デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

1章 社会事業
2節 中央社会事業協会其他
1款 中央慈善協会
■綱文

第30巻 p.503-504(DK300058k) ページ画像

大正6年11月3日(1917年)

是日、九段ノ偕行社ニ於テ、当協会第九回総会開催セラレ、栄一之ニ出席シテ挨拶ヲナス。


■資料

竜門雑誌 第三五四号・第一五六―一五七頁 大正六年一一月 ○第九回中央慈善協会総会(DK300058k-0001)
第30巻 p.503 ページ画像

竜門雑誌  第三五四号・第一五六―一五七頁 大正六年一一月
○第九回中央慈善協会総会 中央慈善協会に於ては十一月三日午前十時より九段坂の偕行社に於て第九回総会を開きたり。会長青淵先生の開会の挨拶あり。常務理事渡辺地方局長の事業報告、評議員潮参事官の会計報告ありたる後、水野次官を会長として「地方に於ける慈善事業聯絡機関の設立を促し中央慈善協会との連絡を計る事」「大戦に伴ふて起る社会上の変動に応ずる救済事業の発展を計る事」の二項を附議し、満場一致之を可決して正午閉会せりと云ふ。


竜門雑誌 第三五四号・第三二―三三頁 大正六年一一月 ○第九回中央慈善協会総会に於て(青淵先生)(DK300058k-0002)
第30巻 p.503-504 ページ画像

竜門雑誌  第三五四号・第三二―三三頁 大正六年一一月
    ○第九回中央慈善協会総会に於て (青淵先生)
 本篇は十一月三日午前十時より九段偕行社に於て開会せられたる第九回中央慈善協会総会に於て、同会々長たる青淵先生が本会を代表して挨拶せられたるものなり。(編者識)
 中央慈善協会第九回総会を開催するに当りまして、私は本会を代表して一言御挨拶を申上げます。
 本日の総会に全国各地より斯く会員諸君の多数御出席を得ましたのみならず、来賓諸彦の御賁臨をも忝うしましたことは本会の最も光栄として感謝する所であります、私は此の機会に於て本会業務の経過と将来の施設に就て愚見を申し上げたいと存じます。
 本会は明治四十一年の創立に係りまして、全国各地方の感化救済に関する各種の団体と聯絡を図り、慈善事業に従事せらるゝ篤志家と気脈を通じまして斯業の発達を図ると共に、之れに関する行政をも翼賛するの目的を以て爾来拮据経営致して居ります、而して此目的を達する為めに機関雑誌を発行して慈善に関する各種の調査研究を公にし、時々印刷物を以て社会の注意を喚起し、或は講演会を催して感化救済事項を討論攻究し、或は各地救済事業の視察等を致しまして、今日に至つたのでありますが、創立以来既に十年を経過致して居るにも拘らず、効績の見るべきもの少きは、会員諸君は勿論、本会に同情を寄せらるゝ諸彦に対しましても、幹部の者一同慚愧に堪へざる次第であります。
 然るに欧洲大戦勃発後の社会状態は異常なる変化を呈し来り、我邦も亦之が影響を受けまして、各種の社会問題を惹起致しましたことは諸君の既に業に熟知せられることであります、加之戦後必然起るべき失業者其他救済に関する諸問題に想到しますれば、斯業の研究の一日も等閑に附すべからざることを感ずる次第であります、是に於て将に
 - 第30巻 p.504 -ページ画像 
到来すべき未曾有の変局に処しまして、我慈善協会は旧態を一新し新時代に適応するの施設を為すべく昨年以来再三熟議を遂げました結果先づ会則を改正致し、特に賛襄員を設けて維持の確立を図り、専任幹事を置きて事務を刷新し、雑誌も月刊に更め、勉めて新聞紙雑誌等によりて海外の新知識を蒐集し、将来適当の時期に於て慈善救済に関する講習会をも開きて会員諸君の期待に副ひ、以て斯業を発展して国家社会に貢献致したいと企図する次第であります、本日より三日間に渉り第四回救済事業大会を開催するに至りましたのも、事業革新の第一歩に外ならぬのであります、向後幹部の者は力の及ぶ限り本会の発達を図り斯業の刷新に務めますから、会員諸君に於ても進んで全国枢要の地に慈善事業設立の御計劃をなされ、中央地方相俟つて斯業の進歩改善を図りたいと思ふのであります、又来賓諸彦に於かせられましても本会の微意の存する所を諒とせられ、一層御援助を賜はらんことを切に御願ひ致します。
 玆に第九回総会を開催致しまするに当り、本会の経過及将来の計劃を申し上げまして御挨拶に換へた次第であります。