公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15
第28巻 p.395-399(DK280043k) ページ画像
明治32年11月16日(1899年)
是ヨリ先六月八日、栄一、東京市名誉職参事会員ノ任期満了シ、同月十五日再選セラル。十月十九日、市会、市参事会ノ提出セル市街鉄道敷設特許条件ヲ修正シ、市参事会マタ再議ニ付セザリシタメ、是日栄一辞表ヲ提出ス。同月二十二日市会コレヲ承認セシモ、十二月五日再ビ選バル。
東京市会議事録 第一八号・第一三―一四頁 刊(DK280043k-0001)
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東京市会議事録 第一八号・第一三―一四頁 刊
名誉職参事会員中六月八日ヲ以テ任期満了ノ者左記ノ如クニ候条、為念此段及通知候也
東京市参事会
明治三十二年五月二十日 東京市長 松田秀雄
東京市会議長 須藤時一郎殿
渋沢栄一
芳野世経
小川義春
今井兼輔
五味卯三郎
東京市会議事録 第一八号・第五頁 刊(DK280043k-0002)
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東京市会議事録 第一八号・第五頁 刊
明治三十二年六月十五日午後第四時二十五分開議
○上略
一市参事会ノ通牒ニ係ル名誉市参事会員中任期満了者ノ人名ヲ朗読セシメ、尋テ市制第四十四条ニ従ヒ半数改選ヲ行ヒシニ、左ノ如ク当選セリ
五十四点 渋沢栄一氏 三十七点 芳野世経氏
三十六点 星亨氏 三十点 田口卯吉氏
決選投票三十六点 鳩山和夫氏 三十点 鈴木信仁氏
○下略
東京市会議事録 第一八号・第一五―一六頁 刊(DK280043k-0003)
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東京市会議事録 第一八号・第一五―一六頁 刊
本市名誉職市参事会員半数改選ノ選挙ヲ行ヒシ処、左記之通当選候
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条、此段及報告候也
明治三十二年六月十五日 東京市会議長 須藤時一郎
東京市参事会
東京市長 松田秀雄殿
渋沢栄一
芳野世経
星亨
田口卯吉
鳩山和夫
鈴木信仁
東京市会史 東京市会事務局編 第二巻・第二九〇―二九三頁 昭和八年三月刊(DK280043k-0004)
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東京市会史 東京市会事務局編 第二巻・第二九〇―二九三頁 昭和八年三月刊
○明治年間 市制特例廃止以降ノ東京市会 第二章 明治三十二年
第弐拾七節 市参事会員辞職問題
議案第九十三号(第参節参照)市街鉄道敷設条件中公納金ニ関スル率ニ対シ、十月十九日市会ハ是レニ修正ヲ加ヘテ市参事会ニ送付スルヤ市参事会ニ於テハ之ヲ不当トナシ、再議ニ附スベシトノ議論アリタルモ、結局再議ニ附セザリシ結果、市参事会員中、立田彰信・渋沢栄一田口卯吉・鈴木信仁ノ四君ハ左ノ如ク、辞表ヲ提出セリ。
辞職届書
拙者共儀
本年十月十九日東京市会ノ市街鉄道ニ関スル決議ハ、大ニ本市ノ利益ヲ殺キ、之ヲ会社ニ与ヘ候モノト認メ候ニ付、市参事会員トシテ其事ニ従フニ忍ヒス候間、辞職仕候。依ツテ此段御届申上候也。
明治三十二年十一月十五日
田口卯吉
鈴木信仁
東京市参事会
東京市長 松田秀雄殿
辞表
拙者義追々老躯且持病多ニ付、市参事会員辞任仕度、此段御届申上候也。
明治三十二年十一月十五日
東京市参事会員
立田彰信
東京市参事会
東京市長 松田秀雄殿
辞任ニ付届
拙者義、都合有之市参事会員辞任致候間、此段及御届候也。
明治三十二年十一月十六日
渋沢栄一
東京市参事会
東京市長 松田秀雄殿
十一月二十二日ノ会議ニ於テ、峰尾勝春君ハ市長ニ対シ、田口・鈴木
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両君ノ辞職届ハ文字甚ダ穏カナラズ、市長ハ本人ニ対シテ一応ノ注意ヲ為シタリヤ否ヤト問ヒ、松田市長ハ、好意上注意スル所アリシモ、其儘提出ヲ望ムトノコトナリシヲ以テ、之ヲ本会ヘ送付シタリト答フ城数馬君ハ、辞表ニ穏ナラザル文字アリトノ説アルモ、畢竟自己ノ意見ヲ記載シタルニ過ギズト考フ、聞ク所ニ依レバ、市参事会ニ於テモ市会ノ議決ヲ以テ本市ノ利益ニアラズト決議シタルコトアル由、事実果シテ然リヤト質シ、松田市長ハ、其決議ハアリシモ、市参事会ハ秘密会ナルヲ以テ、其詳細ハ公会ノ席上ニ於テハ陳述シ難シト答フ。青木庄太郎君ハ、其ハ一二ノ発議ニ止マリシモノナリヤ、将タ多数ヲ以テ本市ノ不利益ト決定シタルモノナリヤト問ヒ、松田市長ハ、市参事会ハ計算上市ノ損失ト認メシモノナリト明答ヲ避ケタリ。小川義春君ハ、田口君等ハ要スルニ自己ノ意志ヲ表明シタルニ過ギザルヲ以テ之ヲ不都合ト為スベカラズ、故ニ宜シク直ニ承認ヲ与フベシト述ベ。横山富次郎君ハ、総テノ辞表ヲ一括シテ同時ニ問題トスルトキハ、議論錯綜シテ議事ノ進行ヲ妨グル虞アルヲ以テ、先ヅ渋沢・立田両君ノ辞表ニ就イテ当否ヲ決定スベシト議長ニ望ミ、星亨君ハ、余ハ就任日浅ク未ダ前例ヲ知ラズト雖モ、市制ノ上ヨリ考フレバ、市会議員ノ如キ又ハ市参事会員ノ如キ、苟モ名誉職ニ在ルモノハ、其職ヲ辞スルニ当リ何人ノ許可ヲモ受クルノ要ナク、唯一片ノ辞任届ヲ差出セバ足レリト信ズ、然ラバ則チ本会ガ渋沢君等ノ辞職ニ対シ、之ヲ許否セントスルハ越権ノ行為ナリ、議長ハ果シテ何事ヲ問題ニ供セラレントスルモノナリヤト質シ。議長(代理者中島又五郎君)ハ、本会ハ素ヨリ名誉職ノ辞職ヲ許否スル権ナシ、唯辞職ノ理由ガ果シテ市制第八条ノ明文ニ該当スルヤ否ヤヲ議決シ、且其情状ニ依リ、或ル期間公民権ヲ停止シ若クハ市費ヲ増課スル等適法ノ制裁ヲモ加フベキヤ否ヤヲ議決スルニ過ギザルナリト告グ。村上耕一郎君ハ、市街鉄道ニ関スル本会ノ議決ニ対シ、市参事会ニ於テモ市ノ利益ヲ害スルモノト認ムルコトニ議決シタリト云ヘバ、田口・鈴木両君ノ辞職ノ理由タル固ヨリ正当ニシテ、非難スベキ廉ナシ、故ニ市制第八条第二項第六号ニ拠リ、直ニ承認スベシト述ベ。星君ハ、立田君ガ辞職ノ理由ハ明白ナルモ、渋沢君ハ都合之レアリトテ其理由稍々漠然タル嫌ナキニアラズ、併シナガラ同君ガ多年市参事会員トシテ本市ノ為メニ尽力サレタルハ明白ノ事実ナルヲ以テ、此点ヨリ考察セバ、一概ニ理由ナシト云フベカラズ、依テ本員ハ立田・渋沢両君ノ辞職ノ理由ニ対シ、別段異議ナシト雖モ、田口・鈴木両君ノ辞表ニ就テハ、大ニ意見アリ。然レドモ之ヲ論ズレバ議事錯綜シ、採決上ニモ混雑ヲ来スヤ必セリ。依テ一名宛取極メテハ如何ト議長ニ諮リ、議長ハ之ヲ容レ、先ヅ立田君、次ニ渋沢君ノ辞職理由ノ正当ナルヤ否ヤヲ諮リタルニ、両君ノ辞職ハ、共ニ異議ナク之ヲ承認セリ。 ○下略
渋沢栄一 日記 明治三二年(DK280043k-0005)
第28巻 p.397-398 ページ画像
渋沢栄一 日記 明治三二年 (渋沢子爵家所蔵)
十月六日 晴
○上略 午後一時東京市役所ニ於テ、市街鉄道許否ニ関スル参事会員会ヲ開ク ○下略
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○中略。
十月十三日 曇
○上略 午後一時東京市役所ニ抵リ、市街鉄道ノ為ニ開キタル市参事会員会ニ列ス ○下略
○中略。
十月廿五日 晴
○上略 午後一時東京市役所ニ於テ市参事会ノ議席ニ列ス ○下略
○中略。
十月三十一日 曇
○上略 午後東京市役所ニ於テ参事会ヲ開ク、市街鉄道ノ議アリシモ決定ニ至ラス、十一月二日ヲ約シテ散会ス ○下略
○中略。
十一月二日 晴
○上略 十時東京市役所ニ於テ参事会ヲ開キ、市街鉄道ノ事ヲ議ス、星・高山等ノ調査セル計算書ハ市ニ不利益多キ事ヲ詳細ニ陳弁シ、計算上ノ得失問題ニ於テハ一人ノ多数ヲ以テ勝ヲ制セシカ、再議ニ付スルノ如何ニ就テ採決スルニ及ンテ長谷川深造氏ノ同意セサリシ為メ、一人ノ少数トナリテ敗ヲ取リシハ頗ル遺憾ナリトス、蓋シ斯ク明亮ナル道理ト計算トヲ縷述スルモ、尚同意者ノ少数ナルハ他ニ原因アルヘキ事ニテ、此一事ニテモ世道人心ノ腐敗、歎息スルニ堪ヘタリ ○下略
○中略。
十一月七日 晴
○上略 一時東京市役所ニ抵リ市参事会ニ列ス ○下略
○中略。
十一月十九日 晴
○上略 市街鉄道ニ関シ曾テ市役所ニ於テ縷述セシ筆記ノ事ヲ八十島ニ命ス ○下略
渋沢栄一 日記 明治三三年(DK280043k-0006)
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渋沢栄一 日記 明治三三年 (渋沢子爵家所蔵)
一月八日 曇
○上略 曾テ東京市参事会ニ於テ市街鉄道ニ関スル意見ヲ陳述セシ記録ノ草案等ヲ修正シテ、黒崎ノ帰京便ニ、留守宅八十島ヘ送リ遣ス ○下略
東京経済雑誌 第四〇巻第一〇〇六号・第一一六四―一一六五頁 明治三二年一一月二五日 ○東京市参事会員の辞職(DK280043k-0007)
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東京経済雑誌 第四〇巻第一〇〇六号・第一一六四―一一六五頁 明治三二年一一月二五日
○東京市参事会員の辞職
東京市名誉職参事会員立田彰信・田口卯吉・鈴木信仁の三氏は去十五日辞職届を市長へ提出し、渋沢栄一氏は翌十六日辞職届を提出せり、依りて市長は之を去廿二日の市会に報告せり、渋沢氏辞職の理由は事故有之と云ふに在りしが、氏は多年市の名誉職を奉じ辞職するの権利あるを以て、市会は其の理由を質さずして之を承認したり、立田氏辞職の理由は追々老衰とあり、氏の年齢は六十以上なるを以て、市会は異議なく之を承認せり、田口・鈴木二氏の理由は左の如し
辞職届書
拙者共儀、本年十月十九日東京市会の市街鉄道に関する決議は、大
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に本市の利益を殺き之を会社に与へ候ものと認め候に付、市参事会員として其事に従ふに忍びず候間辞職仕候、依りて此段御届申上候
明治卅二年十一月十五日 田口卯吉
鈴木信仁
東京市参事会
市長 松田秀雄殿
此届書に就ては議論紛起したりしが、結局之を正当として承認する説と、不当と認むる説との二に分れたり、而して採決の結果二十名に対する二十八名の多数を以て、不当と認むることに議決せり、而して青木庄太郎氏は之に制裁を加ふべしと発議したれども、賛成者なくして成立せざりき、故に田口・鈴木二氏の辞職は単に不当と認められたるのみ、而して辞職は其の目的を達して成立せり、左れば二氏は満足せしなるべし、何となれば二氏は辞職の理由として正当なりと認められざらんことを希望したるものなればなり
○本資料第九巻所収「東京市ノ市街鉄道」同日ノ条参照。
東京経済雑誌 第四〇巻第一〇〇八号・第一二八一頁 明治三二年一二月九日 ○東京市参事会員の補欠選挙(DK280043k-0008)
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東京経済雑誌 第四〇巻第一〇〇八号・第一二八一頁 明治三二年一二月九日
○東京市参事会員の補欠選挙
東京市会にては去五日渋沢栄一・田口卯吉・安川繁成・立田彰信・鈴木信仁五氏の補欠選挙を行ひたるに、左の諸氏当選せり
渋沢栄一・末吉忠晴・横山富次郎・江島礼二・峯尾勝春
竜門雑誌 第一三九号・第五一頁 明治三二年一二月 ○青淵先生(DK280043k-0009)
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竜門雑誌 第一三九号・第五一頁 明治三二年一二月
○青淵先生 去十一月中東京市参事会員を辞任せられたる同先生は、本月五日の市会に於て満場殆一致を以て再選せられしが、養育院の関係上特に就任を承諾せられたる由 ○下略