デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治41年10月9日（1908年）

是日、栄一外孫穂積重遠、児玉仲子結婚式ヲ挙グ。栄一出席シテ祝詞ヲ述ブ。次イデ同月二十五日、上野精養軒ニテ披露ヲ行フ。栄一出席シテ祝詞ヲ述ブ。

渋沢栄一　日記　　明治四一年　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
 - 第29巻 p.94 -ページ画像 
九月二十二日　曇　涼
○上略　朝飧後穂積歌子来リテ、重遠ノ婚儀ニ関シテ種々ノ協議アリ　○下略
　　　○中略。
十月九日　晴　冷
○上略　午後二時兼子ト共ニ日比谷神宮ニ抵リ、穂積重遠ノ婚儀ニ会ス、四時過式畢リテ華族会館ニ抵リ、穂積・児玉両家ノ親族相会スル晩飧会アリ、卓上ノ祝詞ヲ述ヘ、児玉家ノ為メニ杯ヲ挙ク、夜十一時王子ニ帰宿ス
　　　○栄一ノ祝辞筆記ヲ欠ク。
　　　○中略。
十月十一日　晴　冷
○上略　児玉伯爵ヨリ案内セラレタル婚儀後ノ祝宴ニ出席スル為メ、華族会館ニ抵リ晩飧会ニ列ス、多人数来会ス、皆穂積・児玉両家ノ新戚《（親）》ナリ、一同歓ヲ尽シ夜十時散会ス、夜十一時王子ニ帰宿ス、兼子同伴ス
　　　○中略。
十月二十五日　晴　冷
○上略　午後一時半穂積・児玉二氏ノ催ニ係ル婚儀ノ披露会ニ出席ス、場所ハ上野精養軒ニ開キタリ、開会者頗《（来）》ル多ク、余興数番アリ、後立会ノ饗応席ニ於テ両家ノ祝福ヲ為シ、夜六時過キ帰宿ス
○下略

竜門雑誌　　第二四五号・第八八頁　明治四一年一〇月
○穂積重遠君の結婚　本年七月東京帝国大学法科大学を優等の成績にて卒業せられたる同君は、法学博士土方寧氏及陸軍中将男爵石本新六氏の媒酌を以て、伯爵児玉秀雄氏令妹仲子の君と、本月九日日比谷大神宮に於て芽出度婚儀を挙行せられたり

（八十島親徳）　日録　　明治四一年　　　（八十島親義氏所蔵）
七月十八日　晴
朝例刻出勤、今夜牛込穂積氏ヨリ招待セラレ、徳子ト共ニ之ニ応ス、重遠氏卒業ノ内祝ヲ兼ネ、縁女タル児玉仲子嬢、光子嬢ノ縁約者石黒忠篤氏等ヲ紹介ノ為、青淵男爵御夫婦ヲ始メ、綱町・原町両家、八束氏・重穎氏・尾高・大川、其他三四十人ノ客ニシテ、表坐敷ニ食台ヲ列ネ洋食ノ馳走アリ、終テ洋室ニテ団欒ノ裡ニ、渋沢男爵ハ孫女諸氏ニ囲繞セラレ女子処世談等不相変尊重スヘキ教訓アリ、十二時帰宅、仲子嬢ハ愛クルシキヨキ御嫁、又忠篤氏ハ身ノ丈五尺七寸八分トイヘル大男ニシテ、本年法科卒業ニテ農政専攻ナリトイヘリ、又父男ノ面影ヲ備ヘタル人也
　　　○中略。
十月一日　曇
○上略　十時華族会館ニ至ル、之ハ来ル九日穂積家祝宴ノ節ノ下検分ノ為ニシテ、穂積令夫人・渋沢若主人ト相共ニ視察ス　○下略
　　　○中略。
十月八日　曇
 - 第29巻 p.95 -ページ画像 
○上略　明日開催サルヘキ穂積家結婚式及祝宴ニ関スル仕事（依托サレタル）ニテ、事務所員一同殆終日経過ス　○下略
十月九日　晴
今日挙行ノ穂積重遠氏ノ結婚（児玉仲子嬢トノ）ニ付テハ、兜町事務所員ニ種々依頼アリ、殊ニ渋沢若主人氏大ニ斡旋奔走サルヽニ附帯シ一同益々之ニタヅサハル事トナリタル次第、今朝日比谷大神宮ニ立寄リ、幕装飾・供待・天幕ノ工合等ヲ検分シ、次ニ華族会館ニ至リ、若主人氏及穂積博士ト共ニ各室装飾等ノ工合ヲ見、宴席席次等ノ事確定ス、昼兜町ニ出テ、更ニ午後華族会館ニ至ル、三時大神宮ニテ式ヲ終ラレ、五時ヨリ此処ニテ祝宴アリ、主客八十三人、休憩室ニテ新婦人ノ引合ハセアリ、（初白ムクニカケ、次黒、次ハ薄色）次ニ仕舞及囃子ノ余興、次ニ宴会、終ラントスルニ臨ミ媒妁石本男ノ祝詞、寺内子ノ祝詞、渋沢男ノ同上、穂積博士ノ挨拶等アリ、終テ又余興（仕舞・狂言）ニ移リ、九時半新夫婦及両親・媒妁退席、終テ退散、無滞済ミタリ、今日ハ親戚ノミナルモ、予等夫婦モ招カレタリ、お嫁サンハ頭髪頭形・体姿最ヨク顔モ亦整ヒ、愛嬌アリ、甚評判宜シク、余程似合ノヨキ取組ナリト可言、先ツ近来ニテノ秀逸ナル好縁組ナラン
　　　○中略。
十月二十日　晴
○上略　若主人氏ト共ニ上野精養軒ニ至リ、来ル廿五日穂積氏結婚披露式ノ準備ニツキ協議ヲ為ス　○下略
十月廿二日　雨後晴
朝若主人氏ト上野精養軒ニ至リ、廿五日ノ準備向更ニ打合ハセヲ為ス　○下略
　　　○中略。
十月二十五日　日曜　晴
今日ハ午後二時ヨリ上野精養軒ニ於テ穂積・児玉両家ノ新婚披露会アリ、此催ニ付テハ渋沢若主人氏ト小生トニ総ヘテノ設計準備ヲ委托サレタルニツキ、過日来頗熱心ニ尽力シ来リタリ、今朝モ八時自宅ヲ立出テ現場ニ至リ諸準備ヲ完成ス、来客四百余名、折柄快晴ノ好天気ナレバ先庭園ノビール店・茶コーヒー店等ヲ開キ、三時ヨリハ長唄ノ余興ヲ始メ、右終リテ階上ニ食堂ヲ開キテ立食ノ饗応アリ、終テ五時頃一同散会、先々好都合ニ相済ミ安心セリ、室内ノ装飾、料理等ノ事モ先々中庸ヲ得テ、程ノヨキ処ヲ得タルモノヽ如シ　○下略