デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

8章 政府諸会
1節 諮問会議
6款 農商工高等会議
■綱文

第23巻 p.534-543(DK230045k) ページ画像

明治29年10月24日(1896年)

是日第一回第六日ノ会議ニ於テ、議員添田寿一ヨリ海外貿易ニ功績アル者ニ位記・勲章若クハ無形ノ名誉ヲ与ヘタキ旨ノ建案提出サル。栄一之ニ反対シ、其必要ナキ旨ヲ説キ、審議ノ結果該案否決セラル。


■資料

第一回農商工高等会議議事速記録 第三四五―三五八頁 明治三〇年四月刊(DK230045k-0001)
第23巻 p.534-543 ページ画像

第一回農商工高等会議議事速記録  第三四五―三五八頁 明治三〇年四月刊
明治二十九年十月二十四日(土曜日)午前九時四十分開議
          出席者
            議長  伯爵 佐野常民君
            一番     大倉喜八郎君
            二番     藤田四郎君
            三番     藤田伝三郎君
            四番  男爵 鈴木大亮君
            五番     原善三郎君
            七番     益田孝君
            八番     安藤太郎君
            九番     山本亀太郎君
            十番     中上川彦二郎君
            十一番    渋沢栄一君
            十三番    近藤廉平君
            十四番    金子堅太郎君
            十六番    益田克徳君
            十七番    藤井三郎君
            十八番    森村市左衛門君
            十九番    土居通夫君
            二十番    広瀬宰平君
            二十一番   添田寿一君
          欠席者
            十五番    浜岡光哲君
○中略
○二番(藤田四郎君) 此建議案(航海奨励法及施行細則造船規程ニ関スル建議案)ノ別紙ガ出来テ居ラヌヤウデゴザイマスカラ、暫ク休憩ヲ願ヒマス
○十四番(金子堅太郎君) 私ハ別紙ヲ蒟蒻版ニ御作リニナルマデ御休憩ニナリマスルナラ、其出来ルマデニ建議シタウゴザイマス
○議長(伯爵佐野常民君) 宜シウゴザイマス、ソレデハ唯今ノ別紙ヲ蒟蒻版ニ致スマデニハマダ一時間バカリゴザイマスカラ、建議ヲ御持出シナサルナラ、唯今御持出シニナルヤウニ
○十一番(渋沢栄一君) 昨日附託ニナリマシタ海上保険ノ委員会ガ開
 - 第23巻 p.535 -ページ画像 
ケテ居リマセヌカラ、此間御休憩ヲ願ヒマシテ、蒟蒻版ノ出来ルマデ其委員会ヲ開キタウゴザイマス
○二十一番(添田寿一君) 甚ダ諸君ヲ労シマシテ恐入リマスガ、極簡単ニ建議ヲ致シタイト思ヒマス、ソレハ此海外貿易ニ功績アル御方ニ位記・勲章若クハ無形ノ名誉ヲ与ヘタイト云フ私ノ建議ノ趣意デゴザイマス、是ハ金銭ヲ以テ買ヘナイ名誉デゴザイマスカラ、余程奨励ニナラウト思ヒマス、ソレカラ外国デハ御承知ノ通リ勲章ハ多少其人ノ光輝ヲ増スモノデゴザイマスカラ、願クハ諸君ノ御賛成ヲ得マシテ、即チ政府ガ此貿易ヲ重ンジテ、又貿易ハ国民ガ名誉トシテ従事スルノ意思ヲ喚起スル為ニ建議致シタイト思ヒマスカラ、御賛成アランコトヲ希望致シマス
  〔「賛成」ト呼ブ者アリ〕
   〔織田幹事朗読〕

    海外貿易家叙勲褒賞ノ件
 維新以来海外ニ居住シ又ハ海外ト直接ノ取引ヲ為シ、我産物ヲ輸出シ又ハ外国品ヲ輸入シ、大ニ我国ノ外国貿易ヲ増進セシメ、其功績顕著ナルモノニ対シ勲章又ハ褒賞ヲ附与スルコトハ、目下海外貿易ヲ拡張スルニ於テ尤モ必要ニシテ、且ツ将来我実業家ヲシテ海外貿易ニ従事セシメ益々国家ノ富源ヲ増殖スルニ於テ、此等ノ実業家ヲ調査シ相当ノ叙勲又ハ褒賞アランコトヲ建議ス
  明治廿九年十月廿四日
            農商工高等会議々員 添田寿一
    農商工高等会議々長 伯爵 佐野常民殿

○十四番(金子堅太郎君) 唯今御朗読ニナリマシタノデ、別ニ私ガ喋喋スル事柄デハゴザイマセヌガ、随分此国ノ実際ヲ発達シヤウト云フ処ニ於テハ法律ノ奨励モアラウシ、又金銭ノ保護モゴザイマセウガ、併シ二十一番カラ言ハルヽ通リ金銭ヤ法律ノ力ヲ籍ラズ 天皇ノ大権カラ流レ出テ来ル勲章及ビ褒章ハ上 陛下ノ聖聴ニ達シ奉ツテ御裁可ノ後デナケレバ、無暗ニ附与サレナイト云フ名誉上最大ナルモノト思ヒマス、故ニ国ノ実業ヲ盛ニシヤウト云ヘバ、国民ノ中ニ於テ此最モ至難至困ノ海外貿易ニ従事スル者ヲ奨励スルト云フコトハ、今日国家トシテ宜シク為サナケレバナラヌト思ヒマス、殊ニ此高等会議ガ海外貿易ノコトヲ議スルトキニ於テハ、維新以来数多ノ財産ヲ抛ツテ倒産シタ人ガゴザイマス、其倒産ノ結果今日海外貿易ヲ拡張スルマデニ至ツタノデ、之ヲ築港ニ譬ヘテ見マスレバ、海底ニ沈ンダ捨石トナリ、水底ノ藻屑トナツテ居ル者ヲ国家ガ記臆セヌト云フテハ、到底海外ヘ足ヲ踏出サウト云フ念慮ヲ起サセヨウト云フテモ、余程難カラウト思ヒマス、夫等ノ功績アル人、又現今従事シテ居ル者デ大ニ海外貿易ニ付イテ功労アル者ニハ勲章ノ御下賜ガアツテ、充分我国民ヲシテ日本ハ島国デアルカラ、ドウシテモ内ノ商業・工業バカリデハナイ、外ヘ往ツテ物産ヲ売捌カナケレバ我工業ハ発達セヌト云フ念ヲ起サセナケレバナラヌ、即チ立国経済ノ
 - 第23巻 p.536 -ページ画像 
途ハ海外貿易ニアルト云フ念慮ガ起ツタ以上ハ、ソレダケノコトヲ充分シテ貰ヒタイト思フ、随分此コトハ国家ニ及ボス影響ノ大ナルコトデアリマシテ、又海外貿易ノ奨励ニ付イテハ最モ必要ナコトデゴザイマスカラ、私ハドウカ高等会議ノ決議ヲ以テ、政府ヘ其コトヲ御建議アラムコトヲ偏ニ希望致シマス
○十一番(渋沢栄一君) 私ハ今ノ議案ニ御賛成申スノハ少々躊躇スルノデゴザイマス、若シ国家ニ功労アルト云フコトヲ以テ賞スルト云フナラバ、海外貿易ダケ……商工業ダケ国家ニ功労アルト云フコトハ云ハレヌ、外国人ト交際ヲスルカラト云フナラバ、内ニ居タカラト云ツテモ是カラ皆外国人ト交際ヲセヌケレバナラヌ、欧羅巴ヘ往ツテ外国人ト交際スルカラト云フノニ、殆ト「ろじツく」デナイト思ヒマス、加之如何デゴザイマセウカ、我々詰リ其海外貿易ヲ直接ニ取扱ヒマセヌデモ事実其方ノ種類ノ人間ガ、此処ニ集ツテ居ル人ハ多クハ其者流ガ多イカト思ハレマスノデ、一体此賞勲ナドト申スモノハ、ドウ云フ性質カラ出マスカ、雲上ノコトハ私共能ク知リマセヌガ、唯単ニ政府保護金ナドヲ以テ奨励ヲナサル事柄トハ違ヒ、至ツテ品ノ宜イモノデ 天皇ノ大権ヲ以テ思召カラ出ルモノデハナカラウカ、現在ノ有様ハ左様デアル、或ハ世ノ人ハ此賞勲ハ官途ニ多クテ人民ニ少ナイ嫌ヒガアルト云フ説ガゴザイマスガ、私共ハサウハ思ハヌ、誤ツテ、斯ク申ス私共モ、商業デスカ工業デスカ何カ精々働イタト云フテ、既ニ勲章ヲ頂戴シタコトガゴザイマス、誠ニ身ニ取ツテ恐レ多ウテ困ツテ居ル位デアリマス、ドウモ此処デ議シテ左様ニナサルガ宜イト云フコトハ、兎ニ角私共ハ御同意ヲ申上ゲ兼マス、左様ニ品ノ宜イ品物デ多分思召ガアツタラ出マセウ、ソレヲ議シテ頂戴シタイト云フノハ如何ニモ心苦シイ、ドウカ此御議案ハ私ハ先ヅ暫ク御議決ヲ御延シ下サルコトヲ希望致シマス
○十番(中上川彦二郎君) 十一番ニ賛成デス
○二十一番(添田寿一君) チヨツト十一番ニ申上ゲタイト思ヒマス、成程御説ハ御尤デゴザイマス、国ヲ益スルト云フコトハ独リ貿易ノミデハナイ、農デアラウト工デアラウト商業デアラウト無論此範囲内ヲ出デナイ、ケレドモ是ハ丁度十一番ノ述ベラレマシタ通リ大権ノ御作用ニ属スルコトデゴザイマスカラ、臣民カラ御望ミ申スハ恐レ多イ所カラシテ、先ヅ危険ノ多イ、且又外国ニ於テハ勲章ノ光輝ハ殊ニ著シイカラ先ヅ臣民ノ分ヲ重ンズルト云フ点ヨリ狭クシテ置キマシタノデ、若シ幸ヒ是ガ容レラレルト云フコトニナリマシテモムシヤウノコトヲ願ヒ奉ルト云フヤウナコトハナカラウト思ヒマスノデ、先ヅ極内輪ニ提出致シタ訳テゴザイマス
○二番(藤田四郎君) 私ハ反対デモナケレバ賛成デモナイ、唯此事柄ヲ諸君ニ申上ゲタイト思フダケノコトデゴザイマス、二十一番カラ御建議ニナリマシタトキ、チヨツト用ガアリマシテ居リマセヌデゴザイマシタガ、勲章ハ内国又ハ外国貿易トモ総テ国家ノ為ニ功労ノアル人ニハ天子ノ思召ニ依ツテ賜ハルコトニナツテ居リマシテ、ソレハ少シモ差閊ナイコトニナツテ居リマス、唯褒章ノ点ニ至リマシテハ、或ハ社会ノ人ヲ益スルト云フ方ノ直接ノ事柄デナクテ、自
 - 第23巻 p.537 -ページ画像 
分ガ金銭ヲ投ジテ公共・公同ノコトヲ謀リ慈善ヲ為スト云フヤウナコトデナケレバナラヌ、デソレハ褒章ガ違ヒマス、故ニ褒章ニ於キマシテハ、今日ノ内規ニ於キマシテ褒章条例其他ノ規則ニ拠リマスルト外国貿易ヲ盛ニシタト云ツテモ内国貿易ヲ進メタト云ツテモ、自分ノ金儲ノ為ニシタノデアルカラ、褒章条例ガ当嵌リマセヌ、勲章条例ニ付テハ自分ノコトヽ違ツテ国家ノ為ニナリマシタト云フコトデアリマスカラ、主務大臣奏請ニ依リマシテ思召ノアルコトハ今マデ少ナカラヌ例ガゴザイマス、唯其事柄ヲ御参考マデニチヨツト申シマス
○十五番(浜岡光哲君) 十五番モ十一番ニ同意デゴザイマス、既ニ此問題ハ聯合商業会議所ノ会ニモ出マシテゴザイマス、是等ノコトハ敢テ臣民カラ希望スルコトデハナイカト考ヘマスルデ、十一番ノ説ガ誠ニ穏カト思ヒマス、折角二十一番ノ御提出デハゴザイマスガ、此建議案ハ採用セヌコトニ賛成シマス
○十四番(金子堅太郎君) 段々反対ノ説ガ出マシタガ、私ハ是ヲドウゾ呉レイト云フテ、ネダルデモ何ンデモナイト思フテ、二十一番ノ建議案ヲ読ンダノデス、勿論当該大臣ガ見テ以テ此コトヲ必要トスレバ何時デモ出来ル、其当該大臣ノ注意ヲ惹起スノデ、此外国貿易ハ総理大臣ナリ外務大臣ナリ農商務大臣ナリ、国家ノ富源ヲ増長スルニハ将来最モ必要デアルト云フ御演説ヲ拝聴シマシタ、顧ミマシテソレニ要スル人ヲ誘導スル途ガナケレバナラヌ、航海奨励・海上保険・為替ハ皆有形的ノ事ハコヽデ議シタ、又其他ニ是ハ当該大臣ノ御注意ヲ惹起スノデ、決シテ法律ノ改正トカ法令ヲ出シテ呉レト云フノデハナイ、詰リ当該大臣ガ色々功労アル者ヲ御調査ノトキノ材料ノ為ニ、此者ヲモ眼中ニ置イテ呉レト云フノデス、今マデ海外貿易ニ付イテ勲章ヲ受ケタ者ハゴザリマセヌ、……随分是マデニ於テ勲章ハ維新以来斯ク斯クノコトヲシタ、此事件ニハ斯ウ云フコトヲシタ、斯ウ云フ時期ニハ斯ウ云フコトヲシタト云ツテ皆勲章ガ出テ居ル、ソコデ今日海外貿易ニ於テ二億六千五百万モ輸出入ガ増加シタノハ誰ノ力デアルト云ヘバ、即チ海外貿易ニ従事シタ人ノ力デアリマス、然ラバ今日海外貿易ヲ拡張スル時機ニ於テ是ヲ忘レルト云フノハ、我々海外貿易拡張熱心者ノ一人トシテ残念ニ思フ、左リナガラ私ハ此席ニ御列席ノ御方ハ多少直接・間接ニ海外貿易ニ従事サルヽ御方デゴザイマスカラ、御賛成ヲナサルニモ一身上ニ関係スルカラ御遠慮ノアルコトカト推測シマス、併シ斯ウ云フトキニ己レト云フコトハ私ハ眼中ニ置カヌ、唯海外貿易ヲ拡張スルト云フ手段ガ執レルナラバ、色々ノ手段ヲ執ルヤウニ当該大臣ニ対シテ御注意ヲ申シテ斯ウ云フモノヲ評議シテ呉レト云フノデアリマス、併シ勲章ノコトハ賞勲局ニ議定官ト云フモノガアツテ、与ヘルカ与ヘヌカヲ議定シ、其上裁可ヲ奏請シテ御許シニナル、兎ニ角海外貿易ニ功労・功績ノ顕著ナル者ハ当該大臣ヨリ賞勲局ヘ上申スル途ヲ執ツテ呉レト云フノデ、決シテ呉レイト云ツテ貰フノデハナイ、ノミナラズ我々ガ度々欧羅巴ヘ往ツテ見ルノニ、勲章ヲ持ツテ居ル人ト持タヌ人トハ宴会ハ無論、普通ノ宿屋ヘ往ツテモ待遇ガ違フノデアリマ
 - 第23巻 p.538 -ページ画像 
ス、開会第一ヨリ段々海外貿易拡張ヲ議スルニ付テハ、海外ニ向ツテ信用ヲ得ルニアル、第一正金銀行ガ今日萎微振ハヌノハ信用ガナイカラ、倫敦デ充分働キガ出来ナイト云フ、其信用ハ独リ金ヲ持ツテ私ハ信用ヲ得ルモノデハナイト思フ、彼ノ人ハ日本ノ海外貿易ニ付イテ勲章ヲ持ツテ居ル、略綬ヲ平生附ケテ居ル、日本ノ 天皇陛下ガ勲章ヲ与ヘタ人デアルカラ、海外貿易ニ功労ガアル人ダ、我々ガ信ヲ措クベシト云ツテ即チ信用ヲ惹起スノ一ツデアル、欧羅巴デハ非常ニ此略綬トカ勲章ト云フモノヲ信用致シマス、ソレデ私ナドガ勲章ノ無イトキ欧羅巴ニ往ツタノト、勲章ヲ持ツテ往ツタトキトハ宴会其他公会ニ於テ待遇ガ違フノデゴザリマス、ソレデ日本商人ヲシテ海外ニ於テ信用ヲ得サセヤウト云フコトヲ皆サンガ御希望ナサルナラ、我々共ハ幾分カ関係ガアル、遠慮スルト云フ御一身ノ御遠慮ハ誠ニ御尤モデアリマスガ、国家ト云フコトヲ眼中ニ置キ、海外貿易ヲ以テ我邦ヲ富マサウト云フ大目的ノ為ニハ自己ト云フコトヲ忘レ、即チ此海外貿易ヲ論ズル一人トシテ、ドウゾ御議シニナルコトヲ希望スルノデアリマス、此反対ハ随分サウ云フテ見ルト、誰モ立チタクナイ、ケレドモ若シ私ガ此海外貿易ニ従事スルナラバ、両手ヲ挙ゲテ賛成スル、私ハ金子ト云フコトヲ眼中ニ置カヌ、今日日本ニ於テ海外貿易ヲ拡張スルト云フコトハ、総理大臣ナリ外務大臣ナリ農商務大臣ナリ、三大臣ガ皆希望サレテ居ル、然ラバ其手段ヲ執ルニハ如何ナル手段ヲ執ルカ、況ンヤ当該大臣ニ対シテ注意ヲ惹起ス建議デゴザイマスカラ、ドウゾ是ハ匆卒ニ流レズ己レト云フコトヲ忘レ、真ニ諸君ガ国家ノ為メ海外貿易拡張ノコトヲ御希望ナサルナラバ、国家ノ為メ御賛成アラムコトヲ希望致シマス
○十一番(渋沢栄一君) 十四番ノ再応ノ御演説ハ、至ツテ御懇篤デゴザリマシテ、吾々ノ身ニ当テヽソンナニ遠慮心ハ止メロ、国家ノコトヲ能ク考ヘロト云フコトデゴザリマシタガ、唯今吾々議員ハ之ニ賛成スルコトヲ快クセヌト申シタノハ、遠慮心ノヤウニ聞ヘマスカ知リマセヌガ、唯々海外貿易ニ当ツタ人ノミニヤルト云フハ面白クナイト云フノガ、第一ノ反対デゴザリマス、廿一番ハ余リ広クナルカラ先ヅ海外貿易ニ従事シタ人ニ対シテヤルガ宜カラウト思フノデアルト云フコトデゴザリマシタガ、若シ夫レガ必要トナレバ海外貿易ダケガ諸君ノ功労デアルト云フコト、何分算盤珠デ割出セナイト思ヒマス、而シテ是等ノ事ハ此会カラ斯クナリタイト云フコトヲ申サヌデモ、当該大臣ハ夫等ノ事ハ此考ニナツテ居ルコトデアラウト思フノデアル、夫等ノ事ヲナサイマセト云フノハ、無用ノ弁、不急ノ言葉ト思ヒマスカラ、本会ノ議決デ請求スルガ如キハ、此海外貿易ノ拡張ヲ熱望スルカラト云フテモ、御尤ト思ハレマセヌノテ、私ハ絶対ニ反対シマス
○二十番(広瀬宰平君) 二十番ハ此建議案ニ賛成致シマシタ、私ハ常ニ国家ノ臣民ニ対シテ 天皇陛下ニ恐入ツタコトデハアルガ、彼方ヲ廻ツテ来テ自分モ考ヘテ居ツタコトモアリマシタカラ、卒然ニ賛成ハ致シマシタガ、十一番ノ御論ニ依リマスルト、此会議カラ此事ヲ申立ルノハ自ラ吾々此実業ニ尽シテ居ル者ガ吾身ニ欲シイト云フ
 - 第23巻 p.539 -ページ画像 
ヤウナ感モ無キニシモアラズト考ヘマスルカラ、其賛成ハ取消シテ置キマシテ、尚ホ一言実際上感シタコトヲ申上ゲタイ事ガゴザリマスカラ御聴ヲ煩シマス、私ハ夙ニ考ヘテ居リマスルニハ、所謂勲章ト申スモノハ天皇陛下ノ大権ニ出ヅルモノデ有難イモノデアル、有難イモノデアルガ実ニ今日マデ行ハレテ居ツタモノハ、ドウ云フ訳デアルカ唯々官途ニ在ル者ガ之ヲ貰フテ、吾々人民ハ一向持ツタモノハ無イト思フテ居リマシタガ、計ラズ吾々モ先年勲章ヲ頂戴致シマシテ実ニ分ニ過ギタコトデアリマス、夫レノミナラズ私ハ常ニ考ヘマスルノハ、ドウモ此国ヲ富マセナケレバナラヌト云フニハ、国民ニ対シテノ取扱上国民ガ国ノ為メニ尽シタト云フナラバ、官ニ在テモ野ニ在ツテモ政府ニ於テ同様ニ待遇ガアルベキコトヽ考ヘテ居リマスル、併ナガラ日本ノ国ハ封建時代デズツト成立ツタ国デアリマシテ、平民ト云フモノハ実ニ度外ニ置イタ位ノ扱ヲ受ケタモノデゴザリマス、言フベキ口モナシ、云フヘキ舌モ無イト云フテ教ヘラレテ、商ト云フモノハ農工商ト云フテ商ガ一番下ニ居ル、農ガ一番、工ガ二番、商ガ三番ニ居ルカラ、自カラ其名前ニ依テモ今日マデ商ガ振ハザル原因ダト考ヘテ居リマス、夫レカラ彼方ヲ廻ツテ帰リマシタ時分ニ或大臣ニモ申シマシタガ、外国ヲ私ハ廻ツテ方々ノ宴会ナドデ、見マスルシ聞キマスルト、決シテサウ云フモノデハナイ、商業上・工業上ナドニ力ヲ尽シタ者ハ余程待遇ガ厚イ、英吉利ノ麦酒会社ナル三角麦酒会社ヲ起シタ者ハ 天皇陛下ノ御陪食ヲ戴イタト云フコトデアル、三角麦酒ヲ発明シタト云フノハ是レハ大変ニ世界ノ産物ヲ起シタト云フコトデ、 天皇陛下ノ御陪食ヲ受ケタト云フコトヲ聞キマシタ位デアリマス、日本ニハ三角麦酒ガ行ハレテ居リマスカ之ヲ以テ其例ト致シマス、又私ガ印度ニ参ツテ居リマシタ時ニ、鉄道ニ関係アル老人夫婦ハ是レハ今度男爵ニナツタ、人民カラ華族ニナツテ本国ニ帰ル、鉄道ノ事ニ付テ印度ニ行ツテ彼ノ熱帯ノ地デ廿何年ノ間苦シタカラ今度男爵ヲ受ケテ国ニ帰ルト云フ事ヲ聞キマシタ、此二ツヲ以テ見マシテモ、日本ノ民間ニ居ル者モ矢張リ同一御待遇ハアリサウナモノト思ヒマス、ソンナ事ハ口ニハ言ヘマセヌカラ黙シテ居リマシタ、併シナガラ今日ノ進方デ行キマスルシ、又商ハ別シテ進ンデ行カネバナラヌ、海外貿易ノミナラズ総テ此商ハ進メテ行カネバナラヌト云フコトハ外務大臣ノ御演説ニモゴザリマシタカラ、私ハ夫レ等ノコトハ吾々ガ云ハイデモ、其辺ノ所ハ政府ニ申立テイデモ十分御承知ガアルコトデアラウト考ヘマスル、宜イコトダト思ヒマシタカラ私ハ賛成致シマシタガ、成程今十一番ノ御発議ニ依リマスルト之ヲ此方カラ申立テネバナラント云フノデハ、国ノ進歩ガ大変後レテ行クダラウ、又皆サンモ外国貿易ヲ拡張シテ此上ニ日本ノ富ヲ図ツテ行カウト云フテハ、大抵御覧ニナツタナラバ人民間ニ、是レダケ国ニ対シテ業ヲ起シタト云フコトハ、夫レ夫レ御承知ガアル、誰ガ其効ノアルト云フコトハ所謂地方官ニ問フテモ分ツテ居ル、夫レハ此会デ云ハイデモ分ルト思ヒマスドウゾ此事ハ望マシイト云フコトヲ心ニ思ツテ居リマシタカラ起立致シマシタガ、此会カラ申立ルノハ穏カナラヌト思ヒマスカラ十一
 - 第23巻 p.540 -ページ画像 
番ノ説ニ賛成致シマス
○十一番(渋沢栄一君) 前言ニ不足ガゴザリマシタカラ尚ホ敷衍致シマス、今廿番ハ一旦賛成シタガ十一番ノ説ニ依ツテ此会カラ申立テルノハ面白クナイ、併ナガラ欧羅巴ヲ経過スル間ニ、欧羅巴ノ商業若クハ工業ニ対シテ国家ニ大ナル働ヲ為シタル者ノ待遇ハ寧ロ日本ヨリ優ルト云ヒタイ位発達シテ居ル故ニ、日本ガ夫レヲ見出スト云フコトハ宜イケレドモ、此会カラ出スト云フコトハ甚ダ宜クナイト考ヘルト云ハレマシタガ、御尤デアリマス、私モ本会カラ此案ノ御提出ハ賛成致シマセヌ、左ラバト云フテ廿一番ノ御説ニ不同意ト云フノデハナイ、欧羅巴ノ有様ハ詳シク存シマセヌガ、如何ニモサウアラウ、商業ヤ工業ヲ重ンスルナラバ、矢張リ政事ニ軍事ニ功労ノアル者ト等シク共ニ功ヲ見テ、或ハ其国ノ勲章ヲ与ヘ或ハ之ニ向ツテ別段ノ待遇ヲスルト云フ如キ事柄ハ、甚ダ宜イコトト思フノデゴザリマス、而シテ日本ニ於テ現在ノ有様ハ如何デアルカト云フコトハ、玆ニ私ガ明言スルコトヲ好ミマセヌノデゴザリマス、併ナガラ此会カラ夫レヲ請求スルト云フコトニナリマシタナラバ余程心持ヲ悪クスル、畢竟高等会議ガアー云フコトヲ言フタカラ、義務ヅクデ呉レタノデアルト云フ感ジヲ以テ、貰ツタ者モ貴ミヲ置カヌヤウニ思フ、発言ハ御厚意カ知ラヌガ此事ハ御決議ニナラヌ方ガ却ツテ宜カラウカト思ヒマス、故ニ之ニハ反対致シマス
○五番(原善三郎君) 唯今ノ勲章授与ト云フコトニ就キマシテハ、色色御説モアリ又十一番ノ反対ノ御演説モアリマシタガ、私ハ之ニ向ツテハ反対モ致シマセヌガ、又御同意ヲ申上ゲルト云フコトモ甚タ困ラウカト存ジマス、一体此貿易ニ付テ功労ノアル者トカ、或ハ二億何千万ノ莫大ノ貿易ノ高ニ達シタ夫レニ付テハ国家ニ功労アル者トシテサウ云フ功労ノアル者ニハ勲章ヲ与ヘル、其勲章ニ付キマシテハ等級モゴザリマセウ、サウ云フ所ニハ差支ハアリマスマイガ、其勲章ヲ御授ケナサルノニ、ドウ云フ風ニ撰定ガアツテ之ヲ御授ケナサルカ、是レハ余程喧マシカラウト思ヒマス、先ヅ第一ニ唯々国費ヲ以テ欧羅巴ヲ見物シテ来タ、向フニ行ツテ何カ見テ来タト云フノデ、四等ノ勲章ヲ貰フトカ何トカ云フコトハ幾ラモアル、銭ヲ貰ツテ欧羅巴ヲ廻ツテ来テ勲章ヲ貰ツタ者モアル、是レハ其ノ礼ト思ヒマスレバ別段ニ咎メモシマセヌガ、今日ノ御説デ承ハリマスルト全ク貿易ニ付テ国家ニ功益ノアルト云フ者ニ授ケルト云フコトデゴザリマシタガ、国費ヲ無駄ニ使ツテ欧羅巴ヲ廻ツテ来タ者ガ大層ナ勲章ヲ貰ツテ居ルト云フヤウナコトハ、諸君ハ皆御承知デアラウ、兎モ角モ斯ウ云フコトヲ此農商工高等会議カラ建議致シマシテ 陛下ノ思召ニ預ツテ頂戴致スノハ忝ナイ有難イ訳デハゴザリマスルガ若シ其辺ニ間違ガ出来テハ大変ナ不平ヲ惹起ス種ヲ蒔クト思ヒマス何ンダカ此処デ御話シマスルト、チト不平ノヤウニ御聴取レルカ知レヌガ、既ニ第七回衆議院議員ニ勲章ヲ下サルト云フコトデアツタ夫レハ何ノ為メニ衆議院議員ニ勲章ヲ下サルカト申シマスト、第七議会ニ広島ニ出張シテ軍費ノ決議ヲ早速ニシテ、国家ニ対シテ功労ガアルカラ、何カ叙サナケレバナラナイト云フ御模様ノアルト云フ
 - 第23巻 p.541 -ページ画像 
コトヲ承知致シテ居リマス、所デ議長ハ勲一等ニ叙セラレ、副議長ハ四等勲章ヲ頂戴シマシタカラ、他ノ議員モ悉ク五等トカ八等トカ云フ勲章ハ貰フベキガ当リ前ト心得テ居ル、私モ其一人、所ガドウ云フ訳デアルカ、他ノ議員ニハ勲章ハヤルコトハ出来ナイ、是レニハ衆議院内デ大変議論ガアツタ、ドウモ勲章ト云フモノハ人ニ対シテノモノ、議会ト云フ団体ニ対シテ勲章ハヤレナイト云フコトデスカラ、議院ト云フ団体ニ対シテ勲章ヲヤルト云フノハ夫レハ怪シカラヌ、議長・副議長ト云フモノハ全体議会ニ対スル総代者デアル、其者ニハ勲章ノ御沙汰ガアツテ他ノ二百九十八人ニハヤレナイト云フコトハ余程訳ノ分ラナイ話、是レハ一ツ賞勲局ニ談判スルガ宜イダラウト云フヤウナコトニナツタ、夫レデ政府デハ是レハ大変ダカラ早ク杯デモヤラウト云フヤウニナツテ、銀杯ノ三ツ組ヲ下サルドウカ早ク書付ヲ取ツテ呉レト云フ騒ギデアツタ、サウ云フコトヲ此席デ苦情ヲ申シテ御話スルデハナイガ、政府ノ内情ハ先ヅ其位ノモノデス、二十一番ノ御建議ハ至極御同意デハゴザリマスケレドモ、ドウモ将来是レハ唯々不服ノ者ヲ多ク拵ヘルト云フ趣旨ニナリハセヌカト思ヒマスル、依ツテ渋沢君ノ御説ニ同意ト云フ訳デハゴザリマセヌガ、先ヅ建議ニハ反対ヲ致シマス
○九番(山本亀太郎君) 廿一番ノ御建議ノコトニ付テ、夫レ夫レ賛成反対ノ御両説ヲ拝聴致シマシタガ、中ニモ十一番ノ御説デゴザリマス、私共感服ノ外アリマセヌ、此十一番ノ御説ニ御同感ノ方モアラウト考ヘマスカラ、成リマスナラバドウカ此様ナコトハ起立ニ問ヒマセズ、穏カニ建議案ヲ撤回トカ引込メテ貰ヒタイト思ヒマス、趣意ハ十一番ニ大賛成デゴザリマス
○十七番(藤井三郎君) 私モ此建議案ニ反対スル一人デゴザリマス、ト申スノハ此会ハ海外貿易拡張ノ手段トナルコトハ、何ニ付テモ建議ノ出来ヌコトハナイガ、是レハ少シク僭越ナ建議デ商売違デアラウト思ヒマス、国家ニ対シテ功労ノアル者ニハ藍綬章ヲ下サレ、又勲章ヲ下サツタ者モアル、既ニ商人ニシテ華族ニ列セラレタ者モゴザリマス、是レハ昨今ノコトデ諸君ノ御承知ノ通リデアル、日本政府ニ於テハ、国家ニ対シテ功労ノアル者ヲ賞スルコトハ決シテ怠ツテ居ラヌト思ヒマス、偶々海外貿易ニ御従事ナサル御方デ、今日マデ勲章ナリ位階ヲ賜ハラヌト云フノハマダ其範囲内ニ来ナイノデアラウト思フ、夫レハ当局大臣モアリ、当局ノ賞勲局モアルカラ、此会カラ建議スルノハ殆ンド僭越ノコトデアラウ、中ニハ自分達ガ貰フカラ少シク言悪イト云フ方モアラウガ、中ニハ勲章ヲ貰フノモ何モ此会ノ恩恵ニ依ツテ貰ハナクテモ宜イト云フ方モアラウ、又一ノ勲章ニ依テ自分ノ営業上ノ信用トハナサナイト云フ御方モアリマセウ、色々御考ヘノ御方モアリマセウガ、兎ニ角此会カラ建議スルノハ穏カデナイト思ヒマス、又十四番議員ノ御説ニ勲章ノ有ル者ト無イ者トハ大変信用ガ違フト云フコトヲ仰ツシヤリマシタガ、是レハ其通リニ違ハナイ、勲章ノ有ル者ハ無イ者ヨリ信用ガアルノハ恰モ金ノ有ル者ハ無イ者ヨリ信用ノアルト同ジデアル、焉ゾ知ラン大変下ノ方ノ勲章デ、年限ニ依ツテ貰ツタ位ノ勲章ナレバ左迄効能ハナ
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イカモ知レナイ、唯々略綬ガ附イテ居ルカラ信用ガアルト云フノデハナイ、容貌モ立派、着物モ奇麗デアル、勲章モ持ツテ居ルト云ヘバ少シ丁寧ニヤツテ貰フト云フ位ノ話デ、決シテ此勲章ヲヤツタラ日本ノ商人ハ信用ヲ受ケル受ケヌト云フコトハナイ、若シサウ云フコトガアルニセヨナイニセヨ、此会カラサウ云フ建議ヲスルト云フコトハ僭越デアルシ、少シク商売違ヒノコトニ渉ルト云フ考ヘガアリマスカラ、私ハ渋沢君ノ説ニ賛成致シマス
○十四番(金子堅太郎君) 唯今十七番カラ少々分ラヌコトヲ仰ツシヤリマシタカラ一言申シテ置キマス、海外貿易ニ従事シテ功労ノ有ツタ人ト、十二年間勤続シタカラ勲六等ニ叙スト官吏ノ年功ニ依ツテ貰ツタモノトハ違フ、海外貿易ニ従事シ国家ニ対シテ功績顕著ナル者ニ之ヲヤルノデアルカラ、会計官吏ガ算盤弾イテ十二年勤続シテ夫レガ勅任官ニナツタカラ勲四等ニナツタト云フ年限勲章ト、海外ノ貿易ニ従事シ国家ニ対シテ功労ノアツタモノトハ違フ、夫レハ十七番議員ナドハ永ク外国ニ居ラツシヤツタカラ御分リデアラウト思フ、又金ノ有ル者ト無イ者ト信用ノ違フコトハ当前ノ話デアルガ、同シ金ノ有ル者デ勲章ノ有ルト無イトハ大変ニ違フ、私ガ英吉利ニ居ツタ時ニ勲章ヲ持ツテ居ル所ノ商人ノ信用ト、無イ者ノ信用トハ余程違フ、色々論ズレバ長クナリマスガ、私ハ是レハ政府ガ海外貿易ヲ拡張スルニ就テ最モ必要ト思フ、夫レダケヲ弁解シテ置キマス
○一番(大倉喜八郎君) 私ハ一言十四番議員ノ論旨ヲ賛成シテ申上ゲタイト思ヒマス、此席ハ海外貿易ノ事ニ就イテ将来望ミヲ属シテ、発達ヲ助クル趣意デ御議シニナツテ居ル、又廿一番ノ発議モサウデアラウト思フ、故ニ吾々モ自分ト云フコトヲ忘レテ日本ノ貿易ノ為メニ一言申シタイ、是レハ至極宜イ御考ヘデアラウ、将来後進者ヲ引立テルニ付テ、海外貿易ノ働ヲ十分附ケテ日本ノ物産ノ販路ヲ拡メル顕著ナル功績アル者ニハ、勲章ヲヤルト云ツテ何カ妨ゲガアルカ、私ハ是レハ立派ニヤツテ宜カラウト思ヒマス、又其位ノコトハ奨励ナサルガ宜イ、例ヘテ申セバ鉄砲玉ノ戦争ト算盤玉ノ戦争ト同ジコトデアリマス、鉄砲玉ノ戦争ハ威海衛ニ一度行ツタ、広島マデ二度行ツタト云フト、何カ金鵄勲章等ヲ貰ツタ者モ沢山アリマス、算盤ノ上ノ戦争ニハ夫レハ暁ノ星ノ如ク寥々タルモノデアル、何方ラモ戦争ト見タナラバ片手打《(落カ)》ノモノデナイ、算盤上ノ戦争モ中々命掛ケノモノデアツテ、妻子眷族一身一家ヲ賭シテヤツテ居ル者モアル、之ヲ褒メテヤルノハ至極結構ナコトデアツテ、日本ノ貿易ヲ発達シ国ノ利益ヲ増進スルコトヽ思ヒマスカラ、趣意ノ上ニ於テハ両手ヲ挙ゲテ賛成致シマス、併シナガラ今日ノ会議カラハドウデアルカト云フト、今申スノハ後進者ヲ進メル途デアツテ、今マデヤツテ来タ人ノ沢山集ツテ居ル此会カラ建議シテ、若シ誤ツテ其撰ニ当ツタナラバ、彼奴等ガ彼レハネダツタノヂヤーナイカト斯ウ云フヤウナ謗リヲ社会カラ受ルカ知レヌ、夫レデハ有難味ガ薄イカラ此思入レダケヲ申スダケデ、建議ヲ其向ニ申立ルコトハ止メテ貰ヒタイ
○三番(藤田伝三郎君) 私ハ十一番説ニ賛成致シマス、最早ヤ決ヲ御採リニナルコトヲ望ミマス
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○議長(伯爵佐野常民君) 廿一番ノ建議ニ付テ、追々御賛成モアリ御反対モゴザリマスカラ決ヲ採リマス、廿一番ノ建議ニ御賛成ノ御方ハ御起立ヲ願ヒマス
  起立者  少数
 少数デゴザリマスカラ否決ト認メマス