デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

2部 社会公共事業

4章 教育
1節 実業教育
6款 其他 3. 工手学校
■綱文

第26巻 p.775-779(DK260127k) ページ画像

明治21年9月8日(1888年)

是ヨリ先明治二十年十月、帝国大学総長渡辺洪基等、工手養成ヲ目的トスル一学校創設ノ意アリ。乃チ同月三十一日当校設立趣意書ヲ発表シ、汎ク同志ヲ勧誘スル所アリシガ、栄一亦此挙ヲ賛シ、之ガ為メニ賛助員トナリ、且当校設立基金トシテ金二百円ヲ寄附セリ。斯クテ是年二月、仮校舎ニ於テ開校セシガ、其後校舎ノ購入並ニ増築ノ事成
 - 第26巻 p.776 -ページ画像 
リ、是日新校舎ニ移転、開校式挙行セラルルニ当リ、栄一来賓トシテ之ニ臨ミ一場ノ祝詞ヲ述ブ。


■資料

二十五年記念工手学校一覧 同校編 第二―六頁 大正二年一一月刊(DK260127k-0001)
第26巻 p.776-777 ページ画像

二十五年記念工手学校一覧 同校編  第二―六頁 大正二年一一月刊
    沿革綱要
明治二十年ノ頃我国ニハ工業ニ関スル学校極メテ少ナク、一・二官立ノ学校アリタリト雖、高尚ナル専門ノ技師ヲ養成スルヲ方針トシ技師ノ指導ノ下ニ立チ其計画ヲ補助実施スルノ任務ニ当ルベキ工手ヲ養成スル機関ノ設ケ無シ、時ノ大学総長渡辺洪基君深ク之ヲ慨シ、曾テ此ノ不備ヲ補フベキ学校創設ノ意アリ、一日其旨ヲ大学教授辰野金吾君ニ伝ヘ、同年十月五日工学会常議員会ニ於テ之ヲ謀ラシメタルニ、満場一致之ヲ賛成セリ
由テ同年十月三十一日創立協議会ヲ工学会事務所ニ開ク、当日ノ出席者ハ石橋絢彦君(土木)・井口在屋君(機械)・巌谷立太郎君(鉱山)・大井才太郎君(電気)・辰野金吾君(造家)・中村貞吉君(化学)・中野初子君(電工)・栗本廉君(鉱山)・山口準之助君(土木)・古市公威君(土木)・藤本寿吉君(造家)・三好晋太郎君(造船)・水上彦太郎君(機械)・杉村次郎君(鉱山)ノ十四名ナリ、乃チ之ヲ発起人トシ、学校ノ組織ハ土木・機械・電工・造家・造船・採鉱・治金・製造舎密ノ八学科トシ、課程ハ悉皆邦語ヲ以テ教授シ、一学科ハ一ケ年半ヲ以テ卒業セシムルコトト定メ、渡辺洪基君ヲ創立委員長ニ推シ、左記ノ設立趣旨書ヲ発表シ同志ヲ勧誘スルコトトセリ
    工手学校設立趣旨
 工業ノ隆盛ヲ謀ルニハ学術ノ応用極メテ緊要ナリ、現今我国ノ工業稍々隆盛ノ機運ニ向ヒ鉄道敷設・道路開鑿・鉱山採掘、其他造船・建築・電気・舎密製造等数多ノ事業国内各所ニ興起シ、是等ノ事業ニ必須ナル技術者ヲ要スルコト頗ル多キニ至リシハ、畢竟工業ハ学術ノ応用ヲ俟テ始テ完良ノ結果ヲ得ヘキカ故ナリ、而ルニ今我国ノ有様ニテハ技術者養成ノ黌塾甚タ尠ク、一・二官立ノ学校ニ於テハ高尚ナル技師ヲ養成スルニ充分ナルモ、各専門技師ノ補助タルヘキ工手ヲ養成スル学校ニ至リテハ亦一校ノ設置アルナシ、故ニ工業家ニ於テハ補助工手ノ供給ナキニ苦ミ、勢ヒ学術応用ノ思想ニ乏シキ者ヲ以テ彼ノ高尚ナル技師ノ補助ト為ササルヲ得ス、為ニ技師ハ使役ニ不便ヲ感スルノミナラス、結局工業家ノ不利益ヲ来スモノニテ即チ我国工業進歩ノ一大障碍ヲ与フルモノト云フヘシ、是レ余輩ノ最モ遺憾トスル所ナリ、因テ玆ニ一ノ工手学校ヲ設立シ学科ヲ土木機械・電工・造家・造船・採鉱・冶金・製造舎密ノ八学科ニ分チ世間有志ノ子弟又ハ昼間各工場ニ使雇セラルヽ工手職工ニ就学ヲ許シ授業ノ方法ハ専ラ速成ヲ旨トシ、所謂補助工手ヲ養成シ、以テ
 工業ノ隆盛ヲ企図ス、聊カ記シテ本校設立ノ趣旨ヲ陳ルト云爾
我国同年十一月八日地学協会々館ニ会シ、諸規則ヲ制定シ、又本校全体ニ関スルコトヲ統律スル為メ特ニ管理規則ヲ設ケ、併セテ管理長・校長・管理委員ヲ選定セリ、即チ渡辺洪基君ヲ特選管理長ニ、中村貞吉君ヲ校長ニ推薦ス、時ニ専門ノ学士遠近相伝ヘ校友トナリテ倶ニ力ヲ対スルモノ五十有三名ニ達シ、又或ハ金員ヲ寄附スルモノアリテ、
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諸般ノ施設漸ク其緒ニ着ク、是ニ於テ当時木挽町ニ設置シタル商工徒弟講習所ヲ借用シテ仮リ校舎ニ充テ、同二十一年一月二十三日初メテ予科ノ生徒ヲ募集ス、志願者八百余名、試験ニ由テ入学ヲ許セシ者二百二十八名アリ、乃チ同年二月六日ヲ以テ愈開校ノ式ヲ挙グルニ至レリ、是ヲ本校創立ノ発端トス
○中略
同年○明治二一年五月七日、京橋区南小田原町四丁目八番地元築地病院ノ敷地及建物ヲ購入シ、同時ニ教室ノ増築ニ従事シ、同年九月七日、工事ヲ竣ヘタルヲ以テ是ニ移リ、翌八日移転開校式ヲ挙グ、当日ノ来賓ハ榎本逓信大臣・花房農商務次官・赤松海軍中将・柳谷農商務書記官・広岡同秘書官・富田同工務局長・大山同次官・田代鉱山局長、及渋沢栄一・川村伝衛・矢島作郎ノ諸君ニシテ、渡辺管理長・中村校長、其他校友合セテ賓主百余名ニ達ス、中村校長ハ本校ガ今日ニ至リタル事歴ヲ述ベ、来賓渋沢栄一君ハ本校ノ実業社会ニ必要ナル所以及之ニ対スル将来ノ希望等ヲ陳ベ、次ニ渡辺管理長ハ一場ノ演説ヲナシテ式ヲ了ル
今学期ヨリ本科生徒ノ定員ヲ二百名トス、当時現在生徒ハ予科及本科ヲ併セテ四百七十余名ナリ
曩ニ本校ノ開設セラルヽヤ、大ニ江湖ノ同情ヲ博シ、工業専門ノ学士ニシテ進ンデ校友トナル者益増加シ、教務ヲ補助スルニ至レリ、加之岩崎弥之助・古川市兵衛[古河市兵衛]・住友吉左衛門・藤田伝三郎・西邑虎四郎・矢島作郎・高島嘉右衛門・大倉喜八郎・渋沢栄一ノ諸君ヲ始メトシテ在野ノ紳士此挙ヲ賛シ金円ヲ寄附シ、其額八千九百余円ニ達ス(寄附者芳名録ニアリ)依テ前記ノ地所家屋ヲ購入シ、且ツ増築ノ事ヲ果スニ至リタリ
○下略
   ○栄一演説筆記ナシ。


私立工手学校規則(附同校管理法及役員・校友・教務主理・教員人名) 同校編 第二八頁 明治二一年一一月刊(DK260127k-0002)
第26巻 p.777 ページ画像

私立工手学校規則(附同校管理法及役員・校友・教務主理・教員人名) 同校編
                     第二八頁 明治二一年一一月刊
    本校賛助員
                    岩崎弥之助
                    西村虎四郎
                    大倉喜八郎
                    高島嘉右衛門
                    矢島作郎
                    藤田伝三郎
                    古川市兵衛[古河市兵衛]
                    渋沢栄一


二十五年記念工手学校一覧 同校編 第一二三―一二七頁 大正二年一一月刊(DK260127k-0003)
第26巻 p.777-778 ページ画像

二十五年記念工手学校一覧 同校編  第一二三―一二七頁 大正二年一一月刊
    寄附者芳名録
創立ノ際ニ於ケル寄附金額及芳名左ノ如シ  明治二十二年
  金参千円              岩崎弥之助君
  金五百円              住友吉左衛門君
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  金五百円              藤田伝三郎君
  同                 古川市兵衛[古河市兵衛]君
  金参百六拾円            工学会
  金参百参拾円            石川島造船所
  金参百円              帝国工業会社
  同                 杉本正徳君
  同                 西邑虎四郎君
  同            北有社長 村田堤君
  金弐百円              矢島作郎君
  同                 堀伴成君
  同                 高島嘉右衛門君
  同                 渋沢栄一君
  同                 大倉喜八郎君
  金百七拾円             大日本鉱業会
  金百六拾五円            平野造船所
  金百五拾円             清水満之助君
  金百弐拾円             万年会
  金百拾円              杉山輯吉君
  金百円               浅野総一郎君
  同                 川村伝衛君
  同                 静岡育英会
  金七拾五円             造家学会
 ○中略
    通計金八千九百八円也


二十五年記念工手学校一覧 同校編 第二四―二六頁 大正二年一一月刊(DK260127k-0004)
第26巻 p.778-779 ページ画像

二十五年記念工手学校一覧 同校編  第二四―二六頁 大正二年一一月刊
    工手学校管理規則
 第一条 私立工手学校ハ校友ヲ以テ維持スルモノトス
 第二条 校友ハ学術ニ関係アル士人ニシテ本校ノ創立ニ功労アリタル者ヲ以テ組織シ、爾後同種ノ士人ニシテ本校ニ功労アリタル者ハ、校友ノ投票ヲ以テ推選スヘシ
 第三条 校友中ヨリ若干名ヲ選挙シテ管理委員トシ、本校ヲ管理セシム
 第四条 管理委員ノ任期ハ一ケ年半トス
   但重任スルモ妨ナシ
 第五条 管理委員ノ互撰ヲ以テ工手学校長一名及監事四名ヲ置ク、校長ハ本校ノ事務ヲ処理シ、監事ハ校長ノ商議ヲ受ケ校務ヲ補助スルモノトス
 第六条 校長ハ管理委員ノ可認ヲ得テ幹事一名ヲ撰ヒ、校務ヲ執行セシムルコトヲ得
 第七条 校長ハ書記・会計補助等ヲ撰用シ、本校ノ庶務出納ヲ掌ラシムルコトヲ得
 第八条 校友ハ毎学期ノ終リニ於テ総会ヲ開キ、校務ニ関スル事項ヲ評議スヘシ、其議決ハ出席員ノ過半数ニ依ル
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   但要用アルトキハ臨時総会ヲ開クコトアルヘシ
 第九条 総会ノ議長ハ出席ノ校友中ヨリ選挙シ、議事ノ可否相半ハスルトキハ其決ニ依ラシム
 第十条 校長ハ総会ニ於テ前学期中ノ校務報告ヲ為スモノトス
 第十一条 管理委員ノ集会ハ其必要アル毎ニ校長ヨリ通知スヘシ、其会長ハ出席委員ノ中ヨリ互撰スルモノトス
 第十二条 本校維持ノ為メ金員・書籍・標本・物件ヲ寄附シタル士人ハ、管理委員ノ評決ヲ以テ賛助員ト為スコトアルヘシ
 第十三条 賛助員ハ毎学期ノ報告ヲ受ケ、本校ノ事務及会計ノ事ニ付キ不審アラハ之ヲ訊問シ、意見アラハ之ヲ管理委員ニ通告スルコトヲ得ヘシ