デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

2部 社会公共事業

4章 教育
2節 女子教育
2款 日本女子大学校
■綱文

第26巻 p.899-900(DK260160k) ページ画像

明治38年4月20日(1905年)

是日栄一、当校第五回創立記念式並ニ卒業式ニ出席シ演説ス。


■資料

渋沢栄一 日記 明治三八年(DK260160k-0001)
第26巻 p.899 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三八年     (渋沢子爵家所蔵)
四月二十日 曇 風強シ
○上略 午後二時女子大学ニ抵リ卒業式ニ列席ス、一場ノ演説ヲ為ス、午後五時卒業女生徒等ト共ニ写真ヲ取リ、五時半農商務省大臣官舎ニ抵リ ○下略


家庭週報 第二二号 明治三八年四月二九日 渋沢男爵の演説大意(DK260160k-0002)
第26巻 p.899-900 ページ画像

家庭週報  第二二号 明治三八年四月二九日
    渋沢男爵の演説大意
凡そ世の中の事は大抵想像通りに行かぬものが常なり。然るに此の学校に於ては殆ど予期よりも更に進みたる拡張を見るに至れり、是に至れるは一に校長及び創立委員諸氏の其人を得たるによれども、亦時に応じたる事ならんと信ず。而して又深厚なる同情を寄せらるゝ方々引続きてあらはれ、殊に昨冬より今春にかけて、平日希望し居たる事がかく完全に成就するに至りたる事は、実に森村君及び其の組合諸氏の賜なり。かくの如く幸福多き本校に対して、教員諸氏及び学生諸子は
 - 第26巻 p.900 -ページ画像 
必ず強き義務を有せざるべからずと信ず。しかもなほ設備を求むれば未だこれを以て満足する能はざるなり。中にも将来を考ふれば、なほ充分なる基本財産を作らざるべからず。これは我々財務委員の義務として、熱心に心掛け居るなり。又一歩進で教務に与らるゝ人々は、かく輿論に適ひて予想以外に発達したる学校に於て、有益なる教育を与へ、世間より批難されざる良妻賢母を作り出されん事を此上にも希望す。而して更に此処に入学する学生諸子の責務は、前二者の責務よりも一層重き事を考へざるべからず。これは既に卒業して学校を出づる人、高等女学校より大学部にうつる人、及びまだ在学中の学生諸子、すべての義務なり。元来婦人の教育は、日本の今日に於ては新規に成立ちたる事業といふべきなり。かゝる場合に世間の注目する学校を出でたる学生が、世間の希望する通りの行動を示したならば、是に女子教育の効能が真にあらはるゝなり。我々といひ教員諸氏といひ、実にかくの如き学生を作りたきが志願たるなり。果して然らば、諸子の任務の更らに大なる事は充分了解せられたる事と信ず。
此頃米国大統領ルーズベルト氏は「婦人は一家を経営するにつきては非常に困難なる事なれば、勤勉且つ耐忍ならざるべからず、また米国の婦人は男女同権を主張するもの多し、然れども権利よりは義務を重ずる心掛は、婦人として甚だ称すべき性質なり」と懇切に説かれたる由、新聞に見ゆ。実に地位の進歩と共に、婦人の特有の長所を智識と共に発達し行く事は肝要にして、同時に権利よりも義務を重ずるの覚悟をいつまでも忘却なき様、玆に一言諸子に対し満身の希望を述ぶ。