デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

2部 社会公共事業

1章 社会事業
3節 保健団体及ビ医療施設
6款 社団法人東京慈恵会
■綱文

第24巻 p.544-552(DK240063k) ページ画像

明治40年5月20日(1907年)

是日東京慈恵医院総会開催セラレ、改正定款ヲ可決ス。午後二時、皇后陛下行啓アリ、令旨ヲ賜ヒ、式後更ニ芝離宮ニ於テ会員一同ニ茶菓ヲ賜フ。栄一、夫人兼子ト共ニ奉迎ス。


■資料

明治四十年二月ヨリ同年七月三十一日マテノ慈恵院拡張ニ付おほえかき 写 (威仁親王妃慰子殿下御撰) 【○上略 一五月十七日香川大夫来邸、…】(DK240063k-0001)
第24巻 p.544-546 ページ画像

明治四十年二月ヨリ同年七月三十一日マテノ慈恵院拡張ニ付おほえかき 写 (威仁親王妃慰子殿下御撰)
                     (渋沢子爵家所蔵)
○上略
一五月十七日香川大夫来邸、高木ヨリ幹事参着順云々ノ件ヲ相談、宮殿下ヨリ御話シニナリ、宮中席次ト決定ス
一同廿日午後一時半慈恵院ニ臨ム、幹事・会員・有志者共三百名以上ニ達ス、慈恵院創立以来如斯盛会ハ始メテトノ事(総会切迫ニ成ルニ従ヒ、在来二百名ニタラヌ会員、幹事方奔走ノ結果ト 皇后陛下
 - 第24巻 p.545 -ページ画像 
ノ御威徳トニヨリ七百名余ノ入会者増加ナリ)幹事ノ出席者三拾名是亦初メテナリ、暫時休息ノ後、幹事一同・会員一同ヲ一室ニ集メ一同ニ向ヒ
一今般当院ノ事業拡張ニ付
 皇后陛下被為聞召金拾万円御下賜ノ御沙汰有之ニ付、一同ヘ披露ニ及ブ
                    東京慈恵医院
一今般其院拡張之趣
 皇后陛下被為聞召、御手許金ノ内ヨリ金拾万円下賜、患者費之内ヘ可差加旨御沙汰候条、此段相達候也
  明治四十年五月
              皇后宮大夫 子爵 香川敬三
 右ノ書付朗読セリ、終テ各員ニ向ヒ
一慈恵院拡張ニ付テハ、段々各幹事及ビ各会員等尽力ノ結果、会員モ追々多数ニ相成、本院ノ為結構ト存ス、尚ホ充分尽力致サレ、事業ノ完全ヲ期セン事切望スル次第テアル
一又拡張ニ付本院ヲ社団法人ト為スノ必要ヲ認メ、定款改正ハ是ニ相伴フ事故諸子ヘ配布セシガ、別段異存ナケレバ其通リニ致スベシ、然シ何ニカ気付ノ事モアラバ、遠慮ナク申出テラレタシト言ヒタリ
一院長曰ク、只今幹事長殿下ヨリ御沙汰ノ如ク、異存アレバ此処ニテ申出アリ可シ、如何ト一同ニ向ヒ諮問シ、且曰ク、此定款ハ穂積博士ノ草按ニ成リタルモノニテ、成ルヘクハ是ニ決定致シタシ、ト陳述ス
一一同異存ナキ旨ヲ述フ、是ニテ会議結了ス
一本日慈恵院ヘ大倉・近藤・原・安田・早川・森村ノ妻御用召ニテ出頭、右ハ香川大夫ヨリ夫々エ通知セシ事、森村ノ妻ヲ除ク外来会ス
一幹事一同ヲ別室ニ招キテ曰ク、本日総会結了後本院ヨリ芝離宮ヘ
 皇后陛下御立寄在ラセラレ、同所ヘ幹事長ヲ初メ幹事・会員一同有志者参入ヲ許サレ茶菓ヲ賜ハル、就テハ例年ハ幹事ノミ召サレ、休所モ自分ト幹事ト同室ナレトモ、此度ハ会員モ多数参入ノ事故、宮内省ニテ充分会員ニモ満足ヲ与ヘ兼ヌル場合ナキニシモアラズト考ヘルカラ、ドウゾ幹事方会員ノ世話可被成依頼ス、故ニ休所モ会員ト別室ニナレバ自然不便ト存ジ、便宜上会員ト同室ニ休所ヲ致ス事御承知アリ度ト陳述ス
一幹事一同異議ナク承諾ス
一此日宮殿下モ本院ヘ御出席、名誉会員各宮妃モ御出席ニナル
一午後二時過御出門ニテ
 皇后陛下慈恵院ヘ行啓在ラセラル、一同御車寄ニ奉迎、幹事長・院長御先導便殿ヘ着御、幹事長拝謁、引続キ幹事一同・院長・次長等有志者ヘ拝謁、右畢テ御用召ニ成リシ大倉・原・近藤・早川・安田ノ妻拝謁、御前ニ於テ香川大夫ヨリ幹事ニ仰付ラルヽ辞令書ヲ手渡シタリ、暫時御休息ノ後式場ヘ臨御、幹事長・院長御先導、親王並ニ妃扈従、是ヨリ先参会諸員着席ス、院長例年ノ通リ報告書奉呈、其要領ヲ報告ス、右畢テ
 - 第24巻 p.546 -ページ画像 
 皇后陛下御令旨御朗読
一御令旨 本日慈恵院総会ニ臨ミ親シク各員ヲ見テ喜ブ、各員当院ノ拡張事業ニ尽力セラルヽヲ聞キ喜バシク存ズ
一陛下御令旨ヲ幹事長ヘ御手渡シニナル、幹事長奉答
一玆ニ慈恵院総会ニ当リ 皇后陛下親臨ヲ辱フシ優渥ナル令旨ヲ賜フ慰子等感激ノ至リニ堪ヘズ、爾後益々奮励慈善事業ノ完全ヲ図リ、以テ陛下ノ令旨ニ副ヒ奉ラン事ヲ期ス、謹テ奉答ス
  明治四十年五月廿日
               慈恵医院幹事長威仁親王妃
                     勲一等 慰子
一右朗読後院長、卒業看護婦ニ卒業証書ヲ授与ス、是ニテ式終リ、幹事長・院長御先導便殿ヘ入御、夫ヨリ女官御名代トシテ各病室巡回患者一同ヘ御菓子料、子供ヘハ玩具ヲ賜フ、例年ノ通リ本院ヘハ五百円下賜相成リタリ
一四時過本院還啓、直ニ芝離宮ヘ行啓、還御奉送等ハ臨御ノ時ノ如シ
一本院還啓後、引続キ宮殿下ヲ始メ各妃・幹事・会員・有志者一同・院長・次長等召サレタリ、但シ会員ハ参入ト云フ
一芝離宮ニ於テ会員一同御庭ニ整列、其所ヲ 皇后陛下御通過、香川大夫ヨリ会員ニ向ヒ、今日各位参ラレ 陛下御満足トノ事ヲ述ブ、陛下御通過後、洋館・御庭等ニテ茶菓ヲ随意ニ賜ハリ、又随意御庭拝観ヲ許サレタリ、別段ニ紅・白・桃色御紋章三種ウチ物ノ菓子三個ツヽ賜ハル、皇族方ハ日本建物別室ニテ茶菓ヲ賜ハル
一皇后陛下ハ午後五時頃離宮ヨリ還啓、奉送ハ皇族方ノミナリ、還啓後各員ニハ随意退散セリ
一皇后陛下還啓後引続キ参内拝謁、慈恵院ヘ行啓、院ヘ五百円、患者ヘ下賜金、又幹事長・幹事・院長・次長・会員・有志者一同ヲ芝離宮ヘ召サレ茶菓ヲ賜ハリシ事、本院ニ残レル看護婦一同、其他関係者ニモ茶菓ヲ賜ハリシ事、此度特ニ拾万円下賜、新幹事拝命ノ御礼併セテ言上ノ上退出ス
○下略


渋沢栄一 日記 明治四〇年(DK240063k-0002)
第24巻 p.546 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四〇年       (渋沢子爵家所蔵)
五月二十日 晴 暑             起床七時 就蓐十一時三十分
○上略 午飧畢テ後兼子ト同伴シテ午後一時三十分慈恵医院ニ抵リ
皇后陛下ノ行啓ヲ奉迎ス、式畢テ芝離宮ニ於テ茶菓ヲ賜ハル、午後六時頃帰宿ス
   ○中略。
六月一日 晴 暑              起床七時 就蓐十二時
○上略 午後一時半有栖川宮邸ニ伺候ス、両殿下ニ謁シ慈恵医院ノ事ヲ上申ス ○下略


(八十島親徳) 日録 明治四〇年(DK240063k-0003)
第24巻 p.546-547 ページ画像

(八十島親徳) 日録  明治四〇年   (八十島親義氏所蔵)
五月廿日 晴
○上略
 - 第24巻 p.547 -ページ画像 
徳子 ○親徳夫人ハ本日慈恵医院総会ニ出席、綱町令夫人 ○渋沢篤二夫人ニ誘ハレ馬車ニ同乗ス、皇后陛下臨場アリ、式後芝離宮ニ於テ陛下親臨一同ヘ茶菓飲物等御饗応アリシトイウ


東京慈恵会総裁威仁親王妃慰子殿下御事蹟 東京慈恵会編 第五六―六三頁 大正一五年六月刊(DK240063k-0004)
第24巻 p.547-548 ページ画像

東京慈恵会総裁威仁親王妃慰子殿下御事蹟 東京慈恵会編
                           第五六―六三頁 大正一五年六月刊
    其四 威仁親王妃慰子殿下と東京慈恵医院の拡張
○上略 皇后陛下の行啓は殆ど毎年の恒例なれども、この度は医院拡張事業進行の時に会せるを以て、その意義特に重大なるものあり。是に於て幹事長慰子殿下は例に依り総会開催に就き予め御内意を伺ひしに五月九日附を以て同月二十日行啓の旨御沙汰あり。また之に附加して
  追テ総会後芝離宮ヘ御立寄慈恵医院幹事・同医院長・次長及会員一同並慈恵院拡張ニ付尽力ノ有志者等ヘ同離宮ニ於テ茶菓被下候筈ニ付此旨一同ヘ御通知置相成度(下略)
との御達示あり。同日慰子殿下は参内して 皇后陛下の御前において新幹事四名の辞令書御下附に陪侍し、十日また参内して慈恵医院拡張の経過を上申し、二十日の総会に臨ませたまひたり。
 この総会は最も記念すべき空前の盛会なりき。慰子殿下は「おほえかき」の中に、その状況に就て「午後一時半慈恵医院に臨む。幹事・会員・有志者等すべて三百名以上に達す、慈恵院創立以来此の如き盛会は始めてとのことなり ○中略」との旨を記されたり。殿下の御熱誠が能く衆を感動せしめたる結果なりといふべし。暫時休息の後、殿下は幹事一同・会員一同を一室に集め、左の御沙汰書を朗読して皇后陛下の恩命を伝へたまひたり。
                    東京慈恵医院
  今般其院拡張之趣 皇后陛下被為聞召御手許金ノ内ヨリ金拾万円下賜、患者費之内ヘ可差加旨御沙汰候条、此段相達候也
   明治四十年五月    皇后宮大夫 子爵 香川敬三
総員起立感激の裡に、殿下は更に語を継がせたまひ「慈恵医院拡張に就いては、各幹事及び各会員等段々尽力の結果、会員も追々多数となり、本院のため結構と思ふ。尚十分尽力せられ、事業の完全を期せんことを切望する次第なり。また拡張に就いて、本院を社団法人となすの必要を認め、之に伴ふ改正定款の草案を諸子に配布したるが、別段異存なくばその通りに致すべし。何か気付の事もあらば遠慮なく申出でられたし」と仰せられ、高木院長尚少しく之を説明せしに、一同異存なき旨を述べて玆に定款を可決したり。尋で殿下は幹事一同を別室に招き、「本日総会結了の後 皇后陛下は本院より芝離宮に御立寄りあらせられ、同所へ幹事長はじめ幹事・会員一同・有志者の参入を許され茶菓を賜はる筈なり。就いては例年幹事のみ召され、休憩所は自分と幹事と同室なる前例なれど、この度は会員も多数参入すること故宮内省にて会員に十分の満足を与へ兼ぬる場合なきにしもあらずと考へらる。何卒成るべく会員を世話するやう幹事に依頼す。由つて休憩所も会員と別室にならば自然不便なるべく、便宜上之を会員と同室に致すこと承知ありたし」と仰せらる。殿下の御配慮の周密なること、
 - 第24巻 p.548 -ページ画像 
概ね此の如し。幹事一同今更の如く感佩し、謹みて仰せに従へり。
 皇后陛下は当日午後二時過御出門にて、東京慈恵医院に行啓あらせられたり。一同御車寄に奉迎、高木院長御先導、便殿に着御、殿下先づ拝謁次に御用召に成りし大倉・原・近藤・早川・安田諸夫人拝謁し御前において香川皇后宮大夫より幹事に仰付らるる辞令書を拝受す。
陛下には暫時御休憩の後式場に臨ませらる。高木院長御先導、幹事長殿下・威仁親王殿下・載仁親王妃智恵子殿下・菊麿王妃常子殿下・依仁親王妃周子殿下扈従しまゐらす。是より先き、参会諸員着席、高木院長例年の如く報告書を奉呈し、その要領を報告し奉る。右畢つて 陛下には左の令旨を御朗読あらせらる。
 本日慈恵医院総会ニ臨ミ親シク各員ヲ見ルヲ喜ヒ各員当院ノ拡張事業ニ尽力セルヲ聞キ喜ハシク存ス
幹事長殿下は親しく令旨を拝受し、謹で奉答しまゐらす。
  玆ニ慈恵医院総会ニ当リ
  皇后陛下ノ親臨ヲ辱ウシ優渥ナル令旨ヲ賜フ、慰子等感激ノ至リニ堪ヘス、爾後益奮励慈恵事業ノ完全ヲ図リ、以テ令旨ニ副ヒ奉ランコトヲ謹テ奉答ス
             東京慈恵医院幹事長威仁親王妃
   明治四十年五月二十日        勲一等 慰子
式後患者一同に御菓子料、子供には玩具を賜はり、また例年のごとく医院に金五百円御下賜あり。四時過還啓、芝離宮に行啓、宮殿下・各宮殿下・幹事長殿下・院長・次長、御召を蒙り、会員亦参入す。香川皇后宮大夫会員一同に向ひ「今日各位参られ 陛下御満足」とのことを述ぶ。午後五時頃 陛下離宮より還啓、一同随意退出す。慰子殿下は引続き参内拝謁して本日の御礼を言上せらる。此の如くして殿下が最も御心を労したまへる意義深き総会は、十二分の成功を収めて終りを告げたり。
○下略


東京慈恵会定款 第一―一二頁 刊(DK240063k-0005)
第24巻 p.548-552 ページ画像

東京慈恵会定款  第一―一二頁 刊
    皇后陛下の令旨
やまひは万のくるしみを生するものにして、その不幸は富貴なる人も同しことなから、分てまつしきは病にかゝりても医師の治療を受ることを得さるによりて、いゆへき病も終にいえす、その身はもとより妻子まても不幸に陥るにいたる、まことに哀むへきものなり、されは我祖宗は夙にかゝる不幸の民をすくふことをつとめ給ひ、施薬院を設けて普く疾病のものをすくひ養ふへき所となし給ひ、天平宝字元年勅して越前国の墾土一百丁を以て施薬院に附し、朕と衆生と永く病苦の憂を減し共に延寿の楽を保たん、とねかひ給ひしは実に難有御事と申すへし、今や百事祖宗の遺意に法り泰西の文物をもとりもちひ給ふときにあたりて、いまた充分に貧者に施薬する設なきは常に憾とする所なりしに、頃ろ婦人慈恵会委員上奏して、有志共立東京病院を更に一層拡張し、余か眷護の下に置んとこふ、余はなはたこれをよみす、しかるに今はいにしへと事かはり、かゝることにまて国庫の財を費すを得
 - 第24巻 p.549 -ページ画像 
されは、広く有志のちからによりてこれを維持する様なさゝるへからす、これ上下慈善をともに施すものにして、余かはなはた楽しむ所なり、よりて先若干金を寄附して東京慈恵医院の費に供せしむ、朝野慈善の婦人およひ群臣民、よく此旨を体して各応分の寄附をなし、以て天平宝字の勅の如く、永く病苦の憂を減し共に延寿の楽を保たしむへき仁恵をなさんことを望む
  明治二十年四月廿六日

                      東京慈恵医院
 今般其院拡張之趣
 皇后陛下被為聞召御手許金之内ヨリ金拾万円下賜、患者費之内ヘ可差加旨御沙汰候条、此段相達候也
  明治四十年五月
              皇后宮大夫 子爵 香川敬三

    東京慈恵会定款
東京慈恵医院ハ明治十五年ノ創立ニ係ル施療医院ニシテ
皇后陛下慈仁ノ懿旨ヲ奉シ
陛下ノ至高至貴ナル眷護ノ下ニ其事業ヲ経営スルコト玆ニ年アリ、今ヤ時勢ノ進運ハ其規模ノ拡張ヲ促スニ至レルヲ以テ、其会員ノ組織ヲ改メテ東京慈恵会ヲ設立シ、之ヲ社団法人ト為シ、倍々其基礎ヲ永遠ニ鞏固ナラシメンコトヲ希図シ、玆ニ定款ヲ作リテ左ノ条項ヲ定ム
      一 目的及事業
第一条 本会ハ貧困ニシテ医薬ヲ得ル資力無キ病者ノ施療、及中産階級以下ニ対スル救療ヲ行フヲ目的トシ、且医学ニ関スル高等教育機関並看護婦教育所ヲ設ケ、医員及看護婦ヲ養成ス
 前項ノ目的ヲ達スル為メ施療並救療ヲ為ス医院ヲ置キ、之ヲ東京慈恵会医院ト称ス
      二 名称
第二条 本会ノ名称ハ東京慈恵会トス
      三 事務所
第三条 本会ノ事務所ハ東京市芝区愛宕町二丁目八番地ニ之ヲ置ク
      四 資産
第四条 本会ノ資産ハ左ノ如シ
  一 帝室ノ恩賜金
  二 本会ノ所有ニ属スル動産・不動産及ヒ之ヨリ生スル収入金
  三 会費及ヒ有志者ノ寄附又ハ遺贈ニ係ル金員及ヒ物品
  四 附属医学専門学校ノ特別収入金及ヒ特別指定寄附又ハ遺贈ニ係ル金員及ヒ物品
  五 附属看護婦教育所ノ特別収入金及ヒ特別指定寄附又ハ遺贈ニ係ル金員及ヒ物品
  六 其他事業ニ依リ生スル収入金
第五条 前条第一号乃至第三号ノ資産、第四号・第五号及第六号ノ資産ハ各別ニ之ヲ管理シ、互ニ之ヲ流用スルコトヲ許サス
 - 第24巻 p.550 -ページ画像 
第六条 本会資産ノ管理ニ関スル規則ハ別ニ之ヲ定ム
      五 総裁及ヒ職員
第七条 本会ハ
 皇后陛下ノ御特選アラセラレタル皇族ヲ推戴シテ総裁トス
第八条 本会ニ左ノ職員ヲ置ク
  理事       二十五名以内
  評議員      若干名
  会長       一名
  副会長      一名
  書記長      一名
  書記       若干名
 東京慈恵会医院ニ左ノ職員ヲ置ク
  医院長      一名
  医院次長     一名
  商議医員     若干名
  医員       若干名
  薬局員      若干名
  看護婦取締    一名
  看護婦長     若干名
  書記       若干名
 附属医学専門学校及ヒ附属看護婦教育所ノ職員ニ関スル規則ハ別ニ之ヲ定ム
第九条 本会ニ顧問若干名ヲ置クコトヲ得
 顧問ハ総裁ノ諮詢ニ依リ意見ヲ陳述ス
第十条 理事ハ総裁ノ奏請ニ依リ
 皇后陛下ノ旨ヲ奉シテ総裁之ヲ任免ス
 理事ハ名誉職トス
第十一条 会長・副会長・医院長・医院次長ハ理事ノ中ヨリ之ヲ選任シ、其選任ハ顧問及ヒ商議医員ノ選任嘱託ト共ニ理事ノ例ニ依ル
第十二条 評議員任免ノ方法ハ別ニ之ヲ定ム
第十三条 会長ハ理事会ノ会長ト為リ、総裁ノ命ヲ受ケテ法人ノ事務ヲ総理ス
第十四条 副会長ハ会長ヲ補佐シ、会長差支アル場合ニ於テハ其職務ヲ代理ス
 副会長ハ特ニ本会ノ財務主任トシテ本会一切ノ会計事務ヲ掌理シ、本会ノ資産ヲ管理シ、其出納ヲ監督ス
第十五条 医院長ハ治療及ヒ医院一切ノ事務ヲ掌理ス
 医院次長ハ医院長ヲ補佐シ、医院長差支アル場合ニ於テハ其職務ヲ代理ス
第十六条 商議医員ハ医院長ノ諮詢ニ依リ意見ヲ陳述ス
第十七条 書記長及医院以下ノ任免嘱託ハ会長之ヲ行フ、但医院ニ専属スル職員ノ任免嘱託ハ医院長ノ推薦ニ依ル
      六 社員
第十八条 本会ノ社員ハ左ノ五種ノ会員トス
 - 第24巻 p.551 -ページ画像 
  一 正会員
  正会員ハ会費トシテ毎月金壱円乃至五円ヲ納ムルモノトス
  正会員ハ婦人ニ限ルモノトス
  二 賛助会員
  賛助会員ハ会費トシテ毎年金拾円乃至百円ヲ納ムルモノトス
  賛助会員ハ男子ニ限ルモノトス
  三 終身会員
  終身会員ハ一時ニ金五百円以上寄附シタル者、又ハ正会員及ヒ賛助会員ニシテ会費ノ納額金五百円ニ達シタル者ヨリ之ヲ推選ス
  四 有功会員
  有功会員ハ一時ニ金壱千円以上ヲ寄附シタル者、又ハ終身会員ニシテ納額金壱千円ニ達シタル者ヨリ之ヲ推選ス
  五 名誉会員
  名誉会員ハ総裁ノ奏請ニ依リ
   皇后陛下ノ旨ヲ奉シテ皇族中ヨリ総裁之ヲ推挙ス
  正会員及ヒ賛助会員ノ入会及ヒ退会ハ、理事ノ議ヲ経テ会長之ヲ承認ス
  有功会員及ヒ終身会員ノ選定ハ、理事ノ推薦ニ依リ、総裁之ヲ認可ス
第十九条 会員ハ別ニ定ムル規則ニ従ヒ、第一条ニ該当スル病者ヲ医院ニ紹介シテ其治療ヲ請フコトヲ得
      七 評議会
第二十条 本会ニ評議会ヲ置キ理事及評議員ヲ以テ之ヲ組織ス
第二十一条 評議会ノ議事ニ関スル規則ハ別ニ之ヲ定ム
      八 総会
第二十二条 会員ノ通常総会ハ毎年一回之ヲ開ク、但理事ニ於テ必要ト認ムルトキハ臨時総会ヲ招集スルコトヲ得
第二十三条 総会ハ総裁ノ命ヲ受ケテ会長之ヲ招集ス、総会ノ招集及ヒ会議ノ目的タル事項ノ通知ハ、少ナクトモ五日前ニ之ヲ為スモノトス
第二十四条 総会ノ議事ハ会長ヲ以テ其議長トス
第二十五条 総会ノ議事ハ出席会員ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス、但可否同数ナル場合ニ於テハ議長ノ決スル所ニ依ル
第二十六条 総会ニ出席セサル会員ハ、書面ヲ以テ表決ヲ為シ又ハ代理人ヲ出スコトヲ得ス
      九 附則
第二十七条 本会ハ法定ノ解散事由アルニ非ラサレハ解散スルコト無シ、解散ノ議決ハ総会員ノ四分ノ三ノ同意アルコトヲ要ス
第二十八条 本会ノ定款ハ評議会ノ議決ヲ経ルニ非ラサレハ之ヲ変更スルコトヲ得ス
      十 補則
第二十九条 第一条第二項ニ規定スル中産階級以下ニ対スル救療方法ハ、入院診療及外来診療ノ二種ニ分チ、左ノ費用ノ限度内ニ於テ患者ヨリ徴収ス
 - 第24巻 p.552 -ページ画像 
  入院診療
   一室料     一日  壱円
   一寝具料    一日  参拾銭
   一食費     一日  六拾銭
   一雑費     一日  参拾銭
   一分娩手数料      参円
  外来診療
   一調剤手数料  一日  拾銭