ソレナラ万々一此航海者ガ航海奨励法ニ基イテ、続々外国ヘ船ヲ注文シタ暁ニ、若シ是ガ変ズルヤウナコトガアツテハ、当業者ハ死地ニ陥ツテ仕舞フト云フノガ之デアル、ソレカラ生ジタノデ、ドウゾ此疑惧・不安心ト云フ念ガ生ジマセヌコトニ、是カラ此奨励法ニ従ヒ、細則ニ基イテ、良イ船ガ出来、安心シテ外国ヘモ船ガ出掛ケテ往クト云フコトハ、日本ニ於テ大変目出タイコトデアル、ソレニ付テハ政府ニ於テモ違背ガナイカ、唯此方カラ此コトヲ確カメテ置キタイト云フ精神デアリマス、ソレデ今建議者タリ委員長タル十一番議員カラ、大体ガイケバ、後ハ即チ継続委員ヲ置クト云フノハ、最モ私ニ於テモ賛成デアリマス
○三番(藤田伝三郎君) 私モ十一番ノ説ニ賛成ヲ致シマシタノデスガ併シ私モ委員ノ一人デゴザリマスルデ、改メテ申上ゲルコトニナリマシタ、抑々此委員会デ今内輪ノ話ガ出マシタ序ニ、申シ悪イコトデアリマスガチヨツト申シテ置キタイト考ヘマス、大体奨励法ニ於テ、固ヨリ是ハ法律デ現ハレタモノデアルカラ是ニ傷ケルコトハ宜クナイ、彼是言ハナイガ宜イト云フ事ハ皆サン御同感デアリマスガ併ナガラ此コトガ或ハ不安トカ疑惧トカ云フコトハドウ云フコトカト云フト、既ニ此法律トナツタ条項ニ於テ、或部分ニ是ハ保護シ過ルトカ何トカ云フコトガ、官民共ニ幾分カ感ジガアルコトデアラウト推察致シマス、ソレデ金ガ多イ少ナイト云フコトハ、是ハ高等会議ノ論旨デナクテ、総理大臣・大蔵大臣ノ御考ニアルコトデゴザイマスガ、高等会議デ是ヲ申シタイト云フノデ委員中デモ申シマシタガ、一層今日ノ民間ノ凡ソノ意嚮モ、或ハ是ハ少シ保護ニ過ギタ所デモアリハセナイカト思フヤウナコトモ、往々聞キモスレバ言ヒモスルト云フコトモアルノデアツテ、其方カラ申シマスレバ又政府ガ今度ノ施行規則ナドデ、金ガ沢山要ルニ付テソレヲ防グ為ニ、所《(斯カ)》ノ如キ施行細則ノムヅカシイ法デモ御出シニナリハシマイカト云フマデニ、或ハ疑フ者モナイコトデハアリマスマイト思フ、ソコデ少シ差越ヘタコトデハゴザイマスガ、此大体ノ方ヲ此処デ議シマスルモノカ、或ハ是ヲ議シマシタ所ガ既ニ法律トナツテゴザイマスカラ、彼是此処デ言フノハ極ク当ヲ得ヌコトカ、其点ハ先ヅ最初カラ私ノ考ハソレデゴザイマス、依ツテ十一番ノ説ニ賛成致シマス
○四番(男爵鈴木大亮君) 唯今三番ノ御述ベニナリマシタ中ニ、施行細則ナリ、造船規程ナドハ、或ハ金ノ制限ノ為ニ設ケタヤウナ語気ガ現ハレタヤウデゴザイマス、是ハ始メ十一番カラ建議案ノ起リマシタトキ、一応此議場ニ申述ベテゴザイマスカラ、悉ク御承知ノコトカト存ジマシタガ、尚ホ又サウ云フ誤解ガアルトシマスト容易ナラヌコトデゴザイマスカラ、重ネテ申述ベヤウト存ジマス、扨テ此
 - 第23巻 p.485 -ページ画像 
航海奨励法案ヲ議会ヘ提出シマシタトキニ、航海奨励法案ト同時ニ造船規程ト云フモノハ斯ク斯クノ組織ニナルモノデアル、即チ此航海奨励法ノ第二条ニ、逓信大臣ノ定ムル造船規程ニ合格シタル鉄製又ハ鋼製汽船トゴザイマスカラ、ソコデ此航海奨励法案ヲ議スル間ニ、造船規程ハドウ云フモノダト云フコトガ分リマセヌデハ此案ヲ協賛スルコトガ出来ナイ、就テハ此案ヲ議スルト同時ニ造船規程ハ斯ク斯クノモノデ、造船規程ノ要領ナルモノハ是々デアルト云フコトヲ、明カニ両院ノ委員会ニ於テ、造船規程ノ性質、又目的ト云フモノヲ示シマシテゴザイマス、施行細則ハ其時ハ通過ニナツテ居リマセヌ、何トナレバ奨励法案ガ確定シマセヌトキニ、施行スル手続ガアツテモ、其法案ガ成立チマセヌ先キニ施行細則ガ現ハレヤウハナイデスカラ、マダ成案ニナツテ居リマセヌ、此航海奨励法ガ発布ニナリマシタ以上ハ、斯ク斯クノ手続ヲ取ツテ、是々ノ目的デ奨励ヲスルト云フコトハ、委員ニ於テ反覆討論シマシタ、矢張其後ヲ承ケテ条例トシテ発布シタモノデゴザイマスカラ、何モ金ガ多クナルトカ、少ナクシヤウトカ云フ精神カラ起ツタノデハナイノデゴザイマス、ソレハ既ニ前回ニ述ベテ置キマシタガ、今重ネテ三番カラサウ云フ御疑問ノアルヤウナ趣意デゴザイマスカラ、尚ホ誤解ノナイコトヲ希望スル為ニ反覆申上テ置キマス
○議長(伯爵佐野常民君) 此建議案ハ、前半ノ大体ノミニ止メテ、後半ノ細則ニ移リマス所ハ引分ケテ是ヲ継続委員ニ附託シテ尚ホ充分調ベルト云フ、十一番ノ御建議ニ大分賛成ガゴザイマスカラ、是ニ御同意ノ御方ハ御起立ヲ煩ハシマス
  起立者  多数
 全会一致デゴザイマス、ソレデハ前半ノミ、尚ホ……
○四番(男爵鈴木大亮君) 此案ハ唯今御宣告ニナリマシタガ、議長ノ御手数デ文案ヲ御修正ニナル方ガ便利デアラウト思ヒマス
○十四番(金子堅太郎君) 賛成
○十一番(渋沢栄一君) 賛成
○議長(伯爵佐野常民君) 委員ハ何名ニ致シマス
○十一番(渋沢栄一君) 七名ト致シマシテ、議長ノ御指名ヲ願ヒタウ存ジマス
○議長(伯爵佐野常民君) 承知シマシタ、別ニ大体ニ付テノ御議論ガゴザイマセネバ、御同意ノ有無ノ決ヲ採リマス、其前ニチヨツト、常民ガ一応此案ニ付キマシテ御尋ネヲ致シテ置キタイト思フノハ、私甚ダ不案内デスガ、此航海奨励法案デ航海ノ事業ガ段々増進シテ参ルヤウニト云フコトハ実ニ結構ナコトデゴザイマス、其通リデナケレバナラヌコトデアリマスガ、過日総理大臣ノ御演説ニモ歳出入ガ余程ノ喰違ヒガアルカラ、心配シテ居ルト云フヤウナコトデアツタト思ヒマス、彼ノ話ヲ承ハリマスレバ余程ノ差違ヲ生ジテ居ル訳デゴザリマスカラ、其当局者ニナリマシテハ誠ニ苦心ノコトハ察シ得ラレマス、夫レデ其節ノ話ヲ常民ガ承ハリマシタ所デハ、先ヅ最初ハ之ヲ保護致スト申シテモ、百万円位デ止マルダラウト思ツテ居ツタノガ、追々其業務ガ盛ンニナツテ船ヲ誂ヘル者モ多クナツテ来
 - 第23巻 p.486 -ページ画像 
タ所デハ、或ハ二・三百万円或ハ五・六百万円ニ及ブカモ知レナイノデ、甚ダ其財源ニ苦ンデ居ルト云フヤウナコトデアツタヤウニ伺ハレマス、夫レデ多数ノ航海奨励金ヲ受ケマスル船ガ出来マスルノハ航海上カラ別シテ結構ナコトデゴザリマスルガ、今ノ所デゴザリマシテハ、其財源ヲ求メルニ困ルト云フコトハ、是レ亦自然ノ結果デアラウト思ヒマス、今此御建議ニナツテ不安ヲ懐カシメンヤウニ政府ハ御務メナサレト云フ其趣旨ハ、ドウ政府デ財政ノ方ニ歳出入ノ差異ヲ生ジテ困難デアツテモ、此業ハ一旦サウ云フ奨励法モ出タ以上ハ、仮令百万円ガ千万円ニナツテモ続ケテナサレト云フヤウナ御建議ノ精神カ、又之ニ付テハ疑惧ノ念ヲ懐カヌヤウニ政府ノナサレ方モアリハセマイカト云フ意味ヲ以テノ御建議デアリマセウカ、チヨツトドウ云フ都合デアツタカト、此御建議ノ末デ常民ガ尋ネデモ受ケマシタ時分ニ、政府ニ努メサセマスル目的ハ斯フ云フコトデアルト云フコトダケハ、承知致シテ置キタウゴザリマスカラ、一通リ御説明ヲ願ヒ置キタウゴザイマス
○十一番(渋沢栄一君) 此法文ノ文字ノ極ク裏マデ見抜ク意味ヲ申セト云フ御趣意ト拝聴仕リマス、此法律ニ付テ更ニ疑惧・不安ノ念ヲ去ラシムルト云フコトニハ、飽マデ強ク之ヲ行ヘト云フ意味カ、或ハ国力ガ堪ヘヌナラバ変ヘロト云フコトデアルカト仰セラルヽカ知リマセヌガ、私ノ建議シタ意味ハ、国力ガ足ラヌナラバ変ヘロト云フ意味ハゴザリマセヌノデ、実ニ此奨励法ハ日本ノ商売ヲ海外ニ働掛ケテ行クノニハ、此位ノ法律ハ私ハナイト思フノデス、此農工商高等会議ハ海外貿易ニ対シテ最モ重キヲ置クベキ、夫レヲ主トシテ御開キニナツタノデアリマスカラ、斯ル良イ機関ニ依ツテ金科玉条トモ申スベキ法律ハ、十分ニ貫徹致シタイト云フ満腔ノ熱心カラ申出シタノデゴザイマス、故ニ此法律ガ若シ行ヒ兼ネルナラバ早ク御変ヘナサイト云フ意見的ノコトデハナイ、是非之ヲ立テラレタル意思ヲ玆デハ十分御貫徹ナサルヤウニアリタイト云フコトノ希望デアリマス、其辺ニ於キマシテ御聞キヲ願ヒタイ、但シ国家ガドウシテモ之ニ応ゼラレヌ場合デモ、貴様ハ国ハ亡ビテモ奨励金ハ出サスルト云フコトデアルカト云フト、サウハ私ハ申シマセヌ、夫レハ又宜シク御詮議モゴザリマセウ、サウ云フコトハ吾々高等会議デ申上ゲル程ノコトハナカラウト思ヒマスルカラ、之ニ応スル策ハ、詰マリ財政上ノ処置ニ依ツテ為シ得ラルヽ限リ望ムト云フト、何億万ニナツテモ望ムト云フコトニナルカ知レマセヌガ、決シテ左様ニ所謂限リナイト云フ程ニ、法律ノ形カラハ恐ルベキモノカ知ラヌガ、夫程マデニ事実ハ成行クマイト思ヒマス、故ニ之ヲ早ク改正シタイト云フ意味デナク、貫ヌキタイト云フ考デ御行ヒナサルヤウニト云フ意味ニ御聴取ヲ願ヒマス
○議長(伯爵佐野常民君) サウデゴザリマスレバ、此建議案ノ文字ハ尚ホ幹事ニ於テ修正シテ建議致シマスルヤウニ致シマス、夫レデハ継続委員ヲ御報告致シマス、三番藤田伝三郎君・四番鈴木大亮君・十番中上川彦二郎君・十一番渋沢栄一君・十三番近藤廉平君・十六番益田克徳君・二十番広瀬宰平君、此七名ノ方ニ願ヒマス
 - 第23巻 p.487 -ページ画像 
○四番(男爵鈴木大亮君) 矢張リ四番モ御加ヘニナツテ居リマスカ
○議長(伯爵佐野常民君) 矢張リ御苦労ヲ願ヒマス
○四番(男爵鈴木大亮君) 是レヨリハ議会ナドノ為メニ余程忙ハシクナリマスカラ、何トカ他ノ方ト御差繰ヲ願ヒタイ
○議長(伯爵佐野常民君) 実ハアナタガ御加ハリニナツテ居ルト、施行細則等ノコトニ付テモ能ク議員ト御打合セガ出来テ宜イカト思ヒマス
○四番(男爵鈴木大亮君) 或ハサウ云フ便宜ハアルカ知リマセヌガ、此後ハ余程多忙ニナリマスカラ、委員会ノ方ニハ等閑ニナリハセヌカト思ヒマス、夫レデ只管御繰変ヘヲ願ヒマス
○二番(藤田四郎君) 他ノ御方ニ致シマシテモ、大阪ノ御方モアリマスカラ、四番ノヤウナコトヲ云ハレルノハ宜クナイト思ヒマス
○十三番(近藤廉平君) 鈴木サンノ此委員ニナツテ居ラルヽコトハ甚ダ希望致シマス
○廿番(広瀬宰平君) 此委員ハ議長ニ御任ヲ申シタ以上デゴザリマスカラ、御辞退ハ御互ニ致サヌコトニ致シタイ、事故カラ申スト、私ハ大阪カラ出テ来ルト云フテモ随分困リマスルシ、又私モ老年デゴザイマスカラ、実ハ御辞退シタイト思フノデアリマスケレドモ、斯ル時ハ官民一致シテ共ニ力ヲ尽シテ斯ウ云フコトガ成立チマスモノデ、私ハ喜ンデ御這入リヲ願ヒマス、玆デ御辞退ヲナサリマスレバ宰平モ御免ヲ蒙リタイト思フノデアリマスカラ、御断リナク御承諾ヲ願ヒマス
○四番(男爵鈴木大亮君) 御許シガナケレバ強テ御辞退モ致シマセヌガ、折角日ヲ期シテ御集リニナル時ニ、欠席スルヤウナコトガ出来ヤウカト思ヒマス
○議長(伯爵佐野常民君) 大阪ノ方モ委員ニ願ツテ居ル位デゴザリマスルシ、又御用ヲ欠イテ御出ヲ願フト云フヤウナコトモアリマスマイカラ、御承諾ヲ願ヒマス
○四番(男爵鈴木大亮君) 強イテ御辞退申ス訳デモゴザリマセヌ、既ニ議長ノ御宣告モゴザリマシタカラ御受ケ致シテ置キマス
○議長(伯爵佐野常民君) サウ致シマスト、農商務大臣ノ御諮問案ハ是レデ総テ終リマシタ
○八番(安藤太郎君) 継続委員ノ期限ハゴザリマセヌカ
○議長(伯爵佐野常民君) 此次ノ会マデニ御仕上ゲヲヤツテ下サルヨリ仕様ハナイト思ヒマスカラ、次ノ会マデニ御仕上ゲヲ願ヒマス
   ○航海奨励法ハ明治二十九年十月一日ヨリ実施セラル。
   ○航海奨励法及ビ造船規定ハ、其後明治三十三年四月ニ改正サレシガ、当会議ニ於テ問題トナリタルガ如キ改正ハ行ハレザレキ。(法令全書・明治三三年中巻)
   ○本資料第二十巻所収「東京商業会議所」明治二十七年六月二十七日、同二十八年八月十二日、同年八月十七日ノ各条参照。



〔参考〕法令全書 明治二九年上巻 内閣官報局編 刊 ○逓信省令第十五号(DK230043k-0004)
第23巻 p.487-491 ページ画像

法令全書  明治二九年上巻 内閣官報局編  刊
○逓信省令第十五号
航海奨励法施行細則左ノ通相定メ、明治二十九年十月一日ヨリ施行ス
 - 第23巻 p.488 -ページ画像 
  明治二十九年九月五日     逓信大臣 白根専一
    航海奨励法施行細則
      第一章 総則
第一条 航海奨励法ニ依リ航海奨励金ヲ受ケントスル者ハ、願書ニ左ノ書類ヲ添ヘ営業地地方官庁ヲ経由シテ之ヲ逓信省ニ差出スヘシ
 一 船舶件名書(第一号書式)
 二 船図
 三 船舶乗組員名簿(第二号書式)
 四 営業目論見書(第三号書式)
第二条 船図ハ左ノ三種ニ分チ寸法ヲ附記スヘシ
 一 船体中央横截面図
 二 船体中心線縦截面図
 三 機関室ヨリ海水又ハ淦水ニ通スル諸管及嘴子配置ノ平面図
第三条 同一ノ船舶ニシテ所有者二人以上アルトキハ、登簿船免状ニ記名シタル所有者ヨリ総所有者ノ氏名及其ノ所有ノ関係ヲ記載シタル書面ヲ添ヘ、第一条ノ書類ヲ差出スヘシ
第四条 商事会社ニ在テハ、業務担当ノ任アル社員又ハ取締役ヨリ左ノ事項ヲ記載シタル書面ヲ添ヘ第一条ノ書類ヲ差出スヘシ
 一 会社ノ種類
 二 社員又ハ株主ノ氏名
 三 会社契約又ハ定款
 四 業務担当ノ任アル社員又ハ取締役ノ氏名
      第二章 船舶ノ検査
第五条 逓信大臣ハ第一条・第三条又ハ第四条ノ書類ヲ受理スヘキモノト認ムルトキハ、検査官吏ヲシテ其船舶ヲ検査セシムヘシ
第六条 船舶ノ検査ハ逓信大臣ノ指定スル場所ニ於テ之ヲ執行ス
第七条 船舶ノ最強速力ハ、其ノ船舶ヲシテ検査官吏ノ認可シタル喫水及自然通風ノ機関力ヲ以テ三海里以上四海里以下ノ距離ヲ六回航走セシメ、平均ノ平均数ニ依リ之ヲ算定ス、但回転中ト雖モ常ニ機関ヲ全速力ト為スヲ要ス
第八条 船舶ハ進水ノ日ヲ製造ノ日トス
 進水ノ日ヲ証明スルニハ、内国製造ノ船舶ニ在テハ製造地地方官庁外国製造ノ船舶ニ在テハ該地所管帝国領事ノ証明ヲ以テスヘシ、但日ノ不明ナルモノハ其ノ年ノ一月ニ進水シタルモノトス
第九条 検査官吏船内ニ臨検スルトキハ、其ノ船舶ノ所有者又ハ船長ハ検査ニ必要ナル準備ヲ為シ其ノ命令ヲ遵守スヘシ
第十条 認許証書ヲ受有シタル後其ノ船舶ニ損傷ヲ生シタルトキ、若ハ之ニ修繕ヲ加ヘタルトキハ、其ノ所有者又ハ船長ヨリ事由ヲ明記シ逓信省ニ届出ツヘシ
      第三章 認許証書
第十一条 逓信大臣ニ於テ第五条ノ検査ヲ受ケタル船舶ニ対シ航海奨励金ヲ下付スヘキモノト認ムルトキハ、地方官庁ヲ経由シテ第四号書式ノ認許証書ヲ出願人ニ下付スヘシ
第十二条 認許証書ノ有効期間ハ一箇年以内ニ於テ船舶ノ現状ニ依リ
 - 第23巻 p.489 -ページ画像 
之ヲ定ム
第十三条 認許証書ヲ亡失毀損シ、又ハ該証書ニ記載スル事項ニ変更ヲ生シタルトキハ、其ノ再授若ハ書換ヲ出願スヘシ、其ノ書換ヲ出願スル場合ニハ旧証書ヲ返納スヘシ
第十四条 認許証書ヲ受有スル者左ノ事項ニ該当スルトキハ直ニ認許証書ヲ返納スヘシ
 一 証書ノ有効期間満了ノトキ
 二 船舶ヲ売渡・貸渡・交換又ハ贈与シタルトキ
 三 営業ヲ廃止又ハ停止シタルトキ
 四 船舶ヲ喪失又ハ解撤シタルトキ
 五 航海奨励金ノ下付ヲ停止セラレタルトキ
 六 前数号ノ外航海奨励金ヲ受クヘキ条件ヲ欠キタルトキ
第十五条 認許証書ヲ受有スル者死亡又ハ破産シタルトキハ、其ノ遺族又ハ破産管財人ヨリ認許証書ヲ返納スヘシ
 認許証書ヲ受有スル商事会社解散又ハ破産シタルトキハ、其ノ清算人又ハ破産管財人ヨリ認許証書ヲ返納スヘシ
第十六条 前三条ノ場合ニ於テ認許証書ノ返納ヲ怠リタルトキハ、其ノ証書ノ無効ナル旨ヲ官報ニ告示スヘシ
第十七条 売買・交換若ハ贈与ニ依リ認許証書有効期間内ノ船舶ヲ取得シタル者、更ニ認許証書ヲ受有セントスルトキハ、第一条・第三条又ハ第四条ノ書類ニ其ノ船舶ニ対スル登記ノ謄本ヲ添ヘ逓信省ニ差出スヘシ
 相続若ハ結婚ニ因リ認許証書有効期間内ノ船舶ヲ取得シタル者、更ニ認許証書ヲ受有セントスルトキハ、其ノ事実ニ対スル市町村長ノ証明書及登記ノ謄本ヲ添ヘ逓信省ニ差出スヘシ
 前二項ノ場合ニ於テハ、船舶ノ検査ヲ須ヰスシテ認許証書ヲ下付スルコトアルヘシ、其ノ有効期間ハ旧証書ノ有効期間ヲ超ユルコトヲ得ス
第十八条 認許証書ヲ受有スル者第一条・第三条又ハ第四条ノ書類ニ記載シタル事項ニ訂正ヲ要スルモノアルトキ、又ハ之ニ変更ヲ生シタルトキハ、直ニ其ノ趣ヲ逓信省ニ届出ツヘシ
      第四章 航海
第十九条 認許証書ヲ受有スル者其ノ船舶ヲ航海奨励金ヲ受クル航海ニ使用セントスルトキハ、其ノ都度予メ航路・発航地・寄港地・到達地及各港発著期日ヲ逓信省ニ届出ツヘシ
第二十条 認許証書ヲ受有スル船舶ニハ、特ニ逓信省ノ検閲ヲ経タル航海日誌及機関日誌ヲ備ヘ、同日誌記載心得ニ依リ各事項ヲ記入スヘシ
第二十一条 認許証書ヲ受有スル船舶帝国ニ発著スルトキハ、税関ニ届出テ発著ノ証明ヲ受クヘシ
 外国各港ニ発著スルトキハ、帝国領事館又ハ貿易事務館ニ届出テ発著ノ証明ヲ受クヘシ
 帝国領事館又ハ貿易事務館ノ設ナキ地方ニ於テハ、外国官庁ノ証明ヲ受クヘシ
 - 第23巻 p.490 -ページ画像 
      第五章 航海修業生
第二十二条 航海奨励法第八条ニ依リ航海修業生ヲ船舶ニ乗組マシムルトキハ、該船舶ノ所有者ハ之ニ食料ヲ給与シ及相当ノ居室並寝具ヲ貸与スルノ外、左ノ割合ニ依リ手当ヲ支給スヘシ
  一 海上履歴一年未満ノ者  月額金三円以上
  二 海上履歴二年未満ノ者  月額金五円以上
  三 海上履歴二年以上ノ者  月額金七円以上
第二十三条 航海修業生ヲ乗組マシメタル船舶ノ船長ハ、該修業生ヲシテ技術ヲ練習セシメ、其ノ品行及技能ニ注意シ、六箇月毎ニ其ノ状況ヲ逓信大臣ニ報告スヘシ、但六箇月ニ達セスシテ下船シタルトキハ下船ノ際之ヲ報告スヘシ
第二十四条 航海修業生執務ノ為メ疾病ニ罹リ又ハ傷痍ヲ被リタルトキハ、該船舶ノ所有者ハ三箇月ヲ超エサル期間医薬ノ費用ヲ給与スヘシ
第二十五条 船舶所有者ハ逓信大臣ノ認可ヲ受クルニアラサレハ、航海修業生ヲ下船セシムルコトヲ得ス
 止ムヲ得サル事故ニ因リ前項ノ認可ヲ受クル暇ナク航海修業生ヲ下船セシメタルトキハ、其ノ事由ヲ詳記シ逓信大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第二十六条 船舶所有者航海修業生ヲ下船セシムルトキハ、下船地ヨリ逓信大臣ノ指定スル地迄ノ旅費ヲ支給スヘシ、但失行ニ因リ下船セシムルトキハ此ノ限ニアラス
      第六章 外国人ノ使用
第二十七条 認許証書ヲ受有スル者、其ノ本支店ノ事務員又ハ該船舶ノ職員トシテ外国人ヲ使用セントスルトキハ、左ニ掲クル事項ヲ具シ逓信大臣ノ認可ヲ受クヘシ
 一 使用ノ理由
 二 契約ノ条項
 三 被雇者ノ国籍・氏名・現住所・生年月及履歴
 四 海技免状ヲ受有スル者ナルトキハ其ノ免状ノ写
第二十八条 逓信大臣ノ認可ヲ受ケ使用シタル外国人ヲ解雇シタルトキハ、直ニ其ノ趣ヲ逓信省ニ届出ツヘシ
第二十九条 外国ニ於テ死亡其ノ他止ムヲ得サル事故ニ因リ船舶職員ニ欠員ヲ生シ、外国人ヲ以テ之ヲ補ハントスルトキハ、其ノ事由ヲ詳記シ帝国領事館又ハ貿易事務館ノ公認ヲ受ケ、事後第二十七条ノ手続ヲ為スヘシ、但帝国領事館又ハ貿易事務館ノ設ナキ地ニ在テハ外国官庁ノ公認ヲ受クヘシ
      第七章 郵便物
第三十条 認許証書ヲ受有スル船舶、航海奨励金ヲ受ケ航海スル場合ニ於テ、各地ニ発著スルトキハ其ノ都度予メ該地帝国郵便局ニ届出ツヘシ
第三十一条 郵便吏員乗船スルトキハ、事務取扱ニ差支ナキ相当ノ船室ヲ供シ且相当ノ待遇ヲ為スヘシ
第三十二条 郵便物・小包郵便物・郵便用品及小包郵便用品ノ逓送ヲ命セラレタルトキハ、盗難・湿気・火災等ノ虞ナキ安全ナル場所ヲ
 - 第23巻 p.491 -ページ画像 
選ヒ之ヲ保管スヘシ
第三十三条 逓送ヲ命セラレタル郵便物・小包郵便物・郵便用品及小包郵便用品ハ、郵便吏員乗船スルトキハ該吏員、郵便吏員乗船セサルトキハ本船ノ船長若ハ一等運転手之カ取扱ヲ為スヘシ
第三十四条 航海中遭難其ノ他ノ事故ニ因リ郵便物・小包郵便物・郵便用品及小包郵便用品ヲ逓送スルコト能ハサルトキハ、別ニ定ムル方法ニ依リ之ヲ処理スヘシ
第三十五条 郵便物・小包郵便物・郵便用品及小包郵便用品ノ逓送ヲ命セラレタル船舶ハ郵便旗章ヲ掲揚スヘシ
第三十六条 郵便物・小包郵便物・郵便用品及小包郵便用品ノ逓送並授受ノ手続ハ別ニ之ヲ定ム
      第八章 船舶ノ使用
第三十七条 逓信大臣航海奨励法第七条ニ依リ船舶ヲ使用セントスルトキハ、其期日・期間・給与金額及回航地ヲ定メ、之ヲ該船舶ノ所有者又ハ船長ニ通達スヘシ
 船舶所有者又ハ船長ハ、前項ノ期日迄ニ指定地ニ本船ヲ回航セシムヘシ
      第九章 航海奨励金
第三十八条 各港間ノ最近里数ハ海軍水路部刊行最新ノ海図ニ拠リ、其ノ刊行ナキ航路ニ在テハ英国海軍水路部刊行最新ノ海図ニ拠リ之ヲ算定ス
第三十九条 航海奨励金ヲ請求スル者ハ、一航海ヲ終リタル毎ニ第五号書式及第六号書式ノ明細書ニ、航海日誌其ノ他航海ノ事実ヲ証明スルニ必要ナル書類ヲ添ヘ、之ヲ逓信省ニ差出スヘシ
第四十条 逓信省ニ於テハ前条ノ請求書及関係書類ヲ審査シテ、航海奨励金ヲ船舶所有者ニ下付スヘシ
第四十一条 船舶所有者・代人又ハ船長ニ於テ、航海奨励法違反ニ関シ起訴セラレタルトキハ、其ノ裁判ノ確定スル迄航海奨励金ノ下付ヲ中止スヘシ
      第十章 雑則
第四十二条 天災其ノ他抗拒スヘカラサル強制ニ因リ船舶ノ航行ニ堪サル場合ニ於テ、航海奨励法第十一条ノ処分ヲ為シタルトキハ、該船船長又ハ所有者ヨリ其ノ事由ヲ具シ、帝国領事館又ハ貿易事務館ノ公認ヲ受ケ、逓信省ニ届出ツヘシ、但帝国領事館又ハ貿易事務館ノ設ナキ地ニ在テハ、外国官庁ノ公認ヲ受クヘシ
第四十三条 認許証書ヲ受有スル船舶ノ所有者ハ、毎年少クモ一回計算ヲ閉鎖シ、損益計算書・財産目録・貸借対照表・事業報告書ヲ作リ逓信大臣ニ報告スヘシ
第四十四条 認許証書ヲ受有スル船舶ノ所有者ハ、計算監査ノ為メ逓信大臣ノ命スル監査官吏営業所ニ臨検スルトキハ、帳簿及証憑書類ヲ提出シテ其ノ検閲ニ供スヘシ
第四十五条 認許証書ヲ受有スル者、外国人ト三箇月以上継続スル商事契約ヲ締結シタルトキハ契約条項ヲ具シ直ニ逓信省ニ届出ツヘシ
○下略