デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治32年―同42年（1899-1909年）

是間ニ於ケル八十島親徳日録ニ記載セラレタル、渋沢家同族会ニ関スル事項。

（八十島親徳）　日録　　明治三二年　　　（八十島親義氏所蔵）
十二月廿八日　曇
○上略　午後四時ヨリ於兜町邸、同族会議開会ニ付依例参列、今回ハ主要ノ議事少し、一時半頃帰宅、阪谷御夫婦ハ病気ノ為出席無之　○下略

（八十島親徳）　日録　　明治三三年　　　（八十島親義氏所蔵）
一月卅日　晴
　　　　孝明天皇祭日
休日ナレト、今夕同族会（於深川邸）アルニ付、其準備書類等ノ為メ午前十時ヨリ出勤ス
午后四時深川邸ニ至ル、五時頃於二階坐敷開会、青淵先生・敦子殿・穂積歌子殿・阪谷御夫婦、外ニ新年ニ付穂積重遠・律之助両氏列席、兜町夫人ハ熱海転地中（肺尖カタル）諸家子息嬢方ハ風邪ノ為出席ナシ、又尾高・芝崎・予及松平参列ス　先ツ新年発回ニ付、青淵先生家法及家訓ヲ朗読セラル、終テ表下坐敷ニテ食事、料理ハトキワノ仕出料理ニシテ、予等参列員モ参列ヲ被命
目出度銀三組杯ヲ被廻、余興ハ竹本三福（女ギダユウ）来リ、食事中野崎村外一段ヲ語レリ
御食事后、十時前ヨリ又於二階真ノ会議始マリ、半季決算・半季予算及提出議案吟味セラレ可決○中略
又青淵先生ハ、繁務ニ付可成関係ノ薄キ会社ノ重役ハ辞退ノ方針ヲ取リ、先ニ東洋汽船ヲ辞セラレシカ、今回函館船渠辞任セラルヘキ旨、及向後可成少クスルノ決心ナル旨ヲ述ヘラレ、阪谷氏ヨリ、関係厚キモノニテモ、人造肥料ノ如キ、帽子ノ如キ、煉瓦ノ如キ、製綱ノ如キ敢テ大人ノ御力ヲ労スル程デナキ事業ノ会社ニ対シテハ、篤二殿及八十島ニ其任ヲ譲リテ可ナルヘキ旨ヲ被述、先生モ差当リ帽子会社ノ如キハ八十島ニ譲ルモ、立派ナ取締役タリ得ベシナド被話、之ハ確定ノ話ナラネドモ、将来ノ思入談ナリ、夜一時散会　○下略
　　　○中略。
二月廿五日　快晴暖　日曜
○上略
又同族会ニ於テハ、為差重要ノ事件ハナシ、普通ノ会合也
 - 第29巻 p.314 -ページ画像 
余興ハ素行及弟子二人ノ義太夫也、夜十二時散会　○下略
　　　○中略。
三月卅一日　晴
○上略
夕於兜町邸同族会議アリ、夜十一時帰ル
　　　○中略。
四月三十日　晴
○上略　午後四時ヨリ兜町邸ニ於テ同族会議アリ、阪谷氏・ホツミ夫人・深川若夫人等列席、予等亦参列、十二時帰ル
○下略
　　　○中略。
五月廿七日　晴　日曜
○上略　今日ハ同族会也、若主人及穂積博士帰朝後初メテノ同族会ニテ、今日ハ久シ振全員全ク揃ヒ出席、食事ハ偕楽園ノ支那料理、余興ハ遊左ニ村井一也　○下略
　　　○中略。
六月三十日　曇
○上略
本日ハ夕ヨリ兜町邸ニ於テ同族会議開会、穂積夫人病気不参、兜町夫人伊香保転地中、他ハ皆来会セラル、格別重要ノ議案ナシ、余興ハ素行ノ義太夫、食事ハホテルノ洋食ナリシ　一時帰リ休ム
○下略
　　　○中略。
七月廿九日　日曜　涼シ
此日王子別荘ニテ同族会議開会ニ付　○中略　四時ヨリ新築子供室ニテ同族会議アリ、半期決算・予算等アリ、八時散会、本日ハ涼クシテ仕合ナリキ　○下略
　　　○中略。
八月三十日　晴
○上略　午後五時ヨリ於兜町同族会、各邸ヨリ参集、青淵翁モ午後七時大磯ヨリ帰京セラル、議事ハ別ニ重要ノ件ナシ、余興ハ白痴《（伯痴）》ノ近藤勇伝・天津攻撃及青淵先生伝ノ一節（尾高長七郎上京ヲ追カケ、熊谷駅ニテ説得ノ処ヨリ、国事奔走ノ為父君ヘ承諾ヲ求ムル事、長七郎下東切止ニヨリ、高崎城乗取リ、横浜異人館焼撃ノ暴企中止ノ件ニ至ル）等講談也　○下略
　　　○中略。
九月廿九日　晴　冷気七十度
○上略　午後五時ヨリ兜町邸ニテ同族会アリ、浅の回漕部組合設立ニ付、加入七万円出資ノ事、台湾製糖会社百株加入ノ事等ハ重ナル議案也、食事ハ帝国ホテルノ仕出シ、余興ハ講談師貞水（雷電出世談・一心多助・加藤清正桃山御殿地震之件）　○下略
　　　○中略。
十月廿七日　晴
○上略　今夕於兜町邸同族会議アリ、阪谷夫人ノ外皆来会、為差異リタル
 - 第29巻 p.315 -ページ画像 
議案ナシ　○下略
　　　○中略。
十二月廿七日　晴
○上略　今夜兜町邸ニテ同族会アリ、議案ハ為差大事件ナシ、深川ノ夫人ヲ除クノ外皆出席、余興ハ円左、料理ハ帝国ホテル仕出ノ洋食、十二時帰ル

（八十島親徳）　日録　　明治三四年　　　（八十島親義氏所蔵）
一月三十日　孝明天皇祭　晴
此日同族会アルニ付、午前十時出勤午後三時ヨリ深川邸ニ至ル、兜町令夫人ヲ除クノ外一同来会、家法朗読式ノ後、半期決算・同予算等ノ提出ノ為、議事ニ時間取レ、七時半ヨリ支那料理食事、余興ハ西幸吉ノ薩摩琵琶（重盛諫言上下）尾高次郎氏ノ義太夫（忠臣蔵四段目判官腹切）若主人ノ同上（三十三間堂）両氏ノ浄瑠璃、一ハ其音大ニシテ壮一ハ小ニシテ婉曲、何レモ意外ニ妙趣アリ
○下略
　　　○中略。
二月廿六日　晴
○上略　午後五時ヨリ兜町邸ニテ同族会開会、深川令夫人ヲ除クノ外集会三本木予算決算及関直之新ニ養魚業ヲ開クノ義ニ付テモ相談アリ、余興ハ村井一也、午前一時帰宅
○下略
　　　○中略。
三月廿九日　曇午後ヨリ風雨夜半豪雨
○上略　夕刻ヨリ兜町邸ニ於テ同族会開会、深川御両人所労欠席、他ハ皆出席、余興ハ遊左、一時帰宅　○下略
　　　○中略。
四月廿四日　○天候ノ記載ナシ
今日定刻出勤、夕刻兜町邸ニ於テ同族会議アリ、夜半一時帰
　　　○中略。
五月十九日　晴　日よう
○上略
右終テ兜町事務所ニ於テ臨時同族会アリ、蓋シ入閣勧誘問題ニ付テノ協議ナルヘシ　○下略
　　　○中略。
五月廿五日
○上略　本日ハ午後王子ニ於テ同族会アリシモ、不得已欠席ス
○下略
　　　○筆者病気ノタメ、五月二十四日ヨリ六月十七日マデ渋沢家ニ関スル記事ナシ。
　　　○中略。
六月廿二日　雨
○上略　今日ハ王子ニテ同族会アルニ付、雨中車ニテ正午同邸ニ至ル、一時済
○下略
 - 第29巻 p.316 -ページ画像 
九月一日　日曜　曇時々少雨
○上略　同族会開会、鰻丼位ニテ至極簡単ナル会也　○下略
　　　○中略。
九月三十日
○上略　今夕兜町ニテ同族会アリ　○下略
　　　○中略。
十月三十日　雨
○上略　午後五時ヨリ兜町事務所ニ於テ同族会アリ、穂積氏夫婦ヲ欠ク外一同揃ハレタリ、本日ハ来廿三日昨年還暦祝賀・新築披露・昨年叙爵祝答礼等ヲ兼ネ、王子ニテ園遊会開会ノ件ニ付テ評議ニ時ヲ費シ、近来珍シク十時頃マデカヽリタリ
　　　○中略。
十一月三十日　晴
○上略　今夕兜町事務所ニテ同族会議催サレ、青淵翁・夫人・篤二氏・夫人・穂積氏・夫人及阪谷氏来会、問題ハ深川ヘ煉瓦倉庫建築（倉庫部用トシテ）ノ一案ナリシカ、再調ニ附ス事トナル十時帰宅
　　　○中略。
十二月十九日　朝雪降午後曇
○上略　兜町ニテ同族会アリ、同族皆集合セラル　○下略

（八十島親徳）　日録　　明治三五年　　　（八十島親義氏所蔵）
一月卅日　孝明天皇祭　晴　暖
○上略　夫ヨリ深川渋沢邸ニ至ル時ニ午後二時半也、本日ハ同邸ニテ同族会議被開　王子・原町・牛込等各夫婦被参集、半期決算・予算等ノ議事多ク、終リテ家法及家訓ノ朗読式アリ、終テ支那料理ノ饗応、林中ノ常磐津（関ノ戸・宗清乗合舟）アリ十一時過帰宅　本日朗読式ノ節ハ、渋沢武之助・正雄・愛子・秀雄・穂積重遠・阪谷希一諸氏モ列席饗応ノ席ヘハ伊藤半次郎モ列席セリ
○下略
　　　○中略。
二月廿五日　晴　暖意外ニモ五十度以上
例刻出勤、今夕同族会議アリ、十一時帰宅、無別事
　　　○中略。
三月廿一日　春季皇霊祭日　曇午後少雨
今日ノ休日ニハ午後ヨリ阪谷氏ニ於テ同族会兼帯ノ御客アリ、予ハ主用アリ十一時頃ヨリ飛鳥山ニ至リ、男爵ノ用務ヲ弁シ、午後三時阪谷氏ニ至ル、同族会トシテハ男爵・若主人・穂積等各御夫婦、及参列員タル尾高・芝崎・松平及予也、其他ノ来客ハ大川老夫婦・尾高邦子・次郎氏夫婦・田中栄八郎令娘等、招宴ノ主旨ハ新築・昇進・出産等種種ノ祝意ヲ兼ネタルモノナリト、始メ尚雨フラサルニ先チ、庭園掛茶屋ニテ天麩羅・団子等ノ饗応アリ、予ハ希一氏等ノ仲間ニ入リ、ロンテニスヲ試ミナドス、後別室ニ於テ同族会議被催、男爵ノ欧米漫遊モ未タニエキラズ、六時前頃ヨリ酒宴ニ移ル、赤坂八百勘ノ料理ニテ、赤坂芸妓四・五名斡旋ス、余興ハ伊十郎・喜三郎連中ノ長唄（石橋・
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進帳・舌出三番）遊左ノ落語（士族ノ鰻屋・仲ノヨイ夫婦等）等アリ午後十一時一同退散、予ハ十二時帰宅休ム
　　　○中略。
四月十九日　朝雨昼晴夕雨夜晴
○上略
今午後四時ヨリ同族会開会、旅行不在中ノ処務其他要件協議
　　　○中略。
五月十日　晴
○上略　今夜同族会議アリ、阪谷令夫人ノ外皆集会セラレ、十一時退散ス
　　　○中略。
十一月廿六日　晴
○上略
午後三時ヨリ王子ニテ同族会アリ、行ク、十一時帰ル

（八十島親徳）　日録　　明治三六年　　　（八十島親義氏所蔵）
一月三十日　孝明天皇祭　晴
○上略
午後三時ヨリ予ハ深川渋沢邸ニ至ル、同族被打揃、新年ニ付家法ノ朗読式・家訓ノ朗読講演、終テ決算・予算ノ吟味アリ、次キニ支那料理ノ食事、余興ハ素行ノ義太夫（葛ノ葉・三勝半七）アリ、十二時帰ル
　　　○中略。
二月廿八日　晴
○上略　午後ヨリ兜町ニテ同族会アリ
財産所属未定物件ノ整理、王子・石川島等損金ノ整理等、重ナル事也
○下略
　　　○中略。
三月廿七日　晴
○上略　今夕兜町ニテ同族会アリ、男爵夫婦始各家御夫婦来会、浅の礦山部損失ニ付、組合ヨリ脱退等ノ件詳議アリ　○下略
　　　○中略。
四月廿日　曇
○上略　午後五時ヨリ同族会アリ、男爵夫人ヲ除クノ外皆来会、十一時半帰ル
　　　○中略。
五月廿九日　曇　強風
○上略　午後五時ヨリ兜町ニ於テ同族会開会　○下略
　　　○中略。
六月廿九日　晴
○上略　本日午後六時ヨリ同族会ヲ招集セラレシカ、他ノ来客輻湊シ　○中略　来会ノ同族諸氏ハ只徒ラニ男爵ノ手ノ明クヲ待チ、漸ク午前一時ヨリ始マリ、終リシハ二時半、東ノ空稍白マントスル頃也
　　　○中略。
七月卅一日　晴
○上略　午後六時ヨリ兜町ニテ同族会議アリ、上半季諸決算及下半季諸予
 - 第29巻 p.318 -ページ画像 
算等ノ評議ニテ、食後十一時過迄カヽリ　○下略
　　　○中略。
八月卅一日　晴　但時々驟雨アリ　八十三度
○上略　午後五時ヨリ兜町ニテ同族会アリ　○下略
九月廿二日　雨
○上略　先般来合間ニ取調中ノ渋沢家々法質疑録脱稿ス　○下略
　　　○中略。
九月廿九日　雨
○上略　午後六時ヨリ兜町ニテ同族会議アリ、男爵始議員八名悉皆揃フ、格別ノ議事ナシ　○下略
　　　○中略。
十月三十日　雨
○上略
今夕五時ヨリ兜町ニテ同族会開会々員全員出席、浅の熊沢ノ件結末ノ事モ内議、遂ニ終局ニ近ヅケリ、今夕食事ハ支那料理　○下略
　　　○中略。
十一月三十日　晴
○上略
今夜王子ニ於テ同族会議開会、十月分ノ計算書ノミナルニ付直ニ結了ス　○下略
　　　○中略。
十二月廿七日　日曜　北風ハゲシ
○上略　今日同族会議アリ、通常ノ計算ノ外ニ、目下京釜鉄道ニ対シ政府ヨリ速成ヲ促シ、且資金上ノ保護ヲ与フル代リ、大ニ干渉シテ重役ノ如キハ官選トナシ、大改革ヲ加フルニ付、政府ヨリ是非男爵ニ詢リ度否一応其聞ニ入レタキ旨、当局ノ逓信大臣・次官等ヨリ申込アルモ、賀古主治医ハ医者トシテハ何分未タ之ニ同意シ難キ旨答アリ、而シテ魯公使ローゼン男モ目下同病ナルモ、一国ヲ代表スルノ身体ニシテ、シカモ和戦ノ分レ目ニ係リ、最重責ヲ負フ際故、医戒ニ背キテ事務ヲ処スルノトハ事変ハリ、男爵ノ一身ハ必スシモ京釜ノ為ニ犠牲ニスヘキモノニ非ルニ付、乍不本意政府ノ申入ニ背キ、此処当分ハ中間ニ阻止スル事ニ決議セラル、尚外交上ノ関係ヨリ政府カ京釜ニ重キヲ置キ今回ノ改革ヲ企ツルニ至リシ事情ハ、委サニ阪谷氏ヨリ談話アリタリ
○下略

（八十島親徳）　日録　　明治三七年　　　（八十島親義氏所蔵）
一月卅日　暖　少雨
○上略　午後一時半ヨリ王子別邸ニ至ル、本日ハ同族会議ノ発会ナリ、十二月分計算・下半季決算・上半季予算・臨時ノ議案ノ外、尚此度ハ初メテ総財産目録、又決算・予算ニ関スル報告書等ヲ調製セリ、又特ニ男爵ノ命ニテ累年利益及配当調・各家歳費調等モ取調ヘタリ、本日ハ男爵ヨリ御一同ヘ種々御談話モアル筈ナリシニ、付男爵《（衍）》ハ続テ耳疾御快復出ラレズ、残員丈ニテ会ヲ終ル、穂積博士年長者トシテ家法ノ朗読及家訓ノ講演アリ、終テ食事、更ニ其後如燕ノ講釈（お軽ノ身売）
 - 第29巻 p.319 -ページ画像 
アリ　○下略
　　　○中略。
二月十四日　日よう　晴
○上略
昼食後王子邸ニ至ル、去月卅日同族会ニ男爵頭痛ノ為メ出席出来サリシニ付、本日特ニ各員（男爵夫人・篤二氏・同夫人・穂積氏・同夫人阪谷氏・同夫人・参列員尾高・芝崎・八十島、外ニ武之助・正雄・愛子・秀雄諸氏）ヲ病床ニ召サレ、先ツ浅の礦山部損失負担ノ結果、将来年収減スルニ付、各家歳計少クトモ二割ヲ減スル様心ガクベキ事（殊ニ大戦役ニ際会シタル事ナレバ尚更）（不奢不吝中流ニ位シ、豊ニ暮シ、余リケチケチ緊縮セサル決心ニハ反スレト、乍遺憾）ヲ始トシ敢テ此度ノ病気ニ引続キ、急速自ラ世ニ無キモノニナルト決メル訳ニハ非レド、予メ予ナキ後ノ事ヲ慮ルトテ、其際第一ニ王子邸ヲ売却スヘキ事、養育院・女子大学・商業校等ヘ五・六万ノ寄附ヲナスヘキ事、兼子ハ実子中最早ク一家ヲ構ヘシモノノ家ヘ同居スヘキ事等ヨリ、尤将来憂慮ニ堪ヘサルハ腹カワリノ結果、兼子ト篤二以下ノ継子、実子ト継子間ノ間柄ノ事ナルガ、万一互ニ意思疏通ヲ欠ク様ノ事アリテハ家法制定ノ趣旨ニモ反スル次第、決シテカヽル過ナク、特ニ予ノ遺言トシテ双方ヨリ注意ヲナシ、互譲協和スヘキ事ヲ懇々ニ説カレタリ、列席ノ人々、殊ニ婦人連中ハ何レモ泣涕シテ感シ、何レモ謹恐服膺ヲ誓ハレ且予等ニモ篤二ノ片腕トナリ、公平ノ見地ヲ以テ補導ニ任シ、若シモ其間ニ気付アラバ、諫争ヲ頼ムトノ旨、且予ニ対シテハ世ニ雄飛シ得ル身ヲ以テ、我一家ニ局限スル事気ノ毒ノ至ナレド、又関係諸事業ノ分担等相当ニ尽力モ乞ヒ度、何分宜敷頼ム等ノ御語アリ、感泣シテ謝詞ヲ陳フ、阪谷氏ニ於テハ銘々家計節約ヲ主トスキモ《（ベ脱）》、同族中各身分ノ差ニ依リテ将来生計ノ不向モ可生、決シテ華奢ヲ競フ等ノ事ナキ様致度旨、又自ラ或ハ将来渋沢家関係事業ヲ管理スルノ位地ニ就クヲ可トスル場合ヲ可生トノ意味ヲ被陳（男爵ハ官ニ在ルモノハ、宜シク場合ニ依リイサキヨク之ヲ捨ツルノ決心ハ必要ナルモ、其場合ニ至ラスシテ之ヲ捨ツルハ不宜トノ意ヲ被申）又穂積氏ハ家法ノ事ニ付将来タトヘ窮窟ノ点ハ可生モ、オキテナレハ極メテ狭義ニ適用シテ、苟クモ之ニ違反ノ取扱ヲセサル習慣ニシ度旨ノ演陳アリ
男爵ノ一命ニ近未来異常ノ事アルヘシトハ、誰モ信セサル所ナルガ、殆満三ケ月ニ垂ントスル病臥中、種々思慮ノ末殆遺言的態度ヲ以テ、今日ハカク訓諭アリタルモノト被思、カルカ故ニ諸員一同最深ク感銘セラレタルハ疑モナキ事実也、今日ハ偕楽園ノ支那料理　○下略
　　　○中略。
二月廿九日　晴
○上略　午後四時前ヨリ王子行、本日ハ同族会ナリ　○下略
　　　○中略。
三月廿九日　晴
○上略　午後五時兜町ニテ同族会開会、男爵御夫婦ヲ除クノ外皆出席
○下略
　　　○中略。
 - 第29巻 p.320 -ページ画像 
四月廿八日　晴極メテ好天気
○上略　今日ハ同族会也、然ルニ男爵昨午後ヨリ又々七度四・五分ノ熱アリ　○中略　今日夕ノ如キハ八度ニ達シ、氷袋ヲ当テラルヽ位ニシテ、別席ニテ計算書ヲ議題トシ決了、又食事ハ支那料理
○下略
　　　○中略。
五月廿九日　曇　日曜
○上略　午後三時帰宅、少憩ノ後王子行、同族会也　○下略
　　　○中略。
六月三十日　快晴　暑シ
○上略　午後四時ヨリ王子ニ至ル同族会也、青淵先生ハ病間試ニ御居間ニ出テ暫時平坐談話セラル、昨年十月以来同族会ニカク平坐列席セラルルハ今回初メテ也、支那料理也、阪谷氏持参ノ王子醸造試験所ノ加工ニ係ル普通酒ヲ三分一ニコンデンスシタルモノ（軍隊用）ヲ試ム　○下略
七月廿七日　晴
○上略　男爵揮毫完成ノ家法・家訓ノ読合ハセ等ヲナシ　○下略
　　　○中略。
七月卅一日　大雷雨　日よう
○上略
午後王子ニ至ル同族会也、半期決算・予算書類ノ評議アリ、穂積博士来月十三・四日頃出発渡米ニ付送別旁小三ノ落話《（語）》ヲ余興トセラル　○下略
　　　○中略。
八月三十日　雨　風殆少シ
○上略　午後五時ヨリ久シ振リ兜町ニテ同族会被開、出席者ハ若主人夫婦穂積夫人ト阪谷氏ト也○下略
　　　○中略。
九月二十八日
○上略
午後四時ヨリ王子ニテ同族会開会セラルヽニ付出席ス、男爵今回ノ全快ヲ機トシ、従来関係ノ諸会社其他公私協会類ノ職任ヲ大ニ減セラル方針ニテ、其取捨勘考中ナル旨、及断然謝絶スルモノト、又己レハ謝絶セラルヽモ出資ノ関係上、若主人又ハ予ヲ渋沢家代表ノ意味ニテノ重役ニ撰出セント思考セテルヽ分モアルベキ旨ヲ申聞ケラル、晩餐会ハ偕楽園ノ出前　○下略
　　　○中略。
十月廿八日　晴夜一寸雨
○上略　今夕王子ニテ同族会アリ　○下略
　　　○中略。
十一月廿九日　曇
○上略　午後王子邸ニテ同族会アリ　○中略　王子ニテハ各員参同セラレ、夕食ニハ神田川鰻飯ノ馳走アリ　○下略
　　　○中略。
十二月廿七日　晴
○上略
 - 第29巻 p.321 -ページ画像 
今夕飛島山邸《（鳥）》ニ於テ同族会開会ニ付参列　○下略

（八十島親徳）　日録　　明治三八年　　　（八十島親義氏所蔵）
一月廿九日　朝濃霧其後半晴　日曜
今日ハ日曜ナレトモ、明日同族会議提出書類準備ノ用向アルニ付、十時ヨリ出勤　○下略
一月三十日　孝明天皇祭　曇　寒シ
○上略　午后二時ヨリ飛鳥山邸ニ至ル、年初ノ同族会ニシテ家法朗読式其他依例行ハル、常磐屋ノ料理ニ貞水ノ講談、帰宅セシハ夜半過ナリ
○下略
　　　○中略。
二月廿六日　日曜　曇
○上略　正午兜町ニ至ル、日曜ナレトモ同族会開会ノ為也、六時帰ル　○下略
　　　○中略。
三月廿六日　日曜　快晴
○上略　昼王子邸ニ至ル同族会也、昼メシ（支那料理）後会議、黄昏帰宅
　　　○中略。
四月廿八日　曇
○上略　夕兜町ニテ同族会議アリ、諸家夫婦皆集マラレ、十時頃散会、ペスト発生ヲ動機トシ、深川ハ宗家ノ定住地ニハ不適当ト認ムルニ付、行ク行クハ山ノ手空気ノヨキ所ヲ見立テ、移転ノ方針ヲ取リタキモノナリナドノ談モ出ツ
　　　○中略。
五月廿九日　快晴
○上略
今日ハ夕刻兜町ニテ同族会被開、終テ一統偕楽園ニ至リ晩餐ヲ喫ス、一新例ヲ開キタルナリ　○下略
　　　○中略。
六月廿八日　時々雨
○上略　午後五時ヨリ兜町ニテ同族会、穂積博士ヲ除クノ外出席、慶喜公御伝記編纂ノ件ニ付、紀料ハ江間担当追々進行スレトモ、本文ハ福地ノヤリ方意ノ如クナラズ、将来ノ方針ヲ如何ニスヘキヤニ付テ相談アリ、阪谷氏ノ意見ハ結局ハ福地ニ執筆セシムルヲ可ト認ムルモ、先以テ二十枚位ノ大縮図的ノ短文ヲ作ラシメ、夫レヲ以テ方針ヲ定メ、標準トナシテ、将来ヲ責メタシトノ意見アリ、男爵同意シ、其方針ヲ取ル事トセラル、会議了リテ新富町竹葉ニ至リ、御一同ニテ鰻飯ヲ味ハル、予等モ末席ニ列ス、十時半帰宅
　　　○中略。
七月三十一日　大雨　涼寧寒シ
○上略
例刻出勤今夕兜町ニテ同族会アリ、皆被揃、上季決算・下季予算等ノ会ナルガ何レモ好結果、殆未曾有也戦争ノ間、諸会社配当多キ為ナリ夜十時半帰宅
　　　○中略。
 - 第29巻 p.322 -ページ画像 
八月三十日　曇午後晴
○上略
午後五時ヨリ兜町ニテ同族会、終テ帝国ホテルニ至リ晩餐
○下略
　　　○中略。
九月廿八日　朝雨後晴　今日ハ妙ニムシアツタカ也
○上略　夕兜町ニ於同族会アリ　○下略
　　　○中略。
十月廿八日　曇
○上略　今夕ハ兜町ニテ同族会議開催ノ処、予ハ　○中略　先約アルヲ以テ、同族会ハ特ニ許ヲ得テ欠席　○下略
　　　○中略。
十一月三十日　晴
○上略　夕刻ヨリ兜町ニテ同族会議、晩餐ハ西洋料理　○下略
　　　○中略。
十二月廿七日　半晴
○上略
今日ノ同族会ニ於テ元方規則決定、新ニ理事ヲ設ケ、予モ理事ニ任命ヲ受ク、兼文書部長タリ、尾高氏ハ支配人ヲ以テ理事長兼会計部長タリ、理事ハ重役タル待遇ヲ受クルモノニシテ、ツマリ実ニ対シテ名ヲ附セシモノナレトモ、名モ又必要ナシトセズ、仍テ立案、終ニ裁定ヲ受クルニ至リシモノナリ

（八十島親徳）　日録　　明治三九年　　　（八十島親義氏所蔵）
一月卅日　孝明天皇祭　快晴
○上略
王子ニ於テハ同族各員及穂積・阪谷両家ノ推定ノ相続人両氏集合、今日ハ決算及予算ノ会議ノ外、佳例ニヨリ家法ノ朗読、家訓ノ講演アリ又阪谷氏ヨリ大臣拝命ノ由来、決意及自身ノ境遇等ニツキ説明アリ、終テ広間ニ於テ日本料理ノ饗応アリ（竹葉ノうなぎ添）
○下略
　　　○中略。
二月二十七日　朝雪午後ヨリ吹降
○上略　本日ハ夕刻ヨリ兜町ニ於テ同族会議アリ、為差議事無シ、各員皆来会セラル　○下略
　　　○中略。
三月廿五日　曇　日曜
○上略
予ハ午後ヨリ兜町ニ至ル今日ハ夕刻ヨリ同族会議アリ、渋沢市郎氏夫婦・元治氏等モ来会、晩餐ハ一同共ニセラル　○下略
　　　○中略。
四月三十日　快晴
○上略　今日ハ同族会議アリ、列席　○下略
　　　○中略。
 - 第29巻 p.323 -ページ画像 
五月廿八日　晴　蒸暑シ
例刻出勤、今夕兜町ニ於テ同族会議アリ、多賀羅亭出前ノ洋食、会議ハ左程有要ノ事モ無シ、十一時帰宅ス
男爵モ愈来ル六・七日頃出発渡韓ト決定、予モ随行　○下略
　　　○中略。
七月卅一日　暑シ
○上略　夕同族会、一同被揃、未曾有ノ好決算、加之近来諸株騰貴且端株動カシ易キニ際シ売却、大ニ金融楽ニシテ而カモ利益多キ事ナレハ、青淵公一両年来ニ無ク楽観ニ推移サルヽモノヽ如シ、故ニ大日本水産名古屋電力・同瓦斯、其他新設又ハ増株モノニ追々関係広マレリ
　　　○中略。
八月卅一日　晴　非常ニ蒸暑シ
○上略
午後二時ヨリ同族会議アリ、不相変新事業ノ加入相談ト、旧来所持ノ端株類ノ内売却協議アリ
○下略
　　　○中略。
九月二十九日　晴
○上略　午後五時ヨリ於兜町同族会、穂積博士御夫婦ハ差支欠席、近来新事業興起多ク、又男爵ハ寧ロ他人ノ推戴ニ応シ背負込ミ勝、換言セバ奨励方針ヲ取ラルヽニ付、議案ニモ、発起人ニ加入、株ノ引受、創立委員ノ引受、相談役ノ引受等ノ事項多シ
　　　○中略。
十月三十日　快晴
○上略　本日ハ夕刻兜町ニ於テ同族会議アリ、総員出席アリ、不相変新会社ノ発起加入、相談役ノ受托等ノ議案多シ　○下略
　　　○中略。
十一月廿九日　晴
○上略　今夜ハ同族会議アリ　○下略
　　　○中略。
十二月廿七日　晴
○上略　午後五時ヨリ同族会議開会、武之助氏本月ヨリ成年ニ達セシニツキ、本日ヨリ此会ニ列席ス、本日ハ不相変新会社加入等ノ案件ノ外、寄付基金ノ制ヲ設クルノ案ハ熟案ノ為決議延期、関誠之ノ申出ニカヽル養貝事業ニハ、主タル資本主タル事ハ辞シ、ホンノ一分《（部）》ノ加入ヲ内諾スル事、倉庫支配人諸井四郎後任ハ脇田勇可然カト話合、其他三本木農場将来ノ経営法ハ原煕氏ノ意見ヲ斟酌シテ、来年ヨリ多少ノ刷新ヲ加フル事等議決セリ、夜十一時帰宅

（八十島親徳）　日録　　明治四〇年　　　（八十島親義氏所蔵）
一月二十九日　晴
○上略　明日ノ同族会ニ要スル書類ノ事等打合ヲ為シ昼過品川ニ帰ル　○下略
　　　○中略。
二月二十七日　晴
 - 第29巻 p.324 -ページ画像 
例ノ如ク出勤、本日ハ午後五時ヨリ兜町ニテ同族会開会、一同参集セラル、不相変新会社発起人ニ加入ノ議案多シ、但イヅレモ事後承諾ニシテ、多クハ一月中ヨリ二月初ニカケテノモノナリ（昨今ハ（二月初ヨリ）株式暴落ニ驚キ、新会社モ一時頓挫ノ気味ナリ）十二時帰宅
　　　○中略。
三月廿九日　雨夕ヨリミゾレ　大ニ寒シ
朝如例出勤、夕ヨリ兜町ニテ同族会開会、夜半帰宅
　　　○中略。
四月廿九日　快晴
○上略
夕刻兜町ニテ同族会アリ、夕食ハ例ノ如ク多賀羅亭仕出ノ洋食ナリシガ食後約三十分即九時頃、書斎ニテ容斎ノ掛幅・文晁ノ屏風等展覧中男爵夫人ハ椅子ニ倚リシマヽ苦悶ヲ始メ、人事不省トナラレ大騒ヲ来タス、幸男爵始メ近親一同居合ハセシ際ナレハ、水ヨ医者ヨト手ヲ回シ、唯事務所ノ為蒲団ノ類ハ不取敢書生ノ使用物ヲ用フルナド甚不行届ナリシガ、卅分計ニテ言語モ通シラレ、追々治マリタリ、堀井氏来診、全ク一時的ノ脳貧血ナラントノ事、今夜ハ御一泊安静ニ横臥セラレ、堀井氏宿直シ、橋本・上田以下当直ス、予等ハ十二時過辞シテ帰宅ス　同族会議モ無滞済ミタリ
　　　○中略。
五月卅日　雨
例刻出勤、今夕兜町ニ於テ同族会議アリ、仍例如例、十一時過帰宅ス
　　　○中略。
六月二十九日　晴夕ヨリ雨
○上略
夜兜町ニテ同族会、十一時帰ル
　　　○中略。
七月卅一日　晴　アツシ
例刻出勤、今日ハ半期重要ノ同族会議定日ナル処、我男爵ハ聊風気ニテ引コモリ中ニ付、即飛鳥山邸ニテ開会ノ事ニ変更セラル、五時同方ニ至ル、当季決算ハ未曾有ノ利益ニシテ十五万円以上ナリ、一同議論モナク満足ノ体也、偕楽園ノ出前、十一時帰宅
　　　○中略。
九月六日　快晴
○上略
夕刻兜町ニテ同族会議アリ、十一時帰宅
　　　○中略。
九月二十八日　晴
○上略　今夜同族会アリ、穂積博士欠席セラル、差シタル議事ナキニ付早ク済ミタリ
　　　○中略。
十月卅日　晴
○上略　夕刻ヨリ同族会於兜町開カル　夜遅ク帰宅
　　　○中略。
 - 第29巻 p.325 -ページ画像 
十一月三十日　晴
○上略
今夜兜町ニ於テ同族会議、十時半帰宅
○下略
　　　○中略。
十二月廿七日　晴
○上略　夕兜町ニテ同族会、夜半帰

（八十島親徳）　日録　　明治四一年　　　（八十島親義氏所蔵）
一月卅日　休日　曇
○上略　今日王子ニ半季決算・予算ノ同族会アルニ付、三時品川ヲ辞シ、四時半王子ニ至ル、一同来会、定例協議ノ外、阪谷男ノ洋行、正雄氏本年更ニ受験ノ方針、武之助氏心掛向等ノ事ニ談合アリ、決算ハ不相変好況ニシテ、十ケ年以前ニ倍加シ、半季純益十六万円ニ上ル、精養軒出前ノ洋食饗応アリ、尚円喬ノ落語ヲ余興トス、帰宅セシハ午前二時半
　　　○中略。
二月廿七日　晴
○上略　兜町ニ帰リ同族会ニ列席ス、種々ノ議案ハアリタレドモ左程重要ノ件ハ無シ
○下略
　　　○中略。
三月廿八日　雨
○上略　夜同族会議アリ
　　　○中略。
四月廿八日　雨
○上略　夜同族会議開会、男爵ハ中坐シテ高橋副総裁ノ招宴ニ赴カレシニツキ、イツモニナク早ク済ミ十時半帰宅
　　　○中略。
六月三十日　晴
○上略　夜同族会、十二時帰宅
　　　○中略。
七月卅一日　炎天
○上略　今夕兜町ニテ同族会議アリ、目下洋行中ノ阪谷男ト箱根旅行中ノ武之助氏ヲ除クノ外皆出席セラル、上半季決算報告及下半季予算ヲ提案ス、上半季ノ益金ハ不相変好況ナルモ、コハ昨年下半季諸会社営業ノ結果ナリ、下季ノ予算ハ約弐割減少ス、之レ不景気ノ結果不得已処也、去レド一ケ年半以上ノ前ニ比スレハ尚好況ナリ、蓋シ大体ニ於テ資産増加シタル為也、而シテ此上ノ減少ハ吾人想像セズ
好況ナル当上半季ノ経常収支残益ハ十六万円（内三万円余ハ労力ニ対スル収入、十三万円ハ資産収入也）積立金ヲ引去リ規定通リ分配セハ支家ノ配当一万円ヲ超ユ、盛ナリトイフベシ、下半季ノ予算ハ此約二割減也
○下略
 - 第29巻 p.326 -ページ画像 
　　　○中略。
八月三十一日　晴
○上略　夕兜町ニ於テ同族会、男爵ハ不在ナルモ例ニヨリ開会、晩クナル
　　　○中略。
九月三十日　晴　暖
○上略　夕同族会アリ　夜十一時半帰ル
　　　○中略。
十月廿九日　晴
○上略
今夕兜町ニテ同族会アリ、阪谷家《（男）》ヨリ欧米漫遊中ノ所感談アリシガ、到ル処ノ国々ニテ強大国ノ前大臣トシテ待遇セラレ、且財政上ノ事ニ付テハ重キヲ置キテ意見ヲ聞カレタルハ、畢竟我国ガ日露戦後列強ノ伍ニ入リタル結果ト、深ク快心ノ事ニ感セラレタル由物語アリ
○下略
　　　○中略。
十一月三十日　晴
○上略　昼同族会アリ、夕済ミ帰ル　○下略
　　　○中略。
十二月廿八日　晴
朝十時ヨリ兜町ニテ同族会アリ、正雄氏成年ニ達セシニツキ本日ヨリ列席ス、昼飯ヲ終ヘ各員退散セラル　○下略

（八十島親徳）　日録　　明治四二年　　　（八十島親義氏所蔵）
一月三十日　晴　烈寒風
○上略　今日ハ午前十時ヨリ同族会議アリ、新年ノ事故、例ニヨリ同族一同、外ニ穂積重遠氏夫妻等打ヨラレ、家法ノ朗読式、続テ家訓ノ講演アリ、食事ハ常盤屋ノ出前、円喬ノ人情話ヲ余興トス、議事ハ半季決算及予算ニシテ、戦後反動ノ不景気ヨリ収入ハ多少減少セシモ、差シタル事ナシ、夕方迄ニ一ト通リ結了　○下略
　　　○中略。
二月二十六日　晴
○上略　夕同族会議アリ
昨日東京貯蓄銀行臨時総会ニ於テ、故吉田省三氏ノ後任トシテ渋沢若主人ハ其常務取締役ニ当選セラレニツキ《（シ脱）》、将来責任モ重大ナルニ依リ同族会ニ於テモ同行ノ業務執行ヲ或ル程度マテ監視スルノ議ヲ決ス
　　　○中略。
三月三十一日　晴
○上略
五時飛鳥山邸ニ至ル、今日ハ同族会議ヲ同邸ニ開カル　○中略
今日ハ早稲田大学ヘ弐万円寄付之件、穂積家ガ近来重遠氏ノ迎妻・光子嬢ノ他嫁、重遠氏ノ邸宅新調等ニ入費ヲ要シ、少カラヌ負債ヲ（基本財産ヨリ）生セシニツキ、先年家法制定ノ事ヲ始メ、其後モ子弟教育上等ニ関シ少ナカラヌ功労アリシニ報フルノ趣旨ヲ以テ、此際参万円ヲ贈与スル事等ノ決議アリ、要談ヤラ雑談ヤラニテ、夜十一時半ニ
 - 第29巻 p.327 -ページ画像 
至ル　○下略
　　　○中略。
四月二十九日　雨　蒸暑
○上略
夕刻同族会議アリ、差タル議案無シ　○下略
　　　○中略。
五月二十九日　晴
○上略　夕五時ヨリ兜町ニ於テ同族会開会、茅場町倉庫買入大体ノ方針ニ付テハ、去一月内話アリシ丈ニテ、本日ハ事後承諾ノ提案トナリ、両博士等ヨリ異論アリ（事ノヨシアシニ非ス、手続ニ付テ也）将来経営上ニツキ、予等ノ責任益大ヲ加フ、其他女子大学・弘道館寄付等ニツイテモ異論アリ、又男爵ノ会社其他関係職任ヨリ引退　○中略　決意ノ件ニ関シ細目ニ渡リ種々評議アリ、其時期・手続等協議決定アリ
会社類ハ第一・東京貯蓄以外ハ、関係ノ厚薄ニ拘ハラズ一切辞任、公共慈善等ノ部類ハ、銀行集会所・養育院・慈恵会・高商校・日本女子大学・虎ノ門女学館・埼玉学生誘掖会・喜賓会等ヲ除キテハ、一先矢張一切ヲ辞任スル事トナレリ

（穂積陳重）　書翰　　芝崎確次郎宛　（明治三五年）三月一日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（芝崎猪根吉氏所蔵）
拝啓、余寒難去御座候処、愈御壮健珍重之至ニ御座候、将又渋沢家親族会之儀、殿様御聞済ニ付、当月之会合ハ来ル三日於拙宅相催度候間何卒為御繰合之上、午後三時ヨリ御来臨被成下度候、此段御案内迄匆々如此御座候　以上
　　三月一日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　穂積陳重
　　　　芝崎確太郎様《（芝崎確次郎）》
図芝崎確太郎殿《（芝崎確次郎）》
　　　　　　　　　　貴下

〆　穂積陳重　（・六七×・二四）

（渋沢家同族会）　書翰　　芝崎確次郎宛　（明治三五年）四月二三日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（芝崎猪根吉氏所蔵）
拝啓、然ハ本月同族会之儀、来ル廿七日午後三時ヨリ深川邸ニ於テ致開会候ニ付、御出席被成下度候、此段及御案内候也
　　四月廿三日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢家同族会渋沢家同族会
　　　　芝崎確次郎殿
 - 第29巻 p.328 -ページ画像 
図け芝崎確次郎殿
（朱印）　厳緘　渋沢家同族会　（・六七×・二五）