デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

8章 政府諸会
2節 博覧会
7款 日本大博覧会
■綱文

第23巻 p.631-644(DK230063k) ページ画像

明治41年6月6日(1908年)

是日栄一、当博覧会評議員ヲ仰付ラル。


■資料

青淵先生公私履歴台帳(DK230063k-0001)
第23巻 p.631 ページ画像

青淵先生公私履歴台帳          (渋沢子爵家所蔵)
    任免叙授
同 ○明治四十一年六月六日 日本大博覧会評議員被仰付 内閣



〔参考〕内外博覧会総説並に我国に於ける万国博覧会の問題 永山定富著 第五〇―五一頁 昭和八年九月刊(DK230063k-0002)
第23巻 p.631 ページ画像

内外博覧会総説並に我国に於ける万国博覧会の問題 永山定富著  第五〇―五一頁 昭和八年九月刊
 ○第二編 第一章 内外博覧会の沿革
    一、内国博覧会
○上略
日本大博覧会 日本大博覧会は日露戦勝の後を承け万国博覧会として計画せられ、事務局を置き、明治四十五年開催の予定を以て諸般の準備を進め、又海外諸邦中北米合衆国の如きは数百万弗の参同費支出を決し、準備の為め三名の事務官長を渡日せしめたが、明治四十一年之を延期して同五十年に開設のことゝし、更に四十五年に至り無期延期となり事務局を廃するに至つた。 ○下略



〔参考〕日本大博覧会ニ関スル講話筆記 第一―一五頁 「日本大博覧会開設ノ目的」 明治四一年八月刊(DK230063k-0003)
第23巻 p.631-637 ページ画像

日本大博覧会ニ関スル講話筆記  第一―一五頁 明治四一年八月刊
    日本大博覧会開設ノ目的 (日本博覧会会長金子子爵講演)
万国博覧会ハ最近時ニ於テ長足ノ進歩発達ヲ遂ゲ、幾多ノ平和的目的ニヨリテ開催セラレ、欧米諸国ノ歓迎スルトコロトナリタルガ、今ヤ我国ニ於テモ来ル明治四十五年ヲ期シ世界各国ノ参同ヲ得テ日本大博覧会ヲ開催スルコトヽナリタリ、該博覧会ヤ表面上日本大博覧会テフ名称ヲ冠スルガ故ニ従来ノ内国勧業博覧会ノ規模ヲ稍々拡大シタルノ感ナキニ非ズト雖モ、是ヲ実質上ヨリ観察スル時ハ寧ロ万国博覧会ト称スルノ至当ナルヲ発見スルニ至ル可キカ、余ハ今玆ニ万国博覧会ノ目的ヲ論ズルニ当リテ先ヅ其ノ由来ニ就キテ一言スル所アル可シ、抑モ博覧会ノ起源ハ今ヲ距ルコト百有余年前、仏国政府ニヨリテ対英国工業政策トシテ仏国巴里ニ開催セラレタルモノヲ以テ嚆矢トシ、爾来引続キ各国ノ模倣スルトコロトナリ、年々或ハ数年ヲ隔テ、開催セラルヽニ至リタルガ、畢竟是等ノ博覧会ガ幾多ノ変遷ヲ経テ遂ニ現今ノ万国博覧会ノ起源ヲナシタルモノナリト雖モ、当時ニアリテハ孰レモIndustrial Exhibition即チ勧業博覧会ト称ス可キモノニシテ、今日ノ所謂万国博覧会International Expositionタルノ性質ヲ有シタル者ニアラザリシナリ、彼ノ仏国政府ガ博覧会ヲ開催シタル目的ハ、当時ノ仏国内務大臣ガ各省大臣ニ発シタル通知書ニヨリテ一目瞭然ナルガ、其記載セルトコロニ依レバ「今回ノ博覧会ハ参観人少シト雖モ、是レ全ク英国ノ工業ニ対スル第一ノ戦争ニシテ明ニ英国ノ工業ニ打撃
 - 第23巻 p.632 -ページ画像 
ヲ加エタリ」ト其如何ニ戦争的精神ヲ含蓄シ居ルカヲ見ル可シ、此ノ巴里博覧会ニ次イデ欧洲諸国ニ開催セラレタル博覧会モ亦同一ノ目的ヲ以テセラレ、即チ外国ノ工業ヲ打破シテ自国ノ工業ヲ発達セシメ、己レ独リ利益ヲ獲得セントシタルニ外ナラズ、此ノ時代ニアリテハ列国ハ各々自国ノ商工業ヲ発展セシメンガ為メニ、激烈ナル競争ヲ惹起シ、其ノ相対スルヤ相手国ノ商工業ヲ打破セザレバ止マザラントスル気勢ヲ以テシ、列国ハ孰レモ商工業ニ対スル敵愾心ヲ以テ充タサレタルノ奇観ヲ呈シキ、斯ノ如キハ実ニ当時ノ史乗ノ明証スルトコロナリトス、想フニ是レ他国商工業ノ衰頽ハ自国ノ商工業ヲ盛大ナラシムル一大原因ナリトノ誤解ヲ有シタルヨリ起リタルモノヽ如シ、当時ノ博覧会ハ前述セル如ク孰レモ挑戦的ノ意味ヲ含蓄シテ、所謂非平和的ノ目的ヲ以テ開催セラレタルモノナルコト斯ノ如シ、然ルニ文化ノ進暢ト時勢ノ推移ハ何時マデモ斯カル非平和的挑戦的ナル博覧会ノ開催ヲ許サズ、列国モ亦自国商工業ノ隆盛ハ他国商工業ノ衰微ニ起因スルテフ迷夢ヨリ覚醒シタルヲ以テ、其結果博覧会開催ノ方針モ従来ノ挑戦的態度ヨリ一変スルニ至レリ、是レ真ニ欧洲人民ノ智識発達シタル自然ノ趨勢ナラズトセムヤ
爾後一千八百五十一年ニ至リ、即チ今ヲ去ルコト五十有余年以前ニ於テ、今日ノ所謂万国博覧会ノ濫觴タル大規摸ノ博覧会ハ、英国政府ノ主催ニ基キ、欧米諸国ノ参同ヲ得、英京倫敦ニ於テ開催セラレヌ、是レ実ニ博覧会史上ニ一大発展ノ新時期ヲ劃シタルモノニシテ、従来ノIndustrial Exhibition即チ勧業博覧会ヨリ一躍シテInternational Exposition即チ万国博覧会トナルニ至レリ、其始メ英国ノ工業打破テフ挑戦的非平和的ナル目的ヲ以テ産レ出デタル博覧会ハ、全然旧態ヨリ蝉脱シテ平和的ノ性質ヲ有スルニ至リ、今ヤ和気靄々ノ裡ニ世界列国ノ人士ガ相互ニ会同シ、競フテ各々自国ノ製造ニナレル精巧ナル工芸品・美術品等ヲ始メ其他各種ノ産物ヲ出品シ、是ヲ一堂ニ陳列シテ以テ自国ノ産出物ヲ列国ニ紹介スルト同時ニ、亦タ各国ノ産物ニ就テ研究シ、是ヲ自国ノ出品ト比較シテ採長補短ノ方法ヲ講ズルニ至レリ、其ノ如何ニ平和的ニ進歩発達シタルカヲ観ルニ足ラム、爾後万国博覧会ハ亜米利加・墺太利・仏蘭西・独逸、及ビ其他ノ欧米諸国ニ於テ開催セラレ、遂ニ今日ノ如キ平和的ノ基礎ヲ確立スルニ至リヌ
上述ノ如ク百有余年ノ歳月ヲ経過シテ以テ今日ニ至リタル万国博覧会ノ歴史ヲ調査シ、且ツ最近十年間ニ於テ開カレタル巴里博覧会・市俄古博覧会及ビ聖路易博覧会開催ノ跡ヲ観察シ来リテ、此処ニ二十世紀ニ於ケル万国博覧会ノ目的如何ヲ考フルニ、余ハ万国博覧会ノ主要目的トシテ左ノ四件ヲ挙グ可シ
  第一、経済的研究
  第二、世界的教育
  第三、国家的祭礼
  第四、外交的会同
先ヅ二十世紀ニ於ケル万国博覧会トシテハ以上ノ四大目的ヲ具備スルヲ要スルモノヽ如シ、余ハ以下ニ於テ是等ノ事項ニ就キテ聊カ詳論ヲ試ミン乎
 - 第23巻 p.633 -ページ画像 
    第一 経済的研究
経済的研究ニ関シテハ今更メテ言フノ必要ナカル可シ、ソハ万国博覧会ガ彼ノ勧業博覧会ノ淵源ヨリ流レ出デタル者ナルヲ思ヘバ第一ノ理由ハ当然ノ事ナル可ケレバ也、抑モ博覧会ノ開カルヽニ至リシ所以ノモノハ、世界列国ノ経済的物品ヲ一堂ニ陳列シテ世界ノ各処ニ於ケル物産ノ実況ヲ目撃シ、自国ノ製品ヲ以テ他国ノ需用ニ応ズル方法ヲ研究スルト同時ニ、他国ノ出品中自国ノ製品ヨリ優等且ツ廉価ノ物アレバ之ヲ輸入シテ有無相通ズルガ如ク、要ハ廉価ノ物品ヲ索メテ之ヲ購求シ、又需要ノ区域ヲ研究シテ自国製品ノ販路ヲ拡張スルノ計画ヲ立ツルニアルガ如シ、尚ホ其他各国ノ出品物ニ就キテ化学ノ応用、機械ノ使用方法等ヲ研究シ、彼我ノ優劣ヲ比較シテ長ヲ採リ短ヲ補ヒ、益益自国ノ製品ヲ改良シテ世界ニ於ケル販路ノ拡張ヲ計リ、又各国ノ出品物ニ就キテ仔細ニ研究シタル結果ヲ応用シテ是ト同等ノ物品ヲ寧ロ精巧且ツ廉価ニ製造スル等、孰レモ其観察シタルトコロヲ以テ直チニ是ヲ応用シ是ヲ参考トシテ新規ノ製造法ヲ按出スルガ如キ、皆ナ経済的研究ナラザルハナシ、斯クテ亦タ他国ノ経済上ノ実力ヲ考察シ、及ビ列国経済機関ノ設備ノ優劣ヲ調査シ、以テ世界ノ市場ニ於ケル販路拡張ノ計画ヲ立テ、経済的競争場裡ニ打ツテ出ズル如キハ各国ノ認メ且ツ実行シツヽアルトコロニシテ、斯ノ如キ行動ハ所謂Reasonable Competition即チ道理アル争ト称シテ、列国ガ万国博覧会ニ対スル一定ノ方針トスルトコロナリ、是ト同時ニ彼ノ隠険ナル手段ヲ弄シテ競争場裡ニ馳駆セントスルモノヽ如キハ列国ノ均シク排斥スルトコロナリトス、従ツテ列国ハ常ニ万国ノ出品物ニ注意シ、或ル一国ガ他国ヨリモ良好ナル物品ヲ製造シテ是ヲ廉価ニ販売シ、以テ経済市場ニ於テ他国品ヲ駆逐シ己レ代リテ世界ノ顧客独占セントスルモ是レ正当ナル競争、道理アル競争トシテ、決シテ猜疑心ヲ以テ之ヲ見ル事ナキノミナラズ、己レモ亦タ同一ノ方法ニヨリテヨリ多クノ改良ヲ施シ益々廉価ニ物品ヲ製造スルコトヲ考究シテ、公々然トシテ此道理アル競争ニ必勝ヲ期センコトヲ劃策スルハ今日ニ於ケル各国経済政策ノ現況ナリト云フ可シ、是ヲ以テ万国博覧会ノ開会アル毎ニ全世界ノ物品ハ大ニ其精巧ヲ加エ来リ、世人ハ低廉ナル価格ニテ却テ良好ナル物品ヲ購入シ得ル現象ヲ呈スルニ至レリ、是レ実ニ万国博覧会ニ於ケル経済的賜物ナリト云フ可シ、而モ万国博覧会ガ経済利益ヲ与フルコトハ豈単ニ是レノミニ止マランヤ、勿論今日ニ於テハ交通機関発達セルヲ以テ海ニ陸ニ旅行者ノ便ハ整備セザルコトナシト雖モ、若シ世界列国ヲ巡回シテ其経済的状態ヲ視察シ、列国ノ製造品ニ就キ一々化学ノ応用、機械ノ効用等ヲ研究スルト共ニ、又列国ノ物品ヲ比較シ品評スルニアラザレバ自国製造品ニ充分ナル改良ヲ施ス能ハズトセバ、如何ニ熱心ナル製造家ト雖モ到底企及スル能ハザルトコロナル可シ、然ルニ万国博覧会ニシテ開催セラレンカ世界列国ノ物品ハ一堂ノ中ニ陳列セラルルヲ以テ、最早製造家ガ多大ノ費用ト幾多ノ永キ日子ヲ消費シテ世界列国ヲ巡廻スルノ労ヲ要セズ、又列国ノ物品ヲ比較研究スルノ不便ヲモ感ズルコトナクシテ、一瞥ノ下ニ数十個国ノ物品ヲ観察シ其優劣ヲ考究シテ補短採長ノ利益ヲ享受スルコトヲ得可シ、而シテ其研究ニ費
 - 第23巻 p.634 -ページ画像 
ストコロノ苦心モ困難ノ程度モ僅少ニシテ比較的完全ニ其目的ヲ達スルヲ得ムカ、斯ノ如キハ独リ万国博覧会ノ能クスルトコロニシテ是ヲ措イテ他ニ好適ノ機関アラザル可シ、此ニ於テ乎万国博覧会ハ各国ガ其経済的研究ヲナス最大目的トナルニ至レリ
    第二 世界的教育
余ハ今仮リニ世界的教育ト名ヅケタルガ、余ノ所謂世界的教育トハ、果シテ如何ナル事ヲ意味スルカ、夫レ宇内ノ列国各々国ヲ成シテ生存競争場裡ニ相対峙スル以上、人種ノ異同、宗教ノ差異、政体ノ組織、其他社会各般ノ事項ニ等差ナキ能ハザル可シ、是ニ於テ乎是等ノ相違ヨリシテ彼我ノ事情相疎通セザルトコロ多ク、為ニ列国間ニ於テ感情ノ衝突ヲ招致シ、勢ヒ優強国ハ劣弱国ヲ軽侮シ、劣弱国モ亦タ常ニ猜疑心ヲ以テ優強国ヲ迎フルニ至リ、斯ク列国ガ相互ニ他国ノ事情ニ通暁セザル時代ニ在リテハ往々ニシテ是等不利ノ現象ガ続出スルハ到底免カレザルトコロナリト雖モ、其一度万国博覧会ノ開催セラルヽヤ多数国民ハ一堂ノ下ニ集合スルノ機会ヲ得、玆ニ万国的会同ノ実ヲ挙グルニ及ビテ彼我国民ノ状態如何ヲ知悉シ、其国ノ現状ヲ知ルニ至ル故ニ曾テ猜疑心ヲ以テ観察シタル国家モ全然自国ノ誤解ナリシコトヲ覚知シ、亦タ優強国モ従来劣弱国ニ対スル態度ノ非理ナルコトヲ考ヘテ是ヲ改ムルニ至ル可ク、且ツ万国博覧会ナルモノハ其ノ本来ノ性質上国家ノ実力如何ニヨリテ出品セシムルト云フニアラズシテ、強弱貧富ノ区別ナク其特殊ノ物産ヲ出陳スルヲ得、亦自国特有ノ文明ヲ示スコトヲ得ルガ故ニ、勿論参同国家ノ中ニアツテハ先進国・後進国ノ差異アル可シト雖モ、兎ニ角世界列国ノ物産・技芸其他有ラユル出品ガ一堂ノ下ニ陳列サルヽヲ以テ、各人種特有ノ材能又ハ特殊ノ技芸ヲ有スルコトヲ相互ニ発見スルヲ得可シ、此点ヨリ見テ万国博覧会ハ世界列国ノ人民ノ霊智霊能ヲ交換スル場所ナリトノ観念ヲ生ジ、遂ニ万国博覧会ハ世界的学校ナリトノ断案ヲ下スモノアルニ至レリ、余ハ曾テ欧米ニアリテ屡々万国博覧会ヲ観察シ、又万国博覧会経営ノ衝ニ当リタル人々ニ就キテ其ノ意見ヲ聴キタル所ニ依レバ、吾人ハ万国博覧会ニ於テ一個ノ新元則ヲ確認シタリ、即チ人ニ教ユル者亦タ其人ニ就キ学ブ可キ事項アリ、又人ヨリ学ブ者モ亦タ其人ニ教ユ可キ技芸ヲ有スルコトヲ発見シタリ、例セバ亜弗利加ノ内地ニ於ケル未開ノ人民ト雖モ亦タ欧米文明ノ中心ニ棲息スル市民ニ教ユルコト多キヲ有スルガ如シ既ニ万国博覧会ハ夫レ自身ニ於テ世界的智識ヲ交換スルモノナルニ、最近ノ事実ニヨレバ此万国博覧会ノ開催ニ随伴シテ新タニ万国博覧会議ナルモノ起ルニ至レリ、即チ博覧会ノ開催ヲ利用シテ、其開設地ニ又世界列国ノ知名ノ人士ヲ会合シ学芸・教育・衛生・工芸・美術・法律其他運輸・交通等各般ノ事項ニ就キ研究スルノ方針ヲ以テ万国会議ヲ開催スルニ至リヌ、而シテ万国会議ガ始メテ其効用ヲ世界ニ認識セラレタルハ実ニ千八百八十九年ノ巴里万国博覧会ナリトス、爾後四年ヲ経過シテ一千八百九十三年ニ至リ市俄古ニ開催セラレタル万国博覧会ニ於テモ亦タ万国会議ハ開会セラレタリキ、而シテ該万国会議ハ曩キノ巴里ニ於ケル万国会議ニ比スル時ハ其区域甚ダ拡大セラレ、世界各国ノ学者・技術家・宗教家・新聞記者等有ラユル社会各般ノ事物ニ
 - 第23巻 p.635 -ページ画像 
経験アル人々相会シテ大会議ヲ開キ、以テ大ニ世界教育ノ発達ニ貢献スルトコロアリキ、今其一例ヲ挙グレバ万国宗教家ノ大会ヲ開クニ当ツテ印度及日本ヨリ仏教家ヲ招聘シ以テ印度仏教・日本仏教ノ現況及其精神ヲ説明セシメタル時ノ如キ、当時悪感情ヲ耶蘇教信者ニ与フルコトナキカヲ憂慮スルモノアリシガ、事実ハ予想ニ反シテ非常ナル好結果ヲ与ヘ、爾来亜弗利加人間《(亜米利加カ)》ニ仏教信者ノ増加シタルノミナラズ、亦タ独逸・仏蘭西・英吉利等ノ諸国ニ於テモ熱心ニ仏教ヲ研究スルモノ出ヅルニ及ビ、彼等ヲシテ遂ニ仏教ガ東洋ニ於テ必要ノ宗教ナルコトヲ承認セシムルニ至レリ、次デ一千九百年ノ巴里博覧会ニ於テハ万国会議ノ益々必要有益ナルコト認識セラレシガ、又最近ノ聖路易博覧会ニ於ケル万国会議ノ如キ従来開カレタル前後三回ノ万国会議ヨリモ非常ニ其区域拡張セラレ、世界列国ニ於ケル学識経験アル人士ヲ糾合シテ開会シタルヲ以テ、其結果一度教育大会ヲ開ケバ世界ニ於ケル教育ノ情況ヲ知ルコトヲ得、亦タ衛生大会ヲ開ケバ世界ニ於ケル衛生ノ状態ハ居ナガラ之ヲ究ムルヲ得ルガ如ク、法律・美術・工芸其他ノ大会ニ於テモ皆同様ノ効果ヲ収メ得タリト云フ、斯クテ万国博覧会ハ実物ニ就キテ教育ヲ施スハ勿論、同時ニ万国会議ノ随伴セルアリテ講話演説等ニヨリ各般ノ事項ニ関スル教育ヲ施スヲ以テ、最近ノ万国博覧会ガ世界的教育ヲ施ス学堂ナリト認メラレタルモノ故ナキニアラザルヲ知ル可シ
    第三 国家的祭礼
国家的祭礼ハ最近ノ万国博覧会ニ於テ、頗ル発達シタルトコロノ者ナリ、夫レ国家モ亦タ一個人ガ労働スル間ニアリテ時々物見遊山等ニヨリテ安慰ヲ得ルガ如ク、或時期ニ於テ国家的祭礼ヲ行フハ其発達上極メテ必要ナルコトニ属ス、殊ニ現今ノ如キ生存競争ノ激烈ナル社会ニ立ツニ当ツテハ、国家モ娯楽トシテノ祭礼ヲ挙行スルハ最モ必要ナル条件ノ一ナルガ如シ、是レ列国ガ万国博覧会ヲ開設スル毎ニ世界各国ノ遊技・演劇・音楽其他各種新規ナル化学機械ヲ応用シタル遊技ヲ催シテ其耳目ヲ楽シマシメ精神ト身体トノ休養ヲ図ル所以ナリ、彼ノ市俄古博覧会ニ於テモ亦タ巴里博覧会ニ於テモ、既ニ這般ノ理由ニヨリテ孰レモ国家的祭礼ヲ挙行シタルヲ見ル、而シテ国家的祭礼ノ発達シタルハ市俄古博覧会ニシテ最近ノ開設ニ係ル聖路易ノ博覧会ノ如キ此点ニ於テハ殊ニ完備ノ域ニ達シタルモノナルガ如シ、即チ聖路易万国博覧会ニ於テハ先ヅ各国ノ祭日ヲ定メ、例ヘバ聖路易ノ祭日、独逸ノ祭日、其他仏蘭西・英吉利ト云フガ如ク、殊ニ亜米利加人ハ此機ヲ利用シテ亜米利加ノ歴史上国民ノ脳裡ニ深刻シテ永世忘ル可カラザル独立ノ紀念日、南北戦争ノ紀念日等ヲ選ビテ其祭日トナシ、而シテ是等ノ祭日ニ当ルヤ単ニ陳列品ヲ観覧セシムルニ止マラズ各種ノ行列ヲ挙行シ、又タ活物ニ就キテ観覧人ニ多大ノ娯楽ヲ与フルコトニ全力ヲ傾注セリ、又世界各国ニ於ケル各種ノ遊技・演劇若クハ見世物等ノ興行ヲ許可シテ以テ観覧人ノ耳目ヲ楽マシメンコトニ勉メタリキ、彼ノ聖路易博覧会ニ於ケル「パイク」(娯楽場)ハ従来欧米ニ於テ開催シタル万国博覧会中前代未聞ト称セラルヽマデニ集合整頓シ、殆ンド世界ノ有ラユル遊技並ニ世人ノ耳目ヲ娯シマシム可キ各種ノ設備殆ンド完成
 - 第23巻 p.636 -ページ画像 
シタリト云フ、今其一例ヲ挙グレバ一方ニ海底旅行・空中旅行ノ設備ヲ始メ、紐育大火ノ景況ヲ目撃セシムルカト思ヘバ、又一方ニハ独逸南方「アルプス」山間ノ光景及住民ノ生活ノ実況ヲ目前ニ現出セシムルアリ、其他各国ノ風景、人民生活ノ状態、各国ノ社会組織ノ現状等ヲ同一場所ニ現出シテ、観覧人ヲシテ殆ンド恍惚トシテ知覚神経ヲ失ハシメタリト云フ、其規模ノ大荘麗ナル実ニ予想ノ外ニアリト云フヲ得可シ、而シテ是等ノ設備ニ要シタル費額ハ我国ノ通貨ニ換算シテ一千万円ヲ要シタリト聴ク、若シ夫レ聖路易万国博覧会ノ経費総額ノ三分ノ一ヲ占ム、此一事ニ徴スルモ如何ニ列国ガ其国家的祭礼ヲ重要視スルカヲ知ルニ足ル可シ
    第四 外交的会同
従来列国間ノ外交ハ単ニ王室ト王室、主権者ト主権者、政府ト政府トノ間ニ於テノミ料理セラレ、斯クテ親厚ナル国交ヲ維持シ来リタリト雖モ、二十世紀ニ於ケル外交ハ独リ国ト国、政府ト政府ト云フ如キ国家ノ代表的地位ニアルモノヽ間ニ於テノミ料理スルニ任セズシテ、円満ナル国際的関係ハ常ニ列国人民相互間ノ交際ニ深キ根底ヲ有スルニ至リタルヲ以テ、各国々民間ノ社交上ノ親疎ハ国家外交ノ大勢ヲ支配スル傾向ヲ生ジタル有様ナリ、故ニ政府ト政府トノ外交ハ、如何ニ円滑ニ持続セラルヽト雖モ、若シ一朝国民ト国民トノ間ニ感情ノ衝突発生スルコトアランカ、遂ニ国交ハ断絶セラレ平和ハ打破セラレタル例証ハ近頃外交ノ史乗ニ於テ屡々見ルトコロノ現象ナルヲ以テ、常ニ列国交際ノ円満ヲ期セント欲セバ国民相互間ノ交際ヲシテ親密ノ関係ヲ結バシメザル可カラズ、是レ二十世紀ニ於ケル外交ノ大勢ナリト云フ可シ、而シテ万国博覧会ガ国民間ノ親和ニ与カツテ力アルハ実ニ多大ナルモノヽ如シ、即チ万国博覧会ガ各国ノ人民ヲ一堂ニ会同セシムルヤ独リ経済的研究ニ資セシメ又貿易的利益ノ供給者タルニ止マラズシテ、是等ノ会合ヲ利用シテ起リタル各種ノ宴会、各種ノ集会ニヨツテ各国人民ハ相互ニ接近ノ機ヲ与ヘラレ、不知不識ノ間ニ国民ノ握手提携ハ成就セラレテ、是等ノ関係ガ惹ヒテ列強ノ外交ニ援助ヲ与フルコト少ナカラズ、是等ノ利益ハ各国ニ於ケル博覧会経営者ノ一般ニ承認スルトコロノモノナリ、故ニ其一度万国博覧会ノ開設セラルヽニ当リテヤ其主催国ハ是等ノ機ヲ逸セザランガ為メニ鋭意尽力シ、其開会中ニ於テ主催国政府ノ催シニカヽル宴会、各国代表者ノ宴会、各国出品人ノ宴会、其他幾多ノ園遊会又ハ懇親会ハ始ンド日々ノ如ク博覧会々場又ハ其他ノ場所ニ開催セラレ、斯クテ相互間ノ国情ノ疏通ヲ図リ又新タニ通商貿易ヲ開始スルノ素地ヲ作ラントシ、既ニ交通貿易ヲナシツヽアル国家間ニアツテハ益々是ヲ拡張セント欲シテ、政府ノ外交ニ間接的援助ヲ与ヘ同時ニ円満ナル国交ヲ維持スル上ニ於テ裨益ヲ与フルハ実ニ今日ノ状態ナリト云フ可シ、彼ノ一千九百年ニ於ケル巴里博覧会開会ノ時ノ如キ、其機会ヲ利用シテ各国ノ皇帝・大統領ヲ始メ其他要路ノ大官・外交官等替ル替ル巴里ニ輻輳シタル事アリタリキ、而シテ是等皇帝・大統領ガ旅行セラルヽニ当リテヤ名ハ微行ト称スト雖モ、其間ニ於テ外交上ノ関係ヲ円滑ナラシメタル例甚ダ多キガ如シ、加之各国ノ出品人間ニ於テ宴会ヲ開ク時ノ如キ社交上ノ親密ヲ期スル
 - 第23巻 p.637 -ページ画像 
ハ勿論、彼我ノ間ニ於ケル交際ノ振合等ヲ比較シテ若シ他国人ニ長所アレバ是ニ傚ヒテ以テ交際ノ術ヲ学ブ、蓋シ外交官ノ職ヲ奉ズル者等ハ常ニ外国人トノ交際ニ慣熟セリト雖モ、其ノ他普通人民ニ至リテハ万国ニ於ケル博覧会、各種ノ会合ニ依ツテ宴会ニ列スル場合ニ於ケル動作、各国人ヲ歓迎スル時ノ演説、並ニ是ニ対シテ答辞ヲ述ブル方法其他万国共通ノ交際法ヲ学ブコトヲ得可シ、実ニ万国博覧会ハ斯カル点ニ於テモ著シキ効能アルコトハ今更多言ヲ要セザル也
上来陳述シタルトコロノモノハ今日万国博覧会開設ノ主要目的ニ属スルト雖モ、若シ此ノ開設ニヨリテ生ズル利益ニ就キ概括シテ一言センカ、是ニヨリテ世界的教育ハ益々普及セラルヽニ至ル可ク、各国文明ハ世界各国人民ノ面前ニ紹介セラルヽガ故ニ其国特殊ノ文明ハ諸国人民ノ研究スルトコロナリ、劣弱国モ亦優強国ニ対シ教フルニ足ルベキ特有ノ技能アルコトヲ知ラシムルニ至ル可ク、而シテ経済的方面ニ於テハ列強ノ商工業及ビ貿易多大ノ裨益ヲ与フルハ勿論、列国経済的競争ニ関シテ亦タ幾多ノ参考ノ資ヲ供給シテ、将来ノ施設経営ニ教訓ヲ与フルトコロアルヤ必セリ、斯クテ世界ニ於ケル生存競争ノ漸次激烈ヲ加フルニモ拘ハラズ、各国々民間ノ親交ヲ維持深厚ナラシメ、延テ以テ円満ナル外交ヲ存続シテ四海兄弟テフ人道ノ大本ヲ認識セシムルニ至ラン、是レ真ニ第二十世紀ニ於ケル万国博覧会ノ活眼目ニシテ、豈ニ敢テ死物ノ陳列品ヲ世人ノ観覧ニ供スルノミニ止マランヤ



〔参考〕日本大博覧会ニ関スル講話筆記 第三二―五〇頁 明治四一年八月刊(DK230063k-0004)
第23巻 p.637-644 ページ画像

日本大博覧会ニ関スル講話筆記  第三二―五〇頁 明治四一年八月刊
   日本大博覧会規則
    第一章 総則
第一条 本会場ハ東京市青山練兵場、其ノ附近及東京府豊多摩郡代々木御料地並之ヲ連接スル土地ヲ以テ之ニ充ツ、但シ水族館ノ位置ハ別ニ之ヲ定ム
第二条 本会ハ明治四十五年四月一日之ヲ開キ、同年十月三十一日之ヲ閉ツ
第三条 本会ハ各国ノ政府及人民ノ参同ヲ招請ス
第四条 参同国ハ事務官ヲ本会ニ派遣スルコトヲ得
 事務官ヲ派遣セサル外国ノ出品人ハ、総代ヲ選定シ事務局ニ通知スヘシ
 事務局ト外国出品人トノ交渉ハ事務局ト事務官又ハ出品人総代トノ間ニ於テ之ヲ為スヘシ、但シ事務局ハ必要ト認ムルトキハ直接ニ出品人ト交渉スルコトアルヘシ
第五条 会場内ニ於ケル外国政府館ノ敷地ニ対シテハ、使用料ヲ徴収セス
第六条 事務局ハ出品ノ保護ニ関シ相当ノ設備ヲ為スヘシト雖、出品ノ紛失其ノ他ノ損害ニ対シテハ原因ノ如何ヲ問ハス一切其ノ責ニ任セス、建物其ノ他ノ建設物ニ付テモ亦同シ
第七条 建物其ノ他ノ建設物内ニ於テハ、事務局ノ許可ヲ受ケタル場合ヲ除クノ外火ヲ用ヰルコトヲ禁ス、但シ電灯ハ此ノ限ニ在ラス
第八条 会場ノ光景ヲ模写シ又ハ脚付写真器械ヲ以テ撮影セムトスル
 - 第23巻 p.638 -ページ画像 
者ハ事務局ノ許可ヲ受クヘシ
第九条 会場内ニ於テ貼紙・引札・散紙等ノ方法ヲ以テ広告スルコトヲ得ス、但シ第三十八条ノ場合及事務局ノ許可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第十条 本則其ノ他本会ニ関スル諸規則・命令又ハ処分ニ対シ、利害関係者ハ異議ノ申立ヲ為シ又ハ損害賠償ヲ請求スルコトヲ得ス
第十一条 本則其ノ他本会ニ関スル諸規則ハ、必要ト認ムルトキハ其ノ規定ヲ変更シ又ハ追加スルコトアルヘシ
第十二条 本会ニ関与スル者ハ本則其ノ他本会ニ関スル諸規則及命令ヲ遵守スヘシ、本会ニ関与スル者ニシテ前項ノ規則又ハ命令ニ依ル義務ヲ履行セサルトキハ、事務局ハ適宜ノ処分ヲ為シ、且ツ之カ為ニ要シタル費用ヲ本人ヨリ追徴スルコトアルヘシ
    第二章 出品
     第一節 通則
第十三条 本会ニ出品セムルトスル者ハ、別ニ定ムル出品部類ニ拠ルヘシ
第十四条 出品ハ左ノ二十一部ニ大別シ、更ニ之ヲ類ニ細別ス
  第一部   教育
  第二部   学芸
  第三部   美術
  第四部   美術工芸
  第五部   農業
  第六部   園芸
  第七部   畜産
  第八部   蚕糸業
  第九部   林業及狩猟
  第十部   水産
  第十一部  飲食品
  第十二部  採鉱及冶金
  第十三部  化学工業
  第十四部  染織工業
  第十五部  製作工業
  第十六部  建築及室内装飾
  第十七部  機械及船舶
  第十八部  電気
  第十九部  土木及通運
  第二十部  経済及衛生
  第二十一部 陸海軍
第十五条 出品陳列ノ為メ左ノ十六館ヲ設備ス
  教育館  第一部ノ出品
  学芸館  第二部及第二十部ノ出品
  美術館  第三部及第四部ノ出品
  農業館  第五部及第七部中家畜・家禽・各種馴養動物以外ノ出品
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  園芸館  第六部ノ出品
  家畜舎  第七部中家畜・家禽及各種馴養動物ノ出品
  蚕業館  第八部ノ出品
  林業館  第九部ノ出品
  水産館  第十部ノ出品
  食料館  第十一部ノ出品
  鉱産館  第十二部ノ出品
  工業館  第十三部・第十四部・第十五部及第十六部ノ出品
  機械館  第十七部ノ出品
  電気館  第十八部ノ出品
  通運館  第十九部ノ出品
  陸海軍館 第二十一部ノ出品
第十六条 左ノ各号ノ一ニ該当スルモノハ、之ヲ出品スルコトヲ得ス
 一 明治三十五年十二月以前ニ於テ採取・産出・加工・製作又ハ製造シタルモノ、但シ養成ニ係ル動植物ハ此ノ限リニ在ラス
 二 左ニ掲クル畜産
   明治三十八年十二月以前又ハ明治四十四年一月以後ニ於テ産出シタル馬
   明治四十年四月以前又ハ明治四十四年一月以後ニ於テ産出シタル牛
   明治四十五年二月以後ニ於テ産出シタル家禽
   明治四十五年三月以後ニ於テ産出シタル豚・緬羊又ハ山羊
 三 風俗若クハ秩序ヲ紊リ、又ハ衛生ヲ害スル虞アリト認ムルモノ
 四 他ニ損害ヲ及ホシ若クハ公衆ニ嫌忌ノ感ヲ与ヘ、又ハ危険ノ虞アリト認ムルモノ
 五 前各項ニ掲クルモノヽ外、物品ノ種類・性質等ニ依リ出品ノ価値ナシト認ムルモノ
第十七条 発火・爆裂其ノ他危険ノ虞アルモノト雖、包装又ハ模型ヲ以テ出品スルコトヲ得
第十八条 出品人ハ左ノ各号ノ一ニ該当スルモノニ限ル
 一 出品物ノ採取・産出・加工・製作又ハ製造ニ参与シ、之ヲ販売スルヲ以テ業トスル者
   但シ第三部及第四部ノ出品ニ付テハ其ノ加工・製作又ハ製造ニ参与シタル者
第十九条 出品人ノ承諾ヲ得且ツ事務局ノ許可ヲ受クルニ非サレハ、出品ヲ模写又ハ撮影スルコトヲ得ス
第二十条 出品ノ陳列場所ニ対シテハ使用料ヲ徴収セス
第二十一条 出品ニ要スル水及蒸汽並機械ノ運転ニ要スル蒸汽・瓦斯及電気ノ動力ハ、無料ニテ之ヲ供給ス
 但シ其ノ数量又ハ使用時間ハ、之ヲ制限スルコトアルヘシ
 前項ニ依リ水・蒸汽・瓦斯又ハ電気ノ供給ヲ受クルトキ及原軸ニ依リ動力ノ伝導ヲ受クルトキ、之ニ要スル支管・支軸・滑車・調帯・電線等ノ設備及其ノ費用ハ出品人ノ負担トス
第二十二条 出品ノ荷造・荷解・輸送・税関手数・保険、空箱ノ保存
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陳列箱若クハ陳列台ノ調製・陳列・装飾、陳列場所ノ洒掃等及之ニ要スル費用ハ出品人ノ負担トス
第二十三条 出品ノ説明・売約・保管等ハ出品人ニ於テ之ヲ為スヘシ
第二十四条 出品人ノ使用スル被傭人ノ行為ニ付テハ、出品人其ノ責ニ任スヘシ
 前項ノ被傭人ニシテ不都合ノ行為アリト認ムルトキハ、事務局ハ其ノ入場ヲ差止ムルコトアルヘシ
第二十五条 出品人ニシテ出品ト同種ノ品物ヲ即売セムトスルトキハ陳列館外ニ於テ別ニ売店ヲ設ケテ之ヲ為スヘシ
第二十六条 事務局ハ通路ノ変更其ノ他必要ノ事由アルトキハ、陳列場所ノ変更又ハ其ノ面積ノ増減ヲ命スルコトアルヘシ
第二十七条 出品ノ搬入及陳列ハ、明治四十四年十二月一日ヨリ明治四十五年三月十日迄ニ之ヲ為スヘシ
第二十八条 左ニ掲クル出品ハ左ノ期間内ニ搬入及陳列ヲ為スヘシ
 一 馬      明治四十五年四月二十六日ヨリ四月三十日迄
 二 牛及家禽   明治四十五年六月一日ヨリ六月五日迄
 三 豚緬羊及山羊 明治四十五年七月六日ヨリ七月十日迄
 前項ニ掲クル以外ノ畜産及蔬菜・果実・植物・養殖魚介ノ類ニ関シテハ、事務局ニ於テ特ニ其ノ搬入及陳列ノ期間ヲ指定スルコトアルヘシ
第二十九条 前二条ノ期間内ニ搬入又ハ陳列ヲ終ラサルトキ又ハ終ルコト能ハサルモノト認ムルトキハ、事務局ハ出品許可ノ全部又ハ一部ヲ取消スコトアルヘシ
第三十条 出品人ハ他人ノ出品ノ陳列ニ要スル光線ヲ遮蔽シ、又ハ他人ニ不利益ヲ与フルカ如キ陳列又ハ装飾ヲ為スコトヲ得ス
第三十一条 出品ノ陳列又ハ装飾ノ為メ陳列館ノ壁面又ハ其ノ他ノ構造ヲ使用スル工事ヲ為サムトスルトキハ、事務局ノ許可ヲ受クヘシ
第三十二条 陳列箱若クハ陳列台ノ据付其ノ他陳列ニ関スル工事ハ、明治四十五年二月二十日迄ニ完成スヘシ
第三十三条 出品人ハ運転ヲ為ス機械ニ付テハ危害予防ノ設備ヲ為シ且ツ経験アル者ヲシテ之ヲ管理セシムヘシ
 前項ノ機械ハ、事務局ノ指定期日ニ試運転ヲ為スヘシ
第三十四条 事務局ノ許可ヲ受ケタル場合ヲ除クノ外開会中陳列若クハ装飾用ノ材料ヲ搬入シ、又ハ陳列若クハ装飾ニ関スル工事ヲ為スコトヲ得ス
第三十五条 事務局ノ命令又ハ許可ニ依ル場合ヲ除クノ外公衆ノ観覧時間内ニ於テ陳列場所ニ縄張ヲ為シ、其ノ他出品ノ観覧ヲ遮蔽若クハ防止スルコトヲ得ス
第三十六条 出品ニシテ腐敗・融解等ノ為メ陳列ニ適セスト認ムルトキハ、事務局ハ之ヲ撤去セシムルコトアルヘシ
 前項ノ場合ニ於テ、事務局ハ更ニ同種物品ノ出品ヲ命スルコトアルヘシ
第三十七条 事務局ハ、必要ト認ムルトキハ陳列又ハ装飾ノ変更ヲ命スルコトアルヘシ
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第三十八条 出品人ハ其ノ陳列場所ニ於テ見本・引札等ヲ無償ニテ観覧人ニ配付スルコトヲ得
第三十九条 出品ノ製造方法又ハ効用ヲ示ス為メニ会場内ニ於テ製出シタル物品ハ、事務局ノ許可ヲ受ケタル場合ニ限リ之ヲ即売シ又ハ無償ニテ配与スルコトヲ得
第四十条 出品人ニ於テ本則其ノ他本会ニ関スル諸規則又ハ命令ニ違背シタルトキハ、事務局ハ出品ノ搬入ヲ差取メ、又ハ出品若クハ陳列・装飾用ノ器具・工作物等ヲ撤去セシムルコトアルヘシ
第四十一条 出品ハ事務局ノ命令又ハ許可ニ依ル場合ヲ除クノ外閉会迄之ヲ撤去スルコトヲ得ス
第四十二条 出品ハ閉会後三箇月以内ニ之ヲ搬出スヘシ、陳列若クハ装飾用ノ器具・工作物等ニ付テモ亦同シ
第四十三条 左ニ掲クル出品ハ左ノ期間内ニ搬出スヘシ
 一 馬      明治四十五年五月二十六日ヨリ五月三十一日迄
 二 牛      明治四十五年六月二十一日ヨリ六月二十五日迄
 三 豚緬羊及山羊 明治四十五年七月二十五日ヨリ七月二十九日迄
 前項ニ掲クル以外ノ畜産及蔬菜・果実・植物・養殖魚介ノ類ニ関シテハ、事務局ニ於テ特ニ其ノ搬出ノ期間ヲ指定スルコトアルヘシ
第四十四条 出品総目録ハ日本文ヲ以テ事務局ニ於テ之ヲ発行ス
     第二節 内国出品
      第一款 第一部・第二部・第五部乃至第二十一部ノ出品
第四十五条 第一部・第二部・第五部乃至第二十一部ノ出品ノ出品人ノ資格ハ、別ニ定ムル処ニ依ル
第四十六条 出品ヲ為サムトスル者ハ、明治四十四年三月三十一日迄ニ願書ヲ地方長官ニ差出スヘシ
 一出品人ニ於テ産地二府県以上ニ亘ル同種ノ物品ヲ出品セムトスル場合、又ハ二府県以上ニ亘ル同業者カ合同シテ出品セムトスル場合ニ於テハ、前項ノ期限迄ニ願書ヲ事務局ニ差出シ、且ツ其ノ旨ヲ関係地方長官ニ届出ツヘシ
 外国在留ノ帝国臣民ニシテ出品ヲ為サムトスルトキハ、直接ニ事務局ニ願書ヲ差出スヘシ
第四十七条 左ニ掲クル出品ヲ為サムトスル者ハ願書ニ其ノ陳列ニ関スル設計図ヲ添ヘ、明治四十四年一月三十一日迄ニ之ヲ差出スヘシ
 一 鉅重ノ物品ニシテ特ニ基礎ノ構造ヲ要スルモノ
 二 機械ノ運転ニ動力ヲ要スルモノ
第四十八条 地方長官ハ出品願書ヲ取纏メ、第四十六条又ハ第四十七条ノ期限後十五日以内ニ事務局ニ送付スヘシ
第四十九条 出品ノ陳列ニ付事務局ニ於テ特殊ノ事由アリト認メタルトキニ限リ、自費ヲ以テ陳列館ヲ建設スルコトヲ得
第五十条 陳列館ヲ建設セムトスル者ハ、明治四十三年十一月三十日迄ニ出品ノ部類及建坪ヲ記載シタル願書ニ概略ノ設計及図面ヲ添ヘ地方長官ヲ経テ事務局ニ差出スヘシ
 前項ノ陳列館ニ水・蒸汽・瓦斯又ハ電気ヲ要スル場合ニ於テハ、其
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種類、使用ノ目的、数量ヲ願書ニ記載スヘシ
第五十一条 陳列館建設ノ許可ヲ受ケタル者ハ、其ノ出願ニ係ル部類ノ出品ニ付テハ出品ノ許可ヲ受ケタルモノト看做ス
第五十二条 陳列館ノ敷地ニ対シテハ使用料ヲ徴収セス
第五十三条 陳列館ニハ事務局ノ指定スル設備ヲ為スヘシ
第五十四条 出品ノ許可ヲ受ケタル者ハ、明治四十四年十一月三十日迄ニ出品目録ヲ第四十六条・第四十七条又ハ第五十条ノ例ニ依リ地方長官又ハ事務局ニ差出スヘシ、地方長官ハ出品目録ヲ取纏メ前項期限後十日以内ニ事務局ニ送付スヘシ
第五十五条 出品人ハ陳列場所ヲ他人ニ譲渡又ハ貸与スルコトヲ得ス
      第二款 第三部及第四部ノ出品
第五十六条 第三部及第四部ノ物品ハ、別ニ定ムル規程ニ依ル鑑査ニ合格シタルニ限リ之ヲ出品スルコトヲ得
第五十七条 出品ヲ為サムトスル者ハ、明治四十四年五月三十一日迄ニ願書ヲ事務局ニ差出スヘシ
第五十八条 出品出願人ハ、鑑査ヲ受ケル為メ事務局ノ指定シタル期間内ニ其ノ出品ヲ指定ノ場所ニ差出スヘシ
第五十九条 事務局ニ於テ出品ヲ撮影シ、又ハ印刷シテ之ヲ発売スルモ、出品人之ニ対シ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得ス
第六十条 出品ニ要スル陳列箱若クハ陳列台ノ設備、及出品ノ陳列・装飾・売約・保管ハ事務局ニ於テ之ヲ為スヘシ、但シ第四部ノ出品ニ要スル陳列箱又ハ陳列台ノ調製費ハ出品人ノ負担トス
 第四部ノ出品ハ、出品人ニ於テ自費ヲ以テ其ノ陳列又ハ装飾ヲ為スコトヲ得、此ノ場合ニ於テハ事務局ノ指揮ヲ受クヘシ
     第三節 外国出品
第六十一条 出品ハ之ヲ採取・産出・加工・製作又ハ製造シタル地ニ依リ其ノ国籍ヲ定ム
第六十二条 左ニ掲クル出品ハ左ノ陳列館内ニ於テ之カ陳列場所ヲ配当ス
 一 第一部教育ノ出品              教育館内
 二 第二部学芸ノ出品              学芸館内
 三 第十三部化学工業・第十四部染織工業・第十五部製作工業・第十六部建築及室内装飾ノ出品                     工業館内
 四 第十七部中機械ノ出品            機械館内
 五 第十八部電気ノ出品             電気館内
第六十三条 外国ノ政府又ハ出品人団体ハ、前条ニ掲クル以外ノ出品ヲ陳列スル為メ自費ヲ以テ陳列館ヲ建設スルコトヲ得
 前項ノ陳列館ニハ前条ニ掲クル出品ト雖モ之ニ陳列スルコトヲ得
第六十四条 陳列場所ハ事務官又ハ出品人総代ニ之ヲ配当スヘシ
第六十五条 陳列館ノ敷地ニ対シテハ使用料ヲ徴収セス
第六十六条 陣列館ニハ事務局ノ指定スル設備ヲ為スヘシ
第六十七条 陳列場所配当ノ請求ハ、明治四十四年一月三十一日迄ニ之ヲ為スヘシ
 左ニ掲クル出品ニ付テハ其ノ品名・重量・陳列容積・動力ノ種類及
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数量等ヲ請求書ニ明示スヘシ
 一 鉅重ノ物品ニシテ特ニ基礎ノ構造ヲ要スルモノ
 二 機械ノ運転ニ動力ヲ要スルモノ
第六十八条 自費ヲ以テ建設スル陳列館ニ水・蒸汽・瓦斯又ハ電気ヲ要スル場合ニ於テハ、明治四十四年一月三十一日迄ニ其ノ種類、使用ノ目的及数量ヲ申出ツヘシ
第六十九条 事務官又ハ出品人総代ハ、明治四十四年十一月三十日迄ニ出品目録二通ヲ事務局ニ送付スヘシ
第七十条 出品ハ陳列館毎ニ各別ニ荷造ヲ為スヘシ
第七十一条 出品ニ関スル荷物ハ東京日本大博覧会事務局宛ト為シ、事務局ヨリ交付スル票紙ヲ之ニ貼附スヘシ
第七十二条 出品ニ関スル荷物ハ成ルヘク横浜税関ヲ経由スヘシ
    第三章 営業
第七十三条 会場内ニ於テ売店・展覧会・観物場・飲食店其ノ他ノ営業ヲ為サムトスル者ハ、別ニ定ムル規定ニ従ヒ事務局ノ免許ヲ受クヘシ
    第四章 入場及観覧
第七十四条 観覧時間ハ毎日午前八時ヨリ午後五時迄トス、但シ日曜日及大祭祝日ニ在リテハ陳列館外指定ノ場所ニ限リ午後十時迄入場ヲ許ス
 事務局ハ前項ノ日時ヲ変更シ、又ハ観覧若クハ入場ヲ停止スルコトアルヘシ
第七十五条 本会ノ入場券ハ一枚金二十銭トス
 日曜日及大祭祝日ノ入場券ハ一枚金三十銭トス
 土曜日ノ入場券ハ一枚金十銭トス
 毎月一日及十五日ノ入場券ハ、其ノ日カ日曜日ニ該当スルトキニ於テモ一枚十銭トス
 夜間開場ノ日ニ於ケル観覧時間後ノ入場券ハ一枚金十銭トス、但シ観覧時間内ニ入場シタル観覧者ニシテ引続キ場内ニ在ル者ハ本項ノ入場券ヲ要セス
 冷蔵庫ノ観覧ニ付テハ入場券ノ外観覧券ヲ要シ一枚金五銭トス、但シ日曜日及大祭祝日ニ在リテハ一枚金十銭トス
 水族館ノ観覧ニ付テハ観覧券ヲ要ス、其ノ料金ハ別ニ之ヲ定ム
 五歳未満ノ小児ハ入場券及観覧券ヲ要セス
    第五章 審査及褒賞
第七十七条 出品ハ総テ之ヲ審査ス
 外国出品又ハ官庁出品ニシテ予メ審査除外ノ請求アリタルモノニ付テハ、審査ヲ行ハサルコトヲ得
第七十八条 出品人ハ、前条第二項ニ掲クル場合ヲ除クノ外出品ノ審査ヲ拒ムコトヲ得ス
第七十九条 審査ハ類審査会議・部審査会議及高等審査会議ニ於テ之ヲ行フ
第八十条 審査会議ノ組織其ノ他審査ニ関スル規程ハ別ニ之ヲ定ム
第八十一条 参同国ノ事務官又ハ出品人総代ハ、別ニ定ムル所ニ依リ
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審査員ヲ選定シ事務局ニ通知スヘシ
第八十二条 審査用トシテ差出シ又ハ差出サシメタル物品ヲ消耗又ハ毀損スルモ、出品人ハ之ニ対シ損害賠償ヲ請求スルコトヲ得ス
第八十三条 褒賞ハ左ノ五種トス
  大賞牌
  金牌
  銀牌
  銅牌
  褒状
 前項ノ各賞牌ニハ証状ヲ添附ス
第八十四条 同一ノ出品人ニシテ同一部ニ於テ数個ノ褒賞ヲ受クヘキモノアルトキハ、賞牌ハ最高等ノモノ一個ヲ授与シ、其ノ他ニ対シテハ証状ノミヲ授与ス
第八十五条 出品ノ採取・産出・加工・製作又ハ製造ニ付其ノ技工・設計又ハ考案ニ協力シタル者ニ対シ、前二条ニ準シ褒賞ヲ授与スルコトアルヘシ
第八十六条 特ニ優秀ノ陳列装飾ヲ為シタル出品人ニ対シ、第八十三条ノ金牌・銀牌又ハ銅牌ヲ授与ス
第八十七条 審査又ハ褒賞ニ関シテハ、異議ノ申立ヲ為シ又ハ褒賞ノ授与ヲ拒ムコトヲ得ス