デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

2章 労資協調及ビ融和事業
2節 融和事業
4款 中央融和事業協会
■綱文

第31巻 p.735-739(DK310109k) ページ画像

大正14年10月(1925年)

是月栄一、当協会会長平沼騏一郎ノ懇請ニヨリ、当協会顧問ニ就任ス。


■資料

青淵先生職任年表(未定稿) 昭和六年十二月調 竜門社編 竜門雑誌第五一九号・別刷第二三頁 昭和六年一二月(DK310109k-0001)
第31巻 p.735 ページ画像

青淵先生職任年表(未定稿) 昭和六年十二月調  竜門社編
               竜門雑誌第五一九号・別刷第二三頁 昭和六年一二月
    大正年代
 年  月
一四 一〇 ―中央融和事業協会顧問―昭和六・一一。


中央融和事業協会書類(DK310109k-0002)
第31巻 p.735-738 ページ画像

中央融和事業協会書類         (渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)            大正十四年十月落手《(別筆)》(印)《(明六)》
    中央融和事業協会創立趣意書
国運の伸張は必ず国民の協和に本つく、而して国民の協和は亦必ず普く全国民の人格を重んじ、其の権義の均一なるを明覈にし、社会生活の和平を確保するを以て先務となす。曩に 明治天皇深く此に軫念あらせられ、畏くも五箇条の御誓文を渙発し給ひ、尋で四民平等の制を布かせ給へり。爾来百事面目を新にし、庶政亦歳を逐うて更張し、僅僅半世紀克く今日の盛運を致せりと雖も、独り差別の陋習尚其の痕を存し、時に同胞牆に鬩ぐの遺憾なきを得ず、延いて社会の和平を傷ひ文化の進展を妨ぐるものあるは、洵に痛嘆措く能はざる所なり。
夫れ国民協和の実を挙げ、国家隆昌の基を鞏め、以て社会共栄の目的を達成するは、是れ近世における国民運動の趨勢にして、即ち現代思想の一大潮流たり。此の秋に当り、尚偏僻固陋の旧習に〓され、同胞の間、時に不合理なる差別の事相を見るは、之を内にして我国家の憂患たるのみならず、之を外にして列強の間に伍して能く国運の伸張を図り、文化の発達に寄与する所以にあらず、乃ち同胞相愛の義に則り国民親和の実を挙ぐるは、正に現下緊切の要務たらずむばあらず。
今や中央融和事業協会が、奮然蹶起して同胞相愛の大旆を掲げ、斯業の大成を期する所以のもの、実に已まむと欲して已む能はざるものあるを以てなり。事固より積年の弊習に起因するを以て、一朝の能く実績を収め得べき所にあらずと雖も、各地既に斯業を目的とするの団体少なからず、故に主として其の相互間の聯絡提携の密接を計図し、併せて広く衆思群力を集め、社会の共鳴と理解とを得、赤誠を傾吐し、勇往邁進以て此の大使命の遂行を期せむとす。同憂の士冀くは本会の旨趣を賛成せられ、挙国衆民融和一致の実を挙ぐるに奮つて其の力を致されむことを、是れ本会の切望して已まざる所なり。
                     中央融和事業協会
平沼会長《(欄外別筆)》の懇請に依り、子爵ニハ本会顧問たる事を承諾せらる
                    大正十四年十月
 - 第31巻 p.736 -ページ画像 
    中央融和事業協会役員

図表を画像で表示中央融和事業協会役員

 会長   枢密顧問官   平沼騏一郎      法学博士 理事   社会局長官   長岡隆一郎 同    社会局第二部長 守屋栄夫 同    内務省     松村義一      警保局長 同    文部省     関屋竜吉      普通学務局長 同    司法省     宮城長五郎      保護課長 同    法学博士    穂積重遠 同    法学博士    桑田熊蔵 同    文学博士    椎尾弁匡 同            留岡幸助 同            蓮沼門三 同    文学博士    喜田貞吉 監事   内務次官    川崎卓吉 (交渉中) 同    法学博士    窪田静太郎 



                      (順序不同)
(表紙)
大正十四年九月二十二日創立

図表を画像で表示中央融和事業協会会則 表紙

 中央融和事業協会会則 



                   東京市麹町区元衛町一番地
                        電話 五〇七八
               事務所  社会局内
                        牛込 五〇七九
    中央融和事業協会会則
     第一章 名称
第一条  本会ハ中央融和事業協会ト称ス
     第二章 目的及事業
第二条  本会ハ同胞相愛ノ趣旨ニ則リ、旧来ノ陋習ヲ改メ国民親和ノ実ヲ挙クルヲ以テ目的トス
第三条  本会ハ前条ノ目的ヲ達スル為左ノ事業ヲ行フ
  一、因襲的偏見ノ除去ニ努メ、同胞相愛ノ観念ヲ鼓吹スルコト
  二、融和事業ノ聯絡提携ヲ図ルコト
  三、融和事業ノ奨励助成ヲ為スコト
  四、融和事業ニ関スル講習ヲ為スコト
  五、融和事業ニ関スル調査研究ヲ為スコト
  六、其ノ他理事会ニ於テ必要ト認メタル事項
     第三章 事務所
第四条  本会ハ事務所ヲ東京市麹町区元衛町一番地ニ置ク
     第四章 資産及会計
第五条  本会ノ資産ハ左ニ掲クルモノヨリ成立ス
  一、寄附金
  二、補助金
  三、其ノ他ノ収入
第六条  本会ノ資産ハ確実ナル銀行若ハ郵便官署ニ預入レ、又ハ国債証券若ハ確実ナル有価証券ヲ買入ルルモノトス、特別ノ事情
 - 第31巻 p.737 -ページ画像 
アル場合ハ理事会ノ議決ヲ経テ、不動産ヲ買入ルルコトヲ得
第七条  本会ノ経費ハ左ノモノヲ以テ支弁ス
  一、資産及資産ヨリ生スル収入
  二、其ノ他ノ雑収入
第八条  本会ノ会計年度ハ、毎年四月一日ニ始マリ翌年三月三十一日ニ終ル
第九条  本会ノ予算ハ年度開始前理事会ノ決議ヲ経テ之ヲ定メ、決算ハ当該年度終了後三月以内ニ監事ノ意見ヲ附シ、理事会ノ認定ヲ経ルモノトス
     第五章 役員
第十条  本会ニ左ノ役員ヲ置ク
  一、会長 一名
  二、理事 若干名
  三、監事 若干名
第十一条 会長ハ理事会ニ於テ推薦ス
  会長ハ会務ヲ統轄シ本会ヲ代表ス
  会長故障アルトキハ、会長ノ指名シタル理事其ノ職務ヲ代理ス
第十二条 理事及監事ハ会長之ヲ委嘱ス
第十三条 理事中ニ常務理事一名ヲ置キ、会長ノ指名ヲ以テ之ヲ定ム
  常務理事ハ会長ノ命ヲ承ケ事務ヲ掌理ス
第十四条 監事ハ事務執行及資産ノ状況ヲ監査ス
第十五条 会長ノ任期ハ四年トシ、其ノ他ノ役員ノ任期ハ三年トス、但シ再任ヲ妨ケス
  役員補欠者ノ任期ハ、前任者ノ残任期間トス
第十六条 役員任期満了ノ場合ニ於テハ、其ノ後任者ノ就職スル迄仍前任者ニ於テ其職務ヲ行フモノトス
第十七条 本会ニ顧問若干名ヲ置ク
  顧問ハ理事会ノ議決ヲ経テ会長之ヲ委嘱ス
第十八条 本会ニ事務員若干名ヲ置ク
  事務員ハ規則ノ定ムル所ニ依リ会長又ハ常務理事之ヲ任免ス
     第六章 理事会
第十九条 理事会ノ職務権限左ノ如シ
  一、歳入歳出予算ヲ定ムルコト
  二、決算ヲ認定スルコト
  三、不動産ノ買入又ハ処分ヲ議定スルコト
  四、会則ヲ変更シ及規則ヲ設定スルコト
  五、其ノ他会長ニ於テ必要ト認メ、理事会ニ附議シタル事項ヲ議定スルコト
第二十条 理事会ハ毎年二回之ヲ開ク、但シ会長ニ於テ必要ト認メタルトキハ、随時之ヲ招集スルコトヲ得
  理事三分ノ一以上又ハ監事ヨリ会議ノ目的タル事項ヲ示シテ請求ヲ為シタルトキハ、理事会ヲ開クコトヲ要ス
第二十一条 理事会ノ議長ハ会長之ニ当ル、会長故障アルトキハ会長代理者之ニ当ル
 - 第31巻 p.738 -ページ画像 
第二十二条 理事会ハ理事三分ノ一以上出席スルニ非サレハ、議事ヲ開クコトヲ得ス
第二十三条 理事会ノ議事ハ出席理事ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス、可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
     第七章 補則
第二十四条 本会ハ理事四分ノ三以上ノ同意アルニ非サレハ解散ノ決議ヲ為スコトヲ得ス
  本会解散ノ場合ニ於ケル資産ハ、理事会ノ決議ニ依リ、本会ノ目的ニ類似セル目的ノ為ニ之ヲ処分スルコトヲ得
第二十五条 本会則ノ施行ニ関シ必要ナル規則ハ、別ニ之ヲ定ム
第二十六条 将来此ノ会則ノ条項ヲ変更セムトスルトキハ、出席理事三分ノ二以上ノ同意ヲ経ルコトヲ要ス
第二十七条 第十二条ニ依リ選任セラレタル理事就任スルニ至ル迄ノ間、左記ノ者ヲ以テ理事トス
                    長岡隆一郎
                    守屋栄夫


向上 第一九巻第一一号・第五〇頁 大正一四年一一月一日 同胞相愛を標榜して 『中央融和事業協会』生る(DK310109k-0003)
第31巻 p.738-739 ページ画像

向上  第一九巻第一一号・第五〇頁 大正一四年一一月一日
    同胞相愛を標榜して
      『中央融和事業協会』生る
 此度、内務省社会局長官長岡隆一郎氏並びに同第二部長守屋栄夫氏の熱心なる斡旋により、『中央融和事業協会』といふのが生れ、去る九月二十五日、社会局内で創立総会が開かれた。
 この協会の目的とする処は、『同胞相愛の趣旨に則り、旧来の陋習を改め、国民親和の実を挙ぐる』といふのである。
 此の目的を達する為には次の様な事業を行ふ。
  一、因襲的偏見の除去に努め、同胞相愛の観念を鼓吹する
  二、融和事業の聯絡提携を図る
  三、融和事業の奨励助成
  四、融和事業に関する講習
  五、融和事業に関する調査研究
 而して本会の役員は

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 顧問   内務大臣   若槻礼次郎 同    文部大臣   岡田良平 同    伯爵     大木遠吉 同    子爵     渋沢栄一 会長   枢密顧問官  平沼騏一郎      法学博士 理事   社会局長官  長岡隆一郎 同    社会局    守屋栄夫      第二部長 同    警保局長   松村義一 同    文部省普通  関屋竜吉      学務局長 同    司法省    宮城長五郎      保護課長 同    法学博士   穂積重遠 同    法学博士   桑田熊蔵  以下p.739 ページ画像  同    文学博士   椎尾弁匡 同           留岡幸助 同           蓮沼門三 同    文学博士   喜多貞吉 監事   内務次官   川崎卓吉 同    法学博士   窪田静太郎 



 尚政府からは、社会事業補助金、九月より三月迄の補助金として、五万三千円を此の協会に下附された。
 事務所は麹町区元衛町一番地(社会局内)に置かれた。団員中に於ては、神戸の網谷才一君、越後高田の和田憲太郎君、群馬の岩瀬休太郎君、栃木の長浜庫一君の如きは、融和事業の為めに心身を献げて活動され、部落民一同から尊敬思慕されて居る。其他団員中には、誠心を尽して両者の提携を計りつゝある者が少くない。今後は一層御尽力を願ひます。又此方面の御報告も細大願ひ上げます。