デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

2部 社会公共事業

8章 其他ノ公共事業
2節 祝賀会・歓迎会・送別会
15款 祝賀・歓迎・送別会等諸資料 15. 憲法発布二十年紀念祝賀会
■綱文

第28巻 p.823-824(DK280144k) ページ画像

明治42年2月11日(1909年)

是日、日比谷公園ニ憲法発布二十年記念ノ祝賀会開催セラル。東京市長尾崎行雄ハ発起人総代トシテ、東京商業会議所会頭中野武営及ビ栄一ト連名ノ祝文ヲ朗読ス。


■資料

中外商業新報 第八一九二号 明治四二年二月一二日 ○東京市の祝賀会(DK280144k-0001)
第28巻 p.823-824 ページ画像

中外商業新報  第八一九二号 明治四二年二月一二日
    ○東京市の祝賀会
      日比谷公園の盛会
紀元節の佳節を卜し、日比谷公園に於て盛大なる東京市の憲法紀念祝賀会は催されたり△開会前の光景○式場 音楽堂を以て式場に当て、堂の中央に白布を以て覆はれたる大卓を置き、其上に生花を挿みたる大花瓶を載す、又周囲の柱の間には江戸紫の幔幕を絞り、総ての装置いとも神々し、○余興小屋 其他園内広場には数個の余興小屋各所に排置され、何れも数十旒の彩旗を樹て並べて朝の嵐に翩翻たらしめ、其光景の華やかなる浅草奥山も遥かに及び難しと見へたる、午後一時頃より悉く開演せり、○区旗と祝旗 各区より繰込みたる区旗及び銘銘の趣向に成れる各種の祝旗は園内各所に林立し、光彩燦爛を極む、○群衆は黒雲 群衆の数は幾万に及び、数百名の巡査声を嗄らし狂気の如くなりて行手を制すれども及はず、所々に人崩れを打ちて老幼の危険言ふべからず、丘上より見下せば宛然人の黒雲、人の黒浪にて、
 - 第28巻 p.824 -ページ画像 
流石に広き園内も立錐の余地なかりき、○煙花の発揚 正午煙花を打揚ぐ、轟々殷々其響天地を動揺せしめんばかり、△開会後の盛況○祝賀式 軈て午後二時式場音楽堂の後に設けたる来賓席には、各大臣以下、官吏・貴衆両院議員・有力実業家・発起人等相参集し、又式場の前面には幾万の士民式場に向て整列す、此時洋々たる奏楽あり、尾崎市長式場に上り左の祝文を朗読す
 縉紳各位並に来会諸君
 本日吾人か憲法発布紀念式を挙行するに方り、多数諸君の賛同を得朝野貴賓の来臨を恭うしたるは、吾人の深く欣栄とする所なり
 回顧すれば允文允武なる
 今上天皇陛下が、国家の隆昌と臣民の慶福とを念はせられ、此の不磨の大典を宣布し賜ひしより茲に二十年 皇威日に揚り国運月に栄へ、臣民の康福は年と共に増進す、而して彼の二大戦役に際し和衷共同、挙国一致、以て国難に膺りたるが如きは、憲政の表彰せる美果の一として、吾人の永く銘記せんと欲する所なり
 茲に満二十年の佳辰に方り、吾人は幸に輦轂の下に住し微衷を捧けて 聖徳を謳歌し此の光輝ある紀念日を祝するを得、吾人の光栄何 物か之に如かん
 只夫れ憲政の基礎は自治団体にあり、吾人帝国首都の市民たるもの豈に自治の本旨を体し、其の円満なる発達を企画し、以て憲政の進歩に貢献せすして可ならんや、之を祝辞とす
  明治四十二年二月十一日
          憲法発布二十年紀念祝賀会発起人総代
                      尾崎行雄
                      中野武営
                   男爵 渋沢栄一
右了つて君が代の奏楽あり、夫より発起人総代中野武営氏の発声にて「両陛下万歳」「帝国憲法万歳」を各三唱す、声四辺の樹木に響き渡りて百雷の一時に墜ちしが如く、暫くは鳴りも止まず、奏楽の裡に式を了る○来賓と群衆 は式了ると共に三々伍々園内を一周し、各余興を観尽して貴衆両院の同祝賀会に臨席し、群衆は終日打興じて此目出度一日をことほげり
   ○竜門雑誌第二四九号ニ略々同一ノ記事アリ。略ス。
   ○是日栄一ハ出席セザルモノヽ如シ。