デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

1章 社会事業
4節 保健団体及ビ医療施設
17款 財団法人癩予防協会
■綱文

第31巻 p.198-203(DK310037k) ページ画像

昭和6年1月21日(1931年)

是日、当会発起人会ヲ内務大臣官邸ニ開キ、栄一会頭並ニ理事ニ就任ス。次イデ三月十八日、正式ニ設立ヲ許可サル。


■資料

癩予防協会書類 【拝啓益御清適奉賀候、然ば老生予て東京市養育院の事務を見居候関係より…】(DK310037k-0001)
第31巻 p.198 ページ画像

癩予防協会書類              (渋沢子爵家所蔵)
拝啓益御清適奉賀候、然ば老生予て東京市養育院の事務を見居候関係より、癩患者の取扱に付多少承知致居候義も有之、右に付内務大臣に御懇談申上候処、有力者諸氏に御相談申上十分御賛同を請ひ度との事にて、明後二十一日尊来願上候次第に御座候、右の関係より内務大臣の御希望に従ひ、僭越ながら大臣と連名御案内申上候義に御座候
就ては拝趨右顛末一応申上、且当日御臨席の義御願申上度と存候処、老衰の結果起居自由を欠き候為め、思ひながら今日に到候次第に有之不得已書中得貴意候段、不悪御諒恕被下、何卒御差繰御来駕被下度懇願仕候、右得貴意度如此御座候 敬具
                    渋沢栄一《(後筆)》
 男爵 郷誠之助殿     男爵 団琢磨殿
    木村久寿弥太殿   男爵 森村市左衛門殿
 男爵 古河虎之助殿    男爵 大倉喜七郎殿
 男爵 四条隆英殿        大橋新太郎殿
    根津嘉一郎殿       末延道成殿
    服部金太郎殿


昭和六年度事業成績報告書 財団法人癩予防協会編 第一頁 昭和八年一月刊(DK310037k-0002)
第31巻 p.198-199 ページ画像

昭和六年度事業成績報告書 財団法人癩予防協会編
                       第一頁 昭和八年一月刊

    第一章 沿革
 我国ニ於テハ現在尚多数ノ癩患者ヲ有シ政府ニ於テモ夙ニ之ガ予防ノ必要ヲ認メ癩予防法ヲ制定シ、国立並ニ公立癩療養所ノ設置、私立癩療養所ノ助成等ニ依リテ、漸次患者ノ隔離療養施設ノ整備充実ヲ図リ、以テ本病ノ根絶ニ向ツテ努メツヽアリ。此ノ時ニ当リ、若シ民間ニ有力ナル癩予防団体アリテ、絶エズ当路者ヲ援助シ、或ハ其ノ施設ヲ補足シ、官民一致協力シ、癩予防事業ニ当ルニ於テハ、其効果頗ル大ナルモノアルベキヲ思ヒ、昭和四年内務大臣安達謙蔵氏・子爵渋沢栄一氏、其他朝野ノ識者ニ依リテ、癩予防協会設立ノ気運醸成セラレツヽアリシ折柄、昭和五年十一月十日、畏クモ 皇太后陛下ニハ特別ノ思召ヲ以テ癩救療ノ資トシテ内務大臣ニ対シ金拾万円ノ御下賜アリ御旨ヲ奉シテ安達内務大臣・渋沢子爵並ニ左記ノ諸氏 ○略ス 発起人トナ
 - 第31巻 p.199 -ページ画像 
リ、昭和六年一月二十一日内務大臣官邸ニ本会発起人会ヲ開催シ本会設立ノ趣意書及寄附行為ヲ決定シ、設立者ヲ安達内務大臣・渋沢子爵ノ両氏ト為シ、財団法人設立ノ許可ヲ出願シ、昭和六年三月十八日内務大臣ノ許可ヲ得、玆ニ財団法人癩予防協会ノ設立ヲ見ルニ至レリ。


昭和六年度事業成績報告書 財団法人癩予防協会編 第五〇頁 昭和八年一月刊(DK310037k-0003)
第31巻 p.199 ページ画像

昭和六年度事業成績報告書 財団法人癩予防協会編
                       第五〇頁 昭和八年一月刊
    第七章 役員ノ異動
一、昭和六年一月二十一日、子爵渋沢栄一氏会頭ニ就任ス
二、昭和六年一月二十一日、子爵渋沢栄一氏及内務大臣安達謙蔵氏理事ニ就任ス
○中略
六、昭和六年十一月十一日会頭子爵渋沢栄一薨去ス
○下略


癩予防協会書類 【(謄写版) 癩予防協会設立趣意書】(DK310037k-0004)
第31巻 p.199-203 ページ画像

癩予防協会書類              (渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)
    癩予防協会設立趣意書
世に疾病の数尠からずと雖も、病性の執拗にして治癒の困難なる蓋し癩の如きはあらざるべし。加ふるに、其の発するや、外貌を醜悪ならしめ、人をして嫌悪の情を起さしむるのみならず、古来遺伝病なりと誤信せられ来りし為、不幸は単り患者一人に止まらず、累の及ぶところ六親眷族に至るを例とす。天刑病の名ある亦故なきに非ず。
於玆乎患者及其の一族は、本病罹患の事実を隠蔽するに勉め、患者をして或は屋内深く籠居せしめ、或は秘かに家郷を去つて諸国を放浪せしむ。斯くして病勢は漸次昂進し、遂に哀れなる死の襲ふに至りて、悲惨極りなき生を終るを常とす。之れ人道問題として、吾等の黙過し能はさる所なり。
翻つて之を公衆衛生上より観るに、罹患の事実を極力隠蔽するの余弊は、啻に患者をして医療を受けしむるの途を阻止するのみならず、予防知識の欠如は、其の間病毒を随所に伝播するに至らしむ。之れ国民保健上一日も忽緒に附する能はさるところなりとす。
政府玆に鑑るところあり。夙に癩予防に関する法律を制定し、或は道府県に命じて療養所を設置せしめ、或は消毒其他の予防方法の励行を図る等鋭意努力するところありしが、未だ十分なる実蹟を挙ぐるに至らず。之を欧米諸国に徴するに、何れも数十百年前より極力本病の撲滅に腐心せるの結果殆ど患者の跡を絶つに至りたる邦国少からず。然るに我邦は、支那及印度と共に世界の三大癩病国と称せられ、時に排日の具に供せらるる事なしとせず。是れ文明国民の汚辱にして、延いては国家の利害に及ぼす影響も亦甚だ大なりと謂はざるべからず。
曩に施行せられたる一斉調査の結果に依れば、我邦には一万数千人の癩患者あるを示せりと雖も、実際の数は更に遥かに多きものと見て大過なかるべし。而も道府県立及私立の療養所に於ける収容患者は、両者を通じて尚且僅々三千人を出でず。多数の患者は依然として社会の
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擯斥裡に不完全なる医療に甘んじつゝあるの実情に在り。仍て政府は曩に第一期事業として療養の途を有せず且救護者なき患者の為に、道府県立療養所の拡張と、国立療養所の新設とを図り、以て不取敢五千人の収容設備を講ずるの計劃を樹て、更に進んで第二期事業として療養資力の有無を問はず残余の癩患者全部の収容隔離を遂行するの方策を定め、爾来極力之が実施に努めつゝありと雖も、国庫及地方財政其の他の事情に制せられ、第一期事業だに未だ完成を告ぐるに至らざるの状況に在り。
由来本病の予防撲滅の如き一大事業は、全国民の理解を根柢とし、官民の一致協力に俟たざれば、克く其の効果を収むる能はず。若し此の間有力なる民間の団体ありて、制度の完備、収容施設の拡大等当局の為すべき事項は、之が促進を要望し、民衆の指導、患者の保護等民間団体の施為に適するものは自ら之に当り、以て官民呼応、一致協力の実を挙ぐるに於ては、本病の予防撲滅の如き、蓋し多くの歳月を要せずして、達成せらるべきを疑はざるなり。下名等自ら揣らず、進むで本会を創立し以て上記目的貫徹の為聊か力を致さむとす。冀くは江湖の諸彦幸に翼賛せられむことを。
    財団法人癩予防協会寄付行為
      名称
第一条 本会ハ財団法人癩予防協会ト称ス
      事務所
第二条 本会ノ事務所ヲ東京市ニ置キ、必要ナル地方ニ支部ヲ置ク
      目的及事業
第三条 本会ハ癩ノ予防絶滅ヲ以テ目的トス
第四条 本会ハ前条ノ目的ヲ達スル為左ノ事業ヲ行フ
 一 癩ノ予防絶滅ニ関スル調査・研究及宣伝
 二 癩ノ予防絶滅ニ関スル諸事業ノ聯絡及後援
 三 其ノ他癩ノ予防絶滅ニ関シ必要ト認ムル事項
      資産及会計
第五条 本会ノ資産ハ左ノ各号ヨリ成ル
 一、皇太后陛下御下賜金
 二、国庫補助金
 三、会員ノ醵金
 四、篤志家ノ寄附金品
 五、基本財産ヨリ生ズル収入
 六、雑収入
第六条 本会ニ基本財産ヲ置ク、基本財産ノ管理並運用ノ方法ハ評議員会ノ議決ヲ以テ之ヲ定ム、但現金ハ郵便貯金ト為シ、若ハ確実ナル銀行ニ預入レ、又ハ国債・地方債其ノ他確実ナル有価証券ヲ買入レ、其ノ利殖ヲ図ルモノトス、但特別ノ事情アル場合ニ於テハ不動産ヲ買入ルルコトヲ得
第七条 本会ノ経費ハ資産ヲ以テ之ニ充ツ
第八条 本会ノ会計年度ハ毎年四月一日ニ始マリ翌年三月三十一日ニ終ル
 - 第31巻 p.201 -ページ画像 
第九条 翌年度ノ予算ハ毎年二月評議員会ノ決議ヲ経テ定メ、前年度ノ決算ハ毎年六月評議員会ノ承認ヲ経ルモノトス
 財産目録ハ毎年末現在ニテ作製シ、評議員会ニ報告スルモノトス
      会員
第十条 本会ノ会員ヲ分チテ左ノ三種トス
 一 名誉会員 癩ノ予防絶滅事業ニ貢献セル者ニシテ、理事会ノ議決ヲ経テ会頭ノ推薦スルモノ
 二 特別会員 金五十円以上ヲ一時ニ醵出スル者
 三 正会員 年額金三円宛ヲ醵出スル者
 前項第三号ノ醵出金三十円以上ニ達シタル者ハ終身正会員トス
第十一条 本会ニ金品ヲ寄附シタル者ニシテ前条各号ノ一ニ該当セザルモノハ之ヲ賛助員トス
第十二条 本会ノ会員タラントスル者ハ其ノ旨事務所ニ申込ムベシ
 出資ヲ分納セントスル者亦同ジ
 前項ノ分納金ハ毎年度末日迄ニ納附スベシ
第十三条 会員ニシテ其ノ義務ヲ怠リタル者又ハ本会ノ名誉ヲ毀損スルノ行為アリタル者ハ、理事会ノ議決ヲ経テ之ヲ除名スルコトヲ得
第十四条 会員退会シタルトキ又ハ除名セラレタルトキハ、既ニ出資又ハ寄附シタル金品ハ之ヲ返還セズ
      役員及職員
第十五条 本会ニ左ノ役員ヲ置ク
 一 会頭     一名
 二 副会頭    三名
 三 理事長    一名
 四 理事     若干名
 五 監事     若干名
 六 評議員    若干名
 七 支部長    若干名
第十六条 会頭ハ評議員会ノ議決ヲ経テ之ヲ推戴ス
 副会頭及評議員ハ会員中ヨリ会頭之ヲ嘱託ス、但副会頭中二名ハ内務次官及宮内次官ヲ以テ之ニ充ツ
 理事中ノ一名ヲ理事長トシ、理事ノ互選ニ依ル
 理事及監事ハ評議員会ニ於テ会員中ヨリ之ヲ選挙ス
 支部長ハ支部所在地地方長官ヲ以テ之ニ充ツ
第十七条 会頭ハ本会ヲ代表シ会務ヲ総理ス
 副会頭ハ会頭ヲ補佐シ、会頭事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理ス
 理事長・理事及支部長ハ会頭ノ命ヲ承ケ会務ヲ処理ス
 監事ハ資産ノ状況及会務執行ノ状況ヲ監査ス
第十八条 本会ニ名誉会頭及顧問若干名ヲ置キ、理事会ノ議決ヲ経テ会頭之ヲ推薦ス
第十九条 本会ニ書記若干名ヲ置キ、理事長之ヲ命免ス
第二十条 理事・監事及評議員ノ任期ハ四ケ年トス、但再選スルヲ妨ゲズ
第二十一条 補闕者ノ任期ハ前任者ノ残任期間ニ依ル、理事及監事ノ
 - 第31巻 p.202 -ページ画像 
任務終了ノ場合ニ於テ、其ノ後任者ノ就任スル迄ハ前任者ニ於テ其ノ職務ヲ行フ
      評議員会
第二十二条 評議員会ハ評議員ヲ以テ組織ス
 評議員会ハ会頭随時之ヲ召集ス
 評議員会ノ議長ハ評議員ノ互選ニ依リテ之ヲ決ス
第二十三条 評議員会ハ評議員三分ノ一以上出席スルニアラザレバ会議ヲ開クコトヲ得ズ
 評議員会ノ議決ハ出席員ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス、可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
 評議員ハ予メ出席員ニ委任シ、書面ヲ以テ表決ヲ為スコトヲ得、此ノ場合ニ於テハ之ヲ出席員ト看做ス
      附則
第二十四条 本会ノ支部ヲ東京・青森・大阪・香川・熊本及沖縄ノ各府県下ニ置ク
第二十五条 本会ノ会務施行ニ関シ必要ナル細則ハ之ヲ定ム
第二十六条 第十五条ノ役員決定ニ至ル迄理事及評議員ノ職務ハ設立者之ヲ行フ
   ○右ハ渋沢子爵家所蔵ノ頭書ノ綴込中ニアルモノニシテ、創立当初ノ寄付行為ト思惟サル。
    癩予防協会事業項目
一、智識ノ啓発
 イ、講演会、映画会ノ開催
 ロ、小冊子ノ配布
二、癩ニ関スル研究費補助
三、癩患家ニ対スル扶助
 癩療養所ニ収容セラレタル患者ノ家族ニシテ、本人ノ入所ニ依リ生活スルコト能ハザルモノニ対シ、適当ナル生活費ノ補助ヲ為スコト
四、未感染児童ノ保護施設
五、患者相談所ノ設置
 適当ノ施設ヲ講ジ患者早期診断・患者相談・疑似症者収容等ヲ為スコト
六、患者ノ慰安及援助
 各療養所ニ収容セラレタル患者ニ対シ慰安ノ方法ヲ講ズルト共ニ、患者ノ事業等ニ対シ援助ヲ為スコト
七、癩ノ救療従事者ノ慰安及後援
八、其ノ他癩ノ予防及治療ニ関シ必要ナル事項
      癩予防協会資金調達方法
一、各府県ノ資産家ニ対シテハ会頭ヨリ依頼状ヲ発シ寄附金ヲ募集スルコト
二、一般国民ヨリ寄附金ヲ募集スルコト
三、国庫補助ヲ仰グコト
四、全国ニ会員ヲ募ルコト、但シ正会員ノ会費ハ一ケ年三円トス
      癩予防協会役員
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 会頭    子爵 渋沢栄一
 名誉会頭     内務大臣(安達謙蔵)
 顧問    公爵 徳川家達
          大蔵大臣(井上準之助)
          宮内大臣(一木喜徳郎)
          望月圭介
       男爵 郷誠之助
          本山彦一
          村山竜平
 副会頭      内務次官(潮恵之輔)
          宮内次官(関屋貞三郎)
          窪田静太郎
   ○理事・監事氏名後掲ニツキ略ス。


青淵先生職任年表(未定稿) 昭和六年十二月調 財団法人竜門社編 竜門雑誌第五一九号別刷・第二五頁 昭和六年一二月刊(DK310037k-0005)
第31巻 p.203 ページ画像

青淵先生職任年表(未定稿) 昭和六年十二月調  財団法人竜門社編
                竜門雑誌第五一九号別刷・第二五頁 昭和六年一二月刊
    昭和年代
  年  月
  四 一二 ―癩予防協会設立相談。昭、六、一、―〃発起人会。昭六、一、―〃会頭、―昭、六、五、財団法人〃会頭―昭、六、一一。昭、六、三、―癩予防協会理事―昭六、五、―財団法人〃評議員―昭、六、一一。