デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

2部 社会公共事業

5章 学術及ビ其他ノ文化事業
1節 学術
3款 国家学会
■綱文

第27巻 p.326-332(DK270100k) ページ画像

明治21年12月(1888年)

是ヨリ先、東京帝国大学政治学科学生等、国家ニ関スル学問ヲ研究スルノ目的ヲ以テ国家学会創立ヲ唱ヘ、渡辺洪基・穂積陳重等之ニ賛シ、当学会創立セラル。是月栄一、当学会ニ入会ス。


■資料

(渡辺洪基) 書翰 渋沢栄一宛 明治二一年一二月(DK270100k-0001)
第27巻 p.326 ページ画像

(渡辺洪基) 書翰  渋沢栄一宛 明治二一年一二月 (渋沢子爵家所蔵)
国家学会御入会之義者、先達而御面会之砌御承諾被下候義ト存候間、即其様ニ取計置申候間、左様御承知可被下候、雑誌初号ヨリ御所望之趣、即差出候様申付置申候、会費者一ケ年分(参円)受領仕候様取計候義ニ御座候間、左様御承知可被下候、此般入会之義者評議員ニ委任致置候義ニ御座候間、通則外之取計ニ御座候 拝具
  廿一年十二月廿日               洪基
    渋沢老台
         侍史


国家学会雑誌 第二巻第二二号・第七三八―七四〇頁 明治二一年一二月(DK270100k-0002)
第27巻 p.326-327 ページ画像

国家学会雑誌  第二巻第二二号・第七三八―七四〇頁 明治二一年一二月
     本会記事
○中略
○去月以来入会者姓名左ノ如シ

図表を画像で表示去月以来入会者姓名

          伯爵 井上馨                 井上陳政                市川米三郎             岩崎小次郎               犬養毅                 石川有幸  ドクトルオフ・ロース 浜尾新                 富田鉄之助           法学士 戸水寛人             徳富猪一郎               小幡篤二郎            侯爵 大久保利和        法学博士 岡村輝彦                大江卓                 大槻滝治             大鳥圭介                大鐘彦市                渡辺国武             渡辺廉吉            法学士 加藤高明                河津祐之             滝関武二                田口卯吉                竹内平吉          子爵 曾我祐準   バチエラー・オフ・ロース 相馬永胤                土山益次郎        文学博士 中村正直                中根重一                永井環             中野健明                村木宇三郎          文学博士 黒川真頼        法学博士 栗塚省吾                日下義雄             伯爵 柳原前光          伯爵 山田顕義                山崎直胤                前島密             益田孝                 牧野伸顕                神屋三郎          伯爵 後藤象二郎          文学博士 小中村清矩            子爵 榎本武揚         法学士 江木衷                 有島武    バチエラー・オフ・ロース 斎藤修一郎             佐田九郎           医学博士 三宅秀            文学博士 島田重礼             渋沢栄一           文学博士 重野安繹           工学博士 志田林三郎  以下p.327 ページ画像          法学士 平田譲衛             子爵 森有礼             法学士 末延道成         計五十七名   現在会員総計 三百三名 






〔参考〕国家学会雑誌 第一号・第五五―六一頁 明治二〇年三月 本会記事(DK270100k-0003)
第27巻 p.327-330 ページ画像

国家学会雑誌  第一号・第五五―六一頁 明治二〇年三月
    本会記事
○曩ニ東京大学文学部ニ於テ政治・理財・哲学及和漢文学ヲ併置スルノ日ニ方リ、学士・学生等相謀リ、右諸科ノ研究ヲ目的トシテ文学会ヲ興シ、毎月相会シテ講談・演説ヲ為スコト玆ニ年アリ、然レトモ元来文学会ハ数種学科ヲ聯合シテ目的ノ統一ヲ欠クカ故ニ、各専門科ノ研究上未タ隔靴ノ憾ヲ免レス、是ニ於テ哲学専攻ノ士ハ別ニ哲学会ヲ創立セシカトモ、政治・理財等国家学ノ講究ヲ以テ目的トスル集会未タ之アラス、爾来大学ノ制一変シ、今ノ帝国大学ト為リ、政治学科ハ哲学等ト離レテ法科大学ノ一部ヲ為スニ至リ、益々国家学専攻ノ集会ヲ起スノ必要ヲ見ルニ及ヒ、明治二十年二月六日文学会開会ノ次、会員中政治学科ノ学生諸氏主トシテ国家学会創立ノ議ヲ唱ヘタルニ、渡辺洪基・穂積陳重二氏ヲ始メ当日来会ノ諸氏皆之ヲ可トシ、遂ニ創立委員若干名ヲ撰定シ、国家学会ノ組織是ニ至リテ成ル
同月九日夜創立委員本郷弓町一丁目十番地哲学書院ニ会シ、先ツ本会ノ規則ヲ議定シ、次テ本会役員ヲ選ス、即チ左ノ如シ
 ○国家学会規則
  第一章 名称
第一条 本会ヲ名ケテ国家学会ト称ス
  第二章 目的
第二条 本会ノ目的ハ憲法・行政・財政・外交・経済・政理・統計等国家学ニ属スル諸学科ヲ講究スルニアリ
  第三章 会員
第三条 旧東京大学卒業ノ学士、帝国大学ノ教授・卒業生・学生々徒及国家学専門ノ名士ニシテ本会ノ目的ヲ協賛スルモノニ限リ本会々員トス
  第四章 事業
第四条 第二章ノ目的ヲ達センガ為メ、本会ハ講義・討論ヲナシ、又雑誌ヲ発行スヘシ
第五条 本会ノ講義・討論会ニ預リ又ハ雑誌ニ投稿スルニ方リ、会員ハ充分言論ノ自由ヲ有スルコト論ヲ竢タスト雖モ、政談ニ渉ルモノハ一切之ヲ許サヾルモノトス
第六条 雑誌ハ国家学ニ関スル論説・記事及本会報告ヲ掲載シ、之ヲ会員ニ頒チ、之ヲ世ニ公ニス
第七条 本会員ニ非スト雖モ、苟モ国家学ニ関スル卓説ヲ有スルモノハ、或ハ客員トシテ講義ヲナサシメ、或ハ其寄稿ヲ本会雑誌ニ登録スルコトアルヘシ
  第五章 会期
第八条 通常会ハ七・八・九ノ三ケ月ヲ除キ毎月五日午後六時ヨリ之ヲ開キ、講義若クハ討論ヲナスモノトス
 - 第27巻 p.328 -ページ画像 
第九条 毎年春期、会員懇親ノ宴会ヲ開クモノトス
第十条 必要アルトキハ臨時会ヲ開クコトアルヘシ
  第六章 会場
第十一条 本会ノ事務所ハ之ヲ本郷弓町一丁目十番地ニ置ク
第十二条 通常会ハ当分一橋外帝国大学講義室ニ開ク
  第七章 役員
第十三条 本会役員ハ評議員五名・幹事二名及雑誌委員七名トシ、其任期ハ何レモ一ケ年トス
第十四条 評議員ハ本会一切ノ大事ニ参与ス
第十五条 幹事ハ会計及本会一切ノ庶務ヲ整理シ、必要ト認ムルトキハ其意見ヲ以テ臨時会ヲ開クコトヲ得
第十六条 雑誌委員ハ雑誌編纂発行ノ責ニ任シ、其中二人ハ兼テ本会会計ノ一部タル雑誌ニ関スル出納及庶務ニ服シ、若シ必要ト認ムルトキハ筆生及仕丁ヲ雇使スルコトヲ得
第十七条 評議員及幹事ハ会員ノ投票ヲ以テ之ヲ撰任ス
 但幹事ハ続任セサルモノトシ、必ス帝国大学ニ在学スル政治科学生トス
第十八条 雑誌委員ハ預メ候補者ヲ定メ、評議員及幹事会員ニ代テ之ヲ撰任ス
  第八章 会費
第十九条 本会ノ年度ハ、十月一日ニ始マリ九月三十日ニ終ル、会員ハ毎年通常会費トシテ金壱円ヲ納ムヘシ
第二十条 毎年ノ会費ヲ納ムルモノハ、年度ノ始ヨリ五ケ月以内ニ完納スヘシ
第廿一条 懇親会ノ費用ハ幹事ノ見込ニ由リテ之ヲ徴シ、又已ムヲ得サル場合ニ於テハ、本会ノ議決ニヨリ臨時費ヲ会員ヨリ徴スルコトアルヘシ
第廿二条 一時ニ金拾五円ヲ納ムルモノハ、終身会員タルヲ得
 但臨時費ハ別ニ之ヲ課スヘシ
第廿三条 通常会費ハ本会ノ雑費ニ供シ、剰余アレハ本会ノ基金トシテ積立ツルモノトス
第廿四条 雑誌ニ関スル計算ハ之ヲ別途勘定トス、故ニ雑誌ヲ会員ニ頒ツノ実費ハ、通常会費中ヨリ繰入ルヽモノトス
第廿五条 雑誌ヨリ得タル利益ハ之ヲ折半シテ、其一分ヲ本会基金トシ、其他ヲ以テ投稿者及雑誌委員ノ報酬ニ供ス
 但報酬ノ比例等ハ雑誌委員ノ議決ニ任ス
第廿六条 本会基金ハ総テ幹事ノ手ヲ経テ駅逓局ニ預クルモノトス
第廿七条 雑誌ニ関スル別途計算ハ、雑誌委員中二名ノ主任者之ヲ掌リ幹事之ヲ監査ス
  第十章 会員ノ進退
第廿八条 凡入会若クハ退会セント欲スルモノハ、直ニ幹事ニ申出ツヘシ
第廿九条 旧東京大学卒業ノ学士、帝国大学ノ教授・卒業生・学生々徒ハ幹事其進退ヲ認承シ、其他ノ者ハ評議員一同ノ認承ヲ待ツヘシ
 - 第27巻 p.329 -ページ画像 
 ○本会役員
  評議員  渡辺洪基君   評議員  田尻稲次郎君
  同上   穂積陳重君   同上   和田垣謙三君
  同上   末岡精一君
  幹事   林権助君    幹事   鈴木馬左也君
  雑誌委員 中原貞七君   雑誌委員 中川恒次郎君
  同上   土子金四郎君  同上   浜田健次郎君
  同上   井上円了君   同上   林田亀太郎君
  同上   朝比奈和泉君
○中略
 ○会員姓名(イロハ順)


図表を画像で表示会員姓名(イロハ順)

            文学士 井上円了       法科大学卒業生 伊東祐徳                一木喜徳郎              石井常英                伊東主計               石尾一郎助                板垣不二男          文学士 浜田健次郎                早川千吉郎              林権助                林田亀太郎              原口敏行                西周                 西沢正太郎     バリストルアト・ロー 穂積陳重               徳永満之                土岐僙                友平甲子            文学士 李家裕二           文学士 荻原朝之助            文学士 小川忠武               小野弥一                大庭寛一               織田一                大島国千代              渡辺洪基            文学士 和田垣謙三              加藤弘之   バツチエラー・オフ・ロー 金子堅太郎          文学士 嘉納治五郎            文学士 春日秀朗           文学士 加藤彰廉                川村昌富               金子銓太郎                川上直之助              河田鏻也  バツチエラー・オフ・アーツ 田尻稲次郎          文学士 高田早苗            文学士 棚橋一郎               武井才次郎                竹村欽次郎              田村義二郎            理学士 坪井九馬三          文学士 土子金四郎                津田喜代太郎             津田儀三郎            文学士 中原貞七           文学士 中川恒次郎            文学士 長崎剛十郎        大学院学生 長沢市蔵           ドクトル カール・ラートゲン    大学院学生 植村俊年                内田康哉               植田栄                野村虎次郎          文学士 久米金弥                山口荘吉               山崎覚次郎                松崎蔵之助              増田武城                町田忠治               駒井重格                浅田知定               朝比奈知泉                有賀長文               青木鉄太郎  以下p.330 ページ画像             文学士 阪谷芳郎         大学院学生 嵯峨根不二郎                佐立吾一               木内重四郎                桐島像一           法学士 三宅恒徳            文学士 三宅雄二郎              宮岡恒次郎                宮崎政吉               三宅直温                三上三次               三浦明                清水友輔               下山寛一郎                志村源太郎              志立鉄次郎                篠木伊勢松              遠藤剛太郎   ドクトルデルフイロソフイ 平田東助           文学士 平沼淑郎          大学院学生 日高真実               日置益   バチエラー・オフ・アーツ 末松謙澄           文学士 末岡精一   バチエラー・オフ・ロー                鈴木馬左也              薄定吉                須崎芳三郎    合計  九十四名 






〔参考〕国家学会雑誌 第一号・第一―五頁 明治二〇年三月一五日 論説 本会開設ノ主旨 (渡辺洪基述)(DK270100k-0004)
第27巻 p.330-332 ページ画像

国家学会雑誌  第一号・第一―五頁 明治二〇年三月一五日
  論説
   ○本会開設ノ主旨 (渡辺洪基述)
余ハ今夕会員諸氏ノ需ニ応シ余カ意想ヲ以テ聊カ開会ノ主旨ヲ演ヘントス、然レトモ余ハ固ヨリ国家学ヲ以テ専門トナスモノニ非サルカ故ニ、平生耳学ト読書トニヨリ聞知会得シタル所ニ拠リ、之ヲ略述スルニ止ルヘシ
蓋シ学トハ万有運行ノ規律ヲ知了スルノ謂ニシテ、之ヲ大ニシテハ宇宙ノ原理ヨリ、之ヲ小ニシテハ禽獣・虫・魚・草木・金石等ニ就キ、或ハ其全体ヲ通観シ、或ハ其部門ヲ分彙シ、以テ其本質及変化ノ理ヲ究ムルニ至ル、即チ哲学及理学ノ諸科是ナリ、而シテ万物ノ霊ト称セラルヽ人類ニ就テハ、之ヲ自然界中ノ一生物トシテ研究スルノ人類学アリ、其聚合体ニ就テ運動変化ヲ究ムルノ社会学アリ、皆其内部各分ノ関係及其外物トノ交渉ヲ考察スルモノナリ、国家ナルモノハ、人類ヲ以テ組織セル一生活体ナルカ故ニ、其本質・変化ノ理ハ、亦必ス之ヲ究ムルノ学ナカルヘカラス、而シテ古来ノ学者多クハ考察ヲ誤リ、或ハ空漠タル万有ノ原理ノミヲ談シ、或ハ宗教・道徳・法律等ノ各部分ニ就キ定典ニ拠リ死経ヲ守リ、未タ曾テ全体ニ渉リテ観察ヲ下シ、所謂真ノ学ナルモノニ従事セルモノアルヲ聞カス、其実際ニ処シテ国家ノ事ヲ理スルモノニ至リテハ、唯自家ノ権謀術数ニ頼ルノミニテ、利害得失ノ見アリト雖モ、多クハ偶中ノミ、学理的ノ基礎ニ本キテ之ヲ精査セルモノ一トシテ之アラス、此レ特ニ東洋ニ在リテ然ルノミニ非ス、西洋諸国ニ於テモ亦其軌轍ヲ同クシ、輓近理学ノ進歩彼レカ如ク顕著ナリト雖トモ、国家ニ至リテハ研究猶未タ到ラサル所アリ、是レ其故何ソヤ
抑人類機関ノ霊妙複雑ナル、其内部ノ関係、外物ノ交渉、他ノ動物・植物・金石ノ単簡ナルカ如クナラス、其之ヲ研究セントスルヤ類ヲ以テ相比較シ、以テ其同キヲ取リ、表現ノ顕象ニ就テ実験ヲ試ミ、以テ
 - 第27巻 p.331 -ページ画像 
其成績ヲ彙集スルニ過キス、蓋シ一己人ノ生命固ヨリ甚タ長カラス、生ヨリ死ニ至ルマテ僅々数十年ノミ、其変化ノ因果稍々見易キモノアリ、然レトモ其天性本質ヲ学知スルノ道、遂ニ欠漏ヲ免レサルコト此ノ如シ、国家ニ至リテハ機関霊妙ノ人類ヲ以テ之ヲ組織セルモノナレハ、其関係ノ錯綜・緻密復タ各個人ノ比ニ非ス、実験ノ場ナク試験ノ途ナク、其経験ハ縦横数万里、上下数千年ヲ達観スルニ非サレハ其効果ヲ見ルヘカラス、是レ豈数人ノ力、朞月ノ労ヲ以テ能ク致ス所ナランヤ、国家学ノ生長・発達遅緩斯ノ如キ所以ノモノハ此ヲ以テナリ
然ルニ輓近理学ノ諸科目ヲ遂ヒテ大ニ開ク、哲学ノ各部門モ亦愈精密ヲ致シ、人類学ノ講究盛ニ興リテ、社会学ヲ倡フルノ徒英国ニ多ク、延キテ全欧ニ波及シ、政治学ノ其影響ヲ被ムルコト洵ニ尠少ナラス、独墺ノ学者遂ニ国家学ヲ唱道スルニ至リ、国家ノ定義成分ヨリ各部分ノ性質、其相互ノ関係、其変化ノ定理及ヒ他ノ対等物トノ関係ト外物トノ交渉トニ至ルマテ、条分縷晣スルコト恰モ一個人類ノ生理ヲ説クカ如ク、未タ定論ト理法トヲ為スニ至ラスト雖トモ、一般ニ学理的ノ観察ヲ下スノ勢ヲ成シタルカ如シ
是レ特リ学事進歩ノ為メニ慶スヘキノミナラス、実ニ各国家ノ大幸ト謂フヘシ、夫ノ衛生家若クハ医師ニシテ人身ノ生理病理ヲ知ラス、五行消長ノ説ノ如キ空漠タル原理ト、自己ノ感触想像トヲ以テ刀圭ニ従事スルカ若キハ、三尺ノ童子モ尚其危キヲ知ル、今夫レ国家ハ猶人身ノ如シ、必スヤ其性質・変化ヲ究メ、宗教・道徳・法律ヲ適用シ、而シテ後処理ノ方始メテ肯綮ヲ得タリト謂フベシ、苟モ之ヲ知ラス、妄意臆想ヲ以テ事ニ処スルコト彼庸医ノ病ヲ治ムルカ如クナラハ、其危殆果シテ何如ソヤ
且ツ夫レ学理的ニ国家ヲ研究スルトキハ、以テ各国家ノ異同ヲ甄別スルヲ得ヘク、各其国体ニ従ヒ、国風ニ本キ、一定ノ政略、一定ノ経済皆基礎ヲ得ヘキコト、猶ホ各己人ノ体格ニ随ヒテ養生ノ方ヲ按スルカ如クナルヘシ、国家ノ摂養已ニ其方ヲ得ハ、健勝ノ国家ヲ造出スルコト蓋シ難キニ非ス、是レ余ガ国家学会ノ設立ヲ企望シ、斯思想ヲ世間ニ伝播セント欲スル所以ナリ
抑々物理・化学・金石・草木・禽獣及人類学ノ如キ有形界諸学、並ニ宗教・道徳・法律・経済及哲学等諸科ハ、皆国家学ノ依テ以テ立ツノ基礎タリ、又之ヲ組織スルノ材料タリ、願クハ特リ政治・経済ノ学ニ従事スル人士ノミニ止ラス、前ニ述ヘタル諸学専門ノ士各其所長ヲ以テ之ヲ幇助シ、以テ新生ノ国家学ヲシテ磐石ノ安キニ居ラシメラレンコトヲ
畢ニ臨ミテ一言スヘキコトアリ、諺ニ学医必スシモ名医ニ非ストイヘルコトアリ、一個人身ノ処理ニ任スルモノニ在リテスラ尚ホ然リ、況ヤ機関ノ錯雑ナル、組織ノ精緻ナル国家ヲ処理スルニ於テヲヤ、国家学ハ譬ヘハ猶生理・病理・治療ノ学説ノ如シ、其本質及運行ノ規律ヲ学知シタレハトテ、直ニ之ヲ実地ノ政治・経済ニ施得ヘキニ非ス、応用ノ任ハ聡明睿智ニシテ経歴実践ニ富メル人ニ在リ、其人固ヨリ国家学ニ通セサルヘカラス、然レトモ唯国家学ニ通セルノ故ヲ以テ直ニ国家ノ実際ニ処シ、政治・経済ノ事ニ当リ、以テ成算ヲ期スルハ、抑々
 - 第27巻 p.332 -ページ画像 
亦誤レリト謂フヘシ