デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

2部 社会公共事業

8章 其他ノ公共事業
2節 祝賀会・歓迎会・送別会
5款 東宮御慶事奉祝会
■綱文

第28巻 p.719-721(DK280115k) ページ画像

明治41年9月29日(1908年)

是日当会評議員会開カレ、併セテ関係者・新聞記者等ヲ招ジテ建築落成ノ奉献美術館ヲ観覧ニ供ス。栄一副会長トシテ出席ス。


■資料

渋沢栄一 日記 明治四一年(DK280115k-0001)
第28巻 p.719 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四一年     (渋沢子爵家所蔵)
九月二十九日 雨 冷
○上略 午前十時上野ニ抵リ、新築美術館ノ事ニ関シ評議員会ヲ開キ、新館ヲ一覧シ、且計算其ノ他ノ事ヲ報告ス、畢テ精養軒ニ於テ一同午餐ヲ共ニシテ散会ス ○下略


東宮御慶事奉祝会報告 同会残務事務所編 第三七二―三七九頁 明治四二年四月刊(DK280115k-0002)
第28巻 p.719-721 ページ画像

東宮御慶事奉祝会報告 同会残務事務所編
                     第三七二―三七九頁 明治四二年四月刊
  第九 本会解散準備
    一 評議員の決議
明治四十一年九月に至り奉献美術館建築略ほ竣成を告くるを以て、本会評議員会を開会するの必要あり、案内状を発する左の如し
 拝啓、去ル明治三十三年五月
 東宮殿下御慶事ニ際シ、奉祝ノ為メ美術館ヲ建築シ奉献スルノ目的ヲ以テ設立シタル本会ノ評議員トシテ種々御配慮相煩シ候処、爾来事務一切東京市役所ニ依託シ、尚工事施行ニ付テハ股野帝室博物館総長ニ請託シ同総長並宮内省技監片山工学博士監督ノ下ニ略ホ竣成ヲ告ケ、不日献納ノ手続ヲ完了致度存候、就テハ出来形一応御一覧相願度候間、乍御足労来ル二十九日午前十時上野公園帝室博物館西横手美術館建築場ヘ御光来被成下度、尚御観覧後御協議ヲ要シ度件有之、更ニ同公園内精養軒迄御抂顧相煩ハシ度此段得貴意候 敬具
  明治四十一年九月二十日
              東宮御慶事奉祝会
                副会長 男爵 渋沢栄一
 - 第28巻 p.720 -ページ画像 
                会長  男爵 千家尊福
    評議員宛
  追テ当日此状御持参被下度、尚御差支ノ有無別紙端書ニ依リ御一報煩ハシ度、併テ希望仕候
当日来会者諸氏の美術館観覧後、上野精養軒に於て評議員会を開き、渋沢副会長、会長(病気欠席)に代りて一応の挨拶を為し、且つ述へて曰く、本会創立以来諸氏の尽瘁に依り此に美術館建築工事も略ほ落成を告け、不日将に献納の手続を為さんとするに当り、諸氏の観覧に供するを得たるは寔に当事者の光栄にして、諸氏の与つて力あるを感謝す、尚本会収支決算書(印刷して当日配付す)に依りこれか認定を得たし、又残金参万参千円は美術館に属する諸費に充当する目的を以て、館と共に宮内省に献納し本会の解散を行ひたしと、是に於て評議員大倉喜八郎氏起立して曰く、本館建築工事たる数年に渉り其間種々の障害あるに拘はらす、正副会長其他諸員の鞠躬励精せられしは深く感謝する所なり、而して副会長の報告せられし事項は総て之を是認し、尚此に評議員会の決議を以て正副会長に対し感謝状を呈し、且つ其功労に対しては相当の物品を増呈《(贈)》し聊か其労に対ふへく、其他職員及ひこれに関する有功の諸氏に対し夫夫行賞なかるへからす、开は正副会長に一任して精査失当なからんことを期すへし、又正副会長に贈るへき感謝状及物品は委員を選定して贈進方其他一切を一任すへく、敢て諸氏の意見を問ふと、満場一致大倉氏の発議を賛成し、径ちに委員二名を挙けたり、乃ち子爵曾我祐準・大倉喜八郎の両氏其選に当り議事を了れり
    二 美術館観覧
美術館建築工事落成後は直にこれを宮内省に献納するの必要あるに依り、其以前に於て一般会員をして観覧せしむへきは勿論、本会創立当時斡旋尽力せし諸氏其他関係者の一覧に供するものとし、四十一年九月二十九日を期し評議員招請と同時に前記関係諸氏並新聞記者等を招待せり、其案内状は左の如し
 拝啓、去ル明治三十三年五月
 皇太子殿下御大婚ノ際、奉祝ノ為メ美術館ヲ建築シ之ヲ奉献スルノ目的ヲ以テ本会ヲ設立相成候処、幸ニ御賛助ヲ得テ今ヤ建築略ホ工ヲ竣ヘ不日献納ノ手続ヲ完了スルノ運ヒニ立至リ候、就テハ出来形御一覧相願度候間、乍御足労来ル二十九日午前十時上野公園帝室博物館西横手美術館建築場ヘ御光来被下度、尚御観覧後御報告申上度件モ有之、同公園内精養軒迄御抂顧煩ハシ度、此段得貴意候 敬具
  明治四十一年九月二十日
              東宮御慶事奉祝会
                副会長 男爵 渋沢栄一
                会長  男爵 千家尊福
    何某殿
  (追書前ニ同シ略之)
当日は来会者に対し建築概要並絵端書等を頒ち、尚観覧後上野精養軒に於て粗餐を供し、副会長より一場の挨拶を述へしに過きさりし、而かも起工以来九閲年の長き会務又は建築上に何等の事故なく、此に工
 - 第28巻 p.721 -ページ画像 
事の竣成を告け、これを諸氏の観覧に供し経過を報告するを得たるは独り正副会長以下職員の欣然たるのみならす、相会する諸氏も亦歓喜に耐へさるの状あり、既往今来談笑の間興漸く酣となり、各歓を罄して散会せしは午後一時三十分なりき
会員の観覧日は十月二日より向五日間と定め、左の案内状を発せり
 拝啓、去ル明治三十三年五月
 皇太子殿下御大婚ノ当時、奉祝ノ誠意ヲ表センカ為メ美術館ヲ建築シ之ヲ奉献スル目的ヲ以テ本会設立相成候処、幸ニ御賛助ニ依リ意外ノ好結果ヲ得テ、爾来上野公園博物館構内ニ地ヲ卜シ該館建築ニ著手セシヨリ茲ニ九閲年、略ホ竣成ヲ告ケ不日献納ノ手続ヲ完了セントスルニ立至リ候、依テ一応会員諸氏ノ御観覧ニ供シ度候間、左記事項御承知ノ上御光来被下度、此段御案内申上候 敬具
  明治四十一年九月二十日
              東宮御慶事奉祝会
                副会長 男爵 渋沢栄一
                会長  男爵 千家尊福
 一 御観覧日時ハ来ル十月二日ヨリ同六日迄ノ内、午前九時ヨリ午後三時迄トス、但シ雨天ハ除ク
 一 此案内状ハ御観覧当日御持参ノ上受付ヘ御差出被下度事
 一 出入口ハ博物館西横手本館建築場入口ノ事
 一 御観覧ノ際ハ掛員ノ案内ニ従ハレ度事
然して此五日間は好天気打続き、時候も亦好季節なりけれは、男女の会員にして来観する者少なからす、会員一名毎に記念絵端書一組つゝを頒ち、又休憩所に於て茶菓を呈しぬ、来観者無慮参千五百余名に及へり、今絵端書の図様を云はんに、第一は美術館の正面にして本館の全景を撮影せり、前面大なる松あり稚子の松と呼ふ、風致を添ふ、又若松に双鶴を画きしは千代をことほき奉りし意匠なり、又第二は本館内部のさまを写せしものにして、右なるは正面階段を入りて数歩高楼の直下に当れる円形の所とす、又左りに図せしは左右にある小円塔の階段にして、欄干の結構其一ツを示さんか為めなり、而して緑蔭深き処桜雲靉靆たるさま東台の春色を偲はしむへし、第三右なるは本館の裏面にして、平家建はこれを便殿とす、其左りにあるものは左右小円塔の入口の一ツを顕はせしものにして、菊花・桐及ひ藤の花を画きしは畏しこくも御大婚を表し奉りしなり