デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

2部 社会公共事業

3章 道徳・宗教
5節 修養団体
2款 講道館
■綱文

第26巻 p.476-486(DK260076k) ページ画像

明治42年5月30日(1909年)

是ヨリ先、嘉納治五郎経営ニ係ル講道館ハ組織ヲ改メテ財団法人ト為シ、寄附行為ノ認可ヲ受ク。栄一推サレテ監事トナル。是日、下富坂講道館ニ於テ理事及ビ監事相会シテ維持経営ニ関スル寄附
 - 第26巻 p.477 -ページ画像 
行為ヲ協議ス。


■資料

渋沢栄一 日記 明治四二年(DK260076k-0001)
第26巻 p.477 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四二年     (渋沢子爵家所蔵)
五月三十日 晴 暑
○上略 午前十時講道館ニ抵リ、嘉納氏ノ依頼ニ応シテ館ノ維持ニ関スル寄附行為ノ事ヲ協議ス○下略


財団法人講道館本部記録 壱(DK260076k-0002)
第26巻 p.477-478 ページ画像

財団法人講道館本部記録 壱         (財団法人講道館所蔵)
    明治四十二年五月記
講道館ハ従来嘉納師範一個ノ経営ニ為リ来リシトコロ、世運ノ進歩ト共ニ社会公共的ノモノトナシ、益柔道ノ発展普及ヲ計ル目的ヲ以テ、師範卒先シテ金壱万円ヲ提出シテ財団法人講道館ノ設立者ト為リ、明治四十二年四月十日ヲ以テ其設立認可ヲ文部大臣ニ申請セリ
五月三日財団法人講道館ノ寄附行為ヲ文部大臣ヨリ認可サル
五月廿七日東京区裁判所ニ於テ法人登記ヲ為ス
設立者ハ寄附行為第廿一条ニ拠リ、理事ニ自己ノ外若槻礼次郎・矢作栄蔵両氏ヲ、監事ニ男爵渋沢栄一・柿沼谷蔵両氏ヲ選定シ其承諾ヲ得タリ
関順一郎ヲ事務長ニ、水落正野氏ヲ事務員ニ任用セリ
五月三十日午前十時下富坂講道館ニ於テ理事監事会ヲ開ク、役員悉ク出席シ、嘉納設立者ヨリ認可ヲ得タル財団法人寄附行為ヲ提示シ、従来ノ沿革ヲ説キ、且ツ既往収支ノ不足ハ毎ニ自分ニ於テ補足シ来リタルコトヲ説明シ、法人成立ノ上ハ下富坂・開運坂二道場及附属家屋附属物品ヲ法人ニ譲渡シ、法人ニ於テ経営アリタキ旨ヲ宣明シ、一同ノ同意ヲ得タリ、其明細左ノ如シ
      講道館道場及附属建物並備品

        円
 金一一、六七八・三八〇  下富坂道場百六十四坪弐合五勺内二階十三坪五合
         円
    二、三八五・〇〇〇  旧道場七十九坪五合 坪三十円
    八、七〇三・弐三〇  新道場建築費
 内訳   三六三・一〇〇  表門及板塀
       三八・六三〇  垣根
      一八八・四弐〇  修繕費
       円
 金一、五五〇・〇〇〇  下富坂町十八番地所在家屋一棟 三十一坪内二階二十四坪 坪五十円
 金一、四五〇・〇〇〇  同町十九番地所在家屋一棟 二十九坪内二階十二坪五合 坪五十円
 金  三八弐・〇〇〇  同町十八番地所在平家建一棟 十二坪七合五勺 坪三十円
 金一、七弐九・一八五  開運坂道場七十九坪五合
    一、弐九一・五〇〇  同移築費
 内訳
      四三七・六八五  同家根模様替費用
 金  四五七・一〇〇  下富坂道場畳弐百五十三畳
 金  弐弐六・二四〇  開運坂道場畳
 金  四五〇・〇〇〇  装飾品屏風・額・掛物類
            円
  合計金 一七、九弐三・五〇五

 此外附属器具類ハ寄附
既ニ寄附セラレタルモノ及此日新ニ寄附申出テラレタルモノ左ノ如シ
 - 第26巻 p.478 -ページ画像 

  金壱万円 設立者トシテ提出      嘉納治五郎
  金弐千円 既ニ寄附済         柿沼谷蔵
  金弐千円               渋沢栄一
  金参百円               若槻礼次郎
  金参百円               矢作栄蔵

当日ハ猶ホ寄附行為第十一条ニ依リ、設立者ニ於テ先ツ維持員五十名ヲ指名シ評議員ヲ選出シテ、寄附金募集ニ着手スル事
寄附金募集方法ハ講道館ニ直接ノ関係ヲ有スルモノヲ先キニシ、漸次世間ノ同情者ニ及ホス事、寄附金払込年限ハ五年以内トスル事、金千円以上ヲ寄附シタルモノハ縦令完納ニ至ラストモ維持員ト為ス事等ヲ決議サル


財団法人講道館寄附金申込簿 第一 自明治四二年四月至大正元年一〇月(DK260076k-0003)
第26巻 p.478 ページ画像

財団法人講道館寄附金申込簿 第一  自明治四二年四月至大正元年一〇月
                     (財団法人講道館所蔵)
   月日       摘要   申込額  払込額    残額
 四十二年四月十日 嘉納治五郎殿 金壱万円 金壱万円     ○相済
 五月三十日    柿沼谷蔵殿  金弐千円 金弐千円 一時寄贈○相済
 五月三十日    渋沢栄一殿  金弐千円
 六月三日                 金弐千円 一時寄贈○相済
 五月三十日    若槻礼次郎殿 金参百円
 十一月七日                金参百円 一時寄贈○相済
○下略


財団法人講道館書類(DK260076k-0004)
第26巻 p.478-483 ページ画像

財団法人講道館書類            (財団法人講道館所蔵)
 予ハ夙ニ柔道ニ志シ、其身体ヲ鍛練シ精神ヲ修養スルニ資スルコトノ甚ダ大ナルヲ自覚スルヤ、明治十五年始メテ講道館ヲ開キ子弟ニ之ヲ教授セリ、抑古来ノ柔術ハ各流互ニ其趣旨ヲ異ニシ、各長所ナキニアラズト雖、一流ヲ以テ全長ヲ兼ヌル者ナク、而シテ其目的トスル所モ亦主トシテ攻撃・防禦ノ法ヲ講スルニアリタレバ、予ハ之ニ満足スル能ハズ、更ニ柔道ニ一段深遠ナル意義ヲ附与スベキヲ思ヒ、潜思熟慮専ラ重キヲ身体精神ノ鍛練ニ置キテ特別ノ工夫ヲ廻ラシ、一流ニ泥マスシテ各流ノ長ヲ採リ、又新ニ研究ヲ重ネテ幾多ノ機軸ヲ出シ、所謂講道館柔道ヲ創始シタリ、当初ハ来リテ教ヲ乞フ者甚ダ鮮ク一年僅ニ八九人ニ止マリ、十九年ニ至ルモ猶一年間九十八人ノ入門者アルニ過ギザリシガ、年ヲ逐フテ講道館柔道ノ真価ハ、漸ク世人ニ認識セラレ、其普及発達ハ幸ニ国運ノ隆昌ニ伴ヒ、今ヤ直接予カ門ニ入レル者一万以上ニ及ビ、間接ノ門人ハ国ノ内外ニ亘リテ数十万ヲ算シ、時運ノ趨勢ハ益其発達ヲ促進シテ已マサラントスルニ至レリ、今後本館ノ拡張ヲ図リ柔道ノ普及ヲ完ウセントスルニハ、益之カ研究ヲ進メ教育ノ方法ヲ整備スルト同時ニ、優秀ナル教師ヲ養成シテ各方面ノ招聘ニ応ジ、且ツ各地ニ於ケル教師ノ監督及ビ指導ノ方法ヲ講シ、其機関ヲ設クル等、百般ノ設備ヲ為サヾルベカラズ、是レ実ニ予一個ノ経営ノ能クシ難キ所タリ、故ニ予ハ衆人ノ力ヲ協セ以テ予期ノ結果ヲ収メントシ、別紙ノ如ク寄附行為ヲ定メ政府ノ認可ヲ得テ、講道館ヲ財団法
 - 第26巻 p.479 -ページ画像 
人トセリ、今ヤ本館ハ規定ニ基キ已ニ役員ノ選定ヲ了セルヲ以テ、是ヨリ進デ将ニ其目的ヲ遂行セントス、世ノ有志諸君幸ニ本館従来ノ成績ニ徴シ、其国家社会ニ益スル所アルヲ諒シ給ハヾ、冀クハ予ノ衷情ニ賛襄アランコトヲ
  明治四十三年十一月  財団法人講道館長 嘉納治五郎

昨年嘉納講道館長ハ自ラ壱万円ヲ出シ、其独力経営ニ係ル講道館ヲ財団法人ト為シ、下名等ハ其事業ニ干与スルコトヲ快諾セリ、今般同館寄附行為ニ基キ大方ノ賛成寄附ヲ請フニ当リ、聊カ微衷ヲ述ベントス抑講道館ハ明治十五年六月五日東京市下谷区北稲荷町永昌寺内ニ館長ノ創メテ開キシモノニシテ、昨年ニ至ルマデ実ニ満二十七年ノ経営ヲ積メリ、館長ハ幼時蒲柳ノ質ナリシガ、柔道ヲ練習シテヨリ其体格全ク一変シ強壮別人ノ如クニ至リシヨリ、柔道ノ体力養成ニ適切ナルヲ知ラレタルノミナラズ、鍛練ノ結果ハ人ヲシテ剛毅・果断・堅忍・重厚ナラシムベキヲ感セラレ、即チ単ニ攻撃防禦ノ術トシテ教フルニ止マラズ、身心鍛練ノ方法トシテ広ク世ニ伝ヘント尽力セラレタルモノナリ、然レドモ其当初ニ在リテハ恰モ旧物破壊ノ時代ニ際シ、古来ノ柔術ノ如キ復之ヲ顧ミル者ナク、世人ノ軽侮亦甚ダシカリシガ、館長ノ苦心尽力ニ依リテ漸ク其真価ヲ発揮シ、逐年発達シテ遂ニ今日ノ隆盛ヲ見ルニ至レルナリ、実ニ館長ハ自ラ柔道ヲ研究シテ之ヲ大成シ、更ニ自ラ之ヲ教導シテ天下ニ弘布シ、而シテ満二十七年間毫モ他人ノ出資ヲ仰ガズ、入門者ノ謝儀ヲ徴セズ、独力以テ一切ノ経営ヲ支弁シ以テ之ガ発達普及ニ任ジタルナリ、其苦心実ニ想フベシ、且ツ夫レ講道館ノ目的トスル所ハ啻ニ体力ヲ養成スルノミナラズ、青年ノ志気ヲ鼓舞シ一世ノ風尚ヲ刷新スルニアリ、今ヤ文弱奓侈漸ク風ヲ為スノ傾向アルトキニ当リ本館ガ卓然トシテ流俗ノ表ニ立チ、独リ其青年ヲシテ質素ヲ守リ勤倹ヲ尚ビ堅実ノ志操ヲ磨キ敢為ノ精神ヲ養ヒ、以テ世ノ実務ニ当リ生存競争場裏ノ優勝者タラシメツヽアルコトハ、従来ノ歴史ノ明証スル所ナリ、而シテ今後本館所期ノ目的ヲ達セントセバ、更ニ大ニ規模ヲ拡張シ諸般ノ設備ヲ為サヾルベカラズ、是レ館長並ニ下名等ノミノ能クスル所ニアラズ、幸ニ大方ノ深厚ナル同情ヲ得、発展普及ノ目的ヲ達スルヲ得バ、其国家社会ヲ益スルコト決シテ尠少ナラザルベシ、冀クハ寄附規約ニ準シ本館ノ事業ニ賛助セラレンコトヲ
  明治四十三年十一月
               財団法人講道館理事 若槻礼次郎
               同         矢作栄蔵
               同監事    男爵 渋沢栄一
               同         柿沼谷蔵
               同維持員兼評議員  飯塚国三郎
               同         本田存
               同         床次竹二郎
               同         横山作次郎
               同         竹内平吉
               同         財部彪
 - 第26巻 p.480 -ページ画像 
               同         田中銀之助
               同         南郷次郎
               同         長島隆二
               同         潮田方蔵
               同         内田良平
               同         有働良夫
               同         山下義韶
               同         山之内一次
               同         小林源蔵
               同      男爵 阪谷芳郎
               同         佐藤達次郎
               同      子爵 樋口誠康
               同維持員      磯貝一
               同         花房太郎
               同         伴直之助
               同         本田増次郎
               同         本田親民
               同         李家隆介
               同         大島英助
               同         嘉納徳三郎
               同         川合得二
               同         吉岡範策
               同         永岡秀一
               同         南郷三郎
               同         中村愛作
               同         宗像逸郎
               同         宇佐美敬三郎
               同         野口弥三
               同         八代六郎
               同         松方五郎
               同      子爵 有馬純文
               同         荒井賢太郎
               同         尼野源二郎
               同         佐藤法賢
               同         溝淵進馬
               同         志立鉄次郎
               同         篠田治策
               同         広田弘毅
               同         広岡恵三
               同         土方久路
               同         杉村陽太郎
               同         鈴木馬左也
                          (イロハ順)

 - 第26巻 p.481 -ページ画像 
    財団法人講道館寄附行為
第一条 本財団ハ日本柔道ノ発達普及ヲ図リ、国民ノ身心鍛錬ニ資スルヲ以テ目的トス
第二条 本財団ハ之ヲ講道館ト称ス
第三条 本財団本部ノ事務所ハ之ヲ東京市小石川区大塚坂下町百十四番地ニ置ク、尚必要ニ応ジ内外各地ニ支部ノ事務所ヲ置ク
第四条 本財団ノ資産ハ、別表ニ掲ゲタル設立者ノ寄附財産、設立後第三者ノ寄附ニ係ル財産、及ビ其ノ他ノ収入ヲ以テ之ヲ組織ス
第五条 本財団ニ理事三人ヲ置キ、其一人ヲ講道館長ト称ス
第六条 講道館長ハ維持員会ニ於テ之ヲ選挙シ、其ノ任期ヲ七年トシ本財団ノ事務ヲ総裁ス、其ノ他ノ理事ハ評議員会ニ於テ之ヲ選挙シ其ノ任期ヲ三年トス
第七条 本財団ニ監事二人ヲ置ク
第八条 監事ハ評議員会ニ於テ之ヲ選挙シ、其ノ任期ヲ三年トス
第九条 本財団ニ評議員二十人ヲ置ク
第十条 評議員ハ維持員中ヨリ之ヲ互選シ、其ノ任期ヲ六年トシ、三年毎ニ其半数ヲ改選ス 但シ最初ニ改選スベキ半数ノ評議員ニ限リ其ノ任期ヲ三年トシ、抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第十一条 本財団ニ維持員ヲ置キ、左ニ掲ケタル者ヲ以テ之ニ充ツ
 一 設立者
 二 設立者ガ指名シタル者五十名 但シ欠員ヲ生ジタル時ハ本項ノ維持員ノ会議ニ於テ之ヲ指名補欠ス
 三 金千円以上ノ寄附者 但シ百名ヲ超ユルニ至リタル時ハ初ノ百名ヲ以テ之ニ充ツ、若シ欠員ヲ生ジタルトキハ本項ノ維持員ノ会議ニ於テ之ヲ指名補欠ス
第十二条 評議員会及ビ維持員会ハ講道館長之ヲ招集シ、且ツ其ノ議長トナル、講道館長故障アル時ハ年長ノ順序ニ依リ理事ノ一人之ニ代ル
第十三条 評議員会及ビ維持員会ノ議事ハ出席員ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス、可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第十四条 本財団ノ資産ヲ分チテ基本財産及ビ普通財産ノ二トス
 寄附金ハ其ノ半額以上ヲ必ズ基本財産ニ組入ルルモノトス 但シ用途ヲ指定セルモノハ此ノ限ニアラズ
第十五条 基本財産ハ其ノ元本ヲ消費スルコトヲ許サズ
第十六条 本財団ノ事業ノ執行、資産ノ管理処分、其ノ他ノ事項ニ関スル細則ハ評議員会ノ決議ヲ以テ之ヲ定ム
第十七条 本財団ノ事業年度ハ暦年ニ従フ
 本財団毎事業年度ノ経費ハ前年度末ニ於テ講道館長予算ヲ調製シ、評議員会ノ決議ヲ経テ其ノ額ヲ定ム
 予算外ノ支出及ビ予算超過ノ支出ヲ要スルトキハ、臨時評議員会ノ決議ヲ経ルコトヲ要ス 但シ緊急ノ場合ニハ支出ノ後評議員会ノ承認ヲ経ベシ
第十八条 各事業年度ノ事業概況・会計決算ハ翌年度ノ初ニ於テ理事之ヲ維持員ニ報告ス
 - 第26巻 p.482 -ページ画像 
第十九条 此ノ寄附行為ノ条項ハ、講道館長ノ発議ニ因リ維持員会ノ決議ヲ以テ之ヲ変更スルコトヲ得、此ノ場合ニ於テハ維持員ノ半数以上出席シ、其ノ出席員ノ三分ノ二以上ノ同意アルニ非ザレバ、決議ヲナスコトヲ得ズ
第二十条 本財団ガ解散セザルヲ得ザル場合ニ遭遇シタルトキハ、本財団ニ属スル財産ハ維持員会ノ決議ニヨリ、本財団ノ目的ト同一又ハ類似ノ事業ノ為メ之ヲ処分スベシ
第二十一条 本財団設立ノ際ニ於テハ理事及ビ監事ハ、設立者之ヲ選定ス

    財団法人講道館寄附金募集規定
第一条 講道館ハ財団法人講道館寄附行為第一条ノ目的ヲ達スル為メ寄附金ヲ募集ス
第二条 寄附金ハ用途ヲ指定シテ寄贈スルコトヲ得
第三条 寄附ハ左ノ二項中何レノ方法ニ依ルモ寄附者ノ便宜ニ任ズルモノトス
 一 寄附金額ヲ一時ニ寄贈スルコト
 一 寄附金額ヲ五ケ年以内ノ期間ニ於テ定期分割シテ寄贈スルコト
第四条 寄附者ハ寄附金申込証ニ、金額及寄附方法ヲ記シ申込ムモノトス
第五条 寄附者ハ講道館本部、又ハ本館指定ノ銀行ニ宛テ払込ムモノトス
第六条 寄附者ハ便宜金銭以外ノモノヲ以テ寄附スルコトヲ得
第七条 寄附金ノ払込ヲ受ケタルトキハ、講道館長ノ受領証ヲ寄附者ニ送附スルモノトス
第八条 講道館長ハ寄附金ヲ募集スル為メ募集委員ヲ選定シ、之レニ寄附金募集ノコトヲ嘱托スルコトヲ得
第九条 募集委員寄附金ヲ受領シタルトキハ、直チニ講道館長ニ引渡スベシ
第十条 講道館長寄附金ヲ受領シタルトキハ、別ニ定ムルトコロノ会計規則ニ依リ確実ニ之ヲ保管スルモノトス

    財団法人講道館会計規則
第一条 財団法人講道館ノ会計ハ本規則ニ拠リ之ヲ経理ス
第二条 本館ニ会計主任一人ヲ置ク
 会計主任ハ評議員会ノ決議ヲ経テ講道館長之ヲ命ジ、館長ノ指揮ヲ受ケ会計ノ事務ヲ掌ル
第三条 本館ニ於テ不動産ノ売買又ハ移転ヲ為サントスルトキハ、評議員会ノ決議ヲ経ルコトヲ要ス、本館ノ所有ニ属スル不動産ノ上ニ負担トナルベキ契約ヲ為サントスルトキモ亦同ジ
第四条 本館ノ所有ニ属スル建物ノ建築又ハ改築ハ、予メ評議員会ノ決議ヲ経ルコトヲ要ス
第五条 本館ノ所有ニ属スル建物ハ、理事会ニ於テ確実ト認メタル会社ノ火災保険ニ附スベシ
 - 第26巻 p.483 -ページ画像 
第六条 本館ニ於テ余裕金アルトキハ、利殖ノ目的ヲ以テ公債又ハ確実ナル債券ヲ買入ルヽコトヲ得
第七条 前条ニ依リ買入レタル公債又ハ債券ハ、理事会ニ於テ指定シタル銀行ニ委託シ保管セシムベシ
第八条 本館所有ノ現金ハ、理事会ニ於テ指定シタル確実ナル銀行ニ預入ルベシ、但シ日常ノ支払ニ充ツル為百円以内ノ金額ヲ限リ、会計主任ノ手元ニ保管スルコトヲ得
 前項ニ依ル預金ハ定期預金及当座預金ノ二種トシ、支払ニ差支ナキ限リ可成定期預金トスベシ
第九条 前条ニ依ル預金ノ出納ハ講道館長ノ名義ヲ以テスベシ
第十条 会計主任ハ毎月一回現金・預金及公債・債券ノ異動ヲ理事及監事ニ報告スベシ

   振替貯金番号東京八弐〇九番
          東京市小石川区大塚坂下町百拾四番地
                      講道館本部


青淵先生関係事業調 雨夜譚会調(DK260076k-0005)
第26巻 p.483-484 ページ画像

青淵先生関係事業調 雨夜譚会調    (渋沢子爵家所蔵)
  財団法人講道館(昭和三年三月廿九日調べ)
一、創立  明治十五年
一、所在地 本部 東京市小石川区大塚坂下町
      支部 朝鮮・大阪
      分場 札幌・広島県江田島・静岡
一、基本金 明治四十二年財団法人として成立するや、講道館長嘉納治五郎氏壱万円を寄附したる外各方面の有力者より寄附行為を仰ぐ。現在迄の寄附金高二十万八千余円に達す。是を以て基本金とす。
一、創立関係人 嘉納治五郎
一、青淵先生との関係 明治四十二年財団法人となるや監事に挙げらる。寄附金募集に尽力する所多し。先生教育事業を介して嘉納氏と相交る事久し、偶々嘉納氏講道館々長たり、而も館の目的とする所身体の鍛錬に止まらず、精神修養に重きを置く。之即ち先生が唱ふる身神錬磨、強固なる信念の涵養と云ふ事に外ならず。因て館の趣旨に賛成し、四十二年館の事業拡張が企図せられ、組織を財団法人と改めらるゝや、大に其計画の促進に尽し、現在に於ても大橋新太郎氏と共に監事として後援せらるゝなり。
    講道館沿革略
 講道館ノ源泉ハ、遠ク明治十五年嘉納館長ガ下谷区北稲荷町永昌寺境内ニ居住セル其時居宅ノ一部ナル十二畳敷ノ一室ヲ以テ、同年六月五日柔道稽古ノ道場ニ充テタルニ濫觴ス、嘉納館長ハ一朝柔術練習ノ結果其体躯一変シテ強壮ノ別人トナリタル実験ト、柔術修行ノ結果ハ克ク優柔怯懦ノ者ヲシテ剛毅果断ノ人トナシ、軽躁浮薄ノ者ヲシテ堅
 - 第26巻 p.484 -ページ画像 
忍重厚ノ人タラシムル実証トニ鑑ミ、大ニ感ズル所アリ、従来ノ如ク単ニ一種ノ武芸トシテ教フルノミニ止マラズ、是ヲ心身鍛錬ノ方法トシテ広ク世人ニ教ヘンコトニ決心シ、之レヲ教授スル所ヲ講道館ト命名シタリ、講道館ハ此ノ如クニシテ創マリ、以テ今日ニ至レリ、其発展ノ時期ハ分テ之ヲ四期トナスコトヲ得ベシ、則チ創始ヨリ明治十九年五月迄ヲ第一期トシ、十九年五月ヨリ二十七年五月迄ヲ第二期トシ二十七年六月ヨリ四十二年四月迄ヲ第三期トシ、其レヨリ以後ヲ第四期トス。
 第一期(創始ヨリ明治十九年五月迄)此期間ニ於テ下谷区北稲荷町ヨリ神田区神保町ニ移リ、更ニ麹町区上二番町ニ移リ、三転シテ麹町区富士見町ニ移ル、之レ即チ創業ノ期間ニシテ、一年間ニ入門シタル者ノ数ヲ挙グレバ明治十五年ニハ僅々九人、翌年ハ八人、十九年ニ至リ九十八人ニ過ギズ。
 第二期(明治十九年五月ヨリ同二十七年五月迄)此期間ノ始メニ当リテ富士見町ニ新道場落成シ、翌明治二十年十月豆州韮山ニ分場ヲ設ケ、同二十一年九月江田島ニ分場ヲ開キ、二十二年本郷区真砂町ニ本館ヲ移シ、同時ニ麹町区上二番町ニ分場ヲ設ケ、又京都ニ分場ヲ置キ明治二十四年真砂町道場ヲ閉ヂ麹町分場ヲ本館ニ改メ、翌二十五年熊本講道館ヲ設ケ、明治二十七年五月小石川区下富坂町ニ道場ヲ新築シ麹町道場ヲ此ニ移セリ、明治十九年ニ在テハ前述ノ如ク一ケ年ノ入門者僅々九十八人ナリシモノ、翌二十年ニハ二百九十三人トナリ、同二十三年ニハ五百二十八人ニ達セリ。
 第三期(明治二十七年下富坂町ニ移リテヨリ、同四十二年四月本館ノ組織ヲ改メ、之ヲ法人ト為スニ至ル迄)明治三十六年三月牛込ニ、同四十一年七月静岡ニ分場ヲ設置ス、蓋シ此間内ニハ館員ノ増加著シク、外ニハ各国各地ニ多数ノ教師ヲ供給シ以テ斯道ヲ普及セシメ、他面ニハ館員躬ラ進デ欧米各国ニ渡航シ、斯道ヲ宣伝普及スル端緒ヲ開ケリ。
 第四期(財団法人組織以後)此期間ニ於テハ柔道ノ普及殊ニ著シク従来柔道ヲ課セザリシ学校ニシテ新ニ之ヲ設ケタルモノ多ク、今日ニ於テハ大学ヲ始メ官公私立ノ専門学校及ビ中等学校中柔道部ノ無キモノ殆ド稀ナル位ニシテ、昨今ハ小学校ニ於テモ柔道ヲ始ムルモノ陸続生ズルニ至レリ、市内各警察署ノ如キモ道場ノ設アラザルハナク、又諸会社・諸銀行・富豪ノ家庭等ニ於テモ道場ヲ設ケ師ヲ聘シテ柔道ヲ研究スル者尠カラズ、而シテ亦講道館出身者ニシテ自家ノ道場ヲ設ケ子弟ヲ教育スル者各処ニ増加シ、今日ニ於テハ諸学校ヲ始メ全国ノ柔道教師ハ殆ド皆我ガ講道館ヨリ出デタル者ナリト言フモ敢テ不当ノ辞ニ非ル可シ、其他朝鮮京城ニ講道館支部ヲ置キ、北海道札幌ニ講道館分場ヲ設ケタルモ此期ニ属ス。
 抑々本館ハ、明治十六年ニ於テ、段級ノ制ヲ設ケ、修行進歩ノ度ニ応ジ、之ヲ有段者・無段者ニ区別スルコトヽセリ、無段者ハ之ヲ六階級ニ分チ、有段者ハ初段ヨリ二段・三段ト累進セシムルコトニ定メタリ。
                      (講道館幹事述)
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自明治四十二年六月至同年十二月財団法人講道館報告書 刊(DK260076k-0006)
第26巻 p.485-486 ページ画像

自明治四十二年六月至同年十二月財団法人講道館報告書  刊
    事業ノ状況
講道館ハ明治十五年嘉納治五郎氏始テ之ヲ創設シ、日本伝来ノ柔術ニ自己ノ工夫ヲ加ヘ、講道館柔道トシテ有志ノ者ヲ教導シ、心身ノ鍛錬ヲ為サシメ来リシニ、登門ノ子弟日ヲ追ツテ増加シ、今ヤ全国大中小学校・陸海軍学校其他ニ於テ或ハ正科トシ、或ハ運動部ノ一科トシテ之ヲ採用スルニ至リ、従テ之カ教師ヲ要スルコトモ多ク、従来一個ノ経営ヲ以テ之ヲ教養シ、其需用ヲ充タシ来リシカ、社会ノ進運ト共ニ公共団体ト為シ、一層之ヲ拡張シ、広ク世ノ利益ヲ進ムルノ得策ナルコトヲ認メ、明治四十二年四月、文部大臣ニ財団法人講道館寄附行為ノ認可ヲ申請シ、同五月三日之ヲ許可サレタルヲ以テ、玆ニ法人トシテ前者ノ事業ヲ継承シ、寄附行為第一条ノ主旨ニ基キ、子弟ニ柔道教育ヲ施スヲ以テ主タル目的ト為スニ依リ、目下既ニ左ノ各所ニ道場ヲ設ケタリ
  東京府 小石川区下富坂町講道館下富坂道場
  同   小石川区大塚坂下町講道館開運坂道場
  静岡県 静岡市講道館静岡分場
前記各道場ニ於テ子弟ヲ教育セル外、尚京都大日本武徳会・東京帝国大学・東京高等師範学校・第一高等学校・学習院・陸軍幼年学校・其外東京及各地方ノ公私各種ノ学校及道場ニ館員ヲ出シ、柔道教育ノ任ニ当ラシメ、又柔道ノ研究普及ニ尽力セリ
    処務ノ要件
一嘉納治五郎氏設立者ト為リ、明治四十二年四月十日ヲ以テ財団法人講道館設立ノ認可ヲ文部大臣ニ申請シ、同年五月三日其寄附行為ヲ認可サレタリ
一設立者ハ寄附行為第廿一条ニ拠リ、自己ノ外ニ若槻礼次郎・法学博士矢作栄蔵両氏ヲ理事ニ、男爵渋沢栄一・柿沼谷蔵両氏ヲ監事ニ選定シテ其承諾ヲ得、五月廿七日東京区裁判所ニ於テ法人登記ヲ了セリ
一六月ヨリ財団法人講道館事務所ヲ小石川区大塚坂下町百十四番地ニ置ク
一講道館ノ事業ヲ遂行スルニハ直チニ道場ヲ必要トスルニ付、現在ノ下富坂道場及附属建物並ニ開運坂道場ヲ前所有主ヨリ法人ニ移スコトヽシ、之カ代金ハ寄附金ノ集収ヲ待テ漸次納済スルコトヽシ、縦令代金完済ニ至ラサルモ該道場及附属建物ハ無償ニテ使用スルノ便利ヲ保有セリ、而シテ下富坂道場ハ一附属家ヲ除ク外、既ニ大部分ノ権利ヲ確得シタリ
一法人講道館ハ前項二道場ノ外、既ニ静岡県ニ静岡分場、京都市京都分場ヲ有シ、尚ホ漸次各地ニ講道館道場ヲ設置スル目的ナリ、而シテ本部ノ直接経営ニ属スルモノト独立経営ニ成ルモノトノ区別ハアルモ、共ニ之カ監督ハ本部ニ於テ為スモノトス
一開運坂道場ニハ附属家ナキヲ以テ、別ニ一戸ヲ借受ケ講道館塾ト為シ、目下数名ノ塾生ヲ収容セリ
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    自明治四十二年六月至同年十二月財団法人講道館計算書

      収入ノ部
 金壱万五千五百拾円也       寄附金
 金七百九拾八円也         入門料
 金参百四拾五円参拾銭也      道場費
 金弐拾六円五拾銭也        塾費
   合計金壱万六千六百七拾九円八拾銭也
      支出ノ部
 金壱万四千〇六拾七円九拾八銭也  建物
 金四百五拾円也          備品
 金壱千〇六拾七円弐拾弐銭六厘   俸給諸給
 金拾九円七拾五銭         紅白勝負費
 金弐百弐拾参円拾弐銭       修繕費
 金五拾六円也           家賃
 金四百六拾八円七拾六銭      地代
 金七拾七円六拾銭         消粍費
 金五円九拾五銭五厘        通信費
 金弐拾弐円七拾六銭五厘      印刷費
 金参拾参円拾六銭五厘       雑費
   合計金壱万六千四百九拾弐円参拾弐銭壱厘
  差引残金百八拾七円四拾七銭九厘
    明治四十二年十二月末財団法人講道館財産目録
 金壱万四千〇六拾七円九拾八銭也  建物三棟

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    金壱万弐千百参拾五円四拾八銭也 内訳              下富坂道場百六十四坪弐合五勺二階十三坪五合    金参百八拾弐円五拾銭也  同所附属平家一棟十七坪八勺    金壱千五百五拾円也    同所附属二階家一棟二十五坪一合五勺二階二十四坪 



 金四百五拾円也          備品
 金百八拾七円四拾七銭九厘     現金
   合計金壱万四千七百〇五円四拾五銭九厘
 右ノ通リニ有之候也
  明治四十二年十二月
                財団法人講道館
                  理事 嘉納治五郎
                  同  若槻礼次郎
                  同  矢作栄蔵
 右確実ナルコトヲ認メ候也
  明治四十二年十二月       監事 渋沢栄一
                  同  柿沼谷蔵